JPWO2003067979A1 - 臓器移植時に用いる薬剤 - Google Patents
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Abstract
本発明は下記式(I)のピラゾロン誘導体を有効成分として含有する移植用心臓の保存剤および心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤に関するものである。また、本発明は当該ピラゾロン誘導体を有効成分として含有し、ユーロ・コリンズ液を含まない移植用臓器の保存剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤に関する。(式中、R1は炭素数1から5のアルキル等を表し、R2は水素原子等を表し、R3はフェニル等を表す。)
Description
技術分野
本発明はピラゾロン誘導体を有効成分として含有する移植用心臓の保存剤および心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤に関するものである。さらに、ピラゾロン誘導体を有効成分として用いる心臓移植方法に関するものである。
背景技術
心臓移植手術のために臓器提供者(ドナー)から摘出された移植用心臓は、被移植者に移植されるまでの数分から数十時間のあいだ血流が途絶し、血流を介した酸素の供給がない状態(虚血状態)で保存される。
保存温度や保存液などの保存条件が適切に選択されなかったり、移植までに長時間を要すると、被移植者に移植され、血流を介した酸素の供給が回復した際(再灌流時)に、移植心臓に基質的あるいは機能的な障害が生じる場合がある。例えば、心臓移植後に認められる急性心不全等が挙げられる。このような障害は、一般的に移植心臓の虚血後再灌流障害とよばれている。
移植用臓器の保存方法としては、摘出後の移植用臓器を保存液中で冷却保存する方法が採用されている。移植用臓器の保存液としては、ユーロ・コリンズ液が用いられている(Euro−Collins液,Squifflet,J.P.,et al.,Transplant Proc.,13,693,1981他)。また、1987年に新しい保存液であるUW液が開発されており、移植用臓器の保存時間が飛躍的に延長されたことが報告されている(Wahlberg,J.A.,et al.,Transplantation,43,pp.5−8,1987;Kalayoglu,M.,et al.,Lancet,19,pp.617−619,1988;Jamieson,N.V.,Transplantation,46,pp.517−522,1988)。さらに、近年開発された細胞外液タイプの保存液(Celsior液)については、保存時間の延長および細胞内微細構築の良好な保存が確認され、さらに内因性一酸化窒素分泌誘発剤の投与による、形態的な虚血再灌流障害の抑制および心拍出量の改善が認められたとの報告がある(松本光司,J.Nippon Med. sch.68,p288,2001)。
一方、下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体については、医薬の用途として脳機能正常化作用(特公平5−31523号公報)、過酸化脂質生成抑制作用(特公平5−35128号公報)、抗潰瘍作用(特開平3−215425号公報)、血糖上昇抑制作用(特開平3−215426号公報)および移植臓器保存剤(特開平9−52801号公報)等が知られている。
この中で特開平9−52801号公報の実施例には腎臓移植時に上述したピラゾロン誘導体を用いることで腎移植後の腎障害を顕著に軽減したとの記載がある。しかしながら移植用臓器として用いているのは腎臓だけであり、心臓に対する効果についての記載もなければ、示唆ないし教示もされていない。
また、特開平9−52801号公報に記載された方法は、腎臓摘出前に3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンの投与を行っている。一方、腎臓と異なり生体内に1つしかない心臓を移植する場合には、臓器提供者(ドナー)は既に死亡状態であり、心臓摘出前に3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンを投与することによる十分な効果は期待し難い。
また、特開平9−52801号公報の実施例には腎臓移植時に上述の摘出臓器保存液であるユーロ・コリンズ液と3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンとの併用により腎障害を顕著に軽減したと記載されており、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンのみを用いた場合の効果については記載されておらず、示唆ないし教示もされていない。
さらに、上記式(I)の化合物は、2001年6月以来、脳保護剤(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)として上市されているが、この化合物が移植用心臓の保存液および心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤として有用であるという報告は未だかってなされていない。
発明の開示
本発明の課題は、移植用心臓の保存剤および心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤として有用な医薬並びに従来の保存液との併用が必須ではない移植用臓器の保存剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤として有用な医薬を提供することにある。
そこで本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、従来、脳保護作用を有することが知られていたピラゾロン誘導体、その水和物、またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含む医薬組成物が移植用心臓の保存剤および心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤として有用であることを見出し、さらに該有効成分を用いる移植方法が有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
(1)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する移植用心臓の保存剤。
(2)3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンまたはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する前記に記載の移植用心臓の保存剤。
(3)移植用心臓の保存液であることを特徴とする前記に記載の保存剤。
(4)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(5)3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンまたはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する前記に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(6)虚血後再灌流の直前に投与することを特徴とする前記に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(7)被移植者に投与することを特徴とする前記に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(8)血管内投与製剤であることを特徴とする前記に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(9)心臓移植に用いる心臓の保存液であることを特徴とする前記に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(10)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する移植用臓器の保存剤であって、ユーロ・コリンズ液を含まないことを特徴とする移植用臓器の保存剤。
(11)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有し、ユーロ・コリンズ液を含まないことを特徴とする臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(12)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を用いることを特徴とする心臓移植方法。
(13)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を用いる方法であって、ユーロ・コリンズ液を含まないことを特徴とする臓器移植方法。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の有効成分としては、前記式(I)で表されるピラゾロン誘導体において、R1の定義におけるアリール基は単環性又は多環性アリール基のいずれでもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基などのほか、メチル基、ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、又は水酸基等の置換基で置換されたフェニル基等が挙げられる。アリール部分を有する他の置換基(アリールオキシ基など)におけるアリール部分についても同様である。
R1、R2及びR3の定義における炭素数1から5のアルキル基は直鎖状、分枝鎖状のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシカルボニルアルキル基)におけるアルキル部分についても同様である。
R1の定義における総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。
R2の定義におけるアリールオキシ基としては、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、p−ヒドロキシフェノキシ基等が挙げられ、アリールメルカプト基としては、フェニルメルカプト基、p−メチルフェニルメルカプト基、p−メトキシフェニルメルカプト基、p−クロロフェニルメルカプト基、p−ヒドロキシフェニルメルカプト基等が挙げられる。
R2及びR3の定義における炭素数1から3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。R3の定義における炭素数5から7のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
R3の定義において、フェニル基の置換基における炭素数1から5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられ、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数1から3のアルキルメルカプト基としては、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基等が挙げられ、炭素数1から4のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等が挙げられ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等が挙げられる。
本発明の医薬の有効成分として好適に用いられる化合物(I)として、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3,4−ジメチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロピルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロポキシフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(3−メチル−5−オキソ−2−ピラゾリン−1−イル)安息香酸;
1−(4−エトキシカルボニルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ニトロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−エチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−3−プロピル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−フェニル−1−(p−トリル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,4−ジメチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−イソブチル−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェノキシ−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェニルメルカプト−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,3’,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−2−フェニル−2H−インダゾール−3−オン;
3−(エトキシカルボニルメチル)−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジメチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−エチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ブチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキエチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−シクロヘキシル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ベンジル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(α−ナフチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−メチル−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−アミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(アセトアミドフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;及び
1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン
本発明の医薬の有効成分としては、式(I)で表される遊離形態の化合物のほか、生理学的に許容される塩を用いてもよい。生理学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、臭化水素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、サリチル酸、ニコチン酸、酒石酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、エタノールアミン、N−メチルグルタミン、L−グルタミン等のアミンとの塩が挙げられる。また、グリシンなどのアミノ酸との塩を用いてもよい。
本発明の医薬の有効成分としては、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の水和物、又は上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の溶媒和物を用いてもよい。溶媒和物を形成する有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを例示することができる。
また、上記式(I)で表される化合物は、置換基の種類により1以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。本発明の医薬の有効成分としては、純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などを用いてもよい。
なお、該ピラゾロン誘導体には特公平5−31523号公報第5欄上段の化学構造式に示されるような互変異性体(下式(I’)または(I’’))が存在するが、本発明の医薬の有効成分には、これらの異性体のすべてが包含される。
本発明で用いられる前記式(I)のピラゾロン誘導体は、合目的な任意の方法により合成することができ、好ましい合成方法の例としては特開昭62−108814号公報および特公平5−31523号公報に記載されている方法が挙げられる。
本発明における移植用心臓の保存剤および移植用臓器の保存剤は有効成分である前記式(I)の化合物またはその塩の1種または2種以上をそのまま用いても良いが、好ましくは、有効成分と薬理学的および製剤学的に許容しうる添加物を加え、当業者に周知な形態の保存液として提供することができる。
移植用心臓の保存剤および移植用臓器の保存剤を、移植用心臓の保存液および移植用臓器の保存液として提供する場合には、添加物として、例えば、生理食塩水、プロピレングリコール等の溶解剤または溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基または有機塩基等のpH調節剤;リン酸緩衝生理食塩水、クエン酸緩衝液等の生理的に許容される緩衝液、安定化剤等を用いることができる。
また本発明によれば、従来から移植用臓器の保存液として臨床的に用いられているユーロ・コリンズ液やUW液などと併用することは必須ではないが、併用を妨げるものではない。ただし、移植臓器が腎臓である場合にはユーロ・コリンズ液を含むものは本発明の範囲外である。
さらにグリシン、α−ケトグルタミン酸、ヒドロキシエチルスターチなどを配合することもできる。上記有効成分の濃度は特に限定されないが、グリシン、α−ケトグルタミン酸の場合には、一般的に0.1から10mM程度の範囲、好ましくは 2mM程度であり、ヒドロキシエチルスターチの場合、一般的には3から7.5%程度の範囲、好ましくは約5%程度である。
一般的には、摘出した移植用心蔵を含む移植用臓器を上記態様の保存液に浸漬し、好ましくは4℃程度で移植時まで保存すればよい。摘出した移植用臓器を初期洗浄操作に付した後に上記保存液に浸漬することが好ましい。また、移植の直前に最終的な洗浄を行う際にも上記態様の保存液を用いることが可能である。洗浄液として上記保存液を用いる場合には、予め4℃程度に冷却しておくことが好ましい。
本発明の保存剤を使用することにより、移植後における心臓を含む臓器の虚血後再灌流障害を防止することが可能である。
本発明の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤としては、有効成分である前記式(I)の化合物またはその塩の1種または2種以上をそのまま患者に投与してもよいが、好ましくは、有効成分に薬理学的および製剤学的に許容しうる添加物を加え、当業者に周知な形態の製剤として提供することができる。
心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤として提供される場合においては、経口投与製剤および非経口投与製剤として使用することができ、好ましくは非経口投与製剤が挙げられ、さらに好ましくは注射製剤および点滴製剤から選ばれる血管内投与製剤が挙げられる。
経口投与に適する製剤には、薬理学的および製剤学的に許容しうる添加物として、ブドウ糖、乳糖、D−マンニトール、デンプン、または結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、またはカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤または崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウムまたはタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコールまたは酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、またはハードファット等の基剤、色素を用いることができる。
注射および点滴に適する製剤には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤または溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基または有機塩基等のpH調節剤、安定化剤等の製剤用添加物を用いることができる。
なお、上記の式(I)の化合物を有効成分とする脳保護剤(点滴剤)が、すでに臨床において使用されているので(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)、本発明における心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤においては上記市販製剤をそのまま用いることができる。
本発明における心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤の投与対象は特に限定されない。臓器提供者および被移植者のいずれにも投与することが可能であるが、好ましくは被移植者に投与する。さらに、上記医薬の投与経路は特に限定されず、経口的または非経口的に投与することができるが、好ましくは非経口的に投与され、さらに好ましくは血管内に投与される。
例えば、被移植者に対する移植手術中および/または術前・術後において被移植者に投与し、好ましくは被移植者に移植された心臓に血流が回復する虚血後再灌流の直前に投与する。一方、臓器提供者に対し、移植用臓器を摘出する手術の前および/または術中に投与することは必須ではないが、臓器提供者に投与することを決して妨げるものではない。
本発明における心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤の投与量は、移植臓器の保存の程度、臓器提供者や被移植者の状態などの条件に応じて適宜選択可能であるが、一般的には、成人に対して0.1から100mg/kg程度を注射または点滴により投与するか、0.1から100mg/kg程度を経口的に投与することが好ましい。注射により投与する場合には、例えば、特開昭63−132833号公報に記載された注射剤などを用いることが好適である。なお、本発明の医薬の有効成分である上記化合物は安全性が高く(マウス腹腔内投与LD50 2012mg/kg;ラット経口投与LD50 3,500mg/kg:Registry of Toxic Effects of Chemical Substances,1981−1982)、発癌性もないことが証明されている(National Cancer Institute Report,89,1978)。
本発明においては、前記式(I)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を用いて心臓移植または臓器移植をする方法も包含される。ただし、移植用臓器が腎臓である場合にはユーロ・コリンズ液を含まない移植方法であるとする。
実施例
以下の実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、ピラゾロン誘導体の代表化合物として1−フェニル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オンを用いた。
合成例:1−フェニル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オンの合成
エタノール50ml中にアセト酢酸エチル13.0gおよびフェニルヒドラジン10.8gを加え、3時間還流攪拌した。反応液を放冷後、析出した結晶をろ取し、エタノールより再結晶して、表題の化合物11.3gを無色結晶として得た。
収率 67%
融点 127.5から128.5℃
実験例1
20kg前後の雑種成犬7頭を用い、まず塩酸、ケタミン(ketamine hydrochloraide)10mg/kgおよびペントバルビタールナトリウム(pentobarbital sodium)30mg/kgを用いて全身麻酔とした。直ちに気管内挿管を行い、これを人工呼吸器に接続し、一回喚起量35ml/kg、呼吸回数15回/分、ルームエアー(room air)にて人工呼吸を行った。次に胸骨縦切開後、大血管へのへのトラッピング(traping)を行い、ヘパリンナトリウム(heparin sodium)3mg/kgを静注した。次いで腕頭動脈にカニュレーション(cannulation)し、ここから急速脱血を行い脈圧0をもって死亡を確認した後、北村の心肺回路(日胸外会誌 1976;24:36−45)を確立した。常温60分放置後にホットショット(Hot shot)(血液100mlとGIKIII液100ml(K23mEq/L、pH7.51、浸透圧470mOsm、グルコース50g/L、インシュリン20U/L)とを混合して作成した(最終カリウム濃度約12mEq/L)。)、さらに5分後に白血球を除去した乳酸リンゲル液による20%希釈血液を用いて再灌流を行った。3頭をコントロール群、4頭を1−フェニル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン投与群とし再灌流直前、および再灌流後5分、15分、30分、60分時のクレアチンホスホキナーゼ(creatine phospho kinase)−MB(以下、CPK−MBという。)を測定し増加量を評価した。また、1−フェニル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オンはホットショット液中に15mg、再灌流に用いた20%希釈血液中に15mg投与した。
CPK−MB60分値より30分値を引いた値は、コントロール群284.0±151.4ng/mlに対し、1−フェニル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン投与群では77.8±20.8ng/mlと有意に低値であった(p=0.0412)。
これらの結果から本発明のピラゾロン誘導体は心停止後60分間放置し、その後心臓の活動を再開させた場合に生じる障害を有意に抑制したことが明らかである。
産業上の利用可能性
本発明によれば、心臓移植時の保存剤、心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤、ユーロ・コリンズ液を含まない移植用臓器の保存剤およびユーロコリンズ液を含まない臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤を提供することが可能である。さらに、心臓移植方法およびユーロコリンズ液を含まないことを特徴とする臓器移植方法を提供することが可能である。
なお、本出願は、日本特許出願特願2002−39354号を優先権主張して出願されたものである。
本発明はピラゾロン誘導体を有効成分として含有する移植用心臓の保存剤および心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤に関するものである。さらに、ピラゾロン誘導体を有効成分として用いる心臓移植方法に関するものである。
背景技術
心臓移植手術のために臓器提供者(ドナー)から摘出された移植用心臓は、被移植者に移植されるまでの数分から数十時間のあいだ血流が途絶し、血流を介した酸素の供給がない状態(虚血状態)で保存される。
保存温度や保存液などの保存条件が適切に選択されなかったり、移植までに長時間を要すると、被移植者に移植され、血流を介した酸素の供給が回復した際(再灌流時)に、移植心臓に基質的あるいは機能的な障害が生じる場合がある。例えば、心臓移植後に認められる急性心不全等が挙げられる。このような障害は、一般的に移植心臓の虚血後再灌流障害とよばれている。
移植用臓器の保存方法としては、摘出後の移植用臓器を保存液中で冷却保存する方法が採用されている。移植用臓器の保存液としては、ユーロ・コリンズ液が用いられている(Euro−Collins液,Squifflet,J.P.,et al.,Transplant Proc.,13,693,1981他)。また、1987年に新しい保存液であるUW液が開発されており、移植用臓器の保存時間が飛躍的に延長されたことが報告されている(Wahlberg,J.A.,et al.,Transplantation,43,pp.5−8,1987;Kalayoglu,M.,et al.,Lancet,19,pp.617−619,1988;Jamieson,N.V.,Transplantation,46,pp.517−522,1988)。さらに、近年開発された細胞外液タイプの保存液(Celsior液)については、保存時間の延長および細胞内微細構築の良好な保存が確認され、さらに内因性一酸化窒素分泌誘発剤の投与による、形態的な虚血再灌流障害の抑制および心拍出量の改善が認められたとの報告がある(松本光司,J.Nippon Med. sch.68,p288,2001)。
一方、下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体については、医薬の用途として脳機能正常化作用(特公平5−31523号公報)、過酸化脂質生成抑制作用(特公平5−35128号公報)、抗潰瘍作用(特開平3−215425号公報)、血糖上昇抑制作用(特開平3−215426号公報)および移植臓器保存剤(特開平9−52801号公報)等が知られている。
この中で特開平9−52801号公報の実施例には腎臓移植時に上述したピラゾロン誘導体を用いることで腎移植後の腎障害を顕著に軽減したとの記載がある。しかしながら移植用臓器として用いているのは腎臓だけであり、心臓に対する効果についての記載もなければ、示唆ないし教示もされていない。
また、特開平9−52801号公報に記載された方法は、腎臓摘出前に3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンの投与を行っている。一方、腎臓と異なり生体内に1つしかない心臓を移植する場合には、臓器提供者(ドナー)は既に死亡状態であり、心臓摘出前に3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンを投与することによる十分な効果は期待し難い。
また、特開平9−52801号公報の実施例には腎臓移植時に上述の摘出臓器保存液であるユーロ・コリンズ液と3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンとの併用により腎障害を顕著に軽減したと記載されており、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンのみを用いた場合の効果については記載されておらず、示唆ないし教示もされていない。
さらに、上記式(I)の化合物は、2001年6月以来、脳保護剤(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)として上市されているが、この化合物が移植用心臓の保存液および心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤として有用であるという報告は未だかってなされていない。
発明の開示
本発明の課題は、移植用心臓の保存剤および心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤として有用な医薬並びに従来の保存液との併用が必須ではない移植用臓器の保存剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤として有用な医薬を提供することにある。
そこで本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、従来、脳保護作用を有することが知られていたピラゾロン誘導体、その水和物、またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含む医薬組成物が移植用心臓の保存剤および心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤として有用であることを見出し、さらに該有効成分を用いる移植方法が有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
(1)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する移植用心臓の保存剤。
(2)3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンまたはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する前記に記載の移植用心臓の保存剤。
(3)移植用心臓の保存液であることを特徴とする前記に記載の保存剤。
(4)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(5)3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンまたはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する前記に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(6)虚血後再灌流の直前に投与することを特徴とする前記に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(7)被移植者に投与することを特徴とする前記に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(8)血管内投与製剤であることを特徴とする前記に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(9)心臓移植に用いる心臓の保存液であることを特徴とする前記に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(10)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する移植用臓器の保存剤であって、ユーロ・コリンズ液を含まないことを特徴とする移植用臓器の保存剤。
(11)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有し、ユーロ・コリンズ液を含まないことを特徴とする臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
(12)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を用いることを特徴とする心臓移植方法。
(13)下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を用いる方法であって、ユーロ・コリンズ液を含まないことを特徴とする臓器移植方法。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の有効成分としては、前記式(I)で表されるピラゾロン誘導体において、R1の定義におけるアリール基は単環性又は多環性アリール基のいずれでもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基などのほか、メチル基、ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、又は水酸基等の置換基で置換されたフェニル基等が挙げられる。アリール部分を有する他の置換基(アリールオキシ基など)におけるアリール部分についても同様である。
R1、R2及びR3の定義における炭素数1から5のアルキル基は直鎖状、分枝鎖状のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシカルボニルアルキル基)におけるアルキル部分についても同様である。
R1の定義における総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。
R2の定義におけるアリールオキシ基としては、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、p−ヒドロキシフェノキシ基等が挙げられ、アリールメルカプト基としては、フェニルメルカプト基、p−メチルフェニルメルカプト基、p−メトキシフェニルメルカプト基、p−クロロフェニルメルカプト基、p−ヒドロキシフェニルメルカプト基等が挙げられる。
R2及びR3の定義における炭素数1から3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。R3の定義における炭素数5から7のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
R3の定義において、フェニル基の置換基における炭素数1から5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられ、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数1から3のアルキルメルカプト基としては、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基等が挙げられ、炭素数1から4のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等が挙げられ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等が挙げられる。
本発明の医薬の有効成分として好適に用いられる化合物(I)として、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3,4−ジメチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロピルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロポキシフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(3−メチル−5−オキソ−2−ピラゾリン−1−イル)安息香酸;
1−(4−エトキシカルボニルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ニトロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−エチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−3−プロピル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−フェニル−1−(p−トリル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,4−ジメチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−イソブチル−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェノキシ−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェニルメルカプト−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,3’,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−2−フェニル−2H−インダゾール−3−オン;
3−(エトキシカルボニルメチル)−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジメチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−エチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ブチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキエチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−シクロヘキシル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ベンジル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(α−ナフチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−メチル−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−アミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(アセトアミドフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;及び
1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン
本発明の医薬の有効成分としては、式(I)で表される遊離形態の化合物のほか、生理学的に許容される塩を用いてもよい。生理学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、臭化水素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、サリチル酸、ニコチン酸、酒石酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、エタノールアミン、N−メチルグルタミン、L−グルタミン等のアミンとの塩が挙げられる。また、グリシンなどのアミノ酸との塩を用いてもよい。
本発明の医薬の有効成分としては、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の水和物、又は上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の溶媒和物を用いてもよい。溶媒和物を形成する有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを例示することができる。
また、上記式(I)で表される化合物は、置換基の種類により1以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。本発明の医薬の有効成分としては、純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などを用いてもよい。
なお、該ピラゾロン誘導体には特公平5−31523号公報第5欄上段の化学構造式に示されるような互変異性体(下式(I’)または(I’’))が存在するが、本発明の医薬の有効成分には、これらの異性体のすべてが包含される。
本発明で用いられる前記式(I)のピラゾロン誘導体は、合目的な任意の方法により合成することができ、好ましい合成方法の例としては特開昭62−108814号公報および特公平5−31523号公報に記載されている方法が挙げられる。
本発明における移植用心臓の保存剤および移植用臓器の保存剤は有効成分である前記式(I)の化合物またはその塩の1種または2種以上をそのまま用いても良いが、好ましくは、有効成分と薬理学的および製剤学的に許容しうる添加物を加え、当業者に周知な形態の保存液として提供することができる。
移植用心臓の保存剤および移植用臓器の保存剤を、移植用心臓の保存液および移植用臓器の保存液として提供する場合には、添加物として、例えば、生理食塩水、プロピレングリコール等の溶解剤または溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基または有機塩基等のpH調節剤;リン酸緩衝生理食塩水、クエン酸緩衝液等の生理的に許容される緩衝液、安定化剤等を用いることができる。
また本発明によれば、従来から移植用臓器の保存液として臨床的に用いられているユーロ・コリンズ液やUW液などと併用することは必須ではないが、併用を妨げるものではない。ただし、移植臓器が腎臓である場合にはユーロ・コリンズ液を含むものは本発明の範囲外である。
さらにグリシン、α−ケトグルタミン酸、ヒドロキシエチルスターチなどを配合することもできる。上記有効成分の濃度は特に限定されないが、グリシン、α−ケトグルタミン酸の場合には、一般的に0.1から10mM程度の範囲、好ましくは 2mM程度であり、ヒドロキシエチルスターチの場合、一般的には3から7.5%程度の範囲、好ましくは約5%程度である。
一般的には、摘出した移植用心蔵を含む移植用臓器を上記態様の保存液に浸漬し、好ましくは4℃程度で移植時まで保存すればよい。摘出した移植用臓器を初期洗浄操作に付した後に上記保存液に浸漬することが好ましい。また、移植の直前に最終的な洗浄を行う際にも上記態様の保存液を用いることが可能である。洗浄液として上記保存液を用いる場合には、予め4℃程度に冷却しておくことが好ましい。
本発明の保存剤を使用することにより、移植後における心臓を含む臓器の虚血後再灌流障害を防止することが可能である。
本発明の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤としては、有効成分である前記式(I)の化合物またはその塩の1種または2種以上をそのまま患者に投与してもよいが、好ましくは、有効成分に薬理学的および製剤学的に許容しうる添加物を加え、当業者に周知な形態の製剤として提供することができる。
心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤として提供される場合においては、経口投与製剤および非経口投与製剤として使用することができ、好ましくは非経口投与製剤が挙げられ、さらに好ましくは注射製剤および点滴製剤から選ばれる血管内投与製剤が挙げられる。
経口投与に適する製剤には、薬理学的および製剤学的に許容しうる添加物として、ブドウ糖、乳糖、D−マンニトール、デンプン、または結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、またはカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤または崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウムまたはタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコールまたは酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、またはハードファット等の基剤、色素を用いることができる。
注射および点滴に適する製剤には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤または溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基または有機塩基等のpH調節剤、安定化剤等の製剤用添加物を用いることができる。
なお、上記の式(I)の化合物を有効成分とする脳保護剤(点滴剤)が、すでに臨床において使用されているので(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)、本発明における心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤においては上記市販製剤をそのまま用いることができる。
本発明における心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤の投与対象は特に限定されない。臓器提供者および被移植者のいずれにも投与することが可能であるが、好ましくは被移植者に投与する。さらに、上記医薬の投与経路は特に限定されず、経口的または非経口的に投与することができるが、好ましくは非経口的に投与され、さらに好ましくは血管内に投与される。
例えば、被移植者に対する移植手術中および/または術前・術後において被移植者に投与し、好ましくは被移植者に移植された心臓に血流が回復する虚血後再灌流の直前に投与する。一方、臓器提供者に対し、移植用臓器を摘出する手術の前および/または術中に投与することは必須ではないが、臓器提供者に投与することを決して妨げるものではない。
本発明における心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤および臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤の投与量は、移植臓器の保存の程度、臓器提供者や被移植者の状態などの条件に応じて適宜選択可能であるが、一般的には、成人に対して0.1から100mg/kg程度を注射または点滴により投与するか、0.1から100mg/kg程度を経口的に投与することが好ましい。注射により投与する場合には、例えば、特開昭63−132833号公報に記載された注射剤などを用いることが好適である。なお、本発明の医薬の有効成分である上記化合物は安全性が高く(マウス腹腔内投与LD50 2012mg/kg;ラット経口投与LD50 3,500mg/kg:Registry of Toxic Effects of Chemical Substances,1981−1982)、発癌性もないことが証明されている(National Cancer Institute Report,89,1978)。
本発明においては、前記式(I)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を用いて心臓移植または臓器移植をする方法も包含される。ただし、移植用臓器が腎臓である場合にはユーロ・コリンズ液を含まない移植方法であるとする。
実施例
以下の実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、ピラゾロン誘導体の代表化合物として1−フェニル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オンを用いた。
合成例:1−フェニル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オンの合成
エタノール50ml中にアセト酢酸エチル13.0gおよびフェニルヒドラジン10.8gを加え、3時間還流攪拌した。反応液を放冷後、析出した結晶をろ取し、エタノールより再結晶して、表題の化合物11.3gを無色結晶として得た。
収率 67%
融点 127.5から128.5℃
実験例1
20kg前後の雑種成犬7頭を用い、まず塩酸、ケタミン(ketamine hydrochloraide)10mg/kgおよびペントバルビタールナトリウム(pentobarbital sodium)30mg/kgを用いて全身麻酔とした。直ちに気管内挿管を行い、これを人工呼吸器に接続し、一回喚起量35ml/kg、呼吸回数15回/分、ルームエアー(room air)にて人工呼吸を行った。次に胸骨縦切開後、大血管へのへのトラッピング(traping)を行い、ヘパリンナトリウム(heparin sodium)3mg/kgを静注した。次いで腕頭動脈にカニュレーション(cannulation)し、ここから急速脱血を行い脈圧0をもって死亡を確認した後、北村の心肺回路(日胸外会誌 1976;24:36−45)を確立した。常温60分放置後にホットショット(Hot shot)(血液100mlとGIKIII液100ml(K23mEq/L、pH7.51、浸透圧470mOsm、グルコース50g/L、インシュリン20U/L)とを混合して作成した(最終カリウム濃度約12mEq/L)。)、さらに5分後に白血球を除去した乳酸リンゲル液による20%希釈血液を用いて再灌流を行った。3頭をコントロール群、4頭を1−フェニル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン投与群とし再灌流直前、および再灌流後5分、15分、30分、60分時のクレアチンホスホキナーゼ(creatine phospho kinase)−MB(以下、CPK−MBという。)を測定し増加量を評価した。また、1−フェニル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オンはホットショット液中に15mg、再灌流に用いた20%希釈血液中に15mg投与した。
CPK−MB60分値より30分値を引いた値は、コントロール群284.0±151.4ng/mlに対し、1−フェニル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン投与群では77.8±20.8ng/mlと有意に低値であった(p=0.0412)。
これらの結果から本発明のピラゾロン誘導体は心停止後60分間放置し、その後心臓の活動を再開させた場合に生じる障害を有意に抑制したことが明らかである。
産業上の利用可能性
本発明によれば、心臓移植時の保存剤、心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤、ユーロ・コリンズ液を含まない移植用臓器の保存剤およびユーロコリンズ液を含まない臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤を提供することが可能である。さらに、心臓移植方法およびユーロコリンズ液を含まないことを特徴とする臓器移植方法を提供することが可能である。
なお、本出願は、日本特許出願特願2002−39354号を優先権主張して出願されたものである。
Claims (13)
- 下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは炭素数1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する移植用心臓の保存剤。 - 3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンまたはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する第1項に記載の移植用心臓の保存剤。
- 移植用心臓の保存液であることを特徴とする第1項または第2項に記載の保存剤。
- 下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。 - 3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンまたはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する第4項に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
- 虚血後再灌流の直前に投与することを特徴とする第4項または第5項に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
- 被移植者に投与することを特徴とする第4項から第6項のいずれかに記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
- 血管内投与製剤であることを特徴とする第4項から第7項のいずれかに記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
- 心臓移植に用いる心臓の保存液であることを特徴とする第4項または第5項に記載の心臓移植後の虚血再灌流障害抑制剤。
- 下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有する移植用臓器の保存剤であって、ユーロ・コリンズ液を含まないことを特徴とする移植用臓器の保存剤。 - 下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を有効成分として含有し、ユーロ・コリンズ液を含まないことを特徴とする臓器移植後の虚血再灌流障害抑制剤。 - 下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を用いることを特徴とする心臓移植方法。 - 下記式(I)
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1から5のアルキルまたは総炭素数3から6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1から5のアルキルまたは1から3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1およびR2は、共同して炭素数3から5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1から5のアルキル、炭素数5から7のシクロアルキル、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチルまたはフェニル、または炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から3のヒドロキシアルキル、総炭素数2から5のアルコキシカルボニル、炭素数1から3のアルキルメルカプト、炭素数1から4のアルキルアミノ、総炭素数2から8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、およびアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1から3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体またはその生理的に許容される塩を用いる方法であって、ユーロ・コリンズ液を含まないことを特徴とする臓器移植方法。
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