JPWO2004023007A1 - 密封装置 - Google Patents

Abstract

耐グリス性が向上する密封装置を提供する。シールリップ４の先端は、内部側接触角αが大気側接触角βと同等角度（α＝β）で、いわゆる三角リップに設けられている。よって内部のグリスの漏れを防ぐので、耐グリス性が向上する。また、シールリップ４の延びる方向が内部側Ｉと大気側Ａの中間であることから、内圧発生によるリップ反転等の不具合は発生しない。

Description

本発明は、例えば車両用駆動伝達軸のプロペラシャフト（ユニバーサルジョイント）等に用いられる密封装置に関するものである。

従来、この種の密封装置として適用されるものが特許文献１（特開平１１−１２５３３８号公報）や特許文献２（特開２００２−９８１６３号公報）に記載されている。
特に特許文献２に記載されたようなものの具体例を説明すると、図５に示すものがある（特許文献２の図２ 参照）。図５は従来技術に係る密封装置１０１の半断面図である。
図５において、十字軸の端部が挿嵌されるキャップと十字軸の端部との間に密封装置１０１が配置されている。
密封装置１０１は、取付部１０２がキャップに取り付けられている。取付部１０２表面には、金属環１０３が一体成形され、この金属環１０３がキャップに圧入嵌合されている。
そして、取付部１０２から延びるシールリップ１０４が十字軸の外周に摺動自在に密封接触する。
また、シールリップ１０４の大気側Ａでは２重のダストリップ１０５，１０６が十字軸の外周に摺動自在に接触する。
これらシールリップ１０４及びダストリップ１０５，１０６は、取付部１０２から大気側Ａに傾きながら内側の十字軸に延びている。
ここで、シールリップ１０４の先端は、内部側接触角αが大気側接触角βよりも小さな角度（α＜β）で、いわゆる外向きリップに設けられている。
このような外向きリップの接触角の関係となっているのは、内圧発生によるリップ反転が起きないようにするためと、内部側Ｉのベアリングに給脂されたグリスを大気側Ａへ逃がすようにするためであった。

しかしながら、上記従来技術では、シールリップ１０４からグリスが漏れることによってグリスの充填が確認できるものの、グリスの保持性（耐グリス性）の低下を引き起こすこととなっていた。
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐グリス性が向上する密封装置を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明にあっては、相対運動自在に配置された２部材のうち一方の部材に取り付けられる取付部と、該取付部から他方の部材に延びて他方の部材に摺動自在に密封接触するシールリップと、該シールリップよりも大気側で前記取付部から大気側に傾きながら他方の部材に延びて他方の部材に摺動自在に接触するダストリップと、を備え、前記シールリップは、内部側接触角が大気側接触角以上の大きな角度に設けられた。
したがって、シールリップの断面形状によって内部のグリスの漏れを防ぐので、耐グリス性が向上する。
ここで、内部側接触角とは、リップ断面の傾斜した内部側側面が接触する他方の部材の延出している内部側から大気側への軸方向となす角度であり、大気側接触角とは、リップ断面の傾斜した大気側側面が接触する他方の部材の延出している内部側から大気側への軸方向となす角度である。
前記シールリップは、延びる方向が内部側と大気側の中間以上に大気側へ傾いていることが好適である。
これにより、シールリップの延びる方向が内部側と大気側の中間又は大気側へ傾いているので、内圧発生によるリップ反転等の不具合は発生しない。
ここで、シールリップの延びる方向が内部側と大気側の中間とは、内部側から大気側へと向かう軸方向と垂直方向である。
前記ダストリップは、２つ重ねた２重シールであることが好適である。
これにより、ダストの侵入を防止してシール性をさらに高めることができる。
前記シールリップは、内部側接触角と大気側接触角とが略等しく、かつ、根本から延びる方向が内部側と大気側の略中間であり、当該延びる方向の直線に対して略対称な断面形状であることが好適である。
これにより、シールリップの剛性が高まり、シールリップの変形に起因する内部側接触角及び大気側接触角の角度の変動を抑え、シール性を安定させることができる。また、シールリップの剛性が高まることで、内圧発生によるリップ反転等の不具合をさらに発生させないようにできる。
本発明では、シールリップは内部側接触角が大気側接触角以上の大きな角度に設けられたことにより、シールリップの断面形状によって内部のグリスの漏れを防ぐので、耐グリス性が向上する。
また、シールリップの延びる方向が内部側と大気側の中間又は大気側へ傾いていることから、内圧発生によるリップ反転等の不具合は発生しない。

図１は第１実施の形態に係る密封装置とその周辺部を示す半断面図である。
図２は第１実施の形態に係る密封装置を示す半断面図である。
図３は第２実施の形態に係る密封装置を示す半断面図である。
図４は第３実施の形態に係る密封装置を示す半断面図である。
図５は従来技術の密封装置を示す半断面図である。

以下に図面を参照して、この発明の実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
（第１実施の形態）
以下に図１〜図２を用いて第１実施の形態について説明する。図１は第１実施の形態に係る密封装置１とその周辺部を示す半断面図である。図２は第１実施の形態に係る密封装置１を示す半断面図である。
図１のプロペラシャフト（ユニバーサルジョイント）は、有底円筒状のキャップ１１に十字軸１２の端部が挿嵌されている。十字軸１２の端部外周とキャップ１１の内周との間に複数の針状のベアリング１３が転動可能に配置されている。
このベアリング１３には、十字軸１２に通路を設けてグリスを供給する給脂が行われている。
そして、密封装置１は、このベアリング１３側を内部側Ｉとして、キャップ１１の開口端部の内周と十字軸１２の外周との間の環状隙間に配置されている。そして、密封装置１のベアリング１３側の内部側Ｉとは反対側を、装置外へ開放された大気側Ａとする。
密封装置１は、キャップ１１に取り付けられ、各種リップが十字軸１２に対して摺動自在に接触する構成である。
密封装置１の具体的な構成を説明する。密封装置１は、概略、ゴム状弾性体製や樹脂製であり、取付部２と、シールリップ４と、２つのダストリップ５，６と、から構成されている。
取付部２は、外周表面及び内部側Ｉ表面に金属環３が一体成形され、キャップ１１の開口端部の内周面に金属環３が圧入嵌合されて取り付けられている。
金属環３は、キャップ１１の開口端部の内周面に沿った円筒部３ａと、円筒部３ａの内部側端から内径方向に延出する円環部３ｂと、から構成されている。円環部３ｂは、針状のベアリング１３を案内するようにベアリング１３に隣接している。
シールリップ４は、密封装置１の最も内部側Ｉのリップで、すなわちベアリング１３に近い側のリップで、取付部２から内部側Ｉと大気側Ａの中間方向、すなわち内部側Ｉから大気側Ａへの軸方向と垂直方向へ十字軸１２に延びて十字軸１２に摺動自在に密封接触する。
ここで、図２に拡大して示すように、シールリップ４の先端は、内部側接触角αが大気側接触角βと同等角度（α＝β）で、いわゆる三角リップに設けられている。
内部側接触角αは、シールリップ４のリップ断面の傾斜した内部側Ｉ側面の先端が、十字軸１２の延出方向となる内部側Ｉから大気側Ａへの軸方向となす角度である。また、大気側接触角βは、シールリップ４のリップ断面の傾斜した大気側Ａ側面の先端が、十字軸１２の延出方向となる内部側Ｉから大気側Ａへの軸方向となす角度である。
また、２つのダストリップ５，６は、シールリップ４よりも大気側Ａで取付部２から大気側Ａに傾きながら十字軸１２に延びて十字軸１２に摺動自在に接触する。このように、ダストリップ５，６は、２つ重ねた２重シールであることで、ダストの侵入を防止してシール性をさらに高めることができる。
以上のような構成の密封装置１では、先端が三角リップに形成されたシールリップ４の断面形状によって内部のグリスの漏れを防ぐので、耐グリス性が向上する。
また、シールリップ４の延びる方向が内部側Ｉと大気側Ａの中間であることから、内圧発生によるリップ反転等の不具合は発生しない。
（第２実施の形態）
上記第１実施の形態では、シールリップ４は、内部側接触角αが大気側接触角βと同等角度（α＝β）である場合を説明したが、本発明はこれに限られず、内部側接触角αが大気側接触角β以上の角度（α≧β）を満たすものであれば同様の効果を発揮することができる。
すなわち、上記実施の形態に加え、内圧発生によるリップ反転等の不具合を発生させないものとして、シールリップ４の延びる方向が内部側Ｉと大気側Ａの中間以上に大気側Ａへ傾いていることを満たすものであれば同様の効果を発揮できる。
第２実施の形態として、図３には、シールリップ４の先端の内部側接触角αが大気側接触角βよりも大きい角度（α＞β）で、いわゆる逆オフセットリップに設けられているものを示す。図３は第２実施の形態に係る密封装置１を示す半断面図である。なお、第２実施の形態では、上記実施の形態で説明した同構成については同符号を付して説明を省略する。
図３の密封装置１では、シールリップ４は、取付部２から大気側Ａへ傾いて十字軸１２に延びて十字軸１２に摺動自在に密封接触する。
この図３のような構成の密封装置１でも、先端が逆オフセットリップに形成されたシールリップ４の断面形状によって内部のグリスの漏れを防ぐので、耐グリス性が向上する。しかも、いわゆる内向きリップに類似した形状であるため、図２のシールリップ４の断面形状よりもさらに耐グリス性が向上する。
また、シールリップ４の延びる方向が大気側Ａへ傾いていることから、図２と同様に内圧発生によるリップ反転等の不具合は発生しない。
（第３実施の形態）
上記実施の形態に加え、内圧発生によるリップ反転等の不具合を発生させないものとして、内部側接触角αと大気側接触角βとが等しく（α＝β）、かつ、シールリップ４の根本から延びる方向が内部側Ｉと大気側Ａの中間であることを満たすものであればさらなる効果を発揮できる。
第３実施の形態として、図４には、シールリップ４の内部側接触角αと大気側接触角βとが等しい角度（α＝β）で、取付部２につながる根本から先端に至っており、根本からいわゆる三角リップに設けられているものを示す。図４は第３実施の形態に係る密封装置１を示す半断面図である。なお、第３実施の形態では、上記実施の形態で説明した同構成については同符号を付して説明を省略する。
図４の密封装置１では、シールリップ４は、根本から内部側Ｉと大気側Ａの中間方向へ十字軸１２に延びて十字軸１２に摺動自在に密封接触する。
すなわち、シールリップ４は、内部側接触角αと大気側接触角βとが等しく、かつ、根本から延びる方向が内部側Ｉと大気側Ａの中間であり、この中間方向の直線に対して対称な三角リップの断面形状である。
この図４のような構成の密封装置１では、根本から三角リップに形成されたシールリップ４の断面形状によって内部のグリスの漏れを防ぐので、耐グリス性が向上する。
また、シールリップ４の延びる方向が内部側Ｉと大気側Ａの中間であることから、内圧発生によるリップ反転等の不具合は発生しない。
加えて、図４に示すようなシールリップ４の全体形状であることは、シールリップ４の剛性が高まり、シールリップ４の変形に起因する内部側接触角α及び大気側接触角βの角度の変動を抑え、シール性を安定させることができる。また、シールリップ４の剛性が高まることで、内圧発生によるリップ反転等の不具合をさらに発生させないようにできる。

Claims (4)

1. 相対運動自在に配置された２部材のうち一方の部材に取り付けられる取付部と、
   該取付部から他方の部材に延びて他方の部材に摺動自在に密封接触するシールリップと、
   該シールリップよりも大気側で前記取付部から大気側に傾きながら他方の部材に延びて他方の部材に摺動自在に接触するダストリップと、を備え、
   前記シールリップは、内部側接触角が大気側接触角以上の大きな角度に設けられた密封装置。
2. 前記シールリップは、延びる方向が内部側と大気側の中間以上に大気側へ傾いている請求の範囲第１項に記載の密封装置。
3. 前記ダストリップは、２つ重ねた２重シールである請求の範囲第１項又は第２項に記載の密封装置。
4. 前記シールリップは、内部側接触角と大気側接触角とが略等しく、かつ、延びる方向が内部側と大気側の略中間であり、当該延びる方向の直線に対して略対称な断面形状である請求の範囲第１項、第２項又は第３項に記載の密封装置。

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