JP4502948B2 - 耐食性および脆性破壊発生特性に優れた船舶用鋼材 - Google Patents

耐食性および脆性破壊発生特性に優れた船舶用鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、原油タンカー、貨物船、貨客船、客船、軍艦等の船舶において、主要な構造材として用いられる船舶用耐食鋼に関するものであり、特に海水による塩分や恒温多湿に曝される環境下における耐食性に優れた船舶用鋼材に関するものである。
上記各種船舶において主要な構造材(例えば、外板、バラストタンク、原油タンク等)として用いられている鋼材は、海水による塩分や恒温多湿に曝されることから腐食損傷を受けることが多い。こうした腐食は、浸水や沈没などの海難事故を招く恐れがあることから、鋼材には何らかの防食手段を施す必要がある。これまで行われている防食手段としては、(a)塗装や(b)電気防食等が従来からよく知られている。
(a)このうち重塗装に代表される塗装では、塗膜欠陥が存在する可能性が高く、また製造工程における衝突等によって塗膜に傷が付く場合があり、素地鋼材が露出してしまうことが多い。このように素地鋼材が露出した部分は、局部的にかつ集中的に鋼材が腐食してしまい、内容されている石油系液体燃料の早期漏洩に繋がることになる。
(b)一方、電気防食においては、海水中に完全に浸漬された部位における防食に対しては非常に有効であるが、大気中で海水飛沫を受ける部位などでは防食に必要な電気回路が形成されず、防食効果が充分に発揮されないことがある。また、防食用の流電陽極が異常消耗したり、脱落して消失した場合には、直ちに激しい腐食が進行することがある。
上記技術の他、鋼材自体の耐食性を向上させるものとして例えば特許文献1の技術も提案されている。この技術では、鋼材の化学成分組成を適切に調整することによって、耐食性を優れたものとしており、この文献には無塗装であっても使用できる造船用耐食鋼が開示されている。また特許文献2には、鋼材の化学成分組成を適切なものとすることによって、塗膜寿命性を向上させた船舶用鋼材について開示されている。これらの技術では、従来に比べてある程度の耐食性は確保できるようになったといえる。
しかしながら、より厳しい腐食環境下での耐食性については依然として十分なものとはいえず、更なる耐食性向上が要求されることになる。特に、異物と鋼材との接触部分、構造的な理由や防食塗膜の損傷部分等で形成される「すきま」部分における腐食(以下、「すきま腐食」ということがある)が顕著になり、寿命を低下させる場合があるが、これまで提案されている技術ではこうした部分における耐食性が不十分である。
特開2000−17381号公報(特許請求の範囲等) 特開2002−266052号公報(特許請求の範囲等)
ところで船舶用鋼材としては、厳しい使用環境下においても船体の安全性を確保するために、脆性破壊亀裂の発生を抑制することが望まれる。脆性破壊亀裂が発生すれば、船体自体の破壊につながるからである。ところが脆性破壊亀裂の発生を抑制しつつ上記耐食性をも向上させた船舶用鋼材は知られていない。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、塗装や電気防食を施さなくても実用化できるように耐食性に優れており、しかも脆性破壊亀裂が発生し難い船舶用鋼材を提供することにある。
本発明の他の目的は、耐食性の中でも、特にすきま腐食に対する耐久性の向上を図ると共に、海水に起因する塩分付着と湿潤環境による腐食に対しても優れた耐久性を発揮する船舶用鋼材を提供することにある。
本発明者らは、船舶用鋼板として一般的に使用されている強度クラス(400MPa〜500MPaクラス)の鋼材について、塗装や電気防食を施さなくても実用化できるように耐食性を一層向上させると共に、脆性破壊亀裂の発生を防止[以下、脆性破壊発生特性またはCTOD(Crack−Tip Opening Displacement)特性ということがある]すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、鋼材の耐食性を向上させるには、鋼材に所定量のCoとMgを併用して含有させると共に、鋼材の化学成分組成を適切に調整すればよく、また脆性破壊発生特性を改善するには、鋼材の金属組織を適切に制御すればよいことを見出し、本発明を完成した。
即ち、上記課題を解決することのできた本発明に係る船舶用鋼材とは、C:0.01〜0.2%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.01〜1%、Mn:0.01〜2%、Al:0.005〜0.1%を夫々含有する他、Co:0.010〜1%およびMg:0.0005〜0.02%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材であり、該鋼材の圧延方向に平行で且つ鋼材表面に対して垂直な面の金属組織を観察したときに、下記(1)〜(3)を満足する点に要旨を有するものである。但し、tは鋼材の厚み(mm)を意味する。
(1)フェライト面積率が75%以上。
(2)t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下。
(3)t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下。
本発明の船舶用鋼材においては、上記Coの含有量[Co]と上記Mgの含有量[Mg]の比の値([Co]/[Mg])を2〜350の範囲に調整することが好ましい。
また、本発明の船舶用鋼材においては、必要に応じて、更に他の元素として、
(a)Cu:1.5%以下(0%を含まない)、Cr:1%以下(0%を含まない)、Ni:2%以下(0%を含まない)、Ti:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素、
(b)Ca:0.02%以下(0%を含まない)、
(c)Mo:0.5%以下(0%を含まない)および/またはW:0.3%以下(0%を含まない)、或いは
(d)B:0.01%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素、
等を含有させることも有効である。含有させる成分の種類に応じて船舶用鋼材の特性が更に改善されるからである。
本発明の船舶用鋼材においては、鋼材に所定量のCoとMgを併用させて含有させると共に、鋼材の化学成分組成を適切に調整することによって、塗装および電気防食を施さなくても実用化できるように耐食性を向上させることができ、しかも鋼材の金属組織を最適化することによって、脆性破壊亀裂の発生を防止できる。特に本発明によれば、耐食性の中でも、すきま腐食に対する耐久性の向上を図ることができると共に、海水に起因する塩分付着と湿潤環境による腐食に対しても優れた耐久性を発揮する船舶用鋼材を実現できる。こうした本発明の船舶用鋼材は、原油タンカー、貨物船、貨客船、客船、軍艦等の船舶における外板、バラストタンク、原油タンク等の素材として有用に使用される。
本発明の鋼材においては、耐食性を向上させるために、CoとMgを併用して含有させることが重要であり、これらの成分のいずれを欠いても、本発明の目的を達成することができない。これらの成分における各作用効果は後述するが、これらの元素を併用することによって、耐食性が向上した理由は次のように考えることができる。
Mgは、腐食部分におけるpH低下を抑制して腐食反応を抑制することにより耐食性を向上させる作用を発揮する元素である。こうした作用は通常の鋼材(例えば、Si−Mn鋼材)の成分系においては、生成する錆がポーラスであるので溶解したMgは鋼板表面近傍にとどまることなく直ちに外部(例えば、海水中)に拡散してしまうことになる。従って、Mgを単独で含有させたのでは、耐食性の向上効果は小さいものとなる。しかしながら、Mgと共にCoを含有させることによって、微細な表面錆皮膜が形成されることになり、Mgの外部への拡散が抑制されるのである。また、溶解したCoの加水分解平衡反応との相乗効果によって、耐食性を大幅に向上させることができるものと考えられる。
こうした効果は、鋼材に含まれるCoとMoの含有量を後述する適切な範囲に制御することによって発揮されるのであるが、これらの元素の含有比の値([Co]/[Mg]:質量比)も適切に制御することが好ましい。即ち、この値([Co]/[Mg])が2未満であると局部腐食の抑制が不十分となりやすく、350を超えると全面腐食の抑制が不十分となりやすい。従って[Co]/[Mg]の値は、2〜350であるのが好ましく、より好ましい下限は10、更に好ましい下限は20であり、より好ましい上限は100、更に好ましい上限は95、特に好ましい上限は80、最も好ましくは60である。
上述したように、本発明の鋼材においては、耐食性を向上させるためにCoとMgを併用するものであるが、CoとMgを併用しても脆性破壊発生特性を改善することはできない。そこで本発明者らは、CoとMgを併用することによって向上させた耐食性を劣化させることなく、脆性破壊発生特性を改善するために検討したところ、厚みt(mm)の鋼材について、圧延方向に平行で且つ鋼材表面に対して垂直な面の金属組織を観察したときに、(1)フェライト面積率が75%以上で、(2)t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下で、(3)t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下であれば、鋼材の脆性破壊発生特性を改善することができ、上記耐食性も劣化させないことが明らかになった。以下、このように規定した理由について詳述する。
本発明に係る船舶用鋼材の金属組織は、鋼材の強度を確保するためにフェライトを主体とする。フェライト主体とは、フェライトの分率が75体積%以上であることを意味し、金属組織を観察したときに、フェライトの面積率が75%以上であればよい。フェライトの面積率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。
上記金属組織の残部は、第二相として、パーライトやベイナイト、マルテンサイト等が生成していればよく、その種類は特に限定されない。第二相の面積率は25%未満であればよく、好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満である。
上記船舶用鋼材の金属組織は、フェライトを主体とする他、CTOD特性を改善するには、フェライト粒の円相当径とアスペクト比の両方を適切に調整することが重要である。即ち、本発明者らが、種々実験を繰返した結果、t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下で、t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下である必要がある。このことは図1および図2から明らかである。
図1は、鋼材のt/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径と平均アスペクト比とCTOD特性の関係を示している。図1中、X軸はt/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径、Y軸はCTOD特性(δc−40℃)を示しており、□はt/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が1.4〜1.6、○はt/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が1.7〜2.0、△はt/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.1〜2.3のときの結果を夫々示している。
この図1から明らかなように、t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が小さくなるほど、CTOD特性が改善される傾向(数値が大きくなる傾向)を示すことが分かる。このときt/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が1.4〜1.6であれば、δc−40℃が0.20mm以上となり、CTOD特性を確実に改善できるのに対し、t/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.1〜2.3であれば、δc−40℃が0.20mm未満となり、CTOD特性を改善できないことが分かる。一方、t/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が1.7〜2.0であれば、CTOD特性を改善できる場合と、改善できない場合がある。
そこで図1において、t/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が1.7〜2.0の鋼材について、t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比を測定した。この結果を図2に示す。図2中、X軸はt/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径、Y軸はCTOD特性(δc−40℃)を示しており、○はt/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が1.7〜2.0、●はt/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.1〜2.2であることを示している。
この図2から明らかなように、δc−40℃が0.20mm以上で、CTOD特性を確実に改善するには、t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比を1.7〜2.0とする必要がある。即ち、t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径を20.0μm以下に小さくしたとしても、t/4位置における平均アスペクト比が2.0を超えると、CTOD特性の改善効果はあまり認められないことが分かる。この理由については次のように考えられる。即ち、脆性破壊では、結晶粒と結晶粒の境界(結晶粒界)が亀裂伝播の抵抗となるため、結晶粒界が密に存在していれば、脆性破壊自体が発生し難くなるし、微小な脆性破壊が発生したとしても亀裂が進展する方向に結晶粒界が密に存在すれば亀裂の伝播も防止できる。ところがフェライト粒は圧延工程において圧延方向に伸びるため、フェライト粒のアスペクト比は大きくなる。そのため圧延方向にはフェライト粒の長径が揃い、板厚方向には短径が揃い易い。従って板厚方向には結晶粒界が密に存在することになるが、圧延方向における結晶粒界は疎になるため、結晶粒界の密度にバラツキが生じ易く、脆性破壊が発生し易くなる。また、脆性破壊が発生すると、圧延方向に亀裂が伝播し易くなる。
これに対し、フェライト粒の平均円相当径を小さくし、且つ平均アスペクト比を小さくすれば、結晶粒界の密度のバラツキは殆ど無くなるため、脆性破壊は発生し難く、たとえ発生したとしても結晶粒界が抵抗となり亀裂の伝播を防止することができる。
そこで本発明では、フェライト粒の平均円相当径を20.0μm以下とし、フェライト粒の平均アスペクト比を2.0以下とするが、本発明の船舶用鋼材では、フェライト粒の平均円相当径はt/2位置で測定した値とし、フェライトの平均アスペクト比はt/4位置で測定した値とする。
フェライト粒の大きさは、温度に大きく影響を受け、温度が高くなるほど粗大化し易い。そのため本発明では、鋼材の温度が最も高くなると考えられるt/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径を制御することとする。
これに対し、フェライト粒の形状は、圧延時に導入される真ひずみ量に大きく影響を受ける。即ち、真ひずみ量が小さくなるほどフェライト粒は粗大化し易く、粗大化したフェライト粒は、圧延時に圧延方向へ進展し易くなり、アスペクト比が大きくなる。そしてこの真ひずみは、鋼材の内部にいくほど導入され易いため、真ひずみ量が小さくなり易いt/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比を制御することとする。
上記t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径は、17.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは16μm以下である。フェライト粒の平均円相当径の下限は特に規定されず、小さいほど好ましいが、小さくするには限界があるため、通常は7〜10μm程度である。なお、円相当径とは、フェライト粒を同一面積の円に換算したときの円の直径を意味する。
本発明では、t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下であれば、t/4位置におけるフェライト粒の平均円相当径も20.0μm以下となる。上述したように、t/2位置よりもt/4位置の方が低温となるため、フェライト粒の粗大化が防止されるからである。こうしたt/4位置におけるフェライト粒の平均円相当径は、16μm以下であることがより好ましく、更に好ましくは14μm以下である。なお、t/4位置におけるフェライト粒の平均円相当径の下限も特に規定されず、小さいほど好ましいが、小さくするには限界があるため、通常は7〜10μm程度である。
一方、上記t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比は、1.7以下であることが好ましく、より好ましくは1.5以下である。なお、フェライト粒のアスペクト比とは、フェライト粒の圧延方向の粒径(Dl)と板厚方向の粒径(Dt)の比(Dl/Dt)を意味する。
本発明では、t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下であれば、t/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比も2.0以下となる。上述したように、t/4位置に導入される真ひずみ量よりもt/2位置に導入される真ひずみ量の方が大きくなるため、フェライト粒の粗大化によるアスペクト比の増大は防止されるからである。こうしたt/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比は、1.7以下であることがより好ましく、更に好ましくは1.5以下である。
なお、本発明の船舶用鋼材では、t/4位置から3t/4位置までの領域の金属組織を観察したときに、フェライト粒の平均円相当径と平均アスペクト比が上記要件を満足していればCTOD特性を充分に改善できることを既に確認している。即ち、鋼材の中心から板厚方向に25%ずつの領域(つまり鋼材の中心を挟んで50%の領域であり、鋼材の50体積%に相当)におけるフェライト粒の平均円相当径と平均アスペクト比が上記要件を満足していればよく、例えばt/8位置や7t/8位置におけるフェライト粒の平均円相当径と平均アスペクト比を算出したときに、上記要件を外れていてもよい。t/8位置から7t/8位置までの広範囲に亘って(鋼材の75体積%に相当)フェライト粒の大きさと形状を制御しても、CTOD特性を改善する効果は飽和してしまうからである。但し、t/8位置や7t/8位置におけるフェライト粒の平均円相当径と平均アスペクト比を算出したときに、上記要件を満足していても勿論構わない。
このことは図3から明らかである。図3は、金属組織の存在位置と脆性破壊発生特性(δc−40℃)の関係を示すグラフである。X軸は、鋼材の中心位置からの相対位置を示しており、X=0は鋼材の中心位置を、X=50は鋼材の表面を示し、鋼材の厚みを100としている。図中の○は、フェライト粒の平均円相当径が17〜20μmで、且つ平均アスペクト比が1.6〜2.0を満足する金属組織が観察される限界位置を示しており、○より右側(鋼材表面側)の位置における金属組織を観察すると、フェライト粒の平均アスペクト比は2.0を超えている。
上記図3から明らかなように、鋼材の中心位置からの相対位置が25となる位置(即ち、t/4位置)を超えて鋼材表面側に、フェライト粒の平均円相当径が17〜20μmで、且つ平均アスペクト比が1.6〜2.0を満足する金属組織が存在していたとしても、脆性破壊発生特性の結果は殆ど変化せず、飽和していることが分かる。つまり、t/4位置における金属組織を適切に制御すれば、鋼材全体の脆性破壊発生特性を改善できることが分かる。
上記フェライト粒の平均円相当径と平均アスペクト比は、例えば次に示す手順で算出できる。まず、鋼材のおもて面と裏面を含むと共に、圧延方向に平行で且つ鋼材表面(鋼材のおもて面)に対して垂直な面が露出するようにサンプルを切り出し、この露出面を研磨して鏡面仕上げする。
露出面の研磨方法は特に限定されず、例えば、#150〜#1000までの湿式エメリー研磨紙を用いて研磨するか、それと同等の機能を有する研磨方法を用いて研磨すればよい。また、鏡面仕上げを行なう際には、ダイヤモンドスラリーなどの研磨剤を用いればよい。
鏡面仕上げしたサンプルは3%ナイタール溶液を用いて腐食し、フェライト組織の結晶粒界を現出させた後、倍率を100倍または400倍として写真撮影し、画像解析装置に取り込む。いずれの倍率においても領域が1mm×1mm以上に相当するように画像を取り込む。
次に、画像解析装置において、粒界に囲まれたフェライト粒の領域(面積)を同等の面積を有する円に換算し、換算された円の直径をフェライト粒の円相当径と定義して円相当径を測定する。これを全ての観察視野について測定し、結果を平均することで平均円相当径を算出する。
一方、フェライト粒のアスペクト比については、上記粒界に囲まれたフェライト粒について、圧延方向の粒径Dlと板厚方向の粒径Dtを測定し、DlとDtの比(Dl/Dt)をアスペクト比として算出する。これを全ての観察視野について行い、結果を平均することで平均アスペクト比を算出する。
次に、本発明の船舶用鋼材の化学成分組成について説明する。本発明の鋼材では、その鋼材としての基本的特性を満足させるために、C,Si,Mn,Al等の基本成分も適切に調整する必要がある。これらの成分の範囲限定理由について、上記CoとMgの各元素による作用効果と合わせて以下に説明する。
C:0.01〜0.2%
Cは、材料の強度を確保するために必要な元素である。船舶の構造部材として要求される最低強度(使用する鋼材の肉厚にもよるが、概ね400MPa程度)を得るためには、0.01%以上含有させる必要がある。C含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.04%以上とする。しかし0.2%を超えて過剰に含有させると靱性や溶接性が劣化する。こうしたことから、C含有量の上限は0.2%とした。C含有量の好ましい上限は0.18%であり、より好ましくは0.16%以下とする。
Si:0.01〜1%
Siは、脱酸作用を有する他、強度を確保するためにも必要な元素であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。従ってSiは0.01%以上とする。Si含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.05%以上とする。しかし1%を超えて過剰に含有させると溶接性やHAZ靭性が劣化する。従ってSiは1%以下とする。Si含有量の好ましい上限は0.8%であり、より好ましくは0.6%以下とする。
Mn:0.01〜2%
MnもSiと同様に脱酸作用を有する他、強度を確保するために必要な元素であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。従ってMnは0.01%以上とする。Mn含有量の好ましい下限は0.05%であり、より好ましくは0.10%以上とする。しかし2%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。従ってMnは2%以下とする。Mn含有量の好ましい上限は1.80%であり、より好ましくは1.60%以下とする。
Al:0.005〜0.1%
AlもSi、Mnと同様に脱酸および強度確保のために必要であり、0.005%に満たないと脱酸効果が得られない。従ってAlは0.005%以上とする。Al含有量の好ましい下限は0.010%であり、より好ましくは0.015%以上とする。しかし0.1%を超えて添加すると溶接性やHAZ靭性を害するため、Al添加量の上限は0.1%とした。Al含有量の好ましい上限は0.09%であり、より好ましくは0.08%以下とする。
Co:0.01〜1%
Coは、高塩分環境において鋼材の耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆皮膜を形成するのに必要不可欠な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Co含有量は0.01%以上とすることが必要である。Co含有量の好ましい下限は0.015%であり、より好ましくは0.020%以上とする。しかし1%を超えて過剰に含有させると溶接性やHAZ靭性が劣化する。こうしたことからCo含有量の上限は1%とした。Co含有量の好ましい上限は0.8%であり、より好ましくは0.6%以下とするのが良い。
Mg:0.0005〜0.02%
Mgは、溶解することによってpH上昇作用を示すことから、鉄の溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して、腐食反応を抑制し、耐食性を向上させる作用を有する。こうした効果を発揮させるためには、Mgは0.0005%以上含有させることが必要である。Mg含有量の好ましい下限は0.0007%であり、より好ましくは0.0010%以上含有させるのが良い。しかし0.02%を超えて含有させると加工性や溶接性を劣化させる。こうしたことからMg含有量の上限は0.02%とした。Mg含有量の好ましい上限は0.018%であり、より好ましくは0.015%以下とするのが良い。
本発明の船舶用鋼材における基本成分は上記の通りであり、残部は鉄および不可避的不純物(例えば、P,S,O等)からなるものであるが、これら以外にも鋼材の特性を阻害しない程度の成分(例えば、Zr,N等)も許容できる。但し、これら許容成分は、その量が過剰になると靭性が劣化するので、0.1%程度以下に抑えるべきである。
また、本発明の船舶用鋼材には、上記成分の他に、必要によって、(1)Cu,Cr,NiおよびTiよりなる群から選ばれる1種以上の元素、(2)Ca、(3)Moおよび/またはW、(4)B,VおよびNbよりなる群から選ばれる1種以上の元素、等を含有させることも有効であり、含有させる成分の種類に応じて船舶用鋼材の特性が更に改善されることになる。これらの成分の範囲限定理由について以下に説明する。
Cu:1.5%以下(0%を含まない)、Cr:1%以下(0%を含まない)、Ni:2%以下(0%を含まない)、Ti:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素
Cu,Cr,NiおよびTiは、いずれも耐食性向上に有効な元素である。
このうちCuとCrは、上記Coと同様に、耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆被膜を形成するのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、いずれも0.01%以上含有させることが好ましい。CuとCrを夫々単独で、或いは併用して含有する場合における夫々のより好ましい下限は0.05%である。しかし過剰に含有させると溶接性やHAZ靭性、熱間加工性が劣化するため、Cuは1.5%以下、Crは1%以下とすることが好ましい。Cu含有量のより好ましい上限は1.0%であり、Cr含有量のより好ましい上限は0.8%である。
Niは、耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆被膜を安定化させるのに有効な元素であり、こうした効果を発揮させるためには0.01%以上含有させることが好ましい。Niを含有させるときのより好ましい下限は0.05%である。しかしNi含有量が過剰になると溶接性や熱間加工性が劣化する。また、過剰な添加は、大幅なコスト高となる。従ってNiは2%以下であることが好ましい。Niを含有させるときのより好ましい上限は1.5%である。
Tiは、耐食性向上に大きく寄与する表面錆被膜を緻密化してその環境遮断性を向上させると共に、すきま内部における腐食を抑制して、耐すきま腐食性も向上させる元素である。こうした環境下で要求される耐食性を確保するためには、0.005%以上含有させることが好ましい。Tiを含有させるときのより好ましい下限は0.008%である。しかし0.1%を超えて過剰に含有させると加工性や溶接性、HAZ靭性を劣化させることになる。従ってTiは0.1%以下であることが好ましい。Tiを含有させるときのより好ましい上限は0.05%である。
Ca:0.02%以下(0%を含まない)
Caは、Mgと同様に、溶解することによってpH上昇作用を示し、鉄の溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して腐食反応を抑制し、耐食性向上に有効な元素である。Caによるこうした効果は0.0005%以上含有させることによって有効に発揮される。Caを含有させるときのより好ましい下限は0.0010%である。しかし0.02%を超えて過剰に含有させると、加工性や溶接性を劣化させることになる。従ってCaは0.02%以下であることが好ましい。Caを含有させるときのより好ましい上限は0.015%である。
Mo:0.5%以下(0%を含まない)および/またはW:0.3%以下(0%を含まない)
MoとWは、腐食の均一性を高めて局部腐食による穴あきを抑制する作用がある。これらの元素は、特にCoと同時に含有させることによって、顕著な均一腐食性向上作用が発揮される。こうした効果を発揮させるためには、いずれの元素も0.01%以上含有させることが好ましい。Moを含有させるときのより好ましい下限は0.02%であり、Wを含有させるときのより好ましい下限は0.02%である。しかし過剰に含有させると溶接性やHAZ靭性が劣化する上、大幅なコスト高となる。従ってMoについては0.5%以下、Wについては0.3%以下とすることが好ましい。Moを含有させるときのより好ましい上限は0.3%であり、Wを含有させるときのより好ましい上限は0.2%である。
B:0.01%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素
船舶用鋼材では、適用する部位によってはより高強度化が必要な場合があるが、B,VおよびNbはこうした強度向上に必要な元素である。
このうちBは、焼入性を向上し、強度向上に有効に作用する元素であり、0.0001%以上含有させることが好ましい。より好ましい下限は0.0003%である。しかし0.01%を超えて過剰に含有させると母材靭性やHAZ靭性が劣化するため好ましくない。従ってBは0.01%以下であることが好ましい。より好ましい上限は0.0090%である。
Vは、強度向上に有効に作用する元素であり、0.003%以上含有させることが好ましい。より好ましい下限は0.005%である。しかし0.1%を超えて過剰に含有させると鋼材やHAZの靭性劣化を招くことになるので好ましくない。従ってVは0.1%以下であることが好ましい。より好ましくは0.07%以下とする。
Nbは、強度向上に有効に作用する元素であり、0.003%以上含有させることが好ましい。より好ましい下限は0.005%である。しかし0.05%を超えて過剰に含有させると鋼材の靭性劣化やHAZ靭性の劣化を招くことになる。従ってNbは0.05%以下であることが好ましい。より好ましくは0.03%以下とする。
本発明に係る船舶用鋼材は、上記要件を満足するものであり、その製造方法は特に限定されないが、例えば以下に示す方法を採用すれば、上記要件を満足する船舶用鋼材を製造することができる。即ち、t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径を20.0μm以下にすると共に、t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比を2.0以下にするには、鋳造して得られたスラブを1000〜1200℃に加熱した後、粗圧延し、次いで直ちに強制水冷してオーステナイト未再結晶温度域まで冷却した後、このオーステナイト未再結晶温度域で仕上げ圧延すればよい。以下、順を追って説明する。
スラブを加熱する温度は1000〜1200℃とするのが好ましい。粗圧延およびそれに続く冷却後(自然放冷あるいは強制水冷)に得られるフェライト組織を微細化するために、オーステナイトを逆変態させるためである。即ち、通常は、900℃程度に加熱することでフェライトからオーステナイトに逆変態するが、圧延終了後のフェライト組織を微細化するには、オーステナイト組織を圧延して再結晶させるのが有効である。従ってオーステナイトの再結晶温度の下限は鋼材の化学成分組成にもよるが、通常850〜900℃であるため、この下限温度以上でオーステナイト組織を圧延して再結晶させるには、加熱温度を1000℃以上とするのがよい。好ましくは1050℃以上とする。なお、上記加熱温度は、プロセスコンピュータを用いて鋼片の板厚方向における平均温度(計算値)を算出し、この平均温度で管理するのがよい。
しかし1200℃を超えて加熱すると、初期のオーステナイト組織が粗大化し過ぎるため、こうしたオーステナイト組織を圧延して再結晶させてもオーステナイト組織を充分に微細化することが困難となる。また、高温での加熱はエネルギー的にも不経済である。従って加熱温度は1200℃以下とするのがよい。より好ましくは1100℃以下とする。
加熱したスラブは、オーステナイトの再結晶温度域で累積圧下率を50%以上として粗圧延すればよい。オーステナイトの再結晶温度域において累積圧下率を50%以上として粗圧延することで、オーステナイト組織を再結晶させることができ、圧延終了後のフェライト組織を微細化できるからである。即ち、オーステナイトの再結晶温度域での累積圧下率が50%未満であっても後述するオーステナイト未再結晶温度域における累積圧下率を大きくすることで、フェライト粒を微細化できる。しかしオーステナイト未再結晶温度域において圧延を開始する時点におけるフェライト粒が粗大化していると、該オーステナイト未再結晶温度域で適切に圧延しても、最終的に得られる金属組織は、粗大なフェライト粒と微細なフェライト粒が混在した混粒状態となりやすいからである。混粒状態になるとCTOD特性が安定し難くなる傾向がある。従ってオーステナイトの再結晶温度域においてオーステナイト組織を充分に微細化するには、オーステナイト再結晶温度域での累積圧下率を50%以上とすることが推奨される。
上記累積圧下率はできるだけ大きくするのが好ましく、累積圧下率の増加に伴ってフェライト粒の円相当径は約25〜30μm程度にまで微細化できる。しかしオーステナイトの再結晶温度域における累積圧下率を70%を超えて大きくしてもその効果はほぼ飽和するため、累積圧下率は70%程度以下とすればよい。
上記粗圧延を行なう温度域は、オーステナイトの再結晶温度域とするが、この温度域は、鋼材の化学成分組成によって多少変化する。しかしオーステナイトの再結晶温度の下限は通常850〜900℃程度であるため、900℃以上の温度域における累積圧下率を上記範囲に調整すればよい。但し、圧延温度域を高くし過ぎると、圧延後の再結晶に引き続き、オーステナイト粒の成長が早くなるため、有効に微細化できないことがある。しかし1000℃以下ではこのような粒成長が起こるものの圧延終了後60秒以内に再び圧延を実施すれば、圧延前の組織よりも微細な状態の組織を維持することができる。従って圧延開始温度は1000℃以下とするのがよい。
上記累積圧下率は、鋼片のt/2位置における温度(計算値)が、1000℃での鋼片厚みをt、900℃での鋼片厚みをtとしたとき、下記(a)式で算出できる。
累積圧下率(%)=[(t−t)/t]×100 …(a)
但し、粗圧延開始温度が1000℃を超える場合には、鋼片のt/2位置における温度が1000℃での鋼片厚みをtとし、粗圧延開始温度が1000℃を下回る場合には、粗圧延開始時における鋼片厚みをtとして上記累積圧下率を算出する。一方、粗圧延終了温度が900℃より下回る場合には、900℃での鋼片厚みをtとし、粗圧延終了温度が900℃に達しない場合(900℃超の場合)には、粗圧延終了時における鋼片厚みをtとして上記累積圧下率を算出する。
上記粗圧延を行なう温度は、鋼材の厚みをt(mm)としたとき、プロセスコンピュータを用いてt/2位置における温度を計算して算出した温度を基準とするのがよい。鋼材内部の温度を代表するためである。
但し、オーステナイトの再結晶粒径は、上述したように累積圧下率が50%以上であれば、粗圧延による微細化効果が飽和する傾向がある。
なお、t/2位置の温度(計算値)に比べて鋼板表面の温度(実測値)は、鋼材の厚みが150mmの場合には約50〜70℃低くなり、鋼材の厚みが100mmの場合には約40〜50℃低くなる。また、t/4位置の温度(計算値)に比べて鋼板表面の温度(実測値)は、鋼材の厚みが150mmの場合には約30〜40℃低くなり、鋼材の厚みが100mmの場合には約25〜30℃低くなる。従って上記粗圧延を行なう温度は、こうした温度差を考慮して、鋼板表面の温度(実測値)やt/4位置における温度(計算値)を基準として用いて温度管理しても構わない。
オーステナイトの再結晶温度域で累積圧下率を50%以上として粗圧延した後には、直ちに強制水冷し、オーステナイト未再結晶温度域まで冷却することが好ましい。オーステナイトの再結晶温度域で圧延して結晶粒を微細化しても、そのまま放置(或いは空冷)すると温度のエネルギーによってオーステナイト粒が成長し、オーステナイト組織が粗大化するからである。
粗圧延終了後、水冷を開始するまでの時間はできるだけ短くするのがよく、例えば60秒以内とする。なお、水冷を開始するまでの時間を短くすることで生産性も向上する。
オーステナイト未再結晶温度域まで冷却した後には、当該オーステナイト未再結晶温度域において真ひずみを0.5以上として仕上げ圧延することが推奨される。オーステナイト未再結晶温度域で仕上げ圧延することで、フェライト粒を一層微細化できるからである。即ち、オーステナイト再結晶温度域で圧延して得られる金属組織は、平均粒径が約25〜30μmのオーステナイト組織であるため、この鋼材をそのまま空冷するか、或いは強制冷却しても得られるフェライト粒の平均円相当粒径はせいぜい25μm程度にしかならない。そのためCTOD特性は充分に改善できない。これに対し、オーステナイト未再結晶温度域で仕上げ圧延してやれば、フェライト粒にひずみが導入されるため、フェライト粒を一段と微細化できる。
この仕上げ圧延では、真ひずみ量を0.5以上として圧延するのがよい。真ひずみ量が0.5未満では、フェライト粒の微細化が不充分になることがあり、CTOD特性を充分に改善できないことがある。真ひずみ量は多くするほど好ましく、多くすればフェライト粒を小さくできる。
なお、上記オーステナイト未再結晶温度域とは、鋼材を圧延してもオーステナイト組織が再結晶しない温度域である。この温度域は鋼材の化学成分組成によって多少変化するが、本発明では、鋼片のt/2位置における温度が850℃以下の領域で導入する真ひずみ量を0.5以上として仕上げ圧延する。但し、仕上げ圧延の温度域が低くなり過ぎると、フェライト粒の扁平率(即ち、アスペクト比)が著しく大きくなり易いため、CTOD特性が劣化する傾向がある。従って仕上げ圧延終了温度は、「Ar3変態点+40℃」以上とするのがよい。Ar3変態点の温度は、鋼材に含まれる化学成分の含有量に基づいて下記(b)式で算出できる。
Ar3変態点(℃)=868−369×[C]+24.6×[Si]−68.1×[Mn]−36.1×[Ni]−20.7×[Cu]−24.8×[Cr]+29.6×[Mo]+190×[V] …(b)
但し、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。
従って上記真ひずみ量は、鋼片のt/2位置における温度(計算値)が、850℃での鋼片厚みをt、仕上げ圧延終了温度での鋼片厚みをtとしたとき、下記(c)式で算出できる。
真ひずみ=ln(t/t) …(c)
但し、仕上げ圧延開始温度が850℃を超える場合には、鋼片のt/2位置における温度が850℃での鋼片厚みをtとし、仕上げ圧延開始温度が850℃を下回る場合には、仕上げ圧延開始時における鋼片厚みをtとして上記真ひずみを算出する。一方、仕上げ圧延終了温度が「Ar3変態点+40℃」より下回る場合には、「Ar3変態点+40℃」での鋼片厚みをtとし、仕上げ圧延終了温度が「Ar3変態点+40℃」に達しない場合(「Ar3変態点+40℃」超の場合)には、仕上げ圧延終了時における鋼片厚みをtとして上記真ひずみを算出する。
上記仕上げ圧延するときの温度は、鋼片の厚みをt(mm)としたとき、プロセスコンピュータを用いてt/2位置とt/4位置における温度を夫々計算して算出した両方の温度を基準とする。どちらか一方の位置のみの温度を管理すると、管理していない位置の金属組織を適切に制御できないことがあるからである。
但し、鋼材の厚みが10〜30mm程度の場合には、鋼板内部の温度(t/4位置やt/2位置における温度)と鋼板の表面温度との温度差はせいぜい10〜15℃程度であるため、こうした温度差を考慮して、鋼板の表面温度(実測値)を基準として管理しても差し支えない(例えば、「850℃−温度差」、「Ar3変態点+40℃−温度差」)。
なお、鋼材の表面温度で管理する場合には、水冷直後に圧延を開始すると、鋼材の表面と中心部の温度差が大きいため、フェライト粒の円相当径やアスペクト比を厳密に制御することが困難となる。従ってこの場合には、水冷後、60秒以上経過した後に圧延を開始することが望ましい。60秒以上放置することで、鋼板の表面と内部(即ち、t/4位置やt/2位置)の温度差が小さくなるため、鋼材の表面温度で管理しても鋼材の金属組織を適切に制御することができるからである。即ち、60秒以上放置すれば、鋼材の厚みが100mmの場合は、鋼材の表面温度(実測値)とt/2位置における温度(計算値)との温度差は約40℃程度となり、鋼材の表面温度(実測値)とt/4位置における温度(計算値)との温度差は約25℃程度となる。また、鋼材の厚みが60mmの場合は、鋼材の表面温度(実測値)とt/2位置における温度(計算値)との温度差は約30℃程度、鋼材の表面温度(実測値)とt/4位置における温度(計算値)との温度差は約20℃程度となる。
仕上げ圧延終了後は、常法に従って冷却すればよい。冷却方法は特に限定されず、空冷してもよいし、強制冷却してもよい。このときの冷却速度も特に限定されないが、4℃/秒以下程度であれば、フェライト粒の大きさに影響を及ぼさないことを本発明者らは確認している。
本発明の造船用鋼材は、基本的には塗装を施さなくても鋼材自体が優れた耐食性を発揮するものであるが、必要によって、後記実施例に示すタールエポキシ樹脂塗料、或はそれ以外の代表される重防食塗装、ジンクリッチペイント、ショッププライマー、電気防食などの他の防食方法と併用することも可能である。こうした防食塗装を施した場合には、後記実施例に示すように塗装膜自体の耐食性(塗装耐食性)も良好なものとなる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含されるものである。
下記表1−1または表1−2に示す化学成分組成の鋼(残部はFeおよび不可避不純物)を転炉で溶製し、連続鋳造してスラブを得た。得られたスラブを後述する条件で熱間圧延して各種鋼板を製作した。なお、表1−1および表1−2には、鋼板に含まれるCoとMoの含有量の比の値([Co]/[Mg]:質量比)を算出し、併せて示した。また、鋼板に含まれる化学成分の含有量に基づいて、上記(b)式からAr3変態点の温度を算出し、その値も併せて示した。
得られたスラブは、下記表2−1または表2−2に示す温度に加熱した後、下記表2−1または表2−2に示す条件で粗圧延した。表2−1または表2−2には、粗圧延開始温度(t/2位置)と粗圧延終了温度(t/2位置)を示した。また、参考値として、鋼板の表面温度とt/4位置における温度も併せて示した。なお、表面温度は圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて測定した実測値、t/4位置の温度とt/2位置の温度は、プロセスコンピュータを用いて算出された計算値である。
また、表2−1と表2−2には、粗圧延終了時の厚みを示すと共に、t/2位置における温度(計算値)が1000〜900℃の範囲での累積圧下率を上記(a)式を用いて算出した結果を示す。
なお、累積圧下率を算出するに当っては、tには、粗圧延開始時におけるt/2位置の温度が、1000℃より下回る場合は粗圧延開始時における板厚、1000℃以上の場合は1000℃における板厚をそれぞれ代入し、tには、粗圧延終了時におけるt/2位置の温度が、900℃以下の場合は900℃における板厚、900℃より高温の場合は粗圧延終了時における板厚を夫々代入して算出した。
粗圧延終了後、表3−1または表3−2に示す方法で冷却し、次いで仕上げ圧延を行なった。表3−1と表3−2に、粗圧延終了時から冷却開始までの時間を示す。また、冷却終了時(水冷していない場合は、粗圧延終了時)から仕上げ圧延開始までの時間も併せて示した。
仕上げ圧延の条件としては、仕上げ圧延開始時の厚み、仕上げ圧延開始温度(t/4位置)、仕上げ圧延終了温度(t/4位置)を夫々表3−1と表3−2に示した。また、参考値として、鋼板の表面温度とt/2位置における温度も併せて示した。また、t/2位置における温度(計算値)が850℃以下となり、仕上げ圧延が終了するまでの温度範囲に導入した真ひずみ量を併せて示した。
仕上げ圧延終了後は、表4−1または表4−2に示す条件で冷却した。なお、表4−1または表4−2に示した冷却速度は、冷却開始温度から500℃までの平均値である。
熱間圧延中における鋼片のt/4位置における温度とt/2位置における温度は、下記の手順で管理した。
1.プロセスコンピュータを用い、加熱開始から加熱終了までの雰囲気温度や在炉時間に基づいて鋼片の表面から裏面までの任意の位置(例えば、t/4位置やt/2位置)の加熱温度を算出する。
2.算出した加熱温度を用い、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)のデータに基づいて、板厚方向の任意の位置における圧延温度を計算しつつ圧延を実施する。
3.鋼板の表面温度は圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて実測する。但し、プロセスコンピュータでも理論値を計算しておく。
4.粗圧延開始時、粗圧延終了時、仕上圧延開始時にそれぞれ実測した鋼板の表面温度を、プロセスコンピュータから算出される計算温度と照合する。
5.計算温度と実測温度の差が±30℃以上の場合は、計算表面温度が実測温度と一致するように再計算してプロセスコンピュータ上の計算温度とし、±30℃未満の場合は、プロセスコンピュータから算出された計算温度をそのまま用いる。
6.次に、この温度を用い、制御対象としている領域の圧延温度を管理する。
得られた鋼板について下記手順でフェライト粒の平均円相当径と平均アスペクト比を算出した。結果を下記表4−1と表4−2に示す。
[円相当径とアスペクト比の測定手順]
鋼板のおもて面と裏面を含むと共に、圧延方向に平行で且つ鋼材表面(鋼材のおもて面)に対して垂直な面が露出するようにサンプルを切り出し、この露出面を研磨して鏡面仕上げした。露出面の研磨には#150〜#1000までの湿式エメリー研磨紙を用いて研磨した後、研磨剤としてダイヤモンドスラリー用いて鏡面仕上げした。
鏡面仕上げしたサンプルは3%ナイタール溶液を用いて腐食し、フェライト組織の結晶粒界を現出させた後、倍率を100倍または400倍で撮影し、6cm×8cmの写真とした(即ち、100倍では600μm×800μm、400倍では150μm×200μmに相当する)。写真の6cmの辺は板厚方向に対応し、8cmの辺は圧延方向に対応している。これをいずれの倍率においても領域が1mm×1mm以上に相当するように画像解析装置に取り込んだ。
次に、画像解析装置において、粒界に囲まれたフェライト粒の領域(面積)を同等の面積を有する円に換算し、換算された円の直径をフェライト粒の円相当径と定義して円相当径を測定した。これを全ての観察視野について測定し、結果を平均することで平均円相当径を算出した。
一方、フェライト粒のアスペクト比については、上記粒界に囲まれたフェライト粒について、圧延方向の粒径Dlと板厚方向の粒径Dtを測定し、DlとDtの比(Dl/Dt)をアスペクト比として算出した。これを全ての観察視野について行い、結果を平均することで平均アスペクト比を算出した。
なお、フェライト粒の円相当径とアスペクト比の測定位置は、鋼材の厚みをt(mm)としたとき、t/2位置とt/4位置とした。また、倍率が100倍の場合は、観察視野数を少なくとも6枚とし、400倍の場合は、観察視野数を少なくとも35枚とした。
また、フェライト粒の平均円相当径とアスペクト比を算出する際に、金属組織に占めるフェライト面積率も同時に測定した。結果を下記表4−1と表4−2に併せて示す。
得られた鋼板について下記手順で耐食性と脆性破壊発生特性を調べた。結果は、下記表6−1と表6−2に示した。
<耐食性について>
得られた鋼板を切断および表面研削を行って、最終的に100×100×25(mm)の大きさの試験片を作製した(試験片A)。試験片Aの外観形状を図4に示す。
また、図5に示すように20×20×5(mm)の小試験片4個を、100×100×25(mm)の大試験片(前記試験片Aと同じもの)に接触させて、すきま部を形成した試験片Bを作製した。すきま形成用の小試験片と大試験片とは同じ化学成分組成の鋼材として、表面仕上げも前記試験片Aと同じ表面研削とした。そして小試験片の中心に5mmφの孔を、基材側(大試験片側)にねじ孔を開けて、M4プラスチック製ねじで固定した。
更に、平均厚さ250μmのタールエポキシ樹脂塗装(下塗り:ジンクリッチプライマー)を全面に施した試験片C(図6)も用いた。そして防食のための塗膜に傷が付いて素地の鋼材が露出した場合の腐食進展度合いを調べるために、試験片Cの片面には素地まで達するカット傷(長さ:100mm、幅:約0.5mm)をカッターナイフで形成した。
前記表1に示した各化学成分組成の供試材について、試験片A、試験片Bおよび試験片Cを夫々5個ずつ用い腐食試験に供した。このときの腐食試験方法は次の通りである。
[腐食試験方法]
まず海洋環境を模擬して、海水噴霧試験と恒温恒湿試験の繰り返しによる複合サイクル腐食試験を行った。
海水噴霧試験では、水平から60°の角度で傾けて供試材(各試験片A〜C)を試験槽内に設置し、35℃の人工海水(塩水)を霧状に噴霧させた。塩水の噴霧は常時連続して行った。このとき試験槽内において、水平に設置した面積80cmの円形皿に1時間当たりに1.5±0.3mLの人工海水が任意の位置で採取されるような噴霧量に予め調整した。
恒温恒湿試験では、温度を60℃、湿度を95%に調整した試験槽内に、供試材(各試験片A〜C)を水平から60°の角度で傾けて設置して行った。
海水噴霧試験を4時間と、恒温恒湿試験を4時間を1サイクルとして、これらを交互に行って、供試材を腐食させた。トータルの試験時間は6ヶ月間とした。
(1)試験片Aについては、試験前後の質量変化を平均板厚減少量D−ave(mm)に換算し、試験片5個の平均値を算出して、各供試材の耐全面腐食性を評価した。また、触針式三次元形状測定装置を用いて試験片Aの最大侵食深さD−max(mm)を求め、平均板厚減少量[D−ave(mm)]で規格化して(即ち、D−max/D−aveを算出して)、腐食均一性を評価した。尚、試験後の質量測定および板厚測定は、クエン酸水素二アンモニウム水溶液中での陰極電解法[JIS K8284]により鉄錆等の腐食生成物を除去してから行った。
(2)試験片Bについては、すきま部(接触面)の目視観察を行ってすきま腐食発生の有無を調べ、すきま腐食が認められる場合には、上記陰極電解法により腐食生成物を除去し、触針式三次元形状測定装置を用いて最大すきま腐食深さD−crev(mm)を測定した。
(3)塗装処理を施した試験片C(カット傷付き)については、試験後にカット傷を形成した面における塗膜膨れ面積の比率(膨れ面積率)を測定した。膨れ面積率は格子点法(格子間隔1mm)によって求めた。即ち、膨れの認められた格子点の数を全格子点数で除したものを膨れ面積率と定義して、試験片5個の平均値を求めた。また、カット傷に垂直方向の塗膜膨れ幅をノギスで測定し、試験片5個の最大値を最大膨れ幅と定義した。
上記耐全面腐食性(D−ave)、腐食均一性(D−max/D−ave)、耐すきま腐食性(D−crev)、塗装耐食性(膨れ面積率および最大膨れ幅)の評価基準は下記表5に示す通りである。腐食試験結果を下記表6−1と表6−2に示す。
<脆性破壊発生特性について>
脆性破壊発生特性は、社団法人日本溶接協会(WES)発行のWES1108(1995年2月1日制定)で規定される亀裂先端開口変位試験(CTOD試験)の結果に基づいて評価した。試験片としては、WES1109(1995年制定)のP.6の図6に示されている「標準三点曲げ試験片」を用いた。試験温度は−40℃とし、δc−40℃(mm)を測定した。本発明では、δc−40℃が0.20mm以上の場合を合格とする。
これらの結果から次のように考察できる。CoまたはMgのどちらかを含有しないNo.2,3のもの、CoまたはMgの含有量が本発明で規定する下限値に満たないNo.4、5のものは、CoまたはMgの添加効果によって、従来鋼(No.1)に比べて耐全面腐食性はやや改善している。しかしCoが含有されていないNo.2のものおよびCo量が不足しているNo.4のものでは、腐食均一性と膨れ面積率で改善効果が認められない。またMgが含有されていないNo.3のものおよびMg量が不足しているNo.5のものでは、耐すきま腐食性と最大膨れ幅で改善効果が認められず、船舶用鋼材の耐食性としては不十分である。
これに対して、CoおよびMgを併用して適性量含有させたもの(No.6〜62)はこれらの元素の添加による相乗効果でいずれの耐食性も従来鋼(No.1)より優れており、造船用耐食鋼として好ましいことがわかる。
特に、CoおよびMgの併用に加えて、更にCu,Cr,Ni,Ti,Ca,MoおよびW等の耐食性向上元素を含有させることによって、鋼材の耐食性が更に向上していることが分かる。
このうちCu,Cr,NiまたはTiを添加した供試材では、特に塗装供試材の最大膨れ幅を低減させる効果が認められ(No.15〜20,23〜60等)、これらの元素の錆緻密化がカット部の錆安定化に作用して腐食進展を抑制したものと推察される。
また、Caは耐すきま腐食性を高める効果が認められ(No.21〜22,29〜34,37〜44,47〜48,53〜60等)、Caがすきま内のpH低下抑制を更に強化して腐食を低減したものと考えられる。
更に、MoやWの添加は、腐食均一性や塗装膨れ性の向上に非常に効果のあることが分かる(No.49〜58等)。
ところがCoおよびMgを併用して適性量含有させたもの(No.6〜62)の中でも、t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μmを超えるか、t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0を超える例は、脆性破壊発生特性に劣っている。
これに対し、t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下で、且つt/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下を満足する例は、脆性破壊発生特性にも優れていることが分かる。
図1は、t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径とt/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比とCTOD特性の関係を示すグラフである。 図2は、t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径とt/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比とCTOD特性の関係を示すグラフである。 図3は、金属組織の存在位置と脆性破壊発生特性(δc−40℃)の関係を示すグラフである。 図4は、耐食性試験に用いた試験片Aの外観形状を示す説明図である。 図5は、耐食性試験に用いた試験片Bの外観形状を示す説明図である。 図6は、耐食性試験に用いた試験片Cの外観形状を示す説明図である。

Claims (6)

  1. C :0.01〜0.2%(質量%の意味、以下同じ)、
    Si:0.01〜1%、
    Mn:0.01〜2%、
    Al:0.005〜0.1%を夫々含有する他、
    Co:0.010〜1%および
    Mg:0.0005〜0.02%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材であり、
    該鋼材の圧延方向に平行で且つ鋼材表面に対して垂直な面の金属組織を観察したときに、下記(1)〜(3)を満足することを特徴とする耐食性および脆性破壊発生特性に優れた船舶用鋼材。
    (1)フェライト面積率が75%以上。
    (2)t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下。
    (3)t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下。
    但し、tは鋼材の厚み(mm)を意味する。
  2. 前記Coの含有量[Co]と前記Mgの含有量[Mg]の比の値([Co]/[Mg])が2〜350である請求項1に記載の船舶用鋼材。
  3. 更に他の元素として、
    Cu:1.5%以下(0%を含まない)、
    Cr:1%以下(0%を含まない)、
    Ni:2%以下(0%を含まない)、
    Ti:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1または2に記載の船舶用鋼材。
  4. 更に他の元素として、
    Ca:0.02%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の船舶用鋼材。
  5. 更に他の元素として、
    Mo:0.5%以下(0%を含まない)および/または
    W:0.3%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の船舶用鋼材。
  6. 更に他の元素として、
    B :0.01%以下(0%を含まない)、
    V :0.1%以下(0%を含まない)および
    Nb:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の船舶用鋼材。
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