JP4786995B2 - 溶接性および耐食性に優れた船舶用鋼材 - Google Patents

溶接性および耐食性に優れた船舶用鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、原油タンカー、貨物船、貨客船、客船、軍艦等の船舶において、主要な構造材として用いられる船舶用耐食鋼に関するものであり、特に溶接性に優れると共に海水による塩分や恒温多湿に曝される環境下における耐食性に優れ、しかも石油系液体燃料タンクの素材として要求される耐食性および溶接性にも優れた船舶用鋼材に関するものである。
上記各種船舶において主要な構造材(例えば、外板、バラストタンク、原油タンク等)として用いられている鋼材は、海水による塩分や恒温多湿に曝されることから腐食損傷を受けることが多い。こうした腐食は、浸水や沈没などの海難事故を招く恐れがあることから、鋼材には何らかの防食手段を施す必要がある。これまで行われている防食手段としては、(a)塗装や(b)電気防食等が従来からよく知られている。
このうち重塗装に代表される塗装では、塗膜欠陥が存在する可能性が高く、製造工程における衝突等によって塗膜に傷が付く場合もあるため、素地鋼材が露出してしまうことが多い。このような鋼材露出部においては、局部的にかつ集中的に鋼材が腐食してしまい、内容されている石油系液体燃料の早期漏洩に繋がることになる。
一方、電気防食においては、海水中に完全に浸漬された部位に対しては、非常に有効であるが、大気中で海水飛沫を受ける部位などでは防食に必要な電気回路が形成されず、防食効果が十分に発揮されないことがある。また、防食用の流電陽極が異常消耗や脱落して消失した場合には、直ちに激しい腐食が進行することがある。
上記技術の他、鋼材自体の耐食性を向上させるものとして例えば特許文献1のような技術も提案されている。この技術では、鋼材の化学成分を適切に調整することによって、耐食性を優れたものとし、無塗装であっても使用できる造船用耐食鋼が開示されている。また特許文献2には、鋼材の化学成分組成を適切なものとすることによって、塗膜寿命性を向上させた船舶用鋼材について開示されている。これらの技術では、従来に比べてある程度の耐食性は確保できるようになったといえる。
しかしながら、より厳しい腐食環境下での耐食性については依然として十分なものとはいえず、更なる耐食性向上が要求されることになる。特に、異物と鋼材との接触部分、構造的な理由や防食塗膜の損傷部分等で形成される「すきま」部分における腐食(いわゆるすきま腐食)が顕著になり、寿命を低下させる場合があるが、これまで提案されている技術ではこうした部分における耐食性が不十分である。
ところで、原油タンカーのタンク(石油系液体燃料タンク)における腐食は、鋼板表面に形成されるオイルコートの欠陥部分で顕著に進行し、この欠陥部分は運航時の原油の移動や船体の変形等のよって修復されたり、新たに形成されたりすると考えられる。このために、腐食箇所はある1箇所に集中することなく、鋼材のほぼ全面に亘って発生する。従って、石油系液体燃料タンクの素材として用いられる鋼材については、局部腐食が全面に進展する特殊な腐食環境での耐食性が良好であることが要求されることになる。また、こうした石油系液体燃料タンクにおいても上記のような「すきま腐食」が顕著に生じ、タンク寿命を低下させることがあることから、耐すきま腐食性にも優れていることが要求される。
上記のような石油系液体燃料タンクの素材として、その耐食性を向上させたものとして、例えば特許文献3のような技術も提案されている。この技術では、化学成分組成を適切に調整することによって、液体燃料を貯蔵するタンクの素材として有用な耐食鋼が提案されている。この技術においては、全面腐食と共に「すきま腐食」のような局部腐食についても考慮されたものであり、その耐食性は向上したものといえる。しかしながら、こうした鋼材においても近年の要求に耐え得るだけの耐食性を具備したものとはいえない。
また、石油系液体燃料タンクの素材として用いられる鋼材としては、溶接熱影響部(HAZ)靭性に代表される溶接性も良好であることが必要であるが、これまで提案されている技術では、必ずしも良好な溶接性が達成されているとはいえないのが実情である。
特開2000−17381号公報 特許請求の範囲等 特開2002−266052号公報 特許請求の範囲等 特開2001−214236号公報 特許請求の範囲等
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、溶接性に優れると共に、塗装や電気防食を施さなくても実用化できる耐食性に優れた造船舶用鋼材、特にすきま腐食に対する耐久性の向上を図ると共に、海水に起因する塩分付着と湿潤環境による腐食に対しても優れた耐久性を発揮し、しかも石油系液体燃料タンクに適用したときにおいても優れた溶接性および耐食性を発揮することのできる船舶用鋼材を提供することにある。
上記目的を達成することのできた本発明の船舶用鋼材とは、C:0.01〜0.30%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜2.0%、Al:0.005〜0.10%およびSe:0.005〜0.050%を含有する共に、S:0.030%以下(0%を含む)に抑制したものであり、且つ下記(1)式の関係を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものである点に要旨を有するものである。
[S]+[Se]×(32/79)≦0.030(%) …(1)
但し、[S]および[Se]は、夫々SおよびSeの含有量(質量%)を示す。
また本発明の造船用鋼材においては、必要によって、(a)Ca:0.0005〜0.0040%、(b)Cu:0.01〜5.0%、Cr:0.01〜5.0%、Co:0.01〜5.0%、Ni:0.01〜5.0%およびTi:0.005〜0.20%よりなる群から選ばれる1種以上、(c)La:0.0005〜0.15%、Ce:0.0005〜0.15%およびMg:0.0005〜0.015%よりなる群から選ばれる1種以上、(d)Mo:0.01〜5.0%、(e)Sb:0.01〜0.5%、As:0.01〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%、Bi:0.01〜0.5%およびTe:0.01〜0.5%よりなる群から選ばれる1種以上、(f)B:0.0001〜0.010%、V:0.01〜0.50%およびNb:0.003〜0.50%よりなる群から選ばれる1種以上、等を含有させることも有効であり、含有させる成分の種類に応じて船舶用鋼材の特性が更に改善されることになる。
本発明の船舶用鋼材は、石油系液体燃料タンクの素材として用いられたときであっても、その腐食環境下において優れた耐食性を発揮すると共に溶接性も良好なものとなる。
本発明の船舶用鋼材においては、Seの含有量をSとの関係で適切に制御しつつ含有させると共に、化学成分組成を適切に調整することによって、Se含有による溶接性低下を防止できると共に、塗装および電気防食を施さなくても実用化できる耐食性に優れた船舶用鋼材が実現でき、特にすきま腐食に対する耐久性の向上を図ると共に、海水に起因する塩分付着と湿潤環境による腐食に対しても優れた耐久性を発揮する船舶用鋼材が実現でき、しかも石油系液体燃料タンクの素材として用いられたときであっても、その腐食環境下においても優れた耐食性を発揮するものとなる。こうした船舶用鋼材は、原油タンカー、貨物船、貨客船、客船、軍艦等の船舶における外板としてばかりでなく、バラストタンク、原油タンク等の素材として有用である。
本発明者らは、耐食性に優れた船舶用鋼材の実現を目指してかねてより研究を重ねてきた。その研究の一環として、所定量のSeを含有させると共に、化学成分組成を適切に調整すれば、特にすきま腐食に対する耐久性の向上を図ると共に、海水に起因する塩分付着と湿潤環境による腐食に対しても優れた耐久性を発揮する船舶用鋼材が実現できることを見出し、その技術的意義が認められたので先に出願している(特願平2004−191759号)。しかしながら、Seはその含有量によっては、HAZ靭性が劣化することが判明したのである。
HAZ靭性を支配する因子としては、破壊の伝播エネルギーの大小や破壊の発生起点等が考えられる。このうち、破壊の伝播エネルギーはHAZの組織が、および破壊の発生起点はHAZ中の島状マルテンサイトや介在物の存在が夫々関与するものと考えられる。本発明で対象とする船舶用鋼材では、低炭素鋼を基本とし、しかも炭酸ガスアーク溶接法やサブマージアーク溶接法を適用するものであるので、HAZ組織はフェライト+パーライトで且つフェライト粒径が100〜200μmであるので、HAZ靭性に対する影響はそれほどないものと考えられる。また、島状マルテンサイトに関しても、上記条件の下では殆ど発生しないものとなる。
こうしたことから、HAZ靭性に最も影響を与える因子としては、鋼中の介在物があり、特にMnSの存在が影響を及ぼすことになると考えられた。また、耐食性の改善のためにSeを含有させた場合には、Mn−S−Se系の介在物が生成しやすく、これがHAZ靭性に大きく影響を及ぼすことになる。
そこで、本発明者らは良好なHAZ靭性を維持しつつ優れた耐食性を発揮することのできる船舶用鋼材の実現を目指してされに検討を重ねた。その結果、SとSeの含有量を適切に制御すると共に、これらが所定の関係式[前記(1)式の関係]を満足するように制御してやれば、HAZ靭性に影響を及ぼす介在物の低減が図れ、上記課題を解決することのできる造船用鋼材が実現できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の鋼材では、その鋼材としての基本的特性を満足させるために、C,Si,Mn,Al等の基本成分も適切に調整する必要がある。これらの成分の範囲限定理由について、上記Se、Sによる作用効果と共に、次に示す。
C:0.01〜0.30%
Cは、材料の強度確保のために必要な元素である。船舶の構造部材としての最低強度、即ち概ね400MPa程度(使用する鋼材の肉厚にもよるが)を得るためには、0.01%以上含有させる必要がある。しかし、0.30%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。こうしたことから、C含有量の範囲は0.01〜0.30%とした。尚、C含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.04%以上とするのが良い。また、C含有量の好ましい上限は0.28%であり、より好ましくは0.26%以下とするのが良い。
Si:0.01〜2.0%
Siは脱酸と強度確保のための必要な元素であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。しかし、2.0%を超えて過剰に含有させると溶接性が劣化する。尚、Si含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.05%以上とするのが良い。また、Si含有量の好ましい上限は1.80%であり、より好ましくは1.60%以下とするのが良い。
Mn:0.01〜2.0%
MnもSiと同様に脱酸および強度確保のために必要であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。しかし、2.0%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.05%であり、より好ましくは0.10%以上とするのが良い。また、Mn含有量の好ましい上限は1.80%であり、より好ましくは1.60%以下とするのが良い。
Al:0.005〜0.10%
AlもSi、Mnと同様に脱酸および強度確保のために必要であり、0.005%に満たないと脱酸に効果がない。しかし、0.10%を超えて添加すると溶接性を害するため、Al添加量の範囲は0.005〜0.10%とした。尚、Al含有量の好ましい下限は0.010%であり、より好ましくは0.015%以上とするのが良い。また、Al含有量の好ましい上限は0.040%であり、より好ましくは0.050%以下とするのが良い。
Se:0.005〜0.050%
Seは腐食の溶解反応が起こっているサイトのpH低下を抑制して腐食反応を抑制して耐食性を向上させる作用を発揮するものである。こうしたSeを含有させることによって、局部的なpH変化が起こりにくくなるため、腐食均一性が向上する作用がある。また、物質移動が制限されている局所的はpH低下が起こりやすい「すきま部」においては、上記した理由によってその効果(局部腐食抑制効果)が有効に発揮される。こうした環境で要求される耐食性を確保するためには、Seの含有量は0.005%以上とする必要がある。しかしながら、SeはMnSe系介在物(若しくはMn−S−Se系介在物)を生成してHAZ靭性を劣化させるので、0.050%を超えて過剰に含有させると溶接性が劣化する。また、加工性も劣化することになる。したことからSe含有量は、0.005〜0.050%とする必要がある。尚、Se含有量の好ましい下限は0.006%であり、より好ましくは0.008%以上とするのが良い。また、Se含有量の好ましい上限は0.030%であり、より好ましくは0.020%以下とするのが良い。
S:0.030%以下(0%を含む)
Sは溶製段階でMnとの介在物を生成し、圧延でこれが伸展されることになる。この介在物は、基地の靭性が高い鋼板の状態では大きな影響を及ぼさないが、基地の靭性が低下するHAZではこの介在物が起点となって脆性破壊を引き起こすことになる。従って、HAZ靭性を良好に維持するためには、MnSの生成を抑制する成分系にする必要があり、そのためには、S含有量は少なくとも0.030%以下に抑制する必要がある。S含有量は好ましくは、0.025%以下にするのが良い。
[S]+[Se]×(32/79)≦0.030(%)
SeおよびSの含有量が適切であっても、それらの合計の含有量が所定の量を超えると、Mn−S−Se系介在物となってHAZ靭性を劣化することになるので、上記の関係を満足する必要がある。
本発明の船舶用鋼材における基本成分は上記の通りであり、残部は鉄および不可避的不純物(例えば、P,O等)からなるものであるが、これら以外にも鋼材の特性を阻害しない程度の成分(例えば、Zr,N等)も許容できる。但し、これら許容成分は、その量が過剰になると靭性が劣化するので、0.1%程度以下に抑えるべきである。
また、本発明の船舶用鋼材には、上記成分の他必要によって、(a)Ca:0.0005〜0.0040%、(b)Cu:0.01〜5.0%、Cr:0.01〜5.0%、Co:0.01〜5.0%、Ni:0.01〜5.0%およびTi:0.005〜0.20%よりなる群から選ばれる1種以上、(c)La:0.0005〜0.15%、Ce:0.0005〜0.15%およびMg:0.0005〜0.015%よりなる群から選ばれる1種以上、(d)Mo:0.01〜5.0%、(e)Sb:0.01〜0.5%、As:0.01〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%、Bi:0.01〜0.5%およびTe:0.01〜0.5%よりなる群から選ばれる1種以上、(f)B:0.0001〜0.010%、V:0.01〜0.50%およびNb:0.003〜0.50%よりなる群から選ばれる1種以上、等を含有させることも有あり、含有させる成分の種類に応じて造船用鋼材の特性が更に改善されることになる。
Ca:0.0005〜0.0040%
Caは介在物の球状化を促進するのに有効な元素であり、介在物が球状化されることによってHA靭性が改善されることになる。こうした効果を発揮させるためには、0.0005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Ca含有量が過剰になると、CaOの介在物を生成し、鋼材の清浄度を低下させるのでので、その含有量は0.0040%以下にすることが好ましい。尚、Ca含有量のより好ましい下限は0.0030%であり、より好ましい上限は0.0035%である。
Cu:0.01〜5.0%、Cr:0.01〜5.0%、Co:0.01〜5.0%、Ni:0.01〜5.0%およびTi:0.005〜0.20%よりなる群から選ばれる1種以上
Cu,Cr,Co,NiおよびTiは、いずれも耐食性向上に有効な元素である。このうちCu,CrおよびCoは、耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆被膜を形成するのに有効な元素である。またCoは、高塩分環境において有効な元素である。これらの元素による効果を発揮させるためには、いずれも0.01%以上含有させることが好ましいが、過剰に含有させると溶接性や熱間加工性が劣化することから、5.0%以下とすることが好ましい。Cu,CrおよびCoを含有させるときのより好ましい下限は0.05%であり、より好ましい上限は4.50%である。
Niは耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆被膜を安定化させるのに有効な元素であり、こうした効果を発揮させるためには0.01%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Ni含有量が過剰になると溶接性や熱間加工性が劣化することから、5.0%以下とすることが好ましい。Niを含有させるときのより好ましい下限は0.05%であり、より好ましい上限は4.50%である。
Tiは耐食性向上に大きく寄与する表面錆被膜を緻密化してその環境遮断性を向上させると共に、すきま内部における腐食を抑制して、耐すきま腐食性も向上させる元素である。こうした環境下で要求される耐食性を確保するためには、0.005%以上含有させることが好ましいが、0.20%を超えて過剰に含有させると加工性と溶接性を劣化させることになる。Tiを含有させるときのより好ましい下限は0.008%であり、より好ましい上限は0.15%である。
La:0.0005〜0.15%、Ce:0.0005〜0.15%およびMg:0.0005〜0.015%よりなる群から選ばれる1種以上
これらの元素は、腐食によって溶解したFeイオンの加水分解によるpH低下を抑制する作用を有しており、またに必要によって含有されるCu等による錆緻密化を促進し、Seによる局所pH低下抑制作用を更に高める働きがある。こうした作用は、これらの元素の1種以上を0.0005%以上含有させることによって有効に発揮される。しかしながら、LaおよびCeについては、0.15%、Mgについては0.015%を超えて過剰に含有させると加工性と溶接性とを劣化させることになる。尚、La,Ceを含有させるときのより好ましい下限は0.0010%であり、より好ましい上限は0.10%である。またMgを含有させるときのより好ましい下限は0.0010%であり、より好ましい上限は0.010%である。
Mo:0.01〜5.0%
Moは、腐食の均一性を高めて局部腐食による穴あきを抑制する作用がある。特にCu,Cr,Co等と同時に含有させることによって、顕著な均一腐食性向上作用が発揮される。こうした効果を発揮させるためには、Moは0.01%以上含有させることが好ましいが、過剰に含有させると溶接性が劣化することから、5.0%以下とすることが好ましい。Moを含有させるときのより好ましい下限は0.02%であり、より好ましい上限は4.50%である。
Sb:0.01〜0.5%、As:0.01〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%、Bi:0.01〜0.5%およびTe:0.01〜0.5%よりなる群から選ばれる1種以上
これらの元素は、Cu等による錆緻密化作用やLa等によるpH低下作用を助長して耐食性を向上させる元素である。こうした作用を発揮させるためには、いずれも0.01%以上含有させることが好ましいは、過剰に含有させると加工性と溶接性が劣化することから、0.5%以下とすることが好ましい。これらの元素を含有させるときのより好ましい下限はいずれも0.02%であり、より好ましい上限は0.40%である。
B:0.0001〜0.010%、V:0.01〜0.50%およびNb:0.003〜0.50%よりなる群から選ばれる1種以上
船舶用鋼材では、適用する部位によってはより高強度化が必要な場合があるが、これらの元素は強度向上に必要な元素である。このうちBは、0.0001%以上含有させることによって焼入性が向上して強度向上に有効であるが、0.010%を超えて過剰に勧誘させると母材靭性が劣化するため好ましくない。Vは、0.01%以上含有させることによって強度向上に有効であるが、0.50%を超えて過剰に含有させると鋼材の靭性劣化を招くことになるので好ましくない。Nbは、0.003%以上含有させることによって強度向上に有効であるが、0.50%を超えて過剰に含有させると鋼材の靭性劣化を招くことになる。尚、これらの元素のより好ましい下限は、Bについては0.0003%、Vについては0.02%、Nbについては0.005%である。またより好ましい上限はBについては0.0090%、Vについては0.45%、Nbについては0.45%である。
本発明の船舶用鋼材は、基本的には塗装を施さなくても鋼材自体が優れた耐食性を発揮するものであるが、必要によって、後記実施例に示すタールエポキシ樹脂塗料、或はそれ以外の代表される重防食塗装、ジンクリッチペイント、ショッププライマー、電気防食などの他の防食方法と併用することも可能である。こうした防食塗装を施した場合には、後記実施例に示すように塗装膜自体の耐食性(塗装耐食性)も良好なものとなる。
また本発明の鋼材では、海水に起因する塩分付着と湿潤環境による腐食に対しても優れた耐久性を発揮する船舶用鋼材が実現できるが、石油系液体燃料タンクの素材として用いられたときであっても、その腐食環境下においても優れた耐食性を発揮するものとなる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含されるものである。
実施例1
下記表1、2に示す化学成分組成の鋼材を転炉で溶製し、連続鋳造および熱間圧延により各種鋼板を製作した。得られた鋼板を切断および表面研削を行って、最終的に300×300×25(mm)の大きさの試験片を作製した(試験片A)。試験片Aの外観形状を図1に示す。
Figure 0004786995
Figure 0004786995
また、図2に示すように60×60×5(mm)の小試験片4個を、300×300×25(mm)の大試験片(前記試験片Aと同じもの)に接触させて、すきま部を形成した試験片Bを作製した。すきま形成用の小試験片と大試験片とは同じ化学成分組成の鋼材として、表面仕上げも前記試験片Aと同じ表面研削とした。そして小試験片の中心に10mmφの孔を、基材側(大試験片側)にねじ孔を開けて、M8プラスチック製ねじで固定した。
更に、平均厚さ250μmのタールエポキシ樹脂塗装(下塗り:ジンクリッチプライマー)を全面に施した試験片C(図3)も用いた。そして防食のための塗膜に傷が付いて素地の鋼材が露出した場合の腐食進展度合いを調べるために、試験片Cの片面には素地まで達するカット傷(長さ:100mm、幅:約0.5mm)をカッターナイフで形成した。
前記表1、2に示した各化学成分組成の供試材について、試験片A、試験片Bおよび試験片Cを夫々5個ずつ用い腐食試験に供した。このときの腐食試験方法(実船暴露試験)は次の通りである。
[腐食試験方法]
作製した供試材(各試験片A〜C)を、VLCC原油タンカーの内面の底板、壁面および上甲板裏に取り付けて、5年間の通常運航の後、各供試材の腐食状況を調査した。底板および甲板裏には、試験片AおよびBを5個ずつ、壁面には試験片AおよびCを5個ずつ暴露した。
5年間の暴露後に、試験片Aについては、クエン酸水素二アンモニウム水溶液中での陰極電解法[JIS K8284]により鉄錆等の腐食生成物の除去を行った。また、試験片Bについても、すきま形成用の小試験片を取り外し、同様の方法で腐食生成物の除去を行った。
(1)試験片Aについては、試験前後の重量変化を平均板厚減少量D-ave(mm)に換算し、試験片5個の平均値を算出して、各供試材の全面腐食性を評価した。また、触針式三次元形状測定装置を用いて試験片Aの最大侵食深さD-max(mm)を求め、平均板厚減少量[D-ave(mm)]で規格化して(即ち、D-max/D-aveを算出して)、腐食均一性を評価した。
(2)試験片Bについては、触針式三次元形状測定装置を用いて大試験片側の最大すきま腐食深さD-crev(mm)を測定した。
(3)塗装処理を施した試験片C(カット傷付き)については、カット傷に垂直方向の塗膜膨れ幅(mm))をノギスで測定し、試験片5個の最大値を最大膨れ幅と定義した。
上記耐全面腐食性(平均板減少量:D-ave)、腐食均一性(D-max/D-ave)、耐すきま腐食性(D-crev)、塗装耐食性(最大膨れ幅)の評価基準は下記表3に示す通りである。腐食試験結果を下記表4に示す。
また、各鋼板素地鋼板について、溶接性(HAZ靭性)について、下記の方法によって評価した。その結果を、下記表4に併記する。
[HAZ靭性]
入熱量7KJ/mmの両面サブマージアーク溶接(SAW)を行い(X開先)、HAZ部からシャルピー衝撃試験片(JIS Z 2204 4号)を採取し、0℃における衝撃吸収エネルギーvEを求めた(3回試験)。vEが41J以上を合格とした。
Figure 0004786995
Figure 0004786995
また、これらの結果に基づき、前記(1)式の左辺の値{[S]+[Se]×(32/79)}と衝撃吸収エネルギーvEの関係を図4(表1の成分系1〜3)および図5(表2の成分系4〜6)に示すが、[S]+[Se]×(32/79)の値を適切な範囲に制御することによって、良好なHAZ靭性が確保できていることが分かる。また、これら鋼板(表4のNo.2〜5、7〜26)では、良好な耐食性も発揮するものであり、原油タンク耐食鋼として好適に用いることができるものである。
実施例の耐食性試験に用いた試験片Aの外観形状を示す説明図である。 実施例の耐食性試験に用いた試験片Bの外観形状を示す説明図である。 実施例の耐食性試験に用いた試験片Cの外観形状を示す説明図である。 表1の成分系1〜3における{[S]+[Se]×(32/79)}と衝撃吸収エネルギーvEの関係を示すグラフである。 表2の成分系4〜6における{[S]+[Se]×(32/79)}と衝撃吸収エネルギーvEの関係を示すグラフである。

Claims (4)

  1. C:0.01〜0.30%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜2.0%、Al:0.010〜0.10%およびSe:0.005〜0.050%を含有すると共に、S:0.030%以下(0%を含む)に抑制したものであり、且つ下記(1)式の関係を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものであることを特徴とする溶接性および耐食性に優れた船舶用鋼材。
    [S]+[Se]×(32/79)≦0.030(%) …(1)
    但し、[S]および[Se]は、夫々SおよびSeの含有量(質量%)を示す。
  2. 更に、Ca:0.0005〜0.0040%を含有するものである請求項1に記載の船舶用鋼材。
  3. 更に、Cu:0.01〜5.0%、Cr:0.01〜5.0%、Co:0.01〜5.0%、Ni:0.01〜5.0%およびTi:0.005〜0.20%よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1または2に記載の船舶用鋼材。
  4. 更に、La:0.0005〜0.15%、Ce:0.0005〜0.15%およびMg:0.0005〜0.015%よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の船舶用鋼材。
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