JPH11310640A - セルロースアシレート溶液の調製方法、セルロースアシレートフィルムの製造方法及びセルロースアシレートフィルム - Google Patents

セルロースアシレート溶液の調製方法、セルロースアシレートフィルムの製造方法及びセルロースアシレートフィルム

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JPH11310640A JP10118262A JP11826298A JPH11310640A JP H11310640 A JPH11310640 A JP H11310640A JP 10118262 A JP10118262 A JP 10118262A JP 11826298 A JP11826298 A JP 11826298A JP H11310640 A JPH11310640 A JP H11310640A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 メチレンクロライドのような塩素系炭化水素
を実質的に使用しない非塩素系有機溶媒を用いることに
よって、白濁しないセルロースアシレート溶液を調製す
る方法を、またその溶液を用いたヘイズの非常に小さい
透明性に優れたセルロースアシレートフィルム及びその
製造法を提供する。 【解決手段】 −100〜−10℃で移送中の非塩素系
有機溶媒に、10〜100ppmのアルカリ土類金属を
含有するセルロースアシレートを連続的に添加して形成
した混合物を膨潤させる工程、膨潤させた混合物から分
離手段により非塩素系有機溶媒の一部を分離して濃縮す
る工程、及び濃縮後の混合物を0〜120℃で移送中の
前記非塩素系有機溶媒と実質的に同組成の非塩素系有機
溶媒を混合し溶液を形成する工程を経ることを特徴とす
るセルロースアシレート溶液の調製方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はハロゲン化銀写真感
光材料又は液晶画像表示装置に有用なセルロースアシレ
ートフィルム製造に用いるセルロースアシレート溶液の
調製方法、その溶液を用いたセルロースアシレートフィ
ルムの製造方法及びその方法で製造されたセルロースア
シレートフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ハロゲン化銀写真感光材料や液晶
画像表示装置に使用されているセルローストリアセテー
トフィルムを製造する際に使用されるセルローストリア
セテート溶液の有機溶媒には、メチレンクロライドのよ
うな塩素系炭化水素が使用されている。メチレンクロラ
イド(沸点41℃)は従来からセルローストリアセテー
トの良溶媒として用いられ、製造工程の製膜及び乾燥工
程において沸点が低いことから乾燥させ易いという利点
により好ましく使用されている。ところが、最近塩素系
化合物の使用が制限される方向にあり、メチレンクロラ
イドを使用しないか大幅に削減できるセルローストリア
セテートフィルムの製造方法の発明が待たれていた。従
来、メチレンクロライド以外にセルローストリアセテー
トに対する溶解性を示す溶媒として知られているものに
は、アセトン(沸点56℃)、酢酸メチル(沸点56.
3℃)、テトラヒドロフラン(沸点65.4℃)、1,
3−ジオキソラン(沸点75℃)、ニトロメタン(沸点
101℃)、1、4−ジオキサン(沸点101℃)、エ
ピクロルヒドリン(沸点116℃)、N−メチルピロリ
ドン(沸点202℃)などがある。これらの有機溶媒は
実際に溶解試験を行ってみると必ずしも良溶媒とは言い
難いものもあり、また爆発などの懸念のあるもの、沸点
が高いもの等実用に供し得るものは殆どなかった。
【0003】上記溶媒中の中で、沸点の低いアセトンは
通常の方法ではセルローストリアセテートを膨潤させる
だけで、溶解させるまでには至らなかった。近年、セル
ローストリアセテートをアセトンに溶解させて繊維やフ
ィルムを作る試みがなされている。
【0004】J.M.G.Cowie等は、Die M
akromolekulare Chemie、143
巻、105〜114頁(1971年)においてセルロー
ストリアセテート(酢化度60.1〜61.3%)をア
セトン中で混合物を−80〜−70℃に冷却した後、加
温することによって0.5〜5重量%の稀薄溶液が得ら
れたと報告している。このような低温で溶解する方法を
冷却溶解方法という。また、上出健二等は、繊維機械学
会誌、34巻、7号、57〜61頁(1981年)の
「三酢酸セルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸」の
中で冷却溶解方法を用いた紡糸技術について述べてい
る。
【0005】特開平9−95544号及び同9−955
57号公報では、上記技術を背景に、実質的にアセトン
からなる有機溶媒を用いた、或いはアセトンと他の有機
溶媒を共用した冷却溶解方法によってセルローストリア
セテートを溶解し、フィルム製造に適用することを提案
している。
【0006】特開平9−95538号公報にはアセトン
以外のエーテル類、ケトン類或いはエステルから選ばれ
る有機溶媒を用いた冷却溶解方法によりセルローストリ
アセテートを溶解し、フィルムを作製しており、これら
の有機溶媒としては2−メトキシエチルアセテート、シ
クロヘキサノン、ギ酸エチル、及び酢酸メチルなどが好
ましいとしている。
【0007】特開平10−45804号公報では、アセ
チル基と炭素原子数が3以上のアシル基が特定の関係に
あるアセトンや酢酸メチルなどの溶媒に可溶なセルロー
ス混合脂肪酸エステルが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来のアセトン溶媒を
用いた冷却溶解方法により調製したセルローストリアセ
テート溶液を用いて製膜されたセルローストリアセテー
トフィルムは平面性が劣っていたり、ヘイズが高かった
り、しかもそれらの変動が大きいという問題があった。
【0009】また、冷却溶解方法を用いたセルロースア
シレート溶液は粘度の調製がうまく行かず、製膜のため
に配管中を送液する際に粘度が高く、高い圧力が必要に
なり、製膜が困難であったためセルロースアシレートで
はうまく行かなかった。
【0010】アセチル基以外のアシル基の置換度が高い
ものは、物性が十分でなく、実際的には、アシル基の置
換度の小さいものしか実用に使えないものであった。ア
シル基の置換度が高い場合は、冷却溶解方法などの特別
な溶解法を用いなくてもよいのだが、アシル基の置換度
が小さい場合は、やはり冷却溶解方法により溶解させる
必要があり、同上の問題があった。
【0011】一般に、セルローストリアセテート溶液を
ダイからエンドレスに走行する支持体上に流延し、次い
で支持体から剥離後ウェブから溶媒を蒸発させてセルロ
ーストリアセテートフィルムが、いわゆる溶液流延製膜
方法により、製造されている。ところが、流延される溶
液の粘度が高すぎると、支持体上でのレベリングが不充
分であったり、ひどいときは鮫肌が発生し平面性の劣っ
たフィルムとなってしまうのである。通常、平面性の良
好なセルローストリアセテートフィルムを得るには、セ
ルローストリアセテートのメチレンクロライド・メタノ
ール溶液の粘度を、0.5Pa・s(5ポイズ)から5
0Pa・s(500ポイズ)にするのが好ましい範囲で
ある。セルロースアシレート溶液の粘度を低下させるに
は、セルロースアシレートの重合度を下げるとか、濃度
を薄くすることで達成出来るが、これでは出来上がった
フィルムの機械的強度が低下したり、溶媒の蒸発に時間
とエネルギーがかかり実用化に乏しいものであった。特
公昭61−40095号公報には、セルロースアセテー
トに対して、カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土
類金属を30ppm以下にすることによって、通常の方
法(有機溶媒としてメチレンクロライドを使用し、常
圧、常温付近で溶解する方法)で溶解した溶液の粘度が
著しく低下するため製膜し易くなったと記載されてい
る。この公報にはヘイズのことについては何の記述もな
いが、本発明者の冷却溶解方法試験の結果では、アルカ
リ土類金属がある量以上含有しているセルロースアシレ
ート溶液は、白濁し易く、その溶液を用いて製膜したフ
ィルムはヘイズが高いという関係があることがわかっ
た。アセトン等の有機溶媒を用い冷却溶解方法で調製し
たドープは白濁が発生し易いという問題、またそれから
製膜されたフィルムのヘイズが高くなり易いという問
題、更にそれらが変動し易いという問題を解決すること
が、塩素系溶媒を出来る限りの使用制限の方向付けが可
能となる。また冷却溶解方法を活用していく上でも、こ
の課題の解決が重要となった。
【0012】本発明の目的は、メチレンクロライドのよ
うな塩素系炭化水素を実質的に使用しない他の非塩素系
有機溶媒を用いることによって、白濁しないセルロース
アシレート溶液を調製する方法を、またその溶液を用い
たヘイズの非常に小さい透明性に優れたセルロースアシ
レートフィルム及びその製造法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、塩素系有
機溶媒で、セルロースアシレートをよく溶解し、しかも
その有機溶媒を用いたセルロースアシレート溶液が白濁
しない調製方法、またその溶液を用いてヘイズの小さい
透明なセルロースアシレートフィルムを及びその製造方
法を鋭意検討したところ、セルロースアシレートに含ま
れるアルカリ土類金属の含有量が白濁やヘイズに関係し
ていることを見出し、またそれらの量によって、従来白
濁やヘイズの不安定さが異なることも見出した。
【0014】本発明の上記目的は、下記の構成により達
成することが出来た。
【0015】(1)非塩素系有機溶媒と、10〜100
ppmのアルカリ土類金属を含有するセルロースアシレ
ートとを混合して混合物を形成する工程、形成した混合
物を−100〜−10℃で冷却処理する工程、及び冷却
処理後の混合物を0〜50℃で処理する工程を経ること
を特徴とするセルロースアシレート溶液の調製方法。
【0016】(2)非塩素系有機溶媒を含有する有機溶
媒を−100〜−10℃に冷却する工程、10〜100
ppmのアルカリ土類金属を含有するセルロースアシレ
ートと冷却した非塩素系有機溶媒とを混合する工程、形
成した混合物を膨潤させる工程、及び膨潤された混合物
を加熱溶解する工程を経ることを特徴とするセルロース
アシレート溶液の調製方法。
【0017】(3)非塩素系有機溶媒を−100〜−1
0℃に冷却する工程、10〜100ppmのアルカリ土
類金属を含有するセルロースアシレートと冷却した非塩
素系有機溶媒とを混合する工程、形成した混合物を膨潤
させる工程、膨潤させた混合物から分離手段により非塩
素系有機溶媒の一部を分離し濃縮する工程、及び濃縮し
た混合物を加熱溶解する工程を経ることを特徴とするセ
ルロースアシレート溶液の調製方法。
【0018】(4)非塩素系有機溶媒を−100〜−1
0℃に冷却する工程、10〜100ppmのアルカリ土
類金属を含有するセルロースアシレートと冷却した非塩
素系有機溶媒とを混合する工程、形成した混合物を膨潤
させる工程、0〜120℃に調温した前記非塩素系有機
溶媒と実質的に同組成の非塩素系有機溶媒と膨潤させた
混合物とを混合し溶液を形成する工程を経ることを特徴
とするセルロースアシレート溶液の調製方法。
【0019】(5)−100〜−10℃で移送中の非塩
素系有機溶媒に、10〜100ppmのアルカリ土類金
属を含有するセルロースアシレートを連続的に添加して
形成した混合物を膨潤させる工程、膨潤させた混合物か
ら分離手段により非塩素系有機溶媒の一部を分離して濃
縮する工程、及び濃縮後の混合物を加熱溶解する工程を
経ることを特徴とするセルロースアシレート溶液の調製
方法。
【0020】(6) −100〜−10℃で移送中の非
塩素系有機溶媒に、10〜100ppmのアルカリ土類
金属を含有するセルロースアシレートを連続的に添加し
て形成した混合物を膨潤させる工程、膨潤させた混合物
から分離手段により非塩素系有機溶媒の一部を分離して
濃縮する工程、及び濃縮後の混合物と0〜120℃の前
記非塩素系有機溶媒と実質的に同組成の非塩素系有機溶
媒を混合し溶液を形成する工程を経ることを特徴とする
セルロースアシレート溶液の調製方法。
【0021】(7)−100〜−10℃で移送中の非塩
素系有機溶媒に、10〜100ppmのアルカリ土類金
属を含有するセルロースアシレートを連続的に添加して
形成した混合物を膨潤させる工程、膨潤させた混合物か
ら分離手段により非塩素系有機溶媒の一部を分離して濃
縮する工程、及び濃縮後の混合物を0〜120℃で移送
中の前記非塩素系有機溶媒と実質的に同組成の非塩素系
有機溶媒を混合し溶液を形成する工程を経ることを特徴
とするセルロースアシレート溶液の調製方法。
【0022】(8)前記分離した非塩素系有機溶媒を循
環して使用することを特徴とする(3)、(5)、
(6)又は(7)に記載のセルロースアシレート溶液の
調製方法。
【0023】(9)非塩素系有機溶媒と、10〜100
ppmのアルカリ土類金属を含有するセルロースアシレ
ートとを混合して混合物を形成する工程、形成した混合
物を50〜4000kgf/cm2の圧力をかけて処理
する工程、及び加圧後の混合物を0.1〜10kgf/
cm2の圧力下で処理する工程を経ることを特徴とする
セルロースアシレート溶液の調製方法。
【0024】(10)セルロースアシレートが水酸基が
炭素原子数2〜5のアシル基で置換されたものであるこ
とを特徴とする(1)乃至(9)の何れかに記載のセル
ロースアシレート溶液の調製方法。
【0025】(11)セルロースアシレートが下記式
(I)乃至(IV)の全てを満足することを特徴とする
(1)乃至(10)の何れか1項に記載のセルロースア
シレート溶液の調製方法。
【0026】(I) 2.6≦A+B≦3.0 (II) 2.0≦A≦3.0 (III) 0≦B≦0.8 (IV) 1.9<A−B ここで、式中A及びBは、セルロースの水酸基に置換さ
れているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の、
またBは炭素原子数3乃至5のアシル基の置換度であ
る。
【0027】(12)Bが下記式(V)を満足すること
を特徴とする(11)に記載のセルロースアシレート溶
液の調製方法。
【0028】(V) 0<B≦0.3 (13)セルロースアシレート中のアルカリ土類金属の
含有量が10〜50ppmであることを特徴とする
(1)乃至(12)の何れか1項に記載のセルロースア
シレート溶液の調製方法。
【0029】(14)セルロースアシレートがアセチル
基置換度2.70〜2.96のセルローストリアセテー
トであることを特徴とする(1)乃至(11)又は(1
3)の何れか1項に記載のセルロースアシレート溶液の
調製方法。
【0030】(15)セルロースアシレートの粘度平均
重合度が250〜550であることを特徴とする(1)
乃至(14)の何れか1項に記載のセルロースアシレー
ト溶液の調製方法。
【0031】(16)前記セルロースアシレート溶液中
のセルロースアシレートの濃度が15〜35重量%であ
ることを特徴とする(1)乃至(15)の何れか1項に
記載のセルロースアシレート溶液の調製方法。
【0032】(17)非塩素系有機溶媒が60重量%の
酢酸メチル及び40重量%以下の酢酸メチル以外の非塩
素系有機溶媒であることを特徴とする(1)乃至(1
6)の何れか1項に記載のセルロースアシレート溶液の
調製方法。
【0033】(18)酢酸メチル以外の非塩素系有機溶
媒がアセトンであることを特徴とする請求項1乃至17
の何れか1項に記載のセルロースアシレート溶液の調製
方法。
【0034】(19)前記セルロースアシレート溶液を
調製する何れかの工程で添加剤を添加するか、前記工程
の後に添加剤を添加する工程を設けることを特徴とする
(1)乃至(18)の何れか1項に記載のセルロースア
シレート溶液の調製方法。
【0035】(20)添加剤が可塑剤であって、可塑剤
をセルロースアシレートに対して5重量%以上30重量
%以下で添加することを特徴とする(19)に記載のセ
ルロースアシレート溶液の調製方法。
【0036】(21)(1)乃至(20)の何れか1項
に記載のセルロースアシレート溶液を用いて、溶液流延
製膜方法により製膜することを特徴とするセルロースア
シレートフィルムの製造方法。
【0037】(22)(21)に記載の方法で製造され
たことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【0038】本発明を詳述する。
【0039】本発明のセルロースアシレートは、セルロ
ースの水酸基への置換度が下記式(I)乃至(IV)の全
てを満足するものである。
【0040】(I) 2.6≦A+B≦3.0 (II) 2.0≦A≦3.0 (III) 0≦B≦0.8 (IV) 1.9<A−B ここで、式中A及びBはセルロースの水酸基に置換され
ているアシル基の置換基を表し、Aはアセチル基の置換
度、またBは炭素原子数3〜5のアシル基の置換度であ
る。セルロースには1グルコース単位に3個の水酸基が
あり、上記の数字はその水酸基3.0に対する置換度を
表すもので、最大の置換度が3.0である。セルロース
トリアセテートは一般にAの置換度が2.6以上3.0
以下であり(この場合、置換されなかった水酸基が最大
0.4もある)、B=0の場合がセルローストリアセテ
ートである。本発明のセルロースアシレートは、アシル
基が全部アセチル基のセルローストリアセテート、及び
アセチル基が2.0以上で、炭素原子数が3乃至5のア
シル基が0.8以下、置換されなかった水酸基が0.4
以下のものが好ましい。炭素原子数3乃至5のアシル基
の場合、0.3以下が物性の点から特に好ましい。
【0041】なお、置換度は、セルロースの水酸基に置
換する酢酸及び炭素原子数3乃至5の脂肪酸の結合度を
測定し、計算によって得られる。測定方法としては、A
STMのD−817−91に準じて実施することが出来
る。
【0042】本発明に使用するセルロースアシレートの
重合度(粘度平均)は200〜700が好ましく、特に
250〜550のものが好ましい。一般的にセルロース
トリアセテートを含むセルロースアシレートフィルム、
繊維又は成型品の機械的強度がタフであるためには重合
度が200以上あることが必要とされており、祖父江
寛、右田伸彦編「セルロースハンドブック」朝倉書房
(1958)や、丸沢廣、宇田和夫編「プラスチック材
料講座17」日刊工業新聞社(1970)に記載されて
いる。本発明のセルロースアシレートフィルムの重合度
は特に好ましくは250〜350である。粘度平均重合
度はオストワルド粘度計で測定することができ、測定さ
れたセルロースアシレートの固有粘度[η]から下記式
により求められる。
【0043】DP=[η]/Km (式中DPは粘度平均重合度、Kmは定数6×10-4) 本発明に用いられるセルロースアシレートの原料のセル
ロースとしては、綿花リンターや木材パルプなどがある
が、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシ
レートでも使用出来るし、混合して使用してもよい。
【0044】本発明に用いられるセルローストリアセテ
ートは写真用グレードのものが好ましく、市販の写真用
グレードのものは粘度平均重合度、酢化度等の品質を満
足して入手することが出来る。写真用グレードのセルロ
ーストリアセテートのメーカーとしては、ダイセル化学
工業(株)、コートルズ社、ヘキスト社、イーストマン
コダック社等があり、何れの写真用グレードのセルロー
ストリアセテートも使用出来る。
【0045】また、本発明に使用するアセチル基と炭素
原子数3〜5のアシル基を有するセルロースアシレート
はセルロース混合脂肪酸エステルとも呼ばれている。ア
セチル基の他の炭素原子数3〜5のアシル基はプロピオ
ニル基(C25CO−)、ブチリル基(C37CO−)
(n−、i−)、バレリル基(C49CO−)(n−、
i−、s−、t−)で、これらのうちn−置換のものが
フィルムにした時の機械的強さ、溶解し易さ等から好ま
しく、特にn−プロピオニル基が好ましい。
【0046】また、アセチル基の置換度が低いと機械的
強さ、耐湿熱性が低下する。炭素原子数3〜5のアシル
基の置換度が高いと酢酸メチルとアセトンの混合液への
溶解性は向上するが、それぞれの置換度が前記の範囲で
あれば良好な物性を示す。
【0047】これらのアシル基のアシル化剤としては、
酸無水物や酸クロライドである場合は反応溶媒としての
有機溶媒は、有機酸、例えば酢酸やメチレンクロライド
等が使用される。触媒としては、硫酸のようなプロトン
性触媒が好ましく用いられる。アシル化剤が酸クロライ
ド(例えばCH3CH2COCl)の場合には塩基性化合
物が用いられる。工業的な最も一般的な方法は、セルロ
ースをアセチル基及び他のアシル基に対応する脂肪酸
(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸)又はそれらの酸
無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水
吉草酸)を含む混合有機酸成分でアシル化してセルロー
スアシレートを反応する。反応後は酢酸カルシウムや酢
酸マグネシウムで硫酸触媒を中和し、水で沈殿させてカ
ッティングし、粒子化する。更に水洗を行い、乾燥させ
てセルロースアシレートが出来上がる。本発明に用いら
れるセルロースアシレートの具体的な製造方法について
は、例えば、特開平10−45804号公報に記載され
ている方法により合成出来る。
【0048】セルロースアシレートに含まれているアル
カリ土類金属は、上記のように、セルロースアシレート
を合成する過程で用いられる硫酸等の酸触媒を、反応終
了後中和するために使用される酢酸カルシウムや酢酸マ
グネシウム等のアルカリ土類金属であり、中和後の反応
液をフレーク状に裁断する工程での水処理或いは水洗処
理工程で触媒や中和剤その他の反応残査などが除去され
た後にセルロースアシレートに残存したものである。従
って除去工程の条件が常に一定で残存量も一定ならば、
白濁とかヘイズの変動も少ないと思われるが、実際変動
することから、残存量が一定になっていないのではない
かと考えられる。しかしながら、例え残存量が一定であ
っても量が多くては白濁やヘイズが高目のレベルに安定
してしまう。本発明はこの量を減少させ、且つほぼ一定
量に保たれたセルロースアシレートを使用することによ
って、目的が達成される。
【0049】本発明のセルロースアシレートが含有する
アルカリ土類金属はセルロースアシレートに対して10
〜100ppm、好ましくは10〜50ppmであり、
この範囲が白濁やヘイズが最小値になることを見出した
のである。しかし9ppm以下でも白濁やヘイズは低い
が、そのような低い含有量のアルカリ土類金属を得るに
は処理に時間がかかり、工業的にはコストがかかり過ぎ
る。アルカリ土類金属含有量を減少させるには、1例と
して、特公昭61−40095号公報に記載があるよう
な、「セルローストリアセテート10gを氷酢酸100
0gに溶解させる。次いで外酢酸溶液を撹拌しながら1
000gの水を加え、セルローストリアセテートを沈殿
させる。沈殿したセルローストリアセテートを濾過によ
り取り出し、110℃で一昼夜乾燥させる」とある方法
を使用することが出来る。この方法はあまり実用的では
ないが、試料を作製するには適当な方法である。他に
は、酢酸メチル、アセトンや1,3−ジオキソランのよ
うな水溶性の有機溶媒にセルロースアシレートを膨潤或
いは溶解させて、水に激しく撹拌しながら投入する方
法、また、アシル化反応工程、中和工程を経てセルロー
スアシレートの固形化の際、セルロースアシレート溶液
を水中に沈殿させる時に更に激しく投入するか、或いは
出来るだけ細かい粒子状にすることによっても本発明の
目的のセルロースアシレートが得られる。通常、例え
ば、酢酸マグネシウムを中和反応に用いる際、硫酸触媒
に対して過剰に用いられ、マグネシウムがそのまま残る
とするとセルロースアシレートに対して数千ppmのオ
ーダーが残ることになり、処理を十分行う必要がある。
【0050】本発明の冷却溶解方法及び高圧溶解方法に
ついて述べる。
【0051】本発明の溶解方法に使用するセルロースア
シレート溶液(以降、ドープと呼ぶこともある)を調製
するための非塩素系有機溶媒といては、ギ酸エチル、ギ
酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチルまたは酢酸2−メ
トキシエチル等のエステル類、アセトン、メチルエチル
ケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロ
ヘキサノンまたはメチルシクロヘキサノン等のケトン
類、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、1,
4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロ
フラン、アニソール、2−エトキシエチルアセテートま
たは2−メトキシエタノール等のエーテル類、メタノー
ル、エタノール、イソプロピルアルコール又はフルオロ
アルコール等のアルコール類等が好ましく用いられる。
これらの非塩素系有機溶媒は2種以上併用してもよい。
本発明において、非塩素系有機溶媒は、特に酢酸メチル
とその他の非塩素系有機溶媒との組み合わせが好まし
い。特に酢酸メチルとの組み合わせで好ましい酢酸メチ
ル以外の非塩素系有機溶媒としては、アセトン、ギ酸エ
チル、シクロヘキサノンであるが、特にアセトンが溶解
性、溶解速度が早い等から最も好ましい。本発明に使用
される非塩素系有機溶媒の使用量は、全有機溶媒に対し
て酢酸メチルが60重量%以上であり、他の非塩素系有
機溶媒が40重量%以下である。好ましくは、前者が6
5〜85重量%で、後者が15〜35重量%である。こ
れら以外のその他の非塩素系有機溶媒を全有機溶媒に対
して20重量%以下含んでいてもよい。以下非塩素系有
機溶媒を単に有機溶媒と呼ぶことがある。
【0052】本発明のドープに用いる酢酸メチルとギ酸
エチル、アセトン及びシクロヘキサノン以外で混合して
好ましく用いられる非塩素系有機溶媒としては、フルオ
ロアルコールで、全有機溶媒量の10重量%以下含有さ
せると、膨潤速度が早く、透明性のよいセルロースアシ
レート溶液を得ることが出来る。フルオロアルコールと
しては沸点が165℃以下のものがよく、好ましくは1
11℃以下がよく、更に80℃以下が好ましい。フルオ
ロアルコールは炭素原子数が2から10程度、好ましく
は2から8程度のものがよい。また、フルオロアルコー
ルはフッ素原子含有脂肪族アルコールで、置換基があっ
てもなくてもよい。置換基としてはフッ素原子含有或い
はなしの脂肪族置換基、芳香族置換基などがよい。この
ようなフルオロアルコールは例えば、(以下括弧内は沸
点である) 2−フルオロエタノール(103℃)、2,2,2−ト
リフルオロエタノール(80℃)、2,2,3,3−テ
トラフルオロ−1−プロパノール(109℃)、1,3
−ジフルオロ−2−プロパノール(55℃)、1,1,
1,3,3,3−ヘキサ−2−メチル−2−プロパノー
ル(62℃)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオ
ロ−2−プロパノール(59℃)、2,2,3,3,3
−ペンタフルオロ−1−プロパノール(80℃)、2,
2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール
(114℃)、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフ
ルオロ−1−ブタノール(97℃)、パーフルオロ−t
ert−ブタノール(45℃)、2,2,3,3,4,
4,5,5−オクトフルオロ−1−ペンタノール(14
2℃)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−
1,5−ペンタンジオール(111.5℃)、3,3,
4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデ
カフルオロ−1−オクタノール(95℃)、2,2,
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8
−ペンタデカフルオロ−1−オクタノール(165
℃)、1−(ペンタフルオロフェニル)エタノール(8
2℃)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル
アルコール(115℃)、などが含まれる。これらのフ
ルオロアルコールは一種又は二種以上使用してもよい。
【0053】また、本発明のドープには炭素数が1から
6の低級アルコールを含有させてもよい。例えば、メタ
ノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノー
ル、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノー
ル、シクロヘキサノールなどが挙げられる。中でもメタ
ノール、エタノール、n−ブタノールが好ましい。含有
量としては、全有機溶媒量に対して20重量%以下が好
ましい。このように炭素数が1〜6の低級アルコールを
含有させたセルロースアシレート溶液は、流延キャステ
ィングした際、残溶剤を多く含んだ状態でも膜の強度が
強く、支持体のベルトやドラム上から剥離するのが容易
となる。
【0054】本発明のドープの調製方法について述べ
る。
【0055】本発明の冷却溶解方法は、酢酸メチルと他
の非塩素系有機溶媒(特に好ましい例としては酢酸メチ
ルとアセトンであるが)の混合有機溶媒に本発明のセル
ロースアシレートを室温で撹拌しながら徐々に添加し、
セルロースアシレートが有機溶媒中で膨潤状態の混合物
とし、次に、この混合物を冷却し、後に加温して溶解す
る方法である。冷却温度は、溶媒の凝固点以上の温度で
あればよく、溶解性の点と扱い易い温度ということから
−100〜−10℃の温度範囲が好ましい。この冷却物
を0〜120℃の温度に加温すると、セルロースアシレ
ートが溶媒中に溶解して、均一な溶液が得られる。な
お、溶解を速めるために、冷却、加温の操作を繰り返し
てもよい。溶解が十分であるかどうかは、目視により溶
液の概観を観察することで判断することができる。冷却
溶解方法においては、冷却時の結露による水分の混入を
避けるため、密閉容器を用いることが好ましい。また、
冷却操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧する
と、更に溶解時間を短縮することができる。加圧及び減
圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが好ま
しい。
【0056】冷却溶解方法の溶解時間をより効率化した
高速溶解方法が本発明の目的を容易に達成し得る方法と
して好ましく用いられる。
【0057】高速溶解の第1の方法を図1をもって説明
する。図1は請求項2の1例を示すもので、混合工程の
断面模式図である。本発明に使用する有機溶媒1を予め
−100〜−10℃に冷却器2で冷却して保温ジャケッ
ト5付きの混合釜3に有機溶媒導入口9から入れ、撹拌
機4で撹拌しながら、サイロ7に貯蔵されているセルロ
ースアシレート6を切り出し送粉機8で輸送し、セルロ
ースアシレート導入口10から混合釜3に投入し混合す
るとセルロースアシレートは即座に膨潤する。本発明の
低温の有機溶媒にセルロースアシレートを投入すること
により、従来のセルロースアシレートと有機溶媒を混合
してから冷却する方法よりも、膨潤時間を大幅に短縮す
ることが出来る。膨潤した混合物は混合物排出口11か
ら次の溶解工程に送られる。溶解工程では膨潤した混合
物を加熱溶解するところで、従来の膨潤した混合物を加
温してもよい。この例の冷却した有機溶媒にセルロース
アシレートを混合する方法以外に、セルロースアシレー
トに冷却した有機溶媒を添加して混合してもよい。
【0058】高速溶解の第2の方法を図2をもって説明
する。図2は、請求項3の1例を示すもので、混合工程
の断面模式図であり、図1の混合釜3と同様の混合釜1
3の内部に円筒形で混合釜13の下部に固定されている
メッシュ(分離手段の1例)14、撹拌機15、保温ジ
ャケット24、有機溶媒導入口19、セルロースアシレ
ート導入口20、混合物排出口21及び分離された有機
溶媒排出口23等を装備している。既に−100〜−1
0℃に冷却されている膨潤した混合物12から膨潤に関
与していない有機溶媒をメッシュ14を通して分離し、
メッシュ14の外側に分離された有機溶媒22を有機溶
媒排出口23から系外に排出することによって膨潤した
混合物12を濃縮することが出来る。分離手段として
は、図2のような混合釜13に固定された円筒形のメッ
シュ14の他に、撹拌機15の回転と反対側に回転する
篭状のメッシュ(固定されていない)のようなものでも
よく、分離出来るものなら制限なく用いることが出来
る。メッシュの孔の大きさは0.1〜10mm程度でよ
く、また目詰まりを防止するために、振動を与えたり、
スクレーパーのようなもので表面を掻いてもよく、目詰
まり防止になるものは制限なく使用出来る。本発明の特
徴は混合工程で多量の有機溶媒中にセルロースアシレー
トを投入することによって膨潤をより早く行わせること
が出来ることで、またセルロースアシレートが有機溶媒
中でままこ(粉体の塊の表面だけが溶解或いは膨潤して
中は粉体のままの状態)にならず膨潤効率がよいのも特
徴である。濃縮された混合物は混合物排出口21から排
出され、次の溶解釜(図には描かれていない)に導入さ
れ溶解される。溶解工程では濃縮された状態で溶解して
もよいし、また仕上がりドープの濃度まで希釈してもよ
い。この例の他に、セルロースアシレートに冷却した有
機溶媒を添加してもよい。なお、16はセルロースアシ
レート、17はサイロ、18は切り出し送粉機である。
【0059】高速溶解の第3の方法を図3をもって説明
する。図3は請求項4の1例を示すもので、溶解工程の
断面模式図である。予め熱交換機(加温器)28で0〜
120℃に調温した冷却の有機溶媒と同組成の有機溶媒
(0〜120℃の有機溶媒は冷却に使用する有機溶媒と
同じ組成であり、以降は断らない限り同組成のものであ
る)を有機溶媒導入口30から溶解釜25に投入してお
き、そこへ−100〜−10℃の冷却膨潤した混合物を
混合物導入口29から溶解釜25に投入し溶解する。混
合物を調温した有機溶媒26に投入すると殆ど瞬時にセ
ルロースアシレートの溶解が起こり、溶解時間を大幅に
短縮することが出来る。また溶解し残りも殆どなく溶解
性も優れている。なお、有機溶媒導入口30からは添加
剤を添加してもよい。溶解された混合物は混合物排出口
31から貯蔵釜(図には描かれていない)に送られる。
この方法の他に、混合物に調温した有機溶媒を添加して
も良い。なお、27は撹拌機、32は保温ジャケットで
ある。
【0060】高速溶解の第4の方法を図4をもって説明
する。図4は請求項5の1例を示すもので、連続混合工
程及び連続有機溶媒分離工程の断面模式図である。冷却
器36で−100〜−10℃に冷却された有機溶媒を有
機溶媒導入口37を通して傾斜している混合機33に導
入し、有機溶媒がインラインミキサー(混合物の輸送手
段の1例として)35を回転させながら混合機33内を
移送し、別にサイロ39からセルロースアシレート38
を切り出し送粉機40で送り、セルロースアシレート導
入口41から混合機33内の移送中の有機溶媒にセルロ
ースアシレートを添加(以降投入という語を使用するこ
とがある)し、仕切板34に沿って回転しているインラ
インミキサー35により有機溶媒の移送と共に混合しな
がら流れ、セルロースアシレートを膨潤し、混合機33
の終点49で有機溶媒を分離手段としてのメッシュ43
を有する有機溶媒分離器42に導入し、膨潤に関与して
いない有機溶媒45をメッシュ43を通して分離して混
合物44を濃縮し、濃縮された混合物44を混合物排出
口46から次の溶解釜(図には描かれていない)に導入
する。分離された有機溶媒45を有機溶媒排出口47か
ら排出する。次に、濃縮後の混合物を次の溶解釜で加温
して溶解するか、調温した有機溶媒中に溶解し希釈して
もよい。移送中の有機溶媒にセルロースアシレートを混
合する時のセルロースアシレートの添加速度は瞬間的な
有機溶媒に対する濃度としては、0.5〜40重量%程
度でよく、好ましくは1〜20重量%である。また、投
入時の濃度が低ければ低いほど膨潤速度が早く効果的で
ある。有機溶媒の流れは0.01〜5m3/秒が好まし
く、0.1〜1m3/秒が特に好ましい。有機溶媒及び
混合物を流動させるには混合機を傾斜させれば移送する
ことが出来るが、図4のようにインラインミキサーのよ
うな動力のいらない回転混合機を用いることは非常に好
ましい例である。また、押し出し機に使用されるような
スクリューを用いて移送させてもよく。また、混合機の
形状は樋状であっても、パイプ型でも、箱形でも、有機
溶媒及び混合物が流動し易い形状であれば制限はない。
また、直線状に長くとも、折り畳まれたつづれ折り状で
あっても、ループ状であってもよい。混合機の外側には
保温ジャケット48を付けておくのがよい。つづれ折り
状或いはループ状の場合には、それぞれが接触している
と、温度のロスも少なく効率を上げることが出来好まし
い。有機溶媒分離器42にも保温ジャケット48が付い
ている。有機溶媒分離器42は傾斜させるだけでも有機
溶媒や混合物を移送させることが出来るが、濃縮されて
流動しにくい混合物を移送させるには、図4のように、
動力のいらないインラインミキサー35を用いることが
好ましい。また、スクリューで強制的に混合物を移送さ
せることもよいし、メッシュ状のベルトコンベアーの上
に混合物を乗せて運び、途中で有機溶媒を分離出来るも
のでもよい。分離手段は図4に示したような有機溶媒分
離器42の中でメッシュ43で分離していてもよいが、
メッシュ板を円筒状にして外側を混合物が移送させて
も、また円筒のメッシュの中側にインラインミキサーや
スクリューを設置して回転させながら混合物を送り、膨
潤に関与しなかった有機溶媒45が外側に分離されるよ
うなものでもよい。濃縮された混合物は混合物排出口4
6から溶解工程に送られるが、溶解は、溶解出来る方法
ならどんな方法でもよく、混合物を加温しても、予め調
温した有機溶媒に溶解して希釈させてもよい。
【0061】高速溶解の第5の方法を図5をもって説明
する。図5は、請求項6の1例を示すもので、連続混合
工程、連続有機溶媒分離工程及び溶解工程の断面模式図
である。図5の混合及び有機溶媒分離工程は図4と同じ
であり、また溶解工程は図3と同じである。濃縮された
混合物は、図4の混合物排出口46と図3の混合物導入
口29につながっている配管を通って移送されるように
なっている。この第5の方法は有機溶媒分離器42で濃
縮された混合物44を0〜120℃に調温した有機溶媒
が既に導入されている溶解釜25に導入して溶解して希
釈する方法である。この方法は膨潤させる時間また溶解
させる時間が従来の方法と比べて大幅に短縮出来る。な
お、有機溶媒導入口30から添加剤を導入してもよい。
【0062】高速溶解の第6の方法を図6をもって説明
する。図6は、請求項7の1例を示すもので、連続混合
工程、連続有機溶媒分離工程及び連続溶解工程の断面模
式図である。図6の混合及び有機溶媒分離工程は図4又
は図5のそれと同じである。図6の溶解工程は、上記の
溶解工程とは異なり、混合工程と同様な方式である。熱
交換機(加温器)51から0〜120℃に調温された有
機溶媒を溶解機50の有機溶媒導入口52より導入し、
溶解機50中を有機溶媒がインラインミキサー35とと
もに回転しながら移送し、別に有機溶媒分離器42で濃
縮された混合物44を混合物排出口46を通して混合物
導入口49から導入し、回転しながら移送する有機溶媒
に溶解し希釈するようになっている。図6の溶解機50
には、混合機33及び有機溶媒分離器42のインライン
ミキサー(混合物の輸送手段として)35と同様なもの
が設置されている。インラインミキサーは混合効率がよ
く、本発明には好ましく用いることが出来る。前述のよ
うに他の方法も同様に用いることが出来る。溶液排出口
54に至る間に混合物は有機溶媒に完全に溶解され、セ
ルロースアシレート溶液(以降ドープということもあ
る)になり、溶液排出口54から次の貯蔵釜(図には描
かれていない)に送られる。なお、53は仕切板であ
る。
【0063】高速溶解の第7の方法を図7をもって説明
する。図7は、請求項8の1例を示すもので、分離有機
溶媒の循環使用工程の模式図である。図7の膨潤混合物
とする混合機60と有機溶媒分離器61は図4、5及び
6の混合機33及び有機溶媒分離器42と同じものを模
式したものである。冷却器62で冷却された有機溶媒を
混合機60の有機溶媒導入口63から導入し、別に、セ
ルロースアシレートをセルロースアシレート導入口64
から導入して混合し、膨潤した混合物を混合物排出口6
5から混合物導入口66を通して有機溶媒分離器61に
導入し、有機溶媒の1部を分離して、混合物を濃縮し、
濃縮された混合物を混合物排出口67から次の溶解工程
に送る。分離された有機溶媒を有機溶媒排出口68から
排出し、ポンプ69でフィルター70に送り、そこで不
純物を除去して冷却器62に送り有機溶媒を再使用す
る。
【0064】本発明のもう一つの溶解方法は、高圧溶解
方法である。本発明の酢酸メチルと他の非塩素系の有機
溶媒を含む混合有機溶媒の中に、本発明のセルロースア
シレートを添加して混合し、この混合物を、高圧力下に
保持し、次いで圧力を解放し混合物を常圧下付近に保持
することによってドープを調製するものである。
【0065】この混合物を得るまでは、上記冷却溶解方
法と同様に行える。最初に、室温で本発明の混合有機溶
媒中に、セルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添
加する。この段階では、セルロースアシレートは溶媒中
で膨潤している状態の混合物となっている。次に、この
混合物を、高圧力下に保持する。圧力は、50kgf/
cm2以上から効果が認められ、高い程溶解時間が短縮
できるが、あまり高過ぎると設備が大型になり過ぎる
し、溶解時間の短縮効果も徐々に飽和してくるので、4
000kgf/cm2以下であれば十分な効果が得られ
る。所定の時間加圧した後、圧力を解放し、この混合物
を0.1〜10kgf/cm2以下の圧力下に保持する
ことによりセルロースアシレートが溶媒中に溶解し均一
な溶液が得られる。なお、溶解を速めるために、加圧、
圧力解放の操作を繰り返してもよい。溶解が十分である
かどうかは、目視により溶液の外観を観察することで判
断することができる。溶解させる容器は特に限定はなく
圧力に耐える強度を有する構造であれば良い。アルミニ
ウム箔で出来た密閉容器等を用いてバッチ式に行っても
よいし、一軸や二軸式の押し出し機や混練機等で連続的
に行っても良い。また、加圧操作において冷却し、解放
操作において加温すると、更に溶解時間を短縮すること
ができる。溶液中のセルロースアシレート濃度は、フィ
ルム製膜時の乾燥効率の点から、なるべく高濃度である
ことが好ましい。一方、あまり高濃度になると溶液の粘
度が大きすぎて、平面性が劣化する場合がある。従っ
て、好ましい溶液のセルロースアシレート濃度は、10
〜40重量%の範囲である。更に15〜35重量%の範
囲が好ましい。
【0066】上記容器内には窒素ガスなどの不活性ガス
で充満させて分解を抑制してもよい。セルロースアシレ
ート溶液の粘度は、製膜の際、流延可能な範囲であれば
よく、通常5〜500ポイズの範囲に調製されることが
好ましい。
【0067】この様に、低濃度で冷却溶解或いは高圧溶
解することにより、ドープの経時安定性を向上すること
が出来るし、更に低濃度の溶液は粘度が低いので、未溶
解物やゴミ、不純物などの異物を効率よく濾過除去する
ことができる。
【0068】本発明のドープには各調製工程において用
途に応じた種々の添加剤を加えることができる。またそ
の添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加
しても良いし、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加
剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。ハロゲ
ン化銀写真感光材料用のセルロースアシレートフィルム
には機械的性質の向上或いは耐水性を付与するために可
塑剤やライトパイピング防止用の着色剤或いは紫外線防
止剤が、また液晶画面表示装置用には耐熱耐湿性を付与
する酸化防止剤などを添加することが好ましい。
【0069】可塑剤としては、リン酸エステル、カルボ
ン酸エステル、グリコール酸エステルなどが好ましく用
いられる。リン酸エステルの例としては、トリフェニル
ホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジ
フェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェー
ト、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチル
ホスフェート、トリブチルホスフェートなどがあり、カ
ルボン酸エステルの例としては、ジメチルフタレート、
ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチル
フタレート、ジエチルヘキシルフタレート、クエン酸ア
セチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレ
イン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン
酸ジブチル、トリメリット酸エステルなどがあり、グリ
コール酸エステルの例としては、トリアセチン、トリブ
チリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフ
タリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリ
コレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなどがあ
る。中でもトリフェニルホスフェート、トリクレジルホ
スフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブ
チルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタ
レート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、
ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフ
タリルエチルグリコレートが好ましい。特にトリフェニ
ルホスフェート、ジエチルフタレート、エチルフタリル
エチルグリコレートが好ましい。これらの可塑剤は1種
でもよいし2種以上併用してもよい。可塑剤の添加量は
セルロースアシレートに対して5〜30重量%以下、特
に8〜16重量%以下が好ましい。これらの化合物は、
セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースア
シレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や
調製後に添加してもよい。
【0070】更に下記一般式(I)(II)又は(III)
で示される化合物を添加してもよい。
【0071】
【化1】
【0072】一般式(I)、(II)、(III)の式中、
Rは、それぞれ炭素原子数が1以上4以下のアルキル基
である。上記一般式(I)、(II)又は(III)で示さ
れる化合物の例としては、リン酸2,2′−メチレンビ
ス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウ
ム(アデカスタブNA−10、旭電化(株)製)及びビ
ス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール(NC−
4、三井東圧化学(株)製)が含まれる。
【0073】酸化防止剤としては、下記一般式(IV)で
表されるものが用いられる。
【0074】
【化2】
【0075】一般式(IV)のR1はアルキル基を表し、
2、R3及びXは、それぞれ水素原子、アルキル基、ア
ルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、
アルケノキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、
アルケニルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環オキシ
基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルバモイル基、スルフ
ァモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ
カルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ア
シル基、アシルオキシ基を表す。mは0〜2の整数を表
す。R2、R3及びXは互いに同一でもよいし異なってい
てもよい。上記アルキル基は、例えば、メチル、エチ
ル、プロピル、iso−プロピル、tert−ブチル、
シクロヘキシル、tert−ヘキシル、tert−オク
チル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ベンジ
ルなどの直鎖、分岐、又は環状のアルキル基を表し、上
記アルケニル基は、例えば、ビニル、アリル、2−ペン
テニル、シクロヘキセニル、ヘキセニル、ドデセニル、
オクタデセニルなどの直鎖、分岐、又は環状のアルケニ
ル基を表し、上記アリール基は、例えば、フェニル、ナ
フチル、アントラニルなどのベンゼン単環や縮合多環の
アリール基を表し、上記ヘテロ環基は、例えば、フリ
ル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、プリニル、ク
ロマニル、ピロリジル、モルホリニルなどの窒素原子、
硫黄原子、酸素原子の少なくとも一つを含む5〜7員環
からなる基を表す。中でもヒンダードフェノール系の化
合物が好ましく、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾ
ール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5
−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオ
ネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−
t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プ
ロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3
−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチル
チオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチ
ルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ
−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4
−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシ
ル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフ
ェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビ
ス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロ
シンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−
トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベン
ジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−
4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙
げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾー
ル、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−
ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロ
ピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−
(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネート〕が最も好ましい。また例えば、
N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−
ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどの
ヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t
−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定
剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セル
ロースアシレートに対して重量割合で1〜10000p
pmが好ましく、10〜1000ppmが更に好まし
い。
【0076】ライトパイピング防止用の着色剤としては
下記一般式(V)、(VI)に示す化合物が挙げられる。
【0077】
【化3】
【0078】一般式(V)、(VI)の式中、Xは酸素原
子、又は、NR23を表す。R1〜R8、R12〜R23は、そ
れぞれ水素原子、水酸基、脂肪族基、芳香族基、複素環
基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、COR9、C
OOR9、NR910、NR10COR11、NR10SO2
11、CONR910、SO2NR910、COR11、SO2
11、OCOR11、NR9CONR1011、CONHS
211、又はSO2NHCOR11を表し、R9、R10
それぞれ水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基を表
し、R11は脂肪族基、芳香族基、又は複素環基を表す。
【0079】R1〜R23で表される脂肪族基は、炭素数
1〜20のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−
ブチル、イソプロピル、2−エチルヘキシル、n−デシ
ル、n−オクタデシル)、炭素数1〜20のシクロアル
キル基(例えば、シクロベンジル、シクロヘキシル)又
はアリル基を表し、これらは更に置換基(例えば、ハロ
ゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボン酸
基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数0〜20のア
ミノ基、炭素数1〜20のアミド基、炭素数1〜20の
カルバモイル基、炭素数2〜20のエステル基、炭素数
1〜20のアルコキシ基又はアリーロキシ基、炭素数1
〜20のスルホンアミド基、炭素数0〜20のスルファ
モイル基、5又は6員の複素環を有していてもよい。R
1〜R23で表される芳香族基は炭素数6〜10のフェニ
ル、ナフチルなどのアリール基を表し、前記に挙げた置
換基及び炭素数1〜20のメチル、エチル、n−ブチ
ル、tert−ブチル、オクチルなどのアルキル基から
なる置換基を有していてもよい。R1〜R11で表される
複素環基は、5又は6員の複素環を表し、前記の置換基
を有していてもよい。以下化4〜化9に一般式(V)、
(VI)で表される化合物の好ましい例(V−1)〜(V
−25)、及び(VI−1)〜(VI−4)を示す。
【0080】
【化4】
【0081】
【化5】
【0082】
【化6】
【0083】
【化7】
【0084】
【化8】
【0085】
【化9】
【0086】着色剤の含有量は、セルロースアシレート
に対する重量割合で10〜1000ppmが好ましく、
50〜500ppmが更に好ましい。この様に着色剤を
含有させることにより、セルロースアシレートフィルム
のライトパイピングが減少でき、黄色味を改良すること
ができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶
液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添
加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよ
い。
【0087】また、本発明のセルロースアシレート溶液
には、必要に応じて更に種々の添加剤を溶液の調製前か
ら調製後の何れの段階で添加してもよい。添加剤として
は、紫外線吸収剤、カオリン、タルク、ケイソウ土、石
英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アル
ミナなどの無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなど
のアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤、帯電防止剤、
難燃剤、滑剤、油剤などである。
【0088】溶液は流延に先だって金網やネルなどの適
当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物
を濾過除去しておくのが好ましい。
【0089】本発明のセルロースアシレート溶液を用い
たフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロ
ースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従
来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液
流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。図8
は溶液流延製膜装置の断面模式図であり、これを用いて
溶液流延製膜方法及び装置について簡単に説明する。前
述の溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースア
シレート溶液)を貯蔵釜77で一旦貯蔵し、ドープに含
まれている泡を脱泡したり最終調製をする。ドープ78
をドープ排出口81から、例えば回転数によって高精度
に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプ82を通して加
圧型ダイ72に送り、ドープを加圧型ダイ72の口金
(スリット)からエンドレスに走行している流延部の支
持体71の上に均一に流延され、支持体がほぼ一周した
剥離点74で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を
支持体71から剥離し、ウェブ73の両端をクリップで
挟み幅保持しながらテンター75で搬送して乾燥し、続
いて乾燥装置84のロール群85で搬送し乾燥を終了し
て巻き取り機76で所定の長さに巻き取る。なお、79
はドープ導入口、80は添加剤導入口、83は保温ジャ
ケットである。テンターとロール群の乾燥装置との組み
合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光
材料に用いる溶液流延製膜方法においては、図8の溶液
流延製膜装置に記載されている装置の他に、下引層、帯
電防止層、ハレーション防止層、保護層等の支持体への
表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。
【0090】本発明に有用な流延方法としては、調製さ
れたドープを加圧ダイから支持体上に均一に押し出す方
法、一旦支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚
を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転
するロールで調節するリバースロールコーターによる方
法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダ
イにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが
何れも好ましく用いることができる。また、ここで挙げ
た方法以外にも従来知られているセルローストリアセテ
ート溶液を流延製膜する種々の方法(例えば特開昭61
−94724号、同61−148013号、特開平4−
85011号、同4−286611号、同5−1854
43号、同5−185445号、同6−278149
号、同8−207210号公報などに記載の方法)を好
ましく用いることが出来、用いる溶媒の沸点等の違いを
考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に
記載の内容と同様の効果が得られる。
【0091】本発明のセルロースアシレートフィルムを
製造するのに使用されるエンドレスに走行する支持体と
しては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされた
ドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレス
ベルト(バンドといってもよい)が用いられる。
【0092】本発明のセルロースアシレートフィルムの
製造に用いられる加圧ダイは、支持体の上方に1基或い
は2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基で
ある。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそ
れぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密
定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを
送液する。
【0093】本発明のセルロースアシレートフィルムの
製造に係わる支持体上におけるドープの乾燥は、一般的
には支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり支
持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラ
ム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コン
トロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反
対側の裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベ
ルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法
などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。
【0094】流延される前の支持体の表面温度はドープ
に用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよ
い。しかし乾燥を促進するためには、また支持体上での
流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も
沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定す
ることが好ましい。
【0095】セルロースアシレートフィルムを製造する
速度はベルトの長さ、乾燥方法、ドープ溶媒組成等によ
っても変化するが、ウェブをベルトから剥離する時点で
の残留溶媒の量によって殆ど決まってしまう。つまり、
ドープ膜の厚み方向でのベルト表面付近での溶媒濃度が
高すぎる場合には、剥離した時、ベルトにドープが残っ
てしまい、次の流延に支障を来すため、剥離残りは絶対
あってはならないし、更に剥離する力に耐えるだけのウ
ェブ強度が必要であるからである。剥離時点での残留溶
媒量は、ベルトやドラム上での乾燥方法によっても異な
り、ドープ表面から風を当てて乾燥する方法よりは、ベ
ルト或いはドラム裏面から伝熱する方法が効果的に残留
溶媒量を低減することが出来るのである。
【0096】本発明のセルロースアシレートフィルムの
製造に係わるフィルム乾燥方法については前述の溶液流
延製膜方法の乾燥方法が好ましい。搬送中のウェブ(フ
ィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロ
ウェーブなどの加熱手段などを用いる方法によって乾燥
が行われる。急速な乾燥はウェブ(フィルム)の平面性
を損なう虞があるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発
泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で
乾燥を行うのが好ましい。
【0097】支持体から剥離後の乾燥工程では、溶媒の
蒸発によってフィルムは巾方向に収縮しようとする。高
温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能
な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィ
ルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、
例えば、特開昭62−46625号公報に示されている
ような乾燥全工程或いは一部の工程を幅方向にクリップ
でウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テン
ター方式)が好ましい。
【0098】更には、積極的に幅方向に延伸する方法も
あり、本発明では、例えば、特開昭62−115035
号、特開平4−152125号、同4−284211
号、同4−298310号等の公報に記載の延伸方法も
使用し得る。
【0099】本発明のセルロースアシレートフィルムの
乾燥工程における乾燥温度は40〜250℃、特に70
〜180℃が好ましい。使用する溶媒によって乾燥温
度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、
組合せに応じて適宜選べばよい。最終仕上がりフィルム
の残留溶媒量は2重量%以下、更に0.4重量%以下で
あることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好
ましい。
【0100】これら流延から後乾燥までの工程は、空気
雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下
でもよい。
【0101】本発明のセルロースアシレートフィルムの
製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているもの
でよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンシ
ョン法、内部応力一定のプログラムテンションコントロ
ール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0102】本発明の出来上がり(乾燥後)のセルロー
スアシレートフィルムの厚さは、使用目的によって異な
るが、通常5〜500μmの範囲であり、更に40〜2
50μmの範囲が好ましく、特に60〜125μmの範
囲が最も好ましい。フィルムの厚さの調製は、所望の厚
さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイ
の口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、支持
体速度等を調節すればよい。
【0103】〈アシル基の置換度と粘度平均重合度の測
定方法〉 1)セルロースアシレートのアシル基の置換度;アシル
基の置換度は、ケン化法によって測定するものとする。
乾燥したセルロースアシレートを精秤し、アセトン70
mlとジメチルスルホキシド30mlとの混合溶媒に溶
解した後、更にアセトン50mlを加えた。攪拌しなが
ら1Nの水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、25
℃で2時間ケン化する。熱水100mlを加え、フェノ
ールフタレインを指示薬として添加し、1Nの硫酸水溶
液(濃度ファクター;F)で過剰の水酸化ナトリウムを
滴定する。また、上記と同様な方法により、ブランクテ
ストを行う。滴定が終了した溶液の上澄み液を100に
希釈し、イオンクロマトグラフィーを用いて、定法によ
り有機酸の組成を測定した。滴定結果とイオンクロマト
グラフィーの酸組成物分析から下記によりアシル化置換
度を計算した。
【0104】T[A+B]=(E−M)×F/(100
0×W) A={162.14×T[A+B]}/{1−42.1
4×T[A+B]+(1−56.06×T[A+B])
×(Cb/Ca)} B=A×(Cb/Ca) ここで、T[A+B]:全有機酸量(モル/g) E:ブランク試験滴定量(ml) M:試料滴定量(ml) F:1Nの硫酸のファクター W:試料重量(g) Ca:イオンクロマトグラフィーで測定した酢酸量(モ
ル) Cb:イオンクロマトグラフィーで測定した炭素原子数
3乃至5の有機酸量(モル) Cb/Ca:酢酸と他の有機酸とのモル比 A:アセチル基の置換度 B:炭素原子数3乃至5のアシル基の置換度 である。
【0105】2)セルロースアシレートの粘度平均重合
度(DP) 絶乾したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、メ
チレンクロライドとエタノールの混合溶媒(重量比9:
1)100mlに溶解する。これをオストワルド粘度計
にて、25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式に
よって求める。
【0106】ηrel=T/Ts [η]=(lnηrel)/C DP=[η]/Km ここで、T :測定試料の落下秒数 Ts:溶媒の落下秒数 C :濃度(g/l) Km:6×10-4 フィルムの残留溶媒量は次のように測定した。
【0107】試験フィルム或いはウェブ(U)を秤量ビ
ンに入れ精秤し、次に前記フィルム或いはウェブを15
0℃で3時間加熱した後、水分を吸わないように室温ま
で冷却し秤量する。絶乾フィルム或いはウェブの重量
(D)として、 残留溶媒量(%)={(U−D)/D}×100 で求めた。
【0108】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明す
るが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0109】〈アルカリ土類金属含有量別セルロースア
シレートの作製方法(アルカリ土類金属除去方法〉上記
特公昭61−40095号公報5欄33〜38行に記載
の方法を用い、セルロースアシレート、氷酢酸及び水の
それぞれの量を変化させてアルカリ土類金属含有量の異
なるセルロースアシレートを作製した。
【0110】〈セルロースアシレート中のアルカリ土類
金属の含有量の測定〉ICP−AES(誘導結合プラズ
マ発行分光分析)によりアルカリ土類金属の定量を行っ
た。セルロースアシレート約500mgに硫酸5mlを
加え、これをマイクロ波分解を数十秒から数分程度行
う。更に硝酸4mlを加えマイクロ波分解を再度行い、
もう一度硝酸1mlを加え最終のマイクロ波分解を行う
(この分解法をマイクロダイジェスト湿式分解方とい
う)。分解物を数mlの水で水溶液とし、セイコー電子
工業(株)製SPS−4000を用いてICP−AES
分析を行う。
【0111】〈ドープの白濁・透明性〉ドープ(セルロ
ースアシレート溶液)を透明な容器に入れ、目視で作製
直後、透明性を観察し、次の基準で評価しランク付けし
た。
【0112】 A:透明で均一なドープ B:僅かに白濁は見られるが、透明性はよい C:白濁が見られる、やや乳白色のドープ D:白濁が濃く、透明性も余りなく、白濁とは別に微粒
子が見られる。
【0113】〈フィルムのヘイズ〉JIS K−671
4に従って、ヘイズメーター(1001DP型、日本電
色工業(株)製)を用いて測定した。
【0114】〈引裂強さ〉フィルムを温度23℃、相対
湿度55%RHに調湿された部屋で4時間調湿した後、
試料寸法50mm×64mmに切り出し、ISO 63
83/2−1983に従い測定して求めた。
【0115】実施例1 溶解容器中で置換度2.78、粘度平均重合度300及
び表1に示すアルカリ土類金属を含有するセルロースト
リアセテート100重量部を、可塑剤としてトリフェニ
ルホスフェート(以下TPPと略す)10重量部を含む
酢酸メチル280重量部及びアセトン120重量部の混
合有機溶媒に添加して混合し、室温で膨潤させた。膨潤
した混合物を撹拌しながら容器の外側から−70℃まで
冷却し、1時間放置した。次に容器の外側から45℃ま
で加温し、30分放置した。この冷却と加温を3回繰り
返し、各ドープを得た。ドープを30℃で一晩静置し、
脱泡操作を施した後、ドープを安積濾紙(株)製の安積
濾紙No.244を使用して濾過し製膜に供した。得ら
れたドープを定量ギヤポンプでダイに送液し、ドープを
図8のような溶液流延製膜方法によりセルローストリア
セテートフィルムを作製した。即ち、ダイからドープを
エンドレスに走行しているステンレスベルトに乾燥後の
膜厚が120μmとなるように流延した。裏面から50
℃の温水を接触させて温度制御されたベルト上で前半の
乾燥を行い、後半は90℃の乾燥風を当ててウェブを乾
燥させた。ベルトがほぼ1周したところでベルトからウ
ェブを剥離し、ウェブの両端をクリップで把持しながら
120℃で5分間、続いてロール群を通しながら搬送し
つつ140℃で20分間乾燥させ最終的に膜厚120μ
mのセルローストリアセテートフィルムを得た。各水準
ともフィルムの残留溶媒量は0.9%であった。
【0116】実施例2 図1に示したような混合釜を用いて、30℃のアセチル
基の置換度2.78、粘度平均重合度300のセルロー
ストリアセテート(アルカリ土類金属含有量は実施例1
と同じ)100重量部を、予め混合釜に−80℃に冷却
しておいた酢酸メチルとアセトンからなる混合有機溶媒
(混合重量比7:3)500重量部中に撹拌しながら徐
々に投入した。投入が終了してから20分後セルロース
トリアセテートは全て膨潤し、得られた膨潤した混合物
を溶解釜に移送した。溶解釜中の膨潤した混合物を50
℃に加温しセルローストリアセテートの濃度が20重量
%になるように調製した。更にTPP10重量部を添加
した。40分間撹拌を続けたところ、膨潤した混合物は
溶解し透明なドープを得た。製膜については、実施例1
と同様にして膜厚120μmのセルローストリアセテー
トフィルムを得た。フィルムの残留溶媒量は0.8%で
あった。
【0117】実施例3 図2に示したような目開き5mmのステンレス製のメッ
シュ付きの混合釜を用いて、30℃のアセチル基の置換
度2.71、プロピオニル基の置換度0.17、粘度平
均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート
(アルカリ土類金属含有量は表1に記載)100重量部
を、予め混合釜に−70℃に冷却しておいた酢酸メチル
とアセトンからなる混合有機溶媒(混合重量比7:3)
900重量部中に撹拌しながら徐々に投入した。投入が
終了してから20分後、セルロースアセテートプロピオ
ネートは全て膨潤した。膨潤に関与しなかった有機溶媒
をメッシュを通して排出し、膨潤した混合物を溶解釜に
移送した。溶解釜を50℃に加温し、更に50℃に加温
した酢酸メチルとアセトンの混合有機溶媒(重量比7:
3)を加え、セルロースアセテートプロピオネートの濃
度が20重量%になるように調製した。更にTPP10
重量部を添加した。20分間撹拌を続けたところ、膨潤
した混合物は溶解し透明なドープを得、実施例1と同様
にして製膜し、120μmのセルロースアセテートプロ
ピオネートフィルムを得た。フィルムの残留溶媒量は
0.9%であった。
【0118】実施例4 図2の混合釜と図3の溶解釜を用いて試験した。図2に
示したような目開き5mmのステンレス製のメッシュ付
きの混合釜を用いて、30℃のアセチル基の置換度2.
71、プロピオニル基の置換度0.17、粘度平均重合
度350のセルロースアセテートプロピオネート(アル
カリ土類金属含有量は実施例3と同じ)100重量部
を、予め混合釜に−70℃に冷却しておいた酢酸メチル
とアセトンからなる混合有機溶媒(混合重量比7:3)
1000重量部中に撹拌しながら徐々に投入した。投入
が終了してから20分後、セルロースアセテートプロピ
オネートは全て膨潤した。膨潤に関与しなかった有機溶
媒をメッシュを通して600重量部排出し、得られた膨
潤した混合物を溶解釜に移送した。図3の溶解釜に予め
50℃に加温しておいた同様の有機溶媒200重量部に
膨潤した混合物を投入し、温度を50℃に保ち、撹拌し
ながら溶解させた。20分もしないうちに完全に溶解
し、ドープを得た。実施例1と同様に溶液流延製膜方法
で120μmのセルロースアセテートプロピオネートフ
ィルムを得た。残留溶媒量は0.9%であった。
【0119】実施例5 図4と図5の連続混合機、有機溶媒分離器を用いて試験
した。図4に示すように、30℃のアセチル基の置換度
2.71、プロピオニル基の置換度0.17、粘度平均
重合度350のセルロースアセテートプロピオネート
(アルカリ土類金属が案有量は実施例3と同じ)を、予
め−70℃に冷却した移送中の酢酸メチルとアセトンか
らなる混合有機溶媒(重量比7:3)に次々と投入し
た。投入の速度は混合溶媒の単位時間当たりの流量に対
して5重量%になるように調整した。投入してから5分
後には混合機の終点ではセルロースアセテートプロピオ
ネートは全て膨潤した。投入は10分で終了した。従っ
て膨潤時間としては15分を要した。次に膨潤した混合
物を、目開き1mmのステンレス製のメッシュを備えた
有機溶媒分離器に導入し、膨潤に関与しなかった過剰の
有機溶媒を分離しながら移送中の混合物を濃縮し、濃縮
された混合物を溶解釜に移送した。分離した有機溶媒は
使用した量の60重量%を回収した。溶解釜にはTPP
10重量部を含む予め50℃に加温しておいた前記と同
組成の有機溶媒に、濃縮された混合物を連続的に投入し
た。濃縮された混合物は50℃の有機溶媒に触れるとす
ぐに溶解し透明なドープとなった。全ての濃縮された混
合物を投入終了し終わるのに10分を要した。このドー
プを用い、実施例1と同様に溶液流延製膜方法で120
μmのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを
得た。残留溶媒量は0.9%であった。
【0120】実施例6 図6に示した連続混合機、連続有機溶媒分離器及び連続
溶解機を用いて試験した。30℃のアセチル基の置換度
2.71、プロピオニル基の置換度0.17、粘度平均
重合度350のセルロースアセテートプロピオネート
(アルカリ土類金属含有量は実施例3と同じ)を、予め
−70℃に冷却した移送中の酢酸メチルとアセトンから
なる混合有機溶媒(重量比7:3)に次々に投入した。
投入の速度は混合溶媒の単位時間当たりの流量に対して
5重量%になるように調整した。投入してから5分後に
は混合機の終点ではセルロースアセテートプロピオネー
トは全て膨潤した。投入は10分で終了した。従って膨
潤時間としては15分を要した。次に膨潤した混合物
を、目開き1mmのステンレス製のメッシュを備えた分
離器に導入し、膨潤に関与しなかった過剰の有機溶媒を
分離しながら移送中の混合物を濃縮し溶解工程に移送し
た。濃縮された混合物に対するセルロースアセテートプ
ロピオネートの濃度は40重量%になっていた。溶解機
には、予め50℃に加温しておいた酢酸メチルとアセト
ンの混合有機溶媒(重量比7:3)が流れており、その
中に該濃縮された混合物を投入した。溶解機への濃縮さ
れた混合物の加温有機溶媒への投入比は1:1とした。
濃縮された混合物は投入してすぐに溶解が始まり、20
重量%のセルロースアセテートプロピオネート溶液(ド
ープ)を得、貯蔵釜に導入した。全ての濃縮された混合
物を投入し終わるのに10分を要した。ここでTPPを
セルロースアシレートに対して10重量%になるように
若干の有機溶媒(同比率の)を貯蔵釜に投入して撹拌し
ながら溶解させた。このドープを用い、実施例1と同様
に溶液流延製膜方法で製膜を行い、120μmのセルロ
ースアセテートプロピオネートフィルムを得た。フィル
ムの残留溶媒量は0.9%であった。
【0121】実施例7 溶解容器中で置換度2.78、粘度平均重合度300及
び表1に示すアルカリ土類金属を含有するセルロースト
リアセテート(アルカリ土類金属含有量は実施例1と同
じ)100重量部を、TPP10重量部を含む酢酸メチ
ル280重量部及びアセトン120重量部の混合有機溶
媒に添加して混合し、室温で膨潤させた。膨潤した混合
物を容量1000mlの肉厚100μmのアルミニウム
製の容器に満たし、空気が入らないようにアルミニウム
箔で蓋をして、かしめるように密封した。この密閉され
た容器をゴム製の袋に詰め、軽く脱気後ゴム袋を封入す
る。このゴム袋をセラミック成型用のゴム製静水圧加圧
装置(神戸製鋼製)にセットし、20℃に保ちながら1
000kg/cm2の圧力で加圧する。その後大気圧に
戻し30分静置する。この加圧〜解放のサイクルを3回
繰り返してドープを得た。実施例1と同様に溶液流延製
膜方法で製膜を行い、120μmのセルロースアセテー
トプロピオネートフィルムを得た。フィルムの残留溶媒
量は0.9%であった。
【0122】実施例8 アルカリ土類金属含有量を35ppmのみとし、有機溶
媒の酢酸メチルを400重量部に、またアセトンを10
0重量部に変更した以外は実施例3と同様にしてドープ
を得、実施例1と同様に溶液流延製膜方法で製膜を行
い、120μmのセルローストリアセテートフィルムを
得た。フィルムの残留溶媒量は1.0%であった。
【0123】実施例9 アルカリ土類金属含有量を35ppmのみとし、有機溶
媒の酢酸メチルとアセトンの比を7.5:2.5に変更
した以外は実施例3と同様にしてドープを得、実施例1
と同様に溶液流延製膜方法で製膜を行い、120μmの
セルロースアセテートプロピオネートフィルムを得た。
フィルムの残留溶媒量は0.9%であった。
【0124】実施例10 アルカリ土類金属含有量を35ppmのみとし、有機溶
媒の酢酸メチルとアセトンの比を6.5:3.5に変更
した以外は実施例5と同様にしてドープを得、実施例1
と同様に溶液流延製膜方法で製膜を行い、120μmの
セルロースアセテートプロピオネートフィルムを得た。
フィルムの残留溶媒量は0.9%であった。
【0125】実施例11 アルカリ土類金属含有量を35ppmのみとし、有機溶
媒の酢酸メチルとアセトンの比を6:4に変更した以外
は実施例6と同様にしてドープを得、実施例1と同様に
溶液流延製膜方法で製膜を行い、120μmのセルロー
スアセテートプロピオネートフィルムを得た。フィルム
の残留溶媒量は0.9%であった。
【0126】実施例12 アルカリ土類金属含有量を48ppmのみとし、酢酸メ
チルとアセトンの比を6:4に変更した以外は実施例7
と同様にしてドープを得、実施例1と同様に溶液流延製
膜方法で製膜を行い、120μmのセルローストリアセ
テートフィルムを得た。フィルムの残留溶媒量は1.0
%であった。
【0127】実施例13 アルカリ土類金属含有量を48ppmのみとし、アセチ
ル基の置換度を2.91に、また粘度平均重合度400
に変更した以外は実施例2と同様にしてドープを得、実
施例1と同様に溶液流延製膜方法で製膜を行い、120
μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。フィ
ルムの残留溶媒量は0.9%であった。
【0128】比較例1 セルロースアシレートのアルカリ土類金属含有量を13
5、243及び510ppmに変更した他は実施例4と
同様にしてドープを得、実施例1と同様に溶液流延製膜
方法で製膜を行い、120μmのセルロースアセテート
プロピオネートフィルムを得た。フィルムの残留溶媒量
は0.9%であった。
【0129】比較例2 アルカリ土類金属含有量を148、234及び528p
pmに変更した他は実施例7と同様にしてドープを得、
実施例1と同様に溶液流延製膜方法で製膜を行い、12
0μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。フ
ィルムの残留溶媒量は0.9%であった。
【0130】比較例3 アルカリ土類金属含有量を135、243及び510p
pmに、また有機溶媒をアセトン475重量部、エタノ
ール25重量部に変更した他は実施例3と同様にしてド
ープを得、実施例1と同様に溶液流延製膜方法で製膜を
行い、120μmのセルロースアセテートプロピオネー
トフィルムを得た。フィルムの残留溶媒量は1.4%で
あった。
【0131】比較例4 アセチル基の置換度を2.01、プロピル基の置換度を
0.91に、及びアルカリ土類金属を135ppmにし
た以外は実施例3と同様にしてドープを得、実施例1と
同様に溶液流延製膜方法で製膜を行い、120μmのセ
ルロースアセテートプロピオネートフィルムを得た。フ
ィルムの残留溶媒量は1.9%であった。
【0132】評価の結果を表1及び2に示した。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】(結果)表1から明らかのように、本発明
のアルカリ土類金属含有量範囲内では、冷却溶解方法及
び加圧溶解方法とも、ドープの白濁が殆どなく、またフ
ィルムのヘイズも少ないことが分かった。これに対して
アルカリ土類金属含有量が多い場合にはドープの白濁が
激しく、フィルムのヘイズ高く、冷却溶解方法及び加圧
溶解方法にはアルカリ土類金属含有量が重要な役割して
いることがわかった。
【0136】また、表2からわかるように、プロピル基
が多い比較例4は引裂強さや、劣ることがわかった。
【0137】
【発明の効果】アルカリ土類金属含有量をコントロール
することによって、塩素系溶媒を実質的に使用しない冷
却溶解方法及び加圧溶解方法におけるドープの白濁もな
く、冷却溶解方法又は加圧溶解方法で透明性なセルロー
スアシレートフィルムを得ることが出来、ハロゲン化銀
写真感光材料や液晶画像表示装置に用いられる優れたセ
ルロースアアシレートフィルムを提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】混合工程の断面模式図。
【図2】混合工程の断面模式図。
【図3】溶解工程の断面模式図。
【図4】連続混合工程及び連続有機溶媒分離工程の断面
模式図。
【図5】連続混合工程、連続有機溶媒分離工程及び溶解
工程の断面模式図。
【図6】連続混合工程、連続有機溶媒分離工程及び連続
溶解工程の断面模式図。
【図7】分離有機溶媒の循環使用工程の模式図。
【図8】溶液流延製膜装置の断面模式図。
【符号の説明】
1 有機溶媒 2 冷却器 3 混合釜 4 撹拌機 5 保温ジャケット 6 セルロースアシレート 7 サイロ 8 切り出し送粉機 9 有機溶媒導入口 10 セルロースアシレート導入口 11 混合物排出口 12 膨潤した混合物 13 混合釜 14 メッシュ 15 撹拌機 16 セルロースアシレート 17 サイロ 18 切り出し送粉機 19 有機溶媒導入口 20 セルロースアシレート導入口 21 混合物排出口 22 有機溶媒 23 有機溶媒排出口 24 保温ジャケット 25 溶解釜 26 有機溶媒 27 撹拌機 28 熱交換機(加温器) 29 混合物導入口 30 有機溶媒導入口 31 混合物排出口 32 保温ジャケット 33 混合機 34 仕切板 35 インラインミキサー 36 冷却器 37 有機溶媒導入口 38 セルロースアシレート 39 サイロ 40 切り出し送粉機 41 セルロースアシレート導入口 42 有機溶媒分離器 43 メッシュ 44 混合物 45 有機溶媒 46 混合物排出口 47 有機溶媒排出口 48 保温ジャケット 49 終点 50 溶解機 51 熱交換機(加温器) 52 有機溶媒導入口 53 仕切板 54 溶液排出口 60 混合機 61 有機溶媒分離器 62 冷却器 63 有機溶媒導入口 64 セルロースアシレート導入口 65 混合物排出口 66 混合物導入口 67 混合物排出口 68 有機溶媒排出口 69 ポンプ 70 フィルター 71 支持体 72 加圧型ダイ 73 ウェブ 74 剥離点 75 テンター 76 巻き取り機 77 貯蔵釜 78 ドープ 79 ドープ導入口 80 添加剤導入口 81 ドープ排出口 82 ギヤポンプ 83 保温ジャケット 84 乾燥装置 85 ロール(ロール群)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08J 9/26 CEP C08J 9/26 CEP C08L 1/12 C08L 1/12 G03C 1/795 G03C 1/795

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非塩素系有機溶媒と、10〜100pp
    mのアルカリ土類金属を含有するセルロースアシレート
    とを混合して混合物を形成する工程、形成した混合物を
    −100〜−10℃で冷却処理する工程、及び冷却処理
    後の混合物を0〜50℃で処理する工程を経ることを特
    徴とするセルロースアシレート溶液の調製方法。
  2. 【請求項2】 非塩素系有機溶媒を含有する有機溶媒を
    −100〜−10℃に冷却する工程、10〜100pp
    mのアルカリ土類金属を含有するセルロースアシレート
    と冷却した非塩素系有機溶媒とを混合する工程、形成し
    た混合物を膨潤させる工程、及び膨潤された混合物を加
    熱溶解する工程を経ることを特徴とするセルロースアシ
    レート溶液の調製方法。
  3. 【請求項3】 非塩素系有機溶媒を−100〜−10℃
    に冷却する工程、10〜100ppmのアルカリ土類金
    属を含有するセルロースアシレートと冷却した非塩素系
    有機溶媒とを混合する工程、形成した混合物を膨潤させ
    る工程、膨潤させた混合物から分離手段により非塩素系
    有機溶媒の一部を分離し濃縮する工程、及び濃縮した混
    合物を加熱溶解する工程を経ることを特徴とするセルロ
    ースアシレート溶液の調製方法。
  4. 【請求項4】 非塩素系有機溶媒を−100〜−10℃
    に冷却する工程、10〜100ppmのアルカリ土類金
    属を含有するセルロースアシレートと冷却した非塩素系
    有機溶媒とを混合する工程、形成した混合物を膨潤させ
    る工程、0〜120℃に調温した前記非塩素系有機溶媒
    と実質的に同組成の非塩素系有機溶媒と膨潤させた混合
    物とを混合し溶液を形成する工程を経ることを特徴とす
    るセルロースアシレート溶液の調製方法。
  5. 【請求項5】 −100〜−10℃で移送中の非塩素系
    有機溶媒に、10〜100ppmのアルカリ土類金属を
    含有するセルロースアシレートを連続的に添加して形成
    した混合物を膨潤させる工程、膨潤させた混合物から分
    離手段により非塩素系有機溶媒の一部を分離して濃縮す
    る工程、及び濃縮後の混合物を加熱溶解する工程を経る
    ことを特徴とするセルロースアシレート溶液の調製方
    法。
  6. 【請求項6】 −100〜−10℃で移送中の非塩素系
    有機溶媒に、10〜100ppmのアルカリ土類金属を
    含有するセルロースアシレートを連続的に添加して形成
    した混合物を膨潤させる工程、膨潤させた混合物から分
    離手段により非塩素系有機溶媒の一部を分離して濃縮す
    る工程、及び濃縮後の混合物と0〜120℃の前記非塩
    素系有機溶媒と実質的に同組成の非塩素系有機溶媒を混
    合し溶液を形成する工程を経ることを特徴とするセルロ
    ースアシレート溶液の調製方法。
  7. 【請求項7】 −100〜−10℃で移送中の非塩素系
    有機溶媒に、10〜100ppmのアルカリ土類金属を
    含有するセルロースアシレートを連続的に添加して形成
    した混合物を膨潤させる工程、膨潤させた混合物から分
    離手段により非塩素系有機溶媒の一部を分離して濃縮す
    る工程、及び濃縮後の混合物を0〜120℃で移送中の
    前記非塩素系有機溶媒と実質的に同組成の非塩素系有機
    溶媒を混合し溶液を形成する工程を経ることを特徴とす
    るセルロースアシレート溶液の調製方法。
  8. 【請求項8】 前記分離した非塩素系有機溶媒を循環し
    て使用することを特徴とする請求項3、5、6又は7に
    記載のセルロースアシレート溶液の調製方法。
  9. 【請求項9】 非塩素系有機溶媒と、10〜100pp
    mのアルカリ土類金属を含有するセルロースアシレート
    とを混合して混合物を形成する工程、形成した混合物を
    50〜4000kgf/cm2の圧力をかけて処理する
    工程、及び加圧後の混合物を0.1〜10kgf/cm
    2の圧力下で処理する工程を経ることを特徴とするセル
    ロースアシレート溶液の調製方法。
  10. 【請求項10】 セルロースアシレートが水酸基が炭素
    原子数2〜5のアシル基で置換されたものであることを
    特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のセルロース
    アシレート溶液の調製方法。
  11. 【請求項11】 セルロースアシレートが下記式(I)
    乃至(IV)の全てを満足することを特徴とする請求項1
    乃至10の何れか1項に記載のセルロースアシレート溶
    液の調製方法。 (I) 2.6≦A+B≦3.0 (II) 2.0≦A≦3.0 (III) 0≦B≦0.8 (IV) 1.9<A−B ここで、式中A及びBは、セルロースの水酸基に置換さ
    れているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の、
    またBは炭素原子数3乃至5のアシル基の置換度であ
    る。
  12. 【請求項12】 前記Bが下記式(V)を満足すること
    を特徴とする請求項11に記載のセルロースアシレート
    溶液の調製方法。 (V) 0<B≦0.3
  13. 【請求項13】 セルロースアシレート中のアルカリ土
    類金属の含有量が10〜50ppmであることを特徴と
    する請求項1乃至12の何れか1項に記載のセルロース
    アシレート溶液の調製方法。
  14. 【請求項14】 セルロースアシレートがアセチル基置
    換度2.70〜2.96のセルローストリアセテートで
    あることを特徴とする請求項1乃至11又は13の何れ
    か1項に記載のセルロースアシレート溶液の調製方法。
  15. 【請求項15】 セルロースアシレートの粘度平均重合
    度が250〜550であることを特徴とする請求項1乃
    至14の何れか1項に記載のセルロースアシレート溶液
    の調製方法。
  16. 【請求項16】 前記セルロースアシレート溶液中のセ
    ルロースアシレートの濃度が15〜35重量%であるこ
    とを特徴とする請求項1乃至15の何れか1項に記載の
    セルロースアシレート溶液の調製方法。
  17. 【請求項17】 非塩素系有機溶媒が60重量%の酢酸
    メチル及び40重量%以下の酢酸メチル以外の非塩素系
    有機溶媒であることを特徴とする請求項1乃至16の何
    れか1項に記載のセルロースアシレート溶液の調製方
    法。
  18. 【請求項18】 酢酸メチル以外の非塩素系有機溶媒が
    アセトンであることを特徴とする請求項1乃至17の何
    れか1項に記載のセルロースアシレート溶液の調製方
    法。
  19. 【請求項19】 前記セルロースアシレート溶液を調製
    する何れかの工程で添加剤を添加するか、前記工程の後
    に添加剤を添加する工程を設けることを特徴とする請求
    項1乃至18の何れか1項に記載のセルロースアシレー
    ト溶液の調製方法。
  20. 【請求項20】 添加剤が可塑剤であって、可塑剤をセ
    ルロースアシレートに対して5重量%以上30重量%以
    下で添加することを特徴とする請求項19に記載のセル
    ロースアシレート溶液の調製方法。
  21. 【請求項21】 請求項1乃至20の何れか1項に記載
    のセルロースアシレート溶液を用いて、溶液流延製膜方
    法により製膜することを特徴とするセルロースアシレー
    トフィルムの製造方法。
  22. 【請求項22】 請求項21に記載の方法で製造された
    ことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
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