JPWO2004016692A1 - ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
ポリフェニレンエーテル樹脂にスチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体や該共重合体の水添物のような耐衝撃性改良剤と特定の粒径と表面積を持つクレーを配合することで強靱性を備えた材料を得る技術が開示されている(特許文献1参照)。しかし、かかる技術ではクレーによる強靱性および表面平滑性の低下を十分には回避できない。
熱可塑性樹脂に無機質充填材を配合するに際し、無機質充填材粒子の界面の30%以上が弾性重合体と接するように配合することで剛性と耐衝撃性のバランスを改良する技術が開示されている(特許文献2参照)。無機質充填材粒子の界面に弾性重合体を接触させる方法の具体例として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたはγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランで表面処理したタルクと無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体またはシラン変性エチレン−エチルアクリレート共重合体とを予め溶液または溶融状態で混合した後、ナイロン6あるいはポリブチレンテレフタレートである熱可塑性樹脂と一緒に溶融混練する方法が記述されている。この場合、無機質充填材、弾性重合体および熱可塑性樹脂とを同時に溶融混練したのでは目的とする効果がでていない。特許文献2の本文中に熱可塑性樹脂の例としてポリフェニレンエーテル樹脂が記載されてはいるが、実施例からも分かるように実体はナイロン6、ポリブチレンテレフタレートの如き結晶性樹脂の改良技術であり、無機質充填材による表面平滑性および耐衝撃性の低下度合いが結晶性樹脂較べて極端に大きい非晶性樹脂の剛性、耐衝撃性および表面平滑性のバランスを向上させる技術にはなっていない。加えて、無機質充填材と弾性重合体を予め溶液状態で混合することは溶媒を使った弾性重合体の溶解や溶媒の除去に時間と多くの費用を要するために好ましくない。無機質充填材と弾性重合体を予め溶融混練する方法もこのための費用を必要とする上に、場合によっては弾性重合体の熱劣化による耐衝撃性の悪化を伴うために好ましくない。
一級または二級のアミノ基を有する水添された共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物ブロック共重合体と、非極性重合体、極性重合体および充填材の少なくとも1種とからなる構成により衝撃強度、機械的強度、粘着性および外観のバランスを改良する技術が開示されている(特許文献3参照)。特許文献3の本文中に非極性重合体の例としてポリフェニレンエーテル樹脂が、充填材の例としてカオリン等の無機質充填材がシラン処理品でも良いとして記載されてはいるが、実施例からも分かるように実体はポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリプロピレンとポリメチルメタクリレートのブレンド物の如き結晶性樹脂の改良技術である上に、無機質充填材の配合例もなく、ポリフェニレンエーテル樹脂と無機質充填材とを主体とする樹脂組成物の改良技術を示すものではない。
[特許文献1] 特表昭57−502063号公報
[特許文献2] 特開平8−53624号公報
[特許文献3] 欧州特許1245585A2号公報
本発明者らは、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーとよりなる樹脂組成物が本来持つ耐衝撃性や表面平滑性を殆ど損なうことなく剛性を賦与することを目的に鋭意検討を重ねた。その結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂にイミダゾリジノン化合物で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーおよびシラン化合物で表面処理した無機質充填材を配合することで耐衝撃性および剛性が向上し、無機質充填材の添加によって通常生ずる表面平滑性の低下が大幅に抑えられ、IZOD衝撃値や破断伸びは無機質充填材を配合してないものと比較してむしろ向上することを発見して目的を達成した。
即ち本発明は、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂および必要によりスチレン系樹脂10〜93重量%、(b)イミダゾリジノン化合物で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマー2〜20重量%および(c)シラン化合物で表面処理された無機質充填剤5〜60重量%とからなる剛性、耐衝撃性および表面平滑に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を提供するものである。
(式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6は炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン、水素等の一価の残基であり、R5,R6は同時に水素ではない)
を構成単位とする単独重合体(あるいは共重合体)が使用できる。
ポリフェニレンエーテル系樹脂の単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモポリマーが挙げられる。
ポリフェニレンエーテル共重合体は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体あるいはo−クレゾールとの共重合体あるいは2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等、ポリフェニレンエーテル構造を主体としてなるポリフェニレンエーテル共重合体を包含する。
また、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂中には、本発明の主旨に反しない限り、従来ポリフェニレンエーテル樹脂中に存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。少量共存させることができるフェニレンエーテルユニットの例としては、特開平1−297428号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。
また、ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合されていてもよい。
成分(a)として必要により用いられるスチレン系樹脂とは、スチレン系化合物、スチレン系化合物と共重合可能な化合物をゴム質重合体存在または非存在下に重合して得られる重合体である。
スチレン系化合物とは、一般式(2)で表される化合物を意味する。
(式中、Rは水素、低級アルキルまたはハロゲンを示し、Zはビニル、水素、ハロゲン及び低級アルキルよりなる群から選択され、pは0〜5の整数である。)
これらの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられ、スチレン系化合物と共に使用される。また、ゴム質重合体としては共役ジエン系ゴムおよび共役ジエンと芳香族ビニル化合物のコポリマーまたはこれらの水添物あるいはエチレン−プロピレン共重合体系ゴム等が挙げられる。本発明のために特に好適なポリスチレン系樹脂はポリスチレンおよびゴム強化ポリスチレンである。しかし、シンジオタクチックポリスチレンの如き結晶性のポリスチレンはポリフェニレンエーテル樹脂との相溶性が乏しいために好ましくない。
本発明において、成分(a)中のスチレン系樹脂は成形加工をより容易にするため耐熱温度を下げる目的で主に添加される。従って、その要求がないときには添加する必要がない。
本発明の成分(b)を構成するスチレン系熱可塑性エラストマーとは、ポリスチレンブロックとゴム中間ブロックとを有するブロック共重合体であり、ゴム中間ブロックとしてはポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(エチレン・ブチレン)、ポリ(エチレン・プロピレン)、ビニル−ポリイソプレン等が挙げられる。ゴム中間ブロックはこれらの組み合わせであっても良い。配列様式はリニアタイプでもラジアルタイプでも良い。またポリスチレンブロックとゴム中間ブロックにより構成されるブロック構造は二型、三型、四型の何れであっても良い。本発明の目的のために特に好適なのはポリスチレン−ポリ(エチレン・ブチレン)−ポリスチレン構造で構成される三型のリニアタイプのブロック共重合体であるが、ゴム中間ブロック中に30重量%を超えない範囲でブタジエン単位が含まれたものであっても良い。
本発明の成分(b)を構成する熱可塑性エラストマーを変性するために用いられるイミダゾリジノン化合物としては、例えば、1、3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジプロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−プロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−ブチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−メトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルエチレンチオウレア、N,N‘−ジエチルプロピレンウレア、N−メチル−N’−エチルプロピレンウレア、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等が挙げられ、中でも1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。
本発明の成分(c)を構成する無機質充填材は熱可塑性樹脂を強化するために一般的に用いられるものである。その具体例としては、ガラスフィラー、シリカ、ワラストナイト、アルミナ、タルク、マイカ、クレー類、酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。中でも本発明の目的のために好適なのはシリカ、タルク、マイカおよびクレー類等のミネラルフィラー類であり、特に好適なのは一次粒子の平均径が0.5μm以下のクレー類である。
無機質充填材の形状は特に限定されるものではなく、繊維状、鱗片状、針状、粒状のいずれであっても良いが、表面平滑性の観点からは非繊維状のものが好ましい。無機質充填剤は要求する物性バランスを満足するために二種以上を併用することもできる。
本発明の成分(c)において無機質充填材を表面処理するに用いられるシラン化合物は通常ガラスフィラーやミネラルフィラー等を表面処理するに用いられるものである。その具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン化合物、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド等の硫黄系シラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン化合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物等が挙げられる。シラン化合物は単独で用いても二種以上を併用しても良い。また異なるシラン化合物で表面処理した無機充填材を混合して用いることもできる。本発明の目的のために特に好適なのはメルカプトシラン化合物または該化合物を主体とするものである。
本発明の成分(C)の好適なものとしてはメルカプトシラン化合物で表面処理されたミネラルフィラーが挙げられ、更に好適なものとしてはメルカプトシラン化合物で表面処理されたクレーが挙げられる。
本発明において、成分(b)が1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン化合物で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーであり、成分(c)がメルカプトシラン化合物で表面処理されたクレーである場合に最も優れた物性バランスを持つポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を得ることができる。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物には、目的に応じて、成分(d)として芳香族燐酸エステル系難燃剤が添加されてもよい。芳香族燐酸エステル系難燃剤は特に限定されるものではないが、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジキシレニルフェニルホスフェート、ヒドロキシノンビスフェノール、レゾルシノールビスホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート等のトリフェニル置換タイプの燐酸エステル類が好適に用いられる。これらは単独でも二種以上組み合わせて用いても良い。
本発明において、成分(b)であるイミダゾリジノン化合物で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーの添加量は、2〜20重量%の範囲より選ばれる。樹脂組成物の耐衝撃性および表面平滑性の観点から2重量%以上であることが好ましく、樹脂組成物の剛性、機械的強度および成型品の層剥離防止の観点から20重量%以下であることが好ましい。
本発明において、成分(c)のシラン化合物で表面処理された無機質充填剤の添加量は5〜60重量%の範囲より選ばれる。樹脂組成物の剛性および機械的強度の観点から5重量%以上が好ましく、耐衝撃性および表面平滑性の観点から60重量%以下が好ましい。
成分(d)である芳香族燐酸エステル系難燃剤の添加量は、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物100重量部に対して5〜30重量部の範囲より選ばれる。難燃性の観点から5重量部以上が好ましく、耐熱性の観点から30重量部以下が好ましい。
本発明の樹脂組成物には必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤類や可塑剤、帯電防止剤、着色剤、離型剤等も添加することができる。
本発明の組成物の調整方法は特に限定されるものではないが、組成物を大量に安定して製造するには押出機が好適に用いられ、特に少なくとも2ヶ所の供給口を備えた二軸押出機が好適に用いられる。
各成分のすべてを押出機の第1供給口より供給して溶融混練することができるが、これらの成分を第1供給口と第2供給口に適宜分けて供給することも可能である。なお、成分(d)は第2供給口より供給することが好ましい。
本発明の樹脂組成物は1回の溶融混練で得られることが好ましい。前述の特許文献2(特開平8−53624号)で開示されるような方法(予め成分(b)と成分(c)を溶融混練してペレットを得た後にさらに樹脂と溶融混練する)は、場合によっては成分(b)が熱劣化することがあり、好ましくない。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は剛性が高く、かつ表面平滑性に優れる。無機質充填材を添加すると表面平滑性が悪化するのが普通であるが、本願発明の樹脂組成物は表面平滑性がよく、耐衝撃性や破断伸びは無機質充填材を添加しない樹脂組成物よりもむしろ向上する。このため、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物はポリフェニレンエーテル系樹脂の長所を備え、かつ剛性、耐衝撃性および表面平滑性のバランスに優れており、自動車分野、家電分野あるいはOA機器分野等の成形材料として極めて有用である。
実施例および比較例に示す各物性は組成物をペレット化して射出成形して得た試験片に付き、以下の測定法により測定したものである。
(1)落錘衝撃強さ(耐衝撃性)
50mm×90mm×2.5mm(厚さ)の平板を用い、東洋精機(株)製の落錘グラフィックインパクトテスターにより23℃における破壊時の全吸収エネルギーを測定。
(2)ノッチ付IZOD衝撃値(耐衝撃性)
ASTM D256に基づき23℃にて測定。
(3)曲げ弾性率(剛性)
ASTM D790に基づき23℃にて測定。
(4)破断伸び
ASTM D638に基づき23℃にて測定。
(5)グロス(表面平滑性)
50mm×90mm×2.5mm(厚さ)の平板を用い、(株)村上色彩技術研究所製のグロスメーターGM−26Dにより平板中央のグロスを測定。
使用した原材料は下記の通りである。
(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂
(a−1):固有粘度(クロロホルム溶媒で30℃にて測定)が0.43dl/gのポリマー片末端鎖がフェノール性水酸基を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル。
(a−2):PSジャパン(株)製ゴム強化ポリスチレンH9302
(b)スチレン系熱可塑性エラストマー
(b−1):官能基を有しないスチレン系熱可塑性エラストマー
旭化成(株)製タフテックH1041
(b−2):カルボニル基を有するスチレン系熱可塑性エラストマー
旭化成(株)製タフテックH1041を100部、無水マレイン酸1.0部および日本油脂(株)製パーブチルD0.5部を均一に混合した後、押出機を用いて260℃にて溶融混練することで官能基を有するスチレン系熱可塑性エラストマーを得た。ナトリウムメチラートを用いた滴定法によって求めたH1041に対する無水マレイン酸の付加量は0.4部であった。
(b−3):イミダゾリジノン化合物で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマー
窒素ガスで置換した攪拌機付きリアクターのシクロヘキサン溶剤中で、n−ブチルリチウムを重合開始剤として用い、数平均分子量が40000、結合スチレン30重量%、ブタジエンの1,2−ビニル結合量が38%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンの構造で、ポリマー鎖末端がリビングリチウムイオン構造を示すブロック共重合体を重合した。重合終了後、使用したn−ブチルリチウム量から重合体溶液中に存在するリチウムイオンに対して1.5倍モルの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを加え95℃にて10分間反応させた後、米国特許第4501857号に記載された方法にて水素添加反応をポリブタジエン部分のエチレン製不飽和結合量が20%未満になるまで定量的に継続して実施し、水素添加率81.6%のポリマーを得た。この水添反応後のポリマー溶液に熱劣化安定剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールをポリマー100gに対して0.3部添加し、溶剤であるシクロヘキサンを加熱除去し、ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、該ポリスチレン鎖末端に2級アミンが付加したスチレン系熱可塑性エラストマーを得た。
(c)無機質充填剤
(c−1):表面処理していない平均粒子径0.2μmのクレー
米国J.M.Huber社製ポリフィルHG90
(c−2):メルカプトシラン化合物で表面処理した平均粒子径0.2μmのクレー
米国J.M.Huber社製ニューキャップ290
(c−3):アミノシラン化合物で表面処理した平均粒子径0.2μmのクレー
米国J.M.Huber社製ニューロック390
(d)芳香族燐酸エステル系難燃剤
(d−1):ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート 大八化学(株)製CR741
使用した押出機は下記のものである。
独国Werner&Pfleiderer社製ベントポート付きZSK25二軸押出機。
[比較例1]
スチレン系熱可塑性エラストマーを(b−1)に替えた以外は実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
[比較例2]
無機質充填剤を(c−1)に替えた以外は実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
[比較例3]
スチレン系熱可塑性エラストマーを(b−2)に替えた以外は実施例2を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
[比較例4]
無機質充填剤(c−3)を添加せずに実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
[比較例5]
スチレン系熱可塑性エラストマーを(b−1)に替えた以外は実施例4を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
[比較例6]
表2に示す組成に替えた以外は実施例4を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。尚、該組成物の成型品を引っ張り試験した後の破断面には層剥離が見られた。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2002年8月13日出願の日本特許出願(特願2002−235553)、2003年2月26日出願の日本特許出願(特願2003−048752)、2003年3月3日出願の日本特許出願(特願2003−055139)、に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
ーテル系樹脂の欠点は金属に較べて剛性が低いことであり、剛性を上げるために無機質充填剤を配合する手法が一般に用いられる。ポリフェニレンエーテル系樹脂に無機質充填剤を添加した場合、剛性あるいは機械的強度は向上するが、耐衝撃性および表面平滑性の低下が伴う。ポリフェニレンエーテル系樹脂は非晶性樹脂であるため表面平滑性および耐衝撃性の低下度合いがナイロン樹脂やポリエステル樹脂等の結晶性樹脂に較べて極端に大きいために特に問題である。
本発明者らは、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーとよりなる樹脂組成物が本来持つ耐衝撃性や表面平滑性を殆ど損なうことなく剛性を賦与することを目的に鋭意検討を重ねた。その結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂にイミダゾリジノン化合物で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーおよびシラン化合物で表面処理した無機質充填剤を配合することで耐衝撃性および剛性が向上し、無機質充填剤の添加によって通常生ずる表面平滑性の低下が大幅に抑えられ、IZOD衝撃値や破断伸びは無機質充填剤を配合してないものと比較してむしろ向上することを発見して目的を達成した。
−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等、ポリフェニレンエーテル構造を主体としてなるポリフェニレンエーテル共重合体を包含する。
また、ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合されていてもよい。
スチレン系化合物とは、一般式(2)で表される化合物を意味する。
本発明の成分(b)を構成するスチレン系熱可塑性エラストマーとは、ポリスチレンブロックとゴム中間ブロックとを有するブロック共重合体であり、ゴム中間ブロックとしてはポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(エチレン・ブチレン)、ポリ(エチレン・プロピレン)、ビニル−ポリイソプレン等が挙げられる。ゴム中間ブロックはこれらの組み合わせであっても良い。配列様式はリニアタイプでもラジアルタイプでも良い。またポリスチレンブロックとゴム中間ブロックにより構成されるブロック構造は二型、三型、四型
の何れであっても良い。本発明の目的のために特に好適なのはポリスチレン−ポリ(エチレン・ブチレン)−ポリスチレン構造で構成される三型のリニアタイプのブロック共重合体であるが、ゴム中間ブロック中に30重量%を超えない範囲でブタジエン単位が含まれたものであっても良い。
無機質充填剤の形状は特に限定されるものではなく、繊維状、鱗片状、針状、粒状のいずれであっても良いが、表面平滑性の観点からは非繊維状のものが好ましい。無機質充填剤は要求する物性バランスを満足するために二種以上を併用することもできる。
本発明において、成分(b)が1,3−ジメチル−2―イミダゾリノン化合物で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマーであり、成分(c)がメルカプトシラン化合物で表面処理されたクレーである場合に最も優れた物性バランスを持つポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を得ることができる。
キシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジキシレニルフェニルホスフェート、ヒドロキシノンビスフェノール、レゾルシノールビスホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート等のトリフェニル置換タイプの燐酸エステル類が好適に用いられる。これらは単独でも二種以上組み合わせて用いても良い。
本発明において、成分(c)のシラン化合物で表面処理された無機質充填剤の添加量は5〜60重量%の範囲より選ばれる。樹脂組成物の剛性および機械的強度の観点から5重量%以上が好ましく、耐衝撃性および表面平滑性の観点から60重量%以下が好ましい。
本発明の樹脂組成物には必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤類や可塑剤、帯電防止剤、着色剤、離型剤等も添加することができる。
本発明の組成物の調整方法は特に限定されるものではないが、組成物を大量に安定して製造するには押出機が好適に用いられ、特に少なくとも2ヶ所の供給口を備えた二軸押出機が好適に用いられる。
本発明の樹脂組成物は1回の溶融混練で得られることが好ましい。前述の特許文献2(特開平8−53624号)で開示されるような方法(予め成分(b)と成分(c)を溶融混練してペレットを得た後にさらに樹脂と溶融混練する)は、場合によっては成分(b)が熱劣化することがあり、好ましくない。
実施例および比較例に示す各物性は組成物をペレット化して射出成形して得た試験片に付き、以下の測定法により測定したものである。
50mm×90mm×2.5mm(厚さ)の平板を用い、東洋精機(株)製の落錘グラフィックインパクトテスターにより23℃における破壊時の全吸収エネルギーを測定。
(2)ノッチ付IZOD衝撃値(耐衝撃性)
ASTM D256に基づき23℃にて測定。
(3)曲げ弾性率(剛性)
ASTM D790に基づき23℃にて測定。
(4)破断伸び
ASTM D638に基づき23℃にて測定。
(5)グロス(表面平滑性)
50mm×90mm×2.5mm(厚さ)の平板を用い、(株)村上色彩技術研究所製のグロスメーターGM−26Dにより平板中央のグロスを測定。
(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂
(a−1):固有粘度(クロロホルム溶媒で30℃にて測定)が0.43dl/gのポリマー片末端鎖がフェノール性水酸基を有するポリ(2,6−ジメチルー1,4−フェニレン)エーテル。
(a−2):PSジャパン(株)製ゴム強化ポリスチレンH9302
(b)スチレン系熱可塑性エラストマー
(b−1):官能基を有しないスチレン系熱可塑性エラストマー
旭化成(株)製タフテックH1041
(b−2):カルボニル基を有するスチレン系熱可塑性エラストマー
窒素ガスで置換した攪拌機付きリアクターのシクロヘキサン溶剤中で、n−ブチルリチウムを重合開始剤として用い、数平均分子量が40000、結合スチレン30重量%、ブタジエンの1,2−ビニル結合量が38%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンの構造で、ポリマー鎖末端がリビングリチウムイオン構造を示すブロック共重合体を重合した。重合終了後、使用したn−ブチルリチウム量から重合体溶液中に存在するリチウムイオンに対して1.5倍モルの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを加え95℃にて10分間反応させた後、米国特許第4501857号明細書に記載された方法にて水素添加反応をポリブタジエン部分のエチレン製不飽和結合量が20%未満になるまで定量的に継続して実施し、水素添加率81.6%のポリマーを得た。この水添反応後のポリマー溶液に熱劣化安定剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールをポリマー100gに対して0.3部添加し、溶剤であるシクロヘキサンを加熱除去し、ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、該ポリスチレン鎖末端に2級アミンが付加したスチレン系熱可塑性エラストマーを得た。
(c−1):表面処理していない平均粒子径0.2μmのクレー
米国J.M.Huber社製ポリフィルHG90
(c−2):メルカプトシラン化合物で表面処理した平均粒子径0.2μmのクレー
米国J.M.Huber社製ニューキャップ290
(c−3):アミノシラン化合物で表面処理した平均粒子径0.2μmのクレー
米国J.M.Huber社製ニューロック390
(d)芳香族燐酸エステル系難燃剤
(d−1):ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート 大八化学(株)製CR7
41
使用した押出機は下記のものである。
独国Werner&Pfleiderer社製ベントポート付きZSK25二軸押出機。
ポリフェニレンエーテル樹脂(a−1)、スチレン系熱可塑性エラストマー(b−3)、無機質充填剤(c−2)および2,6−ジ−t−ブチルー4−メチルフェノール(BHT)を二軸押出機の駆動側供給口より供給し、芳香族燐酸エステル系難燃剤(d−1)を押出機の側面の供給口より供給してシリンダー温度300℃、スクリュー回転数250rpmで溶融混練して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
[実施例2]
無機質充填剤を(c−3)に替えた以外は実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
スチレン系熱可塑性エラストマーを(b−1)に替えた以外は実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
[比較例2]
無機質充填剤を(c−1)に替えた以外は実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
[比較例3]
スチレン系熱可塑性エラストマーを(b−2)に替えた以外は実施例2を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
無機質充填剤(c−2)を添加せずに実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
[実施例3]
ポリフェニレンエーテル樹脂(a−1)の内の一部を押出機の側面の供給口より供給した以外は実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
ポリフェニレンエーテル樹脂(a−1)、スチレン系樹脂(a−2)、スチレン系熱可塑性エラストマー(b−3)、無機質充填剤(c−3)およびBHTを二軸押出機の駆動側供給口より供給してシリンダー温度300℃、スクリュー回転数250rpmで溶融混練して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
スチレン系熱可塑性エラストマーを(b−1)に替えた以外は実施例4を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
[比較例6]
表2に示す組成に替えた以外は実施例4を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。尚、該組成物の成型品を引っ張り試験した後の破断面には層剥離が見られた。
。
本出願は、2002年8月13日出願の日本特許出願(特願2002−235553)、2003年2月26日出願の日本特許出願(特願2003−048752)、2003年3月3日出願の日本特許出願(特願2003−055139)、に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
Claims (5)
- (a)ポリフェニレンエーテル系樹脂および必要によりスチレン系樹脂10〜93重量%、(b)イミダゾリジノン化合物で変性されたスチレン系熱可塑性エラストマー2〜20重量%および(c)シラン化合物で表面処理された無機質充填剤5〜60重量%からなるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
- 成分(c)の無機質充填材がメルカプトシラン化合物で表面処理されたミネラルフィラーである請求の範囲第1項に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
- 成分(c)の無機質充填材がメルカプトシラン化合物で表面処理されたクレーである請求の範囲第1項または第2項に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
- 成分(a)および成分(c)のみからなる樹脂組成物よりも高い耐衝撃強度および破断伸びを有する請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
- 請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の樹脂組成物100重量部および(d)芳香族燐酸エステル系難燃剤5〜30重量部からなるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
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