JPH1161555A - 塩化ビニル系繊維、及びその製造法 - Google Patents

塩化ビニル系繊維、及びその製造法

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JPH1161555A
JPH1161555A JP22028797A JP22028797A JPH1161555A JP H1161555 A JPH1161555 A JP H1161555A JP 22028797 A JP22028797 A JP 22028797A JP 22028797 A JP22028797 A JP 22028797A JP H1161555 A JPH1161555 A JP H1161555A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】錫系安定剤などを使用した塩化ビニル系繊維を
製造する際に発生するノズル圧力の問題と溶融紡糸生産
性のバランスをとり、人毛に極めて類似した七部艶〜半
艶表面、手触り触感を兼ね備えた細繊度の塩化ビニル系
繊維およびその製造方法を提供する 【解決手段】粘度平均重合度が850〜1700の塩化
ビニル系樹脂を100〜60重量%と塩素化塩化ビニル
系樹脂を0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物1
00重量部に対し、熱安定剤、滑剤、ならびにノズル圧
力低下剤としてフタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可
塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑
剤、および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニ
ル系樹脂から選択される1種または2種以上の可塑剤及
び/または樹脂を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成か
らなる塩化ビニル系繊維、および、前記樹脂組成物を溶
融紡糸する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、かつら、ヘアピー
ス、ブレード、エクステンションヘアー、アクセサリー
ヘアーなどの頭髪装飾用に用いられる人工毛髪、或いは
ドールヘアー等の人形用頭髪などとして使用される塩化
ビニル系繊維およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】塩化ビニル系樹脂を紡糸して繊維状にし
てなる塩化ビニル系繊維は、その優れた強度、伸度、カ
ール保持性、スタイル性などの故に、頭髪装飾用などの
人工毛髪用繊維として、あるいはドールヘアーなどの人
形用頭髪繊維として多量に使用されている。
【0003】従来、一般的には、頭髪装飾用などの人工
毛髪用繊維として、細繊度(断面積が小さく、細い繊維)
の繊維を工業的に製造するには、塩化ビニル系樹脂に対
する溶媒を使用する湿式紡糸法、または乾式紡糸法によ
って、細い繊度の塩化ビニル系繊維を製造する方法が工
業的に実施されている。しかしながら、これらの方法
は、溶媒を使用するが故に脱溶媒工程を必要とし、過大
な設備投資が必要であり、その設備の維持管理にも多数
の人手を必要とするという問題点がある。また、溶媒に
対する溶解性を向上するべく、アクリロニトリルなどの
コモノマーを共重合する為、繊維の初期着色性に弱点が
あり、乾燥工程での熱によって黄色味の強い毛髪になり
易いという問題点、あるいは繊維のカール保持性が充分
でないなどの問題点がある。
【0004】一方、溶媒を使用しない紡糸方法として、溶
融紡糸法が知られているが、この方法にて、人毛に類似し
た半艶表面(艶の評価については、実施例に評価基準を
示した。)、手触り触感性に優れた細繊度の繊維を製造
するには、1ケの断面積が小さいノズル孔(0.5mm2
下)からストランドを溶融・流出せしめ、紡糸ドラフト比
を出来得る限り小さくする(Dr比:25以下)のが好ま
しい。逆に、大きな断面積のノズル孔から溶融・流出させ
て、細繊度の塩化ビニル繊維とすると、必然的に紡糸ドラ
フト比を大きくする必要があり、溶融紡糸時に、未延伸
糸が極端に引き伸ばされることから、繊維(延伸糸)表面
が平滑になり、光沢が出てきて、サラサラ触感がなくな
り、人工毛髪用繊維としては品質的に不十分な繊維とな
る傾向がある。
【0005】しかしながら、1ケの断面積がより小さい
ノズル孔から流出させる場合は、ノズルにかかる圧力が
高くなり、押出機の設計圧力をオーバーしてしまうとい
う問題が発生しやすく、あるいは、その圧力を定格以下
とするべく、押出量を低くすると、溶融紡糸生産性が低下
するという問題、あるいは溶融粘度を低くする為に、溶
融紡糸温度を高く設定すると、熱分解を起こしたり、ロン
グラン性が劣る結果となるという問題もあった。そのた
め、これらの問題を解決する為に組成物の見掛けの溶融
粘度を低下するべく、カドミウムや鉛を使用するCd-P
b系の熱安定剤、滑剤を使用する技術が従来技術として
実施されている。
【0006】しかしながら、これらの配合剤は毒性が高
く、製造上問題があるばかりでなく、頭髪装飾用として皮
膚に触れる為、安全衛生上の問題がある。また、該頭髪
装飾用品などが廃棄される場合、一般ゴミに混入して、
環境を汚染するという問題もある。また、これらの配合
剤を使用すると、ノズル圧力の問題、溶融紡糸生産性の問
題などを解決できるものの、初期着色が大きく、黄色味
の強い毛髪になる傾向があった。そこで、これらCd-
Pb系熱安定剤を主とした配合系の問題点を解決するべ
く、錫系熱安定剤あるいはCa-Zn系熱安定剤などを使
用する方法などが提案されているが、ノズル圧力と溶融
紡糸生産性とのバランスのレベルアップという観点では
十分な解決には到っていない。例えば、特公昭51-21
09号公報では、塩素化塩化ビニル樹脂とメチルメタク
リレート系樹脂を使用することにより、曳糸性を向上す
るという提案があるが、ノズル圧力が高くなる為、溶融
粘度を低下するべく、ノズル温度を200℃という高い
温度に設定している。その為、繊維表面が平滑になり、
光沢が発生し、人毛に類似した半艶表面からかけ離れた
ものになるばかりでなく、サラサラとした触感がなくな
り、毛髪用繊維として品質的に不十分なものになるとい
う問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、錫系熱安定
剤などを使用した際に発生する「ノズル圧力が高くなる」
という溶融紡糸上の課題ならびに「半艶表面性、手触り触
感に劣る」という繊維品質上の課題等の従来技術の問題
点を解決する為になされたものである。すなわち、本発
明の第1の目的は、従来公知のCd-Pb系の熱安定
剤、滑剤を使用しなくとも、1ケのノズル断面積が小さ
いノズル孔から溶融紡糸する際の問題点を解決し、ノズ
ル圧力と溶融紡糸生産性を高度にバランスした細繊度の
塩化ビニル系樹脂繊維の製造法を提供することにあり、
また第2の目的は、従来公知のCd-Pb系の熱安定
剤、滑剤を使用しなくても、初期着色性を大幅に改善し
つつ、人毛に極めて類似した半艶表面、触感、柔軟性を保
持し、また優れた強度、伸度、収縮性を保持した細繊度の
塩化ビニル系繊維を提供することにある。さらに、第3
の目的は、従来公知の錫系安定剤を使用した塩化ビニル
系樹脂繊維の品質課題であるプラチック的触感、キラキ
ラ感のある表面性、ゴワゴワとした指巻き触感、熱収縮
性などが改善され、安全に、かつ安定的に生産できる細
繊度の塩化ビニル系樹脂繊維の製造法を提供することに
ある。
【0008】
【課題を解決する為の手段】本発明者らは、上記課題を
解決するべく組成物の配合系などについて鋭意研究を重
ねた結果、塩化ビニル系樹脂及び/または塩素化塩化ビ
ニル系樹脂からなる塩化ビニル系混合物に熱安定剤、滑
剤ならびにノズル圧力低下剤としてフタル酸系可塑剤、
トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ポ
リエステル系可塑剤、および粘度平均重合度が400〜
850の塩化ビニル系樹脂から選択される1種または2
種以上の可塑剤及び/樹脂を配合してなる塩化ビニル系
樹脂組成物を用いることで、人毛に極めて類似した塩化
ビニル系繊維を高い生産性を維持しながら得られること
を見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】即ち、本発明は、粘度平均重合度が850
〜1700の塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩
素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニ
ル系混合物100重量部に対して、熱安定剤、滑剤、な
らびに、ノズル圧力低下剤としてフタル酸系可塑剤、ト
リメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ポリ
エステル系可塑剤、および粘度平均重合度が400〜8
50の塩化ビニル系樹脂から選択される1種または2種
以上の可塑剤及び/または樹脂を配合してなる塩化ビニ
ル系樹脂組成物からなることを特徴とする塩化ビニル系
繊維である。
【0010】前記ノズル圧力低下剤は、フタル酸系、ト
リメリット酸系、ピロメリット酸系、ポリエステル系か
ら選択される1種または2種以上の可塑剤であって、塩
化ビニル系混合物100重量部に対して、1〜8重量部
配合して用いるのが好ましく、また、粘度平均重合度4
00〜850の塩化ビニル系樹脂であって、塩化ビニル
系混合物100重量部に対して、5〜35重量部配合し
て用いるのがより好ましく、塩化ビニル系混合物100
重量部に対してフタル酸系可塑剤を1〜5重量部および
粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系樹脂を
5〜15重量部配合して用いる場合がさらに好ましい。
【0011】一方、本発明の製造法は、粘度平均重合度
が850〜1700の塩化ビニル系樹脂100〜60重
量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる
塩化ビニル系混合物100重量部に対して、熱安定剤、
滑剤、ならびに、ノズル圧力低下剤としてフタル酸系可
塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑
剤、ポリエステル系可塑剤、および粘度平均重合度が4
00〜850の塩化ビニル系樹脂から選択される1種ま
たは2種以上の可塑剤及び/または樹脂を配合してなる
塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸することを特徴とす
る塩化ビニル系繊維の製造法であり、前記ノズル圧力低
下剤は、フタル酸系、トリメリット酸系、ピロメリット
酸系、ポリエステル系から選択される1種または2種以
上の可塑剤であって、塩化ビニル系混合物100重量部
に対して、1〜8重量部配合して用いるのが好ましい。
また、粘度平均重合度400〜850の塩化ビニル系樹
脂であって、塩化ビニル系混合物100重量部に対し
て、5〜35重量部配合して用いるのがより好ましく、
塩化ビニル系混合物100重量部に対してフタル酸系可
塑剤を1〜5重量部および粘度平均重合度が400〜8
50の塩化ビニル系樹脂を5〜15重量部配合して用い
るのがさらに好ましい。
【0012】また、溶融紡糸するに際し、1ケのノズル
孔の断面積が0.5mm2以下のノズル孔から溶融・流
出せしめることができる。また、前記溶融紡糸するに際
し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノズ
ル孔から溶融・流出せしめ、300デニール以下の未延
伸糸を製造し、次いで、この未延伸糸に延伸処理、熱処
理を施して、100デニール以下の繊維とすることもで
きる。
【0013】本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を使用す
ることにより、溶融紡糸する際の樹脂温度を195℃以
下という比較的低い温度条件下で、ノズル圧力を押出機
の設計圧力である500Kg/cm2以下とし、1ケのノ
ズル孔の断面積が0.5mm2以下のノズル孔から、6.0
Kg/Hrs以上の押出量で溶融紡糸することが可能と
なり、優れた強伸度、収縮性を保持し、人毛に極めて類似
した半艶表面性、手触り触感性を備えた細繊度の塩化ビ
ニル系樹脂繊維を製造することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいう粘度平均重合度が850〜1700の塩化
ビニル系樹脂とは、従来公知の塩化ビニルの単独重合物
であるホモポリマー樹脂または従来公知の各種のコポリ
マー樹脂からなるものであり、特に限定されるものでは
ない。該コポリマー樹脂としては、従来公知のコポリマ
ー樹脂を使用でき、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー
樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニルコポリマー樹脂
など塩化ビニルとビニルエステル類とのコポリマー樹
脂、塩化ビニル−アクリル酸ブチルコポリマー樹脂、塩
化ビニル−アクリル酸2エチルヘキシルコポリマー樹脂
など塩化ビニルとアクリル酸エステル類とのコポリマー
樹脂、塩化ビニル−エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニ
ル−プロピレンコポリマー樹脂など塩化ビニルとオレフ
ィン類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリロニト
ルコポリマー樹脂などが代表的に例示される。特に好ま
しくは、塩化ビニル単独樹脂、エチレン−塩化ビニルコ
ポリマー樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー樹脂
である。
【0015】該コポリマー樹脂に於いて、コモノマーの
含有量は特に限定されず、成形加工性、糸特性などの要求
品質に応じて決めることができる。特に、コモノマーの
含有量は、2〜30%であることが好ましい。 本発明に使用する塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度
は、850〜1700であることが好ましく、850未
満であると、繊維の特性、特にカール保持性などが不十
分になりやすく好ましくない。逆に、1700を越える
と、溶融粘度が高くなる為、ノズル圧力が高くなり、押出
量を低く抑える必要があり好ましくない。これら成形加
工性と繊維特性とのバランスから、塩化ビニル単独樹脂
を使用する場合は、粘度平均重合度が850〜1450
の範囲が特に好ましく、コポリマーを使用する場合は、コ
モノマーの含有量にも依存するが、おおよそ粘度平均重
合度は、1000〜1700の範囲が特に好ましい。
【0016】また塩化ビニル系樹脂は、乳化重合、塊状
重合または懸濁重合などによって製造したものを使用で
きるが、繊維の初期着色性などを勘案して、懸濁重合によ
って製造したものを使用するのが好ましい。 本発明でいう塩素化塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニル
系樹脂を原料とし、これに塩素を付加反応せしめ、塩素含
有量を58〜72%に高めたものであり、本発明に於い
ては、主たる目的として、繊維の表面性、手触り触感をコ
ントロールし、熱収縮率を低下せしめる為に使用する。
【0017】本発明に使用する塩素化塩化ビニル系樹脂
の粘度平均重合度(原料塩化ビニル系樹脂の粘度平均重
合度)は、300〜1100であることが好ましい。該
粘度平均重合度が300未満であると、繊維の熱収縮率
を低下せしめることが不十分となる傾向がある。逆に、
該粘度平均重合度が、1100を越えると、溶融粘度が高
くなり、紡糸時のノズル圧力が高くなり、押出量を低く抑
える必要があるばかりでなく、溶融紡糸時の糸の破断(糸
切れ)の頻度が著しくなり、安定操業が困難となる傾向が
ある。特に好ましくは、粘度平均重合度は、500〜90
0のものが好ましい。
【0018】該塩素化塩化ビニル系樹脂の原料となる塩
化ビニル系樹脂は、前述の塩化ビニル系樹脂と同様であ
るが、塩化ビニルホモポリマー樹脂またはエチレン-塩化
ビニルコポリマー樹脂を原料として使用している場合が
特に好ましい。本発明に使用する塩素化塩化ビニル系樹
脂の塩素含有量は、58〜72%であることが好まし
い。該塩素含有量が、58%未満であると、繊維の熱収縮
率を低下せしめることが不十分となる傾向がある。逆
に、該塩素含有量が、72%を越えると溶融粘度が高くな
り、紡糸時のノズル圧力が高くなり、押出量を低く抑え
る必要があるばかりでなく、溶融紡糸時の糸切れ頻度が
著しくなり、安定操業が困難となる傾向がある。
【0019】本発明に於いては、塩化ビニル系樹脂と塩
素化塩化ビニル系樹脂の使用比率は(塩化ビニル系樹脂
/塩素化塩化ビニル系樹脂)=(100〜60重量%/
0〜40重量%)の塩化ビニル系混合物とすることが好
ましい。前記塩化ビニル系樹脂の比率が60重量%未満
となると、塩素化塩化ビニル系樹脂が過剰となり、溶融粘
度が高くなり、溶融紡糸時のノズル圧力が高くなるた
め、安全操業が困難になる傾向があり好ましくない。
尚、塩化ビニル系樹脂の比率が高い場合には熱収縮率の
高い繊維になる傾向があり、目的に応じて、使用比率は
適宜調整するのが好ましいが、特に(塩化ビニル系樹脂
/塩素化塩化ビニル系樹脂)=(90〜75重量%/1
0〜25重量%)の塩化ビニル系混合物とするのが好ま
しい。
【0020】本発明でいうノズル圧力低下剤とは、溶融
紡糸時のノズル圧力を低下せしめるのみならず、繊維の
表面の均一性をレベルアップして、平滑性を向上出来る
ものを含むものである。該ノズル圧力低下剤としては、
フタル酸系、トリメリット酸系、ピロメリット酸系、ポ
リエステル系から選択される1種または2種以上の可塑
剤が好ましい。エポキシ系可塑剤、アジピン酸系可塑
剤、シトロン酸系可塑剤などは、繊維の初期着色性が劣
ったり、ブリードして繊維表面に「ベトツキ感」がでてき
て好ましくない。
【0021】該可塑剤の添加量は、塩化ビニル系混合物
100重量部に対して、1〜8重量部が好ましい。該添
加量が1重量部未満であると、ノズル圧力低下効果が小
さく、好ましくない。逆に、8重量部を越えると、繊維
の熱収縮率が高くなるばかりでなく、溶融紡糸時に可塑
剤ミストの発生が著しくなる傾向があり好ましくない。
これら溶融紡糸時の挙動、繊維の熱収縮率などの品質と
のバランスから、特に好ましい可塑剤はイソノニルフタ
レート、ウンデシルフタレートなどのフタル酸系可塑
剤、トリオクチルトリメリテートなどのトリメリット酸
系可塑剤、テトラオクチルピロメリテートなどのピロメ
リット酸系可塑剤などが望ましい。
【0022】また、ノズル圧力低下剤としては粘度平均
重合度が、400〜850の塩化ビニル系樹脂が、より
好ましく、該塩化ビニル系樹脂は従来公知の塩化ビニル
の単独重合物であるホモポリマー樹脂または従来公知の
各種のコポリマー樹脂を用いることができ、特に限定さ
れるものではない。該樹脂を使用することで、表面凹凸
の均一性をレベルアップして、繊維表面の平滑性を向上
することができる。
【0023】該樹脂の粘度平均重合度が400未満であ
ると、繊維の熱収縮率が高くなる傾向があり、また溶融紡
糸時の塩ビ系混合物のゲル化・溶融状態が不均一となり、
糸切れ頻度が多くなる傾向があり好ましくない。逆に、
該樹脂の粘度平均重合度が850を越えると、ノズル圧
力低下効果がなく好ましくない。 該樹脂の添加量は、塩化ビニル系混合物100重量部に
対して、5〜35重量部使用するのが好ましい。使用量
が5重量部未満であるとノズル圧力低下効果が小さく、
35重量部を越えると繊維の熱収縮率が高くなり好まし
くない。
【0024】特に好ましくは、粘度平均重合度が600
〜850の塩化ビニルホモポリマーまたはエチレン−塩
化ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合樹
脂のうち1種以上の樹脂を5〜15重量部使用するのが
良い。さらに、ノズル圧力低下剤としては、塩ビ系混合
物100重量部に対して、フタル酸系可塑剤を1〜5重
量部および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニ
ル系樹脂を5〜15重量部併用すると溶融紡糸性能、繊
維品質、生産性などが高度にバランスされた範囲とな
る。
【0025】本発明でいう熱安定剤とは、従来公知の熱
安定剤を用いることができる。例えば、金属石鹸系熱安
定剤、錫系熱安定剤、Ca-Zn系熱安定剤、ハイドロ
タルサイト系熱安定剤、ゼオライト系熱安定剤などの熱
安定剤から1種または2種以上の熱安定剤を選択し、塩
化ビニル系混合物100重量部に対して、0.5〜5.0
重量部使用するのが好ましい。該熱安定剤は、成形時の
熱分解、ロングラン性、繊維の色調を改良する効果がある
が、特に好ましくは、紡糸時のノズル目脂(ノズル周囲
のスケール等をいう)発生量の比較的少ない錫系熱安定
剤が良く、中でもメルカプト錫系熱安定剤、マレエート
錫系熱安定剤、ラウレート錫系熱安定剤から、1種または
2種以上を使用するのが特に好ましい。例えば、ジメチ
ルスズメルカプト、ジブチルスズメルカプト、ジオクチル
スズメルカプトなどのメルカプト錫系熱安定剤、ジメチ
ルスズマレエート、ジブチルスズマレエート、ジオクチル
スズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマーな
どのマレエート錫系熱安定剤、ジメチルラウレート、スズ
ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレートな
どのラウレート錫系熱安定剤が例示される。
【0026】該熱安定剤の使用量が、0.5重量部未満
となると、成形時の熱分解防止効果が少なくなり好まし
くない。逆に5.0重量部を越えると、紡糸時のノズル目
脂発生が多くなり好ましくない。繊維の初期着色を抑制
し、顔料を含まないナチュラル組成物の白色度を高める
為には、メルカプト錫系熱安定剤を塩ビ系混合物100
重量部に対して、少なくとも0.1〜1.4重量部使用
し、他の熱安定剤と併用するのが特に好ましい。
【0027】本発明でいう滑剤とは、従来公知の滑剤を
用いることができ、例えば、金属石鹸系滑剤、ポリエチ
レン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系
滑剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワックス系滑剤
から選択される1種または2種以上の滑剤を塩化ビニル
系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部使
用するのが好ましい。
【0028】該滑剤は、組成物の溶融状態、ならびに組成
物と金属面との接着状態を制御する効果があり、繊維の
表面状態、触感、糸切れ頻度、ノズル目脂発生頻度、ノズル
圧力などに影響する。 比較的サラサラとした触感を得る為に、金属石鹸系滑剤
を使用するのが好ましい。特に、衛生上の観点から、カド
ミウム石鹸以外の金属石鹸が好ましい。例えば、Na,
Mg,Al,Ca,Baなどのステアレート、ラウレー
ト、パルミテート、オレエートなどの金属石鹸が例示され
る。特に好ましくは、該金属石鹸系滑剤を0.5〜2.0
重量部使用するのが良い。
【0029】ノズル目脂発生頻度を低下し、ノズル圧力
を低く抑える為には、ポリエチレン系滑剤を使用するの
が好ましく、従来公知のポリエチレン系滑剤を使用でき
るが、特に平均分子量が1500〜4000であり、密度
が0.91〜0.97の非酸化タイプまたはごくわずかに
極性を附加したタイプのポリエチレン系滑剤が好まし
い。特に好ましくは、該ポリエチレン系滑剤を0.1〜
1.3重量部使用するのが良い。
【0030】また、主として組成物の溶融状態を制御す
る為には、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系
滑剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワックス系滑剤
が好ましい。高級脂肪酸系滑剤としては、例えば、ステ
アリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプ
リン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸などの不飽和脂肪
酸またはこれらの混合物などが例示される。ペンタエリ
スリトール系滑剤としては、ペンタエリスリトールまた
はジペンタエリスリトールと高級脂肪酸とのモノエステ
ル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルまたはこ
れらの混合物などが例示される。高級アルコール系滑剤
としては、ステアリルアルコール、パルミチルアルコー
ル、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイ
ルアルコールなどが例示される。さらに、モンタン酸ワッ
クス系滑剤としては、モンタン酸とステアリルアルコー
ル、パルミチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウ
リルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコ
ールとのエステル類が例示される。
【0031】本発明に於いて、該滑剤系の特に好ましい
使用量の範囲は、塩化ビニル系混合物100重量部に対
して、カドミウム石鹸を含有しない金属石鹸系滑剤を0.
5〜3.0重量部、ポリエチレン系滑剤を0.1〜1.8重
量部、ペンタエリスリトール系滑剤を0.2〜1.0重量
部併用するのが特に好ましい。本発明に於いては、他に
目的に応じて、塩化ビニル系組成物に使用される公知の
配合剤、例えば、加工助剤、強化剤、紫外線吸収剤、酸化防
止剤、、帯電防止剤、充填剤、難燃剤、顔料などを使用する
ことができる。また、場合によっては、発泡剤、架橋剤、粘
着性付与剤、親水性付与剤、導電性付与剤、香料など特殊
な配合剤を使用することもできる。
【0032】前記加工助剤としては、公知のものを使用
できる。例えば、メチルメタクリレートを主成分とする
アクリル系加工助剤、または熱可塑性ポリエステルを主
成分とするポエステル系加工助剤などを使用できる。該
加工助剤の使用量としては、塩化ビニル系混合物100
重量部に対して、0.2〜12重量部程度が好ましい。ま
た、これらの加工助剤は、単独でも使用できるし、2種以
上を併用しても良い。
【0033】本発明に使用できる充填剤としては、公知
のものを使用できる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグ
ネシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化
マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、クレ
ーなどを使用できる。該充填剤の使用量としては、塩化
ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5重量部
程度が好ましい。また、これらの充填剤は、単独でも使用
できるし、2種以上を併用しても良い。
【0034】本発明に使用する塩化ビニル系樹脂組成物
は、従来公知の混合機、例えば、ヘンシェルミキサー、ス
ーパーミキサー、リボンブレンダーなどを使用して混合
してなるパウダーコンパウンド、またはこれを溶融混合
してなるペレットコンパウンドとして使用することがで
きる。 該パウダーコンパウンドの製造は、従来公知の通常の条
件で製造でき、ホットブレンドでもコールドブレンドで
も良い。特に好ましくは、組成物中の揮発分を減少する為
に、ブレンド時のカット温度を105〜155℃迄上げ
てなるホットブレンドを使用するのが良い。
【0035】該ペレットコンパウンドは、通常の塩化ビ
ニル系ペレットコンパウンドの製造と同様にして製造で
きる。例えば、単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカ
ル2軸押出機、同方向2軸押出機、コニーダー、プラネ
タリーギアー押出機、ロール混練り機などの混練り機を
使用して、ペレットコンパウンドとすることができる。
該ペレットコンパウンドを製造する際の条件は、特に限
定はされないが樹脂温度を185℃以下になる様に設定
することが特に好ましい。
【0036】また、該ペレットコンパウンド中に混入し
得る掃除用具の金属片などの異物を取り除く為に、目開
きの細かいステンレスメッシュなどを混練り機内に設置
したり、コールドカットの際、混入し得る「切り粉」な
どを除去する手段を取ったり、ホットカットを行うなど
の方法は自在に可能であるが、特に好ましくは、「切り
粉」混入の少ないホットカット法を使用するのが好まし
い。
【0037】本発明に於いて、塩化ビニル系樹脂組成物
を繊維状の未延伸糸にする際には、従来公知の押出機を
使用できる。例えば、単軸押出機、異方向2軸押出機、コ
ニカル2軸押出機などを使用できるが、例えば口径が3
5〜85mmφ程度の単軸押出機、または口径が35〜
50mmφ程度のコニカル押出機を使用するのが好まし
い。口径が大き過ぎると、押出量が多くなり、ノズル圧
力が過大になったり、未延伸糸の流出速度が早過ぎて、
巻取りが困難になる傾向があり好ましくない。
【0038】本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡
糸するに場合に於いては、1ケのノズル孔の断面積が、
0.5mm2以下のノズルをダイ先端部に取り付けて溶融
紡糸を行なうのが好ましい。該断面積が0.5mm2を越
えるノズルを使用すると、未延伸糸の繊度が太くなり、
細繊度の繊維を得る為には、延伸処理の際、延伸倍率を
大きくする必要がある。その為、延伸処理を施した後の
細繊度の繊維(延伸糸)に光沢が出て、半艶〜七部艶状態
を維持することが困難となる。また、繊維の触感が、ザラ
ザラとしたり、キラキラ感がでたり、あるいはプラスチッ
ク的な滑り触感になる傾向があり好まくない。
【0039】更に、未延伸糸の繊度を300デニール以
下にすることで、延伸後の繊維の艶を半艶〜七部艶状態
にすることが可能となる。該未延伸糸の繊度が300デ
ニールを越えると、細繊度の繊維を得る為には、延伸処
理の際に延伸倍率を大きくする必要がある。そのため、
延伸処理を施した後の細繊度の繊維(延伸糸)に光沢が出
て、半艶〜七部艶状態を維持することが困難となる。ま
た、プラスチック的な滑り触感になる傾向がある。
【0040】前記溶融紡糸で得られた未延伸糸に公知の
方法で延伸処理・熱処理を施して、100デニール以下
の細繊度の繊維とすることができる。頭髪装飾用の繊維
としては、25〜100デニールの範囲が特に好まし
い。また、人形用頭髪の繊維としては、10〜65デニ
ールの範囲が特に好ましい。延伸処理条件としては、延
伸処理温度70〜150℃の雰囲気下で、延伸倍率は、
200〜450%程度延伸することが特に好ましい。延
伸処理温度が70℃未満であると繊維の強度が低くなる
と共に、糸切れを発生し易く、150℃を越えると繊維
の触感がプラスチック的な滑り触感になる傾向があり好
ましくない。また、延伸倍率が200%未満であると繊
維の強度発現が不十分となりやすく、450%を越える
と延伸処理時に、糸切れを発生し易く好ましくない。
【0041】さらに、延伸処理を施した繊維に熱処理を
施して、2〜75%の緩和率で繊維を緩和処理すること
により熱収縮率を低下させることができる、また、繊維
表面の凹凸を整えて、人毛に類似した触感、半艶〜七部
艶表面とする為にも該緩和処理が好ましい。該緩和率の
範囲を外れると人工毛髪用繊維として、あるいはドール
ヘアー用繊維として、品質が低下する傾向があり好まし
くない。該熱処理は、延伸処理と連動して実施すること
もできるし、切り離して実施することもできる。熱処理
温度条件としては、雰囲気温度80〜150℃の雰囲気
下で実施することが特に好ましい。また本発明に於いて
は、従来公知の溶融紡糸に関わる技術、例えば、各種ノ
ズル断面形状に関わる技術、加熱筒に関わる技術、延伸
処理に関わる技術、熱処理に関わる技術などは、自在に
組み合わせて使用することが可能である。
【0042】
【実施例】次に、実施例をあげて、本発明のさらに詳細
に説明するが、これらの実施例は、本発明の適用限界を
明らかにする為に例示するものに過ぎず、本発明は、こ
れらの実施例のみに限定されるものではない。尚、表中
の組成物等は、次のように略記する。塩化ビニル樹脂:
「PVC」、塩素化塩化ビニル系樹脂:「CPVC」、
粘度平均重合度:「M」、また表2、4〜5における、
組成物での配合剤の数値は、PVCとCPVCの合計=
100重量部に対する各配合剤の重量部を表すものであ
る。
【0043】[実験1〜5(可塑剤添加量の効果)]塩化ビ
ニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、
次いで、可塑剤(ジイソノニルフタレート)の添加量を変
更しながら、表2に示す配合剤をそれぞれ計量して20
Lのヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しながら、内容物
の温度が125℃になる迄、攪拌・混合した。その後、冷却
水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら攪拌
・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却して、
塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。
【0044】該パウダーコンパウンドを表1(紡糸条件
1)に示す条件にて、溶融紡糸実験に供した。
【0045】
【表1】
【0046】溶融紡糸実験は、定常状態になってから、ス
クリュー回転数と押出量の関係を求め、押出量が7.5
Kg/Hrsになる様にスクリュー回転数を決定した。
ノズル圧力、ダイ圧計をノズル部に設置して測定した。
鉛直方向にノズルから溶融・流出したストランドを加熱
紡糸筒に導入し、ここで該ストランドを瞬間的に加熱溶
解し、ノズル直下約3mの位置に設置した引取機にて、未
延伸糸を一定速度で巻き取った。この際、該未延伸糸の
繊度が約168デニール程度になる様に引取速度を調節
した。
【0047】この未延伸糸を製造する段階で、糸切れの
発生状況を目視観察し、次の様に評価した。 [溶融紡糸時の糸切れ発生状況] ◎: 全く糸切れが発生しない ○:1時間に3回以内発生する △:1時間に4〜15回発生する またこの未延伸糸の着色状態を目視観察にて、次の様に
評価した。
【0048】[未延伸糸の着色状態] ◎:乳白色で黄色味がない ○:乳白色であるが、わずかに黄色味がある △:かなり強い黄色味がある 該未延伸糸を延伸・熱処理機に導入し、延伸処理、次いで、
熱緩和処理を行い、延伸糸を製造した。この際、熱緩和処
理は、30%緩和に固定し、延伸処理は最終の延伸糸の
繊度が68デニールになる様に延伸倍率を若干調整し
た。この延伸・熱処理時に発生する糸切れの発生状況を目
視観察し、次の様に評価した。
【0049】[延伸・熱処理時の糸切れ発生状況] ◎:全く糸切れが発生しない ○:1時間に3回以内発生する △:1時間に4〜15回発生する また、この延伸糸の表面艶・光沢を目視観察し、次の様に
評価した。
【0050】[延伸糸の艶状態] ◎(半艶状態):表面が平滑で、わずかに鈍い光沢があり、
半艶状態を示す ○(七部艶状態):表面が平滑で、鈍い光沢があり、七部艶
状態を示す ●(完全艶消状態):表面がザラザラで、光沢がなく、完全
艶消状態を示す ×(艶有状態): 表面が平滑で、全面的に光沢があり、輝
き感がある さらに、この延伸糸を手で触り、その手触り触感を、次の
様に評価した。
【0051】[延伸糸の触感] ◎:表面が平滑で、サラサラとした触感がある ○:表面が平滑で、かすかに湿った触感があるが、サラサ
ラ感がある △(サ゛ラサ゛ラ感):表面がザラザラで、ザラザラとした触感
がある ●(フ゜ラスチック感):表面が平滑で、プラスチック的触感があ
り、滑り触感がある またさらに、この延伸糸を指に数回巻き付け、その際の反
発力、触感、柔軟性を、次の様に評価した。
【0052】[延伸糸のしなやかさ] ◎:指にやわらかく、しなやかに巻き取ることができる ○:かすかに反発触感があるが、しなやかに巻き取るこ
とができる ●(コ゛ワコ゛ワ感):全体的に硬い感触で、かなり強い反発触
感がある △(サ゛ラサ゛ラ感):指にやわらかく巻けるが、ザラザラとし
た触感がある 該延伸糸を引張試験、熱収縮試験に供し、強度および熱収
縮率を求めた。尚、延伸糸の熱収縮率の測定は、100℃
の雰囲気温度で、25分熱収縮させ、計算は、次の様に行
なった。
【0053】[熱収縮率] (熱処理前の延伸糸長−熱処理後の延伸糸長)/熱処理
前の延伸糸長×100=熱収縮率(%) これらの評価結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】実験1〜5の比較から判る様に、可塑剤の
配合比率が1重量部未満であると繊維の品質は良好であ
るが、ノズル圧力が500Kg/cm2以上になり、押出機
の設計圧力を超える状態になり、安全な生産ができなく
なる傾向がある。一方、可塑剤の配合比率が8重量部を
越えると組成の溶融状態が不均一となり、溶融紡糸時、延
伸時の糸切れが著しくなる。また、繊維の表面がザラザラ
とした手触り触感になる。さらに、ノズル圧力を低下す
る為に、スクリュー回転数を低下すると、押出量が低下
して、溶融紡糸生産性が低下する。これらの実験から、ノ
ズル圧力と繊維品質のバランスが最適となる可塑剤の配
合比率は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、
1〜8重量部の領域が最適であることが判る。
【0056】[実験6〜10」(低重合度塩化ビニル系
樹脂の添加効果)]実験1〜5と同様に塩化ビニル系混合
物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、低重
合度塩化ビニル系樹脂の添加量を変更し、表4に示す配
合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサー
に投入し、攪拌しながら、内容物の温度が105℃になる
迄、攪拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサ
ーのジャケットに流しながら攪拌・混合を続け、内容物の
温度が70℃になる迄、冷却して、塩ビ系パウダーコンパ
ウンドを得た。尚、繊維の柔軟性を向上する為に、EVA
系樹脂(酢酸ビニル含有量=25%,メルトインデックス
=3)を使用した。該パウダーコンパウンドを表3(ペレ
ット条件)に示した条件にて、ペレットコンパウンド と
し、表1(紡糸条件1)と同様の条件にて、溶融紡糸実験に
供した。
【0057】
【表3】
【0058】該ペレットコンパウンドを、表1と同様の
条件にて、溶融紡糸実験を行った。溶融紡糸実験は、定
常状態になってから、スクリュー回転数と押出量の関係
を求め、押出量が7.2Kg/Hrsになる様に、スクリ
ュー回転数を決定した。ノズル圧力、樹脂温度は、ダイ
圧計ならびに樹脂温度センサーをノズル部に設置して測
定した。鉛直方向にノズルから溶融・流出したストラン
ドを加熱紡糸筒に導入し、ここで該ストランドを瞬間的
に加熱溶解し、ノズル直下、約3mの位置に設置した引取
機にて、未延伸糸を一定速度で巻き取った。この際、該
未延伸糸の繊度が約168デニール程度になる様に引取
速度を調節した。
【0059】また、その他の紡糸条件などは、実験1〜
5に示した方法と同様に行い、評価方法なども実験1〜
5に示した方法と全く同様に行なった。これらの評価結
果を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】実験6〜10の比較から判る様に、低重合
度塩化ビニル系樹脂の配合比率が5重量部未満であると
繊維の品質は良好であるが、ノズル圧力が500Kg/c
2以上になり、押出機の設計圧力を超える状態になり、
安全な生産ができなくなる。一方、可塑剤の配合比率が3
5重量部を越えるとノズル圧力は安全な領域を確保でき
るものの、繊維の熱収縮率が高くなる傾向にある。さら
に、ノズル圧力を低下する為に、スクリュー回転数を低下
すると、押出量が低下して、溶融紡糸生産性が低下する。
これらの実験から、ノズル圧力と繊維品質のバランスが
最適となる低重合度塩化ビニル系樹脂の配 合比率は、塩
化ビニル系混合物100重量部に対して、5〜35重量
部の領域が最適であることが判る。
【0062】[実験11〜15(低重合度塩化ビニル樹脂
と可塑剤の併用効果)]実験1〜5と同様、塩化ビニル系
混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、
低重合度塩化ビニル樹脂、可塑剤の添加量ならびに種類
を変更しながら、表5に示す配合剤をそれぞれ計量して、
20Lのヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しながら、内
容物の温度が115℃になる迄、攪拌・混合した。その後、
冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら
攪拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却
して、塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。
【0063】該パウダーコンパウンドを実験1〜5に示
した紡糸条件,延伸条件,加熱緩和処理条件と全く同様の
条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。また、実
験1〜5に示した試験方法、評価方法にて、未延伸糸、延
伸糸の評価を全く同様に行なった。評価結果を表5に示
す。
【0064】
【表5】
【0065】実験11〜15の比較から判る様に、低重
合度塩化ビニル樹脂と可塑剤を併用することにより、繊
維品質とノズル圧力のバランスの優れる領域を容易に得
ることができる。とりわけ、熱収縮率の点から、フタル
酸可塑剤(DINP)がもっとも良好な繊維品質となる。
【0066】
【発明の効果】以上のように、本発明の塩化ビニル系樹
脂組成物を用いれば、品質に優れ、人毛に極めて類似し
た七部〜半艶表面の手触り触感を兼ね備えた塩化ビニル
系繊維を得られ、また、本発明の製造法を用いれば、目
的の塩化ビニル系繊維を、高い紡糸生産性を維持しなが
ら、安全に製造することができる。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】粘度平均重合度が850〜1700の塩化
    ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系
    樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100
    重量部に対して、熱安定剤、滑剤、ならびに、ノズル圧
    力低下剤としてフタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可
    塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑
    剤、および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニ
    ル系樹脂から選択される1種または2種以上の可塑剤及
    び/または樹脂を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物
    からなることを特徴とする塩化ビニル系繊維。
  2. 【請求項2】ノズル圧力低下剤が、フタル酸系、トリメ
    リット酸系、ピロメリット酸系、ポリエステル系から選
    択される1種または2種以上の可塑剤であって、塩化ビ
    ニル系混合物100重量部に対して、1〜8重量部配合
    することを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系繊
    維。
  3. 【請求項3】ノズル圧力低下剤が、粘度平均重合度40
    0〜850の塩化ビニル系樹脂であって、塩化ビニル系
    混合物100重量部に対して、5〜35重量部配合する
    ことを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
  4. 【請求項4】ノズル圧力低下剤が、塩化ビニル系混合物
    100重量部に対してフタル酸系可塑剤を1〜5重量部
    および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系
    樹脂を5〜15重量部配合してなることを特徴とする請
    求項1記載の塩化ビニル系繊維。
  5. 【請求項5】粘度平均重合度が850〜1700の塩化
    ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系
    樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100
    重量部に対して、熱安定剤、滑剤、ならびに、ノズル圧
    力低下剤としてフタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可
    塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑
    剤、および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニ
    ル系樹脂から選択される1種または2種以上の可塑剤及
    び/または樹脂を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物
    を溶融紡糸することを特徴とする塩化ビニル系繊維の製
    造法。
  6. 【請求項6】ノズル圧力低下剤が、フタル酸系、トリメ
    リット酸系、ピロメリット酸系、ポリエステル系から選
    択される1種または2種以上の可塑剤であって、塩化ビ
    ニル系混合物100重量部に対して、1〜8重量部配合
    することを特徴とする請求項5記載の塩化ビニル系繊維
    の製造法。
  7. 【請求項7】ノズル圧力低下剤が、粘度平均重合度40
    0〜850の塩化ビニル系樹脂であって、塩化ビニル系
    混合物100重量部に対して、5〜35重量部配合する
    ことを特徴とする請求項5記載の塩化ビニル系繊維の製
    造法。
  8. 【請求項8】ノズル圧力低下剤が、塩化ビニル系混合物
    100重量部に対してフタル酸系可塑剤を1〜5重量部
    および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系
    樹脂を5〜15重量部配合してなることを特徴とする請
    求項5記載の塩化ビニル系繊維の製造法。
  9. 【請求項9】塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸するに
    際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノ
    ズル孔から溶融・流出せしめることを特徴とする請求項
    5〜8の何れかに記載の塩化ビニル系繊維の製造法。
  10. 【請求項10】塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸する
    に際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下の
    ノズル孔から溶融・流出せしめ、300デニール以下の
    未延伸糸を製造し、次いで、この未延伸糸に延伸処理、
    熱処理を施して、100デニール以下の繊維とすること
    を特徴とする請求項5〜8の何れかに記載の塩化ビニル
    系繊維の製造法。
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