JP2004020369A - 免疫反応測定キット及びそれを用いた免疫反応測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することができる免疫反応測定キット及びそれを用いた免疫反応測定方法を提供する。
【解決手段】液体試料が展開される展開部、及び被測定物質に対する特異結合物質が固定化された固定化部を備えた測定装置と、特異結合物質に標識物質を結合させたトレーサーを含む試薬と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む試薬とを備え、液体試料、トレーサー含有試薬及び酸含有試薬を混合して得られた混合液のpH及び混合液が固定化部に到達したときの混合液のpHが酸性に設定された、液体試料中の被測定物質を測定する免疫反応測定キット。
【選択図】 図1
【解決手段】液体試料が展開される展開部、及び被測定物質に対する特異結合物質が固定化された固定化部を備えた測定装置と、特異結合物質に標識物質を結合させたトレーサーを含む試薬と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む試薬とを備え、液体試料、トレーサー含有試薬及び酸含有試薬を混合して得られた混合液のpH及び混合液が固定化部に到達したときの混合液のpHが酸性に設定された、液体試料中の被測定物質を測定する免疫反応測定キット。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を定性あるいは定量測定することができる免疫反応測定キット及びそれを用いた免疫反応測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療分野では、様々な疾患の診断および病状の経過を調べるために、ヒトの体液中に存在する各疾患に特徴的な物質の含有量を調べることが広く利用されている。
【0003】
これらの物質の含有量測定には、特異性の高い抗原抗体反応を利用した免疫反応測定方法が非常に有用であり、蛋白質、ホルモン、薬物、ウィルス、細菌などの測定に広く用いられている。現在では、免疫反応測定方法にも様々な原理を応用したものが開発され、利用されている。
【0004】
それらの中でも、被測定物質とそれに対して特異的に結合する特異結合物質との複合体が固相に結合する不均一免疫反応測定方法はよく利用されるものである。不均一免疫反応測定方法の代表的なものには、免疫クロマトグラフィー法、ELISA法などの方法が挙げられる。これらの方法において、サンドイッチ型の免疫反応測定方法は代表的なものである。
【0005】
サンドイッチ型の免疫反応測定方法では、予め固相に固定化しておいた、被測定物質に対する特異結合物質と、特異結合物質に対して検出が可能な標識を施したトレーサーを用意し、固相上の特異結合物質が固定化された部分に、被測定物質を含み得る液体試料とトレーサーとを展開することにより、被測定物質を介して、固相に固定化した特異結合物質とトレーサーとが被測定物質をサンドイッチするように結合した複合体を生じさせる。この複合体は、被測定物質が存在しなければ生じず、また、その量は被測定物質の量に依存するため、複合体を構成しなかったトレーサー及び被測定物質を、固相上の特異結合物質が固定化された部分より、洗浄などで除いた後、固相上の特異結合物質が固定化された部分に存在するトレーサー量を検出することにより、液体試料中における被測定物質の有無を判定したり、または、固相上の特異結合物質が固定化された部分に存在するトレーサー量を測定することによって、液体試料中における被測定物質の量を定量することができる。
【0006】
サンドイッチ型の免疫反応測定方法においては、大きく分けて以下の2つの方法がある。すなわち、固相に固定化した特異結合物質に、被測定物質とトレーサーとを順次結合させ、各結合反応時に生じた未結合の物質を洗浄により除く方法、及び被測定物質とトレーサーとを予め混合して結合させておき、これを固相に固定化した特異結合物質に結合させ、未結合の被測定物質を洗浄により除く方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
後者のサンドイッチ型の免疫反応測定方法では、被測定物質とトレーサーとを混合して結合させる反応は、均一系の免疫反応であるため、被測定物質及びトレーサーのどちらか一方が多価抗体で他方が2価以上の抗原である場合には、抗原と抗体とによる凝集複合体が形成され、地帯現象の影響を受ける。地帯現象とは、抗原と抗体とが最大の凝集複合体を形成する当量域よりも、いずれかが過剰に存在する場合に、凝集複合体が生じ難くなる現象のことである。多価抗体と2価以上の抗原との間の結合反応は、Heidelbergerらの格子説が有名であり、Fundamental Immunology,William E.Paul編、(1984)(邦訳 基礎免疫学、多田富雄監訳、第714−716頁(1987))にその詳細な記載がある。
【0008】
実際の免疫反応測定においては、抗体を用いて抗原濃度を測定する場合が多く、また、測定値についても抗原濃度が低値の場合よりも高値の場合に重要な意味を持つ場合が多いため、抗原過剰による地帯現象が問題となる場合が多い。地帯以外の領域では、トレーサーである標識された抗体と被測定物質である抗原とが交互に結合した複合体からなる分子鎖が生じ、その量や大きさは、抗体濃度を一定とすると、抗原濃度に依存して増加するが、抗原過剰域では抗原が抗体に比べて過剰に存在するので、結合部位が抗原により飽和された状態の抗体量が増加するため、先に述べたような分子鎖が生じ難くなる。そのため、固層上の特異結合物質が固定化された部分で捕捉される抗原とトレーサーとの複合体量、すなわちトレーサー量が減少するので、測定結果が、抗原が低濃度の場合と区別がつき難くなり、抗原濃度に依存した正しい定量や判定が行えなくなる。従来これを回避するために、抗原量が過剰とならない濃度域でしか測定を行うことができず、測定濃度範囲が制限されるという問題点があった。
【0009】
そこで本発明は上記従来の問題点に鑑み、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することができる免疫反応測定キット及びそれを用いた免疫反応測定方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部を備えた測定装置と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーを含むトレーサー含有試薬と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬とを備え、前記液体試料、前記トレーサー含有試薬及び前記酸含有試薬を混合することにより得られた混合液のpH、及び前記混合液を前記測定装置の前記展開部に展開し、前記混合液が前記固定化部に到達したときの前記混合液のpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置された測定装置と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬とを備え、前記液体試料及び前記酸含有試薬を混合することにより得られた混合液が前記展開部に展開され、前記展開部に展開された前記混合液が前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されていてもよい。
【0012】
また、本発明の免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置され、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達するまでの領域に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を含み、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されていてもよい。
【0013】
また、本発明の免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部を備えた測定装置を提供する工程A、前記液体試料と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーと、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬との混合液を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記混合液のpH、及び前記混合液を前記測定装置の前記展開部に展開し、前記混合液が前記固定化部に到達したときの前記混合液のpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置された測定装置を提供する工程A、前記液体試料と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬との混合液を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記展開部に展開された前記混合液が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されていてもよい。
【0015】
また、本発明の免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置され、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達するまでの領域に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を含む領域を備えた測定装置を提供する工程A、前記液体試料を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されていてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、抗原抗体反応時に、反応系にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を付加し、反応系のpHを酸性に保つことにより、抗原過剰領域で生じる地帯現象が緩和できることを見出した。
【0017】
本発明の一実施の形態における免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部を備えた測定装置と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーを含むトレーサー含有試薬と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬とを備え、前記液体試料、前記トレーサー含有試薬及び前記酸含有試薬を混合することにより得られた混合液のpH、及び前記混合液を前記測定装置の前記展開部に展開し、前記混合液が前記固定化部に到達したときの前記混合液のpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一実施の形態における免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部を備えた測定装置を提供する工程A、前記液体試料と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーと、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬との混合液を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記混合液のpH、及び前記混合液を前記測定装置の前記展開部に展開し、前記混合液が前記固定化部に到達したときの前記混合液のpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0019】
以上のようにすると、混合液中において、液体試料中に含まれる被測定物質とトレーサー中の特異結合物質とが抗原抗体反応により複合体を形成する際、及び固定化部に混合液が到達し、固定化部において、固定化部に固定化された特異結合物質と上記複合体とが被測定物質を介した抗原抗体反応により結合する際に、反応系にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩が存在し、反応系のpHが酸性に保たれるため、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することができる。
【0020】
また、本発明の他の実施の形態における免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置された測定装置と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬とを備え、前記液体試料及び前記酸含有試薬を混合することにより得られた混合液が前記展開部に展開され、前記混合液が前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記展開部に展開された前記混合液が、前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の他の実施の形態における免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置された測定装置を提供する工程A、前記液体試料と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬との混合液を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記展開部に展開された前記混合液が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0022】
以上のようにすると、混合液がトレーサー保持部に到達し、液体試料中に含まれる被測定物質とトレーサー中の特異結合物質とが抗原抗体反応により複合体を形成する際、及び固定化部に混合液が到達し、固定化部において、固定化部に固定化された特異結合物質と上記複合体とが被測定物質を介した抗原抗体反応により結合する際に、反応系にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩が存在し、反応系のpHが酸性に保たれるため、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することができる。
【0023】
また、本発明のさらに他の実施の形態における免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置され、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達するまでの領域に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を含み、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0024】
また、本発明のさらに他の実施の形態における免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置され、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達するまでの領域に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を含む領域を備えた測定装置を提供する工程A、前記液体試料を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0025】
以上のようにすると、液体試料がトレーサー保持部に到達し、液体試料中に含まれる被測定物質とトレーサー中の特異結合物質とが抗原抗体反応により複合体を形成する際、及び固定化部に液体試料が到達し、固定化部において、固定化部に固定化された特異結合物質と上記複合体とが被測定物質を介した抗原抗体反応により結合する際に、反応系にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩が存在し、反応系のpHが酸性に保たれるため、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することができる。
【0026】
ここで、本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法では、トリカルボン酸とトリカルボン酸の塩の両方を用いてもよい。
【0027】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法における展開部が、液体試料が毛細管現象によって流れることが可能な網目構造を持つ材料により構成されていることが好ましい。このような材料は、多孔性あるいは繊維状の構造をとり、親水性を有するセルロース、ニトロセルロース、ガラス繊維、プラスチック繊維等により構成することができ、例えば、ろ紙、ガラス繊維ろ紙、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン等が挙げられる。この中でも、蛋白質吸着力が強いという点でニトロセルロースメンブレンが好ましい。このようにすると、ポンプなどによる外力を加えずに、展開部内で液体試料を容易に展開することが可能となる。
【0028】
さらに、展開部を構成する材料の網目構造が、展開部表面に対して水平方向に均一な流れが生じるように構成されていることがより好ましく、このような材料の例としては、ミリポア社製のHi−Flow Plusメンブレンシリ−ズ(登録商標)、ワットマン社製のImmunoporeメンブレンシリーズ(登録商標)等が挙げられる。このようにすると、より早い流速を得ることができ、測定時間の短縮が可能となり、また、均質な流れを得られるため、展開部のトレーサー保持部及び固定化部全域でそれぞれ均質な抗原抗体反応を生じさせることが可能となり、結果として固定化部で捕捉されるトレーサー量の固定化部位中でのバラツキが少なくなる。このため、抗原抗体反応検出時に選択した固定化部位中の位置による測定結果のバラツキを生じ難くすることが可能となる。
【0029】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法において、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成及び前記複合体と固定化された特異結合物質との結合反応時のpHを酸性に保つために、試薬中または展開部上に緩衝剤が付与されていてもよい。緩衝剤としては、当該分野で公知のものを用いることができ、例えば、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどからなるリン酸系の緩衝剤、酢酸ナトリウム、カコジル酸ナトリウム、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸、コハク酸などがあげられる。この場合、含まれるべき緩衝剤の量は、用いる緩衝剤の種類、被測定物質を含む液体試料(検体)の量などに応じて、本発明の効果が得られるように調整すればよい。また、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩によって、主たる緩衝能が付与されるようにしてもよい。
【0030】
また、本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法において、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成及び、前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHが6に設定されていることが好ましい。上記pHでは、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩による抗原過剰領域で生じる地帯現象の緩和効果が高く、また、トレーサーの自己凝集などが原因となる非特異的な反応が少ない。
【0031】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法で用いられるトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩としては、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸及びこれらの塩が挙げられる。これらは、無水クエン酸、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸三カリウム一水和物、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸三リチウム四水和物、DL−イソクエン酸三ナトリウム、trans−アコニット酸、cis−アコニット酸無水物などの形態で市販されており、これらを単独または組み合わせて使用することができる。これらの中でも、比較的安価で、室温保存が可能で、安定性が高いものを入手することができ、使い易いという観点から、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩が、クエン酸またはクエン酸の塩であることが好ましい。
【0032】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法で用いられる標識物質としては、着色粒子、蛍光物質、燐光物質、発光物質、酸化還元物質、酵素または小胞体等が挙げられる。着色粒子としては、金コロイド、銀コロイド、セレニウムコロイド、着色ラテックス、シアニン及びアゾ等、蛍光物質としては、ピレン等の芳香族化合物、ダンシル等の芳香族化合物に官能基が置換してあるもの、フルオレセイン、ローダミン及びクマリン等、燐光物質としてはベンゾフェノン等、発光物質としては、ルシフェリンとATPとの発光反応のような形態により光を発するもの、酸化還元物質としては、グルコースとグルコースオキシダーゼとの酸化還元反応のような形態により電流を生じるもの、小胞体としてはミセル及びリポソーム等が挙げられる。この中で、着色粒子であることが好ましく、金コロイド粒子であることが特に好ましい。このようにすると、トレーサーの視認性の向上をはかることができる。
【0033】
また、本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法における測定装置及び試薬には、その用途などに応じて、本発明の効果が得られる範囲で、当該分野で公知である他の任意の成分が付加され得る。例えば、非特異的な反応を低減するために、トゥイーン20、オクチルグルコシド、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、スクロースモノラウレート、CHAPSなどの界面活性剤を付加し得る。その含有量は、抗原抗体反応の阻害が少ないという観点から、本発明の免疫反応測定方法においては、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成、及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時の、混合液または液体試料に対する濃度が0.3%以下になるように設定されていることが好ましく、0.1%以下になるように設定されていることがさらに好ましい。同様に、本発明の免疫反応測定キットにおいては、その含有量は、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成、及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時の、混合液または液体試料に対する濃度が0.3%以下になるように構成されていることが好ましく、0.1%以下になるように構成されていることがさらに好ましい。
【0034】
本発明の免疫反応測定方法において、工程Cにおける固定化部で捕捉されたトレーサーの検出は、トレーサーの量に依存した光学的変化量を測定することにより行うことが好ましい。ここで、工程Cにおいて測定する光学的変化量としては、トレーサーの標識物質が金コロイド等の着色粒子である場合は、吸収度変化量であることが好ましく、前記着色粒子が蛍光を発するものである場合は、蛍光強度の変化量であることが好ましく、また、標識物質が発光性の物質である場合は、発光強度であることが好ましい。このようにすると、液体試料(検体)中の被測定物質の量を定量し易くなる。
【0035】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法の被測定物質である抗原または抗体は特に限定されず、一般に抗原抗体反応を利用して測定できる物質であればいずれでもよい。例えば、蛋白質、核酸、脂質、細菌、ウィルス、ハプテンなどが挙げられる。この中で、蛋白質は抗原抗体反応を用いた臨床検査上の主たる測定対象であるため好ましい。蛋白質として例えば、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、hCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)などのホルモンや、各種免疫グロブリンクラスやサブクラス、補体成分、各種感染症のマーカー、C反応性蛋白質、アルブミン、リウマチ因子、血液型抗原などが挙げられる。この中で、被測定物質がヒトC反応性蛋白質(以下、ヒトCRPと略す)であることが好ましい。
【0036】
トリカルボン酸及びトリカルボン酸の塩はキレート作用を持っており、反応系に存在するCa2+やFe3+などの二価及び三価の金属イオンを効率的に奪う性質がある。このため、抗原が、その分子構造内に金属イオンを保持している場合、前記抗原に対して特異的に結合し、トレーサー及び特異結合物質として用いられる抗体が、前記抗原から前記金属イオンが脱離したときに、前記金属イオンを保持していない前記抗原とも特異的に結合することが好ましい。このようにすると、抗原が、分子構造内に金属イオンを保持し、前記金属イオンの脱離により前記分子構造に変化を生じる物質であっても、測定を行うことができる。
【0037】
また、抗原が、その分子構造内に金属イオンを保持し、前記金属イオンの脱離により前記分子構造に変化を生じる物質である場合、抗原が保持しているものと同じ金属イオンを添加し、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成、及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時に、上記金属イオンが存在するようにしてもよい。
【0038】
添加する金属イオンの量は、使用するトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩のキレート能、その濃度、抗原が持つ金属イオンの保持能などに基づき設定すればよい。
【0039】
分子構造内に金属イオンを保持している抗原としてはCRPがあり、Ca2+の保持の有無によって構造変化を生じる。本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法の被測定物質である抗原がヒトCRPである場合であって、トレーサーまたは固定化された特異結合物質に、Ca2+を未保持のヒトCRPに対して結合しない抗体を用い、トリカルボン酸としてクエン酸を用いたときには、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成、及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時に、混合液または液体試料に対するクエン酸濃度とほぼ等しい濃度のCa2+が存在するようにすることが好ましい。
【0040】
また、抗原が、少なくとも1種類の抗体に対して複数の結合部位を持つ物質である場合、前記抗原に対して特異的に結合し、トレーサー及び特異結合物質として用いられる抗体が、前記抗原の前記複数の結合部位に結合するモノクローナル抗体であることが好ましい。このようにすると、被測定物質とトレーサーとの反応による凝集複合体が形成でき、展開部の固定化部で捕捉されるトレーサー量を増すことができ、測定値の向上を図ることができる。また、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株により産生される。ハイブリドーマ細胞株は、抗体を産生するB細胞と骨髄腫瘍細胞(ミエローマ細胞)を細胞融合することにより得られた抗体産生能と強い増殖能を併せ持つ融合細胞集団より一つの細胞のみを分離し、増殖させて確立したものであるため、これらが産生する抗体の性状は同じである。また、ハイブリドーマ細胞株は増殖能が強く、凍結保存が可能であるため、適切な管理をしていれば尽きることがなく、ハイブリドーマ細胞株を培養液あるいは腹腔中で培養し、精製することにより永久に、同じ性状の抗体を得続けることができる。一方ポリクローナル抗体は、動物に抗原を投与し、血中に抗原に結合する抗体を多量に出現させ、この血液の全部あるいは一部を採取し、精製することにより得られるため、その性質は動物の個体差、生育環境、状態などに依存する。このため、同一性状の抗体を得続けることが困難である。このように、モノクローナル抗体を使用することにより、常に同じ性状の抗体を使用することが可能となり、試薬としての抗体の供給が安定し、結果として、免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法による免疫反応測定結果の安定化を図ることができる。
【0041】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法に用いられる抗体は特に限定されず、抗原と特異結合するものであれば、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDのいずれのクラスの抗体であってもよい。この中で、IgG抗体が非特異的な反応が少なく、また、比較的市販されているものも多く、入手も容易であるため好ましい。また、抗体の由来動物種に関しても、特に限定されないが、ウサギ、ヤギ、マウス由来の抗体が比較的入手も容易であり、使用例も多いため好ましい。
【0042】
本発明の免疫反応測定キットは、代表的には、以下のようにして作製し得る。被測定物質である抗原または抗体が含まれると考えられる液体試料を展開し、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部において前記被測定物質を捕捉する測定装置と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーを含むトレーサー含有試薬、及びトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬をそれぞれ別に構成する場合は、次のようになる。
【0043】
測定装置に固定化される特異結合物質、トレーサー含有試薬、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬の、特異結合物質、トレーサー含有試薬、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩以外の構成成分は、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩の効果が得られる限り任意であってよい。
【0044】
測定装置は、被測定物質が含まれると考えられる液体試料が展開される展開部に、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原を固定化することにより構成する。展開部は、液体試料が毛細管現象により流れることが可能な網目構造を持つ材料により構成されていることが好ましく、その網目構造は、展開部表面に対して水平方向に均一な流れが生じるように構成されていることがより好ましい。特異結合物質の固定化は特異結合物質を溶解した溶液を展開部上の一部に含浸し、乾燥することによって吸着させる。特異結合物質が固定化された部位以外の展開部上の部位は、ウシ血清アルブミン(BSA)、ゼラチン、スキムミルク等を吸着させブロッキングされていることが好ましい。
【0045】
トレーサーは被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に検出可能な標識物質を結合させて構成する。標識物質は着色粒子であることが好ましく、金コロイドであることがさらに好ましい。標識方法は官能基による共有結合、あるいは受動吸着によって行う。標識物質の、特異結合物質が結合しておらず結合能を有する領域は、BSAなどを結合させブロッキングする。トレーサー含有試薬は、トレーサーと特異結合物質の変性を阻止するための試薬を含んでもよい。この変性阻止剤としては、BSAなどの蛋白質、グリセリン、糖などを用いる。
【0046】
トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む試薬は、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を純水に溶解することにより作製する。
【0047】
本発明の免疫反応測定キットにおいては、被測定物質を含むと考えられる液体試料、トレーサー含有試薬及びトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を混合して、前記展開部に展開し、前記トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHが酸性に設定されるように、好ましくはpHが6に設定されるように構成する。
【0048】
上記要件が満たされている限り、トレーサー含有試薬のpHも標識された特異結合物質に変性を生じさせない限り任意でよく、また、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬のpHも酸性であれば任意でよく、また、測定装置作製の際に、特異結合物質を担持させるため、あるいはブロッキング操作のために展開部に含浸される溶液のpHは特異結合物質に変性を生じさせない限り任意でよい。
【0049】
本発明の免疫反応測定方法は、代表的には、以下のようにして行うことができる。液体試料が展開される展開部を持ち、前記展開部はその中に被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された領域を含む装置を構成する。展開部は、液体試料が毛細管現象により流れることが可能な網目構造を持つ材料により構成されていることが好ましく、その網目構造は、展開部表面に対して水平方向に均一な流れが生じるように構成されていることがより好ましい。前記装置に被測定物質を含むと予想される液体試料と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に検出可能な標識物質を結合させたトレーサーと、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩の混合液を前記展開部に展開し、前記トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成時及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHを酸性、好ましくはpHを6に保ち、固定化された特異結合物質とトレーサーとの間に被測定物質を介した結合を生じさせ、前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する。トレーサーの標識物質としては、着色粒子を用いることが好ましく、金コロイドを用いることがより好ましい。
【0050】
また、トレーサーを装置に組み込むことも可能であり、その場合は、液体試料中の被測定物質が、固定化部よりも先に接触する部分に、液体試料とともに移動可能なようにトレーサーを配置すればよい。具体的には、展開部にニトロセルロースメンブレンを使用する場合は、特異結合物質を固定化後、それ以外の領域の結合能を不活化するために、BSA、ゼラチン、スキムミルクなどを結合させるブロッキング処理を経て、ブロッキングされた領域にトレーサーを配置することによりトレーサー保持部を形成する。この場合は、液体試料と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩の混合液を前記展開部に展開し、前記トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成時及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHを酸性に保ち、固定化された特異結合物質とトレーサーとの間に被測定物質を介した結合を生じさせ、前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する。
【0051】
上記要件が満たされている限り、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬のpHは酸性であれば任意でよく、また、測定装置作製の際に、特異結合物質を担持させるため、あるいはブロッキング操作のために展開部に含浸される溶液のpHは特異結合物質、及びトレーサー含有試薬に変性を生じさせない限り任意でよく、また、トレーサー含有試薬のpHも標識された特異結合物質に変性を生じさせない限り任意でよい。
【0052】
また、さらにトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を測定装置に組み込むことも可能であり、その場合は、液体試料中の被測定物質が、トレーサー保持部よりも先に接触する部分にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含ませればよい。ここで、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩が液体試料により溶出可能であることが好ましい。この場合には、液体試料を前記展開部に展開し、前記トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成時及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHを酸性に保ち、固定化された特異結合物質とトレーサーとの間に被測定物質を介した結合を生じさせ、前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する。
【0053】
上記要件が満たされている限り、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬のpHは酸性であれば任意でよく、また、測定装置作製の際に、特異結合物質を担持させるため、あるいはブロッキング操作のために展開部に含浸される溶液のpHは特異結合物質、及びトレーサー含有試薬に変性を生じさせない限り任意でよく、また、トレーサー含有試薬のpHも標識された特異結合物質に変性を生じさせない限り任意でよい。
【0054】
以上説明したように、本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法によれば、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を存在させ、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHを酸性に設定したことにより、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することができる。
【0055】
また、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和し、被測定物質の高濃度での測定値の落ち幅を軽減したことにより、測定値が高く陽性と判定される領域を広げることが可能となり、測定濃度範囲を広げることができる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
以下で、ヒトCRPを被測定物質とした場合の免疫反応測定キットの構成方法を示す。本実施例では、イムノクロマトグラフィー型の測定装置の構成方法について述べる。本実施例では、トレーサーである標識抗体を直接装置に組み込まないタイプの構成法について示した。各材料および装置の構成は次のようにした。
【0058】
ヒトCRPは、同一の構造を持つ5個のサブユニットからなる構造を持つため、1種類の抗体に対して複数の結合部位を持つ物質である。このため、1種類の抗CRPモノクローナル抗体を使用することによっても、抗原と抗体との間のサンドイッチ型の反応を生じさせることが可能である。
【0059】
以下に示した緩衝液などの調製には、Milli−Q SP TOC(Millipore社製)でろ過した純水を使用した。また、以下で特に記載の無い塩、緩衝剤などの試薬は、いずれも和光純薬工業製のものを入手し、特級試薬を使用した。イムノクロマトグラフィーに使用する、展開部となるニトロセルロースメンブレンには、Hi−Flow Plus メンブレン(登録商標、型番:HF240、Millipore社製)を使用した。
【0060】
まず、金コロイド標識およびメンブレンに塗布する、特異結合物質である抗体溶液の調製について述べる。モノクローナル抗体には、反応系へのキレート剤、例えば、0.02Mのエチレンジアミン四酢酸の添加によってもヒトCRPに対する結合能を喪失しない、すなわち、ヒトCRPからCa2+が脱離したときに、Ca2+を保持していないヒトCRPとも特異的に結合する抗体を用いた。
【0061】
抗体溶液は次のように調製した。本実施例で用いたマウス抗ヒトCRPモノクローナル抗体は、それを産生するハイブリドーマ細胞(工業技術院生命工学工業技術研究所受託番号FERM BP−6620号)をマウス腹腔内に注入し、増殖させることにより得られた腹水より、プロテインAカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0062】
腹水については、次のようにして得た。腹水の産生には、リタイアしたメスのBALB/cマウスを用いた。また、腹腔内に注入したハイブリドーマ細胞懸濁液は、RPMI1640培地(SIGMA製)に5〜15体積%のウシ胎児血清を混合した培地を用いた培養により増殖させたものを、RPMI1640培地で遠心洗浄し、1×106〜107cells/mlの濃度になるようにRPMI1640培地に再懸濁して得た。マウスの腹腔内に0.5〜1mlのプリスタンを注入し、約7日後に上記細胞懸濁液を0.5〜1ml注入した後、腹水産生の見られたマウスより順に腹水を採取した。
【0063】
プロテインAカラムクロマトグラフィーは次にようにして行った。カラムに充填したプロテインA固定化ゲルは、アマシャム・ファルマシア製のものを使用した。精製に用いた平衡化緩衝液には、1.5Mグリシン、3.0M NaCl、pH8.9の組成のものを使用し、溶出緩衝液には、0.1Mクエン酸、pH4.0の組成のものを使用した。精製は次のようにして行った。カラムに充填したゲル容量の5倍の平衡化緩衝液を流してカラムを平衡化した後、カラム全結合容量の10〜20%の抗体を含む腹水を平衡化緩衝液で容量を2倍に希釈してカラムに流し、腹水中の抗体をプロテインAに結合させた。続いて、平衡化緩衝液をプロテインAに吸着しない腹水成分がカラムより出てこなくなるまで流し、カラムを洗浄した。続いて、カラムに溶出緩衝液を流し、プロテインAに結合した抗体を溶出した。
【0064】
プロテインAカラムクロマトグラフィーによる精製を終えた抗体試料は、分画分子量1万の透析チューブに入れ、約100倍容量の0.04重量%NaN3を含むPBS緩衝液(8g/l NaCl、0.2g/l KCl、1.15g/l Na2HPO4・12H2O、0.2g/l KH2PO4、pH7.4)で数回透析して、緩衝液成分を置換した。透析後、抗体濃度を、金コロイド標識用の抗体については、カットオフ分子量10,000のセントリコーン(Amicon社製)を用いた3,000rpmの遠心による限外ろ過濃縮で、溶液濃度を5mg/mlとし、メンブレン固定化用の抗体については、透析で用いたものと同じ緩衝液で濃度を調整して、1.0mg/mlとした。抗体濃度は280nmの吸光度測定により推定した。抗体濃度は、特に上記に限定されるものではない。
【0065】
続いて、イムノクロマトメンブレンの調製法について述べる。抗体のニトロセルロースメンブレンへの固定化は抗体溶液をメンブレンへ塗布して行った。塗布は塗布機(型番MICROSTRIPER、アキュレックス社製)に上記で調製したニトロセルロースメンブレン固定化用抗体溶液を充填し、内径0.18mmの射出口より、3μl/秒で射出し、25mm/秒の速さでメンブレンを直線的に掃引して行い、固定化部を形成した。塗布後、60℃条件下で、10分間風乾させたメンブレンを1重量%スキムミルク入りのPBS溶液で30分間振とうし、固定化部以外のメンブレン上の領域をブロッキングした。ブロッキングを終えたメンブレンをPBS溶液中に入れ、各10分間、計2回振とう洗浄した。更に0.05重量%スクロースモノラウレート入りのPBS溶液で10分間振とうし、湿度を30%以下に保った乾燥機中で24時間放置して乾燥した。イムノクロマトグラフィー装置は次のようにして作製した。
【0066】
乾燥を終えたメンブレンを幅1cmで抗体固定化方向と垂直に切断し、更に固定化部を中心に1cmずつの幅になるように両端を切断した。これを幅1cm、長さ6cmのポリエチレンテレフタレート基板の片側に両面テープを張った支持面上の中心に、抗体を固定化した側が上面になるように貼り付け、さらに、クロマト時の上流(サンプルを添加する側)に、幅1cm、長さ2.2cmのクッキングペーパー(リード社製)を2枚重ねたものを、メンブレンに重なるように配置し、下流に幅1cm、長さ2.2cmのガラス繊維濾紙(型番GA200、Watmam社製)を2枚重ねて配置して固定した。
【0067】
トレーサーである金コロイド標識抗体の調製は次のようにした。まず、標識物質である金コロイドの調製法について述べる。ホットスターラー上に配置した還流冷却器を備えた500mlの三角フラスコに、蒸留水を198mlと1重量%の塩化金酸水溶液を2ml入れた。これを還流条件下で攪拌しながら沸騰させ、沸騰した上記溶液に1重量%クエン酸三ナトリウム水溶液を4ml添加し、20分間そのまま放置した。放置後ホットスターラーから三角フラスコをはずし、室温(約20℃)で放置し、冷却した。冷却後、0.2M炭酸カリウム水溶液を加えてpHを8.9とし、金コロイド標識用抗体溶液500μlを入れ、10分間攪拌し、さらにpH8.9の10重量%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を20ml添加し、10分間攪拌した。その後、抗体とBSAを取り除くために、4℃下で20,000g、50分間の遠心を行い、上清を除いた。残った沈殿を1重量%BSA、5重量%スクロース入りのPBS溶液で再懸濁し、再度同様の遠心をした後、同じ溶液に懸濁した。これを可視紫外分光光度計で、波長525nmの吸光度測定し、1重量%BSA、5重量%スクロース入りのPBS溶液を用いて、吸光度30に調整した。調製した金コロイド溶液は、使用時まで4℃で保存した。
【0068】
酸含有試薬である、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む緩衝液の調製について述べる。トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩には、クエン酸一水和物を使用し、0.05Mクエン酸、pH6.0の緩衝液を調製した。作製した緩衝液は室温保存した。
【0069】
以上のように構成したトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む緩衝液と金コロイド標識抗体溶液及び上記で構成した測定装置を組み合わせることにより、免疫反応測定用キットを構成することができる。
【0070】
本実施例で構成したキットの使用方法は、被測定物質を含む液体試料(検体)、トレーサーを含むトレーサー含有試薬、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を混合し、測定装置の展開部へ展開し、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を存在させ、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHが酸性になるようにして使用する。液体試料(検体)、トレーサーを含むトレーサー含有試薬、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を測定装置内で混合するようにしてもよい。展開部の固定化部において、被測定物質を介して捕捉されたトレーサー量を測定することにより、検体中の被測定物質濃度を知ることができる。
【0071】
トレーサーを測定装置に組み込むことも可能であり、その場合は、展開部に展開された液体試料が、トレーサー保持部を経由した後固定化部に到達するように固体化部及びトレーサー保持部を配置すればよい。具体的には、スキムミルクによるブロッキング処理後に、金コロイド標識抗体をメンブレン上に塗布するか、あるいは金コロイド標識抗体溶液を濾紙に含浸させ、凍結乾燥したものを配置すればよい。
【0072】
また、さらにトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を測定装置に組み込むことも可能であり、その場合は、展開部に展開された液体試料が、トレーサー保持部よりも先に接触する部分にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を溶出可能なように含ませればよい。具体的には、トレーサー保持部である金コロイド標識抗体塗布部、あるいはトレーサー保持部である金コロイド標識抗体含浸濾紙配置部よりも先に被測定物質が接触する部分に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含ませればよい。
【0073】
なお、本実施例では標識物質として金コロイドを用いたが、ラテックス粒子、磁気微粒子などの微粒子担体、酵素、色素、蛍光物質、発光物質などを用いてもよい。
【0074】
また、本実施例では、ヒトCRPからCa2+が脱離したときに、Ca2+を保持していないヒトCRPとも特異的に結合する1種類のモノクローナル抗体を利用したが、標識抗体と固定化抗体は同じものである必要性はなく、また、両者を同一の抗体によって構成しなくてもよい。ヒトCRPはCa2+の保持の有無によって構造変化を生じるため、試薬を構成する抗体にCa2+を未保持のヒトCRPに対して結合しない抗体が含まれる場合、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩によるキレート作用により、Ca2+を未保持のヒトCRPの増加により、抗原抗体反応の反応率の低下が生じる可能性があるため、使用する抗体は、ヒトCRPからCa2+が脱離したときに、Ca2+を保持していないヒトCRPとも特異的に結合する性質を持つものであることが好ましい。
【0075】
ポリクローナル抗体を用いる場合は、Ca2+を未保持のヒトCRPに対して結合しない抗体が含まれるため、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩によるキレート作用により、Ca2+を未保持のヒトCRPの増加により、抗原抗体反応の反応率の低下が生じる可能性がある。この場合は、抗原抗体の反応時に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩とほぼ同じ濃度のCa2+を存在させることにより、その影響を回避することができる。
【0076】
また、本実施例では、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む緩衝液の調製にクエン酸一水和物を使用したが、他のトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩であってもよく、例えば、イソクエン酸、無水クエン酸、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸三カリウム一水和物、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸三リチウム四水和物、DL−イソクエン酸三ナトリウム、trans−アコニット酸、cis−アコニット酸無水物のいずれかを用いてもよい。また、これらを組み合わせて使用することもできる。
【0077】
(実施例2)
本実施例では、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸性反応系の効果を、免疫反応測定方法で一般的に使用されている中性反応系と対比した内容について示す。対比はヒトCRPを実施例1で作製したキットを用いた測定によって行った。
【0078】
また、比較例として中性反応系を構成するための緩衝液の構成には、モプスを使用し、その濃度および緩衝液のpHには一般的によく用いられるものを採用し、0.05Mモプス、pH7.4の組成とした(以下、モプス緩衝液と称する)。中性反応系の構成は、キットのクエン酸緩衝液を、上記モプス緩衝液で代用して行った。金コロイド溶液は、クエン酸緩衝液と同じものを用いた。
【0079】
測定に用いた各濃度のCRP溶液の調製は、精製ヒトCRP(Chemicon International製、Lot No.21042246)を、0.05Mモプス、0.04重量%NaN3、pH7.4の組成の緩衝液で希釈して調製した。ヒトCRP溶液の濃度は0、0.5、1、5、10、20mg/dlのものを用意した。抗原溶液は使用時まで4℃で保存した。
【0080】
緩衝液200μl、金コロイド溶液25μl、ヒトCRP溶液25μlを順に加えて、攪拌混合し、このうちの100μlを、実施例1で作製したイムノクロマトグラフィー測定装置のクッキングペーパー部へ滴下し、メンブレン上に展開した。滴下より1時間経過した後、メンブレン上の固定化部に捕捉された金コロイド粒子の量を、フライングスポットスキャニングデンシトメータ(型番CS−9300PC、島津製作所製)により、波長525nmで、固定化部付近をスキャンしながら反射吸光度測定した。測定は室温(約20℃)で行った。
【0081】
結果について示す。図1は各ヒトCRP溶液について測定した結果をプロットしたものである。縦軸はメンブレン上の固定化部における吸光度ピーク面積値を表し、横軸は測定に使用したヒトCRP溶液濃度で示した。吸光度ピーク面積値が大きい程、メンブレン上の固定化部にヒトCRPを介して捕捉された金コロイド標識抗体が多いことを表している。本実施例であるクエン酸緩衝液を使用した場合、反応時のイムノクロマトグラフィー展開部のpHは6に維持されていた。
【0082】
図1より、比較例であるモプス緩衝液を用いて測定した場合(白三角印)より、本実施例であるクエン酸を含む酸性反応系の場合(黒丸印)の方が、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定値の減少が抑えられていたことがわかる。
【0083】
以上の結果より、本発明の免疫反応測定キット及びそれを用いた免疫反応測定方法により、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和させ得ることが確認できた。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することが可能な免疫反応測定キット及びそれを用いた免疫反応測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における免疫反応測定キットを用いた免疫反応測定方法と比較例について、ヒトCRP測定を行った結果を示すグラフ
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原または抗体を定性あるいは定量測定することができる免疫反応測定キット及びそれを用いた免疫反応測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療分野では、様々な疾患の診断および病状の経過を調べるために、ヒトの体液中に存在する各疾患に特徴的な物質の含有量を調べることが広く利用されている。
【0003】
これらの物質の含有量測定には、特異性の高い抗原抗体反応を利用した免疫反応測定方法が非常に有用であり、蛋白質、ホルモン、薬物、ウィルス、細菌などの測定に広く用いられている。現在では、免疫反応測定方法にも様々な原理を応用したものが開発され、利用されている。
【0004】
それらの中でも、被測定物質とそれに対して特異的に結合する特異結合物質との複合体が固相に結合する不均一免疫反応測定方法はよく利用されるものである。不均一免疫反応測定方法の代表的なものには、免疫クロマトグラフィー法、ELISA法などの方法が挙げられる。これらの方法において、サンドイッチ型の免疫反応測定方法は代表的なものである。
【0005】
サンドイッチ型の免疫反応測定方法では、予め固相に固定化しておいた、被測定物質に対する特異結合物質と、特異結合物質に対して検出が可能な標識を施したトレーサーを用意し、固相上の特異結合物質が固定化された部分に、被測定物質を含み得る液体試料とトレーサーとを展開することにより、被測定物質を介して、固相に固定化した特異結合物質とトレーサーとが被測定物質をサンドイッチするように結合した複合体を生じさせる。この複合体は、被測定物質が存在しなければ生じず、また、その量は被測定物質の量に依存するため、複合体を構成しなかったトレーサー及び被測定物質を、固相上の特異結合物質が固定化された部分より、洗浄などで除いた後、固相上の特異結合物質が固定化された部分に存在するトレーサー量を検出することにより、液体試料中における被測定物質の有無を判定したり、または、固相上の特異結合物質が固定化された部分に存在するトレーサー量を測定することによって、液体試料中における被測定物質の量を定量することができる。
【0006】
サンドイッチ型の免疫反応測定方法においては、大きく分けて以下の2つの方法がある。すなわち、固相に固定化した特異結合物質に、被測定物質とトレーサーとを順次結合させ、各結合反応時に生じた未結合の物質を洗浄により除く方法、及び被測定物質とトレーサーとを予め混合して結合させておき、これを固相に固定化した特異結合物質に結合させ、未結合の被測定物質を洗浄により除く方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
後者のサンドイッチ型の免疫反応測定方法では、被測定物質とトレーサーとを混合して結合させる反応は、均一系の免疫反応であるため、被測定物質及びトレーサーのどちらか一方が多価抗体で他方が2価以上の抗原である場合には、抗原と抗体とによる凝集複合体が形成され、地帯現象の影響を受ける。地帯現象とは、抗原と抗体とが最大の凝集複合体を形成する当量域よりも、いずれかが過剰に存在する場合に、凝集複合体が生じ難くなる現象のことである。多価抗体と2価以上の抗原との間の結合反応は、Heidelbergerらの格子説が有名であり、Fundamental Immunology,William E.Paul編、(1984)(邦訳 基礎免疫学、多田富雄監訳、第714−716頁(1987))にその詳細な記載がある。
【0008】
実際の免疫反応測定においては、抗体を用いて抗原濃度を測定する場合が多く、また、測定値についても抗原濃度が低値の場合よりも高値の場合に重要な意味を持つ場合が多いため、抗原過剰による地帯現象が問題となる場合が多い。地帯以外の領域では、トレーサーである標識された抗体と被測定物質である抗原とが交互に結合した複合体からなる分子鎖が生じ、その量や大きさは、抗体濃度を一定とすると、抗原濃度に依存して増加するが、抗原過剰域では抗原が抗体に比べて過剰に存在するので、結合部位が抗原により飽和された状態の抗体量が増加するため、先に述べたような分子鎖が生じ難くなる。そのため、固層上の特異結合物質が固定化された部分で捕捉される抗原とトレーサーとの複合体量、すなわちトレーサー量が減少するので、測定結果が、抗原が低濃度の場合と区別がつき難くなり、抗原濃度に依存した正しい定量や判定が行えなくなる。従来これを回避するために、抗原量が過剰とならない濃度域でしか測定を行うことができず、測定濃度範囲が制限されるという問題点があった。
【0009】
そこで本発明は上記従来の問題点に鑑み、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することができる免疫反応測定キット及びそれを用いた免疫反応測定方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部を備えた測定装置と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーを含むトレーサー含有試薬と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬とを備え、前記液体試料、前記トレーサー含有試薬及び前記酸含有試薬を混合することにより得られた混合液のpH、及び前記混合液を前記測定装置の前記展開部に展開し、前記混合液が前記固定化部に到達したときの前記混合液のpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置された測定装置と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬とを備え、前記液体試料及び前記酸含有試薬を混合することにより得られた混合液が前記展開部に展開され、前記展開部に展開された前記混合液が前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されていてもよい。
【0012】
また、本発明の免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置され、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達するまでの領域に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を含み、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されていてもよい。
【0013】
また、本発明の免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部を備えた測定装置を提供する工程A、前記液体試料と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーと、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬との混合液を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記混合液のpH、及び前記混合液を前記測定装置の前記展開部に展開し、前記混合液が前記固定化部に到達したときの前記混合液のpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置された測定装置を提供する工程A、前記液体試料と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬との混合液を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記展開部に展開された前記混合液が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されていてもよい。
【0015】
また、本発明の免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置され、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達するまでの領域に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を含む領域を備えた測定装置を提供する工程A、前記液体試料を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されていてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、抗原抗体反応時に、反応系にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を付加し、反応系のpHを酸性に保つことにより、抗原過剰領域で生じる地帯現象が緩和できることを見出した。
【0017】
本発明の一実施の形態における免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部を備えた測定装置と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーを含むトレーサー含有試薬と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬とを備え、前記液体試料、前記トレーサー含有試薬及び前記酸含有試薬を混合することにより得られた混合液のpH、及び前記混合液を前記測定装置の前記展開部に展開し、前記混合液が前記固定化部に到達したときの前記混合液のpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一実施の形態における免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部を備えた測定装置を提供する工程A、前記液体試料と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーと、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬との混合液を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記混合液のpH、及び前記混合液を前記測定装置の前記展開部に展開し、前記混合液が前記固定化部に到達したときの前記混合液のpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0019】
以上のようにすると、混合液中において、液体試料中に含まれる被測定物質とトレーサー中の特異結合物質とが抗原抗体反応により複合体を形成する際、及び固定化部に混合液が到達し、固定化部において、固定化部に固定化された特異結合物質と上記複合体とが被測定物質を介した抗原抗体反応により結合する際に、反応系にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩が存在し、反応系のpHが酸性に保たれるため、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することができる。
【0020】
また、本発明の他の実施の形態における免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置された測定装置と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬とを備え、前記液体試料及び前記酸含有試薬を混合することにより得られた混合液が前記展開部に展開され、前記混合液が前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記展開部に展開された前記混合液が、前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の他の実施の形態における免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置された測定装置を提供する工程A、前記液体試料と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬との混合液を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記展開部に展開された前記混合液が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0022】
以上のようにすると、混合液がトレーサー保持部に到達し、液体試料中に含まれる被測定物質とトレーサー中の特異結合物質とが抗原抗体反応により複合体を形成する際、及び固定化部に混合液が到達し、固定化部において、固定化部に固定化された特異結合物質と上記複合体とが被測定物質を介した抗原抗体反応により結合する際に、反応系にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩が存在し、反応系のpHが酸性に保たれるため、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することができる。
【0023】
また、本発明のさらに他の実施の形態における免疫反応測定キットは、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置され、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達するまでの領域に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を含み、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0024】
また、本発明のさらに他の実施の形態における免疫反応測定方法は、液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置され、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達するまでの領域に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を含む領域を備えた測定装置を提供する工程A、前記液体試料を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする。
【0025】
以上のようにすると、液体試料がトレーサー保持部に到達し、液体試料中に含まれる被測定物質とトレーサー中の特異結合物質とが抗原抗体反応により複合体を形成する際、及び固定化部に液体試料が到達し、固定化部において、固定化部に固定化された特異結合物質と上記複合体とが被測定物質を介した抗原抗体反応により結合する際に、反応系にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩が存在し、反応系のpHが酸性に保たれるため、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することができる。
【0026】
ここで、本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法では、トリカルボン酸とトリカルボン酸の塩の両方を用いてもよい。
【0027】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法における展開部が、液体試料が毛細管現象によって流れることが可能な網目構造を持つ材料により構成されていることが好ましい。このような材料は、多孔性あるいは繊維状の構造をとり、親水性を有するセルロース、ニトロセルロース、ガラス繊維、プラスチック繊維等により構成することができ、例えば、ろ紙、ガラス繊維ろ紙、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン等が挙げられる。この中でも、蛋白質吸着力が強いという点でニトロセルロースメンブレンが好ましい。このようにすると、ポンプなどによる外力を加えずに、展開部内で液体試料を容易に展開することが可能となる。
【0028】
さらに、展開部を構成する材料の網目構造が、展開部表面に対して水平方向に均一な流れが生じるように構成されていることがより好ましく、このような材料の例としては、ミリポア社製のHi−Flow Plusメンブレンシリ−ズ(登録商標)、ワットマン社製のImmunoporeメンブレンシリーズ(登録商標)等が挙げられる。このようにすると、より早い流速を得ることができ、測定時間の短縮が可能となり、また、均質な流れを得られるため、展開部のトレーサー保持部及び固定化部全域でそれぞれ均質な抗原抗体反応を生じさせることが可能となり、結果として固定化部で捕捉されるトレーサー量の固定化部位中でのバラツキが少なくなる。このため、抗原抗体反応検出時に選択した固定化部位中の位置による測定結果のバラツキを生じ難くすることが可能となる。
【0029】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法において、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成及び前記複合体と固定化された特異結合物質との結合反応時のpHを酸性に保つために、試薬中または展開部上に緩衝剤が付与されていてもよい。緩衝剤としては、当該分野で公知のものを用いることができ、例えば、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどからなるリン酸系の緩衝剤、酢酸ナトリウム、カコジル酸ナトリウム、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸、コハク酸などがあげられる。この場合、含まれるべき緩衝剤の量は、用いる緩衝剤の種類、被測定物質を含む液体試料(検体)の量などに応じて、本発明の効果が得られるように調整すればよい。また、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩によって、主たる緩衝能が付与されるようにしてもよい。
【0030】
また、本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法において、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成及び、前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHが6に設定されていることが好ましい。上記pHでは、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩による抗原過剰領域で生じる地帯現象の緩和効果が高く、また、トレーサーの自己凝集などが原因となる非特異的な反応が少ない。
【0031】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法で用いられるトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩としては、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸及びこれらの塩が挙げられる。これらは、無水クエン酸、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸三カリウム一水和物、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸三リチウム四水和物、DL−イソクエン酸三ナトリウム、trans−アコニット酸、cis−アコニット酸無水物などの形態で市販されており、これらを単独または組み合わせて使用することができる。これらの中でも、比較的安価で、室温保存が可能で、安定性が高いものを入手することができ、使い易いという観点から、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩が、クエン酸またはクエン酸の塩であることが好ましい。
【0032】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法で用いられる標識物質としては、着色粒子、蛍光物質、燐光物質、発光物質、酸化還元物質、酵素または小胞体等が挙げられる。着色粒子としては、金コロイド、銀コロイド、セレニウムコロイド、着色ラテックス、シアニン及びアゾ等、蛍光物質としては、ピレン等の芳香族化合物、ダンシル等の芳香族化合物に官能基が置換してあるもの、フルオレセイン、ローダミン及びクマリン等、燐光物質としてはベンゾフェノン等、発光物質としては、ルシフェリンとATPとの発光反応のような形態により光を発するもの、酸化還元物質としては、グルコースとグルコースオキシダーゼとの酸化還元反応のような形態により電流を生じるもの、小胞体としてはミセル及びリポソーム等が挙げられる。この中で、着色粒子であることが好ましく、金コロイド粒子であることが特に好ましい。このようにすると、トレーサーの視認性の向上をはかることができる。
【0033】
また、本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法における測定装置及び試薬には、その用途などに応じて、本発明の効果が得られる範囲で、当該分野で公知である他の任意の成分が付加され得る。例えば、非特異的な反応を低減するために、トゥイーン20、オクチルグルコシド、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、スクロースモノラウレート、CHAPSなどの界面活性剤を付加し得る。その含有量は、抗原抗体反応の阻害が少ないという観点から、本発明の免疫反応測定方法においては、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成、及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時の、混合液または液体試料に対する濃度が0.3%以下になるように設定されていることが好ましく、0.1%以下になるように設定されていることがさらに好ましい。同様に、本発明の免疫反応測定キットにおいては、その含有量は、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成、及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時の、混合液または液体試料に対する濃度が0.3%以下になるように構成されていることが好ましく、0.1%以下になるように構成されていることがさらに好ましい。
【0034】
本発明の免疫反応測定方法において、工程Cにおける固定化部で捕捉されたトレーサーの検出は、トレーサーの量に依存した光学的変化量を測定することにより行うことが好ましい。ここで、工程Cにおいて測定する光学的変化量としては、トレーサーの標識物質が金コロイド等の着色粒子である場合は、吸収度変化量であることが好ましく、前記着色粒子が蛍光を発するものである場合は、蛍光強度の変化量であることが好ましく、また、標識物質が発光性の物質である場合は、発光強度であることが好ましい。このようにすると、液体試料(検体)中の被測定物質の量を定量し易くなる。
【0035】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法の被測定物質である抗原または抗体は特に限定されず、一般に抗原抗体反応を利用して測定できる物質であればいずれでもよい。例えば、蛋白質、核酸、脂質、細菌、ウィルス、ハプテンなどが挙げられる。この中で、蛋白質は抗原抗体反応を用いた臨床検査上の主たる測定対象であるため好ましい。蛋白質として例えば、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、hCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)などのホルモンや、各種免疫グロブリンクラスやサブクラス、補体成分、各種感染症のマーカー、C反応性蛋白質、アルブミン、リウマチ因子、血液型抗原などが挙げられる。この中で、被測定物質がヒトC反応性蛋白質(以下、ヒトCRPと略す)であることが好ましい。
【0036】
トリカルボン酸及びトリカルボン酸の塩はキレート作用を持っており、反応系に存在するCa2+やFe3+などの二価及び三価の金属イオンを効率的に奪う性質がある。このため、抗原が、その分子構造内に金属イオンを保持している場合、前記抗原に対して特異的に結合し、トレーサー及び特異結合物質として用いられる抗体が、前記抗原から前記金属イオンが脱離したときに、前記金属イオンを保持していない前記抗原とも特異的に結合することが好ましい。このようにすると、抗原が、分子構造内に金属イオンを保持し、前記金属イオンの脱離により前記分子構造に変化を生じる物質であっても、測定を行うことができる。
【0037】
また、抗原が、その分子構造内に金属イオンを保持し、前記金属イオンの脱離により前記分子構造に変化を生じる物質である場合、抗原が保持しているものと同じ金属イオンを添加し、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成、及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時に、上記金属イオンが存在するようにしてもよい。
【0038】
添加する金属イオンの量は、使用するトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩のキレート能、その濃度、抗原が持つ金属イオンの保持能などに基づき設定すればよい。
【0039】
分子構造内に金属イオンを保持している抗原としてはCRPがあり、Ca2+の保持の有無によって構造変化を生じる。本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法の被測定物質である抗原がヒトCRPである場合であって、トレーサーまたは固定化された特異結合物質に、Ca2+を未保持のヒトCRPに対して結合しない抗体を用い、トリカルボン酸としてクエン酸を用いたときには、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成、及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時に、混合液または液体試料に対するクエン酸濃度とほぼ等しい濃度のCa2+が存在するようにすることが好ましい。
【0040】
また、抗原が、少なくとも1種類の抗体に対して複数の結合部位を持つ物質である場合、前記抗原に対して特異的に結合し、トレーサー及び特異結合物質として用いられる抗体が、前記抗原の前記複数の結合部位に結合するモノクローナル抗体であることが好ましい。このようにすると、被測定物質とトレーサーとの反応による凝集複合体が形成でき、展開部の固定化部で捕捉されるトレーサー量を増すことができ、測定値の向上を図ることができる。また、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株により産生される。ハイブリドーマ細胞株は、抗体を産生するB細胞と骨髄腫瘍細胞(ミエローマ細胞)を細胞融合することにより得られた抗体産生能と強い増殖能を併せ持つ融合細胞集団より一つの細胞のみを分離し、増殖させて確立したものであるため、これらが産生する抗体の性状は同じである。また、ハイブリドーマ細胞株は増殖能が強く、凍結保存が可能であるため、適切な管理をしていれば尽きることがなく、ハイブリドーマ細胞株を培養液あるいは腹腔中で培養し、精製することにより永久に、同じ性状の抗体を得続けることができる。一方ポリクローナル抗体は、動物に抗原を投与し、血中に抗原に結合する抗体を多量に出現させ、この血液の全部あるいは一部を採取し、精製することにより得られるため、その性質は動物の個体差、生育環境、状態などに依存する。このため、同一性状の抗体を得続けることが困難である。このように、モノクローナル抗体を使用することにより、常に同じ性状の抗体を使用することが可能となり、試薬としての抗体の供給が安定し、結果として、免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法による免疫反応測定結果の安定化を図ることができる。
【0041】
本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法に用いられる抗体は特に限定されず、抗原と特異結合するものであれば、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDのいずれのクラスの抗体であってもよい。この中で、IgG抗体が非特異的な反応が少なく、また、比較的市販されているものも多く、入手も容易であるため好ましい。また、抗体の由来動物種に関しても、特に限定されないが、ウサギ、ヤギ、マウス由来の抗体が比較的入手も容易であり、使用例も多いため好ましい。
【0042】
本発明の免疫反応測定キットは、代表的には、以下のようにして作製し得る。被測定物質である抗原または抗体が含まれると考えられる液体試料を展開し、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部において前記被測定物質を捕捉する測定装置と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーを含むトレーサー含有試薬、及びトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬をそれぞれ別に構成する場合は、次のようになる。
【0043】
測定装置に固定化される特異結合物質、トレーサー含有試薬、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬の、特異結合物質、トレーサー含有試薬、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩以外の構成成分は、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩の効果が得られる限り任意であってよい。
【0044】
測定装置は、被測定物質が含まれると考えられる液体試料が展開される展開部に、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原を固定化することにより構成する。展開部は、液体試料が毛細管現象により流れることが可能な網目構造を持つ材料により構成されていることが好ましく、その網目構造は、展開部表面に対して水平方向に均一な流れが生じるように構成されていることがより好ましい。特異結合物質の固定化は特異結合物質を溶解した溶液を展開部上の一部に含浸し、乾燥することによって吸着させる。特異結合物質が固定化された部位以外の展開部上の部位は、ウシ血清アルブミン(BSA)、ゼラチン、スキムミルク等を吸着させブロッキングされていることが好ましい。
【0045】
トレーサーは被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に検出可能な標識物質を結合させて構成する。標識物質は着色粒子であることが好ましく、金コロイドであることがさらに好ましい。標識方法は官能基による共有結合、あるいは受動吸着によって行う。標識物質の、特異結合物質が結合しておらず結合能を有する領域は、BSAなどを結合させブロッキングする。トレーサー含有試薬は、トレーサーと特異結合物質の変性を阻止するための試薬を含んでもよい。この変性阻止剤としては、BSAなどの蛋白質、グリセリン、糖などを用いる。
【0046】
トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む試薬は、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を純水に溶解することにより作製する。
【0047】
本発明の免疫反応測定キットにおいては、被測定物質を含むと考えられる液体試料、トレーサー含有試薬及びトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を混合して、前記展開部に展開し、前記トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHが酸性に設定されるように、好ましくはpHが6に設定されるように構成する。
【0048】
上記要件が満たされている限り、トレーサー含有試薬のpHも標識された特異結合物質に変性を生じさせない限り任意でよく、また、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬のpHも酸性であれば任意でよく、また、測定装置作製の際に、特異結合物質を担持させるため、あるいはブロッキング操作のために展開部に含浸される溶液のpHは特異結合物質に変性を生じさせない限り任意でよい。
【0049】
本発明の免疫反応測定方法は、代表的には、以下のようにして行うことができる。液体試料が展開される展開部を持ち、前記展開部はその中に被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された領域を含む装置を構成する。展開部は、液体試料が毛細管現象により流れることが可能な網目構造を持つ材料により構成されていることが好ましく、その網目構造は、展開部表面に対して水平方向に均一な流れが生じるように構成されていることがより好ましい。前記装置に被測定物質を含むと予想される液体試料と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に検出可能な標識物質を結合させたトレーサーと、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩の混合液を前記展開部に展開し、前記トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成時及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHを酸性、好ましくはpHを6に保ち、固定化された特異結合物質とトレーサーとの間に被測定物質を介した結合を生じさせ、前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する。トレーサーの標識物質としては、着色粒子を用いることが好ましく、金コロイドを用いることがより好ましい。
【0050】
また、トレーサーを装置に組み込むことも可能であり、その場合は、液体試料中の被測定物質が、固定化部よりも先に接触する部分に、液体試料とともに移動可能なようにトレーサーを配置すればよい。具体的には、展開部にニトロセルロースメンブレンを使用する場合は、特異結合物質を固定化後、それ以外の領域の結合能を不活化するために、BSA、ゼラチン、スキムミルクなどを結合させるブロッキング処理を経て、ブロッキングされた領域にトレーサーを配置することによりトレーサー保持部を形成する。この場合は、液体試料と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩の混合液を前記展開部に展開し、前記トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成時及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHを酸性に保ち、固定化された特異結合物質とトレーサーとの間に被測定物質を介した結合を生じさせ、前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する。
【0051】
上記要件が満たされている限り、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬のpHは酸性であれば任意でよく、また、測定装置作製の際に、特異結合物質を担持させるため、あるいはブロッキング操作のために展開部に含浸される溶液のpHは特異結合物質、及びトレーサー含有試薬に変性を生じさせない限り任意でよく、また、トレーサー含有試薬のpHも標識された特異結合物質に変性を生じさせない限り任意でよい。
【0052】
また、さらにトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を測定装置に組み込むことも可能であり、その場合は、液体試料中の被測定物質が、トレーサー保持部よりも先に接触する部分にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含ませればよい。ここで、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩が液体試料により溶出可能であることが好ましい。この場合には、液体試料を前記展開部に展開し、前記トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成時及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHを酸性に保ち、固定化された特異結合物質とトレーサーとの間に被測定物質を介した結合を生じさせ、前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する。
【0053】
上記要件が満たされている限り、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬のpHは酸性であれば任意でよく、また、測定装置作製の際に、特異結合物質を担持させるため、あるいはブロッキング操作のために展開部に含浸される溶液のpHは特異結合物質、及びトレーサー含有試薬に変性を生じさせない限り任意でよく、また、トレーサー含有試薬のpHも標識された特異結合物質に変性を生じさせない限り任意でよい。
【0054】
以上説明したように、本発明の免疫反応測定キット及び免疫反応測定方法によれば、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を存在させ、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHを酸性に設定したことにより、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することができる。
【0055】
また、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和し、被測定物質の高濃度での測定値の落ち幅を軽減したことにより、測定値が高く陽性と判定される領域を広げることが可能となり、測定濃度範囲を広げることができる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
以下で、ヒトCRPを被測定物質とした場合の免疫反応測定キットの構成方法を示す。本実施例では、イムノクロマトグラフィー型の測定装置の構成方法について述べる。本実施例では、トレーサーである標識抗体を直接装置に組み込まないタイプの構成法について示した。各材料および装置の構成は次のようにした。
【0058】
ヒトCRPは、同一の構造を持つ5個のサブユニットからなる構造を持つため、1種類の抗体に対して複数の結合部位を持つ物質である。このため、1種類の抗CRPモノクローナル抗体を使用することによっても、抗原と抗体との間のサンドイッチ型の反応を生じさせることが可能である。
【0059】
以下に示した緩衝液などの調製には、Milli−Q SP TOC(Millipore社製)でろ過した純水を使用した。また、以下で特に記載の無い塩、緩衝剤などの試薬は、いずれも和光純薬工業製のものを入手し、特級試薬を使用した。イムノクロマトグラフィーに使用する、展開部となるニトロセルロースメンブレンには、Hi−Flow Plus メンブレン(登録商標、型番:HF240、Millipore社製)を使用した。
【0060】
まず、金コロイド標識およびメンブレンに塗布する、特異結合物質である抗体溶液の調製について述べる。モノクローナル抗体には、反応系へのキレート剤、例えば、0.02Mのエチレンジアミン四酢酸の添加によってもヒトCRPに対する結合能を喪失しない、すなわち、ヒトCRPからCa2+が脱離したときに、Ca2+を保持していないヒトCRPとも特異的に結合する抗体を用いた。
【0061】
抗体溶液は次のように調製した。本実施例で用いたマウス抗ヒトCRPモノクローナル抗体は、それを産生するハイブリドーマ細胞(工業技術院生命工学工業技術研究所受託番号FERM BP−6620号)をマウス腹腔内に注入し、増殖させることにより得られた腹水より、プロテインAカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0062】
腹水については、次のようにして得た。腹水の産生には、リタイアしたメスのBALB/cマウスを用いた。また、腹腔内に注入したハイブリドーマ細胞懸濁液は、RPMI1640培地(SIGMA製)に5〜15体積%のウシ胎児血清を混合した培地を用いた培養により増殖させたものを、RPMI1640培地で遠心洗浄し、1×106〜107cells/mlの濃度になるようにRPMI1640培地に再懸濁して得た。マウスの腹腔内に0.5〜1mlのプリスタンを注入し、約7日後に上記細胞懸濁液を0.5〜1ml注入した後、腹水産生の見られたマウスより順に腹水を採取した。
【0063】
プロテインAカラムクロマトグラフィーは次にようにして行った。カラムに充填したプロテインA固定化ゲルは、アマシャム・ファルマシア製のものを使用した。精製に用いた平衡化緩衝液には、1.5Mグリシン、3.0M NaCl、pH8.9の組成のものを使用し、溶出緩衝液には、0.1Mクエン酸、pH4.0の組成のものを使用した。精製は次のようにして行った。カラムに充填したゲル容量の5倍の平衡化緩衝液を流してカラムを平衡化した後、カラム全結合容量の10〜20%の抗体を含む腹水を平衡化緩衝液で容量を2倍に希釈してカラムに流し、腹水中の抗体をプロテインAに結合させた。続いて、平衡化緩衝液をプロテインAに吸着しない腹水成分がカラムより出てこなくなるまで流し、カラムを洗浄した。続いて、カラムに溶出緩衝液を流し、プロテインAに結合した抗体を溶出した。
【0064】
プロテインAカラムクロマトグラフィーによる精製を終えた抗体試料は、分画分子量1万の透析チューブに入れ、約100倍容量の0.04重量%NaN3を含むPBS緩衝液(8g/l NaCl、0.2g/l KCl、1.15g/l Na2HPO4・12H2O、0.2g/l KH2PO4、pH7.4)で数回透析して、緩衝液成分を置換した。透析後、抗体濃度を、金コロイド標識用の抗体については、カットオフ分子量10,000のセントリコーン(Amicon社製)を用いた3,000rpmの遠心による限外ろ過濃縮で、溶液濃度を5mg/mlとし、メンブレン固定化用の抗体については、透析で用いたものと同じ緩衝液で濃度を調整して、1.0mg/mlとした。抗体濃度は280nmの吸光度測定により推定した。抗体濃度は、特に上記に限定されるものではない。
【0065】
続いて、イムノクロマトメンブレンの調製法について述べる。抗体のニトロセルロースメンブレンへの固定化は抗体溶液をメンブレンへ塗布して行った。塗布は塗布機(型番MICROSTRIPER、アキュレックス社製)に上記で調製したニトロセルロースメンブレン固定化用抗体溶液を充填し、内径0.18mmの射出口より、3μl/秒で射出し、25mm/秒の速さでメンブレンを直線的に掃引して行い、固定化部を形成した。塗布後、60℃条件下で、10分間風乾させたメンブレンを1重量%スキムミルク入りのPBS溶液で30分間振とうし、固定化部以外のメンブレン上の領域をブロッキングした。ブロッキングを終えたメンブレンをPBS溶液中に入れ、各10分間、計2回振とう洗浄した。更に0.05重量%スクロースモノラウレート入りのPBS溶液で10分間振とうし、湿度を30%以下に保った乾燥機中で24時間放置して乾燥した。イムノクロマトグラフィー装置は次のようにして作製した。
【0066】
乾燥を終えたメンブレンを幅1cmで抗体固定化方向と垂直に切断し、更に固定化部を中心に1cmずつの幅になるように両端を切断した。これを幅1cm、長さ6cmのポリエチレンテレフタレート基板の片側に両面テープを張った支持面上の中心に、抗体を固定化した側が上面になるように貼り付け、さらに、クロマト時の上流(サンプルを添加する側)に、幅1cm、長さ2.2cmのクッキングペーパー(リード社製)を2枚重ねたものを、メンブレンに重なるように配置し、下流に幅1cm、長さ2.2cmのガラス繊維濾紙(型番GA200、Watmam社製)を2枚重ねて配置して固定した。
【0067】
トレーサーである金コロイド標識抗体の調製は次のようにした。まず、標識物質である金コロイドの調製法について述べる。ホットスターラー上に配置した還流冷却器を備えた500mlの三角フラスコに、蒸留水を198mlと1重量%の塩化金酸水溶液を2ml入れた。これを還流条件下で攪拌しながら沸騰させ、沸騰した上記溶液に1重量%クエン酸三ナトリウム水溶液を4ml添加し、20分間そのまま放置した。放置後ホットスターラーから三角フラスコをはずし、室温(約20℃)で放置し、冷却した。冷却後、0.2M炭酸カリウム水溶液を加えてpHを8.9とし、金コロイド標識用抗体溶液500μlを入れ、10分間攪拌し、さらにpH8.9の10重量%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を20ml添加し、10分間攪拌した。その後、抗体とBSAを取り除くために、4℃下で20,000g、50分間の遠心を行い、上清を除いた。残った沈殿を1重量%BSA、5重量%スクロース入りのPBS溶液で再懸濁し、再度同様の遠心をした後、同じ溶液に懸濁した。これを可視紫外分光光度計で、波長525nmの吸光度測定し、1重量%BSA、5重量%スクロース入りのPBS溶液を用いて、吸光度30に調整した。調製した金コロイド溶液は、使用時まで4℃で保存した。
【0068】
酸含有試薬である、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む緩衝液の調製について述べる。トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩には、クエン酸一水和物を使用し、0.05Mクエン酸、pH6.0の緩衝液を調製した。作製した緩衝液は室温保存した。
【0069】
以上のように構成したトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む緩衝液と金コロイド標識抗体溶液及び上記で構成した測定装置を組み合わせることにより、免疫反応測定用キットを構成することができる。
【0070】
本実施例で構成したキットの使用方法は、被測定物質を含む液体試料(検体)、トレーサーを含むトレーサー含有試薬、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を混合し、測定装置の展開部へ展開し、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を存在させ、トレーサーと被測定物質との結合反応による複合体形成及び前記複合体と固定化された前記特異結合物質との結合反応時のpHが酸性になるようにして使用する。液体試料(検体)、トレーサーを含むトレーサー含有試薬、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を測定装置内で混合するようにしてもよい。展開部の固定化部において、被測定物質を介して捕捉されたトレーサー量を測定することにより、検体中の被測定物質濃度を知ることができる。
【0071】
トレーサーを測定装置に組み込むことも可能であり、その場合は、展開部に展開された液体試料が、トレーサー保持部を経由した後固定化部に到達するように固体化部及びトレーサー保持部を配置すればよい。具体的には、スキムミルクによるブロッキング処理後に、金コロイド標識抗体をメンブレン上に塗布するか、あるいは金コロイド標識抗体溶液を濾紙に含浸させ、凍結乾燥したものを配置すればよい。
【0072】
また、さらにトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を測定装置に組み込むことも可能であり、その場合は、展開部に展開された液体試料が、トレーサー保持部よりも先に接触する部分にトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を溶出可能なように含ませればよい。具体的には、トレーサー保持部である金コロイド標識抗体塗布部、あるいはトレーサー保持部である金コロイド標識抗体含浸濾紙配置部よりも先に被測定物質が接触する部分に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含ませればよい。
【0073】
なお、本実施例では標識物質として金コロイドを用いたが、ラテックス粒子、磁気微粒子などの微粒子担体、酵素、色素、蛍光物質、発光物質などを用いてもよい。
【0074】
また、本実施例では、ヒトCRPからCa2+が脱離したときに、Ca2+を保持していないヒトCRPとも特異的に結合する1種類のモノクローナル抗体を利用したが、標識抗体と固定化抗体は同じものである必要性はなく、また、両者を同一の抗体によって構成しなくてもよい。ヒトCRPはCa2+の保持の有無によって構造変化を生じるため、試薬を構成する抗体にCa2+を未保持のヒトCRPに対して結合しない抗体が含まれる場合、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩によるキレート作用により、Ca2+を未保持のヒトCRPの増加により、抗原抗体反応の反応率の低下が生じる可能性があるため、使用する抗体は、ヒトCRPからCa2+が脱離したときに、Ca2+を保持していないヒトCRPとも特異的に結合する性質を持つものであることが好ましい。
【0075】
ポリクローナル抗体を用いる場合は、Ca2+を未保持のヒトCRPに対して結合しない抗体が含まれるため、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩によるキレート作用により、Ca2+を未保持のヒトCRPの増加により、抗原抗体反応の反応率の低下が生じる可能性がある。この場合は、抗原抗体の反応時に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩とほぼ同じ濃度のCa2+を存在させることにより、その影響を回避することができる。
【0076】
また、本実施例では、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む緩衝液の調製にクエン酸一水和物を使用したが、他のトリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩であってもよく、例えば、イソクエン酸、無水クエン酸、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸三カリウム一水和物、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸三リチウム四水和物、DL−イソクエン酸三ナトリウム、trans−アコニット酸、cis−アコニット酸無水物のいずれかを用いてもよい。また、これらを組み合わせて使用することもできる。
【0077】
(実施例2)
本実施例では、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸性反応系の効果を、免疫反応測定方法で一般的に使用されている中性反応系と対比した内容について示す。対比はヒトCRPを実施例1で作製したキットを用いた測定によって行った。
【0078】
また、比較例として中性反応系を構成するための緩衝液の構成には、モプスを使用し、その濃度および緩衝液のpHには一般的によく用いられるものを採用し、0.05Mモプス、pH7.4の組成とした(以下、モプス緩衝液と称する)。中性反応系の構成は、キットのクエン酸緩衝液を、上記モプス緩衝液で代用して行った。金コロイド溶液は、クエン酸緩衝液と同じものを用いた。
【0079】
測定に用いた各濃度のCRP溶液の調製は、精製ヒトCRP(Chemicon International製、Lot No.21042246)を、0.05Mモプス、0.04重量%NaN3、pH7.4の組成の緩衝液で希釈して調製した。ヒトCRP溶液の濃度は0、0.5、1、5、10、20mg/dlのものを用意した。抗原溶液は使用時まで4℃で保存した。
【0080】
緩衝液200μl、金コロイド溶液25μl、ヒトCRP溶液25μlを順に加えて、攪拌混合し、このうちの100μlを、実施例1で作製したイムノクロマトグラフィー測定装置のクッキングペーパー部へ滴下し、メンブレン上に展開した。滴下より1時間経過した後、メンブレン上の固定化部に捕捉された金コロイド粒子の量を、フライングスポットスキャニングデンシトメータ(型番CS−9300PC、島津製作所製)により、波長525nmで、固定化部付近をスキャンしながら反射吸光度測定した。測定は室温(約20℃)で行った。
【0081】
結果について示す。図1は各ヒトCRP溶液について測定した結果をプロットしたものである。縦軸はメンブレン上の固定化部における吸光度ピーク面積値を表し、横軸は測定に使用したヒトCRP溶液濃度で示した。吸光度ピーク面積値が大きい程、メンブレン上の固定化部にヒトCRPを介して捕捉された金コロイド標識抗体が多いことを表している。本実施例であるクエン酸緩衝液を使用した場合、反応時のイムノクロマトグラフィー展開部のpHは6に維持されていた。
【0082】
図1より、比較例であるモプス緩衝液を用いて測定した場合(白三角印)より、本実施例であるクエン酸を含む酸性反応系の場合(黒丸印)の方が、抗原過剰領域で生じる地帯現象による測定値の減少が抑えられていたことがわかる。
【0083】
以上の結果より、本発明の免疫反応測定キット及びそれを用いた免疫反応測定方法により、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和させ得ることが確認できた。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、抗原過剰領域で生じる地帯現象を緩和することが可能な免疫反応測定キット及びそれを用いた免疫反応測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における免疫反応測定キットを用いた免疫反応測定方法と比較例について、ヒトCRP測定を行った結果を示すグラフ
Claims (15)
- 液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部を備えた測定装置と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーを含むトレーサー含有試薬と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬とを備え、前記液体試料、前記トレーサー含有試薬及び前記酸含有試薬を混合することにより得られた混合液のpH、及び前記混合液を前記測定装置の前記展開部に展開し、前記混合液が前記固定化部に到達したときの前記混合液のpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする免疫反応測定キット。
- 液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置された測定装置と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬とを備え、前記液体試料及び前記酸含有試薬を混合することにより得られた混合液が前記展開部に展開され、前記混合液が前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記展開部に展開された前記混合液が、前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする免疫反応測定キット。
- 液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定するキットであって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置され、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達するまでの領域に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を含み、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする免疫反応測定キット。
- 展開部が、液体試料が毛細管現象によって流れることが可能な網目構造を持つ材料により構成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫反応測定キット。
- pHが6になるように設定されたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫反応測定キット。
- トリカルボン酸がクエン酸であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫反応測定キット。
- 被測定物質が抗原であり、前記抗原がその分子構造内に金属イオンを保持しており、前記抗原に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体が、前記抗原から前記金属イオンが脱離したときに、前記金属イオンを保持していない前記抗原とも特異的に結合する性質を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の免疫反応測定キット。
- 被測定物質が抗原であり、前記抗原が少なくとも1種類の抗体に対して複数の結合部位を持つ物質であり、前記抗原に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体が、前記抗原の前記複数の結合部位に結合するモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の免疫反応測定キット。
- 抗原がヒトC反応性蛋白質であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の免疫反応測定キット。
- 標識物質が着色粒子であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫反応測定キット。
- 着色粒子が金コロイドであることを特徴とする、請求項10記載の免疫反応測定キット。
- 液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部を備えた測定装置を提供する工程A、前記液体試料と、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーと、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬との混合液を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記混合液のpH、及び前記混合液を前記測定装置の前記展開部に展開し、前記混合液が前記固定化部に到達したときの前記混合液のpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする免疫反応測定方法。
- 液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置された測定装置を提供する工程A、前記液体試料と、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬との混合液を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記展開部に展開された前記混合液が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする免疫反応測定方法。
- 液体試料中に含まれる被測定物質である抗原もしくは抗体を定性または定量測定する方法であって、前記液体試料が展開される展開部、少なくとも前記展開部の一部に設けられ、被測定物質である抗原または抗体に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原が固定化された固定化部、及び少なくとも前記展開部の一部に設けられ、前記被測定物質に対して特異的に結合する特異結合物質である抗体または抗原に標識物質を結合させたトレーサーが前記液体試料とともに移動可能なように保持されたトレーサー保持部を備え、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部を経由した後前記固定化部に到達するように前記固体化部及び前記トレーサー保持部が配置され、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達するまでの領域に、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の塩を含む酸含有試薬を含む領域を備えた測定装置を提供する工程A、前記液体試料を前記展開部に展開する工程B、並びに前記固定化部で捕捉された前記トレーサーを検出する工程Cを含み、前記展開部に展開された前記液体試料が、前記トレーサー保持部に到達したときのpH、及び前記固定化部に到達したときのpHが酸性になるように設定されたことを特徴とする免疫反応測定方法。
- 工程Cにおいて、固定化部におけるトレーサーの捕捉に基づく光学的変化量を測定することにより、前記トレーサーを検出することを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1項に記載の免疫反応測定方法。
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JPWO2018012517A1 (ja) * | 2016-07-13 | 2018-07-19 | 積水メディカル株式会社 | イムノクロマトグラフィーを利用した検出方法 |
CN111157721A (zh) * | 2020-01-15 | 2020-05-15 | 珠海丽珠试剂股份有限公司 | 用于提高肺炎衣原体抗原/支原体抗原在免疫层析试剂中稳定性的包被液及其制备方法 |
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2002
- 2002-06-17 JP JP2002175469A patent/JP2004020369A/ja not_active Withdrawn
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