JP2005232126A - 4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸製造方法 - Google Patents

4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにてアジポニトリルを蒸留精製する際に得られる1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルから高収率で色相の良い4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸を得るための製造方法を提供すること
【解決手段】アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにてアジポニトリルを蒸留精製する際に得られる1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを含む蒸留残査に、低級アルコールと水と硫酸を反応させて4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸のエステル体に変換した後に、該エステル体を蒸留精製し、続いて酸触媒の存在下に加水分解する。
【選択図】選択図なし

Description

本発明は、4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにてアジポニトリルを蒸留精製する際に得られる1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを含む蒸留残渣に、低級アルコールと水と硫酸を反応させてエステル体を生成させた後に、該エステル体を蒸留精製し、続いて酸触媒の存在下に加水分解することを特徴とする4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法に関する。
4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸は脂肪族3官能カルボン酸であるために、特許文献1にあるように、例えばエポキシ化合物等の硬化剤として用いた場合には、耐候性に優れ、架橋密度の高い硬化物を得ることができ、塗料用の硬化剤として好適に使用することができる。
特許文献2では、アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造する際に副生する1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを用いて加水分解を行って4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸を合成する方法が開示されている。
アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造する際に副生する1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルは、アジポニトリルを蒸留する際の蒸留残渣として得られるために、該蒸留残渣は極めて着色しており、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル以外には、3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリル(1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルに対して約4〜6%含有)やシアノ基を4個以上有するニトリル化合物等を含んでいる。
該蒸留残渣をそのまま用いて加水分解を行った場合、4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の反応溶液が着色し、且つ、不純物を含むために、精製処理を繰り返す必要があり、副生1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルから色相に優れる4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の収率は30%にも達しない。
また、該蒸留残渣から1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを蒸留精製によって回収する場合、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルの熱安定性が低いことにより、滞留時間の短い薄膜蒸留等の蒸留精製を用いる必要があるが、薄膜蒸留では1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルの回収率を高めるために蒸留留分を増やすと着色成分の混入が避けられず、蒸留による1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルの回収率は80%を超えることが難しい。さらに薄膜蒸留では、沸点の近い3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリルが混入してくるために加水分解後の精製処理の晶析においての収率が60%を超えることが難しく、この場合も、副生1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルから色相に優れる4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の収率は50%にも達しない。
このように従来の技術では、アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造する際に副生した1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを収率よく色相の優れる4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸に変換することは出来ていない。
また、シアノ基をカルボン酸に変換する方法として、シアノ基をエステル基に変換した後に加水分解をしてカルボン酸を得る方法が挙げられるが、シアノ基をエステル基に変換する方法として、硫酸を用いてアルコールと反応させる方法が、例えば、特許文献3、4に開示されるように、公知である。
特許文献5には、硫酸を用いてアルコールと反応させ、1,2,4−トリシアノブタンをトリエステル体に変換する方法が開示されている。
しかしながら、これらの文献には、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル、及び、不純物を含有する蒸留残渣から1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを効率よく変換回収することや1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルとその異性体である3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリルとの分離がエステル体に変換することにより容易になることについては記載されていない。
国際公開第WO02/066536公報 国際公開第WO03/055836公報 米国特許2,041,820号 日本国特許公報特公昭59−40818号報 日本国特許公報特開平11−116528号報
本発明の目的は、アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにてアジポニトリルを蒸留精製する際に得られる1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルから高収率で色相の良い4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸を得るための製造方法を提供することである。
本発明者らは、アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにてアジポニトリルを蒸留精製する際に得られる1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを含む蒸留残渣に、低級アルコールと水と硫酸を反応させてエステル体を生成させた後に、そのエステル体を蒸留精製することにより、蒸留残渣中の1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを効率よく変換回収することが可能となり、また、従来、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルとその異性体である3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリルとの蒸留分離は極めて困難であったが、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルと3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリルをエステル体に変換することで、蒸留精製による異性体分離が容易となることにより、4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸のエステル体を加水分解した後の晶析収率を向上させることが可能となり、その結果、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルから70%以上の高収率で色相の良い4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸が得られる製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを含有するニトリル混合物に低級アルコールと水と硫酸を反応させてエステル体を生成させた後に、該エステル体を蒸留精製し、続いて酸触媒の存在下に加水分解することを特徴とする4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法。
(2)アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにてアジポニトリルを蒸留精製する際に得られる1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを含む蒸留残査に、低級アルコールと水と硫酸を反応させてエステル体を生成させた後に、該エステル体を蒸留精製し、続いて酸触媒の存在下に加水分解することを特徴とする4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法。
(3)エステル体を加水分解した後に活性炭処理を行うことを特徴とする前記1及び2記載の4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法。
(4)エステル体を加水分解した後に活性炭処理を行い、続いて晶析処理を行うことを特徴とする前記1乃至3記載の4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法。
(5)エステル体を加水分解した後に活性炭処理を行い、続いて乾燥処理を行うことを特徴とする前記1乃至3記載の4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法。
(6)エステル体を生成させた後に、未反応の低級アルコールを留去し、続いて水と中和剤を添加し、得られた反応液から抽出溶剤を用いてエステル体を抽出した後に、該エステル体を蒸留精製することを特徴とする前記1乃至5記載の製造方法、である。
本発明により、アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにてアジポニトリルを蒸留精製する際に得られる1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルから高収率で色相の良い4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを含有するニトリル混合物とは、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルとその異性体を含有することを特徴とする混合物である。異性体としては、例えば3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリル等が挙げられる。また、このニトリル混合物にはシアノ基を4個以上有するニトリル化合物等を含んでいても良い。
本発明の1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルは、アクリロニトリルの電解二量化反応で副生する1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルやアジポニトリルとアクリロニトリルとの反応(例えば、特開2002−53540号公報)から得られる1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを用いることが好ましく、特に好ましくはアクリロニトリルの電解二量化反応で副生する1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを用いることである。
次に本発明のアクリロニトリルの電解二量化反応について具体的に説明する。
アクリロニトリルの電解還元反応は、アクリロニトリルを原料とし、1対の陰極と陽極とが陽イオン交換膜で仕切られた陰極室と陽極室とからなる、いわゆる隔膜電解槽を用いて得られる他、イオン交換膜のない単一電解槽を用いても得ることができる。これらの電解法は、例えば、特公昭45−24128号公報、特開昭59−59888号公報、特開昭59−185788号公報等に開示されている。例えば、隔膜電解槽を用いた電解は次のようにして行われる。陰極は、一般に水素過電圧の高いものが使用可能であり、例えば、鉛、カドミウム、及びこれらを主成分とする合金が好適に用いられる。陽極は、鉛、鉛合金、白金等、耐食性の高いものがよく、鉛又は鉛合金が好ましく用いられている。隔膜としては、一般に陽イオン交換膜が用いられ、陽極液として硫酸水溶液が用いられる。陰極液は、その反応中はアクリロニトリル、アジポニトリル、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルや3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリルのトリニトリル化合物、その他の副生物、水、及び伝導性支持塩からなり、油相と水相に分離したエマルジョンになるか、アクリロニトリルが過剰になることによって均一溶液になっているか、いずれかの状態である。
伝導性支持塩は、下記一般式(1)
[NR]・・・・(1)
(式中、R、R、Rは炭素数1〜5のアルキル基、Rは炭素数1〜16のアルキル基、Xは硫酸、炭酸、アルキル硫酸、リン酸等のアニオン、又は有機酸、有機多価酸の残基である)で示される第4級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
陰極液のpHは、通常5〜12の範囲にある。
電解還元反応時における電槽内の電解液温度は、通常、40〜60℃の範囲であり、電流密度は、陰極表面1dmあたり、通常、5〜50アンペアの範囲である。陰極と陽極の距離は、隔膜を介して、通常、1〜20mmであり、陰極液、陽極液をそれぞれ、通常、0.1〜10.0m/秒の線速度で通過させる。
隔膜であるイオン交換膜のない単一電解槽を用いて、アクリロニトリルの電解還元反応を行う場合は、陰極として、鉛、カドミウム、水銀又はこれらを1種以上含有する合金が好ましく用いられ、陽極として、鉄、ニッケル、又はこれらの合金が用いられる。電解液は、アルカリ金属塩、上記第4級アンモニウム塩及び水を主成分とし、反応中は、電解液にアクリロニトリル、アジポニトリル、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルや3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリルのトリニトリル化合物、その他副生物がエマルジョン又は均一溶解しした状態で存在する。アルカリ金属塩のカチオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどが挙げられ、アニオンは、リン酸、硼酸、炭酸、硫酸等の無機塩又は多価酸の残基が使用される。
電解還元反応終了後の電解液が油水のエマルジョンになっている場合、未反応のアクリロニトリル及び副生物のプロピオニトリル等の低沸分を蒸留除去後、エマルジョン破壊を行い、油水の2層に分離する。水層には無機物や4級アンモニウム塩が分配し、油層には若干の水、低沸分、アジポニトリル、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルや3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリルのトリニトリル化合物、及びその他の高沸分が分配する。
一方、電解還元反応終了後の電解液が均一溶液となっている場合には、例えば、水及び塩化メチレン等の非水系有機溶媒を添加し、水層に無機塩や4級アンモニウム塩を抽出し、油層にアジポニトリル、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルや3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリルのトリニトリル化合物、及びその他高沸分を抽出する。
次にアジポニトリル反応液から1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを含む蒸留残査を得る方法について記載する。
上記の電解還元反応終了後の電解液が油水のエマルジョンになっている場合、及び、電解還元反応終了後の電解液が均一溶液となっている場合、いずれの場合とも、アジポニトリル等の、トリニトリル成分に対して低沸点成分を、例えば、一般的な蒸留法等により除去することによって、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルや3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリルのトリニトリル化合物を含む高沸点成分残渣が得られる。トリニトリル化合物を含む高沸点成分残渣中には、低沸点成分の除去操作によっても除去されなかったアジポニトリル等の低沸点成分をはじめ、アクリロニトリルの4量体以上の高沸物が含まれている場合も好ましい。
このようにして得られた蒸留残渣中の1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルは、通常、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
また、上記の蒸留残渣は3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリルを、通常、2〜10質量%の範囲で含有する。
次に本発明の硫酸、水、アルコールを用いたエステル化法について記載する。
本発明のエステル化に使用するアルコールは、炭素数1〜4の脂肪族アルコールで、好ましくは一級アルコールであり、特に蒸留精製を効率よく行うためにはメタノールやエタノールが好ましい。アルコールの使用量は、通常、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルに対して1〜30倍当量、好ましくは2〜10倍当量、より好ましくは3〜6倍当量である。
この範囲では、エステル化に必要なアルコールを提供でき、且つ、その後の精製において蒸留する未反応アルコール量を低減できる。
本発明のエステル化に使用する硫酸の使用量は、通常、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルに対して1〜3倍当量、好ましくは1〜2倍当量である。
この範囲で、エステル化に必要な硫酸を提供でき、且つ、未反応の硫酸量を抑えられる。
本発明における水の添加方法は、(1)1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルとアルコールと濃硫酸とを反応させた後に、水を添加してエステル体に変換する方法、及び、(2)1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルとアルコールと、予め水と混合した硫酸を反応させてエステル体に変換する方法、等が好ましく、本発明のエステル化に使用する水の使用量は、(1)の場合、通常、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルに対して1.0〜20倍当量、好ましくは1.0〜10倍当量であり、(2)の場合、通常、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルに対して1.0〜1.5倍当量、好ましくは1.0〜1.2倍当量である。
この範囲で、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルのエステル化が十分な速度と90%以上の収率が得られる。
本発明のエステル化反応の温度は、60℃〜130℃、好ましくは80〜110℃である。60℃以上で充分なエステル化反応速度が得られ、130℃以下でアルコールの脱水によるエーテルの副生を抑制し易いので好ましい。反応時間は4〜20時間、好ましくは5〜15時間である。
エステル化反応において、目的とするエステルと共に酸性硫安が生成するが、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類を用いた通常の抽出操作を行うことにより、エステルと分離することができる。抽出する際に、反応液に水を添加して抽出操作を実施しやすくすることも好ましい。
また、抽出処理を行う前に、未反応のアルコールを留去して次のエステル化反応に再利用することが好ましい。さらに、エステル体の蒸留精製する工程で色相と収率を向上させるために、未反応のアルコールを留去した後に、水と共に、過剰の硫酸を中和するために中和剤を添加して中和し、続いてベンゼン、トルエン等の炭化水素類を用いた通常の抽出操作を行うことが好ましい。中和剤としては、通常の炭酸金属塩や水酸化物塩を用いることができ、好ましくは炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムを用いる。
次に得られたエステル体の蒸留精製について記載する。蒸留は減圧蒸留方式が好ましく、より好ましくは分別蒸留方式が好ましい。減圧度は0.1〜100mmHgが好ましく、より好ましくは1〜50mmHgであり、さらに好ましくは1〜20mmHgである。トリエステルの留出温度は100〜300℃が好ましく、より好ましくは100〜250℃である。
蒸留精製により、95%以上の純度にて、好ましくは98%以上の純度にて、4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸のトリエステルが、エステル化する前に蒸留残渣中に存在した1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルに対して90%以上の収率で、好ましくは95%以上の収率で得られる。
また、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルからのエステルと3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリルからのエステルとは蒸留操作により容易に分離することができる。この点も精製工程が簡単になり、収率が向上することの理由である。
次に得られたエステル体の加水分解反応について記載する。
本発明における加水分解反応は、平衡反応であるので、通常、生成するアルコールを反応系外へ留去しながら実施するのが有利である。
本加水分解反応に使用する酸触媒としては、強酸性陽イオン交換樹脂触媒が特に好ましく、たとえば、ダイヤイオン SK1BH(三菱化学(株)製)(商標)、アンバーライト IR−120B(ローム アンド ハース社製)(商標)等のスチレン系スルホン酸型、または、Nafion NR−50(デュポン社製)(商標)等のフッ素系スルホン酸型等の強酸性陽イオン交換樹脂触媒が挙げられる。使用量は、通常、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリエステルに対して総交換容量で1〜50モル%である。
本加水分解反応での水の使用量は、通常、エステルに対して過剰量の、好ましくは2〜20倍当量である。
本加水分解反応の反応温度は、通常、50〜150℃、好ましくは90〜110℃である。反応時間は、他の反応条件により異なってくるが、通常、数時間から数十時間、好ましくは8〜30時間である。
加水分解反応後に、触媒と加水分解液との分離は、公知の濾過方法を用いて分離される。
なお、酸触媒からの着色成分の溶出を抑制するために、アルコール、又は、アルコールと1,3,6−ヘキサントリカルボン酸等のカルボン酸との混合液に、触媒を添加し、50〜110℃、好ましくは90〜110℃に、数時間から数十時間、好ましくは8〜30時間、加熱処理した後に、公知の濾過方法を用いて触媒とアルコール溶液とを分離することにより、触媒を洗浄しておくことも好ましい。
次に本発明の活性炭処理について記載する。
得られたエステルの加水分解後に活性炭を用いて脱色処理することが好ましい。
活性炭は、誘導原料により脱色効率が異なり、誘導原料としては、木質、石炭及び、ヤシ殻が良く、好ましくは、木質と石炭で、さらに好ましくは、木質から誘導される活性炭である。
加水分解液と活性炭との接触時間は、通常、10秒〜10時間が好ましく、より好ましくは1分〜5時間、さらに好ましくは5分〜2時間である。この範囲であれば、脱色効果も十分であり、また、生産効率も良い。
活性炭の使用量は、通常、4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸100質量部に対して、0.01〜100質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜80質量部の範囲、さらに好ましくは0.1〜50質量部の範囲である。この範囲であれば、十分な脱色効果が得られ、且つ、吸着による4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の収率の低下を抑制することができる。
活性炭に吸着させる方法は、加水分解液に活性炭を添加し撹拌する方法、活性炭をカラム等に充填させ、加水分解液を通液する方法等、一般的に用いられる様々な方法を用いることができる。
活性炭による処理時における加水分解液中の4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の濃度は、通常、0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは5〜35質量%の範囲である。この範囲であれば、十分な脱色効果が得られ、且つ、吸着による4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の収率の低下を抑制することができる。
活性炭による処理温度は、加水分解液が凝固したり、さらには分解しない温度範囲で実施され、通常、凝固しない最低温度から100℃の範囲であり、好ましくは、凝固しない最低温度〜50℃の範囲である。
活性炭処理後の活性炭分離方法は、濾過等の公知の方法を用いることができる。
次に加水分解後の4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の回収方法について記載する。
本発明においては、乾燥処理によって4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸を回収しても良いし、晶析によって4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸を回収しても良い。
本発明の乾燥処理は、溶媒を留去する公知の方法を用いることができる。好ましくは常圧〜減圧下、室温〜150℃の温度にて溶媒を留去する。最初は溶液状態から溶媒が留去されるに従い、スラリー状や糊泥状状等を経て、塊状、粒状、粉末状、フレーク状の乾燥した4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸が得られる。使用する乾燥機としては、材料静置型、材料移送型、材料攪拌型、熱風搬送型等が好ましく、その中でも、噴霧乾燥機、気流乾燥機、回転乾燥機、ドラム乾燥機、流動層乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等がより好ましい。また、これらを組み合わせることも好ましい。
また、晶析を行う場合の温度は、該溶液が凝固しない最低温度以上であれば実施可能であるが、通常、該溶液の凝固の起こらない最低温度から30℃の範囲、好ましくは凝固の起こらない最低温度から10℃の範囲、さらに好ましくは凝固の起こらない最低温度から5℃の範囲である。
晶析を行う場合の撹拌の有無については、撹拌しながら晶析操作を行った方が、得られる4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸結晶の粒径が安定することや、また、壁面への結晶析出を抑制できるなどの点で好ましい。
晶析を行う前に、カルボン酸溶液の濃度を調整してもよく、濃縮、希釈は結晶が析出し、結晶が分離できる範囲であれば溶液濃度は限定しない。
晶析を行う場合、種晶を添加し、結晶の出始める時間を短縮することも可能である。
晶析により生じた結晶は、ろ過により回収することが可能である。ろ過方法は、加圧ろ過、減圧濾過、遠心分離、圧搾などの一般的な方法を利用することが好ましい。ろ過を行う際に、母液の付着量を制御できるろ過方法でろ過を行うことが好ましい。さらに回収された結晶は好ましくは乾燥される。乾燥の条件としては、室温〜100℃の温度において減圧下で乾燥することが好ましい。
晶析での回収率は60%以上であり、好ましくは70%以上である。これは、硫酸エステル化法によって得られる4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸溶液には、異性体の含有量が少ないために、晶析収率が良くなったものと考えられる。
このようにして本発明により得られた4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸は、色相に優れる。すなわち、4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸1.00gを5.0mLのジメチルホルムアミドに溶解した溶液の25℃において測定された明度指数L値は98以上、クロマティクネス指数のa値は−2.0〜2.0、b値は−2.0〜3.0のものが得られる。
本発明で用いられるL値、a値及びb値は、JIS規格Z8722の方法にしたがって求められる。すなわち、分光測定器により標準の光Cを用いて、380〜780nmの波長範囲で透過法により測定されたXYZ系における三刺激値X、Y、Z値に基づき、JIS規格Z8730で規定された下式に示すハンターの色差式により計算され。L値は、ハンターの色差式における明度指数、a値及びb値は、ハンターの色差式におけるクロマティクネス指数と呼ばれるものである。
L=10×Y0.5
a=17.5×(1.02X−Y)/Y0.5
b=7.0×(Y−0.847Z)/Y0.5
(式中、X、Y、及びZはXYZ系における三刺激値である)
一般に、明度指数L値は、100が上限であり、その数値が増加するにしたがい被測定物質の色相において白色度が増すことを、また、その数値が減少するにしたがい黒色度が増すことを意味する。クロマティクネス指数であるa値は、0を基準に、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相において緑色度が増すことを、また、プラスになる場合は赤色度が増すことを意味する。クロマティクネス指数であるb値は、0を基準に、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相において青色度が増すことを、また、プラスになる場合は黄色度が増すことを意味する。L値が100に近いほど、a値やb値が0にほど低色相になる。
本発明により得られる4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸は、明度指数L値が98以上であり、好ましくは99以上、より好ましくは99.5以上である。a値は、−2.0〜2.0、好ましくは−1.0〜1.0である。b値は、−2.0〜3.0、好ましくは−1.0〜1.0、より好ましくは−0.5〜0.5の範囲のものが得られる。
L値、a値、及びb値が上記範囲から外れる場合には、例えば、塗料に用いた場合には、塗膜が黄色や灰色等の着色を呈する傾向にある。また、L値、a値、及びb値が上記範囲から外れる場合には、4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の熱安定性も低く、空気中で熱処理したときの着色(b値の増加)が顕著になる。したがって、このような4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸を加熱により硬化させるような塗料に用いた場合には、硬化時に黄変する等の変色を起こしやすい。
本発明の製造法により得られる色相の良い4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸は有機合成中間体、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル樹脂および可塑剤原料等、エポキシ化合物等の硬化剤等、粉体塗料やポリエステル繊維および繊維改良剤等の分野で利用され、工業的に有用である。また、本発明の製造法により得られる4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸のエステルも有機合成中間体、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル樹脂および可塑剤原料等、粉体塗料やポリエステル繊維および繊維改良剤等の分野で利用され、工業的に有用である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
本発明で使用する測定法は、以下のとおりである。
[トリニトリルの測定法]
トリニトリル混合物の純度は、ガスクロマトグラフィーの測定及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC、という)による測定により求める。トリニトリル混合物に含有されるアクリロニトリルの4量体以上の高分子量体含有率は、GPCにより求める。色相は、透過法によるUV測定から求める。各測定は以下の装置及び条件で行う。
<ガスクロマトグラフィー測定法>
装置:(株)島津製作所製GC−14B
カラム:GL Science Inc.製 キャピラリーカラム
TC−1(0.25mmI.D.、長さ30m)
キャリアガス:He
検出:FID
カラム温度条件:120℃から20℃/minで200℃まで昇温し、5分間保持した後、10℃/minで250℃まで昇温させ10分間保持。
試料溶解溶媒:アセトン
<GPC測定法>
各化合物2.0mgをテトラヒドロフラン2.0gで溶解し、0.5μmフィルターで濾過を行い、下記の条件で展開、検出することにより分析を行う。
測定装置:東ソー(株)製HLC−8120GPC
検出器 :RI
展開液 :テトラヒドロフラン
展開液流速:1.0ml/min
カラム :東ソー社(株)製TSKgel(商標)GMHHR−Nを1本及びG1000HXLを2本を直列に設置
カラム温度:40℃
<色相の測定法>
トリニトリル混合物の色相の測定は、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテルを使用する。トリニトリル混合物0.400gをホールピペットで定量されたジエチレングリコールジメチルエーテル4.0mlに溶解し、下記の透過法によりUV測定を行い、得られる三刺激値からハンターの式にしたがいL値、a値、及びb値を求める。
測定装置:(株)島津製作所製UV2500PC
サンプルセル:石英製、外寸12.4mm×12.4mm×高さ45mm、光路長10.0mm
ジエチレングリコールジメチルエーテル: 和光純薬社製 特級試薬
測定温度:25±2℃
波長範囲:380〜780nm
波長送り速度:低速レンジ(約140nm/分)
[ヘキサントリカルボン酸の測定法]
4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の含有率は、高速液体クロマトグラフィー(以下、LC、という)による測定により求める。色相は、透過法によるUV測定から求める。各測定は以下の装置及び条件で行う。
<色相の測定法>
ヘキサントリカルボン酸の色相の測定には、溶剤としてジメチルホルムアミドを使用する。4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸1.00gをジメチルホルムアミドで5.0mLとし、溶解した後に、下記方法の透過法によりUV測定を行う。得られる三刺激値からハンターの式にしたがい、L値、a値及びb値を求める。
明度指数:100(白)<L値<0(黒)
クロマネティクス指数a値:+(赤)←0→−(緑)
クロマネティクス指数b値:+(黄)←0→−(青)
測定装置:(株)島津製作所製UV2500PC
サンプルセル:石英製、外寸12.4mm×12.4mm×高さ45mm、光路長10.0mm
蒸留水:和光純薬(株)製
測定温度:25±2℃
波長範囲:380〜780nm
波長送り速度:低速レンジ(140nm/分)
<LC測定:過塩素酸法>
トリカルボン酸の含有率は、カルボン酸0.020gを蒸留水2.0mLで溶解し、下記の方法により測定を行う。
装置:(株)島津製作所製LC−10A
カラム:(株)島津製作所製SCR−101Hを1本
検出器:RI
展開液:過塩素酸でpH2.2〜2.4の範囲(25℃におけるpH)
カラム温度:40℃
展開液流速:1.0mL/min
過塩素酸:和光純薬(株)社製60%濃度(精密分析用)
<LC測定:ODSカラム法>
トリカルボン酸中の異性体の含有量は、カルボン酸0.060gを展開液15.0gに溶解し、下記の方法により測定を行う。4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸はリテンションタイム26〜33minの範囲に、異性体である3−カルボキシメチル−1,5−ペンタンジカルボン酸はリテンションタイム21〜24,5minの範囲に観察され、それぞれの面積比から異性体との割合を算出する。
測定装置:LC−10A 島津製
カラム:日本分光社製Finepak SIL-C18S (ODS) 4.6I.D×150mm
検出:UV214nm
展開液:蒸留水990重量、アセトニトリル10重量、85%リン酸4重量比で混合
展開液のpH2.2〜2.4の範囲(25℃)
カラム温度:40℃
流速:1.0ml/min
〔製造例1〕
単一電解槽は、1cm×90cmの通電面を有する鉛合金を陰極とし、同じ通電面を有する炭素鋼を陽極として用い、陽極と陰極を2mmの間隔で保った。電解液は、10質量部の油相及び90質量部の水相でエマルジョンをなしており、水相の組成は、アクリロニトリル2.0質量%、KHPO10質量%、K3質量%、エチルトリブチルアンモニウムエチル硫酸塩0.3質量%、及び若干のアジポニトリル、プロピオニトリル及び1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを含んだ水溶液であり、リン酸でpHを8に調整した。油相は水相と溶解平衡をなしており、その組成はアクリロニトリル28質量%、アジポニトリル62質量%である。
このエマルジョンを、電解面で線速1m/secになるように単一電解槽に循環供給し、電流密度20A/dm、50℃で電解を行った。電解を始めると同時に、電解液タンクから油水分離器に送られたエマルジョンの水相を、50℃に保温したイミノジ酢酸タイプのキレート樹脂(バイエル(株)製、Lewatit TP207(商標))K型200CCで、6CC/AHの割合で処理を始め、電解液タンクに循環した。
同時に油相を連続的に抜き出し、前記電解液組成を保つようにアクリロニトリル及び水を連続的に添加し、油相に溶解して抜き出されたエチルトリブチルアンモニウムエチル硫酸を随時添加した。
このようにして2000時間電解を行った結果、初期電解電圧は3.9Vで安定に推移し、発生ガスに含まれる水素は電解終了時で0.16vol%であり、陰極の消耗速度は0.21mg/AH、陽極の消耗速度は0.23mg/AHであり、不均一の陽極腐食物はまったくなかった。消費アクリロニトリルに対するアジポニトリルの収率は90%、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルの収率は7.5%であった。
次に、上記電解で得られた油相を集め、水抽出処理を行い、アクリロニトリル、プロピオニトリル及び水を蒸留除去し、次いで、減圧蒸留によりアジポニトリルを除去した。この残渣中のアジポニトリルは11.5質量%であった。
この残渣液からのアジポニトリルの除去は、径32mmφ、実段数5段の真空外套付蒸留塔を用いて、アジポニトリルを主成分として含む留分をバッチ蒸留し、真空度2.0mmHgで塔頂温度120〜210℃までの留分を初留カットすることによって蒸留残渣(A)を得た。
この蒸留残渣(A)は、アジポニトリル3.0質量%、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル84.5質量%、3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリル6.0質量%、及び高分子量体6.5質量%から構成されており、また、色相は黒く着色していた。
〔実施例1〕
(1)エステル化工程
還流冷却器を取り付けた内容量2リットルのガラス製四つ口フラスコに、製造例1で得られた蒸留残渣(A)161.0g(0.85モル)及びメタノール384.0g(12.0モル)を仕込み、テフロン(登録商標)コートされた磁気回転子を入れた。フラスコの側管に内温測定用の温度計及び、90質量%硫酸538.1g(硫酸4.94モル、水3.00モル)を入れた滴下ロートを取り付け、マグネチックスターラーで撹拌下バス温度60℃に保ち、90質量%硫酸の滴下を40分間かけて行った。滴下終了時の液温度は80℃であった。硫酸滴下終了後、バス温度を90℃に昇温し更に反応を11時間継続した。反応終了後、トルエンを2000g添加し抽出、分液を行い1,3,6−ヘキサントリカルボン酸トリメチルエステルの溶液を得た。濃縮後、濃縮液277.0g得、その濃縮液277.0gを500mlガラス製四つ口フラスコに入れ、SUS製6mmφ×5mmのディクソンパッキング(商標)を5cm長充填したカラムを介して蒸留を行った。バス温度200℃減圧下でトルエン及び低沸点の不純物を留去後、6mmHg、160℃で4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸トリメチルエステルの若干着色した留分201.2gを得た。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、純度99.1%、収率90.2%であった。
(2)加水分解工程
500mlガラス製四つ口フラスコに4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸トリメチルエステルを200.0g(0.77モル)、水291.1g(16.2モル)及びイオン交換樹脂(ダイヤイオン(商標)SK1B(H型)三菱化学製、スチレン系スルホン酸型強陽イオン交換樹脂)61.5gを仕込み、内温測定用の温度計、攪拌機を取り付け撹拌しながら反応温度100〜102℃で35時間反応させた。その間副生するメタノールをト字管を介して留去した。また、反応中系外に留去された水と同量の水を適宜追加しながら反応を行った。反応後、イオン交換樹脂をろ過により分離し加水分解液417.6g(0.77モル)を得た。4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の収率は定量的であり、異性体の含有率は0.8質量%であった。
(3)精製工程
1Lガラス製ビーカーに加水分解液417.0g及び水143.0gを加え希釈した後、活性炭(白鷺A(商標)日本エンバイロケミカルズ製)を11.0g加え室温にて3時間撹拌下において吸着処理を行い、1μm孔のPTFEフィルターにより減圧下ろ過を行い脱色液を得た。該脱色液を冷媒循環ジャケット付き1.0L晶析槽に仕込み、テフロン(登録商標)被覆攪拌羽根で攪拌しながら内温を−1.5℃に下げ6時間攪拌しながら結晶を析出させた。析出した結晶を孔径1μmのPTFE製フィルターでろ別後、200メッシュの濾布に入れ、バスケットサイズ130Φの遠心分離機により5,000rpmで10分間遠心分離して結晶148.2gを得た。この時含水率は9%であった。得られた結晶を含水率が10ppm以下になるまで乾燥後し多価カルボン酸の結晶135.3g(0.62モル)を得た。収率は80.6%で、得られた結晶の純度は99.8%、色相はL=99.49、a=0.08、b=0.10であった。蒸留残渣(A)中の1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルに対する4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の収率は72.9%と高く、また、色相も優れていた。
〔実施例2〕
実施例1において、活性炭を2倍量使用し、晶析を行うことなく、蒸発乾固することによって4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸165.3gを得た。純度は99.1%であり、色相はL=99.46、a=0.04、b=0.19であった。蒸留残渣(A)中の1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルに対する4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の収率は88.4%と高く、また、色相も優れていた。
〔実施例3〕
実施例1において、エステル化反応終了後に、未反応のメタノールを減圧下で留出させた後、水200g、炭酸ナトリウム370gを添加して中和し、トルエン520gで抽出した以外は同様に実施した。4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸トリメチルエステルの無色透明な留分210.6gを得た。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、純度99.7%、収率95.0%であった。
〔比較例1〕
(1)蒸留工程
製造例1で得られた蒸留残渣(A)1000.0g(1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル5.25モル)の精製をスミス式実験室用分子蒸留装置(神鋼ファウドラー(株)製、2型、電熱面積0.032m、ガラス製)を用いて行った。真空度0.1mmHg、外壁面加熱温度230℃、蒸留残渣(A)の供給速度2g/minで操作した。その結果、蒸留留分は738g、蒸留残渣は262gであった。得られた蒸留留分は、組成が1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル90.7質量%、3−シアノメチル−1,5−ペンタンジカルボニトリル4.2質量%、及びアジポニトリル2.8質量%からなる黄色のトリニトリル混合物であった(回収率79.2%)。上記で得られた蒸留留分の色相を測定した結果、L値は99.81、a値は−0.57、b値は1.40であった。
(2)加水分解工程
還流冷却器を取り付けた内容量2リットルの攪拌装置付四つ口フラスコに、前記蒸留留分322g(1.81モル)を、20%苛性ソーダ水溶液1560g(7.8モル)と共に24時間加熱還流を行って加水分解した。室温まで冷却し、加水分解反応液1672gを得た。
(3)中和・脱色工程
前記加水分解反応液1672gを5Lビーカーに移し、氷で氷冷しながら液温が20℃を超えないように36%HClでpHを7とし、中和反応液1852gを得た。次いで、中和反応液に活性炭(白鷺A(商標)、武田薬品工業製)27.6gを加え、室温で3時間攪拌を行った。ろ過により活性炭を除去し、透明な脱色反応液1848gを得た。ろ過を行う際に水を80g用いた。
(4)脱Na工程
脱色反応液1848g(電気電導度55.8mS/cm)を、アストム社製のバイポーラ膜(ネオセプタ BP−1(商標))とK膜(陽イオン交換膜)を交互に0.75mmの間隔で各10室設けた電解槽を具備した電気透析装置TS2B−2−10型によりNaの除去を行なった。バイポーラ膜及びK膜の有効膜面積は1室当たり2dmで、電極は陽極、陰極いずれもNi電極を使用し、印加電流は27A、印加電流は約38Vで電解を行なった。外部に脱塩室及びアルカリ室を設け、脱塩室に前記脱色反応液1848gを仕込み、アルカリ室に0.1N−NaOH水溶液を3.5L、電極室に1N−NaOHを約6L仕込み、各室の流速を3.2l/min(6cm/sec)で循環させながら75分間電気透析を行った。電気透析終了時の電気電導度は1.15mS/cm、Naの除去率99.7%で、無色透明な脱塩液1349gを得た。得られた脱塩液のLC測定を行なった結果、4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸が382.8g、3−カルボキシメチル−1,5−ペンタンジカルボン酸17.7g及びアジピン酸が11.8g含まれていた(収率76.7%)。
(5)晶析工程
得られた脱塩液1348gを冷媒循環ジャケット付き晶析層に入れ、テフロン(登録商標)被覆攪拌棒で攪拌しながら内温を−3℃に下げ24時間攪拌しながら結晶を析出させた。析出した結晶を孔径1μmのPTFE製フィルターで結晶をろ別後、バスケットサイズ130Φの遠心分離機により4000rpmで20分間母液を遠心分離して結晶を得た。この時含水率は10%であった。真空乾燥により含水率が10ppm以下になるまで乾燥し、無色の4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の結晶230.8gを得た。収率は46.2%で、得られた結晶の純度は99.1%、色相はL=99.66、a=0.00、b=0.12であった。
色相は優れていたが、蒸留残渣(A)中の1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルに対する4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の収率は45.9%と低いものであった。
本発明の製造法により得られる色相の良い4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸は有機合成中間体、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル樹脂および可塑剤原料等、エポキシ化合物等の硬化剤等、粉体塗料やポリエステル繊維および繊維改良剤等の分野で利用され、工業的に有用である。また、本発明の製造法により得られる4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸のエステルも有機合成中間体、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル樹脂および可塑剤原料等、粉体塗料やポリエステル繊維および繊維改良剤等の分野で利用され、工業的に有用である。

Claims (6)

  1. 1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを含有するニトリル混合物に低級アルコールと水と硫酸を反応させてエステル体を生成させた後に、該エステル体を蒸留精製し、続いて酸触媒の存在下に加水分解することを特徴とする4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法。
  2. アクリロニトリルの電解二量化反応によってアジポニトリルを製造するプロセスにてアジポニトリルを蒸留精製する際に得られる1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルを含む蒸留残渣に、低級アルコールと水と硫酸を反応させてエステル体を生成させた後に、該エステル体を蒸留精製し、続いて酸触媒の存在下に加水分解することを特徴とする4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法。
  3. エステル体を加水分解した後に活性炭処理を行うことを特徴とする請求項1及び2記載の4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法。
  4. エステル体を加水分解した後に活性炭処理を行い、続いて晶析処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3記載の4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法。
  5. エステル体を加水分解した後に活性炭処理を行い、続いて乾燥処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3記載の4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法。
  6. エステル体を生成させた後に、未反応の低級アルコールを留去し、続いて水と中和剤を添加し、得られた反応液から抽出溶剤を用いてエステル体を抽出した後に、該エステル体を蒸留精製することを特徴とする請求項1乃至5記載の4−カルボキシ−1,8−オクタン二酸の製造方法。
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