JP2005281175A - 多価カルボン酸製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多量の脱色剤を用いた脱色処理工程や複数の晶析処理工程を経る必要が無く、且つ、多量のアンモニウム塩の副生を伴わない、純度と色相に優れる多価カルボン酸の製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも2個以上のニトリル基を分子内に有する多価ニトリル化合物、水、低級アルコールとを、触媒の存在下にて反応させ、生成するアンモニアを反応系外に除去することにより、多価カルボン酸エステルを得、該エステル体を蒸留精製し、続いて酸触媒の存在下に加水分解することを特徴とする多価カルボン酸製造方法。
【選択図】選択図なし。

Description

本発明は、多価カルボン酸の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、少なくとも2個以上のニトリル基を分子内に有する多価ニトリル化合物、水、低級アルコールとを、触媒の存在下にて反応させ、生成するアンモニアを反応系外に除去することにより、多価カルボン酸エステルを得、該エステル体を蒸留精製し、続いて酸触媒の存在下に加水分解することを特徴とする多価カルボン酸製造方法に関する。
1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は、脂肪族3官能カルボン酸であるために、特許文献1にあるように、例えばエポキシ化合物等の硬化剤として用いた場合には、耐候性に優れ、架橋密度の高い硬化物が得られ、塗料用の硬化剤として好適に使用することができる。
塗膜の透明性が要求される用途、例えば、自動車トップクリア塗料等においては、塗膜の色相を向上させるために、主剤のアクリルエポキシ系樹脂と組み合わせて用いられる多価カルボン酸系の硬化剤も色相に優れることが必要で、純度や色相に優れる1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の製造方法の開発が行われてきた。
純度や色相に優れる1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の製造方法として、特許文献2では、アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造する際に副生する1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを用いて加水分解を行って1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を合成する方法が開示されているが、ニトリル基を加水分解してカルボン酸、又はカルボン酸塩に変換する場合、得られた加水分解溶液の着色が大きく、純度や色相に優れる1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を得るためには、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル混合物を薄膜蒸留による精製した後、加水分解を行い、得られた加水分解液を多量の脱色剤を用いた脱色処理に続いて2回以上の晶析処理を行う必要があり、精製工程の工程数、及び、その精製工程で副生する廃棄物処理量が多いという問題があった。
精製工程を簡素化するために、特許文献3では、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル混合物を用いてアルコールと水の共存下で当量の硫酸を反応させてトリエステルを得た後に、酸で加水分解を行ってトリカルボン酸を得る方法が開示されている。これは、トリエステル体に変換することにより、トリエステルの蒸留による精製が容易となり、高純度で着色の少ないトリエステル体を得ることができるために、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル混合物を予め薄膜蒸留精製する必要がなくなると共に、トリエステル体の加水分解以降の精製が簡素化され、精製工程の工程数、及び、その精製工程で副生する廃棄物処理量を低減することができる。
しかしながら、この製法では、エステル化する際に、ニトリル基に対して当量の濃硫酸を使用しなければならず、当量の硫酸系アンモニウム塩が副生するためにその廃棄物処理に窮するという問題、硫酸系アンモニウム塩からアンモニアを回収再利用することは多量のエネルギーが必要なために産業上不可であるという問題、濃硫酸による腐食に耐える反応器設備が必要であるという問題があった。
高純度・低色相多価カルボン酸を多量の脱色剤を用いた脱色処理工程や複数の晶析処理工程を経ることなく得る方法であって、且つ、アンモニウム塩の副生を回避し、アンモニアとして系外に遊離させることを可能にしうるエステル化方法として、特許文献4には、硫酸を用いないで、ホウ酸亜鉛等の触媒の存在下、β−エトキシプロピオニトリルを、水及びエタノールと共に、水で飽和した窒素を導入することで副生するアンモニアを系外に除去しながら、35気圧、200℃で3時間反応させて、β−エトキシプロピオン酸エチルエステルに変換する方法が開示されている。
しかしながら、多価ニトリル化合物を用いることや、反応溶媒として用いる溶剤を反応液中に導入しながら気相部より蒸気を抜き出すことによって生成するアンモニアを系外に効率よく除去することが可能となり、エステルの収率が向上することについては記載されていない。
国際公開第WO02/066536公報 国際公開第WO03/055836公報 特開平11−116528号公報 特公昭47−12337号公報
本発明の目的は、上記の従来技術の欠点を解消すべくなされ、多量の脱色剤を用いた脱色処理工程や複数の晶析処理工程を経る必要が無く、且つ、多量のアンモニウム塩の副生を伴わない、純度と色相に優れる多価カルボン酸の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、少なくとも2個以上のニトリル基を分子内に有する多価ニトリル化合物、水、低級アルコールとを、触媒の存在下にて反応させ、生成するアンモニアを反応系外に除去することにより、多価カルボン酸エステルを得、該エステル体を蒸留精製し、続いて酸触媒の存在下に加水分解することにより、多量の脱色剤を用いた脱色処理工程や複数の晶析処理工程を経る必要が無く、且つ、多量のアンモニウム塩の副生を伴わない、純度と色相に優れる多価カルボン酸が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)少なくとも2個以上のニトリル基を分子内に有する多価ニトリル化合物、水、低級アルコールとを、触媒の存在下にて反応させ、生成するアンモニアを反応系外に除去することにより、多価カルボン酸エステルを得、該エステル体を蒸留精製し、続いて酸触媒の存在下に加水分解することを特徴とする多価カルボン酸製造方法。
(2)多価ニトリル化合物が1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを主成分として含んでいることを特徴とする前記(1)記載の多価カルボン酸製造方法。
(3)触媒が、銅、亜鉛から選ばれた金属、及びその塩の中から選ばれる化合物の一種または二種以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の多価カルボン酸製造方法。
(4)アンモニアを系外に除去することが、反応溶媒として用いる溶剤を反応液中に導入しながら気相部より蒸気を抜き出すことであることを特徴とする前記(1)乃至(3)記載の多価カルボン酸製造方法。
(5)加水分解が、加水分解後に多価カルボン酸を活性炭処理及び/又は晶析処理を行うことを特徴とする前記(1)乃至(4)記載の多価カルボン酸製造方法、である。
多量の脱色剤を用いた脱色処理工程や複数の晶析処理工程を経る必要が無く、且つ、多量のアンモニウム塩の副生を伴わない、純度と色相に優れる多価カルボン酸の製造方法を提供することができた。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の少なくとも2個以上のニトリル基を分子内に有する多価ニトリル化合物とは、脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、複素環式ニトリル等、いずれの化合物も好ましく、具体的には、例えば、アジポニトリル、スベロニトリル、セバコニトリル、ドデカンジニトリル、ブタントリカルボニトリル、ヘキサントリカルボニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、テレフタロニトリル等が挙げられ、アジポニトリル、1,2,4−ブタントリカルボニトリル、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル、3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリル等がより好ましい。これらは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましいものは、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルである。
また、本発明では、多価ニトリル化合物をエステル化合物に変換した後にカルボン酸に変換するため、途中のエステル化合物での蒸留による精製が容易となる。従ってこれらの多価ニトリル化合物を少なくとも30質量%以上含有する混合物、好ましくは、少なくとも50質量%以上、より好ましくは、少なくとも70質量%以上含有する混合物である場合も好んで使用することができる。
なお、本発明の1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル及び1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の構造は、それぞれ式(1)、(2)で表される。
[化1]
NC−CHCHCH−CHCHCH−CN 式(1)

CN
[化2]
HOOC−CHCHCH−CHCHCH−COOH 式(2)

COOH
本発明で使用するアルコールは、直鎖もしくは分岐した低級脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどの脂肪族アルコールが好ましい。これらの混合物を用いても良い。
アルコールの添加量はニトリル基に対して少なくとも1当量、好ましくは5〜20当量である。また水の添加量はニトリル基に対して少なくとも1当量、好ましくは1.5〜5当量である。
このようなアルコール及び水の添加量において、必要な反応速度を得、且つ、エステル化反応後のエステル化合物の蒸留における未反応のアルコールや水の回収エネルギーを低減することができる。
アルコール、水以外に反応を阻害しない限りにおいて、他の溶剤を添加することも好ましい。
本発明の触媒は、銅、亜鉛の金属やその塩であり、好ましくは銅、亜鉛の金属粉、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、沃化物、弗化物)、硝酸塩、水酸化物、酢酸塩等である。触媒の添加量はニトリル基に対して0.01モル%以上、好ましくは0.1〜100モル%、より好ましくは1〜30モル%である。
このような触媒の添加量において、必要な反応速度を得、且つ、エステル化反応後のエステル化合物を蒸留精製する際に、エステル化合物の蒸留釜中への残存量を減らすことが可能となり、効率よく、蒸留塔頂に留出させることができる。
本発明の触媒は、酸触媒が良く酸触媒以外の触媒では、例えば塩基性触媒を用いると加水分解工程で精製が複雑になり操作がやり難くなる欠点がある。
反応後の触媒は、エステルを反応溶液から蒸留分離した後に、次の反応へ再利用することも好ましい。
本発明の反応は、好ましくは150〜250℃の温度及び0.5〜10MPaの圧力下で行われる。
このような条件において、必要な反応速度を得、且つ、脱炭酸等の副反応が抑制された高い選択性を達成することができる。
反応の進行に伴いアンモニアが副生するが、このアンモニアを連続的に又は間欠的に系外へ除去することが反応の収率及び選択率を高めるために必要である。
生成するアンモニアの除去方法としては、アンモニアの沸点は低いために、不活性ガスを使用することで反応溶液中から反応系外に抜き出すことは可能であり、反応に関与しない不活性ガス、例えば窒素や空気、二酸化炭素等をキャリアーガスとして反応系へ導入して生成アンモニア反応系外へ除去する方法が好ましいが、反応溶媒として用いる溶剤を反応液中に導入しながら気相部より溶媒蒸気を抜き出すことによって生成するアンモニアを系外に除去することがより好ましい方法である。
これは、不活性ガスに比べて、反応溶媒と副生アンモニアの親和性が高く、反応系中から副生アンモニアを効率よく抜き出すことが可能となり、そのため、トリエステルの生成速度が、不活性ガス導入の場合でのアンモニア抜き出し律速の傾向から、溶媒蒸気抜き出しの場合には、反応律速の傾向に近づけることができるためであると考えられる。
また、副生アンモニアを反応溶液から除去するために反応溶媒の蒸気を系外に抜き出す際に反応溶媒として用いる溶剤を反応液中に導入しないで実施すると、蒸気の抜き出し量が多くなると、1)最初に仕込みのトリニトリルに対して多量の反応溶媒を仕込むことが必要になり、そのため反応器を大きなサイズのものを使用しなければならないという点や2)溶媒量が減少することで、反応液中のトリニトリル基質濃度や触媒濃度が向上してそれらの析出等の懸念が生じる点、等のために、抜き出し蒸気量の反応溶媒を補う必要があり、反応溶媒として用いる溶剤を反応液中に導入する。
溶媒を蒸気として抜き出すわけであるが、本発明の反応温度条件において、反応溶媒である低級脂肪族アルコール、又は、水を含有した低級アルコールの常圧での沸点温度以上に加熱されており、そのため、反応溶媒である低級脂肪族アルコール、又は、水を含有した低級アルコールは抜き出しに十分な蒸気圧を有しており、蒸気として留出させることが容易である。
抜き出し反応溶媒蒸気は、蒸留塔を備えてアンモニア濃度を濃縮した上で溶媒蒸気を抜き出すことも好ましい。また、これらの方法を組み合わせることも好ましい。
留出したアンモニアは、公知の方法による濃縮精製等の処理を経て産業上、資源として有効利用することができる。
次に得られたエステル体の蒸留精製について記載する。蒸留は減圧蒸留方式が好ましく、より好ましくは分別蒸留方式が好ましい。減圧度は0.1〜100mmHgが好ましく、より好ましくは1〜50mmHgであり、さらに好ましくは1〜20mmHgである。トリエステルの留出温度は100〜300℃が好ましく、より好ましくは100〜250℃である。
蒸留精製により、95質量%以上の純度にて、好ましくは98質量%以上の純度にて、多価カルボン酸エステルが得られる。尚、文中の%は特定しない場合は全て質量%である。
多価エステル化合物を蒸留精製した際に残る蒸留残渣は、エステル化反応が完結していない原料の多価ニトリル化合物、すなわち、全てのニトリル基がエステル基に変換されていない化合物であり、エステル基以外の基としては、未反応のニトリル基、反応途中のアミド基やイミノエステル基が挙げられる、及び、触媒等が含まれるが、この蒸留残渣は次のエステル化反応にリサイクル使用される場合も、多価ニトリル化合物のエステル化合物への転化率を向上させることになり、好ましい。
次に得られたエステル体の加水分解反応について記載する。
本発明における加水分解反応は、平衡反応であるので、通常、生成するアルコールを反応系外へ留去しながら実施するのが有利である。
本加水分解反応に使用する酸触媒としては、塩酸、硫酸等の酸、酸性イオン交換樹脂や固体酸性を示すゼオライト、シリカ・アルミナ化合物、ヘテロポリ酸、モンモリロナイト等の固体酸触媒が挙げられ、加水分解後に触媒を反応液中から分離しやすいという点で、酸性イオン交換樹脂や固体酸性を示すゼオライト、シリカ・アルミナ化合物、ヘテロポリ酸、モンモリロナイト等の固体酸触媒が好ましい。
強酸性陽イオン交換樹脂触媒が特に好ましく、たとえば、ダイヤイオン SK1BH(三菱化学(株)製、商標)、アンバーライト IR−120B(ローム アンド ハース社製、商標)等のスチレン系スルホン酸型、または、Nafion NR−50(デュポン社製、商標)等のフッ素系スルホン酸型等の強酸性陽イオン交換樹脂触媒が挙げられる。使用量は、通常、エステル化合物に対して総交換容量で1〜50モル%である。
本加水分解反応での水の使用量は、通常、エステル化合物に対して過剰量の、好ましくは2〜20倍当量である。このような条件において、十分な反応速度を得、また、平衡をカルボン酸生成系にずらし、且つ、生成したカルボン酸を回収する際の溶媒の回収エネルギーを抑えることができる。
本加水分解反応の反応温度は、通常、50〜150℃、好ましくは90〜110℃である。反応時間は、他の反応条件により異なってくるが、通常、数時間から数十時間、好ましくは8〜30時間である。このような条件において、十分な反応速度を得、また、イオン交換樹脂触媒の劣化を抑制することができる。
加水分解反応後に、該酸触媒と加水分解液との分離は、公知の濾過方法を用いて分離される。
なお、酸触媒からの着色成分の溶出を抑制するために、アルコール、又は、アルコールと最終製造目的物であるカルボン酸との混合液に、該酸触媒を添加し、50〜110℃、好ましくは90〜110℃に、数時間から数十時間、好ましくは8〜30時間、加熱処理した後に、公知の濾過方法を用いて該酸触媒とアルコール溶液とを分離することにより、該酸触媒を洗浄しておくことも好ましい。また、フレッシュなイオン交換樹脂による第1回目の加水分解反応を洗浄の目的で実施し、第2回目以降を最終製造物である多価カルボン酸の製造として実施することも好ましい。
次に本発明の活性炭処理について記載する。
得られたエステルの加水分解後に活性炭を用いて脱色処理することも好ましい。着色の主たる原因は酸触媒であるイオン交換樹脂より溶出した成分のためであり、この着色成分は活性炭により容易に除去することができる。
このため、従来のニトリル基を加水分解してカルボン酸、又はカルボン酸塩に変換する場合では、得られた加水分解溶液の着色が大きく、純度や色相に優れる多価カルボン酸を得るためには、多量の脱色剤を用いた脱色処理工程に続いて2回以上の晶析処理工程を経る必要があったが、本発明では、脱色剤を使用しても、その量を低減できる。
活性炭は、誘導原料により脱色効率が異なり、誘導原料としては、木質、石炭及び、ヤシ殻が良く、好ましくは、木質と石炭で、さらに好ましくは、木質から誘導される活性炭である。
加水分解液と活性炭との接触時間は、通常、10秒〜10時間が好ましく、より好ましくは1分〜5時間、さらに好ましくは5分〜2時間である。この範囲であれば、脱色効果も十分であり、また、生産効率も良い。
活性炭の使用量は、通常、多価カルボン酸100質量部に対して、0.01〜100質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜80質量部の範囲、さらに好ましくは0.1〜50質量部の範囲、特に好ましくは1〜20質量部の範囲である。この範囲であれば、十分な脱色効果が得られ、且つ、吸着による多価カルボン酸の収率の低下を抑制することができる。
活性炭に多価カルボン酸の不純物を吸着させる方法は、加水分解液に活性炭を添加し撹拌する方法、活性炭をカラム等に充填させ、加水分解液を通液する方法等、一般的に用いられる様々な方法を用いることができる。
活性炭による処理時における加水分解液中の多価カルボン酸の濃度は、通常、0.1〜50%が好ましく、より好ましくは1〜40%、さらに好ましくは5〜35%の範囲である。この範囲であれば、十分な脱色効果が得られ、且つ、吸着による1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の収率の低下を抑制することができる。
活性炭による処理温度は、加水分解液が凝固したり、さらには分解しない温度範囲で実施され、通常、凝固しない最低温度から100℃の範囲であり、好ましくは、凝固しない最低温度〜50℃の範囲である。
活性炭処理後の活性炭分離方法は、濾過等の公知の方法を用いることができる。
次に加水分解後の多価カルボン酸の回収方法について記載する。
本発明においては、公知の方法を用いて乾燥することによって多価カルボン酸を回収しても良いし、結晶性を有する多価カルボン酸の場合は、晶析によって多価カルボン酸を回収しても良い。晶析を行うことで、加水分解液、又は、活性炭処理液をそのまま乾燥する場合に比べて、純度と色相をさらに向上させることができる。
晶析を行う場合の温度は、該溶液が凝固しない最低温度以上であれば実施可能であるが、通常、該溶液の凝固の起こらない最低温度から30℃の範囲、好ましくは凝固の起こらない最低温度から10℃の範囲、さらに好ましくは凝固の起こらない最低温度から5℃の範囲である。
晶析を行う場合の撹拌の有無については、撹拌しながら晶析操作を行った方が、得られる多価カルボン酸結晶の粒径が安定することや、また、壁面への結晶析出を抑制できるなどの点で好ましい。
晶析を行う前に、カルボン酸溶液の濃度を調整することも好ましく、濃縮、希釈は結晶が析出し、結晶が分離できる範囲において調整される。
晶析を行う場合、種晶を添加し、結晶の出始める時間を短縮することも好ましい。
晶析により生じた結晶は、ろ過により回収することが好ましい。ろ過方法は、加圧ろ過、減圧濾過、遠心分離、圧搾などの一般的な方法を利用することが好ましく、また、ろ過を行う際に、母液の付着量を制御できるろ過方法でろ過を行うことが好ましい。
晶析での回収率は60%以上であり、好ましくは70%以上である。晶析母液を次の晶析にリサイクルさせることも好ましい。
このようにして本発明により得られた多価カルボン酸は、純度と色相に優れる。すなわち、多価カルボン酸1.00gを5.0mLのジメチルホルムアミドに溶解した溶液の25℃において測定された明度指数L値は98以上、クロマティクネス指数のa値は−2.0〜2.0、b値は−2.0〜3.0のものが得られる。
上記のL値、a値及びb値は、JIS規格Z8722の方法にしたがって求められる。すなわち、分光測定器により標準の光Cを用いて、380〜780nmの波長範囲で透過法により測定されたXYZ系における三刺激値X、Y、Z値に基づき、JIS規格Z8730で規定された下式に示すハンターの色差式により計算され。L値は、ハンターの色差式における明度指数、a値及びb値は、ハンターの色差式におけるクロマティクネス指数と呼ばれるものである。
L=10Y0.5
a=17.5(1.02X−Y)/Y0.5
b=7.0(Y−0.847Z)/Y0.5
(式中、X、Y、及びZはXYZ系における三刺激値である)
一般に、明度指数L値は、100が上限であり、その数値が増加するにしたがい被測定物質の色相において白色度が増すことを、また、その数値が減少するにしたがい黒色度が増すことを意味する。クロマティクネス指数であるa値は、0を基準に、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相において緑色度が増すことを、また、プラスになる場合は赤色度が増すことを意味する。クロマティクネス指数であるb値は、0を基準に、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相において青色度が増すことを、また、プラスになる場合は黄色度が増すことを意味する。L値が100に近いほど、a値やb値が0に近いほど低色相になる。
本発明により得られる多価カルボン酸は、明度指数L値が98以上であり、好ましくは99以上、より好ましくは99.5以上である。a値は、−2.0〜2.0、好ましくは−1.0〜1.0である。b値は、−2.0〜3.0、好ましくは−1.0〜1.0、より好ましくは−0.5〜0.5の範囲のものが得られる。
L値、a値、及びb値が上記範囲から外れる場合には、例えば、塗料に用いた場合には、塗膜が黄色や灰色等の着色を呈する傾向にあり、また、このような多価カルボン酸を加熱により硬化させるような塗料に用いた場合には、硬化時に黄変する等の変色を起こしやすい。
本発明の製造法により得られる純度と色相に優れる多価カルボン酸は有機合成中間体、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル樹脂および可塑剤原料等、エポキシ化合物等の硬化剤等、粉体塗料やポリエステル繊維および繊維改良剤等の分野で利用され、工業的に有用である。また、本発明の製造法により得られる多価カルボン酸のエステルも有機合成中間体、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル樹脂および可塑剤原料等、粉体塗料やポリエステル繊維および繊維改良剤等の分野で利用され、工業的に有用である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
本発明で使用する測定法は、以下のとおりである。
[トリニトリルの測定法]
トリニトリル混合物の純度は、ガスクロマトグラフィーの測定(FID)及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC、という)による測定により求める。トリニトリル混合物に含有されるアクリロニトリルの4量体以上の高分子量体の含有率は、GPCにより求める。色相は、透過法によるUV測定から求める。各測定は以下の装置及び条件で行う。
<ガスクロマトグラフィー測定法>
装置:(株)島津製作所製GC−14B
カラム:GL Science Inc.製 キャピラリーカラム
TC−1(0.25mmI.D.、長さ30m)
キャリアガス:He
検出:FID
カラム温度条件:120℃から20℃/minで200℃まで昇温し、5分間保持した後、10℃/minで250℃まで昇温させ10分間保持。
試料溶解溶媒:アセトン
<GPC測定法>
各化合物2.0mgをテトラヒドロフラン2.0gで溶解し、0.5μmフィルターで濾過を行い、下記の条件で展開、検出することにより分析を行う。
測定装置:東ソー(株)製HLC−8120GPC
検出器:RI
展開液:テトラヒドロフラン
展開液流速:1.0mL/min
カラム:東ソー社(株)製TSKgel(商標)GMHHR−Nを1本、及びG1000HXLを2本、直列に設置
カラム温度:40℃
<色相の測定法>
トリニトリル混合物0.400gをホールピペットで測定されたジエチレングリコールエーテル4.0mLに溶解し、下記の透過法によりUV測定を行い、得られる三刺激値からハンターの式にしたがいL値、a値、及びb値を求める。
測定装置:(株)島津製作所製UV2500PC
サンプルセル:石英製、外寸12.4mm×12.4mm×高さ45mm、光路長10.0mm
ジエチレングリコールジメチルエーテル:和光純薬(株)製特級試薬
測定温度:25±2℃
波長範囲:380〜780nm
波長送り速度:低速レンジ(約140nm/分)
[ヘキサントリカルボン酸の測定法]
1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有率は、高速液体クロマトグラフィー(以下、LC、という)による測定により求める。色相は、透過法によるUV測定から求める。各測定は以下の装置及び条件で行う。
<色相の測定法>
多価カルボン酸混合物1.00gをジメチルホルムアミドで5.0mLとし、溶解した後に、下記方法の透過法によりUV測定を行う。得られる三刺激値からハンターの式にしたがい、L値、a値及びb値を求める。
測定装置:(株)島津製作所製UV2500PC
サンプルセル:石英製、外寸12.4mm×12.4mm×高さ45mm、光路長10.0mm
蒸留水:和光純薬(株)製
測定温度:25±2℃
波長範囲:380〜780nm
波長送り速度:低速レンジ(約140nm/分)
<LC測定>
多価カルボン酸混合物0.020gを下記の展開液2.0mLで溶解し、下記の方法により測定を行う。
測定装置:(株)島津製作所製LC−6A
カラム:日本分光(株)製 Finepak(商標)、SIL−C18S、4.6I.D.x150mm
検出:UV214nm
展開液:蒸留水990質量部、アセトニトリル10質量部、85%リン酸4質量部
カラム温度:40℃
サンプル注入量:25μL
流速:1.2mL/min
「製造例1」
単一電解槽は、1cm×90cmの通電面を有する鉛合金を陰極とし、同じ通電面を有する炭素鋼を陽極として用い、陽極と陰極を2mmの間隔で保った。電解液は、10質量部の油相及び90質量部の水相でエマルジョンをなしており、水相の組成は、アクリロニトリル2.0質量%、KHPO10質量%、K3質量%、エチルトリブチルアンモニウムエチル硫酸塩0.3質量%、及び若干のアジポニトリル、プロピオニトリル及び1,3,6−ヘキサンカルボニトリルを含んだ水溶液であり、リン酸でpHを8に調整した。油相は水相と溶解平衡をなしており、その組成はアクリロニトリル28質量%、アジポニトリル62質量%である。
このエマルジョンを、電解面で線速1m/secになるように単一電解槽に循環供給し、電流密度20A/dm、50℃で電解を行った。電解を始めると同時に、電解液タンクから油水分離器に送られたエマルジョンの水相を、50℃に保温したイミノジ酢酸タイプのキレート樹脂(バイエル(株)製、Lewatit TP207、商標)K型200CCで、6CC/AHの割合で処理を始め、電解液タンクに循環した。
同時に油相を連続的に抜き出し、前記電解液組成を保つようにアクリロニトリル及び水を連続的に添加し、油相に溶解して抜き出されたエチルトリブチルアンモニウムエチル硫酸を随時添加した。
このようにして2000時間電解を行った結果、初期電解電圧は3.9Vで安定に推移し、発生ガスに含まれる水素は電解終了時で0.16vol%であり、陰極の消耗速度は0.21mg/AH、陽極の消耗速度は0.23mg/AHであり、不均一の陽極腐食物はまったくなかった。消費アクリロニトリルに対するアジポニトリルの収率は90%、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルの収率は7.5%であった。
次に、上記電解で得られた油相を集め、水抽出処理を行い、アクリロニトリル、プロピオニトリル及び水を蒸留除去し、次いで、減圧蒸留によりアジポニトリルを除去した。この残渣中のアジポニトリルは11.5質量%であった。
この残渣液からのアジポニトリルの除去は、径32mmφ、実段数5段の真空外套付蒸留塔を用いて、アジポニトリルを主成分として含む留分をバッチ蒸留し、真空度2.0mmHgで塔頂温度120〜210℃までの留分を初留カットすることによって蒸留残渣を得た。
この蒸留残渣は、アジポニトリル4.0質量%、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル84.5質量%、3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタン5.0質量%、及び高分子量体6.5質量%からなるトリニトリル化合物を主成分とする褐色に着色したニトリル混合物であった。
「実施例1」
(1)エステル化工程
製造例1の褐色のニトリル混合物64.0g、硝酸亜鉛6水和物5.4g、メタノール384g及び水22gを攪拌機付オートクレーブに仕込み、反応温度200℃において8時間反応させた。室温で水飽和の窒素ガスを毎分1Lの割合で導入し、反応圧を6MPaに保ちながら、生成するアンモニアを保圧器から連続的に除去した。
室温まで冷却した後、反応液を濃縮してメタノール、水を留去した。得られた濃縮液を200mL反応フラスコに入れ、SUS製6mmφ×5mmのディクソンパッキングを5cm長充填したカラムを介して蒸留を行った。6mmHgの圧力下、留出温度160℃で1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリメチルエステルの留分12.2g(収率14%)を得た。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、純度99.1%であった。
(2)加水分解工程
100mL反応フラスコに1,3,6−トリカルボン酸トリメチルエステルを10g、水15g及びイオン交換樹脂(ダイヤイオン、商標、SK1B(H型)三菱化学(株)製、スチレン系スルホン酸型強陽イオン交換樹脂)3gを仕込み、内温測定用の温度計、攪拌機を取り付け撹拌しながら反応温度100〜102℃で35時間反応させた。その間副生するメタノールを留去した。また、反応中系外に留去された水と同量の水を適宜追加しながら反応を行った。反応後、イオン交換樹脂をろ過により分離し加水分解液を得た。1,3,6−トリカルボン酸の収率は99.9%以上であった。
(3)精製工程
100mLビーカーに1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の濃度が約30質量%になるように調整した加水分解液25gに、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸に対して約10質量%に相当する量の活性炭(白鷺A、商標、日本エンバイロケミカルズ(株)製)0.75gを加え、室温にて一昼夜撹拌した後、1μm孔のPTFEフィルターにより減圧下ろ過を行い脱色液を得た。得られた脱色液を蒸発乾固することによって1,3,6−ヘキサントリカルボン酸7.5gを得た。LCで測定したところ、純度は99.1%であり、色相はL=99.46、a=0.04、b=0.19と色相に優れていた。このように、本製造方法によれば、多量の脱色剤を用いた脱色処理工程や複数の晶析処理工程を経る必要が無く、且つ、アンモニウム塩の副生を伴わないで、純度と色相に優れる多価カルボン酸を得ることができる。
「実施例2」
(1)エステル化工程
製造例1の褐色のニトリル混合物80.5g、硝酸亜鉛6水和物44.5g、水24.3g、メタノール405gを攪拌機付1.2L−オートクレーブに仕込み、窒素置換後、反応温度200℃まで昇温した。200℃で1時間反応させた後、95質量%メタノール−5質量%水の混合溶媒を加熱してオートクレーブの底部に200g/hrで導入し、気相部より蒸気を200g/hrで除去した。混合溶媒の導入開始から4時間後に反応を止め、冷却後、内容物を取り出し、反応液を濃縮してメタノール、水を留去した。得られた濃縮液を200mL反応フラスコに入れ、SUS製6mmφ×5mmのディクソンパッキングを5cm長充填したカラムを介して蒸留を行った。6mmHgの圧力下、留出温度160℃で1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリメチルエステルの留分46g(収率42%)を得た。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、純度99.0%であった。
反応溶媒と共にアンモニアを系外に留出させることで、不活性ガス導入によるアンモニア留出に比べて、エステル体への転化率が向上できた。
(2)加水分解工程及び(3)精製工程は実施例1と同様に実施した。
得られた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を液体クロマトグラフィーで測定したところ、純度は99.3%であり、色相はL=99.65、a=0.02、b=0.10と色相に優れていた。このように、本製造方法によれば、多量の脱色剤を用いた脱色処理工程や複数の晶析処理工程を経る必要が無く、且つ、アンモニウム塩の副生を伴わないで、純度と色相に優れる多価カルボン酸を得ることができる。
「実施例3」
実施例1において、精製工程における脱色液の蒸発乾固処理の代わりに晶析処理にて結晶を回収した。すなわち、脱色液をテフロン(登録商標)コートした攪拌子を入れて内温を−2℃に下げ5時間攪拌しながら結晶を析出させた。析出した結晶を孔径1μmのPTFE製フィルターでろ別後、真空下で乾燥し、結晶6.1gを得た。得られた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を液体クロマトグラフィーで測定したところ、純度は99.8%であり、色相はL=99.70、a=0.02、b=−0.04と色相に優れていた。このように、本製造方法によれば、多量の脱色剤を用いた脱色処理工程や複数の晶析処理工程を経る必要が無く、且つ、アンモニウム塩の副生を伴わないで、純度と色相に優れる多価カルボン酸を得ることができる。
「実施例4」
実施例1のエステル化工程の実施において、生成した1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリメチルエステルを留去して得られた蒸留残渣に、メタノール384g及び水22gを攪拌機付オートクレーブに仕込み、反応温度200℃において8時間反応させた。室温で水飽和の窒素ガスを毎分1Lの割合で導入し、反応圧を6MPaに保ちながら、生成するアンモニアを保圧器から連続的に除去した。
室温まで冷却した後、反応液を濃縮してメタノール、水を留去した。得られた濃縮液を200mL反応フラスコに入れ、SUS製6mmφ×5mmのディクソンパッキングを5cm長充填したカラムを介して蒸留を行った。6mmHgの圧力下、留出温度160℃で1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリメチルエステルの留分10.1g(収率12%)を得た。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、純度98.7%であった。
このようにエステルを蒸留精製した際に残る蒸留残渣は、次のエステル化反応にリサイクル使用できる。
「比較例1」
実施例2のエステル化工程において、200℃に昇温後、95質量%メタノール−5質量%水の混合溶媒の導入、及び、気相部からの蒸気の抜き出しを行わずに2時間反応させた。サンプリングラインより内溶液を一部抜き出し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、トリエステル体の生成は検出できなかった。
このようにトリエステルを得るには、アンモニアの抜き出しが必要である。
「比較例2」
製造例1で得られた褐色のトリニトリル混合物をスミス式実験室用分子蒸留装置(神鋼ファウドラー(株)製、2型、電熱面積0.032m、ガラス製)を用いて薄膜蒸留精製を行った。真空度0.2mmHg、外壁面加熱温度230℃、トリニトリル混合物の供給速度2g/minで操作した。供給量2000g、蒸留物量1480g、蒸留残渣500gであった。蒸留液は、組成が1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル93.1質量%、3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタン5.7質量%、及びアジポニトリル1.2質量%からなる黄色のトリニトリル混合物であった。
還流冷却器を取り付けた内容量1リットルの攪拌装置付四つ口フラスコに、上記の黄色のトリニトリル混合物161g(1.0モル)を、20%苛性ソーダ水溶液780g(3.9モル)とともに24時間加熱還流を行って加水分解した。室温まで冷却し、加水分解反応液893gを得た。
加水分解反応液893gを氷水で冷しながら液温が20℃を超えないように酢酸でpHを7.0とし、中和反応液987gを得た。次いで、中和反応液に活性炭(白鷺A−2、商標、武田薬品工業(株)製)30gを加え、室温で3時間攪拌を行った。ろ過により活性炭を除去し、透明な脱色反応液986gを得た。活性炭のろ過を行う際に、活性炭中の液を置換させるために蒸留水30gを用い活性炭を洗浄し、洗浄液は脱色反応液に加えた。
得られた脱色反応液を、トクヤマ社製のバイポーラ膜(ネオセプタ BP−1、商標)とK膜(陽イオン交換膜)を交互に0.75mmの間隔で各10室設けた電解槽を具備した電気透析装置TS2B−2−10型によりNaイオンの除去を行なった。バイポーラ膜及びK膜の有効膜面積は1室当たり2dmで、電極は陽極、陰極いずれもNi電極を使用し、印加電流は27A、印加電流は約38Vで電解を行なった。外部に脱塩室及びアルカリ室を設け、脱塩室に脱色反応液1000gを仕込み、アルカリ室に0.1N−NaOH水溶液を6L、電極室に1N−NaOHを6L仕込み、各室の流速を3.2L/min
(6cm/sec)で循環させながら70分電気透析を行ない、Naイオンの除去率99.7%の無色透明な脱塩液を700g得た。電気透析終了時の脱塩液の電導度は1.15mS/cmであった。
得られた脱塩液700gを冷媒循環ジャケット付き晶析層に入れ、テフロン(登録商標)被覆攪拌棒で攪拌しながら内温を−3℃に下げ24時間攪拌しながら結晶を析出させた。析出した結晶を孔径1μmのPTFE製フィルターで結晶をろ別後、バスケットサイズ130Φの遠心分離機により4000rpmで20分間遠心分離して結晶を得た。この時含水率は12%であった。真空乾燥により無色の多価カルボン酸混合物114gを得た。
得られた多価カルボン酸を液体クロマトグラフィーで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の純度は99.4%であった。色相測定したところ、L値は99.74、a値は−0.04、b値は0.38であった。
続いて、多価カルボン酸混合物100gを冷媒循環ジャケット付き0.5L晶析槽に仕込み、蒸留水212gを加え、テフロン(登録商標)被覆攪拌羽根で攪拌しながら内温を40℃で溶解を行った。均一になったのち、内温を−2℃に下げ5時間攪拌しながら結晶を析出させた。
析出した結晶を孔径1μmのPTFE製フィルターでろ別後、200メッシュの濾布に入れ、バスケットサイズ130Φの遠心分離機により5,000rpmで20分間遠心分離して結晶を得た。この時含水率は8%であった。真空乾燥機により25℃、5時間予備乾燥を行った後、40℃、20時間乾燥を継続することで晶析2回目の多価カルボン酸結晶を75g得た。
得られた多価カルボン酸を液体クロマトグラフィーで測定したところ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の純度は99.7%であり、色相測定したところ、L値は99.72、a値は−0.02、b値は−0.05であった。
このように、純度と色相を満足する1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を得るには、脱色処理と2回の晶析処理を経る必要がある。
「比較例3」
製造例1で得られた褐色のトリニトリル混合物を用いて、薄膜蒸留精製を行わないで、加水分解を実施した以外は比較例1と同様に実施した。
使用する活性炭量を5倍に増やしたが、得られる脱色処理液の色相は黒色を呈しており、色相を満足するものは得られなかった。
従来のアルカリ加水分解法では、薄膜蒸留処理を行っていない純度の低いニトリル原料を用いた場合、脱色剤の量を増やしても色相に優れるものが得られない。
本発明の製造法により得られる色相の良い1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は有機合成中間体、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル樹脂および可塑剤原料等、エポキシ化合物等の硬化剤等、粉体塗料やポリエステル繊維および繊維改良剤等の分野で利用され、工業的に有用である。また、本発明の製造法により得られる1,3,6−ヘキサントリカルボン酸のエステルも有機合成中間体、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル樹脂および可塑剤原料等、粉体塗料やポリエステル繊維および繊維改良剤等の分野で利用され、工業的に有用である。

Claims (5)

  1. 少なくとも2個以上のニトリル基を分子内に有する多価ニトリル化合物、水、低級アルコールとを、触媒の存在下にて反応させ、生成するアンモニアを反応系外に除去することにより、多価カルボン酸エステルを得、該エステル体を蒸留精製し、続いて酸触媒の存在下に加水分解することを特徴とする多価カルボン酸製造方法。
  2. 多価ニトリル化合物が1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを主成分として含んでいることを特徴とする請求項1記載の多価カルボン酸製造方法。
  3. 触媒が、銅、亜鉛から選ばれた金属、及びその塩の中から選ばれる化合物の一種または二種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の多価カルボン酸製造方法。
  4. アンモニアを系外に除去することが、反応溶媒として用いる溶剤を反応液中に導入しながら気相部より蒸気を抜き出すことであることを特徴とする請求項1乃至3記載の多価カルボン酸製造方法。
  5. 加水分解が、加水分解後に多価カルボン酸を活性炭処理及び/又は晶析処理を行うことを特徴とする請求項1乃至4記載の多価カルボン酸製造方法。
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