JPWO2003105909A1 - 肝虚血再灌流傷害の予防及び/又は治療のための医薬並びに移植肝臓の保護剤 - Google Patents

肝虚血再灌流傷害の予防及び/又は治療のための医薬並びに移植肝臓の保護剤 Download PDF

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Abstract

本発明の目的は、肝虚血再灌流傷害の予防及び/又は治療に有用な医薬を提供することである。本発明によれば、下記式(1)(式中、R1は、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基など;R2は、水素原子、アリールオキシ基など;R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基などを表す。)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む肝虚血再灌流傷害の予防及び/又は治療のための医薬並びに移植肝臓の保護剤が提供される。

Description

技術分野
本発明は、ピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む肝虚血再灌流傷害の予防及び/又は治療のための医薬並びに移植肝臓の保護剤に関する。
背景技術
肝内大血管、特に肝静脈根部や下大静脈に腫瘍の浸潤や圧排が見られるような肝悪性腫瘍は、その切除中に血管損傷による大量出血の危険がある。そのため、この様な症例に対して肝切除術を施す場合、肝臓の流入血管である門脈、肝動脈のみならず、流出血管である下大静脈のコントロールを行う全肝阻血が必要とされる。全肝阻血をin situで行う方法としては、Pringle法(一時的肝門脈全血行遮断)が代表的である。Pringle法による術後肝機能障害や肝移植における移植後早期の肝不全(primary graft non−function)などは虚血再灌流(以下、I/Rと略すことがある。)傷害と呼ばれている。I/R傷害は肝移植又は腫瘍切除のような肝臓外科手術において顕著な病態を呈し、死亡原因となることが広く認識されており(Ikeda,T.,et al.,Hepatology,16(2),454,1992)、臨床上極めて重大な問題である。
虚血は、一般に、臓器が体温に近い温度に置かれて血液による栄養や酸素などの補給がない状態である「温虚血」と、臓器が冷保存液(例えばUniversity of Wisconsin(UW)液)に浸され、栄養などの補給がない状態である「冷虚血」がある。臓器移植においては冷虚血のみならず、臓器の摘出や移植中の温虚血でも移植後の再灌流によって傷害が発生する。また、温I/R傷害の主要部位は肝細胞であり、冷I/R傷害の主要部位は類洞内皮細胞であるという報告もある(Ikeda,T.,et al.,Hepatology,16(2),454,1992)。
虚血状態になった組織では、細胞内のミトコンドリアでATPが分解されてヒポサンチンになる。そこに再灌流で酸素が供給されるとキサンチンオキシダーゼの作用でヒポキサンチンがキサンチンに変化し、その過程で酸素からスーパーオキシドが生じて活性酸素(反応性酸素種;ROS)による組織障害が始まるとされている。また、そのような虚血の組織には、しばしば好中球の湿潤があり、好中球の放出する活性酸素もまた組織障害を助長する結果となる。従って、I/R傷害が引き金となる組織生理学的イベントの多くは活性酸素の産生に媒介されており、活性酸素は直接に細胞障害を引き起こし、細胞の死滅や炎症を制御する細胞応答の活性化においてセカンドメッセンジャーとして働く(Kumamoto,Y.,et al.,Hepatology,30(6),1454,1999;Cutrin,JC.,et al.,Hepatology,31(3),622,2000)。
これまで、再灌流された器官に外部から抗酸化物質(フリーラジカルスカベンジャー)を送達する方法が、スーパーオキシドジスムターゼやカタラーゼなどの酵素を用いて試みられた(Chavez−Cartaya,R.,et al.,Tranpl.Int.,12(3),213,1999;Yabe,Y.et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,289(2),1176,1999)。しかしながら、このアプローチは酵素が不安定であることと、活性酸素が作用する細胞内部位への酵素の送達が不十分であるために限界があった。また他の方法として、上記酵素遺伝子を標的細胞に導入してタンパク質の発現を増加させる遺伝子治療も行われている(Lehamann,TG.et al.,Hepatology,32(6),1255,2000)。しかしながら、上記方法はいずれも、いくらかは満足すべき結果を達成しているものの、現在医療現場では方法の複雑さや倫理上の問題を含む種々の要因のために用いることができない。よって、活性酸素が肝I/R傷害をもたらす原因となっていることが示唆されているにも関わらず、これまで臨床現場では信頼性の高い抗酸化治療方法が利用できなかった。
一方、下記の一般式(I):
Figure 2003105909
(式中、Rは水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、Rは、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)
で表されるピラゾロン誘導体については、医薬の用途として、脳機能正常化作用(特公平5−31523号公報)、過酸化脂質生成抑制作用(特公平5−35128号公報、例1の化合物)、抗潰瘍作用(特開平3−215425号公報)、及び血糖上昇抑制作用(特開平3−215426号公報)等が知られている。
また、上記式(I)の化合物のうち、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンを有効成分とする製剤は、2001年6月以来、脳保護剤(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)として上市されている。この「エダラボン」は、活性酸素に対して高い反応性を有することが報告される(Kawai,H.,et al.,J.Phamacol.Exp.Ther.,281(2),921,1997;Wu,TW.et al.,Life Sci,67(19),2387,2000)。このように、エダラボンは活性酸素をはじめとする種々のフリーラジカルを消去することで、細胞障害などを防ぐ働きをするフリーラジカルスカベンジャーである。しかしながら、エダラボンが肝I/R傷害に対して有効であるか否かについては従来全く報告がない。
発明の開示
本発明の課題は、肝虚血再灌流傷害、特に肝温虚血再灌流傷害の予防及び/又は治療に有用な医薬並びに移植肝臓の保護剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を行った結果、式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が、肝温虚血モデルを用いた再灌流において肝臓障害を顕著に改善することを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成された。
即ち、本発明によれば、下記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む肝虚血再灌流傷害の予防及び/又は治療のための医薬並びに移植肝臓の保護剤が提供される。
Figure 2003105909
(式中、Rは、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表わし;Rは、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表わし;Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
本発明の好ましい態様によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である上記医薬が提供される。
本発明のもう1つの好ましい態様によれば、肝虚血再灌流傷害が肝温虚血再灌流傷害である上記医薬が提供される。
本発明の別の側面によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む移植肝臓の保護剤が提供される。保護剤が提供される場合の好ましい態様によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である保護剤が提供される。保護剤が提供される場合の別の好ましい態様によれば、保存液の形態である保護剤が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の予防及び/又は治療有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、肝虚血再灌流傷害の予防及び/又は治療方法が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、上記医薬や保護剤の製造のための式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用が提供される。
発明を実施するための最良の形態
本発明の肝虚血再灌流傷害の予防及び/又は治療のための医薬並びに移植肝臓の保護剤(以下、本発明の医薬及び保護剤と略すことがある。)は、本明細書に定義する式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含む。
本発明で用いる式(I)で示される化合物は、互変異性により、以下の式(I’)又は(I”)で示される構造をもとりうる。本明細書の式(I)には、便宜上、互変異性体のうちの1つを示したが、当業者には下記の互変異性体の存在は自明である。本発明の医薬及び保護剤の有効成分としては、下記の式(I’)又は(I”)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を用いてもよい。
Figure 2003105909
式(I)において、Rの定義におけるアリール基は単環性又は多環性アリール基のいずれでもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基などのほか、メチル基、ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、又は水酸基等の置換基で置換されたフェニル基等が挙げられる。アリール部分を有する他の置換基(アリールオキシ基など)におけるアリール部分についても同様である。
、R及びRの定義における炭素数1〜5のアルキル基は直鎖状、分枝鎖状のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシカルボニルアルキル基)におけるアルキル部分についても同様である。
の定義における総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。
の定義におけるアリールオキシ基としては、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、p−ヒドロキシフェノキシ基等が挙げられ、アリールメルカプト基としては、フェニルメルカプト基、p−メチルフェニルメルカプト基、p−メトキシフェニルメルカプト基、p−クロロフェニルメルカプト基、p−ヒドロキシフェニルメルカプト基等が挙げられる。
及びRの定義における炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。Rの定義における炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
の定義において、フェニル基の置換基における炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられ、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基としては、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等が挙げられ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等が挙げられる。
本発明の医薬及び保護剤の有効成分として好適に用いられる化合物(I)として、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3,4−ジメチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロピルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロポキシフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(3−メチル−5−オキソ−2−ピラゾリン−1−イル)安息香酸;
1−(4−エトキシカルボニルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ニトロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−エチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−3−プロピル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−フェニル−1−(p−トリル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,4−ジメチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−イソブチル−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェノキシ−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェニルメルカプト−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,3’,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−2−フェニル−2H−インダゾール−3−オン;
3−(エトキシカルボニルメチル)−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジメチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−エチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ブチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキエチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−シクロヘキシル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ベンジル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(α−ナフチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−メチル−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−アミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(アセトアミドフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
及び 1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン
本発明の医薬及び保護剤の有効成分としては、式(I)で表される遊離形態の化合物のほか、生理学的に許容される塩を用いてもよい。生理学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、臭化水素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、サリチル酸、ニコチン酸、酒石酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、エタノールアミン、N−メチルグルタミン、L−グルタミン等のアミンとの塩が挙げられる。また、グリシンなどのアミノ酸との塩を用いてもよい。
本発明の医薬及び保護剤の有効成分としては、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の水和物、又は上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の溶媒和物を用いてもよい。溶媒和物を形成する有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを例示することができる。また、上記式(I)で表される化合物は、置換基の種類により1以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。本発明の医薬及び保護剤の有効成分としては、純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などを用いてもよい。
式(I)で表される化合物はいずれも公知の化合物であり、特公平5−31523号公報などに記載された方法により当業者が容易に合成できる。
本発明の医薬及び保護剤の投与量は特に限定されないが、通常は、有効成分である式(I)で示される化合物の重量として一般に経口投与の場合には一日あたり0.1〜1000mg/kg体重、好ましくは一日あたり0.5〜50mg/kg体重であり、非経口投与の場合には一日あたり0.01〜100mg/kg体重、好ましくは0.1〜10mg/kg体重である。上記投与量は1日1回又は2〜3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減してもよい。
本発明の保護剤を保存液として用いる場合の有効成分である式(I)の含有量は、移植肝臓の状態や大きさ、患者(移植者、被移植者)の症状、体重、年齢や性別等を考慮して適宜決定すればよいが、10−9〜10−4Mとすることが望ましい。
本発明の医薬及び保護剤としては、上記一般式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物をそのまま投与してもよいが、一般的には、有効成分である上記の物質と薬理学的及び製剤学的に許容される添加物を含む医薬組成物を調製して投与することが好ましい。
薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を用いることができる。
経口投与に適する医薬組成物には、添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D−マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤を用いることができる。
注射あるいは点滴用に適する医薬組成物には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤等の添加物を用いることができる。
本発明の医薬及び保護剤の形態は特に限定されず、当業者に利用可能な種々の形態をとることができる。経口投与に適する医薬として、例えば、固体の製剤用添加物を用いて錠剤、散剤、顆粒剤、硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、又はトローチ剤などを調製することができ、液状の製剤用添加物を用いてシロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤などを調製することができる。また、非経口投与に適する医薬として、注射剤、点滴剤、吸入剤、坐剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤などを調製することができる。なお、上記の式(I)の化合物を有効成分とする脳保護剤(点滴剤)が、すでに臨床において使用されているので(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)、本発明の肝虚血再灌流傷害の予防・治療剤及び移植肝臓の保護剤として、上記市販製剤をそのまま用いることができる。
本発明の保護剤を保存液の形態として用いる場合には、添加物として、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、クエン酸緩衝液などの生理的に許容される緩衝液や等張化液を用いることができる。また従来より移植用臓器の保存液として臨床的に用いられているユーロ・コリンズ液(最終調製液100ml中に下記の組成を含む:リン酸一水素カリウム740mg;リン酸二水素カリウム205mg;塩化カリウム112mg;炭酸水素ナトリウム84mg;およびブドウ糖3.5g)やUW液(例えば、「ビアスパン」として市販されている。最終調製液1000ml中に下記の組成を含む:ペンタフラクション50g;ラクトビオン酸35.83g;リン酸二水素カリウム3.4g;硫酸マグネシウム1.23g;ラフィノース17.83g;アデノシン1.34g;アロプリノール0.136g;還元型グルタチオン0.922g;水酸化カリウム,適量;水酸化ナトリウム,pH7.4に調整)などと併用することも可能である。さらにグリシン、α−ケトグルタミン酸、ヒドロキシエチルスターチなどを配合することもできる。上記有効成分の濃度は特に限定されないが、グリシン、α−ケトグルタミン酸の場合には、一般的に0.1〜10mM程度の範囲、好ましくは2mM程度であり、ヒドロキシエチルスターチの場合、一般的には3〜7.5%程度の範囲、好ましくは約5%程度である。なお、既に述べたようにエダラボンの点滴剤が市販されているので、この市販製剤をそのまま用いることもできる。
本発明の医薬及び保護剤は、肝虚血再灌流傷害、好ましくは肝温虚血再灌流傷害に有効である。すなわち、本発明の医薬及び保護剤は、肝虚血再灌流傷害を防止する予防剤としての作用、及び肝虚血再灌流傷害を正常な状態に回復させる治療剤としての作用を有している。
本明細書において「肝虚血」とは、肝臓への血流が遮断または低下することによって肝細胞に酸素欠乏と栄養障害が起こり、肝機能が障害され、ついには変性、壊死などを呈する状態をいう。かかる肝虚血としては、例えば、肝臓(その一部も含む)摘出や移植の際に、肝臓の温度を体温に近い温度(37℃付近)に維持したまま肝門部などの血流を遮断することによってもたらされる「温虚血」、および冷保存液に摘出した肝臓を保存することによってもたらされる「冷虚血」があるが、本発明はこれらの両方を含む。また、本明細書において「肝虚血再灌流」とは、虚血状態になった肝臓に再灌流することをいい、「肝虚血再灌流傷害」とは該再灌流によって誘導される傷害をいう。特に、本明細書において「肝温虚血再灌流」とは、上記の「温虚血」状態になった肝臓に再灌流することいい、「肝温虚血再灌流傷害」とは、該再灌流によって誘導される傷害をいう。これらの用語は、上記の定義に合致するかぎり最も広義に解釈されるべきである。
肝虚血再灌流傷害としては、具体的には肝微小循環障害、肝組織障害、術後肝機能障害、移植後早期の肝不全(primary graft non−function)などが挙げられる。なお、肝温虚血再灌流傷害に相当する疾患であるか否かは熟練した医師ならば容易に診断可能である(例えばRalf,M.,et al.,Journal of Molecular Medicine,77,577−596,1999、Ikeda,T.et al.,Hepatology,16,454,1992参照)。
本発明の医薬及び保護剤の投与経路は特に限定されず、経口的又は非経口的に投与することができる。例えば、肝虚血再灌流に先立って予防的に本発明の医薬及び保護剤を経口投与しておくことができ、注射若しくは点滴などの非経口的投与によって肝虚血再灌流中又はその前後に予防的に投与することもできる。例えば、肝臓の血流を一時的に低下させる、あるいは遮断する手技を伴う手術に先立って経口的又は非経口的に投与しておくことが好ましい。また、肝虚血再灌流傷害を発症した患者に対しては、症状の悪化の防止ないしは症状の軽減などを目的として、静脈内、動脈内、又は心臓内に注射により投与することもできる。
本発明の保護剤を保存液として用いる場合には、摘出した移植肝臓を上述した添加物を含んだ態様の上記式(I)を含む溶液に浸漬し移植時まで保存すればよい。摘出した移植肝臓を初期洗浄操作に付した後に上記保存液に浸漬することが好ましいが、このような初期洗浄に保存液を用いてもよい。また、移植の直前に最終的な洗浄を行う際にも保存剤を用いることが可能である。
実施例
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
合成例:3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン(以下、エダラボンと称す)の合成 エタノール50ml中にアセト酢酸エチル13.0g及びフェニルヒドラジン10.8gを加え、3時間還流攪拌した。反応液を放冷後、析出した結晶をろ取し、エタノールより再結晶して、表題の化合物11.3gを無色結晶として得た。収率 67%融点 127.5〜128.5℃
実施例1:
(実験方法)
(1)肝温虚血モデルの作成及び再灌流
試験動物として体重220〜300gの雄性ウイスターラットを用い、ペントバルビタールナトリウム(50mg/kg、静脈投与)にて麻酔し、肝臓を次のようにして摘出(procure)した。総胆管には薄壁シリコン製のチューブ(0.3mm内径、0.64mm外径、Dow Corning Corp.,Midland,MI)をカニューレ挿入し、門脈には16−ゲージフッ素樹脂製カニューレを挿入した。その後、肝臓を乳酸塩リンゲル液で洗浄し、同溶液中37℃で1時間保存して温虚血状態にした。
保存後、肝臓を再循環式灌流システムに設置し、門脈カニューレを通して2時間12cmHOの圧力下で灌流した。灌流液としては100μg/lのヒアルロン酸(HA;和光純薬製)、60μMタウロコール酸ナトリウムを含むKrebs Henseleit炭酸塩緩衝液(KHB)300mlを用いた。KHB溶液は圧縮酸素膜内で95%Oと5%COの混合ガスに曝すると、灌流経路内で500mmHg以上の部分圧を発生する(Itasaka,H.,et al.,J.Surg.Res.,59(5),589,1995)。試験動物は3群(対照群、第1群、第2群)に分け、上記の方法に従って、対照群(n=4)は肝摘出後直ちにKHB溶液によって灌流し、第1群(n=5)は摘出した肝を1時間温虚血状態にした後、KHB溶液によって灌流し、第2群(n=5)は摘出した肝を1時間温虚血状態にした後、1mg/lのエダラボン(三菱ウェルファーマ製)を含むKHB溶液によって灌流した。
(2)評価方法
▲1▼門脈フロー
フロー変換器を備えた電磁極フローメーター(FF−050T型、内径5mm、日本光電製)によって継続的に測定した。
▲2▼総胆汁生産量
灌流期間の後、測定した。
▲3▼ヒアルロン酸(HA)量及びアラニントランスフェラーゼ(ALT)量
灌流液を再灌流開始時(0分)、及び再灌流後5,15,30,60及び120分に連続的にサンプリングし、文献(Itasaka,H.,et al.,J.Surg.Res.,59(5),589,1995)に記載に従ってヒアルロン酸(HA)及びアラニントランスフェラーゼ(ALT)量を分析した。
▲4▼マロンジアルデヒド(MDA)量
最灌流後60分における灌流液中のマロンジアルデヒド(MDA)量を市販のキット(Lipid Peroxidation assay kit;Calbiochem,San Diego,CA)を用いて分析した。
全ての値は平均値±SEMで表した。統計学的有意差を繰り返し試料のためのANOVAと、2つの群のHAとMDA量の違いを比較するためのMann−Whitney Uテストによって評価した。P<0.05を有意差ありとした。
▲5▼光学顕微鏡観察
光学顕微鏡により再灌流後の肝臓の壊死領域を観察した。
(3)実験結果
▲1▼門脈フロー
図1に、灌流後120分間の門脈フローの変化を示した。対照群の門脈フローは灌流期間を通じてほとんど一定の速度を維持した。60分保存後、再灌流における門脈フロー速度は対照群の約70%まで減少し、その後再灌流30分後まで徐々に増加した。第1群のフロー速度は30分後には減少したが(120分後における対照群の約45%)、第2群のフロー速度は60分後でも対照群と有意に異ならなかった(図1)。
▲2▼ヒアルロン酸(HA)量及びアラニントランスフェラーゼ(ALT)量
類洞内皮細胞の機能を評価する指標である再灌流後60分間におけるヒアルロン酸クリアランス速度(CrHA)は2つの群で有意差はなかった。この結果は、エダラボンによる保護部位が肝細胞であって、類洞内皮細胞ではないことを示唆する(Wang,L.,et al.,Transplactation,62(9),1217,1996)。
図2に、灌流後120分間のアラニントランスフェラーゼ(ALT)の変化を示す。第1群で観察された時間依存的なALT値の増加は灌流液へのエダラボンの添加によって有意に抑制された。
▲3▼総胆汁生産量
再灌流の120分間のタウロコール酸塩−誘導胆汁生産は第1群に比べて第2群において有意に増加した。
▲4▼マロンジアルデヒド(MDA)量
肝臓細胞膜脂質の過酸化のマーカーである灌流液中のMDA濃度は第1群よりも第2群において有意に減少した(第1群:97.4±19.3.nmol/l/g肝、第2群:29.7±5.7nmol/l/g肝、p<0.05)。この灌流液へのMDA放出量の減少は、再灌流肝におけるエダラボンのフリーラジカル捕獲活性を確実するにするものである。
▲5▼光学顕微鏡観察
光学顕微鏡による研究では、中心周囲から中心領域に優先的に観察された肝細胞壊死が第2群よりも第1群においてより顕著であった(第1群:38.0±4.6%、第2群:16.4±3.5%、p<0.05)。
以上の結果を表1にまとめて示した。
Figure 2003105909
以上の結果より、エダラボン(1mg/l)の灌流液への添加によって、門脈フロー、ALT値、灌流液へのMDA放出、総胆汁生産、組織学的変化(肝細胞壊死)が改善されたが、ヒアルロン酸のクリアランスによって評価される類洞内皮細胞機能は改善されなかった。従って、エダラボンは、酸化変化を受けている主要部位である肝細胞に作用して肝温I/R傷害の防御効果を発揮すると考えられる。
産業上の利用の可能性
本発明の医薬及び保護剤は肝虚血再灌流傷害の予防及び/又は治療に有用である。特に、本発明の医薬を含む灌流液を肝移植又は腫瘍切除のような肝臓外科手術において温虚血になった肝臓に再灌流を行う際に用いると、また本発明の保護剤を肝移植時に用いると再灌流による機能的・組織的肝臓障害を顕著に改善することができる。
本出願が主張する優先権の基礎となる出願である特願2002−172172の明細書に記載の内容は全て、本明細書の開示の一部として本明細書中に引用により取り込むものとする。
【図面の簡単な説明】
図1は、灌流後120分間の門脈フローの変化を示す。
図2は、灌流後120分間のアラニントランスフェラーゼ(ALT)の変化を示す。

Claims (7)

  1. 下記式(I):
    Figure 2003105909
    (式中、Rは、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表わし;Rは、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表わし;Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
    で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む肝虚血再灌流傷害の予防及び/又は治療のための医薬。
  2. 式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである請求項1に記載の医薬。
  3. 肝虚血が肝温虚血である請求項1又は2に記載の医薬。
  4. 肝虚血再灌流傷害が、肝微小循環障害、肝組織障害、術後肝機能障害、及び移植後早期の肝不全(primary graft non−function)から選ばれる疾患である請求項1から3のいずれかに記載の医薬。
  5. 下記式(I):
    Figure 2003105909
    (式中、Rは、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表わし;Rは、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R及びRは、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表わし;Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
    で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む移植肝臓の保護剤。
  6. 式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである請求項5に記載の移植肝臓の保護剤。
  7. 移植肝臓保護剤の形態が移植肝臓の保存液の形態である請求項5又は6に記載の移植肝臓の保護剤。
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