JPWO2002052550A1 - ハードディスク基板およびハードディスク - Google Patents
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Abstract
熱可塑性樹脂より実質的に形成され、該樹脂は(A)比重が0.95〜1.25であり、且つ(B)曲げ弾性率が2,200〜3,500MPaを満足する樹脂により形成されていることを特徴とするハードディスク基板およびその基板の表面に、磁性膜を形成させたハードディスク。殊に全芳香ジヒドロキシ成分の少なくとも30モル%が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである芳香族ポリカーボネート樹脂より実質的に形成され、該ポリカーボネート樹脂は(A)その0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃において測定された比粘度が0.2〜0.5の範囲であり且つ(B)本文に定義された吸水率が0.18重量%以下である、ことを満足する樹脂により形成されていることを特徴とするハードディスク基板およびその基板よりなるハードディスク。本発明によれば、熱可塑性樹脂、殊に特定構造のポリカーボネート樹脂より形成され且つ優れた物理的特性を有するハードディスク基板およびハードディスクが提供される。
Description
本発明は、ハードディスク基板に関する。さらに詳しくは、磁気ディスクおよびデジタルビデオディスク等の磁気記録媒体用途に適した熱可塑性樹脂より形成された基板に関する。特に本発明は、記録容量が極めて大きいデジタルビデオディスクに適し且つ熱可塑性樹脂より形成されたハードディスク基板およびその基板を使用したハードディスクに関する。
従来の技術
従来、ハードディスク用基板に使用される代表的な素材としては、ガラスおよびアルミニウムが知られており、剛直性および平滑性を有することからハードディスクの基板の素材としても広く用いられている。しかしながら、ピットおよびグルーブの成形が出来ないという欠点があり、この改善が求められている。
またピットおよびグルーブの成形により記録密度を高めるためには、より転写性のよい樹脂が求められている。また一方では反りが少なく耐久性のよい樹脂も求められているが、これらの要求を満足するハードディスク用基板はまだない。
一方、米国特許第5633060号(特開平8−293128号公報)には、特定構造のジヒドロキシジフェニルアルカンおよびそれからの新規な芳香族ポリカーボネートについて記載されている。この公報に開示されている樹脂組成は、
(a)1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(成分a)および
(b)4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールおよび/または2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(成分b)を全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも80モル%とし、且つ成分aと成分bの割合がモル比で20:80〜80:20である。
上記明細書には、得られた前記芳香族ポリカーボネートは、複屈折率が小さく、反りも小さい光ディスク基板を提供し、記憶容量が極めて大きい光ディスクに適することが記載されている。
一方、特開平5−6535号公報には、ポリカーボネート樹脂およびアクリル樹脂を使用したハードディスク用のプラスチック基板に付いて記載されている。該樹脂は、セクターおよびゾーンビット信号を金型よりの成形することを可能にする。
さらに、特開平7−153060号公報には、熱可塑性ノルボルネン樹脂を使用したハードディスク用のプラスチック基板に付いて記載されている。該樹脂は、吸湿性が低く、すなわち形状変化の小さい、また、共振周波数の高いすなわちサーボマークの読み取りが容易な、従って、より高密度の記録を可能にする。
しかしノルボルネン樹脂から形成された基板は、物理的強度、殊に曲げ弾性率が不充分であり、そのためディスク基板は比較的厚くすることが要求される。このためこの樹脂を使用した基板は、樹脂を使用した軽量化のメリットが充分に発揮されたものではない。
発明が解決しようとする課題
本発明の第1の目的は、物理的強度、殊に曲げ弾性率および比重がハードディスク基板として適した一定水準を有する軽量の樹脂基板を提供することにある。
本発明の第2の目的は、他の物性、例えば線膨張係数、吸水率がハードディスク基板として適した値を有する樹脂基板を提供することにある。
本発明の第3の目的は、ハードディスク基板における磁性膜形成面の平面性および平滑性が優れた樹脂基板を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記種々の特性を発現しうる芳香族ポリカーボネート樹脂より形成されたハードディスク基板を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、高密度の記録容量を有するハードディスク基板、殊にビデオ用ハードディスク基板等に適した高機能を有し、且つ溶融形成容易なハードディスク基板を提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明者らの研究によれば、熱可塑性樹脂より実質的に形成され、該樹脂は(A)比重が0.95〜1.25であり、且つ(B)曲げ弾性率が2,200〜3,500MPaを満足する樹脂により形成されていることを特徴とするハードディスク基板およびその基板の表面に磁性膜を形成させたハードディスクが提供される。
本発明のハードディスク基板は(A)比重が0.95〜1.25、好ましくは1.0〜1.15であり且つ曲げ弾性率が2,200〜3,500MPa、好ましくは2,300〜3,400MPa、特に好ましくは2,400〜3,000MPaの物性を有する熱可塑性樹脂より形成されている。
かかる物性は、従来の熱可塑性ノルボルネン樹脂や、ビスフェノールAからのポリカーボネート樹脂では達成されない値であり、後述するようにハードディスク基板の物性として価値ある値である。
本発明によれば、前記物性と共に磁性膜形成面における表面特性が優れたハードディスク基板が提供される。すなわち、磁性膜形成面は、表面が平滑性に優れ、しかも平面性(平坦性)にも優れている。ハードディスク基板の磁性膜形成面において中心線平均粗さ(Ra)は、2nm以下、好ましくは1nm以下である。またハードディスク基板の磁性膜形成面において、円周方向の平面度が10μm以下、好ましくは7μm以下である。このような平滑性および平面性を有する基板の表面に対して磁性膜を形成させることによって、ハードディスクへの情報の記録化および読み取りの操作においていずれも支障なく、高度の信頼性を有するハードディスクが得られる。
また本発明のハードディスク基板は、磁性膜形成面において、高さが25nm以上の粗大突起が実質的に存在しないものが肝要である。そのためには後述するように樹脂中に大きい未溶解粒子が混入しないようにするかあるいはフィルターで大きな粒子を除去することが必要である。
本発明のハードディスク基板は、好ましい態様として、線膨張係数および吸水率にも優れた物性を有している。すなわち、線膨張係数は6.5×10−5deg−1以下、好ましくは5.5〜6.3×10−5deg−1である。また吸水率は0.18重量%以下、好ましくは0.17重量%以下、特に好ましくは0.15重量%以下である。線膨張係数および吸水率が前記範囲以下を満足することにより、熱や温度に対して基板の変形や反りが極めて少なくなり、ハードディスクの信頼性を高めることになる。
本発明のハードディスク基板を形成する樹脂は、その製造過程により塩素を含有していることがある。この塩素の含有量が多いと成形金型が腐蝕したり、樹脂の熱安定性が低下したり、またハードディスクの磁性膜の腐蝕が起こったりするので望ましくない。従って、塩素の含量は10ppm以下、好ましくは7ppm以下、特に好ましくは5ppm以下であるのが推奨される。ここで云う塩素含量とは、樹脂を三菱化学製全有機ハロゲン分析装置TOX10型を用いて燃焼法により測定された値を意味する。
前記した基板としての物性を達成する樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
すなわち、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂として、全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも30%が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂を形成する芳香族ジヒドロキシ成分としての1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)およびそれからの芳香族ポリカーボネート樹脂は、米国特許第4,982,014号(特開平2−88634号公報)により公知である。この公報に開示された代表例は、ビスフェノールTMCを全ジヒドロキシ成分の100〜2モル%使用した芳香族ポリカーボネートであり、具体的にはビスフェノールTMCを100〜30モル%の割合で使用したホモ・またはコ・ポリカーボネートである。
上記公報には、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の利点および用途として、従来のポリカーボネート樹脂に対して高い耐熱性において優れ、例えば電気分野、被覆および透明板ガラスの分野に使用されることが記載されている。また光ディスクの用途としてビスフェノールA65モル%およびビスフェノールTMC35モル%のポリカーボネート樹脂が記載されているが、この樹脂は、従来のビスフェノールAからの樹脂に比べて耐熱性が改良されていることを示しているに過ぎない。また前記公報には、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂をハードディスク基板へ利用することについて何らの示唆もない。
本発明者の研究によればビスフェノールTMC単独からの芳香族ポリカーボネート樹脂は、ハードディスク基板としては不適当であることが判った。また、前記公報に記載された具体的な共重合体、つまりビスフェノールTMCとビスフェノールAとからの共重合体ポリカーボネート樹脂も、共重合割合に関係なく同様にハードディスク基板としては、ビスフェノールAからの従来のポリカーボネート樹脂基板に比べて、耐熱性が改良されていること以外、特に優れているものとは云えないことが判った。
ところが本発明者の研究によれば、ビスフェノールTMCに対して特定の末端改質剤を使用するか、および/または特定構造のジヒドロキシ化合物を一定割合共重合することによって得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、曲げ弾性率が高く、線膨張係数が低く、比重が低く、吸水率が極めて小さく、ハードディスク基板として反りが少ない基板が得られることが見出された。
以下前記芳香族ポリカーボネート樹脂について説明する。本発明のハードディスク基板の素材として有利に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、下記式で表される1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)が全芳香族ジヒドロキシ成分当り、少なくとも30モル%の割合で構成されたポリカーボネート樹脂である。
この芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記ビスフェノールTMCを全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも30モル%、好ましくは少なくとも40モル%使用している。このビスフェノールTMCの割合が30モル%未満の場合、得られたハードディスク基板またはハードディスクは、耐熱性、機械的物性、吸水率、転写性あるいは反りあるいは表面特性のいずれかの性質が不満足となり、これら特性を満足するハードディスク基板またはハードディスクは得られない。ビスフェノールTMCは、100モル%でもよいが吸水率が高くなるまたは流動性が悪くなる傾向になるので、ビスフェノールTMCの割合がこのように高い場合には、後述するように特定の末端改質剤で末端を変性することが望ましい。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ成分として前記ビスフェノールTMCを一定割合使用することが必要であり、所望の特性、殊に吸水率を0.18重量%以下とするために、大別して2つの手段が採用される。
その1つは、前記ビスフェノールTMCに対して特定のジヒドロキシ成分を組合わせて共重合ポリカーボネート樹脂とすることであり、他の手段は末端基に或る特定構造の末端改質剤を導入することである。これら2つの手段はそれぞれ単独でもよく、また組合わせてもよい。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、それを構成する全芳香族ジヒドロキシ成分中のビスフェノールTMCの割合が30〜70モル%の範囲であるが好ましく、40〜60モル%の範囲であるのが特に好ましい。
本発明者の研究によれば、前記ビスフェノールTMCに対して、或る特定のジヒドロキシ成分を組合わせて得られた共重合ポリカーボネート樹脂は、ハードディスク基板として特に適していることが見出された。すなわち、共重合ポリカーボネート樹脂は、(a)ビスフェノールTMC(これを成分aという)および(b)4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“ビスフェノールM”と省略することがある)および/または2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“ビスフェノールC”と省略することがある)[これらを成分bという]を全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも90モル%とし、且つ成分aと成分bとの割合がモル比で、30:70〜70:30、好ましくは40:60〜60:40であるポリカーボネート樹脂はハードディスク基板として特に好ましい。
前記共重合ポリカーボネート樹脂の好ましい態様の1つは、成分aがビスフェノールTMCであり、且つ成分bがビスフェノールMである組合わせであり、その場合成分a:成分bの割合がモル比で、40:60〜60:40の範囲、さらには45:55〜55:45の範囲であるのが一層好ましい。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂において、成分aおよび成分bが全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも95モル%を占めることが望ましいが、他のジヒドロキシ成分(成分C)を全芳香族ジヒドロキシ成分当り10モル%以下、好ましくは5モル%以下含有していても特に差支えない。
かかる成分Cとしては、通常芳香族ポリカーボネートのジヒドロキシ成分として使用されている、成分aおよび成分b以外の成分であればよく、たとえばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサンが挙げられる。
ハードディスク基板として用いることができる前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば芳香族ジヒドロキシ成分にホスゲンや炭酸ジエステル等のカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら攪拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜330℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、前途したように芳香族ジヒドロキシ成分として、ビスフェノールTMCあるいはビスフェノールTMCと他の芳香族ジヒドロキシ成分との混合物を使用し、それ自体公知のポリカーボネート形成の反応に従って製造することができる。
その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
かかる単官能フェノール類としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよく、一般にはフェノールあるいは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式で表される単官能フェノール類を示すことができる。
[式中、Aは水素原子または炭素数1〜9、好ましくは1〜8の脂肪族炭化水素基を示し、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数を示す。]
前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。これら単官能フェノールは、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましい。
長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類、または安息香酸クロライド類もしくは長鎖のアルキルカルボン類クロライドを使用して芳香族ポリカーボネート樹脂の末端基を封鎖することは前記単官能フェノール類と同様に末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、さらに得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の改質にも役立つ。
すなわち、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類、または安息香酸クロライド類もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類(以下これらを、前記単官能フェノール類と区別するために“末端改質剤”と省略することがある)は、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端に結合することによって、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易となるばかりでなく、基板としての物性も改良される。特に樹脂の吸水率を低くする効果がある。
従って、ビスフェノールTMCの割合が全芳香族ジヒドロキシ成分当り80モル%以上、殊に90モル%以上の場合は、得られた樹脂の吸水率が0.18重量%を超える場合があるが、このような場合、前記末端改質剤を使用することにより、樹脂の吸水率を0.18重量%以下に抑えることができる。前記末端改質剤は、当然のことながら単官能性化合物であるから、末端停止剤あるいは分子量調節剤としての機能も有している。かかる末端改質剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂の組成によってその割合は一定ではないが、全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%、末端に結合するように使用される。末端改質剤は前記単官能性フェノール類と組合わせて使用することができる。前記末端改質剤としては下記一般式[I−a]〜[I−h]で表される化合物を使用することができる。
[各式中、Xは−R−O−,−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、Tは単結合または上記Xと同様の結合を示し、nは10〜50の整数を示す。Qはハロゲン原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基を示し、pは0〜4の整数を示し、Yは炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、W1は水素原子、−CO−R1、−CO−O−R2またはR3である、ここでR1、R2およびR3は、それぞれ炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基または炭素数6〜15、好ましくは6〜12の一価の芳香族炭化水素基を示す。tは4〜20、好ましくは5〜10の整数を示し、mは1〜100、好ましくは3〜60、特に好ましくは4〜50の整数を示し、Zは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、W2は水素原子、炭素数1〜10、好ましくは5〜6の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基または炭素数6〜15、好ましくは1〜12の一価の芳香族炭化水素基を示す。]
前記した末端改質剤[I−a]〜[I−h]のうち好ましいのは、[I−a]および[I−b]の置換フェノール類である。この[I−a]の置換フェノール類としては、nが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては、例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
また、[I−b]の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては、例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
前記一般式[I−a]〜[I−g]で示される置換フェノール類または置換安息香酸クロライドにおいて置換基の位置は、p位またはo位が一般的に好ましく、その両者の混合物が好ましい。
前記した末端改質剤のうち[I−a]および[I−b]は特に優れている。その理由は前述したとおり、これらは芳香族ポリカーボネート樹脂中に末端基として導入されると、その溶融流動性が改善されるばかりでなく、吸水率を低下させる効果もあるからである。芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する全芳香族ジヒドロキシ成分中のビスフェノールTMCの割合が高く、例えば80モル%以上、特に90モル%以上の場合には樹脂の吸水性が0.18重量%を超える場合があるが、そのような場合には前記[I−a]および[I−b]の末端改質剤の使用により、0.18重量%以下に吸水率を低下することが可能である。しかし本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールTMCの割合が少なくとも30モル%、好ましくは少なくとも40モル%である限り、前述した末端改質剤を使用しても良いことは云うまでもない。
芳香族ポリカーボネート樹脂はその樹脂の0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.2〜0.5の範囲のものであり、好ましくは0.25〜0.4の範囲のものである。比粘度が0.2未満では成形品が脆くなり、0.5より高くなると溶融流動性が悪く、成形不良を生じ、ハードディスクに良好なディスク基板が得られ難くなる。
本発明のハードディスク基板は、前記芳香族ポリカーボネート樹脂を、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法等任意の方法で成形することにより得ることができるが、本発明のハードディスク基板は射出成形法により得られたものが好適である。また本発明のポリカーボネート樹脂は、ASTM D−0570によって測定した吸水率が0.18重量%以下、好ましくは0.17重量%以下であることが必要である。吸水率が0.18重量%を超えると、ハードディスク基板表面上に金属膜を形成させたハードディスクが吸水によって反りを生じ易くなり、トラッキングエラーを起こし易くなるので好ましくない。特に好ましい吸水率は0.15重量%以下である。
本発明のハードディスク基板は、曲げ弾性率が2,200〜3,500MPa、好ましくは2,300〜3,400MPaを有する芳香族ポリカーボネート樹脂から形成されるのが望ましい。特に好ましい曲げ弾性率は2,400〜3,000MPaである。曲げ弾性率が2,200MPaよりも低くなると、ハードディスク基板として不適当なものとなる。一方曲げ弾性率が3,400MPaを超える樹脂を得るためには重合度を高くする必要があり、その場合成形が難しくなる。
また本発明のハードディスク基板は、線膨張係数が6.5×10−5deg−1以下、好ましくは5.5〜6.3×10−5deg−1を有する芳香族ポリカーボネート樹脂より形成されるのが有利である。線膨張係数が6.5×10−5deg−1を超えるポリカーボネート樹脂をハードディスクとして使用すると、使用条件によって記録の読み取りに支障を来すことがある。
本発明のハードディスク基板に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、その比重が0.95〜1.25、好ましくは1.0〜1.15のものが有利に使用される。この範囲の比重を有する樹脂は、軽量であり、ディスクの作動、操作における負荷が少なくなりそれ自体価値を有する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、カーボネート前駆物質としてホスゲンを使用し、また溶媒として塩化メチレン等の塩素系溶媒を使用して製造した場合、塩素が少なからず残存している。この塩素の含有量が多いと成形金型が腐蝕したり、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性が低下したり、またハードディスクの磁性膜の腐蝕が起こったりするので望ましくない。従って、塩素の含量は10ppm以下、好ましくは7ppm以下、特に好ましくは5ppm以下であるのが推奨される。ここで云う塩素含量とは、芳香族ポリカーボネート樹脂を三菱化学製全有機ハロゲン分析装置TOX10型を用いて燃焼法により測定された値を意味する。
ハードディスク基板は、オリゴマー含量が10%以下、好ましくは6%以下、特に好ましくは4%以下である芳香族ポリカーボネート樹脂が使用される。このオリゴマー含量の値は下記方法およびカラムを使用して測定された値である。すなわち、東ソー(株)製、TSKgelG2000HXLとG3000HXLカラム各1本づつ直列に繋いで溶離液としてクロロホルムを用い、流用0.7ml/分で安定化した後、該ポリカーボネート樹脂のクロロホルム溶液を注入する方法で測定したGPCチャートのリテンションタイムが19分以降のオリゴマーピーク面積の合計の全ピーク面積に対する割合がオリゴマー含量である。オリゴマー含量が10%を超えると成形時の金型表面を汚染することがあるので望ましくなく、その汚染はオリゴマー含量が多くなる程顕著になる傾向がある。一方、オリゴマーは芳香族ポリカーボネート樹脂の製造過程で生じるものであり、完全に零(0)にすることはできない。
オリゴマーは、前記した含量以下であればよく、その値を満足する限り、少割合含有されていても差支えない。0.1%以上、好ましくは0.15%以上の少割合の含量でオリゴマーが存在すると、それ以下のものと比べて溶融流動性が向上する。そのため、特に好ましくはオリゴマー含量は0.15〜4%の範囲である。
芳香族ポリカーボネート樹脂中のオリゴマー含量を前記範囲に制御するには、大量のオリゴマーが樹脂中に含まれないように重合を充分に完結することが必要であり、また触媒および重合条件を適宜選択することが要求される。もしオリゴマー含量が前記範囲を超えている場合には、例えばオリゴマーを抽出等の手段により除去する処置が採用される。この抽出は芳香族ポリカーボネート樹脂の溶液(例えば塩化メチレン溶液)を、その樹脂の貧溶剤または非溶剤(例えばアセトンまたはメタノール)中に滴下する方法、あるいはその樹脂を貧溶媒またはまたは非溶媒に浸漬して、オリゴマーを抽出する方法等の手段によって実施することができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、ハードディスク基板、殊にビデオ用ハードディスク基板として使用されるため、その中の未溶解粒子が或る一定量以下に制御すべきである。
すなわち、ポリカーボネート樹脂はその20gを塩化メチレン1Lに溶解した溶液をハイアックロイコ社製液体パーティクルカウンターモデル4100を用いたレーザーセンサー法にて散乱光をラテックス粒子の散乱光に換算する方法で求めた径0.5μm以上の未溶解粒子が該ポリカーボネート樹脂1g当り12,000個以下、且つ1μm以上の未溶解粒子が200個以下であることが望ましい。0.5μm以上の未溶解粒子が12,000個を超えるか、または1μm以上の未溶解粒子が200個を超えるとディスクに書き込まれた情報に悪影響を及ぼしエラーレートが大きくなるので好ましくない。さらに好ましくは、0.5μm以上の未溶解粒子が10,000個以下、且つ1μm以上の未溶解粒子が100個以下である。また、10μm以上の未溶解粒子は実質的に存在すべきではない。
芳香族ポリカーボネート樹脂中における未溶解粒子の量を前記範囲とするためには、重合過程および造粒過程において未溶解粒子が混入しないかあるいは除去し得る手段を採用すべきである。そのような手段としては、例えば操作をクリーンルームで行うこと、未溶解粒子の除去装置の付いた造粒装置を使用すること(具体的例としては、後述する実施例1で使用された軸受け部に異物取り出し口を有する隔離室を設けたニーダー)あるいは摺動部分に樹脂粒子が触れない構造の装置(例えばスプレードライヤー形式の造粒機)で造粒すること等がある。また、未溶解粒子を除去する他の手段として、樹脂の溶液を目開きの小さいフィルター(0.2−0.5μm)によりろ過する方法あるいは樹脂を溶融して後、金属フィルター(5−20μm)により固体粒子を除去する方法等が採用される。
本発明のハードディスク基板は、その磁性膜形成面が極めて平滑性が優れていることが、その目的のために要望される。その平滑性は中心線表面粗さ(Ra)で表して2nm以下、好ましくは1nm以下、特に好ましくは0.5nm以下であることが望ましい。表面粗さ(Ra)が2nmを超えると、その面に形成される磁性膜の表面の平滑性に影響を及ぼすことになり、記録の付与および取り出しに支障を来すことになる。
この中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601で定義される値であり、基準長さL(測定長)を抜き取り、この抜き取り部分の平均線をX軸、縦倍率の方向をY軸として抽出曲線をy=f(x)で表したとき下記式で求められた値である。
本発明のハードディスク基板は、平坦性にも優れている。この平坦性は、磁性膜形成面において円周方向が平面度として10μm以下、好ましくは7μm以下である。実際には半径方向の平面度も同じ程度であることが望ましい。
また本発明のハードディスク基板は、磁性膜形成面において、高さが25nm以上の粗大突起が実質的に存在しないものが肝要である。そのためには前述したように大きい未溶解粒子が混入しないようにするかあるいはフィルターで大きな粒子を除去することが必要である。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、そのガラス転移点が120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、145℃以上がさらに好ましい。ガラス転移点が低くなるとディスク基板としての耐熱性が不足する。また芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性はMFRの値で25g/10分以上が好ましく、30g/10分以上がより好ましく、45g/10分以上がさらに好ましい。流動性が低くなると成形性に劣り所望のディスク基板が得られなくなる。
芳香族ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて燐系熱安定剤を加えることができる。燐系熱安定剤としては、亜燐酸エステルおよび燐酸エステルが好ましく使用される。亜燐酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイト等の亜燐酸のトリエステル、ジエステル、モノエステルが挙げられる。これらのうち、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリストールジホスファイトホスファイトが好ましい。
一方、熱安定剤として使用される燐酸エステルとしては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等が挙げられ、なかでもトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートが好ましい。
前記燐系熱安定剤は、単独で使用してもよく、また二種以上を組合わせて使用しても良い。燐系熱安定剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂に基づいて0.0001〜0.05重量%の範囲で使用するのが適当である。
芳香族ポリカーボネート樹脂には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を添加することができる。その例としてはフェノール系酸化防止剤を示すことができ、具体的には例えばトリエチレングリコール−ビス(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい添加量の範囲は芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、0.0001〜0.05重量%である。
さらに芳香族ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて多価アルコールの高級脂肪酸エステルを加えることもできる。この高級脂肪酸エステルを加えることによって、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性が向上し、成形時の樹脂の流動性が良くなり、さらに成形後の金型からの基板の離型性が改良されて離型不良によるディスク基板の変形が防止できる。かかる高級脂肪酸エステルとしては、炭素数2〜5の多価アルコールと炭素数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル、または全エステルであるのが好ましい。この多価アルコールとしては、グリコール類、グリセロールまたはペンタエリストールが挙げられる。
前記高級脂肪酸エステルは、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、0.005〜2重量%の範囲、好ましくは0.02〜0.1重量%の範囲で添加されるのが適当である。添加量が0.01重量%未満では、上記効果が得られず、一方2重量%を超えると金型表面の汚れの原因となるので好ましくない。
芳香族ポリカーボネート樹脂には、さらに着色剤、帯電防止剤、滑剤等の添加剤を透明性を損なわない範囲で加えることができる。また、他のポリカーボネート樹脂、熱可塑性樹脂を本発明の目的を損なわない範囲で少割合添加することもできる。
本発明のハードディスク基板は、その表面に磁性膜としての金属薄膜を形成させることにより、ハードディスクが得られる。この金属としては、Fe、Co、Cr等があり、Co28Pt12Cr10が適している。また薄膜は、スパッタリング、蒸着等の手段で形成させることができる。これらの金属薄膜の形成手段は、それ自体知られた方法で行うことができる。
実施例
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によった。
比粘度 : ポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃の温度で測定した。
ガラス転移点(Tg) : デュポン社製910型DSCにより測定した。
流動性(MFR) : JIS K−7210に準拠して、東洋精機製セミオートメルトインデクサーを用いて、280℃、荷重2.16kgで10分間に流出したポリマー量(g)で示した。
オリゴマー含量 : 東ソー製GPCカラムTSKgelG2000HXLとTSKgelG3000HXLを用い、溶離液としてクロロホルムを流量0.7ml/分で流しながら試料50mgをクロロホルム5mlに溶解した溶液を20μl注入する方法で求めたGPCチャートのリテンションタイムが19分以降のオリゴマー成分のピーク面積の全ピーク面積に対する割合を%で示した。
吸水率 : ASTM D−0570によって測定した。
塩化メチレン未溶解粒子 : 該ポリカーボネート樹脂20gを塩化メチレン1Lに溶解した溶液をハイアックロイコ社製液体パーティクルカウンターモデル4100を用いたレーザーセンサー法にて散乱光をラテックス粒子の散乱光に換算する方法で求めた。
曲げ弾性率 : ASTM D−790によって測定した。
線膨張係数 : ASTM D−696によって測定した。
比重 : JIS K−7112によって測定した。
中心線平均粗さ(Ra) : JIS B 0601によって測定した。
反り : 80℃、85%RHの恒温恒湿機中に、ハードディスク基板を1,000時間放置した後、小野測器製LM−1200光ディスク検査装置を用いて基板の反りを測定した。
平面度
基板にレーザー光を照射し、そのレーザー光の戻り角を測定することにより、基板の傾きを算出して求めた。測定個所は代表して、半径方向に中心から40mmの箇所の円周方向の平面度を測定した。測定にはジャパン・イー・エム製 DLD−3000を使用した。
粗大突起
高さが25nm以上の粗大突起の測定は次のようにして行った。
基板の半径方向に中心から15mm、28mmおよび40mmの箇所における円周方向に各々8箇所の合計24箇所において、1箇所当たり100μm角で5点測定し、25μm以上の突起の有無を測定した。測定には、原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ製 SPI−3800N)を使用した。
実施例1
温度計、攪拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水929.2部、48%カセイソーダ水溶液61.3部を入れ、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン35.1部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール48.0部およびハイドロサルファイト0.17部を溶解した後、p−tert−ブチルフェノール1.51部と塩化メチレン637.9部を加えトリエチルアミン0.09部を添加した後攪拌下15〜25℃でホスゲン32.4部を40分要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、48%カセイソーダ水溶液15.6部を加え、28〜33℃で1時間攪拌して反応を終了した。反応終了後、目開きの小さい(0.2μm)フィルターでろ過し生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、軸受け部に異物取り出し口を有する隔離室を設けたニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、ビスフェノールTMCとビスフェノールMの比がモル比で45:55である無色のポリマー88.1部を得た(収率98%)。
このポリマーの比粘度は0.284、オリゴマー含量は2.4%、塩素含有量は1.3ppm、Tgは146℃、MFRは80g/10分であった。また吸水率は0.15重量%であった。このポリマーにトリス(ノニルフェニル)ホスファイトを0.03%、トリメチルホスフェートを0.005%、ステアリン酸モノグリセリドを0.04%加えてペレット化し、住友重機製DISK5M111を用いて90mmφ、1.2mm厚みのディスクに射出成形した。このものの塩化メチレン未溶解粒子は0.5μm以上が10,000個/g、1μm以上が90個/gであった。また曲げ弾性率は2,800MPa、線膨張係数は6.1×10−5deg−1、比重1.13、反りは0.15mm、表面粗さ(Ra)は、磁性膜形成面で0.86nmであった。また平面度は5μmであった。磁性膜形成面において高さ25nm以上の粗大突起は存在しなかった。
実施例2
実施例1の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを23.4部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールを60.9部とした以外は実施例1と同様にして、ビスフェノールTMCとビスフェノールMの比がモル比で30:70であるポリマー88.2部を得た(収率97%)。このポリマーの比粘度は0.291、オリゴマー含量は2.7%、塩素含有量は1.5ppm、Tgは132℃、MFRは93g/10分であった。また吸水率は0.13重量%であった。
このポリマーを実施例1と同様に成形し実施例1と同様に評価したところ、このものの塩花メチレン未溶解粒子は0.5μm以上が10,000個/g、1μm以上が80個/gであった。また曲げ弾性率は2,850MPa、線膨張係数は6.1×10−5deg−1、比重1.13、反りは0.10mm、表面粗さ(Ra)は、磁性膜形成面で0.88nmであった。また平面度は6μmであった。磁性膜形成面において高さ25nm以上の粗大突起は存在しなかった。
実施例3
実施例1の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを54.7部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールを26.1部とした以外は実施例1と同様にして、ビスフェノールTMCとビスフェノールMの比がモル比で70:30であるポリマー87.4部(収率97%)を得た。
このポリマーの比粘度は0.286、オリゴマー含量は2.8%、塩素含有量は1.5ppm、Tgは155℃、MFRは66g/10分であった。また吸水率は0.16重量%であった。このポリマーを実施例1と同様に評価したところ、塩化メチレン未溶解粒子は0.5μm以上が10,000個/g、1μm以上が85個/gであった。また曲げ弾性率は2,900MPa、線膨張係数は6.2×10−5deg−1、比重1.13、反りは0.10mm、表面粗さ(Ra)は、磁性膜形成面で0.86nmであった。また平面度は5μmであった。磁性膜形成面において高さ25nm以上の粗大突起は存在しなかった。
比較例1
実施例1の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを78部として、4,4−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールを用いない以外は、実施例1と同様にしてビスフェノールTMCのホモポリマー80.3部(収率95%)を得た。このポリマーの比粘度は0.290、Tgは232℃、また吸水率は0.3重量%であった。このポリマーを実施例1と同様にして射出成形により基板を得ようとしたが、溶融流動性が悪く、成形できなかった。
比較例2
実施例1の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを15.6部、4,4−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールを69.7部とした以外は、実施例1と同様にしてビスフェノールTMCとビスフェノールMの比がモル比で20:80であるポリマー89.3部を得た(収率96%)。このポリマーの比粘度は0.288、Tgは117℃、MFRは95g/10分であった。また吸水率は0.13重量%であった。このポリマーを実施例1と同様にして評価したところ、この基板は、Tgが117℃と低く、ハードディスク用途としての耐熱性が不足していた。
比較例3
実施例1のポリマー溶液を用い、軸受け部に異物出し口を有する隔離室のないニーダーを使用して造粒した以外は、実施例1と同様にして基板成形、評価したところ、塩化メチレン未溶解粒子は0.5μm以上が86,000個/g、1.0μ/m以上が2,700個/gと多くなった。実施例1と同様にして評価したところ、表面粗さ(Ra)は、磁性膜形成面で9.5nmでハードディスク基板として不適であった。
発明の効果
本発明の方法によれば、優れた物理的特性を有する樹脂より形成されたハードディスク基板が得られるので、ハードディスク、特にビデオ用ハードディスクとして好適に用いられる。
従来の技術
従来、ハードディスク用基板に使用される代表的な素材としては、ガラスおよびアルミニウムが知られており、剛直性および平滑性を有することからハードディスクの基板の素材としても広く用いられている。しかしながら、ピットおよびグルーブの成形が出来ないという欠点があり、この改善が求められている。
またピットおよびグルーブの成形により記録密度を高めるためには、より転写性のよい樹脂が求められている。また一方では反りが少なく耐久性のよい樹脂も求められているが、これらの要求を満足するハードディスク用基板はまだない。
一方、米国特許第5633060号(特開平8−293128号公報)には、特定構造のジヒドロキシジフェニルアルカンおよびそれからの新規な芳香族ポリカーボネートについて記載されている。この公報に開示されている樹脂組成は、
(a)1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(成分a)および
(b)4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールおよび/または2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(成分b)を全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも80モル%とし、且つ成分aと成分bの割合がモル比で20:80〜80:20である。
上記明細書には、得られた前記芳香族ポリカーボネートは、複屈折率が小さく、反りも小さい光ディスク基板を提供し、記憶容量が極めて大きい光ディスクに適することが記載されている。
一方、特開平5−6535号公報には、ポリカーボネート樹脂およびアクリル樹脂を使用したハードディスク用のプラスチック基板に付いて記載されている。該樹脂は、セクターおよびゾーンビット信号を金型よりの成形することを可能にする。
さらに、特開平7−153060号公報には、熱可塑性ノルボルネン樹脂を使用したハードディスク用のプラスチック基板に付いて記載されている。該樹脂は、吸湿性が低く、すなわち形状変化の小さい、また、共振周波数の高いすなわちサーボマークの読み取りが容易な、従って、より高密度の記録を可能にする。
しかしノルボルネン樹脂から形成された基板は、物理的強度、殊に曲げ弾性率が不充分であり、そのためディスク基板は比較的厚くすることが要求される。このためこの樹脂を使用した基板は、樹脂を使用した軽量化のメリットが充分に発揮されたものではない。
発明が解決しようとする課題
本発明の第1の目的は、物理的強度、殊に曲げ弾性率および比重がハードディスク基板として適した一定水準を有する軽量の樹脂基板を提供することにある。
本発明の第2の目的は、他の物性、例えば線膨張係数、吸水率がハードディスク基板として適した値を有する樹脂基板を提供することにある。
本発明の第3の目的は、ハードディスク基板における磁性膜形成面の平面性および平滑性が優れた樹脂基板を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記種々の特性を発現しうる芳香族ポリカーボネート樹脂より形成されたハードディスク基板を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、高密度の記録容量を有するハードディスク基板、殊にビデオ用ハードディスク基板等に適した高機能を有し、且つ溶融形成容易なハードディスク基板を提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明者らの研究によれば、熱可塑性樹脂より実質的に形成され、該樹脂は(A)比重が0.95〜1.25であり、且つ(B)曲げ弾性率が2,200〜3,500MPaを満足する樹脂により形成されていることを特徴とするハードディスク基板およびその基板の表面に磁性膜を形成させたハードディスクが提供される。
本発明のハードディスク基板は(A)比重が0.95〜1.25、好ましくは1.0〜1.15であり且つ曲げ弾性率が2,200〜3,500MPa、好ましくは2,300〜3,400MPa、特に好ましくは2,400〜3,000MPaの物性を有する熱可塑性樹脂より形成されている。
かかる物性は、従来の熱可塑性ノルボルネン樹脂や、ビスフェノールAからのポリカーボネート樹脂では達成されない値であり、後述するようにハードディスク基板の物性として価値ある値である。
本発明によれば、前記物性と共に磁性膜形成面における表面特性が優れたハードディスク基板が提供される。すなわち、磁性膜形成面は、表面が平滑性に優れ、しかも平面性(平坦性)にも優れている。ハードディスク基板の磁性膜形成面において中心線平均粗さ(Ra)は、2nm以下、好ましくは1nm以下である。またハードディスク基板の磁性膜形成面において、円周方向の平面度が10μm以下、好ましくは7μm以下である。このような平滑性および平面性を有する基板の表面に対して磁性膜を形成させることによって、ハードディスクへの情報の記録化および読み取りの操作においていずれも支障なく、高度の信頼性を有するハードディスクが得られる。
また本発明のハードディスク基板は、磁性膜形成面において、高さが25nm以上の粗大突起が実質的に存在しないものが肝要である。そのためには後述するように樹脂中に大きい未溶解粒子が混入しないようにするかあるいはフィルターで大きな粒子を除去することが必要である。
本発明のハードディスク基板は、好ましい態様として、線膨張係数および吸水率にも優れた物性を有している。すなわち、線膨張係数は6.5×10−5deg−1以下、好ましくは5.5〜6.3×10−5deg−1である。また吸水率は0.18重量%以下、好ましくは0.17重量%以下、特に好ましくは0.15重量%以下である。線膨張係数および吸水率が前記範囲以下を満足することにより、熱や温度に対して基板の変形や反りが極めて少なくなり、ハードディスクの信頼性を高めることになる。
本発明のハードディスク基板を形成する樹脂は、その製造過程により塩素を含有していることがある。この塩素の含有量が多いと成形金型が腐蝕したり、樹脂の熱安定性が低下したり、またハードディスクの磁性膜の腐蝕が起こったりするので望ましくない。従って、塩素の含量は10ppm以下、好ましくは7ppm以下、特に好ましくは5ppm以下であるのが推奨される。ここで云う塩素含量とは、樹脂を三菱化学製全有機ハロゲン分析装置TOX10型を用いて燃焼法により測定された値を意味する。
前記した基板としての物性を達成する樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
すなわち、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂として、全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも30%が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂を形成する芳香族ジヒドロキシ成分としての1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)およびそれからの芳香族ポリカーボネート樹脂は、米国特許第4,982,014号(特開平2−88634号公報)により公知である。この公報に開示された代表例は、ビスフェノールTMCを全ジヒドロキシ成分の100〜2モル%使用した芳香族ポリカーボネートであり、具体的にはビスフェノールTMCを100〜30モル%の割合で使用したホモ・またはコ・ポリカーボネートである。
上記公報には、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の利点および用途として、従来のポリカーボネート樹脂に対して高い耐熱性において優れ、例えば電気分野、被覆および透明板ガラスの分野に使用されることが記載されている。また光ディスクの用途としてビスフェノールA65モル%およびビスフェノールTMC35モル%のポリカーボネート樹脂が記載されているが、この樹脂は、従来のビスフェノールAからの樹脂に比べて耐熱性が改良されていることを示しているに過ぎない。また前記公報には、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂をハードディスク基板へ利用することについて何らの示唆もない。
本発明者の研究によればビスフェノールTMC単独からの芳香族ポリカーボネート樹脂は、ハードディスク基板としては不適当であることが判った。また、前記公報に記載された具体的な共重合体、つまりビスフェノールTMCとビスフェノールAとからの共重合体ポリカーボネート樹脂も、共重合割合に関係なく同様にハードディスク基板としては、ビスフェノールAからの従来のポリカーボネート樹脂基板に比べて、耐熱性が改良されていること以外、特に優れているものとは云えないことが判った。
ところが本発明者の研究によれば、ビスフェノールTMCに対して特定の末端改質剤を使用するか、および/または特定構造のジヒドロキシ化合物を一定割合共重合することによって得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、曲げ弾性率が高く、線膨張係数が低く、比重が低く、吸水率が極めて小さく、ハードディスク基板として反りが少ない基板が得られることが見出された。
以下前記芳香族ポリカーボネート樹脂について説明する。本発明のハードディスク基板の素材として有利に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、下記式で表される1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)が全芳香族ジヒドロキシ成分当り、少なくとも30モル%の割合で構成されたポリカーボネート樹脂である。
この芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記ビスフェノールTMCを全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも30モル%、好ましくは少なくとも40モル%使用している。このビスフェノールTMCの割合が30モル%未満の場合、得られたハードディスク基板またはハードディスクは、耐熱性、機械的物性、吸水率、転写性あるいは反りあるいは表面特性のいずれかの性質が不満足となり、これら特性を満足するハードディスク基板またはハードディスクは得られない。ビスフェノールTMCは、100モル%でもよいが吸水率が高くなるまたは流動性が悪くなる傾向になるので、ビスフェノールTMCの割合がこのように高い場合には、後述するように特定の末端改質剤で末端を変性することが望ましい。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ成分として前記ビスフェノールTMCを一定割合使用することが必要であり、所望の特性、殊に吸水率を0.18重量%以下とするために、大別して2つの手段が採用される。
その1つは、前記ビスフェノールTMCに対して特定のジヒドロキシ成分を組合わせて共重合ポリカーボネート樹脂とすることであり、他の手段は末端基に或る特定構造の末端改質剤を導入することである。これら2つの手段はそれぞれ単独でもよく、また組合わせてもよい。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、それを構成する全芳香族ジヒドロキシ成分中のビスフェノールTMCの割合が30〜70モル%の範囲であるが好ましく、40〜60モル%の範囲であるのが特に好ましい。
本発明者の研究によれば、前記ビスフェノールTMCに対して、或る特定のジヒドロキシ成分を組合わせて得られた共重合ポリカーボネート樹脂は、ハードディスク基板として特に適していることが見出された。すなわち、共重合ポリカーボネート樹脂は、(a)ビスフェノールTMC(これを成分aという)および(b)4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“ビスフェノールM”と省略することがある)および/または2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“ビスフェノールC”と省略することがある)[これらを成分bという]を全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも90モル%とし、且つ成分aと成分bとの割合がモル比で、30:70〜70:30、好ましくは40:60〜60:40であるポリカーボネート樹脂はハードディスク基板として特に好ましい。
前記共重合ポリカーボネート樹脂の好ましい態様の1つは、成分aがビスフェノールTMCであり、且つ成分bがビスフェノールMである組合わせであり、その場合成分a:成分bの割合がモル比で、40:60〜60:40の範囲、さらには45:55〜55:45の範囲であるのが一層好ましい。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂において、成分aおよび成分bが全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも95モル%を占めることが望ましいが、他のジヒドロキシ成分(成分C)を全芳香族ジヒドロキシ成分当り10モル%以下、好ましくは5モル%以下含有していても特に差支えない。
かかる成分Cとしては、通常芳香族ポリカーボネートのジヒドロキシ成分として使用されている、成分aおよび成分b以外の成分であればよく、たとえばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサンが挙げられる。
ハードディスク基板として用いることができる前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば芳香族ジヒドロキシ成分にホスゲンや炭酸ジエステル等のカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら攪拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜330℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、前途したように芳香族ジヒドロキシ成分として、ビスフェノールTMCあるいはビスフェノールTMCと他の芳香族ジヒドロキシ成分との混合物を使用し、それ自体公知のポリカーボネート形成の反応に従って製造することができる。
その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
かかる単官能フェノール類としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよく、一般にはフェノールあるいは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式で表される単官能フェノール類を示すことができる。
[式中、Aは水素原子または炭素数1〜9、好ましくは1〜8の脂肪族炭化水素基を示し、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数を示す。]
前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。これら単官能フェノールは、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましい。
長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類、または安息香酸クロライド類もしくは長鎖のアルキルカルボン類クロライドを使用して芳香族ポリカーボネート樹脂の末端基を封鎖することは前記単官能フェノール類と同様に末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、さらに得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の改質にも役立つ。
すなわち、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類、または安息香酸クロライド類もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類(以下これらを、前記単官能フェノール類と区別するために“末端改質剤”と省略することがある)は、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端に結合することによって、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易となるばかりでなく、基板としての物性も改良される。特に樹脂の吸水率を低くする効果がある。
従って、ビスフェノールTMCの割合が全芳香族ジヒドロキシ成分当り80モル%以上、殊に90モル%以上の場合は、得られた樹脂の吸水率が0.18重量%を超える場合があるが、このような場合、前記末端改質剤を使用することにより、樹脂の吸水率を0.18重量%以下に抑えることができる。前記末端改質剤は、当然のことながら単官能性化合物であるから、末端停止剤あるいは分子量調節剤としての機能も有している。かかる末端改質剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂の組成によってその割合は一定ではないが、全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%、末端に結合するように使用される。末端改質剤は前記単官能性フェノール類と組合わせて使用することができる。前記末端改質剤としては下記一般式[I−a]〜[I−h]で表される化合物を使用することができる。
[各式中、Xは−R−O−,−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、Tは単結合または上記Xと同様の結合を示し、nは10〜50の整数を示す。Qはハロゲン原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基を示し、pは0〜4の整数を示し、Yは炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、W1は水素原子、−CO−R1、−CO−O−R2またはR3である、ここでR1、R2およびR3は、それぞれ炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基または炭素数6〜15、好ましくは6〜12の一価の芳香族炭化水素基を示す。tは4〜20、好ましくは5〜10の整数を示し、mは1〜100、好ましくは3〜60、特に好ましくは4〜50の整数を示し、Zは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、W2は水素原子、炭素数1〜10、好ましくは5〜6の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基または炭素数6〜15、好ましくは1〜12の一価の芳香族炭化水素基を示す。]
前記した末端改質剤[I−a]〜[I−h]のうち好ましいのは、[I−a]および[I−b]の置換フェノール類である。この[I−a]の置換フェノール類としては、nが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては、例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
また、[I−b]の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては、例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
前記一般式[I−a]〜[I−g]で示される置換フェノール類または置換安息香酸クロライドにおいて置換基の位置は、p位またはo位が一般的に好ましく、その両者の混合物が好ましい。
前記した末端改質剤のうち[I−a]および[I−b]は特に優れている。その理由は前述したとおり、これらは芳香族ポリカーボネート樹脂中に末端基として導入されると、その溶融流動性が改善されるばかりでなく、吸水率を低下させる効果もあるからである。芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する全芳香族ジヒドロキシ成分中のビスフェノールTMCの割合が高く、例えば80モル%以上、特に90モル%以上の場合には樹脂の吸水性が0.18重量%を超える場合があるが、そのような場合には前記[I−a]および[I−b]の末端改質剤の使用により、0.18重量%以下に吸水率を低下することが可能である。しかし本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールTMCの割合が少なくとも30モル%、好ましくは少なくとも40モル%である限り、前述した末端改質剤を使用しても良いことは云うまでもない。
芳香族ポリカーボネート樹脂はその樹脂の0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.2〜0.5の範囲のものであり、好ましくは0.25〜0.4の範囲のものである。比粘度が0.2未満では成形品が脆くなり、0.5より高くなると溶融流動性が悪く、成形不良を生じ、ハードディスクに良好なディスク基板が得られ難くなる。
本発明のハードディスク基板は、前記芳香族ポリカーボネート樹脂を、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法等任意の方法で成形することにより得ることができるが、本発明のハードディスク基板は射出成形法により得られたものが好適である。また本発明のポリカーボネート樹脂は、ASTM D−0570によって測定した吸水率が0.18重量%以下、好ましくは0.17重量%以下であることが必要である。吸水率が0.18重量%を超えると、ハードディスク基板表面上に金属膜を形成させたハードディスクが吸水によって反りを生じ易くなり、トラッキングエラーを起こし易くなるので好ましくない。特に好ましい吸水率は0.15重量%以下である。
本発明のハードディスク基板は、曲げ弾性率が2,200〜3,500MPa、好ましくは2,300〜3,400MPaを有する芳香族ポリカーボネート樹脂から形成されるのが望ましい。特に好ましい曲げ弾性率は2,400〜3,000MPaである。曲げ弾性率が2,200MPaよりも低くなると、ハードディスク基板として不適当なものとなる。一方曲げ弾性率が3,400MPaを超える樹脂を得るためには重合度を高くする必要があり、その場合成形が難しくなる。
また本発明のハードディスク基板は、線膨張係数が6.5×10−5deg−1以下、好ましくは5.5〜6.3×10−5deg−1を有する芳香族ポリカーボネート樹脂より形成されるのが有利である。線膨張係数が6.5×10−5deg−1を超えるポリカーボネート樹脂をハードディスクとして使用すると、使用条件によって記録の読み取りに支障を来すことがある。
本発明のハードディスク基板に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、その比重が0.95〜1.25、好ましくは1.0〜1.15のものが有利に使用される。この範囲の比重を有する樹脂は、軽量であり、ディスクの作動、操作における負荷が少なくなりそれ自体価値を有する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、カーボネート前駆物質としてホスゲンを使用し、また溶媒として塩化メチレン等の塩素系溶媒を使用して製造した場合、塩素が少なからず残存している。この塩素の含有量が多いと成形金型が腐蝕したり、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性が低下したり、またハードディスクの磁性膜の腐蝕が起こったりするので望ましくない。従って、塩素の含量は10ppm以下、好ましくは7ppm以下、特に好ましくは5ppm以下であるのが推奨される。ここで云う塩素含量とは、芳香族ポリカーボネート樹脂を三菱化学製全有機ハロゲン分析装置TOX10型を用いて燃焼法により測定された値を意味する。
ハードディスク基板は、オリゴマー含量が10%以下、好ましくは6%以下、特に好ましくは4%以下である芳香族ポリカーボネート樹脂が使用される。このオリゴマー含量の値は下記方法およびカラムを使用して測定された値である。すなわち、東ソー(株)製、TSKgelG2000HXLとG3000HXLカラム各1本づつ直列に繋いで溶離液としてクロロホルムを用い、流用0.7ml/分で安定化した後、該ポリカーボネート樹脂のクロロホルム溶液を注入する方法で測定したGPCチャートのリテンションタイムが19分以降のオリゴマーピーク面積の合計の全ピーク面積に対する割合がオリゴマー含量である。オリゴマー含量が10%を超えると成形時の金型表面を汚染することがあるので望ましくなく、その汚染はオリゴマー含量が多くなる程顕著になる傾向がある。一方、オリゴマーは芳香族ポリカーボネート樹脂の製造過程で生じるものであり、完全に零(0)にすることはできない。
オリゴマーは、前記した含量以下であればよく、その値を満足する限り、少割合含有されていても差支えない。0.1%以上、好ましくは0.15%以上の少割合の含量でオリゴマーが存在すると、それ以下のものと比べて溶融流動性が向上する。そのため、特に好ましくはオリゴマー含量は0.15〜4%の範囲である。
芳香族ポリカーボネート樹脂中のオリゴマー含量を前記範囲に制御するには、大量のオリゴマーが樹脂中に含まれないように重合を充分に完結することが必要であり、また触媒および重合条件を適宜選択することが要求される。もしオリゴマー含量が前記範囲を超えている場合には、例えばオリゴマーを抽出等の手段により除去する処置が採用される。この抽出は芳香族ポリカーボネート樹脂の溶液(例えば塩化メチレン溶液)を、その樹脂の貧溶剤または非溶剤(例えばアセトンまたはメタノール)中に滴下する方法、あるいはその樹脂を貧溶媒またはまたは非溶媒に浸漬して、オリゴマーを抽出する方法等の手段によって実施することができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、ハードディスク基板、殊にビデオ用ハードディスク基板として使用されるため、その中の未溶解粒子が或る一定量以下に制御すべきである。
すなわち、ポリカーボネート樹脂はその20gを塩化メチレン1Lに溶解した溶液をハイアックロイコ社製液体パーティクルカウンターモデル4100を用いたレーザーセンサー法にて散乱光をラテックス粒子の散乱光に換算する方法で求めた径0.5μm以上の未溶解粒子が該ポリカーボネート樹脂1g当り12,000個以下、且つ1μm以上の未溶解粒子が200個以下であることが望ましい。0.5μm以上の未溶解粒子が12,000個を超えるか、または1μm以上の未溶解粒子が200個を超えるとディスクに書き込まれた情報に悪影響を及ぼしエラーレートが大きくなるので好ましくない。さらに好ましくは、0.5μm以上の未溶解粒子が10,000個以下、且つ1μm以上の未溶解粒子が100個以下である。また、10μm以上の未溶解粒子は実質的に存在すべきではない。
芳香族ポリカーボネート樹脂中における未溶解粒子の量を前記範囲とするためには、重合過程および造粒過程において未溶解粒子が混入しないかあるいは除去し得る手段を採用すべきである。そのような手段としては、例えば操作をクリーンルームで行うこと、未溶解粒子の除去装置の付いた造粒装置を使用すること(具体的例としては、後述する実施例1で使用された軸受け部に異物取り出し口を有する隔離室を設けたニーダー)あるいは摺動部分に樹脂粒子が触れない構造の装置(例えばスプレードライヤー形式の造粒機)で造粒すること等がある。また、未溶解粒子を除去する他の手段として、樹脂の溶液を目開きの小さいフィルター(0.2−0.5μm)によりろ過する方法あるいは樹脂を溶融して後、金属フィルター(5−20μm)により固体粒子を除去する方法等が採用される。
本発明のハードディスク基板は、その磁性膜形成面が極めて平滑性が優れていることが、その目的のために要望される。その平滑性は中心線表面粗さ(Ra)で表して2nm以下、好ましくは1nm以下、特に好ましくは0.5nm以下であることが望ましい。表面粗さ(Ra)が2nmを超えると、その面に形成される磁性膜の表面の平滑性に影響を及ぼすことになり、記録の付与および取り出しに支障を来すことになる。
この中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601で定義される値であり、基準長さL(測定長)を抜き取り、この抜き取り部分の平均線をX軸、縦倍率の方向をY軸として抽出曲線をy=f(x)で表したとき下記式で求められた値である。
本発明のハードディスク基板は、平坦性にも優れている。この平坦性は、磁性膜形成面において円周方向が平面度として10μm以下、好ましくは7μm以下である。実際には半径方向の平面度も同じ程度であることが望ましい。
また本発明のハードディスク基板は、磁性膜形成面において、高さが25nm以上の粗大突起が実質的に存在しないものが肝要である。そのためには前述したように大きい未溶解粒子が混入しないようにするかあるいはフィルターで大きな粒子を除去することが必要である。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、そのガラス転移点が120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、145℃以上がさらに好ましい。ガラス転移点が低くなるとディスク基板としての耐熱性が不足する。また芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性はMFRの値で25g/10分以上が好ましく、30g/10分以上がより好ましく、45g/10分以上がさらに好ましい。流動性が低くなると成形性に劣り所望のディスク基板が得られなくなる。
芳香族ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて燐系熱安定剤を加えることができる。燐系熱安定剤としては、亜燐酸エステルおよび燐酸エステルが好ましく使用される。亜燐酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイト等の亜燐酸のトリエステル、ジエステル、モノエステルが挙げられる。これらのうち、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリストールジホスファイトホスファイトが好ましい。
一方、熱安定剤として使用される燐酸エステルとしては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等が挙げられ、なかでもトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートが好ましい。
前記燐系熱安定剤は、単独で使用してもよく、また二種以上を組合わせて使用しても良い。燐系熱安定剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂に基づいて0.0001〜0.05重量%の範囲で使用するのが適当である。
芳香族ポリカーボネート樹脂には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を添加することができる。その例としてはフェノール系酸化防止剤を示すことができ、具体的には例えばトリエチレングリコール−ビス(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい添加量の範囲は芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、0.0001〜0.05重量%である。
さらに芳香族ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて多価アルコールの高級脂肪酸エステルを加えることもできる。この高級脂肪酸エステルを加えることによって、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性が向上し、成形時の樹脂の流動性が良くなり、さらに成形後の金型からの基板の離型性が改良されて離型不良によるディスク基板の変形が防止できる。かかる高級脂肪酸エステルとしては、炭素数2〜5の多価アルコールと炭素数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル、または全エステルであるのが好ましい。この多価アルコールとしては、グリコール類、グリセロールまたはペンタエリストールが挙げられる。
前記高級脂肪酸エステルは、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、0.005〜2重量%の範囲、好ましくは0.02〜0.1重量%の範囲で添加されるのが適当である。添加量が0.01重量%未満では、上記効果が得られず、一方2重量%を超えると金型表面の汚れの原因となるので好ましくない。
芳香族ポリカーボネート樹脂には、さらに着色剤、帯電防止剤、滑剤等の添加剤を透明性を損なわない範囲で加えることができる。また、他のポリカーボネート樹脂、熱可塑性樹脂を本発明の目的を損なわない範囲で少割合添加することもできる。
本発明のハードディスク基板は、その表面に磁性膜としての金属薄膜を形成させることにより、ハードディスクが得られる。この金属としては、Fe、Co、Cr等があり、Co28Pt12Cr10が適している。また薄膜は、スパッタリング、蒸着等の手段で形成させることができる。これらの金属薄膜の形成手段は、それ自体知られた方法で行うことができる。
実施例
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によった。
比粘度 : ポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃の温度で測定した。
ガラス転移点(Tg) : デュポン社製910型DSCにより測定した。
流動性(MFR) : JIS K−7210に準拠して、東洋精機製セミオートメルトインデクサーを用いて、280℃、荷重2.16kgで10分間に流出したポリマー量(g)で示した。
オリゴマー含量 : 東ソー製GPCカラムTSKgelG2000HXLとTSKgelG3000HXLを用い、溶離液としてクロロホルムを流量0.7ml/分で流しながら試料50mgをクロロホルム5mlに溶解した溶液を20μl注入する方法で求めたGPCチャートのリテンションタイムが19分以降のオリゴマー成分のピーク面積の全ピーク面積に対する割合を%で示した。
吸水率 : ASTM D−0570によって測定した。
塩化メチレン未溶解粒子 : 該ポリカーボネート樹脂20gを塩化メチレン1Lに溶解した溶液をハイアックロイコ社製液体パーティクルカウンターモデル4100を用いたレーザーセンサー法にて散乱光をラテックス粒子の散乱光に換算する方法で求めた。
曲げ弾性率 : ASTM D−790によって測定した。
線膨張係数 : ASTM D−696によって測定した。
比重 : JIS K−7112によって測定した。
中心線平均粗さ(Ra) : JIS B 0601によって測定した。
反り : 80℃、85%RHの恒温恒湿機中に、ハードディスク基板を1,000時間放置した後、小野測器製LM−1200光ディスク検査装置を用いて基板の反りを測定した。
平面度
基板にレーザー光を照射し、そのレーザー光の戻り角を測定することにより、基板の傾きを算出して求めた。測定個所は代表して、半径方向に中心から40mmの箇所の円周方向の平面度を測定した。測定にはジャパン・イー・エム製 DLD−3000を使用した。
粗大突起
高さが25nm以上の粗大突起の測定は次のようにして行った。
基板の半径方向に中心から15mm、28mmおよび40mmの箇所における円周方向に各々8箇所の合計24箇所において、1箇所当たり100μm角で5点測定し、25μm以上の突起の有無を測定した。測定には、原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ製 SPI−3800N)を使用した。
実施例1
温度計、攪拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水929.2部、48%カセイソーダ水溶液61.3部を入れ、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン35.1部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール48.0部およびハイドロサルファイト0.17部を溶解した後、p−tert−ブチルフェノール1.51部と塩化メチレン637.9部を加えトリエチルアミン0.09部を添加した後攪拌下15〜25℃でホスゲン32.4部を40分要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、48%カセイソーダ水溶液15.6部を加え、28〜33℃で1時間攪拌して反応を終了した。反応終了後、目開きの小さい(0.2μm)フィルターでろ過し生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、軸受け部に異物取り出し口を有する隔離室を設けたニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、ビスフェノールTMCとビスフェノールMの比がモル比で45:55である無色のポリマー88.1部を得た(収率98%)。
このポリマーの比粘度は0.284、オリゴマー含量は2.4%、塩素含有量は1.3ppm、Tgは146℃、MFRは80g/10分であった。また吸水率は0.15重量%であった。このポリマーにトリス(ノニルフェニル)ホスファイトを0.03%、トリメチルホスフェートを0.005%、ステアリン酸モノグリセリドを0.04%加えてペレット化し、住友重機製DISK5M111を用いて90mmφ、1.2mm厚みのディスクに射出成形した。このものの塩化メチレン未溶解粒子は0.5μm以上が10,000個/g、1μm以上が90個/gであった。また曲げ弾性率は2,800MPa、線膨張係数は6.1×10−5deg−1、比重1.13、反りは0.15mm、表面粗さ(Ra)は、磁性膜形成面で0.86nmであった。また平面度は5μmであった。磁性膜形成面において高さ25nm以上の粗大突起は存在しなかった。
実施例2
実施例1の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを23.4部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールを60.9部とした以外は実施例1と同様にして、ビスフェノールTMCとビスフェノールMの比がモル比で30:70であるポリマー88.2部を得た(収率97%)。このポリマーの比粘度は0.291、オリゴマー含量は2.7%、塩素含有量は1.5ppm、Tgは132℃、MFRは93g/10分であった。また吸水率は0.13重量%であった。
このポリマーを実施例1と同様に成形し実施例1と同様に評価したところ、このものの塩花メチレン未溶解粒子は0.5μm以上が10,000個/g、1μm以上が80個/gであった。また曲げ弾性率は2,850MPa、線膨張係数は6.1×10−5deg−1、比重1.13、反りは0.10mm、表面粗さ(Ra)は、磁性膜形成面で0.88nmであった。また平面度は6μmであった。磁性膜形成面において高さ25nm以上の粗大突起は存在しなかった。
実施例3
実施例1の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを54.7部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールを26.1部とした以外は実施例1と同様にして、ビスフェノールTMCとビスフェノールMの比がモル比で70:30であるポリマー87.4部(収率97%)を得た。
このポリマーの比粘度は0.286、オリゴマー含量は2.8%、塩素含有量は1.5ppm、Tgは155℃、MFRは66g/10分であった。また吸水率は0.16重量%であった。このポリマーを実施例1と同様に評価したところ、塩化メチレン未溶解粒子は0.5μm以上が10,000個/g、1μm以上が85個/gであった。また曲げ弾性率は2,900MPa、線膨張係数は6.2×10−5deg−1、比重1.13、反りは0.10mm、表面粗さ(Ra)は、磁性膜形成面で0.86nmであった。また平面度は5μmであった。磁性膜形成面において高さ25nm以上の粗大突起は存在しなかった。
比較例1
実施例1の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを78部として、4,4−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールを用いない以外は、実施例1と同様にしてビスフェノールTMCのホモポリマー80.3部(収率95%)を得た。このポリマーの比粘度は0.290、Tgは232℃、また吸水率は0.3重量%であった。このポリマーを実施例1と同様にして射出成形により基板を得ようとしたが、溶融流動性が悪く、成形できなかった。
比較例2
実施例1の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを15.6部、4,4−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールを69.7部とした以外は、実施例1と同様にしてビスフェノールTMCとビスフェノールMの比がモル比で20:80であるポリマー89.3部を得た(収率96%)。このポリマーの比粘度は0.288、Tgは117℃、MFRは95g/10分であった。また吸水率は0.13重量%であった。このポリマーを実施例1と同様にして評価したところ、この基板は、Tgが117℃と低く、ハードディスク用途としての耐熱性が不足していた。
比較例3
実施例1のポリマー溶液を用い、軸受け部に異物出し口を有する隔離室のないニーダーを使用して造粒した以外は、実施例1と同様にして基板成形、評価したところ、塩化メチレン未溶解粒子は0.5μm以上が86,000個/g、1.0μ/m以上が2,700個/gと多くなった。実施例1と同様にして評価したところ、表面粗さ(Ra)は、磁性膜形成面で9.5nmでハードディスク基板として不適であった。
発明の効果
本発明の方法によれば、優れた物理的特性を有する樹脂より形成されたハードディスク基板が得られるので、ハードディスク、特にビデオ用ハードディスクとして好適に用いられる。
Claims (30)
- 熱可塑性樹脂より実質的に形成され、該樹脂は(A)比重が0.95〜1.25であり、且つ(B)曲げ弾性率が2,200〜3,500MPaを満足する樹脂により形成されていることを特徴とするハードディスク基板。
- 磁性膜形成面における中心線平均粗さ(Ra)が2nm以下である請求項1記載のハードディスク基板。
- 磁性膜形成面における円周方向の平面度が、10μm以下である請求項1記載のハードディスク基板。
- 磁性膜形成面において、高さ25nm以上の粗大突起が実質的に存在しない請求項1記載のハードディスク基板。
- 該樹脂は、線膨張係数が6.5×10−5deg−1以下である請求項1記載のハードディスク基板。
- 該樹脂は、吸水率が0.18重量%以下である請求項1記載のハードディスク基板。
- 該樹脂は、塩素含有量が10ppm以下である請求項1記載のハードディスク基板。
- 該樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1記載のハードディスク基板。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂は、塩化メチレン溶液中で測定された未溶解粒子がポリカーボネート樹脂1g当たり、粒子換算直径0.5μm以上のものが12,000個以下且つ1μm以上のものが200個以下である請求項8記載のハードディスク基板。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂は、本文に定義された方法によって測定されたオリゴマー含量が10%以下である請求項8記載のハードディスク基板。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂は、その0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液において測定された比粘度が0.2〜0.5の範囲である請求項8記載のハードディスク基板。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂は、全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも30モル%が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである請求項8記載のハードディスク基板。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂は、全芳香族ジヒドロキシ成分の30〜70モル%が、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである請求項8記載のハードディスク基板。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂は、
(a)1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(成分a)および
(b)4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールおよび/または2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(成分b)を全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも90モル%とし、且つ成分aと成分bの割合がモル比で30:70〜70:30である請求項8記載のハードディスク基板。 - 該成分bが、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールである請求項14記載のハードディスク基板。
- 成分a:成分bの割合がモル比で40:60〜60:40である請求項14記載のハードディスク基板。
- 請求項1記載のハードディスク基板の表面に、磁性膜を形成させたハードディスク。
- 請求項1記載のハードディスク基板の表面に、磁性膜を形成させたビデオ用ハードディスク。
- 全芳香族ジヒドロキシ成分の30〜70モル%が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである芳香族ポリカーボネート樹脂より実質的に形成され、該ポリカーボネート樹脂は(A)その0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃において測定された比粘度が0.2〜0.5の範囲であり且つ(B)本文に定義された吸水率が0.18重量%以下である、ことを満足する樹脂により形成されていることを特徴とするハードディスク基板。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂は、
(a)1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(成分a)および
(b)4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールおよび/または2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(成分b)を全芳香族ジヒドロキシ成分の少なくとも90モル%とし、且つ成分aと成分bの割合がモル比で30:70〜70:30である請求項19記載のハードディスク基板。 - 該成分bが、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールである請求項20記載のハードディスク基板。
- 成分a:成分bの割合がモル比で40:60〜60:40である請求項20記載のハードディスク基板。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂は、(A)比重が0.95〜1.25であり且つ(B)曲げ弾性率が、2,200〜3,500MPaである請求項19記載のハードディスク基板。
- 磁性膜形成面における中心線平均粗さ(Ra)が2nm以下である請求項19記載のハードディスク基板。
- 磁性膜形成面における円周方向の平面度が、10μm以下である請求項19記載のハードディスク基板。
- 磁性膜形成面において、高さ25nm以上の粗大突起が実質的に存在しない請求項19記載のハードディスク基板。
- 該樹脂は、線膨張係数が6.5×10−5deg−1以下である請求項19記載のハードディスク基板。
- 該樹脂は、塩素含有量が10ppm以下である請求項19記載のハードディスク基板。
- 請求項19記載のハードディスク基板の表面に磁性膜を形成させたハードディスク。
- 請求項19記載のハードディスク基板の表面に磁性膜を形成させたビデオ用ハードディスク。
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