JPWO2003055836A1 - 多価カルボン酸混合物 - Google Patents

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Abstract

1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が80質量%以上である多価カルボン酸混合物であって、明度指数Lの値が98以上、クロマティクネス指数aの値が−2.0〜2.0、クロマティクネス指数bの値が−2.0〜3.0であり、且つ窒素含有量が5,000質量ppm以下であることを特徴とする多価カルボン酸混合物が開示される。

Description

技術分野
本発明は、多価カルボン酸混合物に関する。さらに詳しくは、本発明は、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が80質量%以上である多価カルボン酸混合物であって、明度指数Lの値が98以上、クロマティクネス値指数aの値が−2.0〜2.0及びクロマティクネス値指数bの値が−2.0〜3.0であり、且つ窒素含有量が5,000質量ppm以下であることを特徴とする多価カルボン酸混合物に関する。本発明の多価カルボン酸混合物は、色調に優れる(即ち、着色がなく、実質的に無色透明)であるだけでなく、加熱時の色調安定性(以下、しばしば単に「熱安定性」という)に優れるため、塗料、洗剤、クリーニング剤中のビルダー、水あか防止剤、潤滑油、及びエステル等の各種多価カルボン酸誘導体の製造に有利に用いることができる。また、本発明は、上記多価カルボン酸混合物を高収率で製造する方法にも関する。
従来技術
1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は水溶性であり、また、生分解性が良好であるため、近年、各種用途への展開が提案されている。
例えば、1,3,6−トリシアノヘキサンから誘導される1,3,6−ヘキサントリカルボン酸やその塩は、洗剤調合剤や歯車用チェーンの潤滑剤等に好適に使用できることが報告されている(独国特許出願公開第19637428号明細書)。
また、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は3官能であるため、例えばエポキシ化合物等のための硬化剤として用いた場合には、架橋密度の高い硬化物を得ることができ、特に塗料用の架橋剤として好適に使用することができる。
一般に、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は、1,3,6−トリシアノヘキサンを加水分解することにより容易に得ることができる。
1,3,6−トリシアノヘキサンは、アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造する際の副生物として得られる。また、1,3,6−トリシアノヘキサンは、アクリロニトリルとアジポニトリルとを塩基の存在下で反応させることにより製造することもできる。
アクリロニトリルの電解二量化反応による場合は、主成分として得られるアジポニトリル等のニトリル化合物からなる混合物中に、1,3,6−トリシアノヘキサンが含有される。この混合物から蒸留等によりアジポニトリルを除去することにより、1,3,6−トリシアノヘキサンの含有量を高めることができる。
しかしながら、上記各種方法で得られる1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物は、通常、黄色や黒色を呈しているなど、著しく着色している。
例えば、日本国特開昭62−270550号公報においては、1,3,6−トリシアノヘキサンを分子蒸留により精製を行っているが、ハーゼン値400以上の黄色の液体として得られている。
このような着色したニトリル混合物を原料として加水分解して得た1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を主成分とする多価カルボン酸混合物は、同様に黄褐色や赤褐色を呈した著しく着色したものである。さらに、このように着色した多価カルボン酸混合物は、例えば80℃以上に加熱した場合には、さらに着色度を増し、加熱前後の色差(△E)が1を大きく越える傾向にあり、加熱時の色調安定性が低い。そのため、上記のような着色した1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を主成分とする多価カルボン酸混合物を脱色して色調が向上した多価カルボン酸混合物を得る試みが数多くなされてきた。
例えば、独国特許出願公開第19637428号明細書には、アクリロニトリルの電解二量化反応により副生した1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物を20%水酸化ナトリウム水溶液で還流加熱することにより加水分解を行い、冷却後、濃硫酸を添加してカルボン酸混合物とし、得られた反応混合物を完全に乾燥させて生じたベージュ色の残査をソックスレー(Soxlett)抽出器を用いて、乾燥させた酢酸アルキルエステルで抽出し、続いて減圧下で酢酸アルキルエステルを除去することにより、無色から淡黄色の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を得ている。さらに、精製方法として、ソックスレー(Soxlett)抽出器を用いたもの以外にも、反応混合物を溶剤であるtert−ブチルメチルエーテルで3回抽出し、抽出物から硫酸マグネシウムで水分を除去した後、該溶剤を蒸留し、残渣をアセトンとシクロヘキサンの混合液の中に導入し、冷却により生じる結晶を濾過により回収することにより、無色から淡黄色の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を得る方法も記載されている。
また、上記独国特許出願公開第19637428号明細書には、1,3,6−トリシアノヘキサンを、砕氷片及び濃硫酸と混合して、140℃で加水分解して得られた水性混合物を、tert−ブチルメチルエーテルで3回抽出し、得られたエーテル混合物から硫酸マグネシウムを用いて水分を除去した後、該エーテルを蒸留して、無色から淡黄色までの1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を得ている。
しかしながら、いずれの方法においても、明度指数L値が98未満、またはクロマティクネス値指数のb値が3以上であり、また、80℃で18時間放置した場合の色差(△E)が2を越えるような熱安定性の低いものしか得られない(上記色差に関しては後述する)。さらに、上記独国特許出願公開第19637428号明細書に記載されている上記製法では、いずれの方法も抽出溶媒を多量に用いるため、工業的に有利な方法ではない。
また、Agric.Biol.Chem.,45(1)57−62,1981では、1,3,6−トリシアノヘキサンを塩酸で加水分解後、室温にて放置し、析出したアンモニウム塩(塩化アンモニウム)を濾過後、得られる濾液を乾燥することにより低純度の結晶を得、該低純度の結晶を温水に溶解し、活性炭による処理後、再結晶により無色の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の結晶を得る方法が記載されている。このようにして得られた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は、明度指数L値が98以上であり、クロマティクネス値指数のa値が0.8、及びb値が1.1であり、外観上着色のないものである。しかし、上記の方法で得られた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は熱安定性が低く、例えば、160℃で1時間以上加熱した場合には、著しく変色を起こす傾向にある。さらには、好ましくない塩素イオンも含まれる傾向にある。
発明の概要
このような状況下、本発明者らは、塗料分野で要求されるような高度な色調を有するのみならず、例えば80℃で18時間放置した場合の色差(△E)が1以下であったり、160℃で3時間放置した場合においても該色差が10以下である(上記色差に関しては後述する)ような、高いレベルの熱安定性を有する、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を主成分とする多価カルボン酸混合物を開発すべく鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が80質量%以上である多価カルボン酸混合物であって、明度指数Lの値が98以上、クロマティクネス値指数aの値が−2.0〜2.0及びクロマティクネス値指数bの値が−2.0〜3.0であり、且つ窒素含有量が5,000質量ppm以下であることを特徴とする多価カルボン酸混合物が、上記のような優れた物性を示すことを見出した。この新しい知見に基づき本発明を完成したものである。
従って、本発明の主たる目的は、色調に優れるだけでなく、非常に高度な熱安定性を有する多価カルボン酸混合物を提供することにある。
本発明の他の1つの目的は、上記の優れた多価カルボン酸混合物を、1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物を加水分解して得られる加水分解反応混合物から簡便に且つ効率よく製造する方法を提供することにある。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、以下の詳細な説明及び請求の範囲から明らかになる。
発明の詳細な説明
本発明の1つの態様によれば、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が80質量%以上である多価カルボン酸混合物であって、
該多価カルボン酸混合物は、明度指数Lの値が98以上、クロマティクネス指数aの値が−2.0〜2.0、クロマティクネス指数bの値が−2.0〜3.0であり、
該多価カルボン酸混合物の窒素含有量が5,000質量ppm以下である
ことを特徴とする多価カルボン酸混合物が提供される。
本発明の他の1つの態様によれば、上記の多価カルボン酸混合物を製造する方法であって、次の工程:
(1)1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物を水性媒体中で加水分解して得られる加水分解反応混合物の水溶液のpHを、3〜13の範囲に調整し、多価カルボン酸塩の混合物を含む水溶液を得、
ただし、該ニトリル混合物は、アクリロニトリルから電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにおける副生物として得られるか、又はアクリロニトリルとアジポニトリルとを反応させて得られ、
(2)該水溶液を固体吸着剤で処理し、
(3)工程(2)で処理された水溶液中の多価カルボン酸塩の混合物を、イオン交換樹脂、電気透析装置又は酸を用いて多価カルボン酸混合物に転換し、それによって多価カルボン酸混合物を含む水溶液を得、
(4)工程(3)で得られた水溶液から該多価カルボン酸混合物を回収する、
ただし、工程(3)において酸を用いた場合は、回収した該多価カルボン酸混合物を、該多価カルボン酸混合物のための有機溶媒を用いた抽出に付して抽出物を得、続いて該有機溶媒から該抽出物中の多価カルボン酸混合物を分離することを包含することを特徴とする方法が提供される。
次に、本発明の理解を容易にするために、まず本発明の基本的特徴及び好ましい態様を列挙する。
1.1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が80質量%以上である多価カルボン酸混合物であって、
該多価カルボン酸混合物は、明度指数Lの値が98以上、クロマティクネス指数aの値が−2.0〜2.0、クロマティクネス指数bの値が−2.0〜3.0であり、
該多価カルボン酸混合物の窒素含有量が5,000質量ppm以下である
ことを特徴とする多価カルボン酸混合物。
2.明度指数Lの値が99以上、クロマティクネス指数aの値が−1.0〜1.0、クロマティクネス指数bの値が−1.0〜1.0であることを特徴とする、前項1に記載の多価カルボン酸混合物。
3.窒素含有量が500質量ppm以下であることを特徴とする、前項1又は2に記載の多価カルボン酸混合物。
4.該多価カルボン酸混合物が、1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物を加水分解して得られる加水分解反応混合物から得られ、該ニトリル混合物が、アクリロニトリルから電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにおける副生物として得られるか、又はアクリロニトリルとアジポニトリルとを反応させて得られることを特徴とする、前項1〜3のいずれかに記載の多価カルボン酸混合物。
5.前項1に記載の多価カルボン酸混合物を製造する方法であって、次の工程:
(1)1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物を水性媒体中で加水分解して得られる加水分解反応混合物の水溶液のpHを、3〜13の範囲に調整し、多価カルボン酸塩の混合物を含む水溶液を得、
ただし、該ニトリル混合物は、アクリロニトリルから電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにおける副生物として得られるか、又はアクリロニトリルとアジポニトリルとを反応させて得られ、
(2)該水溶液を固体吸着剤で処理し、
(3)工程(2)で処理された水溶液中の多価カルボン酸塩の混合物を、イオン交換樹脂、電気透析装置又は酸を用いて多価カルボン酸混合物に転換し、それによって多価カルボン酸混合物を含む水溶液を得、
(4)工程(3)で得られた水溶液から該多価カルボン酸混合物を回収する、
ただし、工程(3)において酸を用いた場合は、回収した該多価カルボン酸混合物を、該多価カルボン酸混合物のための有機溶媒を用いた抽出に付して抽出物を得、続いて該有機溶媒から該抽出物中の多価カルボン酸混合物を分離する
ことを包含することを特徴とする方法。
6.工程(1)における該ニトリル混合物の加水分解に用いる該水性媒体が水であることを特徴とする、前項5に記載の方法。
7.工程(1)において、水溶液のpHを5〜9の範囲に調整することを特徴とする、前項5に記載の方法。
8.工程(2)において用いる該固体吸着剤が、活性炭、シリカゲル及び活性アルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種の固体吸着剤であることを特徴とする、前項5に記載の方法。
9.工程(3)における多価カルボン酸塩混合物の多価カルボン酸混合物への転換が電気透析装置を用いて行われることを特徴とする、前項5に記載の方法。
10.工程(3)において得られる水溶液を、工程(4)の前に晶析に付すことを特徴とする、前項5〜9のいずれかに記載の方法。
11.分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)、及び前項1に記載の多価カルボン酸混合物を含有する硬化剤(b)を包含する硬化性組成物。
12.前項11に記載の硬化性組成物を含有する塗料。
13.前項11に記載の組成物を硬化して得られる硬化組成物。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の多価カルボン酸混合物において、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸(4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸)の含有量は80質量%以上である。本発明の多価カルボン酸混合物において、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸以外の多価カルボン酸の含有量については特に限定はない。なお、本発明において、多価カルボン酸とは、分子内にカルボキシル基を2〜4個有し、分子量が400以下である脂肪族カルボン酸を意味する。1,3,6−ヘキサントリカルボン酸以外の多価カルボン酸の具体例としては、アジピン酸、3−カルボシキメチル−1,5−ペンタンジカルボン酸等が挙げられる。
本発明の多価カルボン酸混合物の組成に関しては、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が80質量%以上であれば特に限定はないが、例えば、本発明の多価カルボン酸混合物を用いて塗料を調整する際に、多価カルボン酸混合物を、約80たり、約100℃〜約130℃で℃〜約130℃で溶媒に溶解させたり、約100℃〜約130℃で反応性官能基を有する樹脂と溶融混練したりする場合や、水に溶解させる場合を考慮すると、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が85質量%以上、アジピン酸の含有量が5質量%以下、3−カルボキシメチル−1,5−ペンタンジカルボン酸の含有量が10質量%以下であることが好ましい。本発明の多価カルボン酸混合物は、より好ましくは、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が95質量%以上、アジピン酸の含有量が1質量%以下、3−カルボキシメチル−1,5−ペンタンジカルボン酸の含有量が4質量%以下である。本発明の多価カルボン酸混合物は、最も好ましくは、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が98質量%以上である。
本発明の多価カルボン酸混合物において、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が80質量%未満である場合には、各種用途において1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の本来有する特性が発現できない傾向にある。例えば、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が80質量%未満であって、アジピン酸等の比較的水溶性の低い多価カルボン酸が10質量%以上である場合には、多価カルボン酸混合物は水などの水性媒体に均一に溶解しない傾向にある。
多価カルボン酸中の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸などの個々の多価カルボン酸の含有量は、液体クロマトグラフィーを用いて、RI検出器により測定されるピークの面積から求める。
本発明の多価カルボン酸混合物は、その色調に特徴を有する。即ち、多価カルボン酸混合物は、明度指数Lの値が98以上、クロマティクネス指数aの値が−2.0〜2.0、クロマティクネス指数bの値が−2.0〜3.0である。
明度指数Lの値、クロマティクネス指数aの値、クロマティクネス指数bの値は、多価カルボン酸混合物0.400gを4.0mlの蒸留水に溶解した水溶液を25℃でJIS規格Z8722に準じて測定された値である。具体的には、分光測定器により標準の光Cを用いて、380〜780nmの波長範囲で透過法により測定されたXYZ系における三刺激値X、Y、Z値に基づき、JIS規格Z8730で規定された下式に示すハンターの色差式により計算される(下記のLは、ハンターの色差式における明度指数、a及びbはハンターの色差式におけるクロマティクネス指数を表す)。
L=10Y0.5
a=17.5(1.02X−Y)/Y0.5
b=7.0(Y−0.847Z)/Y0.5
(式中、X、Y、及びZはXYZ系における三刺激値である)
一般に、明度指数Lの値は、白色度の尺度であり、100が上限値であり、その数値が増加するほど被測定物質の白色度が増加し、また、その数値が低下するほど被測定物質の黒色度が増す。また、クロマティクネス指数aの値は、緑色度及び赤色度の尺度であり、数値が0であるとき被測定物質の緑色度及び赤色度は0であり、数値がマイナスになる場合は被測定物質の緑色度が増加し、また、プラスになる場合は被測定物質の赤色度が増加する。さらに、クロマティクネス指数bの値は、青色度及び黄色度の尺度であり、数値が0であるとき被測定物質の青色度及び黄色度は0であり、数値がマイナスになる場合は被測定物質の青色度が増加し、プラスになる場合は被測定物質の黄色度が増加する。
L値が100であって、a値とb値が0であれば、被測定物質は無色であることを意味するが、本発明の多価カルボン酸混合物のL値、及びa値とb値はそれぞれ上記の値に極めて近く、これは本発明の多価カルボン酸混合物の色調が非常に優れている(即ち、着色が無く、実質的に無色透明である)ことを意味する。
上記のように、本発明の多価カルボン酸混合物において、L値は98以上、a値は−2.0〜2.0、b値は−2.0〜3.0である。L値は100に近いほど望ましく、好ましくは99以上、より好ましくは99.5以上である。また、a値は0に近いほど望ましく、好ましくは−1.0〜1.0、より好ましくは−0.5〜0.5、特に好ましくは−0.2〜0.2である。さらに、b値は0に近いほど望ましく、好ましくは−1.0〜1.0、より好ましくは−0.5〜0.5である。L値、a値、及びb値の少なくとも1つが上記範囲から外れる場合には、例えば、塗料に用いた場合には、塗膜が黄色や灰色等の着色を呈する傾向にある。さらに、L値、a値、及びb値の少なくとも1つが上記範囲から外れる場合には加熱時の色調安定性も低く、後述の色差(△E)は2を大きく越える。したがって、このような多価カルボン酸混合物を、加熱により硬化させるような塗料に用いた場合には、硬化時に黄変する等の変色を起こしやすい。
本発明の多価カルボン酸混合物は、窒素含有量が5,000ppm以下である。窒素含有量は、好ましくは1,000ppm以下であり、さらに好ましくは500以下ppmである。窒素含有量が5,000ppmを越える場合には、加熱時の色調安定性が低く、80℃以上で加熱した場合、変色したり、窒素を含有する他の化合物(アミド化合物、イミド化合物、さらにはこれらの結合を有する高分子量体)へ変性を起こしたりする傾向があり、好ましくない。
本発明において、多価カルボン酸混合物中の窒素含有量は、多価カルボン酸混合物を800℃で燃焼させた際に発生する、気体中の窒素濃度から算出される。
本発明の多価カルボン酸混合物中の窒素は、様々な窒素化合物の形で存在し得る。例えば、カルボン酸塩(カルボン酸のアンモニウム塩など)や無機塩としてのアンモニウムイオンの形態で存在していてもよいし、アミド基やイミド基として存在していてもよい。該無機塩の例としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。
本発明の多価カルボン酸混合物は、窒素含有量が5,000ppm以下であることによって、熱安定性(加熱時における色調安定性)を発揮する。具体的には、下記式で求められる色差(△E)の値が、通常、2以下であり、1以下であることが好ましい。
△E=〔(△L)+(△a)+(△b)1/2
(式中、△L値は、80℃で18時間加熱処理した前後のL値の差、△a値は、80℃で18時間加熱処理した前後のa値の差、△b値は、80℃で18時間加熱処理した前後のb値の差を表す。)
上記の色差(△E)は加熱時の色調安定性の尺度であり、色差の値が0に近いほど色調安定性が高い。
また、160℃で3時間放置した場合の色差(△E)が、10以下であることが好ましい。
上記に関連して、上記Agric.Biol.Chem.,45(1)57−62,1981に記載の方法では、1,3,6−トリシアノヘキサン加水分解時に水溶性の高い塩化アンモニウムが副生するが、この塩化アンモニウムの除去を十分に行なえず、上記再結晶で得られる結晶においても窒素含有量が8000ppm以上であり、例えば、160℃で3時間以上加熱した場合には、著しく変色を起こす。
本発明の多価カルボン酸混合物の原料に関しては特に限定はない。たとえば、多価カルボン酸混合物は、1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物を加水分解して得られる加水分解反応混合物から得られ、該ニトリル混合物が、アクリロニトリルから電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにおける副生物として得られるか、又はアクリロニトリルとアジポニトリルとを反応させて得られたものであってもよい。なお、上記のニトリル混合物は通常、著しく着色している。
以下、本発明の多価カルボン酸混合物を高収率で製造する方法を説明する。本発明の多価カルボン酸混合物は、次の工程:
(1)1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物を水性媒体中で加水分解して得られる加水分解反応混合物の水溶液のpHを、3〜13の範囲に調整し、多価カルボン酸塩の混合物を含む水溶液を得、
ただし、該ニトリル混合物は、アクリロニトリルから電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにおける副生物として得られるか、又はアクリロニトリルとアジポニトリルとを反応させて得られ、
(2)該水溶液を固体吸着剤で処理し、
(3)工程(2)で処理された水溶液中の多価カルボン酸塩の混合物を、イオン交換樹脂、電気透析装置又は酸を用いて多価カルボン酸混合物に転換し、それによって多価カルボン酸混合物を含む水溶液を得、
(4)工程(3)で得られた水溶液から該多価カルボン酸混合物を回収する、
ただし、工程(3)において酸を用いた場合は、回収した該多価カルボン酸混合物を、該多価カルボン酸混合物のための有機溶媒を用いた抽出に付して抽出物を得、続いて該有機溶媒から該抽出物中の多価カルボン酸混合物を分離する
ことを包含することを特徴とする方法によって、高収率で製造することができる。
工程(1)について説明する。工程(1)において、1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物を水性媒体中で加水分解して得られる加水分解反応混合物の水溶液のpHを、3〜13の範囲に調整し、該多価カルボン酸塩の混合物を含む水溶液を得る。
上記ニトリル混合物は、アクリロニトリルから電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにおける副生物として得られるか、又はアクリロニトリルとアジポニトリルとを反応させて得られるものである。したがって、上記ニトリル混合物は通常、著しく着色している。
上記ニトリル混合物を、アクリロニトリルから電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにおける副生物として得る場合を説明する。
アクリロニトリルを電解二量化反応に付すと、主生成物としてアジポニトリルを含み、さらに各種のニトリル化合物(シアノ基を有する化合物)を含む着色反応混合物が得られる。この着色反応混合物中には、未反応のアクリロニトリルも含まれる。副生物として、プロピオニトリル、α−メチルグルタロニトリル、ヒドロキシプロピオニトリル、サクシノニトリル、シアノ基を3個有するニトリル化合物(以下、しばしば「トリニトリル化合物」と称する)(具体的には、1,3,6−トリシアノヘキサン及び3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタン)、さらにはシアノ基を4個以上有するニトリル化合物(以下、しばしば「アクリロニトリルの高分子量体」と称する)等があげられる。
アクリロニトリルの電解二量化反応において、無視しがたい量のトリニトリル化合物や高分子量体が得られることについては、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)、30(5)1351(1965)に記載されている。
一般に、アクリロニトリルの電解二量化反応で副生するトリニトリル化合物は、主として1,3,6−トリシアノヘキサンであり、それ以外に、1,3,6−トリシアノヘキサンの異性体である3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタン等も少量生成する。
上記反応混合物から、例えば、溶剤による抽出法や減圧蒸留等により、アクリロニトリルやアジポニトリル等の、トリニトリル成分に対して低沸点成分、及び必要に応じて、アクリロニトリルの高分子量体を除去することにより、1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とする上記ニトリル混合物が得られる。このニトリル混合物中には、高沸点成分と共に、上記の操作で除去されなかった低沸点成分が残留していてもよい。
上記ニトリル混合物中の、1,3,6−トリシアノヘキサン及び3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタンの合計含有量は、好ましくは85質量%、より好ましくは90質量%以上である。合計含有量が85質量%未満の場合は、上記した低沸分成分、アクリロニトリルの高分子量体、さらには定量が困難な着色成分が、合計で15質量%以上含まれるため、最終的に得られる多価カルボン酸混合物の純度を低下させ、着色を招くおそれがある。さらに、その純度を向上させるために、後工程として各種の精製工程を経る必要があり、結果的に多価カルボン酸混合物の収率の低下や製造効率の低下を招く傾向がある。
本発明において、上記ニトリル混合物の1,3,6−トリシアノヘキサン含有量に関しては、上記ニトリル混合物を加水分解して得られる多価カルボン酸またはその塩の混合物中の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩の含有量が80質量%以上となる程度に含んでいればよい。上記着色ニトリル混合物の1,3,6−トリシアノヘキサンの含有量は、通常、80質量%以上である。
上記ニトリル混合物は、3−シアノメチル1,5−ジシアノペンタンを、通常、0.01〜10質量%の範囲で含有する。本発明において、例えば、晶析により高純度でかつ高収率で1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を得る場合には、3−シアノメチル1,5−ジシアノペンタンの含有量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。
以下、アクリロニトリルの電解二量化反応について具体的に説明する。
アクリロニトリルの電解二量化反応に用いる電解槽には特に限定はない。たとえば、1対の陰極と陽極とが陽イオン交換膜で仕切られた陰極室と陽極室とからなる、いわゆる隔膜電解槽を用いてもよい。また、隔膜であるイオン交換膜のない単一電解槽を用いてもよい。これらの電解法は、例えば、日本国特公昭45−24128号公報、日本国特開昭59−59888号公報、日本国特開昭59−185788号公報等に開示されている。
隔膜電解槽を用いてアクリロニトリルの電解二量化反応を行う場合は、陰極としては、一般に水素過電圧の高いものが使用可能であり、例えば、鉛、カドミウム、及びこれらを主成分とする合金が好適に用いられる。陽極としては、鉛、鉛合金、白金等、耐食性の高いものがよく、鉛又は鉛合金が好ましく用いられる。隔膜としては陽イオン交換膜を用いることができる。陽極液として硫酸水溶液を用いることができる。陰極液は、その反応中はアクリロニトリル、アジポニトリル、トリニトリル化合物、その他の副生物、水、及び伝導性支持塩からなり、油相と水相とに分離したエマルジョンになるか、アクリロニトリルが過剰になることによって均一溶液になっているか、いずれかの状態である。
伝導性支持塩としては、下記一般式
[NR
(式中、R、R、Rは各々独立して炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜16のアルキル基を表し、Xは硫酸、炭酸、アルキル硫酸、リン酸等のアニオン、又は有機酸、有機多価酸の残基を表す)
で表される第4級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
陰極液のpHは、通常5〜12の範囲にある。
電解二量化反応時における電槽内の電解液温度は、通常、40〜60℃の範囲であり、電流密度は、陰極表面1dm当たり、通常、5〜50アンペアの範囲である。陰極と陽極との距離は、隔膜を介して、通常、1〜20mmであり、陰極液、陽極液をそれぞれ、通常、0.1〜10.0m/秒の線速度で通過させる。
隔膜であるイオン交換膜のない単一電解槽を用いてアクリロニトリルの電解二量化反応を行う場合は、陰極として、鉛、カドミウム、水銀又はこれらを1種以上含有する合金が好ましく、陽極としては、鉄、ニッケル、又はこれらの合金が好ましい。電解液は、アルカリ金属塩、上記第4級アンモニウム塩及び水を主成分とし、反応中は、電解液にアクリロニトリル、アジポニトリル、トリニトリル化合物、その他副生物がエマルジョンとなった状態又は均一溶解した状態で存在する。アルカリ金属塩のカチオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどが挙げられ、アニオンとしては、リン酸、硼酸、炭酸、硫酸等の無機塩又は多価酸の残基が使用される。
反応終了後の電解液から1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とする上記ニトリル混合物を得る方法には制限はなく、一般的な抽出法、蒸留法又はその組み合わせにより得ることができる。
たとえば、電解二量化反応終了後の電解液が油/水のエマルジョンになっている場合、未反応のアクリロニトリル及び副生物のプロピオニトリル等の低沸点成分を蒸留除去後、エマルジョン破壊を行い、油相と水相の2相に分離する。水相には無機物や4級アンモニウム塩が分配され、油相には若干の水、低沸点成分、アジポニトリル、トリニトリル化合物、及びその他の高沸点成分が分配される。
一方、電解二量化反応終了後の電解液が均一溶液となっている場合には、例えば、水及び塩化メチレン等の非水系有機溶媒を添加し、水層に無機塩や4級アンモニウム塩を抽出し、油層にアジポニトリル、トリニトリル化合物、及びその他高沸点成分を抽出する。
どちらの場合でも、アジポニトリル等の、トリニトリル化合物に対して低沸点の成分を、例えば、一般的な蒸留法等により除去することによって、1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とする上記ニトリル混合物を含む高沸点成分が残渣として得られる。前述のように、ニトリル混合物を含む高沸点成分残渣中には、低沸点成分の除去操作によっても除去されなかったアジポニトリル等の低沸点成分をはじめ、アクリロニトリルの高分子量体の高沸点成分が含まれる。
高沸点成分残渣において、1,3,6−トリシアノヘキサン及び3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタンの合計含有量が85質量%以下の場合には、例えば、アジポニトリル等の低沸点成分や、必要に応じて、高沸点成分を除去する目的で、さらなる蒸留を1回以上行い、結果的に1,3,6−トリシアノヘキサン及び3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタンの合計含有量が85質量%以上となるニトリル混合物を得てもよい。また、さらなる蒸留法としては、例えば、日本国特開昭62−270550号公報に記載されているような分子蒸留法や薄膜蒸留法も好適に利用できる。また、本発明においては、上記合計含有量を85質量%以上とする目的で、必要に応じて、上記高沸点成分残渣に対し、選択的に1,3,6−トリシアノヘキサン及び3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタンを溶解するような溶媒を用いて抽出し、後工程で該溶媒を除去することにより、ニトリル混合物を得てもよい。
ニトリル混合物をアクリロニトリルとアジポニトリルとを反応させて得る場合について説明する。
ニトリル混合物をアクリロニトリルとアジポニトリルとを反応させて得る方法に関しては、特に限定はなく公知の方法を用いることができる。例えば、日本国特公昭61−3780号公報に記載されているように、イソプロピルアルコールや、t−ブチルアルコールの金属アルコラートなどの塩基性触媒を用いて、アジポニトリルとアクリロニトリルとを反応させることにより、1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物を得ることができる。
本発明で用いるニトリル混合物は、上記いずれの方法で得られた場合であっても、アジポニトリルの含有量が10質量%以下であることが好ましく、1,3,6−トリシアノヘキサン及び3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタンの合計含有量が85質量%以上であるような高純度ニトリル混合物であることが好ましい。
工程(1)における水溶液は、上記の方法により得られたニトリル混合物を水性媒体中で加水分解して得られる加水分解反応混合物の水溶液である。以下、上記のニトリル混合物の加水分解について説明する。
加水分解は、アルカリまたは酸を用いて水性媒体中で行われる。水性媒体とは、加水分解に必要な量の水を含有する、反応に影響しない有機溶媒か、又は水である。水性媒体としては、水が好適に使用できる。
上記アルカリに関しては、水溶液中においてアルカリ性を示す化合物であれば特に制限はない。アルカリの例として、アルカリ金属系化合物、アルカリ土類金属系化合物、窒素系化合物等が挙げられる。
アルカリ金属系化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ルビジウム、重炭酸セシウムなどのアルカリ金属重炭酸塩、カリウムブトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムブトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、リチウムブトキシド、リチウムエトキシド、リチウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。
アルカリ土類金属系化合物としては、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ラジウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸ラジウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ベリリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素ルビジウムなどのアルカリ土類金属炭酸水素塩、重炭酸ベリリウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸ストロンチウム、重炭酸バリウム、重炭酸ラジウムなどのアルカリ土類金属重炭酸塩等が挙げられる。
窒素系化合物としては、アンモニアや各種アミン系化合物等が挙げられる。
本発明においては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適に使用できる。
上記のアルカリは単独で用いてもよく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
加水分解に用いられる上記酸としては、水溶液中で酸性を示す化合物であれば特に制限はない。酸の例として、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸や各種カルボン酸やスルホン酸系の有機酸が挙げられる。
アルカリ水溶液を用いて加水分解を行う場合、アルカリ水溶液中のアルカリの濃度は、特に制限はないが、通常、1.0〜50質量%の範囲である。例えばアルカリとして水酸化ナトリウムを用いて、大気圧下で加水分解を行う場合は、通常、2.0〜40.0質量%、好ましくは10.0〜30.0質量%の範囲である。濃度が1.0質量%未満では、反応速度が遅く、50.0質量%を超える範囲では1,3,6−トリシアノヘキサンの反応場である水相への溶解度が極端に低くなり、加水分解速度が著しく低下する傾向がある。
1,3,6−トリシアノヘキサンとアルカリとの当量比は、シアノ基に対して、塩基として理論的には1.00当量以上であるが、十分な反応速度を得る目的で、通常、1.01〜3.00当量、好ましくは1.05〜2.00当量の範囲である。3.00当量を超える場合には、過剰のアルカリ量が多く反応系に残留し、該過剰のアルカリを除去するための負担が大きくなる傾向なる傾向がある。
上記アルカリによる加水分解では、多価カルボン酸のアルカリ塩の混合物が生成する。
また、酸を用いて加水分解する場合、酸の濃度は酸の種類によって異なるが、通常、1〜98質量%範囲である。例えば、塩酸の場合2〜37質量%、好ましくは20〜37%の範囲である。濃度が2.0質量%未満では反応速度が遅くなる傾向にあり、37質量%を越えると、工業的規模で製造を実施する際に入手が困難となる。硫酸の場合は2〜85質量%、好ましくは20〜60質量%である。2質量%未満では、反応速度が遅くなる傾向にある。85質量%を超える場合、加水分解に要する水の量を確保するために必要以上に多くの硫酸を必要とする。
1,3,6−トリシアノヘキサンと酸との当量比は、シアノ基に対して、酸として1.01〜5.0当量、好ましくは1.05〜3.0当量の範囲である。当量比が1.01未満では反応速度が遅く、実用的でない。また、5.0当量を超える場合には、用いた過剰の酸が反応系に多く残留し、酸を除去するために、さらなる工程を必要とする。
反応温度は、アルカリ、酸いずれの場合も、通常、50〜250℃、好ましくは80〜140℃の範囲である。反応温度が50℃未満では反応速度が遅い。250℃を越えると、分解等の副反応を併発する傾向にある。反応時間は、通常、1〜200時間の範囲である。反応時の圧力には特に制限は無く、加圧下、大気圧下、さらには減圧下で行ってもよい。
反応時の雰囲気は、副反応を併発しないものである限り特に制限はなく、例えば、窒素等の不活性気体の存在下や空気下でもよい。例えば、大気圧下で加水分解を行う場合には、反応容器には、蒸発する水を系内に戻すための冷却装置を有するものや、液相を窒素ガス又は空気などのガスによりバブリングし溶存しているアンモニアを系外に追い出す装置を有ものを用いても良い。加圧条件下で行う場合は、副生するアンモニアを系外に逃がすことができる装置を具備した装置であることが望ましい。
本発明においては、加水分解は、1段の反応で行ってもよいし、2段の反応で行ってもよい。例えば、アルカリによる加水分解後、反応系内に中間体としてアミド化合物が存在する場合には、引き続き他のアルカリや酸を用いて加水分解を行ってもよい。
加水分解して得られる加水分解反応混合物の水溶液には、窒素が化合物の形で不純物として含まれている。たとえば、酸により加水分解を実施した場合には、使用した酸に由来するアンモニウム塩が反応前のシアノ基と当量存在する。また、アルカリにより加水分解を実施した場合には、アンモニアが発生し、一部は水溶液に溶ける。望むなら、工程(1)において加水分解反応混合物の水溶液のpHを3〜13に調整する前に、加水分解反応混合物とこのような窒素化合物とを分離してもよい。
酸により加水分解を実施した場合を例にとって、工程(1)の前に窒素化合物を分離する方法を説明する。酸により加水分解を実施した場合、多価カルボン酸混合物が生成し、不純物としてアンモニウム塩が生成する。該アンモニウム塩を分離する方法としては、例えば、加水分解反応混合物水溶液から溶媒を除去し、多価カルボン酸混合物を溶解することができる有機溶剤により多価カルボン酸混合物を溶解し、含まれるアンモニウム塩と分離する方法が挙げられる。この場合、加水分解反応混合物水溶液中に含まれるアンモニウム塩の量は、該溶液中の多価カルボン酸混合物に対し、好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下である。
本発明の方法においては、工程(1)において上記加水分解により得られた加水分解反応混合物(多価カルボン酸混合物又はその塩からなる混合物)の水溶液のpHを3〜13の範囲に調整して多価カルボン酸塩の混合物(この混合物中には、多価カルボン酸の混合物が少量共存していてもよい)を含む水溶液を得、工程(2)において該水溶液を固体吸着剤で処理する。即ち、上記加水分解反応混合物の水溶液は、通常、著しく着色しているため、固体吸着剤で処理することにより脱色する。
固体吸着剤とは、25℃及び処理を行う温度において流動性がなく、固体の形状を保つ物質であり、かつ、正吸着を起こさせる界面を有する物質をいう。具体的には、アルミニウム、鉄、チタン、ケイ素、錫等の酸化物や水酸化物、活性炭、ベントナイト、活性白土、ケイソウ土、ゼオライト類、ハイドロタルサイト類、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂等が挙げられる。上記アルミニウム、鉄、チタン、ケイ素、錫等の酸化物や水酸化物としては、例えば、活性アルミナ、シリカゲル、酸化チタン等が挙げられる。本発明においては、活性炭、活性アルミナ及びシリカゲルが、脱色の効率が高い傾向にあり好ましい。
これら固体吸着剤は、1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して同時に、又は別々に用いてもよい。また、これら固体吸着剤の形状、粒径等には限定されない。
固体吸着剤の使用量は、本発明の多価カルボン酸混合物が得られる範囲であれば限定はないが、通常、上記多価カルボン酸塩の混合物100質量部に対し、固体吸着剤を0.01〜500質量部、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.1〜50質量部の範囲である。0.01質量部未満では十分な脱色効果が得られず、500質量部を越えると十分な脱色効果が得られるものの、多価カルボン酸混合物の収率が低下する傾向にある。
工程(2)において、固体吸着剤で処理する際の、上記水溶液のpHは、きわめて重要である。アルカリ加水分解後の溶液は、通常、13を越えており、酸加水分解後のpHは3未満である。この状態のまま、固体吸着剤で処理を行っても、色調に優れた本発明の多価カルボン酸混合物は得られず脱色効率が低下する傾向にある。
pHを調整する方法には制限はなく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸などの有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物等を添加する方法や、各種イオン交換樹脂と接触させる方法等により実施することができる。
固体吸着剤による処理時間は、本発明の多価カルボン酸混合物が得られる範囲であれば限定されない。通常1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間、さらに好ましくは10分〜2時間である。1分より短い場合は、脱色効果が不十分となる傾向がある。また、10時間を越える場合は、脱色効果は十分であるが、生産効率が悪くなる。吸着させる方法は、多価カルボン酸混合物を含む溶液に固体吸着剤を添加し攪拌したり、固体吸着剤をカラム等に充填させ該溶液を通液する等、様々な方法を用いることができ、特に限定されるものではない。
固体吸着剤による処理時の上記水溶液中の多価カルボン酸混合物またはその塩の濃度にも特に限定はないが、通常、0.02〜2.0mol/l、好ましくは0.1〜1.5mol/lの範囲である。0.02mol/l未満では処理量が多くなって溶液から回収が難しく、収率が低下する。2.0mol/lを超える範囲では多価カルボン酸及びその塩からなる混合物が析出し固体吸着剤による着色物の吸着が不十分となる。
固体吸着剤による処理時の温度は、上記多価カルボン酸塩の混合物が凝固したり、さらには分解しない温度範囲であれば限定はない。例えば、固体吸着剤として活性炭を用い、溶媒に水を用いた場合は、温度範囲は通常5〜100℃の範囲である。
以上説明した固体吸着剤を用いた処理を行った後の、用いた固体吸着剤を分離除去する方法は任意であって制限はなく、濾過法等の公知の一般的方法で実施することができる。
本発明においては、工程(2)で処理された水溶液中の多価カルボン酸塩の混合物を、工程(3)においてイオン交換樹脂、電気透析装置又は酸を用いて多価カルボン酸混合物に転換し、それによって多価カルボン酸混合物を含む水溶液を得、工程(4)においてこの水溶液から多価カルボン酸混合物を回収する。尚、工程(3)においてイオン交換樹脂、又は電気透析装置を用いた場合には、除去されずに残っている不純物窒素化合物は、該塩を多価カルボン酸混合物に転換するのと同時に除去される。
工程(3)は、該水溶液のpHを3未満に調整して行なう。該pHが3以上の場合には、多価カルボン酸は塩基性化合物との塩又は部分塩を含有し、遊離のカルボン酸の含有量が低い。
調整されるpHは3未満であるが、好ましくは2.5未満である。溶液中に含有される多価カルボン酸の濃度にも左右されるが、さらに好ましくは2.3未満である。
工程(3)で用いる酸は、無機酸であっても有機酸であっても良い。用いられる無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、また、有機酸としては、ギ酸、酢酸等のカルボン酸や、メタンスルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。これら無機酸や有機酸を用いて、該pHを3未満にした場合には、遊離した多価カルボン酸を、用いた無機酸や有機酸に由来する塩と分離するする必要がある。無機酸は一般に酸強度が高く、遊離した多価カルボン酸の収率が高くなる傾向にあるため好ましい。
無機酸によりカルボン酸化した場合は、副生する無機塩を多価カルボン酸混合物の水溶液から分離する目的で溶媒により抽出する。この際、除去されずに残っている窒素化合物も上記無機塩と共に除去される。抽出溶媒としては、例えば、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどを利用することができる。同様の効果が得られる他の溶媒を用いて行ってもよい。また、上記カルボン酸化した処理液を加熱減圧下において蒸留を行い完全に乾固させ、残渣を溶媒を用いて多価カルボン酸混合物を抽出することも可能である。この場合、用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、などを1種以上用いることが可能である。
抽出方法は攪拌、ソックスレーなど公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。
抽出液を、必要に応じて無水硫酸マグネシウムなどの乾燥剤により乾燥後、該抽出に用いた溶媒を除去することにより、多価カルボン酸混合物を回収することができる。
また、工程(3)で陽イオン交換樹脂を用いる場合には、バッチ式、流通式等の方法が好適に使用できるが、これらに限定されるものではない。陽イオン交換樹脂としては、例えば、日本国三菱化学(株)製のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の芳香環にスルホン酸基を導入した樹脂であるものを酸で再生して利用することができる。日本国三菱化学(株)製のダイヤイオン(商標)SK102、SK104、SK106、SK1B、SK110、SK112、SK116、SK1BNなどの強酸性陽イオン交換樹脂が代表的なものである。同様に、米国ロームアンドハース(株)製のアンバーリスト(商標)15WET、16WET、31WET、35WETなどのスルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂を利用することも可能であり、これら陽イオン交換樹脂の種類については限定されるものではない。
以下、工程(3)において電気透析装置を用いる場合(電気透析法)に関し説明する。該電気透析法は、イオン交換膜に挟まれた室内に、上記多価カルボン酸塩の混合物の水溶液を滞留または流通させ、電圧をかけることによりイオン交換膜を介して該水溶液中の塩基性成分を除去することにより、該水溶液のpHを3未満とし、カルボン酸化させるものである。
本発明で実施することができる電気透析法は、公知の一般的なイオン交換膜を具備した設備を好適に適用することがでる。これらイオン交換膜を具備した設備としては、陽イオン交換膜だけを用いた設備、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を同時に具備した設備、陽イオン交換膜とバイポーラ膜(両性膜)を同時に具備した設備、陰イオン交換膜とバイポーラ膜とを同時に具備した設備、さらには陽イオン交換膜、陰イオン交換膜、及びバイポーラ膜を同時に具備した設備等が挙げられる。
例えば、陽イオン交換膜を具備した電気透析設備を用いた方法としては、日本国特開昭50−111010号公報に記載されている方法が好適に使用できる。また、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを同時に具備した設備を用いる方法としては、日本国特開平2−115025号公報に記載されている方法を好適に使用できる。また、陽イオン交換膜とバイポーラ膜を同時に具備した設備を用いる方法としては、日本国特表平7−507598号公報に記載されているものが好適に用いられる。また、陰イオン交換膜とバイポーラ膜とを同時に具備した設備としては日本国特開平8−281077号公報に記載された設備が好適に使用できる。
電気透析法で用いられる各種イオン交換膜の材質は、一般的に用いられる材質であればよい。例えば、これら材質としてはフッ素化オレフィン系樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩素化オレフィン系樹脂等が挙げられる。
陽イオン交換膜の場合には、これらにスルホン酸基やカルボキシル基等のマイナスの電荷を有する基を1種以上有し、また、陰イオン交換膜の場合には、上記材質に4級アンモニウム基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基等の官能基を1種以上有する膜が好適に使用できる。
また、上記バイポーラ膜も公知の方法により製造された膜が使用できる。例えば陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを硬化性接着剤や熱可塑性樹脂含有ペースト等のバインダーを介して張り合わせて製造する方法が挙げられる。該硬化性接着剤としては、例えばポリエチレンイミン−エピクロルヒドリンの混合物を用いる方法(日本国特公昭32−3962号公報)、イオン交換基を有する硬化性接着剤(硬化後は、導電性を有するイオン交換可能な硬化体となる)で接着させる方法(日本国特公昭34−3961号公報)等が挙げられる。また、バイポーラ膜の例としてはさらに、ビニルピリジンとエポキシ化合物とを陽イオン交換膜の一方の面に塗布し放射線硬化させる方法(日本国特公昭38−16633号公報)によって得られる膜、陰イオン交換膜の表面にスルホン酸型高分子電解質とアリルアミン類を付着させた後に電離性放射線を照射し架橋させる方法(日本国特公昭51−4113号公報)によって得られる膜、イオン交換膜の表面に反対電荷を有するイオン交換樹脂の分散系と母体重合体との混合物を沈着させる方法(日本国特開昭53−37190号公報)によって得られる膜、ポリエチレンフィルムにスチレン、ジビニルベンゼンを含浸重合したシート状物をステンレス等の金属枠にはさみつけ、一方の側をスルホン化させた後、該シートを取り外して残りの部分にクロルメチル化を行い、次いでアミノ化処理する方法(米国特許3562139号明細書)によって得られる膜、特定の金属イオンを陰・陽イオン交換膜の表面に塗布し、両方のイオン交換膜を重ね合わせてプレスする方法(エレクトロケミカアクタ31巻1175−1176頁(1986年))によって得られる膜等が挙げられる。
電気透析法において、用いられる電極は公知のものが使用できる。例えば、陽極としては白金、チタン/白金合金、カーボン、ニッケル、ルテニウム/チタン合金、イリジウム/チタン合金、等が好適に使用できる。また、陰極としては、鉄、ニッケル、白金、チタン/白金合金、カーボン、ステンレス鋼、等が好適に使用できる。これら電極の構造も公知の構造が使用でき、例えば棒状、板状、メッシュ状、格子状等が挙げられる。
本発明において、例えば陽イオン交換膜のみを用いる場合には、電極間を陽イオン交換膜で複数室に仕切り、該仕切られた各室の隣り合った室内にそれぞれ多価カルボン酸混合物又はその塩からなる水溶液と、硫酸や塩酸等の鉱酸を流通させて電気透析を行うことにより、各室交互にpH3未満となった多価カルボン酸水溶液及び鉱酸塩水溶液が生成する。
また、バイポーラ膜を併用する場合には、上記陽イオン交換膜のみを用いる場合と同様に、多価カルボン酸混合物又はその塩の溶液から遊離するアルカリと結合させるべく鉱酸を隣接する室に流通させても良く、さらには鉱酸を用いることなく遊離するアルカリをそのままアルカリ水溶液として回収する方法も好適に使用できる。後者の場合には、回収されるアルカリ水溶液は再度本発明で実施される加水分解工程で使用することも可能であり、特に好ましい。
また、電気透析法で用いられる各イオン交換膜は、その分子分画性は通常2000以下である。特に1000以下、さらには300以下が望ましい。ここで、例えば分子分画性が300であるとは、イオン交換膜の一方の膜面に各種分子量の1質量%のポリエチレングリコール水溶液を、また、もう一方の膜面に蒸留水をそれぞれ接触させた状態で、大気圧下、25℃で1時間両方の液体を撹拌したときに、蒸留水側に拡散してくるポリエチレングリコールの濃度を測定し、用いたポリエチレングリコールが5%拡散する場合の該ポリエチレングリコールの分子量をいう。該分子分画性が2000を越える場合には、電気透析により遊離した多価カルボン酸がイオン交換膜を透過してリークするため、収率が低下する傾向にある。
本発明において、電気透析を行う際の温度は、多価カルボン酸の塩又は部分塩、さらには生成してくる遊離した多価カルボン酸が析出しない温度範囲、及び用いるイオン交換膜の耐熱性を考慮すると、通常5℃〜80℃、好ましくは10℃〜60℃の範囲である。
また、電流密度は通常0.1〜100A/dcmの範囲であり、望ましくは0.2〜50A/cmの範囲である。
本発明においては、上記イオン交換膜の膜間隔は一般的に適用されている間隔でよく、通常、0.01〜10mmの範囲であり、0.05〜1.50mmの範囲が望ましい。
以上説明した電気透析法は、本発明においては、バッチで操作してもよく、連続的に実施してもよい。
以上説明した製造方法により得られる多価カルボン酸混合物に対し、主成分として含まれる1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の純度、熱安定性、及びさらなる色調の改善を実現させる場合には、水、有機溶媒、又はこれらの混合物からなる溶媒に溶解し、冷却したり、濃縮させることにより結晶を析出させる晶析法を用いて精製を行うことが好ましい。
該晶析に用いる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類などを単独又は1種以上用いることが可能である。
晶析を行う場合、晶析に用いる溶媒の沸点以下の温度で上記方法により得た多価カルボン酸混合物を均一に溶解し、冷却又は濃縮することにより結晶を析出させる方法、溶解性の高い溶媒、例えば、アセトンなどに溶解し、溶解性の低い溶媒、例えばtert−ブチルメチルエーテルなどに該アセトン溶液を導入しそのままの温度、あるいは冷却、濃縮により結晶を析出させる方法を用いることも可能である。
上記の方法などにより生じた結晶は、ろ過により回収することが可能である。ろ過方法は限定されるものではなく、加圧ろ過、減圧濾過、遠心分離、圧搾などの方法を利用することが望ましい。
晶析を行うことにより、このような多価カルボン酸混合物を加熱硬化させるような塗料用途に用いた場合には、硬化時に黄変する等の変色を改善させることが可能である。
また、上記のような晶析を工程(3)において得られる水溶液に対して行なっても良い。
本発明の多価カルボン酸混合物は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物の硬化剤として好適に用いることができる。即ち、本発明の他の1つの態様においては、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)、及び本発明の多価カルボン酸混合物を含有する硬化剤(b)を包含する硬化性組成物が提供される。
本発明の硬化性組成物は、硬化速度が速く、得られる硬化体の機械的特性に優れ、さらに、加熱硬化する際の硬化体の変色等を低減できる。
本発明において、上記硬化剤(b)とは、エポキシ基と反応し架橋構造を形成しうる化合物を意味し、具体的には、本発明の多価カルボン酸混合物単独でもちいてもよいし、他の硬化剤との混合物で用いてもよい。本発明の多価カルボン酸混合物以外のその他硬化剤としては、カルボン酸化合物、酸無水物、アミン化合物、等が挙げられる。
上記カルボン酸化合物としては、分子内に2個以上のカルボキシル基を含有する脂肪族、芳香族、脂環族のカルボン酸であり、具体的には、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、アクリル酸やメタクリル酸を成分とする共重合体、酸末端ポリエステル樹脂、酸末端ポリアミド樹脂等が挙げられる。
また、酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、等が挙げられる。
また、アミン化合物としては、アミノ基を分子内に1つ以上有する化合物を用いることができ、その例としては、エチレンジアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物で用いる硬化剤(b)において、本発明の多価カルボン酸混合物の含有量は特に制限はないが、得られる硬化体の架橋密度を向上させる目的においては、10質量%以上、好ましくは50質量%以上である。
また、上記硬化性組成物で用いる本発明の多価カルボン酸混合物において、含有される1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は、好ましくは90質量%以上、好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
以下、本発明の硬化性組成物に用いられるエポキシ化合物(a)に関し説明する。
上記エポキシ基とは炭素−炭素−酸素からなる3員環構造を意味する。該炭素−炭素部は、直鎖又は分岐した炭化水素構造の一部であってもよいし、5員環や6員環等の環状構造を形成した炭化水素構造の一部であってもよい。またこれら炭化水素構造はフッ素、塩素、臭素等のハロゲンや水酸基等の官能基が結合していてもよい。さらに、エポキシ基を形成する炭素原子には、メチル基等のアルキル基や、ハロゲンが結合していてもよい。
これらエポキシ基としては、グリシジル基や脂環式エポキシ基等が挙げられ、好ましくはグリシジル基である。
上記エポキシ化合物(a)は、分子内に2個以上のエポキシ基を有していればよく、その他の構造については特に制限はない。また、エポキシ化合物(a)は分子量が1000未満である低分子量化合物、分子量が1000以上の高分子量化合物のいずれでもよく、さらにはポリマーであってもよい。
本発明の硬化性組成物で用いられるエポキシ化合物(a)としては、例えば、グリシジル基等のエポキシ基をエーテル結合やエステル結合を介して有する化合物、エポキシ基を窒素原子を介して有する化合物、エポキシ基含有重合体等が挙げられる。これらエポキシ化合物(a)は、各種用途や所望の物性に応じて、単独で用いてもよいし、2種以上の混合物で用いてもよい。
グリシジル基をエーテル結合を介して有するエポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロパンジオールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヒドロキノンから誘導されるジグリシジルエーテル、ビスフェノールAから誘導されるジグリシジルエーテル、テトラメチルジヒドロキシブフェニルから誘導されるジグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂から誘導されるグリシジルエーテル化合物、及びこれらのハロゲン化物が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールAから誘導されるジグリシジルエーテルは、分子量に応じて液状又は固体状で各種用途に広範囲に使用でき、また、一般的には「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」として入手も容易であり、好適に使用できる。
グリシジル基をエステル結合を介して有する低分子化合物としては、フタル酸ジグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、イソフタル酸ジグリシジル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジル、ビフェニルジカルボン酸ジグリシジル、コハク酸ジグリシジル、フマル酸ジグリシジル、グルタル酸ジグリシジル、アジピン酸ジグリシジル、スベリン酸ジグリシジル、セバシン酸ジグリシジル、デカンジカルボン酸ジグリシジル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、トリメリット酸トリグリシジル、ダイマー酸から誘導されるグリシジルエステル、及びこれらのハロゲン化物やオリゴマー等が挙げられる。
グリシジル基が窒素原子に結合してなる化合物として、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、ヒダントイン系化合物から誘導されるグリシジル化合物、及びこれらのハロゲン化物やオリゴマーが挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)テレフタレート、3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド等が挙げられる。
エポキシ基含有重合体としては、末端、側鎖又は分岐鎖中に、例えば、グリシジル基などのエポキシ基を有し、重量平均分子量が800〜5,000,0000である重合体が挙げられ、例えばポリエステル骨格を有する樹脂、ポリアミド骨格を有する樹脂、重合性不飽和二重結合を有する単量体の単独重合体又は共重合体、等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物を、例えば塗料用途に用いる場合には、上記エポキシ基含有重合体を好適に使用でき、中でも重合性不飽和二重結合を有する単量体の単独重合体または共重合体を好適に使用できる。この重合体は、エポキシ基を有する単量体の1種又は2種以上の重合体、又はエポキシ基を有する単量体とエポキシ基を有さない単量体の共重合体である。
重合性不飽和二重結合とエポキシ基を同時に有する単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル酸のグリシジルエステルやメチルグリシジルエステル、アリルアルコールのグリシジルエーテルやメチルグリシジルエーテル、アリルアルコールのグリシジルエーテルやメチルグリシジルエーテル、N−グリシジルアクリル酸アミド、ビニルスルホン酸グリシジル等を挙げることができる。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
重合性不飽和二重結合を有し且つエポキシ基を有さず、上記エポキシ基を有する単量体と共重合できる単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸のエステル類、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、等のアクリル系単量体やその他の単量体が挙げられる。(メタ)アクリル酸のエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類として、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル等が挙げられる。エポキシ基を有する単量体と共重合できる、その他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の炭化水素類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド等のアミド類、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル等のエステル類、ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリルビニルエーテル、ハロゲン含有ビニル単量体、ケイ素含有ビニル単量体等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物においては、エポキシ化合物(a)としては、グリシジル基含有アクリル樹脂が、得られる硬化体の耐候性や耐摩耗性等の耐久性に優れ、特に屋外で用いられる塗料分野に好ましく用いることができる。なお、本発明において、「グルシジル基含有アクリル樹脂」とは、グルシジル基を含有するアクリル系樹脂を意味する。メタクリル酸メチル及びメタクリル酸グリシジルを主成分とする共重合体、さらにはメタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、及びスチレンを主成分とする共重合体等のグリシジル基含有アクリル樹脂が、特に好ましく使用できる。
グリシジル基含有の重合体は、例えば、塗料用途に用いる場合は、数平均分子量が1,000〜100,000の範囲であることが好ましい。特に、数平均分子量が1,000〜30,000、さらには1,500〜20,000である場合が、塗膜の製膜性や得られる塗膜の平滑性が高く、また硬化剤との混練性が良好であるため好ましい。
本発明でいう数平均分子量とは、ポリスチレンを標準物質として用いた、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるものであり、該標準物質に対する相対的な値である。
本発明で用いるエポキシ化合物(a)のエポキシ当量は、通常85〜10,000g/当量の範囲であるが、この範囲内に限定されない。例えば、ビスフェノールAから誘導されるグリシジルエーテルからなるエポキシ化合物は、一般的には180〜5,000g/当量の範囲である。また、本発明で用いるグリシジル基含有アクリル樹脂のエポキシ当量は、通常200〜5,000g/当量の範囲であり、特に好ましくは、300〜2,500g/当量の範囲である。
本発明の硬化性組成物において、以上説明したエポキシ化合物(a)と硬化剤(b)との配合比は、エポキシ化合物(a)のエポキシ基に対し、エポキシ基と反応しうる硬化剤(b)中の官能基が0.5〜3当量で用いることが好ましく、特に0.7〜1.5当量の範囲が好ましい。当量比が上記範囲からはずれる場合は、得られる硬化物のゲル分率が低下し、機械的特性が低下する傾向にある。
本発明の硬化性組成物は、硬化剤(b)と上記エポキシ化合物(a)とを混合することにより得られ、その製造方法は特に限定されない。例えば、硬化剤(b)とエポキシ化合物(a)とを、室温又は加熱した状態で混練する方法や、両者を水や有機溶媒に分散または溶解する方法、さらには両者を水や有機溶媒に分散又は溶解させた後に、用いた水や有機溶媒を除去する方法等により製造できる。
また、用いる硬化剤(b)は、本発明の多価カルボン酸混合物とその他硬化剤をあらかじめ混合したものを用いてもよいし、多価カルボン酸混合物とその他硬化剤とを別々にエポキシ化合物と混合してもよい。
本発明の硬化性組成物は、各種用途に応じて硬化促進剤、反応希釈剤、充填剤や強化剤、三酸化アンチモン、ブロム化合物、水酸化アルミニウムなどの難燃剤、染料や顔料、離型剤や流動調整剤、可塑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、二酸化チタン、溶剤などを添加することができ、その適用量は本発明の効果を損なわない範囲で任意に適用することができる。これらの添加剤を配合する方法としては、特に制限はなく、慣用の配合方法が適用できる。
硬化促進剤としては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などのジアザビシクロアルケン類およびそれらの塩類、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫やアルミニウムアセチルアセトン錯体などの有機金属化合物、トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニルなどの有機リン系化合物、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、トリフェニルボレートなどのホウ素系化合物、塩化亜鉛、塩化第二錫などの金属ハロゲン化物、第4級アンモニウム化合物、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタンのナトリウムアルコレートなどのアルカリ金属アルコレート類、アナカルド酸及びその塩、カルドール、カルダノール、フェノール、ノニルフェノール、クレゾールなどのフェノール類などが挙げられる。
反応希釈剤としては、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、3級カルボン酸グリシジルエステル等が挙げられる。
充填剤や強化剤としては、例えばコールタール、瀝青、織布、ガラス繊維、アスベスト繊維、ホウ素繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、鉱物シリケート、雲母、石英粉、水酸化アルミニウム、ベントナイト、カオリン、珪酸エアロゲル、アルミニウム粉や鉄粉などの金属粉などが挙げられる。
離型剤や流動調整剤としては、例えばシリコーン、エアロジル、コロイド性含水珪酸アルミニウム、ワックス、ステアリン酸塩、炭酸カルシウム、タルクなどが挙げられる。
可塑剤としては、パイン油、低粘度液状高分子、ゴム状物、タール、ポリサルファイド、ウレタンプレポリマー、ポリオール、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、エピクロルヒドリンの重合物、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、トリクレジルホスフェートなどが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、「チヌビン(Tinuvin、商品名)」(スイス国・チバスペシャリティケミカルス社製)が挙げられる。立体障害アミン系光安定剤やフェノール系酸化防止剤としては、例えば、「チヌビン144(商品名)」や、「イルガノックス1010(商品名)」又は「イルガフォスP−EPQ(商品名)」(いずれもチバスペシャリティケミカルス社製)が挙げられる。これらの添加剤を配合する方法としては、特に制限はなく、慣用の配合方法が適用できる。
顔料としては、アゾ顔料、銅フタロシアニン系顔料、塩基性染めつけレーキ、酸性染めつけレーキ、媒染染料系顔料、建設染料系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、カーボンブラック、クロム酸塩、フェロシアン化物、酸化チタン、硫化セレン化合物、珪酸塩、炭酸塩、燐酸塩、金属粉末、等の着色顔料や、硫酸バリウム、炭酸バリウム、石膏、アルミナ白、クレー、シリカ、タルク、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の体質顔料が挙げられる。
その他の添加剤としては、ナフテン酸コバルト等のドライヤー、メトキシフェノール、シクロヘキサンオキシム等の皮張り防止剤、高重合アマニ油、有機ベントナイト、シリカ等の増粘剤、ベンゾイン等のわき防止剤、流れ調整剤等が好適に使用できる。
本発明の硬化性組成物は、熱や紫外線等のエネルギーで硬化させることができ、例えば、加熱により硬化させる場合は、通常室温〜250℃、望ましくは80〜200℃、さらに望ましくは80〜150℃の範囲で硬化反応を行うことができる。硬化時間は、該組成にも左右させるが、通常、数秒〜200時間の範囲である。
本発明の硬化性組成物は、塗料、電気絶縁材、接着剤、複合材料のマトリックス樹脂、接着剤、シーリング剤等に好適に使用できる。本発明の硬化性組成物を電気絶縁材用途に用いる場合は、具体的には注型成形剤、半導体封止剤、絶縁塗料、積層板として用いることができる。
本発明の硬化性組成物は、塗料として特に好ましく用いることができ、とりわけ、粉体塗料、水分散系スラリー状塗料、水系塗料、及び溶剤系塗料の形態で用いることができる。例えば、エポキシ化合物(a)がグリシジル基含有アクリル樹脂である場合には、硬化速度が速く、耐候性等の耐久性に優れ、特に顔料成分を含有しない場合は、クリアー塗膜として、例えば自動販売機、道路資材、自動車等のトップコートとして好ましく使用できる。
得られた塗膜は、耐候性等の耐久性に優れ、金属、コンクリート駆体、木材、プラスチック材の保護材として、缶、自動車、船舶或いは建設・土建資材に好適に適用できる。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
本発明で使用する測定法は、以下のとおりである。
1.ニトリル混合物の分析方法
ニトリル混合物の組成は、ガスクロマトグラフィーの測定及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定により求める。トリニトリル混合物に含有されるアクリロニトリルの4量体以上の高分子量体の含有率は、GPCにより求める。色調は、透過法によるUV測定から求める。各測定は以下の装置及び条件で行う。
〔ガスクロマトグラフィー測定〕
ニトリル混合物0.5gをアセトン1.5gに溶解し、下記の条件で測定を行なう。
装置:日本国(株)島津製作所製GC−14B
カラム:日本国GL Science Inc.製 キャピラリーカラム TC−1(内径0.25mm、長さ30m)
キャリアガス:He
検出:水素炎イオン化検出器(hydrogen flame ionization detector;FID)
カラム温度条件:120℃から20℃/minで200℃まで昇温し、5分間保持した後、10℃/minで250℃まで昇温させ10分間保持
試料溶解溶媒:アセトン
〔GPC測定〕
各化合物2.0mgをテトラヒドロフラン2.0gで溶解し、0.5μmフィルターで濾過を行い、下記の条件で展開、検出することにより分析を行う。
測定装置:日本国東ソー(株)製HLC−8120GPC
検出器 :示差屈折率検出器(refractive index detector;RI)
展開液 :テトラヒドロフラン
展開液流速:1.0ml/min
カラム :日本国東ソー社(株)製TSKgel(商標)GMHHR−Nを1本及びG1000HXLを2本を直列に設置
カラム温度:40℃
〔色調の測定法〕
ニトリル混合物0.400gをホールピペットで定量されたジエチレングリコールエーテル4.0mlに溶解し、下記の透過法によりUV測定を行い、得られる三刺激値からハンターの式にしたがいL値、a値、及びb値を求める。
測定装置:日本国(株)島津製作所製 UV2500PC
サンプルセル:石英製、外寸12.4mm×12.4mm×高さ45mm、光路長10.0mm
ジエチレングリコールジメチルエーテル:日本国和光純薬社製 特級試薬
測定温度:25±2℃
波長範囲:380〜780nm
波長送り速度:低速レンジ(約140nm/分)
2.多価カルボン酸混合物の分析方法
多価カルボン酸混合物中の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、3−カルボキメチル−1,5−ジカルボキシペンタン及び、アジピン酸の含有率は、高速液体クロマトグラフィー(以下、「LC」と称す)による測定により求める。色調は、透過法によるUV測定から求める。窒素量測定は燃焼させ発生した気体中の窒素濃度より求めた。各測定は以下の装置及び条件で行う。Na量の測定はイオンクロマトグラフィーで測定を行なった(Naは、ニトリル混合物の加水分解に用いた水酸化ナトリウムに由来する)。
〔LC測定〕
固体の多価カルボン酸混合物の場合は、多価カルボン酸混合物0.050g、内部標準サンプルとしてイソ酪酸0.015g、展開液2.00gを秤取り溶解後、下記の測定条件によりLCにて測定を行なった。溶液の多価カルボン酸混合物の場合は、溶液中の濃度によっても異なるが、20質量%程度多価カルボン酸混合物が含まれている場合は、多価カルボン酸混合物を0.25g、内部標準サンプルのイソ酪酸を0.015g及び、展開液2.0gで溶解しLCにて測定を行なった。
測定に先立ち、内部標準サンプルのイソ酪酸0.015gと1,3,6−ヘキサントリカルボン酸0.015g及び、アジピン酸を正確に秤取り蒸留水2.0gで溶解し、LC測定を行いイソ酪酸に対する1,3,6−ヘキサントリカルボン酸及び、アジピン酸のピーク強度比を求めた。この強度比を用いて多価カルボン酸混合物の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸及び、アジピン酸の含有質量%を求めた。3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタンから誘導される3−カルボキシルメチル−1,5,−ジカルボキシペンタン含有率は、3−カルボキシルメチル−1,5,−ジカルボキシペンタンの強度比が1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の強度比と同等であると仮定し含有質量%を算出した。
カラム:日本国(株)日本分光社製 FinePack SIL C−18S 内径4.6×長さ150mm
検出器:日本国島津社製 SPD−6A
展開液:CHCN/蒸留水/85質量%リン酸水溶液=10/990/4(質量比)で調整したもの。
カラム温度:40℃
展開液流速:1.2ml/min
サンプル注入量:25μl
〔色調の測定法〕
多価カルボン酸混合物0.400gをホールピペットで定量された蒸留水4.0mlに溶解し、下記方法の透過法によりUV測定を行う。得られる三刺激値からハンターの式にしたがい、L値、a値及びb値を求める。
測定装置:日本国(株)島津製作所製 UV2500PC
サンプルセル:石英製、外寸12.4mm×12.4mm×高さ45mm、光路長10.0mm
蒸留水:日本国和光純薬(株)製
測定温度:25±2℃
波長範囲:380〜780nm
波長送り速度:低速レンジ(約140nm/分)
〔窒素量測定法〕
多価カルボン酸混合物の固体を、石英製の試料ポートに乗せて燃焼させ、発生する気体中の窒素濃度を測定した。プロピオニトリルを392ppm(Nとして100ppm)含む水溶液及びプロピオニトリルを3920ppm(Nとして1000ppm)含む水溶液の測定を行ない、検量線を作成した。多価カルボン酸混合物の濃度は、窒素量が検量線内に入るよう調整して測定を行なった。
測定装置:日本国三菱化成社製 TN−10
キャリアガス:Ar
燃焼条件:600℃で10秒後、800℃で30秒
〔Na量の測定方法〕
多価カルボン酸混合物を蒸留水で溶解し、陽イオン交換樹脂充填カラムによるイオンクロマトグラフィーで測定を行ない、溶液のNa量を測定した。NaOH濃度が異なる2種類のNaOH水溶液を測定し、検量線を作成し、多価カルボン酸混合物水溶液中のNa量を検量線から算出した。
測定装置:日本国トーソー社製 8020シリーズ
検出器:日本国トーソー社製CM−8020電導度計
展開液:2mmol 硝酸水溶液
カラム:日本国トーソー社製 IC−Cation
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
サンプル注入量:10μl
実施例1
[ニトリル混合物の製造]
アクリロニトリルの電解二量化反応を、単一電解槽を用いて以下のようにして行なった。
単一電解槽は、1cm×90cmの通電面を有する鉛合金を陰極とし、同じ面積の通電面を有する炭素鋼を陽極として用い、陽極と陰極を2mmの間隔で保った。電解液は、10質量部の油相及び90質量部の水相でエマルジョンをなしており、水相の組成は、アクリロニトリル約2.0質量%、KHPO約10質量%、K約3質量%、エチルトリブチルアンモニウムエチル硫酸塩0.3質量%、アジポニトリル0.3質量%、プロピオニトリル0.1質量%及び1,3,6−トリシアノヘキサン0.05質量%を含んだ水溶液であり、リン酸でpHを約8に調整した。油相は水相と溶解平衡をなしており、その組成はアクリロニトリル約28質量%、アジポニトリル約62質量%である。
このエマルジョンを、電解面で線速1m/secになるように単一電解槽に循環供給し、電流密度20A/dm、50℃で電解を行った。電解を始めると同時に、電解液タンクから油水分離器に送られたエマルジョンの水相を、約50℃に保温したイミノジ酢酸タイプのキレート樹脂(ドイツ国バイエル(株)製、Lewatit TP207(商標))K型200CCで、6CC/AHの割合で処理を始め、電解液タンクに循環した。
同時に油相を連続的に抜き出し、前記電解液組成を保つようにアクリロニトリル及び水を連続的に添加した。また、エチルトリブチルアンモニウムエチル硫酸は、油相に溶解して抜き出されるので、これを補うためにエチルトリブチルアンモニウムエチル硫酸を随時電解槽に添加した。
このようにして2000時間電解を行った結果、初期電解電圧は3.9Vで安定に推移し、発生ガスに含まれる水素は電解終了時で0.16vol%であり、陰極の消耗速度は0.21mg/AH、陽極の消耗速度は0.23mg/AHであり、不均一の陽極腐食物はまったくなかった。消費アクリロニトリルに対するアジポニトリルの収率は90%、1,3,6−トリシアノヘキサンの収率は7.5%であった。
次に、上記電解で得られた油相を集め、水抽出処理を行い、アクリロニトリル、プロピオニトリル及び水を蒸留除去し、次いで、減圧蒸留によりアジポニトリルを除去し、蒸留残渣液を得た。この残渣液中にはアジポニトリルが、11.5質量%の濃度で残留していた。
この残渣液からのアジポニトリルの除去は、径32mmφ、実段数5段の真空外套付蒸留塔を用いて、アジポニトリルを主成分として含む留分をバッチ蒸留し、真空度2.0mmHgで塔頂温度120〜210℃までの留分を初留カットすることによって蒸留残渣(A)を得た。
この蒸留残渣(A)は、アジポニトリル4.0質量%、1,3,6−トリシアノヘキサン84.5質量%、3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタン5.0質量%、及び高分子量体6.5質量%からなるトリニトリル化合物を主成分とするニトリル混合物(B)であった。
この蒸留残渣(A)からのニトリル混合物の分離を、スミス式実験室用分子蒸留装置(日本国神鋼ファウドラー(株)製、2型、電熱面積0.032m、ガラス製)を用いて行った。真空度0.1mmHg、外壁面加熱温度180℃、蒸留残渣(A)の供給速度2g/minで操作した。蒸留残渣(A)の供給量は2000gであり、蒸留物の量1150gであり、蒸留残渣の量は850gであった。蒸留残渣は、組成が1,3,6−トリシアノヘキサン93.3質量%、3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタン5.8質量%、及びアジポニトリル0.9質量%からなる黄色のニトリル混合物(C)であった。
上記で得られたニトリル混合物(C)の色調を測定した結果、L値は98.2、a値は−1.18、b値は3.68であった。
上記と同様の操作を2回繰り返し(即ち、ニトリル混合物を得る操作を合計3回行なった)、ニトリル混合物(C)を1320g得た。
下記の実施例及び比較例で用いた1,3,6−トリシアノヘキサンは、上記ニトリル混合物(C)である。
[多価カルボン酸混合物の製造]
還流冷却器を取り付けた内容量1リットルの攪拌装置付四つ口フラスコに、ニトリル混合物(C)161gを、20質量%水酸化ナトリウム水溶液780g(水酸化ナトリウムの量は3.9モル)とともに24時間加熱還流を行って加水分解した。室温まで冷却し、加水分解反応液(D)を916g得た。
加水分解反応液(D)916gを、氷で氷冷しながら液温が20℃を超えないように36質量%HClでpHを7とし、中和反応液(E)1072gを得た。次いで、中和反応液(E)に活性炭(白鷺A(商標)、日本国武田薬品工業製)28.2gを加え、室温で1時間攪拌を行った。ろ過により活性炭を除去し、透明な脱色反応液(F)1065gを得た。
次いで、36質量%塩酸を添加して脱色反応液(F)のpHを1まで下げることにより、脱色反応液(F)中の多価カルボン酸塩が多価カルボン酸に変換された水溶液を得た。その後、該水溶液から、約90℃、減圧下でロータリーエバポレーターにて水を除去し、固体を得た。更に、この固体を40℃、減圧下で完全に水がなくなるまで乾燥することにより固体中の水分を除去し多価カルボン酸の混合物を回収した。回収した多価カルボン酸の混合物を、10Lの容器に移し、tert−ブチルメチルエーテルを4500ml加え1時間攪拌を行い、多価カルボン酸の混合物をtert−ブチルメチルエーテル中に抽出させた。tert−ブチルメチルエーテルに溶けなかった塩をろ過により除去した。抽出液(ろ液)に50gの無水硫酸マグネシウムを加え、25℃にて1時間攪拌を行い、抽出液を乾燥させた。ろ過により沈殿物を除去し、ろ液を50℃で減圧下ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させた。残渣を40℃で減圧下乾燥させ、無色の多価カルボン酸混合物202.7gを得た。尚、仕込んだニトリル混合物(C)から誘導される多価カルボン酸塩の混合物の理論収量に対する、実際に得られた多価カルボン酸塩の混合物の収率(以下、単に「収率」と称する)は、93%であった。
窒素量の測定を行なったところ、561ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が93.3質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン5.8質量%及び、アジピン酸は0.9質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.90、a値は−0.01、b値は−0.12であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は100.00、a値は−0.05、b値は0.11であった。熱安定性を示す指標である△Eは0.23であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない色調を測定したところ、L値は97.33、a値は−1.21、b値は6.87であり、この条件での△Eは7.53であった。
実施例2
実施例1と同様な方法で得た透明な脱色液(F)1065gを、スチレン系陽イオン交換樹脂(アンバーリスト(商標)15WET、米国ロームアンドハース(株)製)を4000ml充填したカラムに通液し、さらに蒸留水でイオン交換されたものをカラムから排出させ、得られた溶液を1μmのTFEのフィルターでろ過後、ロータリーエバポレーターにて90℃で水を除去し、残渣を40℃で減圧下完全に乾燥させ無色の多価カルボン酸混合物を200.6g得た(収率92%)。
窒素量の測定を行なったところ、327ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が93.4質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン5.7質量%及び、アジピン酸は0.9質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.86、a値は0.00、b値は0.25であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は99.60、a値は−0.15、b値は0.60であった。熱安定性を示す指標である△Eは0.46であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない、色調を測定したところ、L値は98.14、a値は−1.12、b値は5.76であり、この条件での△Eは5.51であった。
実施例3
実施例2の方法で得られた多価カルボン酸混合物100gを300mlナスフラスコに入れ、蒸留水100gで70℃において均一になるまで溶解した。静置した状態で25℃まで冷却した。25℃で放置し結晶が析出した時点から2℃/hrの速度で温度を下げ、最終的に1℃まで下げた。1℃まで下げる過程で適宜容器を振とうさせた。生じた結晶を200メッシュの濾布に入れ、遠心ろ過機により3000rpmでろ過を行い無色の多価カルボン酸混合物を81.3g得た(収率75%)。
窒素量の測定を行なったところ、65ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が99.6質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン0.2質量%及び、アジピン酸は0.2質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.61、a値は−0.03、b値は0.02であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は99.58、a値は0.03、b値は0.21であった。熱安定性を示す指標である△Eは0.20であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない色調を測定したところ、L値は99.12、a値は−0.43、b値は1.97であり、この条件での△Eは2.05であった。
実施例4
実施例1と同様の方法で得られた加水分解反応液(D)のpHを13として、活性炭による処理を行なった以外は実施例3と同様の操作により、多価カルボン酸混合物207.1gを得た(収率95%)。
窒素量の測定を行なったところ、1023ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が93.3質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン5.8質量%及び、アジピン酸は0.9質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.87、a値は−0.09、b値は0.36であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は99.79、a値は−0.11、b値は0.58であった。熱安定性を示す指標である△Eは0.24であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない色調を測定したところ、L値は97.28、a値は−1.39、b値は7.43であり、この条件での△Eは7.64であった。
実施例5
実施例1と同様の方法で得られた加水分解反応液(D)のpHを12として活性炭による処理を行なった以外は実施例3と同様の操作により、多価カルボン酸混合物204.5gを得た(収率94%)。
窒素量の測定を行なったところ、959ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が93.4質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン5.7質量%及び、アジピン酸は0.9質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.80、a値は−0.11、b値は0.29であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は99.79、a値は−0.09、b値は0.50であった。熱安定性を示す指標である△Eは0.21であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない色調を測定したところ、L値は97.22、a値は−1.33、b値は7.28であり、この条件での△Eは7.28であった。
実施例6
実施例1と同様の方法で得られた加水分解反応液(D)のpHを9として活性炭による処理を行なった以外は実施例3と同様の操作により、多価カルボン酸混合物203.4gを得た(収率94%)。
窒素量の測定を行なったところ、832ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が93.3質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン5.9質量%及び、アジピン酸は0.8質量%であった。
得られた該多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.87、a値は−0.11、b値は0.13であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は99.90、a値は−0.08、b値は0.43であった。熱安定性を示す指標である△Eは0.31であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない色調を測定したところ、L値は97.14、a値は−1.27、b値は7.03であり、この条件での△Eは7.51であった。
実施例7
実施例1と同様の方法で得られた加水分解反応液(D)のpHを5として活性炭による処理を行なった以外は実施例3と同様の操作により、多価カルボン酸混合物201.2gを得た(収率93%)。
窒素量の測定を行なったところ、684ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が93.2質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン5.8質量%及び、アジピン酸は1.0質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.96、a値は−0.04、b値は0.00であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は99.88、a値は−0.07、b値は0.26であった。熱安定性を示す指標である△Eは0.27であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない色調を測定したところL値は97.29、a値は−1.26、b値は6.99であり、この条件での△Eは7.58であった。
実施例8
実施例1と同様の方法で得られた加水分解反応液(D)のpHを3として活性炭による処理を行なった以外は実施例3と同様の操作より多価カルボン酸混合物198.6gを得た(収率91%)。
窒素量の測定を行なったところ、1049ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が93.3質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン5.8質量%及び、アジピン酸は0.9質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.87、a値は−0.09、b値は0.18であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は99.91、a値は−0.12、b値は0.47であった。熱安定性を示す指標である△Eは0.30であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない色調を測定したところL値は96.93、a値は−1.41、b値は7.93であり、この条件での△Eは8.39であった。
実施例9
実施例1と同様の方法で得られた加水分解反応液(D)を、日本国(株)トクヤマ社製のバイポーラ膜(ネオセプタ BP−1(商標))とK膜(陽イオン交換膜)を交互に0.75mmの間隔で各10室設けた電解槽を具備した電気透析装置TS2B−2−10型(日本国(株)トクヤマ社製)によりNaの除去を行なった。バイポーラ膜及びK膜の有効膜面積は1室当たり2dmで、電極は陽極、陰極いずれもNi電極を使用し、印加電流は27A、印加電圧は約38Vで電解を行なった。外部に脱塩室及びアルカリ室を設け、脱塩室に加水分解液(D)2000gを仕込み、アルカリ室に0.1N NaOH水溶液を6l、電極室に1N NaOHを約6l仕込み、各室の流速を3.21/min(6cm/sec)で循環させながら18分間電気透析を行ないpH7.0の中和溶液(H)1850gを得た。
この中和溶液(H)の電気電導度は54.3mS/cmであった。活性炭(白鷺A(商標)、日本国武田薬品工業製)45gを加え、室温で1時間攪拌を行った。ろ過により活性炭を除去し、無色透明な脱色中和液(I)1815gを得た。次いで、この溶液(I)を再度、電気透析装置の塩室に仕込み直し、アルカリ室のアルカリ液は中和に用いたNaOH水溶液をそのまま使用した。印加電流27A、印加電圧約38Vで、流速3.2L/min(6cm/sec)で50分間行ない、無色透明な脱塩液(J)を1400g得た。電気透析終了時の脱塩液(J)の電導度は1.15mS/cmであり、該電気透析処理に用いた加水分解液(D)のNa濃度に対する脱塩液(J)中のNaから求めたNa除去率は99.7%であった。
得られた脱塩液(J)のLC測定を行なった結果、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が461.2g、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン27.6g及びアジピン酸が4.3g含まれていた。(収率97%)
得られた脱塩液(J)1400gを冷媒循環ジャケット付き晶析層に入れ、テフロン被覆攪拌棒で攪拌しながら内温を−3℃に下げ24時間攪拌しながら結晶を析出させた。析出した結晶を孔径1μmのPTFE製フィルターで結晶をろ別後、バスケットサイズ130Φの遠心分離機により4000rpmで20分間母液を遠心分離して結晶を得た。この時含水率は12%であった。真空乾燥により無色の多価カルボン酸混合物228gを得た。
窒素量の測定を行なったところ、36ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が99.5量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン0.3質量%及び、アジピン酸は0.2質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.97、a値は−0.37、b値は0.01であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は99.91、a値は−0.29、b値は0.07であった。熱安定性を示す指標である△Eは0.12であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない色調を測定したところL値は99.27、a値は−0.35、b値は1.13であり、この条件での△Eは1.32であった。
実施例10
実施例1と同様の方法で得られた加水分解反応液(D)914gに36質量%HClを386.5g加え、pHを1とした。その後、88〜92℃の範囲で、減圧下でロータリーエバポレーターを用いて該pH調整した液から水を除去した。得られた残渣を40℃、減圧下で乾燥した。40℃での減圧乾燥時、6時間の間の重量変化が0.01%以下になるまで乾燥を行なった。次いで、得られた残渣を10lの容器に移し、tert−ブチルメチルエーテルを4500ml加え1時間攪拌を行い、溶媒抽出後、ろ過により塩を除去した。ろ液に50g無水硫酸マグネシウムを加え1時間攪拌を行い、抽出液を乾燥させた。ろ過により沈殿物を除去し、ろ液を50℃で減圧下ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させた。残渣を40℃で減圧下乾燥させ、多価カルボン酸混合物213.2gを得た(収率98%)。
得られた多価カルボン酸混合物213.2gに蒸留水303.6gを加え45℃に加温して溶解した。溶解した溶液516.8gに氷水で冷却しながら25℃以下に保ちながら35質量%NaOH水溶液336g加えpHを7とした。次いで、活性炭(白鷺A(商標)、日本国武田薬品工業製)10.7gを加え、室温で1時間攪拌を行った。ろ過により活性炭を除去し、脱色された溶液810gを得た。
得られた脱色液810gを氷冷により25℃以下に保ち36質量%HClを386g加えpHを1とした。その後、88〜92℃の範囲で、減圧下でロータリーエバポレーターを用いて水を除去した。得られた残渣を40℃、減圧下で乾燥した。40℃での減圧乾燥時、6時間の間の重量変化が0.01%以下になるまで乾燥を行なった。次いで、得られた残渣を10lの容器に移し、tert−ブチルメチルエーテルを4500ml加え1時間攪拌を行い、溶媒抽出後、ろ過により塩を除去した。ろ液に50g無水硫酸マグネシウムを加え1時間攪拌を行い抽出液を乾燥させた。ろ過により沈殿物を除去し、ろ液を50℃で減圧下ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させた。残渣を40℃で減圧下乾燥させ、多価カルボン酸混合物196.7gを得た(収率91%)。
窒素量の測定を行なったところ、480ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が93.3質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン5.8質量%及び、アジピン酸は0.9質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.91、a値は−0.02、b値は0.14であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は99.99、a値は−0.06、b値は0.10であった。熱安定性を示す指標である△Eは0.23であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない色調を測定したところ、L値は97.86、a値は−1.17、b値は6.34であり、この条件での△Eは6.63であった。
実施例11
還流冷却器を取り付けた1l四ッ口フラスコに、ニトリル混合物(C)161g、36質量%塩酸水溶液395.4g(塩酸の量は3.9モル)を添加し、テフロンコートされた回転子を入れてマグネティックスターラーを用いて撹拌しつつ加熱還流により24時間ニトリル混合物(C)の加水分解を行なった。
得られた加水分解反応液を室温まで冷却し、12時間放置した。その後、約90℃、減圧下でロータリーエバポレーターにて水を除去した。残渣を40℃、減圧下で乾燥した。40℃での減圧乾燥時、6時間の間の重量変化が0.01%以下になるまで乾燥を行なった。次いで、残渣を10lの容器に移し、tert−ブチルメチルエーテルを4500ml加え1時間攪拌を行い、溶媒抽出後、ろ過により塩を除去した。ろ液に50g無水硫酸マグネシウムを加え1時間攪拌を行い、抽出液を乾燥させた。ろ過により沈殿物を除去し、ろ液を50℃で減圧下ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させた。残渣を50℃で減圧下乾燥した。50℃での減圧乾燥時、6時間の間の重量変化が0.01%以下になるまで乾燥を行い多価カルボン酸混合物212.1gを得た(収率98%)。
得られた多価カルボン酸混合物212.1gに蒸留水302.4gを加え、45℃に加温して溶解した。溶解した溶液514.5gに氷水で冷却しながら25℃以下に保ちながら35質量%水酸化ナトリウム水溶液336.0g加え、pHを7とした。次いで、活性炭(白鷺A(商標)、日本国武田薬品工業製)10.7gを加え、室温で1時間攪拌を行った。ろ過により活性炭を除去し、脱色された溶液809gを得た。
得られた脱色液809gを氷冷により25℃以下に保ち36質量%HClを385g加え、pHを1とした。約90℃、減圧下でロータリーエバポレーターにて水を除去し後、残渣を40℃、減圧下で乾燥した。40℃での減圧乾燥時、6時間の間の重量変化が0.01%以下になるまで乾燥を行なった。次いで、残渣を10lの容器に移し、tert−ブチルメチルエーテルを4500ml加え1時間攪拌を行い、溶媒抽出後、ろ過により塩を除去した。ろ液に50g無水硫酸マグネシウムを加え1時間攪拌を行い抽出液を乾燥させた。ろ過により沈殿物を除去し、ろ液を50℃で減圧下ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させた。残渣を40℃で減圧下乾燥させ、多価カルボン酸混合物197.8gを得た(収率91%)。
窒素量の測定を行なったところ、533ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が93.2質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン5.9質量%及び、アジピン酸は0.9質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.92、a値は−0.02、b値は−0.13であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色差を測定したところL値は99.87、a値は−0.04は、b値は0.10であった。熱安定性を示す指標である△Eは0.24であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない色差を測定したところ、L値は97.45、a値は−1.19、b値は6.57であり、この条件での△Eは7.00であった。
比較例1
実施例1と同様の方法で得られた加水分解反応液(D)916gを、氷で氷冷しながら液温が20℃を超えないように36%HClでpHを1とし反応液(K)1371gを得た。その後、88〜92℃の範囲で、減圧下でロータリーエバポレーターを用いて加水分解反応液(K)から水を除去した。得られた残渣を40℃、減圧下で乾燥した。40℃での減圧乾燥時、6時間の間の重量変化が0.01%以下になるまで乾燥を行なった。次いで、得られた残渣を10lの容器に移しtert−ブチルメチルエーテルを4500ml加え1時間攪拌を行い溶媒抽出後、ろ過により塩を除去した。ろ液に50g無水硫酸マグネシウムを加え1時間攪拌を行い抽出液を乾燥させた。ろ過により沈殿物を除去し、ろ液を50℃で減圧下ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させた。残渣を40℃で減圧下乾燥させ多価カルボン酸混合物を203.4g得た(収率93%)。
窒素量の測定を行なったところ、4370ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が93.5質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン5.6質量%及び、アジピン酸は0.2質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は95.23、a値は0.65、b値は11.71であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は94.79、a値は0.92、b値は12.90であった。熱安定性を示す指標である△Eは1.30であった。
比較例2
還流冷却器を取り付けた1l四つ口フラスコに、ニトリル混合物(C)68.88g、20質量%水酸化ナトリウム水溶液500g(水酸化ナトリウムの量は2.5モル)を添加し、テフロンコートされた回転子を入れてマグネティックスターラーを用いて撹拌しつつ加熱還流により5時間ニトリル混合物(C)の加水分解を行なった。得られた加水分解反応混合物の冷却後、氷で冷却することにより反応混合物の温度が20℃を超えないようにしながら、濃硫酸257.0g(硫酸の量は2.67モル)を滴下することにより、pHを1に調整した水溶液を得た。
次いで、上記の水溶液から水を除去し、残った固体を完全に乾燥させた。得られた褐色の固体を、ソックスレー抽出器に入れ、酢酸エチルで抽出した。ロータリーエバポレーターにより減圧下酢酸エチルを除去し、黄褐色の多価カルボン酸の固体を72.5g得た(収率77.7%)。
窒素量の測定を行なったところ、1471ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が93.4質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン5.7質量%及び、アジピン酸は0.9質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は95.93、a値は1.84、b値は4.48であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は94.66、a値は1.39、b値は9.27であった。熱安定性を示す指標である△Eは4.98であった。
比較例3
還流冷却器を取り付けた1l四ッ口フラスコに、ニトリル混合物(C)20.0g、20質量%水酸化ナトリウム水溶液130.0g(水酸化ナトリウムの量は0.707モル)を添加し、テフロンコートされた回転子を入れてマグネティックスターラーを用いて撹拌しつつ加熱還流により5時間ニトリル混合物(C)の加水分解を行なった。得られた加水分解反応混合物の冷却後、氷で冷却することにより反応混合物の温度が20℃を超えないようにしながら、濃硫酸68.7g(硫酸の量は0.70モル)を滴下しすることにより、pHを1に調整した反応混合物を得た。
次いで、反応混合物を3回、それぞれtert−ブチルメチルエーテル50mlで抽出し、エーテル抽出物を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒の留去後、残渣をアセトン35ml及び、シクロヘキサン50mlの混合溶媒中に導入し、冷却して、生じた析出物を濾過した。
得られた析出物を真空乾燥し、多価カルボン酸混合物19.6gを得た(収率72.7%)。
窒素量の測定を行なったところ、1223ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が97.6質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン2.0質量%及び、アジピン酸は0.4質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は96.70、a値は1.76、b値は4.07であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は95.40、a値は1.16、b値は8.46であった。熱安定性を示す指標である△Eは4.62であった。
比較例4
還流冷却器を取り付けた1l四ッ口フラスコに、ニトリル混合物(C)161g、36%塩酸水溶液395.4g(3.9モル)を添加し、テフロンコートされた回転子を入れてマグネティックスターラーを用いて撹拌しつつ加熱還流により24時間ニトリル混合物(C)の加水分解を行なった。得られた加水分解反応混合物を室温まで冷却し12時間放置した。生成した沈殿物をろ別し、ろ液をロータリーエバポレーターにて乾固させ、さらに真空乾燥を行ない褐色固体を220.3g得た。得られた茶褐色の固体に蒸留水を881.2g加え約40℃の温水で加温することにより20質量%に溶解したところ、水溶液のpHは1.3であった。該水溶液に活性炭(白鷺A(商標)、武田薬品工業製)22g加え、室温で1時間攪拌後ろ過を行ない多価カルボン酸混合物溶液(L)を1068g得た。
多価カルボン酸混合物溶液(L)1068gを冷媒循環ジャケット付き晶析層に入れ、テフロン被覆攪拌棒で攪拌しながら内温を−3℃に下げ24時間攪拌しながら結晶を析出させた。析出した結晶を孔径1μmのPTFE製フィルターで結晶をろ別後、バスケットサイズ130Φの遠心分離機により4000rpmで20分間母液を遠心分離して結晶を得た。この時含水率は13%であった。真空乾燥により多価カルボン酸混合物89.5gを得た(収率41%)。
窒素量の測定を行なったところ、11800ppmであった。多価カルボン酸混合物の組成をLCで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が99.3質量%、3−カルボキシメチル−1,5−ジカルボキシルペンタン0.5質量%及び、アジピン酸は0.2質量%であった。
得られた多価カルボン酸混合物の色調を上記の方法で測定したところ、L値は99.08、a値は0.83、b値は1.14であった。さらに80℃で18時間熱安定性試験を行い、同様の方法で色調を測定したところ、L値は96.58、a値は1.87、b値は7.34であった。熱安定性を示す指標である△Eは6.77であった。160℃で3時間熱安定性試験を行ない色調を測定したところ、L値は87.93、a値は1.37、b値は14.74であり、この条件での△Eは17.61であった。
産業上の利用可能性
本発明の多価カルボン酸混合物は、色調に優れる(即ち、着色がなく、実質的に無色透明)であるだけでなく、加熱時の色調安定性に優れるため、塗料、洗剤、クリーニング剤中のビルダー、水あか防止剤、潤滑油、及びエステル等の各種多価カルボン酸誘導体の製造に有利に用いることができる。また、本発明の製造方法を用いると、上記優れた物性を有する多価カルボン酸混合物を高収率で製造することができる。

Claims (13)

  1. 1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有量が80質量%以上である多価カルボン酸混合物であって、
    該多価カルボン酸混合物は、明度指数Lの値が98以上、クロマティクネス指数aの値が−2.0〜2.0、クロマティクネス指数bの値が−2.0〜3.0であり、
    該多価カルボン酸混合物の窒素含有量が5,000質量ppm以下である
    ことを特徴とする多価カルボン酸混合物。
  2. 明度指数Lの値が99以上、クロマティクネス指数aの値が−1.0〜1.0、クロマティクネス指数bの値が−1.0〜1.0であることを特徴とする、請求項1に記載の多価カルボン酸混合物。
  3. 窒素含有量が500質量ppm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多価カルボン酸混合物。
  4. 該多価カルボン酸混合物が、1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物を加水分解して得られる加水分解反応混合物から得られ、該ニトリル混合物が、アクリロニトリルから電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにおける副生物として得られるか、又はアクリロニトリルとアジポニトリルとを反応させて得られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の多価カルボン酸混合物。
  5. 請求項1に記載の多価カルボン酸混合物を製造する方法であって、次の工程:
    (1)1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするニトリル混合物を水性媒体中で加水分解して得られる加水分解反応混合物の水溶液のpHを、3〜13の範囲に調整し、多価カルボン酸塩の混合物を含む水溶液を得、
    ただし、該ニトリル混合物は、アクリロニトリルから電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにおける副生物として得られるか、又はアクリロニトリルとアジポニトリルとを反応させて得られ、
    (2)該水溶液を固体吸着剤で処理し、
    (3)工程(2)で処理された水溶液中の多価カルボン酸塩の混合物を、イオン交換樹脂、電気透析装置又は酸を用いて多価カルボン酸混合物に転換し、それによって多価カルボン酸混合物を含む水溶液を得、
    (4)工程(3)で得られた水溶液から該多価カルボン酸混合物を回収する、
    ただし、工程(3)において酸を用いた場合は、回収した該多価カルボン酸混合物を、該多価カルボン酸混合物のための有機溶媒を用いた抽出に付して抽出物を得、続いて該有機溶媒から該抽出物中の多価カルボン酸混合物を分離する
    ことを包含することを特徴とする方法。
  6. 工程(1)における該ニトリル混合物の加水分解に用いる該水性媒体が水であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  7. 工程(1)において、水溶液のpHを5〜9の範囲に調整することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  8. 工程(2)において用いる該固体吸着剤が、活性炭、シリカゲル及び活性アルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種の固体吸着剤であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  9. 工程(3)における多価カルボン酸塩混合物の多価カルボン酸混合物への転換が電気透析装置を用いて行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  10. 工程(3)において得られる水溶液を、工程(4)の前に晶析に付すことを特徴とする、請求項5〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)及び請求項1に記載の多価カルボン酸混合物を含有する硬化剤(b)を包含する硬化性組成物。
  12. 請求項11に記載の硬化性組成物を含有する塗料。
  13. 請求項11に記載の組成物を硬化して得られる硬化組成物。
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