JPWO2004053489A1 - 免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬 - Google Patents

免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬 Download PDF

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Abstract

本発明は、試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する方法に関し、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、HOOC(CH2)nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原とを、試料と混合し、酸性の反応液を得、この反応液において被測定物質と特異結合物質との抗原抗体反応により生じた抗原−抗体複合体を検出する。これにより、測定値が向上し、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和することができる。

Description

本発明は、試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する免疫反応測定方法、およびそれに用いる免疫反応測定用試薬に関する。
医療分野では、様々な疾患の診断および病状の経過を調べるために、ヒトの体液中に存在する各疾患に特徴的な蛋白質の含有量を調べることが広く利用されている。
これらの蛋白質の含有量測定としては、主として、特異性の高い抗原抗体反応を利用した免疫反応測定方法が広く用いられており、現在では、免疫反応測定方法にも様々な原理を利用したものが開発され、利用されている。
それらの中でも、比朧法、比濁法、およびスライド凝集法などの抗原と抗体の反応により生じる凝集複合体を検出する測定方法がよく知られている。これらの方法は、溶液中に抗原および抗体が一様に分散された状態で行うものであるため、均一系の免疫反応測定方法と総称される。
そして、これらの反応では凝集複合体が生成し、反応液が抗原および抗体量に依存した濁りを生じる。比朧法および比濁法はこの濁りを光学的に測定する方法であり、比朧法は反応系で散乱された光量をもとに濁りを測定し、比濁法は反応系での散乱により減少した透過光量をもとに濁りを測定する。一般的に、両方法の測定対象としては、同一の反応液(反応系)を用いることができ、いずれか一方の方法で測定できる対象は残りの一方の方法でも測定することができる。
また、スライド凝集法は、凝集複合体の生成により生じた濁りを、スライドグラス上などで目視などにより判定する方法であり、比朧法および比濁法と同一の反応系を用いることができる。
上記のような従来の均一系の免疫反応測定方法では、抗原抗体反応を促進させて微量成分を高感度に測定するために、様々な添加剤を用いることが試みられている。よく知られている例としては、反応系にポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、ポリビニルピロリドンまたはポリ塩化ビニルなどの水溶性高分子を混在させ、抗原抗体反応による凝集複合体の形成を促進させ、反応時間および測定感度を向上させる方法が挙げられる。
これらの水溶性高分子の中でも、ポリエチレングリコールが比較的低濃度でも効果が高いことが知られており、平均分子量が6000のポリエチレングリコールを2〜6重量%の濃度で使用する方法が広く用いられている。特に4重量%濃度が、非特異的な混濁が少なく、効果が高いとされている。
水溶性高分子による抗原抗体反応の促進効果は、一般にその分子量が大きく、用いる水溶液の濃度が高いほど大きい傾向にある。抗原抗体反応の測定を考えた場合、抗原抗体反応の程度すなわち抗原の濃度に依存した信号強度が高い程、良好なS/N比を維持することができ、安定した測定を行うことができる。しかし、抗原抗体反応の更なる促進によって、上記効果を得ようとした場合、従来の水溶性高分子の添加では、より高濃度あるいは、高分子量の水溶性高分子を添加する必要がある。しかし、水溶性高分子を溶解した溶液の粘性が増大するため、その分析操作上の取り扱いが困難になるという問題があった。
また、均一系の免疫反応測定方法においては、地帯現象と呼ばれる現象が一般に知られている。地帯現象とは、最大の凝集複合体を形成する当量域よりも、抗原と抗体のいずれかが過剰に存在する場合に、凝集複合体が生じ難くなる現象のことをいう。多価抗体と2価以上の抗原との間の結合反応に関しては、ハイデルベルガー(Hidelberger)らの格子説が有名であり、例えば、ウイリアム イー ポール(William E.Paul)編、「ファンダメンタルイムノロジー(Fundamental Immunology)」、1984年、および多田富雄監訳、「基礎免疫学」、1987年、p.714−716にその詳細が記載されている。
実際の均一系の免疫反応測定においては、抗体を用いて抗原濃度を測定する場合が多い。また、抗原濃度が低い場合よりも高い場合に、測定値が重要な意味を持つ場合が多い。そのため、抗原過剰による地帯現象が問題となる場合が多い。地帯以外の領域では、抗体と抗原が交互に結合した複合体よりなる巨大な分子鎖が生じ、その量や大きさは、抗体濃度を一定とすると、抗原濃度に依存して増加する。この分子鎖の量や大きさを光学的な変化量として測定することにより、抗原濃度を定量的に捉えることができる。また、抗原−抗体複合体は、抗体および抗原の濃度によっては、溶液中の濁りや凝集物として肉眼でも十分に確認が可能なものとなるため、目視などにより定性的な判定を行うこともできる。
しかし、抗原過剰域では抗原が抗体に比べて過剰に存在するため、結合部位が抗原により飽和された抗体の量が増加する。このため、先に述べたような分子鎖が生じ難くなり、この場合の反応結果を、抗原が低濃度の場合の反応結果と区別しにくくなる。したがって、抗原濃度に依存した正しい定量や判定を行うことができず、また、これを回避するためには、測定濃度範囲が制限されるという問題があった。
この地帯現象を改善するための方法としては、以下のような方法が提案されている。
例えば特開平09−08984号公報には、pH6.0〜8.0の中性条件下で塩化ナトリウム濃度を20〜250g/Lとし、免疫反応を抑制して被測定物質を希釈なしで測定する方法が開示されており、特開平10−332694号公報には、pH3.5〜5.5の酸性条件下、または、pH9.0〜12.0のアルカリ性条件下で、塩化ナトリウム濃度を10〜250g/Lとし、免疫反応を抑制して被測定物質を希釈なしで測定する方法が開示されている。そして、特開平11−344494号公報には、例えば、pH7.4の中性条件下で、塩化ナトリウム濃度を0.05〜0.08Mとし、不溶性担体粒子に免疫反応の一方である抗体または抗原を結合させた免疫学的凝集反応において、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、コハク酸およびこれらの塩ならびにエステルよりなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸を、反応系に1〜20重量%で含有させる方法が提案されている。
しかし、これらの公報に記載された方法では、いずれの場合も地帯領域以外の測定域において、免疫反応の測定値を低下させてしまうという問題があった。
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑み、容易に測定値の向上が可能な免疫反応測定方法、およびそれに用いる免疫反応測定用試薬を提供することを目的とする。また、本発明は、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和することができる免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬を提供することを目的とする。
本発明は、試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する免疫反応測定方法であって、
(A)ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原とを、前記試料と混合し、酸性の反応液を得る工程、ならびに
(B)前記反応液において前記被測定物質と前記特異結合物質との抗原抗体反応により生じた抗原−抗体複合体を検出する工程を含むことを特徴とする免疫反応測定方法に関する。
前記ヒドロキシル基を有するジカルボン酸がリンゴ酸および酒石酸であり、前記二重結合を有するジカルボン酸がイタコン酸、フマル酸およびマレイン酸であるのが好ましい。
前記直鎖状ジカルボン酸のメチレン鎖の長さがn=1〜7の整数であるのが好ましい。
前記反応液にさらに緩衝剤を添加するのが好ましい。
前記反応液のpHを4.0〜6.0に設定するのが好ましい。
前記反応液のpHを4.5〜6.0に設定するのが好ましい。
また、前記反応液のpHを4.5〜5.0に設定してもよい。
また、前記反応液のpHを5.0〜6.0に設定してもよい。
前記反応液中の前記特定化合物の濃度は、0.1M以下に設定されるのが好ましい。
また、前記反応液中の前記特定化合物の濃度は、0.01〜0.1Mの範囲に設定しても良い。
前記反応液中の前記特定化合物の濃度は、0.01〜0.05Mの範囲に設定されても良い。
前記反応液がポリエチレングリコールを2〜6重量%含むのが好ましい。
前記抗原−抗体複合体が凝集複合体であるのが好ましい。
前記工程(B)において、前記凝集複合体に起因する光学的変化量を測定することにより前記凝集複合体を検出するのが好ましい。
前記光学的変化量が散乱光強度の変化量であるのが好ましい。
前記特異結合物質がモノクローナル抗体を含む抗体であることが好ましい。
また、前記特異結合物質は、凝集複合体を生成可能なように調製された1種類以上のモノクローナル抗体の混合物であることが好ましい。
前記抗原がヒトアルブミンであるのが好ましい。
さらに本発明は、上述のような試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する免疫反応測定方法に用いる免疫反応測定用試薬であって、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(特定化合物)と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原とを含み、前記被測定物質と前記特異結合物質との抗原抗体反応が生じるときの反応液のpHが酸性になるように調製されたことを特徴とする免疫反応測定用試薬に関する。
この場合も、前記ヒドロキシル基を有するジカルボン酸がリンゴ酸および酒石酸であり、前記二重結合を有するジカルボン酸がイタコン酸、フマル酸およびマレイン酸であるのが好ましい。
前記直鎖状ジカルボン酸のメチレン鎖の長さがn=1〜7の整数であるのが好ましい。
前記免疫反応測定用試薬は、さらに緩衝剤を含むのが好ましい。
前記免疫反応測定用試薬は、前記反応液のpHが4.0〜6.0となるように調製されていることが好ましい。このpHは、4.5〜6.0、4.5〜5.0または5.0〜6.0であってもよい。
前記免疫反応測定用試薬は、前記特定化合物の濃度が、前記反応液において0.1M以下になるように調製されていることが好ましい。
また、前記免疫反応測定用試薬は、前記特定化合物の濃度が、前記反応液において0.01〜0.1Mの範囲になるように調製されていることが好ましい。
さらに、前記免疫反応測定用試薬は、前記特定化合物の濃度が、前記反応液において0.01〜0.05Mの範囲になるように調製されていることが好ましい。
前記免疫反応測定用試薬は、さらにポリエチレングリコールを含み、抗原抗体反応が生じるときの前記ポリエチレングリコールの濃度が2〜6重量%であるのが好ましい。
前記特異結合物質がモノクローナル抗体を含む抗体であることが好ましい。
前記特異結合物質が凝集複合体を生成可能なように調製された1種類以上のモノクローナル抗体の混合物であることが好ましい。
前記抗原がヒトアルブミンであるのが好ましい。
図1は、本発明の実施例2における免疫反応測定結果を示すグラフである。
図2は、本発明の実施例3におけるマロン酸等を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図3は、本発明の実施例3におけるコハク酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図4は、本発明の実施例4におけるL(−)−リンゴ酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図5は、本発明の実施例4におけるL(+)−酒石酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図6は、本発明の実施例4におけるイタコン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図7は、本発明の実施例5におけるマロン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図8は、本発明の実施例5におけるコハク酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図9は、本発明の実施例5におけるグルタル酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図10は、本発明の実施例5におけるアジピン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図11は、本発明の実施例5におけるピメリン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図12は、本発明の実施例5におけるスベリン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図13は、本発明の実施例5におけるアゼライン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図14は、本発明の実施例6におけるL(−)−リンゴ酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図15は、本発明の実施例6におけるイタコン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図16は、本発明の実施例6におけるコハク酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。
図17は、本発明の実施例7における免疫反応測定結果を示すグラフである。
図18は、本発明の実施例8における免疫反応測定結果を示すグラフである。
本発明は、容易に測定値の向上が可能な免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬に関する。特に本発明は、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和することができる免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬に関する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、抗原抗体反応が起こる際に、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(特定化合物)を反応系と混合し、前記反応液を酸性に保つことにより、抗原抗体の結合による免疫反応の測定値を向上させることができることを見出した。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させることができることを見出した。
上記効果については、以下のような仮説が考えられる。免疫比濁、比朧法などの均一系の免疫反応測定では、抗原抗体反応により凝集複合体が生じる。この生成には、特異的な抗原抗体反応による一時的な凝集と、凝集複合体同士の二次的な凝集が含まれている。上記特定化合物は主として、凝集複合体同士の二次的な凝集に作用していると考えられる。凝集複合体を一種のコロイドとみなすと、その凝集はイオンの作用により促進されることが一般的に知られている。多価カルボン酸イオンはコロイドの凝集作用の非常に強いイオンであるため、複合体同士の二次的な凝集を促進する。しかし、多価カルボン酸はイオン強度が高いため、一方で抗原抗体反応を若干抑制する作用を示す。
酸性条件下では、上記特定化合物の持つカルボキシル基の解離率が低下するため、イオン強度が下がり、抗原抗体反応への抑制作用が低下し、凝集複合体の生成が増し、コロイドの凝集作用による凝集複合体同士の二次的な凝集が顕著になる。そして、凝集複合体生成反応が起こりやすくなり、測定値が向上する。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和される。
本発明に係る免疫反応測定方法は、試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する免疫反応測定方法であって、(A)ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHOOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原とを、前記試料に添加し、酸性の反応液を得る工程、ならびに(B)前記反応液において前記被測定物質と前記特異結合物質との抗原抗体反応により生じた抗原−抗体複合体を検出する工程を含むことを特徴とする。
ここで、前記反応液(反応系)は、上記の酸とそれらの塩との両方を含んでいてもよい。
前記特定化合物によって反応液に緩衝能が与えられ、反応液が酸性に設定される。このようにすると、反応液を酸性にするために他の緩衝剤をさらに添加する必要がなく、かつ上記免疫反応の測定値を向上させる効果を効率的に発揮させることができる。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和する効果も、効率的に発揮させることができる。もちろん、前記反応液にさらに緩衝剤を添加してもよい。
また、本発明は、上記した試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する免疫反応測定方法に用いる試薬にも関する。すなわち、本発明は、前記特定化合物と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原とを含み、前記被測定物質と前記特異結合物質との抗原抗体反応が生じるときの反応液が酸性になるように調製されたことを特徴とする免疫反応測定用試薬に関する。前記試薬は、上記の酸とそれらの塩との両方を含んでいてもよい。
前記試薬は、前記特定化合物により緩衝能が与えられ、被測定物質と特異結合物質との抗原抗体反応が生じるときの反応液が酸性になるように調製される。このようにすると、反応液を酸性にするために他の緩衝剤をさらに添加する必要がなく、かつ上記免疫反応の測定値を向上させる効果を効率的に発揮させることができる。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和する効果を効率的に発揮させることができる。もっとも、前記試薬はさらに緩衝剤を含んでいてもよい。
前記反応液に含まれる、前記特定化合物の濃度は、前記反応液に十分な緩衝能が得られるようにするため、0.01M以上であることが好ましい。また、測定値を向上させる効果、および抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和する効果を効率的に発揮させるという観点からは、0.1M以下であるのが好ましい。これら要件を両立させるには、0.01〜0.1M、さらには0.01〜0.05Mであるのが好ましい。
したがって、本発明に係る免疫反応用試薬を用いた場合も、上記理由により、前記反応液に含まれる前記特定化合物の濃度が、0.1M以下、好ましくは0.01〜0.1M、さらに好ましくは0.01〜0.05Mとなるのが良い。前記特定化合物は、水に対して緩衝能を示す濃度で溶解することができ、免疫反応の測定値を向上させる効果が大きい。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和する効果が大きい。
ここで、本発明に係る免疫反応測定方法および免疫反応用試薬で用いられるヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩としては、例えば、L(−)−リンゴ酸、D−リンゴ酸、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、L(−)−リンゴ酸ナトリウム、L(+)−酒石酸、DL−酒石酸、D(−)−酒石酸、メソ酒石酸一水和物、(+)酒石酸カリウム−水(2/1)、(+)酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、(+)酒石酸アンモニウム、(+)酒石酸水素カリウム、(+)酒石酸水素ナトリウム一水和物、(+)酒石酸ナトリウム二水和物、イタコン酸、イタコン酸無水物、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸第一鉄、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、マロン酸、マロン酸ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、マロン酸タリウム、マロン酸二タリウム、コハク酸、コハク酸アンモニウム、コハク酸二ナトリウム、グルタル酸、アジピン酸、アジピン酸アンモニウム、アジピン酸二アンモニウム、アジピン酸二カリウム、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸などが挙げられ、これらを単独または組み合わせて使用することができる。
前記ヒドロキシル基を有するジカルボン酸としては、例えば、リンゴ酸および酒石酸などが好ましい。このなかでも、抗原抗体の結合による免疫反応の測定値の向上効果と、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定の緩和効果とが、より広いpH範囲で得られるという点から、酒石酸が特に好ましい。
前記二重結合を有するジカルボン酸としては、例えば、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸などが好ましい。このなかでも、溶解度がより高く、反応液のpHを容易に安定させることができるという点から、イタコン酸およびマレイン酸が好ましい。さらに、抗原抗体の結合による免疫反応の測定値を向上させる効果と、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果が大きいという点から、イタコン酸が特に好ましい。
前記化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸としては、メチレン鎖の長さがn=1〜7の整数で表されるものが好ましい。具体的には、それぞれ慣用名で、マロン酸(n=1)、コハク酸(n=2)、グルタル酸(n=3)、アジピン酸(n=4)、ピメリン酸(n=5)、スベリン酸(n=6)およびアゼライン酸(n=7)などが好ましい。このなかでも、抗原抗体の結合による免疫反応の測定値を向上させる効果と、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果とが、より広い範囲のpHで得られるという点から、マロン酸が特に好ましい。
緩衝剤としては、当該分野で公知のものを用いることができ、例えば、リン酸二水素一ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムなどを含むリン酸系の緩衝剤、酢酸ナトリウム、カコジル酸ナトリウム、ならびに2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸などが挙げられる。
この場合、前記反応液に含まれるべき緩衝剤の量は、用いる緩衝剤の種類、被測定対象物を含む試料(検体)の量、および反応系に対する被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原の供給方法などに応じて、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜調整すればよい。
本発明の免疫反応測定方法においては、前記反応液のpHを4.0〜6.0に設定するのが好ましい。このときに前記特定化合物による免疫反応の測定値を向上させる効果が大きい。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果が大きい。さらに、前記反応液のpHを4.5〜6.0に設定するのがより好ましい。前記反応液のpHを4.5〜5.0に設定してもよく、5.0〜6.0に設定してもよい。
また、本発明に係る免疫反応用試薬は、抗原抗体反応が生じるときの反応液と混合された場合に前記反応液のpHが4.0〜6.0、さらには4.5〜5.0または5.0〜6.0に設定されるように、調製されていることが好ましい。
また、本発明に係る免疫反応測定方法における反応液および免疫反応用試薬には、用途などに応じて、本発明の効果を損なわない範囲であれば、当該分野で公知である他の任意の成分を添加することができる。例えば、比朧法、比濁法、スライド凝集法などの均一系の免疫反応測定法に適用する場合には、前記反応液および免疫反応用試薬に、ポリエチレングリコール(PEG)を添加することができる。
その含有量は、非特異的凝集が少なく、測定感度向上の効果が高いという観点から、本発明の免疫反応測定方法においては、反応液の2〜6重量%であることが好ましく、4重量%であることがさらに好ましい。同様に、本発明の免疫反応用試薬においては、抗原抗体反応が生じるときの濃度が2〜6重量%であることが好ましく、4重量%であることがさらに好ましい。
また、抗原または抗体の自己凝集による非特異的混濁を低減するために、前記反応液および免疫反応用試薬に、トゥイーン20、オクチルグルコシド、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、スクロースモノラウレートまたはCHAPSなどの界面活性剤を添加することができる。その含有量は、抗原抗体反応の阻害が少ないという観点から、本発明に係る免疫反応測定方法においては、反応液の0.3重量%以下であることが好ましく、さらに0.1重量%以下であることが特に好ましい。
同様に、本発明に係る免疫反応用試薬においては、その含有量は、抗原抗体反応が生じるときの濃度が0.3重量%以下であることが好ましく、さらに0.1重量%以下であることが特に好ましい。
本発明に係る免疫反応測定方法および免疫反応測定用試薬が適用される測定系は特に限定されないが、特に、抗原過剰領域で生じる地帯現象を有する比朧法、比濁法、スライド凝集法などの均一系の測定系が、上述した本発明の効果が期待できる点で好ましい。特に自動測定機器による測定が普及している比朧法、比濁法が、抗原過剰領域で生じる地帯現象の判定に要する工程を省略または簡略化することができる点で特に好ましい。
本発明に係る免疫反応測定方法において、前記抗原−抗体複合体が凝集複合体であることが好ましい。また、工程(B)において、凝集複合体に起因する光学的変化量を測定することにより、前記凝集複合体を検出することが好ましい。光学的変化量が、散乱光強度または透過光量の変化量であることがさらに好ましい。特に、凝集複合体の大きさに鋭敏に反応する散乱光強度の変化量であることが、さらに好ましい。
本発明に係る免疫反応測定方法および免疫反応測定用試薬に対して用いられる試料は、被測定物質である抗原または抗体を含むものであればよく、例えば、尿、血液などの体液が挙げられる。また、試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体は特に限定されず、一般に抗原抗体反応を利用して測定できる物質であればいずれでもよい。例えば、蛋白質、核酸、脂質、細菌、ウィルスおよびハプテンなどが挙げられる。このなかでも、蛋白質が抗原抗体反応を用いた臨床検査上の主たる測定対象であるため好ましい。
蛋白質としては、例えばLH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、hCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)などのホルモンや、各種免疫グロブリンクラスやサブクラス、補体成分、各種感染症のマーカー、CRP、アルブミン、リウマチ因子および血液型抗原などが挙げられる。このなかでも、ヒトアルブミンが特に好ましい。
ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩は、キレート作用を持っており、反応液に存在するCa2+やFe3+などの二価および三価の金属イオンを効率的に捕捉する性質を有する。このため、抗原が分子構造内に金属イオンを保持している場合、この抗原に対して特異的に結合する抗体が、抗原から金属イオンが脱離したときに、当該抗原とも特異的に結合することが好ましい。このようにすると、抗原が、分子構造内に金属イオンを保持し、金属イオンの脱離により分子構造に変化を生じる物質であっても、測定を行うことができる。
また、抗原が分子構造内に金属イオンを保持し、金属イオンの脱離により分子構造に変化を生じる場合、抗原が保持しているものと同じ金属イオンを反応液に添加し、反応液において抗原抗体反応が生じるときに反応液内にこの金属イオンを存在させてもよい。この際、反応液に添加する金属イオンの量は、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩のキレート能、濃度、および抗原が持つ金属イオンの保持能などに基づいて設定すればよい。
本発明に係る免疫反応測定方法および免疫反応測定用試薬に用いられる抗体は特に限定されず、抗原と特異結合するものであれば、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDのいずれのクラスの抗体でもよい。このなかでも、非特異的な反応が少なく、また、比較的市販されているものが多く、入手も容易であるという点から、IgG抗体がより好ましい。また、抗体の由来動物種に関しても、特に限定されないが、比較的入手も容易であり、使用例も多いという点から、ウサギ、ヤギ、マウス由来の抗体が好ましい。
また、特異結合物質としては、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれを用いてもよい。すなわち、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体を、単独あるいは混合して用いてもよいが、永久に同様な抗体を産生できるという観点から、モノクローナル抗体を含むことが好ましい。また、凝集複合体を生成可能なように調製された1種類以上のモノクローナル抗体の混合物であることがより好ましい。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株により産生される。ハイブリドーマ細胞株は、抗体を産生するB細胞と骨髄腫瘍細胞(ミエローマ細胞)とを細胞融合することにより得られた、抗体産生能と強い増殖能とを併せ持つ融合細胞集団より一つの細胞のみを分離し、増殖させて確立したものである。このため、これらが産生する抗体の性状は同じである。また、ハイブリドーマ細胞株は増殖能が強く、凍結保存が可能である。このため、適切な管理をしていれば尽きることがなく、ハイブリドーマ細胞株を培養液あるいは腹腔中で培養し、精製することにより、永久に同じ性状の抗体を得続けることができる。
一方、ポリクローナル抗体は、動物に抗原を投与し、血液中に抗原に結合する抗体を多量に出現させ、この血液の全部あるいは一部を採取し、精製することにより得られる。このため、その性質は動物の個体差、生育環境、状態などに依存し、同一性状の抗体を得続けることが困難である。このように、モノクローナル抗体を使用することにより、常に同じ性状の抗体を使用することが可能となる。このため、試薬としての抗体の供給が安定し、結果として、免疫反応測定方法及び免疫反応測定用試薬による免疫反応測定結果の安定性を増すことができる。
特異結合物質をモノクローナル抗体により構成するために満たすべき要件は、抗原と特異的に結合し、凝集複合体を形成する、ということである。すなわち、抗原が、1種類のモノクローナル抗体に対して複数の結合部位を持つ物質である場合は、1種類のモノクローナル抗体により、凝集複合体を生成させることが可能である。しかし、抗原が、1種類のモノクローナル抗体(第1のモノクローナル抗体)に対して1つの結合部位しか持たない物質である場合は、少なくとも、2種類のモノクローナル抗体を用いることが必要である。第2のモノクローナル抗体の要件としては、抗原の他の部位に結合し、前記第1のモノクローナル抗体と共に、抗原と結合させた場合に凝集複合体を生成できることが必要である。
本発明に係る免疫反応測定方法の一例を以下に示す。
まず、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、後述する反応液を酸性に、好ましくは、反応液のpHを4.0〜6.0に設定するように緩衝剤を含む緩衝液に添加する。
そして、被測定物質である抗原もしくは抗体に対する抗体もしくは抗原を含有する分散液または溶液、および試料(検体)のいずれか一方と上記の緩衝液とを混合し、続いて残りの他方をこれに混合して反応液を調製し、その反応液において生じた免疫反応を測定する。
このとき、反応液中の化合物の濃度は、測定値を向上させる効果、および抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果が認められる範囲であれば任意でよい。好ましくは、前記化合物の濃度は0.1M以下、好ましくは0.01〜0.1M、さらに好ましくは0.01〜0.05Mとする。また、前記化合物は緩衝剤の役割を兼ねていてもよい。
前記特定化合物を添加する方法、前記反応液のpHを酸性に保つために緩衝剤を添加する方法、および前記反応液のpHを調整する方法は上記の方法に限定されない。例えば、被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原を含有する溶液中に、あらかじめ上記要件を満たすように、前記特定化合物および緩衝剤を存在させてもよい。
本発明に係る免疫反応用試薬の調製方法の一例を以下に示す。
被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原と、前記特定化合物とを別々に調製する場合は、それぞれ以下のように調製すればよい。被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原を含有する溶液は、前記特定化合物の効果が得られる限り任意の組成でよい。
上記化合物を含む溶液は、抗原抗体反応時の反応液を酸性に保つために必要な緩衝能が得られるように、反応液のpHが4.0〜6.0となるように調整するのが好ましい。また、反応液中の前記特定化合物の濃度については、測定値を向上させる効果、および抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果が得られる範囲であれば任意でよい。好ましくは、前記特定化合物の濃度が0.1M以下、好ましくは、0.01〜0.1M、さらに好ましくは0.01〜0.05Mとなるように、緩衝剤と前記特定化合物とを混合して得られた混合物に純水を加えて濃度を調整する。上記要件が満たされていれば、前記緩衝剤と前記特定化合物は、それぞれ別々の溶液中に存在してもよい。また、前記特定化合物自体が緩衝剤を兼ねてもよい。
また、被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原を含有する溶液中に、前記特定化合物を存在させてもよい。この場合は、上記で示した要件を満たすように、調製した前記特定化合物を含む溶液で、被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原を含有する溶液を透析またはゲルでろ過し、低分子成分を置換することにより、前記特定化合物を含ませればよい。
以上のように、本発明に係る免疫反応測定方法および免疫反応測定用試薬によれば、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を免疫反応の反応系に存在させ、反応系を酸性にし、抗原抗体の結合による免疫反応の測定値を向上させることができる。さらには、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させることができる。
従来の水溶性高分子を添加する方法では、抗原抗体反応の測定において、測定値を向上させ、良好なS/N比を維持し、安定した測定を行うため、より高濃度あるいは高分子量の水溶性高分子を添加する必要がある。このため、溶液の粘性が増大し、分析操作上の取り扱いが困難になるという問題があった。これに対して、本発明において用いる前記特定化合物は分子量が低いため、溶液の粘性が低く、分析操作上の取り扱いが容易である。
また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和し、被測定物質の高濃度での測定値の落ち幅を軽減したことにより、測定値が高く陽性と判定される領域を広げることが可能となり、測定濃度範囲を広げることができる。
以下に、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。以下の実施例では示さなかったが、抗体をラテックス、金コロイド、磁気微粒子などの微粒子担体に固定化してもよい。また、抗体に酵素、色素、蛍光物質、発光物質などを標識してもよい。
また、本発明において、抗体溶液の緩衝剤およびpHは特に限定されない。例えば、一液系の試薬を構成する場合には、抗体溶液に、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含ませるため、また、反応系のpHを酸性領域に維持するため、前記特定化合物を含む酸性緩衝液で透析すればよい。
また、以下の実施例においては、pHの調整にNaOHを使用したが、KOH、LiOH、NHOH、Ca(OH)またはMg(OH)などの水酸化物を使用してもよい。また、前記特定化合物を含む10種類の緩衝液の調製に、L(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、イタコン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、およびアゼライン酸を使用したが、特定化合物として上述した他の化合物を用いてもよい。
複数の特定化合物を用いる場合のpHの調整について、純水に化合物を溶解させた際のpHが目的とするpHよりアルカリ側の場合はHClなどを、酸性側の場合は上記で示した水酸化物などを利用して行えばよい。また、上記の特定化合物の混合比を調整して行ってもよい。
本実施例では、スライド凝集法、比濁法および比朧法による測定に使用することが可能な抗体溶液、ならびにヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む緩衝液からなる試薬を用いて、免疫反応を測定した。
なお後述する緩衝液などの調製には、Milli−Q SP TOC(Millipore社製)でろ過した純水を使用した。また、特に記載のない塩および緩衝剤などの試薬は、いずれも和光純薬工業(株)製のものを使用した。また、ポリエチレングリコール(PEG)6000としては1級試薬を用い、それ以外のものとしては特級試薬を使用した。
(1)抗体溶液の調製
抗体溶液には、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を用いたものと、3種類のマウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を混合したものとを用意した。
まず、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を用いた抗体溶液を次のように調製した。ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体は、ヒトアルブミンを免疫したウサギより採取した抗血清より、プロテインAカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。カラムに充填したプロテインA固定化ゲルとしては、アマシャム・ファルマシア社製のものを使用した。精製に用いた平衡化緩衝液としては、1.5Mのグリシン、および3.0Mの塩化ナトリウムを含むpH8.9の緩衝液を使用した。また、溶出緩衝液としては、0.1Mのクエン酸を含むpH4.0の緩衝液を使用した。
精製は次のような方法で行った。カラムに充填したゲル容量の5倍の平衡化緩衝液を流してカラムを平衡化した後、カラム全結合容量の10〜20%の抗体を含む抗血清を平衡化緩衝液で容量を2倍に希釈してカラムに流し、血清中の抗体をプロテインAに結合させた。続いて、プロテインAに吸着しない血清成分がカラムより出てこなくなるまで平衡化緩衝液を流し、カラムを洗浄した。
そして、カラムに溶出緩衝液を流し、プロテインAに結合した抗体を溶出させた。溶出した抗体分画を分画分子量1万の透析チューブに入れ、約100倍容量の0.05Mの3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(Dojin社製)(以下、MOPSと表す)、0.15Mの塩化ナトリウム、および0.04重量%のNaNを含むpH7.4の緩衝液で数回透析して、緩衝液成分を置換した。
続いて、抗体濃度を280nmの吸光度測定により推定し、透析で用いたものと同じ緩衝液で調整して抗体濃度を3.0mg/mlとし、抗体溶液とした。
次に、3種類のマウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を混合して用いた抗体溶液を以下のように調製した。
マウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体には、抗体工業技術院生命工学工業技術研究所受託番号FERM BP−7938号の細胞株(以下、7938株と表す)が産生するモノクローナル抗体、ならびにバイオテスト研究所製のFU−301、およびFU−303を用いた。7938株が産生するモノクローナル抗体としては、マウス腹水から、上記と同様のプロテインAカラムクロマトグラフィーで精製して得られたものを用いた。抗体溶液中に各モノクローナル抗体を混合する際には、7938株が産生するモノクローナル抗体を0.0333mg/ml、FU−301を0.0333mg/ml、FU−303を0.0333mg/mlとし、また、抗体溶液中の総モノクローナル抗体の最終濃度が約0.1mg/mlになるように混合した。
なお、上記で調製した各抗体溶液の濃度および混合比は、特にこれに限定されない。また、調製した抗体溶液は室温でも保存できるが、抗体の変性防止の点からは、低温保存がより好ましく、4℃で保存することがより好ましい。
(2)緩衝液の調製
緩衝液には、以下に示す10種類の化合物を用いた。
ヒドロキシル基を有するジカルボン酸としてはL(−)−リンゴ酸またはL(+)−酒石酸を用い、二重結合を有するジカルボン酸としてはイタコン酸を用い、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸としては、マロン酸(n=1)、コハク酸(n=2)、グルタル酸(n=3)、アジピン酸(n=4)、ピメリン酸(n=5)、スベリン酸(n=6)およびアゼライン酸(n=7)を用いた。
L(−)−リンゴ酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、L(−)−リンゴ酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で4重量%になるようにL(−)−リンゴ酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加してpHを4.5に調整し、純水を加え、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
L(+)−酒石酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、L(+)−酒石酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で4重量%になるように、L(+)−酒石酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加してpHを4.5に調整し、純水を加え、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
イタコン酸を含む緩衝液を次のようにして調製した。最終濃度が、イタコン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で4重量%になるようにイタコン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加することによってpHを4.5に調整し、純水を加え、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
マロン酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、マロン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにマロン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加してpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
コハク酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、コハク酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにコハク酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加してpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
グルタル酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、グルタル酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにグルタル酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加することによってpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
アジピン酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、アジピン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにアジピン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加することによってpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
ピメリン酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、ピメリン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにピメリン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加することによってpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
スベリン酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、スベリン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにスベリン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加することによってpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
アゼライン酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、アゼライン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにアゼライン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加してpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。なお、上記で得られた各緩衝液は室温下で保存した。
本実施例では、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む酸性の反応系を用いた本発明の抗原抗体反応に対する効果を、免疫反応測定方法で一般的に使用されている中性反応系の場合と比較した。従来法との比較は、被測定物質としてヒトアルブミンを免疫比朧法で測定することにより行った。
試薬としては、実施例1と同様のL(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、またはイタコン酸を含む各緩衝液と、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液とを混合して得られる試薬を用いた。
また、比較用の中性反応系を形成する緩衝液として、0.05MのMOPS、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用いた。抗体溶液には、上記と同じものを用いた。
試料として、0.04重量%のNaNを含むPBS緩衝液(8g/LのNaCl、0.2g/LのKCl、1.15g/LのNaHPO・12HO、および0.2g/LのKHPOを含む。pH7.4)に、濃度が0、1、5、10、30、50、100または300mg/dlになるように抗原であるヒトアルブミン(和光純薬工業(株)製)を溶解させて得られた抗原溶液を用いた。
なお、抗体溶液および試料(抗原溶液)は使用時まで4℃で保存し、各緩衝液は室温下に保存した。
測定装置には、以下のようなものを使用した。光源には、270Hzで変調した波長680nmの出射出力約15mWの半導体レーザーポインタ(キコー技研(株)製の型番MLXS−D−12−680−35)を用いた。検出器としては、可視赤外精密測光用シリコンフォトダイオード(浜松フォトニクス(株)製の型番S2387−66R)を用いた。セルとしては、厚さ0.1cmの光学ガラス板を貼り合わせて、容量約200μlの正四角柱形状のものを用いた。
光源より0.5cmの位置に、一面が光源と垂直になるようにセルを配置した。検出器は、光源と90°の角度をなす方向でセルより5.5cm離れた位置に配置した。検出器に迷光が入射しないように、検出器とセルとの間に遮光筒を設けた。検出器により検知された光量に依存する電流信号は、電流電圧変換回路(106V/A)およびオペアンプによる増幅回路を経て100倍の電圧信号に増幅される。その後、ロックインアンプ(エヌエフ回路設計ブロック製、型番5610B)を通して位相敏感検波し、GPIB制御によりコンピュータに取り込まれる。
各緩衝液について、各濃度のヒトアルブミン溶液の測定を次のように行った。反応液は、緩衝液178μl、ヒトアルブミン溶液9μlおよび抗体溶液7μlを混合して得た。すなわち、反応液において、抗体の最終濃度は約0.11mg/mlとし、ヒトアルブミンの最終濃度は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度に0.046を乗じたものであった。
まず、セル内に上記容量の緩衝液およびヒトアルブミン溶液を加え、攪拌混合した。続いて、上記容量の抗体溶液を加えて攪拌混合し、反応液を得るとともに抗原抗体反応を生じさせた。散乱光強度の測定は、抗体溶液を加える10秒前から開始し、0.5秒間隔で300秒間継続した。測定値は電圧値として得られた。セルの汚れが測定に与える影響は、各反応の測定前にセル中に純水を入れて測定し、測定値を補正することにより除いた。得られた各時間における測定値の200〜300秒の間の平均値を求め、これを各濃度のヒトアルブミン溶液における測定値とした。測定は室温(約20℃)で行った。
その測定結果を図1に示す。各緩衝液について、300mg/dlまでの各濃度のヒトアルブミン溶液を測定した結果をプロットしたものを図1に示した。縦軸は電圧値を表し、横軸は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度を表す。なお、プロットされた各値は、各緩衝液について得られた各濃度のヒトアルブミン溶液の測定値より、同じ緩衝液でのヒトアルブミンを含まない場合の測定値(0mg/dl)を差し引いたものである。測定電圧値が高い程、検出器に入射した散乱光が多く、反応系の濁度が高く、抗原抗体反応による抗原−抗体複合体が多く形成されたことを示す。
図1より、比較例の緩衝液を用いた場合(図1の×)より、本実施例の各緩衝液をそれぞれ用いた場合(図1の●、○、▲)のほうが、高い測定値が得られることがわかった。また、比較例の緩衝液を用いた場合(×)は、30mg/dlをピークとして抗原過剰領域で生じる地帯現象により、測定値は減少した。
これに対し、0.05MのL(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、およびイタコン酸をそれぞれ用いた緩衝液の場合(図1の●、○、▲)も、30mg/dlをピークとして抗原過剰領域で生じる地帯現象により、測定値は同様の減少傾向を示した。しかし、測定値が向上することにより、より広い抗原濃度範囲において抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定値の減少の影響を受けずに測定できることがわかった。
本実施例の測定結果より、比較例であるMOPSを含む緩衝液の場合(図1の×)、ヒトアルブミン溶液の濃度が50mg/dlまでの範囲において抗原過剰領域で生じる地帯現象の影響を考えることなく測定できた。これに対して、L(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、およびイタコン酸を用いた各緩衝液の場合(図1の●、○、▲)、ヒトアルブミン溶液の濃度が約100mg/dlまでの範囲において抗原過剰領域で生じる地帯現象の影響を考えることなく測定でき、比較例の場合よりも測定可能な濃度範囲が広いことがわかった。
本実施例においても、上述した実施例2の場合と同様にして、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む酸性反応系の抗原抗体反応への効果を、免疫反応測定方法で一般的に使用されている中性反応系の場合と比較して調べた。従来法との比較は、被測定物質としてヒトアルブミンを免疫比朧法で測定することにより行った。
試薬には、実施例1と同様のマロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸またはアゼライン酸をそれぞれ含む各緩衝液と、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液とを組み合わせて得られるものを用いた。また、実施例1と同様のコハク酸を含む緩衝液と、マウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を含む抗体溶液とを組み合わせて得られるものを用いた。
比較例として、中性反応系を形成するための緩衝液には、0.05MのMOPS、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用いた。抗体溶液には、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸を含む各緩衝液と対比する場合は、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用い、コハク酸を含む緩衝液と対比する場合は、マウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
試料として用いた抗原溶液であるヒトアルブミン溶液は、長浜コントロール尿(10g/Lの尿素、10g/LのNaCl、0.5g/Lのクレアチニン、0.2g/Lのアセトンとなるように蒸留水に溶解)に、濃度が0、5、10、30、50、100または300mg/dlになるようにヒトアルブミンを溶解させたものを用いた。なお、抗体溶液および試料(抗原溶液)は使用時まで4℃で保存し、各緩衝液は室温下に保存した。
測定装置には以下のようなものを用いた。この装置は、実施例2と原理的には同じであるが、構成が異なる。光源としては、270Hzで変調した波長785nmの出射出力約20mWの半導体レーザーポインタ(キコー技研(株)製の型番MLXS−D−12−785−70)を用いた。検出器としては、可視赤外精密測光用シリコンフォトダイオード(浜松フォトニクス(株)製の型番S2387−66R)を用いた。セルとしては、厚さ0.1cmの光学ガラス板を貼り合わせて、容量が約600μlの正四角柱形状のものを用いた。
光源より1cmの位置に、一面が光源と垂直になるようにセルを配置した。検出器は、光源と90°の角度をなす方向でセルより1cm離れた位置に配置した。検出器に迷光が入射しないように、検出器とセルとの間に遮光筒を設けた。検出器により検知された光量に依存した電流信号は、電流電圧変換回路(106V/A)を経た後、ロックインアンプ(エヌエフ回路設計ブロック製、型番5610B)を通して位相敏感検波し、GPIB制御によりコンピュータに取り込まれる。
各緩衝液について、各濃度のヒトアルブミン溶液の測定を次のようにして行った。緩衝液534μl、ヒトアルブミン溶液27μlおよび抗体溶液21μlを混合して反応液を得た。すなわち、反応液において、抗体の最終濃度は、測定に使用した抗体溶液の濃度に約0.036を乗じたものとし、ヒトアルブミンの最終濃度は、測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度に約0.046を乗じたものとした。
まず、セル内に上記容量の緩衝液およびヒトアルブミン溶液を加え、攪拌混合した。続いて、上記容量の抗体溶液を加えて攪拌混合し、抗原抗体反応を生じさせた。7分後に、1秒間隔で10秒間散乱光強度を測定した。測定値は電圧値として得られた。セルの汚れが測定に与える影響は、各反応の測定前にセル中に純水を入れて測定し、測定値を補正することにより除いた。上述のようにして得た測定値の加算平均値を求め、これを各濃度のヒトアルブミン溶液における測定値とした。測定は室温(約20℃)で行った。
測定結果を図2および3に示す。図2はマロン酸(●)、グルタル酸(○)、アジピン酸(▲)、ピメリン酸(△)、スベリン酸(■)、アゼライン酸(□)をそれぞれ含む各緩衝液と、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体からなる抗体溶液とを用いて、300mg/dlまでの各濃度のヒトアルブミン溶液を測定した結果をプロットしたものである。縦軸は電圧値を表し、横軸は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度を表している。プロットされた各値は、各緩衝液について得られた各濃度のヒトアルブミン溶液の測定値より、同じ緩衝液でのヒトアルブミンを含まない場合の測定値(0mg/dl)を差し引いたものである。
図2より、比較例の緩衝液(0.05MのMMOPS、5重量%のポリエチレングリコールを含むpH7.4の緩衝液)を用いた場合(図2の×)より、本実施例の各緩衝液を用いた場合(図2の●、○、▲、△、■、□)のほうが、ブランク値(ヒトアルブミン濃度が00mg/dlのとき)を除き、高い測定値が得られることがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象により、測定値はいずれの場合も減少傾向を示した。しかし、実施例3では、実施例2と同様の理由により、比較例よりもより広い抗原濃度範囲において抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定値の減少の影響を受けずに測定できることがわかった。
図3は、コハク酸を含む緩衝液と、マウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を含む抗体溶液とを用いて、300mg/dlまでの各濃度のヒトアルブミン溶液を測定した結果をプロットしたものである(●)。図3より、比較例の緩衝液を用いた場合(×)より、本実施例のコハク酸を含む緩衝液を用いた場合(●)のほうが高い測定値が得られることがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象により、測定値はいずれの場合も減少を示した。この場合も、実施例2と同様の理由により、より広い抗原濃度範囲において抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定値の減少の影響を受けずに測定できることがわかった。
以上のように実施例2および3より、本発明に係る免疫反応測定方法により、抗原抗体反応の測定値が向上することを確認できた。また、これにより抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることを確認できた。
さらに、本発明に係る免疫反応用試薬を用いることにより、抗原抗体反応の測定値が向上することを確認できた。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることを確認できた。
なお、抗体溶液、緩衝液および試料を混合する順序は特に制限されず、混合比率は、必要とする抗原濃度の測定範囲に応じて決定することができた。
また、上記測定では、試薬と試料とを混合することにより、緩衝剤、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物、ならびにポリエチレングリコール6000などの添加剤が混合前に比べて希釈された。しかし、希釈される前の濃度に対する希釈後にの濃度の差が10%程度までであれば、得られる測定結果は、希釈前の濃度で予想された測定結果とは大差がなく、希釈による影響はほとんどなかった。また、希釈による濃度変化を回避するために、混合による希釈を考慮して、混合時に試薬中の各物質の濃度が目的濃度になるように調製することもできた。
ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸がそれぞれ示す、抗原抗体反応に対する効果のpH依存性を、免疫比朧法により調べた。
本実施例では、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸について調べた。ヒドロキシル基を有するジカルボン酸としてはL(−)−リンゴ酸およびL(+)−酒石酸を用い、二重結合を有するジカルボン酸としてはイタコン酸を用いた。被測定物質としてはヒトアルブミンを用いた。試料であるヒトアルブミン溶液には、実施例2と同様のものを用いた。また、抗体溶液には、実施例1と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
ヒドロキシル基を有するジカルボン酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05MのL(−)−リンゴ酸、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.0、4.5および5.0の各緩衝液を調製した。また、0.05MのL(+)−酒石酸、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.0、4.5および5.0の各緩衝液を調製した。
また、二重結合を有するジカルボン酸を用いた場合のpH依存性を調べるため、0.05Mのイタコン酸および4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.0、4.5および5.0の各緩衝液を調製した。
さらに、比較例として、0.05MのMOPS、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用い、抗体溶液には、上記と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
免疫反応の測定は、実施例2と同様の方法により行った。
得られた測定結果を図4〜6に示す。図4はL(−)−リンゴ酸についての結果、図5はL(+)−酒石酸についての結果、また、図6はイタコン酸についての結果をそれぞれプロットしたものである。縦軸は電圧値を表し、横軸は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度で示す。
図4〜6より、pH4.5〜5.0のL(−)−リンゴ酸を含む緩衝液、pH4.0〜5.0のL(+)−酒石酸を含む緩衝液、およびpH4.5〜5.0のイタコン酸を含む緩衝液を用いた場合の方が、比較例の緩衝液を用いた場合(図4〜6の×)よりも高い測定値を示すことがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることがわかった。
以上の結果より、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、およびこれらの塩を含む緩衝液を用いた免疫反応測定法では、これらの化合物のpH特性を考慮して、少なくとも、反応系のpHを4.0〜5.0の範囲に設定することにより、抗原抗体反応の測定値が向上することがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることがわかった。
また、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、およびこれらの塩を用いた免疫反応測定用試薬では、これら化合物のpH特性を考慮することにより、少なくとも、抗原抗体反応が生じるときの反応液のpHが4.0〜5.0の間に設定されるように試薬を調製するのが好ましいことがわかった。
本実施例では、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸が示す抗原抗体反応に対する効果のpH依存性を、免疫比朧法により調べた。上記の直鎖状ジカルボン酸には、マロン酸(n=1)、コハク酸(n=2)、グルタル酸(n=3)、アジピン酸(n=4)、ピメリン酸(n=5)、スベリン酸(n=6)およびアゼライン酸(n=7)を用いた。
試料であるヒトアルブミン溶液には、実施例3と同様のものを用いた。また、抗体溶液には、実施例1と同様のものを用いた。
試薬には、後述するマロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸をそれぞれ含む各緩衝液と、実施例1と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液とを混合したものを用いた。また、後述するコハク酸を含む緩衝液と、実施例1と同様のマウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を含む抗体溶液を混合したものを用いた。
マロン酸を用いた場合のpH依存性を調べるため、0.05Mのマロン酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.0、4.5、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
コハク酸を用いた場合のpH依存性を調べるため、0.05Mのコハク酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.0、4.5、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
グルタル酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05Mのグルタル酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.5、5.0および6.0の各緩衝液を調製した。
アジピン酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05Mのアジピン酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.5、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
ピメリン酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05Mのピメリン酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.5、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
スベリン酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05Mのスベリン酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
アゼライン酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05Mのアゼライン酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
さらに、比較例においては、0.05MのMOPS、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用い、抗体溶液としては、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸を含む各緩衝液と対比する場合は、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用い、コハク酸を含む緩衝液と対比する場合は、マウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。免疫反応の測定は、実施例3と同様の方法により行った。
得られた測定結果を図7〜13に示す。図7はマロン酸についての結果、図8はコハク酸についての結果、また、図9はグルタル酸についての結果、図10はアジピン酸についての結果、図11はピメリン酸についての結果、図12はスベリン酸についての結果、図13はアゼライン酸についての結果をそれぞれプロットしたものである。縦軸は電圧値を表し、横軸はヒトアルブミン溶液の濃度を示す。
図7〜13より、pH4.5〜6.0のマロン酸を含む緩衝液、pH5.0〜6.0のコハク酸を含む緩衝液、pH5.0〜6.0のグルタル酸を含む緩衝液、pH5.0〜6.0のアジピン酸を含む緩衝液、pH5.0〜6.0のピメリン酸を含む緩衝液、pH5.0〜6.0のスベリン酸を含む緩衝液、およびpH5.0〜6.0のアゼライン酸を含む緩衝液を用いた場合のほうが、比較例のMOPSを含む緩衝液を用いた場合よりも高い測定値を示すことがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることがわかった。
以上の結果より、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩を含む緩衝液を用いた免疫反応測定法では、これらの化合物のpH特性を考慮し、少なくとも、反応液のpHを4.5〜6.0に設定することにより、抗原抗体反応の測定値が向上することがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることがわかった。
また、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩を用いた免疫反応測定用試薬では、これら化合物のpH特性を考慮することにより、少なくとも、抗原抗体反応が生じるときの反応液のpHが4.5〜6.0に設定されるように試薬を調製するのが好ましいことがわかった。
以上のように実施例4および5より、抗原抗体反応の測定値を向上させる効果および抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果を保ちながら、本発明の免疫反応測定法では、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される化合物を用いることにより、反応系のpHを4.0〜6.0に設定できることを確認できた。
また、本発明に係る免疫反応測定用試薬においては、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を用いることにより、抗原抗体反応が生じるときのpHが4.0〜6.0の間に設定されるように試薬を調製できることを確認できた。
次に、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物が示す、抗原抗体反応に対する効果の濃度依存性を調べた。
ヒトアルブミン溶液には、実施例3と同様のものを用いた。また、抗体溶液は、実施例1と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
緩衝液には、L(−)−リンゴ酸、イタコン酸、およびコハク酸をそれぞれ用いて、以下に示す方法で調製したものを用いた。
L(−)−リンゴ酸を用いた場合の濃度依存性を調べるために、4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHが5.0で、L(−)−リンゴ酸をそれぞれ0.01、0.02、0.05、0.1および0.2M含む各緩衝液を調製した。
イタコン酸を用いた場合の効果の濃度依存性を調べるために、4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHが5.0で、イタコン酸をそれぞれ0.01、0.02、0.05、0.1、および0.2M含む各緩衝液を調製した。
コハク酸を用いた場合の効果の濃度依存性を調べるために、4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHが5.0で、コハク酸をそれぞれ0.01、0.02、0.05、0.1、および0.2M含む各緩衝液を調製した。さらに、比較例として、0.05MのMOPS、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用いた。また、抗体溶液には、ウサギ抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を用いた。
免疫反応の測定は、実施例3と同様の方法により行った。
得られた測定結果を図14〜16に示す。図14はL(−)−リンゴ酸についての結果、図15はイタコン酸についての結果、また、図16はコハク酸についての結果をプロットしたものである。縦軸は電圧値を表し、横軸はヒトアルブミン溶液の濃度を表す。
図14〜16より、本実施例で調べた濃度範囲では、いずれの場合も、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物の濃度が0.01〜0.1Mの範囲において、比較例のMOPSを含む緩衝液を用いた場合よりも高い測定値を示すことがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることがわかった。
以上の結果より、本発明に係る免疫反応測定法では、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物の濃度を0.1M以下に設定するのが好ましいことがわかった。また、前記化合物により、反応液に緩衝能を持たせる場合は、前記濃度は0.01〜0.1Mに設定するのが好ましいことがわかった。
以上と同様に、本発明に係る免疫反応測定用試薬は、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物の抗原抗体反応が生じるときの濃度が0.1M以下に設定されるように調製されるのが好ましいことがわかった。また、前記化合物により、反応液に緩衝能を持たせる場合は、前記濃度が0.01〜0.1Mに設定されるように試薬を調製するのが好ましいことがわかった。
次に、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される化合物を混合して使用した場合の抗原抗体反応に対する効果について、免疫比朧法により確認した。
被測定物質としてはヒトアルブミンを用いた。ヒトアルブミン溶液の調製は、実施例2と同様の方法により行い、濃度は0、5、10、20、30、50、70、100、200および300mg/dlのものを用意した。抗体溶液には、実施例1と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
緩衝液としては、L(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸をそれぞれ、コハク酸と共に含み、pHを4.5に設定したものを用いた。pHが4.5では、コハク酸は効果を持たず、L(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸による効果を確認し易い。比較例にはコハク酸のみを含む緩衝液を用いた。表1に各緩衝液の組成およびpHを示す。
Figure 2004053489
測定には、分光蛍光光度計(島津製作所(株)製の型番RF−5300PC)を使用した。分光蛍光光度計の試料室に恒温セルホルダ(島津製作所(株)製の型番206−15440)を配置し、恒温水槽(TAITEC(株)製の商品名COOLNIT BATH EL−15)に接続した。温度を25℃に保った水を循環させて、測定時の温度を一定に保つようにした。分光蛍光光度計の測定条件は、励起、蛍光波長を共に670nmとし、蛍光側、励起側共にバンド幅を3nmに、感度は高感度に設定した。
測定は次のように行った。2.87mlの緩衝液と0.1ml抗体溶液を攪拌混合した後、これに0.03mlのヒトアルブミン溶液を加え攪拌混合し、反応液を得た。すなわち、反応液における抗体およびヒトアルブミンの最終濃度は、抗体については約0.10mg/mlとし、ヒトアルブミンについては、測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度に0.01を乗じたものとした。これを蛍光分析用の石英セルに移すとともに分光蛍光光度計に設置し、T型熱電対(RSコンポーネンツ社の型番219−4696)をセル内に浸漬した。そして、ヒトアルブミンを混合後2分間経過した時点より、タイムコース測定で、0.04秒間隔で300秒間測定した。
測定中のセル内の温度は、T型熱電対をデジタルマルチサーモメータ(アドバンテスト(株)製の型番TR2114)に接続してモニタした。セルの汚れが測定に与える影響は、各反応の測定前にセル中に純水を入れて測定し、補正することにより除いた。測定により得られた200〜300秒の間の各測定値の平均値を求め、これを各濃度のヒトアルブミン溶液に対する測定値とした。各緩衝液、抗体溶液、および各濃度のヒトアルブミン溶液を混合した反応液のpHへの影響を調べるために、測定終了後、pH計で、混合液のpHの測定を行った。
その結果、各測定に使用した各緩衝液、抗体溶液、各濃度のヒトアルブミン溶液からなる混合液のpHは、いずれも緩衝液のpHと同一であった。熱電対で測定された各測定中のセル内の温度は25.5±1℃に保たれた。
測定結果を図17に示す。各緩衝液について、300mg/dlまでの各ヒトアルブミン溶液を加えて測定した結果をプロットしたものを図17に示した。縦軸は散乱光強度を示し、横軸は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度を示す。
本実施例のL(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸を含む緩衝液を用いた場合の方が、比較例であるコハク酸のみからなる緩衝液を用いた場合よりも、測定値が向上した。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和された。
以上の結果により、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される化合物を混合して使用した場合でも抗原抗体反応に対して単体で使用した場合と同様の効果を示すことが確認された。
次に、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される化合物を混合して使用した場合に、抗原抗体反応に対する効果を示すpHの範囲について、協働作用による拡大効果が見られるかどうかを、免疫比朧法により調べた。
被測定物質としてはヒトアルブミンを用いた。ヒトアルブミン溶液は、実施例3と同様のものを用いた。また、抗体溶液は、実施例1と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
緩衝液としては、0.025MのL(+)−酒石酸、0.025Mのコハク酸、ならびに4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH4.0、4.5、5.0、5.5、および6.0の各緩衝液を用いた。L(+)−酒石酸、コハク酸をそれぞれ単独で用いた場合には、実施例4および5で調べた範囲では、L(+)−酒石酸の有効pHは4.0〜5.0、コハク酸の有効pHは5.0〜6.0であった。
比較例として、0.05MのMOPS、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用い、抗体溶液としては、上記と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
免疫反応の測定は、実施例3と同様の方法により行った。
得られた測定結果を図18に示す。縦軸は電圧値を示し、横軸は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度を示す。
L(+)−酒石酸とコハク酸とを含む緩衝液を用いた場合では、抗原抗体反応に対する有効pHが4.5〜6.0となり、それぞれを単独で含む緩衝液を用いた場合に比べて、有効pHの範囲が拡大した。
以上より、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される各化合物の特性を組み合わせることにより、有効pHの範囲を拡大できることが確認された。
産業上の利用の可能性
以上のように、本発明によれば、容易に測定値の向上が可能な免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬を提供することができる。さらに、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和することが可能な免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬を提供することができる。
本発明は、試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する免疫反応測定方法、およびそれに用いる免疫反応測定用試薬に関する。
医療分野では、様々な疾患の診断および病状の経過を調べるために、ヒトの体液中に存在する各疾患に特徴的な蛋白質の含有量を調べることが広く利用されている。
これらの蛋白質の含有量測定としては、主として、特異性の高い抗原抗体反応を利用した免疫反応測定方法が広く用いられており、現在では、免疫反応測定方法にも様々な原理を利用したものが開発され、利用されている。
それらの中でも、比朧法、比濁法、およびスライド凝集法などの抗原と抗体の反応により生じる凝集複合体を検出する測定方法がよく知られている。これらの方法は、溶液中に抗原および抗体が一様に分散された状態で行うものであるため、均一系の免疫反応測定方法と総称される。
そして、これらの反応では凝集複合体が生成し、反応液が抗原および抗体量に依存した濁りを生じる。比朧法および比濁法はこの濁りを光学的に測定する方法であり、比朧法は反応系で散乱された光量をもとに濁りを測定し、比濁法は反応系での散乱により減少した透過光量をもとに濁りを測定する。一般的に、両方法の測定対象としては、同一の反応液(反応系)を用いることができ、いずれか一方の方法で測定できる対象は残りの一方の方法でも測定することができる。
また、スライド凝集法は、凝集複合体の生成により生じた濁りを、スライドグラス上などで目視などにより判定する方法であり、比朧法および比濁法と同一の反応系を用いることができる。
上記のような従来の均一系の免疫反応測定方法では、抗原抗体反応を促進させて微量成分を高感度に測定するために、様々な添加剤を用いることが試みられている。よく知られている例としては、反応系にポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、ポリビニルピロリドンまたはポリ塩化ビニルなどの水溶性高分子を混在させ、抗原抗体反応による凝集複合体の形成を促進させ、反応時間および測定感度を向上させる方法が挙げられる。
これらの水溶性高分子の中でも、ポリエチレングリコールが比較的低濃度でも効果が高いことが知られており、平均分子量が6000のポリエチレングリコールを2〜6重量%の濃度で使用する方法が広く用いられている。特に4重量%濃度が、非特異的な混濁が少なく、効果が高いとされている。
水溶性高分子による抗原抗体反応の促進効果は、一般にその分子量が大きく、用いる水溶液の濃度が高いほど大きい傾向にある。抗原抗体反応の測定を考えた場合、抗原抗体反応の程度すなわち抗原の濃度に依存した信号強度が高い程、良好なS/N比を維持することができ、安定した測定を行うことができる。しかし、抗原抗体反応の更なる促進によって、上記効果を得ようとした場合、従来の水溶性高分子の添加では、より高濃度あるいは、高分子量の水溶性高分子を添加する必要がある。しかし、水溶性高分子を溶解した溶液の粘性が増大するため、その分析操作上の取り扱いが困難になるという問題があった。
また、均一系の免疫反応測定方法においては、地帯現象と呼ばれる現象が一般に知られている。地帯現象とは、最大の凝集複合体を形成する当量域よりも、抗原と抗体のいずれかが過剰に存在する場合に、凝集複合体が生じ難くなる現象のことをいう。多価抗体と2価以上の抗原との間の結合反応に関しては、ハイデルベルガー(Hidelberger)らの格子説が有名であり、例えば、非特許文献1および非特許文献2にその詳細が記載されている。
実際の均一系の免疫反応測定においては、抗体を用いて抗原濃度を測定する場合が多い。また、抗原濃度が低い場合よりも高い場合に、測定値が重要な意味を持つ場合が多い。そのため、抗原過剰による地帯現象が問題となる場合が多い。地帯以外の領域では、抗体と抗原が交互に結合した複合体よりなる巨大な分子鎖が生じ、その量や大きさは、抗体濃度を一定とすると、抗原濃度に依存して増加する。この分子鎖の量や大きさを光学的な変化量として測定することにより、抗原濃度を定量的に捉えることができる。また、抗原−抗体複合体は、抗体および抗原の濃度によっては、溶液中の濁りや凝集物として肉眼でも十分に確認が可能なものとなるため、目視などにより定性的な判定を行うこともできる。
しかし、抗原過剰域では抗原が抗体に比べて過剰に存在するため、結合部位が抗原により飽和された抗体の量が増加する。このため、先に述べたような分子鎖が生じ難くなり、この場合の反応結果を、抗原が低濃度の場合の反応結果と区別しにくくなる。したがって、抗原濃度に依存した正しい定量や判定を行うことができず、また、これを回避するためには、測定濃度範囲が制限されるという問題があった。
この地帯現象を改善するための方法としては、以下のような方法が提案されている。
例えば特許文献1には、pH6.0〜8.0の中性条件下で塩化ナトリウム濃度を20〜250g/Lとし、免疫反応を抑制して被測定物質を希釈なしで測定する方法が開示されており、特許文献2には、pH3.5〜5.5の酸性条件下、または、pH9.0〜12.0のアルカリ性条件下で、塩化ナトリウム濃度を10〜250g/Lとし、免疫反応を抑制して被測定物質を希釈なしで測定する方法が開示されている。そして、特許文献3には、例えば、pH7.4の中性条件下で、塩化ナトリウム濃度を0.05〜0.08Mとし、不溶性担体粒子に免疫反応の一方である抗体または抗原を結合させた免疫学的凝集反応において、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、コハク酸およびこれらの塩ならびにエステルよりなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸を、反応系に1〜20重量%で含有させる方法が提案されている。
しかし、これらの公報に記載された方法では、いずれの場合も地帯領域以外の測定域において、免疫反応の測定値を低下させてしまうという問題があった。
ウイリアム イー ポール(William E.Paul)編、「ファンダメンタルイムノロジー(Fundamental Immunology)」、1984年 多田富雄監訳、「基礎免疫学」、1987年、p.714−716 特開平09−08984号公報 特開平10−332694号公報 特開平11−344494号公報
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑み、容易に測定値の向上が可能な免疫反応測定方法、およびそれに用いる免疫反応測定用試薬を提供することを目的とする。また、本発明は、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和することができる免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬を提供することを目的とする。
本発明は、試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する免疫反応測定方法であって、
(A)ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原とを、前記試料と混合し、酸性の反応液を得る工程、ならびに(B)前記反応液において前記被測定物質と前記特異結合物質との抗原抗体反応により生じた抗原−抗体複合体を検出する工程を含むことを特徴とする免疫反応測定方法に関する。
前記ヒドロキシル基を有するジカルボン酸がリンゴ酸および酒石酸であり、前記二重結合を有するジカルボン酸がイタコン酸、フマル酸およびマレイン酸であるのが好ましい。
前記直鎖状ジカルボン酸のメチレン鎖の長さがn=1〜7の整数であるのが好ましい。
前記反応液にさらに緩衝剤を添加するのが好ましい。
前記反応液のpHを4.0〜6.0に設定するのが好ましい。
前記反応液のpHを4.5〜6.0に設定するのが好ましい。
また、前記反応液のpHを4.5〜5.0に設定してもよい。
また、前記反応液のpHを5.0〜6.0に設定してもよい。
前記反応液中の前記特定化合物の濃度は、0.1M以下に設定されるのが好ましい。
また、前記反応液中の前記特定化合物の濃度は、0.01〜0.1Mの範囲に設定しても良い。
前記反応液中の前記特定化合物の濃度は、0.01〜0.05Mの範囲に設定されても良い。
前記反応液がポリエチレングリコールを2〜6重量%含むのが好ましい。
前記抗原−抗体複合体が凝集複合体であるのが好ましい。
前記工程(B)において、前記凝集複合体に起因する光学的変化量を測定することにより前記凝集複合体を検出するのが好ましい。
前記光学的変化量が散乱光強度の変化量であるのが好ましい。
前記特異結合物質がモノクローナル抗体を含む抗体であることが好ましい。
また、前記特異結合物質は、凝集複合体を生成可能なように調製された1種類以上のモノクローナル抗体の混合物であることが好ましい。
前記抗原がヒトアルブミンであるのが好ましい。
さらに本発明は、上述のような試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する免疫反応測定方法に用いる免疫反応測定用試薬であって、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(特定化合物)と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原とを含み、前記被測定物質と前記特異結合物質との抗原抗体反応が生じるときの反応液のpHが酸性になるように調製されたことを特徴とする免疫反応測定用試薬に関する。
この場合も、前記ヒドロキシル基を有するジカルボン酸がリンゴ酸および酒石酸であり、前記二重結合を有するジカルボン酸がイタコン酸、フマル酸およびマレイン酸であるのが好ましい。
前記直鎖状ジカルボン酸のメチレン鎖の長さがn=1〜7の整数であるのが好ましい。
前記免疫反応測定用試薬は、さらに緩衝剤を含むのが好ましい。
前記免疫反応測定用試薬は、前記反応液のpHが4.0〜6.0となるように調製されていることが好ましい。このpHは、4.5〜6.0、4.5〜5.0または5.0〜6.0であってもよい。
前記免疫反応測定用試薬は、前記特定化合物の濃度が、前記反応液において0.1M以下になるように調製されていることが好ましい。
また、前記免疫反応測定用試薬は、前記特定化合物の濃度が、前記反応液において0.01〜0.1Mの範囲になるように調製されていることが好ましい。
さらに、前記免疫反応測定用試薬は、前記特定化合物の濃度が、前記反応液において0.01〜0.05Mの範囲になるように調製されていることが好ましい。
前記免疫反応測定用試薬は、さらにポリエチレングリコールを含み、抗原抗体反応が生じるときの前記ポリエチレングリコールの濃度が2〜6重量%であるのが好ましい。
前記特異結合物質がモノクローナル抗体を含む抗体であることが好ましい。
前記特異結合物質が凝集複合体を生成可能なように調製された1種類以上のモノクローナル抗体の混合物であることが好ましい。
前記抗原がヒトアルブミンであるのが好ましい。
本発明は、容易に測定値の向上が可能な免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬に関する。特に本発明は、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和することができる免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬に関する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、抗原抗体反応が起こる際に、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(特定化合物)を反応系と混合し、前記反応液を酸性に保つことにより、抗原抗体の結合による免疫反応の測定値を向上させることができることを見出した。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させることができることを見出した。
上記効果については、以下のような仮説が考えられる。免疫比濁、比朧法などの均一系の免疫反応測定では、抗原抗体反応により凝集複合体が生じる。この生成には、特異的な抗原抗体反応による一時的な凝集と、凝集複合体同士の二次的な凝集が含まれている。上記特定化合物は主として、凝集複合体同士の二次的な凝集に作用していると考えられる。凝集複合体を一種のコロイドとみなすと、その凝集はイオンの作用により促進されることが一般的に知られている。多価カルボン酸イオンはコロイドの凝集作用の非常に強いイオンであるため、複合体同士の二次的な凝集を促進する。しかし、多価カルボン酸はイオン強度が高いため、一方で抗原抗体反応を若干抑制する作用を示す。
酸性条件下では、上記特定化合物の持つカルボキシル基の解離率が低下するため、イオン強度が下がり、抗原抗体反応への抑制作用が低下し、凝集複合体の生成が増し、コロイドの凝集作用による凝集複合体同士の二次的な凝集が顕著になる。そして、凝集複合体生成反応が起こりやすくなり、測定値が向上する。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和される。
本発明に係る免疫反応測定方法は、試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する免疫反応測定方法であって、(A)ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原とを、前記試料に添加し、酸性の反応液を得る工程、ならびに(B)前記反応液において前記被測定物質と前記特異結合物質との抗原抗体反応により生じた抗原−抗体複合体を検出する工程を含むことを特徴とする。
ここで、前記反応液(反応系)は、上記の酸とそれらの塩との両方を含んでいてもよい。
前記特定化合物によって反応液に緩衝能が与えられ、反応液が酸性に設定される。このようにすると、反応液を酸性にするために他の緩衝剤をさらに添加する必要がなく、かつ上記免疫反応の測定値を向上させる効果を効率的に発揮させることができる。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和する効果も、効率的に発揮させることができる。もちろん、前記反応液にさらに緩衝剤を添加してもよい。
また、本発明は、上記した試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する免疫反応測定方法に用いる試薬にも関する。すなわち、本発明は、前記特定化合物と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原とを含み、前記被測定物質と前記特異結合物質との抗原抗体反応が生じるときの反応液が酸性になるように調製されたことを特徴とする免疫反応測定用試薬に関する。前記試薬は、上記の酸とそれらの塩との両方を含んでいてもよい。
前記試薬は、前記特定化合物により緩衝能が与えられ、被測定物質と特異結合物質との抗原抗体反応が生じるときの反応液が酸性になるように調製される。このようにすると、反応液を酸性にするために他の緩衝剤をさらに添加する必要がなく、かつ上記免疫反応の測定値を向上させる効果を効率的に発揮させることができる。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和する効果を効率的に発揮させることができる。もっとも、前記試薬はさらに緩衝剤を含んでいてもよい。
前記反応液に含まれる、前記特定化合物の濃度は、前記反応液に十分な緩衝能が得られるようにするため、0.01M以上であることが好ましい。また、測定値を向上させる効果、および抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和する効果を効率的に発揮させるという観点からは、0.1M以下であるのが好ましい。これら要件を両立させるには、0.01〜0.1M、さらには0.01〜0.05Mであるのが好ましい。
したがって、本発明に係る免疫反応用試薬を用いた場合も、上記理由により、前記反応液に含まれる前記特定化合物の濃度が、0.1M以下、好ましくは0.01〜0.1M、さらに好ましくは0.01〜0.05Mとなるのが良い。前記特定化合物は、水に対して緩衝能を示す濃度で溶解することができ、免疫反応の測定値を向上させる効果が大きい。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和する効果が大きい。
ここで、本発明に係る免疫反応測定方法および免疫反応用試薬で用いられるヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩としては、例えば、L(−)−リンゴ酸、D−リンゴ酸、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、L(−)−リンゴ酸ナトリウム、L(+)−酒石酸、DL−酒石酸、D(−)−酒石酸、メソ酒石酸一水和物、(+)酒石酸カリウム−水(2/1)、(+)酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、(+)酒石酸アンモニウム、(+)酒石酸水素カリウム、(+)酒石酸水素ナトリウム一水和物、(+)酒石酸ナトリウム二水和物、イタコン酸、イタコン酸無水物、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸第一鉄、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、マロン酸、マロン酸ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、マロン酸タリウム、マロン酸二タリウム、コハク酸、コハク酸アンモニウム、コハク酸二ナトリウム、グルタル酸、アジピン酸、アジピン酸アンモニウム、アジピン酸二アンモニウム、アジピン酸二カリウム、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸などが挙げられ、これらを単独または組み合わせて使用することができる。
前記ヒドロキシル基を有するジカルボン酸としては、例えば、リンゴ酸および酒石酸などが好ましい。このなかでも、抗原抗体の結合による免疫反応の測定値の向上効果と、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定の緩和効果とが、より広いpH範囲で得られるという点から、酒石酸が特に好ましい。
前記二重結合を有するジカルボン酸としては、例えば、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸などが好ましい。このなかでも、溶解度がより高く、反応液のpHを容易に安定させることができるという点から、イタコン酸およびマレイン酸が好ましい。さらに、抗原抗体の結合による免疫反応の測定値を向上させる効果と、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果が大きいという点から、イタコン酸が特に好ましい。
前記化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸としては、メチレン鎖の長さがn=1〜7の整数で表されるものが好ましい。具体的には、それぞれ慣用名で、マロン酸(n=1)、コハク酸(n=2)、グルタル酸(n=3)、アジピン酸(n=4)、ピメリン酸(n=5)、スベリン酸(n=6)およびアゼライン酸(n=7)などが好ましい。このなかでも、抗原抗体の結合による免疫反応の測定値を向上させる効果と、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果とが、より広い範囲のpHで得られるという点から、マロン酸が特に好ましい。
緩衝剤としては、当該分野で公知のものを用いることができ、例えば、リン酸二水素一ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムなどを含むリン酸系の緩衝剤、酢酸ナトリウム、カコジル酸ナトリウム、ならびに2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸などが挙げられる。
この場合、前記反応液に含まれるべき緩衝剤の量は、用いる緩衝剤の種類、被測定対象物を含む試料(検体)の量、および反応系に対する被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原の供給方法などに応じて、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜調整すればよい。
本発明の免疫反応測定方法においては、前記反応液のpHを4.0〜6.0に設定するのが好ましい。このときに前記特定化合物による免疫反応の測定値を向上させる効果が大きい。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果が大きい。さらに、前記反応液のpHを4.5〜6.0に設定するのがより好ましい。前記反応液のpHを4.5〜5.0に設定してもよく、5.0〜6.0に設定してもよい。
また、本発明に係る免疫反応用試薬は、抗原抗体反応が生じるときの反応液と混合された場合に前記反応液のpHが4.0〜6.0、さらには4.5〜5.0または5.0〜6.0に設定されるように、調製されていることが好ましい。
また、本発明に係る免疫反応測定方法における反応液および免疫反応用試薬には、用途などに応じて、本発明の効果を損なわない範囲であれば、当該分野で公知である他の任意の成分を添加することができる。例えば、比朧法、比濁法、スライド凝集法などの均一系の免疫反応測定法に適用する場合には、前記反応液および免疫反応用試薬に、ポリエチレングリコール(PEG)を添加することができる。
その含有量は、非特異的凝集が少なく、測定感度向上の効果が高いという観点から、本発明の免疫反応測定方法においては、反応液の2〜6重量%であることが好ましく、4重量%であることがさらに好ましい。同様に、本発明の免疫反応用試薬においては、抗原抗体反応が生じるときの濃度が2〜6重量%であることが好ましく、4重量%であることがさらに好ましい。
また、抗原または抗体の自己凝集による非特異的混濁を低減するために、前記反応液および免疫反応用試薬に、トゥイーン20、オクチルグルコシド、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、スクロースモノラウレートまたはCHAPSなどの界面活性剤を添加することができる。その含有量は、抗原抗体反応の阻害が少ないという観点から、本発明に係る免疫反応測定方法においては、反応液の0.3重量%以下であることが好ましく、さらに0.1重量%以下であることが特に好ましい。
同様に、本発明に係る免疫反応用試薬においては、その含有量は、抗原抗体反応が生じるときの濃度が0.3重量%以下であることが好ましく、さらに0.1重量%以下であることが特に好ましい。
本発明に係る免疫反応測定方法および免疫反応測定用試薬が適用される測定系は特に限定されないが、特に、抗原過剰領域で生じる地帯現象を有する比朧法、比濁法、スライド凝集法などの均一系の測定系が、上述した本発明の効果が期待できる点で好ましい。特に自動測定機器による測定が普及している比朧法、比濁法が、抗原過剰領域で生じる地帯現象の判定に要する工程を省略または簡略化することができる点で特に好ましい。
本発明に係る免疫反応測定方法において、前記抗原−抗体複合体が凝集複合体であることが好ましい。また、工程(B)において、凝集複合体に起因する光学的変化量を測定することにより、前記凝集複合体を検出することが好ましい。光学的変化量が、散乱光強度または透過光量の変化量であることがさらに好ましい。特に、凝集複合体の大きさに鋭敏に反応する散乱光強度の変化量であることが、さらに好ましい。
本発明に係る免疫反応測定方法および免疫反応測定用試薬に対して用いられる試料は、被測定物質である抗原または抗体を含むものであればよく、例えば、尿、血液などの体液が挙げられる。また、試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体は特に限定されず、一般に抗原抗体反応を利用して測定できる物質であればいずれでもよい。例えば、蛋白質、核酸、脂質、細菌、ウィルスおよびハプテンなどが挙げられる。このなかでも、蛋白質が抗原抗体反応を用いた臨床検査上の主たる測定対象であるため好ましい。
蛋白質としては、例えばLH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、hCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)などのホルモンや、各種免疫グロブリンクラスやサブクラス、補体成分、各種感染症のマーカー、CRP、アルブミン、リウマチ因子および血液型抗原などが挙げられる。このなかでも、ヒトアルブミンが特に好ましい。
ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩は、キレート作用を持っており、反応液に存在するCa2+やFe3+などの二価および三価の金属イオンを効率的に捕捉する性質を有する。このため、抗原が分子構造内に金属イオンを保持している場合、この抗原に対して特異的に結合する抗体が、抗原から金属イオンが脱離したときに、当該抗原とも特異的に結合することが好ましい。このようにすると、抗原が、分子構造内に金属イオンを保持し、金属イオンの脱離により分子構造に変化を生じる物質であっても、測定を行うことができる。
また、抗原が分子構造内に金属イオンを保持し、金属イオンの脱離により分子構造に変化を生じる場合、抗原が保持しているものと同じ金属イオンを反応液に添加し、反応液において抗原抗体反応が生じるときに反応液内にこの金属イオンを存在させてもよい。この際、反応液に添加する金属イオンの量は、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩のキレート能、濃度、および抗原が持つ金属イオンの保持能などに基づいて設定すればよい。
本発明に係る免疫反応測定方法および免疫反応測定用試薬に用いられる抗体は特に限定されず、抗原と特異結合するものであれば、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDのいずれのクラスの抗体でもよい。このなかでも、非特異的な反応が少なく、また、比較的市販されているものが多く、入手も容易であるという点から、IgG抗体がより好ましい。また、抗体の由来動物種に関しても、特に限定されないが、比較的入手も容易であり、使用例も多いという点から、ウサギ、ヤギ、マウス由来の抗体が好ましい。
また、特異結合物質としては、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれを用いてもよい。すなわち、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体を、単独あるいは混合して用いてもよいが、永久に同様な抗体を産生できるという観点から、モノクローナル抗体を含むことが好ましい。また、凝集複合体を生成可能なように調製された1種類以上のモノクローナル抗体の混合物であることがより好ましい。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株により産生される。ハイブリドーマ細胞株は、抗体を産生するB細胞と骨髄腫瘍細胞(ミエローマ細胞)とを細胞融合することにより得られた、抗体産生能と強い増殖能とを併せ持つ融合細胞集団より一つの細胞のみを分離し、増殖させて確立したものである。このため、これらが産生する抗体の性状は同じである。また、ハイブリドーマ細胞株は増殖能が強く、凍結保存が可能である。このため、適切な管理をしていれば尽きることがなく、ハイブリドーマ細胞株を培養液あるいは腹腔中で培養し、精製することにより、永久に同じ性状の抗体を得続けることができる。
一方、ポリクローナル抗体は、動物に抗原を投与し、血液中に抗原に結合する抗体を多量に出現させ、この血液の全部あるいは一部を採取し、精製することにより得られる。このため、その性質は動物の個体差、生育環境、状態などに依存し、同一性状の抗体を得続けることが困難である。このように、モノクローナル抗体を使用することにより、常に同じ性状の抗体を使用することが可能となる。このため、試薬としての抗体の供給が安定し、結果として、免疫反応測定方法及び免疫反応測定用試薬による免疫反応測定結果の安定性を増すことができる。
特異結合物質をモノクローナル抗体により構成するために満たすべき要件は、抗原と特異的に結合し、凝集複合体を形成する、ということである。すなわち、抗原が、1種類のモノクローナル抗体に対して複数の結合部位を持つ物質である場合は、1種類のモノクローナル抗体により、凝集複合体を生成させることが可能である。しかし、抗原が、1種類のモノクローナル抗体(第1のモノクローナル抗体)に対して1つの結合部位しか持たない物質である場合は、少なくとも、2種類のモノクローナル抗体を用いることが必要である。第2のモノクローナル抗体の要件としては、抗原の他の部位に結合し、前記第1のモノクローナル抗体と共に、抗原と結合させた場合に凝集複合体を生成できることが必要である。
本発明に係る免疫反応測定方法の一例を以下に示す。
まず、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、後述する反応液を酸性に、好ましくは、反応液のpHを4.0〜6.0に設定するように緩衝剤を含む緩衝液に添加する。
そして、被測定物質である抗原もしくは抗体に対する抗体もしくは抗原を含有する分散液または溶液、および試料(検体)のいずれか一方と上記の緩衝液とを混合し、続いて残りの他方をこれに混合して反応液を調製し、その反応液において生じた免疫反応を測定する。
このとき、反応液中の化合物の濃度は、測定値を向上させる効果、および抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果が認められる範囲であれば任意でよい。好ましくは、前記化合物の濃度は0.1M以下、好ましくは0.01〜0.1M、さらに好ましくは0.01〜0.05Mとする。また、前記化合物は緩衝剤の役割を兼ねていてもよい。
前記特定化合物を添加する方法、前記反応液のpHを酸性に保つために緩衝剤を添加する方法、および前記反応液のpHを調整する方法は上記の方法に限定されない。例えば、被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原を含有する溶液中に、あらかじめ上記要件を満たすように、前記特定化合物および緩衝剤を存在させてもよい。
本発明に係る免疫反応用試薬の調製方法の一例を以下に示す。
被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原と、前記特定化合物とを別々に調製する場合は、それぞれ以下のように調製すればよい。被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原を含有する溶液は、前記特定化合物の効果が得られる限り任意の組成でよい。
上記化合物を含む溶液は、抗原抗体反応時の反応液を酸性に保つために必要な緩衝能が得られるように、反応液のpHが4.0〜6.0となるように調整するのが好ましい。また、反応液中の前記特定化合物の濃度については、測定値を向上させる効果、および抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果が得られる範囲であれば任意でよい。好ましくは、前記特定化合物の濃度が0.1M以下、好ましくは、0.01〜0.1M、さらに好ましくは0.01〜0.05Mとなるように、緩衝剤と前記特定化合物とを混合して得られた混合物に純水を加えて濃度を調整する。上記要件が満たされていれば、前記緩衝剤と前記特定化合物は、それぞれ別々の溶液中に存在してもよい。また、前記特定化合物自体が緩衝剤を兼ねてもよい。
また、被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原を含有する溶液中に、前記特定化合物を存在させてもよい。この場合は、上記で示した要件を満たすように、調製した前記特定化合物を含む溶液で、被測定物質である抗原または抗体に対する抗体または抗原を含有する溶液を透析またはゲルでろ過し、低分子成分を置換することにより、前記特定化合物を含ませればよい。
以上のように、本発明に係る免疫反応測定方法および免疫反応測定用試薬によれば、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を免疫反応の反応系に存在させ、反応系を酸性にし、抗原抗体の結合による免疫反応の測定値を向上させることができる。さらには、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させることができる。
従来の水溶性高分子を添加する方法では、抗原抗体反応の測定において、測定値を向上させ、良好なS/N比を維持し、安定した測定を行うため、より高濃度あるいは高分子量の水溶性高分子を添加する必要がある。このため、溶液の粘性が増大し、分析操作上の取り扱いが困難になるという問題があった。これに対して、本発明において用いる前記特定化合物は分子量が低いため、溶液の粘性が低く、分析操作上の取り扱いが容易である。
また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和し、被測定物質の高濃度での測定値の落ち幅を軽減したことにより、測定値が高く陽性と判定される領域を広げることが可能となり、測定濃度範囲を広げることができる。
以下に、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。以下の実施例では示さなかったが、抗体をラテックス、金コロイド、磁気微粒子などの微粒子担体に固定化してもよい。また、抗体に酵素、色素、蛍光物質、発光物質などを標識してもよい。
また、本発明において、抗体溶液の緩衝剤およびpHは特に限定されない。例えば、一液系の試薬を構成する場合には、抗体溶液に、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含ませるため、また、反応系のpHを酸性領域に維持するため、前記特定化合物を含む酸性緩衝液で透析すればよい。
また、以下の実施例においては、pHの調整にNaOHを使用したが、KOH、LiOH、NH4OH、Ca(OH)2またはMg(OH)2などの水酸化物を使用してもよい。また、前記特定化合物を含む10種類の緩衝液の調製に、L(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、イタコン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、およびアゼライン酸を使用したが、特定化合物として上述した他の化合物を用いてもよい。
複数の特定化合物を用いる場合のpHの調整について、純水に化合物を溶解させた際のpHが目的とするpHよりアルカリ側の場合はHClなどを、酸性側の場合は上記で示した水酸化物などを利用して行えばよい。また、上記の特定化合物の混合比を調整して行ってもよい。
《実施例1》
本実施例では、スライド凝集法、比濁法および比朧法による測定に使用することが可能な抗体溶液、ならびにヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む緩衝液からなる試薬を用いて、免疫反応を測定した。
なお後述する緩衝液などの調製には、Milli−Q SP TOC(Millipore社製)でろ過した純水を使用した。また、特に記載のない塩および緩衝剤などの試薬は、いずれも和光純薬工業(株)製のものを使用した。また、ポリエチレングリコール(PEG)6000としては1級試薬を用い、それ以外のものとしては特級試薬を使用した。
(1)抗体溶液の調製
抗体溶液には、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を用いたものと、3種類のマウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を混合したものとを用意した。
まず、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を用いた抗体溶液を次のように調製した。ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体は、ヒトアルブミンを免疫したウサギより採取した抗血清より、プロテインAカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。カラムに充填したプロテインA固定化ゲルとしては、アマシャム・ファルマシア社製のものを使用した。精製に用いた平衡化緩衝液としては、1.5Mのグリシン、および3.0Mの塩化ナトリウムを含むpH8.9の緩衝液を使用した。また、溶出緩衝液としては、0.1Mのクエン酸を含むpH4.0の緩衝液を使用した。
精製は次のような方法で行った。カラムに充填したゲル容量の5倍の平衡化緩衝液を流してカラムを平衡化した後、カラム全結合容量の10〜20%の抗体を含む抗血清を平衡化緩衝液で容量を2倍に希釈してカラムに流し、血清中の抗体をプロテインAに結合させた。続いて、プロテインAに吸着しない血清成分がカラムより出てこなくなるまで平衡化緩衝液を流し、カラムを洗浄した。
そして、カラムに溶出緩衝液を流し、プロテインAに結合した抗体を溶出させた。溶出した抗体分画を分画分子量1万の透析チューブに入れ、約100倍容量の0.05Mの3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(Dojin社製)(以下、MOPSと表す)、0.15Mの塩化ナトリウム、および0.04重量%のNaN3を含むpH7.4の緩衝液で数回透析して、緩衝液成分を置換した。
続いて、抗体濃度を280nmの吸光度測定により推定し、透析で用いたものと同じ緩衝液で調整して抗体濃度を3.0mg/mlとし、抗体溶液とした。
次に、3種類のマウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を混合して用いた抗体溶液を以下のように調製した。
マウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体には、抗体工業技術院生命工学工業技術研究所受託番号FERM BP−7938号の細胞株(以下、7938株と表す)が産生するモノクローナル抗体、ならびにバイオテスト研究所製のFU−301、およびFU−303を用いた。7938株が産生するモノクローナル抗体としては、マウス腹水から、上記と同様のプロテインAカラムクロマトグラフィーで精製して得られたものを用いた。抗体溶液中に各モノクローナル抗体を混合する際には、7938株が産生するモノクローナル抗体を0.0333mg/ml、FU−301を0.0333mg/ml、FU−303を0.0333mg/mlとし、また、抗体溶液中の総モノクローナル抗体の最終濃度が約0.1mg/mlになるように混合した。
なお、上記で調製した各抗体溶液の濃度および混合比は、特にこれに限定されない。また、調製した抗体溶液は室温でも保存できるが、抗体の変性防止の点からは、低温保存がより好ましく、4℃で保存することがより好ましい。
(2)緩衝液の調製
緩衝液には、以下に示す10種類の化合物を用いた。
ヒドロキシル基を有するジカルボン酸としてはL(−)−リンゴ酸またはL(+)−酒石酸を用い、二重結合を有するジカルボン酸としてはイタコン酸を用い、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸としては、マロン酸(n=1)、コハク酸(n=2)、グルタル酸(n=3)、アジピン酸(n=4)、ピメリン酸(n=5)、スベリン酸(n=6)およびアゼライン酸(n=7)を用いた。
L(−)−リンゴ酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、L(−)−リンゴ酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で4重量%になるようにL(−)−リンゴ酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加してpHを4.5に調整し、純水を加え、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
L(+)−酒石酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、L(+)−酒石酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で4重量%になるように、L(+)−酒石酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加してpHを4.5に調整し、純水を加え、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
イタコン酸を含む緩衝液を次のようにして調製した。最終濃度が、イタコン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で4重量%になるようにイタコン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加することによってpHを4.5に調整し、純水を加え、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
マロン酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、マロン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにマロン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加してpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
コハク酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、コハク酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにコハク酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加してpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
グルタル酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、グルタル酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにグルタル酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加することによってpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
アジピン酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、アジピン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにアジピン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加することによってpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
ピメリン酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、ピメリン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにピメリン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加することによってpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
スベリン酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、スベリン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにスベリン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加することによってpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。
アゼライン酸を含む緩衝液を次のように調製した。最終濃度が、アゼライン酸で0.05M、ポリエチレングリコール6000で5重量%になるようにアゼライン酸およびポリエチレングリコール6000を計量し、最終的に得る緩衝液の体積の約90%に相当する体積の純水を加え、これらを溶解させた。得られた溶液にNaOH水溶液を添加してpHを5.0に調整し、純水を加えて、目的とする体積の溶液を調製し、緩衝液を得た。なお、上記で得られた各緩衝液は室温下で保存した。
《実施例2》
本実施例では、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む酸性の反応系を用いた本発明の抗原抗体反応に対する効果を、免疫反応測定方法で一般的に使用されている中性反応系の場合と比較した。従来法との比較は、被測定物質としてヒトアルブミンを免疫比朧法で測定することにより行った。
試薬としては、実施例1と同様のL(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、またはイタコン酸を含む各緩衝液と、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液とを混合して得られる試薬を用いた。
また、比較用の中性反応系を形成する緩衝液として、0.05MのMOPS、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用いた。抗体溶液には、上記と同じものを用いた。
試料として、0.04重量%のNaN3を含むPBS緩衝液(8g/LのNaCl、0.2g/LのKCl、1.15g/LのNa2HPO4・12H2O、および0.2g/LのKH2PO4を含む。pH7.4)に、濃度が0、1、5、10、30、50、100または300mg/dlになるように抗原であるヒトアルブミン(和光純薬工業(株)製)を溶解させて得られた抗原溶液を用いた。
なお、抗体溶液および試料(抗原溶液)は使用時まで4℃で保存し、各緩衝液は室温下に保存した。
測定装置には、以下のようなものを使用した。光源には、270Hzで変調した波長680nmの出射出力約15mWの半導体レーザーポインタ(キコー技研(株)製の型番MLXS−D−12−680−35)を用いた。検出器としては、可視赤外精密測光用シリコンフォトダイオード(浜松フォトニクス(株)製の型番S2387−66R)を用いた。セルとしては、厚さ0.1cmの光学ガラス板を貼り合わせて、容量約200μlの正四角柱形状のものを用いた。
光源より0.5cmの位置に、一面が光源と垂直になるようにセルを配置した。検出器は、光源と90°の角度をなす方向でセルより5.5cm離れた位置に配置した。検出器に迷光が入射しないように、検出器とセルとの間に遮光筒を設けた。検出器により検知された光量に依存する電流信号は、電流電圧変換回路(106V/A)およびオペアンプによる増幅回路を経て100倍の電圧信号に増幅される。その後、ロックインアンプ(エヌエフ回路設計ブロック製、型番5610B)を通して位相敏感検波し、GPIB制御によりコンピュータに取り込まれる。
各緩衝液について、各濃度のヒトアルブミン溶液の測定を次のように行った。反応液は、緩衝液178μl、ヒトアルブミン溶液9μlおよび抗体溶液7μlを混合して得た。すなわち、反応液において、抗体の最終濃度は約0.11mg/mlとし、ヒトアルブミンの最終濃度は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度に0.046を乗じたものであった。
まず、セル内に上記容量の緩衝液およびヒトアルブミン溶液を加え、攪拌混合した。続いて、上記容量の抗体溶液を加えて攪拌混合し、反応液を得るとともに抗原抗体反応を生じさせた。散乱光強度の測定は、抗体溶液を加える10秒前から開始し、0.5秒間隔で300秒間継続した。測定値は電圧値として得られた。セルの汚れが測定に与える影響は、各反応の測定前にセル中に純水を入れて測定し、測定値を補正することにより除いた。得られた各時間における測定値の200〜300秒の間の平均値を求め、これを各濃度のヒトアルブミン溶液における測定値とした。測定は室温(約20℃)で行った。
その測定結果を図1に示す。各緩衝液について、300mg/dlまでの各濃度のヒトアルブミン溶液を測定した結果をプロットしたものを図1に示した。縦軸は電圧値を表し、横軸は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度を表す。なお、プロットされた各値は、各緩衝液について得られた各濃度のヒトアルブミン溶液の測定値より、同じ緩衝液でのヒトアルブミンを含まない場合の測定値(0mg/dl)を差し引いたものである。測定電圧値が高い程、検出器に入射した散乱光が多く、反応系の濁度が高く、抗原抗体反応による抗原−抗体複合体が多く形成されたことを示す。
図1より、比較例の緩衝液を用いた場合(図1の×)より、本実施例の各緩衝液をそれぞれ用いた場合(図1の●、○、▲)のほうが、高い測定値が得られることがわかった。また、比較例の緩衝液を用いた場合(×)は、30mg/dlをピークとして抗原過剰領域で生じる地帯現象により、測定値は減少した。
これに対し、0.05MのL(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、およびイタコン酸をそれぞれ用いた緩衝液の場合(図1の●、○、▲)も、30mg/dlをピークとして抗原過剰領域で生じる地帯現象により、測定値は同様の減少傾向を示した。しかし、測定値が向上することにより、より広い抗原濃度範囲において抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定値の減少の影響を受けずに測定できることがわかった。
本実施例の測定結果より、比較例であるMOPSを含む緩衝液の場合(図1の×)、ヒトアルブミン溶液の濃度が50mg/dlまでの範囲において抗原過剰領域で生じる地帯現象の影響を考えることなく測定できた。これに対して、L(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、およびイタコン酸を用いた各緩衝液の場合(図1の●、○、▲)、ヒトアルブミン溶液の濃度が約100mg/dlまでの範囲において抗原過剰領域で生じる地帯現象の影響を考えることなく測定でき、比較例の場合よりも測定可能な濃度範囲が広いことがわかった。
《実施例3》
本実施例においても、上述した実施例2の場合と同様にして、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む酸性反応系の抗原抗体反応への効果を、免疫反応測定方法で一般的に使用されている中性反応系の場合と比較して調べた。従来法との比較は、被測定物質としてヒトアルブミンを免疫比朧法で測定することにより行った。
試薬には、実施例1と同様のマロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸またはアゼライン酸をそれぞれ含む各緩衝液と、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液とを組み合わせて得られるものを用いた。また、実施例1と同様のコハク酸を含む緩衝液と、マウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を含む抗体溶液とを組み合わせて得られるものを用いた。
比較例として、中性反応系を形成するための緩衝液には、0.05MのMOPS、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用いた。抗体溶液には、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸を含む各緩衝液と対比する場合は、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用い、コハク酸を含む緩衝液と対比する場合は、マウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
試料として用いた抗原溶液であるヒトアルブミン溶液は、長浜コントロール尿(10g/Lの尿素、10g/LのNaCl、0.5g/Lのクレアチニン、0.2g/Lのアセトンとなるように蒸留水に溶解)に、濃度が0、5、10、30、50、100または300mg/dlになるようにヒトアルブミンを溶解させたものを用いた。なお、抗体溶液および試料(抗原溶液)は使用時まで4℃で保存し、各緩衝液は室温下に保存した。
測定装置には以下のようなものを用いた。この装置は、実施例2と原理的には同じであるが、構成が異なる。光源としては、270Hzで変調した波長785nmの出射出力約20mWの半導体レーザーポインタ(キコー技研(株)製の型番MLXS−D−12−785−70)を用いた。検出器としては、可視赤外精密測光用シリコンフォトダイオード(浜松フォトニクス(株)製の型番S2387−66R)を用いた。セルとしては、厚さ0.1cmの光学ガラス板を貼り合わせて、容量が約600μlの正四角柱形状のものを用いた。
光源より1cmの位置に、一面が光源と垂直になるようにセルを配置した。検出器は、光源と90°の角度をなす方向でセルより1cm離れた位置に配置した。検出器に迷光が入射しないように、検出器とセルとの間に遮光筒を設けた。検出器により検知された光量に依存した電流信号は、電流電圧変換回路(106V/A)を経た後、ロックインアンプ(エヌエフ回路設計ブロック製、型番5610B)を通して位相敏感検波し、GPIB制御によりコンピュータに取り込まれる。
各緩衝液について、各濃度のヒトアルブミン溶液の測定を次のようにして行った。緩衝液534μl、ヒトアルブミン溶液27μlおよび抗体溶液21μlを混合して反応液を得た。すなわち、反応液において、抗体の最終濃度は、測定に使用した抗体溶液の濃度に約0.036を乗じたものとし、ヒトアルブミンの最終濃度は、測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度に約0.046を乗じたものとした。
まず、セル内に上記容量の緩衝液およびヒトアルブミン溶液を加え、攪拌混合した。続いて、上記容量の抗体溶液を加えて攪拌混合し、抗原抗体反応を生じさせた。7分後に、1秒間隔で10秒間散乱光強度を測定した。測定値は電圧値として得られた。セルの汚れが測定に与える影響は、各反応の測定前にセル中に純水を入れて測定し、測定値を補正することにより除いた。上述のようにして得た測定値の加算平均値を求め、これを各濃度のヒトアルブミン溶液における測定値とした。測定は室温(約20℃)で行った。
測定結果を図2および3に示す。図2はマロン酸(●)、グルタル酸(○)、アジピン酸(▲)、ピメリン酸(△)、スベリン酸(■)、アゼライン酸(□)をそれぞれ含む各緩衝液と、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体からなる抗体溶液とを用いて、300mg/dlまでの各濃度のヒトアルブミン溶液を測定した結果をプロットしたものである。縦軸は電圧値を表し、横軸は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度を表している。プロットされた各値は、各緩衝液について得られた各濃度のヒトアルブミン溶液の測定値より、同じ緩衝液でのヒトアルブミンを含まない場合の測定値(0mg/dl)を差し引いたものである。
図2より、比較例の緩衝液(0.05MのMMOPS、5重量%のポリエチレングリコールを含むpH7.4の緩衝液)を用いた場合(図2の×)より、本実施例の各緩衝液を用いた場合(図2の●、○、▲、△、■、□)のほうが、ブランク値(ヒトアルブミン濃度が00mg/dlのとき)を除き、高い測定値が得られることがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象により、測定値はいずれの場合も減少傾向を示した。しかし、実施例3では、実施例2と同様の理由により、比較例よりもより広い抗原濃度範囲において抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定値の減少の影響を受けずに測定できることがわかった。
図3は、コハク酸を含む緩衝液と、マウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を含む抗体溶液とを用いて、300mg/dlまでの各濃度のヒトアルブミン溶液を測定した結果をプロットしたものである(●)。図3より、比較例の緩衝液を用いた場合(×)より、本実施例のコハク酸を含む緩衝液を用いた場合(●)のほうが高い測定値が得られることがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象により、測定値はいずれの場合も減少を示した。この場合も、実施例2と同様の理由により、より広い抗原濃度範囲において抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定値の減少の影響を受けずに測定できることがわかった。
以上のように実施例2および3より、本発明に係る免疫反応測定方法により、抗原抗体反応の測定値が向上することを確認できた。また、これにより抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることを確認できた。
さらに、本発明に係る免疫反応用試薬を用いることにより、抗原抗体反応の測定値が向上することを確認できた。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることを確認できた。
なお、抗体溶液、緩衝液および試料を混合する順序は特に制限されず、混合比率は、必要とする抗原濃度の測定範囲に応じて決定することができた。
また、上記測定では、試薬と試料とを混合することにより、緩衝剤、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物、ならびにポリエチレングリコール6000などの添加剤が混合前に比べて希釈された。しかし、希釈される前の濃度に対する希釈後にの濃度の差が10%程度までであれば、得られる測定結果は、希釈前の濃度で予想された測定結果とは大差がなく、希釈による影響はほとんどなかった。また、希釈による濃度変化を回避するために、混合による希釈を考慮して、混合時に試薬中の各物質の濃度が目的濃度になるように調製することもできた。
《実施例4》
ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸がそれぞれ示す、抗原抗体反応に対する効果のpH依存性を、免疫比朧法により調べた。
本実施例では、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸について調べた。ヒドロキシル基を有するジカルボン酸としてはL(−)−リンゴ酸およびL(+)−酒石酸を用い、二重結合を有するジカルボン酸としてはイタコン酸を用いた。被測定物質としてはヒトアルブミンを用いた。試料であるヒトアルブミン溶液には、実施例2と同様のものを用いた。また、抗体溶液には、実施例1と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
ヒドロキシル基を有するジカルボン酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05MのL(−)−リンゴ酸、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.0、4.5および5.0の各緩衝液を調製した。また、0.05MのL(+)−酒石酸、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.0、4.5および5.0の各緩衝液を調製した。
また、二重結合を有するジカルボン酸を用いた場合のpH依存性を調べるため、0.05Mのイタコン酸および4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.0、4.5および5.0の各緩衝液を調製した。
さらに、比較例として、0.05MのMOPS、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用い、抗体溶液には、上記と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
免疫反応の測定は、実施例2と同様の方法により行った。
得られた測定結果を図4〜6に示す。図4はL(−)−リンゴ酸についての結果、図5はL(+)−酒石酸についての結果、また、図6はイタコン酸についての結果をそれぞれプロットしたものである。縦軸は電圧値を表し、横軸は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度で示す。
図4〜6より、pH4.5〜5.0のL(−)−リンゴ酸を含む緩衝液、pH4.0〜5.0のL(+)−酒石酸を含む緩衝液、およびpH4.5〜5.0のイタコン酸を含む緩衝液を用いた場合の方が、比較例の緩衝液を用いた場合(図4〜6の×)よりも高い測定値を示すことがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることがわかった。
以上の結果より、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、およびこれらの塩を含む緩衝液を用いた免疫反応測定法では、これらの化合物のpH特性を考慮して、少なくとも、反応系のpHを4.0〜5.0の範囲に設定することにより、抗原抗体反応の測定値が向上することがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることがわかった。
また、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、およびこれらの塩を用いた免疫反応測定用試薬では、これら化合物のpH特性を考慮することにより、少なくとも、抗原抗体反応が生じるときの反応液のpHが4.0〜5.0の間に設定されるように試薬を調製するのが好ましいことがわかった。
《実施例5》
本実施例では、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸が示す抗原抗体反応に対する効果のpH依存性を、免疫比朧法により調べた。上記の直鎖状ジカルボン酸には、マロン酸(n=1)、コハク酸(n=2)、グルタル酸(n=3)、アジピン酸(n=4)、ピメリン酸(n=5)、スベリン酸(n=6)およびアゼライン酸(n=7)を用いた。
試料であるヒトアルブミン溶液には、実施例3と同様のものを用いた。また、抗体溶液には、実施例1と同様のものを用いた。
試薬には、後述するマロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸をそれぞれ含む各緩衝液と、実施例1と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液とを混合したものを用いた。また、後述するコハク酸を含む緩衝液と、実施例1と同様のマウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を含む抗体溶液を混合したものを用いた。
マロン酸を用いた場合のpH依存性を調べるため、0.05Mのマロン酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.0、4.5、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
コハク酸を用いた場合のpH依存性を調べるため、0.05Mのコハク酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.0、4.5、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
グルタル酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05Mのグルタル酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.5、5.0および6.0の各緩衝液を調製した。
アジピン酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05Mのアジピン酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.5、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
ピメリン酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05Mのピメリン酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、4.5、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
スベリン酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05Mのスベリン酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
アゼライン酸を用いた場合のpH依存性を調べるために、0.05Mのアゼライン酸、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHがそれぞれ、5.0、5.5および6.0の各緩衝液を調製した。
さらに、比較例においては、0.05MのMOPS、および5重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用い、抗体溶液としては、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸を含む各緩衝液と対比する場合は、ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用い、コハク酸を含む緩衝液と対比する場合は、マウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。免疫反応の測定は、実施例3と同様の方法により行った。
得られた測定結果を図7〜13に示す。図7はマロン酸についての結果、図8はコハク酸についての結果、また、図9はグルタル酸についての結果、図10はアジピン酸についての結果、図11はピメリン酸についての結果、図12はスベリン酸についての結果、図13はアゼライン酸についての結果をそれぞれプロットしたものである。縦軸は電圧値を表し、横軸はヒトアルブミン溶液の濃度を示す。
図7〜13より、pH4.5〜6.0のマロン酸を含む緩衝液、pH5.0〜6.0のコハク酸を含む緩衝液、pH5.0〜6.0のグルタル酸を含む緩衝液、pH5.0〜6.0のアジピン酸を含む緩衝液、pH5.0〜6.0のピメリン酸を含む緩衝液、pH5.0〜6.0のスベリン酸を含む緩衝液、およびpH5.0〜6.0のアゼライン酸を含む緩衝液を用いた場合のほうが、比較例のMOPSを含む緩衝液を用いた場合よりも高い測定値を示すことがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることがわかった。
以上の結果より、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩を含む緩衝液を用いた免疫反応測定法では、これらの化合物のpH特性を考慮し、少なくとも、反応液のpHを4.5〜6.0に設定することにより、抗原抗体反応の測定値が向上することがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることがわかった。
また、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩を用いた免疫反応測定用試薬では、これら化合物のpH特性を考慮することにより、少なくとも、抗原抗体反応が生じるときの反応液のpHが4.5〜6.0に設定されるように試薬を調製するのが好ましいことがわかった。
以上のように実施例4および5より、抗原抗体反応の測定値を向上させる効果および抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和させる効果を保ちながら、本発明の免疫反応測定法では、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される化合物を用いることにより、反応系のpHを4.0〜6.0に設定できることを確認できた。
また、本発明に係る免疫反応測定用試薬においては、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を用いることにより、抗原抗体反応が生じるときのpHが4.0〜6.0の間に設定されるように試薬を調製できることを確認できた。
《実施例6》
次に、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物が示す、抗原抗体反応に対する効果の濃度依存性を調べた。
ヒトアルブミン溶液には、実施例3と同様のものを用いた。また、抗体溶液は、実施例1と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
緩衝液には、L(−)−リンゴ酸、イタコン酸、およびコハク酸をそれぞれ用いて、以下に示す方法で調製したものを用いた。
L(−)−リンゴ酸を用いた場合の濃度依存性を調べるために、4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHが5.0で、L(−)−リンゴ酸をそれぞれ0.01、0.02、0.05、0.1および0.2M含む各緩衝液を調製した。
イタコン酸を用いた場合の効果の濃度依存性を調べるために、4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHが5.0で、イタコン酸をそれぞれ0.01、0.02、0.05、0.1、および0.2M含む各緩衝液を調製した。
コハク酸を用いた場合の効果の濃度依存性を調べるために、4重量%のポリエチレングリコール6000を含み、pHが5.0で、コハク酸をそれぞれ0.01、0.02、0.05、0.1、および0.2M含む各緩衝液を調製した。さらに、比較例として、0.05MのMOPS、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用いた。また、抗体溶液には、ウサギ抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体を用いた。
免疫反応の測定は、実施例3と同様の方法により行った。
得られた測定結果を図14〜16に示す。図14はL(−)−リンゴ酸についての結果、図15はイタコン酸についての結果、また、図16はコハク酸についての結果をプロットしたものである。縦軸は電圧値を表し、横軸はヒトアルブミン溶液の濃度を表す。
図14〜16より、本実施例で調べた濃度範囲では、いずれの場合も、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物の濃度が0.01〜0.1Mの範囲において、比較例のMOPSを含む緩衝液を用いた場合よりも高い測定値を示すことがわかった。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和されることがわかった。
以上の結果より、本発明に係る免疫反応測定法では、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物の濃度を0.1M以下に設定するのが好ましいことがわかった。また、前記化合物により、反応液に緩衝能を持たせる場合は、前記濃度は0.01〜0.1Mに設定するのが好ましいことがわかった。
以上と同様に、本発明に係る免疫反応測定用試薬は、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物の抗原抗体反応が生じるときの濃度が0.1M以下に設定されるように調製されるのが好ましいことがわかった。また、前記化合物により、反応液に緩衝能を持たせる場合は、前記濃度が0.01〜0.1Mに設定されるように試薬を調製するのが好ましいことがわかった。
《実施例7》
次に、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される化合物を混合して使用した場合の抗原抗体反応に対する効果について、免疫比朧法により確認した。
被測定物質としてはヒトアルブミンを用いた。ヒトアルブミン溶液の調製は、実施例2と同様の方法により行い、濃度は0、5、10、20、30、50、70、100、200および300mg/dlのものを用意した。抗体溶液には、実施例1と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
緩衝液としては、L(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸をそれぞれ、コハク酸と共に含み、pHを4.5に設定したものを用いた。pHが4.5では、コハク酸は効果を持たず、L(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸による効果を確認し易い。比較例にはコハク酸のみを含む緩衝液を用いた。表1に各緩衝液の組成およびpHを示す。
Figure 2004053489
測定には、分光蛍光光度計(島津製作所(株)製の型番RF−5300PC)を使用した。分光蛍光光度計の試料室に恒温セルホルダ(島津製作所(株)製の型番206−15440)を配置し、恒温水槽(TAITEC(株)製の商品名COOLNIT BATH EL−15)に接続した。温度を25℃に保った水を循環させて、測定時の温度を一定に保つようにした。分光蛍光光度計の測定条件は、励起、蛍光波長を共に670nmとし、蛍光側、励起側共にバンド幅を3nmに、感度は高感度に設定した。
測定は次のように行った。2.87mlの緩衝液と0.1ml抗体溶液を攪拌混合した後、これに0.03mlのヒトアルブミン溶液を加え攪拌混合し、反応液を得た。すなわち、反応液における抗体およびヒトアルブミンの最終濃度は、抗体については約0.10mg/mlとし、ヒトアルブミンについては、測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度に0.01を乗じたものとした。これを蛍光分析用の石英セルに移すとともに分光蛍光光度計に設置し、T型熱電対(RSコンポーネンツ社の型番219−4696)をセル内に浸漬した。そして、ヒトアルブミンを混合後2分間経過した時点より、タイムコース測定で、0.04秒間隔で300秒間測定した。
測定中のセル内の温度は、T型熱電対をデジタルマルチサーモメータ(アドバンテスト(株)製の型番TR2114)に接続してモニタした。セルの汚れが測定に与える影響は、各反応の測定前にセル中に純水を入れて測定し、補正することにより除いた。測定により得られた200〜300秒の間の各測定値の平均値を求め、これを各濃度のヒトアルブミン溶液に対する測定値とした。各緩衝液、抗体溶液、および各濃度のヒトアルブミン溶液を混合した反応液のpHへの影響を調べるために、測定終了後、pH計で、混合液のpHの測定を行った。
その結果、各測定に使用した各緩衝液、抗体溶液、各濃度のヒトアルブミン溶液からなる混合液のpHは、いずれも緩衝液のpHと同一であった。熱電対で測定された各測定中のセル内の温度は25.5±1℃に保たれた。
測定結果を図17に示す。各緩衝液について、300mg/dlまでの各ヒトアルブミン溶液を加えて測定した結果をプロットしたものを図17に示した。縦軸は散乱光強度を示し、横軸は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度を示す。
本実施例のL(−)−リンゴ酸、L(+)−酒石酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸を含む緩衝液を用いた場合の方が、比較例であるコハク酸のみからなる緩衝液を用いた場合よりも、測定値が向上した。また、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定が緩和された。
以上の結果により、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される化合物を混合して使用した場合でも抗原抗体反応に対して単体で使用した場合と同様の効果を示すことが確認された。
《実施例8》
次に、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される化合物を混合して使用した場合に、抗原抗体反応に対する効果を示すpHの範囲について、協働作用による拡大効果が見られるかどうかを、免疫比朧法により調べた。
被測定物質としてはヒトアルブミンを用いた。ヒトアルブミン溶液は、実施例3と同様のものを用いた。また、抗体溶液は、実施例1と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
緩衝液としては、0.025MのL(+)−酒石酸、0.025Mのコハク酸、ならびに4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH4.0、4.5、5.0、5.5、および6.0の各緩衝液を用いた。L(+)−酒石酸、コハク酸をそれぞれ単独で用いた場合には、実施例4および5で調べた範囲では、L(+)−酒石酸の有効pHは4.0〜5.0、コハク酸の有効pHは5.0〜6.0であった。
比較例として、0.05MのMOPS、および4重量%のポリエチレングリコール6000を含むpH7.4の緩衝液を用い、抗体溶液としては、上記と同様のウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を含む抗体溶液を用いた。
免疫反応の測定は、実施例3と同様の方法により行った。
得られた測定結果を図18に示す。縦軸は電圧値を示し、横軸は測定に使用したヒトアルブミン溶液の濃度を示す。
L(+)−酒石酸とコハク酸とを含む緩衝液を用いた場合では、抗原抗体反応に対する有効pHが4.5〜6.0となり、それぞれを単独で含む緩衝液を用いた場合に比べて、有効pHの範囲が拡大した。
以上より、ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CH2nCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される各化合物の特性を組み合わせることにより、有効pHの範囲を拡大できることが確認された。
以上のように、本発明によれば、容易に測定値の向上が可能な免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬を提供することができる。さらに、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定範囲の限定を緩和することが可能な免疫反応測定方法およびそれに用いる免疫反応測定用試薬を提供することができる。
本発明の実施例2における免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例3におけるマロン酸等を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例3におけるコハク酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例4におけるL(−)−リンゴ酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例4におけるL(+)−酒石酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例4におけるイタコン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例5におけるマロン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例5におけるコハク酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例5におけるグルタル酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例5におけるアジピン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例5におけるピメリン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例5におけるスベリン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例5におけるアゼライン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例6におけるL(−)−リンゴ酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例6におけるイタコン酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例6におけるコハク酸を含む試薬を用いた免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例7における免疫反応測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例8における免疫反応測定結果を示すグラフである。

Claims (18)

  1. 試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を測定する免疫反応測定方法であって、
    (A)ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原とを、前記試料と混合し、酸性の反応液を得る工程、ならびに
    (B)前記反応液において前記被測定物質と前記特異結合物質との抗原抗体反応により生じた抗原−抗体複合体を検出する工程を含むことを特徴とする免疫反応測定方法。
  2. 前記ヒドロキシル基を有するジカルボン酸がリンゴ酸および酒石酸であり、前記二重結合を有するジカルボン酸がイタコン酸、フマル酸およびマレイン酸である請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  3. 前記直鎖状ジカルボン酸のメチレン鎖の長さがn=1〜7の整数である請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  4. 前記反応液にさらに緩衝剤を添加する請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  5. 前記反応液のpHを4.0〜6.0に設定する請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  6. 前記反応液のpHを4.5〜6.0に設定する請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  7. 前記反応液のpHを4.5〜5.0に設定する請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  8. 前記反応液のpHを5.0〜6.0に設定する請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  9. 前記ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物の、前記反応液における濃度が0.1M以下に設定される請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  10. 前記ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物の、前記反応液における濃度が0.01〜0.1Mの範囲に設定される請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  11. 前記ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、化学式(1):HOOC(CHCOOH(nは整数)で表される直鎖状ジカルボン酸、およびこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物の、前記反応液における濃度が0.01〜0.05Mの範囲に設定される請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  12. 前記反応液がポリエチレングリコールを2〜6重量%含む請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  13. 前記抗原−抗体複合体が凝集複合体である請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  14. 前記凝集複合体に起因する光学的変化量を測定することにより前記凝集複合体を検出する請求の範囲第13項記載の免疫反応測定方法。
  15. 前記光学的変化量が散乱光強度の変化量である請求の範囲第14項記載の免疫反応測定方法。
  16. 前記特異結合物質がモノクローナル抗体を含む抗体である請求の範囲1項記載の免疫反応測定方法。
  17. 前記特異結合物質が、凝集複合体を生成可能なように調製された1種類以上のモノクローナル抗体の混合物である請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
  18. 前記抗原がヒトアルブミンであることを特徴とする請求の範囲第1項記載の免疫反応測定方法。
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