JPH1161570A - 塩化ビニル系繊維、およびその製造方法 - Google Patents

塩化ビニル系繊維、およびその製造方法

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JPH1161570A
JPH1161570A JP21052397A JP21052397A JPH1161570A JP H1161570 A JPH1161570 A JP H1161570A JP 21052397 A JP21052397 A JP 21052397A JP 21052397 A JP21052397 A JP 21052397A JP H1161570 A JPH1161570 A JP H1161570A
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JP
Japan
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vinyl chloride
weight
parts
resin
lubricants
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JP21052397A
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English (en)
Inventor
Kazumasa Yamane
一正 山根
Hiroshi Yokoyama
浩 横山
Yuji Kubo
勇治 久保
Ikuro Okino
育郎 沖野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
Application filed by Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd filed Critical Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】人毛に極めて類似した七部艶〜半艶表面、手触
り触感を兼ね備えた細繊度の塩化ビニル系繊維およびそ
の製造方法を提供する 【解決手段】塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩
素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニ
ル系混合物100重量部に対して、(a)塩素化ポリエ
チレン系樹脂を2〜35重量部と(b)熱安定剤0.2
〜5.0重量部と(c)滑剤0.2〜5.0重量部を配合
してなる塩化ビニル系樹脂組成物からなる塩化ビニル系
繊維、および、前記樹脂組成物を溶融紡糸することを特
徴とする塩化ビニル系繊維の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、かつら、ヘア・
ピース、ブレード、エクステンションヘアー、アクセサ
リーヘアーなどの頭髪装飾用に用いられる人工毛髪、或
いはドールヘアー等の人形用頭髪繊維などとして使用さ
れる塩化ビニル系繊維、およびその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】塩化ビニル系樹脂を紡糸して繊維状にし
てなる塩化ビニル系繊維は、その優れた強度、伸度、カー
ル保持性、スタイル性などの故に、頭髪装飾用などの人工
毛髪用繊維として、あるいはドールヘアーなどの人形用
頭髪繊維として多量に使用されている。
【0003】従来、頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維と
して、細繊度(断面積が小さく、細い繊維)の繊維を工業
的に製造するには、一般的に塩化ビニル系樹脂に対する
溶媒を使用する湿式紡糸法、または乾式紡糸法によっ
て、細い繊度の塩化ビニル系繊維を製造する方法が工業
的に実施されている。しかしながら、該方法は、溶媒を
使用するが故に脱溶媒工程を必要とし、過大な設備投資
が必要であり、その設備の維持管理にも多数の人手を必
要とするという問題点がある。また、溶媒に対する溶解
性を向上するべく、アクリロニトリルなどのコモノマー
を共重合する為、繊維の初期着色性に弱点があり、乾燥
工程での熱によって黄色味の強い毛髪になり易いという
問題点、あるいは繊維のカール保持性が充分でないなど
の問題点がある。
【0004】一方、溶媒を使用しない紡糸方法としては
溶融紡糸法が知られているが、この方法によって、人毛
に極めて類似した半艶表面(艶の評価については、実施
例に評価基準を示した。)、触感の頭髪装飾用などの細
繊度の人工毛髪用繊維を得る為には、1ケの断面積が小
さいノズル孔(0.5mm2以下)から溶融・流出させ、
紡糸ドラフト比を小さくする(Dr比:25以下)のが
好ましい。すなわち、逆に大きな断面積のノズル孔から
溶融・流出させて、細繊度の塩化ビニル系繊維とする
と、必然的に紡糸ドラフト比を大きくする必要があり、
溶融紡糸時に未延伸糸が極端に引き伸ばされることにな
るため、この未延伸糸に延伸・熱処理を施してなる繊維
(延伸糸)表面が、平滑になり、光沢が出て、サラサラ触
感がなくなるなど頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維とし
ては不十分な繊維となる傾向があった。故に、頭髪装飾
用などの人工毛髪用繊維として品質的に優れた繊維を得
る為には、できる限り1ケの断面積が小さいノズル孔か
ら溶融・流出させ、紡糸ドラフト比を小さくするのが好
ましい。
【0005】しかしながら、従来は1ケの断面積が小さ
いノズル孔から流出させる場合には、ノズルにかかる圧
力が高くなり、押出機の設計圧力をオーバーしやすいと
いう問題や、その圧力を定格以下とするべく、押出量を
低くすると、溶融紡糸生産性が低下するという問題、あ
るいは溶融粘度を低くする為に、溶融紡糸温度を高く設
定すると、熱分解しやすくなったり、ロングラン性が劣
るような傾向があった。
【0006】故に、これらの問題を解決するべく、従来
から様々な提案がなされているが、十分な解決には至っ
ていない。例えば、特公昭51-2109号公報では、
塩素化塩化ビニル樹脂とメチルメタクリレート系樹脂を
使用することにより、曳糸性を向上するという提案があ
るが、比較的大きな断面から小さな断面へと引き伸ばし
て細繊度とする為、繊維表面が平滑になり光沢が発生し
やすく、人毛に類似した半艶表面からかけ離れたものに
なるばかりでなく、サラサラとした触感がなくなり、毛髪
用繊維として不十分であった。また、組成物の溶融粘度
を低下するべく、カドミウムや鉛を使用したCd-Pb系
の熱安定剤、滑剤を使用する方法が工業的に実施されて
いる。しかしこれらの配合剤を使用すると、ノズル圧力
の問題や溶融紡糸生産性の問題などは解決できるもの
の、初期着色が大きく、黄色味の強い毛髪になりやす
い。また、これらの配合剤は毒性が高く、製造上問題が
あるばかりでなく、頭髪装飾用として皮膚に触れる為に
安全衛生上の問題がある。また、これらの頭髪装飾用品
などが廃棄される場合、一般ゴミに混入して環境を汚染
するという問題もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の目的
は、従来公知のCd-Pb系の熱安定剤、滑剤を使用し
なくても、初期着色性を大幅に改善しつつ、人毛に極め
て類似した半艶表面、触感、柔軟性を保持し、また優れ
た強度、伸度、収縮性を保持した細繊度の塩化ビニル系繊
維を提供することにあり、第2の目的は、従来公知の錫
系安定剤を使用した塩化ビニル系繊維の品質課題である
プラチック的触感、キラキラ感のある表面性、ゴワゴワ
とした指巻き触感、熱収縮性などを改善し、安全に、か
つ安定的に生産できる細繊度の塩化ビニル系繊維および
その製造方法を提供することにある。さらに第3の目的
は、1ヶのノズル断面積が小さいノズル孔から溶融紡糸
する際の諸問題点を解決し、ノズル圧力と溶融紡糸生産
性を高度にバランスし、さらに、溶融紡糸温度と熱分解
・ロングラン性のバランスをレベルアップした細繊度の
塩化ビニル系繊維の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決する為の手段】本発明者らは、上記課題を
解決するべく、組成物の配合系、ノズル孔断面積、溶融紡
糸条件などについて、鋭意研究を重ねた結果、塩化ビニ
ル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂からなる塩化ビニル
系混合物に塩素化ポリエチレン系樹脂及び熱安定剤、及
び滑剤を特定範囲で配合した場合には、Cd−Pb系の
熱安定剤、滑剤等を使用しなくても人毛に極めて類似し
た半艶表面、触感等を保持し、前記品質問題を解決した
細繊度の繊維を溶融紡糸生産性を低下させることなく安
定的に得られることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0009】すなわち本発明は、塩化ビニル系樹脂10
0〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量
%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、
(a)塩素化ポリエチレン系樹脂を2〜35重量部と
(b)熱安定剤0.2〜5.0重量部と(c)滑剤0.2
〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物
からなることを特徴とする塩化ビニル系繊維であり、前
記熱安定剤(b)は錫系熱安定剤、Ca-Zn系熱安定
剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、ゼオライト系熱安
定剤、から選択される1種または2種以上を用いること
ができる、また前記滑剤(c)は金属石鹸系滑剤、ポリエ
チレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトー
ル系滑剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワックス
系滑剤、から選択される1種または2種以上を用いるこ
とができる。
【0010】また塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と
塩素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化
ビニル系混合物100重量部に対して、(a)塩素化ポ
リエチレン系樹脂を2〜35重量部と(b)メルカプト
錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレート錫系
熱安定剤から選択される1種または2種以上の熱安定剤
を0.2〜5.0重量部、と(c)金属石鹸系滑剤、ポリエ
チレン系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤から選択さ
れる1種または2種以上の滑剤を0.2〜5.0重量部を
配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いることがで
き、さらに、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、
(a)塩素化ポリエチレン系樹脂を2〜35重量部と
(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定
剤、ラウレート錫系熱安定剤から選択 される1種また
は2種以上の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と(c)金
属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ペンタエリスリトー
ル系滑剤から選択される1種または2種以上の滑剤を
0.2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組
成物を用いることもできる。
【0011】本発明にかかる塩化ビニル系樹脂は塩化ビ
ニル単独樹脂、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、酢酸ビ
ニル−塩化ビニル共重合樹脂、から選択される1種また
は2種以上の樹脂であり、かつ塩素化塩化ビニル系樹脂
が、原料塩化ビニル樹脂の重合度350〜1100を用
いて、塩素含有量を60〜70重量%にしたものを用い
ることができる。
【0012】一方、本発明の製造方法は、塩化ビニル系
樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜
40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に
対して、(a)塩素化ポリエチレン系樹脂を2〜35重
量部と(b)熱安定剤0.2〜5.0重量部と(c)滑剤
0.2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組
成物を溶融紡糸して塩化ビニル系繊維とすることができ
る。
【0013】前記熱安定剤(b)は錫系熱安定剤、Ca-Z
n系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、ゼオライ
ト系熱安定剤、から選択される1種または2種以上を用
いることができる、また、前記滑剤(c)は金属石鹸系滑
剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリ
スリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワ
ックス系滑剤、から選択される1種または2種以上用い
るができる。
【0014】また塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と
塩素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化
ビニル系混合物100重量部に対して、(a)塩素化ポ
リエチレン系樹脂を2〜35重量部と(b)メルカプト
錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレート錫系
熱安定剤から選択される1種または2種以上の熱安定剤
を0.2〜5.0重量部と(c)金属石鹸系滑剤、ポリエ
チレン系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤から選択さ
れる1種または2種以上の滑剤を0.2〜5.0重量部を
配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸して塩
化ビニル系繊維とすることができ、さらに、塩化ビニル
系樹脂100重量部に対して、(a)塩素化ポリエチレ
ン系樹脂を2〜35重量部と(b)メルカプト錫系熱安
定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレート錫系熱安定剤
から選択される1種または2種以上の熱安定剤を0.2
〜5.0重量部と(c)金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系
滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤から選択される1種
または2種以上の滑剤を0.2〜5.0重量部を配合して
なる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸して塩化ビニル
系繊維とすることもできる。
【0015】本発明の製造方法は、本発明の塩化ビニル
系樹脂組成物を溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の
断面積が0.5mm2以下のノズル孔から溶融・流出せし
めることができる。また、前記溶融紡糸するに際し、1
ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノズル孔から
溶融・流出せしめ、300デニール以下の未延伸糸を製
造し、次いで、この未延伸糸に延伸処理、熱処理を施し
て、100デニール以下の繊維とすることもできる。
【0016】さらに、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物
をノズル圧力500Kg/cm2以下、樹脂温度195℃
以下で、ノズル孔から溶融・流出せしめると同時に、紡糸
ドラフト比を25以下の条件下で、未延伸糸を引取る方
法も用いることができ、溶融紡糸のダイ先端部に使用す
るノズルに存在するノズル孔が、50〜300ケであり、
該ノズル孔が、円状、楕円状、長方形状、または正方形状に
配列され、隣接するノズル孔の中心間(異形断面形状に
あっては、該断面の重心間)の距離が、少なくとも、0.8
mm以上となる様に配列されているノズルを用いること
もできる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明に使用する塩化ビニル系樹
脂とは、従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモ
ポリマー樹脂、または従来公知の各種のコポリマー樹脂
であり、特に限定されるものではない。該コポリマー樹
脂としては、従来公知のコポリマー樹脂を使用でき、塩
化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、塩化ビニル−プ
ロピオン酸ビニルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとビ
ニルエステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アク
リル酸ブチルコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸
2エチルヘキシルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとア
クリル酸エステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−
エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピレンコポ
リマー樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類とのコポリ
マー樹脂、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー樹
脂などが代表的に例示される。特に好ましくは、塩化ビ
ニル単独樹脂、エチレン−塩化ビニルコポリマー樹脂、
酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー樹脂などを使用する
のが好ましい。該コポリマー樹脂に於いて、コモノマー
の含有量は特に限定されず、成形加工性、糸特性などの
要求品質に応じて決めることができる。特に好ましく
は、コモノマーの含有量は、2〜30%である。
【0018】本発明に使用する塩化ビニル系樹脂の粘度
平均重合度は、450〜1800であることが望まし
い。450未満であると、繊維の特性、特に熱収縮率、
カール保持性、艶状態などが劣る傾向があり好ましくな
い。逆に、1800を越えると、溶融粘度が高くなる
為、ノズル圧力が高くなり、安全な製造が困難になる傾
向がある。これら成形加工性と繊維特性とのバランスか
ら、塩化ビニル単独樹脂を使用する場合は、粘度平均重
合度が650〜1350の領域が特に好ましく、コポリ
マーを使用する場合は、コモノマーの含有量にも依存す
るが、粘度平均重合度は、1000〜1800の領域が
特に好ましい。
【0019】また本発明に使用する塩化ビニル系樹脂
は、乳化重合、塊状重合または懸濁重合などによって製
造したものを使用できるが、繊維の初期着色性などを勘
案して、懸濁重合によって製造したものを使用するのが
好ましい。本発明に使用する塩素化塩化ビニル系樹脂と
は、塩化ビニル系樹脂を原料とし、これに塩素を付加反
応せしめ、塩素含有量を58〜72重量%に高めたもの
を使用するのが好ましいが、さらに好ましくは、60〜
70重量%であり、主たる目的として、繊維の熱収縮率
を低下せしめる為に使用することができる。また該塩素
化塩化ビニル系樹脂は、粘度平均重合度(原料塩化ビニ
ル系樹脂の粘度平均重合度)が350〜1100である
ことが好ましい。該粘度平均重合度が350未満である
と、繊維の熱収縮率を低下せしめる効果が小さくなるの
で収縮率のやや高い繊維となる。逆に、該粘度平均重合
度が1100を越えると、溶融粘度が高くなり、紡糸時
のノズル圧力が高くなるため、安全操業が困難になるば
かりでなく、溶融紡糸時の糸の破断(糸切れ)の頻度が
著しくなり、安定操業が困難になる傾向がある。特に好
ましくは、粘度平均重合度は、500〜900のものが良
い。また、前記塩素含有量については、58%未満であ
ると繊維の熱収縮率を低下せしめる効果が小さくなり、
逆に72%を越えると、溶融粘度が高くなって安定操業
が困難となる傾向があり好ましくない。
【0020】該塩素化塩化ビニル系樹脂の原料となる塩
化ビニル系樹脂は、前述の塩化ビニル系樹脂と同様であ
るが、塩化ビニルホモポリマー樹脂またはエチレン−塩
化ビニルコポリマー樹脂を原料として使用している場合
が、特に好ましい。 本発明に於いては、塩化ビニル系樹脂と塩素化塩化ビニ
ル系樹脂の使用比率は、(塩化ビニル/塩素化塩化ビニ
ル)=(100〜60重量%/0〜40重量%)の塩化
ビニル系混合物とすることが好ましい。更に好ましく
は、(塩化ビニル/塩素化塩化ビニル)=(90〜75
重量%/10〜25重量%)である。前記塩化ビニルが
60重量%未満であると塩素化塩化ビニル系樹脂が過剰
となるため、溶融粘度が高くなり、溶融紡糸時のノズル
圧力が高くなって、安全操業が困難になる傾向があり好
ましくない。尚、塩化ビニル系樹脂の比率が高い場合に
は、熱収縮率の高い繊維になる傾向があり、目的に応じ
て、使用比率は適宜調整して用いることができる。
【0021】本発明に於いては、主たる目的として、繊維
の柔軟性を高め、柔らかで、しなやかで、かつ、サラサ
ラとした触感の繊維とする為に、塩化ビニル系混合物1
00重量部に対して、塩素化ポリエチレン系樹脂を2〜
35重量部添加配合して使用するのが好ましい。また該
樹脂は、副次的には、該組成物のゲル化・溶融性を調節
し、均一で適度な溶融状態を醸し出し、適度なノズル圧
力を可能とする効果がある。
【0022】前記塩素化ポリエチレン系樹脂の使用量が
2重量部未満となると、繊維柔軟性改良効果が希薄にな
るばかりでなく、ゲル化・溶融性調節機能が低下し、ノ
ズル圧力が上昇したりする傾向がある。逆に35重量部
を越えると、組成物のゲル化・溶融性調節機能が低下
し、不均一なゲル化・溶融状態になるため、未延伸糸内
に「ブツ」状物(「ブツ」状物とは、未溶融粒子、また
は、剪断応力によって崩壊しなかった粒子をいう)が多
くなって溶融紡糸時あるいは延伸・熱処理時の糸切れ頻
度が多くなる傾向があり好ましくない。
【0023】本発明でいう塩素化ポリエチレン系樹脂と
は、従来公知の塩素含有量が15〜45重量%の塩素化
ポリエチレン樹脂またはこれらの塩素化ポリエチレン樹
脂(以下、CPE樹脂という。)に塩化ビニルをグラフ
ト重合してなるCPE-塩化ビニルグラフトポリマー樹
脂を意味する。 CPE-塩化ビニルグラフトポリマー樹脂は、水性媒体中
で塩化ビニルを懸濁重合または 乳化重合する際、CP
E樹脂を重合系に添加して、重合を進めることによって
容易に得られる。該樹脂は、溶媒による分別により、CP
E樹脂成分、ポリ塩化ビニル樹脂成分、およびCPE樹脂
成分に塩化ビニルが化学的に結合してなるCPE-塩化
ビニルグラフトポリマー成分の混合物である。
【0024】本発明に於いては、従来公知のCPE樹脂
を使用できるが、好ましくは、塩素含有量が15〜45
%のCPE樹脂を使用することができる。塩素含有量が
15%未満または45%を越えると、組成物系との相溶
性が低下する傾向があり、組成物のゲル化・溶融性調節
機能が低下し、不均一なゲル化・溶融状態になりやす
く、未延伸糸内に「ブツ」状物が多くなって、溶融紡糸
時あるいは延伸・熱処理時の糸切れ頻度が多くなる傾向
となり好ましくない。さらに、塩素含有量が45%越え
る場合には、繊維柔軟性改良効果が不十分となる傾向が
あり好ましくない。
【0025】本発明に使用するCPE樹脂を製造する際
の原料ポリエチレンの重量平均分子量は、30000〜
350000程度の範囲が好ましい。該分子量が300
00未満であると、該樹脂の粘度が低下する傾向にあ
り、塩化ビニル系混合物成分の溶融が不十分となりやす
く好ましくない。逆に、該分子量が350000を越え
ると、該樹脂成分の溶融粘度が高くなり、溶融紡糸時の
ノズル圧力が高くなりやすく、好ましくない。
【0026】本発明に使用できるCPE-塩化ビニルグ
ラフトポリマー樹脂は、CPE成分含有量が3〜45重
量%の範囲のものが特に好ましい。該含有量が3%未満
であると、繊維柔軟性改良効果が不十分となる傾向があ
り、45重量%を越えると、組成物のゲル化・溶融性調
節機能が低下する傾向があり好ましくない。 本発明に使用する熱安定剤は従来公知のものが使用でき
るが、中でも錫系熱安定剤、Ca-Zn系熱安定剤、ハ
イドロタルサイト系熱安定剤、ゼオライト系熱安定剤か
ら選択される1種または2種以上の熱安定剤を0.2〜
5.0重量部使用するのが好ましい。該熱安定剤は、成
形時の熱分解、ロングラン性、繊維の色調を改良する為
に使用することができ、特に好ましくは、紡糸時のノズ
ル周囲に発生するスケール(以下、ノズル目脂と略記す
る。)発生量の比較的少ない錫系熱安定剤が良く、中で
もメルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、
ラウレート錫系熱安定剤から1種または2種以上を使用
するのが良い。例えば、ジメチルスズメルカプト、ジブ
チルスズメルカプト、ジオクチルスズメルカプトなどの
メルカプト錫系熱安定剤、ジメチルスズマレエート、ジ
ブチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエート、ジ
オクチルスズマレエートポリマーなどのマレエート錫系
熱安定剤、ジメチルラウレート、ジブチルスズラウレー
ト、ジオクチルスズラウレートなどのラウレート錫系熱
安定剤が例示される。
【0027】繊維の初期着色を抑制し、顔料を含まない
ナチュラル組成物の白色度を高める為には、メルカプト
錫系熱安定剤を塩化ビニル系混合物100重量部に対し
て、少なくとも0.1〜1.4重量部使用し、他の熱安定
剤と併用して合計が、塩化ビニル系混合物100重量部
に対して、0.2〜5.0重量部の範囲とするのが特に好
ましい。該熱安定剤の使用量は、0.2〜5.0重量部で
あるが、0.2重量部未満となると、成形時の熱分解防止
効果が低下する傾向がある。逆に、5.0重量部を越え
ると、紡糸時のノズル目脂発生が多くなり、紡糸時の流
出変動発生が大となりやすく、好ましくない。
【0028】本発明に使用する滑剤は、従来公知のもの
を用いることができるが、特に金属石鹸系滑剤、ポリエ
チレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトー
ル系滑剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワックス
系滑剤から選択される1種または2種以上を塩化ビニル
系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部使
用するのが好ましい。該滑剤は、組成物の溶融状態、な
らびに組成物と金属面との接着状態を制御する為に有効
であり、繊維の表面状態、触感、糸切れ頻度、ノズル目
脂発生頻度、ノズル圧力などに大きく影響する。
【0029】比較的サラサラとした触感を得る為には、
金属石鹸系滑剤を使用するのが好ましい。また、衛生上
の観点から、カドミウム、鉛以外の金属石鹸が特に好ま
しい。例えば、Na,Mg,Al,Ca,Baなどのス
テアレート、ラウレート、パルミテート、オレエートな
どの金属石鹸が例示される。また、ノズル目脂発生頻度
を低下し、ノズル圧力を低く抑える為には、ポリエチレ
ン系滑剤を使用するのが好ましく、従来公知のポリエチ
レン系滑剤を使用できるが、特に好ましくは、平均分子
量が1500〜4000であり、密度が0.91〜0.9
7の非酸化タイプまたはごくわずかに極性を附加したタ
イプのポリエチレン系滑剤が特に好ましい。該ポリエチ
レン系滑剤は0.2〜1.3重量部の範囲で使用するのが
特に好ましい。
【0030】本発明に於いては、高級脂肪酸系滑剤、ペ
ンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、モ
ンタン酸ワックス系滑剤は、主として組成物の溶融状態
を制御する為に使用することができる。高級脂肪酸系滑
剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミ
リスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸などの飽和脂肪
酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸、またはこれらの混
合物などが例示される。ペンタエリスリトール系滑剤と
しては、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリ
トールと高級脂肪酸とのモノエステル、ジエステル、ト
リエステル、テトラエステル、またはこれらの混合物な
どが例示される。高級アルコール系滑剤としては、ステ
アリルアルコール、パルミチルアルコール、ミリスチル
アルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール
などが例示される。さらに、モンタン酸ワックス系滑剤
としては、モンタン酸とステアリルアルコール、パルミ
チルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアル
コール、オレイルアルコールなどの高級アルコールとの
エステル類が例示される。
【0031】前記滑剤系の特に好ましい使用量の範囲
は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、金属石
鹸系滑剤であれば0.5〜3.0重量部、ポリエチレン系
滑剤であれば0.2〜1.8重量部、ペンタエリスリトー
ル系滑剤であれば0.2〜1.0重量部併用するのが特に
好ましい。本発明に於ける塩化ビニル系樹脂組成物は、
塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニ
ル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物1
00重量部に対して、(a)CPE系樹脂を2〜35重
量部と(b)熱安定剤0.2〜5.0重量部と(c)滑剤
0.2〜5.0重量部を配合してなるものの他、塩化ビニ
ル系樹脂90〜75重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂1
0〜25重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量
部に対して、(a)CPE系樹脂を2〜35重量部と
(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定
剤、ラウレート錫系熱安定剤から選択される1種または
2種以上の熱安定剤を0.2〜5.0重量部、と(c)金
属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ペンタエリスリトー
ル系滑剤から選択される1種または2種以上の滑剤を
0.2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組
成物を用いることができる。
【0032】前記樹脂組成物は、糸切れの発生が少な
く、安定した製造ができ、品質とのバランスがとれる点
で好ましい。また、塩化ビニル系樹脂100重量部に対
して、(a)CPE系樹脂を2〜35重量部と(b)メ
ルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレ
ート錫系熱安定剤から選択 される1種または2種以上
の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と(c)金属石鹸系滑
剤、ポリエチレン系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤か
ら選択される1種または2種以上の滑剤を0.2〜5.0
重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物も用いる
ことができる。
【0033】前記樹脂組成物は、繊維の熱収縮率がやや
高くなる傾向にあるが、製造は、より安定する利点があ
り、収縮率が高いものを好む用途には好ましい。本発明
に於いては、目的に応じて、塩化ビニル系組成物に使用
される公知の配合剤、例えば、加工助剤、強化剤、紫外
線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、充填剤、
難燃剤、顔料などを使用することができる。また、場合
によっては、発泡剤、架橋剤、粘着性付与剤、親水性付
与剤、導電性付与剤、香料など特殊な配合剤を適宜使用
することも可能である。
【0034】前記加工助剤としては、例えば、メチルメタ
クリレートを主成分とするアクリル系加工助剤、または
熱可塑性ポリエステルを主成分とするポリエステル系加
工助剤などが挙げられる。該加工助剤の使用量として
は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2
〜12重量部程度が好ましい。また、これらの加工助剤
は単独でも使用できるし、2種以上を併用しても良い。
【0035】本発明に使用できる充填剤としては、例え
ば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウ
ム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ア
ルミニウム、タルク、マイカ、クレーなどが挙げられ
る。該充填剤の使用量としては、塩化ビニル系混合物1
00重量部に対して、0.2〜5.0重量部程度が好まし
い。また、これらの充填剤は単独でも使用できるし、2
種以上を併用しても良い。
【0036】本発明に使用できる可塑剤としては、例え
ば、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレ
ート、ジイソノニルフタレートなどのフタル酸系可塑
剤、オクチルトリメリテートなどのトリメリット酸系可
塑剤、オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸系
可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤など
を使用できる。該可塑剤の使用量としては、塩化ビニル
系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部程
度が好ましい。また、これらの可塑剤は単独でも使用で
きるし、2種以上を併用しても良い。
【0037】本発明に使用する塩化ビニル系樹脂組成物
は、従来公知の混合機、例えばヘンシェルミキサー、ス
ーパーミキサー、リボンブレンダーなどを使用して混合
してなるパウダーコンパウンド、またはこれを溶融混合
してなるペレットコンパウンドとして使用することがで
きる。該パウダーコンパウンドの製造は、従来公知の通
常の条件で製造でき、ホットブレンドでもコールドブレ
ンドでも良い。特に好ましくは、組成物中の揮発分を減
少する為に、ブレンド時のカット温度を105〜155
℃迄上げてなるホットブレンドを使用するのが良い。該
ペレットコンパウンドは、通常の塩化ビニル系ペレット
コンパウンドの製造と同様にして製造できる。例えば、
単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押出機、
同方向2軸押出機、コニーダー、プラネタリーギアー押
出機、ロール混練り機などの混練り機を使用してペレッ
トコンパウンドとすることができる。該ペレットコンパ
ウンドを製造する際の条件は、特に限定はされないが、
樹脂温度を185℃以下になる様に設定することが好ま
しい。また、該ペレットコンパウンド中に混入し得る掃
除用具の金属片などの異物を取り除く為に、目開きの細
かいステンレスメッシュなどを混練り機内に設置した
り、コールドカットの際に混入し得る「切り粉」などを除
去する手段を取ったり、ホツトカットを行なうなどの方
法は自在に可能であるが、特に好ましくは、「切り粉」混
入の少ないホツトカット法を使用するのが好ましい。
【0038】前記塩化ビニル系樹脂組成物を繊維状の未
延伸糸にする際には、従来公知の押出機を使用できる。
例えば単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押
出機などを使用できるが、特に好ましくは、口径が35
〜85mmφ程度の単軸押出機または口径が35〜50
mmφ程度のコニカル押出機を使用するのが良い。口径
が過大になると、押出量が多くなり、ノズル圧力が過大
になったり、未延伸糸の流出速度が早過ぎて、巻取りが
困難になる傾向があり好ましくない。
【0039】本発明に於いては、1ケのノズル孔の断面
積が、0.5mm2以下のノズルをダイ先端部に取り付け
て溶融紡糸を行なうのが好ましい。該断面積が、0.5
mm2を越えるノズルを使用すると、未延伸糸の繊度が
太くなり、細繊度の繊維を得る為には、延伸処理の際に
延伸倍率を大きくをする必要がある。その為、延伸処理
を施した後の細繊度の繊維(延伸糸)に光沢が出て、半艶
〜七部艶状態を維持することが困難となる。また、繊維
の触感がザラザラとしたり、キラキラ感が出たり、ある
いはプラスチック的な滑り触感になる傾向があり好まく
ない。
【0040】該ノズルに存在するノズル孔の配列、位置
関係は、巻取りの容易さに大きく関係する。特に好まし
い配列数は、1〜5列であり、これ以上になるとダイ内
の溶融物の流動速度差が大きくなり、流出速度分布が拡
がり、未延伸糸の「泳ぎ」が大きくなる傾向があり好まし
くない。また、該ノズル孔の配列形状は、円状、楕円
状、または4角以上の多角形状であることが望ましい。
三角形状であると、ダイ内の溶融物の流動速度差が大き
くなり、流出速度分布が拡がり、未延伸糸の「泳ぎ」が大
きくなる傾向となり好ましくない。さらに、1ケのノズ
ルに存在するノズル孔の数は、50〜300であること
が好ましい。ノズル孔の数が少な過ぎると生産性が低下
し、逆に多過ぎると、「糸切れ」などのトラブル発生確率
が高くなり好ましくない。
【0041】本発明に於いては、隣接するノズル孔の中
心間(異形断面にあっては、該断面の重心間)の距離
が、少なくとも、0.8mm以上となる様に配置するのが
好ましい。該距離が、0.8mm未満であると溶融紡糸
する際、未延伸糸同志の接触頻度が多くなり、糸切れの原
因になり好ましくない。また、該距離が長過ぎるとノズ
ルそのものが大きなものとなって重くなったり、ノズル
に配置する孔数が少なくなり加工生産性が低下したりし
て好ましくない。特に好ましい範囲は、0.8〜3.8m
mの範囲である。 本発明に於いては、未延伸糸の繊度を300デニール以
下しておくことが好ましい。該未延伸糸の繊度が300
デニールを越えると、細繊度の繊維を得る為には、延伸
処理の際に延伸倍率を大きくをする必要があるので、延
伸処理を施した後の細繊度の繊維(延伸糸)に光沢が出
て、半艶〜七部艶状態を維持することが困難となる。ま
た、プラスチック的な滑り触感になる傾向がある。また、
溶融紡糸の際、ノズル圧力は500Kg/cm2以下で紡
糸するのが好ましい。ノズル圧力が500Kg/cm2
越えると、押出機のスラスト部にかかる負荷が過大にな
り、押出機に不具合を発生し易くなり好ましくない。ノ
ズル圧力は、スクリュー回転数あるいはフィード量を変
更して、押出量を制御することでコントロールするのが
品質に影響が少なく好ましい。しかしながら、押出量を
減少すると生産性が低下する為、このバランスから、4
80〜300Kg/cm2の範囲が特に好ましい。 ノ
ズル圧力を低下するには、金属面との滑り効果の高い滑
剤を使用したり、多量の溶融粘度低下剤、例えば、可塑
剤、高分子可塑剤などを使用することの可能であるが、
この様な手段によって、ノズル圧力を200Kg/cm2
以下にすると組成物形のゲル化・溶融状態が極めて不均
一になり、糸切れ頻度が多くなり、製造が困難になると
共に、艶状態、触感などの品質が不十分な繊維となる傾
向がある。故に前記した様な押し出し量の制御による圧
力コントロールが好ましい。
【0042】溶融紡糸の際、ノズル孔から溶融・流出し
たストランドは、300デニール以下の未延伸糸に引き
伸ばされるが、その際のドラフト比は、25以下である
ことが特に好ましい。該ドラフト比が25を越えると、
未延伸糸の時点で表面が過剰に引き伸ばされている為、
延伸処理を施した後の細繊度の繊維に光沢が出て、半艶
〜七部艶状態を維持することが困難となる傾向がある。
また、プラスチック的な滑り触感になる傾向がある。ま
た、樹脂温度は195℃以下で紡糸することが好まし
い。195℃を越えた温度で紡糸すると繊維の着色傾向
が顕著となり、黄色味の強い繊維となりやすく好ましく
ない。その為、シリンダー温度を150〜185℃程度
とし、ダイ温度を160〜190℃程度とすることが特
に好ましい。
【0043】以上の様に、本発明に於いては、溶融紡糸
の際、1ケのノズル孔の断面積が、0.5mm2以下のノズ
ルを使用して、かつ、300デニール以下の未延伸糸を
製造するのが好ましい。特に、樹脂温度は195℃以
下、ドラフト比を25以下、ノズル圧力を500Kg/
cm2以下、ノズル孔数は、50〜300とし、ノズル配
列形状は、円状、楕円状、または4角以上の多角形状とし、
ノズル配列数は1〜5として行なうのが特に優れた方法
である。
【0044】前記溶融紡糸で得られた未延伸糸に公知の
方法で延伸処理・熱処理を施して、100デニール以下
の細繊度の繊維(延伸糸)とすることができる。頭髪装
飾用の繊維としては、25〜100デニールの範囲が特
に好ましく、また、人形用頭髪の繊維としては、10〜6
5デニールの範囲が特に好ましい。延伸処理条件として
は、延伸処理温度70〜150℃の雰囲気下で、延伸倍
率は、200〜450%程度とすることが特に好まし
い。延伸処理温度が70℃未満であると繊維の強度が低
くなると共に、糸切れを発生し易く、逆に150℃を越
えると繊維の触感がプラスチック的な滑り触感になり好
ましくない。また、延伸倍率が200%未満であると繊
維の強度発現が不十分となり、450%を越えると延伸
処理時に、糸切れを発生し易く好ましくない。
【0045】さらに、延伸処理を施した繊維に熱処理を
施して、2〜75%の緩和率で繊維を緩和処理すること
により、熱収縮率を低下させることができる。また、繊
維表面の凹凸を整えて、人毛に類似した触感、半艶〜七
部艶表面とする為にも該緩和処理が好ましい。該緩和率
の範囲を外れると人工毛髪用繊維として、あるいは人形
用頭髪繊維として、品質が低下する傾向があり好ましく
ない。該熱処理は、延伸処理と連動して実施することも
できるし、切り離して実施することもできるが、条件と
しては、雰囲気温度80〜150℃で実施することが好
ましく、緩和率は、2〜75%の範囲で、また、加熱処
理機への延伸糸の供給速度は、0.5〜8m/分で行う
のが好ましい。また本発明に於いては、従来公知の溶融
紡糸に関わる技術、例えば、各種ノズル断面形状に関わ
る技術、加熱筒に関わる技術、延伸処理に関わる技術、
熱処理に関わる技術などは、自在に組み合わせて使用す
ることが可能である。
【0046】
【実施例】次に、実施例をあげて、本発明の詳細な態様を
明らかにするが、本発明はこれらの実施例のみに限定さ
れるものではない。 尚、表中の組成物表示等は、次のように略記する。塩化
ビニル樹脂:「PVC」、塩素化塩化ビニル系樹脂:
「CPVC」、塩素化ポリエチレン系樹脂:「CPE系
樹脂」、粘度平均重合度:「M」、塩素含有量:「CL
含有量」、ポリエチレン分子量:「Mp」。また表2、
4〜5、7、9〜10における、組成物での配合剤の数
値は、PVCとCPVCの合計=100重量部に対する
各配合剤の重量部を表すものである。尚、各数値に付し
た「%」表示は、特に断りのない限り、重量%を表す。
【0047】[実験1〜5(PVC/CPVCの配合比
率)]塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様
に計量し、次いで、表2に示す配合剤をそれぞれ計量し
て、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しなが
ら、内容物の温度が125℃になる迄、攪拌・混合した。
その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流
しながら攪拌・混合を続け、内容物の温度が75℃にな
る迄、冷却して、塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。
尚、CPE系樹脂は、塩素(CL)含有量が35%、原
料ポリエチレンの分子量(Mp)が170000のもの
を使用した。該パウダーコンパウンドを表1(紡糸条件
1)に示す条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供し
た。
【0048】
【表1】
【0049】溶融紡糸実験は、定常状態になってから、ス
クリュー回転数と押出量の関係を求め、押出量が6.5
Kg/Hrsになる様にスクリュー回転数を決定した。
ノズル圧力、樹脂温度は、 ダイ圧計、樹脂温度センサーを
それぞれノズル部に設置して測定した。 鉛直方向に、ノズルから溶融・流出したストランドを加熱
紡糸筒に導入し、ここで該ストランドを瞬間的に加熱溶
解し、ノズル直下約3mの位置に設置した引取機にて、未
延伸糸を一定速度で巻き取った。この際、該未延伸糸の
繊度が約165〜185デニールになる様に引取速度を
調節した。この未延伸糸を製造する段階で、糸切れの発
生状況を目視観察し、次の様に評価した。 [溶融紡糸時の糸切れ発生状況] ◎:全く糸切れが発生しない。 ○:1時間に3回以内発生する。 △:1時間に4〜15回発生する。
【0050】また、この未延伸糸の着色状態を目視観察
にて、次の様に評価した。 [未延伸糸の着色状態] ◎:乳白色で黄色味がない。 ○:乳白色であるが、わずかに黄色味がある。 △:かなり強い黄色味がある。
【0051】該未延伸糸を延伸・熱処理機に導入し、延伸
処理、次いで、熱緩和処理を行い、延伸糸を製造した。こ
の際、熱緩和処理は、25%緩和に固定し、延伸処理は、最
終の延伸糸の繊度が、65〜75デニールになる様に延
伸倍率を若干調整した。この延伸・熱処理時に発生する
糸切れの発生状況を目視観察し、次の様に評価した。 [延伸・熱処理時の糸切れ発生状況] ◎:全く糸切れが発生しない。 ○:1時間に3回以内発生する。 △:1時間に4〜15回発生する。
【0052】また、この延伸糸の表面艶・光沢を目視観察
し、次の様に評価した。 [延伸糸の艶状態] ◎(半艶状態):表面が平滑で、わずかに鈍い光沢があ
る。 ○(七部艶状態):表面が平滑で、鈍い光沢がある。 ●(完全艶消状態):表面がザラザラで、光沢がない。 △(八分艶状態):表面がザラザラで、局部的に光沢があ
り、キラキラ感がある。 ×(艶有状態):表面が平滑で、全面的に光沢があり、輝き
感がある。
【0053】さらに、この延伸糸を手で触り、その手触り
触感を、次の様に評価した。 [延伸糸の触感] ◎:表面が平滑で、サラサラとした触感がある。 ○:表面が平滑で、かすかに湿った触感があるが、サラサ
ラ感がある。 △(サ゛ラサ゛ラ感):表面がザラザラで、ザラザラとした触感
がある。 ●(フ゜ラスチック感):表面が平滑で、プラスチック的触感があ
り、滑り触感がある。
【0054】またさらに、この延伸糸を指に数回巻き付
け、その際の反発力、触感、柔軟性を、次の様に評価した。 [延伸糸のしなやかさ] ◎:指にやわらかく、しなやかに巻き取ることができ
る。 ○:かすかに反発触感があるが、しなやかに巻き取るこ
とができる。 △:指にやわらかく巻けるが、ザラザラとした触感があ
る。 ●:全体的に硬い感触で、かなり強い反発触感(ゴワゴ
ワ感)がある。 該延伸糸を引張試験、熱収縮試験に供し、強度および熱収
縮率を求めた。尚、延伸糸の熱収縮率の測定は、100℃
の雰囲気温度で、25分熱収縮させ、計算は、次の様に行
なった。 (熱処理前の延伸糸長−熱処理後の延伸糸長)/熱処理
前の延伸糸長さ×100=熱収縮率(%) また、バウンシー性の評価は、次の様にして行なった。一
定長さに切断した延伸糸を50mmφのステンレス筒に
巻き付け乍ら固定し、100 ℃のオーブン中で15分間
加熱し、次いで、23℃の冷水中に、該ステンレス筒を投
入して、繊維をクウェンチし、繊維にカールセットを施し
た。カールセットした繊維束を乾燥後、23℃,相対湿度
50%の恒温室中に吊り下げた。、該繊維束の下端を手の
ひらで支え、約15cm持ち上げ、手の支えを取り除き、
該繊維束の振幅状態を目視にて観察し、次の様に評価 し
た。 [バウンシー性] ◎:適度にやわらかいバネ的に、振幅が長く続く ○:適度にやわらかいバネ的だが、振幅が比較的長く続
く △:適度にやわらかいバネ的だが、振幅がすぐに終息し
て垂れる ×:硬い感じのバネ的である。 これらの評価結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】実験1〜5の比較から判る様に、塩素化塩
化ビニル樹脂の配合比率が、40重量%を越えるとノズ
ル圧力が500Kg/cm2以上になり、押出機の設計圧
力を超える状態になり、安全な生産が困難となる。ま
た、スクリュー回転数を低下すると、押出量が低下し、生
産性が低下する傾向にある。また、塩素化塩化ビニル樹
脂の配合比率が、40重量%を越えると、溶融紡糸時の糸
切れが頻繁に発生したり、未延伸糸の着色状態がやや黄
色味を呈してくる傾向があり、さらに、延伸糸の艶も消え
過ぎになり、触感もザラザラとした触感になり、かつ、繊
維のしなやかさが劣る傾向となる。これらの実験から、
塩化ビニル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂の配合比率
は、前者が100〜60重量%で、後者が0〜40重量%
の範囲が最適であることが判る。
【0057】[実験6〜10(CPE系樹脂の添加効果)]
実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が
4Kgになる様に計量し、次いで、CPE系樹脂(CL
含有量=45%、Mp=100000)の添加量を変更
して、表4に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lの
ヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しながら、内容物の
温度が105℃になる迄、攪拌・混合した。その後、冷却
水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら攪拌
・混合を続け、内容物の温度が70℃になる迄、冷却して、
塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。該パウダーコンパ
ウンドを表3(紡糸条件2)に示した紡糸条件,延伸条
件,熱緩和処理条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供
した。
【0058】
【表3】
【0059】溶融紡糸実験は、定常状態になってから、
フィード量、スクリュー回転数と押出量の関係を求め、
押出量が6.7Kg/Hrsになる様に、フィード量、ス
クリュー回転数を決定した。ノズル圧力、樹脂温度は、ダ
イ圧計、樹脂温度センサーをノズル部に設置して測定し
た。鉛直方向に、ノズルから溶融・流出したストランドを
加熱紡糸筒に導入し、ここで該ストランドを瞬間的に加
熱溶解し、ノズル直下、約3mの位置に設置した引取機
にて、未延伸糸 を一定速度で巻き取った。この際、該未延
伸糸の繊度が約165〜175デニールになる様に引取
速度を調節した。また、その他の紡糸条件などは、実験1
〜5に示した方法と同様に行い、評価方法なども実験1
〜5に示した方法と全く同様に行なった。これらの評価
結果を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】実験6〜10の比較から判る様に、CPE
系樹脂の添加量が2重量部未満になると、延伸糸のしな
やかさが不足し、ゴワゴワとした触感の繊維となる。ま
た、熱収縮率もやや高くなる傾向がある。また、 CPE
系樹脂の添加量が35重量部を越えると、組成の不均一
化(CPVC成分の溶融が不均一となる)が起こり、溶融
紡糸時あるいは延伸処理時の糸切れが頻繁になる。ま
た、繊維の手触りもザラザラとした触感になる。これら
の実験から、CPE系樹脂の添加量は、塩化ビニル系混合
物100重量部に対して、2〜35重量部の範囲が最適
であることが判る。
【0062】[実験11〜15(熱安定剤の添加・併用効
果)]実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量
部が4Kgになる様に計量し、次いで、熱安定剤の種類・
添加量を変更して、表5に示す配合剤をそれぞれ計量し
て、20Lのヘンシ ェルミキサーに投入し、攪拌しなが
ら、内容物の温度が135℃になる迄、攪拌・混合した。
その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流
しながら攪拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる
迄、冷却して、塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。尚、
CPE系樹脂は、CL含有量=35%、原料ポリエチレ
ンの分子量(Mp)=120000のものを使用した。
該パウダーコンパウンドを実験6〜10に示した紡糸条
件、延伸条件,熱緩和処理条件と同様の条件にて、溶融紡
糸・延伸・熱処理実験に供した。また、実験6〜10に示
した紡糸条件、延伸条件、緩和熱処理条件と全く同様の
条件にて、未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なっ
た。これらの評価結果を表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】実験11〜15の比較から判る様に、熱安
定剤の添加量が適量であれば、未延伸糸の初期着色も良
好であるが、ブチル錫マレエートを過剰に使用すると、繊
維の熱収縮率が極端に高くなり、品質の不十分な繊維と
なる。また、ゼオライトの様な無機粉末状の熱安定剤を
過剰に使用すると、ゴワゴワとした触感の繊維となるば
かりでなく、糸切れが多くなり、繊維の強度も低下する傾
向にある。これらの実験から、熱安定剤の添加量は、塩化
ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重
量部の範囲が最適であることが判る。
【0065】[実験16〜20(ノズル断面積の効果)]実
験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が
4.5Kgになる様に計量し、次いで、表7に示す配合剤
をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投
入し、攪拌しながら、内容物の温度が125℃になる迄、
攪拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーの
ジャケットに流しながら攪拌・混合を続け、内容物の温度
が75℃になる迄、冷却して、塩ビ系パウダーコンパウン
ドを得た。尚、CPE系樹脂は、CL含有量=35%、
原料ポリエチレンの分子量(Mp)=180000のも
のを使用した。該パウダーコンパウンドを表6(ペレッ
ト条件1)に示す条件にて、ペレットコンパウンドと
し、溶融紡糸実験に供した。
【0066】
【表6】
【0067】該ペレットコンパウンドを実験1〜5に示
した紡糸条件、延伸条件,緩和熱処理条件と同様の条件
にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。この際、表7
に示したノズル断面積のノズルに変更して紡糸実験を行
なった。また、押出量は、7.1Kg/Hrsとし、これに
合わせて、引取速度、延伸倍率を調節した。さらに、実験1
〜5に示した試験方法、評価方法にて、未延伸糸、延伸糸
の評価を全く同様に行なった。評価結果を表7に示す。
【0068】
【表7】
【0069】実験16〜20の比較から判る様に、1ケ
のノズル孔の断面積が0.5mm2以下であれば、紡糸す
る際の各種性能、延伸処理・加熱処理時の性能、繊維の性
能が高度にバランスされた状態になる。一方、1ケのノ
ズル孔の断面積が0.5mm2以上になると、延伸糸の艶
が出てきて、キラキラした目視感になり、触感もプラスチ
ック的な滑り触感になり、品質的に不十分な繊維とな
る。また、1ケのノズル孔の断面積が大きくなると、溶融
紡糸時のドラフト比が高くなり、延伸時の糸切れ頻度が
増加するし、繊維の熱収縮率が高くなる傾向がある。
【0070】[実験21〜25(未延伸糸の繊度の効果)]
実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が
4.5Kgになる様に計量し、次いで、表9に示す配合剤
をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投
入し、攪拌しながら、内容物の温度が135℃になる迄、
攪拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーの
ジャケットに流しながら攪拌・混合を続け、内容物の温度
が75℃になる迄、冷却して、塩ビ系パウダーコンパウン
ドを得た。尚CPE系樹脂は、CL含有量=35%、原
料ポリエチレンの分子量(Mp)=180000のCP
E樹脂に塩化ビニルをグラフト重合し、CPE含有量が
30%のものを使用した。該パウダーコンパウンドを表
8に示すペレット化条件2にて、ペレットコンパウンド
とした後、溶融紡糸実験に供した。
【0071】
【表8】
【0072】該ペレットコンパウンドを実験1〜5に示
した紡糸条件,延伸条件,緩和熱処理条件と同様の条件に
て、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。この際、引取速
度を変更して、未延伸糸の繊度が表9になる様に設定し
た。また、実験1〜5に示した試験方法、評価方法にて、
未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なった。評価結果
を表9に示す。
【0073】
【表9】
【0074】実験21〜25の比較から判る様に、未延
伸糸の繊維度を300デニール以上にすると、65〜7
0デニールの延伸糸を得る為には、延伸処理に於いて、過
剰に延伸する必要がある。その為、延伸処理を施す際、糸
切れ頻度が多くなるばかりでなく、延伸糸の触感が、プラ
スチック的な滑り触感になり、艶が出てきて品質的に不
十分な繊維となる。一方、未延伸糸の繊維度を300デ
ニール以下であれば、これらの品質が高度にバランスさ
れ、人毛に極めて類似した人工毛髪用繊維として優れた
ものを得ることができる。
【0075】[実験25〜30(延伸糸の繊度の効果)]塩
化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量
し、次いで、表10に示す配合剤をそれぞれ計量して、2
0Lのヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しながら、内容
物の温度が115℃になる迄、攪拌・混合した。その後、冷
却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら攪
拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却し
て、塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。尚、CPE系
樹脂は、CL含有量=40%、原料ポリエチレンの分子
量(Mp)=180000のCPE樹脂に塩化ビニルを
グラフト重合し、CPE含有量が35%のものを使用し
た。該パウダーコンパウンドを実験1〜5に示した紡糸
条件,延伸条件,熱緩和処理条件と同様の条件にて、溶融
紡糸・延伸・熱処理実験に供した。この際、延伸倍率を変更
して、延伸糸の繊度が表10になる様に設定した。また、
実験1〜5に示した試験方法、評価方法にて、未延伸糸、
延伸糸の評価を全く同様に行なった。評価結果を表10
に示す。
【0076】
【表10】
【0077】実験26〜30の比較から判る様に、延伸
糸の繊度を100デニール以上にすると、延伸糸の触感
がゴワゴワとした、硬い触感となり、また、しなやかさが
劣る為、人工毛髪用繊維として品質的に不十分な繊維と
なる。一方、延伸糸の繊度を100デニール以下とすれ
ば、これらの品質が高度にバランスされて、人毛に極めて
類似した人工毛髪用繊維として優れたものを得ることが
できる。
【0078】
【発明の効果】以上のように、本発明の塩化ビニル系樹
脂組成物を用いれば、品質に優れ、人毛に極めて類似し
た七部〜半艶表面でサラサラとした手触り触感を兼ね備
えた塩化ビニル繊維を得られ、また、本発明の製造方法
を用いれば、目的の塩化ビニル系繊維を、高い紡糸生産
性を維持しながら、安全に製造することができる。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩
    素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニ
    ル系混合物100重量部に対して、(a)塩素化ポリエ
    チレン系樹脂を2〜35重量部と(b)熱安定剤0.2
    〜5.0重量部と(c)滑剤0.2〜5.0重量部を配合
    してなる塩化ビニル系樹脂組成物からなることを特徴と
    する塩化ビニル系繊維。
  2. 【請求項2】熱安定剤(b)が錫系熱安定剤、Ca-Zn
    系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、ゼオライ
    ト系熱安定剤、から選択される1種または2種以上であ
    る請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
  3. 【請求項3】滑剤(c)が金属石鹸系滑剤、ポリエチレン
    系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑
    剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワックス系滑
    剤、から選択される1種または2種以上である請求項1
    または2記載の塩化ビニル系繊維。
  4. 【請求項4】塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と塩素
    化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化ビニ
    ル系混合物100重量部に対して、(a)塩素化ポリエ
    チレン系樹脂を2〜35重量部と(b)メルカプト錫系
    熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレート錫系熱安
    定剤から選択される1種または2種以上の熱安定剤を
    0.2〜5.0重量部、と(c)金属石鹸系滑剤、ポリエチ
    レン系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤から選択され
    る1種または2種以上の滑剤を0.2〜5.0重量部を配
    合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を使用することを特
    徴とする請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
  5. 【請求項5】塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、
    (a)塩素化ポリエチレン系樹脂を2〜35重量部と
    (b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定
    剤、ラウレート錫系熱安定剤から選択される1種または
    2種以上の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と(c)金属
    石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ペンタエリスリトール
    系滑剤から選択される1種または2種以上の滑剤を0.
    2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成
    物を使用することを特徴とする請求項1記載の塩化ビニ
    ル系繊維。
  6. 【請求項6】塩化ビニル系樹脂が塩化ビニル単独樹脂、
    エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニ
    ル共重合樹脂、から選択される1種または2種以上の樹
    脂であり、かつ塩素化塩化ビニル系樹脂が、原料塩化ビニ
    ル樹脂の重合度350〜1100を用いて、塩素含有量
    を60〜70重量%にしたものを使用することを特徴と
    する請求項1〜4の何れかに記載の塩化ビニル系繊維。
  7. 【請求項7】塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩
    素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニ
    ル系混合物100重量部に対して、(a)塩素化ポリエ
    チレン系樹脂を2〜35重量部と(b)熱安定剤0.2
    〜5.0重量部と(c)滑剤0.2〜5.0重量部を配合
    してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸することを
    特徴とする塩化ビニル系繊維の製造方法。
  8. 【請求項8】熱安定剤(b)が錫系熱安定剤、Ca-Zn系
    熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、ゼオライト系
    熱安定剤、から選択される1種または2種以上である請
    求項7記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
  9. 【請求項9】滑剤(c)が金属石鹸系滑剤、ポリエチレン
    系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑
    剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワックス系滑剤、
    から選択される1種または2種以上である請求項7また
    は8記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
  10. 【請求項10】塩化ビニル系樹脂90〜75重量%と塩
    素化塩化ビニル系樹脂10〜25重量%からなる塩化ビ
    ニル系混合物100重量部に対して、(a)塩素化ポリ
    エチレン系樹脂を2〜35重量部と(b)メルカプト錫
    系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレート錫系熱
    安定剤から選択される1種または2種以上の熱安定剤を
    0.2〜5.0重量部と(c)金属石鹸系滑剤、ポリエチ
    レン系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤から選択され
    る1種または2種以上の滑剤を0.2〜5.0重量部を配
    合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸すること
    を特徴とする請求項7記載の塩化ビニル系繊維の製造方
    法。
  11. 【請求項11】塩化ビニル系樹脂100重量部に対し
    て、(a)塩素化ポリエチレン系樹脂を2〜35重量部
    と(b)メルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安
    定剤、ラウレート錫系熱安定剤から選択される1種また
    は2種以上の熱安定剤を0.2〜5.0重量部と(c)金
    属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ペンタエリスリトー
    ル系滑剤から選択される1種または2種以上の滑剤を
    0.2〜5.0重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組
    成物を溶融紡糸することを特徴とする請求項7記載の塩
    化ビニル系繊維の製造方法。
  12. 【請求項12】塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸する
    に際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノ
    ズル孔から溶融・流出せしめることを特徴とする請求項
    7〜11の何れかに記載の塩化ビニル系繊維の製造方
    法。
  13. 【請求項13】塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸する
    に際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノ
    ズル孔から溶融・流出せしめ、300デニール以下の未
    延伸糸を製造し、次いで、この未延伸糸に延伸処理、熱処
    理を施して、100デニール以下の繊維とすることを特
    徴とする請求項7〜11の何れかに記載の塩化ビニル系
    繊維の製造方法。
  14. 【請求項14】塩化ビニル系樹脂組成物をノズル圧力5
    00Kg/cm2以下、樹脂温度195℃以下で、ノズル孔
    から溶融・流出せしめると同時に、紡糸ドラフト比を25
    以下の条件下で、未延伸糸を引取ることを特徴とする請
    求項7〜13の何れかに記載の塩化ビニル系繊維の製造
    方法。
  15. 【請求項15】溶融紡糸のダイ先端部に使用するノズル
    に存在するノズル孔が、50〜300ケであり、 該ノズ
    ル孔が、円状、楕円状、長方形状、または正方形状に配列さ
    れ、隣接するノズル孔の中心間(異形断面形状にあって
    は、該断面の重心間)の距離が、少なくとも、0.8mm以
    上となる様に配列されているノズルを使用することを特
    徴とする請求項7〜13の何れかに記載の塩化ビニル系
    繊維の製造方法
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100311658B1 (ko) * 1999-06-16 2001-10-17 김종찬 열 수축률이 개선된 폴리비닐클로라이드 섬유
KR100447264B1 (ko) * 2001-08-01 2004-09-04 베스트롱산업(주) 인조모발섬유의 제조방법

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