JP2007177305A - 耐食性および疲労亀裂進展抵抗性に優れた船舶用鋼材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の船舶用耐鋼材は、所定の化学成分組成を満たすと共に、軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、且つ硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)が1.5〜5.0であり、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下である。
【選択図】図4
Description
Cは、材料の強度確保のために必要な元素である。船舶の構造部材としての最低強度、即ち概ね400MPa程度(使用する鋼材の肉厚にもよるが)を得るためには、0.01%以上含有させる必要がある。しかし、0.2%を超えて過剰に含有させると靱性、溶接性が劣化する。こうしたことから、C含有量の範囲は0.01〜0.2%とした。尚、C含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.04%以上とするのが良い。また、C含有量の好ましい上限は0.18%であり、より好ましくは0.16%以下とするのが良い。
Siは脱酸と強度確保のために必要な元素であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。しかし、1%を超えて過剰に含有させると溶接性、HAZ(溶接熱影響部)靭性が劣化する。尚、Si含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.05%以上であり、好ましい上限は0.8%であり、より好ましくは0.6%以下とするのが良い。
MnもSiと同様に脱酸および強度確保のために必要であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。しかし、2%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.05%であり、より好ましくは0.10%以上とするのが良い。また、Mn含有量の好ましい上限は1.8%であり、より好ましくは1.6%以下とするのが良い。
AlもSi、Mnと同様に脱酸および強度確保のために必要であり、0.005%に満たないと脱酸に効果がない。しかし、0.1%を超えて添加すると溶接性を害するため、Al添加量の範囲は0.005〜0.1%とした。尚、Al含有量の好ましい下限は0.01%であり、より好ましくは0.015%以上とするのが良い。また、Al含有量の好ましい上限は0.09%であり、より好ましくは0.08%以下とするのが良い。
Coは、高塩分環境において鋼材の耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆皮膜を形成するのに必要不可欠な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Co含有量は0.01%以上とすることが必要である。しかしながら、1%を超えて過剰に含有させると溶接性、HAZ靭性が劣化する。こうしたことからCo含有量は、0.01〜1%とした。尚、Co含有量の好ましい下限は0.015%であり、より好ましくは0.02%以上とするのが良い。また、Co含有量の好ましい上限は0.8%であり、より好ましくは0.6%以下とするのが良い。
Mgは溶解することによってpH上昇作用を示すことから、鉄の溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して、腐食反応を抑制し、耐食性を向上させる作用を有する。こうした効果を発揮させるためには、Mgは0.0005%以上含有させることが必要であるが、0.02%を超えて含有させると加工性と溶接性を劣化させる。こうしたことから、Mg含有量は0.0005〜0.02%の範囲が適正である。Mg含有量の好ましい下限は0.0007%であり、より好ましくは0.001%以上含有させるのが良い。またMg含有量の好ましい上限は0.018%であり、より好ましくは0.015%以下とするのが良い。
Cu,Cr、NiおよびTiは、いずれも耐食性向上に有効な元素である。このうちCuおよびCrは、Coと同様に耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆被膜を形成するのに有効な元素である。こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させると溶接性、熱間加工性およびHAZ靭性が劣化することから、Cuについては1.5%以下、Crについては1%以下とすることが好ましい。CuおよびCrを含有させるときの好ましい下限は0.01%であり、より好ましくは0.05%以上である。またより好ましい上限は、Cu:1.0%以下、Cr:0.8%以下である。
CaはMgと同様に、溶解することによってpH上昇作用を示し、鉄の溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して腐食反応を抑制し、耐食性向上に有効な元素である。Caによるこうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、0.02%を超えて過剰に含有させると加工性と溶接性とを劣化させることになる。Caを含有させるときの好ましい下限は0.0005%であり、より好ましくは、0.001%以上とするのがよく、より好ましい上限は0.015%である。
MoおよびWは、腐食の均一性を高めて局部腐食による穴あきを抑制する作用がある。特にCoと同時に含有させることによって、顕著な均一腐食性向上作用が発揮される。こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させると溶接性が劣化することから、Moについて0.5%以下、Wについては0.3%以下とすることが好ましい。Moを含有させるときの好ましい下限は0.01%であり、より好ましくは0.02%以上とするのが良く、より好ましい上限は0.3%である。またWを含有させるときの好ましい下限は0.01%であり、より好ましくは0.02%であり、より好ましい上限は0.2%である。
船舶用鋼材では、適用する部位によってはより高強度化が必要な場合があるが、これら
の元素は強度向上に必要な元素である。このうちBは焼入性を向上して強度向上に有効であるが、0.01%を超えて過剰に含有させると母材靭性およびHAZ靭性が劣化するため好ましくない。Vは、強度向上に有効であるが、0.1%を超えて過剰に含有させると鋼材の靭性劣化、およびHAZ靭性の劣化を招くことになるので好ましくない。Nbは、強度向上に有効であるが、0.05%を超えて過剰に含有させると鋼材の靭性劣化、HAZ靭性の劣化を招くことになる。尚、これらの元素の好ましい下限は、Bについては0.0001%、より好ましくは0.003%以上、Vについては0.003%、より好ましくは0.005%以上、Nbについては0.003%、より好ましくは0.005%以上である。またより好ましい上限は、Bについては0.009%、Vについては0.07%、Nbについては0.03%である。
Ar3=868-369・[C]+24.6・[Si]-68.1・[Mn]-36.1・[Ni]-20.7・[Cu]-24.8・[Cr]
+29.6・[Mo]+190・[V] …(1)
Ar1=630.5+51.6・[C]+122.4・[Si]-64.8・[Mn]-57.5・[Mo] …(2)
Ac1=723-14・[Mn]+22・[Si]-14.4・[Ni]+23.3・[Cr] …(3)
Ac3=908-223.7・[C]+30.49・[Si]-34.3・[Mn]+37.92・[V]-23.5・[Ni] …(4)
但し、[C],[Si],[Mn],[Ni],[Cu],[Cr],[Mo]および[V]は、夫々C,Si,Mn,Ni,Cu,MoおよびVの含有量(質量%)を示す。
1.プロセスコンピュータを用い、加熱開始から加熱終了までの雰囲気温度や在炉時間に基づいて鋼片の表面から裏面までの任意の位置(例えば、t/4位置)の加熱温度を算出する。
2.算出した加熱温度を用い、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)のデータに基づいて、板厚方向の任意の位置における圧延温度を計算しつつ圧延を実施する。
3.鋼板の表面温度は圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて実測する。但し、プロセスコンピュータでも理論値を計算しておく。
4.粗圧延開始時、粗圧延終了時、仕上げ圧延開始時にそれぞれ実測した鋼板の表面温度を、プロセスコンピュータから算出される計算温度と照合する。
5.計算温度と実測温度の差が±30℃以上の場合は、計算表面温度が実測温度と一致するように再計算してプロセスコンピュータ上の計算温度とし、±30℃未満の場合は、プロセスコンピュータから算出された計算温度をそのまま用いる。
6.上記算出された計算温度を用い、制御対象としている領域の圧延温度を管理する。
まず海洋環境を模擬して、海水噴霧試験と恒温恒湿試験の繰り返しによる複合サイクル腐食試験を行った。海水噴霧試験では、水平から60°の角度で傾けて供試材(各試験片A〜C)を試験槽内に設置し、35℃の人工海水(塩水)を霧状に噴霧させた。塩水の噴霧は常時連続して行った。このとき試験槽内において、水平に設置した面積80cm2の円形皿に1時間当たりに1.5±0.3mLの人工海水が任意の位置で採取されるような噴霧量に予め調整した。恒温恒湿試験は、温度:60℃、湿度:95%に調整した試験槽内に、供試材を水平から60°の角度で傾けて設置して行った。海水噴霧試験:4時間、恒温恒湿試験:4時間を1サイクルとして、これらを交互に行って、供試材を腐食させた。トータルの試験時間は6ヶ月間とした。
(2)試験片Bについては、すきま部(接触面)の目視観察を行ってすきま腐食発生の有無を調べ、すきま腐食が認められる場合には、上記陰極電解法により腐食生成物を除去し、触針式三次元形状測定装置を用いて最大すきま腐食深さD-crev(mm)を測定した。
(3)塗装処理を施した試験片C(カット傷付き)については、試験後にカット傷を形成した面における塗膜膨れ面積の比率(膨れ面積率)を測定した。膨れ面積率は格子点法(格子間隔1mm)によって求めた。即ち、膨れの認められた格子点の数を全格子点数で除したものを膨れ面積率と定義して、試験片5個の平均値を求めた。また、カット傷に垂直方向の塗膜膨れ幅をノギスで測定し、試験片5個の最大値を最大膨れ幅と定義した。
熱間圧延材を切断し、ASTM E647に準拠し、コンパクト型試験片を用いて、疲労亀裂進展試験を実施することによって、疲労亀裂進展速度を求めた。この際、下記(5)式によって規定されるパリス則が成り立つ安定成長領域ΔK=20(MPa・√m)での値を代表値として評価した。尚、疲労亀裂進展速度の評価、基準については、通常の鋼材が4〜6×10−5mm/cycle(ΔK=20のとき)程度の進展速度であることから、3.5×10−5mm/cycle以下を基準とした。
da/dn=C(ΔK)m …(5)
但し、a:亀裂長さ,n:繰り返し数,C,m:材料、荷重等の件で決まる定数を夫々示す。
硬質相のビッカース硬さHv1、および軟質相のビッカース硬さHv2を、10gfのマイクロビッカース硬度計を用いて測定し、各5点の平均値を求め、硬さ比(Hv1/Hv2)を計算した。
(a)鋼材の圧延方向と平行な方向で切断し、板厚の表裏面部を含むサンプルを準備した。
(b)♯150〜♯1000までの湿式エメリー研磨紙若しくはそれと同等の機能を有する研磨方法を用いて研磨し、ダイヤモンドスラリー等の研磨材を用いて鏡面仕上げを施した。
(c)研磨されたサンプルを、3%ナイタール溶液(腐食液)を用いて腐食し、軟質相の結晶粒界を現出させた。
(d)現出させた組織を100倍若しくは400倍の倍率で写真撮影し(6cm×8cmの写真として撮影)、画像解析装置に取り込んだ(100倍では600μm×800μm、400倍では150μm×200μmに相当)。この取り込みに当っては、いずれの倍率においても、1mm×1mmに相当する枚数(100倍では少なくとも6枚の視野、400倍では35枚分の視野)を取り込んだ。
(e)画像解析装置において、一つの粒界に囲まれた領域と同等の面積を有する円に換算し、換算された円の直径を円相当軟質相の粒径と定義した。
(f)全ての視野について測定された値の平均値を平均円相当軟質相粒径として算出した。
Claims (7)
- C:0.01〜0.2%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.01〜1%、Mn:0.01〜2%、Al:0.005〜0.1%を夫々含有する他、Co:0.01〜1%およびMg:0.0005〜0.02%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、且つ硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)が1.5〜5.0であり、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下であることを特徴とする耐食性および疲労亀裂進展抵抗性に優れた船舶用鋼材。
- 前記軟質相は、フェライト、焼戻しベイナイトおよび焼戻しマルテンサイよりなる群から選ばれる1種以上であり、硬質相は、ベイナイトおよび/またはマルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)である請求項1に記載の船舶用鋼材。
- Coの含有量[Co]とMgの含有量[Mg]の比の値([Co]/[Mg])が2〜350である請求項1または2に記載の船舶用鋼材。
- 更に、Cu:1.5%以下(0%を含まない)、Cr:1%以下(0%を含まない)、Ni:2%以下(0%を含まない)およびTi:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の船舶用鋼材。
- 更に、Ca:0.02%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の船舶用鋼材。
- 更に、Mo:0.5%以下(0%を含まない)および/またはW:0.3%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の船舶用鋼材。
- 更に、B:0.01%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の船舶用鋼材。
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