概要
I.緒言
II.心筋トロポニン
III.心筋トロポニンAの標識
A.トロポニンの結合相手
1.抗体
2.交差反応抗体
B.結合相手とともに使用される蛍光部分
1.色素
2.量子ドット
C.結合相手蛍光部分組成物
IV.心筋トロポニンの高感度分析
A.試料
B.試料調製
C.トロポニンの検出および濃度の決定
V.トロポニンの高感度分析に好適な機器およびシステム
A.装置/システム B.単一粒子アナライザー
1.電磁放射線源
2.キャピラリーフローセル
3.原動力
4.検出器
C.試料採取システム
D.試料調製システム
E.試料回収
VI.心筋トロポニンの高感度分析を用いる方法
A.試料
B.診断、予後診断、または治療方法の決定
1.急性心筋梗塞
2.AMI以外の病態
a.心臓毒性
C.ビジネス方法
VII.組成物
VIII.キット
I.緒言
本発明は、トロポニン、例えば心筋トロポニンの高感度検出のための組成物および方法を提供する。心筋に特有なトロポニンの心筋アイソフォーム(心筋トロポニンIおよび/またはT)の血液中への放出は、心筋への損傷を示し、予後診断マーカーとしてのそれらの使用のためまたは治療の決定を助けるための基礎を提供する。
筋内のトロポニン複合体は、トロポニンI、C、およびTからなる。トロポニンCは、1つは心筋および遅筋(slow-twich muscle)から、1つは速筋(first-twich muscle)からの2つのアイソフォームとして存在し、事実上すべての横紋筋に見られるゆえに特定マーカーとしての使用は限られる。対照的に、トロポニンIおよびTは、遅筋、速筋、および心筋で異なるアイソフォームとして発現する。トロポニンIおよびTの独特の心筋のアイソフォームにより、骨格筋の他のトロポニンからそれらを免疫学的に識別することが可能である。したがって、心筋トロポニンIおよびTの血中への放出は、心筋に対する損傷を示しており、診断および予後診断のマーカーとしてのそれらの使用のためまたは治療の決定を助けるための基礎を提供する。
心臓損傷について現在用いられているマーカーは、その臨床的な有用性が限定されているとの欠点を有している。心臓酵素アッセイは、心筋の損傷の有無を判定するための基礎を形成している。残念なことに、標準的なクレアチンキナーゼ−MB(CK−MB)アッセイは、胸部痛開始後10時間から12時間までに梗塞を取り除くことに信頼性がない。より早期の診断は、線維素溶解療法およびトリアージに関して非常に特別な利点を有するであろう。
健康な個体の血液循環で見られるトロポニンのレベルは極めて低く、心臓特異的なトロポニンは心臓供給源以外からは生じないゆえに、トロポニンは心臓損傷の極めて高感度で特異的なマーカーである。心臓梗塞に加えて、他の多数の病態が心筋に損傷を引き起こす可能性があり、このような損傷の早期診断は臨床医にとって有用であることが示されるであろう。しかしながら、検出および定量化の現行の方法は、異常に高い濃度、例えば0.1ng/ml以上のレベルに到達するまで、血中への心筋トロポニンの放出を検出するための十分な感度を有していない。
したがって、本発明の方法および組成物は、心筋トロポニンの高感度の検出および定量化のための方法および組成物、ならびにこのような高感度の検出および定量化に基づく診断、予後診断、および/または治療決定のための組成物および方法を含む。
II.心筋トロポニン 心筋トロポニンの2つの特有の形態である心筋トロポニンI(cTnl)および心筋トロポニン(cTnT)が心筋から血中に放出されるとき、各々の数種が血液中で存在し得る。これらは、互いとのおよび/または心筋トロポニンC(cTnC)との、2つの形態の種々の複合体を含む。さらに、その2つの形態は、実質的に迅速なタンパク質分解変性を受けることで、種々の断片となる。さらに、種々のリン酸化および酸化形態のトロポニンが血液中に存在し得る。例えば、本明細書中にその全体について参照により取り入れる米国特許第6,991,907号を参照されたい。別に特定しない限り、本明細書に記載する「心筋トロポニン」は、を含む心筋トロポニンのすべての形態を包含する。
一部の実施形態では、本発明は、心筋トロポニンが遊離、複合体、タンパク質分解断片、リン酸化、酸化、または修飾されているかに関わらず、全心筋トロポニンの濃度、すなわち試料(例えば血液、血清、または血漿試料)中の心筋トロポニンのすべてまたは実質的な部分の合計の検出および/または決定のための方法および組成物を提供する。一部の実施形態では、心筋トロポニンはcTnlであり、別のものでは、cTnTであり、さらに別の実施形態では、心筋トロポニンはcTnlおよびcTnTである。全部のうちの一貫した割合が決定され、これが標準値と比較することができる限り、完全な全測定を行う必要はないことは十分に理解されている。その形態のトロポニンが全部のうちの少数成分である場合に、その形態の検出レベルが無いことまたは低いことは全トロポニンの測定にそれほどに影響を及ぼさないことも十分に理解されているであろう。したがって、本明細書で使用する「全心筋トロポニン」とは、試料中のすべてまたは実質的にすべての形態の特定の心筋トロポニン、例えばすべてのcTnlまたはすべてのcTnTを測定することを企図される測定値を指し、この場合、試料間の一貫性は、臨床的に関連する結論が試料と標準品との比較からあるいはある試料と別の試料との比較から導き出せることができるものである。
一部の実施形態では、本発明は、試料中における別個の実体としての1つ以上の種々の形態のトロポニン、例えば複合体化cTnl、遊離cTnl、マディード(muddied)cTnl(例えば、酸化またはリン酸化)、または複合体化cTnT、遊離cTnT、マディードcTnT(例えば、酸化またはリン酸化)の濃度の検出および/または決定のための方法および組成物を提供し、典型的には、試料中の形態の濃度を提供することができる。後者の実施形態では、異なる実体について比率または絶対値を決定してもよい。したがって、一部の実施形態では、本発明は、1つ以上の形態の複合体化トロポニン、または1つ以上のトロポニン断片、または1つ以上の酸化形態またはリン酸化形態のトロポニンの濃度の検出方法および典型的には決定方法を提供する方法を提供する。一部の実施形態では、2つ以上の形態を検出し、例えば単一試料上で異なる実体についての多重(multiplexed)アッセイを行うことにより、あるいは同じまたは類似の試料から得たアリコート上で別個のアッセイをすることにより、種々の形態の濃度を決定することができる。種々の形態の濃度の比率を得ることができる。例えば、特定の形態,例えば断片,複合体,または修飾形態の心筋トロポニンの濃度と全心筋トロポニンの濃度との比率を決定することができる。これらの比率および/または絶対値は、意味のある臨床情報を提供することができる。例えば、心筋トロポニンの断片の相対的な割合は、血液への放出からの、したがって間接的には時間の長さからの(例えば心筋梗塞からの)時間の長さを示すことができる。例えば、本明細書中にその全体について参照により取り入れる米国特許第6,991,907号を参照されたい。
m.心筋トロポニンの標識
一部の実施形態では、本発明は、心筋トロポニンの高感度検出および定量化のための標識を含む方法および組成物を提供する。
当業者は、標的分子を標識して粒子の混合物中での検出または識別を可能とするために多くの戦略を用いることができることをよく理解している。標識は、標識および標的の非特定または特定の相互作用を利用する方法を含む、任意の既知の手段で結合させることができる。標識は、検出可能なシグナルを提供し、あるいは電界中で粒子の移動に影響を及ぼすことができる。さらに、標識化は、直接にあるいは結合相手を介して達成することができる。
一部の実施形態では、標識は、蛍光部分に結合されるトロポニンの結合相手を含む。
A.トロポニンの結合相手
検出する心筋トロポニンの形態に対して必要となる特異性を有する任意の好適な結合相手を用いることができる。例えば、cTnlのすべての形態または実質的にすべての形態に対して特異的な結合相手を用いることができ、あるいはcTnTのすべての形態または実質的にすべての形態に対して特異的な結合相手を用いることができる。典型的には、そのような結合相手は、試料中で見出されると思われる異なる形態のすべてにまたはほとんどに共通する心筋トロポニンの領域に結合する。一部の実施形態では、複合体化cTnl、遊離cTnl、マディードcTnl(例えば酸化またはリン酸化)、または複合体化cTnT、遊離cTnT、マディードcTnT(例えば酸化orリン酸化)の結合相手など、1つ以上の特定の形態の心筋トロポニンに対して特異的な結合相手を用いることができる。結合相手は、当業界で既知であり、例えばアプタマー、レクチン,および受容体を包含する。有用かつ多用途の結合相手は抗体である。
A.抗体
一部の実施形態では、結合相手は心筋トロポニンに特異的な抗体である。本明細書で用いる用語「抗体」は幅広い用語であり、限定するものではないが、天然の抗体、ならびに例えば単鎖抗体、キメラ抗体、二官能基抗体、およびヒト化抗体を含む非天然の抗体、ならびにそれらの抗原結合性フラグメントを指すのに、その通常の意味で用いられる。一部の実施形態では、抗体は、cTnlに特異的である。一部の実施形態では、抗体は、cTnTに特異的である。一部の実施形態では、抗体は、cTnTに特異的である。一部の実施形態では、標識は、cTnlおよびcTnTの両方に対する抗体を含む。抗体は、すべての形態または実質的にすべての形態の心筋トロポニン、例えば、すべての形態または実質的にすべて形態のcTnlあるいはすべての形態または実質的にすべて形態のcTnTに特異的である。一部の実施形態では、1つ以上の特定の形態の心筋トロポニン、例えば、複合体化cTnl、遊離cTnl、マディードcTnl(例えば酸化またリン酸化)、または複合体化cTnT、遊離cTnT、マディードcTnT(例えば酸化orリン酸化)の結合相手に特異的な抗体を用いることができる。抗体の混合物、例えば、cTnlおよびcTnTに対する抗体の混合物、または種々の形態のトロポニン(遊離、複合体化など)に対する抗体の混合物、または混合物の混合物も本発明に包含される
トロポニンのエピトープまたは領域(これらに対して抗体が生じる)の選択により、例えば、全トロポニン、ある種の断片、複合体化トロポニン、修飾されたトロポニンに対するその特異性が決定されることは十分に理解されている。一部の実施形態では、抗体は、心筋トロポニンの特定のアミノ酸領域に特異的である。一部の実施形態では、抗体は、ヒト心筋トロポニンIの特定のアミノ酸27−41に特異的である。モノクローナルおよびポリクローナル抗体は両方とも、結合相手として有用である。一部の実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ヒト心筋トロポニンIのアミノ酸27−41に特異的なポリクローナル抗体である。一部の実施形態では、この抗体は、ヘパリン、リン酸化、酸化、およびトロポニン複合体形成による影響を受けず、骨格筋トロポニンIと交差反応をしない。
抗体の作製方法を十分に確立されている。トロポニンIおよびトロポニンTに対する心臓の特定配列は、FEBS Lett. 270,57−61(1990)およびGenomics21,311−316(1994)に記載されている。例えば、Antibody,A Laboratory Manual, Ed HarlowおよびDavid Lane,Cold Spring Harbor Laboratory(1988),Cold Spring Harbor,N.Y.に記載されているように、抗体の作製には多くの手法が利用可能であることを当業者はよく認識している。当業者は、抗体を模擬する結合断片またはFab断片を、遺伝子情報から種々の手法によって調製できることもよく理解している(Antibody Engineering:A Practical Approach(Borrebaeck,C,ed.),1995,Oxford University Press, Oxford;J.Immunol.149,3914−3920(1992))。種々の複合体化、断片、リン酸化、および酸化形態のトロポニンに対する抗体を生成する方法は、米国特許第5,579,687号;第6,991,907号;および米国特許出願第20050164317号(これらを本明細書中にその全体について参照により取り入れる)に記載されている。トロポニンIの心臓の特定配列を擬似する14個のアミノ酸からなる合成ペプチドおよびペプチドに対する抗体を調製する方法は、国際特許出願PCT/US94/05468に記載されている。遊離および複合体化心筋トロポニンに対するモノクローナルおよびポリクローナル抗体も市販されている(HyTest,HyTest Ltd.,トュルク、フィンランド;Abeam Inc.,ケンブリッジ,マサチューセッツ州,米国,Life Diagonosis,Inc.,ウェストチェスター,ペンシルベニア州,米国;Fitzgerald Industries International,Inc.,コンコード,マサチューセッツ州 01742−3049米国;BiosPacific,エメリービル,カナダ).
一部の実施形態では、抗体は哺乳動物、例えばヤギポリクローナル抗cTnl抗体である。抗体は、cTnlの特定の領域、例えばヒト心筋トロポニンIのアミノ酸27〜41に特異的であることができる。捕捉結合相手および検出結合相手の対,例えば捕捉および検出抗体の対は、本発明の実施形態で用いることができる。したがって、一部の実施形態では、典型的には2つの結合相手、例えば2つの抗体を用いる不均一(heterogeneous)アッセイプロトコルを用いる。一方の結合相手は、通常は固体支持体上で固定化される捕捉相手であり、他方の結合相手は、典型的には検出可能な標識が結合されている検出結合相手である。一部の実施形態では、対の捕捉結合相手メンバーは、すべての形態または実質的にすべての形態の心筋トロポニンに特異的な抗体である。一例は、遊離心筋トロポニンI(cTnl)アミノ酸41〜49および他のトロポニン構成要素とのcTnl形成複合体に特異的な抗体、例えばモノクローナル抗体である。この抗体は、ヘパリン、リン酸化、酸化、およびトロポニン複合体形成による影響を受けず、骨格筋トロポニンIと交差反応をしないことが好ましい。したがって、抗体は全cTnlと結合すると考えられる。別の例は、心筋トロポニンI(cTnl)アミノ酸87〜91に特異的なモノクローナル抗体であり、骨格筋肉トロポニンIと交差反応をしない。このような抗体はBios Pacific、エメリービル、カナダから市販されている。他の抗体の対は既知であり、設計することができる。
一部の実施形態では、様々な種と交差反応する抗体を捕捉抗体、検出抗体、またはその両方として用いることが有益である。そのような実施形態は、例えば心臓損傷のマーカーとしての血液中への心筋トロポニンの放出を決定することによる、薬物毒性の測定を含む。交差反応抗体により、ある種、例えばヒト以外の種での毒性の研究が行うこと可能となり、アッセイの試薬中に同じ抗体または抗体の対を使用した他の種、例えばヒトの研究または臨床観察へとその結果を直接移動することが可能となり、したがってアッセイ間の変動が減少する。したがって、一部の実施形態では、マーカー、例えば心筋トロポニン、例えば心筋トロポニンIに対する結合相手として用いられる1つ以上の抗体は、交差反応性抗体であってもよい。一部の実施形態では、抗体は、ヒト、サル、イヌ、およびマウスからなる群から選択される少なくとも2種からのマーカー、例えば心筋トロポニンと交差反応する。一部の実施形態では、抗体は、ヒト、サル、イヌ、およびマウスからなる群のすべてからのマーカー、例えば心筋トロポニンと交差反応する。
B.結合相手ととも用いる蛍光部分
本発明で用いる標識の一部の実施形態では、結合相手、例えば抗体は蛍光部分に結合される。該蛍光部分の蛍光は、本明細書で記載の単一分子検出器などの単一分子検出器での検出を可能にするのに十分である。本明細書で用いる用語「蛍光部分」は、その全体の蛍光が、その部分が本明細書で記載される単一分子検出器で検出することができるようなものである1つ以上の蛍光実体を含む。したがって、蛍光部分は、単一の実体(例えば、量子ドットまたは蛍光分子)または複数の実体(例えば、複数の蛍光分子)を含むことができる。本明細書で用いる用語「部分」が蛍光実体の群、例えば複数の蛍光色素分子を指す場合、検出する十分な蛍光を群としての該実体が提供する限り、個々の実体は別々に結合相手に結合するか、あるいは実体は一緒に結合することができることは理解されよう。
一般的に、蛍光部分の蛍光は、蛍光部分がバックグラウンドレベルを超えて単一分子検出器で検出可能であるのに十分な量子効率および光退色の欠如の組合せを含み、アッセイの所望のレベルの検出、正確度および精度に必要な一致性を有する。例えば、一部の実施形態では、蛍光部分の蛍光は、本明細書で記載される機器において、約10、5、4、3、2、または1pg/ml未満の検出レベル、および約20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%以下未満、例えば約10%以下の変動係数で、トロポニンの検出および/または定量を可能にするものである。一部の実施形態では、蛍光部分の蛍光は、本明細書で記載される機器において、約5pg/ml未満の検出限界、および約10%未満の変動係数で、トロポニンの検出および/または定量を可能にするものである。本明細書で用いる用語「検出限界」は、対象となる物質の分子を含有しているとして試料を特定することができる最低濃度、例えばゼロでない最初の値を含む。これは、ゼロの変動性および標準曲線の勾配によって定義することができる。例えば、アッセイの検出限界は、標準曲線を描き、標準曲線のゼロ値を決定し、その値に2つの標準偏差を加えることで決定することができる。この値と等しいシグナルを発生する対象となる物質の濃度は、「検出下限」濃度である。
さらに、蛍光部分は選択されるアッセイにおける使用と一致する特性を有する。一部の実施形態では、アッセイはイムノアッセイであり、蛍光部分が抗体に結合される。蛍光部分は、それが他の抗体もしくはタンパク質と凝集しないような特性、またはそれがアッセイの必要な正確度および精度と一致する凝集を起さないような特性を有しなければならない。一部の実施形態では、好ましい蛍光部分は、例えば、1)高い吸収係数と、2)高い量子収率と、3)高い光安定性(低い光退色)と、および4)本発明のアナライザーおよびシステムを用いて分析することができるように(例えば、対象となるタンパク質の沈殿および蛍光部分を結合したタンパク質の沈殿を引き起こさないように)、対象となる生体分子(例えば、タンパク質)を標識することとの適合性との組合せを有する色素分子などの蛍光部分である。
本発明の一部の実施形態で有用な蛍光部分、例えば単一の蛍光色素分子または複数の蛍光色素分子は、EM放射によって刺激したときのそれらの光子放射特性によって定義することができる。例えば、一部の実施形態では、本発明は、蛍光部分の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約10、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、500、600、700、800 900または1000個の光子を放出することが可能である蛍光色素部分、例えば単一の蛍光色素分子または複数の蛍光色素分子を利用し、レーザーは蛍光部分を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。全エネルギーは、レーザーの出力と色素部分の曝露時間との多くの異なる組合せによって達成することができることは理解されよう。例えば、1mWの出力のレーザーは3ミリ秒、3mWは1ミリ秒、6mWは0.5ミリ秒、12mWは0.25ミリ秒などのように用いることができる。
一部の実施形態では、本発明は、蛍光部分の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約50個の光子を放出することが可能である蛍光色素部分、例えば単一の蛍光色素分子または複数の蛍光色素分子を利用し、レーザーは蛍光部分を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。一部の実施形態では、本発明は、蛍光部分の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約100個の光子を放出することが可能である蛍光色素部分、例えば単一の蛍光色素分子または複数の蛍光色素分子を利用し、レーザーは蛍光部分を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。一部の実施形態では、本発明は、蛍光部分の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約150個の光子を放出することが可能である蛍光色素部分、例えば単一の蛍光色素分子または複数の蛍光色素分子を利用し、レーザーは蛍光部分を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。一部の実施形態では、本発明は、蛍光部分の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約200個の光子を放出することが可能である蛍光色素部分、例えば単一の蛍光色素分子または複数の蛍光色素分子を利用し、レーザーは蛍光部分を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。一部の実施形態では、本発明は、蛍光部分の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約300個の光子を放出することが可能である蛍光色素部分、例えば単一の蛍光色素分子または複数の蛍光色素分子を利用し、レーザーは蛍光部分を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。一部の実施形態では、本発明は、蛍光部分の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約500個の光子を放出することが可能である蛍光色素部分、例えば単一の蛍光色素分子または複数の蛍光色素分子を利用し、レーザーは蛍光部分を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。
一部の実施形態では、蛍光部分は、平均で少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の蛍光実体、例えば蛍光分子を含む。一部の実施形態では、蛍光部分は、平均でたった約2、3、4、5、6、7、8、9、10または11個の蛍光実体、例えば蛍光分子しか含まない。一部の実施形態では、蛍光部分は、平均約1〜11、または約2〜10、または約2〜8、または約2〜6、または約2〜5、または約2〜4、または約3〜10、または約3〜8、または約3〜6、または約3〜5、または約4〜10、または約4〜8、または約4〜6、または約2、3、4、5、6以上の個数の蛍光実体を含む。一部の実施形態では、蛍光部分は、平均約2〜8個の蛍光部分を含む。一部の実施形態では、平均約2〜6個の蛍光実体。一部の実施形態では、蛍光部分は平均約2〜4個の蛍光実体を含む。一部の実施形態では、蛍光部分は平均約3〜10個の蛍光実体を含む。一部の実施形態では、蛍光部分は平均約3〜8個の蛍光実体を含む。一部の実施形態では、蛍光部分は平均約3〜6個の蛍光実体を含む。「平均」とは、試料が複数の結合相手蛍光部分ユニットを含む、本発明の標識の群の代表的試料である所与の試料において、標準の分析法で決定される、蛍光部分を構成する特定の蛍光実体と結合相手とのモル比が、特定される数または数の範囲に対応することを意味する。例えば、標識が、抗体である結合相手および特定の吸光度の複数の蛍光色素分子を含む蛍光部分を含む実施形態では、標識の溶液を適切なレベルに希釈し、タンパク質(抗体)のモル濃度を決定するために280nmの吸光度を取得し、蛍光色素分子のモル濃度を決定するために例えば650nm(AlexaFluor647の場合)の吸光度を取得する、分光光度アッセイを用いることができる。前者に対する後者のモル濃度の比は、各抗体に結合する蛍光部分における蛍光実体(色素分子)の平均数を表す。
1.色素
一部の実施形態では、本発明は、蛍光色素分子を含む蛍光実体を利用する。一部の実施形態では、本発明は、蛍光色素分子の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約50個の光子を放出することができる蛍光色素分子を利用し、レーザーは該分子を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。一部の実施形態では、本発明は、蛍光色素分子の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約75個の光子を放出することができる蛍光色素分子を利用し、レーザーは該分子を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。一部の実施形態では、本発明は、蛍光色素分子の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約100個の光子を放出することができる蛍光色素分子を利用し、レーザーは該分子を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。一部の実施形態では、本発明は、蛍光色素分子の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約150個の光子を放出することができる蛍光色素分子を利用し、レーザーは該分子を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。一部の実施形態では、本発明は、蛍光色素分子の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約200個の光子を放出することができる蛍光色素分子を利用し、レーザーは該分子を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。
本発明の蛍光部分に用いるための有用な蛍光実体の非包括的なリストを、下の表2に示す。一部の実施形態では、蛍光色素は、AlexaFlour488、532、647、700、750、フルオレセイン、B−フィコエリトリン、アロフィコシアニン、PBXL−3およびQdot 605からなる群から選択される。一部の実施形態では、蛍光色素は、AlexaFlour488、532、700、750、フルオレセイン、B−フィコエリトリン、アロフィコシアニン、PBXL−3、およびQdot 605からなる群から選択される。
本発明で用いるのに好適な色素には、修飾されたカルボシアニン色素が含まれる。カルボシアニン色素の修飾には、3位に反応基または共役物質を受容するためのカルボシアニン色素のインドリウム環の修飾が含まれる。インドリウム環の修飾は、1位の窒素原子を介して結合した構造的に類似するカルボシアニン色素で標識した共役体よりも、タンパク質、核酸、および他の生体高分子上で一様に、かつ、実質的により強い蛍光性の色素共役体を提供する。実質的に同一の波長において構造的に類似する色素よりも強い蛍光発光を有することおよび生体高分子へ共役すると吸収スペクトルの影響が減少することに加え、修飾されたカルボシアニン色素は、ピーク吸光度の波長で、構造的に類似する色素よりも高い光安定性および高い吸光度(吸光係数)を有する。したがって、修飾されたカルボシアニン色素により、修飾された色素およびそれらの共役体を用いるアッセイの感度の向上がもたらされる。好ましい修飾された色素には、少なくとも1つの置換インドリウム環系を有し、該インドリウム環の3位炭素上の置換基が化学反応性基または共役物質を含む、化合物が含まれる。他の色素化合物には、アザベンズアゾリウム環部分および少なくとも1つのスルホン酸部分が導入された化合物が含まれる。本発明の様々な実施形態で個々の粒子を検出するために用いることができる修飾されたカルボシアニン色素は、米国特許第6977305号(これを本明細書中にその全体について参照により取り入れる)に記載されている。したがって、一部の実施形態では、本発明の標識は、置換インドリウム環系を含み、該インドリウム環の3位炭素上の置換基が化学反応性基または共役物質基を含む、蛍光色素を利用する。
一部の実施形態では、標識は、1つ以上のAlexa色素(Molecular Probes、Eugene、OR)を含む蛍光部分を含む。Alexa色素は、米国特許第6977305号、第6974874号、第6130101号、および第6974305号(これらを本明細書中にその全体について参照により取り入れる)に開示されている。本発明の一部の実施形態は、AlexaFluor647、AlexaFluor488、AlexaFluor532、AlexaFluor555、AlexaFluor610、AlexaFluor680、AlexaFluor700、およびAlexaFluor750からなる群から選択される色素を利用する。本発明の一部の実施形態は、AlexaFluor488、AlexaFluor532、AlexaFluor647、AlexaFluor700、およびAlexaFluor750からなる群から選択される色素を利用する。本発明の一部の実施形態は、約650〜660nmの吸収極大および約660〜670nmの放出極大を有するAlexaFluor647分子を利用する。AlexaFluor647色素は、単独でまたは他のAlexaFluor色素と一緒に用いられる。
さらに、現在利用できる有機蛍光体は、ポリエチレンなどの親水基を加えることによってその疎水性を弱めることにより、改善することができる。あるいは、現在、AlexaFluor647色素などのスルホン化有機蛍光体は、それらを両性イオン性にすることによって酸性を弱めることができる。修飾された蛍光体で標識した抗体などの粒子は、イムノアッセイで表面およびタンパク質と非特異的に結合する可能性は低く、したがって、感度がより高く、かつ、バックグラウンドがより低いアッセイを可能にする。単一粒子を検出するシステムの感度を高める目的で蛍光色素の特性を修飾および改善するための方法は、当技術分野で既知である。好ましくは、修飾により、高量子収率を維持しつつ、ストークスシフトが改善される。
2.量子ドット
一部の実施形態では、本発明のアナライザーシステムを用いて試料中の分子を検出するために用いる蛍光標識部分は、量子ドットである。半導体ナノクリスタルまたは人工原子としても知られる量子ドット(QD)は、100〜1,000個の電子を含む2〜10nmの範囲の半導体結晶である。一部のQDは、直径10〜20nmであることができる。QDは高い量子収率を有し、これによってそれらは光学用途に特に有益となる。QDは、伝統的な蛍光団の励起状態と考えられるが最高200ナノ秒の非常により長い寿命を有することができる励起子の形成によって蛍光を発する、蛍光団である。この特性は、QDに低い光退色を提供する。QDのエネルギーレベルは、QDの大きさおよび形状ならびにQD電位の深さを変えることによって制御することができる。小さな励起性QDの光学特性の1つは呈色であり、それはドットの大きさで判定される。ドットが大きいほど、蛍光はより赤いかまたはスペクトルの赤端(red end)により近い。ドットが小さいほど、それはより青いかまたは青端(blue end)により近い。エネルギーを決定し、したがって蛍光発光の色を決定するバンドギャップエネルギーは、QDの大きさの2乗に反比例する。より大きなQDは、間隔のより狭いより多くのエネルギー準位を有し、したがって、より少ないエネルギーを含む光子、すなわちスペクトルの赤端により近いものをQDが吸収することが可能となる。ドットの放出周波数はバンドギャップによって決まることから、最高の精度でドットの出力波長を制御することが可能である。一部の実施形態では、単一粒子アナライザーシステムで検出されるタンパク質は、QDで標識する。一部の実施形態では、1つのQDで標識されたタンパク質を検出するために、異なる波長で異なるタンパク質の検出を可能にするフィルターを用いて単一粒子アナライザーを用いる。QDは広い励起特性および狭い放出特性を有し、それは、カラーフィルタリングと用いた場合、個々のシグナルを分解するのに、単一試料中の複数の標的の多重分析のための単一の電磁放射線源のみを必要とする。したがって、一部の実施形態では、アナライザーシステムは、1つの連続波レーザーおよび各々が1つのQDで標識された粒子を含む。コロイド状に調製されたQDは自由に浮遊し、金属配位結合官能基を介して様々な分子に結合することができる。これらの基には、限定するものではないが、チオール、アミン、ニトリル、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホン酸、カルボン酸、または他のリガンドが含まれる。表面に好適な分子を結合することによって、量子ドットは、ほとんどあらゆる溶媒に分散または溶解させることができ、あるいは様々な無機および有機のフィルムに導入することができる。量子ドット(QD)は、マレイミドエステル結合反応を介して直接ストレプトアビジンに、あるいはマレイミド−チオール結合反応を介して抗体に結合することができる。
これにより、表面に共有結合で結合した生体分子を有する材料となり、高い特異活性を有する共役体が生成される。一部の実施形態では、単一粒子アナライザーで検出されるタンパク質を1つの量子ドットで標識する。一部の実施形態では、量子ドットは直径10〜20nmである。他の実施形態では、量子ドットは直径2〜10nmである。有用な量子ドットには、QD 605、QD 610、QD 655およびQD 705が含まれる。特に好ましい量子ドットは、QD 605である。
C.結合相手蛍光部分組成物
本発明の標識は、本明細書で記載される機器での検出および定量のために要求される蛍光を提供するために、蛍光部分に結合した結合相手(例えば、抗体)を一般に含む。本明細書で記載される単一分子検出器での検出の結合相手および蛍光部分の任意の好適な組合せを、本発明で標識として用いることができる。一部の実施態様では、本発明は、心筋トロポニンの分子またはその断片、複合体、リン酸化、もしくは酸化の形態についての標識を提供し、該標識は心筋トロポニンに対する抗体および蛍光部分を含む。抗体は、本明細書に記載したような任意の抗体、例えばcTnTまたはcTnlに対する抗体であってもよい。一部の実施態様では、抗体は、cTnlに対する抗体である。一部の実施態様では、抗体は、心筋トロポニンの特定の領域に特異的である、例えば、ヒトcTnlのアミノ酸27−41に特異的である。一部の実施態様では、本発明は、抗cTnl抗体、例えば、BiosPacific、エメリービルから市販されているG129Cと呼ばれるものから得られるヤギポリクローナル抗体などのポリクローナル抗体に結合された蛍光部分を含む組成物を提供する。蛍光部分は、標識が、蛍光部分の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、500、600、700、800 900、または1000個の光子を放出することが可能であるように結合することができ、レーザーはその標識を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。一部の実施形態では、蛍光部分は、その蛍光部分の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに平均で少なくとも約50、100、150、または200個の光子を放出することができる蛍光部分でよく、レーザーは蛍光部分を含む直径約5ミクロン以上のスポットに集束され、レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。蛍光部分は、置換インドリウム環系を含み、該インドリウム環の3位炭素上の置換基は化学反応性基または共役物質基を含む構造を有する色素分子を1つ以上含む蛍光部分でよい。標識組成物は、AlexaFluor488、532、647、700、または750からなる群から選択される色素分子を1つ以上含む蛍光部分を含むことができる。標識組成物は、AlexaFluor488、532、700、または750からなる群から選択される色素分子を1つ以上含む蛍光部分を含むことができる。標識組成物は、AlexaFluor488である色素分子を1つ以上含む蛍光部分を含むことができる。標識組成物は、AlexaFluor555である色素分子を1つ以上含む蛍光部分を含むことができる。標識組成物は、AlexaFluor610である色素分子を1つ以上含む蛍光部分を含むことができる。標識組成物は、AlexaFluor647である色素分子を1つ以上含む蛍光部分を含むことができる。標識組成物は、AlexaFluor680である色素分子を1つ以上含む蛍光部分を含むことができる。標識組成物は、AlexaFluor700である色素分子を1つ以上含む蛍光部分を含むことができる。標識組成物は、AlexaFluor750である色素分子を1つ以上含む蛍光部分を含むことができる。
一部の実施形態では、本発明は、AlexFluor分子、ヒトctnIのアミノ酸27〜41に特異的なヤギポリクローナル抗cTnl抗体などの抗体に結合されたAlexaFluor647分子などの記載群から選択されるAlexaFluor分子を含む、心筋トロポニンIの検出のための組成物を提供する。一部の実施形態では、組成物は、ヒトctnIのアミノ酸27〜41に特異的なヤギポリクローナル抗cTnl抗体などの抗体に結合した、平均1〜11、または約2〜10、または約2〜8、または約2〜6、または約2〜5、または約2〜4、または約3〜10、または約3〜8、または約3〜6、または約3〜5、または約4〜10、または約4〜8、または約4〜6、または約2、3、4、5、6、または約6を超える個数のAlexaFluor647分子を含む。一部の実施形態では、本発明は、ヒトctnIのアミノ酸27〜41に特異的なヤギポリクローナル抗cTnl抗体などの抗体に結合した、平均1〜11、または約2〜10、または約2〜8、または約2〜6、または約2〜5、または約2〜4、または約3〜10、または約3〜8、または約3〜6、または約3〜5、または約4〜10、または約4〜8、または約4〜6、または約2、3、4、5、6、または約6を超える個数のAlexaFluor647分子を含む、心筋トロポニンIの検出のための組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ヒトctnIのアミノ酸27〜41に特異的なヤギポリクローナル抗cTnl抗体などの抗体に結合した平均約2〜10個のAlexaFluor647分子を含む、心筋トロポニンIの検出のための組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ヒトctnIのアミノ酸27〜41に特異的なヤギポリクローナル抗cTnl抗体などの抗体に結合した平均約2〜8個のAlexaFluor647分子を含む、心筋トロポニンIの検出のための組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ヒトctnIのアミノ酸27〜41に特異的なヤギポリクローナル抗cTnl抗体などの抗体に結合した平均約2〜6個のAlexaFluor647分子を含む、心筋トロポニンIの検出のための組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ヒトctnIのアミノ酸27〜41に特異的なヤギポリクローナル抗cTnl抗体などの抗体に結合した平均約2〜4個のAlexaFluor647分子を含む、心筋トロポニンIの検出のための組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ヒトctnIのアミノ酸27〜41に特異的なヤギポリクローナル抗cTnl抗体などの抗体に結合した平均約3〜8個のAlexaFluor647分子を含む、心筋トロポニンIの検出のための組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ヒトctnIのアミノ酸27〜41に特異的なヤギポリクローナル抗cTnl抗体などの抗体に結合した平均約3〜6個のAlexaFluor647分子を含む、心筋トロポニンIの検出のための組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ヒトctnIのアミノ酸27〜41に特異的なヤギポリクローナル抗cTnl抗体などの抗体に結合した平均約4〜8個のAlexaFluor647分子を含む、心筋トロポニンIの検出のための組成物を提供する。
結合相手、例えば抗体への蛍光部分または蛍光部分を作る蛍光実体の結合は、任意の好適な手段によることができる。そのような方法は当技術分野で既知であり、例示的な方法は実施例で示す。一部の実施形態では、本発明の方法で用いる標識を形成するための結合相手への蛍光部分の結合の後であって、対象となるタンパク質を標識するために標識を利用する前に、濾過工程を実施することが有用である。例えば、抗体−色素標識は、使用の前に、例えば0.2ミクロンフィルターまたは凝集体の除去に好適な任意のフィルターを介して濾過することができる。本発明のアッセイで使用する他の試薬も、例えば0.2ミクロンフィルターまたは好適な任意のフィルターを介して濾過することができる。理論に束縛されるものではないが、そのような濾過により、例えば抗体−色素標識の凝集体(aggregates)の一部が除去されると考えられる。そのような凝集体は対象となるタンパク質へユニットとして結合するが、溶離緩衝剤中で放出した際に分解しやすいので、偽陽性が生じることがある。すなわち、いくつかの標識が、対象となる単一タンパク質分子だけに結合した凝集体から検出される。理論に関係なく、濾過は以降のアッセイでの偽陽性を低減し、正確度および精度を改善することが分かった。
IV.心筋トロポニンの高感度分析
一態様では、本発明は、本発明は、i)分子、断片、または複合体を、存在する場合には標識で標識する工程と、ii)標識の有無を検出する工程であって、標識の存在の検出は試料中の心筋トロポニンの単一分子、断片、または複合体の存在を示す工程とにより、試料中の心筋トロポニンの単一分子またはその断片もしくは複合体の有無を判定するための方法である。本明細書で用いる「心筋トロポニンの分子」には、翻訳後修飾の形態(例えばリン酸化した形態)ならびに酸化したまたは化学的に変化した形態を含む特定のタイプの心筋トロポニンの天然アミノ酸配列全体を実質的に含む分子が含まれる。本明細書で用いる分子の「断片」には、分子全体についての修飾を含む、天然アミノ酸配列全体より短い心筋トロポニンの分子が含まれる。本明細書で用いる心筋トロポニン分子の「複合体」には、1つ以上の他の分子または物質と関連する(例えば、1つ以上の他の心筋トロポニン分子と関連する)心筋トロポニン分子または断片が含まれる。一部の実施形態では、この方法は、約100、80、60、50、40、30、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1pg/ml未満の検出限界でトロポニンを検出することが可能である。一部の実施形態では、この方法は、約100pg/ml未満の検出限界でトロポニンを検出することが可能である。一部の実施形態では、この方法は、約50pg/ml未満の検出限界でトロポニンを検出することが可能である。一部の実施形態では、この方法は、約20pg/ml未満の検出限界でトロポニンを検出することが可能である。一部の実施形態では、この方法は、約10pg/ml未満での検出限界でトロポニンを検出することが可能である。一部の実施形態では、この方法は、約5pg/ml未満での検出限界でトロポニンを検出することが可能である。一部の実施形態では、この方法は、約3pg/ml未満での検出限界でトロポニンを検出することが可能である。一部の実施形態では、この方法は、約1pg/ml未満での検出限界でトロポニンを検出することが可能である。検出限界は、米国国立標準技術研究所標準品などの好適な標準品、例えばcTnl標準品を用いることによって決定することができる。
この方法は、試料中のトロポニンの単一分子を検出することによって、試料中の心筋トロポニンの濃度を決定する方法も提供する。トロポニンの単一分子の「検出」には、分子を直接または間接的に検出することが含まれる。間接的な検出の場合には、心筋トロポニンの単一分子に対応する標識、例えば心筋トロポニンの単一分子に結合した標識を検出することができる。
0054]検出用の心筋トロポニンのタイプは、本明細書に記載の通りであり、例えばcTnT、cTnl、全心筋トロポニン(例えば、全cTnlまたは全cTnT)または心筋トロポニンの遊離体、複合体、または断片である。一部の実施形態では、全心筋トロポニンが検出および/または定量化される。一部の実施形態では、全cTnTが検出される。一部の実施形態では、全cTnlが検出および/または定量化される。
A.試料
試料はあらゆる好適な試料であってよい。典型的には、試料は、生物学的液体などの生物学的試料である。このような液体には、制限するものではないが、吸気濃縮物(exhaled breath condensate)(EBC)、気管支肺胞洗浄液(BAL)、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、胸膜液、滑液、腹腔液、羊水、胃液、リンパ液、間質液、組織ホモジネート、細胞抽出液、唾液、痰、便、生理学的分泌物、涙、粘液、汗、乳汁、精液、精漿、膣分泌液、潰瘍および他の表面発疹、水疱、および膿瘍から得られる液、ならびに正常、悪性、および疑わしい組織の生検を含む組織の抽出物、または対象となる標的粒子を含み得る身体のあらゆる他の成分が含まれる。細胞もしくは組織の培養物、または培養液などの他の類似の検体も対象である。
一部の実施形態では、試料は血液試料である。一部の実施形態では、試料は血漿の試料である。一部の実施形態では、試料は血清の試料である。
B.試料の調製
一般に、測定が望まれる心筋トロポニンに対応する標識を生成するあらゆる試料調製方法を用いることができ、ここで、該標識は本明細書に記載される機器において検出可能である。当技術分野で既知であるように、1つ以上の粒子に標識を加える試料の調製は、均一または不均一の形式で行うことができる。一部の実施形態では、試料調製を均一の形式で形成する。均一の形式を使用するアナライザーシステムでは、未結合の標識は試料から除去されない。例えば、本明細書中にその全体について参照により取り入れる米国特許出願11/048660を参照されたい。一部の実施形態では、対象の粒子または複数の粒子は、対象の粒子または複数の粒子に結合する標識した抗体または複数の抗体に加えることによって標識される。
一部の実施形態では、不均一のアッセイ形式が用いられ、この場合、典型的には未結合の標識を除去するための工程が用いられる。このようなアッセイ形式は当技術分野では周知である。1つの特に有用なアッセイ形式は、サンドイッチイムノアッセイなどのサンドイッチアッセイである。この形式では、生物学的状態のマーカーなどの対象の分子を、捕捉結合相手を用いて固体支持体上などに捕捉する。次いで、不必要な分子および他の物質を場合により洗い流し、続いて検出結合相手および検出可能な標識(例えば蛍光部分)を含む標識を結合させることができる。さらなる洗浄により未結合の標識を除去し、次いで、必ずではないが、通常、未だ検出結合相手に結合している検出可能な標識を放出させる。代替の実施形態では、試料および標識を、間に(in between)(例えば同時に)、洗浄せずに捕捉結合相手に加える。他の変形は当業者であれば明らかであろう。
一部の実施形態では、トロポニン粒子を検出するための方法は、捕捉結合相手としてのモノクローナル抗体などの抗体とのサンドイッチアッセイを用いる。この方法は、結合表面上に固定化されている捕捉抗体に試料中のトロポニン分子を結合させること、および検出抗体を含む標識をトロポニンに結合させて「サンドイッチ」複合体を形成することを含む。標識は、例えば本発明の単一分子アナライザーを用いて検出される、本明細書に記載するような検出可能な蛍光標識を含む。捕捉抗体および検出抗体の双方がトロポニンに特異的に結合する。サンドイッチイムノアッセイの多くの例は知られており、いくつかのものはGrubbらの米国特許第4168146号およびTomらの米国特許第4366241号((両方とも参照によって本明細書に組み入れられる)に記載されている。心筋トロポニンに特異的なさらなる例を実施例に記載する。
捕捉結合相手は、マイクロタイタープレートまたは常磁性ビーズなどの固体支持体に結合していてもよい。一部の実施形態では、本発明は、常磁性ビーズに結合している、心筋トロポニンの結合相手を提供する。捕捉が望まれる心筋トロポニンのタイプに特異的な任意の好適な結合相手を用いることができる。結合相手は、モノクローナル抗体などの抗体であってもよい。抗体は、本明細書に記載したような遊離心筋トロポニン(cTnlまたはcTnT)または複合体化心筋トロポニン、修飾された心筋トロポニン、もしくは心筋トロポニンの断片に対して特異的であり、あるいは対象の試料中で見出されると思われるすべての形態または実質的にすべての形態の心筋トロポニン、例えばcTnlまたはcTnTに対して特異的であることができる。心筋トロポニンに対する抗体の作製および供給源は、本明細書の別の箇所に記載されている。全トロポニンを測定するための好ましい抗体形態は、ヘパリン、リン酸化、酸化、およびトロポニン複合体形成による影響を実質的に受けず、骨格筋トロポニン、例えばトロポニンIと交差反応をしないものである。一部の実施形態では、抗体は、心筋トロポニンの特定の領域に特異的である。一部の実施形態では、領域には、ヒト心筋トロポニンIのアミノ酸41〜49が含まれる。一部の実施形態では、領域には、ヒト心筋トロポニンIのアミノ酸87〜91が含まれる。そのような抗体は当業界で周知であり、例えばBiosPacific、エメリービル、カナダから市販されている。本発明の実施形態に有用な捕捉抗体の例は、遊離心筋トロポニンI(cTnl)アミノ酸41−49および他のトロポニン構成要素と複合体を形成するcTnlと反応する抗体、例えばモノクローナル抗体である。この抗体は、ヘパリン、リン酸化、酸化、およびトロポニン複合体形成による影響を受けず、骨格筋トロポニンIと交差反応をしないことが好ましい。このタイプの例示的な抗体は、BiosPacific、エメリービル、カナダから市販されているモノクローナル抗体クローン番号A34650228Pである。本発明の実施形態に有用な捕捉抗体の別の例は、遊離心筋トロポニンI(cTnl)アミノ酸87〜91および他のトロポニン構成要素と複合体を形成するcTnlと反応する抗体、例えばモノクローナル抗体である。この抗体は、ヘパリン、リン酸化、酸化、およびトロポニン複合体形成による影響を受けず、骨格筋トロポニンIと交差反応をしないことが好ましい。このタイプの例示的な抗体は、BiosPacific、エメリービル、カナダから市販されているモノクローナル抗体クローン番号A34440228Pである。捕捉抗体として有用であるとして本明細書で同定される抗体は、検出抗体としても有用であることができ、その逆も同様であることが理解されよう。
抗体などの結合相手の固体支持体への結合は、共有結合であってもよいし、非共有結合であってもよい。一部の実施形態では、結合は非共有結合である。当技術分野では周知である非共有結合の一例は、ビオチン−アビジン/ストレプトアビジン相互作用である。したがって、一部の実施形態では、マイクロタイタープレートまたは常磁性ビーズなどの固体支持体が、ビオチン−アビジン/ストレプトアビジン相互作用などの非共有結合の結合によって、抗体などの捕捉結合相手に結合している。一部の実施形態では、結合は共有結合である。したがって、一部の実施形態では、マイクロタイタープレートまたは常磁性ビーズなどの固体支持体が、共有結合によって抗体などの捕捉結合相手に結合している。捕捉抗体の配向(orientation)が対象の分子の捕捉が最適化されるような共有結合が特に有用である。例えば、一部の実施形態では、マイクロタイタープレートまたは常磁性微小粒子などの固体支持体を、抗体などの結合相手の結合が共有結合による配向結合などの配向結合である場合に用いることができる。
抗体の固体支持体への配向結合の例示的なプロトコルは以下の通りである:IgGを最終濃度が1mg/mlになるように0.1M酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5に溶解する。等体積の0.1M酢酸ナトリウム(pH5.5)溶液中の氷冷した20mM過ヨウ素酸ナトリウムを加える。IgGを氷上で1/2時間酸化させる。0.15体積の1Mグリセロールを加えることによって過剰の過ヨウ素酸試薬をクエンチする。低分子量の酸化反応副生成物を限外濾過によって除去する。酸化したIgG分画を好適な濃度(典型的にはIgG1ml当たり0.5マイクログラム)に希釈し、室温で少なくとも2時間、ヒドラジドで活性化したマルチウェルプレートと反応させる。マルチウェルプレートをホウ酸塩緩衝食塩水または別の好適な緩衝液で洗浄することによって未結合のIgGを除去する。所望する場合、プレートを保存用に乾燥してもよい。マイクロビーズの材料がこのような結合に適している場合は、マイクロビーズに対して同様のプロトコルを採ることができる。
一部の実施形態では、固体支持体はマイクロタイタープレートである。一部の実施形態では、固体支持体は常磁性ビーズである。例示の常磁性ビーズは、StreptavidinCl(Dynal、650.01−03)である。他の好適なビーズは、当業者には明らかである。抗体を常磁性ビーズに結合するための方法は、当技術分野では周知である。一例を実施例に示す。
対象の心筋トロポニンを、固体支持体上に固定化した捕捉抗体などの捕捉結合相手と接触させる。血液試料からの血清の調製または試料を捕捉抗体と接触させる前の濃縮手順など、いくつかの試料調製を用いてもよい。イムノアッセイにおいてタンパク質を結合するためのプロトコルは、当技術分野では周知であり、実施例に含まれている。
結合に見込まれる時間は、条件に応じて変化する。いくつかの環境、特に臨床環境においては、結合時間が短い方が望ましいことは明らかであろう。常磁性ビーズなどの使用は、結合に必要とされる時間を短縮することができる。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合に見込まれる時間は、約12、10、8、6、4、3、2、もしくは1時間より短く、または約60、50、40、30、25、20、15、10、もしくは5分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合に見込まれる時間は約60分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合に見込まれる時間は約40分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合に見込まれる時間は約30分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合に見込まれる時間は約20分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合に見込まれる時間は約15分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合に見込まれる時間は約10分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合に見込まれる時間は約5分より短い。
一部の実施形態では、トロポニン粒子が捕捉抗体などの捕捉結合相手に結合した後、非特異的に結合し得る粒子、および試料中の他の不必要な物質を洗い流し、特異的に結合しているトロポニン粒子だけを実質的に残す。他の実施形態では、試料の添加と標識との添加の間に洗浄を用いず、これにより試料の調製時間がさらにより短縮することが理解されよう。したがって一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合、および標識の、対象のタンパク質への結合の両方に見込まれる時間は、約12、10、8、6、4、3、2、もしくは1時間より短く、または約60、50、40、30、25、20、15、10、もしくは5分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合、および標識の、対象のタンパク質への結合の両方に見込まれる時間は約60分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合、および標識の、対象のタンパク質への結合の両方に見込まれる時間は約40分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合、および標識の、対象のタンパク質への結合の両方に見込まれる時間は約30分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合、および標識の、対象のタンパク質への結合の両方に見込まれる時間は約20分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合に、および標識の、対象のタンパク質への結合の両方に見込まれる時間は約15分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合、および標識の、対象のタンパク質への結合の両方に見込まれる時間は約10分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体などの捕捉結合相手への結合、および標識の、対象のタンパク質への結合の両方に見込まれる時間は約5分より短い。
標的分析物を測定するのに用いられる捕捉抗体およびシグナルの抗体を含む、いくつかのイムノアッセイ診断試薬は、動物の血清由来であることができる。内因性のヒト異好性抗体、または他種の免疫グロブリンに結合する能力を有するヒト抗動物抗体は、10%を超える患者の血清または血漿に存在する。これら循環している異好性抗体は、イムノアッセイ測定を妨害し得る。サンドイッチイムノアッセイでは、これらの異好性抗体は、捕捉抗体および検出(診断)抗体を架橋し、それによって偽陽性シグナルを生成することができ、あるいは診断抗体の結合を阻止し、それによって偽陰性シグナルを生成することができる。競合的イムノアッセイでは、異好性抗体は分析用抗体に結合し、トロポニンへのその結合を阻害し得る。これらは、特に分離システムにおいて抗種抗体を用いる場合に、遊離のトロポニンから抗体−トロポニン複合体を分離することを阻止または増大することもできる。したがって、これら異好性抗体の妨害の影響を予測するのは困難である。したがって、任意の異好性抗体の結合を阻止するのに有利である。本発明の一部の実施形態では、イムノアッセイは、1つ以上の異好性抗体遮断薬を用いて試料から異好性抗体を枯渇する工程を含む。イムノアッセイにおいて試験される試料から異好性抗体を除去する方法は既知であり、検体を酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中において90℃で15分間加熱し、1200gで10分間遠心する工程を含み、あるいは異好性抗体をポリエチレングリコール(PEG)を用いて沈殿することができ;タンパク質Aもしくはタンパク質Gを用いて、妨害性の(interfering)異好性免疫グロブリンを検体から免疫抽出する工程を含み;または非免疫性のマウスIgGを加える工程を含む。本発明の方法の実施形態は、単一分子検出器で分析する前に試料を調製することを企図している。前処理の方法の適切さを決定することができる。異好性抗体によって引き起こされるイムノアッセイの妨害を最小にするための生化学物質は市販されている。例えば、h−CK−MMに対するIgG1モノクローナル抗体であるMAK33と呼ばれる製品は、Boehringer Mannheimから入手することができる。MAK33プラス製品は、IgG1およびIgG1−Fabの組合せを含む。polyMAK33はIgG1と重合したIgG1−Fabを含み、polyMAC2b/2aはIgG2bで重合したIgG2a−Fabを含むpolyMAC2b/2aを含む。異好性抗体を中和するための生化学物質の第2の市販の供給源は、Bioreclamation Inc、East Meadow、NYにより販売されているImmunoglobulin Inhibiting Reagentである。この製品は、多数の種から得られる免疫グロブリン(IgGおよびIgM)の調製物であり、主にBalb/cマウス(mice)から得られるマウス(murine)IgG2a、IgG2b、およびIgG3である。一部の実施形態では、タンパク質AまたはGに対する妨害性の抗体を結合することによって異好性抗体を試料から枯渇するなどの当技術分野で既知である方法を用いて、異好性抗体を試料から免疫抽出することができる。一部の実施形態では、異好性抗体は、1つ以上の異好性抗体阻害薬を用いて中和する。異好性阻害薬は、抗アイソフォーム異好性抗体阻害薬、抗イディオタイプ異好性抗体阻害薬、および抗−抗イディオタイプ異好性抗体阻害薬からなる群から選択することができる。一部の実施形態では、異好性抗体阻害薬の組合せを用いることができる。
試料の添加および洗浄と一緒にあるいはその後に、標識を添加する。タンパク質および他の分子に抗体および他の免疫標識を結合するためのプロトコルは当技術分野では周知である。標識結合工程が捕捉結合から離れている場合は、例えば臨床の環境においては、標識の結合に見込まれる時間が重要であり得る。一部の実施形態では、対象のタンパク質の標識(抗体−色素など)への結合に見込まれる時間は、約12、10、8、6、4、3、2、もしくは1時間より短く、または約60、50、40、30、25、20、15、10、もしくは5分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の標識(抗体−色素など)への結合に見込まれる時間は約60分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体−色素など、標識への結合に見込まれる時間は約40分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の標識(抗体−色素など)への結合に見込まれる時間は約30分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の標識(抗体−色素など)への結合に見込まれる時間は約20分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の、抗体−色素など、標識への結合に見込まれる時間は約15分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の標識(抗体−色素など)への結合に見込まれる時間は約10分より短い。一部の実施形態では、対象のタンパク質の標識(抗体−色素など)への結合に見込まれる時間は約5分より短い。過剰の標識は洗浄によって除去される。
次いで、標識を対象のタンパク質から溶出する。好ましい溶出緩衝液は、顕著なバックグラウンドを作らずに標識を放出するのに有効である。溶出緩衝液が静菌性である場合も有用である。本発明で使用する溶出緩衝液には、カオトロープ(例えば、尿素またはグアニジウム化合物)、緩衝液(例えば、ホウ酸緩衝食塩水)、タンパク質担体(例えば、検出機器のキャピラリーチューブの壁をコーティングするためのヒトアルブミン、ウシアルブミン、もしくは魚類のアルブミンなどのアルブミン、またはIgG)、および界面活性剤(例えば、比較的低いバックグラウンドを生成するように選択されたイオン性または非イオン性の界面活性剤(例えば、Tween20、TritonX−100、またはSDS))が含まれる。
単一分子検出器中に採取される溶出緩衝液/標識のアリコートは、これと個体から得たオリジナルの試料とを区別するために「プロセシング試料」と呼ぶ。
別の一実施形態では、固相結合アッセイは、競合結合性のアッセイ形式を使用することができる。そのような一方法は、a)結合表面上に固定化されている捕捉抗体にi)試料中のトロポニン粒子、およびii)検出可能な標識を含むトロポニン粒子の標識された類似体(検出試薬)を競合的に結合すること、ならびにb)単一粒子アナライザーを用いて標識の量を測定することを含む。別のそのような方法は、a)検出可能な標識を有する抗体(検出試薬)にi)試料中のトロポニン粒子、およびii)結合表面上に固定化されているトロポニン粒子の類似体(捕捉試薬)を競合的に結合すること、ならびにb)単一粒子アナライザーを用いて標識の量を測定することを含む。本明細書における「トロポニンの類似体」は、捕捉抗体への結合についてトロポニンと競合する種を意味する。競合的イムノアッセイの例は、Deutschらの米国特許第4235601号、Liottaの米国特許第4442204号、およびBuechlerらの米国特許第5208535号(これらはすべて本明細書に参照によって組み入れられる)に開示されている。
C.トロポニンの検出および濃度の決定
溶出の後、標識を、例えば溶出緩衝液中で単一分子検出器を通過させる。プロセシング試料は標識を含んでいなくてもよく、単一の標識を含んでいてもよく、または複数の標識を含んでいてもよい。標識の数は、(試料の希釈または分画を用いる場合に)捕捉工程の間に捕捉される心筋トロポニンの分子数に対応し、あるいは比例する。
対象のタンパク質とともに用いられる標識を検出することが可能な任意の好適な単一分子検出器を用いることができる。好適な単一分子検出器を本明細書に記載する。典型的には、検出器は、調製された試料を採取するための自動試料採取装置および任意選択により試料を回収するための回収システムを含む、システムの部分である。
一部の実施形態では、キャピラリーフローシステムを利用し、かつ、キャピラリーフローセル、プロセシング試料が通過するキャピラリー中のインタロゲーション空間を照射するためのレーザー、インタロゲーション空間から放出される放射線を検出するための検出器、およびプロセシング試料をインタロゲーション空間を介して移動させるための原動力源を含む、単一分子アナライザーで、プロセシング試料を分析する。一部の実施形態では、単一分子アナライザーは、インタロゲーション空間をプロセシング試料が通過するときに該プロセシング試料から放出される光を集める顕微鏡対物レンズ、例えば高開口数顕微鏡対物レンズをさらに含む。一部の実施形態では、レーザーおよび検出器は、共焦点配置である。一部の実施形態では、レーザーは、連続波レーザーである。一部の実施形態では、検出器は、アバランシェフォトダイオード検出器である。一部の実施形態では、原動力源は、圧力を供給するためのポンプである。一部の実施形態では、本発明は、試料容器とインタロゲーション空間との間に流体連通(flow communication)を提供する複数の試料を自動的に採取することが可能な試料採取システムを含むアナライザーシステムを提供する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は、約0.001と500pLとの間の、または約0.01pLと100pLとの間の、または約0.01pLと10pLとの間の、または約0.01pLと5pLとの間の、または約0.01pLと0.5pLとの間の、または約0.02pLと約300pLとの間の、または約0.02pLと約50pLとの間の、または約0.02pLと約5pLとの間の、または約0.02pLと約0.
5pLとの間の、または約0.02pLと約2pLとの間の、または約0.05pLと約50pLとの間の、または約0.05pLと約5pLとの間の、または約0.05pLと約0.5pLとの間の、または約0.05pLと約0.2pLとの間の、または約0.1pLと約25pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は、約0.004pLと100pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は、約0.02pLと50pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は約0.001pLと10pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は約0.001pLと10pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は約0.01pLと5pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は約0.02pLと約5pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は約0.05pLと5pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は約0.05pLと10pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は約0.5pLと約5pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は約0.02pLと約0.5pLとの間の体積を有する。
一部の実施形態では、本発明の方法で用いられる単一分子検出器は、キャピラリーフローシステムを利用し、キャピラリーフローセル、プロセシング試料が通過するキャピラリー中のインタロゲーション空間を照射するための連続波レーザー、インタロゲーション空間をプロセシング試料が通過するときにインタロゲーション空間から放出される光を収集する高開口数顕微鏡対物レンズ、インタロゲーション空間から放出される放射線を検出するためのアバランシェフォトダイオード検出器、およびインタロゲーション空間を介してプロセシング試料を移動するための圧力を提供するためのポンプを含み、この場合、インタロゲーション空間は約0.02pLと約50pLとの間である。一部の実施形態では、本発明の方法で用いられる単一分子検出器は、キャピラリーフローシステムを利用し、キャピラリーフローセル、プロセシング試料が通過するキャピラリー中のンタロゲーション空間を照射するための連続波レーザー、インタロゲーション空間をプロセシング試料が通過するときにインタロゲーション空間から放出される光を収集する高開口数顕微鏡対物レンズ(この場合、レンズは少なくとも約0.8の開口数を有する)、インタロゲーション空間から放出される放射線を検出するためのアバランシェフォトダイオード検出器、およびインタロゲーション空間を介してプロセシング試料を移動するための圧力を提供するためのポンプを含み、この場合、インタロゲーション空間は約0.004pLと約100pLとの間である。一部の実施形態では、本発明の方法で用いられる単一分子検出器は、キャピラリーフローシステムを利用し、キャピラリーフローセル、プロセシング試料が通過するキャピラリー中のインタロゲーション空間を照射するための連続波レーザー、インタロゲーション空間をプロセシング試料が通過するときにインタロゲーション空間から放出される光を収集する高開口数顕微鏡対物レンズ(この場合、レンズは少なくとも約0.8の開口数を有する)、インタロゲーション空間から放出される放射線を検出するためのアバランシェフォトダイオード検出器、およびインタロゲーション空間を介してプロセシング試料を移動するための圧力を提供するためのポンプを含み、この場合、インタロゲーション空間は約0.05pLと約10pLとの間である。一部の実施形態では、本発明の方法で用いられる単一分子検出器はキャピラリーフローシステムを利用し、キャピラリーフローセル、プロセシング試料が通過するキャピラリー中のインタロゲーション空間を照射するための連続波レーザー、インタロゲーション空間をプロセシング試料が通過するときにインタロゲーション空間から放出される光を収集する高開口数顕微鏡対物レンズ(この場合、レンズは少なくとも約0.8の開口数を有する)、インタロゲーション空間から放出される放射線を検出するためのアバランシェフォトダイオード検出器、およびインタロゲーション空間を介してプロセシング試料を移動するための圧力を提供するためのポンプを含み、この場合インタロゲーション空間は約0.05pLと約5pLとの間である。一部の実施形態では、本発明の方法で用いられる単一分子検出器はキャピラリーフローシステムを利用し、キャピラリーフローセル、プロセシング試料が通過するキャピラリー中のインタロゲーション空間を照射するための連続波レーザー、インタロゲーション空間をプロセシング試料が通過するときにインタロゲーション空間から放出される光を収集する高開口数顕微鏡対物レンズ(この場合、レンズは少なくとも約0.8の開口数を有する)、インタロゲーション空間から放出される放射線を検出するためのアバランシェフォトダイオード検出器、およびインタロゲーション空間を介してプロセシング試料を移動するための圧力を提供するためのポンプを含み、この場合インタロゲーション空間は約0.5pLと約5pLとの間である。
一部の実施形態では、単一分子検出器は、試料中の対象の分子に対する濃度を決定することが可能であり、この場合、試料の濃度における範囲は、少なくとも約100倍、または1000倍、または10000倍、または100000倍、または30000倍、または1000000倍、または10000000倍、または30000000倍の範囲を超えていてもよい。
一部の実施形態では、本発明の方法は、検出器に導入される第1の試料と第2の試料との間の分析物(analyte)の濃度における約50%、40%、30%、20%、15%、または10%未満の差を検出することが可能である単一分子検出器を利用し、アナライザーに導入される第1の試料および前記第2の試料の体積は、約100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、10、5、4、3、2、または1μl未満であり、分析物は約100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、10、5、4、3、2、または1フェムトモル未満の濃度で存在する。一部の実施形態では、本発明の方法は、検出器に導入される第1の試料と第2の試料との間の分析物の濃度における約50%未満の差を検出することが可能である単一分子検出器を利用し、アナライザーに導入される第1の試料および前記第2の試料の体積は約100μl未満であり、分析物は約100フェムトモル未満の濃度で存在する。一部の実施形態では、本発明の方法は検出器に導入される第1の試料と第2の試料との間の分析物の濃度における約40%未満の差を検出することが可能である単一分子検出器を利用し、アナライザーに導入される第1の試料および前記第2の試料の体積は約50μl未満であり、分析物は約50フェムトモル未満の濃度で存在する。一部の実施形態では、本発明の方法は検出器に導入される第1の試料と第2の試料との間の分析物の濃度における約20%未満の差を検出することが可能である単一分子検出器を利用し、アナライザーに導入される第1の試料および前記第2の試料の体積は約20μl未満であり、分析物は約20フェムトモル未満の濃度で存在する。一部の実施形態では、本発明の方法は検出器に導入される第1の試料と第2の試料との間の分析物の濃度における約20%未満の差を検出することが可能である単一分子検出器を利用し、アナライザーに導入される第1の試料および前記第2の試料の体積は約10μl未満であり、分析物は約10フェムトモル未満の濃度で存在する。一部の実施形態では、本発明の方法は検出器に導入される第1の試料と第2の試料との間の分析物の濃度における約20%未満の差を検出することが可能である単一分子検出器を利用し、アナライザーに導入される第1の試料および前記第2の試料の体積は約5μl未満であり、分析物は約5フェムトモル未満の濃度で存在する。
単一分子検出器およびシステムを、以下により詳しく記載する。1より大きい(more than one)インタロゲーションウインドウを有する検出器、電動学的または電気泳動の流れなどを利用する検出器など、本発明の方法で有用な単一分子アナライザーのさらなる実施形態は、米国特許出願11/048660(その全文が本明細書に参照によって組み入れられる)に見出すことができる。
運転の間に機器を洗浄してもよい。キャピラリーのコンディショニングを維持するために、すなわちキャピラリーの表面を試料間で比較的一定に保って変動性を低減するために、試料の塩および界面活性剤の濃度を維持する洗浄緩衝液を一部の実施形態で用いることができる。
本発明の機器および方法の非常に高い感度に寄与する特徴は、標識を検出および計数する方法であり、該方法は、一部の実施形態では、検出する単一分子に結合するか、あるいはより典型的には検出すべき単一分子に対応する。簡潔に述べると、キャピラリーの所与のインタロゲーション空間に対し、標識に用いられる蛍光部分に好適な励起波長の光を放出するレーザーからのEM放射線を所定の時間享受させ、その時間の間に放出された光子を検出することにより、キャピラリーを通って流れるプロセシング試料を効果的に分けて一連の検出事象とする。各々の所定時間は「ビン(bin)」である。所定のビンにおいて検出された光子の総数が所定の閾値レベルを超える場合、検出事象がそのビンに対して登録される;すなわち標識が検出されている。光子の総数が所定の閾値レベルでない場合は、検出事象は登録されない。一部の実施形態では、プロセシング試料の濃度は十分に希薄であるので、パーセント値の大きい検出事象では、該検出事象はウインドウを通過した標識がたった1個であることを表しているが、このことはオリジナルの試料中の単一の対象の分子に相当し、すなわちいつくかの数の検出事象は単一のビンにおいて標識が2つ以上であることを表す。一部の実施形態では、プロセシング試料中のより高い濃度の標識、すなわち2つ以上の標識が単一の(single)検出事象として検出される確率がもはや重要ではないとはいえない濃度の標識を正確に検出できるようにするために、さらなる精製が適用される。
本発明の範囲から逸脱することなしに他のビン時間を用いることができるが、一部の実施形態では、ビン時間は約1マイクロ秒から約5msの範囲で選択される。一部の実施形態では、ビン時間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2000、3000、4000、または5000マイクロ秒を超える。一部の実施形態では、ビン時間は約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2000、3000、4000、または5000マイクロ秒未満である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から1000マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から750マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から500マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から250マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から100マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から50マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から40マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から30マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から500マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から20マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から10マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から500マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1から5マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約5から500マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約5から250マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約5から100マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約5から50マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約5から20マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約5から10マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約10から500マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約10から250マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約10から100マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約10から50マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約10から30マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約10から20マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約5マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約5マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約6マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約7マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約8マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約9マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約10マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約11マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約12マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約13マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約14マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約5マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約15マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約16マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約17マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約18マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約19マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約20マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約25マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約30マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約40マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約50マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約100マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約250マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約500マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約750マイクロ秒である。一部の実施形態では、ビン時間は約1000マイクロ秒である。
一部の実施形態では、バックグラウンドノイズレベルを、平均のノイズレベルからあるいはノイズの二乗平均平方根から決定する。他の場合には、典型的なノイズ値または統計学的な値を選択する。ほとんどの場合、ノイズはポアソン分布に従うことが予想される。したがって、一部の実施形態では、試料中の粒子−標識複合体の濃度の決定は、バックグラウンドノイズレベルを決定することを含む。
したがって、キャピラリーフローセルを通って標識が流れるとき、標識はレーザー光線によって照射されて光子のバースト(burst)を生成する。標識によって放出される光子は、試料に存在するバックグラウンドノイズ量の原因となる所定の閾値エネルギーレベルを上回るエネルギーを有する光子のバーストだけを考慮に入れることにより、バックグラウンドの光またはバックグラウンドノイズ放射から識別される。バックグラウンドノイズは、典型的には、例えば試料、分析用の試料を調製するのに用いられる緩衝液または希釈液に存在する非標識の粒子に固有の蛍光によって生成される低周波の発光、ラマン散乱、および電気ノイズを含む。一部の実施形態では、バックグラウンドノイズに割り当てられた値を、複数のビンにおいて検出されるバックグラウンドシグナルノイズの平均として計算するが、これは所定の長さの時間の間にインタロゲーション空間において検出された光子シグナルの測定値である。したがって一部の実施形態では、バックグラウンドノイズを、その試料に特異的な数として、各試料について計算する。
バックグラウンドノイズの値が与えられれば、閾値のエネルギーレベルを割り当てることができる。上記で論じたように、バックグラウンドノイズから真のシグナル(標識の蛍光に起因する)を識別するために閾値を決定する。ランダムノイズからの偽陽性シグナルの数が最小になる一方で拒絶される真のシグナル数も最小になるように、閾値を選択する上で注意を払わなければならない。閾値を選択するための方法には、ノイズレベルを上回る固定値を決定すること、およびノイズシグナルの分布に基づいて閾値を計算することが含まれる。一実施形態では、閾値をバックグラウンドレベルを上回る固定数の標準偏差に設定する。ノイズのポアソン分布を想定すると、この方法を用いて実験の時間経過にわたる偽陽性シグナルの数を評価することができる。一部の実施形態では、閾値レベルは、バックグラウンドノイズを上回る4シグマの値として計算される。例えば、200個の光子という平均バックグラウンドノイズレベルが与えられれば、アナライザーシステムは、256個の光子であるように、200個の光子の平均バックグラウンド/ノイズレベルを上回る4√200の閾値レベルを確立する。したがって、一部の実施形態では、試料中の標識の濃度を決定することは、閾値レベル(該閾値レベルを上回ると光子シグナルは標識が存在していることを表す)を確立することを含む。逆に、閾値レベルのエネルギーレベルを上回らないエネルギーレベルを有する光子シグナルは、標識が無いことを示している。
試料の濃度を決定するために多くのビン測定を行い、各ビン測定について標識の有無を確認する。典型的には、1分間に60000以上の測定を行うことができる(例えば、ビンサイズが1msである実施形態では、ビンサイズが小さいほど測定の数は対応して大きくなる、例えば、10マイクロ秒のビンサイズに対して1分間当たり6000000測定)。したがって、決定的な単一回の測定はなく、方法により高い誤差限界がもたらされる。標識を含まないと決定されたビン(「ノー」ビン)は考慮に入れず、標識を含むと決定されたビン(「イエス」ビン)でなされた測定だけがプロセシング試料中の標識の濃度を決定する上で考慮に入れる。「ノー」ビンまたは標識なしのビンにおいてなされた測定を考慮に入れないことで、シグナルノイズ比および測定の正確さは増大する。したがって、一部の実施形態では、試料中の標識の濃度の決定は、標識の存在を反映するビン測定を検出することを含む。
シグナルノイズ比またはアナライザーシステムの感度は、粒子−標識複合体が検出されるビン測定中にバックグラウンドノイズを検出する時間を最小にすることによって増大することができる。例えば、インタロゲーション空間を250マイクロ秒内に通過するときに1個の粒子−標識複合体が検出される1ミリ秒間続くビン測定では、1ミリ秒のうちの750マイクロ秒がバックグラウンドノイズ放射を検出するのに費やされる。シグナルノイズ比は、ビン時間を短縮することによって改善することができる。一部の実施形態では、ビン時間は1ミリ秒である。他の実施形態では、ビン時間は750、500、250マイクロ秒、100マイクロ秒、50マイクロ秒、25マイクロ秒、または10マイクロ秒である。他のビン時間は本明細書に記載する通りである。
測定に影響を及ぼす他の要因は、蛍光部分の明るさまたは薄暗さ、流速、およびレーザーのパワーである。標識の検出を可能にする関連する要因の様々な組合せは、当業者であれば明らかであろう。一部の実施形態では、流速を変更せずにビン時間を調節する。ビン時間が低減すれば、ビン時間の間にインタロゲーション空間に適用される全エネルギーを一定に維持するためにインタロゲーション空間に向けられるレーザー出力を増大しなければならないことは当業者であれば理解されよう。例えば、ビン時間を1000マイクロ秒から250マイクロ秒に低減した場合、第1近似として、レーザー出力を約4倍に増大しなければならない。これらの設定により、先の設定で与えられた1000μsの間に計数された光子の数と同数の光子を250μsで検出することができ、より低いバックグラウンド、したがってより大きな感度で、試料をより早く分析できるようになる。さらに、試料の処理加工を早めるために、流速を調節してもよい。これらの数字は例示にすぎず、当業者であれば、望ましい結果を達成するために適宜パラメータを調節することができる。
一部の実施形態では、インタロゲーション空間は、試料のストリームの横断面(cross-section)全体を包含する。インタロゲーション空間が試料のストリームの横断面全体を包含する場合、設定された長さの時間に計数された標識の数および試料のストリームの横断面を横切る体積だけが、プロセシング試料中の標識の濃度を計算するのに必要とされる。一部の実施形態では、例えばインタロゲーション空間をレーザー光線によって照射されたスポットのサイズにより画定することによって、インタロゲーション空間が試料のストリームの横断面面積よりも小さいと画定することができる。一部の実施形態では、アナライザーの開口部306(図1A)または358および359(図1B)を調節し、検出器に対する対物レンズによって画像化される照射体積を低減することにより、インタロゲーション空間を画定することができる。インタロゲーション空間が試料のストリームの横断面積よりも小さいと画定される実施形態では、標識の濃度は、標準濃度が既知の1つ以上の試料を用いて生成された標準曲線から複合体によって放出されたシグナルを補間することによって決定することができる。さらに他の実施形態では、測定された粒子を標識の内部標準と比べることによって標識の濃度を決定することができる。希釈試料を分析する実施形態では、出発試料中の対象の分子の濃度を計算する上で希釈要因を考慮に入れる。
上記で論じたように、インタロゲーション空間が試料のストリームの横断面すべてを包含する場合、設定された時間の長さ(ビン)において試料のストリームの横断面を通過して計数された標識の数およびビンにおいてインタロゲートされた(interrogated)試料の体積だけが、試料の濃度を計算するのに必要とされる。「イエス」ビンに含まれる標識の総数が決定され、プロセシング試料中の標識の濃度を決定するための分析で用いられるビンの総数によって表される試料の体積に関連付けられる。したがって、一実施形態では、プロセシング試料中の標識の濃度を決定することは、「イエス」ビンを検出した標識の総数を決定すること、および検出された標識の総数を分析された試料の総体積に関連付けることを含む。分析される試料の総体積は、特定の時間間隔でキャピラリーフローセルを通過してインタロゲーション空間を横切る試料の体積である。あるいは、多数のビンにおいて標識によって放出されたシグナルを、既知濃度の標識を含む標準試料により同数のビンにおいて標識により放出されたシグナルを決定することにより作成した標準曲線から補間することにより、試料中の標識複合体の濃度を決定する。
一部の実施形態では、ビンにおいて検出される個々の標識の数は、プロセシング試料中の粒子の相対的な濃度に関連している。約10−16M未満の濃度などの比較的低い濃度では、標識の数はビンにおいて検出される光子シグナルに比例する。したがって、低濃度の標識では、光子シグナルはデジタルシグナルとして与えられる。約10−16Mを超える濃度などの比較的高い濃度では、1個が重大になるにつれて、2個以上の標識が約同時にインタロゲーション空間を横切り計数される可能性として、標識と光子シグナルとの比例関係は失われる。したがって、一部の実施形態では、約10−16Mを超える濃度の試料中の個々の粒子は、ビン測定の時間の長さを短縮することによって分解される。
あるいは、他の実施形態では、任意の1つのビンに存在する複数の粒子によって放出される総光子シグナルを検出する。これらの実施形態によって、ダイナミックレンジは少なくとも3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、または8logを超える本発明の単一分子検出器が許容される。
本明細書で用いる「ダイナミックレンジ」との用語は、異なる濃度の連続試料の濃度を変更するための希釈または他の処理を必要とせずに機器によって定量化することができる試料濃度の範囲を指し、この場合、該濃度は意図された使用に適切な正確さで決定される。例えば、マイクロタイタープレートが1つ目のウェル中に対象の分析物に対して1フェムトモル濃度の試料を含み、別のウェル中に対象の分析物に対して10000フェムトモル濃度の試料を含み、第3のウェル中に対象の分析物に対して100フェムトモル濃度の試料を含む場合、少なくとも4logのダイナミックレンジおよび1フェムトモルの定量の下限を有する機器により、希釈など、濃度を調節するためのさらなる処理を必要としないで全試料の濃度を正確に定量することができる。正確さは、ダイナミックレンジをまたがる一続きの標準の濃度を用い、かつ、標準曲線を構築するなどの標準の方法で決定することができる。得られる標準曲線に適合する標準品測定を、例えばr2が約0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、または0.99を超える正確さの測度として用いることができる。
ダイナミックレンジの増大は、検出器からのデータを分析する様式を変更することにより、および/または検出器とインタロゲーション空間との間に減衰器を用いることにより達成される。プロセシング試料が十分に希釈されているために各検出事象すなわちビンにおける閾値レベルを上回る各々のバーストの光子(「事象光子(event photons)」)がたった1個の標識をおそらく表している低い側の端(low end)の範囲において、データを分析して単一分子として検出事象を計数する。すなわち、上記に記載したように、各ビンは、標識の存在に対して単に「イエス」または「ノー」として分析される。より濃縮されているプロセシング試料では、2つ以上の標識が単一のビンを占有する可能性が重大になり、かなりの(significant)数のビンにおける事象光子の数が単一の標識について予想される数を実質的に上回ることが見出され、例えば、かなりの数のビンにおける事象光子の数は単一の標識について予想される事象光子の数の2倍、3倍、または3倍超に相当する。これらの試料に対して、機器はそのデータ分析の方法を、プロセシング試料のビンに対する事象光子の総数を積分する方法に変更する。この総数は、すべてのビンにおける標識の総数に比例するであろう。多くの標識がほとんどのビンにおいて存在するさらにより濃縮したプロセシング試料では、バックグラウンドノイズは各ビンから得られる全シグナルの重要でない(insignificant)部分となり、機器は、データ分析方法をビン1つ当たりのすべての光子を計数する方法(バックグラウンドを含む)に変更する。ダイナミックレンジにおけるよりさらなる増大は、検出器に到達する光の強度が別に正確に光子を計数する検出器の能力を超えるような、すなわち検出器を飽和状態にするような濃度である場合に、フローセルと検出器との間に減衰器を使用することによって達成することができる。
機器は、検出器から入力を受け取り、実施中の試料に適切な分析方法を決定し、このような分析に基づいた値を出力するデータ分析システムを含むことができる。データ分析システムは、減衰器が機器に含まれている場合、減衰器を用いるまたは用いないとの指示をさらに出力することができる。
このような方法を利用することによって、機器のダイナミックレンジを劇的に増大することができる。したがって、一部の実施形態では、機器は、約1000(3log)、10000(4log)、100000(5log)、350000(5.5log)、1000000(6log)、3500000(6.5log)、10000000(7log)、35000000(7.5log)、または100000000(8log)を超えるダイナミックレンジにわたって試料の濃度を測定することができる。一部の実施形態では、機器は、約100000(5log)を超えるダイナミックレンジにわたって試料の濃度を測定することが可能である。一部の実施形態では、機器は、約1000000(6log)を超えるダイナミックレンジにわたって試料の濃度を測定することが可能である。一部の実施形態では、機器は、約10000000(7log)を超えるダイナミックレンジにわたって試料の濃度を測定することが可能である。一部の実施形態では、機器は、約1〜10フェムトモルから少なくとも約1000、10000、100000、350000、1000000、3500000、10000000、または35000000フェムトモルまでのダイナミックレンジにわたって試料の濃度を測定することが可能である。一部の実施形態では、機器は、約1〜10フェムトモルから少なくとも約10000フェムトモルまでのダイナミックレンジにわたって試料の濃度を測定することが可能である。一部の実施形態では、機器は、約1〜10フェムトモルから少なくとも約100000フェムトモルまでのダイナミックレンジにわたって試料の濃度を測定することが可能である。一部の実施形態では、機器は、約1〜10フェムトモルから少なくとも約1000000フェムトモルまでのダイナミックレンジにわたって試料の濃度を測定することが可能である。一部の実施形態では、機器は、約1〜10フェムトモルから少なくとも約10000000フェムトモルまでのダイナミックレンジにわたって試料の濃度を測定することが可能である。
一部の実施形態では、本発明のアナライザーまたはアナライザーシステムは、1ナノモル、または1ピコモル、または1フェムトモル、または1アトモル、または1ゼプトモル未満の検出限界において生物マーカーなどの分析物を検出することが可能である。一部の実施形態では、アナライザーまたはアナライザーシステムは、生物マーカーが試料中に1ナノモル、または1ピコモル、または1フェムトモル、または1アトモル、または1ゼプトモル未満の濃度で存在する場合、および各試料のサイズが約100、50、40、30、20、10、5、2、1、0.1、0.01、0.001、または0.0001μl未満である場合に、約0.1、1、2、5、10、20、30、40、50、60、または80%未満の分析物または多数の分析物(例えば生物マーカーまたは複数の生物マーカー)の濃度における一試料から別の試料への変化を検出することが可能である。一部の実施形態では、アナライザーまたはアナライザーシステムは、分析物が約1ピコモル未満の濃度で存在する場合、および各試料のサイズが約50μl未満である場合に、約20%未満の第1の試料から第2の試料への分析物の濃度の変化を検出することが可能である。一部の実施形態では、アナライザーまたはアナライザーシステムは、分析物が約100フェムトモル未満の濃度で存在する場合、および各試料のサイズが約50μl未満である場合に、約20%未満の第1の試料から第2の試料への分析物の濃度の変化を検出することが可能である。一部の実施形態では、アナライザーまたはアナライザーシステムは、分析物が約50フェムトモル未満の濃度で存在する場合、および各試料のサイズが約50μl未満である場合に、約20%未満の第1の試料から第2の試料への分析物の濃度の変化を検出することが可能である。一部の実施形態では、アナライザーまたはアナライザーシステムは、分析物が約5フェムトモル未満の濃度で存在する場合、および各試料のサイズが約50μl未満である場合に、約20%未満の第1の試料から第2の試料への分析物の濃度の変化を検出することが可能である。一部の実施形態では、アナライザーまたはアナライザーシステムは、分析物が約5フェムトモル未満の濃度で存在する場合、および各試料のサイズが約5μl未満である場合に、約20%未満の第1の試料から第2の試料への分析物の濃度の変化を検出することが可能である。一部の実施形態では、アナライザーまたはアナライザーシステムは、分析物が約1フェムトモル未満の濃度で存在する場合、および各試料のサイズが約5μl未満である場合に、約20%未満の第1の試料から第2の試料への分析物の濃度の変化を検出することが可能である。
V.トロポニンの高感度分析に好適な機器およびシステム
本発明の方法は、単一分子検出器などの高感度の分析機器を利用する。このような単一分子検出器は、以下に記載する実施形態を含む。
装置/システム
一態様では、本明細書に記載した方法は、試料中の単一粒子を検出することが可能なアナライザーシステムを利用する。一実施態様では、アナライザーシステムは、蛍光標識された粒子の単一粒子の検出が可能であり、アナライザーシステムは、アナライザーシステムの試料採取システムに流体連通しているキャピラリーフローセル内に画定されるインタロゲーション空間中に単一粒子が存在するとき、電磁照射源による暴露に応答して励起された蛍光標識によって放出されたエネルギーを検出する。アナライザーシステムのさらなる実施態様では、動力源により、単一粒子をキャピラリーフローセルのインタロゲーション空間を通って移動させる。アナライザーシステムの別の実施態様では、試料をアナライザーシステムに導入するために、自動試料採取システムがアナライザーシステムに含まれていてもよい。アナライザーシステムの別の実施態様では、試料を調製するために、試料調製システムがアナライザーシステムに含まれていてもよい。さらなる実施態様では,アナライザーシステムは、分析が完了した後に試料の少なくとも一部を回収するために、回収システムを含んでいてもよい。
一態様では、アナライザーシステムは、蛍光標識で標識された単一粒子を励起するための電磁照射源からなる。一実施態様では、アナライザーシステムの電磁照射源は、レーザーである。さらなる実施態様では、電磁照射源は、連続波レーザーである。
典型的な実施態様では、電磁照射源は、標識がキャピラリーフローセルのインタロゲーション空間を通過する際に、標識として標識に結合している蛍光部分を励起する。一部の実施形態では、蛍光標識部分は、1つ以上の蛍光色素分子を含む。一部の実施形態では、蛍光標識部分は、量子ドットである。本明細書に記載した任意の蛍光部分を標識において用いることができる。
標識がキャピラリーフローセル内に局在しているインタロゲーション空間を通過するときに標識を電磁照射に暴露する。インタロゲーション空間は、典型的には、試料採取システムと流体連通している。一部の実施形態では、標識は、アナライザーシステムを通って標識を前進させるための動力源により、キャピラリーフローセルのインタロゲーション空間を通過する。インタロゲーション空間は、照射源から放出された電磁照射を受け取るように位置している。一部の実施形態では、試料採取システムは、ヒトオペレーターの介入なしに複数の試料の試料採取が可能な自動試料採取システムである。
標識は、インタロゲーション空間を通過し、電磁照射源で励起されたときに検出可能な量のエネルギーを放出する。一実施態様では、電磁照射検出器は、インタロゲーション空間と操作可能に接続している。電磁照射検出器は、標識、例えば標識の蛍光部分によって放出されるエネルギーの検出が可能である。
アナライザーシステムのさらなる一実施形態では、システムは、試料がアナライザーシステムによる分析のために部分的または完全に調製され得る試料調製機構をさらに含む。アナライザーシステムの一部の実施形態では、試料は、システムによって分析された後に廃棄される。他の実施形態では、アナライザーシステムは、試料回収機構により試料の少なくとも一部分、あるいはすべて、または実質的にすべてが分析後に回収され得る、試料回収機構をさらに含む。このような一実施形態では、試料を元の試料に戻すことができる。一部の実施形態では、試料マイクロタイタープレート上のマイクロタイターウェルに試料を戻すことができる。アナライザーシステムは、典型的には、さらに、検出されたシグナルの収集および報告をするためのデータ獲得システムからなる。
B.単一粒子アナライザー
図1Aに示すように、本明細書にアナライザーシステム300の一実施形態を記載する。アナライザーシステム300は、電磁放射線源301、ミラー302、レンズ303、キャピラリーフローセル313、顕微鏡対物レンズ305、開口部306、検出器レンズ307、検出器フィルター308、単一光子検出器309、および検出器に作動可能に接続されたプロセッサ310を含む。
動作中、電磁放射線源301は、その出力311がミラー302の前部表面312を反射するように整列されている。レンズ303は、キャピラリーフローセル313における単一のインタロゲーション空間(インタロゲーション空間314の例示的な例は図2Aに示してある)上に光線311を集束させる。顕微鏡対物レンズ305は、試料の粒子から光を収集し、開口部306上に光線の画像を形成する。開口部306は、収集することができるキャピラリーフローセル313のインタロゲーション空間において検体(specimen)によって放出される光の分画に影響を及ぼす。検出器レンズ307は、開口部306を通過する光を収集し、光が検出器フィルター308を通過した後に検出器309の有効領域上に光を集束させる。検出器フィルター308は、光散乱または周辺光による異常なノイズシグナルを最小にする一方、粒子に結合している励起された蛍光部分によって放出されるシグナルを最大にする。プロセッサ310は、本明細書に記載する方法に従って、粒子からの光シグナルを処理加工する。
一実施形態では、顕微鏡対物レンズ305は、高開口数顕微鏡対物レンズである。本明細書で用いられる「高開口数レンズ」は、0.6以上の開口数を有するレンズを含む。開口数は、対物レンズによって捕捉される高度に回折した画像形成光線の数の尺度である。より大きい開口数により、ますます多くの斜光が対物レンズに入り、それによってより高度に分解された画像を生成するのが可能になる。さらに、より大きい開口数では画像の輝度が増大する。高開口数レンズは様々な業者から市販されており、約0.6以上の開口数を有するいずれのレンズもアナライザーシステムにおいて用いることができる。一部の実施形態では、レンズは、約0.6から約1.3の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、約0.6から約1.0の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、約0.7から約1.2の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、約0.7から約1.0の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、約0.7から約0.9の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、約0.8から約1.3の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、約0.8から約1.2の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、約0.8から約1.0の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、少なくとも約0.6の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、少なくとも約0.7の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、少なくとも約0.8の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、少なくとも約0.9の開口数を有する。一部の実施形態では、レンズは、少なくとも約1.0の開口数を有する。一部の実施形態では、顕微鏡対物レンズ305の開口部は、約1.25である。0.8の顕微鏡対物レンズ305を用いる一実施形態では、Nikon60X/0.8NA Achromat lens(Nikon,Inc.、USA)を用いることができる。
一部の実施形態では、電磁放射線源301は、可視スペクトルで発光するレーザーである。すべての実施形態では、レーザー波長が粒子に結合している蛍光標識を励起するのに十分な波長であるように設定するよう、電磁放射線源が設定される。一部の実施形態では、レーザーは、波長639nmの連続波レーザーである。他の実施形態では、レーザーは、波長532nmの連続波レーザーである。他の実施形態では、レーザーは、波長422nmの連続波レーザーである。他の実施形態では、レーザーは、波長405nmの連続波レーザーである。本発明の方法および組成物において用いるように蛍光部分を励起するのに好適な波長を有する任意の連続波レーザーを本発明の範囲から逸脱することなしに用いることができる。
単一粒子アナライザーシステム300において、各粒子が電磁放射線源の光線311を通過する際に粒子は励起状態に入る。粒子がその励起状態から緩和するときに、検出可能な光のバーストが放出される。励起−発光のサイクルは、各粒子が光線を通過するのに要する長さの時間に各粒子によって多数回繰り返され、アナライザーシステム300は、各粒子がインタロゲーション空間314を通過する際に各粒子について何万もの光子を検出することが可能になる。蛍光粒子によって放出される光子は、粒子標識複合体がインタロゲーション空間を通過する時間を示している時間遅延をもって検出器309(図1A)によって記録される。光子の強度は検出器309によって記録され、試料採取時間は自由に選択可能な時間チャンネル幅を有する均一かつ任意の時間セグメントであるビンに分けられる。各ビンに含まれるシグナル数を評価する。粒子がいつ存在するかを決定するために、統計学的分析方法を1つまたはいくつか組み合わせて使用する。このような方法は、アナライザーシステムのベースラインノイズを決定すること、および検出器からの偽陽性シグナルを取り除くために蛍光標識のシグナル強度をベースラインノイズを上回る統計学的レベルに設定することを含む。
電磁放射線源301は、アナライザーシステム300のキャピラリーフローセル313に集束され、該キャピラリーフローセル313は試料システムに流体接続されている。インタロゲーション空間314を図2Aに示す。図1Aの連続波電磁放射線源301からの光線311は、キャピラリーフローセル313内の特定の深さに光学的に集束される。光線311は、キャピラリーフローセル313に対して垂直な角度で、試料が満たされているキャピラリーフローセル313に向けられている。光線311は、対象の粒子を標識するのに用いられる特定の蛍光標識を励起するように選択される所定の波長で操作される。インタロゲーション空間314のサイズまたは体積は、光線311の直径と光線311が集束される深さとによって決定される。あるいは、インタロゲーション空間は、既知濃度のキャリブレーション試料をアナライザーシステムを通して実施することによって決定することができる。
単一分子を試料濃度において検出する場合、単一分子の検出に必要とされる光線サイズおよび焦点の深さを設定し、それによってインタロゲーション空間314のサイズを画定する。インタロゲーション空間314は、好適な試料濃度で、観察がなされる各時間間隔の間にたった1個の粒子がインタロゲーション空間314に存在するように設定される。光線によって画定される検出インタロゲーション体積は、完全な球面形状ではなく、典型的には「ボータイ(bow-tie)」型であることが理解されよう。しかし、定義の目的では、インタロゲーション空間の「体積」は、本明細書では光線の集束スポットの直径に等しい直径の球によって包囲される体積と定義される。光線311の集束スポットは、本発明の範囲から逸脱せずに様々な直径を有することができる。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約1から約5、10、15、もしくは20ミクロン、または約5から約10、15、もしくは20ミクロン、または約10から約20ミクロン、または約10から約15ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約5ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約10ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約12ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約13ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約14ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約15ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約16ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約17ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約18ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約19ミクロンである。一部の実施形態では、光線の集束スポットの直径は、約20ミクロンである。
単一粒子アナライザーシステムの代替の一実施形態では、2つ以上の電磁放射線源を用いて、異なる波長の蛍光標識で標識された粒子を励起することができる。別の代替の一実施形態では、キャピラリーフローセル内にインタロゲーション空間を1つだけ用いることができる。別の代替の一実施形態では、多数の検出器を用いて、蛍光標識からの異なる放射波長を検出することができる。アナライザーシステムのこれらの代替の各実施形態に組み入れる説明図を図1Bに示す。これらの実施形態は、先行米国特許出願11/048660から参照によって組み入れられる。
アナライザーシステム300の一部の実施形態では、アナライザーシステム300のキャピラリーフローセル313を通って粒子を移動させるのに原動力が必要である。一実施形態では、原動力は、圧力の形態であることができる。キャピラリーフローセルを通って粒子を移動させるのに用いられる圧力は、ポンプによって作り出すことができる。一部の実施形態では、Scivex,Inc.HPLCポンプを用いることができる。原動力としてポンプが用いられる一部の実施形態では、試料は、キャピラリーフローセルを1μL/分から約20μL/分、または約5μL/分から約20μL/分の速度で通過することができる。一部の実施形態では、試料は、キャピラリーフローセルを約5μL/分の速度で通過することができる。一部の実施形態では、試料は、キャピラリーフローセルを約10μL/分の速度で通過することができる。一部の実施形態では、試料は、キャピラリーフローセルを約15μL/分の速度で通過することができる。一部の実施形態では、試料は、キャピラリーフローセルを約20μL/分の速度で通過することができる。一部の実施形態では、アナライザーシステムを通って粒子を移動させるのに動電学的な力を用いることができる。このような方法は以前に開示されており、先行米国特許出願11/048660から参照によって組み入れられる。
アナライザーシステム300の一態様では、アナライザーシステムの検出器309は、蛍光標識によって放出される光子を検出する。一実施形態では、光子の検出器は、フォトダイオードである。さらなる一実施形態では、検出器は、アバランシェフォトダイオード検出器である。一部の実施形態では、フォトダイオードは、190nmおよび1100nmの波長検出を有するシリコンフォトダイオードであることができる。ゲルマニウムフォトダイオードを用いる場合、検出される光の波長は400nmから1700nmの間である。他の実施形態では、インジウムガリウムヒ素フォトダイオードを用いる場合、フォトダイオードによって検出される光の波長は800nmと2600nmとの間である。硫化鉛フォトダイオードを検出器として用いる場合、検出される光の波長は1000nmと3500nmとの間である。
一部の実施形態では、電磁放射線源301のオプティックス(optics)および検出器309のオプティックスは、従来の光学配置で配置される。このような配列では、電磁放射線源および検出器は異なる焦点面上に整列されている。図1Aおよび1Bに示すアナライザーシステムのレーザーおよび検出器のオプティックスの配置は、従来の光学的な配置である。
一部の実施形態では、電磁放射線源のオプティックスおよび検出器のオプティックスは、共焦点光学配置で配置される。このような配置では、電磁放射線源301および検出器309は、同一の焦点面上に整列されている。共焦点配置ではアナライザーはより頑丈になるが、それは電磁放射線源301および検出器オプティックス309はアナライザーシステムを移動した場合に再配列する必要がないからである。この配置によってアナライザーの使用もより簡単になるが、それはこれによりアナライザーシステムの構成成分を再配列する必要がなくなるからである。アナライザー300(図1A)およびアナライザー355(図1B)の共焦点配置をそれぞれ図3Aおよび3Bに示す。図3Aは、電磁放射線源301からの光線311が顕微鏡対物レンズ315によって集束され、キャピラリーフローセル313内に1つのインタロゲーション空間314(図2A)を形成することを示している。レーザー光を反射するが蛍光光を通過させるダイクロイックミラー316を用いて、レーザー光から蛍光光を分離する。検出器の前面に位置するフィルター317は、検出器における任意の非蛍光性の光を除去する。一部の実施形態では、共焦点配置で構成されたアナライザーシステムは、2つ以上のインタロゲーション空間を含むことができる。このような方法は以前に開示されており、先行米国特許出願11/048660から参照によって組み入れられる。
レーザーは、ヘリウム−ネオンレーザーなどのチューナブル色素レーザーであることができる。レーザーは、632.8nmの波長を放出するように設定することができる。あるいは、レーザーの波長は、543.5nmまたは1523nmの波長を放出するように設定することができる。あるいは、電磁レーザーは、アルゴンイオンレーザーであることができる。このような実施形態では、アルゴンイオンレーザーは、可視スペクトルの約25の異なる波長での連続ガスレーザーとして操作することができ、該波長は408.9と686.1nmとの間に設定されるが、その最適性能は488と514.5nmとの間に設定される。
1.電磁放射線源
アナライザーシステムの一部の実施形態では、化学発光標識を用いることができる。このような実施形態では、粒子を検出するためのEM放射線源を必ずしも利用しなくてもよい。別の一実施形態では、粒子の外因性の標識または内因性の特性は、蛍光標識または光散乱標識など、光相互作用標識または特性である。このような一実施形態では、EM放射線源を用いて標識および/または粒子を照射する。蛍光標識を励起するためのEM放射線源が好ましい。
一部の実施形態では、アナライザーシステムは、電磁放射線源301からなる。本発明の範囲を逸脱せずに、任意の数の放射線源を任意の1つのアナライザーシステム300において用いることができる。多数の電磁放射線源が以前に開示されており、先行米国特許出願11/048660から参照によって組み入れられる。一部の実施形態では、すべての連続波電磁(EM)放射線源が、同じ波長の電磁放射線を放出する。他の実施形態では、異なる供給源が異なる波長のEM放射線を放出する。
一実施形態では、EM放射線源301、351、352は、200nmと1000nmとの間の波長を生成する連続波レーザーである。このようなEM放射線源は、小型で耐久性があり、かつ比較的安価であるという利点を有する。さらに、一般的に、それらは他の光源よりも大きな蛍光シグナルを生成する能力がある。好適な連続波EM放射線源の特定の例には、限定するものではないが、アルゴン、クリプトン、ヘリウム−ネオン、ヘリウム−カドミウム型のレーザー、ならびにチューナブルダイオードレーザー(赤色から赤外領域)が含まれ、各々は周波数を2倍にする実行可能性がある。レーザーは、シャッターなどの照射を妨害するための付属の電子装置または機械的装置なしに連続のイルミネーションを提供する。連続波レーザーを用いる一実施形態では、3mWの電磁放射線源は、蛍光標識を励起するのに十分なエネルギーであることができる。このようなエネルギー出力の連続波レーザーからの光線の直径は、2から5μmの間であることができる。3mWに曝露するための粒子のレーザー光線への曝露時間は、約1m秒の時間であることができる。代替の実施形態では、レーザー光線への曝露時間は、約500μ秒以下であることができる。代替の一実施形態では、曝露時間は、約100μ秒以下であることができる。代替の一実施形態では、曝露時間は、約50μ秒以下であることができる。代替の一実施形態では、曝露時間は、約10μ秒以下であることができる。
LEDは、費用が低く信頼性の高い別の照射源である。高輝度LEDならびに高吸収性断面および高量子収量を有する色素における最近の進歩によって、LEDの単一粒子検出への適用可能性が支持されている。このようなレーザーは、単独で、あるいは水銀灯、基本的なアーク灯、ハロゲンランプ、アーク放電、プラズマ放電、発光ダイオード、またはこれらの組合せなどの他の光源と組み合わせて使用することができる。
他の実施形態では、EM放射線源は、パルス波レーザーの形態であることができる。このような実施形態では、レーザーのパルスサイズは重要なファクターである。このような実施形態では、サイズ、集光スポット、およびレーザーによって放出される全エネルギーは重要であり、蛍光標識を励起することができるほど十分なエネルギーでなければならない。パルスレーザーを用いる場合は、より長い持続時間のパルスが必要とされ得る。一部の実施形態では、2ナノ秒のレーザーパルスを用いることができる。一部の実施形態では、5ナノ秒のレーザーパルスを用いることができる。一部の実施形態では、2ナノ秒から5ナノ秒の間のパルスを用いることができる。
最適のレーザー強度は、単一色素の光退色の特徴およびインタロゲーション空間を横切るのに必要とされる時間の長さ(粒子の速度、複数用いられる場合のインタロゲーション空間間の距離、およびインタロゲーション空間のサイズを含む)に依存する。最大のシグナルを得るためには、高パーセント値の色素の光退色をもたらさない最高強度で試料を照射するのが望ましい。好ましい強度は、粒子がインタロゲーション空間を横切った時間までに退色する色素が5%以下となる強度である。
レーザーのパワーは、刺激される必要がある色素分子の種類、および色素分子が刺激される時間の長さ、および/または色素分子がキャピラリーフローセルを通過する速度に応じて設定される。レーザーのパワーは、エネルギーが光線によって送達される速度と定義し、ジュール/秒またはワットの単位で測定する。レーザーの出力が大きいほど、レーザーが粒子を照射する時間が短くてもよい一方、粒子が空間を通過する間にインタロゲーション空間に一定量のエネルギーが提供されることが理解されよう。したがって一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100マイクロジュールより大きくなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、または110マイクロジュール未満となるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約0.1と100マイクロジュールとの間となるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約1と100マイクロジュールとの間となるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約1と50マイクロジュールとの間となるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約2と50マイクロジュールとの間となるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約3と60マイクロジュールとの間となるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約3と50マイクロジュールとの間となるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約3と40マイクロジュールとの間となるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約3と30マイクロジュールとの間となるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約1マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約3マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約5マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約10マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約15マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態ではレーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約20マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約30マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約40マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約50マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約60マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約70マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約80マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約90マイクロジュールとなるものである。一部の実施形態では、レーザー出力と照射時間との組合せは、照射時間の間にインタロゲーション空間が受け取る全エネルギーが約100マイクロジュールとなるものである。
一部の実施形態では、レーザー出力は、少なくとも約1mW、2mW、3mW、4mW、5mW、6mW、7mW、8mW、9mW、10mW、13mW、15mW、20mW、25mW、30mW、40mW、50mW、60mW、70mW、80mW、90mW、100mW、または100mW超に設定される。一部の実施形態では、レーザー出力は、少なくとも約1mWに設定される。一部の実施形態では、レーザー出力は、少なくとも約3mWに設定される。一部の実施形態では、レーザー出力は、少なくとも約5mWに設定される。一部の実施形態では、レーザー出力は、少なくとも約10mWに設定される。一部の実施形態では、レーザー出力は、少なくとも約20mWに設定される。一部の実施形態では、レーザー出力は、少なくとも約30mWに設定される。一部の実施形態では、レーザー出力は、少なくとも約40mWに設定される。一部の実施形態では、レーザー出力は、少なくとも約50mWに設定される。一部の実施形態では、レーザー出力は、少なくとも約60mWに設定される。一部の実施形態では、レーザー出力は、少なくとも約90mWに設定される。
レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、150、300、350、400、450、500、600、700、800、900、または1000マイクロ秒以上に設定することができる。レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、150、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000マイクロ秒以下に設定することができる。レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約1と1000マイクロ秒の間に設定することができる。レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約5と500マイクロ秒の間に設定することができる。レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約5と100マイクロ秒の間に設定することができる。レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約10と100マイクロ秒の間に設定することができる。レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約10と50マイクロ秒の間に設定することができる。レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約10と20マイクロ秒の間に設定することができる。レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約5と50マイクロ秒の間に設定することができる。レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約1マイクロ秒と100マイクロ秒の間に設定することができる。一部の実施形態では、レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約1マイクロ秒である。一部の実施形態では、レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約5マイクロ秒である。一部の実施形態では、レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約10マイクロ秒である。一部の実施形態では、レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約25マイクロ秒である。一部の実施形態では、レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約50マイクロ秒である。一部の実施形態では、レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約100マイクロ秒である。一部の実施形態では、レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約250マイクロ秒である。一部の実施形態では、レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約500マイクロ秒である。一部の実施形態では、レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、約1000マイクロ秒である。
例えば、レーザーがインタロゲーション空間を照射する時間は、3mW、4mW、5mW、または5mW超の出力を提供するレーザーで、1ミリ秒、250マイクロ秒、100マイクロ秒、50マイクロ秒、25マイクロ秒、または10マイクロ秒に設定することができる。一部の実施形態では、3mWの出力を提供するレーザーで標識を照射し、約1000マイクロ秒の間標識を照射する。他の実施形態では、約20mW以下の出力を提供するレーザーで、1000ミリ秒未満の間標識を照射する。他の実施形態では、20mWのレーザー出力で、約250マイクロ秒以下の間標識を照射する。一部の実施形態では、約5mWのレーザー出力で、約1000マイクロ秒以下の間標識を照射する。
2.キャピラリーフローセル
キャピラリーフローセルは、試料システムに流体接続される。一実施形態では、アナライザーシステムのインタロゲーション空間314は、対応する光線311の横断面面積および検出器309の視野内の光線のセグメントによって決定される。アナライザーシステムの一実施形態では、インタロゲーション空間314は、約0.01と500pLとの間、または約0.01pLと100pLとの間、または約0.01pLと10pLとの間、または約0.01pLと1pLとの間、または約0.01pLと0.5pLとの間、または約0.02pLと約300pLとの間、または約0.02pLと約50pLとの間、または約0.02pLと約5pLとの間、または約0.02pLと約0.5pLとの間、または約0.02pLと約2pLとの間、または約0.05pLと約50pLとの間、または約0.05pLと約5pLとの間、または約0.05pLと約0.5pLとの間、または約0.05pLと約0.2pLとの間、または約0.1pLと約25pLとの間の本明細書で定義された体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間は、約0.01pLと10pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間314は、約0.01pLと1pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間314は、約0.02pLと約5pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間314は、約0.02pLと約0.5pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間314は、約0.05pLと約0.2pLとの間の体積を有する。一部の実施形態では、インタロゲーション空間314は、約0.1pLの体積を有する。他の有用なインタロゲーション空間の体積は、本明細書に記載する通りである。当業者であれば、インタロゲーション空間314はアナライザーの最大性能のために選択することができることを理解すべきである。非常に小さいインタロゲーション空間はバックグラウンドノイズを最小にすることが示されているが、大きなインタロゲーション空間は低濃度の試料を妥当な時間で分析することができるという利点を有する。2つのインタロゲーション空間370および371を用いる実施形態では、単一のインタロゲーション空間314について本明細書で記載するものなどの体積を用いることができる。
本発明の一実施形態では、インタロゲーション空間は、約1000フェムトモル(fM)から約1ゼプトモル(zM)までの範囲の濃度の粒子が検出できるほど十分に大きい。本発明の一実施形態では、インタロゲーション空間は、約1000fMから約1アトモル(aM)までの範囲の濃度の粒子の検出ができるほど十分に大きい。本発明の一実施形態では、インタロゲーション空間は、約10fMから約1アトモル(aM)までの範囲の濃度の粒子の検出ができるほど十分に大きい。多くの場合において、大きなインタロゲーション空間は、さらなる前濃縮装置または技術なしに、約1fM未満の濃度の粒子の検出を可能にする。当業者であれば、最も適切なインタロゲーション空間のサイズは、検出すべき粒子の輝度、バックグラウンドシグナルのレベル、および分析すべき試料の濃度に依存することを理解するであろう。
インタロゲーション空間314のサイズは、アナライザーのオプティックスを調節することによって制限することができる。一実施形態では、光線311の直径を調節して、インタロゲーション空間314の体積を変化させることができる。別の一実施形態では、検出器309の視野を変化させることができる。したがって、インタロゲーション空間314内で単一粒子が照射および検出されるように放射線源301および検出器309を調節することができる。別の一実施形態では、検出器309の視野を決定する開口部306(図1A)の幅は変えることができる。この構成により、ほぼリアルタイムでインタロゲーション空間を変更して多かれ少なかれ濃縮された試料の穴埋めをすることができ、これによりインタロゲーション空間内に同時に2つ以上の粒子が存在する確率を確実に低くする。2つ以上のインタロゲーション空間である370および371に対して同様の変更を行ってもよい。
別の一実施形態では、インタロゲーション空間は、実際の試料を試験する前にキャピラリーフローセルを通過する既知濃度のキャリブレーション試料を使用することによって画定することができる。試料がキャピラリーフローセルを通過するときにたった1個の単一粒子がキャリブレーション試料において1回で検出される場合、焦点の深さと電磁放射線源の光線の直径とによりキャピラリーフローセルにおけるインタロゲーション空間のサイズが決定される。
インタロゲーション空間に対する物理的制約は、固体の壁によっても提供することができる。一実施形態では、壁は、試料液体がキャピラリー内に含まれる場合には、フローセル313(図2A)の1つ以上の壁である。一実施形態では、セルはガラスでできているが、約200から約1000nm以上の範囲の光に対して透明である他の物質、例えば、石英、融解石英(fused silica)、およびテフロン(登録商標)、ナイロン、プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、およびポリエチレン)などの有機材料またはこれらの任意の組合せを、本発明の範囲から逸脱することなしに用いてもよい。他の横断面形状(例えば、四角形、円柱状)を、本発明の範囲から逸脱することに用いることができるが、一実施形態では、キャピラリーフローセル313は正方形の横断面を有する。別の一実施形態では、インタロゲーション空間は、チップ(図示せず)中にエッチングされているチャンネル(図示せず)によって少なくとも部分的に画定してもよい。同様の検討事項が、2つのインタロゲーション空間が用いられる実施形態に適用される(図2Bにおける370および371)。
インタロゲーション空間は液体に浸されている。一実施形態では、液体は水性である。他の実施形態では、液体は、非水性であるか、水性および非水性液体の組合せである。さらに、液体が、pH調節剤、イオン性組成物、または可溶性マクロ粒子もしくはポリマーもしくはゲルなどのふるい分け剤(sieving agent)を含んでいてもよい。液体の接続を一時的に中断するために、バルブまたは他の装置がインタロゲーション空間間に存在してもよいことが企図される。一時的に中断されたインタロゲーション空間は、液体によって接続されるとみなす。
本発明の別の一実施形態では、インタロゲーション空間は、シースフロー(sheath flow)とも呼ばれる、希釈液体積内の試料材料の層流(laminar flow)のサイズによって制約されるフローセル313内に存在する単一のインタロゲーション空間である。これらおよび他の実施形態では、インタロゲーション空間は、シースフロー単独によりあるいは照射源の寸法または検出器の視野と組み合わせることで画定されることができる。シースフローは多くの方法で形作ることができ、これには以下が含まれる:試料材料が同心性の層流の内側材料であり、外部は希釈液体積である;希釈液体積が試料体積の片側にある;希釈液体積が試料材料の2つの側にある;希釈液体積は試料材料の複数の側にあるが、試料材料を完全に取り囲まない;希釈液体積が試料材料を完全に取り囲む;希釈液体積が試料材料を同心円状に完全に取り囲む;試料材料が非連続的な一連の液滴の内部材料であり、希釈液体積は試料材料の各液滴を完全に取り囲む。
一部の実施形態では、本発明の単一分子検出器は、インタロゲーション空間を1つだけ含む。一部の実施形態では、多数のインタロゲーション空間が用いられる。多数のインタロゲーション空間は以前に開示されており、米国特許出願11/048660から参照によって組み入れられる。当業者であれば、いくつかの場合において、アナライザーは2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または6つ超の区別されるインタロゲーション空間を含むことを理解されよう。
3.原動力
アナライザーシステムの一実施形態では、粒子は、原動力によりインタロゲーション空間を通って移動する。一部の実施形態では、粒子を移動させるための原動力は、圧力である。一部の実施形態では、圧力は、ポンプ、空気圧源、真空源、遠心機、またはこれらの組合せによって供給される。一部の実施形態では、粒子を移動させるための原動力は、動電学的な力である。原動力としての動電学的力の使用は、先行出願において以前に開示されており、米国特許出願11/048660から参照によって組み入れられる。
一実施形態では、キャピラリーフローセルのインタロゲーション空間を通って粒子を移動させるための原動力として圧力を用いることができる。さらなる一実施形態では、ポンプにより、圧力が供給して試料を移動させる。好適なポンプは当技術分野で既知である。一実施形態では、Scivax,Inc.によって製造されたものなど、HPLCアプリケーション用に製造されたポンプを原動力として用いることができる。他の実施形態では、より小さい体積の試料にポンプを用いる場合に、微小流体(microfluidics)の適用のために製造されたポンプを用いることができる。これらのポンプは米国特許第5094594号、第5730187号、第6033628号、および第6533553号に記載されており、これらはナノリットルまたはピコリットル範囲の液体体積にポンプを用いることができる装置を開示している。試料と接触することになるポンプ内の材料すべてが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、融解石英、またはサファイアなどの高不活性材料で作られていることが好ましい。
キャピラリーフローセルを通って試料を移動させ、分析のために試料をインタロゲーション空間を通って押し進めるため、原動力が必要である。試料が通過した後にキャピラリーフローセルを通ってフラッシング試料(flushing sample)を押し進めるため、原動力がやはり必要とされる。試料の回収をする場合、試料回収容器中に試料を押し戻すのに、原動力がやはり必要とされる。標準のポンプは、様々なサイズがあり、予測される試料サイズおよび流れの要件に適合させるために好適なサイズを選択することができる。一部の実施形態では、試料の分析用およびシステムのフラッシング用に別々のポンプが用いられる。分析用ポンプの容量は、約0.000001mLから約10mL、または約0.001mLから約1mL、または約0.01mLから約0.2mL、または約0.005、0.01、0.05、0.1、または0.5mLであってよい。フラッシュポンプは、分析用ポンプより容量が大きくてもよい。フラッシュポンプの体積は、約0.01mLから約20mL、または約0.1mLから約10mL、または約0.1mLから約2mL、または約0.05、0.1、0.5、1、5、または10mLであってよい。これらのポンプのサイズは例示にすぎず、当業者であれば、ポンプのサイズは、用途、試料のサイズ、ポンプの使用を施す液体の粘度、菅(tubing)寸法、流速、温度、および当技術分野で周知である他の要因に従って選択することができることを理解するであろう。一部の実施形態では、システムのポンプは、マイクロプロセッサで非常に正確に制御するのが容易であるステッパーモータによって駆動される。
好ましい実施形態では、特殊なチェックバルブで流れの方向を制御しながらフラッシュポンプおよび分析用ポンプを連続して用いる。配管は、分析用ポンプが最大量の試料を吸い上げるときに試料がポンプ自体に到達しないように設計されている。これは、菅の体積が分析用ポンプのストローク体積(stroke volume)を超えるように分析用ポンプと分析用キャピラリーとの間の菅のIDおよび長さを選択することによって達成される。
4.検出器
一実施形態では、電磁放射線に曝露した後に蛍光標識によって放出される光(例えば、紫外、可視、または赤外範囲の光)を検出する。検出器309(図1A)または複数の検出器(364、365、図1B)は、蛍光部分からの光子のバーストの振幅および持続時間を捕捉し、さらに光子のバーストの振幅および持続時間を電気シグナルに変換することが可能である。CCDカメラ、ビデオ入力モジュールカメラ、およびストリークカメラなどの検出装置を用いて、連続シグナルで画像を生成することができる。別の一実施形態では、ボロメーター、フォトダイオード、フォトダイオードアレイ、アバランシェフォトダイオード、および連続のシグナルを生成する光電子増倍管などの装置を用いることができる。前述の検出器の任意の組合せも用いることができる。一実施形態では、光子を検出するためにアバランシェフォトダイオードを用いる。
インタロゲーション空間314(図2A)とその対応する検出器309(図1A)との間に特定の光学オプティックスを用いて、放射波長、放射強度、バーストサイズ、バースト継続時間、および蛍光偏光を含む放出された電磁放射線のいくつかの別個の特徴を検出することができる。一部の実施形態では、検出器309は、逆バイアスで用いられるフォトダイオードである。逆バイアスにおいて設定されたフォトダイオードは、通常、非常に高い抵抗を有する。適切な周波数の光がP/N接合を照らしたときに、この抵抗は低下する。それゆえ、逆バイアスのダイオードは、通って流れる電流をモニタリングすることによって検出器として用いることができる。この効果に基づく回路は、ゼロバイアスに基づく回路よりも光に対して感度が高い。
アナライザーシステムの一実施形態では、フォトダイオードはアバランシェフォトダイオードであることができ、該アバランシェフォトダイオードは従来のフォトダイオードよりもずっと高い逆バイアスで操作することができ、したがって各々の光生成キャリアをアバランシェブレークダウンによって増大させて、フォトダイオード内に内部利得をもたらすことで、装置の有効な応答性(感度)を増大させる。フォトダイオードの選択は、蛍光標識した粒子によって放出されるエネルギーまたは放射波長によって決定される。一部の実施形態では、フォトダイオードは、190〜1100nmの範囲のエネルギーを検出するシリコンフォトダイオードであり、別の一実施形態では、フォトダイオードは、800〜1700nmの範囲のエネルギーを検出するゲルマニウムフォトダイオードであり、別の一実施形態では、フォトダイオードは、800〜2600nmの範囲のエネルギーを検出するインジウムガリウムヒ素フォトダイオードであり、さらに別の実施形態では、フォトダイオードは、1000nm未満から3500nmの間の範囲のエネルギーを検出する硫化鉛フォトダイオードである。一部の実施形態では、アバランシェフォトダイオードは、400nmから1100nmの波長範囲のエネルギーを検出するように設計された単一光子の検出器である。単一光子検出器は市販されている(例えば、Perkin Elmer、Wellesley、MA)。
一部の実施形態では、検出器は、300nmと1700nmとの間のエネルギーを検出するアバランシェフォトダイオード検出器である。一実施形態では、シリコンアバランシェフォトダイオードを用いて300nmと1100nmとの間の波長を検出することができる。インジウムガリウムヒ素フォトダイオードを用いて900nmと1700nmとの間の波長を検出することができる。一部の実施形態では、アナライザーシステムは、少なくとも1つの検出器を含むことができ;他の実施形態では、アナライザーシステムは、少なくとも2つの検出器を含むことができ、各検出器は特定の波長範囲の光エネルギーを検出するように選択し構成することができる。例えば、2つの別々の検出器を用いて、EM放射線源で励起した際に異なるスペクトルのエネルギーで光子を放出する異なる標識で標識付けされている粒子を検出することができる。一実施形態では、アナライザーシステムは、緑色色素(例えばAlexa546)によって放出されるものなどの450〜700nmの範囲の蛍光エネルギーを検出することができる第1の検出器、および近赤外色素(例えばAlexa647)によって放出されるものなどの620〜780nmの範囲の蛍光エネルギーを検出することができる第2の検出器を含むことができる。青色色素(例えばHoechst33342)によって放出されるものなどの400〜600nmの範囲の蛍光エネルギーを検出するための検出器、および赤色色素(Alexa546およびCy3)によって放出されるものなどの560〜700nmの範囲のエネルギーを検出するための検出器も用いることができる。
2つ以上の検出器を含むシステムを用いて、異なるスペクトルで光を放出する2つ以上の標識で各々を標識付けした個々の粒子を検出することができる。例えば、2つの異なる検出器は、2つの異なる色素標識で標識付けされた抗体を検出することができる。あるいは、2つの検出器を含むアナライザーシステムを用いて異なるタイプの粒子を検出することができ、その各々のタイプを異なる色素分子であるいは2つ以上の色素分子の混合物で標識付けする。例えば、2つの異なる検出器を用いて、2つの異なるタンパク質を認識する2つの異なるタイプの抗体を検出することができ、その各々のタイプを異なる色素標識あるいは2つ以上の色素標識分子の混合物で標識付けする。2つ以上の色素標識分子の比率を変化させることにより、2つ以上の異なる粒子タイプを2つの検出器を用いて個々に検出することができる。3つ以上の検出器を本発明の範囲から逸脱せずに用いることができることが理解される。
当業者であれば、フローセル内に1つ以上のインタロゲーション空間が画定されている各々のインタロゲーション空間に1つ以上の検出器を配置構成することができること、および各検出器が上記に列挙した放出された電磁放射線の特徴のいずれも検出するように配置構成することができることを理解すべきである。例えば多数のインタロゲーション空間に対する多数の検出器の使用は、先行の出願において以前に開示されており、米国特許出願11/048660から本明細書に参照によって組み入れられる。粒子を検出可能にするために該粒子を標識したら(あるいは粒子が該粒子を検出可能にする固有の特徴を有する場合は)、当技術分野で既知である任意の好適な検出の機構(例えば、CCDカメラ、ビデオ入力モジュールカメラ、ストリークカメラ、ボロメーター、フォトダイオード、フォトダイオードアレイ、アバランシェフォトダイオード、および連続のシグナルを生成する光増倍管、ならびにこれらの組合せ)を本発明の範囲から逸脱することなしに用いることができる。放射波長、放射強度、バーストサイズ、バースト持続時間、蛍光偏光、およびこれらの任意の組合せを含む電磁放射線の異なる特徴を検出することができる。
C.試料採取システム
さらなる実施形態では、アナライザーシステムは、アナライザーシステムに導入するための試料を調製するための試料採取システムを含むことができる。含まれる試料採取システムは、複数の試料を自動的に採取すること、および試料容器と第1のインタロゲーション空間との間の流体連通を提供することが可能である。
一部の実施形態では、本発明のアナライザーシステムは、試料のアリコートを分析のために単一粒子アナライザーに導入するための試料採取システムを含む。試料を導入することができる任意の機構を用いることができる。ポンプ、または液体を管へ押し入れる試料にかけられる圧力、または試料を試料採取管に導入するように働く任意の他の機構によって作り出されるいずれかの真空吸引を用いて、試料を吸い上げることができる。必ずしもではないが、一般的には、試料採取システムは既知の試料体積の試料を単一粒子アナライザーに導入するものであり、一粒子または複数の粒子の有無が検出される一部の実施形態では試料サイズを正確に知ることは重要ではない。好ましい実施形態では、試料採取システムは、単一の試料用または複数の試料用の自動化試料採取を提供する。既知体積の試料をシステムに導入する実施形態では、試料採取システムは、約0.0001、0.001、0.01、0.1、1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000、1500、または2000μlを超える分析用試料を提供する。一部の実施形態では、試料採取システムは、約2000、1000、500、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、2、1、0.1、0.01、または0.001μl未満の分析用の試料を提供する。一部の実施形態では、試料採取システムは、約0.01と1500μlとの間、または約0.1と1000μlとの間、または約1と500μlとの間、または約1と100μlとの間、または約1と50μlとの間、または約1と20μlとの間の分析用の試料を提供する。一部の実施形態では、試料採取システムは、約5μlと200μlとの間、または約5μlと約100μlとの間、または約5μlと50μlとの間の分析用試料を提供する。一部の実施形態では、試料採取システムは、約10μlと200μlとの間、または約10μlと100μlとの間、または約10μlと50μlとの間の分析用試料を提供する。一部の実施形態では、試料採取システムは、約0.5μlと約50μlとの間の分析用試料を提供する。
一部の実施形態では、試料採取システムは、試料間で違っていてもよい試料サイズを提供する。これらの実施形態では、試料サイズは、本明細書に記載する試料サイズのいずれの1つであってもよく、所望する場合には試料毎または試料のセットで変化してもよい。
試料採取システムの試料体積の正確さおよび試料間体積の精密度は、当面、分析に必要とされる。一部の実施形態では、採取体積の精密度は用いるポンプによって決定され、典型的には、試料体積の約50、40、30、20、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05、または0.01%未満のCVによって表される。一部の実施形態では、試料採取システムの試料間の精密度は約50、40、30、20、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05、または0.01%未満のCVによって表される。一部の実施形態では、試料採取システムのアッセイ内の精密度は、約10、5、1、0.5、または0.1%未満のCVによって表される。一部の実施形態では、試料採取システムのアッセイ内の精密度は、約5%未満のCVを示す。一部の実施形態では、試料採取システムのアッセイ間の精密度は、約10、5、または1%未満のCVによって表される。一部の実施形態では、試料採取システムのアッセイ間の精密度は、約5%未満のCVを示す。
一部の実施形態では、試料採取システムは、試料のキャリーオーバーを低いものとし、試料間においてさらなる洗浄工程が必要とされないという点で有利である。したがって一部の実施形態では、試料のキャリーオーバーは、約1、0.5、0.1、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、または0.001%未満である。一部の実施形態では、試料のキャリーオーバーは、約0.02%未満である。一部の実施形態では、試料のキャリーオーバーは、約0.01%未満である。
一部の実施形態では、試料採取装置は試料ループ(sample loop)を提供する。これらの実施形態では、多数の試料が連続的に菅に引き入れられ、各々は緩衝液「プラグ(plug)」によって他のものから分離される。試料は、典型的には、間に(in between)フラッシングなく次々と読まれる。フラッシングは、ループの終わりに1回なされる。緩衝液「プラグ」が用いられる実施形態では、プラグは、緩衝液プラグをマイクロタイタープレートの別々のウェル中に排出して回収することができる。
試料採取システムは、96ウェルマイクロタイタープレート、好ましくは384ウェルプレートなどの標準のアッセイ設備との使用に適合させてもよい。一部の実施形態では、該システムは、96ウェルプレートポジショナー、および試料管をウェル中におよびウェル外で浸すための機構、例えばX、Y、およびZ軸に沿った動きを与えるための機構を含む。一部の実施形態では、試料採取システムは、試験を開始した際に試料を貯蔵し取り出すことができる多数の試料採取管を提供する。一部の実施形態では、多数の管からのすべての試料を1つの検出器で分析する。他の実施形態では、多数の単一分子検出器が試料管に接続されていてもよい。試料採取システムによる試料採取前にプレートのウェル中の試料に対して行う操作を含む工程によって試料を調製することができ、あるいはアナライザーシステム内で試料を調製することができ、あるいは両方のある組合せで調製することができる。
D.試料調製システム
試料調製には、分析用の粗製試料の調製を必要とする工程が含まれる。これらの工程は、例示として、遠心分離、濾過、蒸留、クロマトグラフィーなどの分離工程;濃縮、細胞溶解、pHの変更、緩衝液の添加、希釈液の添加、試薬の添加、加熱もしくは冷却、標識の添加、標識の結合、照射による架橋、未結合標識の分離、妨害化合物の不活性化および/または除去、ならびに単一粒子アナライザーによる分析のために試料を調製するのに必要な任意の他の工程の1つ以上の工程を伴うことができる。一部の実施形態では、血液を処理して血漿または血清を分離する。さらなる標識化、未結合の標識の除去、および/または希釈工程を、血清または血漿の試料に対して行うこともできる。
一部の実施形態では、アナライザーシステムは、単一粒子アナライザーによる分析の準備が整った試料を提供するのに必要なプロセスのいくつかまたはすべてを行う試料調製システムを含む。このシステムは、試料を調製するために上記に列挙した工程の任意のものまたはすべてを行うことができる。一部の実施形態では、アナライザーシステムの試料調製システムにより、試料を部分的に処理加工する。したがって、一部の実施形態では、最初に、アナライザーシステム外で試料を部分的に処理加工してもよい。例えば、最初に試料を遠心分離してもよい。次いで、試料調製システムにより、アナライザー内で試料を部分的に処理加工してもよい。アナライザー内での処理加工には、試料の標識化、試料と緩衝液との混合、および当業者に既知であろう他の処理加工工程が含まれる。一部の実施形態では、血液試料をアナライザーシステム外で処理加工して血清または血漿の試料を提供し、これをアナライザーシステムに導入し、試料調製システムによってさらに処理加工して対象の粒子または複数の粒子を標識化し、任意選択により未結合の標識を除去する。他の実施形態では、試料の調製には、対象ではない粒子を除去するためあるいは試料の分析を妨害することができる粒子を除去するための試料の免疫除去(immunodepletion)を含むことができる。さらに他の実施形態では、試料から、試料の分析を妨害することができる粒子を枯渇することができる。例えば、試料の調製は、対象の粒子を直接的または間接的に検出するための非ヒト抗体を用いるイムノアッセイを妨害することが知られている異好性抗体の枯渇(depletion)を含むことができる。同様に、対象の粒子の測定を妨害する他のタンパク質を、妨害タンパク質を認識する抗体を用いて試料から除去することができる。
一部の実施形態では、アッセイおよび分析の前に試料を固相抽出にかけることができる。例えば、cAMPについてアッセイする血清試料を、それが結合するc18カラムを用いて、まず固相抽出にかけることができる。プロテアーゼ、リパーゼ、およびホスファターゼなどの他のタンパク質をカラムから洗い流し、cAMPを溶出して、cAMPを分解することができるあるいはcAMPの測定を妨害することができるタンパク質を本質的になくす。固相抽出を用いて、アッセイの感度を低減することができる試料の塩基性マトリクスを除去することができる。さらに他の実施形態では、試料を乾燥または凍結乾燥し、粒子をオリジナルの試料の体積よりも小さい体積に可溶化することによって、試料に存在する対象の粒子を濃縮することができる。例えば、吸気濃縮物(EBC)の試料を乾燥し、小体積の好適な緩衝溶液中に再再懸濁し、対象の粒子の検出を増強することができる。
一部の実施形態では、アナライザーシステムは、血液試料、唾液試料、尿試料、脳脊髄液試料、リンパ試料、BAL試料、吸気濃縮物(EBC)、生検試料、法医学的試料、生物テロ試料などの完全な調製物など、システムで分析される試料の完全な調製を提供する試料調製システムを提供する。一部の実施形態では、アナライザーシステムは、試料調製のいくつかまたはすべてを提供する試料調製システムを提供する。一部の実施形態では、最初の試料は、アナライザーシステムによってさらに処理加工される血液試料である。一部の実施形態では、試料は、アナライザーシステムによってさらに処理加工される血清または血漿試料である。血清または血漿試料は、例えば対象の粒子または複数の粒子に結合する標識と接触させることによってさらに処理加工することができ、次いで、未結合の標識を除去してあるいは除去せずに試料を用いることができる。
一部の実施形態では、試料調製は、分析システム外または分析システムの試料調製構成要素のいずれかにおいて96ウェルプレートなどの1つ以上のマイクロタイタープレート上で行う。当技術分野で周知であるように、試薬や緩衝液などのレザーバは、菅または他の好適な構造によりプレートのウェルと断続的な流体連通にすることができる。96ウェルプレートまたは管中に試料を別々に調製することができる。試料の単離、標識の結合、および必要な場合には標識の分離の工程を1つのプレート上で行うことができる。一部の実施形態では、次いで調製粒子をプレートから放出し、試料分析システムに入れて試料採取するために試料を管に移動する。一部の実施形態では、試料調製のすべて工程を1つのプレート上で行い、分析システムはプレートから直接試料を得る。この実施形態は96ウェルプレートに関して記載してあるが、1つ以上の試料を入れるための試料の調製に好適な任意のベッセルを用いることができることが理解されよう。例えば、384ウェルまたは1536ウェルの標準のマイクロタイタープレートを用いることができる。より一般的には、一部の実施形態では、試料調製システムは、約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、500、1000、5000、または10000を超える試料を保持し調製することが可能である。一部の実施形態では、多数のアナライザーシステムで分析するために多数の試料を採取することができる。したがって、一部の実施形態では、2つの試料、または約2、3、4、5、7、10、15、20、50、または100を超える試料を試料調製システムから採取し、多数の試料アナライザーシステム上で平行して実施する。
微小流体システムは、試料調製のために、アナライザーシステムの一部である試料調製システムとして、特に、検出により少量の試料が必要であるほど十分に高濃度の粒子を含むことが疑われる試料に対して、用いてもよい。微小流体操作の原理および技術は当技術分野で既知である。米国特許第4979824号、第5770029号、第5755942号、第5746901号、第5681751号、第5658413号、第5653939号、第5653859号、第5645702号、第5605662号、第5571410号、第5543838号、第5480614号、第5716825号、第5603351号、第5858195号、第5863801号、第5955028号、第5989402号、第6041515号、第6071478号、第6355420号、第6495104号、第6386219号、第6606609号、第6802342号、第6749734号、第6623613号、第6554744号、第6361671号、第6143152号、第6132580号、第5274240号、第6689323号、第6783992号、第6537437号、第6599436号、第6811668号、および公開されているPCT特許出願WO9955461(A1)を参照されたい。試料は、単一または多数のアナライザーシステムでの使用のために連続してまたは平行して調製することができる。
試料は緩衝液を含むことが好ましい。緩衝液は、アナライザーシステム外で試料と混合してもよく、あるいは試料調製機構によって提供してもよい。任意の好適な緩衝液を用いることができるが、好ましい緩衝液は、蛍光のバックグラウンドが低く、検出可能に標識された粒子に対して不活性であり、使用pHを維持することができ、原動力が動電学的である実施形態では電気泳動に好適なイオン強度を有するものである。緩衝液濃度は、約1から約200mMの範囲などの任意の好適な濃度であることができる。対象の分子の可溶性、機能、および検出可能性を付与する限り、任意の緩衝液系を用いることができる。ポンプ吸引(pumping)を用いる用途では、リン酸塩、グリシン、酢酸塩、クエン酸塩、アシデュレート(acidulate)、炭酸塩/炭酸水素塩、イミダゾール、トリエタノールアミン、グリシン、アミド、ホウ酸塩、MES、Bis−Tris、ADA、aces、PIPES、MOPSO、Bis−Tris Propane、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、MOBS、TAPSO、Trizma、HEPPSO、POPSO、TEA、EPPS、Tricine、Gly−Gly、Bicine、HEPBS、TAPS、AMPD、TABS、AMPSO、CHES、CAPSO、AMP、CAPS、およびCABSからなる群から緩衝液を選択するのが好ましい。緩衝液は、Gly−Gly、ビシン(bicine)、トリシン(tricine)、2−モルホリンエタンスルホン酸(MES)、4−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、および2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩酸塩(AMP)からなる群から選択することもできる。有用な緩衝液は、pH8.1の2mM Tris/ホウ酸であるが、Tris/グリシンおよびTris/HClも許容できる。他の緩衝液は本明細書に記載する通りである。
電気泳動に有用な緩衝液は先行の出願に開示されており、米国特許出願11/048660から本明細書に参照によって組み入れられる。
E.試料回収
本発明のアナライザーおよび分析システムの実施形態の高度に有用な1つの特徴は、試料を消費せずに分析することができることである。このことは、試料材料が限られている場合に特に重要であり得る。試料を回収することにより、他の分析を行うことまたはそれを再分析をすることも可能になる。法廷使用、薬物スクリーニング、および臨床診断の用途など、試料サイズが限られている場合および/または試料を再分析することができることが望ましい場合での用途に対するこの特徴の利点は、当業者であれば明らかである。
したがって、一部の実施形態では、本発明のアナライザーシステムは、分析後に試料を回収するための試料回収システムをさらに提供する。これらの施形態では、該システムは、試料をアナライザーに引き入れ、分析し、次いで例えば同じ経路によって試料管などの試料ホルダーに戻す機構および方法を含む。試料は壊されることはなく、バルブまたは他の菅のいずれにも入らないので、試料は汚染されないままである。さらに、試料経路における材料はすべて、PEEK、融解石英、またはサファイアなど、高度に不活性なので、試料経路からの汚染はほとんどない。ステッパーモータ制御ポンプ(特に、分析用ポンプ)を使用することにより、引き上げる(drawn up)体積および戻し出される体積を正確に制御できる。これにより、フラッシュ緩衝液による希釈があったとしても少々の希釈で、試料を完全にまたはほとんど完全に回収できる。したがって、一部の実施形態では、約50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%を超える試料が、分析後に回収される。一部の実施形態では、回収試料が希釈されていない。一部の実施形態では、回収された試料は、約1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍、1.1倍、1.05倍、1.01倍、1.005倍、または1.001倍未満希釈されている。
試料を採取および/または回収するために、試料ベッセルからアナライザーへ液体試料を輸送するための任意の機構を用いることができる。一部の実施形態では、分析キャピラリーの入口端部は、試料容器(例えば試験管または試料ウェル)中に浸すことができあるいは廃棄容器の上に保持されることができる短い長さの菅(例えばPEEK菅)に結合している。前の試料を装置からきれいに取り除くためのフラッシュするのときは、フラッシュされた廃棄物を受け止めるための廃棄容器の上にこの管を配置する。試料を引き入れる場合は、管を試料ウェルまたは試験管に入れる。典型的には、試料を速やかに引き入れ、次いで試料内の粒子を観察しながらゆっくりと押し出す。あるいは、一部の実施形態では、引き入れサイクルの少なくとも一部の間に試料をゆっくりと引き入れ、ゆっくりと引き入れている間に試料を分析してもよい。この後に、試料を速やかに戻し、速やかにフラッシュすることができる。一部の実施形態では、内向き(引き入れ)および外向き(引き出し)サイクルの両方で試料を分析することができ、これにより少量の希釈試料などの統計値の計数および結果の確認などが改善される。試料を保存するのが望ましい場合は、元の同じ試料ウェルまたは別のものに試料を押し戻すことができる。試料の保存を望まない場合は、菅を廃棄容器上に配置する。
VI.心筋トロポニンの高感度分析を用いる方法
本発明の方法により、従前測定された濃度よりはるかに低い濃度での心筋トロポニンレベルの測定が可能になる。心筋トロポニンは心筋損傷についての受け入れられたマーカーであるが、現行の分析方法では、現行方法の感度不足のため、心筋に対する相当な損傷が生じた後でのみ検出が可能であるという事実によってその有用性は限られている。心筋梗塞の再定義のための心臓学/米国心臓学委員会の欧州連合学会は、極めて低い閾値である、参照群における心筋トロポニン濃度の99パーセンタイル分布を超える測定値として、心筋トロポニンの増加濃度を定義するように推奨している。この<10%の決定限界における合計の不正確度(total imprecision)(CV)が推奨されている。しかしながら、心筋トロポニンについての現在利用できるイムノアッセイによって得られる分析の不正確度は、主に低濃度範囲においては均一ではない。さらに、現在利用できるアッセイは非臨床(正常)対象でのトロポニンレベルの検出には十分な感度を欠いており、真のベースラインまたは正常集団で画定されるトロポニンレベルは画定されていない。本発明のアナライザーシステムは、10%未満の合計の不正確度で(実施例を参照)、10pg/ml以下の濃度のcTnIレベルを一貫して検出できることが示された。したがって、本発明は、個体の心筋トロポニンの高感度検出に基づいた診断、予後診断、または治療方法を提供する。
一部の実施形態では、本発明は、i)個体から得られる試料中の心筋トロポニン濃度を決定するかまたは個体からの一連の試料中の心筋トロポニン濃度を決定する工程であって、前記試料中の心筋トロポニンの検出限界が約50、40、30、10、5、4、3、2、または1pg/ml未満、例えば約20pg/ml未満である心筋トロポニンアッセイで濃度を決定する工程と;ii)試料中の濃度または一連の試料中の濃度に基づいて前記個体での診断、予後診断、または治療方法を決定する工程とによる、個体において診断、予後診断、または治療方法を決定するための方法を提供する。心筋トロポニンの濃度を決定する方法は、本明細書に記載された方法などの必要な感度を有する任意の好適な方法を含む。一部の実施形態では、この方法は、トロポニンの単一分子またはその複合体もしくは断片の検出を含む、試料中の心筋トロポニンの濃度を決定する方法を利用する。
一部の実施形態では、見かけは健常な集団から得た試料(例えば、血液試料、血清試料、または血漿試料)を心筋トロポニン(例えば心筋トロポニンI)について分析すること、および集団の80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%がそのレベル(濃度)を下回るレベルを決定することにより、トロポニンの閾値濃度が決定される。この値は閾値である。一部の実施形態では、閾値は99パーセンタイルにおいて設定される。一部の実施形態では、約50、20、10、5、または1pg/ml未満、例えば約5pg/ml未満の心筋トロポニンの検出レベルを有する方法を用いて分析を行う。
一部の実施形態では、本発明は、個体から得た試料中の心筋トロポニンの濃度値を心筋トロポニンの正常値または正常値の範囲と比較する工程であって、前記試料中の心筋トロポニンの検出限界が約50、40、30、10、5、4、3、2または1pg/ml未満、例えば約20pg/ml未満である心筋トロポニンアッセイで正常値または正常値の範囲を決定する工程と、ii)比較に基づいて前記個体において診断、予後診断、または治療方法を決定する工程とによる、個体において診断、予後診断、または治療方法を決定する方法を提供する。
一部の実施形態では、心筋トロポニンは、心筋トロポニンIまたは心筋トロポニンTである。一部の実施形態では、心筋トロポニンは、心筋トロポニンTである。一部の実施形態では、心筋トロポニンは、心筋トロポニンIである。この方法では、診断、予後診断、または治療方法の決定において、全トロポニン、例えば、本明細書に記載された全cTnI、またはcTnT、または全cTnI+cTnTを使用することができる。一部の実施形態では、この方法では、心筋トロポニンの遊離体、複合体、もしくは断片の濃度またはこれらの比較(例えば比率)を用いて、診断、予後診断、または治療方法を決定することができる。
A.試料
試料または一連の試料は、任意の好適な試料であってよく;一部の実施形態では、試料は、血液、血清、または血漿である。一部の実施形態では、試料または一連の試料は、血清試料である。個体は、動物、例えば哺乳動物、例えばヒトであってよい。
単一の試料を採取してもよいし、または一連の試料が採取してもよい。一連の試料が採取される場合、それらは任意の好適な間隔、例えば、複数分、複数時間、複数日、複数週、複数月、または複数年の間隔で採取することができる。急性臨床環境の場合、一連の試料は、典型的には、複数時間および複数日にわたって、試料をせいぜい数時間離して採取される。個体をより長期間追跡する場合には、試料間隔は複数月または複数年であり得る。診断、予後診断、または治療方法は、単一の試料または1つ以上の一連の試料から、または一連の試料の変化から決定することができ、例えば、一定速度での濃度増加は重篤な病態を示すことができ、他方、よりゆっくりした速度での増加または非増加は比較的良性または重篤度の低い病態を示すことができる。変化率は、複数時間、複数日、複数週間、複数カ月、または複数年にわたって測定することができる。所与の個体の変化率は、いくつかの場合において、絶対的な値というよりも相対的な値であり得る。急性の環境において、極めて急速な変化率、例えば「スパイク」は、差し迫った、進行中の、または最近の心臓事象を示し得る。他の環境において、個体での複数日、複数週、複数月、または複数年にわたる値の上昇は、進行中のおよび悪化しつつある心臓損傷、例えば心臓の病態(例えば、心肥大またはうっ血性心不全)による心臓損傷または非心臓病態(例えば、薬物曝露からの毒性)による心臓損傷を示し得る。
一部の実施形態では、心臓ストレス試験中または試験後に、少なくとも1つの試料を採取する。例えば、ストレス試験の前に1つの試料を採取し、試験中に1つ以上の試料を採取する。試験前に採取された試料と試験中に採取された試料との間の心筋トロポニンレベルにおける偏差は診断または予後診断の情報を提供することができ、例えば冠動脈疾患または心筋に関連した他の疾患の可能性を示すことができる。正常レベルまたは閾値レベルに対する任意の試料の比較または試料中の心筋トロポニン濃度の変化率の決定などの他の比較も行うことができ、これらはすべて、心臓および心血管の健康状態ならびに本明細書に記載された他の病態に関する有用な情報をもたらすことができる。
一部の実施形態では、個体が医療従事者に心臓損傷を伴い得る病態を示す1つ以上の症状を示した時点またはそれに近い時点で少なくとも1つの試料を採取する。個体が医療従事者のところに来得る環境には、限定するものではないが、救急、緊急管理、臨床管理、集中管理、モニタリングユニット、入院、外来、医師室、診療室、救急車などの緊急時対応の環境、および健康スクリーニング環境が含まれる。一部の実施形態では、1つ以上の試料w個体から採取し、局所的、すなわち、試料採取された環境またはその近くの環境で心筋トロポニンについてアッセイする。例えば、病院に来た個体は、病院内で心筋トロポニンについてアッセイする1つ以上の試料を採取してもらうことができる。例えば、病院に来た個体は、病院内で心筋トロポニンに関してアッセイする1つ以上の試料を採取してもらうことができる。一部の実施形態では、1つ以上の試料を個体から採取し、CLIA試験室で心筋トロポニンについてアッセイされる。一部の実施形態では、個体は、急性冠血管症候群に合致する1つ以上の症状を示す。一部の実施形態では、個体は、AMIに合致する1つ以上の症状を示す。このような症状には、限定するものではないが、胸部痛、胸部圧、腕部痛、異常なEKG、異常な酵素レベル、および息切れが含まれる。
B.診断、予後診断、または治療方法の決定
一部の実施形態では、工程ii)は、前記濃度または一連の濃度を前記濃度の正常値と比較すること、前記濃度または一連の濃度を所定の閾値レベルと比較すること、前記濃度または一連の濃度をベースライン値と比較すること、または前記一連の濃度について濃度の変化率を決定することを含む。
一部の実施形態では、工程ii)は、前記試料中の前記トロポニン濃度を所定の閾値濃度と比較すること、および試料濃度が閾値レベルよりも高い場合は、診断、予後診断、または治療方法を決定することを含む。閾値濃度は、例えば、個体群でトロポニンの99パーセンタイル濃度を決定し、前記99パーセンタイル濃度で閾値濃度を設定することによって決定することができる。この一例は、実施例に提供されている。
正常値、閾値、変化率、値の比率、および他の有用な診断および予後の指標は、当業界で周知の方法によって確立することができる。例えば、これらの値は、症例集団が診断、予後診断、または治療方法が望まれる生物学的状態を示し、対照集団が生物学的状態を示さない、症例集団および対照集団から得た試料を比較することによって決定することができる。一部の実施形態では、長期試験を行うことができる。例えば、症例集団は、時間が経てば生物学的状態を示す対照集団のサブセットであってもよい。正常レベルまたは予後診断もしくは診断レベルについての合意された値または値の範囲を決定するために、複数の研究からのデータを使用することができることは理解されよう。
診断試験または予後診断試験の開発において、1つ以上の可能性のあるマーカーについてのデータを対象群から得ることができる。対象群は、少なくとも2つのセットに分けられ、第1のセットと第2のセットは各々およそ等しい対象の数を有することが好ましい。第1のセットは、疾患を罹っているあるいはより一般的には第1の病態にあると確認されている対象を含む。例えば、この第1の患者セットは、最近疾患を発生させた患者であってもよいし、AMIなどの特定のタイプの疾患を罹っている患者でもよい。病態の確認は、MRIまたはCTなどのより厳密なおよび/または費用がかかる試験によって行うことができる。これ以降、この第1のセットの対象を「疾患者」と称する。第2セットの対象は、単に第1セットに入らない対象である。この第2セットの対象は、正常対象である「非疾患者」であってもよい。あるいは、この第2セットの対象は、「疾患者」対象によって示される症状またはそれらの症状に類似した1つの症状または症状群を示すように選択することができる。さらに他の代替として、この第2のセットは、疾患の発生とは異なる時点でそれらを提示してもよい。同じマーカーセットのデータを各患者が利用できることが好ましい。このマーカーセットは、特定の疾患または病態の検出に関連していると疑われる得るすべての候補マーカーを含み得る。実際の既知の関連性は必要とされない。本明細書に記載された組成物、方法、およびシステムの実施形態を使用して、候補マーカーのうちのいずれが疾患または病態の診断に最も関連性があるかを決定することができる。対象の2つのセットにおける各マーカーのレベルは、広範囲にわたって、例えばガウス分布として分布し得る。しかし、分布の適合は必要とされない。
1.急性心筋梗塞
本発明の方法は、急性心筋梗塞(AMI)が疑われる患者における診断、予後診断、および/または治療選択に特に有用である。AMIの疑われる患者での単一または連続の心筋トロポニン測定により、予後を改善し有害結果の危険度を最小化するための適切で早期の治療介入を示す増大する予後情報が提供される。
したがって、本発明は、個体から得た試料、例えば、血液試料、血漿試料、および/または血清試料を心筋トロポニン、例えばcTnIについてアッセイし、約50、40、30、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1pg/ml未満、例えば約20pg/ml未満の検出限界で試料中の心筋トロポニン濃度(この場合、試料中の心筋トロポニン濃度はAMIを示すか予測する)を検出することにより、個体におけるAMIの診断、予測、および/または予防または治療方法を提供する。心筋トロポニンは、cTnIであってもcTnTであってもよく、全トロポニンであっても特定の形態(例えば、遊離体、複合体、または断片)の指標であってもよく;一部の実施形態では、本明細書に記載するように、トロポニンの1つ以上の形態の比率が用いられる。一部の実施形態では、試料中または一連の試料中の全cTnIが測定される。一部の実施形態では、試料中または一連の試料中の全cTnTが測定される。一部の実施形態では、試料中または一連の試料中の全cTnI+cTnTが測定される。一部の実施形態では、AMIを示す症状を個体が医療従事者に示した時点またはそれに近い時点で、心筋トロポニンレベルが決定される。このような症状には、限定するものではないが、胸部痛、胸部圧、腕部痛、異常なEKG、異常な酵素レベル、および息切れが含まれる。
一部の実施形態では、一連の測定がなされ、試料中の心筋トロポニン濃度のスパイクによってAMIの予後に関する基礎が示され、予測され、または提供される。一部の実施形態では、ベースラインの50%超、100%超、150%超、200%超、250%超、300%超、400%超、または500%超のスパイクにより、AMIの予後に関する基礎が示され、予測され、または提供される。一部の実施形態では、得られる場合は、単一試料における約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50pg/ml超の心筋トロポニンレベルにより、AMIの予後に関する基礎が示され、予測され、または提供される。一部の実施形態では、約1〜10、または約5〜15、または約10〜50、約10〜200、約10〜100、または約10〜40、または約15〜50、または約15〜40、または約20〜200、約20〜150、約20〜100、約20〜50、または約20〜40、または約20〜30pg/mlの心筋トロポニンレベルにより、AMIの予後に関する基礎が示され、予測され、または提供される。
一部の実施形態では、診断または予後診断は、試料中または一連の試料中の心筋トロポニン濃度に基づく個体の層別化を含む。このような層別化は、単一試料中の心筋トロポニン濃度、一連の試料におけるスパイクの存在および/またはベースラインからのスパイクの大きさ、異なる形態の心筋トロポニンの比率、異なる形態の心筋トロポニンの絶対値、一連の試料中の心筋トロポニンの濃度の変化率、または1つ以上の形態の心筋トロポニンの濃度の変化率、一連の試料における経時的な心筋トロポニンの異なる形態の比率の変化、試料または一連の試料における心筋トロポニン濃度に少なくとも部分的に基づいた任意の他の情報に基づくことができる。層別化は、本明細書に記載された正常対象および疾患対象の集団から得られた値に基づくことができる。適切な治療も、個体の層別化に基づいて決定することができる。
一部の実施形態では、心筋トロポニンの濃度は、1つ以上の他のマーカー、例えば、心筋虚血、心筋梗塞のマーカー、または脳卒中のマーカーと組み合わせて決定され、各マーカーの濃度が、診断、予後診断、または治療方法の決定において考慮される。当業者には明白であろうが、他の臨床的指標、例えば、EKG、症状、履歴なども通常考慮に入れられる。このようなマーカーの組合せ、およびトロポニンレベルと組み合わせた臨床的指標に基づいて、診断、予後診断、または治療に関する適切なアルゴリズムを構築することができる。
本発明の方法における心筋トロポニンとの組合せに有用なマーカーには、限定するものではないが、クレアチンキナーゼ(CK)およびその心筋分画CK心筋バンド(MB)、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)、α−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、ミオグロビン、グルタメートオキザロアセテートトランスアミナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼBB、非結合遊離脂肪酸、心臓脂肪酸結合タンパク質(H−FABP)、虚血改変アルブミン、ミオシン軽鎖1、ミオシン軽鎖2が含まれる。本発明の方法における心筋トロポニンとの組合せに有用な炎症およびプラーク不安定性のマーカーには、限定するものではないが、C反応性タンパク質、白血球数、可溶性CD40リガンド、ミエロペルオキシダーゼ、単球化学遊走タンパク質1、全血コリン、および妊娠関連血漿タンパク質Aが含まれる。炎症の他のマーカーも検出することができ、IL−8、IL−1β、IL6、IL10、TNF、およびIL−12p70、ならびに当業者に明白である他のサイトカインまたはマーカーの組合せを含む。
一部の実施形態では、心筋トロポニン、例えばcTnIは、例えば同一試料中で、または同一時点またはそれに近い時点で採取された同一個体からの試料中で、クレアチンキナーゼ(CK)およびその心筋フラクションCK心筋バンド(MB)、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)、α−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、ミオグロビン、グルタメートオキザロアセテートトランスアミナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼBB、非結合遊離脂肪酸、心臓脂肪酸結合タンパク質(H−FABP)、虚血改変アルブミン、ミオシン軽鎖1、ミオシン軽鎖2からなる群から選択されるマーカーとともに測定される。一部の実施形態では、心筋トロポニン、例えばcTnIは、例えば同一試料中で、または同一時点またはそれに近い時点で採取された同一個体からの試料中で、CK−MBとともに測定される。
一部の実施形態では、本明細書に記載された通り測定される、単独でのまたは他のマーカーまたは臨床徴候と組み合わせた心筋トロポニンは、再梗塞を決定するために用いられる。一部の実施形態では、本明細書に記載された通り測定される、単独でのまたは他のマーカーまたは臨床的徴候と組み合わせた心筋トロポニンは、梗塞の特徴、例えばサイズ、または梗塞からの持続時間を決定するために用いられる。後者の場合、血液中のタンパク質分解によって生じたトロポニンの断片を全トロポニンと比較することができ;断片の割合が高いほど、梗塞から時間が経っている。
2.AMI以外の病態
また、本発明の方法は、AMI以外の病態に有用な試料中の心筋トロポニン濃度に基づいた診断、予後診断、および治療方法も含む。
多くの病態が起こり得るまたは実際の心臓損傷を含み、本明細書に記載されたレベルで心筋トロポニンを測定することによってこのような損傷の早期検出および早期介入が可能になる。この方法により測定された心筋トロポニン濃度および本発明の組成物の知見は、このような病態の診断、予後診断、および治療の決定に有用である。病態には、経皮的冠動脈介入、心臓手術、心不全、急性リウマチ熱、アミロイド沈着症、心臓外傷(挫傷、切除、ペーシング、ファイヤリング、電気除細動、カテーテル挿入および心臓手術など)、再かん流傷害、癌療法による心臓毒性、うっ血性心不全、末期腎不全、II型糖原貯蔵症(ポンペ病)、心臓移植、輸血性ヘモシデローシスによる異常ヘモグロビン症、妊娠高血圧を含む高血圧、しばしば不整脈を伴う低血圧、甲状腺機能低下症、心筋炎、心膜炎、手術後の非心臓手術、肺動脈塞栓症、および敗血症が含まれる。
これらの実施形態では、トロポニンレベルは、非心臓疾患または疾患の他の症状または臨床的徴候に特異的なマーカーのレベルと同時に決定することができ;診断、予後診断、および/または治療方法を決定するために、他の症状または臨床的徴候のマーカーの濃度および/または情報が本明細書に記載された通りに決定された心筋トロポニン濃度の情報と組み合わされる。例えば、本発明の実施形態では、心筋トロポニン濃度の決定に加えて、上記に記述された1つ以上のポリペプチド、または疾患の診断、予後診断、または識別に有用な他のタンパク質マーカーの濃度決定を用いることができる。一部の実施形態では疾患に関するマーカー群が提供され、この群は本明細書に記載された心筋トロポニン濃度、および疾患に関する少なくとも1つの他のマーカーを含む。群は、1つ以上の心筋トロポニン、例えば全cTnIを含む2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、またはそれ以上の個々のマーカーを含むことができる。種々の臨床環境における臨床的な感度または特異性を最適化するために、単一マーカーまたはマーカーのサブセットの分析を当業者によって実施することができる。これらには、限定するものではないが、救急、緊急管理、危機管理、集中管理、モニタリングユニット、入院患者、外来患者、医師室、診療室、および保健スクリーニングの環境が含まれる。さらに当業者は、臨床的な感度または特異性を最適化するために、単一マーカーまたはマーカーのサブセットを、先に記載した環境の各々における診断的閾値の調整と組み合わせて用いることができる。
a.心臓毒性
本発明の組成物および方法は、治療に起因する心臓毒性、例えば、薬物治療の心臓毒性の決定およびモニタリングに特に有用である。したがって、例えば、本発明は、i)個体からの試料中の心筋トロポニン濃度を決定するかまたは一連の試料中の心筋トロポニン濃度を決定する工程であって、個体が治療を受けている間またはその後に少なくとも1つの試料を個体から採取し、前記試料中の心筋トロポニンの検出限界が約50、40、30、10、5、4、3、2または1pg/ml未満、例えば、約20pg/ml未満である心筋トロポニンアッセイで1つ以上の濃度を決定する工程と;ii)前記1つ以上の濃度に基づいて治療の心臓毒性の程度を評価する工程とによる、個体において心筋トロポニンを測定することによる治療の心臓毒性を評価する方法を提供する。一部の実施形態では、治療は薬物治療である。一部の実施形態では、治療は非薬物治療である。心筋トロポニン濃度の決定方法は、必要とされる感度を有する任意の好適な方法、例えば、本明細書に記載された方法を含む。一部の実施形態では、この方法では、トロポニンの単一分子、またはその複合体または断片の検出を含む、試料中の心筋トロポニン濃度の決定方法が利用される。
本明細書に記載された交差反応抗体、すなわち、ヒトおよびラット、イヌ、マウス、またはサルなどの別の種など、少なくとも2つの種に由来するトロポニンと反応する抗体を利用する心臓毒性の測定方法は特に有用である。このような抗体を、薬物毒性の動物試験に使用することができ、毒性が評価される個体は、例えば、ラット、マウス、イヌ、サルなどの哺乳動物、またはこのような試験に用いられる他の動物である。種々の種における毒性は、アッセイに用いられる抗体が同じ抗体である場合は直接比較することができ、したがってばらつきを減少させることができる。
心臓毒性をモニターするために、本発明の組成物および方法は、副作用に心臓毒性が含まれる特定の薬物と関連させて使用できることが認識されるであろう。したがって、本発明は、個体から得られた1つ以上の試料中の心筋トロポニン濃度を決定する工程であって、前記1つ以上の試料中の心筋トロポニンの検出限界が約50、40、30、10、5、4、3、2または1pg/ml未満、例えば、約20pg/ml未満である心筋トロポニンアッセイによって1つ以上の濃度を決定する工程と;ii)前記1つ以上の濃度に基づいて、薬物治療の心臓毒性の程度を評価する工程による、心臓毒性を引き起こすことが知られている薬物を受けている個体の心臓毒性をモニタリングする方法を提供する。一部の実施形態では、この方法は、iii)工程ii)の評価に基づいて薬物治療を継続するかどうかを判定する工程をさらに含む。副作用が心臓毒性を含む薬物は、当業界によく知られている。
C.事業方法
本発明は、生物における生物学的状態または病態の診断、予後診断、または治療方法の決定に使用することができる心筋トロポニンのマーカーを確立し、このようなマーカーに基づく診断を用意し、診断およびこのような診断を利用するサービスを商品化/マーケティングするためのシステムおよび方法(ビジネス方法を含む)に関する。生物学的状態は、本明細書に記載された急性心筋梗塞、または薬物毒性による心臓損傷、もしくは非AMI状態であり得る。
一実施形態では、本明細書におけるビジネス方法は、約50、20、10、5、または1pg/ml未満の検出レベルで1つ以上のマーカーの単一分子を検出することにより、生物学的試料中の1つ以上のマーカー濃度を測定することによって第一の集団から得られた生物学的な試料中の前記1つ以上のマーカーの濃度範囲を確立することを含む方法を用いて1つ以上の心筋トロポニンマーカーを確立する工程と;例えば、診断用製品において上記段階で確立された1つ以上のマーカーを商品化する工程とを含む。本明細書における診断用製品には、心筋トロポニンマーカーに特異的に結合する1つ以上の抗体、および蛍光部分の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに少なくとも約200個の光子を放出することができる蛍光部分を含むことができ、該レーザーは蛍光部分を含む直径が約5ミクロン以上のスポットに集束され、該レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。
一実施形態では、本明細書における事業方法は、約50、20、10、5または1pg/ml未満の検出レベルでマーカーの単一分子を検出することにより生物学的試料のマーカー濃度を測定することによって第一の集団から得られた生物学的試料中の前記心筋トロポニンマーカーの濃度範囲を確立する工程と;生物が、対象の状態または病態、例えば、AMI、薬物治療による心臓毒性、または非AMI病態を有するかどうかを判定するために診断サービスを提供することを含むシステムを用いて心筋トロポニンマーカーに関する正常値の範囲を確立する工程を含む。本明細書における診断サービスは、その事業下で認可されているCLIA承認試験室、またはその事業自体により提供することができる。本明細書における診断サービスは、医療提供者、医療保険会社、または患者に直接提供することができる。したがって、本明細書における事業方法により、例えば診断サービスまたは診断用製品から収益を上げることができる。
本明細書における事業方法はまた、例えば、医療提供者、医療保険会社、または患者などに診断サービスを提供することを考慮している。本明細書における事業は、サービス試験室に外注にだすか、またはサービス試験室(Clinical Laboratory Improvement Amendment(CLIA)または他の規制承認下で)を設立することによって診断サービスを提供することができる。次にこのようなサービス試験室は、心筋トロポニンマーカーが試料中にあるかどうかを確認するために本明細書に開示された方法を実施することができる。
VII.組成物
本発明は、心筋トロポニンの検出および定量化に有用な組成物を提供する。組成物は、本発明の方法による検出のために好適な標識により標識されている心筋トロポニンの結合相手、結合相手の1つまたは双方が、本発明の方法による検出のために好適な標識により標識されている結合相手対、一部の実施形態では、検出結合相手を有する、捕捉結合相手が結合している固体支持体を含む。
代表的な実施形態は、蛍光部分に結合された心筋トロポニンの結合相手を含む、心筋トロポニン検出用の組成物を含み、蛍光部分は該部分の励起波長で発光するレーザーによって刺激されたときに少なくとも約200個の光子を放出することができ、該レーザーは蛍光部分を含む直径が約5ミクロン以上のスポットに集束され、該レーザーによってスポットに向けられる全エネルギーは約3マイクロジュール以下である。一部の実施形態では、結合相手は、心筋トロポニンに対する抗体を含む。一部の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、交差反応抗体、例えば、少なくとも2つの種、例えば、ヒト、サル、イヌおよびマウスからなる群から選択される少なくとも2つの種に由来する心筋トロポニンと交差反応する抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ヒト、サル、イヌおよびマウスのすべてに由来する心筋トロポニンと交差反応する。一部の実施形態では、心筋トロポニンは、cTnIおよびcTnTからなる群から選択される。一部の実施形態では、心筋トロポニンは、cTnIである。一部の実施形態では、心筋トロポニンは、cTnTである。抗体は、トロポニン分子の特定領域に特異的であり、例えば、心筋トロポニンIのアミノ酸27〜41を含む領域に特異的であり得る。蛍光部分は、少なくとも1つの置換インドリウム環系を含む1つ以上の分子を含有することができ、該インドリウム環の3位炭素上の置換基は、化学的に反応性基または共役物質基を含有する。標識組成物としては、AlexaFluor488、532、647、700、または750からなる群から選択される1つ以上の色素分子を含む蛍光部分を挙げることができる。標識組成物としては、AlexaFluor488、532、700、または750からなる群から選択される1つ以上の色素分子を含む蛍光部分を挙げることができる。標識組成物としては、AlexaFluor488である1つ以上の色素分子を含む蛍光部分を挙げることができる。標識組成物としては、AlexaFluor555である1つ以上の色素分子を含む蛍光部分を挙げることができる。標識組成物としては、AlexaFluor610である1つ以上の色素分子を含む蛍光部分を挙げることができる。標識組成物としては、AlexaFluor647である1つ以上の色素分子を含む蛍光部分を挙げることができる。標識組成物としては、AlexaFluor680である1つ以上の色素分子を含む蛍光部分を挙げることができる。標識組成物としては、AlexaFluor700である1つ以上の色素分子を含む蛍光部分を挙げることができる。標識組成物としては、AlexaFluor750eである1つ以上の色素分子を含む蛍光部分を挙げることができる。
一部の実施形態では、本発明は、心筋トロポニン濃度の決定に関する一セットの標準品を含む組成物を提供し、標準品のうちの少なくとも1つは、約20、15、10、5、4、3、2、または1pg/ml未満の心筋トロポニン濃度である。一部の実施形態では、本発明は、心筋トロポニン濃度の決定に関して一セットの標準品を含む組成物を提供し、標準品のうちの少なくとも1つは、約20pg/ml未満の心筋トロポニン濃度である。一部の実施形態では、本発明は、心筋トロポニン濃度の決定に関して一連の標準品を含む組成物を提供し、標準品のうちの少なくとも1つは、約10pg/ml未満の心筋トロポニン濃度である。一部の実施形態では、本発明は、心筋トロポニン濃度の決定に関する一セットの標準品を含む組成物を提供し、標準品のうちの少なくとも1つは、約5pg/ml未満の心筋トロポニン濃度である。一部の実施形態では、本発明は、心筋トロポニン濃度の決定に関する一セットの標準品を含む組成物を提供し、標準品のうちの少なくとも1つは、約1pg/ml未満の心筋トロポニン濃度である。
本発明の他の組成物は、本明細書に記載される通りである。
VIII.キット
本発明はキットをさらに提供する。本発明のキットは、好適な包装で本明細書に記載された心筋トロポニンの高感度検出に有用な1つ以上の組成物を含む。一部の実施形態では、本発明のキットは、標識、例えば、心筋トロポニンに特異的である抗体などの結合相手を提供し、結合相手は蛍光部分に結合されている。一部の実施形態では、本発明のキットは、結合相手対、例えば、心筋トロポニンに特異的である抗体対を提供し、結合相手の少なくとも1つは、本明細書に記載された心筋トロポニンに対する標識である。一部の実施形態では、結合相手、例えば抗体は、別々の容器内に提供される。一部の実施形態では、結合相手、例えば抗体は同じ容器内に提供される。一部の実施形態では、結合相手の1つ、例えば抗体は、固体支持体、例えば、マイクロタイタープレートまたは常磁性ビーズ上に固定される。これらの一部の実施形態では、他の結合相手、例えば抗体は、本明細書に記載された蛍光部分により標識されている。
結合相手、例えば、抗体、固体支持体、およびキットの構成要素用蛍光標識は、本明細書に記載された構成要素などの任意の好適な構成要素であり得る。
さらにキットは、本発明の方法に有用な試薬、例えば、結合反応に用いられる緩衝剤および他の試薬、洗浄剤、アッセイを実行する機器を事前調整するための緩衝剤または他の試薬、機器を介して試料を移動させるための溶出用緩衝剤または他の試薬を含むことができる。
キットは、1つ以上の標準品、例えば、高度に精製された標準品、例えば、組換えヒトcTnIまたはヒトcTnT、もしくはその種々の断片、複合体などの標準品など、本発明のアッセイに使用する標準品を含むことができる。キットは、使用説明書をさらに含むことができる。
実施例
以下の実施例は、残り部分の開示を限定する意図はなく、例示目的で提供される。
別に特定しない限り、実施例中の試料処理は、以下のパラメータを用いて、本明細書に記載された単一分子検出器(SMD)において分析された:レーザー:おおよそ2ミクロンのスポットサイズに集束される(本明細書に記載された0.004pLのインタロゲーション空間)波長639nmの連続波ガリウム亜ヒ酸ダイオードレーザー(Blue Sky Research、ミルピタス、カリフォルニア州)。100ミクロン平方IDおよび300ミクロン平方ODの溶融石英キャピラリーを通過させて流速=5マイクロリッター/分;レンズの非共焦点配置(例えば図1Aを参照);0.8口径数の焦点レンズ(Olympus);シリコンアバランシェフォトダイオード検出器(Perkin Elmer、ウォルサム、マサチューセッツ州)。
バイオマーカーのサンドイッチアッセイ:心筋トロポニンI(cTnI)
アッセイ:このアッセイの目的は、ヒト血清中の心筋トロポニンI(cTNI)の存在を検出することであった。アッセイ様式は、マウスモノクローナル捕捉抗体およびヤギポリクローナル検出抗体に基づいた二工程(two-step)サンドイッチイムノアッセイであった。10マイクロリットルの試料を要した。アッセイの作用範囲は0〜900pg/mlであり、1〜3pg/mlの検出が典型的な分析限界である。アッセイの完了には約4時間のベンチ時間(bench time)を要した。
材料:下記の手順において、以下の材料を用いた:アッセイプレート:Nunc Maxisorp、製品464718、384ウェル、透明、モノクローナル抗体BiosPacific A34440228P、ロット番号A0316で受動コーティング(0.05Mの炭酸ナトリウム中5μg/ml、pH9.6、室温で一晩);PBS中の5%スクロース、1%BSAによりブロック、4℃で保存。標準曲線には、ヒト心筋トロポニン(BiosPacific カタログ番号J34000352)を用いた。標準濃度用の希釈液は、内在性cTNIを免疫除去したヒト血清であり、アリコートし、−20℃で保存した。標準品の希釈は、96ウェル、円錐形、ポリプロピレン(Nunc製品番号249944)内で行った。以下の緩衝液および溶液を用いた:(a)アッセイ用緩衝液:1%のBSAおよび0.1%のTriton X−100を含むBBS;(b)2mg/mlのマウスIgG(Equitech Bio);2mg/mlのヤギIgG(Equitech Bio);および2mg/mlのMAK33poly、Roche#11939661を含有するアッセイ用緩衝液中の受動ブロッキング溶液(passive blocking solution);(c)検出用抗体(Ab);ヤギポリクローナル抗体をペプチド3に対してアフィニティー精製し(BiosPacific G129C)、これを蛍光色素AlexaFluor647で標識し、4℃で保存;検出用抗体希釈液:50%のアッセイ用緩衝液、50%の受動ブロッキング溶液;洗浄用緩衝液:ホウ酸緩衝生理食塩水Triton緩衝液(BBST)(1.0Mのホウ酸塩、15.0Mの塩化ナトリウム、10%のTriton X−100、pH8.3);溶出用緩衝液:4Mの尿素、0.02%のTriton X−100、および0.001%のBSAを含むBBS。
AlexaFluor647標識抗体の調製:まず、400μLのカップリング用緩衝液(0.1MのNaHCO3)中に100μgの検出用抗体のG−129−Cを溶解することによって、検出用抗体のG−129−CをAlexaFluor647に共役させた。次いで、抗体溶液をYM−30フィルター内に移し、溶液およびフィルターを遠心分離に供することによって抗体溶液を50μlに濃縮した。次いで、400μlのカップリング用緩衝液を加えることにより、YM−30フィルターおよび抗体を3回洗浄した。50 lをフィルターに加え、フィルターを逆位にし、5,000×gで1分間遠心分離することにより、抗体を回収した。得られた抗体溶液は、1〜2μg/μlであった。20μlのDMSOをAlexaFluor647の1つのバイアルに加えることにより、AlexaFluor647NHSエステルを再構成し、この溶液を最大1ヶ月間−20℃で保存した。3μlのAlexaFluor647ストック溶液を抗体溶液に加え、次いでこれを混合し、暗所で1時間インキュベートした。1時間後、抗体AlexaFluor647溶液に1MのTris 7.5μlを加え、混合した。溶液をYM−30により限外濾過して低分子量成分を除去した。AlexaFluor647に共役した抗体を含有する濃縮水の容量をPBSを加えることによって200〜400 lに調整した。3μlの10%NaN3を溶液に加え、得られた溶液をUltrafree 0.22遠心分離ユニットに移し、12,000×gで2分間回転させた。共役した抗体を含有するろ液を回収し、アッセイに用いた。
手順:cTnI標準品および試料の調製および分析:
標準曲線は以下の通りに作成した:cTnIのストックを標準希釈液へと連続希釈することにより、あるいは1.2pg/ml〜4.3μg/mlのcTnI濃度の範囲に達するように、作用標準品を調製した(0〜900pg/ml)。
10μlの受動ブロッキング溶液および10μlの標準品または試料を各ウェルに加えた。標準品は四つずつ(in quadruplicate)実施した。プレートをAxyseal密封フィルムで密封し、3000RPMで1分間遠心分離し、振とうさせながら25℃で2時間インキュベートした。プレートを5回洗浄し、ローターが3000RPMに達するまで逆にした位置でペーパータオル上で遠心分離した。検出抗体の1nM作用希釈液を調製し、20μlの検出抗体を各ウェルに加えた。プレートを密封し、遠心分離し、振とうさせながらアッセイを25℃で1時間インキュベートした。1ウェル当たり30μlの溶出用緩衝液を加え、プレートを密封し、アッセイを25℃で1/2時間インキュベートした。プレートを分析前に4℃で最大48時間保存するか、試料を直ちに分析した。
分析では、1ウェル当たり20μlを40μl/分で捕捉し、5μlを5μl/分で分析した。データは4シグマの閾値に基づいて分析した。手を加えていないシグナルと標準品濃度とをプロットした。低濃度範囲に対して線形適合を行い、完全標準曲線に対して非線形適合を行った。検出限界(LoD)は、LOD=(3×ゼロ標準偏差)/線形適合勾配として算出した。試料の濃度を試料シグナルに適した等式(線形または非線形)から決定した。
アリコートをアナライザーにポンプ注入した。レーザー励起後に画定された空間においてたった1つの蛍光標識の発光が検出されるようにインタロゲーション体積を設定することによって、キャピラリーフローの間に個々に標識した抗体を測定した。各シグナルはデジタル事象を表しているが、この構成によって極めて高い分析感度が可能になる。蛍光シグナルの合計は、個々のデジタル事象の合計として判定される。計数された各分子は、数百から数千のDMC事象/試料を有する陽性データポイントである。本発明のcTnIアッセイの検出限界は平均+3SD法によって決定した。
結果:アッセイプロトコルを用いて四つずつ測定された典型的なcTnI標準曲線に関するデータを表3に示す。
アナライザーシステムの感度は15回の実施で試験され、表4に示されるように、サブ(sub)フェムトモル/l(fM)のレベルのキャリブレーターを検出することが決まって見出された。精度は、4pg/mlおよび12pg/mlのcTnIで10%であった。
cTnIの濃度範囲に関する線形化標準曲線は、図5に示されている。
検出の分析限界(LoD)は、15の連続アッセイにより決定された。LoDは、0標準品+3SD(n=4)アッセイ内測定値の平均である。平均LoDは、1.7pg/ml(範囲0.4〜2.8pg/ml)であった。
試料の回収は、cTnIを免疫除去し、かつ、既知量のcTnIでスパイクした血清の試料を分析することによって判定した。表5は、3日間にわたって分析したシステムによる試料回収に関するデータを示す。
アッセイの線形性は、cTnIでスパイクし、かつ、標準品希釈液で希釈したヒトプール血清において判定した。表6の結果は、希釈および対応する希釈液について予想されるシグナルの%を示している。
これらのデータは、本発明のアナライザーシステムが、サブ(sub)-フェムトモルの濃度のcTnIについて高感度のレーザー誘導イムノアッセイの実施を可能にすることを示している。
TnIのサンドイッチビーズベースアッセイ
上記のアッセイでは、同じマイクロタイタープレート形式が用いられ、標的分子を固定するのにプラスチック表面が用いられている。単一粒子アナライザーシステムは、未結合物質からの結合物質の分離を達成するためにマイクロ粒子またはビーズを用いた溶液中で実施されるアッセイにも適合する。
材料:MyOne Streptavidin C1マイクロ粒子(MPs)は、Dynal(650.01〜03、10mg/mlのストック)から得る。アッセイに使用される緩衝液には、10×ホウ酸緩衝生理食塩水Triton緩衝液(BBST)(1.0Mのホウ酸、15.0Mの塩化ナトリウム、10%のTriton X−100、pH8.3);アッセイ用緩衝液(0.1MのTris(pH8.1)中の2mg/mlの正常ヤギIgG、2mg/mlの正常マウスIgG、および0.2mg/mlのMAB−33−IgG−ポリマー、0.025MのEDTA、0.15MのNaCl、0.1%のBSA、0.1%のTriton X−100、および0.1%のNaN3、4℃で保存);および溶出用緩衝液(4Mの尿素、0.02%のTriton X−100、および0.001%のBSAを含むBBS、2〜8℃で保存)が含まれる。サンドイッチビーズベースのアッセイに使用される抗体には、Bio−Ab(IgG1個当たり1〜2個のビオチンを含むA34650228P(BiosPacific))およびDet−Ab(A647に結合したG−129−C(BiosPacific)、IgG1個当たり、2〜4個の蛍光体)。標準品は組換えヒト心筋トロポニンI(BiosPacific、カタログ番号J34120352)である。キャリブレーター希釈液は、30mg/mlのTBS wEDTA中のBSAである。
マイクロ粒子コーティング:エッペンドルフ管内に100μlのMPsストックを入れる。磁石を適用することで100μlのBBST洗浄用緩衝液でMPsを3回洗浄し、上澄み液を除去し、磁石を除去し、洗浄用緩衝液中に再懸濁する。洗浄後、MPsを100μlのアッセイ用緩衝液中に再懸濁し、15μgのBio−Abを加える。次いで、混合物を継続的に混合しながら、室温で1時間インキュベートする。上記の通り1mlの洗浄用緩衝液でMPsを5回洗浄する。洗浄後、MPsを15mlのアッセイ用緩衝液中に再懸濁する(または4℃の保存には100μl)。
標準品および試料の調製:標準品をキャリブレーター希釈液で希釈し、適切な標準曲線を作成する(通常、200pg/mlから0.1pg/ml)。凍結した血清および血漿の試料を13Krpmにおいて室温で10分間遠心分離する必要がある。清澄な血清/血漿をなり得るぺレットまたは浮遊物とならないように慎重に取り出し、新鮮な管に入れる。各標準品または試料50μlを適当なウェル内にピペットで入れる。
捕捉標的:150μlのMPs(アッセイ用緩衝液+400mMのNaClの15ml中に再懸濁後)を各ウェルに加える。混合物を、JitterBug,5上において室温で1時間インキュベートする。
洗浄および検出:プレートを磁石上に置き、すべてのMPsが磁石により捕捉されていることを確認後、上澄み液を除去する。プレートを磁石から取り外した後、250μlの洗浄用緩衝液を加える。次いでプレートを磁石上に置き、すべてのMPsが磁石により捕捉されていることを確認後、上澄み液を除去する。1ウェル当たり20μlのDet−Abを加える(500ng/mlへDet−Abをアッセイ用緩衝液+400mMのNaCl中で希釈))。混合物を、JitterBug,5上において室温で30分間インキュベートする。
洗浄および溶出:プレートを磁石上に置き、洗浄用緩衝液で3回洗浄する。すべてのMPsが磁石により捕捉されていることを確認後、上澄み液を除去し、250μlの洗浄用緩衝液を加える。洗浄後、試料を新しい96ウェルプレート内に移す。次いで新しいプレートを磁石上に置き、すべてのMPsが磁石により捕捉されていることを確認後、上澄み液を除去する。磁石からプレートを取り外した後、250μlの洗浄用緩衝液を加える。次いでプレートを磁石上に置き、すべてのMPsが磁石により捕捉されていることを確認後、上澄み液を除去する。次いで、20μlの溶出用緩衝液を加え、混合物を、JitterBug、5上において室温で30分間インキュベートする。
MPsをろ過で取り除き、384ウェルプレートに移す:標準品および試料を、384ウェルアッセイプレートの上部に置いた384ウェルフィルタープレート内に移す。次いで、プレートをプレートローターを用いて3000rpmで室温で遠心分離する。フィルタープレートを取り外し、好適なキャリブレーターを加える。プレートを被覆して、SMDで実施する準備をする。
SMD:アリコートをアナライザー内にポンプ注入する。レーザー励起後、画定された空間にたった1つの蛍光分子の発光が検出されるようにインタロゲーション体積を設定することによって、キャピラリーフローの間に個々に標識した抗体を測定する。各シグナルはデジタル事象を表しているが、この構成によって極めて高い分析感度が可能になる。蛍光シグナルの合計は、個々のデジタル事象の合計として判定される。計数された各分子は、数百から数千のDMC事象/試料を有する陽性データポイントである。本発明のcTnIアッセイの検出限界は、平均+3SD法によって決定した。
正常非疾患対象集団におけるcTnIの濃度範囲
明らかに健康な対象(非疾患)88人から得た血清試料を用いて、ヒト血清中のcTnI濃度の参照範囲または正常範囲を確立した。実施例1に記載されたサンドイッチアッセイを行い、本発明の単一粒子アナライザーシステムを用いて上記のシグナルまたは事象の数を計数した。血清トロポニンIの濃度は、アナライザーによって検出されたシグナルを上記の標準曲線と相関させることによって決定した。アッセイはすべて四つずつ実施した。
現在の欧州米国心臓病学学会(ESC/ACC)による推奨に従い、トロポニンアッセイは、ACS患者と虚血性心疾患に罹っていない患者との間を高い信頼性で識別するために10%未満のアッセイ不正確度(assay imprecision)(CV)により、かつ、心臓有害事象の危険度を層別化して、正常範囲の99パーセンタイルを正確に定量化しなければならない。TnIの生物学的閾値(カットオフ濃度)は7pg/mlのTnI濃度であることがアッセイによって示され、これは対応する10%のCVで99パーセンタイルにおいて確立される(図5)。10%CVレベルにおいて、精度プロファイルは4pg/mlおよび12pg/mlのTnI濃度を指している。
さらに、アッセイは、米国国立標準技術研究所により提供されたトロポニンI標準品測定値と十分に相関している(図6)。
本発明のアッセイは、ESC/ACCの要件を満たすのに十分に高感度かつ正確であり、Koerbinら(Ann Clin Biochem、42:19〜23頁(2005))により記載されたアッセイと比較したときに心筋トロポニンIの最も感度が高いアッセイである。本発明のアッセイは、生物学的閾値範囲が111pg/ml〜333pg/mlのcTnIであると決定されている現在利用できるアッセイよりも10〜20倍高い感度を有する。
急性心筋梗塞(AMI)を患っている患者の血液循環内へのTnIの早期放出の検出
試験1:救急部(ED)において胸部痛を示した18人の患者から47個の試料を連続的に得た。これらの患者はすべて非ST上昇ECGを有し、AMIと診断された。18人の患者すべてから得た当初試料中のcTnIの濃度は、救急室への入る時に市販のアッセイによって<350pg/ml(10%のカットポイント)と決定され、12人は<100pg/ml(99%)パーセンタイルであった。これらの試料は後に同じ市販アッセイを用いて試験され、cTnIについて試験陽性と判定された。実施例1および実施例3に記載される本発明のアッセイに従ってTnIについて同じ血清試料をアッセイし、その結果を市販アッセイを用いて得られた結果と比較した。
患者が胸部痛を示した時点で血液を初めて採取し(試料1)、引き続き4〜8時間の間隔で(12時間目で試料2;16時間目で試料3;24時間目で試料4;30時間目で試料5;36時間目で試料6;42時間目で試料7;および48時間目で試料8)採取した。本発明の方法および現行の市販の方法によって血清を分析し、得られた結果を図7に示す。本発明のアナライザーは患者が胸部痛を示した時点(試料1)でTnIを検出したが、市販のアッセイはずっと後の時点(36時間目での試料6)で初めてcTnIを検出した。試料3におけるTnIの濃度は、本発明のアナライザーを用いて確立した生物学的閾値レベル(7pg/ml、図5を参照)を超えており、試料3がTnIについて陽性であり、心臓事象の発生を示唆していることを示した。市販アッセイの生物学的閾値は、111pg/mlと333pg/mlとの間にある。したがって試料3は、陽性心臓事象を示すとは考えられないことになろう。
本発明の方法および組成物は、患者から採取された最初の試料についての結果によって証明されるように、心筋トロポニンレベルに基づいた非常により早い診断および可能な介入を可能にする。最初の市販アッセイのcTnI値が100ng/mlと350ng/mlの間であった3つのケースでは、本発明の分析方法によってはすべてがcTnI値について陽性であった(すなわち、7pg/ml以上のcTnI)。最初の市販アッセイのcTnI値が100pg/ml未満であった12のケースでは、5つのケースが本発明のアッセイによって心臓事象について陽性と判定された(すなわち、7pg/ml以上のcTnI)。本発明のアッセイの使用を予測すると、入院試料が試験された際に現行の市販アッセイよりAMIケースが53%多く検出されたであろう。
試験2:市販アッセイによる試験で陰性であった50の追加血清試料を本発明のアナライザーおよびアッセイを用いて試験した。その結果が図8に示されている。50の試料のうち、36は99%以内にあり、本発明のアッセイによって確立された正常範囲内であると決定された。しかし、市販の「正常」内または非疾患範囲にあると決定された残りの14の試料を試験すると、本発明により確立された生物学的閾値以上であった。
したがって、本発明の高感度cTnIアッセイは、市販の技術によればcTnIの血清レベルが閾値を下回る場合に患者における心筋損傷の検出を可能にする。本発明の高感度で正確なcTnIアッセイの使用により、AMIの検出を既存のcTnIアッセイによるよりも早く行うことが可能になり、それによって結果を改善するための適切な診断および早期の医療介入の機会が提供される。
一部の実施形態では、個体が医療従事者に心臓損傷を伴い得る病態を示す1つ以上の症状を示した時点またはそれに近い時点で少なくとも1つの試料を採取する。個体が医療従事者のところに来得る環境には、限定するものではないが、救急、緊急管理、臨床管理、集中管理、モニタリングユニット、入院、外来、医師室、診療室、救急車などの緊急時対応の環境、および健康スクリーニング環境が含まれる。一部の実施形態では、1つ以上の試料w個体から採取し、局所的、すなわち、試料採取された環境またはその近くの環境で心筋トロポニンについてアッセイする。例えば、病院に来た個体は、病院内で心筋トロポニンについてアッセイする1つ以上の試料を採取してもらうことができる。例えば、病院に来た個体は、病院内で心筋トロポニンに関してアッセイする1つ以上の試料を採取してもらうことができる。一部の実施形態では、1つ以上の試料を個体から採取し、CLIA試験室で心筋トロポニンについてアッセイされる。一部の実施形態では、個体は、急性冠症候群に合致する1つ以上の症状を示す。一部の実施形態では、個体は、AMIに合致する1つ以上の症状を示す。このような症状には、限定するものではないが、胸部痛、胸部圧、腕部痛、異常なEKG、異常な酵素レベル、および息切れが含まれる。
本発明の方法および組成物は、患者から採取された最初の試料についての結果によって証明されるように、心筋トロポニンレベルに基づいた非常により早い診断および可能な介入を可能にする。最初の市販アッセイのcTnI値が100ng/mlと350ng/mlの間であった3つのケースでは、本発明の分析方法によってはすべてがcTnI値について陽性であった(すなわち、7pg/ml以上のcTnI)。最初の市販アッセイのcTnI値が100pg/ml未満であった12のケースでは、5つのケースが本発明のアッセイによって心血管事象について陽性と判定された(すなわち、7pg/ml以上のcTnI)。本発明のアッセイの使用を予測すると、入院試料が試験された際に現行の市販アッセイよりAMIケースが53%多く検出されたであろう。