JPH111742A - 疲労き裂伝播特性の優れた鋼材及びその製造方法 - Google Patents

疲労き裂伝播特性の優れた鋼材及びその製造方法

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JPH111742A
JPH111742A JP16664597A JP16664597A JPH111742A JP H111742 A JPH111742 A JP H111742A JP 16664597 A JP16664597 A JP 16664597A JP 16664597 A JP16664597 A JP 16664597A JP H111742 A JPH111742 A JP H111742A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶接構造物の軽量化及び疲労設計強度の向上
のニーズに応えるために、疲労き裂が進展した際の高△
K領域でも疲労き裂伝播を抑制できる鋼材及びその製造
方法を提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.02〜0.20%、
Si:≦0.8%、Mn:0.30〜2.5%、P:≦
0.035%、S:≦0.02%、Al:≦0.1%、
N:≦0.01%残部Fe及び不可避不純物からなる鋼
材で、板厚方向の断面組織が面積率で60〜90%のフ
ェライト母相と第二相からなり、第二相の硬さ:Hv
(SP)とフェライトの硬さ:Hv(F)が以下の
(1)式を満足し、かつ第二相のアスペクト比:l(長
軸長さ)/d(短軸長さ)がl/d>3.42であるこ
とを特徴とする疲労き裂伝播特性の優れた鋼材。Hv
(SP)≧H v(F)*(l/d)0.5/1.155・・・(1)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶、橋梁、建設
機械などの溶接構造部材に用いられる厚鋼板や形鋼に関
し、特に繰り返し応力付与環境下で使用される溶接構造
物の軽量化および疲労設計強度向上のニーズに応えるた
めの疲労き裂伝播特性の優れた高張力厚鋼材及びその製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】大型石油タンカーに代表される大型船舶
等の溶接構造物において、省資源・省エネルギー化を背
景とする軽量化、大容量化の要求に応え、構造用鋼材の
薄肉・高強度化が望まれている。溶接構造物では、溶接
熱影響部に応力集中するため、溶接止端部から疲労き裂
が発生しやすく、この疲労き裂が伝播して結果的に構造
物の破壊を引き起こすことが多いが、鋼材の疲労強度
は、降伏強度を向上させても殆ど向上することはできな
い。
【0003】疲労き裂の伝播過程は、一般に、初期き裂
伝播領域、安定き裂伝播領域(Parisの領域とも呼
ぶ)、不安定破壊領域に大きく区分され、き裂が進展す
るにともない、き裂先端のΔK値が増加し、き裂の伝播
挙動が変化する。従来は、上記安定き裂伝播領域及び不
安定破壊領域の高ΔKの領域では鋼材組織によって疲労
き裂伝播挙動はあまり影響しないと考えれてきた。その
ため、従来の鋼材の組織制御による疲労き裂の伝播挙動
制御・疲労寿命の向上技術は、初期き裂伝播領域である
低ΔK(≦約50kgf/mm1.5)領域が全疲労破壊
過程の大部分を占める場合の適用に限られていた。しか
し、溶接構造物では、鋼材の溶接止端部から疲労き裂が
発生しやすいが、この場合、上記の初期き裂伝播領域
(低ΔK(≦約50kgf/mm1.5)領域)に相当す
る領域の大部分が溶接熱影響部内となるため、この領域
に施した鋼材の組織制御は殆ど無効となる。
【0004】従来の鋼材の疲労特性を向上させる方法と
しては、固溶強化や析出強化によって疲労発生限を高く
する方法や硬質相の分散状態を制御してき裂進展を抑制
させる方法など種々の手法が提案されている。
【0005】例えば、軟質相であるフェライト相中に硬
質相である第二相を分散制御し、鋼板の疲労特性を向上
させる技術については、以下のような方法が開示されて
いる。
【0006】特開平4−276016号公報、特開平6
−264185号公報及び特開平8−60305号公報
では、軟質のフェライト相を硬化するかまたは硬質の第
二相を軟化させることで鋼板の引張強度対する疲労限強
度を向上させる技術が開示されている。しかし、これら
の技術は、鋼板の引張強度に対する疲労限強度の比を向
上させるために、フェライト相の硬化のためにCu、C
r、Mo等の高価な合金元素の添加が必須である。ま
た、上記技術は、自動車用鋼板等の初期き裂伝播領域
(低ΔK領域)におけるき裂伝播の抑制効果が狙える薄
鋼板には有効であるが、溶接構造用の厚鋼材のように溶
接熱影響部で疲労き裂が発生する場合には、き裂がかな
り進展した安定き裂伝播領域(高ΔKの領域)以降での
き裂伝播抑制効果が要求されるため、適しない。
【0007】また、特開平4−329848号公報、特
開平7−11383及び特開平8−188847号公報
には、微細な硬質相を多数分布させ、き裂が抵抗を受け
る頻度を増加させる技術が開示されており、特開平7−
90478号公報及び特開平7−90480号公報に
は、第二相を縞状にする技術が開示されており、特開平
8−225882号公報には、第二相の組織分率を上昇
させる技術が開示されている。しかし、これらの技術
は、硬質の第二相と軟質のフェライト相の硬さの差の規
定はあるが、第二相の形状(例えば、アスペクト比(長
軸長さ/短軸長さ))の規定は、ないため、いずれもき
裂がかなり進展した高ΔK領域においては、第二相がき
裂の進展を抑制する効果は得られないものである。
【0008】以上のように、従来技術はいずれも、初期
き裂伝播領域の低ΔK(≦約50kgf/mm1.5)領
域におけるき裂進展を抑制する方法であったため、溶接
用厚鋼板のように鋼板表面に廻し溶接を施した溶接止端
部からき裂が発生し、板厚方向に進展する場合、高ΔK
領域に達する(例えば、5mm以上のき裂の進展で、Δ
Kは50kgf/mm1.5以上となる)ため、上記従来
技術では疲労寿命特性を向上させることはほとんど不可
能である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来
技術の問題を踏まえ、溶接構造物の軽量化及び疲労設計
強度の向上のニーズに応えるために、疲労き裂が進展し
た高ΔK領域でも疲労き裂伝播を抑制できる鋼材及びそ
の製造方法を提供することを課題とする。具体的には入
熱量が20〜30kJ/minの廻し溶接を施した鋼材
の曲げ疲労試験において、鋼板表面の応力範囲が22k
gf/mm2、応力比0.1の疲労試験時に繰り返し寿
命が550,000回以上、かつ降伏強度が30〜55
kgf/mm2の鋼材及びその製造方法を提供するもの
である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を達
成するためになされたもので、その手段は下記の通りで
ある。
【0011】(1) 重量%で、 C :0.02〜0.20% Si:≦0.8% Mn:0.30〜2.5% P :≦0.035% S :≦0.02% Al:≦0.1% N :≦0.01% 残部Fe及び不可避不純物からなる鋼材において、板厚
方向の断面組織が面積率で60〜90%のフェライト母
相と第二相からなり、第二相の硬さ:Hv(SP)とフ
ェライトの硬さ:Hv(F)が以下の(1)式を満足
し、かつ第二相のアスペクト比:l(長軸長さ)/d
(短軸長さ)がl/d>3.42であることを特徴とす
る疲労き裂伝播特性の優れた鋼材。
【0012】但し、Hv(SP)及びHv(F)は、第
二相及びフェライトのそれぞれの荷重10gfにおける
ビッカース硬さを示す。 Hv(SP)≧Hv(F)*(l/d)0.5/1.155・・・(1) (2) 板厚方向の断面組織において、疲労き裂進展方
向の直線上を横切るフェライト相から第二相への界面か
ら次の第二相への界面との間隔が25μm以下であるこ
とを特徴とする上記(1)に記載の疲労き裂伝播特性の
優れた鋼材。
【0013】(3) さらに、板厚方向の断面組織にお
いて、(111)面のX線面強度がランダム比で4以上
であることを特徴とする上記(1)または(2)のいず
れかに記載の疲労き裂伝播特性の優れた鋼材。ただし、
(111)面のX線面強度のランダム比とは当該試料と
ほぼ同一の成分の粉末試料から測定される(111)面
の強度との比である。
【0014】(4) さらに、板厚方向の断面組織にお
いて、フェライト母相の円相当粒径の平均値が4μm以
下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれ
かに記載の疲労き裂伝播特性の優れた鋼板。ただし、円
相当粒径とは、当該結晶粒の面積と等しい円の直径であ
る。
【0015】(5) さらに、板厚方向の断面組織にお
いて、フェライト母相の円相当粒径の最大値が12.5
μm以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)の
いずれかに記載の疲労き裂伝播特性の優れた鋼材。
【0016】(6) さらに、 Cu:0.01〜1.5% Ni:0.01〜3.0% Cr:0.01〜1.0% Mo:0.01〜1.0% Nb:0.003〜0.05% V :0.005〜0.02% Ti:0.003〜0.10% の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記
(1)〜(5)のいずれかに記載の疲労き裂伝播特性の
優れた鋼材。
【0017】(7) 重量%で、 C :0.02〜0.20% Si:≦0.8% Mn:0.30〜2.5% P :≦0.035% S :≦0.02% Al:≦0.1% N :≦0.01% 残部Fe及び不可避不純物からなる鋼塊または鋼片をA
1変態点以上1250℃以下の温度に加熱した後、A
3以上の温度にて粗圧延終了後、フェライト分率が6
0%以上となる温度域における累積圧下率が40%以上
である仕上圧延を行うことを特徴とする疲労き裂伝播特
性の優れた鋼材の製造方法。
【0018】(8) 更に、 Cu:0.01〜1.5% Ni:0.01〜3.0% Cr:0.01〜1.0% Mo:0.01〜1.0% Nb:0.003〜0.05% V :0.005〜0.02% Ti:0.003〜0.10% の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記
(7)に記載の疲労き裂伝播特性の優れた鋼材の製造方
法。
【0019】本発明鋼材の化学成分の限定理由は以下の
通りである。
【0020】Cは鋼の強度を向上させるのに有効な成分
として添加するもので、0.02%未満では構造用鋼に
必要な強度の確保が困難であり、フェライト分率を90
%以内にとどめることが困難である。また、0.20%
を超える過剰の添加はフェライト分率を70%以上得る
ことを困難にし、さらに靭性、耐溶接割れ性などを著し
く低下させるので、0.02〜0.20%の範囲とし
た。
【0021】Siは脱酸元素として、また、母材の強度
確保に有効な元素である。疲労特性向上の観点からは固
溶強化により疲労限を向上させる効果があるので、添加
することが望ましいが含有しないことも可能である。し
かし0.8%を超える過剰の添加は固溶強化による疲労
限向上の効果が飽和し、構造用鋼板として重要な靭性や
溶接性の劣化を招き、加熱工程で剥離の困難な鋼片表層
の酸化層の著しい成長を招くので、Siの範囲は0.8
%以下とした。
【0022】また、Mnは母材の強度、靭性の確保に必
要な元素であり、最低限0.30%以上添加する必要が
あるが、溶接部の靭性、割れ感受性など材質上許容でき
る範囲で上限を2.5%とした。
【0023】Pは結晶粒界に偏析し鋼の延性及び靭性の
いずれにも有害に作用する。全く含有しないことが望ま
しいが実用の清浄化の程度を考慮して上限を0.035
%とした。
【0024】Sは鋼中の合金元素と化合して種々の介在
物を形成し、鋼の延性及び靭性のいずれにも有害に作用
する。全く含有しないことが望ましいが実用の清浄化の
程度を考慮して上限を0.02%とした。
【0025】Alは脱酸、γ粒径の細粒化等に有効な元
素であり、効果を発揮するためには0.005%以上含
有する必要があるが、0.1%を超えて過剰に添加する
と、粗大な酸化物を形成して延性を極端に劣化させるた
め、0.005〜0.1%範囲に限定する必要がある。
【0026】NはAlやTiと化合してγ粒微細化を起
こすので、適切な量のN添加により、強度、靭性向上を
図ることも可能である。しかし、まったく含有しない場
合でも強度、靭性などの鋼材の性能を十分に得ることが
可能である。一方、過剰に添加すると固溶Nが増加して
逆に靭性に悪影響を及ぼしたり、さらには延性にまで悪
影響を及ぼす。許容できる範囲として、Nの含有量を
0.01%以下とする。
【0027】以上が本発明鋼の基本成分であるが、主に
造船材等の用途で本発明品を用いるとすると所望の母材
靭性レベルに応じてNi、Cu、Ti、Nb、Vの1種
または2種以上を含有させ、強度確保することが望まし
く、また造船用途以外の目的で例えば橋梁用・建設機械
用鋼板で疲労特性のみならず延性の向上を目的としてC
r、Moなどの元素を含有させることも有効である。
【0028】同程度の引張強度の鋼においては基本成分
のみで所望の強度を達成する場合と、Cu、Ni、N
b、V、Tiの1種または2種以上を適宜含有すること
により強度確保を計る場合で靭性や溶接性が著しく異な
り、一般にCu、Ni、Nb、V、Tiの1種または2
種以上を適宜含有する鋼の方が良好な靭性や溶接性を示
す。また母材靭性の重要でない建築・橋梁用部材にはM
oの添加も有効である。以下にCu、Ni、Ti、N
b、V、Cr、Moの各選択化学成分の作用を述べる。
【0029】Cuは母材の強度と靭性を同時に向上で
き、特に1.0%以上の添加を行い550゜C程度の温
度で適切な時効処理を施した場合フェライト母相中に単
体で整合析出してフェライト相の延性を損なわず強度を
向上する効果を有する。しかし1.5%超の添加では熱
間加工性に問題を生じるため、実用上有効な0.01〜
1.5%の範囲に限定する。
【0030】次に、NiもほぼCuと同様、強度および
靭性を向上させ、非常に有効な元素であるが、効果を発
揮させるためには0.01%以上含有させる必要があ
る。含有量が多くなると強度、靭性は向上するが3.0
%を超えて添加しても効果が飽和し、さらに高価な元素
であるため、経済性を考慮して、上限を3.0%とす
る。
【0031】Crは母材の強度向上に有効な元素である
が、明瞭な効果を生じるためには0.01%以上必要で
あり、一方、1.0%を超えて添加すると、靭性が急激
に劣化する傾向を有するため、0.01〜1.0%の範
囲とする。またCrはSiとの同時添加によって第二相
に濃化させ、焼戻しなどの調質処理後も第二相の硬さを
確保することを容易にする効果を有する。
【0032】Moは母材の強度向上に有効な元素であ
り、かつフェライト相中の炭素と化合物を形成しフェラ
イト相の延性を向上する効果があるため特に降伏強度5
0kgf/mm2級の鋼を本発明法を適用して造る際に
添加することが望ましい。効果を得るためには0.01
%以上の添加が必要であり、一方、1.0%を超えて添
加すると、著しく靭性が劣化する傾向を有するため、
0.01〜1.0%の範囲とする。またMoも、焼戻し
などの調質処理後も第二相の硬さを確保することを容易
にする効果を有する。
【0033】Nb及びVはいずれも析出強化により母材
の強度向上に寄与するが、過剰の添加で延性や靭性が劣
化する。これら元素の添加は特に第二相の分布間隔を狭
めることについても効果を示す。効果を得るにはNb
0.003%程度、Vは0.005%程度の添加が必要
であるが明瞭な効果を得るためにはNbは0.005%
以上、Vは0.02%以上の添加が望ましい。従って、
延性、靭性の劣化を招かずに、効果を発揮できる範囲と
して、Vは0.005〜0.20%、Nbは0.003
〜0.05%とする。
【0034】Tiは析出強化により母材強度向上に寄与
するとともに、Nbと同様に炭窒化物TiC、TiNの
形成により溶接構造物用鋼に本発明法を適用した場合の
溶接熱影響部の靭性確保にも有効な元素であるが、効果
を発揮できるためには0.003%以上の添加が必要で
ある。一方、0.10%を超えると、Alと同様、粗大
な酸化物を形成して靭性や延性を劣化させるため、上限
を0.10%とする。
【0035】次に本発明鋼材の組織の限定理由につい
て、説明する。
【0036】本発明鋼板は、フェライト及び第二相から
なる複合組織鋼中の第二相の形態及びフェライト及び第
二相の硬さを制御し、第二相の疲労き裂先端の応力場制
御により、第二相において主き裂から微小き裂(以後二
次き裂と称する)を発生させ、主き裂を屈曲・分岐させ
ることにより、き裂の進展力を分散・弱め、き裂の伝播
を遅延させるものである。破壊力学的メカニズムとして
は、き裂の進展がモードI(単純開口モード)からモー
ドII(面内すべり)へと遷移することによりき裂を分
岐させるとともに、この際の主き裂先端部のK値の変動
(ΔK)を複数の二次き裂先端部に分配させることによ
り、高ΔK領域での疲労き裂進展を遅延させるものであ
る。
【0037】上記のメカニズムにより、溶接構造物等の
溶接止端部から発生した疲労き裂が板厚方向へ深く進展
した際の高ΔK値領域でもき裂の伝播を遅延させること
ができるのである。
【0038】本発明では、伝播中の疲労き裂を屈曲・分
岐させるために疲労き裂が進展する方向と直交する方向
に伸展した硬質な第二相を分布させることを要件とす
る。
【0039】図1に、本発明鋼材において疲労き裂から
二次き裂が発生する際の機構の概念図を示す。本発明鋼
材において、硬質な第二相は、軟質なフェライト相に比
べて、塑性変形しにくいので、疲労き裂が進展して第二
相に近づくにつれて、第二相の応力の影響によりき裂先
端部のフェライト相の塑性変形が抑制され、第二相の近
傍で第二相を迂回し、屈曲または分岐するようにすべり
による二次き裂が発生する。
【0040】上記の機構を利用して二次き裂を発生さ
せ、疲労き裂の伝播を遅延させるためには、疲労き裂の
進展過程において、第二相とその周囲のフェライト相と
の間で応力の相互作用を生じさせることが必要である。
本発明者らは、上記相互作用を生じさせるために必要な
第二相の形態を調査した結果、第二相のアスペクト比
(=長軸長さ(l)/短軸長さ(d))を規定するとと
もに、フェライト相と第二相の硬さの比を規定すること
が有効であることを知見した。
【0041】本発明者らは、直方体形状の第二相をき裂
の進展方向と直行する位置に配置した場合を想定し、第
二相が変形せずに歪分配されている場合に、第二相がそ
の周囲のフェライトから受ける引張応力(σ(SP))
を計算で求めた結果、以下のようになることがわかっ
た。
【0042】 σ(SP)=σ*l/(d・d’)0.5/(2/30.5) ただし、σは当該第二相から遠方に離れた位置における
引張応力、lは第二相(直方体)の長さ(き裂進展方向
と直交する方向)、dは第二相(直方体)の高さ(き裂
進展方向)、d’は第二相(直方体)の幅(l及びdの
方向と直交する方向)とする。
【0043】実際の鋼材ではl及びd’は圧延面と平行
な方向にあり、l/d’はほぼ1に等しくなるため、l
/(d・d’)0.5は(l/d)0.5と近似でき、第二相
が受ける引張応力(σ(SP))は、以下のように示さ
れる。
【0044】 σ(SP)=σ*(l/d)0.5/1.155・・・(0−1) まず、疲労き裂が第二相によって屈曲または分岐するた
めには、き裂が進展して第二相近傍まで近づいた場合
に、第二相が降伏・破断することなく、無変形で残存す
る必要がある。第二相、フェライト相が降伏を始める応
力をそれぞれσy(SP)、σy(F)とし、第二相、
フェライト相の硬さをそれぞれHv(SP)、Hv
(F)とすると、これらの関係は、σy(SP)/σy
(F)=Hv(SP)/Hv(F)となるため、第二相
が降伏・破断せず無変形で残存するためには、以下の関
係式を満たす必要がある。
【0045】 Hv(SP)≧Hv(F)*(l/d)0.5/1.155・・・(1) 従って、本発明鋼材の組織では、第二相の硬さ:Hv
(SP)とフェライト相の硬さ:Hv(F)が、上記の
(1)式を満たすことを要件とする。
【0046】但し、Hv(SP)及びHv(F)は、第
二相及びフェライトのそれぞれの荷重10gfにおける
ビッカース硬さを示す。
【0047】次に、疲労き裂が第二相によって屈曲・分
岐するための二次き裂を生じさせるためには、第二相が
フェライト相を内部くびれ(Internal−Nec
king)を起こすまで加工硬化させる必要がある。第
二相がその近傍のフェライト相に及ぼす応力は、フェラ
イト相が第二相に及ぼす引張応力の反作用として生じる
ため、以下のようになる。
【0048】 σ(F)=σ*(l/d)0.5/1.155・・・(0−2) ただし、σは第二相から遠方に離れた位置における引張
応力とする。
【0049】上記の式において、疲労き裂の先端部に二
次き裂を生じさせるためには、σ=σy(F)のとき
に、き裂先端部の応力σ(F)をフェライト相の加工硬
化が飽和する引張強度:TSまで上昇させる必要があ
る。実鋼材では多くの場合、フェライト単相鋼の公称降
伏応力:YPと公称引張強度:TSの関係は、TS/Y
P=1.6となるから、き裂先端部のフェライト相が加
工硬化し、剪断変形を起こすための条件は、以下のよう
になる。
【0050】1.6<(l/d)0.5/1.155 よって、l/d>3.42・・・(2) 従って、本発明鋼材の組織では、上記の(2)式、つま
り、第二相のアスペクト比(長軸長さ(l)/短軸
(d))が3.42超となることを要件とする。
【0051】本発明者らの研究によると、二次き裂の発
生はフェライト相中でしか起こらず、フェライトの面積
率が高い程、二次き裂が多く発生することが知見され
た。本発明では、疲労き裂からの二次き裂の発生を促進
させるために、フェライト相の面積率を60%以上に規
定する。また、フェライト相が90%超になると第二相
の面積率が少なくなり、き裂が進展し第二相近傍まで近
づいた際、第二相が破壊してしまうので上限を90%と
した。
【0052】さらに疲労寿命特性を向上させるために、
本発明鋼材の組織を以下の理由で規定する。
【0053】疲労き裂からの二次き裂は、疲労き裂の進
展方向の直線上を横切っている第二相の数が多いほど発
生しやすくなるため、き裂進展方向の第二相の分布間隔
を狭くすることが疲労寿命特性を向上させるために有効
である。本発明では、き裂進展方向の直線上を横切るフ
ェライト相から第二相への界面から次のフェライト相か
ら第二相への界面までの間隔を上記疲労寿命特性を向上
の効果が明瞭に現れる25μm以下に規定する。
【0054】疲労き裂から二次き裂の発生を誘発し、そ
の発生頻度を増加させるためには、フェライト相中に有
効な結晶方位を有する集合組織を発達させ、その異方性
を利用することが有効である。また、疲労き裂から発生
した二次き裂の進展方向と結晶の容易すべり方向が不一
致となる結晶方位を有する集合組織を発達させることで
二次き裂伝播の抵抗を増加させ、二次き裂の伝播を遅延
できる。
【0055】本発明者らは、上記の二次き裂の発生を誘
発し、且つ分岐した二次き裂の進展を遅延させるために
有効な集合組織を調べた結果、最大剪断応力方向(鋼材
表面から45゜)と最密面である(110)面(鋼材表
面から約36.5゜)が近い(111)面の集合組織が
有効であることがわかった。
【0056】(111)面の集合組織は最密面が最大剪
断応力方向と近いため、二次き裂の発生が誘発される
が、分岐した二次き裂はわずかながらも最大剪断応力方
向と異なる方向に進展するため二次き裂が長くなると抵
抗が生じてくる。従って、本願発明鋼材の組織におい
て、二次き裂の進展の遅延の効果が顕著になるまでの
(111)面の集合組織を発達させるために、(11
1)面のX線面強度がランダム比で4以上に規定する。
但し、(111)面の集合組織とは鋼材表面に対し(1
11)面が平行に形成される集合組織、(111)面の
X線面強度とは面強度測定試料の法線方向から測定した
(111)面から反射されるX線面強度とする。また、
(111)面のX線面強度のランダム比とは当該試料と
ほぼ同一の成分の粉末試料から測定される(111)面
の強度との比である。
【0057】また、本発明者らの実験からき裂の分岐、
迂回は、主にフェライト相の粒界、フェライト相と硬質
相の界面またはフェライト結晶中で起こり、ベイナイト
などの硬質相中ではほとんど起こらないことが知見させ
た。そのため、上記の(111)面の集合組織制御を施
した後、さらに細粒フェライト組織が主体となるように
組織制御を施すと、さらに疲労寿命特性が向上させられ
る。
【0058】従って、本発明鋼板の組織では、上記疲労
寿命特性の向上が顕著に現れるように、フェライト相の
円相当粒径の平均値を4μm以下に規定する。
【0059】さらに、フェライト相の円相当粒径の平均
値が小さくても粗大な結晶粒を含有する組織では粗大結
晶粒の近傍で、き裂の進展が加速される恐れがある。そ
の現象を防ぐため、本発明鋼板の組織では、フェライト
相の円相当粒径の最大値を12.5μm以下と規定す
る。
【0060】ここで、フェライト相の結晶粒界の種類は
隣接する結晶との結晶方位の方位差が5゜程度の亜結晶
粒界も含み、円相当粒径の最大値とは実際の試料を40
0倍視野となるように撮影した際の100mm×70m
m面積の光学顕微鏡写真で観察される最大の結晶の円相
当粒径とする。ただし、円相当粒径とは、当該結晶粒の
面積と等しい円の直径とする。
【0061】本発明鋼材の製造条件の限定理由につい
て、説明する。
【0062】粗圧延における温度は、鋼材中心部のザク
欠陥などを十分に圧着させるために、Ar3以上のオー
ステナイト温度域に規定する。
【0063】仕上圧延は、まず、鋼材組織中のフェライ
ト相の面積率を60%以上にするために、フェライト分
率が60%以上となる温度域にて累積圧下を加え、さら
に、この時の累積圧下率は、十分に展伸した第二相を得
るとともに、フェライト相に(111)面の集合組織の
発達を促進させるために、40%以上と規定する。な
お、本発明の規定する成分の鋼でこのような製造法を適
用した場合フェライト分率はほぼ安定して90%以内が
得られる。
【0064】
【発明の実施の形態】本発明で実施した疲労特性評価試
験の方法について以下に述べる。
【0065】まず、構造物の溶接止端部から疲労き裂が
発生する場合の疲労特性を評価するために、本発明者ら
が採用した疲労試験方法を図2に示す。
【0066】試験片は、厚み:25mmの鋼板から鋼板
長手方向長さ:300mm、幅方向長さ:80mmの試
験板を採取し、幅:10mm、長さ:30mm、高さ:
30mmのリブ板を炭酸ガス溶接により試験板の中央に
廻し溶接して作成した。この際の炭酸ガス溶接は、化学
成分組成がC:0.06wt%、Si:0.50wt
%、Mn:1.40wt%である1.4mm径の溶接ワ
イヤを用いて、電流270A、電圧30V、ビード速度
20cm/minでおこなった。疲労試験は、荷重支点
のスパンを下スパン:70mm、上スパン:220mm
として、最大荷重(Pmax):5500kgfで応力
比(R):0.1の繰り返し応力負荷を加え、疲労破断
寿命を測定した。本疲労評価試験では、本発明が目的と
する疲労寿命特性評価するために試験片の溶接入熱量が
24.3KJ/min、表面の応力変動範囲が22.2
kgf/mm2で実施した。
【0067】さらに、本発明の高ΔK領域での疲労寿命
特性を評価するために、本疲労試験により、ビーチマー
ク付与をした実験も行い、鋼板板厚方向の疲労き裂伝播
速度とΔKの関係を求めた。
【0068】
【実施例】表1の化学成分を含有する鋼片を用いて、表
2に示す製造条件で板厚25mmの鋼板を製造した。ま
た、表3は、表2の製造方法によって得られた鋼板のミ
クロ組織及び疲労特性、機械的性質を示す。ここで、本
発明鋼板の対象板厚は、この実施例によって規定される
ものではなく、また、鋼板だけでなく、形鋼などの鋼材
にも適用できる。
【0069】表1において、鋼番1〜7は本発明例であ
り、鋼番8及び9は比較例を示す。また、表2及び3に
おいて、試験番号1〜7は、本発明例であり、試験番号
8〜16は、比較例を示す。
【0070】試験番号16の比較例は、通常の高張力鋼
板であり、オーステナイト再結晶域圧延を主とする粗圧
延と未再結晶域圧延を主とする仕上圧延を行った後、水
冷後焼戻し熱処理をしている。この鋼板組織はほぼベイ
ナイト単相であり、ベイナイトの平均結晶粒径は7.2
μm程度最大粒径は15μmであり、主に微弱な再結晶
集合組織と若干の変態集合組織からなり、(111)面
の集合組織はランダム比で1.5程度である。したがっ
て、この鋼板組織は、本発明の規定条件を全く有してい
ないため、疲労寿命は350000回程度であり、本発
明の目標の疲労寿命特性が得られていない。
【0071】試験番号1の発明例は、所定の製造条件で
あるフェライトが80%程度を占める温度域で77%の
大圧下率で圧延しており、第二相のアスペクト比(l/
d)は5程度であり、第二相及びフェライト相の硬さと
第二相のアスペクト比の条件式である(1)式も満足す
る。また、水冷したままで製造を終了したため、第二相
の硬さも硬く、(111)面の集合組織が4以上に制御
されており、本発明の規定する所定条件を満たしている
ため、本発明の目標の疲労寿命特性が得られている。
【0072】試験番号2及び3の発明例は、試験番号1
と同じ圧延条件で得られた鋼板を熱処理し、その後空冷
して第二相の分布間隔や集合組織フェライトの粒径を試
験番号1の鋼板とほぼ同様にしたまま、第二相のみを軟
化させている。これらの鋼板は、本発明の規定する第二
相の条件を満たしているため、本発明の目標である55
0000回の疲労寿命が得られている。ただし、試験番
号2及び3の鋼板は、試験番号1の鋼板に比べ第二相を
軟化しているため、疲労特性が劣化しており、第二相の
硬度を高く保った方がより疲労特性が向上できることが
判る。
【0073】試験番号4の発明例は、フェライト分率が
ほぼ60%になる温度域で42%の累積圧下率で仕上げ
圧延した例であり、第二相のアスペクト比は3.5とな
りフェライトが内部くびれ及び剪断すべりを起こす
(1)式の条件を満たしており、本発明の目標である疲
労寿命を達成できている。
【0074】試験番号8の比較例では、フェライト分率
がほぼ60%になる温度域で圧下を加えているが、累積
圧下率が35%程度の仕上げ圧延であり、本発明の所定
条件を満足していないため、第二相のアスペクト比が所
定値よりも小さく、疲労特性が本発明の目標値に達して
いない。
【0075】また、試験番号9の比較例では、オーステ
ナイト域温度で仕上げ圧延を行った後、二相域でフェラ
イトを生じさせ、その後、水冷しており、本発明の所定
条件と異なるため、硬化した第二相が得られるもののア
スペクト比が不十分であり、疲労特性が本発明の目標値
に達していない。
【0076】試験番号10の比較例では、フェライト分
率がほぼ80%になる温度域で80%もの累積圧下率の
仕上げ圧延を施しているが、熱処理で第二相を軟化させ
すぎているため、本発明の第二相の形状と第二相及びフ
ェライト相の硬さが(1)式の条件を満足していない。
したがって、疲労き裂の進展時に第二相が十分にフェラ
イトの変形を抑制せず、疲労特性も目標値に達していな
い。
【0077】試験番号11の比較例では、化学成分のう
ちCが過剰であり、第二相の硬さやアスペクト比(l/
d)が所定範囲にあるものの、フェライト分率が所定値
より不足であるため、疲労特性は不十分である。
【0078】試験番号12の比較例では、Cは、所定範
囲にあるが、Siが過剰であるため、フェライト分率が
不足し、フェライト相が過剰に固溶強化してしまうた
め、本発明の(1)式の条件を満足しない。そのため、
疲労特性は、目標に対して不十分である。
【0079】以上のように本発明の製造方法に従って製
造した試験番号4の発明例は、十分な疲労特性が得られ
るが、仕上げ圧延の累積圧下率が不足している試験番号
8の比較例及び仕上げ圧延時のフェライト分率が不十分
な試験番号9の比較例及び第二相を軟化させてしまう不
用意な熱処理を施した試験番号10の比較例及び化学成
分の規定を満たさずフェライト分率が適正でない試験番
号11及び12の比較例はいずれも疲労特性が不十分で
ある。
【0080】また試験番号5及び6の発明例はNb、T
iなどのマイクロアロイ元素を添加せず製造したために
結晶粒径や第二相の分布間隔が比較的粗いが第二相の硬
さや形状が適正なため疲労特性は良好である。
【0081】また、大型の鋼板などで条切り性を向上さ
せるために熱処理を施す必要が生じたときなどは、第二
相の硬度を十分に確保するために試験番号7の発明例の
ようにCr、Moなどの焼戻し軟化抵抗を向上させる元
素を添加することが有効である。試験番号7では焼戻し
処理を施したにもかかわらず十分に第二相が硬く良好な
疲労特性が保たれている。
【0082】これに対し、試験番号13〜15の比較例
は焼戻し軟化抵抗を考慮せず熱処理を施しているため第
二相が軟化して、本発明の(1)式を満足しない。従っ
て疲労特性は不十分である。
【0083】図3にフェライト分率が60〜90%に制
御された複合組織鋼材の第二相のアスペクト比(l(長
軸長さ)/d(短軸長さ))と第二相及びフェライト相
の硬さの比(Hv(SP)/Hv(F))を示した。本
発明のl/d>3.42と下記(1)式を満たす条件で
本発明の目標である550000回以上の疲労寿命が得
られていることがわかる。
【0084】 Hv(SP)/Hv(F)≧(l/d)0.5/1.155・・・(1) 図4には本発明で規定する鋼材の第二相の分布間隔と疲
労寿命の関係を示した。第二相の分布間隔(疲労き裂進
展方向の直線上に存在するフェライト相から第二相への
界面から次の前記界面との間隔)が25μm以下の場
合、良好な疲労特性が得られていることがわかる。
【0085】図5には鋼板組織における(111)面の
X線面強度のランダム比と疲労寿命の関係を示してい
る。(111)面のX線面強度のランダム比が増加する
につれ、疲労特性が向上しており、(111)面のX線
面強度のランダム比が4以上で本発明の目標である55
0000回以上の疲労寿命が得られることがわかる。
【0086】図6には(111)面のX線面強度のラン
ダム比が4〜8の集合組織を発達させた鋼材のフェライ
ト相の平均結晶粒径と疲労寿命の関係を示した。ただ
し、結晶粒径は円相当粒径で測定している。フェライト
相の平均結晶粒径を小さくするとともに疲労寿命が向上
し、平均結晶粒径が4μm以下のとき700000回以
上の疲労寿命が得られることがわかる。
【0087】図7には(111)面のX線面強度のラン
ダム比が4〜8の集合組織を発達させた鋼材のフェライ
ト相の最大結晶粒径と疲労寿命の関係を示した。フェラ
イト相の最大結晶粒径が小さくなるほど疲労寿命が向上
し、最大結晶粒径が12.5μm以下のとき60000
0回以上の疲労寿命が得られることがわかる。
【0088】図8に本発鋼材と通常の高張力鋼における
ΔK(応力拡大係数範囲)と疲労き裂伝播速度の関係を
示す。き裂伝播速度及びΔK値(応力拡大係数範囲)
は、ビーチマーク法によって、計算した。この図から本
発明鋼材は、従来の高張力鋼に比べて、50kgf/m
1.5以上の高ΔK領域でも疲労き裂伝播速度を著しく
低下させ、疲労寿命の向上効果を有することがわかる。
ただし、疲労き裂伝播速度(da/dN)は、一回の繰
り返し応力負荷で疲労き裂の進展する長さである。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【発明の効果】本発明により、鋼板表面に20〜30K
J/min程度の1パスの廻し溶接部を有する鋼材を応
力範囲:22kgf/mm2、応力比:0.1で曲げ疲
労試験をおこなった場合に550000回以上の疲労寿
命を有する疲労寿命特性の優れた鋼材を得ることができ
る。本発明鋼材は、疲労寿命を従来材の疲労寿命の1.
5倍以上に改善できるため、従来材の1.5倍以上の耐
用年数が期待できる。また、船体、橋梁、建設機械など
の構造部材の溶接構造部位の疲労設計限度を向上させる
ことができるため、安全性を確保しつつ薄肉化による軽
量化や材料の使用量を低下できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第二相近傍のフェライト相における疲労二次き
裂の発生機構の概念図である。
【図2】溶接構造部材の疲労特性評価を行う際に用いた
廻し溶接4点曲げ疲労試験方法の概念図である。
【図3】本発明鋼材の第二相及びフェライト相の硬さの
比(Hv(SP)/Hv(F))と第二相のアスペクト
比(l(長軸長さ)/d(短軸長さ))との関係を示す
図である。
【図4】本発明鋼材の第二相の分布間隔と疲労寿命の関
係を示す図である。
【図5】(111)面のX線面強度のランダム比と疲労
寿命の関係を示す図である。
【図6】本発明鋼材のフェライト相の平均結晶粒径と疲
労特性の関係を示す図である。
【図7】本発明鋼材のフェライト相の最大結晶粒径と疲
労特性の関係を示す図である。
【図8】本発明鋼材と通常の高張力鋼におけるΔK値
(応力拡大係数範囲)と疲労き裂伝播速度との関係を示
す図である。
フロントページの続き (72)発明者 間渕 秀里 大分市大字西ノ洲1番地 新日本製鐵株式 会社大分製鐵所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.02〜0.20% Si:≦0.8% Mn:0.30〜2.5% P :≦0.035% S :≦0.02% Al:≦0.1% N :≦0.01% 残部Fe及び不可避不純物からなる鋼材において、板厚
    方向の断面組織が面積率で60〜90%のフェライト母
    相と第二相からなり、第二相の硬さ:Hv(SP)とフ
    ェライトの硬さ:Hv(F)が以下の(1)式を満足
    し、かつ第二相のアスペクト比:l(長軸長さ)/d
    (短軸長さ)がl/d>3.42であることを特徴とす
    る疲労き裂伝播特性の優れた鋼材。但し、Hv(SP)
    及びHv(F)は、第二相及びフェライトのそれぞれの
    荷重10gfにおけるビッカース硬さを示す。 Hv(SP)≧Hv(F)*(l/d)0.5/1.155・・・(1)
  2. 【請求項2】 板厚方向の断面組織において、疲労き裂
    進展方向の直線上を横切るフェライト相から第二相への
    界面から次の第二相への界面との間隔が25μm以下で
    あることを特徴とする請求項1に記載の疲労き裂伝播特
    性の優れた鋼材。
  3. 【請求項3】 さらに、板厚方向の断面組織において、
    (111)面のX線面強度のランダム比が4以上である
    ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の
    疲労き裂伝播特性の優れた鋼材。ただし、(111)面
    のX線面強度のランダム比とは当該試料とほぼ同一の成
    分の粉末試料から測定される(111)面の強度との比
    である。
  4. 【請求項4】 さらに、板厚方向の断面組織において、
    フェライト母相の円相当粒径の平均値が4μm以下であ
    ることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の
    疲労き裂伝播特性の優れた鋼材。ただし、円相当粒径と
    は、当該結晶粒の面積と等しい円の直径である。
  5. 【請求項5】 さらに、板厚方向の断面組織において、
    フェライト母相の円相当粒径の最大値が12.5μm以
    下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに
    記載の疲労き裂伝播特性の優れた鋼材。
  6. 【請求項6】 さらに、 Cu:0.01〜1.5% Ni:0.01〜3.0% Cr:0.01〜1.0% Mo:0.01〜1.0% Nb:0.003〜0.05% V :0.005〜0.02% Ti:0.003〜0.10% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1〜6のいずれかに記載の疲労き裂伝播特性の優れた
    鋼材。
  7. 【請求項7】 重量%で、 C :0.02〜0.20% Si:≦0.8% Mn:0.30〜2.5% P :≦0.035% S :≦0.02% Al:≦0.1% N :≦0.01% 残部Fe及び不可避不純物からなる鋼塊または鋼片をA
    1変態点以上1250℃以下の温度に加熱した後、A
    3以上の温度にて粗圧延終了後、フェライト分率が6
    0%以上となる温度域における累積圧下率が40%以上
    である仕上圧延を行うことを特徴とする疲労き裂伝播特
    性の優れた鋼材の製造方法。
  8. 【請求項8】 更に、 Cu:0.01〜1.5% Ni:0.01〜3.0% Cr:0.01〜1.0% Mo:0.01〜1.0% Nb:0.003〜0.05% V :0.005〜0.02% Ti:0.003〜0.10% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項7に記載の疲労き裂伝播特性の優れた鋼材の製造方
    法。
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