JPWO2005031353A1 - 免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、及び光学セル - Google Patents
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Abstract
本発明は、酸性pH条件下で検体中の被検物質を測定する方法を提供する。この方法は、前記検体と、前記検体中の被検物質に対する抗体とを混合して反応系を形成する工程A、及び前記反応系における抗原抗体反応を測定する工程Bを備え、前記反応系のpHが酸性に設定され、かつ前記抗体のpIと、前記反応系のpHとの関係が、pI>pHとなるように設定されていることを特徴とする。本発明により、酸性緩衝液を基本とした免疫測定反応系において、特に、抗原低濃度領域における測定精度を向上させることができる。
Description
本発明は、酸性pH条件下で検体中に含まれる被検物質を測定することができる免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、及び光学セルに関する。
医療、臨床検査の分野においては、様々な疾患の診断及び病状の経過を調べるために、ヒトの体液中に存在する各疾患に特徴的なタンパク質を調べることが広く行われている。例えば、溶連菌に個体が感染すると、血液中にそれに抵抗するためのASOという抗体が産生される。したがって、血液中のこの抗体の量を測定項目として試験することによって、その個体が溶連菌に感染しているかどうかを調べることができる。また、RA(慢性関節リウマチ)患者の血清中には、RF(リウマチ因子)が高頻度に出現することが知られている。RA患者の血清中IgG糖鎖は、健常者IgG糖鎖と比較して、ガラクトースを顕著に欠損し糖鎖異常を起こしている。RA発症初期からガラクトース欠損IgGが産生され、これに対する自己抗体が関節炎などの発症に関与していると考えられている。そこで、ガラクトース欠損IgG抗原を使用して血清中の抗ガラクトース欠損IgG抗体を測定項目として試験することにより、RAの診断が可能となる。
これらのタンパク質の含有量測定には、主として、特異性の高い免疫反応測定方法が広く用いられている。それらの中でも、免疫比朧法(もしくは、免疫比濁法)は、抗原と抗体の特異的な反応により生じる凝集複合体を検出する方法であり、基本的に均一溶液中で行われるため、定量性の良い方法である。さらに、抗原抗体複合体と未反応の抗体及び抗原を分離することなく測定できる方法であるため、操作が容易である。
一方、免疫比朧法による測定では、一般に、抗原過剰領域において、プロゾーン現象が発生する。そのため、測定項目によっては、必要とされる測定濃度領域で正確な測定ができないという問題があった。「プロゾーン現象」は、「地帯現象」とも呼ばれ、抗原と抗体が最大の凝集複合体を形成する当量域よりも、いずれかが過剰に存在する場合に、凝集複合体が生じにくくなり、測定値(例えば、散乱光強度)が本来の値よりも小さくなる現象である。
実際の均一系の免疫反応測定では、抗体を用いて被検物質としての抗原の濃度を測定する場合が多い。一般に、プロゾーン現象の起こっていない抗原濃度領域では、抗体と抗原が交互に結合した複合体からなる巨大な分子鎖(凝集複合体)が生じ、その量や大きさは、抗体濃度を一定とすると、抗原濃度に依存して増加するため、この分子鎖の量や大きさの変化を光学的な量の変化(例えば、散乱光強度または透過光強度の変化)として測定することにより、抗原濃度を定量的に捉えることができる。しかしながら、抗原過剰領域では、抗体に対して抗原が過剰に存在するために、抗体の抗原結合部位が飽和され、抗原を介して架橋構造を形成しにくくなる。したがって、上記のような分子鎖が生じにくくなり、抗原抗体複合体の量や大きさの変化を光学的な量の変化としてとらえることができなくなるために、測定値が小さくなる。その結果、低濃度の場合と区別がつきにくくなる。故に、プロゾーン現象が発生すると、被検物質濃度の正確な測定ができないという問題があるうえに、偽陰性の問題も生じる。
このような抗原過剰領域で生じるプロゾーン現象を緩和させるための反応系として、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む酸性緩衝剤を使用する方法が報告されている(例えば、特開2003−66047号公報)。一般的に、抗原抗体反応による測定は中性から弱アルカリ性側で行われることが多いが、特開2003−66047号公報では、弱酸性条件下で反応を行わせることによって、プロゾーン現象を抑制し、特に抗原過剰領域のより広い範囲で、より正確な定量測定を可能としている。
これらのタンパク質の含有量測定には、主として、特異性の高い免疫反応測定方法が広く用いられている。それらの中でも、免疫比朧法(もしくは、免疫比濁法)は、抗原と抗体の特異的な反応により生じる凝集複合体を検出する方法であり、基本的に均一溶液中で行われるため、定量性の良い方法である。さらに、抗原抗体複合体と未反応の抗体及び抗原を分離することなく測定できる方法であるため、操作が容易である。
一方、免疫比朧法による測定では、一般に、抗原過剰領域において、プロゾーン現象が発生する。そのため、測定項目によっては、必要とされる測定濃度領域で正確な測定ができないという問題があった。「プロゾーン現象」は、「地帯現象」とも呼ばれ、抗原と抗体が最大の凝集複合体を形成する当量域よりも、いずれかが過剰に存在する場合に、凝集複合体が生じにくくなり、測定値(例えば、散乱光強度)が本来の値よりも小さくなる現象である。
実際の均一系の免疫反応測定では、抗体を用いて被検物質としての抗原の濃度を測定する場合が多い。一般に、プロゾーン現象の起こっていない抗原濃度領域では、抗体と抗原が交互に結合した複合体からなる巨大な分子鎖(凝集複合体)が生じ、その量や大きさは、抗体濃度を一定とすると、抗原濃度に依存して増加するため、この分子鎖の量や大きさの変化を光学的な量の変化(例えば、散乱光強度または透過光強度の変化)として測定することにより、抗原濃度を定量的に捉えることができる。しかしながら、抗原過剰領域では、抗体に対して抗原が過剰に存在するために、抗体の抗原結合部位が飽和され、抗原を介して架橋構造を形成しにくくなる。したがって、上記のような分子鎖が生じにくくなり、抗原抗体複合体の量や大きさの変化を光学的な量の変化としてとらえることができなくなるために、測定値が小さくなる。その結果、低濃度の場合と区別がつきにくくなる。故に、プロゾーン現象が発生すると、被検物質濃度の正確な測定ができないという問題があるうえに、偽陰性の問題も生じる。
このような抗原過剰領域で生じるプロゾーン現象を緩和させるための反応系として、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む酸性緩衝剤を使用する方法が報告されている(例えば、特開2003−66047号公報)。一般的に、抗原抗体反応による測定は中性から弱アルカリ性側で行われることが多いが、特開2003−66047号公報では、弱酸性条件下で反応を行わせることによって、プロゾーン現象を抑制し、特に抗原過剰領域のより広い範囲で、より正確な定量測定を可能としている。
上記のように、酸性緩衝剤を使用する免疫反応測定法は、抗原過剰領域でのプロゾーン現象に起因する問題を解決するには優れている。しかし、一方で、抗原濃度がゼロのときの測定値(ブランク値)が高くなる傾向があった。
本発明は、このような状況に鑑みてなされた。すなわち、本発明は、酸性pH条件下での抗原抗体反応に基づく被検物質の測定において、抗原が低濃度の場合であっても、高精度の定量測定を可能とする免疫反応測定方法、それに使用する試薬、キット、および光学セルを提供することを目的とする。
本発明者らは、後述する検証の結果、酸性の反応系では、(抗体のpI値)>(反応系のpH値)となるように抗体分子のpIおよび反応系のpHを選択することにより、抗体分子の非特異的凝集を低減し、ブランク値が高くなるのを防ぐことができることを見出した。これは、抗体のpIおよび反応系を構成する溶液のpHを上記のように設定することにより、個々の抗体分子が溶液中で陽性の電荷を帯び、このように陽電荷を帯びた抗体分子どうしの電気的反発力によって抗体分子の非特異的凝集が抑制されるからであろうと考えられる。これにより、特に抗原濃度が低い場合に、抗原抗体反応の反応量を測定する際に抗原抗体反応の反応量に加えて、抗体分子どうしの非特異的凝集の反応量までも測定してしまうということが抑制されるため、S/N比の向上が期待でき、測定の精度が向上する。
したがって、本発明は、酸性pH条件下で検体中の被検物質を測定する方法であって、上記検体と、上記検体中の被検物質に対する抗体とを混合して反応系を形成する工程A、及び上記反応系における抗原抗体反応を測定する工程Bを備え、上記反応系のpHが酸性に設定され、かつ上記抗体のpIと、上記反応系のpHとの関係が、pI>pHとなるように設定されている、測定方法を提供する。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記工程Bにおいて、上記被検物質と上記抗体との間で形成される抗原抗体複合体の量を測定する。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記pIと上記pHとの差は、約0.5以上である。より好ましくは、上記pIと上記pHとの差は、約1.0以上である。さらに好ましくは、pIとpHとの差は、約1.5以上である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記反応系のpHは、約4〜6の範囲である。最も好ましくは、上記反応系のpHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記工程Aにおいて、上記検体と、上記抗体と、緩衝剤とを混合して反応系を形成する。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記反応系は、有機酸または有機酸塩を含有する。より好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記測定する工程Bは、上記複合体の量もしくは大きさに起因する光学パラメータを測定することを含む。
別の局面において、本発明は、酸性pH条件下で抗原抗体反応原理に基づいて検体中の被検物質を測定するための試薬であって、上記被検物質に対する抗体を含有し、当該抗体のpIが上記酸性pHに対して、pI>pHとなるように調製されている、試薬を提供する。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記pIと上記pHとの差は約0.5以上である。より好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.0以上である。さらに好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.5以上である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記pHは約4〜6の範囲にある。最も好ましくは、上記pHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記試薬は、有機酸または有機酸塩を含有する。より好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記試薬に含まれる抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記試薬は、乾燥状態で提供される。例えば、凍結乾燥により提供され得る。別の好ましい実施形態では、上記試薬は、溶液として提供される。
さらに別の局面において、本発明は、酸性pH条件下で検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するためのキットであって、緩衝液と被検物質に対する抗体を含む試薬とを含み、上記試薬は、上記抗体のpIが上記酸性pHに対して、pI>pHとなるように調製されている、測定用キットを提供する。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記pIと上記pHとの差は約0.5以上である。より好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.0以上である。さらに好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.5以上である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、緩衝液のpHは約4〜6の範囲にある。最も好ましくは、緩衝液のpHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記緩衝液は、有機酸または有機酸塩を含む。より好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記抗体は、異なるエピトープを認識する少なくとも2種類以上のモノクローナル抗体の混合物である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記試薬は、乾燥状態で提供される。例えば、凍結乾燥により提供され得る。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記緩衝液と上記試薬とは、被検物質の測定のために使用される直前に混合されて試験溶液として使用される。
さらに別の局面において、本発明は、酸性pH条件下で液体検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するための光学セルを提供する。この光学セルは、液体検体を注入するための開口部を有し、上記セル内に、上記被検物質に対する抗体が上記液体検体に溶解可能なように担持されており、上記液体検体と上記被検物質に対する抗体との混合により形成された反応系のpHが酸性であって、かつ上記反応系のpHと上記抗体のpIの関係が、pI>pHとなるように構成されている。ここで、上記光学セル内に緩衝剤が担持されていてもよい。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記光学セルは、プランジャーを使用することにより、上記開口部から液体検体を吸入可能なように、更に、プランジャーとの接続のための接続用開口部を有する。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記光学セルは、実質的に平坦な面を有し可視光領域で光学的に透明な材質から構成される。そのような材質としては、石英ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレンなどがある。特に、ポリスチレンが好ましい。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記抗体のpIと緩衝液のpHとの差は約0.5以上であり、より好ましくは約1.0以上である。さらに好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.5以上である。
本発明の光学セルのさらに好ましい実施形態では、緩衝液のpHは約4〜6の範囲にある。最も好ましくは、緩衝液のpHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明の光学セルのさらに好ましい実施形態では、本発明の光学セルに含まれる緩衝剤は、有機酸または有機酸塩である。好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、本発明の光学セルに使用される抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。さらに好ましくは、上記抗体は、異なるエピトープを認識する少なくとも2種類以上のモノクローナル抗体の混合物である。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、本発明の光学セルに含まれる抗体試薬は、乾燥状態で提供される。例えば、凍結乾燥により提供され得る。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記緩衝剤は、乾燥状態で担持されている。
本発明により、酸性pH条件下で検体中の被検物質の量を抗原抗体反応原理に基づいて測定する際に、抗体分子間の非特異的凝集の形成を抑制することが可能となる。それにより、抗原が低濃度の場合でも、正確に抗原抗体反応量を捉えることができ高精度あるいは高感度測定が可能となる。さらに、非特異反応を除くことで、抗原が低濃度の場合でも、再現性よく抗原抗体反応に基づく定量測定を行うことができる。
また、例えば、経時的に際限なく凝集していく非特異的凝集に由来する測定値への経時的影響(測定試薬をセッティングしてから測定するまでの時間の長さにより測定値が変化する)も、極力抑えることが可能となる。
さらに、抗体の非特異的凝集が抑制されることにより、試薬ロット間の測定値の差を抑制することができ、新しい試薬ロットに変更して測定する場合に、その都度補正をする必要性を極力減少させることができる。
さらに、本発明に係る免疫反応測定方法により、従来、抗原または抗体の非特異的自己凝集を低減するために使用されたトゥイーン20、オクチルグルコシド、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、スクロースモノラウレート、CHAPSなどの界面活性剤の使用を極力排除し得る。これらの界面活性剤は、非特異的自己凝集を低減するために使用されるが、その量が大きくなると、逆に抗原抗体反応の結合能を弱める問題があった。それ故、界面活性剤の量は厳密に設定されなければならなかった。しかし、本発明により、界面活性剤を使用せずに非特異的自己凝集を除くことができるため、界面活性剤によるタンパク質の変性等の悪影響を排除することが可能となる。
本発明は、このような状況に鑑みてなされた。すなわち、本発明は、酸性pH条件下での抗原抗体反応に基づく被検物質の測定において、抗原が低濃度の場合であっても、高精度の定量測定を可能とする免疫反応測定方法、それに使用する試薬、キット、および光学セルを提供することを目的とする。
本発明者らは、後述する検証の結果、酸性の反応系では、(抗体のpI値)>(反応系のpH値)となるように抗体分子のpIおよび反応系のpHを選択することにより、抗体分子の非特異的凝集を低減し、ブランク値が高くなるのを防ぐことができることを見出した。これは、抗体のpIおよび反応系を構成する溶液のpHを上記のように設定することにより、個々の抗体分子が溶液中で陽性の電荷を帯び、このように陽電荷を帯びた抗体分子どうしの電気的反発力によって抗体分子の非特異的凝集が抑制されるからであろうと考えられる。これにより、特に抗原濃度が低い場合に、抗原抗体反応の反応量を測定する際に抗原抗体反応の反応量に加えて、抗体分子どうしの非特異的凝集の反応量までも測定してしまうということが抑制されるため、S/N比の向上が期待でき、測定の精度が向上する。
したがって、本発明は、酸性pH条件下で検体中の被検物質を測定する方法であって、上記検体と、上記検体中の被検物質に対する抗体とを混合して反応系を形成する工程A、及び上記反応系における抗原抗体反応を測定する工程Bを備え、上記反応系のpHが酸性に設定され、かつ上記抗体のpIと、上記反応系のpHとの関係が、pI>pHとなるように設定されている、測定方法を提供する。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記工程Bにおいて、上記被検物質と上記抗体との間で形成される抗原抗体複合体の量を測定する。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記pIと上記pHとの差は、約0.5以上である。より好ましくは、上記pIと上記pHとの差は、約1.0以上である。さらに好ましくは、pIとpHとの差は、約1.5以上である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記反応系のpHは、約4〜6の範囲である。最も好ましくは、上記反応系のpHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記工程Aにおいて、上記検体と、上記抗体と、緩衝剤とを混合して反応系を形成する。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記反応系は、有機酸または有機酸塩を含有する。より好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記測定する工程Bは、上記複合体の量もしくは大きさに起因する光学パラメータを測定することを含む。
別の局面において、本発明は、酸性pH条件下で抗原抗体反応原理に基づいて検体中の被検物質を測定するための試薬であって、上記被検物質に対する抗体を含有し、当該抗体のpIが上記酸性pHに対して、pI>pHとなるように調製されている、試薬を提供する。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記pIと上記pHとの差は約0.5以上である。より好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.0以上である。さらに好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.5以上である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記pHは約4〜6の範囲にある。最も好ましくは、上記pHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記試薬は、有機酸または有機酸塩を含有する。より好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記試薬に含まれる抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記試薬は、乾燥状態で提供される。例えば、凍結乾燥により提供され得る。別の好ましい実施形態では、上記試薬は、溶液として提供される。
さらに別の局面において、本発明は、酸性pH条件下で検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するためのキットであって、緩衝液と被検物質に対する抗体を含む試薬とを含み、上記試薬は、上記抗体のpIが上記酸性pHに対して、pI>pHとなるように調製されている、測定用キットを提供する。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記pIと上記pHとの差は約0.5以上である。より好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.0以上である。さらに好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.5以上である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、緩衝液のpHは約4〜6の範囲にある。最も好ましくは、緩衝液のpHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記緩衝液は、有機酸または有機酸塩を含む。より好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記抗体は、異なるエピトープを認識する少なくとも2種類以上のモノクローナル抗体の混合物である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記試薬は、乾燥状態で提供される。例えば、凍結乾燥により提供され得る。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記緩衝液と上記試薬とは、被検物質の測定のために使用される直前に混合されて試験溶液として使用される。
さらに別の局面において、本発明は、酸性pH条件下で液体検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するための光学セルを提供する。この光学セルは、液体検体を注入するための開口部を有し、上記セル内に、上記被検物質に対する抗体が上記液体検体に溶解可能なように担持されており、上記液体検体と上記被検物質に対する抗体との混合により形成された反応系のpHが酸性であって、かつ上記反応系のpHと上記抗体のpIの関係が、pI>pHとなるように構成されている。ここで、上記光学セル内に緩衝剤が担持されていてもよい。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記光学セルは、プランジャーを使用することにより、上記開口部から液体検体を吸入可能なように、更に、プランジャーとの接続のための接続用開口部を有する。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記光学セルは、実質的に平坦な面を有し可視光領域で光学的に透明な材質から構成される。そのような材質としては、石英ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレンなどがある。特に、ポリスチレンが好ましい。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記抗体のpIと緩衝液のpHとの差は約0.5以上であり、より好ましくは約1.0以上である。さらに好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.5以上である。
本発明の光学セルのさらに好ましい実施形態では、緩衝液のpHは約4〜6の範囲にある。最も好ましくは、緩衝液のpHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明の光学セルのさらに好ましい実施形態では、本発明の光学セルに含まれる緩衝剤は、有機酸または有機酸塩である。好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、本発明の光学セルに使用される抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。さらに好ましくは、上記抗体は、異なるエピトープを認識する少なくとも2種類以上のモノクローナル抗体の混合物である。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、本発明の光学セルに含まれる抗体試薬は、乾燥状態で提供される。例えば、凍結乾燥により提供され得る。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記緩衝剤は、乾燥状態で担持されている。
本発明により、酸性pH条件下で検体中の被検物質の量を抗原抗体反応原理に基づいて測定する際に、抗体分子間の非特異的凝集の形成を抑制することが可能となる。それにより、抗原が低濃度の場合でも、正確に抗原抗体反応量を捉えることができ高精度あるいは高感度測定が可能となる。さらに、非特異反応を除くことで、抗原が低濃度の場合でも、再現性よく抗原抗体反応に基づく定量測定を行うことができる。
また、例えば、経時的に際限なく凝集していく非特異的凝集に由来する測定値への経時的影響(測定試薬をセッティングしてから測定するまでの時間の長さにより測定値が変化する)も、極力抑えることが可能となる。
さらに、抗体の非特異的凝集が抑制されることにより、試薬ロット間の測定値の差を抑制することができ、新しい試薬ロットに変更して測定する場合に、その都度補正をする必要性を極力減少させることができる。
さらに、本発明に係る免疫反応測定方法により、従来、抗原または抗体の非特異的自己凝集を低減するために使用されたトゥイーン20、オクチルグルコシド、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、スクロースモノラウレート、CHAPSなどの界面活性剤の使用を極力排除し得る。これらの界面活性剤は、非特異的自己凝集を低減するために使用されるが、その量が大きくなると、逆に抗原抗体反応の結合能を弱める問題があった。それ故、界面活性剤の量は厳密に設定されなければならなかった。しかし、本発明により、界面活性剤を使用せずに非特異的自己凝集を除くことができるため、界面活性剤によるタンパク質の変性等の悪影響を排除することが可能となる。
図1は、本発明の一実施形態において使用する抗体の等電点を調べるために使用する、抗体の等電点電気泳動法の概略図である。
図2は、本発明の一実施形態において使用する抗体の等電点を調べるために使用する、電気泳動的pHタイトレーション分析の概略図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る、フタル酸緩衝液を用いた酸性条件下での免疫比朧法によるヒトアルブミンの散乱光強度の測定結果を示すグラフである。
図4は、本発明の一実施形態に係る、フタル酸緩衝液を用いた酸性条件下での免疫比朧法測定における各pHでのブランク値を示すグラフである。
図5は、本発明の一実施形態に係る、等電点6.0のマウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体の反応溶液のpHに依存した自己凝集によるブランク値の変化を示すグラフである。
図6は、pH4.5の反応溶液中での抗体試薬Bおよび抗体試薬Aについて測定された散乱光強度の比較を示すグラフである。
図7は、本発明の一実施形態に係る、免疫反応測定用光学セル2の斜視図(a)と断面図(b)示す図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る、免疫反応測定用光学セル2の動作を示す図である。
図2は、本発明の一実施形態において使用する抗体の等電点を調べるために使用する、電気泳動的pHタイトレーション分析の概略図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る、フタル酸緩衝液を用いた酸性条件下での免疫比朧法によるヒトアルブミンの散乱光強度の測定結果を示すグラフである。
図4は、本発明の一実施形態に係る、フタル酸緩衝液を用いた酸性条件下での免疫比朧法測定における各pHでのブランク値を示すグラフである。
図5は、本発明の一実施形態に係る、等電点6.0のマウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体の反応溶液のpHに依存した自己凝集によるブランク値の変化を示すグラフである。
図6は、pH4.5の反応溶液中での抗体試薬Bおよび抗体試薬Aについて測定された散乱光強度の比較を示すグラフである。
図7は、本発明の一実施形態に係る、免疫反応測定用光学セル2の斜視図(a)と断面図(b)示す図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る、免疫反応測定用光学セル2の動作を示す図である。
本発明に従う免疫反応測定方法、それに用いる試薬、キット、および光学セルの実施形態において、被検物質としての抗原およびそれに対する抗体を混合した反応溶液のpHは、酸性に設定されている。反応溶液として酸性溶液を使用する利点は、被検物質の高濃度領域でのプロゾーン現象の緩和およびプロゾーン現象に伴う分光学的測定値の低下を抑制する効果が得られることである。このような酸性の反応溶液のpHは、好ましくはpH約4〜6、最も好ましくはpH約4.5〜5.0の範囲に設定される。
酸性pHに設定された反応溶液は、抗体の変性等の可能性を最小限にするために、測定を行う直前に調製されることが好ましい。
本発明に従う免疫反応測定方法では、被検物質に対する抗体のpIと、被検物質と抗体とを混合して形成した反応系のpHとの関係が、pI>pHとなるように設定されている。それにより、反応系において抗体分子が陽電荷を帯びるようになり、抗体分子間の電気的反発力により、抗体分子同士の非特異的凝集を抑制することが可能となる。
抗体分子間の電気的反発を促進するためには、抗体のpI値と溶液のpH値との差(|pI−pH|)は大きければ大きいほど良く、|pI−pH|が、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、最も好ましくは1.5以上となるように設定する。
抗体分子のpIは、例えば、等電点電気泳動のpHタイトレーション分析で知ることができる。等電点電気泳動を用いて所定のpI値を有する抗体を分析及び選択するには、例えば、以下のようにすればよい。図1を参照して説明する。等電点電気泳動用アガロースゲルを用いて、試料点着直前にアガロースゲルに電位差をかけpHグラジエントアガロースゲルを作製する(13)。その後、直ちに、試料を点着し、約1時間試料を泳動させる。試料は負に帯電していれば陽極(12)に泳動し始め(14)、また、正に帯電していれば陰極(11)に泳動し始める。いずれも、時間が経過し、pHグラジエントアガロースゲル上を泳動し、ゲル上のpH値と試料のpI値とが近づくにつれて、試料の帯電性が減少し、やがて、非帯電状態となり泳動が止まる。この停止位置のゲルpH値が試料抗体のpI値となる。
さらに、試料のタイトレーション分析も等電点電気泳動装置を用いて行える。図2(a)および図2(b)を参照して説明する。上記と同様に、まず、pHグラジエントアガロースゲルを作製する(15)(図2(a))。その後、作製したゲルを90度回転させて電気泳動用装置にセットする(16)(図2(b))。そこに試料を点着して約1時間泳動させる。これにより、各pH条件における試料の電荷を知ることができる(17)。即ち、酸性側であれば、試料は正に帯電しているので陰極のほうへ、アルカリ性側では、試料は負に帯電しているので陽極のほうへ同時に泳動し始めるため、17に示すように、pH依存のタイトレーションカーブが得られる。これをみれば、どのpH領域で、正負いずれに帯電しており、それはどの程度の大きさなのか、分析することができる。
本発明に従う免疫反応測定に使用する反応溶液系には、好ましくは有機酸または有機酸塩が含まれている。これらの有機酸または有機酸塩は、好ましくは、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。多価カルボン酸とは、複数のカルボニル基をもつ有機酸のことで、本発明では、特に、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩であることが好ましい。トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩の濃度は、任意であり得るが、プロゾーン現象緩和の効果および測定値の低下を抑制する効果を有意に奏するためには、0.3Mを超えないことが好ましい。より好ましくは、トリカルボン酸またはトリカルボン酸塩、およびジカルボン酸またはジカルボン酸塩の濃度は、0.2Mを超えず、最も好ましくは、0.1Mを超えないように選択される。
トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩の例として、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、およびこれらの塩が挙げられる。これらは、例えば、無水クエン酸、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウムニ水和物、クエン酸三カリウム一水和物、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素ニアンモニウム、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、クエン酸三リチウム水和物、クエン酸銅(II)2.5水和物、DL−イソクエン酸三ナトリウム、trans−アコニット酸、cis−アコニット酸無水物などの形態で市販されており、これらを単独または組み合わせで使用することができる。とりわけ、クエン酸、クエン酸塩、アコニット酸、またはアコニット酸塩は、比較的安価で室温保存が可能で、安定性が高いものを入手することができ、また使い易いという観点から、好ましい。
また、ジカルボン酸またはジカルボン酸塩の例として、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびこれらの塩が挙げられる。これらは、例えば、フタル酸、無水フタル酸、フタル酸水素カリウム、フタル酸カリウム、フタル酸二ナトリウム、フタル酸アンモニウム、フタル酸銅(II)、L(−)−リンゴ酸、D−リンゴ酸、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、L(−)−リンゴ酸ナトリウム、L(+)−酒石酸、DL−酒石酸、D(−)−酒石酸、メソ酒石酸一水和物、(+)酒石酸カリウム−水(2/1)、(+)酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、(+)酒石酸アンモニウム、(+)酒石酸水素カリウム、(+)酒石酸水素ナトリウム一水和物、(+)酒石酸ナトリウム二水和物、イタコン酸、イタコン酸無水物、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸第一鉄、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、マロン酸、マロン酸ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、マロン酸タリウム、マロン酸二タリウム、コハク酸、コハク酸アンモニウム、コハク酸二ナトリウム、グルタル酸、アジピン酸、アジピン酸アンモニウム、アジピン酸二アンモニウム、アジピン酸二カリウム、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸などの形態で市販されており、これらを単独または組み合わせで使用することができる。
本発明では、これらの有機酸または有機酸塩を含んだ反応溶液または反応系のpHは酸性に設定されており、好ましくは、pH約4〜6の範囲に設定されている。最も好ましくは、反応系のpHは、pH約4.5〜5.0付近に設定されている。このようにpHを設定することによって、プロゾーン現象の緩和、あるいはプロゾーン現象に伴う測定値低下の抑制の効果を得ることができる。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルに使用される「被検物質に対する抗体」とは、抗原抗体反応原理に基づいて被検物質に対して特異的に結合する抗体のことをいう。それらの抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体等であり得る。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株により産生される。ハイブリドーマ細胞株は、抗体を産生するB細胞と骨髄腫瘍細胞(ミエローマ細胞)を細胞融合することにより得られた抗体産生能と強い増殖能を併せ持つ融合細胞集団より1つの細胞のみを分離し、増殖させて確立される。ポリクローナル抗体は、動物に抗原を投与し、血中に抗原を結合する抗体を多量に出現させ、この血液の全部または一部を採取し、精製することによって得られる。抗原抗体反応(複合体形成)に伴う分子の大きさの変化量を、被検物質の量を測定するための指標として利用する均一系での免疫反応測定では、凝集複合体を形成しやすい抗体を使用することがより好ましい。ポリクローナル抗体は、様々なエピトープを認識する抗体の集合体であるために、容易に凝集複合体を形成するので、好ましい。モノクローナル抗体は、1つのエピトープのみを認識し、1:1の反応に基づく複合体が形成されるため、ポリクローナル抗体の場合と比べて、凝集複合体は形成しにくいが、被検物質が、例えば、モノマー蛋白の5量体であるC反応性タンパク質のような多価抗原の場合には、十分に使用し得る。また、異なるエピトープを認識する少なくとも2種類以上のモノクローナル抗体の混合物とすることにより、一種のポリクローナル抗体を人工的にデザインすることも可能である。
さらに、標識物として、例えば、金属粒子、ラテックス粒子を用いて、標識抗体とすることでさらに凝集複合体の形成が促進され得る。ここで、金コロイド標識抗体の作製は、例えば、以下のようにして行うことができる。500mlの三角フラスコに290nmの吸光度で0.86に調整された塩化金酸溶液(和光純薬工業製)を200ml入れ、沸騰中に1%クエン酸ナトリウム(和光純薬工業製)溶液4mlをすばやく加える。反応溶液は、青色からやがてワインレッド色に変化し、その変化を確認してからさらに15分間放置させる。室温に自然冷却後得られた金コロイド溶液をpH8.9とし、抗体、ウシ血清アルブミンを順次加え、抗体を標識させる。標識後は、未標識抗体とウシ血清アルブミンを除去するために遠心分離を行う。こうして金コロイド標識抗体を作製する。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルに用いられる抗体は、特に限定されず、抗原である被検物質に特異的に結合するものであれば、IgG、IgM、IgE、IgA、またはIgDのいずれのクラスの抗体であってもよい。この中で、IgG抗体が非特異的な反応が比較的少なく、また、市販されているものも比較的多く、入手も容易であるため好ましい(例えば、フナコシ、コスモバイオ等の供給業者により市販されているが、これらに限られない)。また、抗体の由来動物種に関しても、特に限定されないが、ウサギ、ヤギ、マウス由来の抗体が比較的入手も容易であり、使用例も多いため好ましい。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルにおいて使用する所定のpIを有する抗体の精製方法として、種々の分析法、及び精製法が使用され得る。例えば、等電点沈降法、等電点電気泳動、等電点クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等の物質がもつ電荷の差を利用するものが使用され得る。特に、等電点電気泳動が好ましい。
精製された抗体は、抗体試薬として、乾燥された状態で、または溶液状態でのいずれかで提供され得る。長期保存のためには、凍結乾燥状態で保存することが好ましい。このような抗体試薬は、適切な緩衝剤を共に含んでいてもよい。上記抗体試薬は、使用前には、タンパク質の変性等を防止するために中性付近のpHで保存し、使用時に酸性pHを有する緩衝液中に溶解して使用することが好ましい。中性付近のpHに設定するための緩衝液の一例としては、後述する0.05M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、0.15M NaCl、0.04重量%NaN3、pH7.4の組成の緩衝液が挙げられるが、これに限定されない。酸性pHを有する緩衝液の例としては、上記の有機酸または有機酸塩を含む緩衝液が挙げられる。
本発明において、抗体分子のpI値と溶液のpH値との関係に基づいて反応系を設定するときは、抗体分子の標識化の影響、抗体周囲の環境の影響、等電域などを考慮することが重要である。なぜなら、一般に、抗体の等電点pIは約pH5.0〜8.0の間にある(このような抗体の等電点の分布する範囲を本明細書中で「等電域」と呼ぶ)が、抗体に標識を付けた場合や抗体の周囲の環境によっては、5.0より小さくなったり、8.0よりも大きくなったりすることもあり得るからである。即ち、等電点は、緩衝液のイオン強度、緩衝液組成の種類等によって影響されるものである。さらに、抗体を、例えば、金属コロイド、ラテックス粒子、もしくは色素化合物等で標識することによっても影響される。また、ポリクローナル抗体の場合、さらには、モノクローナル抗体であっても、個々の抗体分子は、それぞれわずかに異なる等電点を有するため、このような溶液では、溶解している抗体分子の等電点は、上記のように「等電域」という形で存在していることが通常である。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルにおける被検物質は、特に限定されるものではなく、一般に抗原抗体反応を利用して測定できる物質であればよい。それらには、例えば、タンパク質、核酸、脂質、細菌、ウイルス、ハプテンなどが挙げられる。とりわけ、タンパク質は、臨床検査上の主たる測定対象であるため好ましい。そのようなタンパク質として、例えば、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、hCG(絨毛性腺刺激ホルモン)などのホルモンや、各種免疫グロブリンクラスやサブクラス、補体成分、各種感染症マーカー、C反応性タンパク質、アルブミン、リウマチ因子、血液型抗原などが挙げられる。
本発明に従う免疫反応測定において、抗原抗体複合体の量を測定するために、好ましくは、複合体形成による分子の量と大きさの変化に起因する光学パラメータを測定する方法が用いられる。特に、光学パラメータが、光散乱強度または吸光度であることが好ましい。
本発明の一局面において提供される酸性pH条件下で検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するためのキットは、緩衝液と被検物質に対する抗体を含む試薬とを含み、上記試薬は、上記抗体のpIが上記酸性pHに対して、pI>pHとなるように調製されている。本発明のキットの形態としては、上記抗体試薬は溶液中に含んだ状態で提供されても、乾燥された状態で提供されてもよい。保存安定性の観点から考えると、上記抗体試薬は、凍結乾燥状態で提供されることが好ましい。
本発明の一局面において提供される酸性pH条件下で液体検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するための光学セルは、液体検体を注入するための開口部を有し、前記被検物質に対する抗体を前記液体検体に溶解可能なように前記光学セル内に担持している。ここで、前記液体検体と、前記被検物質に対する抗体との混合により形成される反応系のpHが酸性であって、かつ前記反応系のpHと前記抗体のpIとの関係が、pI>pHとなるように構成されている。ここで、光学セル内にさらに緩衝剤が担持されていてもよい。
本発明の光学セルでは、上記緩衝剤は、上記有機酸または有機酸塩であることが好ましい。上記セル内に移動可能なように担持された有機酸または有機酸塩および上記被検物質に対する抗体は、溶解性の観点から、凍結乾燥状態で提供されることが好ましい。また、上記有機酸または有機酸塩および上記被検物質に対する抗体は、混合して凍結乾燥しても良く、または個別に凍結乾燥しても良い。
本発明の光学セルは、プランジャーを使用することにより、上記開口部から液体検体を吸入可能なように、更に、プランジャーとの接続のための接続用開口部を有することが好ましい。このようにすれば、光学セル内への液体検体の注入が容易となる。
本発明の光学セルの材質としては、実質的に平坦な面を有し、可視光領域で光学的に透明な材質が好ましく、石英ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレンなどがある。特に、ポリスチレンが好ましい。また、透過光測定および散乱光測定ができるものが好ましい。
上記説明および下記の例示的な実施例に基づいて、当業者は、過度の実験を要せずに、抗体のpIおよび反応溶液のpHが調整された本発明に係る免疫反応測定用の反応系を構築することができる。
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
酸性pHに設定された反応溶液は、抗体の変性等の可能性を最小限にするために、測定を行う直前に調製されることが好ましい。
本発明に従う免疫反応測定方法では、被検物質に対する抗体のpIと、被検物質と抗体とを混合して形成した反応系のpHとの関係が、pI>pHとなるように設定されている。それにより、反応系において抗体分子が陽電荷を帯びるようになり、抗体分子間の電気的反発力により、抗体分子同士の非特異的凝集を抑制することが可能となる。
抗体分子間の電気的反発を促進するためには、抗体のpI値と溶液のpH値との差(|pI−pH|)は大きければ大きいほど良く、|pI−pH|が、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、最も好ましくは1.5以上となるように設定する。
抗体分子のpIは、例えば、等電点電気泳動のpHタイトレーション分析で知ることができる。等電点電気泳動を用いて所定のpI値を有する抗体を分析及び選択するには、例えば、以下のようにすればよい。図1を参照して説明する。等電点電気泳動用アガロースゲルを用いて、試料点着直前にアガロースゲルに電位差をかけpHグラジエントアガロースゲルを作製する(13)。その後、直ちに、試料を点着し、約1時間試料を泳動させる。試料は負に帯電していれば陽極(12)に泳動し始め(14)、また、正に帯電していれば陰極(11)に泳動し始める。いずれも、時間が経過し、pHグラジエントアガロースゲル上を泳動し、ゲル上のpH値と試料のpI値とが近づくにつれて、試料の帯電性が減少し、やがて、非帯電状態となり泳動が止まる。この停止位置のゲルpH値が試料抗体のpI値となる。
さらに、試料のタイトレーション分析も等電点電気泳動装置を用いて行える。図2(a)および図2(b)を参照して説明する。上記と同様に、まず、pHグラジエントアガロースゲルを作製する(15)(図2(a))。その後、作製したゲルを90度回転させて電気泳動用装置にセットする(16)(図2(b))。そこに試料を点着して約1時間泳動させる。これにより、各pH条件における試料の電荷を知ることができる(17)。即ち、酸性側であれば、試料は正に帯電しているので陰極のほうへ、アルカリ性側では、試料は負に帯電しているので陽極のほうへ同時に泳動し始めるため、17に示すように、pH依存のタイトレーションカーブが得られる。これをみれば、どのpH領域で、正負いずれに帯電しており、それはどの程度の大きさなのか、分析することができる。
本発明に従う免疫反応測定に使用する反応溶液系には、好ましくは有機酸または有機酸塩が含まれている。これらの有機酸または有機酸塩は、好ましくは、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。多価カルボン酸とは、複数のカルボニル基をもつ有機酸のことで、本発明では、特に、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩であることが好ましい。トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩の濃度は、任意であり得るが、プロゾーン現象緩和の効果および測定値の低下を抑制する効果を有意に奏するためには、0.3Mを超えないことが好ましい。より好ましくは、トリカルボン酸またはトリカルボン酸塩、およびジカルボン酸またはジカルボン酸塩の濃度は、0.2Mを超えず、最も好ましくは、0.1Mを超えないように選択される。
トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩の例として、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、およびこれらの塩が挙げられる。これらは、例えば、無水クエン酸、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウムニ水和物、クエン酸三カリウム一水和物、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素ニアンモニウム、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、クエン酸三リチウム水和物、クエン酸銅(II)2.5水和物、DL−イソクエン酸三ナトリウム、trans−アコニット酸、cis−アコニット酸無水物などの形態で市販されており、これらを単独または組み合わせで使用することができる。とりわけ、クエン酸、クエン酸塩、アコニット酸、またはアコニット酸塩は、比較的安価で室温保存が可能で、安定性が高いものを入手することができ、また使い易いという観点から、好ましい。
また、ジカルボン酸またはジカルボン酸塩の例として、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびこれらの塩が挙げられる。これらは、例えば、フタル酸、無水フタル酸、フタル酸水素カリウム、フタル酸カリウム、フタル酸二ナトリウム、フタル酸アンモニウム、フタル酸銅(II)、L(−)−リンゴ酸、D−リンゴ酸、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、L(−)−リンゴ酸ナトリウム、L(+)−酒石酸、DL−酒石酸、D(−)−酒石酸、メソ酒石酸一水和物、(+)酒石酸カリウム−水(2/1)、(+)酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、(+)酒石酸アンモニウム、(+)酒石酸水素カリウム、(+)酒石酸水素ナトリウム一水和物、(+)酒石酸ナトリウム二水和物、イタコン酸、イタコン酸無水物、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸第一鉄、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、マロン酸、マロン酸ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、マロン酸タリウム、マロン酸二タリウム、コハク酸、コハク酸アンモニウム、コハク酸二ナトリウム、グルタル酸、アジピン酸、アジピン酸アンモニウム、アジピン酸二アンモニウム、アジピン酸二カリウム、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸などの形態で市販されており、これらを単独または組み合わせで使用することができる。
本発明では、これらの有機酸または有機酸塩を含んだ反応溶液または反応系のpHは酸性に設定されており、好ましくは、pH約4〜6の範囲に設定されている。最も好ましくは、反応系のpHは、pH約4.5〜5.0付近に設定されている。このようにpHを設定することによって、プロゾーン現象の緩和、あるいはプロゾーン現象に伴う測定値低下の抑制の効果を得ることができる。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルに使用される「被検物質に対する抗体」とは、抗原抗体反応原理に基づいて被検物質に対して特異的に結合する抗体のことをいう。それらの抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体等であり得る。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株により産生される。ハイブリドーマ細胞株は、抗体を産生するB細胞と骨髄腫瘍細胞(ミエローマ細胞)を細胞融合することにより得られた抗体産生能と強い増殖能を併せ持つ融合細胞集団より1つの細胞のみを分離し、増殖させて確立される。ポリクローナル抗体は、動物に抗原を投与し、血中に抗原を結合する抗体を多量に出現させ、この血液の全部または一部を採取し、精製することによって得られる。抗原抗体反応(複合体形成)に伴う分子の大きさの変化量を、被検物質の量を測定するための指標として利用する均一系での免疫反応測定では、凝集複合体を形成しやすい抗体を使用することがより好ましい。ポリクローナル抗体は、様々なエピトープを認識する抗体の集合体であるために、容易に凝集複合体を形成するので、好ましい。モノクローナル抗体は、1つのエピトープのみを認識し、1:1の反応に基づく複合体が形成されるため、ポリクローナル抗体の場合と比べて、凝集複合体は形成しにくいが、被検物質が、例えば、モノマー蛋白の5量体であるC反応性タンパク質のような多価抗原の場合には、十分に使用し得る。また、異なるエピトープを認識する少なくとも2種類以上のモノクローナル抗体の混合物とすることにより、一種のポリクローナル抗体を人工的にデザインすることも可能である。
さらに、標識物として、例えば、金属粒子、ラテックス粒子を用いて、標識抗体とすることでさらに凝集複合体の形成が促進され得る。ここで、金コロイド標識抗体の作製は、例えば、以下のようにして行うことができる。500mlの三角フラスコに290nmの吸光度で0.86に調整された塩化金酸溶液(和光純薬工業製)を200ml入れ、沸騰中に1%クエン酸ナトリウム(和光純薬工業製)溶液4mlをすばやく加える。反応溶液は、青色からやがてワインレッド色に変化し、その変化を確認してからさらに15分間放置させる。室温に自然冷却後得られた金コロイド溶液をpH8.9とし、抗体、ウシ血清アルブミンを順次加え、抗体を標識させる。標識後は、未標識抗体とウシ血清アルブミンを除去するために遠心分離を行う。こうして金コロイド標識抗体を作製する。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルに用いられる抗体は、特に限定されず、抗原である被検物質に特異的に結合するものであれば、IgG、IgM、IgE、IgA、またはIgDのいずれのクラスの抗体であってもよい。この中で、IgG抗体が非特異的な反応が比較的少なく、また、市販されているものも比較的多く、入手も容易であるため好ましい(例えば、フナコシ、コスモバイオ等の供給業者により市販されているが、これらに限られない)。また、抗体の由来動物種に関しても、特に限定されないが、ウサギ、ヤギ、マウス由来の抗体が比較的入手も容易であり、使用例も多いため好ましい。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルにおいて使用する所定のpIを有する抗体の精製方法として、種々の分析法、及び精製法が使用され得る。例えば、等電点沈降法、等電点電気泳動、等電点クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等の物質がもつ電荷の差を利用するものが使用され得る。特に、等電点電気泳動が好ましい。
精製された抗体は、抗体試薬として、乾燥された状態で、または溶液状態でのいずれかで提供され得る。長期保存のためには、凍結乾燥状態で保存することが好ましい。このような抗体試薬は、適切な緩衝剤を共に含んでいてもよい。上記抗体試薬は、使用前には、タンパク質の変性等を防止するために中性付近のpHで保存し、使用時に酸性pHを有する緩衝液中に溶解して使用することが好ましい。中性付近のpHに設定するための緩衝液の一例としては、後述する0.05M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、0.15M NaCl、0.04重量%NaN3、pH7.4の組成の緩衝液が挙げられるが、これに限定されない。酸性pHを有する緩衝液の例としては、上記の有機酸または有機酸塩を含む緩衝液が挙げられる。
本発明において、抗体分子のpI値と溶液のpH値との関係に基づいて反応系を設定するときは、抗体分子の標識化の影響、抗体周囲の環境の影響、等電域などを考慮することが重要である。なぜなら、一般に、抗体の等電点pIは約pH5.0〜8.0の間にある(このような抗体の等電点の分布する範囲を本明細書中で「等電域」と呼ぶ)が、抗体に標識を付けた場合や抗体の周囲の環境によっては、5.0より小さくなったり、8.0よりも大きくなったりすることもあり得るからである。即ち、等電点は、緩衝液のイオン強度、緩衝液組成の種類等によって影響されるものである。さらに、抗体を、例えば、金属コロイド、ラテックス粒子、もしくは色素化合物等で標識することによっても影響される。また、ポリクローナル抗体の場合、さらには、モノクローナル抗体であっても、個々の抗体分子は、それぞれわずかに異なる等電点を有するため、このような溶液では、溶解している抗体分子の等電点は、上記のように「等電域」という形で存在していることが通常である。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルにおける被検物質は、特に限定されるものではなく、一般に抗原抗体反応を利用して測定できる物質であればよい。それらには、例えば、タンパク質、核酸、脂質、細菌、ウイルス、ハプテンなどが挙げられる。とりわけ、タンパク質は、臨床検査上の主たる測定対象であるため好ましい。そのようなタンパク質として、例えば、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、hCG(絨毛性腺刺激ホルモン)などのホルモンや、各種免疫グロブリンクラスやサブクラス、補体成分、各種感染症マーカー、C反応性タンパク質、アルブミン、リウマチ因子、血液型抗原などが挙げられる。
本発明に従う免疫反応測定において、抗原抗体複合体の量を測定するために、好ましくは、複合体形成による分子の量と大きさの変化に起因する光学パラメータを測定する方法が用いられる。特に、光学パラメータが、光散乱強度または吸光度であることが好ましい。
本発明の一局面において提供される酸性pH条件下で検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するためのキットは、緩衝液と被検物質に対する抗体を含む試薬とを含み、上記試薬は、上記抗体のpIが上記酸性pHに対して、pI>pHとなるように調製されている。本発明のキットの形態としては、上記抗体試薬は溶液中に含んだ状態で提供されても、乾燥された状態で提供されてもよい。保存安定性の観点から考えると、上記抗体試薬は、凍結乾燥状態で提供されることが好ましい。
本発明の一局面において提供される酸性pH条件下で液体検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するための光学セルは、液体検体を注入するための開口部を有し、前記被検物質に対する抗体を前記液体検体に溶解可能なように前記光学セル内に担持している。ここで、前記液体検体と、前記被検物質に対する抗体との混合により形成される反応系のpHが酸性であって、かつ前記反応系のpHと前記抗体のpIとの関係が、pI>pHとなるように構成されている。ここで、光学セル内にさらに緩衝剤が担持されていてもよい。
本発明の光学セルでは、上記緩衝剤は、上記有機酸または有機酸塩であることが好ましい。上記セル内に移動可能なように担持された有機酸または有機酸塩および上記被検物質に対する抗体は、溶解性の観点から、凍結乾燥状態で提供されることが好ましい。また、上記有機酸または有機酸塩および上記被検物質に対する抗体は、混合して凍結乾燥しても良く、または個別に凍結乾燥しても良い。
本発明の光学セルは、プランジャーを使用することにより、上記開口部から液体検体を吸入可能なように、更に、プランジャーとの接続のための接続用開口部を有することが好ましい。このようにすれば、光学セル内への液体検体の注入が容易となる。
本発明の光学セルの材質としては、実質的に平坦な面を有し、可視光領域で光学的に透明な材質が好ましく、石英ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレンなどがある。特に、ポリスチレンが好ましい。また、透過光測定および散乱光測定ができるものが好ましい。
上記説明および下記の例示的な実施例に基づいて、当業者は、過度の実験を要せずに、抗体のpIおよび反応溶液のpHが調整された本発明に係る免疫反応測定用の反応系を構築することができる。
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(比較例)酸性条件下でのヒトアルブミンの免疫比朧法による分析
以下に示す緩衝液などの調製には、MILLI−Q SP TOC(Mililipore社製)でろ過した純水を使用した。また、以下で特に記載の無い塩、緩衝剤などの試薬は和光純薬工業製の特級試薬を用いた。ただし、ポリエチレングリコール6,000は1級試薬を用いた。
まず、抗体試薬を調製した。ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体は、ヒトアルブミンを免疫したウサギより採取した抗血清より、プロテインA(アマシャム・ファルマシア製)カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。精製は、1.5M グリシン,3.0M NaCl、pH8.9の結合緩衝液を用いて、プロテインAをカラム中で平衡化した後に、抗血清をカラムにアプライし、抗血清中の抗体を特異的にプロテインAに吸着させて、抗血清中の抗体以外の成分と分離した。分離後、0.1M クエン酸、pH4.0の溶出緩衝液を流し、抗体をプロテインAから溶出させ、回収した。溶出回収した抗体を分画分子量1万の透析チューブに入れ、0.05M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(同仁製、以下モプスと略する)、0.15M NaCl、0.04重量%NaN3、pH7.4の組成の緩衝液(5L×2回)で透析を行い、緩衝液成分を置換した。透析後の抗体溶液中の不溶物を、10,000gの遠心分離により除いた。280nmでの吸光度測定により抗体濃度を測定し、最終的に、透析で用いた緩衝液で3.0mg/mlに調製し、これを抗体試薬(抗体試薬A)とした。
次に、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液の調製を、次のようにして行った。多価カルボン酸には、フタル酸を用いた。最終濃度でフタル酸水素カリウムを0.05M、ポリエチレングリコール6000を4重量%になるように計量し、調製目的体積の約90%の純水で溶解した。緩衝液のpHを、NaOHを用いて4.0、4.5、5.0、5.5、および6.0にそれぞれ調整した。
免疫反応測定には、分光蛍光光度計(島津製作所製、型番RF−5300PC)を使用した。分光蛍光光度計の試料室に高温セルホルダー(島津製作所、型番06−15440)を配置し、恒温槽(TITEC製、商品名COOLNIT BATH EL−15)に接続し、温度25℃に保った水を循環して、測定時の温度を一定に保てるようにした。分光光度計の測定条件については、励起、蛍光波長を共に670nmとし、蛍光側、励起側共にバンド幅3nmに、感度は高感度に設定した。
測定は次のようにして行った。2.87mlの上記多価カルボン酸を含む緩衝液と0.1mlの抗体試薬Aとを攪拌混合した後に、これに0.03mlの所定濃度のヒトアルブミン溶液を加え攪拌混合することにより、測定用反応溶液を調製した。この反応溶液を蛍光分析用石英セルに移し、そのセルを分光蛍光光度計に設置し、温度測定のためのT型熱電対(RSコンポーネンツより入手、型番219−4696)をセル内に浸漬した。ヒトアルブミンを混合後2分間経過した時点から、タイムコース測定で0.04秒間隔で300秒、分光学的測定を行った。測定中の温度は、T型熱電対をデジタルマルチサーモメーター(アドバンテスト製、型番TR2114)に接続してモニタした。得られた200から300秒の間の測定値の平均値を求め、これをその反応溶液についての測定値とした。これらの手順を、ヒトアルブミンの濃度を変えて行った。
結果を図3および図4に示す。図3は、横軸のヒトアルブミン濃度に対して縦軸に散乱光強度をプロットしたものである。反応溶液のpH(pH4.0、4.5、5.0、5.5、および6.0)に依存して、プロゾーン現象が緩和され、そして測定値の減少が抑制されているのが観察される。測定値の減少の抑制効果は、特に、pH4.5の反応系において最も顕著であった。
図4は、横軸の反応系のpHに対して縦軸にヒトアルブミン濃度が0の場合の散乱光強度(ブランク値)をプロットしたものである。pH5.0以下、特にpH4.5以下で、ブランク値が高いことが観察された。
この原因は使用したウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体のおよその等電域が約4.5〜7.4付近にあることに起因すると考えられた。特に、pH5.0以下の酸性条件下では、タンパク質の変性に対する影響も考えられ、この変性の影響も含めて、このpH付近に等電点を有する抗体分子どうしの電気的反発力が弱まることによる抗体分子間での非特異吸着がより強く現れ、それが散乱光強度に寄与して、ブランク値が特に高くなるものと考えられた。
[実施例1]pHと抗体のpIの関係がブランク値に与える影響の確認
pHと抗体のpIの関係がブランク値に与える影響を、性状の一定なモノクローナル抗体を用いて確認した。抗体には、抗ヒトアルブミンマウスモノクローナル抗体FU−302(日本バイオテスト社製)を使用した。使用した抗体のpIは、等電点電気泳動による判定で、約pH6にあった。抗体濃度を280nmでの吸光度測定により求めて、0.04重量%NaN3を含むPBS緩衝液(8g/l NaCl,0.2g/l KCl,1.15g/l Na2HPO4・12H2O,0.2g/l KH2PO4,pH7.4)で希釈して、3.0mg/mlとした。
緩衝液には、0.025M 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(同仁製、以下メスと略する)、0.025M モプス、および4重量% ポリエチレングリコール6000の組成のpHが4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、および7.5のものを用いた。
測定装置は以下のように自作のものを使用した。光源としては、270Hzで変調した波長680nmの出射出力約15mWの半導体レーザーポインタ(キコー技研(株)製の型番MLXS−D−12−680−35)を用いた。検出器としては、可視赤外精密測光用シリコンフォトダイオード(浜松フォトニクス(株)製の型番S2387−66R)を用いた。サンプル用のセルとしては、厚さ0.1cmの光学ガラス板を張り合わせて、容量約200μlの正四角柱形状としたものを用いた。
光源より0.5cmのところに、その一面が光源に対して垂直になるようにセルを配置し、検出器は、セルより5.5cm離れた場所に、光源からの光の方向に対して90°の角度を成す向きに配置した。検出器に迷光が入射しないように、検出器とセルとの間には遮光筒を設けた。検出器により検知された光量に依存した電流信号は、電流電圧変換回路(106V/A)およびオペアンプによる増幅回路を経て100倍の電圧信号に増幅した後、ロックインアンプ(エヌエフ回路設計ブロック製、型番5610B)を通して位相敏感検波し、GPIB制御によりコンピュータに取り込めるようにした。
各緩衝液についてのブランク値の測定は次のようにして行った。反応溶液の混合比は、緩衝液が187μl、そして抗体溶液が7μlとした。反応溶液における抗体の最終濃度は、約0.11mg/mlである。
セル内に上記容量の緩衝液および抗体溶液を加えて攪拌混合した。散乱光の測定は、抗体溶液を加える10秒前から開始し、0.5秒間隔で300秒間継続した。測定値は電圧値として得られた。得られた各時間における測定値の200〜300秒の間の平均値を求め、これを各緩衝液についてのブランク値とした。測定は室温(約25℃)で行った。
図5に結果を示す。図5の縦軸は散乱光強度を示し、横軸はpHを表す。示されるように、使用した抗体の等電点(約6.0)付近のpH5.5〜6.5においては、ブランク値が高くなったが、等電点よりも0.5低いpHすなわちpH5.5付近で既にブランク値の抑制が観察され、抗体の等電点よりも1.0以上低いpHすなわち、pI−pH≧1.0となるpH5.0以下では、ブランク値は顕著に(3分の1程度に)抑えられたことが観察された。したがって、等電点よりも約1.0以上低いpH条件の場合に、顕著にブランク値低減効果が高いことがわかった。特に、この効果は、pI−pH≧1.5となるpH4.5以下でより高く、ほぼ最大の効果を示し、ブランク値は5分の1程度に抑えられた。
[実施例2]ヒトアルブミン測定用反応試薬キットの作製
以上の結果を踏まえて、pH4.5で反応させるためのヒトアルブミン測定用反応試薬キットを作製した。
上記の結果から、免疫比朧法のような免疫反応測定法において、プロゾーン現象の緩和と測定値の低下防止という効果を維持しつつ、さらにブランク値を抑えるためには、酸性緩衝液のpHに対してできるだけ離れたpH領域に等電域を有する抗体を試験試薬として使用すればよいであろうと考えられた。図4の結果を鑑みるに、反応溶液(測定溶液)のpHから少なくとも1.0以上離れた領域に等電域を持つ抗体を選択することが最も望ましいと考えられた。反応溶液のpHから少なくとも1.0以上離れたpH5.5以上に等電点を有する、ヒトアルブミンの異なるエピトープに結合する2種類以上のモノクローナル抗体を組み合わせて、抗体試薬を作製することもできるが、本実施例では、ポリクローナル抗体を用いた抗体試薬の構成方法を示した。
まず、抗体試薬を調製した。ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体は、比較例と同様の抗血清より、プロテインAカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。精製は、1.5Mグリシン、3.0M NaCl、pH8.9の結合緩衝液を用いて、プロテインAをカラム中で平衡化した後に、抗血清をカラムにアプライし、抗血清中の抗体を特異的にプロテインAに吸着させて、抗血清中の抗体以外の成分と分離した。分離後、0.1Mクエン酸,pH4.0の溶出緩衝液を流し、抗体をプロテインAから溶出させ、回収した。溶出回収した抗体を分画分子量1万の透析チューブに入れ、0.05M 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(同仁製、以下メスと略する)、0.04重量%NaN3、pH5.5の組成の緩衝液(5L×2回)で透析を行い、緩衝液成分を置換した。
透析後の抗体溶液中の不溶物を10,000gの遠心分離により除いた後、DEAE陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにアプライし、非吸着分画を採取した。この操作により、pH5.5で陽性に帯電している抗体、すなわち、pIが5.5よりも大きな抗体を選択的に採取することができる。採取した非吸着分画を0.05M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(同仁製、以下モプスと略する)、0.15M NaCl、0.04重量%NaN3、pH7.4の組成の緩衝液(5L×2回)で透析を行い、緩衝液成分を置換した。透析後の抗体溶液中の不溶物は10,000gの遠心分離により除いた。限外ろ過による濃縮後、280nmでの吸光度測定により抗体濃度を測定し、最終的に、透析で用いた緩衝液で3.0mg/mlに調製し、これを抗体試薬(抗体試薬B)とした。抗体試薬BはpI値5.5〜7.4の範囲の等電域を有する抗体のみを含んだものである。
上記で調製した抗体濃度は、特にこれに限定されるものではない。作製した抗体溶液は室温でも保存することができるが、抗体の変性防止の点からは、より低温保存が好ましく、4℃で保存することがより好ましい。
次に多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液の調製を次のようにして行った。多価カルボン酸には、フタル酸を用いた。最終濃度でフタル酸水素カリウムを0.05M、ポリエチレングリコール6000を4重量%になるように計量し、調製目的体積の約90%の純水で溶解した。緩衝液のpHはNaOHを用いて4.5に調整した。
以上のように構成した多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液と、上記で調製した抗体試薬とを組み合わせることにより、ヒトアルブミン測定用反応試薬キットを構成することができる。
以上のように構成したヒトアルブミン測定用反応試薬キットを使用する際には、反応系を形成させるために、ヒトアルブミンを含む試料(検体)、抗体試薬、および多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液を混合して使用する。
上記混合は、任意の方法によればよい。混合する比率は、必要とするヒトアルブミン濃度の測定範囲に応じて決定することができる。混合により形成された反応系で生じたヒトアルブミンと抗体との免疫反応による変量(例えば、抗原抗体複合体の量)を測定することにより、検体中の抗原濃度を知ることができる。
なお、抗体をラテックス、金コロイド、磁気微粒子などの微粒子担体に固定化させるか、あるいは、抗体に酵素、色素、蛍光物質、発光物質などを標識してもよい。
なお、上記キットの調製では、pH調整にNaOHを使用したが、KOH、LiOH、NH4OH、Ca(OH)2、Mg(OH)2などの水酸化物を使用してもよい。
また、実施例では、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液の調製にフタル酸水素カリウムを使用したが、他の多価カルボン酸または多価カルボン酸塩であってもよく、例えば、無水クエン酸、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウムニ水和物、クエン酸三カリウム一水和物、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素ニアンモニウム、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、クエン酸三リチウム水和物、クエン酸銅(II)2.5水和物、DL−イソクエン酸三ナトリウム、trans−アコニット酸、cis−アコニット酸無水物、フタル酸、無水フタル酸、フタル酸カリウム、フタル酸二ナトリウム、フタル酸アンモニウム、フタル酸銅(II)、L(−)−リンゴ酸、D−リンゴ酸、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、L(−)−リンゴ酸ナトリウム、L(+)−酒石酸、DL−酒石酸、D(−)−酒石酸、メソ酒石酸一水和物、(+)酒石酸カリウム−水(2/1)、(+)酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、(+)酒石酸アンモニウム、(+)酒石酸水素カリウム、(+)酒石酸水素ナトリウム一水和物、(+)酒石酸ナトリウム二水和物、イタコン酸、イタコン酸無水物、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸第一鉄、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、マロン酸、マロン酸ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、マロン酸タリウム、マロン酸二タリウム、コハク酸、コハク酸アンモニウム、コハク酸二ナトリウム、グルタル酸、アジピン酸、アジピン酸アンモニウム、アジピン酸二アンモニウム、アジピン酸二カリウム、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸などのいずれかを用いてもよい。また、これらを組み合わせて使用することもでき、その場合のpH調整は、純水に溶解時のpHが調整目的とするpHよりアルカリ側の場合はHClなどを、酸性側の場合は上記で示した水酸化物などを利用して行えばよく、また、上記で例示した多価カルボン酸または多価カルボン酸塩の混合比を調整して行ってもよい。
また、抗体溶液の緩衝剤成分及びpHは、上記組成及びpHに限定されない。例えば、一液系の試薬、すなわち、試験溶液を構成する場合は、抗体溶液に多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含ませるため、及び反応系のpHを酸性にするために、目的の多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む目的の酸性pHに調整した緩衝液で透析を行えばよい。
また、本実施例では抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を用いた場合の試薬の構成方法を示したが、ヒトアルブミンの異なる部位に結合する2種類以上のモノクローナル抗体を混合して構成してもよく、その場合は、用いる抗体のpIは使用する緩衝液のpHよりも、大きいものとし、好ましくは、0.5以上、より好ましくは1.0以上、最も好ましくは1.5以上大きいものとする。本実施例の場合であれば、pI5.5以上であることがより好ましく、pI6.0以上であれば最も好ましい。
[実施例3]ヒトアルブミン測定用反応試薬キットのブランク値低減効果
実施例2で調製したpI値5.5〜7.4の範囲の等電域を有する抗体のみを含んだ抗体試薬Bと、比較例で調製したpI値4.5〜7.4の範囲の等電域を有する抗体のみを含んだ抗体試薬Aとを使用して、比較例と同様の手順で、pH4.5の反応溶液中で分光学的測定を行った。測定の際の反応溶液中の緩衝液成分は、抗体試薬Aおよび抗体試薬Bについて、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む互いに同一なものとした。
結果を図6に示す。示されるように、反応系に加えたヒトアルブミン濃度が0の時の抗体試薬Bについての散乱光強度(すなわち、ブランク値)が、比較例で使用した抗体試薬Aのブランク値よりも顕著に減少していることがわかる。
このように、使用する緩衝液のpHに対して適切な等電域を有する抗体を選択して用いることにより、免疫反応測定法におけるブランク値の上昇を抑制することができ、本発明の一実施形態に係るヒトアルブミン測定用反応試薬キットの有効性が確認できた。
[実施例4]免疫反応測定用光学セルの構成
以下に、本発明の免疫反応測定用光学セルについて、図面を参照しながら詳細に説明する。図7(a)は、本発明の免疫反応測定用光学セル2の構成を示す斜視図であり、図7(b)はその断面図である。
本実施例における免疫反応測定用光学セル2は、光学測定用窓21、試料導入路22、開口部23、およびプランジャー接合部24を備える。本実施例では、光学セル2の光学測定用窓21が存在する部分の立体形状を正四角柱とし、四面共に実質的に平坦で、可視光領域において光学的に透明な材質で構成されている。光路長を1cmとし、約1mlの試料を吸入可能とし、光学測定ができる構成とした。本実施例においては、セルの材質としてはポリスチレンを使用した。
免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21から試料導入路22にかけての内壁に、試薬25を凍結乾燥により、移動可能なように担持した。本実施例の場合、試薬25は、1mlの液体試料を導入した時の最終濃度で、それぞれ、ヒトアルブミン抗体が1mg/ml、フタル酸が0.05M、そしてポリエチレングリコール6000が4重量%、pH5.0の内訳となるように調製した。
次に、以上のようにして構成した免疫反応測定用光学セル2の構成の概要について、図8(a)〜図8(d)を参照しながら説明する。
図8(a)は、免疫反応測定用光学セル2を装着した分析装置3の主な構成を模式的に示す。本実施例では、分析装置3は、筐体31の中に免疫反応測定用光学セル2と接合されたプランジャー32と、免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21の一面と垂直に配置された光源35と、光源35の透過光路上に光学測定用窓21の他の一面と垂直に配置された透過光検出用ディテクタ33と、光源35の透過光路と同じ高さで、光学測定用窓21のさらに他の一面と垂直に配置された散乱光検出用ディテクタ34とを含む検出部分とからなる構成とした。
図8(b)〜図8(d)に示されるように、プランジャー32を上へ動かすことにより、開口部23より液体試料36が流入する。この液体試料36の流入によって、図8(b)に示すように、免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21の内壁に、凍結乾燥により、移動可能なように担持されたヒトアルブミン抗体、フタル酸、およびポリエチレングリコール6000からなる試薬25が液体試料36と触れ、試薬25が液体試料36中に分散され、溶解し始める(液体試料中に分散された試薬37)。図8(c)のように、更にプランジャー32を上に動かすことにより、液体試料36は免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21上の光源35、透過光検出用ディテクタ33、散乱光検出用ディテクタ34が存在する部位よりも上部まで達する。
液体試料36の開口部23からの液体試料36の流入により生じた流動により、液体試料中に分散されたヒトアルブミン抗体、フタル酸、およびポリエチレングリコール6000からなる試薬37は、最終的に図8(d)のように、液体試料36中に溶解する。これにより、液体試料36中に含まれるヒトアルブミンとヒトアルブミン抗体により抗原抗体反応による凝集複合体が生成され、液体試料に濁りが生じる。
この濁りの度合いは、液体試料36中に含まれるヒトアルブミン濃度に依存するため、この程度を測定することにより、液体試料36中に含まれるヒトアルブミン濃度を知ることが可能である。
液体試料36の濁りの度合いを測定するために、光源35から光を、光学測定用窓21の一面に対してほぼ垂直に照射する。光学測定用窓21の一面から入射した光は、液体試料36中を透過した後、直進性の高い光は、光源35側の光学測定用窓21の対面の光学測定用窓21を通して出射し、透過光検出用ディテクタ33において受光され、液体試料36中の抗原抗体反応による凝集複合体により散乱された光は、光源35側の光学測定用窓21と垂直な光学測定用窓21を通して出射し、散乱光検出用ディテクタ34において受光される。ここで、図には示さなかったが、いずれのディテクタからの出力もA/D変換され、マイコンまたはPCに取り込み、データ処理される。
透過光検出用ディテクタ33及び散乱光検出用ディテクタ34で受光された光の強度の少なくともいずれか一方に基づき、生じた試料と免疫反応測定用試薬との反応を測定することができる。透過光検出用ディテクタ33での光の強度に基づく場合は、吸光度または濁度を求める。この場合、あらかじめ、液体試料36の導入前の透過光を参照光とする。
散乱光検出用ディテクタ34での光の強度に基づく場合は、散乱光強度を求める。試料と試薬との反応を測定するために、いずれの指標を用いても良いが、試料と試薬との反応による濁りの度合いが低い場合は、散乱光強度を求める方がより高感度な測定ができる。
以上述べたように、本実施例の免疫反応測定用光学セル2によれば、試料のサンプリングと同時に、速やかに抗原抗体反応を分光測定することができるので、特に反応の過渡的な変化を測定する場合に、タイムロスが少なく、過渡的変化を確実に捉えることができる。また、光学セルへ液体試料・試薬混合液を移し替える必要がなく操作が簡便となる。
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
以下に示す緩衝液などの調製には、MILLI−Q SP TOC(Mililipore社製)でろ過した純水を使用した。また、以下で特に記載の無い塩、緩衝剤などの試薬は和光純薬工業製の特級試薬を用いた。ただし、ポリエチレングリコール6,000は1級試薬を用いた。
まず、抗体試薬を調製した。ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体は、ヒトアルブミンを免疫したウサギより採取した抗血清より、プロテインA(アマシャム・ファルマシア製)カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。精製は、1.5M グリシン,3.0M NaCl、pH8.9の結合緩衝液を用いて、プロテインAをカラム中で平衡化した後に、抗血清をカラムにアプライし、抗血清中の抗体を特異的にプロテインAに吸着させて、抗血清中の抗体以外の成分と分離した。分離後、0.1M クエン酸、pH4.0の溶出緩衝液を流し、抗体をプロテインAから溶出させ、回収した。溶出回収した抗体を分画分子量1万の透析チューブに入れ、0.05M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(同仁製、以下モプスと略する)、0.15M NaCl、0.04重量%NaN3、pH7.4の組成の緩衝液(5L×2回)で透析を行い、緩衝液成分を置換した。透析後の抗体溶液中の不溶物を、10,000gの遠心分離により除いた。280nmでの吸光度測定により抗体濃度を測定し、最終的に、透析で用いた緩衝液で3.0mg/mlに調製し、これを抗体試薬(抗体試薬A)とした。
次に、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液の調製を、次のようにして行った。多価カルボン酸には、フタル酸を用いた。最終濃度でフタル酸水素カリウムを0.05M、ポリエチレングリコール6000を4重量%になるように計量し、調製目的体積の約90%の純水で溶解した。緩衝液のpHを、NaOHを用いて4.0、4.5、5.0、5.5、および6.0にそれぞれ調整した。
免疫反応測定には、分光蛍光光度計(島津製作所製、型番RF−5300PC)を使用した。分光蛍光光度計の試料室に高温セルホルダー(島津製作所、型番06−15440)を配置し、恒温槽(TITEC製、商品名COOLNIT BATH EL−15)に接続し、温度25℃に保った水を循環して、測定時の温度を一定に保てるようにした。分光光度計の測定条件については、励起、蛍光波長を共に670nmとし、蛍光側、励起側共にバンド幅3nmに、感度は高感度に設定した。
測定は次のようにして行った。2.87mlの上記多価カルボン酸を含む緩衝液と0.1mlの抗体試薬Aとを攪拌混合した後に、これに0.03mlの所定濃度のヒトアルブミン溶液を加え攪拌混合することにより、測定用反応溶液を調製した。この反応溶液を蛍光分析用石英セルに移し、そのセルを分光蛍光光度計に設置し、温度測定のためのT型熱電対(RSコンポーネンツより入手、型番219−4696)をセル内に浸漬した。ヒトアルブミンを混合後2分間経過した時点から、タイムコース測定で0.04秒間隔で300秒、分光学的測定を行った。測定中の温度は、T型熱電対をデジタルマルチサーモメーター(アドバンテスト製、型番TR2114)に接続してモニタした。得られた200から300秒の間の測定値の平均値を求め、これをその反応溶液についての測定値とした。これらの手順を、ヒトアルブミンの濃度を変えて行った。
結果を図3および図4に示す。図3は、横軸のヒトアルブミン濃度に対して縦軸に散乱光強度をプロットしたものである。反応溶液のpH(pH4.0、4.5、5.0、5.5、および6.0)に依存して、プロゾーン現象が緩和され、そして測定値の減少が抑制されているのが観察される。測定値の減少の抑制効果は、特に、pH4.5の反応系において最も顕著であった。
図4は、横軸の反応系のpHに対して縦軸にヒトアルブミン濃度が0の場合の散乱光強度(ブランク値)をプロットしたものである。pH5.0以下、特にpH4.5以下で、ブランク値が高いことが観察された。
この原因は使用したウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体のおよその等電域が約4.5〜7.4付近にあることに起因すると考えられた。特に、pH5.0以下の酸性条件下では、タンパク質の変性に対する影響も考えられ、この変性の影響も含めて、このpH付近に等電点を有する抗体分子どうしの電気的反発力が弱まることによる抗体分子間での非特異吸着がより強く現れ、それが散乱光強度に寄与して、ブランク値が特に高くなるものと考えられた。
[実施例1]pHと抗体のpIの関係がブランク値に与える影響の確認
pHと抗体のpIの関係がブランク値に与える影響を、性状の一定なモノクローナル抗体を用いて確認した。抗体には、抗ヒトアルブミンマウスモノクローナル抗体FU−302(日本バイオテスト社製)を使用した。使用した抗体のpIは、等電点電気泳動による判定で、約pH6にあった。抗体濃度を280nmでの吸光度測定により求めて、0.04重量%NaN3を含むPBS緩衝液(8g/l NaCl,0.2g/l KCl,1.15g/l Na2HPO4・12H2O,0.2g/l KH2PO4,pH7.4)で希釈して、3.0mg/mlとした。
緩衝液には、0.025M 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(同仁製、以下メスと略する)、0.025M モプス、および4重量% ポリエチレングリコール6000の組成のpHが4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、および7.5のものを用いた。
測定装置は以下のように自作のものを使用した。光源としては、270Hzで変調した波長680nmの出射出力約15mWの半導体レーザーポインタ(キコー技研(株)製の型番MLXS−D−12−680−35)を用いた。検出器としては、可視赤外精密測光用シリコンフォトダイオード(浜松フォトニクス(株)製の型番S2387−66R)を用いた。サンプル用のセルとしては、厚さ0.1cmの光学ガラス板を張り合わせて、容量約200μlの正四角柱形状としたものを用いた。
光源より0.5cmのところに、その一面が光源に対して垂直になるようにセルを配置し、検出器は、セルより5.5cm離れた場所に、光源からの光の方向に対して90°の角度を成す向きに配置した。検出器に迷光が入射しないように、検出器とセルとの間には遮光筒を設けた。検出器により検知された光量に依存した電流信号は、電流電圧変換回路(106V/A)およびオペアンプによる増幅回路を経て100倍の電圧信号に増幅した後、ロックインアンプ(エヌエフ回路設計ブロック製、型番5610B)を通して位相敏感検波し、GPIB制御によりコンピュータに取り込めるようにした。
各緩衝液についてのブランク値の測定は次のようにして行った。反応溶液の混合比は、緩衝液が187μl、そして抗体溶液が7μlとした。反応溶液における抗体の最終濃度は、約0.11mg/mlである。
セル内に上記容量の緩衝液および抗体溶液を加えて攪拌混合した。散乱光の測定は、抗体溶液を加える10秒前から開始し、0.5秒間隔で300秒間継続した。測定値は電圧値として得られた。得られた各時間における測定値の200〜300秒の間の平均値を求め、これを各緩衝液についてのブランク値とした。測定は室温(約25℃)で行った。
図5に結果を示す。図5の縦軸は散乱光強度を示し、横軸はpHを表す。示されるように、使用した抗体の等電点(約6.0)付近のpH5.5〜6.5においては、ブランク値が高くなったが、等電点よりも0.5低いpHすなわちpH5.5付近で既にブランク値の抑制が観察され、抗体の等電点よりも1.0以上低いpHすなわち、pI−pH≧1.0となるpH5.0以下では、ブランク値は顕著に(3分の1程度に)抑えられたことが観察された。したがって、等電点よりも約1.0以上低いpH条件の場合に、顕著にブランク値低減効果が高いことがわかった。特に、この効果は、pI−pH≧1.5となるpH4.5以下でより高く、ほぼ最大の効果を示し、ブランク値は5分の1程度に抑えられた。
[実施例2]ヒトアルブミン測定用反応試薬キットの作製
以上の結果を踏まえて、pH4.5で反応させるためのヒトアルブミン測定用反応試薬キットを作製した。
上記の結果から、免疫比朧法のような免疫反応測定法において、プロゾーン現象の緩和と測定値の低下防止という効果を維持しつつ、さらにブランク値を抑えるためには、酸性緩衝液のpHに対してできるだけ離れたpH領域に等電域を有する抗体を試験試薬として使用すればよいであろうと考えられた。図4の結果を鑑みるに、反応溶液(測定溶液)のpHから少なくとも1.0以上離れた領域に等電域を持つ抗体を選択することが最も望ましいと考えられた。反応溶液のpHから少なくとも1.0以上離れたpH5.5以上に等電点を有する、ヒトアルブミンの異なるエピトープに結合する2種類以上のモノクローナル抗体を組み合わせて、抗体試薬を作製することもできるが、本実施例では、ポリクローナル抗体を用いた抗体試薬の構成方法を示した。
まず、抗体試薬を調製した。ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体は、比較例と同様の抗血清より、プロテインAカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。精製は、1.5Mグリシン、3.0M NaCl、pH8.9の結合緩衝液を用いて、プロテインAをカラム中で平衡化した後に、抗血清をカラムにアプライし、抗血清中の抗体を特異的にプロテインAに吸着させて、抗血清中の抗体以外の成分と分離した。分離後、0.1Mクエン酸,pH4.0の溶出緩衝液を流し、抗体をプロテインAから溶出させ、回収した。溶出回収した抗体を分画分子量1万の透析チューブに入れ、0.05M 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(同仁製、以下メスと略する)、0.04重量%NaN3、pH5.5の組成の緩衝液(5L×2回)で透析を行い、緩衝液成分を置換した。
透析後の抗体溶液中の不溶物を10,000gの遠心分離により除いた後、DEAE陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにアプライし、非吸着分画を採取した。この操作により、pH5.5で陽性に帯電している抗体、すなわち、pIが5.5よりも大きな抗体を選択的に採取することができる。採取した非吸着分画を0.05M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(同仁製、以下モプスと略する)、0.15M NaCl、0.04重量%NaN3、pH7.4の組成の緩衝液(5L×2回)で透析を行い、緩衝液成分を置換した。透析後の抗体溶液中の不溶物は10,000gの遠心分離により除いた。限外ろ過による濃縮後、280nmでの吸光度測定により抗体濃度を測定し、最終的に、透析で用いた緩衝液で3.0mg/mlに調製し、これを抗体試薬(抗体試薬B)とした。抗体試薬BはpI値5.5〜7.4の範囲の等電域を有する抗体のみを含んだものである。
上記で調製した抗体濃度は、特にこれに限定されるものではない。作製した抗体溶液は室温でも保存することができるが、抗体の変性防止の点からは、より低温保存が好ましく、4℃で保存することがより好ましい。
次に多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液の調製を次のようにして行った。多価カルボン酸には、フタル酸を用いた。最終濃度でフタル酸水素カリウムを0.05M、ポリエチレングリコール6000を4重量%になるように計量し、調製目的体積の約90%の純水で溶解した。緩衝液のpHはNaOHを用いて4.5に調整した。
以上のように構成した多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液と、上記で調製した抗体試薬とを組み合わせることにより、ヒトアルブミン測定用反応試薬キットを構成することができる。
以上のように構成したヒトアルブミン測定用反応試薬キットを使用する際には、反応系を形成させるために、ヒトアルブミンを含む試料(検体)、抗体試薬、および多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液を混合して使用する。
上記混合は、任意の方法によればよい。混合する比率は、必要とするヒトアルブミン濃度の測定範囲に応じて決定することができる。混合により形成された反応系で生じたヒトアルブミンと抗体との免疫反応による変量(例えば、抗原抗体複合体の量)を測定することにより、検体中の抗原濃度を知ることができる。
なお、抗体をラテックス、金コロイド、磁気微粒子などの微粒子担体に固定化させるか、あるいは、抗体に酵素、色素、蛍光物質、発光物質などを標識してもよい。
なお、上記キットの調製では、pH調整にNaOHを使用したが、KOH、LiOH、NH4OH、Ca(OH)2、Mg(OH)2などの水酸化物を使用してもよい。
また、実施例では、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液の調製にフタル酸水素カリウムを使用したが、他の多価カルボン酸または多価カルボン酸塩であってもよく、例えば、無水クエン酸、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウムニ水和物、クエン酸三カリウム一水和物、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素ニアンモニウム、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、クエン酸三リチウム水和物、クエン酸銅(II)2.5水和物、DL−イソクエン酸三ナトリウム、trans−アコニット酸、cis−アコニット酸無水物、フタル酸、無水フタル酸、フタル酸カリウム、フタル酸二ナトリウム、フタル酸アンモニウム、フタル酸銅(II)、L(−)−リンゴ酸、D−リンゴ酸、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、L(−)−リンゴ酸ナトリウム、L(+)−酒石酸、DL−酒石酸、D(−)−酒石酸、メソ酒石酸一水和物、(+)酒石酸カリウム−水(2/1)、(+)酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、(+)酒石酸アンモニウム、(+)酒石酸水素カリウム、(+)酒石酸水素ナトリウム一水和物、(+)酒石酸ナトリウム二水和物、イタコン酸、イタコン酸無水物、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸第一鉄、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、マロン酸、マロン酸ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、マロン酸タリウム、マロン酸二タリウム、コハク酸、コハク酸アンモニウム、コハク酸二ナトリウム、グルタル酸、アジピン酸、アジピン酸アンモニウム、アジピン酸二アンモニウム、アジピン酸二カリウム、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸などのいずれかを用いてもよい。また、これらを組み合わせて使用することもでき、その場合のpH調整は、純水に溶解時のpHが調整目的とするpHよりアルカリ側の場合はHClなどを、酸性側の場合は上記で示した水酸化物などを利用して行えばよく、また、上記で例示した多価カルボン酸または多価カルボン酸塩の混合比を調整して行ってもよい。
また、抗体溶液の緩衝剤成分及びpHは、上記組成及びpHに限定されない。例えば、一液系の試薬、すなわち、試験溶液を構成する場合は、抗体溶液に多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含ませるため、及び反応系のpHを酸性にするために、目的の多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む目的の酸性pHに調整した緩衝液で透析を行えばよい。
また、本実施例では抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を用いた場合の試薬の構成方法を示したが、ヒトアルブミンの異なる部位に結合する2種類以上のモノクローナル抗体を混合して構成してもよく、その場合は、用いる抗体のpIは使用する緩衝液のpHよりも、大きいものとし、好ましくは、0.5以上、より好ましくは1.0以上、最も好ましくは1.5以上大きいものとする。本実施例の場合であれば、pI5.5以上であることがより好ましく、pI6.0以上であれば最も好ましい。
[実施例3]ヒトアルブミン測定用反応試薬キットのブランク値低減効果
実施例2で調製したpI値5.5〜7.4の範囲の等電域を有する抗体のみを含んだ抗体試薬Bと、比較例で調製したpI値4.5〜7.4の範囲の等電域を有する抗体のみを含んだ抗体試薬Aとを使用して、比較例と同様の手順で、pH4.5の反応溶液中で分光学的測定を行った。測定の際の反応溶液中の緩衝液成分は、抗体試薬Aおよび抗体試薬Bについて、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む互いに同一なものとした。
結果を図6に示す。示されるように、反応系に加えたヒトアルブミン濃度が0の時の抗体試薬Bについての散乱光強度(すなわち、ブランク値)が、比較例で使用した抗体試薬Aのブランク値よりも顕著に減少していることがわかる。
このように、使用する緩衝液のpHに対して適切な等電域を有する抗体を選択して用いることにより、免疫反応測定法におけるブランク値の上昇を抑制することができ、本発明の一実施形態に係るヒトアルブミン測定用反応試薬キットの有効性が確認できた。
[実施例4]免疫反応測定用光学セルの構成
以下に、本発明の免疫反応測定用光学セルについて、図面を参照しながら詳細に説明する。図7(a)は、本発明の免疫反応測定用光学セル2の構成を示す斜視図であり、図7(b)はその断面図である。
本実施例における免疫反応測定用光学セル2は、光学測定用窓21、試料導入路22、開口部23、およびプランジャー接合部24を備える。本実施例では、光学セル2の光学測定用窓21が存在する部分の立体形状を正四角柱とし、四面共に実質的に平坦で、可視光領域において光学的に透明な材質で構成されている。光路長を1cmとし、約1mlの試料を吸入可能とし、光学測定ができる構成とした。本実施例においては、セルの材質としてはポリスチレンを使用した。
免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21から試料導入路22にかけての内壁に、試薬25を凍結乾燥により、移動可能なように担持した。本実施例の場合、試薬25は、1mlの液体試料を導入した時の最終濃度で、それぞれ、ヒトアルブミン抗体が1mg/ml、フタル酸が0.05M、そしてポリエチレングリコール6000が4重量%、pH5.0の内訳となるように調製した。
次に、以上のようにして構成した免疫反応測定用光学セル2の構成の概要について、図8(a)〜図8(d)を参照しながら説明する。
図8(a)は、免疫反応測定用光学セル2を装着した分析装置3の主な構成を模式的に示す。本実施例では、分析装置3は、筐体31の中に免疫反応測定用光学セル2と接合されたプランジャー32と、免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21の一面と垂直に配置された光源35と、光源35の透過光路上に光学測定用窓21の他の一面と垂直に配置された透過光検出用ディテクタ33と、光源35の透過光路と同じ高さで、光学測定用窓21のさらに他の一面と垂直に配置された散乱光検出用ディテクタ34とを含む検出部分とからなる構成とした。
図8(b)〜図8(d)に示されるように、プランジャー32を上へ動かすことにより、開口部23より液体試料36が流入する。この液体試料36の流入によって、図8(b)に示すように、免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21の内壁に、凍結乾燥により、移動可能なように担持されたヒトアルブミン抗体、フタル酸、およびポリエチレングリコール6000からなる試薬25が液体試料36と触れ、試薬25が液体試料36中に分散され、溶解し始める(液体試料中に分散された試薬37)。図8(c)のように、更にプランジャー32を上に動かすことにより、液体試料36は免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21上の光源35、透過光検出用ディテクタ33、散乱光検出用ディテクタ34が存在する部位よりも上部まで達する。
液体試料36の開口部23からの液体試料36の流入により生じた流動により、液体試料中に分散されたヒトアルブミン抗体、フタル酸、およびポリエチレングリコール6000からなる試薬37は、最終的に図8(d)のように、液体試料36中に溶解する。これにより、液体試料36中に含まれるヒトアルブミンとヒトアルブミン抗体により抗原抗体反応による凝集複合体が生成され、液体試料に濁りが生じる。
この濁りの度合いは、液体試料36中に含まれるヒトアルブミン濃度に依存するため、この程度を測定することにより、液体試料36中に含まれるヒトアルブミン濃度を知ることが可能である。
液体試料36の濁りの度合いを測定するために、光源35から光を、光学測定用窓21の一面に対してほぼ垂直に照射する。光学測定用窓21の一面から入射した光は、液体試料36中を透過した後、直進性の高い光は、光源35側の光学測定用窓21の対面の光学測定用窓21を通して出射し、透過光検出用ディテクタ33において受光され、液体試料36中の抗原抗体反応による凝集複合体により散乱された光は、光源35側の光学測定用窓21と垂直な光学測定用窓21を通して出射し、散乱光検出用ディテクタ34において受光される。ここで、図には示さなかったが、いずれのディテクタからの出力もA/D変換され、マイコンまたはPCに取り込み、データ処理される。
透過光検出用ディテクタ33及び散乱光検出用ディテクタ34で受光された光の強度の少なくともいずれか一方に基づき、生じた試料と免疫反応測定用試薬との反応を測定することができる。透過光検出用ディテクタ33での光の強度に基づく場合は、吸光度または濁度を求める。この場合、あらかじめ、液体試料36の導入前の透過光を参照光とする。
散乱光検出用ディテクタ34での光の強度に基づく場合は、散乱光強度を求める。試料と試薬との反応を測定するために、いずれの指標を用いても良いが、試料と試薬との反応による濁りの度合いが低い場合は、散乱光強度を求める方がより高感度な測定ができる。
以上述べたように、本実施例の免疫反応測定用光学セル2によれば、試料のサンプリングと同時に、速やかに抗原抗体反応を分光測定することができるので、特に反応の過渡的な変化を測定する場合に、タイムロスが少なく、過渡的変化を確実に捉えることができる。また、光学セルへ液体試料・試薬混合液を移し替える必要がなく操作が簡便となる。
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
本発明に係る免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルは、検体の免疫反応測定におけるプロゾーン現象を抑制し、測定値の減少を抑制し、かつ抗体分子間の非特異的凝集を抑制するという効果を有するため、特に、免疫比朧法、免疫比濁法、スライド凝集法などのような均一系の測定系を用いる免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セル等として有用である。
本発明は、酸性pH条件下で検体中に含まれる被検物質を測定することができる免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、及び光学セルに関する。
医療、臨床検査の分野においては、様々な疾患の診断及び病状の経過を調べるために、ヒトの体液中に存在する各疾患に特徴的なタンパク質を調べることが広く行われている。例えば、溶連菌に個体が感染すると、血液中にそれに抵抗するためのASOという抗体が産生される。したがって、血液中のこの抗体の量を測定項目として試験することによって、その個体が溶連菌に感染しているかどうかを調べることができる。また、RA(慢性関節リウマチ)患者の血清中には、RF(リウマチ因子)が高頻度に出現することが知られている。RA患者の血清中IgG糖鎖は、健常者IgG糖鎖と比較して、ガラクトースを顕著に欠損し糖鎖異常を起こしている。RA発症初期からガラクトース欠損IgGが産生され、これに対する自己抗体が関節炎などの発症に関与していると考えられている。そこで、ガラクトース欠損IgG抗原を使用して血清中の抗ガラクトース欠損IgG抗体を測定項目として試験することにより、RAの診断が可能となる。
これらのタンパク質の含有量測定には、主として、特異性の高い免疫反応測定方法が広く用いられている。それらの中でも、免疫比朧法(もしくは、免疫比濁法)は、抗原と抗体の特異的な反応により生じる凝集複合体を検出する方法であり、基本的に均一溶液中で行われるため、定量性の良い方法である。さらに、抗原抗体複合体と未反応の抗体及び抗原を分離することなく測定できる方法であるため、操作が容易である。
一方、免疫比朧法による測定では、一般に、抗原過剰領域において、プロゾーン現象が発生する。そのため、測定項目によっては、必要とされる測定濃度領域で正確な測定ができないという問題があった。「プロゾーン現象」は、「地帯現象」とも呼ばれ、抗原と抗体が最大の凝集複合体を形成する当量域よりも、いずれかが過剰に存在する場合に、凝集複合体が生じにくくなり、測定値(例えば、散乱光強度)が本来の値よりも小さくなる現象である。
実際の均一系の免疫反応測定では、抗体を用いて被検物質としての抗原の濃度を測定する場合が多い。一般に、プロゾーン現象の起こっていない抗原濃度領域では、抗体と抗原が交互に結合した複合体からなる巨大な分子鎖(凝集複合体)が生じ、その量や大きさは、抗体濃度を一定とすると、抗原濃度に依存して増加するため、この分子鎖の量や大きさの変化を光学的な量の変化(例えば、散乱光強度または透過光強度の変化)として測定することにより、抗原濃度を定量的に捉えることができる。しかしながら、抗原過剰領域では、抗体に対して抗原が過剰に存在するために、抗体の抗原結合部位が飽和され、抗原を介して架橋構造を形成しにくくなる。したがって、上記のような分子鎖が生じにくくなり、抗原抗体複合体の量や大きさの変化を光学的な量の変化としてとらえることができなくなるために、測定値が小さくなる。その結果、低濃度の場合と区別がつきにくくなる。故に、プロゾーン現象が発生すると、被検物質濃度の正確な測定ができないという問題があるうえに、偽陰性の問題も生じる。
このような抗原過剰領域で生じるプロゾーン現象を緩和させるための反応系として、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む酸性緩衝剤を使用する方法が報告されている(例えば、特開2003−66047号公報)。一般的に、抗原抗体反応による測定は中性から弱アルカリ性側で行われることが多いが、特開2003−66047号公報では、弱酸性条件下で反応を行わせることによって、プロゾーン現象を抑制し、特に抗原過剰領域のより広い範囲で、より正確な定量測定を可能としている。
特開2003−66047号公報
上記のように、酸性緩衝剤を使用する免疫反応測定法は、抗原過剰領域でのプロゾーン現象に起因する問題を解決するには優れている。しかし、一方で、抗原濃度がゼロのときの測定値(ブランク値)が高くなる傾向があった。
本発明は、このような状況に鑑みてなされた。すなわち、本発明は、酸性pH条件下での抗原抗体反応に基づく被検物質の測定において、抗原が低濃度の場合であっても、高精度の定量測定を可能とする免疫反応測定方法、それに使用する試薬、キット、および光学セルを提供することを目的とする。
本発明者らは、後述する検証の結果、酸性の反応系では、(抗体のpI値)>(反応系のpH値)となるように抗体分子のpIおよび反応系のpHを選択することにより、抗体分子の非特異的凝集を低減し、ブランク値が高くなるのを防ぐことができることを見出した。これは、抗体のpIおよび反応系を構成する溶液のpHを上記のように設定することにより、個々の抗体分子が溶液中で陽性の電荷を帯び、このように陽電荷を帯びた抗体分子どうしの電気的反発力によって抗体分子の非特異的凝集が抑制されるからであろうと考えられる。これにより、特に抗原濃度が低い場合に、抗原抗体反応の反応量を測定する際に抗原抗体反応の反応量に加えて、抗体分子どうしの非特異的凝集の反応量までも測定してしまうということが抑制されるため、S/N比の向上が期待でき、測定の精度が向上する。
したがって、本発明は、酸性pH条件下で検体中の被検物質を測定する方法であって、上記検体と、上記検体中の被検物質に対する抗体とを混合して反応系を形成する工程A、及び上記反応系における抗原抗体反応を測定する工程Bを備え、上記反応系のpHが酸性に設定され、かつ上記抗体のpIと、上記反応系のpHとの関係が、pI>pHとなるように設定されている、測定方法を提供する。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記工程Bにおいて、上記被検物質と上記抗体との間で形成される抗原抗体複合体の量を測定する。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記pIと上記pHとの差は、約0.5以上である。より好ましくは、上記pIと上記pHとの差は、約1.0以上である。さらに好ましくは、pIとpHとの差は、約1.5以上である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記反応系のpHは、約4〜6の範囲である。最も好ましくは、上記反応系のpHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記工程Aにおいて、上記検体と、上記抗体と、緩衝剤とを混合して反応系を形成する。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記反応系は、有機酸または有機酸塩を含有する。より好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。
本発明の測定方法の好ましい実施形態では、上記測定する工程Bは、上記複合体の量もしくは大きさに起因する光学パラメータを測定することを含む。
別の局面において、本発明は、酸性pH条件下で抗原抗体反応原理に基づいて検体中の被検物質を測定するための試薬であって、上記被検物質に対する抗体を含有し、当該抗体のpIが上記酸性pHに対して、pI>pHとなるように調製されている、試薬を提供する。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記pIと上記pHとの差は約0.5以上である。より好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.0以上である。さらに好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.5以上である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記pHは約4〜6の範囲にある。最も好ましくは、上記pHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記試薬は、有機酸または有機酸塩を含有する。より好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記試薬に含まれる抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。
本発明の試薬の好ましい実施形態では、上記試薬は、乾燥状態で提供される。例えば、凍結乾燥により提供され得る。別の好ましい実施形態では、上記試薬は、溶液として提供される。
さらに別の局面において、本発明は、酸性pH条件下で検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するためのキットであって、緩衝液と被検物質に対する抗体を含む試薬とを含み、上記試薬は、上記抗体のpIが上記酸性pHに対して、pI>pHとなるように調製されている、測定用キットを提供する。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記pIと上記pHとの差は約0.5以上である。より好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.0以上である。さらに好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.5以上である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、緩衝液のpHは約4〜6の範囲にある。最も好ましくは、緩衝液のpHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記緩衝液は、有機酸または有機酸塩を含む。より好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記抗体は、異なるエピトープを認識する少なくとも2種類以上のモノクローナル抗体の混合物である。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記試薬は、乾燥状態で提供される。例えば、凍結乾燥により提供され得る。
本発明のキットの好ましい実施形態では、上記緩衝液と上記試薬とは、被検物質の測定のために使用される直前に混合されて試験溶液として使用される。
さらに別の局面において、本発明は、酸性pH条件下で液体検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するための光学セルを提供する。この光学セルは、液体検体を注入するための開口部を有し、上記セル内に、上記被検物質に対する抗体が上記液体検体に溶解可能なように担持されており、上記液体検体と上記被検物質に対する抗体との混合により形成された反応系のpHが酸性であって、かつ上記反応系のpHと上記抗体のpIの関係が、pI>pHとなるように構成されている。ここで、上記光学セル内に緩衝剤が担持されていてもよい。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記光学セルは、プランジャーを使用することにより、上記開口部から液体検体を吸入可能なように、更に、プランジャーとの接続のための接続用開口部を有する。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記光学セルは、実質的に平坦な面を有し可視光領域で光学的に透明な材質から構成される。そのような材質としては、石英ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレンなどがある。特に、ポリスチレンが好ましい。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記抗体のpIと緩衝液のpHとの差は約0.5以上であり、より好ましくは約1.0以上である。さらに好ましくは、上記pIと上記pHとの差は約1.5以上である。
本発明の光学セルのさらに好ましい実施形態では、緩衝液のpHは約4〜6の範囲にある。最も好ましくは、緩衝液のpHは約4.5〜5.0の範囲である。
本発明の光学セルのさらに好ましい実施形態では、本発明の光学セルに含まれる緩衝剤は、有機酸または有機酸塩である。好ましくは、上記有機酸または有機酸塩は、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。さらにより好ましくは、上記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩は、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、本発明の光学セルに使用される抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である。さらに好ましくは、上記抗体は、異なるエピトープを認識する少なくとも2種類以上のモノクローナル抗体の混合物である。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、本発明の光学セルに含まれる抗体試薬は、乾燥状態で提供される。例えば、凍結乾燥により提供され得る。
本発明の光学セルの好ましい実施形態では、上記緩衝剤は、乾燥状態で担持されている。
本発明により、酸性pH条件下で検体中の被検物質の量を抗原抗体反応原理に基づいて測定する際に、抗体分子間の非特異的凝集の形成を抑制することが可能となる。それにより、抗原が低濃度の場合でも、正確に抗原抗体反応量を捉えることができ高精度あるいは高感度測定が可能となる。さらに、非特異反応を除くことで、抗原が低濃度の場合でも、再現性よく抗原抗体反応に基づく定量測定を行うことができる。
また、例えば、経時的に際限なく凝集していく非特異的凝集に由来する測定値への経時的影響(測定試薬をセッティングしてから測定するまでの時間の長さにより測定値が変化する)も、極力抑えることが可能となる。
さらに、抗体の非特異的凝集が抑制されることにより、試薬ロット間の測定値の差を抑制することができ、新しい試薬ロットに変更して測定する場合に、その都度補正をする必要性を極力減少させることができる。
さらに、本発明に係る免疫反応測定方法により、従来、抗原または抗体の非特異的自己凝集を低減するために使用されたトゥイーン20、オクチルグルコシド、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、スクロースモノラウレート、CHAPSなどの界面活性剤の使用を極力排除し得る。これらの界面活性剤は、非特異的自己凝集を低減するために使用されるが、その量が大きくなると、逆に抗原抗体反応の結合能を弱める問題があった。それ故、界面活性剤の量は厳密に設定されなければならなかった。しかし、本発明により、界面活性剤を使用せずに非特異的自己凝集を除くことができるため、界面活性剤によるタンパク質の変性等の悪影響を排除することが可能となる。
本発明に従う免疫反応測定方法、それに用いる試薬、キット、および光学セルの実施形態において、被検物質としての抗原およびそれに対する抗体を混合した反応溶液のpHは、酸性に設定されている。反応溶液として酸性溶液を使用する利点は、被検物質の高濃度領域でのプロゾーン現象の緩和およびプロゾーン現象に伴う分光学的測定値の低下を抑制する効果が得られることである。このような酸性の反応溶液のpHは、好ましくはpH約4〜6、最も好ましくはpH約4.5〜5.0の範囲に設定される。
酸性pHに設定された反応溶液は、抗体の変性等の可能性を最小限にするために、測定を行う直前に調製されることが好ましい。
本発明に従う免疫反応測定方法では、被検物質に対する抗体のpIと、被検物質と抗体とを混合して形成した反応系のpHとの関係が、pI>pHとなるように設定されている。それにより、反応系において抗体分子が陽電荷を帯びるようになり、抗体分子間の電気的反発力により、抗体分子同士の非特異的凝集を抑制することが可能となる。
抗体分子間の電気的反発を促進するためには、抗体のpI値と溶液のpH値との差(|pI−pH|)は大きければ大きいほど良く、|pI−pH|が、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、最も好ましくは1.5以上となるように設定する。
抗体分子のpIは、例えば、等電点電気泳動のpHタイトレーション分析で知ることができる。等電点電気泳動を用いて所定のpI値を有する抗体を分析及び選択するには、例えば、以下のようにすればよい。図1を参照して説明する。等電点電気泳動用アガロースゲルを用いて、試料点着直前にアガロースゲルに電位差をかけpHグラジエントアガロースゲルを作製する(13)。その後、直ちに、試料を点着し、約1時間試料を泳動させる。試料は負に帯電していれば陽極(12)に泳動し始め(14)、また、正に帯電していれば陰極(11)に泳動し始める。いずれも、時間が経過し、pHグラジエントアガロースゲル上を泳動し、ゲル上のpH値と試料のpI値とが近づくにつれて、試料の帯電性が減少し、やがて、非帯電状態となり泳動が止まる。この停止位置のゲルpH値が試料抗体のpI値となる。
さらに、試料のタイトレーション分析も等電点電気泳動装置を用いて行える。図2(a)および図2(b)を参照して説明する。上記と同様に、まず、pHグラジエントアガロースゲルを作製する(15)(図2(a))。その後、作製したゲルを90度回転させて電気泳動用装置にセットする(16)(図2(b))。そこに試料を点着して約1時間泳動させる。これにより、各pH条件における試料の電荷を知ることができる(17)。即ち、酸性側であれば、試料は正に帯電しているので陰極のほうへ、アルカリ性側では、試料は負に帯電しているので陽極のほうへ同時に泳動し始めるため、17に示すように、pH依存のタイトレーションカーブが得られる。これをみれば、どのpH領域で、正負いずれに帯電しており、それはどの程度の大きさなのか、分析することができる。
本発明に従う免疫反応測定に使用する反応溶液系には、好ましくは有機酸または有機酸塩が含まれている。これらの有機酸または有機酸塩は、好ましくは、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である。多価カルボン酸とは、複数のカルボニル基をもつ有機酸のことで、本発明では、特に、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩であることが好ましい。トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩の濃度は、任意であり得るが、プロゾーン現象緩和の効果および測定値の低下を抑制する効果を有意に奏するためには、0.3Mを超えないことが好ましい。より好ましくは、トリカルボン酸またはトリカルボン酸塩、およびジカルボン酸またはジカルボン酸塩の濃度は、0.2Mを超えず、最も好ましくは、0.1Mを超えないように選択される。
トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩の例として、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、およびこれらの塩が挙げられる。これらは、例えば、無水クエン酸、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウムニ水和物、クエン酸三カリウム一水和物、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素ニアンモニウム、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、クエン酸三リチウム水和物、クエン酸銅(II)2.5水和物、DL−イソクエン酸三ナトリウム、trans−アコニット酸、cis−アコニット酸無水物などの形態で市販されており、これらを単独または組み合わせで使用することができる。とりわけ、クエン酸、クエン酸塩、アコニット酸、またはアコニット酸塩は、比較的安価で室温保存が可能で、安定性が高いものを入手することができ、また使い易いという観点から、好ましい。
また、ジカルボン酸またはジカルボン酸塩の例として、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびこれらの塩が挙げられる。これらは、例えば、フタル酸、無水フタル酸、フタル酸水素カリウム、フタル酸カリウム、フタル酸二ナトリウム、フタル酸アンモニウム、フタル酸銅(II)、L(−)−リンゴ酸、D−リンゴ酸、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、L(−)−リンゴ酸ナトリウム、L(+)−酒石酸、DL−酒石酸、D(−)−酒石酸、メソ酒石酸一水和物、(+)酒石酸カリウム−水(2/1)、(+)酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、(+)酒石酸アンモニウム、(+)酒石酸水素カリウム、(+)酒石酸水素ナトリウム一水和物、(+)酒石酸ナトリウム二水和物、イタコン酸、イタコン酸無水物、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸第一鉄、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、マロン酸、マロン酸ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、マロン酸タリウム、マロン酸二タリウム、コハク酸、コハク酸アンモニウム、コハク酸二ナトリウム、グルタル酸、アジピン酸、アジピン酸アンモニウム、アジピン酸二アンモニウム、アジピン酸二カリウム、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸などの形態で市販されており、これらを単独または組み合わせで使用することができる。
本発明では、これらの有機酸または有機酸塩を含んだ反応溶液または反応系のpHは酸性に設定されており、好ましくは、pH約4〜6の範囲に設定されている。最も好ましくは、反応系のpHは、pH約4.5〜5.0付近に設定されている。このようにpHを設定することによって、プロゾーン現象の緩和、あるいはプロゾーン現象に伴う測定値低下の抑制の効果を得ることができる。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルに使用される「被検物質に対する抗体」とは、抗原抗体反応原理に基づいて被検物質に対して特異的に結合する抗体のことをいう。それらの抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体等であり得る。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株により産生される。ハイブリドーマ細胞株は、抗体を産生するB細胞と骨髄腫瘍細胞(ミエローマ細胞)を細胞融合することにより得られた抗体産生能と強い増殖能を併せ持つ融合細胞集団より1つの細胞のみを分離し、増殖させて確立される。ポリクローナル抗体は、動物に抗原を投与し、血中に抗原を結合する抗体を多量に出現させ、この血液の全部または一部を採取し、精製することによって得られる。抗原抗体反応(複合体形成)に伴う分子の大きさの変化量を、被検物質の量を測定するための指標として利用する均一系での免疫反応測定では、凝集複合体を形成しやすい抗体を使用することがより好ましい。ポリクローナル抗体は、様々なエピトープを認識する抗体の集合体であるために、容易に凝集複合体を形成するので、好ましい。モノクローナル抗体は、1つのエピトープのみを認識し、1:1の反応に基づく複合体が形成されるため、ポリクローナル抗体の場合と比べて、凝集複合体は形成しにくいが、被検物質が、例えば、モノマー蛋白の5量体であるC反応性タンパク質のような多価抗原の場合には、十分に使用し得る。また、異なるエピトープを認識する少なくとも2種類以上のモノクローナル抗体の混合物とすることにより、一種のポリクローナル抗体を人工的にデザインすることも可能である。
さらに、標識物として、例えば、金属粒子、ラテックス粒子を用いて、標識抗体とすることでさらに凝集複合体の形成が促進され得る。ここで、金コロイド標識抗体の作製は、例えば、以下のようにして行うことができる。500mlの三角フラスコに290nmの吸光度で0.86に調整された塩化金酸溶液(和光純薬工業製)を200ml入れ、沸騰中に1%クエン酸ナトリウム(和光純薬工業製)溶液4mlをすばやく加える。反応溶液は、青色からやがてワインレッド色に変化し、その変化を確認してからさらに15分間放置させる。室温に自然冷却後得られた金コロイド溶液をpH8.9とし、抗体、ウシ血清アルブミンを順次加え、抗体を標識させる。標識後は、未標識抗体とウシ血清アルブミンを除去するために遠心分離を行う。こうして金コロイド標識抗体を作製する。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルに用いられる抗体は、特に限定されず、抗原である被検物質に特異的に結合するものであれば、IgG、IgM、IgE、IgA、またはIgDのいずれのクラスの抗体であってもよい。この中で、IgG抗体が非特異的な反応が比較的少なく、また、市販されているものも比較的多く、入手も容易であるため好ましい(例えば、フナコシ、コスモバイオ等の供給業者により市販されているが、これらに限られない)。また、抗体の由来動物種に関しても、特に限定されないが、ウサギ、ヤギ、マウス由来の抗体が比較的入手も容易であり、使用例も多いため好ましい。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルにおいて使用する所定のpIを有する抗体の精製方法として、種々の分析法、及び精製法が使用され得る。例えば、等電点沈降法、等電点電気泳動、等電点クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等の物質がもつ電荷の差を利用するものが使用され得る。特に、等電点電気泳動が好ましい。
精製された抗体は、抗体試薬として、乾燥された状態で、または溶液状態でのいずれかで提供され得る。長期保存のためには、凍結乾燥状態で保存することが好ましい。このような抗体試薬は、適切な緩衝剤を共に含んでいてもよい。上記抗体試薬は、使用前には、タンパク質の変性等を防止するために中性付近のpHで保存し、使用時に酸性pHを有する緩衝液中に溶解して使用することが好ましい。中性付近のpHに設定するための緩衝液の一例としては、後述する0.05M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、0.15M NaCl、0.04重量%NaN3、pH7.4の組成の緩衝液が挙げられるが、これに限定されない。酸性pHを有する緩衝液の例としては、上記の有機酸または有機酸塩を含む緩衝液が挙げられる。
本発明において、抗体分子のpI値と溶液のpH値との関係に基づいて反応系を設定するときは、抗体分子の標識化の影響、抗体周囲の環境の影響、等電域などを考慮することが重要である。なぜなら、一般に、抗体の等電点pIは約pH5.0〜8.0の間にある(このような抗体の等電点の分布する範囲を本明細書中で「等電域」と呼ぶ)が、抗体に標識を付けた場合や抗体の周囲の環境によっては、5.0より小さくなったり、8.0よりも大きくなったりすることもあり得るからである。即ち、等電点は、緩衝液のイオン強度、緩衝液組成の種類等によって影響されるものである。さらに、抗体を、例えば、金属コロイド、ラテックス粒子、もしくは色素化合物等で標識することによっても影響される。また、ポリクローナル抗体の場合、さらには、モノクローナル抗体であっても、個々の抗体分子は、それぞれわずかに異なる等電点を有するため、このような溶液では、溶解している抗体分子の等電点は、上記のように「等電域」という形で存在していることが通常である。
本発明の免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルにおける被検物質は、特に限定されるものではなく、一般に抗原抗体反応を利用して測定できる物質であればよい。それらには、例えば、タンパク質、核酸、脂質、細菌、ウイルス、ハプテンなどが挙げられる。とりわけ、タンパク質は、臨床検査上の主たる測定対象であるため好ましい。そのようなタンパク質として、例えば、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、hCG(絨毛性腺刺激ホルモン)などのホルモンや、各種免疫グロブリンクラスやサブクラス、補体成分、各種感染症マーカー、C反応性タンパク質、アルブミン、リウマチ因子、血液型抗原などが挙げられる。
本発明に従う免疫反応測定において、抗原抗体複合体の量を測定するために、好ましくは、複合体形成による分子の量と大きさの変化に起因する光学パラメータを測定する方法が用いられる。特に、光学パラメータが、光散乱強度または吸光度であることが好ましい。
本発明の一局面において提供される酸性pH条件下で検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するためのキットは、緩衝液と被検物質に対する抗体を含む試薬とを含み、上記試薬は、上記抗体のpIが上記酸性pHに対して、pI>pHとなるように調製されている。本発明のキットの形態としては、上記抗体試薬は溶液中に含んだ状態で提供されても、乾燥された状態で提供されてもよい。保存安定性の観点から考えると、上記抗体試薬は、凍結乾燥状態で提供されることが好ましい。
本発明の一局面において提供される酸性pH条件下で液体検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するための光学セルは、液体検体を注入するための開口部を有し、前記被検物質に対する抗体を前記液体検体に溶解可能なように前記光学セル内に担持している。ここで、前記液体検体と、前記被検物質に対する抗体との混合により形成される反応系のpHが酸性であって、かつ前記反応系のpHと前記抗体のpIとの関係が、pI>pHとなるように構成されている。ここで、光学セル内にさらに緩衝剤が担持されていてもよい。
本発明の光学セルでは、上記緩衝剤は、上記有機酸または有機酸塩であることが好ましい。上記セル内に移動可能なように担持された有機酸または有機酸塩および上記被検物質に対する抗体は、溶解性の観点から、凍結乾燥状態で提供されることが好ましい。また、上記有機酸または有機酸塩および上記被検物質に対する抗体は、混合して凍結乾燥しても良く、または個別に凍結乾燥しても良い。
本発明の光学セルは、プランジャーを使用することにより、上記開口部から液体検体を吸入可能なように、更に、プランジャーとの接続のための接続用開口部を有することが好ましい。このようにすれば、光学セル内への液体検体の注入が容易となる。
本発明の光学セルの材質としては、実質的に平坦な面を有し、可視光領域で光学的に透明な材質が好ましく、石英ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレンなどがある。特に、ポリスチレンが好ましい。また、透過光測定および散乱光測定ができるものが好ましい。
上記説明および下記の例示的な実施例に基づいて、当業者は、過度の実験を要せずに、抗体のpIおよび反応溶液のpHが調整された本発明に係る免疫反応測定用の反応系を構築することができる。
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(実施例)
(比較例)酸性条件下でのヒトアルブミンの免疫比朧法による分析
(実施例)
(比較例)酸性条件下でのヒトアルブミンの免疫比朧法による分析
以下に示す緩衝液などの調製には、MILLI−Q SP TOC(Mililipore社製)でろ過した純水を使用した。また、以下で特に記載の無い塩、緩衝剤などの試薬は和光純薬工業製の特級試薬を用いた。ただし、ポリエチレングリコール6,000は1級試薬を用いた。
まず、抗体試薬を調製した。ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体は、ヒトアルブミンを免疫したウサギより採取した抗血清より、プロテインA(アマシャム・ファルマシア製)カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。精製は、1.5M グリシン,3.0M NaCl、pH8.9の結合緩衝液を用いて、プロテインAをカラム中で平衡化した後に、抗血清をカラムにアプライし、抗血清中の抗体を特異的にプロテインAに吸着させて、抗血清中の抗体以外の成分と分離した。分離後、0.1M クエン酸、pH4.0の溶出緩衝液を流し、抗体をプロテインAから溶出させ、回収した。溶出回収した抗体を分画分子量1万の透析チューブに入れ、0.05M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(同仁製、以下モプスと略する)、0.15M NaCl、0.04重量%NaN3、pH7.4の組成の緩衝液(5L×2回)で透析を行い、緩衝液成分を置換した。透析後の抗体溶液中の不溶物を、10,000gの遠心分離により除いた。280nmでの吸光度測定により抗体濃度を測定し、最終的に、透析で用いた緩衝液で3.0mg/mlに調製し、これを抗体試薬(抗体試薬A)とした。
次に、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液の調製を、次のようにして行った。多価カルボン酸には、フタル酸を用いた。最終濃度でフタル酸水素カリウムを0.05M、ポリエチレングリコール6000を4重量%になるように計量し、調製目的体積の約90%の純水で溶解した。緩衝液のpHを、NaOHを用いて4.0、4.5、5.0、5.5、および6.0にそれぞれ調整した。
免疫反応測定には、分光蛍光光度計(島津製作所製、型番RF−5300PC)を使用した。分光蛍光光度計の試料室に高温セルホルダー(島津製作所、型番06−15440)を配置し、恒温槽(TITEC製、商品名COOLNIT BATH EL−15)に接続し、温度25℃に保った水を循環して、測定時の温度を一定に保てるようにした。分光光度計の測定条件については、励起、蛍光波長を共に670nmとし、蛍光側、励起側共にバンド幅3nmに、感度は高感度に設定した。
測定は次のようにして行った。2.87mlの上記多価カルボン酸を含む緩衝液と0.1mlの抗体試薬Aとを攪拌混合した後に、これに0.03mlの所定濃度のヒトアルブミン溶液を加え攪拌混合することにより、測定用反応溶液を調製した。この反応溶液を蛍光分析用石英セルに移し、そのセルを分光蛍光光度計に設置し、温度測定のためのT型熱電対(RSコンポーネンツより入手、型番219−4696)をセル内に浸漬した。ヒトアルブミンを混合後2分間経過した時点から、タイムコース測定で0.04秒間隔で300秒、分光学的測定を行った。測定中の温度は、T型熱電対をデジタルマルチサーモメーター(アドバンテスト製、型番TR2114)に接続してモニタした。得られた200から300秒の間の測定値の平均値を求め、これをその反応溶液についての測定値とした。これらの手順を、ヒトアルブミンの濃度を変えて行った。
結果を図3および図4に示す。図3は、横軸のヒトアルブミン濃度に対して縦軸に散乱光強度をプロットしたものである。反応溶液のpH(pH4.0、4.5、5.0、5.5、および6.0)に依存して、プロゾーン現象が緩和され、そして測定値の減少が抑制されているのが観察される。測定値の減少の抑制効果は、特に、pH4.5の反応系において最も顕著であった。
図4は、横軸の反応系のpHに対して縦軸にヒトアルブミン濃度が0の場合の散乱光強度(ブランク値)をプロットしたものである。pH5.0以下、特にpH4.5以下で、ブランク値が高いことが観察された。
この原因は使用したウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体のおよその等電域が約4.5〜7.4付近にあることに起因すると考えられた。特に、pH5.0以下の酸性条件下では、タンパク質の変性に対する影響も考えられ、この変性の影響も含めて、このpH付近に等電点を有する抗体分子どうしの電気的反発力が弱まることによる抗体分子間での非特異吸着がより強く現れ、それが散乱光強度に寄与して、ブランク値が特に高くなるものと考えられた。
(実施例1)pHと抗体のpIの関係がブランク値に与える影響の確認
pHと抗体のpIの関係がブランク値に与える影響を、性状の一定なモノクローナル抗体を用いて確認した。抗体には、抗ヒトアルブミンマウスモノクローナル抗体FU―302(日本バイオテスト社製)を使用した。使用した抗体のpIは、等電点電気泳動による判定で、約pH6にあった。抗体濃度を280nmでの吸光度測定により求めて、0.04重量%NaN3を含むPBS緩衝液(8g/l NaCl,0.2g/l KCl,1.15g/l Na2HPO4・12H2O,0.2g/l KH2PO4,pH7.4)で希釈して、3.0mg/mlとした。
緩衝液には、0.025M 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(同仁製、以下メスと略する)、0.025M モプス、および4重量% ポリエチレングリコール6000の組成のpHが4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、および7.5のものを用いた。
測定装置は以下のように自作のものを使用した。光源としては、270Hzで変調した波長680nmの出射出力約15mWの半導体レーザーポインタ(キコー技研(株)製の型番MLXS−D−12−680−35)を用いた。検出器としては、可視赤外精密測光用シリコンフォトダイオード(浜松フォトニクス(株)製の型番S2387−66R)を用いた。サンプル用のセルとしては、厚さ0.1cmの光学ガラス板を張り合わせて、容量約200μlの正四角柱形状としたものを用いた。
光源より0.5cmのところに、その一面が光源に対して垂直になるようにセルを配置し、検出器は、セルより5.5cm離れた場所に、光源からの光の方向に対して90°の角度を成す向きに配置した。検出器に迷光が入射しないように、検出器とセルとの間には遮光筒を設けた。検出器により検知された光量に依存した電流信号は、電流電圧変換回路(106V/A)およびオペアンプによる増幅回路を経て100倍の電圧信号に増幅した後、ロックインアンプ(エヌエフ回路設計ブロック製、型番5610B)を通して位相敏感検波し、GPIB制御によりコンピュータに取り込めるようにした。
各緩衝液についてのブランク値の測定は次のようにして行った。反応溶液の混合比は、緩衝液が187μl、そして抗体溶液が7μlとした。反応溶液における抗体の最終濃度は、約0.11mg/mlである。
セル内に上記容量の緩衝液および抗体溶液を加えて攪拌混合した。散乱光の測定は、抗体溶液を加える10秒前から開始し、0.5秒間隔で300秒間継続した。測定値は電圧値として得られた。得られた各時間における測定値の200〜300秒の間の平均値を求め、これを各緩衝液についてのブランク値とした。測定は室温(約25℃)で行った。
図5に結果を示す。図5の縦軸は散乱光強度を示し、横軸はpHを表す。示されるように、使用した抗体の等電点(約6.0)付近のpH5.5〜6.5においては、ブランク値が高くなったが、等電点よりも0.5低いpHすなわちpH5.5付近で既にブランク値の抑制が観察され、抗体の等電点よりも1.0以上低いpHすなわち、pI―pH≧1.0となるpH5.0以下では、ブランク値は顕著に(3分の1程度に)抑えられたことが観察された。したがって、等電点よりも約1.0以上低いpH条件の場合に、顕著にブランク値低減効果が高いことがわかった。特に、この効果は、pI―pH≧1.5となるpH4.5以下でより高く、ほぼ最大の効果を示し、ブランク値は5分の1程度に抑えられた。
(実施例2)ヒトアルブミン測定用反応試薬キットの作製
以上の結果を踏まえて、pH4.5で反応させるためのヒトアルブミン測定用反応試薬キットを作製した。
上記の結果から、免疫比朧法のような免疫反応測定法において、プロゾーン現象の緩和と測定値の低下防止という効果を維持しつつ、さらにブランク値を抑えるためには、酸性緩衝液のpHに対してできるだけ離れたpH領域に等電域を有する抗体を試験試薬として使用すればよいであろうと考えられた。図4の結果を鑑みるに、反応溶液(測定溶液)のpHから少なくとも1.0以上離れた領域に等電域を持つ抗体を選択することが最も望ましいと考えられた。反応溶液のpHから少なくとも1.0以上離れたpH5.5以上に等電点を有する、ヒトアルブミンの異なるエピトープに結合する2種類以上のモノクローナル抗体を組み合わせて、抗体試薬を作製することもできるが、本実施例では、ポリクローナル抗体を用いた抗体試薬の構成方法を示した。
まず、抗体試薬を調製した。ウサギ抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体は、比較例と同様の抗血清より、プロテインAカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。精製は、1.5M グリシン、3.0M NaCl、pH8.9の結合緩衝液を用いて、プロテインAをカラム中で平衡化した後に、抗血清をカラムにアプライし、抗血清中の抗体を特異的にプロテインAに吸着させて、抗血清中の抗体以外の成分と分離した。分離後、0.1M クエン酸,pH4.0の溶出緩衝液を流し、抗体をプロテインAから溶出させ、回収した。溶出回収した抗体を分画分子量1万の透析チューブに入れ、0.05M 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(同仁製、以下メスと略する)、0.04重量%NaN3、pH5.5の組成の緩衝液(5L×2回)で透析を行い、緩衝液成分を置換した。
透析後の抗体溶液中の不溶物を10,000gの遠心分離により除いた後、DEAE陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにアプライし、非吸着分画を採取した。この操作により、pH5.5で陽性に帯電している抗体、すなわち、pIが5.5よりも大きな抗体を選択的に採取することができる。採取した非吸着分画を0.05M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(同仁製、以下モプスと略する)、0.15M NaCl、0.04重量%NaN3、pH7.4の組成の緩衝液(5L×2回)で透析を行い、緩衝液成分を置換した。透析後の抗体溶液中の不溶物は10,000gの遠心分離により除いた。限外ろ過による濃縮後、280nmでの吸光度測定により抗体濃度を測定し、最終的に、透析で用いた緩衝液で3.0mg/mlに調製し、これを抗体試薬(抗体試薬B)とした。抗体試薬BはpI値5.5〜7.4の範囲の等電域を有する抗体のみを含んだものである。
上記で調製した抗体濃度は、特にこれに限定されるものではない。作製した抗体溶液は室温でも保存することができるが、抗体の変性防止の点からは、より低温保存が好ましく、4℃で保存することがより好ましい。
次に多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液の調製を次のようにして行った。多価カルボン酸には、フタル酸を用いた。最終濃度でフタル酸水素カリウムを0.05M、ポリエチレングリコール6000を4重量%になるように計量し、調製目的体積の約90%の純水で溶解した。緩衝液のpHはNaOHを用いて4.5に調整した。
以上のように構成した多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液と、上記で調製した抗体試薬とを組み合わせることにより、ヒトアルブミン測定用反応試薬キットを構成することができる。
以上のように構成したヒトアルブミン測定用反応試薬キットを使用する際には、反応系を形成させるために、ヒトアルブミンを含む試料(検体)、抗体試薬、および多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液を混合して使用する。
上記混合は、任意の方法によればよい。混合する比率は、必要とするヒトアルブミン濃度の測定範囲に応じて決定することができる。混合により形成された反応系で生じたヒトアルブミンと抗体との免疫反応による変量(例えば、抗原抗体複合体の量)を測定することにより、検体中の抗原濃度を知ることができる。
なお、抗体をラテックス、金コロイド、磁気微粒子などの微粒子担体に固定化させるか、あるいは、抗体に酵素、色素、蛍光物質、発光物質などを標識してもよい。
なお、上記キットの調製では、pH調整にNaOHを使用したが、KOH、LiOH、NH4OH、Ca(OH)2、Mg(OH)2などの水酸化物を使用してもよい。
また、実施例では、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む緩衝液の調製にフタル酸水素カリウムを使用したが、他の多価カルボン酸または多価カルボン酸塩であってもよく、例えば、無水クエン酸、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウムニ水和物、クエン酸三カリウム一水和物、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素ニアンモニウム、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、クエン酸三リチウム水和物、クエン酸銅(II)2.5水和物、DL−イソクエン酸三ナトリウム、trans−アコニット酸、cis−アコニット酸無水物、フタル酸、無水フタル酸、フタル酸カリウム、フタル酸二ナトリウム、フタル酸アンモニウム、フタル酸銅(II)、L(−)−リンゴ酸、D−リンゴ酸、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、L(−)−リンゴ酸ナトリウム、L(+)−酒石酸、DL−酒石酸、D(−)−酒石酸、メソ酒石酸一水和物、(+)酒石酸カリウム−水(2/1)、(+)酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、(+)酒石酸アンモニウム、(+)酒石酸水素カリウム、(+)酒石酸水素ナトリウム一水和物、(+)酒石酸ナトリウム二水和物、イタコン酸、イタコン酸無水物、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸第一鉄、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、マロン酸、マロン酸ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、マロン酸タリウム、マロン酸二タリウム、コハク酸、コハク酸アンモニウム、コハク酸二ナトリウム、グルタル酸、アジピン酸、アジピン酸アンモニウム、アジピン酸二アンモニウム、アジピン酸二カリウム、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸などのいずれかを用いてもよい。また、これらを組み合わせて使用することもでき、その場合のpH調整は、純水に溶解時のpHが調整目的とするpHよりアルカリ側の場合はHClなどを、酸性側の場合は上記で示した水酸化物などを利用して行えばよく、また、上記で例示した多価カルボン酸または多価カルボン酸塩の混合比を調整して行ってもよい。
また、抗体溶液の緩衝剤成分及びpHは、上記組成及びpHに限定されない。例えば、一液系の試薬、すなわち、試験溶液を構成する場合は、抗体溶液に多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含ませるため、及び反応系のpHを酸性にするために、目的の多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む目的の酸性pHに調整した緩衝液で透析を行えばよい。
また、本実施例では抗ヒトアルブミンポリクローナル抗体を用いた場合の試薬の構成方法を示したが、ヒトアルブミンの異なる部位に結合する2種類以上のモノクローナル抗体を混合して構成してもよく、その場合は、用いる抗体のpIは使用する緩衝液のpHよりも、大きいものとし、好ましくは、0.5以上、より好ましくは1.0以上、最も好ましくは1.5以上大きいものとする。本実施例の場合であれば、pI5.5以上であることがより好ましく、pI6.0以上であれば最も好ましい。
(実施例3)ヒトアルブミン測定用反応試薬キットのブランク値低減効果
実施例2で調製したpI値5.5〜7.4の範囲の等電域を有する抗体のみを含んだ抗体試薬Bと、比較例で調製したpI値4.5〜7.4の範囲の等電域を有する抗体のみを含んだ抗体試薬Aとを使用して、比較例と同様の手順で、pH4.5の反応溶液中で分光学的測定を行った。測定の際の反応溶液中の緩衝液成分は、抗体試薬Aおよび抗体試薬Bについて、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩を含む互いに同一なものとした。
結果を図6に示す。示されるように、反応系に加えたヒトアルブミン濃度が0の時の抗体試薬Bについての散乱光強度(すなわち、ブランク値)が、比較例で使用した抗体試薬Aのブランク値よりも顕著に減少していることがわかる。
このように、使用する緩衝液のpHに対して適切な等電域を有する抗体を選択して用いることにより、免疫反応測定法におけるブランク値の上昇を抑制することができ、本発明の一実施形態に係るヒトアルブミン測定用反応試薬キットの有効性が確認できた。
(実施例4)免疫反応測定用光学セルの構成
以下に、本発明の免疫反応測定用光学セルについて、図面を参照しながら詳細に説明する。図7(a)は、本発明の免疫反応測定用光学セル2の構成を示す斜視図であり、図7(b)はその断面図である。
本実施例における免疫反応測定用光学セル2は、光学測定用窓21、試料導入路22、開口部23、およびプランジャー接合部24を備える。本実施例では、光学セル2の光学測定用窓21が存在する部分の立体形状を正四角柱とし、四面共に実質的に平坦で、可視光領域において光学的に透明な材質で構成されている。光路長を1cmとし、約1mlの試料を吸入可能とし、光学測定ができる構成とした。本実施例においては、セルの材質としてはポリスチレンを使用した。
免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21から試料導入路22にかけての内壁に、試薬25を凍結乾燥により、移動可能なように担持した。本実施例の場合、試薬25は、1mlの液体試料を導入した時の最終濃度で、それぞれ、ヒトアルブミン抗体が1mg/ml、フタル酸が0.05M、そしてポリエチレングリコール6000が4重量%、pH5.0の内訳となるように調製した。
次に、以上のようにして構成した免疫反応測定用光学セル2の構成の概要について、図8(a)〜図8(d)を参照しながら説明する。
図8(a)は、免疫反応測定用光学セル2を装着した分析装置3の主な構成を模式的に示す。本実施例では、分析装置3は、筐体31の中に免疫反応測定用光学セル2と接合されたプランジャー32と、免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21の一面と垂直に配置された光源35と、光源35の透過光路上に光学測定用窓21の他の一面と垂直に配置された透過光検出用ディテクタ33と、光源35の透過光路と同じ高さで、光学測定用窓21のさらに他の一面と垂直に配置された散乱光検出用ディテクタ34とを含む検出部分とからなる構成とした。
図8(b)〜図8(d)に示されるように、プランジャー32を上へ動かすことにより、開口部23より液体試料36が流入する。この液体試料36の流入によって、図8(b)に示すように、免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21の内壁に、凍結乾燥により、移動可能なように担持されたヒトアルブミン抗体、フタル酸、およびポリエチレングリコール6000からなる試薬25が液体試料36と触れ、試薬25が液体試料36中に分散され、溶解し始める(液体試料中に分散された試薬37)。図8(c)のように、更にプランジャー32を上に動かすことにより、液体試料36は免疫反応測定用光学セル2の光学測定用窓21上の光源35、透過光検出用ディテクタ33、散乱光検出用ディテクタ34が存在する部位よりも上部まで達する。
液体試料36の開口部23からの液体試料36の流入により生じた流動により、液体試料中に分散されたヒトアルブミン抗体、フタル酸、およびポリエチレングリコール6000からなる試薬37は、最終的に図8(d)のように、液体試料36中に溶解する。これにより、液体試料36中に含まれるヒトアルブミンとヒトアルブミン抗体により抗原抗体反応による凝集複合体が生成され、液体試料に濁りが生じる。
この濁りの度合いは、液体試料36中に含まれるヒトアルブミン濃度に依存するため、この程度を測定することにより、液体試料36中に含まれるヒトアルブミン濃度を知ることが可能である。
液体試料36の濁りの度合いを測定するために、光源35から光を、光学測定用窓21の一面に対してほぼ垂直に照射する。光学測定用窓21の一面から入射した光は、液体試料36中を透過した後、直進性の高い光は、光源35側の光学測定用窓21の対面の光学測定用窓21を通して出射し、透過光検出用ディテクタ33において受光され、液体試料36中の抗原抗体反応による凝集複合体により散乱された光は、光源35側の光学測定用窓21と垂直な光学測定用窓21を通して出射し、散乱光検出用ディテクタ34において受光される。ここで、図には示さなかったが、いずれのディテクタからの出力もA/D変換され、マイコンまたはPCに取り込み、データ処理される。
透過光検出用ディテクタ33及び散乱光検出用ディテクタ34で受光された光の強度の少なくともいずれか一方に基づき、生じた試料と免疫反応測定用試薬との反応を測定することができる。透過光検出用ディテクタ33での光の強度に基づく場合は、吸光度または濁度を求める。この場合、あらかじめ、液体試料36の導入前の透過光を参照光とする。
散乱光検出用ディテクタ34での光の強度に基づく場合は、散乱光強度を求める。試料と試薬との反応を測定するために、いずれの指標を用いても良いが、試料と試薬との反応による濁りの度合いが低い場合は、散乱光強度を求める方がより高感度な測定ができる。
以上述べたように、本実施例の免疫反応測定用光学セル2によれば、試料のサンプリングと同時に、速やかに抗原抗体反応を分光測定することができるので、特に反応の過渡的な変化を測定する場合に、タイムロスが少なく、過渡的変化を確実に捉えることができる。また、光学セルへ液体試料・試薬混合液を移し替える必要がなく操作が簡便となる。
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
本発明に係る免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セルは、検体の免疫反応測定におけるプロゾーン現象を抑制し、測定値の減少を抑制し、かつ抗体分子間の非特異的凝集を抑制するという効果を有するため、特に、免疫比朧法、免疫比濁法、スライド凝集法などのような均一系の測定系を用いる免疫反応測定方法、ならびにそれに用いる試薬、キット、および光学セル等として有用である。
2 光学セル
21 光学測定用窓
22 試料導入路
23 開口部
24 プランジャー接合部
25 試薬
36 液体試料
37 試薬
21 光学測定用窓
22 試料導入路
23 開口部
24 プランジャー接合部
25 試薬
36 液体試料
37 試薬
Claims (37)
- 酸性pH条件下で検体中の被検物質を測定する方法であって、前記検体と、前記検体中の被検物質に対する抗体とを混合して反応系を形成する工程A、及び前記反応系における抗原抗体反応を測定する工程Bを備え、前記反応系のpHが酸性に設定され、かつ前記抗体のpIと、前記反応系のpHとの関係が、pI>pHとなるように設定されている、測定方法。
- 前記工程Bにおいて、前記被検物質と前記抗体との間で形成される抗原抗体複合体の量を測定する、請求項1記載の方法。
- 前記pIと前記pHとの差が、約1.0以上である、請求項1記載の方法。
- 前記pIと前記pHとの差が、約1.5以上である、請求項1記載の方法。
- 前記pHが約4〜6の範囲である、請求項1記載の方法。
- 前記pHが約4.5〜5.0の範囲である、請求項1記載の方法。
- 前記工程Aにおいて、前記検体と、前記抗体と、緩衝剤とを混合して反応系を形成する、請求項1記載の方法。
- 前記反応系が、有機酸または有機酸塩を含有する、請求項1記載の方法。
- 前記有機酸または有機酸塩が、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である、請求項8記載の方法。
- 前記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩が、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である、請求項9記載の方法。
- 前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である、請求項1記載の方法。
- 前記測定する工程Bは、前記複合体の量もしくは大きさに起因する光学パラメータを測定することを含む、請求項2記載の方法。
- 酸性pH条件下で抗原抗体反応原理に基づいて検体中の被検物質を測定するための試薬であって、前記被検物質に対する抗体を含有し、当該抗体のpIが前記酸性pHに対して、pI>pHとなるように調製されている、試薬。
- 前記pIと前記pHとの差が、約1.0以上である、請求項13記載の試薬。
- 前記pIと前記pHとの差が、約1.5以上である、請求項13記載の試薬。
- 前記pHが約4〜6の範囲にある、請求項13記載の試薬。
- 前記pHが約4.5〜5.0の範囲である、請求項13記載の試薬。
- 有機酸または有機酸塩を含有する、請求項13記載の試薬。
- 前記有機酸または有機酸塩が、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である、請求項18記載の試薬。
- 前記多価カルボン酸または多価カルボン酸塩が、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である、請求項19記載の試薬。
- 前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である、請求項13記載の試薬。
- 凍結乾燥状態で提供される、請求項13記載の試薬。
- 溶液として提供される、請求項13記載の試薬。
- 酸性pH条件下で検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するためのキットであって、
緩衝液と
被検物質に対する抗体を含む試薬とを含み、
前記試薬は、前記抗体のpIが前記酸性pHに対して、pI>pHとなるように調製されている、測定用キット。 - 前記pIと前記pHとの差が、約1.0以上である、請求項24記載のキット。
- 前記pIと前記pHとの差が、約1.5以上である、請求項24記載のキット。
- 前記緩衝液のpHが、約4〜6の範囲にある、請求項24記載のキット。
- 前記緩衝液のpHが、約4.5〜5.0の範囲である、請求項24記載のキット。
- 前記緩衝液が、有機酸または有機酸塩を含む、請求項24記載のキット。
- 前記有機酸または有機酸塩が、多価カルボン酸または多価カルボン酸塩である、請求項29記載のキット。
- 前記多価カルボン酸または前記多価カルボン酸塩が、トリカルボン酸もしくはトリカルボン酸塩、またはジカルボン酸もしくはジカルボン酸塩である、請求項30記載のキット。
- 前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または標識抗体である、請求項24記載のキット。
- 前記抗体は、異なるエピトープを認識する少なくとも2種類以上のモノクローナル抗体の混合物である、請求項24記載のキット。
- 前記試薬は、凍結乾燥状態で提供される、請求項24記載のキット。
- 前記緩衝液と前記試薬とが、前記被検物質の測定のために使用される直前に混合されて試験溶液として使用される、請求項24記載のキット。
- 酸性pH条件下で液体検体中の被検物質を抗原抗体反応原理に基づいて測定するための光学セルであって、
液体検体を注入するための開口部を有し、
前記光学セル内に、前記被検物質に対する抗体が前記液体検体に溶解可能なように担持されており、
前記液体検体と、前記被検物質に対する抗体との混合により形成される反応系のpHが酸性であって、かつ前記反応系のpHと前記抗体のpIとの関係が、pI>pHとなるように構成されている、免疫反応測定用光学セル。 - 前記光学セル内に、さらに緩衝剤を備えた、請求項36記載の光学セル。
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