JPS6257729B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 Ａ 本発明の技術分野 本発明は合成繊維マルチフイラメント糸の仮撚
加工技術を利用してなるスパンライク交互撚合撚
糸とその製造方法に関するものである。さらに詳
しくはマルチフイラメント糸でありながら毛羽に
近似したループやスナルを有しスパン糸に似た風
合と性能を有し、さらにフイラメントとしての特
性も失つていないという特異なスパンライクな特
徴を有する合撚糸に関する。

Ｂ 従来技術とその問題点 フイラメント糸は紡績糸に比べると少ない工程
で生産することができるため、生産性に関して優
れているというメリツトがあるが、糸条表面が平
滑で単調となりやすく、紡績糸のような嵩高性が
ないため多様性に欠けるというデメリツトがあ
る。

従来フイラメント糸に捲縮加工や流体処理加工
を施すことにより、嵩高性を付与する方法もある
が、紡績糸のもつヨリの微妙な風合をだすことは
できない。また、フイラメント糸に効率よくヨリ
を付与する方法として、交互ヨリに関する技術が
従来からよく知られているが、糸の長手方向のＳ
ヨリとＺヨリが相殺しやすいために形態が不安定
であるという欠陥を持つている。この欠陥を改善
する方法として接融着を利用する方法も知られて
いるが、糸が硬くなりヨリのもつ風合が失われて
好ましいものとならない。

Ｃ 本発明の目的 上述したような本発明の目的は、従来技術の欠
陥を改善し、糸形態の安定したスパン調風合と外
観を有するマルチフイラメント糸、特に仮撚糸の
セルフツイストを有効に利用してなる、スパンラ
イクな特徴を有する新規な交互撚合撚糸とその製
造方法を提供せんとするにある。

Ｄ 本発明の構成 本発明は次の構成を有する。

すなわち、本発明のスパンライク交互撚合撚糸
は、２本以上の糸条を構成糸条としてなる合撚糸
であつて、 ａ 該構成糸条のうち少なくとも２本の構成糸条
は、仮撚加工された熱可塑性合成繊維マルチフ
イラメント糸からなり、該少なくとも２本の構
成糸条にはそれぞれの糸軸に沿つて下ヨリとし
てのＳヨリ部とＺヨリ部とを有し、かつ該少な
くとも２本の構成糸条のうち少なくとも１本の
構成糸条の少なくともＳヨリ部と他の少なくと
も１本の構成糸条の少なくともＺヨリ部とには
ループやスナルが存在し、 ｂ かつ、該合撚糸は、糸軸に沿つてＳヨリの上
ヨリ部とＺヨリの上ヨリ部とを有した交互撚合
撚糸であり、かつ各上ヨリ部には前記ループや
スナルを有する構成糸条のうちの少なくとも１
本の構成糸条のループやスナルの存在する部分
が配されてなる。

ことを特徴とするスパンライク交互撚合撚糸で
ある。

また、本発明のスパンライク交互撚合撚糸の製
造方法は、複数本の熱可塑性合成繊維マルチフイ
ラメント糸の少なくとも２本を各々仮撚加工し、
次いで弛緩処理して構成フイラメントにループや
スナルを発現させ、次いで圧力流体を用いた各糸
条ごとの流体処理にて各々の糸条に撚変化を与え
つつ少なくとも１本の糸条はＳ方向で他の少なく
とも１本の糸条はＺ方向である仮撚を付与し、し
かる後該複数本の糸条を引揃えてセルフツイスト
させることを特徴とするスパンライク交互撚合撚
糸の製造方法である。

Ｅ 本発明の作用機能 まず第１番目の発明について説明する。

本発明のスパンライク交互撚合撚糸は、本発明
の構成で述べたとおり、２本以上の糸条を構成糸
条としてなる合撚糸であつて、該構成糸条のうち
少なくとも２本の構成糸条は、仮撚加工された熱
可塑性合成繊維マルチフイラメント糸からなり、
かつ該少なくとも２本の構成糸条にはそれぞれの
糸軸に沿つて下ヨリとしてのＳヨリ部とＺヨリ部
とを有し、そして、少なくとも２本の構成糸条の
下ヨリ部の一部に構成フイラメントからなるルー
プやスナルを有しているため、各々の糸条のルー
プやスナルも、他糸条の下ヨリ密度緩和阻止の機
能を有し、該合撚糸に張力をかけた際上ヨリは減
少しても下ヨリの構造は破壊されにくく、張力を
除くとほとんど元の形態に復帰する。すなわちル
ープやスナルにより糸構造が固定化される。この
機能は引揃えられた該２糸条の下ヨリ部のヨリ方
向が一致する割合が大きいほど顕著な傾向を示
す。したがつて集束性の良好な糸条となる。ここ
で、長手方向にヨリ構成を有さない糸条は、芯糸
としての役目をはたし、該糸条の周囲あるいは周
辺にヨリ構造を有する少なくとも２本の構成糸条
が存在している。

さらに、少なくとも２本の構成糸条のいずれか
一方の構成糸条のＳヨリ部と他方の構成糸条のＺ
ヨリ部には構成フイラメントより成るループやス
ナルを有するため、上ヨリ部を構成する大部分で
は該合撚糸はループやスナルを有することとな
る。ここで、いずれか一方の構成糸条や無ヨリ部
で、他方の構成糸条がループやスナルを有さない
ヨリ部である場合や、ヨリ構造を有する２糸条の
うちで、引揃えられた部分がともにループやスナ
ルを有さないヨリ部であつてもヨリ密度に違いが
ある場合、上ヨリ構造を呈することがある。

本発明糸はループやスナルによつてヨリが固定
されるので実撚紡績糸の双糸に近い特性を有す
る。またストレート部分も有しているので、嵩高
性がよく、外観が変化に富み、カスリ調外観をだ
すこともできる。

本発明の糸を図面を用いて説明する。第１図
Ａ、Ｂ、Ｃは各々本発明の糸である。ａ、ｂ、ｃ
は構成糸条、１はＳヨリの上ヨリ部、２はＺヨリ
の上ヨリ部を示す。また構成糸条に小さな毛羽状
を呈しているのがループやスナルである。そして
いずれか一方の構成糸条のＳヨリ部と他方の構成
糸条のＺヨリ部にはループやスナルが存在してい
る。またかかるループやスナルは上ヨリ部に存在
する。なお第１図ＡにはＺヨリの上ヨリ部を示し
たが、この部分は左方または右方の図示しない部
分においてＳヨリの上ヨリ部が出現する。

次に第２番目の発明について説明する。

供給する糸条は、２糸条以上であり、そのうち
で少なくとも２糸条は熱可塑性マルチフイラメン
ト糸である。この少なくとも２糸条の熱可塑性マ
ルチフイラメント糸に各々仮撚加工を施し、次に
大幅に弛緩することにより、該マルチフイラメン
ト糸は構成フイラメントより成るループやスナル
を発現する。次いで該マルチフイラメント糸を
各々圧力流体噴射装置内に導いて、各糸条ごとの
流体処理を施すものである。該圧力流体噴射装置
はその噴射する流体の糸に対する作用量を任意に
変化し、各々のマルチフイラメント糸にヨリ変化
を与える。このとき該マルチフイラメント糸各各
の未解ネン部はそのヨリ構造により構成フイラメ
ントより成るループやスナルが固定されるが、オ
ーバー解ネン部は形成過程で、該ループやスナル
は消滅し、ループやスナルを有するヨリ部分とル
ープやスナルを有さないヨリ部分が形成される。
ここで、各々のヨリ部分の間に、無ヨリ部分が形
成されてもよい。さらに各々の糸条に施す仮撚方
向は、ＳヨリとＺヨリの両方向があるため、ルー
プやスナルを有するヨリ部分のヨリ方向が、Ｓヨ
リ部である糸条とＺヨリ部である糸条がある。次
いで、少なくとも２糸条の構成糸条に上述の加工
をした２本以上の糸条を引揃え、その下流方向で
弛緩すると該糸条はセルフツイストされながら本
発明のスパンライク交互撚合撚糸に形成される。

本発明方法において、撚変化を与える手段とし
てはどのようなものであつてもよいが、好ましく
は各々の圧力流体を制限して、糸に対する作用量
を任意に変化させればよい。特に好ましくは、圧
力流体を間欠的に噴射することにより、より顕著
に交互撚を得ることができる。ここで圧力流体を
噴射する装置は公知の流体仮撚装置でよい。また
圧力流体を間欠的に噴射する方法として電磁弁等
により圧力流体の供給を制御する方法がある。

圧力流体が各々の糸条に撚変化を与えるタイミ
ングは、特に限定するものではなく、２糸条の場
合、たとえば第３図に示す方法がある。第３図に
おいてＡ、Ｂ、Ｃは各々異なつたパターンを示
す。また各々のパターンのうち太い黒線部は圧空
を付与した部分、細い黒線部は圧空を付与しない
部分を示す。このように各々の糸条にランダムに
かつ間欠的に圧空を付与すると、交互撚が付与さ
れ主に同方向の撚が与えられた部分は互いに相手
の糸条に撚りつくのである。このように、撚変化
を与えるタイミングは、各糸条ごとの流体処理
が、互いに時間的位相が実質的に異なるように構
成された間欠噴射処理とすることによつてとられ
るのが好ましい。

上記の具体例を第２図によつて説明する。まず
一方の糸条はローラ１０ａ，１１ａ間で仮撚装置
１５ａとヒータ１４ａにより仮撚加工が行なわれ
る。次にローラ１１ａと１２ａとの間で弛緩しル
ープやスナルを発現させる。次に流体仮撚ノズル
１６ａを用いて、たとえばＳ方向へ流体仮撚す
る。また他方の糸条は上記と同様仮撚加工、弛緩
処理、流体処理を施すが、流体仮撚ノズル１６ｂ
の旋回方向はたとえばＺ方向とする。これにより
上記の糸条と交互にかつ相互に撚りつきあい、第
１図に示したような糸条が得られる。なお１３は
引取りローラを示す。

さらに加工糸条が２本で、第３図ｃのごとく
各々の糸条に圧空流体を実質的に交互に噴射せし
めて製造したスパンライク交互撚合撚糸は、引揃
えられた２本の構成単位糸のヨリ方向がほぼ一致
するため、長手方向において集束部分の割合が多
くなる。

Ｆ 本発明の効果 本発明のスパンライク交互撚合撚糸は、ループ
やスナルを有するため、スパン調の風合、外観を
呈し、また安定した交互撚構造を有し、かつ糸全
体としてノントルクであるため、高次通過性もよ
い。ループやスナルの摩擦による固定化効果によ
る。また、構成糸条には無撚部分があり、布帛に
加工した場合、撚糸中に無撚の部分がまざり、ス
ラブ糸的、カスリ調外観を呈し、変化に富んだ外
観も呈する。しかもフイラメント糸から構成され
ているため、ステープルからの紡績糸使いの布帛
と異なりピリングや糸の素抜けなどがなく新品感
を長時間維持できる。

さらに第３図Ｃに示したように圧空噴射を交互
にかつ間欠的に行なつた方法により得られれたス
パンライク交互撚合撚糸は、構成糸条のセルフツ
イストの割合が大きく、張力に対してさらに安定
した糸条となり、また、引揃えられる無撚部がよ
り強調される。

実施例 １ 75デニール、24フイラメントのポリエチレンテ
レフタレートマルチフイラメント糸ａ、ｂを２糸
条用意し、第２図に示すような装置によりスパン
ライク交互撚合撚糸を製造した。

この第２図の装置では第１ローラ１０ａ，１０
ｂ、第２ローラ１１ａ，１１ｂ、第３ローラ１２
ａ，１２ｂ、第４ローラ１３の表面速度をそれぞ
れ、180m／分、178m／分、100m／分、155m／
分に設定し、仮撚装置１５ａ，１５ｂでは仮撚方
向をともにＳヨリとし、仮撚数2000T／ｍでヒー
タ１４ａ，１４ｂの温度を160℃とし、圧空仮撚
ノズル１６ａ，１６ｂは圧空圧力３Kg／cm²Ｇで上
流側にそれぞれＳヨリとＺヨリが入るようにし、
双方のノズルから0.3〜0.4秒間隔で圧空を間欠噴
射するようにしてスパンライク交互撚糸を製造し
た。

得られた糸は第１図Ｂの如くであり、このスパ
ンライク交互撚双糸は良好なスパン調、かつカス
リ調の風合、外様を呈し、かつ張力に対して安定
した撚を有する構造嵩高性を示した。

実施例 ２ 120デニール、36フイラメントのポリエチレン
テレフタレート半延伸マルチフイラメント糸（自
然延伸比1.55）ａ、ｂを２糸条用意し、第１図の
装置によりスパンライク交互撚合撚糸を製造し
た。

この第２図の装置では第１ローラ１０ａ，１０
ｂ、第２ローラ１１ａ，１１ｂ、第３ローラ１２
ａ，１２ｂ、第４ローラ１３の表面速度をそれぞ
れ、120m／分、178m／分、100m／分、155m／
分に設定し、仮撚装置１５ａ，１５ｂでは仮撚方
向をそれぞれＺヨリ、Ｓヨリとし、仮撚数
2000T／ｍで、ヒータ１４ａ，１４ｂの温度を
200℃とし、圧空仮撚ノズル１６ａ，１６ｂは圧
空圧力３Kg／cm²Ｇで上流側にそれぞれＳヨリとＺ
ヨリが入るようにし、双方のノズルから0.5秒間
隔で交互に圧空を噴射するようにしてスパンライ
ク交互撚双糸を製造した。得られたスパンライク
交互撚糸は実施例１と同様ループやスナル等の突
出繊維がほぼ一様に存在する良好なスパン調、か
つカスリ調の風合、外様を呈し、かつ張力に対し
て安定した撚を有する優れた糸条となつた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のスパンライク交互撚合撚糸の
一例を示す。第１図Ａは構成糸条を３本とする例
で、第１図Ｂ、Ｃは構成糸条を２本とする例であ
る。第２図は本発明の加工装置を概略的に示す例
で、供給糸条が２糸条の例である。第３図は、本
発明の２つの圧力流体装置に圧空を供給するタイ
ミングを示す例であり、太線部、細線部はそれぞ
れ圧空供給中、圧空供給停止中を示す。 １…Ｓヨリの上ヨリ部、２…Ｚヨリの上ヨリ
部、ａ，ｂ，ｃ…構成糸条、１０ａ，１０ｂ…ロ
ーラ、１１ａ，１１ｂ…ローラ、１２ａ，１２ｂ
…ローラ、１３…ローラ、１４ａ，１４ｂ…ヒー
タ、１５ａ，１５ｂ…仮撚装置、１６ａ，１６ｂ
…圧空仮撚ノズル。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ２本以上の糸条を構成糸条としてなる合撚糸
   であつて、 ａ 該構成糸条のうち少なくとも２本の構成糸条
   は、仮撚加工された熱可塑性合成繊維マルチフ
   イラメント糸からなり、該少なくとも２本の構
   成糸条にはそれぞれの糸軸に沿つて下ヨリとし
   てのＳヨリ部とＺヨリ部とを有し、かつ該少な
   くとも２本の構成糸条のうち少なくとも１本の
   構成糸条の少なくともＳヨリ部と他の少なくと
   も１本の構成糸条の少なくともＺヨリ部とには
   ループやスナルが存在し、 ｂ かつ、該合撚糸は、糸軸に沿つてＳヨリの上
   ヨリ部とＺヨリの上ヨリ部とを有した交互撚合
   撚糸であり、かつ各上ヨリ部には前記ループや
   スナルを有する構成糸条のうちの少なくとも１
   本の構成糸条のループやスナルの存在する部分
   が配されてなる。 ことを特徴とするスパンライク交互撚合撚糸。 ２ ２本の構成糸条からなることを特徴とする特
   許請求の範囲第１項記載のスパンライク交互撚合
   撚糸。 ３ 複数本の熱可塑性合成繊維マルチフイラメン
   ト糸の少なくとも２本を各々仮撚加工し、次いで
   弛緩処理して構成フイラメントにループやスナル
   を発現させ、次いで圧力流体を用いた各糸条ごと
   の流体処理にて各々の糸条に撚変化を与えつつ少
   なくとも１本の糸条はＳ方向で他の少なくとも１
   本の糸条はＺ方向である仮撚を付与し、しかる後
   該複数本の糸条を引揃えてセルフツイストさせる
   ことを特徴とするスパンライク交互撚合撚糸の製
   造方法。 ４ 圧力流体を用いた各糸条ごとの流体処理に際
   して、圧力流体を間欠的に噴射せしめることを特
   徴とする特許請求の範囲第３項記載のスパンライ
   ク交互撚合撚糸の製造方法。 ５ ２本の熱可塑性合成繊維マルチフイラメント
   糸を用いることを特徴とする特許請求の範囲第３
   項記載のスパンライク交互撚合撚糸の製造方法。 ６ 圧力流体を用いた各糸条ごとの流体処理が、
   互いに時間的位相が実質的に異なるように構成せ
   しめてなる圧力流体の間欠噴射による処理である
   ことを特徴とする特許請求の範囲第３項記載のス
   パンライク交互撚合撚糸の製造方法。