JP2008248354A - 脆性亀裂発生抑制・停止特性および溶接熱影響部の低温靭性に優れた高張力鋼板 - Google Patents

脆性亀裂発生抑制・停止特性および溶接熱影響部の低温靭性に優れた高張力鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】大入熱で溶接を行った場合にもHAZおよび母材の低温靭性に優れると共に、母材(鋼材)の脆性亀裂抑制特性若しくは脆性亀裂停止特性にも優れた高張力鋼板を提供する。
【解決手段】化学成分組成を適切に制御すると共に、厚みt(mm)の鋼板の圧延方向に平行で、鋼板表面に対して垂直な面の金属組織を観察したときに、下記(a)〜(c)を満足するものである。
(a)フェライト面積率が75%以上、
(b)t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下、
(c)t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下。
【選択図】なし

Description

本発明は、主として船舶や橋梁等の素材としての鋼板を溶接するにあたり、熱影響を受ける部位(以下、「溶接熱影響部」または「HAZ」ということがある)の低温靭性と、脆性亀裂の発生を抑制する特性、若しくは発生した脆性亀裂の伝播を停止する特性を改善した高張力鋼板に関するものである。特に低温に曝される用途に使用される場合でも、HAZの靭性および母材(鋼材)の靭性に優れており、しかも良好な脆性亀裂発生抑制・停止特性を発揮する高張力鋼板に関するものである。尚、本発明は、上記鋼材の溶接方法まで限定するものではなく、サブマージアーク溶接、エレクトロガスアーク溶接等に適用できるが、以下では、HAZの靭性確保が困難であるといわれている大入熱の片面サブマージアーク溶接を施す場合を例に説明する。
橋梁や船舶などに使用される鋼板に要求される特性は、近年益々厳しくなっており、とりわけ良好な靭性が求められている。これらの鋼板は、一般的に溶接にて接合されることが多いが、特にHAZは溶接時に熱影響を受けて靭性が劣化しやすいという問題がある。この靭性劣化は溶接時の入熱量が大きくなるほど顕著に現れ、その原因は溶接時の入熱量が大きくなるとHAZの冷却速度が遅くなり、焼入性が低下して粗大な島状マルテンサイトが生成することにあると考えられている。従ってHAZの靭性を改善するには、溶接時の入熱量を極力抑えればよいと考えられるが、溶接作業効率を高める上では、例えばエレクトロガス溶接、エレクトロスラグ溶接、サブマージ溶接などの大入熱溶接法の採用が望まれる。
近年では、海洋構造物やLPG等の液化ガスを貯蔵する低温用タンク等を短期間で製造すべく、例えば入熱量が50〜200kJ/cmにも及ぶ大入熱の片面サブマージアーク溶接施工が広く採用されている。しかし、該溶接は、施工の高能率化を実現できる反面、溶接により形成されるHAZの靭性を安定して確保することが難しく、低入熱による多層溶接を適用して製造しなければならないことも多々ある。従って、上記低温用タンク等の製造に、高能率施工が可能な上記大入熱溶接法が採用され、且つ−60℃程度の低温であっても、HAZの靭性に優れている鋼板が求められている。
これまでにも、上記HAZの低温靭性を改善すべく種々の方法が提案されている。例えば特許文献1、特許文献2には、TiN、Alオキサイド等のピン止め粒子によりオーステナイト粒の粗大化を抑制することでHAZ靭性を改善する方法が提案されている。また、特許文献3、特許文献4には、オーステナイト粒内にフェライト変態核を多数存在させることにより結晶粒の微細化を図る技術が示されている。具体的には、TiN、MnS、BN、Tiオキサイド等をフェライト変態核として利用することにより結晶粒の微細化を達成し、HAZの低温靭性の改善を図っている。
しかし上記いずれの方法においても、大入熱の片面サブマージアーク溶接を行った場合には、TiN等の析出物がかなり固溶し、その後の結晶粒粗大化等を抑制することが難しいことから、−60℃程度での低温で優れたHAZの靭性(以下、「HAZの低温靭性」、または単に「HAZ靭性」ということがある)を確保するには、更なる改善が必要であると思われる。
一方、構造物としての安全性を確保するには、鋼材内で脆性破壊による亀裂が発生するのを抑制すること[以下、「脆性亀裂抑制特性」またはCTOD(Crack−Tip Opening Displacement)特性ということがある]が望まれる。脆性亀裂が発生すれば構造物自体が破壊するからである。ところが脆性亀裂の発生を抑制しつつ(以下、こうした特性を「脆性亀裂発生抑制特性」ということがある)、大入熱溶接時のHAZ靭性を向上させた高張力鋼板は今まで知られていない。
また脆性亀裂が発生しても脆性亀裂の伝播を停止させ、脆性亀裂の伝播領域を最小限に抑えること(以下、「脆性亀裂停止特性」ということがある)も重要な要件である。発生した脆性亀裂が広範囲に亘って伝播すれば、構造物自体の破壊につながるからである。ところが発生した脆性亀裂の伝播を抑制しつつ、大入熱溶接時のHAZ靭性を向上させた高張力鋼板についても今まで知られていない。
こうしたことから、大入熱溶接後のHAZ靭性と、脆性亀裂発生抑制特性若しくは脆性亀裂停止特性に優れた鋼板の実現が望まれているのが実情である。
特公昭55−026164号公報 特許第2950076号公報 特公平07−068577号公報 特公平05−017300号公報
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、大入熱で溶接を行った場合にもHAZおよび母材の低温靭性に優れると共に、母材(鋼板)の脆性亀裂発生抑制特性若しくは脆性亀裂停止特性にも優れた高張力鋼板を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の高張力鋼板とは、C:0.03〜0.09%(「質量%」の意味、以下同じ)、Si:0.01〜0.25%、Mn:1.20〜1.60%、P:0.010%以下(0%を含まない)、S:0.003%以下(0%を含まない)、Al:0.02〜0.04%、Nb:0.005〜0.016%、B:0.0006〜0.0020%、N:0.0045〜0.0090%、Ti:0.008〜0.020%を夫々含有すると共に、下記式(1)を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、且つ厚みt(mm)の鋼板の圧延方向に平行で、鋼板表面に対して垂直な面の金属組織を観察したときに、下記(a)〜(c)を満足する点に要旨を有するものであり、こうした要件を満足させることによって溶接熱影響部の低温靭性と共に脆性亀裂発生抑制特性も優れた高張力鋼板が実現できる。
(a)フェライト面積率が75%以上、
(b)t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下、
(c)t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が1.6以下。
−20≦(B−NT/1.3)≦10 …(1)
{式中、BはB含有量(質量ppm)を示す。
またNTは、
N(N含有量、単位:質量ppm)とTi(Ti含有量、単位:質量ppm)の関係が、
(N−Ti/3.4)≧0である場合には、NT=(N−Ti/3.4)、
(N−Ti/3.4)<0である場合には、NT=0を示す}
上記目的を達成し得る本発明の高張力鋼板の他の構成は、上記のような化学成分組成を満足し[前記式(1)の要件も満足する]、且つ厚みt(mm)の鋼材の金属組織を観察したときに、鋼板表面からt/100位置までの領域におけるフェライト粒の平均粒径が25μm以下である点に要旨を有するものであり、こうした要件を満足させることによって溶接熱影響部の低温靭性と共に脆性亀裂停止特性をも優れた高張力鋼板が実現できる。
本発明の鋼材には、必要によって、更に、Cu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.8%以下(0%を含まない)、およびV:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を、下記式(2)を満たすように含んでいてもよく、更にはCa:0.003%以下(0%を含まない)を含んでいてもよい。
(Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4 …(2)
{式中、Cu、Ni、Nb、Vは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
本発明によれば、鋼板に大入熱の溶接を施した場合でも、HAZは約−60℃で優れた靭性を示すことから、海洋構造物やLPG等の液化ガスを貯蔵する低温用タンク等の製造に、例えば大入熱の片面サブマージアーク溶接法を採用でき、上記海洋構造物等をより短期間で製造することができ、しかも脆性亀裂発生抑制・停止特性にも優れるので構造部材の安全性を高めることができる。
本発明者は、大入熱の溶接を施した場合に、特にHAZの低温靭性に優れる高張力鋼板を得るべく鋭意研究を行った。
その結果、
(i)Cを0.09%以下、Siを0.25%以下と比較的低めに設定した上で、規定量のB、NおよびTiのバランスを最適化し、且つ一定量のNbを添加すれば、オーステナイト粒界からの粗大なフェライト(以下、単に「粒界フェライト」ということがある)の生成が十分に抑制され、オーステナイト粒内の結晶粒微細化を達成できる、
(ii)更には、強度をより高めるべくCu、Ni、Vを添加する場合に、このCu、Ni、VとNbの含有量を総合的に制御すれば、HAZ靭性の劣化を抑制できる、
との着想のもとでその具体的方法を見出した。
まず本発明では、個々の規定量のB、NおよびTiのバランスを最適化して固溶B量の最適化を厳密に図ることにより、オーステナイト粒内の結晶粒を微細化でき、その結果としてHAZの低温靭性を格段に高めることができた点に特徴がある。
図1は、0.06%C−0.20%Si−1.4%Mn−0.03%Al−0.010%Nbを基本成分とし、B、NおよびTiをそれぞれ後述する規定範囲内で変化させ、(B−NT/1.3){BはB含有量(質量ppm)、NTは、N(N含有量、単位:質量ppm)とTi(Ti含有量、単位:質量ppm)の関係が、
(N−Ti/3.4)≧0である場合には、NT=(N−Ti/3.4)、
(N−Ti/3.4)<0である場合には、NT=0を示す。
以下、式(1)についても同じ}
を種々の値とした鋼板を用いて、熱サイクル試験を行い、HAZの低温靭性(vE-60)を後述する実施例の通り測定し、これらの結果を整理したものである。尚、熱サイクル試験は、溶接入熱:60kJ/cm(板厚12mm)を想定して、1400℃×5秒に加熱保持後、800℃から500℃までを150秒で冷却した。
この図1より、HAZの低温靭性として、vE-60:100J以上を達成させるには、下記式(1)に示す通り、(B−NT/1.3)の値が−20ppm以上、10ppm以下の範囲に収まるようにする必要があることが分かる。
−20≦(B−NT/1.3)≦10 …(1)
上記式(1)の通り、B、NおよびTiのバランスを最適化することで、オーステナイト粒内の粒界に存在する固溶Bにより、粒界フェライトの粗大化を抑制し、且つ粒界からのフェライトサイドプレートの生成も抑制するといった効果、およびBNのフェライト変態核としての効果を最大限に発揮し得たものと考えられる。
上記の通りB、NおよびTiのバランスを最適化してHAZの低温靭性を確実に高めると共に、母材(鋼板)の強度等を確保するには、上記B、N、Tiの含有量をそれぞれ所定の範囲内とする必要がある。
本発明の鋼板では、その鋼材としての基本的特性を満足させるために、C、Si、Mn、P、S、Al等の基本成分の他、前記式(1)に関与する成分であるB、N、Ti等も適切に調整する必要があるが、まずB,N,Ti等の範囲限定理由は次の通りである。
[B:0.0006〜0.0020%]
Bは、BNを生成することによりHAZ靭性に有害な固溶Nを固定する上、粒内フェライトの生成を促進する作用を有する。また固溶Bは、粒界フェライトの粗大化およびフェライトサイドプレートの生成を抑制し、オーステナイト粒内の結晶粒を微細化する効果も有する。該作用効果を十分発揮させるには、Bを0.0006%以上含有させる必要がある。一方、Bが多過ぎると、過剰の固溶Bの作用により結晶が一定方向に形成され、HAZ靭性が却って劣化する。よってB含有量は、0.0020%以下に抑える。尚、B含有量の好ましい下限は0.0008%であり、好ましい上限は0.0018%である。
[N:0.0045〜0.0090%]
Nは、TiやAl等の元素と窒化物を形成してHAZ靭性を向上させる元素であるため、0.0045%以上(好ましくは0.0060%以上)含んでいてもよい。尚、固溶Nは、HAZ靭性を劣化させる原因となる。全窒素量の増加により、先述の窒化物は増加するが固溶Nも過剰となるため、本発明ではN含有量を0.0090%以下に抑える。
[Ti:0.008〜0.020%]
Tiは、TiN系析出物を生成して粒内フェライトの生成を促進すると共に、オーステナイト粒の粗大化抑制にも有効な元素である。また、高強度化に寄与する元素でもある。こうした作用を有効に発揮させるには、Tiを0.008%以上含有させる必要があり、好ましくは0.012%以上である。しかし、Tiを過剰に含有させると、却ってHAZ靭性の低下を招くため0.020%以下とする。
本発明では、上記の通り、個々の規定量のB、Ti、Nのバランスを最適化すると共に、一定量のNbを添加する。Nbは、粗大な粒界フェライトの生成を十分に抑制し、オーステナイト粒内の結晶粒微細化を達成させるのに有用な元素である。本発明では、この様な効果を十分発揮させるべくNbを0.005%以上含有させる。しかし過剰に含まれていると、硬質相のMA(Martensite−Austenite constituent)が生成し易く、また結晶が一定方向に形成され、HAZ靭性の劣化を招くので、0.016%以下に抑える。
HAZの低温靭性をより確実に高めるには、更にC、Siを低減させることが有効である。本発明では、硬質相であるMAのHAZにおける生成を抑制し、約−60℃でのHAZ靭性を確保すべく、C量を0.09%以下に抑える。一方、Cは、鋼板の強度確保に必須の元素でもあることから、0.03%以上含有させる。
更に、Siも0.25%以下に低減することにより、MAの生成を十分に抑制でき、HAZの低温靭性を容易に確保することができる。一方、Siは、溶鋼の脱酸に使用されると共に強度向上に有効に作用する元素であるため、0.01%以上含まれていてもよく、好ましくは0.05%以上含有させる。
尚、上記の通りHAZ靭性を確実に高めると共に、母材(鋼板)の強度や靭性等その他の特性を具備させるには、上記以外の成分の含有量を下記範囲内とする必要がある。
[Mn:1.20〜1.60%]
Mnは、SをMnSとして捕捉し、SによるHAZ靭性の劣化を抑制するのに有用な元素である。また、焼入れ性を高めて鋼板の高強度化(高引張強度TS化と高降伏強度YS化)に寄与する元素でもある。こうした作用を有効に発揮させるには、Mnを1.20%以上含有させる必要がある。しかし、Mn含有量が過剰になるとHAZ靭性が却って劣化するため、1.60%以下に抑える。
[P:0.010%以下(0%を含まない)]
Pは、HAZ靭性を劣化させる元素であるため極力低減する必要があり、本発明では0.010%以下に抑える。
[S:0.003%以下(0%を含まない)]
Sは、粗大な硫化物を生成してHAZ靭性を劣化させる元素である。よって極力低減する必要があり、本発明では0.003%以下に抑える。
[Al:0.02〜0.04%]
Alは、脱酸剤として使用されると共に、AlN系析出物を生成して大入熱溶接時のHAZ靭性を向上させる元素であり、本発明では0.02%以上含有させる。しかし、Al含有量が過剰になると、アルミナ等の酸化物系介在物が増大すると共に、MAの生成が促進されHAZ靭性が劣化するので、0.04%以下に抑える。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物であり、該不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素の混入が許容され得る。また、更に下記元素を積極的に含有させることも可能である。
[Cu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.8%以下(0%を含まない)、およびV:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上(但し、下記式(2)の範囲内とする)]
(Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4 …(2)
{式中、Cu,Ni,NbおよびVは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
Cu、NiおよびVは、いずれも鋼板の強度確保に有用な元素である。Cuは、固溶強化および析出強化により強度(引張強さTSと降伏強さYS)を高めるのに有効な元素である。しかし、過剰に含有させると、熱間加工性を阻害させるため0.5%以下に抑える。
Niは、鋼板の強度と靭性を同時に向上させる元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.2%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰に含有させるとコストアップとなるため0.8%以下に抑える。
Vは、鋼板の焼入れ性を高めて高強度を確保すると共に、焼戻し軟化抵抗を高めるのに有用な元素である。しかし、過剰に含有させると、HAZ靭性が劣化するため0.05%以下に抑える。
また本発明では、前述の通りNbを0.016%以下に抑制すると共に、Cu、Ni、NbおよびVの含有量を下記式(2)の通り制限することにより、Cu、NiおよびVよりなる群から選択される1種以上を含有させる場合であっても、優れたHAZ靭性を確保することができる。
図2は、0.06%C−0.20%Si−1.4%Mn−0.03%Al−0.014Ti−0.0014%B−0.0065%Nを基本成分とし、Cu:0.5%以下、Ni:0.8%以下、およびV:0.05%以下よりなる群から選択される1種以上と規定量のNbを、(Cu+Ni+60Nb+20V)が種々の値となるよう含んだ鋼板を用いて、熱サイクル試験を行い、HAZの低温靭性(vE-60)を後述する実施例の通り測定し、これらの結果を整理したものである。尚、熱サイクル試験は、溶接入熱:60kJ/cm(板厚12mm)を想定して、1400℃×5秒に加熱保持後、800℃から500℃までを150秒で冷却したものである。
この図2より、Cu:0.5%以下、Ni:0.8%以下およびV:0.05%以下よりなる群から選択される1種以上を含有させる場合、HAZの低温靭性としてvE-60:100J以上を達成させるには、下記式(2)に示す通り、(Cu+Ni+60Nb+20V)の値が1.4%以下となるようにする必要があることが分かる。Nbを0.016%以下に抑制すると共に、上記の通りCu、Ni、Nb、Vの含有量を総合的に制限することにより、硬質相であるMAの生成を抑制して、優れたHAZ靭性を確保することができる。
(Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4(%) …(2)
{式中、Cu、Ni、Nb、Vは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
[Ca:0.003%以下(0%を含まない)]
Caは、HAZ靭性に悪影響を及ぼすSをCaSとして固定すると共に、非金属介在物を粒状に形態制御して靭性を向上させるのに有効な元素である。この様な効果を十分発揮させるには、Caを0.0010%以上含有させることが好ましいが、過剰に含有させても、これらの効果は飽和しHAZ靭性が却って劣化する。よってCa含有量は、0.003%以下とすることが好ましい。
上記のように化学成分組成を満足する鋼板では、HAZ靭性が良好になるのであるが、こうしたHAZ靭性を劣化させることなく、脆性亀裂の発生を抑制する特性を改善するための要件についても検討した。その結果、厚みt(mm)の鋼材について、圧延方向に平行で且つ鋼材表面に対して垂直な面の金属組織を観察したときに、(a)フェライト面積率が75%以上で、(b)t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下で、(c)t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下であれば、鋼板の脆性亀裂の発生を抑制する特性を改善することができると共に、上記HAZ靭性も劣化させないことが明らかになった。以下、このように規定した理由について詳述する。
本発明に係る高張力鋼板の金属組織は、鋼板の強度を確保するためにフェライトを主体とする。フェライト主体とは、鋼板に占めるフェライト分率が75面積%以上であることを意味し、鋼板断面の金属組織を観察したときに、フェライトの面積率が75%以上であればよい。フェライトの面積率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。
上記金属組織の残部は、第二相として、パーライトやベイナイト、マルテンサイト等が生成していればよく、その種類は特に限定されない。第二相の面積率は25%未満であればよく、好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満である。
上記鋼板の金属組織は、フェライトを主体とする他、CTOD特性を改善するには、フェライト粒の円相当径とアスペクト比の両方を適切に調整することが重要である。即ち、本発明者らが、種々実験を繰返した結果、t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下で、t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下であることが必要であることが判明した。
このことは後述する実施例から明らかであり、図3は、鋼板のt/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径とアスペクト比がCTOD特性に与える影響を示している。図3中、X軸はt/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径、Y軸はCTOD特性(δc-60℃)を示しており、□はt/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が1.6以下、○はt/2位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が1.6を超えて、2.0以下、△は同平均アスペクト比が2.0を超えるときの結果を夫々示している。
図4は、鋼板のt/4位置におけるフェライト粒の平均円相当径とアスペクト比がCTOD特性に与える影響を示している。図4中、X軸はt/4位置におけるフェライト粒の平均円相当径、Y軸はCTOD特性(δc-60℃)を示しており、○はt/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下、●はt/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0を超えるときの結果を夫々示している。
図5は、鋼板中心部(t/2位置)からの相対位置とCTOD特性(δc-60℃)との関係を示したものである。図5中、X軸は鋼板中心部(t/2位置)を0%としたときの相対位置を示しており、例えば相対位置が25%とは、t/4位置を示すことになる。
これらの結果から明らかなように、(1)t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が小さくなるほど、CTOD特性が改善される傾向(δc-60℃の数値が大きくなる傾向)を示すこと、(2)t/4位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下で、且つ平均アスペクト比が2.0以下であれば、δc-60℃が0.20mm以上となり、CTOD特性を確実に改善できること、および(3)CTOD特性は鋼材中心部で低くなる傾向があるので、鋼板中心部でCTOD特性を管理すれば良いこと、等が分かる。
こうした現象が生じる理由については次のように考えられる。即ち、脆性破壊では、結晶粒と結晶粒の境界(結晶粒界)が亀裂伝播の抵抗となるため、結晶粒界が密に存在していれば、脆性破壊自体が発生し難くなるし、微小な脆性破壊が発生したとしても亀裂が進展する方向に結晶粒界が密に存在していれば、亀裂の伝播も防止できる。ところがフェライト粒は圧延工程において圧延方向に伸びるため、フェライト粒のアスペクト比は大きくなる。そのため圧延方向にはフェライト粒の長径が揃い、板厚方向には短径が揃い易い。
従って、板厚方向には結晶粒界が密に存在することになるが、圧延方向における結晶粒界は疎になるため、結晶粒界の密度にバラツキが生じ易く、脆性破壊が発生し易くなる。また、脆性破壊が一旦発生すると、粒界に沿って圧延方向に亀裂が伝播し易くなる。これに対し、フェライト粒の平均円相当径を小さくし、且つ平均アスペクト比を小さくすれば、結晶粒界の密度のバラツキは殆ど無くなるため、脆性破壊は発生し難く、たとえ発生したとしても結晶粒界が抵抗となり亀裂の伝播を防止することができる。
本発明の鋼板では、フェライト粒の平均円相当径を20.0μm以下とし、フェライト粒の平均アスペクト比を2.0以下とする。平均円相当径を制御する位置は、鋼材の厚みをtとしたとき、t/2位置とする。脆性破壊は板厚の中央部付近で発生することが一般的に知られているため(前記図5参照)、t/2位置における組織を適切に制御することによって脆性破壊の発生を抑制できる。また平均アスペクト比を制御する位置は、鋼材の厚みをtとしたとき、t/4位置とする。これは、鋼板の平均的な特性を示す位置として選んだものである。
板厚が厚くなるほど鋼板のt/2位置における温度やt/2位置に導入される歪みと、鋼材の表面近傍(例えば、t/4位置)における温度や導入される歪みに差が大きくなるため、t/2位置における温度を管理し、t/2位置における組織を適切に制御することによって、脆性亀裂の発生を抑制できる。
上記t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径は、17.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは16μm以下である。フェライト粒の平均円相当径の下限は特に規定されず、小さいほど好ましいが、小さくするには限界があるため、通常は7μm程度以上(特に10μm以上)である。尚、円相当径とは、フェライト粒を同一面積の円に換算したときの円の直径を意味する。
一方、上記t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比は、1.9以下であることが好ましく、より好ましくは1.8以下である。尚、フェライト粒のアスペクト比とは、フェライト粒の圧延方向における粒径(Dl)と板厚方向における粒径(Dt)の比(Dl/Dt)を意味する。
上記フェライト粒の平均円相当径と平均アスペクト比は、例えば次に示す手順で算出できる。まず、鋼材のおもて面と裏面を含むと共に、圧延方向に平行で且つ鋼材表面(鋼材のおもて面)に対して垂直な面が露出するようにサンプルを切り出し、この露出面を研磨して鏡面仕上げする。
露出面の研磨方法は特に限定されず、例えば、#150〜#1000までの湿式エメリー研磨紙を用いて研磨するか、それと同等の機能を有する研磨方法を用いて研磨すればよい。また、鏡面仕上げを行なう際には、ダイヤモンドスラリーなどの研磨剤を用いればよい。
鏡面仕上げしたサンプルは3%ナイタール溶液を用いて腐食し、フェライト組織の結晶粒界を現出させた後、倍率を100倍または400倍として写真撮影し、画像解析装置に取り込む。いずれの倍率においても領域が1mm×1mm以上に相当するように画像を取り込む。
次に、画像解析装置において、粒界に囲まれたフェライト粒の領域(面積)を同等の面積を有する円に換算し、換算された円の直径をフェライト粒の円相当径と定義して円相当径を測定する。これを全ての観察視野について測定し、結果を平均することで平均円相当径を算出する。
一方、フェライト粒のアスペクト比については、上記粒界に囲まれたフェライト粒について、圧延方向の粒径Dlと板厚方向の粒径Dtを測定し、DlとDtの比(Dl/Dt)をアスペクト比として算出する。これを全ての観察視野について行い、結果を平均することで平均アスペクト比を算出する。
本発明の鋼板の金属組織をフェライト主体とすると共に、t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径を20.0μm以下とし、t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比を2.0以下にするには、鋳造して得られたスラブを1000〜1200℃に加熱した後、粗圧延し、次いでオーステナイト未再結晶温度域で仕上げ圧延すればよい。以下、順を追って説明する。
スラブを加熱する温度は1000〜1200℃とすることが好ましい。粗圧延およびそれに続く冷却後(自然放冷あるいは強制水冷)に得られるフェライト組織を微細化するためには、オーステナイト組織を圧延して再結晶させるのが有効である。オーステナイトの再結晶温度の下限は鋼材の化学成分組成にもよるが、通常850〜900℃であるため、この下限温度以上でオーステナイト組織を圧延して再結晶させるために、加熱温度は1000℃以上とするのがよい。しかし、1200℃を超えて加熱すると、初期のオーステナイト組織が粗大化し過ぎるため、こうしたオーステナイト組織を圧延して再結晶させてもオーステナイト組織を充分に微細化することが困難となる。従って加熱温度は1200℃以下とするのがよい。
加熱したスラブは、オーステナイトの再結晶温度域で累積圧下率を40%以上として粗圧延すればよい。オーステナイトの再結晶温度域で累積圧下率を40%以上として粗圧延することで、再結晶と圧下によりフェライト組織を微細化且つ等粒に近いオーステナイト組織にでき、その結果として圧延後、微細且つ等粒に近いフェライト組織にできる。再結晶温度域での累積圧下率が40%未満であれば、再結晶温度域での圧下による微細化が不十分になるため、圧延後、粗大なオーステナイト粒が混在する。そのため、最終的に得られる金属組織も粗大なフェライト粒と微細なフェライト粒が混在した混粒状態となりやすい。このように金属組織が混粒状態になると脆性亀裂抑制特性のばらつきが発生しやすくなる傾向がある。そのため、オーステナイトの再結晶温度域においてオーステナイト組織を充分に微細化するには、オーステナイト再結晶温度域での累積圧下率を40%以上とすることが推奨される。オーステナイト再結晶温度域は、化学成分組成によって多少変化するが、本発明では900〜1000℃程度とした。
上記累積圧下率はできるだけ大きくするのが好ましく、累積圧下率の増加に伴ってフェライト粒の円相当径は約25〜30μm程度にまで微細化できる。しかしオーステナイトの再結晶温度域における累積圧下率を、70%を超えて大きくしてもその効果はほぼ飽和するため、該累積圧下率は70%程度以下とすればよい。
上記累積圧下率は、鋼材のt/2位置における温度(計算値)が1000℃のときの厚みをt0、鋼材のt/2位置における温度(計算値)が900℃のときの厚みをt1としたとき、下記式(3)式で算出できる。
累積圧下率(%)=[(t0−t1)/t0]×100 …(3)
但し、粗圧延開始温度が1000℃を下回る場合には、粗圧延開始時における鋼材厚みをt0とし、粗圧延開始温度が1000℃を超える場合には、鋼材のt/2位置における温度が1000℃での鋼材厚みをt0として上記累積圧下率を算出する。一方、粗圧延終了温度が900℃に達しない場合(900℃を超える場合)には、粗圧延終了時における鋼材厚みをt1とし、粗圧延終了温度が900℃より下回る場合には、900℃での鋼材厚みをt1として上記累積圧下率を算出する。
粗圧延するときの温度は、プロセスコンピュータを用いてt/2位置における温度を計算して算出した温度を基準とするのがよい。t/2位置における金属組織を適切に制御するためである。なお、t/2位置の温度(計算値)に比べて鋼板表面の温度(実測値)は、鋼材の厚みが150mmの場合には約50〜70℃低くなり、鋼材の厚みが100mmの場合には約40〜50℃低くなる。従って上記粗圧延を行なう温度は、こうした温度差を考慮して、鋼板表面の温度(実測値)を基準として用いて温度管理しても構わない。
オーステナイトの再結晶温度域で累積圧下率を40%以上として粗圧延した後は、オーステナイト未再結晶温度域まで冷却し、当該オーステナイト未再結晶温度域で真ひずみを0.5以上として仕上げ圧延することが推奨される。オーステナイト未再結晶温度域で仕上げ圧延することで、フェライト粒を一層微細化できるからである。即ち、オーステナイト再結晶温度域で圧延して得られる金属組織は、平均粒径が約25〜30μmのオーステナイト組織であるため、この鋼材をそのまま空冷するか、或いは強制冷却しても得られるフェライト粒の平均円相当粒径はせいぜい25μm程度にしかならない。そのためCTOD特性は充分に改善できない。これに対し、オーステナイト未再結晶温度域で仕上げ圧延してやれば、フェライト粒にひずみが導入されるため、フェライト粒を一段と微細化できる。
この仕上げ圧延では、真ひずみ量を0.5以上として圧延するのがよい。真ひずみ量が0.5未満では、フェライト粒の微細化が不充分になることがあり、CTOD特性を充分に改善できないことがある。真ひずみ量は多くするほど好ましく、多くすればフェライト粒を小さくできる。
尚、上記オーステナイト未再結晶温度域とは、鋼材を圧延してもオーステナイト組織が再結晶しない温度域である。この温度域は鋼材の化学成分組成によって多少変化するが、本発明では、鋼材のt/2位置における温度が850℃以下の領域で導入する真ひずみ量を0.5以上として仕上げ圧延する。但し、仕上げ圧延の温度域が低くなり過ぎると、フェライト粒の扁平率(即ち、アスペクト比)が著しく大きくなり易いため、CTOD特性が劣化する傾向がある。従って仕上げ圧延終了温度は、「Ar3変態点+10℃」以上とするのがよい。Ar3変態点の温度は、鋼材に含まれる化学成分の含有量に基づいて下記式(4)式で算出できる。但し、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。
Ar3変態点(℃)=868−369×[C]+24.6×[Si]−68.1×[Mn]−36.1×[Ni]−20.7×[Cu]−24.8×[Cr]+190×[V]
…(4)
上記真ひずみ量は、鋼材のt/2位置における温度(計算値)が850℃のときの厚みをt2、鋼材のt/2位置における温度(計算値)が仕上げ圧延終了温度での厚みをt3としたとき、下記式(5)式で算出できる。
真ひずみ量=ln(t2/t3) …(5)
但し、仕上げ圧延開始温度が850℃を下回る場合には、仕上げ圧延開始時における鋼材厚みをt2とし、仕上げ圧延開始温度が850℃を超える場合には、鋼材のt/2位置における温度が850℃での鋼材厚みをt2として上記真ひずみを算出する。一方、仕上げ圧延終了温度が「Ar3変態点+10℃」に達しない場合(「Ar3変態点+10℃」を超える場合)には、仕上げ圧延終了時における鋼材厚みをt3とし、仕上げ圧延終了温度が「Ar3変態点+10℃」より下回る場合には、「Ar3変態点+10℃」での鋼材厚みをt3として上記真ひずみを算出する。
上記仕上げ圧延するときの温度は、プロセスコンピュータを用いてt/2位置における温度を夫々計算して算出した温度を基準とする。
仕上げ圧延するときの温度は、鋼材の厚みをt(mm)としたとき、プロセスコンピュータを用いてt/2位置における温度を計算して算出した温度を基準とするのがよい。t/2位置における金属組織を適切に制御するためである。なお、鋼材の厚みが40〜80mm程度の場合には、鋼板内部の温度(t/2位置における温度)と鋼板の表面温度との温度差はせいぜい10〜40℃程度であるため、こうした温度差を考慮して、鋼板の表面温度(実測値)を基準として管理しても差し支えない(例えば、「850℃−温度差」、「Ar3変態点+10℃−温度差」)。
仕上げ圧延終了後は、常法に従って冷却すればよい。冷却方法は特に限定されず、空冷してもよいし、強制冷却してもよい。このときの冷却速度も特に限定されないが、4℃/秒以下程度であれば、フェライト粒の大きさに影響を及ぼさないことを本発明者らは確認している。
本発明者らは、HAZ靭性を劣化させることなく、脆性亀裂停止特性を改善するための要件についても検討を重ねた。その結果、厚みt(mm)の鋼板の金属組織を観察したときに、鋼板表面からt/100位置までの領域におけるフェライト粒の平均粒径が25μm以下であれば、鋼材の脆性亀裂停止特性を改善することができ、上記HAZ靭性も劣化させないことが明らかになった。
このことは後述する実施例から明らかであり、特に図6には、鋼板表面からt/100位置までの領域におけるフェライト粒の平均粒径と脆性亀裂停止特性(−60℃でのKca値)との関係を示している。この図6によれば、鋼材表面からt/100位置までの領域におけるフェライト粒の平均粒径が小さいほど脆性亀裂停止特性が改善(−60℃でのKca値が大きく)されていることが分かる。
このように鋼板表面におけるフェライト粒の平均粒径を小さくすれば脆性亀裂停止特性が改善できる理由については次のように考えられる。即ち、脆性亀裂の伝播は、結晶粒と結晶粒の境界(結晶粒界)が亀裂伝播の抵抗となるため、結晶粒界が密に存在していれば、脆性破壊自体が発生し難くなるし、微小な脆性亀裂が発生したとしても亀裂の伝播が停止されると考えられる。そのためフェライト粒を微細化すれば、発生した脆性亀裂の伝播を停止できる。
本発明では、上記平均粒径を25μm以下とすることで、脆性破壊伝播停止試験(詳細については実施例参照)において−60℃でのKca:5900N/mm1.5以上を確保することができ、脆性亀裂停止特性を改善できる。上記平均粒径は、20μm以下であることが好ましい。
上記フェライト粒の平均粒径は、前述した方法(フェライトの平均円相当径の測定方法)に準じて算出できる。尚、上記フェライト粒の平均粒径は、鋼材表面からt/100位置までの領域において観察する。鋼板表面からt/100位置までの領域におけるフェライト粒の粒径が適切に制御されていれば、鋼板表面部のみならず、鋼板全体の脆性亀裂停止特性が向上することが本発明者らの検討により明らかになったからである。
鋼材表面からt/100位置までの領域における金属組織は、フェライトを主体とする。フェライト主体とは、前述した鋼板と基本的に同様に意味であるが、フェライトの分率が50面積%以上であってもよい。上記金属組織の残部は、第二相として、パーライトやベイナイト、マルテンサイト等が生成していればよく、その種類は特に限定されない。第二相の面積率は50%未満であればよく、好ましくは45%未満、より好ましくは40%未満である。
鋼板表面からt/100位置までの領域におけるフェライト粒の平均粒径を25μm以下にするには、鋳造して得られたスラブを加熱して粗圧延した後、仕上げ圧延の温度域を調整するために空冷または強制冷却し、次いでオーステナイト再結晶温度域、オーステナイト未再結晶温度域または二相温度域で、真ひずみ量0.5以上として仕上げ圧延すればよい。仕上げ圧延の温度域を、適切な温度域とすることで、フェライト粒を微細化できるからである。即ち、温度管理せずに常法に従って圧延した後、空冷または強制冷却して得られる金属組織は、平均粒径がせいぜい約35μm以上のフェライト組織であるため、脆性亀裂停止特性を充分に改善できない。これに対し、適切な温度域で仕上げ圧延してやれば、フェライト粒を一段と微細化できる。特に、2相温度域で仕上げ圧延すれば、フェライト粒を直接変形させることができるため、真ひずみが大きく導入され、フェライト粒を一層微細化できる。
仕上げ圧延で真ひずみ量を0.5以上とするには、真ひずみ量が0.5未満では、フェライト粒の微細化が不十分になることがあり、脆性亀裂停止特性を充分に改善できないことがあるからである。真ひずみ量は多くするほど好ましく、多くすればフェライト粒が小さくなる。
上記仕上げ圧延を行なう温度域は鋼材の化学成分組成によって多少変化する。そこで本発明では、鋼板の表面温度が900℃以下の領域で導入する真ひずみ量を0.5以上として仕上げ圧延するのが好ましい。但し、仕上げ圧延の温度域が低くなり過ぎると、フェライト組織の加工脆化が著しくなり、脆性亀裂停止特性が低下する傾向がある。従って仕上げ圧延終了温度は、「Ar3変態点−40℃」以上とするのがよい。Ar3変態点の温度は、鋼材に含まれる化学成分の含有量に基づいて前記式(4)で算出できる。上記温度は、鋼材表面からt/100位置までの温度を上記範囲で制御すればよい。
上記真ひずみ量は、鋼材の表面温度が900℃での鋼片厚みをt4、仕上げ圧延終了温度での鋼片厚みをt5としたとき、下記式(6)で算出できる。
真ひずみ量=ln(t4/t5) …(6)
但し、仕上げ圧延開始温度が900℃を下回る場合には、仕上げ圧延開始時における鋼材厚みをt4として上記真ひずみを算出する。なお、仕上げ圧延開始温度が900℃を超える場合には、鋼材の表面温度が900℃での鋼片厚みをt4とする。
仕上げ圧延終了後は、常法に従って冷却すればよい。冷却方法は特に限定されず、空冷してもよいし、強制冷却してもよい。
上記のようにして得られる本発明の各種鋼板は、例えば橋梁や高層建造物、船舶などの構造物の材料として使用でき、小〜中入熱溶接はもとより大入熱溶接(例えば、40kJ/mm以上)においても、溶接熱影響部の靭性劣化を防ぐことができると共に、脆性亀裂抑制特性または脆性亀裂停止特性にも優れたものとなる。また、本発明の鋼板は、いわゆる厚鋼板に有利に適用できる。このときの板厚は、約7mm以上であり、上限は特に限定されないが、通常40mm以下程度である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例
によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
[実施例1]
下記表1、2に示す化学成分組成の各種鋼スラブを用い[Ar3変態点は前記式(4)に基づいて計算したもの]、下記表3、4に示す製造条件(スラブ加熱温度、粗圧延条件、仕上げ圧延条件)にて各種鋼板を製作した。尚、このときの温度については、t/2位置、t/4位置(tは板厚)における温度で管理したものであり、詳細な温度管理の手順は下記の通りである。
Figure 2008248354
Figure 2008248354
[温度管理の手順]
1.プロセスコンピュータを用い、加熱開始から加熱終了までの雰囲気温度や在炉時間に基づいて鋼片の表面から裏面までの位置(t/4またはt/2位置)の加熱温度を算出する。
2.算出した加熱温度を用い、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)のデータに基づいて、板厚方向の任意の位置における圧延温度を差分法など計算に適した方法を用いて計算しつつ圧延を実施する。
3.鋼板の表面温度は圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて実測する。但し、プロセスコンピュータでも理論値を計算しておく。
4.粗圧延開始時、粗圧延終了時、仕上げ圧延開始時にそれぞれ実測した鋼板の表面温度を、プロセスコンピュータから算出される計算温度と照合する。
5.計算温度と実測温度の差が±30℃以上の場合は、計算表面温度が実測温度と一致するように再計算してプロセスコンピュータ上の計算温度とし、±30℃未満の場合は、プロセスコンピュータから算出された計算温度をそのまま用いる。
6.上記算出された計算温度を用い、制御対象としている領域の圧延温度を管理する。
Figure 2008248354
Figure 2008248354
上記の様にして得られた各鋼板について、鋼板(母材)およびHAZの靭性の評価を、それぞれ下記の要領で実施した。
[母材靭性の評価]
各鋼板の表面側から1mm削った部位から、圧延方向にJIS Z 2202のVノッチ試験片を採取して、JIS Z 2242の要領でシャルピー衝撃試験を行い、試験温度:−60℃での吸収エネルギー(vE-60)を測定した。そして、該吸収エネルギー(vE-60)が100J以上のものを優れた母材靭性を具備していると評価した。
[HAZ靭性の評価]
上記鋼板を用いた片面サブマージアーク溶接をFCB法で実施した。FCB法は銅板の上に裏当てフラックスを敷き、開先裏面に押し当て、表面片側から裏ビードを形成しながら溶接を完了させる方法であり、造船等の板継ぎ溶接で一般的に適用されている。開先形状を図7[(a)は板厚12mmの場合、(b)は板厚30mmの場合]に示す。溶接材料は、下記の低温用鋼溶接材料(神戸製鋼所製)を使用し、図8および表5の溶接条件で溶接継手を作製した。
[溶接材料]
・ワイヤ;US−255
・表フラックス;PFI−50LT
・裏当てフラックス;MF−1R
Figure 2008248354
そして、表面側から1mm削り、HAZ(ボンド部、ボンド部+1mm(母材側に1mmの箇所)[HAZ1mm])の位置に板表面に垂直に切欠きを入れたJIS Z 2202のVノッチ試験片を、それぞれ3個採取し、JIS Z 2242の要領でシャルピー衝撃試験を行った。そして、―60℃での吸収エネルギー(vE-60)の平均値が100J以上のものを、HAZの低温靭性に優れると評価した。
また各鋼板における金属組織の観察(フェライト粒の円相当径およびアスペクト比)および脆性亀裂抑制特性を下記の手順で測定した。
[金属組織の観察(円相当径とアスペクト比の測定手順)]
鋼板のおもて面と裏面を含むと共に、圧延方向に平行で且つ鋼材表面(鋼材のおもて面)に対して垂直な面が露出するようにサンプルを切り出し、この露出面を研磨して鏡面仕上げした。露出面の研磨には#150〜#1000までの湿式エメリー研磨紙を用いて研磨した後、研磨剤としてダイヤモンドスラリーを用いて鏡面仕上げした。
鏡面仕上げしたサンプルは3%ナイタール溶液を用いて腐食し、フェライト組織の結晶粒界を現出させた後、倍率400倍で撮影し、6cm×8cmの写真とした(即ち、400倍では150μm×200μmに相当する)。写真の6cmの辺は板厚方向に対応し、8cmの辺は圧延方向に対応している。これをいずれの倍率においても領域が1mm×1mm以上に相当するように画像解析装置に取り込んだ。
次に、画像解析装置において、粒界に囲まれたフェライト粒の領域(面積)を同等の面積を有する円に換算し、換算された円の直径をフェライト粒の円相当径と定義して円相当径を測定した。これを全ての観察視野について測定し、結果を平均することで平均円相当径を算出した。
一方、フェライト粒のアスペクト比については、上記粒界に囲まれたフェライト粒について、圧延方向の粒径Dlと板厚方向の粒径Dtを測定し、DlとDtの比(Dl/Dt)をアスペクト比として算出した。これを全ての観察視野について行い、結果を平均することで平均アスペクト比を算出した。
尚、フェライト粒の円相当径とアスペクト比の測定位置は、鋼材の厚みをt(mm)としたとき、t/2位置、t/4位置とした。また、観察視野数は35枚とした。フェライト粒の平均円相当径とアスペクト比を算出する際に、金属組織に占めるフェライト面積率も併せて測定した。
[脆性亀裂抑制特性の評価]
脆性破壊発生特性は、社団法人日本溶接協会(WES)発行のWES1108(1995年2月1日制定)で規定される「亀裂先端開口変位試験(CTOD試験)」に基づいて亀裂先端開口変位試験を行い、不安定破壊開始時の開口変位(δc)を測定し、この結果に基づいて評価した。尚、亀裂先端開口変位試験を行う際には、WES1109(1995年4月1日制定)で規定される「溶接熱影響部CTOD試験方法に関する指針」も参酌した。
試験片は、WES1108(1995年2月1日制定)のP.6の図6に示されている「標準三点曲げ試験片」を用いた。試験温度は−60℃とし、δc-60℃(mm)を測定した。本発明では、δc-60℃が0.20mm以上の場合を合格とする。
各鋼板におけるt/2位置若しくはt/4位置での組織[フェライト(α)の平均円相当径およびアスペクト比]、およびフェライト分率を下記表6に、母材特性(板厚、vE-60およびδc-60℃)およびHAZ靭性を、実溶接施工条件(施工法、入熱量)と共に、下記表7、8に示す。
Figure 2008248354
Figure 2008248354
Figure 2008248354
これらの結果から、次の様に考察することができる(尚、下記No.は、表中の実験No.を示す)。
本発明で規定する要件を満たすNo.3、5、6、12、14、15、18、20、21の鋼板は、HAZの低温靭性に優れていると共に、母材特性(靭性、脆性亀裂発生抑制特性)も優れた鋼板であり、該鋼板を、大入熱片面サブマージアーク溶接法で溶接し、低温条件の用途に用いる場合にも優れた特性を発揮する。
これに対し、本発明の規定を満足しないNo.1、2、4、7〜11、13、16、17、19、22〜41は、本発明で規定する要件のいずれかの要件を満足しないものであり、HAZ靭性、脆性亀裂発生抑制特性の少なくともいずれかの特性に劣っている。
[実施例2]
前記表1、2に示した化学成分組成の各鋼材を転炉で溶製し、連続鋳造により製造した各種鋼スラブ(鋼種No.1〜38)を用い、加熱後、粗圧延し、空冷または強制冷却した後、仕上げ圧延を行って各種鋼板を製作した。仕上げ圧延の終了温度(表面温度)、圧延後の冷却条件(冷却方法、冷却速度)および900℃以下での真ひずみ量を下記表9、10に示す。尚、表9、10に示した冷却速度は冷却開始から500℃までの平均値(平均冷却速度)である。
Figure 2008248354
Figure 2008248354
上記の様にして得られた各鋼板について、実施例1と同様にしてHAZ靭性の評価を行うと共に、下記の方法で脆性亀裂停止特性を評価した。
[脆性亀裂停止特性の評価]
脆性亀裂停止特性は、社団法人日本溶接協会(WES)発行の鋼種認定試験方法(2003年3月31日制定)で規定される「脆性破壊伝播停止試験」に準じて行った。試験は、脆性破壊伝播停止試験方法の図7.2に示されている形状の試験片を用い、該試験片に−190℃〜+60℃の範囲から選ばれる任意の温度範囲で温度勾配をつけて4試験体分行った。Kca値は下記式(7)で算出した。下記式(7)中、cは伝播部入口から脆性亀裂先端までの長さ、Tは脆性亀裂先端の温度(単位はK)、σは伝播部のグロス応力、Wは伝播部幅を示している。X軸を1/T、Y軸を算出したKca値として1/TとKca値の相関関係を示すグラフを作成し、4点の近似曲線と213Kとの交点を−60℃でのKca値とした。本発明では、−60℃でのKcaが5900N/mm1.5以上の場合を合格(脆性亀裂停止特性に優れる)とする。
Figure 2008248354
また各鋼板における金属組織の観察(表層部からt/100位置でフェライトの平均粒径についても実施例1に示した手順に従って測定した。フェライト粒の平均粒径を算出する際に、鋼材表面からt/100位置までの領域における金属組織を観察し、フェライト面積率も同時に測定した。その結果、金属組織に占めるフェライトの面積率は50%以上であった。尚、倍率が100倍の場合は、観察視野数を少なくとも6枚とし、400倍の場合は、観察視野数を少なくとも35枚とした。
これらの結果を、下記表11、12に示す。尚、HAZ靭性と脆性亀裂停止特性の両方の特性を満足している例を本発明例(○)とし、少なくとも一方の特性を満足しない例を比較例(×)として総合判定した。
Figure 2008248354
Figure 2008248354
これらの結果から次のように考察できる。No.42〜46、48〜50、52、54、56〜58、60〜66、68、70〜73は、本発明で規定する要件を満たすものであり、HAZの低温靭性に優れていると共に、母材特性(脆性亀裂停止特性)も優れた鋼板であり、該鋼板を、大入熱片面サブマージアーク溶接法で溶接し、低温条件の用途に用いる場合にも優れた特性を発揮する。
これに対し、本発明で規定する要件を満足しないNo.47、51、53、55、59、67、69、74〜93は、本発明で規定する要件のいずれかの要件を満足しないものであり、HAZ靭性、脆性亀裂停止特性の少なくともいずれかの特性に劣っている。
鋼板表面からt/100位置までの領域におけるフェライト粒の平均粒径と脆性亀裂停止特性との関係を図9に示すが、真ひずみ量を0.5以上に制御すれば、鋼板表面からt/100位置までの領域におけるフェライト粒の平均粒径を25μm以下に制御できることが分かる。
(B−NT/1.3)とHAZのvE-60との関係を示すグラフである。 (Cu+Ni+60Nb+20V)とHAZのvE-60との関係を示すグラフである。 鋼板のt/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径とアスペクト比がCTOD特性(δc-60℃)に与える影響を示すグラフである。 鋼板のt/4位置におけるフェライト粒の平均円相当径とアスペクト比がCTOD特性(δc-60℃)に与える影響を示すグラフである。 鋼板中心部(t/2位置)からの相対位置とCTOD特性(δc-60℃)との関係を示すグラフである。 鋼板のt/100位置におけるフェライト粒の平均粒径と脆性亀裂停止特性(−60℃でのKca値)との関係をグラフである。 実施例での溶接における開先形状の断面図を示す。 FCB溶接時の電極配置の模式図を示す。 鋼材表面からt/100位置までの領域における真ひずみ量とフェライト粒の平均粒径との関係を示すグラフである。

Claims (4)

  1. C:0.03〜0.09%(「質量%」の意味、以下同じ)、Si:0.01〜0.25%、Mn:1.20〜1.60%、P:0.010%以下(0%を含まない)、S:0.003%以下(0%を含まない)、Al:0.02〜0.04%、Nb:0.005〜0.016%、B:0.0006〜0.0020%、N:0.0045〜0.0090%、Ti:0.008〜0.020%を夫々含有すると共に、下記式(1)を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、且つ厚みt(mm)の鋼板の圧延方向に平行で、鋼板表面に対して垂直な面の金属組織を観察したときに、下記(a)〜(c)を満足することを特徴とする脆性亀裂発生抑制特性および溶接熱影響部の低温靭性に優れた高張力鋼板。
    (a)フェライト面積率が75%以上、
    (b)t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下、
    (c)t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下。
    −20≦(B−NT/1.3)≦10 …(1)
    {式中、BはB含有量(質量ppm)を示す。
    またNTは、
    N(N含有量、単位:質量ppm)とTi(Ti含有量、単位:質量ppm)の関係が、
    (N−Ti/3.4)≧0である場合には、NT=(N−Ti/3.4)、
    (N−Ti/3.4)<0である場合には、NT=0を示す}
  2. C:0.03〜0.09%、Si:0.01〜0.25%、Mn:1.20〜1.60%、P:0.010%以下(0%を含まない)、S:0.003%以下(0%を含まない)、Al:0.02〜0.04%、Nb:0.005〜0.016%、B:0.0006〜0.0020%、N:0.0045〜0.0090%、Ti:0.008〜0.020%を夫々含有すると共に、下記式(1)を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、且つ厚みt(mm)の鋼板の金属組織を観察したときに、鋼板表面からt/100位置までの領域におけるフェライト粒の平均粒径が25μm以下であることを特徴とする脆性亀裂停止特性および溶接熱影響部の低温靭性に優れた高張力鋼板。
    −20≦(B−NT/1.3)≦10 …(1)
    {式中、BはB含有量(質量ppm)を示す。
    またNTは、
    N(N含有量、単位:質量ppm)とTi(Ti含有量、単位:質量ppm)の関係が、
    (N−Ti/3.4)≧0である場合には、NT=(N−Ti/3.4)、
    (N−Ti/3.4)<0である場合には、NT=0を示す}
  3. 更に、Cu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.8%以下(0%を含まない)、およびV:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を、下記式(2)を満たすように含む請求項1または2に記載の高張力鋼板。
    (Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4 …(2)
    {式中、Cu、Ni、Nb、Vは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
  4. 更に、Ca:0.003%以下(0%を含まない)を含む請求項1〜3のいずれかに記載の高張力鋼板。
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