JP2008139526A - 反射防止フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐アルカリ性に優れるとともに、良好な塗工性を有し(低屈折率層の塗工ムラがない)、最低反射率が小さく、耐汚染性、耐擦傷性、透明性に優れた反射防止フィルムの提供。
【解決手段】 透明基材フィルム上にハードコート層および低屈折率層が積層され、低屈折率層が、フッ素原子を1個以上含有する2価の有機基を有するジシラン化合物又はその(部分)加水分解物を主成分とするマトリックス成分;中空シリカ粒子;およびラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とするグラフト共重合体を含有する低屈折率層形成用組成物から形成され、該組成物が、マトリックス成分100質量部に対し、中空シリカ粒子20〜120質量部およびグラフト共重合体5〜40質量部を配合してなることを特徴とする反射防止フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、反射防止フィルムに関するものであり、詳しくは、とくに耐アルカリ性に優れるとともに、良好な塗工性を有し(低屈折率層の塗工ムラがない)、最低反射率が小さく、耐汚染性、耐擦傷性、透明性に優れた反射防止フィルムに関するものである。
パーソナルコンピュータ、テレビジョン、カーナビゲータ、携帯電話などのディスプレイは、人間が画像を見て情報を読み取るものであり、見やすさが重要な機能として求められる。しかし、現実には背景の映りこみによるコントラストが低下し、画面が見づらくなるという状況が多々発生する。これを防ぐために、視認性低下の原因になっている画面の表面反射の抑制する工夫がなされ、ディスプレイの表面には防眩処理又は反射防止処理が施される。
防眩処理は、ディスプレイの表面に微細な凹凸を形成し、光の散乱により反射像を散らして輪郭をぼかせる処理である。基板がプラスチックの場合には、シリカなどの無機微粒子や、ポリスチレンなどの有機微粒子などが表面にコーティングされるが、画像の解像度が低下する。反射防止処理は、表面に光の波長程度の厚さからなる薄膜を形成し、光の干渉効果により反射率を低減するものである。入射媒質の屈折率をn1、膜の屈折率をn2、反射率をRとすると、
R=〔(n2−n1)/(n2+n1)〕2
であり、膜厚をd、光の波長をλとすると
d=λ/(4n2
のとき、光の干渉効果は最大になる。
薄膜の形成方法として、乾式法、湿式法がある。乾式法においては、二酸化チタンなどの高屈折率層と、フッ化マグネシウムやシリカなどの低屈折率層を、真空蒸着やスパッタリングなどにより形成するが、基材の大きさに制限があり、処理に時間を要し、連続化が困難である。
湿式法については、例えば、透明基材フィルム上に、直接又は他の層を介して高屈折率ハードコート層及び低屈折率層を積層してなる反射防止フィルムにおいて、上記低屈折率層がRnSi(OR´)n(R及びR´は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+nは4であり、m及びnはそれぞれ整数である)で表される珪素アルキシドを加水分解して調整したSiO2ゾル液から形成されたSiO2ゲル層からなることを特徴とする反射防止フィルムが開示されている(特許文献1)。しかし、上記反射防止フィルムは、最低反射率が大きいために十分な反射防止効果が得られず、また耐アルカリ性、耐汚染性が劣るという問題がある。
また、シリコンアルコキシドと、非水溶媒と、平均粒子径が0.3〜100nmかつ屈折率が1.2〜1.4である多孔質シリカ微粉末とを分散含有してなることを特徴とする低屈折率膜形成用塗料が開示されている(特許文献2)。しかし、上記低屈折率膜形成用塗料を用いて形成された低屈折率を備えた反射防止フィルムは、反射防止効果は改良されているが、耐アルカリ性、耐汚染性に劣るという問題がある。
従来技術においての低屈折率層は、最低反射率が大きいために十分な反射防止効果が得られない。また、耐アルカリ性、耐汚染性等の特性にも改善の余地があった。
特開平10−726号公報 特許第3272111号公報
本発明の目的は、とくに耐アルカリ性に優れるとともに、良好な塗工性を有し(低屈折率層の塗工ムラがない)、最低反射率が小さく、透明性、耐擦傷性、耐汚染性、耐アルカリ性に優れた反射防止フィルムを提供することにある。
本発明は、以下のとおりである。
(1)透明基材フィルム上にハードコート層を有し、さらに前記ハードコート層上に低屈折率層が積層されてなる反射防止フィルムであって、
前記低屈折率層が、フッ素原子を1個以上含有する2価の有機基を有するジシラン化合物又はその(部分)加水分解物を主成分とするマトリックス成分;中空シリカ粒子;およびラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とするグラフト共重合体を含有する低屈折率層形成用組成物から形成され、
前記低屈折率層形成用組成物が、前記マトリックス成分100質量部に対し、前記中空シリカ粒子20〜120質量部および前記グラフト共重合体5〜40質量部を配合してなることを特徴とする反射防止フィルム。
(2)透明基材フィルム上にハードコート層を有し、さらに前記ハードコート層上に高屈折率層および低屈折率層がこの順で積層されてなる反射防止フィルムであって、
前記低屈折率層が、フッ素原子を1個以上含有する2価の有機基を有するジシラン化合物又はその(部分)加水分解物を主成分とするマトリックス成分;中空シリカ粒子;およびラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とするグラフト共重合体を含有する低屈折率層形成用組成物から形成され、
前記低屈折率層形成用組成物が、前記マトリックス成分100質量部に対し、前記中空シリカ粒子20〜120質量部および前記グラフト共重合体5〜40質量部を配合してなることを特徴とする反射防止フィルム。
(3)前記ジシラン化合物が、下記式(1)
m1 3-mSi−Y−SiR1 3-mm (1)
(式中、R1は、炭素数1〜6の1価炭化水素基、Yはフッ素原子を1個以上含有する2価有機基、Xは加水分解性基、mは1、2又は3である。)
で示されることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の反射防止フィルム。
(4)前記中空シリカ粒子の平均粒子径が、5〜100nmであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の反射防止フィルム。
(5)前記ラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位からなる幹部分が、アクリル系ポリマーであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の反射防止フィルム。
(6)前記透明基材フィルムが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(7)前記ハードコート層の厚さが0.5〜10μmであり、前記ハードコート層が、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、五酸化アンチモン20〜600質量部を配合し、これを硬化させて形成したものであることを特徴とする前記(1)に記載の反射防止フィルム。
(8)前記ハードコート層の厚さが0.5〜10μmであり、前記ハードコート層が、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体5〜20質量部を配合し、これを硬化させて形成したものであることを特徴とする前記(2)に記載の反射防止フィルム。
(9)前記高屈折率層が、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、アンチモン酸亜鉛を100〜600質量部を配合し、これを硬化させて形成したものであることを特徴とする前記(2)に記載の反射防止フィルム。
一般的に低屈折率層に中空シリカを多量に添加すると、最低反射率は向上するが、耐アルカリ性が落ちるという問題があった。しかし本発明では、特定のジシラン化合物を含むマトリックス成分と、特定構造を有するグラフト共重合体とを併用することにより、低屈折率層表面の接触角が大きくなり、中空シリカ粒子を多量に添加した場合でも、耐アルカリ性が損なわれない。また、接触角の増大により耐汚染性にも優れる。
また、上記グラフト共重合体の添加量を適切に設定することにより、低屈折率層形成用組成物の塗工性が良好となり、低屈折率層の塗工ムラが生じない。
さらに本発明の好適な形態である、ハードコート層の厚さ、構成樹脂、フィラー等の各成分の種類および添加量を制御する形態では、低屈折率層との密着性が向上し、これにより耐アルカリ性および耐擦傷性をさらに向上させることができる。
したがって本発明によれば、とくに耐アルカリ性に優れるとともに、良好な塗工性を有し(低屈折率層の塗工ムラがない)、最低反射率が小さく、耐汚染性、耐擦傷性、透明性に優れた反射防止フィルムを提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(透明基材フィルム)
本発明に用いる透明基材フィルムは、透明性を有するプラスチックフィルムであれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリトリメチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルムなどのセルロース系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリメタクリル酸メチルフィルムなどのアクリル系フィルム、スチレン−アクリロニトリル共重合体フィルムなどのスチレン系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ環状オレフィンフィルムなどのポリオレフィン系フィルムなどを挙げることができる。これらの中で、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、機械的強度と寸法安定性が良好なので好適に用いることができ、トリアセチルセルロースフィルムは、等方性と透明性が良好なので好適に用いることができる。
透明基材フィルムの厚さは、例えば20〜250μmである。
(ハードコート層)
ハードコート層は、厚さが0.5〜10μmであることが好ましい。
厚さが0.5μm未満では、鉛筆硬度が低下し、耐スチールウール性も低下する。厚さが10μmを超えると、カールが強く発生し好ましくない。好ましい厚さは、0.8〜4.0μmであり、さらに好ましい厚さは、1.2〜3.0μmである。
本発明の反射防止フィルムにおいては、ハードコート層に高屈折率層のもつ役割を兼ねさせ、その上に低屈折率層を設けた簡易な構成と、ハードコート層上に高屈折率層および低屈折率層を設けた構成が挙げられる。前者の構成、すなわちハードコート層に高屈折率層のもつ役割を兼ねさせ、その上に低屈折率層を設けた簡易な構成(以下、簡易構成という)において、ハードコート層は、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、五酸化アンチモン20〜600質量部、所望により末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体5〜20質量部を配合し、これを硬化して形成される形態が好ましい。
分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート等を挙げることができる。好ましい具体例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられ、中でもジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがとくに好ましい。これらの多官能(メタ)アクリレ−トは単独で用いても又は2種以上混合して用いてもよい。
五酸化アンチモンは、平均粒子径が5〜100nmであることが好ましい。この平均粒子径を有することにより、透明性が高まる。
さらに好ましい平均粒子径は、10〜70nmであり、とくに好ましい平均粒子径は、15〜50nmである。
五酸化アンチモンはパイロクロア構造を有しているものが好ましい。このようなパイロクロア構造を有するものは、プロトン伝導による導電性が高いという特性を有している。なお、パイロクロア構造とは、日本化学会誌、No.4, P.488,1983年に記載されているように、アンチモン原子を中心にして6個の酸素原子およびOH基により8面体が形成され、これら8面体の頂点共有によって形成された骨格構造をいう。
末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体としては、末端メタクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリメタクリレート、末端メタクリレートポリスチレン、末端メタクリレートポリエチレングリコール、末端メタクリレートアクリロニトリル−スチレン共重合体、末端メタクリレートスチレン−メチルメタクリレート共重合体等を挙げることができ、その質量平均分子量は5000〜10000が好ましい。末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体の市販品としては、マクロモノマーAA−6、AS−6S、AN−6S、AW−6S(東亞合成(株)製)等を挙げることができる。
簡易構成において、ハードコート層は、上記の2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、五酸化アンチモン20〜600質量部、所望により末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体5〜20質量部を配合した組成物を用いて形成される。五酸化アンチモンの配合割合が20〜600質量部であることにより、最低反射率の低減効果が向上する。また帯電防止効果も発現する。末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体が5〜20質量部であることにより、低屈折率層との密着性が高まり、その結果耐アルカリ性および耐擦傷性に優れるという効果が発揮される。また、耐カール性が向上する。
さらに好ましい配合割合は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に対し、五酸化アンチモン45〜140質量部および末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体5〜15質量部である。
ハードコート層上に高屈折率層および低屈折率層を設けた構成(以下、3層構成という)では、ハードコート層に五酸化アンチモンを配合する必要はない。しかし、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体を配合することが好ましい。
これにより、高屈折率層との密着性が高まり、その結果耐アルカリ性および耐擦傷性に優れるという効果が発揮される。
3層構成において、電離放射線硬化型樹脂および末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体の好ましい種類および配合割合は、前述の簡易構成と同様である。
ハードコート層は、透明基材フィルム上に上記各成分を塗料として塗布、乾燥し、電離放射線照射により硬化させることにより形成することができる。電離放射線に特に制限はなく、例えば、電子線、放射線、紫外線などを挙げることができる。電離放射線の中で、紫外線は装置が簡単であり、取り扱いか容易であることから、特に好適に用いることができる。電離放射線を照射して架橋させることにより、JIS K 5400において定義される鉛筆硬度H以上の塗膜を形成することができる。
電離放射線が紫外線の場合、光重合開始剤が通常添加される。光重合開始剤としては特に制限はなく、例えばイルガキュアー184,907,651,1700,1800,819,369(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ダロキュアー1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、エザキュアーKIP150、TZT(日本シイベルヘグナー社製)、ルシリンTPO(BASF社製)、カヤキュアBMS(日本化薬製)等が挙げられる。
また上記組成物は、必要に応じて各種添加剤を併用できることは勿論である。
(易接着剤層)
本発明の反射防止フィルムは、透明基材フィルムとハードコート層との間に、両者の密着性を向上させる目的で易接着剤層を設けてもよい。易接着剤層は、透明基材フィルムとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを採用したときに、とくに有効である。
易接着剤層の材質は、透明であって、透明基材フィルムとハードコート層の密着性を向上させるものであれば、とくに制限されないが、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂およびそれらの共重合体等が挙げられる。易接着剤層の厚さは特に限定されないが、0.03〜0.30μmが好ましく、0.05〜0.20μmがさらに好ましい。易接着剤層は、透明基材フィルム上に公知のコーティング技術により設けることができる。
本発明の反射防止フィルムは、前述のように、ハードコート層に高屈折率層のもつ役割を兼ねさせ、その上に低屈折率層を設けた簡易構成、あるいは、ハードコート層上に高屈折率層および低屈折率層を設けた3層構成を有することができる。まず、本発明の主要な特徴である低屈折率層について説明する。
(低屈折率層)
本発明における低屈折率層は、フッ素原子を1個以上含有する2価の有機基を有するジシラン化合物又はその(部分)加水分解物を主成分とするマトリックス成分;中空シリカ粒子;およびラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とするグラフト共重合体を含有する低屈折率層形成用組成物から形成される。
なお本発明において、(部分)加水分解物とは、部分加水分解物であっても、完全加水分解物であってもよいことを示す。またマトリックス成分における主成分とは、溶剤を除く有効成分中50質量%以上、特に70質量%以上の割合で含まれていることを意味する。
マトリックス成分は、フッ素原子を1個以上含有する2価の有機基を有するジシラン化合物又はその(部分)加水分解物を主成分とする。
上記ジシラン化合物は、下記式(1)
m1 3-mSi−Y−SiR1 3-mm (1)
(式中、R1は炭素数1〜6の1価炭化水素基、Yはフッ素原子を1個以上含有する2価有機基、Xは加水分解性基、mは1、2又は3である。)
で示されるジシラン化合物又はその(部分)加水分解物(以下(i)成分ともいう)であるのが好ましい。
ここで、Yは、フッ素原子を1個以上、好ましくは4〜50個、特に好ましくは8〜24個含有する2価有機基を示し、具体的には下記のものを例示することができるが、これに限定されるものではない。
−C24−(CF2n−C24
−C24−CF(CF3)−(CF2n−CF(CF3)−C24
−C24−CF(C25)−(CF2n−CF(C25)−C24
−C24−CF(CF3)CF2−O(CF2nO−CF2CF(CF3)−C24
(但し、nは2〜20である。)
−C24−C610−C24
−C24−C64−C24
反射防止性に加え、防汚性、撥水性等の諸機能を良好な基準で発現させるためには、フッ素原子を多量に含有していることが好ましい。また、パーフルオロアルキレン基は剛直なため、高硬度で耐擦傷性に富む被膜を得る目的のためは、フッ素原子をできるだけ多量に含有していることが好ましい。フッ素原子を多量に含有していれば、耐アルカリ性もよくなる。従って、Yとしては下記の構造
−CH2CH2(CF2nCH2CH2
−C24−CF(CF3)−(CF2n−CF(CF3)−C24
(但し、nは2〜20である。)
が好ましく、特に
−CH2CH2(CF2nCH2CH2−(n=2〜20)
が好ましい。
nとしては2〜20の値を満たす必要があるが、より好ましくは4〜12、特に好ましくは4〜10の範囲を満たすのがよい。これより少ないと、反射防止性、耐アルカリ性、耐汚染性、撥水性等の諸機能を十分に得ることができない場合があり、多すぎると、架橋密度が低下するため十分な耐擦傷性が得られない場合が生ずる。
1は、炭素数1〜6の1価炭化水素基を表す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基等を例示することができる。良好な耐擦傷性を得るには、メチル基が好ましい。
mとしては1、2又は3、好ましくは2又は3であり、特に高硬度な被膜にするには、m=3とするのがよい。
Xは、加水分解性基を表す。具体例としては、Clなどのハロゲン原子、OR2(R2は炭素数1〜6の1価炭化水素基)で示されるオルガノオキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、イソプロペノキシ基などのアルケノキシ基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、メチルエチルケトキシム基等のケトオキシム基、メトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基などを挙げることができる。これらの中でアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基のシラン化合物が取り扱い易く、加水分解時の反応の制御もし易いため、好ましい。
以上を満たすジシラン化合物の具体例としては、下記のものが例示される。
(CH3O)3Si−C24−(CF24−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF26−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF28−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF210−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF216−C24−Si(OCH33
(C25O)3Si−C24−(CF24−C24−Si(OC253
(C25O)3Si−C24−(CF26−C24−Si(OC253
(CH3O)2(CH3)Si−C24−(CF24−C24−Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)Si−C24−(CF26−C24−Si(CH3)(OCH32
(CH3O)(CH32Si−C24−(CF24−C24−Si(CH32(OCH3
(C25O)(CH32Si−C24−(CF26−C24−Si(CH32(OC25
(CH3O)3Si−C24−CF(CF3)−(CF24−CF(CF3)−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−CF(CF3)−(CF28−CF(CF3)−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−CF(CF3)−(CF212−CF(CF3)−C24−Si(OCH33
これらの中でも、好ましくは、
(CH3O)3Si−C24−(CF24−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF26−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF28−C24−Si(OCH33
(C25O)3Si−C24−(CF24−C24−Si(OC253
(C25O)3Si−C24−(CF26−C24−Si(OC253
の各ジシラン化合物を使用するのがよい。
前記の式(1)のジシラン化合物は、下記式(2)で示されるフッ素原子置換有機基を含有する有機珪素化合物又はその(部分)加水分解物((ii)成分)と併用することができる。
Rf−SiX3 (2)
(式中、Rfはフッ素原子を1個以上含有する1価有機基、Xは加水分解性基である。)
ここで、Rfはフッ素原子を1個以上、好ましくは3〜25個、特に好ましくは3〜17個含有する1価有機基を示し、具体的には下記のものを例示することができる。
CF324
CF3(CF2324
CF3(CF2524
CF3(CF2724
CF3(CF2924
CF3(CF21124
CF3(CF27CONHC36
CF3(CF27CONHC24NHC36
CF3(CF2724OCOC24SC36
CF3(CF2724OCONHC36
CF3(CF27SO2NHC36
37O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)CONHC36
(但し、pはp≧1、特に1〜3である。)
これらの中でも、
CF324
CF3(CF2324
CF3(CF2724
が極性部分を含んでいないため好ましい。Xは、前述の通りである。
以上を満たすフッ素原子置換有機基を含有する有機珪素化合物の具体例としては、下記のものが例示される。
CF324−Si(OCH33
CF324−Si(OC253
CF3(CF2324−Si(OCH33
CF3(CF2324−Si(OC253
CF3(CF2524−Si(OCH33
CF3(CF2724−Si(OCH33
CF3(CF2724−Si(OC253
CF3(CF2924−Si(OCH33
CF3(CF21124−Si(OCH33
CF3(CF27CONHC36−Si(OCH33
CF3(CF27CONHC24NHC36−Si(OCH33
CF3(CF2724OCOC24SC36−Si(OCH33
CF3(CF2724OCONHC36−Si(OCH33
CF3(CF27SO2NHC36−Si(OCH33
37O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)CONHC36−Si(OCH33
(但し、pはp≧1である。)
これらの中でも、下記のものが好ましい。
CF324−Si(OCH33
CF3(CF2324−Si(OCH33
CF3(CF2724−Si(OCH33
本発明においては、(i)成分を(ii)成分と併用せず、単独で用いることができるが、(i)成分と(ii)成分とを混合して使用する場合、(i)成分の含有率を60質量%以上100質量%未満とすることが必要である。(i)成分の含有率が60質量%未満であると、架橋密度が低下し、良好な耐擦傷性が得られないため、保護被膜としての機能が不十分となり、好ましくない。より好ましくは(i)成分の含有率が95質量%以上であるのがよい。また、(ii)成分の添加効果の点から、(i)成分の含有率は、99.5質量%以下であることが好ましい。
また、本発明においては、上記(i)成分と(ii)成分との混合物を共加水分解したものを使用してもよい。
本発明における低屈折率層形成用組成物は、(i)成分単独又は(i)成分と(ii)成分との混合物もしくはその共加水分解物を主成分とするが、求める諸特性に影響を与えない範囲で、下記有機珪素化合物又はその(部分)加水分解物を使用することができる。
(i)、(ii)成分と併用することが可能な有機珪素化合物としては、テトラエトキシシラン等のシリケート類、メチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のアルキルシラン類、フェニルトリメトキシシラン等のフェニルシラン類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤類等の各種化合物を挙げることができる。特に、テトラアルコキシシランは、架橋密度を上げる効果があるため、耐擦傷性を向上させる目的で併用する場合には有効であるが、被膜を親水性化する傾向があり、耐アルカリ性、耐汚染性、撥水性等の諸機能を低下させることがあるため、多量に使用するのは避けた方がよく、(i)成分又は(i)、(ii)成分の合計量100質量部に対して5質量部以下、特に2質量部以下、とりわけ1質量部以下であることが好ましい。
上述した式(1)、(2)の化合物、或いは上記(i)、(ii)成分と併用可能な有機珪素化合物は、このままで使用してもよいし、(部分)加水分解した形、或いは下記溶剤中で加水分解した形で使用してもよい。コーティング後の硬化速度を高める観点からは、(部分)加水分解した形で使用する方が好ましい。加水分解に使用する水の量は、(H2O/Si−X)のモル比が0.1〜10の量比で使用するのがよい。
加水分解は、従来公知の方法を適用することができ、この加水分解用触媒或いは加水分解・縮合硬化用触媒として、塩酸、酢酸、マレイン酸等の酸類、水酸化ナトリウム(NaOH)、アンモニア、トリエチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン等のアミン化合物、及びアミン化合物の塩類、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩等の塩基類、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムのようなフッ化塩、固体酸性触媒或いは固体塩基性触媒(例えばイオン交換樹脂触媒など)、鉄−2−エチルヘキソエート、チタンナフテート、亜鉛ステアレート、ジブチル錫ジアセテートなどの有機カルボン酸の金属塩、テトラブトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、ジブトキシ−(ビス−2,4−ペンタンジオネート)チタン、ジ−i−プロポキシ(ビス−2,4−ペンタンジオネート)チタンなどの有機チタンエステル、テトラブトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、ジブトキシ−(ビス−2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ(ビス−2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウムエステル、アルミニウムトリイソプロポキシド等のアルコキシアルミニウム化合物、アルミニウムアセチルアセトナート錯体等のアルミニウムキレート化合物等の有機金属化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノアルキル置換アルコキシシランが例示され、これらを単独で又は混合して使用してもよい。
この触媒の添加量は、(部分)加水分解されるべき化合物100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。この量が0.01質量部よりも少ないと、反応完結までに時間がかかりすぎたり、反応が進行しない場合がある。また、10質量部を超えると、コスト的に不利であり、得られる組成物或いは硬化物が着色してしまったり、副反応が多くなる場合がある。
中空シリカ粒子は、シリカを主成分とする外殻層を有し、内部が多孔質または空洞となっている粒子である。中空シリカ粒子の平均粒子径は5〜100nmが好ましく、10〜80nmがさらに好ましい。なお、上記平均粒子径は動的光散乱法によって求めた。
ラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とするグラフト共重合体は、好ましくは、繰り返し単位からなる幹部分がアクリル系ポリマーである櫛形のアクリル系グラフト共重合体である。当該グラフト共重合体としては、下記式(3)で示されるシリコーンと下記式(4)で示されるアクリルシラン化合物とを縮合させてなる生成物をあげることができる。
Figure 2008139526
(式中R6およびR7は炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基、フェニル基または一価のハロゲン化炭化水素基を表す。qは1以上の正数である。)
Figure 2008139526
(式中R8は水素原子またはメチル基を表す。R9はメチル基、エチル基、またはフェニル基を表し、2つのR9は互いに同一もしくは異なっていてもよい。Zは塩素原子、メトキシ基またはエトキシ基を表す。)
ここで用いられる前記式(3)で示されるシリコーンは市販品として入手でき、目的にあったものを使用することができる。前記式(3)におけるR6およびR7は炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基、フェニル基または一価のハロゲン化炭化水素であり、炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、アシル基等が挙げられ、一価のハロゲン化炭化水素としては、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロ−3,3−ジフルオロブチル基、2−クロロエチル基等が挙げられる。R8およびR9として特に好ましいのはメチル基である。
前記式(3)でqは1以上の正数であるが、一般にqの数が100以上という高分子量のシリコーンを用いた場合、得られるグラフト共重合体はオイル状のものであることが多い。qの数が100以下という低分子量シリコーンを用いた場合、得られるグラフト共重合体は、モノマーの種類によりオイル状、ゼリー状、固体状等各種のものを得ることができる。
次に前記式(4)で示されるアクリルシラン化合物としては、例えばγ−メタクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルジフェニルクロロシラン、γ−アクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。これらのアクリルシラン化合物は、特公昭33−9969号公報に記載の方法等に従い、ケイ素化合物と脂肪族性多重結合を有する化合物とを塩化白金酸の存在下で反応させることにより容易に得られる。
また、グラフト共重合体の作製におけるラジカル共重合は、従来公知の方法を使用でき、放射線照射法、ラジカル重合開始剤を用いる方法を使用できる。さらに紫外線照射法により共重合させる場合は、ラジカル重合開始剤として公知の増感剤を使用し、電子線照射により共重合させる場合はラジカル重合開始剤を使用する必要はない。このようにして得られたラジカル共重合体は、ラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とする櫛形グラフト共重合体である。なお、ラジカル重合性モノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基を含有するモノマーを併用してもよい。
また本発明におけるグラフト共重合体は、市販品を利用することもでき、例えば、サイマックUS−150、US−270、US−350、US−450、レゼダGP−700(以上、東亞合成(株)製)等を挙げることができる。
前述のように、本発明における低屈折率層形成用組成物は、前記マトリックス成分100質量部に対し、前記中空シリカ粒子を20〜120質量部および前記グラフト共重合体5〜40質量部を配合してなる。グラフト共重合体の配合量が5質量部未満であると、耐アルカリ性の改善効果が発揮されない。また40質量部を超えると、低屈折率層の塗工時に塗工ムラが発生する。さらに好ましい配合割合は、マトリックス成分100質量部に対し、中空シリカ粒子40〜100質量部およびグラフト共重合体10〜30質量部である。
更に、本発明における低屈折率層形成用組成物には、被膜の硬度、耐擦傷性、導電性等の物性を調整することを目的として各種添加剤を配合することもできる。
低屈折率層を形成するための塗料に用いるに好適な有機溶剤としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテルなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等のβ−ジケトン、β−ケトエステルを挙げることができる。
本発明における低屈折率層形成用組成物をハードコート層または高屈折率層表面にコーティングする方法としては、ディッピング法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法等が挙げられ、特に限定されるものではないが、膜厚の制御を容易に行うことができることから、ディッピング法、スプレーコート法及びロールコート法で所定の膜厚になるように行うのが好ましい。塗布後は、加熱による硬化等により硬化被膜を形成することができる。
低屈折率層の屈折率は、1.28〜1.50が好ましく、1.30〜1.45がさらに好ましい。また低屈折率層の厚さは、40〜300nmであることが好ましく、60〜150nmであることがより好ましい。
(高屈折率層)
本発明における高屈折率層は、とくに制限されず、公知の高屈折率層を適宜採用することができる。例えば、本発明において高屈折率層は、例えば高屈折率層を形成しうるマトリックス成分に、高屈折率材料である酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、さらにこれらの金属酸化物微粒子にアンチモン、錫等の異種元素をドープした微粒子を高屈折率層形成用マトリックスに分散させ、塗料とし、これを塗布等により形成した層であることができる。
本発明では、高屈折率層形成用のマトリックスとして、ハードコート層との密着性や塗工性等の条件に適合する樹脂等から選択して用いることができ、具体的には前記ハードコート層を形成するために用いられる電離放射線硬化型樹脂、あるいは、熱硬化型樹脂等が挙げられる。中でも本発明では、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂が好ましい。該電離放射線硬化型樹脂は、ハードコート層に用いられるものと同様の成分が好ましい。
本発明において、高屈折率層としてとくに好ましい形態は、高屈折率層が、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、アンチモン酸亜鉛を100〜600質量部を配合し、これを硬化して形成されたものである。
アンチモン酸亜鉛は公知であり、例えば特開平6−219743号公報、特開平9−211221号公報等に開示されている。該公報には、ZnO/Sb2 5 のモル比が0.8〜1.2であって、5〜200nmの1次粒子径を有する導電性無水アンチモン酸亜鉛の粉末が開示され、本発明に使用することができる。また、上記アンチモン酸亜鉛は、ZnO/Sb2 5 のモル比が0.8〜1.2となる割合で、焼成により酸化亜鉛を生成する亜鉛化合物と、焼成により酸化アンチモンを生成するアンチモン化合物との混合物を焼成することにより、製造することができる。焼成温度は、例えば500〜680℃である。
またアンチモン酸亜鉛は、その一次粒子径が0.5ミクロン以下の無水アンチモン酸亜鉛ゾルとして入手することができる。例えば、メタノール(セルナックスCX−Z603M−F2、セルナックスCX−Z400、日産化学(株)製)あるいはメタノール/イソプロパノール(セルナックス CX−Z300IM、日産化学(株)製)のオルガノゾルとして入手できる。
上記無水アンチモン酸亜鉛ゾルは、メタノール中では安定で凝集して粒子径が大きくなるようなことはないが、電離放射線硬化型樹脂中で不安定で凝集して粒子径が大きくなったり、分散が破壊されて分離、沈降してしまう。したがって、高屈折率層のマトリックスとして電離放射線硬化型樹脂を使用する場合、分散剤を使用してアンチモン酸亜鉛をマトリックス中に均一に分散することが好ましい。この場合の分散剤としては、カチオン系、弱カチオン系、ノニオン系あるいは両性界面活性剤が有効であり、特にアルキルアミンEO・PO付加体(例えばソルスパース20000、日本ルーブリゾール社製)、アルキルアミンEO付加体(例えばTAMNO−15、TAMNS−10及びTAMNO−5、日光ケミカル(株)製)及びエチレンジアミンPO−EO縮合物(例えばプルロニックTR−701、TR−702及びTR−704、旭電化工業(株)製)などが好ましい。その添加量はアンチモン酸亜鉛100質量部に対し、0.1〜5質量部が有効である。なお、アルキルアミンのアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、ラウリル基、ステアリル基等をあげることができる。また、EO(エチレンオキサイド)やPO(プロピレンオキサイド)の付加モル数としては、アミン1モルに対し数モル〜100モルぐらいまでが適当しているが、これに限定されるものではない。
前述のように、アンチモン酸亜鉛は、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に対し、100〜600質量部を配合するのが好ましく、200〜500質量部を配合するのがさらに好ましい。
更に、本発明における高屈折率層には、被膜の硬度、耐擦傷性、導電性等の物性を調整することを目的として各種添加剤を配合することもできる。
高屈折率層を形成するための塗料に用いるに好適な有機溶剤としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテルなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等のβ−ジケトン、β−ケトエステルを挙げることができる。
高屈折率層の屈折率は、1.60以上が好ましい。さらに好ましい屈折率は、1.70〜1.80である。また、高屈折率の厚さは、30〜500nmが好ましく、50〜250nmがさらに好ましい。
本発明の反射防止フィルムは、全光線透過率が90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましい。全光線透過率は、JIS K 7361−1にしたがって測定することができる。全光線透過率が90%未満であると、透明性がやや劣り、ディスプレイの反射防止フィルムなどとして使用したとき、画像の鮮映性が低下するおそれがある。
また、本発明の反射防止フィルムは表面抵抗率が1.0×1012Ω/sq.以下であることが好ましく、1.0×1010Ω/sq.以下であることがさらに好ましい。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1
厚さ100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.65)上に、易接着剤層として水分散性ポリエステル系樹脂を厚さ10nmで塗布し(屈折率1.60)、これを二軸PET(1)とし、その上に下記組成のハードコート層形成用塗料Aを乾燥膜厚2.5μmとなるように塗布し、乾燥した。続いて、高圧水銀灯により紫外線を照射して塗料を硬化させ、ハードコート層を形成した(屈折率1.57)。
次に、ハードコート層上に、下記組成の低屈折率層形成用塗料Aを乾燥膜厚70nmとなるように塗布し(低屈折率層の屈折率1.39)、120℃で加熱乾燥し、本発明の反射防止フィルムを作製した。
(ハードコート層形成用塗料A)
・電離放射線硬化型樹脂 100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)
(日本化薬社製6官能アクリル系紫外線硬化型樹脂、固形分100%、屈折率1.48)
・五酸化アンチモンゾル 333質量部
(固形分100質量部)
(触媒化成工業社製、ELCOM RK−1022SBV、固形分30%、溶剤は変性アルコール、屈折率1.70)
・末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体 20質量部
(固形分9質量部)
(東亜合成社製マクロモノマーAA−6、末端メタクリレートポリメチルメタクリレート、分子量6000、固形分45%、トルエン希釈)
・光重合開始剤 7質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(IR)184)
・光重合開始剤 1質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(IR)907)
・溶剤 120質量部
(メチルエチルケトン(MEK)/プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM))
(低屈折率層形成用塗料Aの組成)
・下記マトリックス成分A 100質量部
・中空シリカ分散液ゾル 250質量部
(固形分50質量部)
(触媒化成工業社製、ELCOM RK−1018SIV、固形分20%、溶剤はメチルイソブチルケトン(MIBK)、中空シリカの平均粒子径は、40nm)
・グラフト共重合体 67質量部
(固形分20質量部)
(東亞合成(株)製、サイマックUS−270、固形分30%、幹部分がアクリル系ポリマーであり、枝部分がシリコーンで構成された櫛型グラフトポリマー)
・溶剤 4850質量部
(メチルイソブチルケトン(MIBK))
(マトリックス成分Aの調製)
攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた1リットルフラスコに、下記のジシラン化合物(1)29.9g(0.05モル)、及びt−ブタノール125gを仕込み、25℃で攪拌しているところに、0.1N酢酸水10gを10分かけて滴下。更に25℃で20時間攪拌し、加水分解を終了し、ここに縮合触媒としてアルミニウムアセチルアセトナート2g、レベリング剤としてポリエーテル変性シリコーン1gを加え、更に30分間攪拌し、得た溶液に、エタノール670g、プロピレングリコールモノメチルエーテル40g、ジアセトンアルコール40gを加えて希釈し調整した塗料。(固形分3%)
(CH3O)3Si−C24−C612−C24−Si(OCH33 (1)
得られた反射防止フィルムについて、下記の評価を行った。
(1)塗工性(低屈折率層の塗工ムラ)
反射防止フィルムを黒い紙の上に置き、三波長形蛍光ランプ[松下電器産業(株)、パルック、20W、昼白色]で照らして蛍光ランプの像の周りの反射色による塗工ムラを観察し、下記の基準により評価した。
◎: 塗工ムラがまったく認められない。
○: 塗工ムラがほとんど認められない。
△: 塗工ムラがかすかに認められる。
×: 塗工ムラが明瞭に認められる。
(2)最低反射率
分光光度計[日本分光(株)、U−best V−570]を用いて、波長380〜780nmの反射率を測定し、その最低値を記録する。波形が波打つ場合には、スムージング処理を行い最低値を求める。
(3)全光線透過率
JIS K 7361−1にしたがい、ヘーズコンピューター[日本電色工業(株) NDH2000]を用いて測定する。
(4)ヘーズ
JIS K 7136にしたがい、ヘーズコンピューター[日本電色工業(株) NDH2000]を用いて測定する。
(5)鉛筆硬度
JIS K 5400 8.4.2にしたがい、鉛筆[三菱鉛筆(株)、ユニ]を用いて塗膜のすり傷で評価する。
(6)耐スチールウール性
スチールウール[日本スチールウール(株)、#0000]を丸めて200gの荷重をかけて10往復させて擦り、傷の状態を観察し、下記の基準により耐擦傷性を判定する。
○:傷がまったくつかない。
△:傷が1〜9本認められる。
×:傷が10本以上認められる。
(7)表面抵抗率
抵抗率計〔三菱化学(株)、ハイレスターMCP−HT450〕を用いて測定した。
(8)接触角
低屈折率層の純水に対する接触角を、接触角計〔KRUSS社、DSA20 EasyDrop自動接触角計〕を用いて測定した。
(9)耐汚染性
(株)サクラクレパス、サクラマイネーム(油性)を用いて表面に文字を書き乾燥後ティッシュペーパー〔(株)クレシア、「キムワイプ」〕にて拭取り、その拭取り性を観察することにより評価した。
○:10往復以内できれいに拭取れる。
△:11〜20往復以内できれいに拭取れる。
×:20往復で拭取れない。
(10)耐アルカリ性
2%NaOH水溶液を低屈折率層表面に滴下し、20分放置後に拭取り、汚染状況を目視にて、下記の基準により判定する。
◎: 汚染が見られない。
○: 僅かに汚染される。
△: 汚染される。
×: 著しく汚染される。
結果を下記表1に示す。
実施例2
実施例1において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を33質量部(固形分10質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表1に示す。なお、下記例においては、実施例1と同様に低屈折率層形成用塗料中の固形分が2質量%となるように、溶剤の量を適宜調整している。
実施例3
実施例1において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を100質量部(固形分30質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表1に示す。
実施例4
実施例1において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を23質量部(固形分7質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表1に示す。
実施例5
実施例1において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を127質量部(固形分38質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表1に示す。
なお、表1では固形分中のグラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)量(質量%)および低屈折率層形成用塗料中の固形分も併せて示した。
Figure 2008139526
実施例6
実施例1において、中空シリカ分散液ゾルの配合量を400質量部(固形分80質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表2に示す。
実施例7
実施例1において、中空シリカ分散液ゾルの配合量を550質量部(固形分110質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表2に示す。
実施例8
実施例1において、二軸PET(1)の替わりに、厚さ80μmのTAC(富士写真フィルム(株)製トリアセチルセルロースフィルム、フジタックTF−80UL)を使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表2に示す。
実施例9
実施例8において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を33質量部(固形分10質量部)に変更したこと以外は、実施例8を繰り返した。結果を下記表2に示す。
実施例10
実施例8において、中空シリカ分散液ゾルの配合量を550質量部(固形分110質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表2に示す。
Figure 2008139526
実施例11
実施例1を下記のように変更し、本発明の反射防止フィルムを作製した。結果を下記表3に示す。
・二軸PET(1)において、易接着剤層の屈折率を1.57に変更した二軸PET(2)を用いた。
・ハードコート層形成用塗料Aを下記組成のハードコート層形成用塗料Bに変更した。
・ハードコート層上に下記組成の高屈折率層形成用塗料Cを乾燥膜厚80nmとなるように塗布し(高屈折率層の屈折率1.70)、硬化させ、さらに高屈折率層上に実施例1と同様の低屈折率層を設けた。
(ハードコート層形成用塗料B)
・電離放射線硬化型樹脂 100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)
(日本化薬社製6官能アクリル系紫外線硬化型樹脂、固形分100%、屈折率1.48)
・末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体 20質量部
(固形分9質量部)
(東亜合成社製マクロモノマーAA−6、末端メタクリレートポリメチルメタクリレート、分子量6000、固形分45%、トルエン希釈)
・光重合開始剤 7質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(IR)184)
・光重合開始剤 1質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(IR)907)
・溶剤 120質量部
(メチルエチルケトン(MEK)/プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM))
(高屈折率層形成用塗料Cの組成)
・マトリックス成分 100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬社製6官能アクリル系紫外線硬化型樹脂、固形分100%)
・アンチモン酸亜鉛 400質量部
(固形分240質量部)
(日産化学製、セルナックスCX−Z603M−F2、固形分60%、屈折率1.7)
・光重合開始剤 20質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(IR)184)
・分散剤 4質量部
(固形分0.8質量部)
(日本ルーブリゾール社製、ソルスパース20000、アルキルアミンEO・PO付加体、固形分20%)
実施例12
実施例11において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を33質量部(固形分10質量部)に変更したこと以外は、実施例11を繰り返した。結果を下記表3に示す。
実施例13
実施例11において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を100質量部(固形分30質量部)に変更したこと以外は、実施例11を繰り返した。結果を下記表3に示す。
実施例14
実施例11において、二軸PET(2)の替わりに、厚さ80μmのTAC(富士写真フィルム(株)製トリアセチルセルロースフィルム、フジタックTF−80UL)を使用したこと以外は、実施例11を繰り返した。結果を下記表3に示す。
実施例15
実施例14において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を33質量部(固形分10質量部)に変更したこと以外は、実施例14を繰り返した。結果を下記表3に示す。
Figure 2008139526
比較例1
実施例1において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を10質量部(固形分3質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表4に示す。
比較例2
実施例1において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を140質量部(固形分42質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表4に示す。
比較例3
実施例1において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)を使用しなかったこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表4に示す。
比較例4
実施例1において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)および中空シリカ分散液ゾルを使用しなかったこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表4に示す。
比較例5
実施例1において、中空シリカ分散液ゾルの配合量を700質量部(固形分140質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表4に示す。
Figure 2008139526
比較例6
実施例1において、マトリックス成分Aの替わりに、特開平10−726号公報に記載の実施例1の下記SiO2ゾル溶液を用いたマトリックス成分Bを使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表5に示す。
SiO2ゾル溶液:メチルトリエトキシシラン(MTEOS)が理想的にSiO2又はSiO1.5に加水分解及び縮合したと仮定した時の固形分濃度が3質量%となるように、MTEOSを溶媒であるメチルエチルケトンに溶解し、液温が25℃に安定するまで30分間攪拌した(A液)。A液中に、触媒である濃度0.05Nの塩酸をMTEOSのアルコキシド基と等モル量加え、25℃で3時間加水分解を行った。(B液)。このB液に、硬化剤として酢酸ナトリウムと酢酸とを混合したものを加え、25℃で1時間攪拌しSiO2ゾル溶液とした。(固形分3%)
比較例7
比較例6において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)を使用しなかったこと以外は、比較例6を繰り返した。結果を下記表5に示す。
比較例8
比較例6において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)および中空シリカ分散液ゾルを使用しなかったこと以外は、比較例6を繰り返した。結果を下記表5に示す。
Figure 2008139526
比較例9
実施例11において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を10質量部(固形分3質量部)に変更したこと以外は、実施例11を繰り返した。結果を下記表6に示す。
比較例10
実施例11において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)の配合量を140質量部(固形分42質量部)に変更したこと以外は、実施例11を繰り返した。結果を下記表6に示す。
比較例11
実施例11において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)を使用しなかったこと以外は、実施例11を繰り返した。結果を下記表6に示す。
比較例12
実施例11において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)および中空シリカ分散液ゾルを使用しなかったこと以外は、実施例11を繰り返した。結果を下記表6に示す。
比較例13
実施例11において、中空シリカ分散液ゾルの配合量を700質量部(固形分140質量部)に変更したこと以外は、実施例11を繰り返した。結果を下記表6に示す。
Figure 2008139526
比較例14
実施例11において、低屈折率層形成用塗料Aの替わりに、特開平10−726号公報に記載の実施例1の下記SiO2ゾル溶液からなるを用いた低屈折率層形成用塗料Bを使用したこと以外は、実施例11を繰り返した。結果を下記表7に示す。
SiO2ゾル溶液:メチルトリエトキシシラン(MTEOS)が理想的にSiO2又はSiO1.5に加水分解及び縮合したと仮定した時の固形分濃度が3質量%となるように、MTEOSを溶媒であるメチルエチルケトンに溶解し、液温が25℃に安定するまで30分間攪拌した(A液)。A液中に、触媒である濃度0.05Nの塩酸をMTEOSのアルコキシド基と等モル量加え、25℃で3時間加水分解を行った。(B液)。このB液に、硬化剤として酢酸ナトリウムと酢酸とを混合したものを加え、25℃で1時間攪拌しSiO2ゾル溶液とした。(固形分3%)
比較例15
比較例14において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)を使用しなかったこと以外は、比較例14を繰り返した。結果を下記表7に示す。
比較例16
比較例14において、グラフト共重合体(東亞合成(株)製、サイマックUS−270)および中空シリカ分散液ゾルを使用しなかったこと以外は、比較例14を繰り返した。結果を下記表7に示す。
Figure 2008139526
実施例16
実施例1において、ハードコート層形成用塗料Aの乾燥膜厚を0.3μmに変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を下記表8に示す。
Figure 2008139526
実施例17
実施例11において、ハードコート層形成用塗料Bに、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体(東亜合成社製マクロモノマーAA−6)を使用しなかったハードコート層形成用塗料Dを使用したこと以外は実施例11を繰り返した。結果を下記表9に示す。
Figure 2008139526
上記表から次の各事項が導き出される。
・実施例1は、特定のジシラン化合物を含むマトリックス成分と、特定構造を有するグラフト共重合体とを併用し、グラフト共重合体の添加量を適切に設定しているので、中空シリカ粒子を多量に添加した場合でも、耐アルカリ性が損なわれない。また、低屈折率層形成用組成物の塗工性が良好となり、低屈折率層の塗工ムラが生じない。さらに、最低反射率、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐スチールウール性、表面抵抗率、耐汚染性が良好となった。
・実施例2は、グラフト共重合体の添加量が10質量部とやや低めであるので、耐アルカリ性が○評価であった。
・実施例3は、グラフト共重合体の添加量が30質量部とやや高めであるので、塗工性が○評価であった。
・実施例4は、グラフト共重合体の添加量が7質量部と低めであるので、耐アルカリ性が△評価であった。
・実施例5は、グラフト共重合体の添加量が38質量部と高めであるので、塗工性が△評価であった。
・実施例6は、中空シリカの添加量が80質量部である例であり、最低反射率が実施例1より良好であった。
・実施例7は、中空シリカの添加量が110質量部である例であり、最低反射率が実施例1より良好であり、耐アルカリ性が○評価であった。
・実施例8〜10は、透明基材フィルムとしてTACを使用した例で、二軸PETより最低反射率が低い値であり、その他の性能については、二軸PETと同様の物性挙動を示した。
・実施例11〜15は、3層構成の例で、簡易構成より最低反射率が低い値であり、その他の性能については、簡易構成と同様の物性挙動を示した。
・実施例16は、ハードコート層の厚さが、本発明における好ましい形態から外れているので、鉛筆硬度および耐スチールウール性がやや低下した。
・実施例17は、ハードコート層形成用塗料に、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体を添加しなかったので、耐スチールウール性および耐アルカリ性がやや損なわれた。
・比較例1は、グラフト共重合体の添加量が3質量部であり、本発明の範囲外であるので、耐汚染性、耐アルカリ性が、×評価であった。
・比較例2は、グラフト共重合体の添加量が42質量部であり、本発明の範囲外であるので、塗工性が×評価であった。
・比較例3は、グラフト共重合体を添加しない例であるので、耐汚染性、耐アルカリ性が×評価であった。
・比較例4は、グラフト共重合体および中空シリカを添加しない例であるので、最低反射率が大きく、耐汚染性が×評価、耐アルカリ性が△評価であった。
・比較例5は、中空シリカの添加量が140質量部添加であり、本発明の範囲外であるので、耐アルカリ性が×評価であった。
・比較例6〜8は、低屈折率層のマトリックス成分として特開平10−726号公報の実施例1記載の低屈折率塗料(メチルトリエトキシシラン成分)を使用した例であり、本発明におけるジシラン化合物をマトリックス成分として使用した例に比べ、耐アルカリ性が悪く、最低反射率、塗工性および耐汚染性をともに満足することはできなかった。
・比較例9は、グラフト共重合体の添加量が3質量部であり、本発明の範囲外であるので、耐汚染性、耐アルカリ性が、×評価であった。
・比較例10は、グラフト共重合体の添加量が42質量部であり、本発明の範囲外であるので、塗工性が×評価であった。
・比較例11は、グラフト共重合体を添加しない例であるので、耐汚染性、耐アルカリ性が×評価であった。
・比較例12は、グラフト共重合体および中空シリカを添加しない例であるので、最低反射率が大きく、耐汚染性が×評価、耐アルカリ性が△評価であった。
・比較例13は、中空シリカの添加量が140質量部添加であり、本発明の範囲外であるので、耐アルカリ性が×評価であった。
・比較例14〜16は、低屈折率層のマトリックス成分として特開平10−726号公報の実施例1記載の低屈折率塗料(メチルトリエトキシシラン成分)を使用した例であり、本発明におけるジシラン化合物をマトリックス成分として使用した例に比べ、耐アルカリ性が悪く、最低反射率、塗工性および耐汚染性をともに満足することはできなかった。
本発明の反射防止フィルムは、とくに耐アルカリ性に優れるとともに、良好な塗工性を有し(低屈折率層の塗工ムラがない)、最低反射率が小さく、耐汚染性、耐擦傷性、透明性に優れているので、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、カーナビゲータ、携帯電話などのディスプレイ表面の反射防止に有用である。

Claims (9)

  1. 透明基材フィルム上にハードコート層を有し、さらに前記ハードコート層上に低屈折率層が積層されてなる反射防止フィルムであって、
    前記低屈折率層が、フッ素原子を1個以上含有する2価の有機基を有するジシラン化合物又はその(部分)加水分解物を主成分とするマトリックス成分;中空シリカ粒子;およびラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とするグラフト共重合体を含有する低屈折率層形成用組成物から形成され、
    前記低屈折率層形成用組成物が、前記マトリックス成分100質量部に対し、前記中空シリカ粒子20〜120質量部および前記グラフト共重合体5〜40質量部を配合してなることを特徴とする反射防止フィルム。
  2. 透明基材フィルム上にハードコート層を有し、さらに前記ハードコート層上に高屈折率層および低屈折率層がこの順で積層されてなる反射防止フィルムであって、
    前記低屈折率層が、フッ素原子を1個以上含有する2価の有機基を有するジシラン化合物又はその(部分)加水分解物を主成分とするマトリックス成分;中空シリカ粒子;およびラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とするグラフト共重合体を含有する低屈折率層形成用組成物から形成され、
    前記低屈折率層形成用組成物が、前記マトリックス成分100質量部に対し、前記中空シリカ粒子20〜120質量部および前記グラフト共重合体5〜40質量部を配合してなることを特徴とする反射防止フィルム。
  3. 前記ジシラン化合物が、下記式(1)
    m1 3-mSi−Y−SiR1 3-mm (1)
    (式中、R1は、炭素数1〜6の1価炭化水素基、Yはフッ素原子を1個以上含有する2価有機基、Xは加水分解性基、mは1、2又は3である。)
    で示されることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
  4. 前記中空シリカ粒子の平均粒子径が、5〜100nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
  5. 前記ラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位からなる幹部分が、アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
  6. 前記透明基材フィルムが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルム。
  7. 前記ハードコート層の厚さが0.5〜10μmであり、前記ハードコート層が、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、五酸化アンチモン20〜600質量部を配合し、これを硬化させて形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
  8. 前記ハードコート層の厚さが0.5〜10μmであり、前記ハードコート層が、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体5〜20質量部を配合し、これを硬化させて形成したものであることを特徴とする請求項2に記載の反射防止フィルム。
  9. 前記高屈折率層が、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、アンチモン酸亜鉛を100〜600質量部を配合し、これを硬化させて形成したものであることを特徴とする請求項2に記載の反射防止フィルム。
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