JPH112702A - 低屈折率膜、反射防止方法および反射防止性物品 - Google Patents

低屈折率膜、反射防止方法および反射防止性物品

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JPH112702A
JPH112702A JP9155425A JP15542597A JPH112702A JP H112702 A JPH112702 A JP H112702A JP 9155425 A JP9155425 A JP 9155425A JP 15542597 A JP15542597 A JP 15542597A JP H112702 A JPH112702 A JP H112702A
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Japan
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refractive index
compound
low refractive
index film
film
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JP9155425A
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Koichiro Oka
紘一郎 岡
Akitoshi Nakakimura
暁利 中木村
Mikio Shin
幹雄 新
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】低屈折率で容易に形成できる光反射防止用の低
屈折率膜。 【解決手段】含フッ素有機化合物残基Rと、Rと結合し
て重合性末端基を分子内に形成することのできる有機化
合物Pとからなり、少なくとも2個の重合性末端基を1
分子内に含有するパーフルオロ系化合物A(一般式
(1))、ならびに前記化合物Aの少なくとも2倍の分
子量を有する化合物Bを含む低屈折率膜。低屈折率であ
って耐擦傷性、耐久性に優れ、かつコーティングに際し
ハジキや厚みむらが発生しにくく容易に形成することが
できる。ブラウン管、液晶パネル、ガラス、レンズなど
における光反射防止膜に利用できる。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブラウン管、CR
T用フィルター、液晶パネル、ガラス、レンズなどにお
いて光の反射を防止するため、光反射防止膜として前記
ブラウン管などの反射面に形成する低屈折率膜、低屈折
率膜の形成方法および表面に低屈折率膜を形成した光反
射防止性物品に関する。
【0002】なお、本発明においては、とくに説明しな
い限り、屈折率はナトリウム発光スペクトルのD線にお
ける値であり、低屈折率膜は、前記の屈折率が1.47
を超えない、好ましくは1.45を超えない薄膜のこと
を意味する。また、片面反射率は、波長が540nmの
光線における測定値である。
【0003】
【従来の技術】従来の光反射防止性物品の多くは、表面
に単層の低屈折率膜、または低屈折率膜と高屈折率膜と
を交互に積層して光の反射を防止している。このような
光反射防止膜の反射光は、膜表面や膜境界面における各
反射光の干渉光であって、反射率は光反射防止膜の屈折
率と膜厚とにより低減または増加するが、原則的に屈折
率が低いほど反射率の低減に有利である。光反射防止膜
は蒸着やスパッタなどを利用して物品(基材)の表面に
無機物被膜を形成するのが一般的である。得られた光反
射防止膜は低反射性で耐擦傷性に優れるが、真空装置な
どを用いるので生産性が悪く、製造コストが高い。ま
た、製造過程において基材が加熱され、使用できる素材
が限られるという問題があった。
【0004】前記の問題を解決するために、特開平4−
355401号公報や特開平6−18705号公報など
には、低屈折率の有機物質を溶媒に溶解して塗液を調合
し、基材にコーティングして低屈折率の光反射防止膜を
形成する溶液コーティング法が開示されている。前記の
溶液コーティング法で用いられる低屈折率の有機物質
は、フッ素含有率の高い樹脂であって優れた反射防止特
性を有している。また、塗膜の形成が容易であって生産
性が高く経済的である。
【0005】しかし、特開平4−355401号公報お
よび特開平6−18705号公報に記載の含フッ素樹脂
からなる有機薄膜は、含フッ素樹脂硬化物の架橋密度が
低いので表面硬度が低く、耐擦傷性に問題があった。さ
らに、コーティングした後、加熱硬化を必要とするため
使用できる基材が限定されていた。この他、米国特許第
3,310,606号公報には、架橋密度が高く表面硬
度の高い含フッ素樹脂として、パーフルオロジビニルエ
ーテルの硬化物があげられているが、溶剤に不溶で高
温、高圧下で成型する必要があるため薄膜の形成が困難
である。
【0006】また、特開平8−239430号公報に
は、特定の化学構造を持つ含フッ素ジ(メタ)アクリル
酸エステルが開示されているが、下層との密着性に問題
があり、製造工程も複雑である。さらに前記の各問題点
を解決するために、特願平8−311851号に添付の
明細書には、低屈折率且つ耐擦傷性の優れた低屈折率膜
が記載されているが、コーティングに際し、ハジキや厚
みむらが発生しやすい問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、低屈折率で
あって耐擦傷性、耐久性に優れ、かつコーティングに際
しはじきや厚みむらが発生しにくく、容易に形成するこ
とのできる低屈折率膜、およびこの低屈折率膜を用いた
光反射防止性物品を提供することを課題に研究の結果、
完成されたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
め本発明は、炭素数が1ないし14の含フッ素有機化合
物残基(R)と、前記(R)と結合して重合性末端基を
分子内に形成することのできる有機化合物(P)の2な
いし4分子とからなり、少なくとも2個の重合性末端基
を1分子内に含有するパーフルオロ系化合物(A:化2
の一般式(1)で示される)、ならびに前記パーフルオ
ロ系化合物Aの少なくとも2倍の分子量を有する化合物
Bとを含むことを特徴とする低屈折率膜を提供する。
【0009】
【化2】 本発明の低屈折率膜において、パーフルオロ系化合物A
としては、重合性末端基に(メタ)アクリロイル基およ
び/またはエポキシ基を有するものが好ましい。また、
化合物Bとしては単官能(メタ)アクリレート系化合物
の重合体が好適であって、なかでもパーフルオロ系(メ
タ)アクリレートを少なくとも40重量%含むものが好
ましく用いられる。両者の含有比率はパーフルオロ系化
合物Aが70〜99重量%、前記化合物Bが1〜30重
量%の割合である。さらに前記パーフルオロ系化合物A
と前記化合物Bとの合計100重量部に対して、40重
量部を超えない量の単官能および/または多官能の重合
性化合物Cを含有させることができる。
【0010】また、本発明は、前記パーフルオロ系化合
物Aを70〜99重量部と前記化合物Bを1〜30重量
部との割合で有機溶剤に混合した塗液を調合し、調合し
た塗液を基材にコーティングし、活性光線の照射および
/または加熱処理により固形分を硬化せしめて、基材表
面に低屈折率膜を形成することを特徴とする光反射防止
方法を提供する。
【0011】さらに本発明は、物品を構成する基材の表
面に、前記パーフルオロ系化合物Aと前記化合物Bとを
含む低屈折率膜が形成されていることを特徴とする光反
射防止性物品を提供する。本発明の光反射防止性物品に
おいては、基材の表面と低屈折率膜との中間に、有機お
よび/または無機系バインダーと金属化合物の微粒子と
からなり、かつ屈折率が基材の屈折率の±0.02以内
のハードコート層を形成してもよく、さらに、ハードコ
ート層と低屈折率膜との中間に、低屈折率膜およびハー
ドコート層の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率
膜を重ねて形成させることもできる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明について、実施形態例をあ
げながら具体的に説明する。まず、本発明の低屈折率膜
について説明する。本発明の低屈折率膜は、少なくとも
2個の重合性末端基を1分子内に含有する前記一般式
(1)のパーフルオロ系化合物A、および前記パーフル
オロ系化合物Aの少なくとも2倍の分子量を有する化合
物Bとを含んで構成される。
【0013】一般式(1)中のRは、有機化合物、すな
わち脂肪族、脂環族、芳香族およびそれらの結合体に属
する炭素数14以下の直鎖ないし分枝状含フッ素化合物
残基である。炭素数が15を超えると、得られる低屈折
率膜の硬度が低くなる傾向がある。なかでも、製造が容
易であることから脂肪族の直鎖化合物が好ましい。そし
て、構成する水素原子の全部または一部がフッ素原子と
置換されている。屈折率をできるだけ低くするために、
水素原子の80%以上がフッ素原子と置換されているも
のが好ましく、製造が容易である点で、全水素原子をフ
ッ素原子に置換したものが好適である。本発明で最も好
ましい含フッ素化合物残基Rは化3に一般式(2)で示
した、全水素原子がフッ素原子に置換されている2価の
直鎖脂肪族系化合物残基を含むものである。
【0014】
【化3】 一般式(2)において、炭素数は14以下、好ましくは
12以下である。一般式(1)中のPは、Rと結合して
一般式(1)で示されるパーフルオロ系化合物を構成し
た場合、重合性末端基を分子内にもつことのできる有機
化合物である。重合性末端基として、同じ化合物間、ま
たは他の化合物との間で反応性を有する(メタ)アクリ
ロイル基,エポキシ基,アリル基,イソシアネート基,
カルボキシル基,水酸基,アミノ基などがあげられる
が、なかでも重合(または硬化)速度の速い光重合が可
能で、かつポットライフの長い(メタ)アクリロイル基
およびエポキシ基が好適である。有機化合物Pは(P)
nの形で含フッ素化合物残基Rと一つの分子を形成して
いる。Pの数は2〜4が好ましいが、ここで同一分子内
のすべてのPが同一であってもよいし、それぞれ異なる
ものであっても差支えない。Pの数が1つの場合は得ら
れる低屈折率膜の硬度が不足し、5つを越えると製造す
ることが困難になる傾向がある。
【0015】パーフルオロ系化合物Aは、一般には含フ
ッ素化合物残基Rに存在する水酸基、エポキシ基、カル
ボキシル基、イソシアネート基などの官能基と、有機化
合物Pに存在するカルボキシル基、エポキシ基、水酸
基、イソシアネート基などの官能基とを反応させて合成
することができるが特別な制限はない。この中で、エポ
キシ基とカルボキシル基、水酸基とイソシアネート基と
の反応のように、少量の触媒の存在下あるいは非存在下
でも、反応が容易に進行し、未反応物や反応副生成物を
除去する必要の少ない系は、コスト的に有利なので本発
明に好ましく使用できる。一般式(1)中のRとPとの
結合形態の具体例を化4の(a)〜(g)に示す。
【0016】
【化4】 本発明で好適に使用されるパーフルオロ系化合物Aの代
表例を化5および化6の(a)〜(j)に示す。
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】 また、−OHを含むパーフルオロ系化合物Aをウレタン
結合などを介して、重合性末端基数の大きい化合物を合
成することができる。具体例を化7に示す。
【0019】
【化7】 以上に説明したパーフルオロ系化合物Aは、一種を単独
でも、また複数種の化合物を混合して用いることもでき
る。
【0020】次に、パーフルオロ系化合物Aの2倍以上
の分子量を有する化合物Bについて説明する。化合物B
は、コーティング工程で発生する、はじきや塗りむらの
発生を抑制する目的で加えられ、一般には分子量500
以上、より好ましくは分子量1,500以上の有機化合
物が用いられる。増粘効果の大きな直鎖状の化合物が好
ましく、通常、オリゴマーやポリマーが用いられる。具
体的には、ウレタン結合、ウレア結合、エポキシエステ
ル結合、エステル結合などを介し、あるいは二重結合の
付加重合により、いずれも直鎖状に鎖延長した化合物が
好適である。なかでも、コーティング液に溶解しやすく
分子量の制御が容易な、二重結合を付加重合させた直鎖
状のオリゴマーまたはポリマーが好ましい。
【0021】化合物(B)の合成に使用されるモノマー
としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート
類、フマル酸、マレイン酸及びそれらのエステル類、ビ
ニル化合物類などが好適である。たとえば、(メタ)ア
クリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリ
ル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)ア
クリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メ
タ)アクリル酸ヒドロキシエチル、フマル酸、フマル酸
ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、マ
レイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、
マイレン酸ジプロピル、アクリロニトリル、アクリルア
ミド、塩化ビニル、スチレン、α−メチルスチレンがあ
げられる。また、フッ素系化合物、なかでもパーフルオ
ロ系化合物を好ましく用いることもできる。たとえば化
8の一般式(3)および(4)に示される化合物があげ
られる。
【0022】
【化8】 前記のモノマーを、単独重合または共重合して化合物B
を得ることができる。化合物Bには、屈折率の低い膜を
得るために、前記フッ素系化合物を40重量%以上含む
ものが好ましい。また、水酸基を含有するモノマーを共
重合させる場合には、水酸基に(メタ)アクリル酸クロ
ライドや(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネ
ートを結合し、化合物Bへ二重結合を付与することがで
きる。
【0023】さて、本発明の低屈折率膜には、パーフル
オロ系化合物Aと化合物Bの総量に対し、パーフルオロ
系化合物Aが70〜99重量%、好ましくは75〜98
重量%、化合物Bが1〜30重量%、好ましくは2〜2
5重量%の比率で含まれている。低屈折率膜の屈折率が
1.47以下、好ましくは1.45以下であれば、高い
反射防止性物品をつくり易い。しかし、パーフルオロ系
化合物Aが70重量%未満の場合には、低屈折率膜を得
にくい傾向がある。また、99重量%を超えると、コー
ティングの際、はじきや厚みむらを生じやすくなる。
【0024】さらに、本発明の低屈折率膜では、前記2
成分の化合物AおよびBの他にも、膜の屈折率、硬度、
密着性などを調整するために、単官能および/または多
官能の重合性化合物Cを添加することができる。前記パ
ーフルオロ系化合物の末端基がエポキシ基であれば、前
記重合性化合物Cがエポキシ基を有し、パーフルオロ系
化合物の末端基が(メタ)アクリロイル基であれば、重
合性化合物が(メタ)アクリロイル基を有していること
が、膜として一体的化学構造をつくる上で好ましい。
【0025】本発明に用いる単官能の重合性化合物(C
−1)としては、脂肪族モノグリシジル化合物や脂肪族
(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレー
ト、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどがあげ
られる。なかでも低屈折率膜を得るためには、化9に示
すようなフッ素系化合物が推奨される。
【0026】
【化9】 また、本発明に用いる多官能の重合性化合物(C−2)
としては、ビスフェノールA系エポキシ樹脂,脂肪族ポ
リグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、エチレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ
(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メ
タ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)ア
クリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリ
レート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレ
ート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレ
ートなどがあげられる。
【0027】これらの重合性化合物Cの使用量は、パー
フルオロ系化合物Aと化合物Bの合計100重量部に対
し、40重量部、好ましくは30重量部以下にする。4
0重量部以上使用すると、屈折率や硬度において満足な
低屈折率膜が得られにくい傾向がある。
【0028】本発明の低屈折率膜を形成するためには、
前記の組成の混合物を通常、アルコール類、ケトン類、
エステル類、ジメチルホルマミド、炭化水素類などの有
機溶剤に溶解してコーティング溶液にする。コーティン
グ溶液には、重合開始剤(硬化剤)を添加することが行
われる。エポキシ基の硬化剤としては、アミン系、酸無
水物系、フェノール系、メルカプタン系、ヒドラジド
系、イミダゾール系、カチオン付与系、アセチルアセト
ネートなどの金属錯体系化合物などを挙げられるが、本
発明で特に好適に使用されるのは、ポットライフの長さ
と硬化速度の速さから、活性光線による光分解カチオン
付与系の化合物であり、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリ
ルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、トリア
リルセレニウム塩、メタロセン、トリアリルピリリウム
塩、ベンジルピリジニウムチオシアネート、ジアルキル
フェナシルスルホニウム塩、ジアルキルヒドロキシフェ
ニルスルホニウム塩、ジアルキルヒドロキシフェニルホ
スホニウム塩などがあげられる。
【0029】また、二重結合の付加重合に対しては、ア
ゾ系、有機パーオキサイド系化合物などの熱ラジカル重
合開始剤や、アセトフェノン系、ペンゾフェノン系、ミ
ヒラーケトン系、ペンゾイン系、ペンジルジメチルケタ
ール系などの活性光線による光重合開始剤、および必要
に応じ光重合開始剤に増感剤を併用することができる。
ポットライフが長く硬化速度が速い点で光重合開始剤が
好ましい。前記の硬化剤や重合開始剤は単独または併用
してもよく、通常、重合(硬化)性成分の全重量に対し
0.05〜20重量部を用いる。
【0030】前記のほかコーティング溶液には、必要に
より各種の有効成分を添加してもよい。たとえば、屈折
率を低下し膜の硬度を高めるためのフッ化マググネシウ
ム超微粒子や、均一コーティングや下層との密着性を向
上するためのレベリング剤やカプリング剤を加えること
ができる。
【0031】次に本発明の低屈折率膜を得る方法を述べ
る。まず、コーティング溶液をスピンコート、ディップ
コート、ダイコート、スプレイコート、バーコート、ロ
ールコート、カーテンフローコートなどの方法で基材に
均一塗布し、溶剤を除去する。ついで加熱あるいは光照
射により、コーティング膜を実用レベルの硬さに硬化す
る。硬化手段としては、低圧または高圧水銀灯、キセノ
ン灯などを用いた紫外線照射による硬化が高い生産性が
あって好ましい。なお、二重結合の重合では、不活性ガ
ス雰囲気下で反応を進める。
【0032】本発明の薄膜を形成することのできる基材
にとくに制限はない。なかでも、ガラス類;ポリカーボ
ネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレー
ト樹脂、ノルボルネン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン
樹脂、ジエチレングリコールジアリルカーボネート樹脂
などのプラスチック基材やフィルム類など、本発明の低
屈折率膜よりも屈折率が高い透明性の基材の光反射防止
に効果的に利用することができる。基材の屈折率が低屈
折率膜の屈折率よりも低いと、反射防止効果は得られな
い。本発明の低屈折率膜は低屈折率であるが、ほかにも
撥水、撥油性能などの優れた特性を具備するので、それ
らを利用する薄膜を形成してもよい。また、基材の形状
に制限はない。
【0033】用途によっては基材に耐擦傷性を要求され
ることがある。樹脂基材を対象にすることが多いが、基
材の耐擦傷性を高める手段として、ウエットコート法に
より基材と低屈折率膜との間にハードコート層を設け
る。通常、ハードコート層には、有機または無機系バイ
ンダーあるいは両者の混合系バインダーに、必要により
酸化ケイ素、酸化アンチモン、酸化セレン、酸化チタン
などの金属化合物の微粒子、すなわち一般的には可視光
線の波長よりも小さい粒子径の微粒子を添加した塗膜を
用いる。有機バインダーとしては、エポキシ樹脂硬化物
やラジカル架橋重合した樹脂などが、無機系バインダー
としては、シラン系化合物の加水分解硬化物などがある
が、特に制限はない。ハードコート層は通常、0.5〜
10μm程度の膜厚に形成し、耐擦傷機能とその他の性
能(例えばクラック発生防止)とのバランスをはかる。
ハードコート層と基材との屈折率の差が大きいと干渉縞
が目立つようになるので、ハードコート層と基材の屈折
率との差は、±0.02以内に設定することが好まし
い。
【0034】基材上に透明な低屈折率膜を一層設けた
時、入射光の一部は空気と薄膜との境界で反射し、一部
は薄膜と基材界面で反射し、全体として反射光はそれら
の干渉光となる。干渉光は結果的に基材の反射率を低減
もしくは増加させる。低屈折率膜は、光が干渉作用をお
こす程度に薄く、基材の光反射率は低屈折率膜の屈折率
と膜厚に依存する。
【0035】低屈折率膜の厚さはλ/4n(λ:薄膜内
での光の波長、n:薄膜の屈折率)の奇数倍が好まし
い。光の波長に幅のある場合、λは光の中心波長を基準
にする。本発明で中心波長は、500〜550nmに設
定するのが好ましい。低屈折率膜の厚さは、膜の屈折率
にもよるが具体的に70〜200nmが好ましく、より
好ましくは、80〜120nm、さらに好ましくは90
〜110nmの範囲である。低屈折率膜の厚さが70n
m未満の場合は、可視光における光干渉作用による反射
率の低減が不十分になることがある。また、膜厚が20
0nmを超えると、反射率がほぼ空気と薄膜界面の反射
のみに依存するようになるので、可視光の光干渉による
反射率の低減が不十分になる傾向がある。
【0036】低屈折率膜による反射防止作用は、屈折率
の異なる多層の膜を、光学膜厚で積層することにより性
能が高められることが知られている。本発明において
も、基材あるいはハードコート層と低屈折率膜との中間
に、基材およびハードコート層よりも高い屈折率を有す
る高屈折率層を設けることにより、反射防止性物品の性
能をより高めることが可能である。この場合、高屈折率
層の屈折率が1.6以上、好ましくは1.7以上である
ことが求められる。
【0037】高屈折率層は、酸化チタンITO膜に代表
される透明性薄膜を真空蒸着法やスパッタリング法で形
成するか、有機または無機バインダーあるいは両者の混
合系バインダーに、酸化アンチモン、酸化セレン、酸化
チタン、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、リンド
ープ酸化スズ、酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛、スズドー
プ酸化インジウムなどの屈折率の高い金属化合物超微粒
子を分散した薄膜を形成するかしてつくる。有機バイン
ダーとしてはエポキシ樹脂硬化物やラジカル架橋重合し
た樹脂などが、無機系バインダーとしてはシラン系化合
物の加水分解硬化物などが用いられる。
【0038】高屈折率層の膜厚は、λ/2nであること
が好ましい(λは膜内での光の波長を示し、nは膜の屈
折率である)。膜の屈折率にもよるが、具体的には、9
0〜400nm、より好ましくは110〜180nmの
範囲である。高屈折率層に使用される超微粒子が、酸化
スズ、アンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化ス
ズ、アンチモン酸亜鉛、スズドープ酸化インジウムのよ
うに導電性を持ち、高屈折率層自体に1010〜10Ω/
□程度の導電性がある場合は、反射防止性物品に滞電防
止機能やさらには電磁波遮蔽機能を付与できるために好
ましい。
【0039】
【実施例】さらに実施例をあげて、本発明を具体的に説
明する。なお、以下の実施例および参考例において用い
た評価手段および測定手段は次の通りである。 a.膜の厚さ:エリプソメータによる測定値。 b.片面反射率:測定面の裏面をサンドペーパで粗面化
した後、油性インキで黒塗りし、分光光度計を用い、5
40nmにおける測定面の反射率を測定した。
【0040】c.干渉縞:蛍光灯スタンドの20cm下
にサンプルを静置し、肉眼観察により評価した。 d.耐擦傷性:消しゴム(No.50(ライオン(株)
製)を接触面積約0.5cm2 、荷重1kgで反射面上
を20回往復させた後、肉眼判定し、擦過痕が認められ
ないものを合格判定した。まず、低屈折率膜を形成する
のに用いる前記化合物Bの一部を重合例1〜4により重
合した。
【0041】重合例1 次の組成の混合物を窒素気流下、80℃で10時間溶液
重合し、再沈法でポリマーを回収した。回収したポリマ
ーのポリスチレン換算数平均分子量をゲルパーミエイシ
ョンクロマトグラフィ(GPC)法により測定したとこ
ろ、9,000であった。 化10に構造式(a)で示される含フッ素化合物 50重量部 エチルメタクリレート 15 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 15 グリシジルメタクリレート 20 アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 1 メチルイソブチルケトン(MIBK) 400
【0042】
【化10】 重合例2 下記組成の混合物を重合例1と同様に重合した。GPC
法によるポリスチレン換算数平均分子量は10,500
であった。 化10に構造式(b)で示される含フッ素化合物 60重量部 エチルメタクリレート 30 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 8 アクリル酸 2 AIBN 1 MIBK 300 重合例3 下記組成の混合物を重合例1と同様に重合した。GPC
法によるポリスチレン換算数平均分子量は4,500で
あった。
【0043】 化10に構造式(c)で示される含フッ素化合物 65重量部 エチルメタクリレート 35 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 3 アクリル酸 2 AIBN 1 n−ドデシルメルカプタン 1 MIBK 400 重合例4 下記組成の混合物を重合例1と同様に重合した。GPC
法によるポリスチレン換算分子量は15,000であっ
た。
【0044】 化10に構造式(d)で示される含フッ素化合物 80重量部 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 15 アクリル酸 5 AIBN 0.8 MIBK 200 実施例1 表1に記載の組成成分のコーティング溶液Aを調整し
た。厚さ2mmのメタクリル樹脂板(PMMA板)に調
整したコーティング溶液Aをスピンコートし、80℃の
オーブンで10分間処理した。高圧水銀灯で8,000
mJ/cm2 照射してから、80℃のオーブンで1時間
アフターベークして、厚さ95nmの硬化膜を得た。得
られた本発明の低屈折率膜の屈折率はnd=1.4であ
って、低屈折率膜を形成したPMMA板面の片面反射率
は1.3%であった。
【0045】
【表1】 参考例1 ブランクサンプルとしてコーティング処理していない前
記PMMA板の片面反射率を測定したところ3.5%で
あった。
【0046】実施例2 表2に記載の組成成分のコーティング溶液Bを調整し
た。厚さ2mmのポリカーボネート板へコーティング溶
液Bをスピンコートし、80℃のオーブンで10分間処
理した。窒素シール下で、高圧水銀灯を5,000mJ
/cm2 照射して、厚さ95nmの硬化膜を得た。得ら
れた本発明の低屈折率膜の屈折率はnd=1.4、低屈
折率膜を形成したポリカーボネート板面の片面反射率は
1.1%であった。
【0047】
【表2】 参考例2 ブランクサンプルとしてコーティング処理していない前
記ポリカーボネート板の片面反射率を測定したところ
5.2%であった。
【0048】実施例3 表3に記載の組成成分のコーティング溶液Cを調整し
た。厚さ2mmのPMMA板にコーティング溶液Cをス
ピンコートし、80℃のオーブンで10分間処理した。
窒素シール下で、高圧水銀灯を用い5,000mJ/c
2 の光照射を行い、厚さが95nmの硬化膜を得た。
得られた本発明の低屈折率膜の屈折率はnd=1.4
5、低屈折率膜を形成したPMMA板面の片面反射率は
1.8%であった。
【0049】
【表3】 実施例4 表4に記載の組成成分のコーティング溶液Dを調整し
た。厚さ2mmのポリカーボネート板へコーティング溶
液Dをスピンコートし、80℃のオーブンで10分間処
理した。窒素シール下、高圧水銀灯を用いで5,000
mJ/cm2 の光照射を行い、厚さ95nmの硬化膜を
形成した。形成した本発明の低屈折率膜の屈折率はnd
=1.45、低屈折率膜形成面の片面反射率は1.6%
であった。
【0050】
【表4】 実施例5 表5に記載の組成物を還流下で8時間反応させ、化11
に化学式で示した化合物を含む溶液Eをつくった。
【0051】
【表5】
【0052】
【化11】 さらに溶液Eを用い、表6に記載の組成成分のコーティ
ング溶液Eを調整した。コーティング溶液Eから実施例
3と同様にしてPMMA板面に厚さが95nmの硬化膜
を形成した。形成した本発明低屈折率膜の屈折率はnd
=1.46、低屈折率膜形成面の片面反射率は1.9%
であった。
【0053】
【表6】 実施例6 表7に記載の組成物を還流下で8時間反応させ、化12
に化学式で示した化合物を含む溶液Fをつくった。
【0054】
【表7】
【0055】
【化12】 さらに溶液Fを用い、表8に記載の組成成分のコーティ
ング溶液Fを調整した。コーティング溶液Fから実施例
4と同様にしてポリカーボネート板面に厚さ95nmの
硬化膜を形成した。形成した本発明低屈折率膜の屈折率
はnd=1.45、低屈折率膜形成面の片面反射率は
1.6%であった。
【0056】
【表8】 実施例7 表9に記載の組成物を50℃,4時間反応させて化13
に化学式で示した化合物を含む溶液Gをつくった。
【0057】
【表9】
【0058】
【化13】 さらに溶液Gを用い、表10に記載の組成成分のコーテ
ィング溶液Gを調整した。コーティング溶液Gから実施
例4と同様にしてポリカーボネート板面に厚さ95nm
の硬化膜を形成した。形成した本発明低屈折率膜の屈折
率はnd=1.45、低屈折率膜形成面の片面反射率は
1.6%であった。
【0059】
【表10】 実施例8〜14 厚さ2mmのポリカーボネート板(屈折率nd=1.5
9)の表面に五酸化アンチモン超微粒子、γ−グリシド
キシプロピルトリメトキシシランおよびビスフェノール
A系エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化ハードコート層
を設けた。硬化触媒にはアルミニウムアセチルアセトナ
ートを用いた。ハードコート層の厚さは2,5μm、屈
折率はnd=1.59であった。ハードコート層に重ね
て実施例1〜7と同様に、コーティング溶液A,B,
C,D,E,F,Gをコーティングし、硬化して本発明
の低屈折率膜を形成した。形成した低屈折率膜の評価結
果を表11に示す。いずれの低屈折率膜も高い耐擦傷性
を有していた。
【0060】
【表11】 実施例15〜21 実施例8〜14と同様にしてポリカーボネート板の表面
に熱硬化ハードコート層を設けた。さらに、ハードコー
ト層の表面にアンチモンドープ酸化スズ超微粒子、ペン
タエリスリトールトリアクリレートを主成分にする層を
コーティングし、ラジカル架橋硬化して高屈折率の導電
層を形成した。形成した高屈折率膜の厚さは150n
m、屈折率はnd=1.70、表面抵抗値は3×108
Ω/□であった。さらに、高屈折率膜の表面に重ねて実
施例1〜7と同様にコーティング溶液A,B,C,D,
E,F,Gをコーティングし、硬化して低屈折率膜を形
成した。評価結果を表12に示す。いずれの膜も高い耐
擦傷性が得られた。
【0061】
【表12】 実施例22 厚さが2mm、屈折率がnd=1.53のガラス板に、
真空蒸着法により厚さ145nmのITO膜を形成し
た。ITO膜の表面に、実施例2と同様にしてコーティ
ング液Bをコーティング、硬化して本発明の低屈折率膜
を重ねた。得られたガラス板面の片面反射率は0.7%
であった。
【0062】
【発明の効果】本発明の低屈折率膜は、2以上の重合性
末端基を1分子内に有する架橋性の高いパーフルオロ系
化合物を主成分に形成されているので、屈折率が低いの
みならず、表面硬度が大で耐擦傷性、耐久性に優れてい
る。他にも、はっ水性やはっ油性にも高い効果を奏す
る。しかも、硬化前は溶剤に可溶なため、簡便かつ連続
処理が可能で経済的な溶液コーティングにより塗布し、
硬化することができる。したがって、ハードコート層や
高屈折率膜に重ねて本発明の低屈折率膜を形成し、耐擦
傷性、光反射防止性能をさらに向上させることができ
る。また、成分比を調整し、あるいは必要な成分を添加
しすることにより塗膜形成時に発生しやすい、はじきや
塗布むらを防止する効果が得られる。さらに透明導電性
膜などと併用して多機能膜に構成することが可能であ
る。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素数が1ないし14の含フッ素有機化合
    物残基(R)と、前記(R)と結合して重合性末端基を
    分子内に形成することのできる有機化合物(P)の2な
    いし4分子とからなり、少なくとも2個の重合性末端基
    を1分子内に含有するパーフルオロ系化合物(A:一般
    式(1)で示される)、ならびに前記パーフルオロ系化
    合物(A)の少なくとも2倍の分子量を有する化合物
    (B)を含むことを特徴とする低屈折率膜。 【化1】
  2. 【請求項2】パーフルオロ系化合物(A)の重合性末端
    基が、(メタ)アクリロイル基および/またはエポキシ
    基であることを特徴とする請求項1記載の低屈折率膜。
  3. 【請求項3】前記化合物(B)が単官能(メタ)アクリ
    レート系化合物の重合体であることを特徴とする請求項
    1または2記載の低屈折率膜。
  4. 【請求項4】前記単官能(メタ)アクリレート系化合物
    の重合体が、パーフルオロ系(メタ)アクリレートを少
    なくとも40重量%含むことを特徴とする請求項3記載
    の低屈折率膜。
  5. 【請求項5】前記パーフルオロ系化合物(A)および前
    記化合物(B)の総量中、パーフルオロ系化合物(A)
    が70〜99重量%の割合で含有されていることを特徴
    とする請求項1ないし4のいずれかに記載の低屈折率
    膜。
  6. 【請求項6】前記パーフルオロ系化合物(A)と前記化
    合物(B)との合計100重量部に対し、40重量部を
    超えない量の単官能および/または多官能の重合性化合
    物(C)が含有されていることを特徴とする請求項1な
    いし5のいずれかに記載の低屈折率膜。
  7. 【請求項7】前記パーフルオロ系化合物(A)を70〜
    99重量部と前記化合物(B)を1〜30重量部との割
    合で有機溶剤に混合した塗液を調合し、調合した塗液を
    基材にコーティングし、活性光線の照射および/または
    加熱処理により固形分を硬化せしめて、基材表面に低屈
    折率膜を形成することを特徴とする光反射防止方法。
  8. 【請求項8】物品を構成する基材の表面に、前記パーフ
    ルオロ系化合物(A)と前記化合物(B)とを含む低屈
    折率膜が形成されていることを特徴とする光反射防止性
    物品。
  9. 【請求項9】基材の表面と低屈折率膜との中間に、有機
    および/または無機系バインダーと金属化合物の微粒子
    とからなり、かつ屈折率が基材の屈折率の±0.02以
    内のハードコート層が形成されていることを特徴とする
    請求項8記載の反射防止性物品。
  10. 【請求項10】ハードコート層と低屈折率膜との中間
    に、低屈折率膜およびハードコート層の屈折率よりも高
    い屈折率を有する高屈折率膜が重ねて形成されているこ
    とを特徴とする請求項9記載の反射防止性物品。
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