JPWO2004001402A1 - 生体分子解析装置 - Google Patents

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Abstract

本発明の生体分子解析装置は、生体分子の動的挙動を解析する生体分子解析装置であって、測定可能な状態に保持された生体分子を含む生物学的試料の少なくとも一つの観察領域に対応する画像を取得する画像取得手段と、この画像取得手段で取得した画像上の任意の点を指定する指定手段と、この指定手段で指定された点に対応する試料上の点位置に測定点を継続的に一致するように配置する配置手段と、この配置手段で配置された測定点から被測定物質の動的情報に由来する信号を測定する測定手段と、この測定手段で測定した結果を解析する解析手段と、を具備している。

Description

本発明は、試料内の複数の特定部位の統計的な性質や各部位間の相互作用などを求める生体分子解析装置に関する。
共焦点走査型光学顕微鏡に関しては、例えば文献 ”Confocal Microscopy”T.Wilson(ed.)Academic press(London)に解説がある。また、主に生物試料を対象とした解説として、文献”Handbook of Biological confocal Microscopy”J.B.Pawley(ed.)Plenum Press(New York)などがある。蛍光相関分光法に関しては、例えば文献”Fluorescence correlation spectroscopy”R.Rigler,E.S.Elson(eds.)Springer(Berlin)などの解説がある。
1990年代に入り、蛍光を用いた単一分子の検出・イメージングに関する研究が急増している。例えば単一分子の検出法として、文献 P.M.Goodwin etc.ACC.Chem.Res.(1996),Vol.29,p607−613、また蛍光相関分光法(FCS)などが挙げられる。蛍光相関分光法では、共焦点レーザー顕微鏡の視野の中で蛍光標識したタンパク質や担体粒子を溶液中に浮遊させ、これらの微粒子のブラウン運動に基づく蛍光強度のゆらぎを解析して自己相関関数を求め、対象とする微粒子の数や大きさなどを推測する。この技術については、例えば、特表平11−502608号や金城政孝「蛋白質 核酸酵素」(1999)Vol.44,No.9,p1431−1437に論じられている。
一方、上記の共焦点走査型顕微鏡および蛍光相関分光法に関して、いくつか特許出願がなされている。例えば、特開2001−194303号公報では、レーザー光をシリンドリカル・レンズに導き、これによりスポット光ではないライン状に連続した励起用の光ビームを形成して試料に照射する。このライン状の光ビームは、ガルバノ・ミラーによる光走査によってシリンドリカル・レンズの垂直方向に移動して、試料の撮像領域内全体を2次元的に励起する。試料からの蛍光信号はCCDのような2次元光検出器で画像化する。この方法では、シリンドリカル・レンズの走査速度より遅い並進拡散速度を有するような分子のみが励起されて画像上に蛍光が表示される。
また、特開平08−43739号公報、特開2000−98245号公報では、走査型光学顕微鏡において、多重染色された試料からの蛍光をそれぞれグレーティング、プリズムにより分光し、複数の光検出器により成分波長毎に検出を行なう。
特開平08−068694号公報では、光ファイバーを、液体試料を収容する反応容器中に侵入させることにより、空間的に離れた部位から蛍光相関解析を行なう。マルチプレクス処理により1本の光ビームを複数に分離することにより、複数の反応容器から別々の蛍光強度を検出することが開示されている。
特開平09−113448号公報では、複数個の反応容器をライン状に並べて、全ての反応容器を通過するように1本のレーザー光を照射し、各反応容器内の手前に集光レンズを配置することで全ての容器に1個の焦点を生じさせて、各反応容器内の試料について同時に蛍光相関解析を行なう。
特開平10−206742号公報では、レーザー走査型共焦点光学顕微鏡において、2つの独立した走査光学系によって、異なる時間の観察画像を取得し、画像を重ねたときの位置移動に基づいて標本の動的特性を求める。
従来行なわれている蛍光相関分光法では、視野内に存在する蛍光分子からの蛍光強度のゆらぎを観測し、これに基づいて時系列信号を得て、自己相関関数を求める。この場合、視野内に存在する蛍光分子が1種類のみであれば、得られた蛍光強度のゆらぎをそのまま解析することにより、蛍光分子の並進拡散速度などの情報を得ることができる。また、これら蛍光分子が移動したり、運動速度を変えたりしても、これらの変化を統計的に捉えることができる。発光波長の異なる2種類以上の蛍光分子が試料内に存在する場合は、波長分離を行なうことにより、それぞれの蛍光分子の自己相関や相互相関を求めることができる。しかし、同一視野内に限定されてしまう。
実際の生体細胞などを観測しようとする場合、細胞内外、細胞核内外での所望の分子の挙動をリアルタイムで観察することや、細胞内のシグナル伝達や物質輸送、細胞分裂などの事象について経時的な変化や局在情報を得ることが必要とされる。従来の蛍光相関分光法では、分子の集団としての状態変化や、挙動については捉えることができるが、細胞内外の所望の部位の状態変化などについて、ダイナミックに測定することは不可能であった。
本発明の目的は、対象となる試料の多様な動きや変化を捉えることができる生体分子解析装置を提供することにある。
(1)本発明の生体分子解析装置は、生体分子の動的挙動を解析する生体分子解析装置であって、測定可能な状態に保持された生体分子を含む生物学的試料の少なくとも一つの観察領域に対応する画像を取得する画像取得手段と、この画像取得手段で取得した画像上の任意の点を指定する指定手段と、この指定手段で指定された点に対応する試料上の点位置に測定点を継続的に一致するように配置する配置手段と、この配置手段で配置された測定点から被測定物質の動的情報に由来する信号を測定する測定手段と、この測定手段で測定した結果を解析する解析手段と、を具備している。
(2)本発明の生体分子解析装置は上記(1)に記載の装置であり、かつ前記画像取得手段で取得する画像は3次元領域を含む画像であり、
前記配置手段は、測定点を3次元上の任意の位置に配置する。
(3)本発明の生体分子解析装置は上記(1)に記載の装置であり、かつ前記測定手段は、同一の測定点から時間の異なる複数の信号を取得し、前記解析手段は、前記測定点間の出力を比較し演算する。
(4)本発明の生体分子解析装置は上記(1)に記載の装置であり、かつ前記測定手段は、光学的信号の強度を測定する。
(5)本発明の生体分子解析装置は上記(1)または(2)に記載の装置であり、かつ前記解析手段は、指定された点が属する試料上の成分に応じて適切な動的情報に関する演算式を用いて演算する。
(6)本発明の生体分子解析装置は上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の装置であり、かつ前記指定手段は、任意の2以上の点を指定可能に構成され、前記配置手段及び前記測定手段は、指定された2以上の点のそれぞれにおいて独立して機能し、前記解析手段は、前記2以上の点のそれぞれから得られた測定結果を比較可能に出力する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る生体分子解析装置の基本構成を示す図。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る生体分子解析装置の走査光学系の基本構成を示す図。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る生体分子解析装置の走査光学系の具体的な構成を示す図。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る生体分子解析装置の具体的な構成を示す図。
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る多数のレーザー光源と多数の光検出器を用いた走査光学系の構成を示す図。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る生体分子解析装置の構成を示す図。
図7は、本発明の第3の実施の形態に係る生体分子解析装置の構成を示す図。
図8A,Bは、本発明の第4の実施の形態に係る標準チャートの例を示す図。
図9は、本発明の第4の実施の形態に係る入力電圧に対する走査角の動的特性と静的特性を示す図。
図10は、本発明の第4の実施の形態に係る画像メモリ中に記録される画像を表す図。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る生体分子解析装置の基本構成を示す図である。本発明では、従来から用いられているレーザー走査型共焦点光学顕一微鏡をベースにしている。本第1の実施の形態では、微小な測定領域をレーザー共焦点光学系により実現する。微小な共焦点領域の形成のために、NA(開口数)1.0程度の大きさの開口数の対物レンズを用いる。これにより得られる共焦点領域は、直径0.6μm程度、長さ2μm程度の大きさの略円筒状となる。
図1では、二つの照明系S1a,S2a、二つの走査系S1b,S2b、及び二つの検出系S1c,S2cを備えている。照明系S1a,S2aは、それぞれレーザー光源1a,1b、及び第1レンズ2a,2bからなる。走査系S1b,S2bは、それぞれサーボ方式のガルバノスキャナー(ガルバノミラー)6a,6bからなる。ガルバノスキャナー6a,6bは、互いに走査方向が垂直方向になるように配置され、各々がレーザー光をX軸、Y軸走査するX軸走査スキャナとY軸走査スキャナからなる。検出系S1c,S2cは、それぞれ受光用レンズ9a,9b、受光用ピンホール8a,8b、及び光検出器10a,10bからなる。
まず、ステージST上に測定可能な状態で保持された生物学的試料(細胞)Sの画像を取得するために、第1の照明系S1a、第1の走査系S1b、及び第1の検出系S1cを用いる。レーザー光源1aから照射されたレーザー光は、第1レンズ2a、ダイクロイックミラー7a、及びミラー101を介して、ガルバノスキャナー6aに達する。レーザー光は、ガルバノスキャナー6aでXY走査され、ダイクロイックミラー100を透過し、対物レンズ5を介してステージST上の試料Sを照明する。
試料Sからの反射光および蛍光は、対物レンズ5を介してダイクロイックミラー100を透過し、ガルバノスキャナー6a、ミラー101、ダイクロイックミラー7a、ミラー91a、受光用レンズ9a、及び受光用ピンホール8aを介して光検出器10aで受光される。光検出器10aは、光学的信号の強度を測定する。光学的信号は、画像処理装置にてコントラスト向上、輪郭強調などの画像処理が行なわれた後、コンピューターに導かれ、TVモニター上で2次元画像となる。
次に、試料S内の蛍光分子の自己相関関数を取得するために、第2の照明系S2a、第2の走査系S2b、及び第2の検出系S2cを用いる。レーザー光源1bから照射されたレーザー光は、第1レンズ2b及びダイクロイックミラー7bを介して、ガルバノスキャナー6bに達する。レーザー光は、ガルバノスキャナー6bでXY走査され、ダイクロイックミラー100で反射され、対物レンズ5を介してステージST上の試料Sを照明する。これにより、レーザー光が微小な測定領域に存在する試料S内の蛍光分子を励起し、蛍光信号(フォトンパルス)が得られる。
得られた蛍光信号、すなわち蛍光分子からの蛍光の強度ゆらぎは、対物レンズ5を介してダイクロイックミラー100で反射し、ガルバノスキャナー6b、ダイクロイックミラー7b、ミラー91b、受光用レンズ9b、及び受光用ピンホール8bを介して光検出器10bで受光される。蛍光信号は、光検出器10bで光電流パルスに変換され、信号処理装置に導かれて波形整形、2値化処理などが行なわれ、コンピューター(相関解析装置)により蛍光相関分光法(FCS)で自己相関関数、相互相関関数などが求められる。ここで得られた自己相関関数から、蛍光分子の並進拡散運動の速度などの統計的な性質が求められる。なお、レーザー光をXY走査するために、ガルバノスキャナーに限らず、AOモジュレーター(AOD)やポリゴン鏡などを用いてもよい。
図2は、図1に示した生体分子解析装置の照明光学系、走査光学系、及び検出光学系の基本構成を示す図である。図2において図1と同一な部分には同符号を付してある。
レーザー光源1bから出射したレーザー光は、第1レンズ2bにより合焦(フォーカス)される。合焦位置には、照明光用ピンホール3bが配置されている。また、第2レンズ4のフォーカス位置に照明光用ピンホール3bの位置を合わせている。第2レンズ4は、対物レンズ5までコリメート光(平行光)を導く。また、対物レンズ5の焦点位置に試料面を合わせている。
レーザー光源1bから照射されたレーザー光は、第1レンズ2bと照明光用ピンホール3bを介してダイクロイックミラー7bを透過し、第2レンズ4を介して、X軸走査スキャナ61とY軸走査スキャナ62に達する。X軸走査スキャナ61とY軸走査スキャナ62は、互いに走査方向が直交している。レーザー光は、X軸走査スキャナ61とY軸走査スキャナ62により、それぞれX軸走査及びY軸走査され、試料S面内で2次元走査される。
試料S内の蛍光分子からの蛍光信号は、照射されたレーザー光と同じ光路を通って、第2レンズ4と照明光用ピンホール3bの間に配置されたダイクロイックミラー7bで反射される。この反射光は、第2レンズ4の焦点位置に配置された受光用ピンホール8bを通過して、受光用レンズ9bに導かれる。ダイクロイックミラー7bは、照射されたレーザー光(励起光)を透過し、蛍光分子から発せられた蛍光を反射させるスペクトル特性を持っている。受光用レンズ9bの焦点位置に受光用ピンホール8bが位置している。蛍光は、受光用レンズ9bを通って光検出器(受光器)10bに到達する。光検出器10bとしては、画像取得用のCCDカメラなどの2次元光検出器を用いる。蛍光の強度ゆらぎの測定には、APD(アバランシェフォトダイオード)、あるいは光電子増倍管などを用いる。
図3は、図1に示した生体分子解析装置の走査光学系の具体的な構成を示す図である。図3において図2と同一な部分には同符号を付してある。以下、レーザー光の3次元走査について図3を基に説明する。
図3の光学系は、光軸方向(Z軸方向)のフォーカス移動を実施できるよう構築されている。図3では、図2における照明光用ピンホール3bとダイクロイックミラー7bとの間に可動レンズ11が配置されている。この可動レンズ11を光軸方向に適量移動させることにより、レーザー光源1bの試料面でのフォーカス位置を光軸方向(Z軸方向)に変化させることができる。例えば、可動レンズ11をaの方向へ移動させると、試料面でのフォーカス位置はa’となる。逆に可動レンズをcの方向へ移動させると、試料面でのフォーカス位置はc’となる。
このように可動レンズ11を移動させることにより、可動レンズ11を通過した光束が可動レンズ11の移動量に応じた拡がり角を持つようになる。これにより、対物レンズ5を通過した照射レーザー光のフォーカス位置を光軸方向に適量移動させることができる。さらに、3次元走査を行なうことができると共に、試料内の3次元的位置に対して、照射レーザー光のフォーカスを試料の深さ方向に合わせられ、深さ方向に分布した所望の蛍光分子を励起することができる。
なお、光軸方向(Z軸方向)のフォーカス移動は、対物レンズ5を光軸方向に移動させることでも実施できる。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る生体分子解析装置の具体的な構成を示す図である。以下、生体分子解析装置の動作について図4を基に説明する。この装置では、レーザー走査型共焦点光学顕微鏡により試料の2次元、あるいは3次元画像をTVモニター上に得る。2次元画像を得るためのXYスキャナー21として、例えばガルバノスキャナーを用いてXY走査を行なう。これを、例えば第一走査系P1とする。もう一方のXYスキャナー22として第一走査系P1と同じガルバノスキャナーを用い、これを例えば第二走査系P2とする。
顕微鏡による観察画像を取得する場合、例えば第一走査系P1のXY走査により、細胞内にレーザー光を照射し、反射光、蛍光を光検出器10aで受光し、光強度信号を電気信号に変換し、信号処理装置28で波形整形した後、画像処理装置29で2次元画像を生成し、TVモニター30上に出力させる。また、上述した可動レンズまたは対物レンズ5を光軸方向に移動させることにより、レーザー光のフォーカス位置を光軸方向に沿って上下させることができる。これにより、3次元画像をTVモニター30上に生成させることができる。
2つのXYスキャナー21,22は、互いに直交する方向に走査されるように配置されており、コンピューター20によって制御されるXYスキャナー駆動装置23,24により、走査運動が精確に制御される。XYスキャナー駆動装置23,24には走査位置検出機構25が装備されており、走査位置がリアルタイムで精度良く検知され、コンピューター20にフィードバック制御される。これにより、試料S内をランダムにスキャンして、試料S内の所望の位置に存在する蛍光分子からの蛍光信号を2つ同時に測定することができる。なお、コンピューター20がXYスキャナー駆動装置23,24を制御することにより、試料S内の同一の位置から時間の異なる複数の蛍光信号を取得することもできる。
励起光としてのレーザーには、波長488nmのアルゴンレーザー、633nmのHe・Neレーザーを用いる。試料Sの細胞内の所望の箇所を標識する蛍光色素は、ローダミン・グリーン(RhG)、サイファイヴ(Cy5)を用いる。ローダミン・グリーン(RhG)は、レーザー光源1aからの波長488nmのアルゴンレーザーで励起する。サイファイヴ(Cy5)は、レーザー光源1bからの波長633nmのHe・Neレーザーで励起する。所望の箇所の蛍光色素分子からの蛍光は励起光と同じ光路を通り、それぞれの色素の発光波長に合わせて光学的に調整されたダイクロイックミラー26,27により、入射光路から分離されて光検出器10a,10bで受光される。
光検出器10a,10bに入射した光強度信号は電気信号に変換され、信号処理装置28で波形整形され、on−offの2値化パルスに変換されて、コンピューター20に導かれる。コンピューター20では、入力された2値化パルス信号に対して相関演算が行なわれ、自己相関関数が求められる。さらに、得られた自己相関関数から、蛍光分子の並進拡散速度や測定領域中の蛍光分子の数の変化などが求められる。光検出器10a,10bに入射する光強度信号が比較的大きい場合は、光検出器10a,10bから出力される電気信号は時系列信号となる。この場合は、その時系列信号を信号処理装置28でA/D変換し、デジタル信号に変換した後、波形整形を行ない、先と同様に2値化パルス信号に変換する。この2値化パルス信号をコンピューター20に導くことによって相関演算が行なわれ、自己相関関数が求められる。あるいは、デジタル化された時系列信号をそのままコンピューター20に導いて相関演算を行なってもよい。
観察画像上でのスキャンニングポイントの指定は、以下のように行なう。観察者は、TVモニター30上の観察画像を見ながら所望のポイントの蛍光分子からの発光を見出し、この点でXYスキャナー21,22の走査ミラーのスキャンを停止するように、コンピュータ20に付属の指定手段、例えば、キーボードやマウスポインタ等によって画像上のポイントを指定して走査ミラー駆動機構25に位置情報を伝えることによって、光軸が調整される。これにより、試料Sの3次元上の任意の位置に測定点が配置される。このときの走査ミラーの角度は走査位置検出機構25によって精度よく求められる。
図5は、多数の照明光学系と多数の検出光学系を用いた構成を示す図である。以下、多数のレーザー光源と多数の光検出器を用いた測定について図5を基に説明する。図5の構成は、基本的に1走査光学系、1検出光学系の場合と同様である。図5に示すように、三つのレーザー光源1a,1b,1cと四つの光検出器10a,10b,10c,10dを備えている。
レーザー光源1aは波長488nmのアルゴンレーザー、レーザー光源1bは波長514.5nmのアルゴンレーザー、レーザー光源1cは波長632.8nmのヘリウムネオンレーザーからなる。試料Sへの蛍光色素としては、ローダミングリーン(RhG)、テトラメチルローダミン(TMR)、サイファイヴ(Cy5)を用いる。波長488nmのアルゴンレーザーによりローダミングリーン(RhG)を励起する。波長514.5nmのアルゴンレーザーによりテトラメチルローダミン(TMR)を励起する。波長632.8nmのヘリウムネオンレーザーによりサイファイヴ(Cy5)を励起する。各蛍光色素は細胞内の所望の目的分子、例えばDNAを構成する塩基やコレステロールを標識する。これにより細胞内に取り込まれたときのコレステロールの凝集などの構造変化に関する情報を得る。
レーザー光源1aから照射されたレーザー光は、ダイクロイックミラー31aを透過し、ダイクロイックミラー26で反射され、XYスキャナー21とXYスキャナー22に達する。レーザー光源1bから照射されたレーザー光は、ダイクロイックミラー31bで反射され、ダイクロイックミラー31aで反射され、ダイクロイックミラー26で反射され、XYスキャナー22とXYスキャナー21に達する。レーザー光源1cから照射されたレーザー光は、ダイクロイックミラー31cで反射され、ダイクロイックミラー31bを透過し、ダイクロイックミラー31aで反射され、ダイクロイックミラー26で反射され、XYスキャナー21とXYスキャナー22に達する。レーザー光は、XYスキャナー21とXYスキャナー22により、対物レンズ5を介して試料S面内で走査される。
試料Sからの反射光および蛍光は、対物レンズ5、XYスキャナー21とXYスキャナー22を介してダイクロイックミラー26を透過し、ミラー32で反射され、ミラー33で反射される。ミラー33で反射されダイクロイックミラー34aで反射された前記反射光および蛍光は、レンズ35a、受光用ピンホール8a、及び受光用レンズ9aを介して、光検出器10aに受光される。同様に、ダイクロイックミラー34aを透過し、ダイクロイックミラー34b,34c,34dで反射された前記反射光および蛍光は、それぞれレンズ35b,35c,35d、受光用ピンホール8b,8c,8d、及び受光用レンズ9b,9c,9dを介して、光検出器10b,10c,10dに受光される。
図5では、レーザー光源のひとつを走査光学系、観察光学系として共有している。これはさらにレーザー光源を1個増やして4本として、そのうち1本を観察光学系として試料画像の取得に用い、他の3本を蛍光励起用に用いても良い。またレーザー光源はこれに限ることなく、5本以上としても良い。
このように、2個のXYスキャナー21,22を用いて、それぞれ互いに直交する方向に走査を行なう。本第1の実施の形態ではXYスキャナー2個を各レーザー光源1a,1b,1cで共有して、同じ方向にレーザー光を走査する構成になっているが、これに限ることなく、XYスキャナーを4個、あるいは6個用いて、それぞれのレーザー光について、別々な方向に走査しても良い。
また、走査位置検出機構によりXYスキャナーの角度を検知し、その位置でXYスキャナーを固定して、試料の目的分子の位置にレーザー光を照射し、目的分子からの蛍光信号を検出する。蛍光分子から発せられる蛍光信号をそれぞれ別々の光検出器10a,10b,10c,10dで受光する。得られた時系列パルス信号を信号処理装置で波形整形、2値化処理を行なって、コンピューターに導き、相関演算を行なって、それぞれ自己相関関数を求める。
本第1の実施の形態により、同一細胞内の異なる蛋白質などの目的分子の挙動を同時にリアルタイムで捉えることができる。また、異なる目的分子の相互相関についても情報を得ることができる。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る生体分子解析装置の構成を示す図である。図6において図1と同一な部分には同符号を付してある。
図6では、四つの照明系S11a,S12a、S22a、S32a、三つの走査系S11b,S12b、S13b、及び四つの検出系S11c,S12c、S22c、S32cを備えている。照明系S11a,S12a、S22a、S32aは、それぞれレーザー光源11a,11b、21b、31b及び第1レンズ12a、12b、22b、32bからなる。走査系S11b,S12b、S13bは、それぞれサーボ方式のガルバノスキャナー(ガルバノミラー)16a,16b、16cからなる。ガルバノスキャナー16a,16b、16cは、各々がX軸走査スキャナとY軸走査スキャナからなる。検出系S11c,S12c、S22c、S32cは、それぞれ受光用レンズ19a,19b、29b、39b、受光用ピンホール18a,18b、28b、38b及び光検出器110a,110b、210b、310bからなる。
まず、ステージST上に測定可能な状態で保持された生物学的試料(細胞)Sの画像を取得するために、第1の照明系S11a、第1の走査系S11b、及び第1の検出系S11cを用いる。レーザー光源11aから照射されたレーザー光は、第1レンズ12a及びダイクロイックミラー17aを介して、ガルバノスキャナー16aに達する。レーザー光は、ガルバノスキャナー16aでXY走査され、ダイクロイックミラー102で反射し、ダイクロイックミラー103を透過して、対物レンズ5を介してステージST上の試料Sを照明する。
試料Sからの反射光および蛍光は、対物レンズ5を介してダイクロイックミラー103を透過し、ダイクロイックミラー102で反射して、ガルバノスキャナー16b、ダイクロイックミラー17a、ミラー191a、受光用レンズ19a、及び受光用ピンホール18aを介して光検出器110aで受光される。光検出器110aは、光学的信号の強度を測定する。光学的信号は、画像処理装置にてコントラスト向上、輪郭強調などの画像処理が行なわれた後、コンピューターに導かれ、TVモニター上で2次元画像となる。
次に、試料S内の蛍光分子の自己相関関数を取得するために、例えば第2の照明系S12a、第2の走査系S12b、及び第2の検出系S12cを用いる。レーザー光源11bから照射されたレーザー光は、第1レンズ12b、ダイクロイックミラー17b、及びミラー104を介して、ガルバノスキャナー16bに達する。レーザー光は、ガルバノスキャナー16bでXY走査され、ダイクロイックミラー103で反射され、対物レンズ5を介してステージST上の試料Sを照明する。これにより、第1の実施の形態と同様にレーザー光が微小な測定領域に存在する試料S内の蛍光分子を励起し、蛍光信号(フォトンパルス)が得られる。
得られた蛍光信号、すなわち蛍光分子からの蛍光の強度ゆらぎは、対物レンズ5を介してダイクロイックミラー103で反射し、ガルバノスキャナー16b、ミラー104、ダイクロイックミラー17b、ミラー191b、受光用レンズ19b、及び受光用ピンホール18bを介して光検出器110bで受光される。蛍光信号は、光検出器110bで光電流パルスに変換され、信号処理装置に導かれて波形整形、2値化処理などが行なわれ、コンピューター(相関解析装置)により蛍光相関分光法(FCS)で自己相関関数、相互相関関数などが求められる。ここで得られた自己相関関数から、蛍光分子の並進拡散運動の速度などの統計的な性質が求められる。
上記の例では、蛍光分子の相関関数を取得するために、第2の照明系S12a、第2の走査系S12b、及び第2の検出系S12cの組み合わせを用いたが、その他、第3の照明系S22a、第2の走査系S12b、及び第3の検出系S22cの組み合わせと、第4の照明系S32a、第3の走査系S13b、及び第4の検出系S32cの組み合わせを用いることができる。すなわち、各光学系により個別に、試料内の所望の異なる部位に存在する蛍光分子からの自己相関関数または相互相関関数の取得を行なうことができる。各ガルバノスキャナー16a,16b、16cは互いに独立して動作し、試料内の異なる複数部位にレーザー光スポットを集光させる。あるいは、各ガルバノスキャナー16a,16b、16cを互いに連動させて、試料内の所望の一部位に同時にレーザー光スポットを集光させることもできる。
本第2の実施の形態では、蛍光色素を1種類としている。例えばローダミングリーン(RhG)を用い、レーザーはアルゴンレーザー(波長488nm)を用いる。アルゴンレーザーの出力光強度は例えば10mWとする。レーザーの出力光強度は大きければ大きいほど、強く蛍光色素を励起することができ、強い蛍光を受光することができる。しかし、レーザーの出力光強度が大きすぎると、バックグラウンドノイズが増大すると共に、蛍光色素を褪色させてしまうこともある。したがって、装置構成などにもよるが、10mW程度の出力光強度が適当である。
本第2の実施の形態によれば、試料内の所望の異なる部位に存在する蛍光分子からの蛍光の強度ゆらぎを光検出器で受光し、相関解析装置に導く。これにより得られる自己相関関数または相互相関関数から、蛍光色素が付けられた細胞などの状態や大きさなどを知ることができる。
図7は、本発明の第3の実施の形態に係る生体分子解析装置の構成を示す図である。図7において図6と同一な部分には同符号を付してある。
図7では、四つの走査系S11b,S12b、S13b、S14bを備えている。ステージST上に測定可能な状態で保持された生物学的試料(細胞)Sの画像を取得する動作手順は、第2の実施の形態と同様である。また、試料S内の蛍光分子の自己相関関数を取得するために、第2の照明系S12a、第2の走査系S12b、及び第2の検出系S12cを用いた場合の動作手順も、第2の実施の形態と同様である。
試料S内の蛍光分子の自己相関関数を取得するために、例えば第3の照明系S22a、第4の走査系S14b、及び第3の検出系S22cを用いる。レーザー光源21bから照射されたレーザー光は、第1レンズ22b及びダイクロイックミラー27bを介して、ガルバノスキャナー16dに達する。レーザー光は、ガルバノスキャナー16dでXY走査され、ダイクロイックミラー105で反射され、ダイクロイックミラー102、ダイクロイックミラー103、及び対物レンズ5を介してステージST上の試料Sを照明する。これにより、第1、第2の実施の形態と同様にレーザー光が微小な測定領域に存在する試料S内の蛍光分子を励起し、蛍光信号(フォトンパルス)が得られる。
得られた蛍光信号、すなわち蛍光分子からの蛍光の強度ゆらぎは、対物レンズ5、ダイクロイックミラー103、及びダイクロイックミラー102を介してダイクロイックミラー105で反射し、ガルバノスキャナー16d、ダイクロイックミラー27b、ミラー291b、受光用レンズ29b、及び受光用ピンホール28bを介して光検出器210bで受光される。また、第4の照明系S32a、第3の走査系S13b、及び第4の検出系S32cを用いた場合、レーザー光は、ガルバノスキャナー16cでXY走査される。
本第3の実施の形態では、レーザー光源、第1レンズ、ダイクロイックミラー、ミラー、受光用レンズ、受光用ピンホール、及び光検出器の組み合わせからなる各光学系に対して、それぞれ一組のガルバノスキャナーを用いた構成をなしている。これら各光学系では、レーザーの発振波長が異なり、またダイクロイックミラーの波長特性も異なる。
このような構成にすることで、各光学系により、ほぼ同一の集光位置に波長の異なるレーザー光を同時に集光させることができ、異なる蛍光色素からの蛍光を検出することができる。また、各光学系により、同一の対物レンズを介して試料内の異なる部位にレーザー光を照射することができる。このように、各光学系にて、独立して動作するガルバノスキャナーで走査をするため、各光学系により異なる位置にレーザー光が照射される。したがって、試料内の複数の離散的な部位にレーザー光スポットを同時に、またはタイミングをずらして集光させることができる。
なお、レーザー光源、第1レンズ、ダイクロイックミラー、ミラー、受光用レンズ、受光用ピンホール、及び光検出器の組み合わせからなる一つの光学系に対して、ガルバノスキャナーで構成される走査系を2組以上用いてもよい。
本第3の実施の形態によれば、試料内の所望の異なる部位に、同時にまたはタイミングをずらして、単一または複数の異なる波長からなるレーザー光をまたは複数の異なる波長のレーザー光を複数本照射し、蛍光分子からの蛍光を取得し、画像として記緑、観察すると共に、蛍光の強度ゆらぎから、演算により自己相関関数または相互相関関数などを取得することができる。
以下、第1〜3の実施の形態に示した生体分子解析装置において動的特性と静的特性を補正する方法について説明する。
レーザー顕微鏡で得た画像に表示される任意の点を選択して蛍光相関分光法(FCS)により一分子の蛍光分析を行なう場合、レーザー顕微鏡で得られる画像は走査手段を高速で駆動しながら描画されている。このため、走査手段は同じ制御信号を入力して静止させても、一般に異なる位置に停止する。特に、ガルバノスキャナーのような機械的な走査手段では、その影響は顕著である。よって、レーザー顕微鏡で得た画像に表示される目標に対して正しくレーザー光を静止させるには、何らかの補正手段が必要である。
1)標準チャートを用いる方法
図8A,Bは、標準チャートの例を示す図であり、図8Aは格子模様、図8Bはランダム模様である。この方法では、標準チャートを用意し、動的特性が静的特性と同じになるくらい低速で走査を行ない画像データを取得し、通常の高速走査で得た画像データと比較して補正データを得る。
この方法を実現する構成要素は、通常の高速走査で得た画像を記録する第1のメモリ、低速走査で得た画像を記録する第2のメモリ、第1のメモリと第2のメモリに記録された二つの画像を比較する演算装置、演算装置での比較結果(補正データ)を記録する第3のメモリ、レーザー顕微鏡で得た画像上で指定された位置を補正データを用いて制御データに変換する補正装置からなる。なお、通常これらメモリ、演算装置、補正装置は全てコンピュータで実現する。
以下、標準チャートを用いる方法の手順を説明する。標準チャートを構成する標準画像データは、図8A,Bに示すような格子データ、ランダムデータなどが考えられる。
まず、通常の高速走査で画像を取得して第1のメモリに記録する。そして、低速走査で画像を取得して第2のメモリに記録する。次に演算装置で、高速走査で得た画像と低速走査で得た画像との位置のずれ或いは歪みを比較し、その比較結果を第3のメモリに記録する。通常この比較には相関演算が用いられる。次に演算装置で、高速走査で得た画像の制御信号に対する低速走査で得た画像の制御信号の補正データを作成する。通常、この補正データは走査の角度を制御する電圧値である。なお、この補正データは、高速走査のスピード毎、走査角度毎に作成する。
図9は、入力電圧に対する走査角の動的特性と静的特性を示す図である。以下、図9を用いて上記の方法をより具体的に説明する。レーザー顕微鏡で高速走査を行なっている場合、電圧がいくつのときに走査角(画像上での位置)がどこか特定するのは難しい。実際には、電圧を軸として画像上での座標が決まる。
そこで、まず低速走査で得た画像の中で、図9に示すように観測点cを選択して電圧bを求める。次に、高速走査で得た画像の中からこの観測点c(電圧a)を見出し、低速走査で得た画像との位置の違いを求める。この差が静的特性と動的特性との差である。標準チャートを用いて画像全域に渡りこの補正データを設定しておくことにより、任意の位置で補正ができる。
実際に画像中で観測点を指定する場合、高速走査で得た画像上で観測点を指定し、レーザー光を観測点に停止させる場合は補正データを用いて電圧bを入力する。このようにして、レーザー顕微鏡で得た画像上で指定した任意の位置に、レーザー光を正確に固定できFCS測定を行なうことができる。この方法により、光学系の歪など全ての誤差を補正できる。
2)蛍光試料を用いる方法
蛍光色素を均一に塗布した試料に対して、走査手段を静止させてレーザー光を照射し退色させる。退色の仕方は、格子点状でもその他の模様でも良い。次に、通常の高速走査によりレーザー顕微鏡で得た蛍光画像を観察する。すると、退色した模様が画像上に現れている。この時の画像のずれから、動的特性と静的特性の差が明らかになる。
図10は、画像メモリ中に記録される画像を表す図である。画像中の各画素は、サンプリングされたときの走査手段の角度或いは制御電圧(制御入力)を軸に記録されていると考えることができる。まず、走査手段を停止させて蛍光色素を退色させる。その時の走査手段への制御入力を(a,b)とする。次に、通常のレーザー顕微鏡で得た蛍光画像を観察し、退色を確認した座標を(c,d)とする。この(a,b)と(c,d)の差が静的特性と動的特性との差である。
この差を求める手法として、一般に相関演算がある。画像全面に渡ってある間隔でこのような作業を行なえば、補正データを得ることができる。各画素毎の細かい補正は、実験で得た補正データを内挿することにより実施できる。実際の位置指定は、通常のレーザー顕微鏡で得た画像上で観察位置を指定(例えば(c,d))し、補正データを用いて(a,b)に変換すれば、正確な制御ができる。以上の方法により、顕微鏡画像から観察点を正確に設定できる。
本発明では、蛍光色素分子の励起用光源として、複数の連続発振レーザーあるいはパルスレーザーを測定点に応じて選択して(レーザーの波長を選択して)用い、細胞内領域で複数の所望の点を励起し、その蛍光強度のゆらぎを測定して、複数の種類の蛍光分子の並進拡散運動を解析することができる。この方法では、細胞核内外、細胞質内外で複数の目的分子をターゲットとして捉えることができ、細胞内のシグナル伝達や物質輸送、細胞分裂といった動的な変化を3次元的にリアルタイムで観察、記録しながら、解析を行なうことができる。また、細胞核内外における転写制御反応や情報伝達システムが明らかにされ得るので、ゲノム創薬研究において有益な情報を提供することができる。これらは従来の蛍光相関分光測定法では実現できなかったことである。
また、細胞内の所望の2種類の分子に対して、相互相関を測定したい場合、それぞれを異なる蛍光色素で標識し、蛍光信号を並列に同時に検出して、蛍光強度ゆらぎの時系列信号(分子の動的情報に由来する信号)の解析を行なう。これにより、両者の相関が明確になると共に、遊離している分子の数、結合している分子の数などの情報も得ることができる。また、異なる2以上の離散的な位置同士で、1以上の刺激による応答性を同時に経過測定するのに適している。
同じ細胞内でも、核付近の深部と外界に近い細胞膜の近傍では、PH、イオン濃度勾配、酸素濃度の違いや蛋白質の分布の偏在など、さまざまな違いが予想される。特に核内では、転写因子などの蛋白質の流入や流出、転写複合体の形成や解離などが起こり、時々刻々ダイナミックに変化している。このような細胞内の離散的な複数箇所の変化を、本発明によりリアルタイムに画像化するだけでなく、その挙動をそれぞれ統計的に解析し、動きの変化を解明することができる。また、互いの相関性についての情報も得ることができる。
以上のように本実施の形態によれば、共焦点走査型光学顕微鏡をベースにし、視野内の特定の部位が蛍光標識された生物学的試料にレーザー光を照射し、試料画像を観察、記録しながら、試料内の複数の特定部位からの蛍光の強度ゆらぎを相関解析し、該部位の統計的な性質や各部位間の相互作用などを求める。
すなわち、試料中に離散的に存在する所望の蛍光分子を認識し、視野内の2次元あるいは3次元画像を観察、記録すると共に、試料画像上での位置を検知しながら、蛍光分子からの蛍光強度のゆらぎを同時あるいは別々に検出する。そして、各々の蛍光分子の強度ゆらぎ(系列信号)の自己相関関数を解析するとともに、所望の異なる蛍光分子間の相互相関解析を行ない、測定点間の時間的、空間的な関連性を解析することができる。
このように、同一の細胞内の複数の部位について、これを同定して観察、記録しながら、それぞれの部位からの蛍光信号を個々に受光して相関解析を行ない、各部位の統計的な性質(拡散速度、粒子密度など)や異なる部位間の相関などを求める。これにより、従来解析できなかった、同一細胞内に存在する複数の所望の部位からのダイナミックな挙動や統計的性質の変化を求めることができる。
また、同時に複数の部位での相関解析を実行できるので、同一細胞内の異なる成分同士についての機能の比較検討をリアルタイムに解析できる。同様にして、組織上の別々の細胞についての同時比較も行なえる。さらに、細胞内または細胞間の異なる部位における経時的な変化についても、同時の比較検討によって解析することができる。なお、癌等の異変を細胞毎に生きたまま調べる場合にも、所望の対象部位について高精度に、且つ迅速に解析できるので、細胞診断の信頼性を向上するとともに、病理ないし再生医療に大きく貢献する。
本発明によれば、以下の生体分子解析装置を構成する。
(1).生体分子の動的挙動を解析する生体分子解析装置であって、
測定可能な状態に保持された生体分子を含む生物学的試料の少なくとも一つの観察領域に対応する画像を取得する画像取得手段と、
この画像取得手段で取得した画像上の任意の点を指定する指定手段と、
この指定手段で指定された点に対応する試料上の位置に測定点を配置する配置手段と、
この配置手段で配置された測定点から被測定物質の動的情報に由来する信号を測定する測定手段と、
この測定手段で測定した結果を解析する解析手段と、
を具備したことを特徴とする生体分子解析装置。
(2).前記画像取得手段で取得する画像は3次元領域を含む画像であり、
前記配置手段は、測定点を3次元上の任意の位置に配置することを特徴とする上記(1)に記載の生体分子解析装置。
(3).前記測定手段は、同一の測定点から時間の異なる複数の信号を取得し、前記解析手段は、前記測定点間の出力を比較し演算することを特徴とする上記(1)に記載の生体分子解析装置。
(4).前記測定手段は、光学的信号の強度を測定することを特徴とする上記(1)に記載の生体分子解析装置。
(5).前記解析手段は、蛍光強度のゆらぎを測定することを特徴とする上記(1)に記載の生体分子解析装置。
(6).前記解析手段は、蛍光相関分光法で前記蛍光強度のゆらぎを測定することを特徴とする上記(5)に記載の生体分子解析装置。
(7).前記画像取得手段は、レーザー走査型共焦点方式からなることを特徴とする上記(1)に記載の生体分子解析装置。
(8).前記画像取得手段は、ガルバノスキャナーを用いて前記試料を走査することを特徴とする上記(5)に記載の生体分子解析装置。
(9).前記測定手段は共焦点光学系からなることを特徴とする上記(1)に記載の生体分子解析装置。
(10).前記画像取得手段は、試料上の測定点に応じて波長を選択可能であることを特徴とする上記(1)に記載の生体分子解析装置。
(11).前記解析手段は、異なる前記被測定物質を自己相関と相互相関により相関解析することを特徴とする上記(1)に記載の生体分子解析装置。
(12).前記相関解析に用いる走査光学系は、前記画像取得手段の走査光学系と同じであることを特徴とする上記(11)に記載の生体分子解析装置。
(13).前記相関解析に用いる走査光学系は、前記画像取得手段の走査光学系と異なることを特徴とする上記(11)に記載の生体分子解析装置。
(14).前記走査光学系を少なくとも二つ設け、そのうち少なくとも一つを画像取得に用い、その他を前記相関解析に用いることを特徴とする上記(11)に記載の生体分子解析装置。
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されず、要旨を変更しない範囲で適宜変形して実施できる。
例えば、測定点から光強度以外にも明度ないし輝度に関する測定データを得るようにして、生体分子の活性度を解析するようにしてもよい。また、単一分子を検出する原理として、光学的偏光度や共鳴エネルギーの変化を測定するようにしてもよい。また、測定点として指定された試料上の部位における成分特性に応じて、異なる演算式の中から適切な式を選択して解析を行なうように解析手段を改良することによって、細胞内部や多種類の由来が異なる生体試料のような多様な物理学的環境にも対応して正確な解析結果を得るようにしてもよい。この場合、画像上で指定可能な点が属する試料表面及び/または内部の成分毎に適切な演算式を予めメモリに記憶しておいて、実際に指定された点に応じて最適な演算式を読み出して解析を行なうようにするとよい。
また例えば、上述した実施の形態では、蛍光相関分光法を用いた測定を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち本発明は、測定対象としての試料の特定部位または特定領域に限定して種々の光学特性(偏光、散乱、電気化学発光、共鳴エネルギー転移、プラズモン共鳴等)を測定する任意の微小光学測定に適用可能である。また、試料について取得する2次元乃至3次元画像は、1枚の静止画像に限らず、リアルタイムに逐次更新される複数の静止画像またはビデオ画像でもよい。こうすることで、更新された最新の試料画像に基づいて、所望のタイミングで測定用のポイントを任意の個数指定することができる。指定した個数が、同時に測定できる個数より多い場合には、所望の組合わせで測定ポイントをグループ化するような指定を行うことによって、グループ単位で複数のポイント毎に同時測定をすることも可能である。例えば、同時に比較したい異なる箇所同士のポイントを同じグループに分類するのが望ましい。また、本発明では、微小光学測定の種類によっては、画像取得のための照射光量と検出のための照射光量とを最適化するように設計するのが望ましい。例えば、上述した蛍光相関分光法では、光強度揺らぎを計測するために一定時間継続してレーザを照射するので、画像取得のための瞬間的な走査レーザに比べて弱いレーザ出力に設定するのが望ましい。また、独立した走査系で測定用ポイントを設定し得る例では、複数の測定ポイントにおいて測定する部位の光学特性や測定項目に応じて、最適な測定結果が得られるように任意のタイミングおよび照射時間に設定したり、レーザ光源からの出力を測定ポイント毎に異ならせることも可能である。また、光信号を得るための指標物質として、蛍光色素を用いたが、蛍光を発生し得る融合蛋白質(緑色蛍光蛋白質、黄色蛍光蛋白質等)や、化学発光物質、磁性物質等であってもよい。また、試料の保持手段も、細胞その他の任意な材料について自然の状態を保つ条件で適宜の容量を保持できれば、いかなる種類のものでも構わない。
本発明によれば、対象となる試料の多様な動きや変化を捉えることができる生体分子解析装置を提供できる。
すなわち本発明によれば、細胞内の離散的に存在する複数の微小領域の目的分子を顕微鏡観察、記録しながら、生体分子の動的挙動、数などについての情報や、所望の異なる分子間の相関を得ることができる。これにより、細胞内のシグナル伝達や物質移送、細胞分裂などの多彩な生命活動をリアルタイムで捉え、解析することができる。

Claims (6)

  1. 生体分子の動的挙動を解析する生体分子解析装置であって、
    測定可能な状態に保持された生体分子を含む生物学的試料の少なくとも一つの観察領域に対応する画像を取得する画像取得手段と、
    この画像取得手段で取得した画像上の任意の点を指定する指定手段と、
    この指定手段で指定された点に対応する試料上の点位置に測定点を継続的に一致するように配置する配置手段と、
    この配置手段で配置された測定点から被測定物質の動的情報に由来する信号を測定する測定手段と、
    この測定手段で測定した結果を解析する解析手段と、
    を具備したことを特徴とする生体分子解析装置。
  2. 前記画像取得手段で取得する画像は3次元領域を含む画像であり、
    前記配置手段は、測定点を3次元上の任意の位置に配置することを特徴とする請求項1に記載の生体分子解析装置。
  3. 前記測定手段は、同一の測定点から時間の異なる複数の信号を取得し、
    前記解析手段は、前記測定点間の出力を比較し演算することを特徴とする請求項1に記載の生体分子解析装置。
  4. 前記測定手段は、光学的信号の強度を測定することを特徴とする請求項1に記載の生体分子解析装置。
  5. 前記解析手段は、指定された点が属する試料上の成分に応じて適切な動的情報に関する演算式を用いて演算することを特徴とする請求項1または2に記載の生体分子解析装置。
  6. 前記指定手段は、任意の2以上の点を指定可能に構成され、前記配置手段及び前記測定手段は、指定された2以上の点のそれぞれにおいて独立して機能し、
    前記解析手段は、前記2以上の点のそれぞれから得られた測定結果を比較可能に出力することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の生体分子解析装置。
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