JP3804200B2 - 塩化ビニル系繊維およびその製造方法 - Google Patents

塩化ビニル系繊維およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、かつら、ヘアピース、ブレード、エクステンションヘアー、アクセサリーヘアーなどの頭髪装飾用に用いられる人工毛髪、或いはドールヘアー等の人形用頭髪などとして使用される塩化ビニル系繊維およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル系樹脂を紡糸して繊維状にしてなる塩化ビニル系繊維は、その優れた強度、伸度、カール保持性、スタイル性などの故に、頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維として、あるいはドールヘアーなどの人形用頭髪繊維として多量に使用されている。
【0003】
従来、頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維として、細繊度(断面積が小さく、細い繊維)の繊維を工業的に製造するには、一般的に塩化ビニル系樹脂に対する溶媒を使用する湿式紡糸法、または乾式紡糸法によって、細い繊度の塩化ビニル系繊維を製造する方法が工業的に実施されている。しかしながら、該方法は、溶媒を使用するが故に脱溶媒工程を必要とし、過大な設備投資が必要であり、その設備の維持管理にも多数の人手を必要とするという問題点がある。また、溶媒に対する溶解性を向上するべく、アクリロニトリルなどのコモノマーを共重合する為、繊維の初期着色性に弱点があり、乾燥工程での熱によって黄色味の強い毛髪になり易いという問題点、あるいは繊維のカール保持性が充分でないなどの問題点がある。
【0004】
一方、溶媒を使用しない紡糸方法としては溶融紡糸法が知られており、カドミウムや鉛を使用するCd-Pb系熱安定剤を主とした配合系にて、半艶表面(艶の評価については、実施例に評価基準を示した。)で、サラサラとした手触り触感の人工毛髪用繊維を製造する方法が工業的に実施されている。しかしながら、該方法は、初期着色に問題があり、黄色味の強い毛髪になるという傾向がある、また、これらの配合剤は毒性が高く、製造上問題があるばかりでなく、頭髪装飾用として皮膚に触れる為、安全衛生上の問題がある。また、該頭髪装飾用品などが、廃棄される場合、一般ゴミに混入して、環境を汚染するという問題もある。
【0005】
これらCd-Pb系熱安定剤を主とした配合系の問題点を解決するべく、錫系熱安定剤あるいはCa-Zn系熱安定剤などを使用する方法などが提案されているが、艶消し性、触感などの改良が不十分であり、人毛に類似した七部〜半艶表面、サラサラとした手触り触感の人工毛髪用繊維としては不十分であった。すなわち、錫系熱安定剤などを使用すると、溶融紡糸の段階、塩化ビニル樹脂あるいは塩素化塩化ビニル樹脂のゲル化・溶融が進行し、塩化ビニル樹脂あるいは塩素化塩化ビニル樹脂の粒子構造が消失しやすく、未延伸糸の表面が平滑となり、光沢が出る傾向がある。さらに、細繊度の繊維とするべく該未延伸糸に延伸・熱処理を施してなる繊維(延伸糸)を製造する為、表面がさらに引き伸ばされ、艶のある、プラスチック感の強い繊維となるという傾向があった。
【0006】
また、艶消し性、触感に優れた細繊度の塩化ビニル系繊維を製造する為には、出来る限り断面積の小さいノズル孔から溶融・流出させ、紡糸ドラフト比を小さくして、なるべく引き伸ばさない条件下で未延伸糸を紡糸するのが好ましいが、Cd−Pb系熱安定剤を用いない従来の配合では、例えば錫系熱安定剤を使用すると塩素化塩化ビニル樹脂の溶融が進行し、該組成物の溶融粘度が高くなって、ノズル圧力が高くなるなど、断面積の小さいノズルを使用することが困難となる傾向があり、目的とする艶消し性、触感に優れた細繊度の塩化ビニル系繊維を得るには至っていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した様に、本発明は、錫系熱安定剤などを使用した際に発生する「艶消しや手触り触感が不十分」という繊維の品質上の課題、ならびに、「組成物の溶融粘度が高くなって、ノズル圧力が高くなる」という溶融紡糸上の課題解決する為になされたものである。すなわち本発明の第1の目的は、錫系熱安定剤などを使用した塩化ビニル系繊維の品質が「平滑な艶有表面状態で、プラスチック的触感になる」という課題を解決した塩ビ系組成物を用いて製造され、優れた柔軟性、強度などの品質を保持しながら、人毛に極めて類似した七部〜半艶表面、手触り触感を兼ね備えた細繊度の塩化ビニル系繊維を提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、錫系熱安定剤を使用した組成物を溶融紡糸する際の問題点(1)「ノズル圧力が高くなり、押出機の設計圧力以下で生産すると溶融紡糸生産性が低下する」(2)「ノズル圧力を低下するべく、溶融粘度を低下する為に、溶融紡糸温度を高くすると初期着色、熱分解、ロングラン性が低下する」という課題を解決して、Cd−Pb系配合と同等以上のノズル圧/溶融紡糸生産性バランスとなる細繊度の塩化ビニル系繊維の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決する為の手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく組成物の配合系などについて鋭意研究を重ねた結果、カドミウムや鉛を使用するCd−Pb系熱安定剤などを用いなくとも、繊維柔軟性改質用樹脂、熱安定剤、ならびに、部分架橋塩化ビニル系樹脂、アクリル系艶消し剤、充填剤等を特定の比率で配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いることで、人毛に極めて類似した塩化ビニル系繊維を高い生産性を維持しながら得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、粘度平均重合度が650〜1650の塩化ビニル樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対し、エチレン−酢酸ビニル系樹脂からなる繊維柔軟性改質用樹脂2〜35重量部と、熱安定剤0.2〜5重量部、ならびに繊維表面の艶消し剤として部分架橋塩化ビニル系樹脂、アクリル系艶消し剤、充填剤から選択される1種または2種以上を2〜35重量部配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物からなることを特徴とする塩化ビニル系繊維、および、前記樹脂組成物を溶融紡糸することを特徴とする塩化ビニル系繊維の製造方法である。
【0011】
また、上記熱安定剤は錫系安定剤である場合が好ましい。
上記繊維表面の艶消し剤は、テトラヒドロフランに不溶なゲル分を0.5〜35重量%、テトラヒドロフランに可溶な成分の粘度平均重合度が450〜1100の部分架橋塩化ビニル系樹脂を単独で用いる場合、メチルメタクリレートを主成分とし、メチルエチルケトンに不溶なゲル分を10〜90重量%含有するアクリル系艶消し剤を単独で用いる場合、或いは、テトラヒドロフランに不溶なゲル分を0.5〜35重量%、テトラヒドロフランに可溶な成分の粘度平均重合度が450〜1100の部分架橋塩化ビニル系樹脂と平均粒子径が10μm以下の炭酸カルシウム、タルク、クレーから選択される1種または2種以上からなる充填剤とを組み合わせて用いる場合なども好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する塩化ビニル樹脂とは、従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂、または従来公知の各種のコポリマー樹脂であり、特に限定されるものではない。該コポリマー樹脂としては、従来公知のコポリマー樹脂を使用でき、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとビニルエステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸ブチルコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸2エチルヘキシルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとアクリル酸エステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピレンコポリマー樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリロニトルコポリマー樹脂などが代表的に例示される。特に好ましくは、塩化ビニル単独樹脂、エチレン−塩化ビニルコポリマー樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー樹脂などを使用するのが良い。該コポリマー樹脂に於いて、コモノマーの含有量は特に限定されず、成形加工性、糸特性などの要求品質に応じて決めることができる。特に好ましくは、コモノマーの含有量は、2〜30%であることが好ましい。
【0013】
本発明に使用する塩化ビニル樹脂は粘度平均重合度が650〜1650のものが使用できる。該粘度平均重合度が650未満であると、繊維の特性、特に、熱収縮率、カール保持性、艶消し性などが劣ったものになり好ましくない。逆に、1650を越えると、溶融粘度が高くなる為ノズル圧力が高くなり、安全な製造が出来なくなり好ましくない。本発明に使用する塩化ビニル樹脂は、乳化重合、塊状重合または懸濁重合などによって製造したものを使用できるが、繊維の初期着色性などを勘案して、懸濁重合によって製造したものを使用するのが好ましい。
【0014】
本発明に使用する塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂を原料とし、これに塩素を付加反応せしめ、塩素含有量を58〜72%に高めたものを使用するのが好ましい。塩素化塩化ビニル系樹脂を用いる主な目的としては、繊維の熱収縮率を低下せしめる為に使用する。塩素化塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度(原料塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度)は、300〜1100であることが好ましく、該粘度平均重合度が、300未満であると、繊維の熱収縮率を低下せしめる効果が小さくなるので収縮率のやや高い繊維となる。逆に、該粘度平均重合度が、1100を越えると、溶融粘度が高くなり、紡糸時のノズル圧力が高くなるため安全操業が困難になる傾向がある。特に好ましくは、粘度平均重合度は、500〜900のものが良い。また前記塩素含有率については58%未満であると繊維の熱収縮率を低下せしめる効果が小さくなり、逆に72%を越えると、溶融粘度が高くなって安定操業が困難となる傾向があり好ましくない。
【0015】
該塩素化塩化ビニル系樹脂の原料となる塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルホモポリマー樹脂またはエチレン−塩化ビニルコポリマー樹脂を原料として使用している場合が特に好ましい。
本発明に於いては、塩化ビニル樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂の使用比率は、塩化ビニル/塩素化塩化ビニル=100〜60重量%/0〜40重量%の塩化ビニル系混合物とすることが好ましい。前記塩化ビニル比率が60重量%未満となると、塩素化塩化ビニル系樹脂が過剰となり、溶融粘度が高くなり、溶融紡糸時のノズル圧力が高くなるため、安全操業が困難になる傾向があり好ましくない。尚、塩化ビニル系樹脂の比率が高い場合には熱収縮率の高い繊維になる傾向があり、目的に応じて、使用比率は適宜調整するのが好ましい。
【0016】
本発明に於いては、主たる目的として、繊維の柔軟性を高め、柔らかで、しなやかで、かつ、サラサラとした触感の繊維とする為に、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、繊維柔軟性改質用樹脂を2〜35重量部添加配合して使用する。
該繊維柔軟性改質用樹脂としては、塩素化ポリエチレン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、などが挙げられるが、柔軟性に対する効果の点でエチレン−酢酸ビニル系樹脂(以下、EVA系樹脂と略記する。)がより好ましい。これらは副次的には、該組成物のゲル化・溶融性を調節し、均一で適度な溶融状態を醸し出し、適度なノズル圧力とする効果がある。
【0017】
上記柔軟性改質樹脂の使用量が2重量部未満となると、繊維柔軟性改良効果が希薄になるばかりでなく、ゲル化・溶融性調節機能が低下し、ノズル圧力が上昇したりする傾向がある。逆に、35重量部を越えると、組成物のゲル化・溶融性調節機能が低下し、不均一なゲル化・溶融状態になるため、未延伸糸内に「ブツ」状物(未溶融粒子または剪断により未崩壊の粒子)が多くなって、溶融紡糸時あるいは延伸・熱処理時の糸切れ頻度が多くなる傾向があり好ましくない。
【0018】
本発明でいうEVA系樹脂とは、従来公知の酢酸ビニル含有量が20〜65重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、さらに極性基としてカルボニル基を導入してなるエチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂からなるEVA樹脂またはこれらのEVA樹脂に塩化ビニルをグラフト重合してなるEVA−塩化ビニルグラフトポリマー樹脂を意味する。該EVA-塩化ビニルグラフトポリマー樹脂は、水性媒体中で、塩化ビニルを懸濁重合または乳化重合する際、EVA樹脂を重合系に添加して、重合を進めることによって容易に得られる。該樹脂は、溶媒による分別により、EVA樹脂成分、ポリ塩化ビニル樹脂成分、およびEVA樹脂成分に塩化ビニルが化学的に結合してなるEVA−塩化ビニルグラフトポリマー成分の混合物である。
【0019】
本発明に於いては、熱安定剤を塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5重量部使用できる。該熱安定剤は、成形時の熱分解、ロングラン性、繊維の色調を改良する効果があり、錫系、Ca−Zn系、ハイドロサルタイト系、ゼオライト系など、従来公知のものを使用できる。特に好ましくは、紡糸時のノズル周囲に発生するスケール(以下、ノズル目脂と略記する。)発生量の比較的少ない錫系熱安定剤が好ましい。中でもメルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレート錫系熱安定剤から、1種または2種以上を使用するのが良い。例えば、ジメチルスズメルカプト、ジブチルスズメルカプト、ジオクチルスズメルカプトなどのメルカプト錫系熱安定剤、ジメチルスズマレエート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマーなどのマレエート錫系熱安定剤、ジメチルラウレート、スズジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレートなどのラウレート錫系熱安定剤が例示される。
【0020】
繊維の初期着色を抑制し、顔料を含まないナチュラル組成物の白色度を高める為には、メルカプト錫系熱安定剤を塩化ビニル系混合物100重量部に対して、少なくとも0.2〜1.4重量部使用し、他の錫系熱安定剤と併用するのが特に好ましい。該熱安定剤の使用量は、0.2〜5重量部であるが、0.2重量部未満となると、溶融紡糸時の熱分解防止効果が少なくなり好ましくない。逆に、5重量部を越えると、紡糸時のノズル目脂発生が多くなり、紡糸時の流出変動の原因となるため好ましくない。
【0021】
本発明に於いては、主たる目的として繊維表面の艶を半艶状態とし、肌ざわりの細かいザラザラ感のない表面状態でサラサラとした触感の繊維とする為に、THF不溶分を含有する部分架橋塩化ビニル系樹脂、メチルエチルケトン(以下MEKと略記する)不溶分を含有するアクリル系艶消し剤、各種充填剤から選択される1種または2種以上の艶消し剤を使用する。また、副次的には該組成物のゲル化・溶融性を調節し、均一で、適度な溶融状態を醸し出し、適度なノズル圧力とする効果がある。
【0022】
前記部分架橋塩化ビニル系樹脂は、THFに不溶なゲル分を0.5〜35重量%含有し、THF可溶成分の粘度平均重合度が450〜1100のものを使用することができる。THFに不溶なゲル分が、0.5重量%未満であると艶消し効果が十分でなく、逆に35重量%を越えると溶融紡糸時の糸切れ頻度が多くなる傾向がある。また、THFに可溶な成分の粘度平均重合度が450未満であると、強度が低下する傾向があり、1100を越えると、繊維表面の肌ざわりが粗くなり、ザラザラとした触感となりやすく好ましくない。本発明で使用する部分架橋塩化ビニル系樹脂は、水性媒体中で塩化ビニルを懸濁重合、ミクロ懸濁重合あるいは乳化重合する際に多官能性モノマーを添加して重合を完結することにより容易に得られる。この際、使用される多官能性モノマーとしては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA変性ジアクリレートなどのジアクリレート化合物を使用してなる部分架橋塩化ビニル系樹脂が特に好ましい。該樹脂は、架橋構造を有し、THFに不溶な塩化ビニルを主成分とするゲル分とTHFに可溶な成分(ポリ塩化ビニル成分)の混合物である。
【0023】
本発明で使用するアクリル系艶消し剤は、メチルメタクリレートを主成分とし、MEKに不溶なゲル分を10〜90重量%含有するアクリル系樹脂である。MEK不溶分が10重量%未満であると艶消し効果が十分でなく、逆に90重量%を越えると溶融紡糸時の糸切れ頻度が多くなる傾向がある。本発明で使用するアクリル系艶消し剤は、水性媒体中でメチルメタクリレートを主成分とするモノマー成分を乳化重合する際、多官能性モノマーを添加して重合を完結することにより容易に得られる。また、部分的に架橋してなる該乳化粒子に、メチルメタクリレートを主成分とするモノマー成分を多段重合することにより得られる。この際、使用されるコモノマー成分としては、ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステル類、ブチルメタクリレートなどのメタアクリル酸エステル類などが例示される。また、多官能性モノマーとしては、1,4-ブタンジオールジアクリレートなどのジアクリレート化合物などが例示される。
【0024】
本発明で使用する充填剤とは、従来公知の塩化ビニル樹脂に使用される充填剤を意味し、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレーなどが例示される。特に好ましくは、平均粒子径が10μm以下の炭酸カルシウム、タルク、クレーから選択される1種または2種以上の充填剤が好ましい。
前記の部分架橋塩化ビニル系樹脂、アクリル系艶消し剤、および充填剤から1種または2種以上選択して艶消し剤として用いるに際し、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、2〜35重量部配合して使用することができる。配合量が2重量部未満であると艶消し効果が十分でなく、逆に35重量部を越えると溶融紡糸時の糸切れ頻度が多くなる傾向がある。特に好ましくは、3〜8重量部の範囲である。
【0025】
本発明の塩化ビニル系繊維は、湿式、乾式、半乾半湿式、溶融紡糸のいずれの方法によっても製造可能である。湿式、乾式、半乾半湿式の製造法はジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、又はTHFの単独、もしくは混合溶媒に上記塩化ビニル系樹脂組成物を溶解し、通常の紡糸方法を用いることができる。しかし、これら溶媒を用いる場合、使用する溶媒に不要なゲル分を多く含む艶消し剤などを用いると、フィルターやノズル詰まりなどの原因になる場合があり、そのような樹脂組成物を用いる場合は溶融紡糸方法が特に好ましい。
【0026】
溶融紡糸法により塩化ビニル系繊維を製造する場合においては、更に滑剤などを配合しても良い。前記滑剤としては、カドミウム、鉛を含有しない金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、およびモンタン酸ワックス系滑剤から選択される1種または2種以上の滑剤を塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部使用するのが好ましい。該滑剤は、組成物の溶融状態、ならびに組成物と金属面との接着状態を制御でき、溶融紡糸時の糸切れ頻度、ノズル目脂発生頻度、ノズル圧力などを改良する効果があるので、使用することが好ましい。またノズル目脂発生頻度を低下し、ノズル圧力を低く抑える為には、ポリエチレン系滑剤を使用するのがより好ましく、従来公知のポリエチレン系滑剤を使用できるが、特に、平均分子量が1500〜4000で、密度が0.91〜0.97の非酸化タイプまたはごくわずかに極性を附加したタイプのポリエチレン系滑剤が特に好ましい。該ポリエチレン系滑剤は0.1〜1.3重量部の範囲で使用するのが特に好ましい。
【0027】
また、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワックス系滑剤などは、主として組成物の溶融状態を制御する為に使用するのが好ましい。高級脂肪酸系滑剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸またはこれらの混合物などが例示される。ペンタエリスリトール系滑剤としては、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと高級脂肪酸とのモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルまたはこれらの混合物などが例示される。高級アルコール系滑剤としては、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどが例示される。さらに、モンタン酸ワックス系滑剤としては、モンタン酸とステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコールとのエステル類が例示される。
【0028】
本発明に於いては、目的に応じて、さらに塩化ビニル系樹脂組成物に使用される公知の配合剤、例えば、加工助剤、強化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料などを使用することができる。また、場合によっては、必要に応じて発泡剤、架橋剤、粘着性付与剤、親水性付与剤、導電性付与剤、香料など特殊な配合剤を使用することもできる。
【0029】
本発明に使用する加工助剤としては、公知のものを使用できる。例えば、メチルメタクリレートを主成分とするアクリル系加工助剤、または熱可塑性ポリエステルを主成分とするポエステル系加工助剤などを使用できる。該加工助剤の使用量としては、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜12重量部程度が好ましい。また、これらの加工助剤は、単独でも使用できるし、2種以上を併用しても良い。
【0030】
本発明に使用する可塑剤としては、公知のものを使用できる。例えば、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレートなどのフタル酸系可塑剤、オクチルトリメリテートなどのトリメリット酸系可塑剤、オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤などを使用できる。該可塑剤の使用量としては、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5重量部程度が好ましい。また、これらの可塑剤は、単独でも使用できるし、2種以上を併用しても良い。
【0031】
本発明に使用する塩化ビニル系樹脂組成物は、従来公知の混合機、例えばヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダーなどを使用して混合してなるパウダーコンパウンド、またはこれを溶融混合してなるペレットコンパウンドとして使用する。該パウダーコンパウンドの製造は、従来公知の通常の条件で製造でき、ホットブレンドでもコールドブレンドでも良い。特に好ましくは組成物中の揮発分を減少する為に、ブレンド時のカット温度を105〜155℃迄上げてなるホットブレンドを使用するのが良い。該ペレットコンパウンドは、通常の塩化ビニル系ペレットコンパウンドの製造と同様にして製造できる。例えば、単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押出機、同方向2軸押出機、コニーダー、プラネタリーギアー押出機、ロール混練り機などの混練り機を使用して、ペレットコンパウンドとすることができる。該ペレットコンパウンドを製造する際の条件は、特に限定はされないが樹脂温度を185℃以下になる様に設定することが特に好ましい。
【0032】
上記塩化ビニル系組成物を繊維状の未延伸糸にする際には、従来公知の押出機を使用できる。例えば、単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押出機などを使用できるが、例えば口径が35〜85mmφ程度の単軸押出機、または口径が35〜50mmφ程度のコニカル押出機を使用するのが好ましい。口径が過大に過ぎると、押出量が多くなり、ノズル圧力が過大になったり、未延伸糸の流出速度が早過ぎて、巻取りが困難になり好ましくない。
【0033】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸するに場合に於いては、1ケのノズル孔の断面積が、0.5mm2以下のノズルをダイ先端部に取り付けて溶融紡糸を行なうのが好ましい。該断面積が0.5mm2以上のノズルを使用すると、未延伸糸の繊度が太くなり、細繊度の繊維を得る為には、延伸処理の際、延伸倍率を大きくする必要がある。その為、延伸処理を施した後の細繊度の繊維(延伸糸)に光沢が出て、半艶〜七部艶状態を維持することが困難となる。また、繊維の触感が、ザラザラとしたり、キラキラ感がでたり、あるいはプラスチック的な滑り触感になる傾向があり好まくない。
【0034】
更に、未延伸糸の繊度を300デニール以下にすることで、延伸後の繊維の艶を半艶〜七部艶状態にすることが可能となる。該未延伸糸の繊度が300デニールを越えると、細繊度の繊維を得る為には、延伸処理の際に延伸倍率を大きくする必要がある。そのため、延伸処理を施した後の細繊度の繊維(延伸糸)に光沢が出て、半艶〜七部艶状態を維持することが困難となる。また、プラスチック的な滑り触感になる傾向があるので好ましくない。
【0035】
また、溶融紡糸の際、ノズル圧力は500Kg/cm2以下で紡糸するのが好ましい。ノズル圧力が、500Kg/cm2を越えると、押出機のスラスト部にかかる負荷が過大になり、押出機に不具合を発生し易くなり好ましくない。ノズル圧力は、スクリュー回転数あるいはフィード量を変更して、押出量を制御することでコントロールするのが品質に影響が少なく好ましい。しかしながら、押出量を減少すると生産性が低下する為、このバランスからノズル圧力は、480〜300Kg/cm2の範囲が特に好ましい。
【0036】
ノズル圧力を低下するには、金属面との滑り効果の高い滑剤を使用したり、多量の溶融粘度低下剤、例えば、可塑剤、高分子可塑剤などを使用することも可能であるが、この様な手段によって、ノズル圧力を200Kg/cm2以下にすると組成物形のゲル化・溶融状態が不均一になり、糸切れ頻度が多くなり、製造が困難になると共に、艶状態、触感などの品質が劣った繊維となる傾向がある。故に前記した様な押し出し量の制御による圧力コントロールが好ましい。
【0037】
溶融紡糸の際、ノズル孔から溶融・流出したストランドは、300デニール以下の未延伸糸に引き伸ばされるが、その際のドラフト比は、25以下であることが特に好ましい。該ドラフト比が25を越えると、未延伸糸の時点で表面が過剰に引き伸ばされている為、延伸処理を施した後の細繊度の繊維に光沢が出て、半艶〜七部艶状態を維持することが困難となる傾向がある。また、プラスチック的な滑り触感になる傾向がある。さらに、樹脂温度は195℃以下で紡糸することが好ましい。195℃を越えた温度で紡糸すると繊維の着色傾向が顕著となり、黄色味の強い繊維となりやすく好ましくない。その為には、シリンダー温度を150〜185℃程度とし、ダイ温度を160〜190℃程度とすることが特に好ましい。
【0038】
前記溶融紡糸で得られた未延伸糸に公知の方法で延伸処理・熱処理を施して、100デニール以下の細繊度の繊維とすることができる。頭髪装飾用の繊維としては、100〜25デニールの範囲が特に好ましい。また、人形用頭髪の繊維としては、10〜65デニールの範囲が特に好ましい。延伸処理条件としては、延伸処理温度70〜150℃の雰囲気下で、延伸倍率は、200〜450%程度延伸することが特に好ましい。延伸処理温度が70℃未満であると繊維の強度が低くなると共に、糸切れを発生し易く、150℃を越えると繊維の触感がプラスチック的な滑り触感になる傾向があり好ましくない。また、延伸倍率が200%未満であると繊維の強度発現が不十分となりやすく、450%を越えると延伸処理時に、糸切れを発生し易く好ましくない。
【0039】
さらに、延伸処理を施した繊維に熱処理を施して、2〜75%の緩和率で繊維を緩和処理することにより熱収縮率を低下させることができる、また、繊維表面の凹凸を整えて、人毛に類似した触感、半艶〜七部艶表面とする為にも該緩和処理が好ましい。該緩和率の範囲を外れると人工毛髪用繊維として、あるいはドールヘアー用繊維として、品質が低下する傾向があり好ましくない。該熱処理は、延伸処理と連動して実施することもできるし、切り離して実施することもできる。熱処理温度条件としては、雰囲気温度80〜150℃の雰囲気下で実施することが特に好ましい。また本発明に於いては、従来公知の溶融紡糸に関わる技術、例えば、各種ノズル断面形状に関わる技術、加熱筒に関わる技術、延伸処理に関わる技術、熱処理に関わる技術などは、自在に組み合わせて使用することが可能である。
【0040】
【実施例】
次に、実施例をあげて、本発明のさらに詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の適用限界を明らかにする為に例示するものに過ぎず、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
尚、表中の組成物等は、次のように略記する。
塩化ビニル樹脂:「PVC」、塩素化塩化ビニル系樹脂:「CPVC」、酢酸ビニル:「VAc」、粘度平均重合度:「M」、メルトインデックス:「MI」。また表3〜6における、組成物での配合剤の数値は、PVCとCPVCの合計=100重量部に対する各配合剤の重量部を表すものである。
【0041】
[実験1〜5(PVC/CPVCの配合比率)]
塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、表3に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しながら、内容物の温度が125℃になる迄、攪拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら攪拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却して、塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。尚、EVA樹脂は、酢酸ビニル含有量(VAc含有量)が30%、メルトインデックス(MI)が5のものを使用した。また、部分架橋塩化ビニル系樹脂は、THFに不溶なゲル分(ゲル分率)が13%で、THFに可溶な成分の粘度平均重合度(M)が760のものを使用した。該パウダーコンパウンドを表1に示す条件にて、溶融紡糸実験に供した。
【0042】
【表1】
Figure 0003804200
【0043】
溶融紡糸実験は、定常状態になってから、スクリュー回転数と押出量の関係を求め、押出量が7.4Kg/Hrsになる様にスクリュー回転数を決定した。ノズル圧力、樹脂温度は、ダイ圧計ならびに樹脂温度センサーをノズル部に設置して測定した。鉛直方向にノズルから溶融・流出したストランドを加熱紡糸筒に導入し、ここで該ストランドを瞬間的に加熱溶解し、ノズル直下約3mmの位置に設置した引取機にて、未延伸糸を一定速度で巻き取った。この際、該未延伸糸の繊度が約168デニール程度になる様に引取速度を調節した。
【0044】
この未延伸糸を製造する段階で、糸切れの発生状況を目視観察し、次の様に評価した。
[溶融紡糸時の糸切れ発生状況]
◎: 全く糸切れが発生しない
○:1時間に3回以内発生する
△:1時間に4〜15回発生する
またこの未延伸糸の着色状態を目視観察にて、次の様に評価した。
【0045】
[未延伸糸の着色状態]
◎:乳白色で黄色味がない
○:乳白色であるが、わずかに黄色味がある
△:かなり強い黄色味がある
該未延伸糸を延伸・熱処理機に導入し、延伸処理、次いで、熱緩和処理を行い、延伸糸を製造した。この際、熱緩和処理は、25%緩和に固定し、延伸処理は最終の延伸糸の繊度が65〜75デニールになる様に延伸倍率を若干調整した。
この延伸・熱処理時に発生する糸切れの発生状況を目視観察し、次の様に評価した。
【0046】
[延伸・熱処理時の糸切れ発生状況]
◎:全く糸切れが発生しない
○:1時間に3回以内発生する
△:1時間に4〜15回発生する
また、この延伸糸の表面艶・光沢を目視観察し、次の様に評価した。
【0047】
[延伸糸の艶状態]
◎(半艶状態):表面が平滑で、わずかに鈍い光沢があり、半艶状態を示す
○(七部艶状態):表面が平滑で、鈍い光沢があり、七部艶状態を示す
●(完全艶消状態):表面がザラザラで、光沢がなく、完全艶消状態を示す
△(八分艶状態):表面がやや平滑で、光沢があり、やや輝き感がある
×(艶有状態): 表面が平滑で、全面的に光沢があり、輝き感がある
さらに、この延伸糸を手で触り、その手触り触感を、次の様に評価した。
【0048】
[延伸糸の触感]
◎:表面が平滑で、サラサラとした触感がある
○:表面が平滑で、かすかに湿った触感があるが、サラサラ感がある
△(ザラザラ感):表面がザラザラで、ザラザラとした触感がある
●(プラスチック感):表面が平滑で、プラスチック的触感があり、滑り触感がある
またさらに、この延伸糸を指に数回巻き付け、その際の反発力、触感、柔軟性を、次の様に評価した。
【0049】
[延伸糸のしなやかさ]
◎:指にやわらかく、しなやかに巻き取ることができる
○:かすかに反発触感があるが、しなやかに巻き取ることができる
●(ゴワゴワ感):全体的に硬い感触で、かなり強い反発触感がある
△(ザラザラ感):指にやわらかく巻けるが、ザラザラとした触感がある
該延伸糸を引張試験、熱収縮試験に供し、強度および熱収縮率を求めた。尚、延伸糸の熱収縮率の測定は、100℃の雰囲気温度で、25分熱収縮させ、計算は、次の様に行なった。
【0050】
[熱収縮率]
(熱処理前の延伸糸長−熱処理後の延伸糸長)/熱処理前の延伸糸長さ×100
=熱収縮率(%)
これらの評価結果を表3に示す。
[実験6〜10(部分架橋塩化ビニル系樹脂の添加効果)]
実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、部分架橋塩化ビニル系樹脂(ゲル分率=13%、THF可溶分重合度=760)の添加量を変更して表4に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しながら内容物の温度が105℃になる迄攪拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら攪拌・混合を続け内容物の温度が70℃になる迄冷却して塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。尚、EVA系樹脂は、VAc含有量=25%で、メルトインデックス=3のものを使用した。該パウダーコンパウンドを表2に示した条件にて、ペレットコンパウンドとし、表1と同様の条件にて、溶融紡糸実験に供した。
【0051】
【表2】
Figure 0003804200
【0052】
該ペレットコンパウンドを、表1と同様の条件にて、溶融紡糸実験を行った。溶融紡糸実験は、定常状態になってから、スクリュー回転数と押出量の関係を求め、押出量が7.2Kg/Hrsになる様に、スクリュー回転数を決定した。
ノズル圧力、樹脂温度は、ダイ圧計ならびに樹脂温度センサーをノズル部に設置して測定した。鉛直方向にノズルから溶融・流出したストランドを加熱紡糸筒に導入し、ここで該ストランドを瞬間的に加熱溶解し、ノズル直下、約3mの位置に設置した引取機にて、未延伸糸を一定速度で巻き取った。この際、該未延伸糸の繊度が約168デニール程度になる様に引取速度を調節した。
【0053】
また、その他の紡糸条件などは、実験1〜5に示した方法と同様に行い、評価方法なども実験1〜5に示した方法と全く同様に行なった。これらの評価結果を表4に示す。
[実験11〜15(熱安定剤の添加・併用効果)]
実験1〜5と同様に塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いでEVA系樹脂(VAc含有量=45%、メルトインデックス=5)の添加量を変更して、表5に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しながら内容物の温度が115℃になる迄攪拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら攪拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄冷却して、塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。尚、部分架橋塩化ビニル系樹脂は、ゲル分率=3%で、THF可溶分重合度=960のものを使用した。
【0054】
該パウダーコンパウンドを実験1〜5に示した紡糸条件、延伸条件、加熱緩和処理条件と全く同様の条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。また、実験1〜5に示した試験方法、評価方法にて未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なった。これらの評価結果を表5に示す。
[実験16〜20(熱安定剤添加・併用効果)]
実験1〜5と同様に塩化ビニル系混合物100重量部が4.5Kgになる様に計量し、次いで表6に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しながら内容物の温度が125℃になる迄攪拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら攪拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄冷却して、塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。尚、部分架橋塩化ビニル系樹脂は、ゲル分率=8%で、THF可溶分重合度=920のものを使用し、EVA系樹脂は、EVA含量=25%のEVA−塩化ビニルグラフトポリマーを使用した。該パウダーコンパウンドを実験1〜5に示した紡糸条件、延伸条件、熱緩和処理条件にて溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。但し、実験16は、Cd系熱安定剤を主とした配合系であり、ノズル圧力が約450Kg/cm2程度になる様に、押出量を6.8Kg/Hrsに低下して実験を実施した。
【0055】
その他の実験は、押出量を7.8Kg/Hrsとなる様スクリュー回転数を調節して行なった。また、これに合わせて、引取速度、延伸倍率を調節した。さらに、実験1〜5に示した試験方法、評価方法にて、未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なった。評価結果を表6に示す。
【0056】
【表3】
Figure 0003804200
【0057】
表3の実験1〜5の比較から判る様に、塩素化塩化ビニル系樹脂の配合比率が、40重量%を越えるとノズル圧力が500Kg/cm2以上になり、押出機の設計圧力を超える状態になり安全な生産ができなくなる。またスクリュー回転数を低下すると、押出量が低下てし、生産性が低下する。また、塩素化塩化ビニル系樹脂の配合比率が、40重量%を越えると、溶融紡糸時の糸切れが頻繁に発生したり、未延伸糸の着色状態がやや黄色味を呈してくる傾向があり、さらに、延伸糸の艶も消え過ぎになり、触感もザラザラとした触感になり、かつ、繊維のしなやかさが劣る傾向が顕著となる。これらの実験から、塩化ビニル樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂の配合比率は、前者が100〜60重量%で、後者が0〜40重量%の範囲が最適であることが判る。
【0058】
【表4】
Figure 0003804200
【0059】
表4の実験6〜10の比較から判る様に、部分架橋塩化ビニル系樹脂の配合比率が35重量部を越えると、溶融紡糸時ならびに延伸処理・熱処理時の糸切れが頻繁に発生し、延伸糸の艶が消え過ぎとなるためザラザラとした触感になり、繊維のしなやかさが劣り、熱収縮率も高くなる傾向が顕著となるので、好ましくない。逆に、該配合比率を2部未満とすると、プラスチック感が出てきて好ましくない。これらの実験から、部分架橋塩化ビニル系樹脂の配合比率は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して2〜35重量部の範囲が最適であることが判る。
【0060】
【表5】
Figure 0003804200
【0061】
表5の実験11〜15の比較から判る様に、繊維柔軟性改質用樹脂の添加量が2重量部未満になると、未延伸糸のしなやかさが不足し、ゴワゴワとした触感の繊維となる。また、熱収縮率もやや高くなる傾向があり好ましくない。逆に、該樹脂の添加量が35重量部を越えると、組成の不均一化(CPVC成分の溶融が不均一となる)が起こり、溶融紡糸時あるいは延伸処理時の糸切れが頻繁になり、ザラザラとした触感の繊維となるため好ましくない。これらの実験から、繊維柔軟性改質用樹脂の配合比率は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、2〜35重量部の範囲が最適であることが判る。
【0062】
【表6】
Figure 0003804200
【0063】
表6の実験17〜20の比較から判る様に、ブチル錫マレエートを過剰に使用すると、繊維の熱収縮率が極端に高くなり、不均一組成となり、糸切れを発生する。また、繊維の触感もザラザラ感が出て好ましくない。実験16の結果から判る様に、Cd-Pb系の熱安定剤を使用すると、繊維の色調が黄色味を帯びて好ましくない。また、熱収縮率も錫系熱安定剤を使用した場合に比較して、やや高くなり好ましくない。これらの実験から、熱安定剤の配合比率は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5.5重量部の範囲が最適であることが判る。
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物によれば、品質に優れ、人毛に極めて類似した七部〜半艶表面の手触り触感を兼ね備えた塩化ビニル系繊維を、高い紡糸生産性を維持しながら、安全に製造することができる。

Claims (7)

  1. 粘度平均重合度が650〜1650の塩化ビニル樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、エチレン−酢酸ビニル系樹脂からなる繊維柔軟性改質用樹脂2〜35重量部と、熱安定剤0.2〜5重量部、ならびに繊維表面の艶消し剤として部分架橋塩化ビニル系樹脂、アクリル系艶消し剤、充填剤から選択される1種または2種以上を2〜35重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物からなることを特徴とする塩化ビニル系繊維。
  2. 熱安定剤が錫系安定剤である、請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
  3. 繊維表面の艶消し剤が、テトラヒドロフランに不溶なゲル分を0.5〜35重量%、テトラヒドロフランに可溶な成分の粘度平均重合度が450〜1100の部分架橋塩化ビニル系樹脂である請求項1又は2記載の塩化ビニル系繊維。
  4. 繊維表面の艶消し剤が、メチルメタクリレートを主成分とし、メチルエチルケトンに不溶なゲル分を10〜90重量%含有するアクリル系艶消し剤である請求項1又は2記載の塩化ビニル系繊維。
  5. 繊維表面の艶消し剤が、テトラヒドロフランに不溶なゲル分を0.5〜35重量%、テトラヒドロフランに可溶な成分の粘度平均重合度が450〜1100の部分架橋塩化ビニル系樹脂と平均粒子径が10μm以下の炭酸カルシウム、タルク、クレーから選択される1種または2種以上からなる充填剤とからなり、塩化ビニル系混合物に対し合計で2〜35重量部配合してなる請求項1又は2記載の塩化ビニル系繊維。
  6. 粘度平均重合度が650〜1650の塩化ビニル樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、エチレン−酢酸ビニル系樹脂からなる繊維柔軟性改質用樹脂2〜35重量部と、熱安定剤0.2〜5重量部、ならびに繊維表面の艶消し剤として部分架橋塩化ビニル系樹脂、アクリル系艶消し剤、充填剤から選択される1種または2種以上を2〜35重量部を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸することを特徴とする塩化ビニル系繊維の製造方法。
  7. 熱安定剤が錫系安定剤である、請求項6記載の塩化ビニル系繊維の製造方法。
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