JP4476926B2 - 大入熱溶接時のhaz靱性および耐食性に優れた船舶用鋼材 - Google Patents
大入熱溶接時のhaz靱性および耐食性に優れた船舶用鋼材 Download PDFInfo
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Cは、材料の強度確保のために必要な元素である。船舶の構造部材としての最低強度、即ち概ね400MPa程度(使用する鋼材の肉厚にもよるが)を得るためには、0.01%以上含有させる必要がある。しかし、0.2%を超えて過剰に含有させると靱性、溶接性が劣化する。こうしたことから、C含有量の範囲は0.01〜0.2%とした。尚、C含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.04%以上とするのが良い。また、C含有量の好ましい上限は0.18%であり、より好ましくは0.16%以下とするのが良い。
Siは脱酸と強度確保のための必要な元素であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。しかし、1%を超えて過剰に含有させると溶接性、HAZ靱性が劣化する。尚、Si含有量の好ましい下限は0.02%である。また、Si含有量の好ましい上限は0.8%であり、より好ましくは0.6%以下とするのが良い。
MnもSiと同様に脱酸および強度確保のために必要であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。しかし、2%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.05%であり、より好ましくは0.10%以上とするのが良い。また、Mn含有量の好ましい上限は1.80%であり、より好ましくは1.60%以下とするのが良い。
AlもSi、Mnと同様に脱酸および強度確保のために必要であり、0.005%に満たないと脱酸に効果がない。しかし、0.1%を超えて添加すると溶接性、HAZ靱性を害するため、Al添加量の範囲は0.005〜0.1%とした。尚、Al含有量の好ましい下限は0.010%であり、より好ましくは0.015%以上とするのが良い。また、Al含有量の好ましい上限は0.090%であり、より好ましくは0.080%以下とするのが良い。
Tiは耐食性向上に大きく寄与する表面錆被膜を緻密化してその環境遮断性を向上させると共に、すきま内部における腐食を抑制して、耐すきま腐食性も向上させる元素である。またTiは窒化物を形成することにより、溶接時におけるHAZでのγ粒の粗大化を防止するピンニング効果も発揮する。こうした耐食性およびHAZ靱性を確保するためには、0.005%以上含有させることが好ましいが、0.03%を超えて過剰に含有させると、固溶Tiが増えすぎて、かえってHAZ靱性が低下し、また加工性や溶接性も劣化させることになる。Tiを含有させるときのより好ましい下限は0.008%であり、より好ましい上限は0.025%である。
NはTiと共にTiNを形成してピンニング効果を発揮することで、HAZ靱性を向上させる。N量が0.003%未満では、TiNの生成量が不充分であり、HAZ靱性の向上効果が小さい。一方、0.015%を超えると、固溶Nが増えすぎて、かえってHAZ靱性が劣化する。Nを含有させるときのより好ましい下限は0.004%であり、より好ましい上限は0.010%である。
Coは、高塩分環境において鋼材の耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆皮膜を形成するのに必要不可欠な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Co含有量は0.010%以上とすることが必要である。しかしながら1%を超えて過剰に含有させると溶接性、HAZ靱性が劣化する。こうしたことからCo含有量は、0.010〜1%とした。尚、Co含有量の好ましい下限は0.015%であり、より好ましくは0.020%以上とするのが良い。また、Co含有量の好ましい上限は0.8%であり、より好ましくは0.6%以下とするのが良い。
Mgは溶解することによってpH上昇作用を示すことから、鉄の溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して、腐食反応を抑制し、耐食性を向上させる作用を有する。こうした効果を発揮させるためには、Mgは0.0005%以上含有させることが必要であるが、0.02%を超えて含有させると加工性と溶接性を劣化させる。こうしたことから、Mg含有量は0.0005〜0.02%の範囲が適正である。Mg含有量の好ましい下限は0.0007%であり、より好ましくは0.00
10%以上含有させるのが良い。またMg含有量の好ましい上限は0.018%であり、より好ましくは0.015%以下とするのが良い。
Cu、CrおよびNiは、いずれも耐食性向上に有効な元素である。このうちCuおよびCrは、Coと同様に耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆被膜を形成するのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、いずれも0.01%以上含有させることが好ましいが、過剰に含有させると、溶接性、熱間加工性やHAZ靱性が劣化することから、Cu:1.5%以下、Cr:1%以下とすることが好ましい。CuおよびCrの一方または両方を含有させる場合、それぞれのより好ましい下限は0.05%であり、より好ましい上限はCuについては1.0%、Crについては0.8%である。
CaはMgと同様に、溶解することによってpH上昇作用を示し、鉄の溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して腐食反応を抑制し、耐食性向上に有効な元素である。Caによるこうした効果は、好ましくは0.0005%以上含有させることによって有効に発揮されるが、0.02%を超えて過剰に含有させると加工性と溶接性とを劣化させることになる。Caを含有させるときのより好ましい下限は0.0010%であり、より好ましい上限は0.015%である。
MoおよびWは、腐食の均一性を高めて局部腐食による穴あきを抑制する作用がある。特にCoと同時に含有させることによって、顕著な均一腐食性向上作用が発揮される。こうした効果を発揮させるためには、いずれも0.01%以上含有させることが好ましいが、過剰に含有させると溶接性、HAZ靱性が劣化し、さらに大幅なコストアップにつながることから、Moについて0.5%以下、Wについては0.3%以下とすることが好ましい。
MoおよびWの一方または両方を含有させる場合、それぞれのより好ましい下限は0.02%であり、より好ましい上限はMoについては0.3%、Wについては0.2%である。
船舶用鋼材では、適用する部位によってはより高強度化が必要な場合があるが、これらの元素は強度向上に必要な元素である。このうちBは、好ましくは0.0001%以上含有させることによって焼入性が向上して強度向上に有効であるが、0.01%を超えて過剰に含有させると母材靭性、HAZ靱性が劣化するため好ましくない。Vは、好ましくは0.003%以上含有させることによって強度向上に有効であるが、0.1%を超えて過剰に含有させると鋼材の靭性およびHAZ靱性の劣化を招くことになるので好ましくない。Nbは、好ましくは0.003%以上含有させることによって強度向上に有効であるが、0.05%を超えて過剰に含有させると鋼材の靭性およびHAZ靱性の劣化を招くことになる。尚、これらの元素のより好ましい下限は、Bについては0.0003%、Vについては0.005%、Nbについては0.005%である。またより好ましい上限はBについては0.0090%、Vについては0.07%、Nbについては0.03%である。
以下の表1に示す化学成分組成の鋼を通常の溶製法により溶製した後、溶鋼を連続鋳造機で直接スラブにし、これを熱間圧延に供して鋼板を製造した。この際、1500℃から1000℃までの冷却速度(表4中で「冷却速度」と記載)を変えて溶鋼を凝固させることにより、単位面積あたりのTiN系介在物の個数(表4中で「TiN系介在物」と記載)を変化させた。この冷却速度は、連続鋳造機の冷却水量や冷却方法を変えることにより調整した。このようにして得た鋼板を切断および表面研削して、以下の耐食性および溶接性評価のための試験片を作成した。
上記のようにして得た鋼板から、100×100×25(mm)の大きさの試験片を作製した(試験片A)。試験片Aの外観形状を図1に示す。
まず海洋環境を模擬して、海水噴霧試験と恒温恒湿試験の繰り返しによる複合サイクル腐食試験を行った。海水噴霧試験では、水平から60°の角度で傾けて供試材(各試験片A〜C)を試験槽内に設置し、35℃の人工海水(塩水)を霧状に噴霧させた。塩水の噴霧は常時連続して行った。このとき試験槽内において、水平に設置した面積80cm2の
円形皿に1時間当たりに1.5±0.3mlの人工海水が任意の位置で採取されるような
噴霧量に予め調整した。恒温恒湿試験は、温度:60℃、湿度:95%に調整した試験槽内に、供試材を水平から60°の角度で傾けて設置して行った。海水噴霧試験:4時間、恒温恒湿試験:4時間を1サイクルとして、これらを交互に行って、供試材を腐食させた。トータルの試験時間は6ヶ月間とした。
上記のようにして得た鋼板から、50(mm)の厚みの試験片Dを作成した。この試験片の単位面積あたりのTiN系介在物の個数を以下のようにして計測し、またHAZ靱性を評価するため、溶接性試験に供した。
試験片DをTEMおよびTEMに付属するEDXで観察することにより、TiN系介在物の個数を計測した。具体的には観察倍率6万倍および観察視野1.5μm×1.5μmでのTEMにより、試験片の表面から深さ方向へt/4(表面から12.5mm)の位置を観察し、その位置で存在する介在物の中で、EDXによりTiおよびNを0.3%以上含有するTiN系介在物を確認し、その個数を測定して、単位面積(mm2)あたりの個数を計算して求め、5つの計測箇所からTiN系介在物の個数の平均値を求めた。結果を表4に示す。
試験片Dを、1400℃に加熱して50秒保持した後、800℃から500℃までを400秒で冷却する熱サイクルに供した後(入熱60kJ/mmでの溶接に相当)、JIS4号試験片を3本採取した。このJIS4号試験を用いて、−40℃でのVシャルピー衝撃試験を行い、3本の吸収エネルギー(vE-40)の平均値を求めた。結果を表4に示す。この溶接性試験では、vE-40が55J以上のものがHAZ靱性に優れると評価した。
Claims (6)
- C:0.01〜0.2%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.01〜1%、Mn:0.01〜2%、Al:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.03%、N:0.003〜0.015%を夫々含有する他、Co:0.010〜1%およびMg:0.0005〜0.02%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
単位面積あたりのTiN系介在物の個数が、1.0×108(個/mm2)以上であることを特徴とする耐食性および大入熱溶接時のHAZ靱性に優れた船舶用鋼材。 - Coの含有量[Co]とMgの含有量[Mg]の比の値([Co]/[Mg])が2〜350である請求項1に記載の船舶用鋼材。
- 更に、Cu:1.5%以下(0%を含まない)、Cr:1%以下(0%を含まない)、Ni:2%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1または2に記載の船舶用鋼材。
- 更に、Ca:0.02%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の船舶用鋼材。
- 更に、Mo:0.5%以下(0%を含まない)および/またはW:0.3%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の船舶用鋼材。
- 更に、B:0.01%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の船舶用鋼材。
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