JP5147275B2 - 疲労亀裂進展抵抗性および溶接熱影響部の低温靭性に優れた鋼材 - Google Patents

疲労亀裂進展抵抗性および溶接熱影響部の低温靭性に優れた鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、主として船舶や橋梁等のように繰り返し応力がかかる鋼板を溶接するにあたり、熱影響を受ける部位(以下、「溶接熱影響部」または「HAZ」ということがある)の低温靭性と、繰り返し応力下における疲労亀裂進展抵抗性を改善した鋼材に関するものである。特に低温に曝される用途に使用される場合でも、HAZの靭性および母材(鋼材)の靭性に優れており、しかも良好な疲労亀裂進展抵抗性を発揮する鋼材に関するものである。尚、本発明は、上記鋼材の溶接方法まで限定するものではなく、サブマージアーク溶接、エレクトロガスアーク溶接等に適用できるが、以下では、HAZの靭性確保が困難であるといわれている大入熱の片面サブマージアーク溶接を施す場合を例に説明する。また、本発明の鋼材の形態については、各種形鋼等に適用する場合をも含むものであるが、鋼板に適用する場合を代表的に挙げて説明する。
橋梁や船舶などに使用される鋼板に要求される特性は、近年益々厳しくなっており、とりわけ良好な靭性が求められている。これらの鋼板は、一般的に溶接にて接合されることが多いが、特にHAZは溶接時に熱影響を受けて靭性が劣化しやすいという問題がある。この靭性劣化は溶接時の入熱量が大きくなるほど顕著に現れ、その原因は溶接時の入熱量が大きくなるとHAZの冷却速度が遅くなり、焼入性が低下して粗大な島状マルテンサイトが生成することにあると考えられている。従ってHAZの靭性を改善するには、溶接時の入熱量を極力抑えればよいと考えられるが、溶接作業効率を高める上では、例えばエレクトロガス溶接、エレクトロスラグ溶接、サブマージ溶接などの大入熱溶接法の採用が望まれる。
近年では、海洋構造物やLPG等の液化ガスを貯蔵する低温用タンク等を短期間で製造すべく、例えば入熱量が50〜200kJ/cmにも及ぶ大入熱の片面サブマージアーク溶接施工が広く採用されている。しかし、該溶接は、施工の高能率化を実現できる反面、溶接により形成されるHAZの靭性を安定して確保することが難しく、低入熱による多層溶接を適用して製造しなければならないことも多々ある。従って、上記低温用タンク等の製造に、高能率施工が可能な上記大入熱溶接法が採用され、且つ−60℃程度の低温であっても、HAZの靭性に優れている鋼板が求められている。
ところで、上記各種構造材料では、繰り返し応力が加わるものが少なくないことから、構造材料の安全性を確保するためには、HAZ靭性のみならず、疲労特性が良好であることが設計上極めて重要である。鋼板の疲労過程は、応力集中部での亀裂の発生と、一旦発生した亀裂の進展という2つの過程に大別して考えられる。そして、通常の機械部品では巨視的な亀裂の発生が、使用限界として考えられており、亀裂の進展を許容する設計は殆どされていない。しかしながら、溶接構造物においては、疲労亀裂が発生しても直ちに破壊に至ることはなく、この亀裂が最終段階に至る前に定期検査などで発見され、亀裂の入った部分が修理されるか、或は使用期間内に亀裂が最終破壊に至る長さまでに成長しないならば、亀裂があっても構造物は十分に使用に耐え得ることになる。
溶接構造物では、応力集中部としての溶接止端部が多数存在しており、疲労亀裂の発生を完全に防止することは技術的にも不可能に近く、また経済的にも得策とはいえない。即ち、溶接構造物の疲労寿命を良好にするためには、亀裂の発生そのものを防止するよりも、亀裂が既に存在している状態からの亀裂進展寿命を大幅に延長することが有効であり、そのためには鋼材の亀裂の進展速度をできるだけ遅くするような設計が重要な事項となる。
これまでにも、上記HAZの低温靭性を改善すべく種々の方法が提案されている。例えば特許文献1、特許文献2には、TiN、Alオキサイド等のピン止め粒子によりオーステナイト粒の粗大化を抑制することでHAZ靭性を改善する方法が提案されている。また、特許文献3、特許文献4には、オーステナイト粒内にフェライト変態核を多数存在させることにより結晶粒の微細化を図る技術が示されている。具体的には、TiN、MnS、BN、Tiオキサイド等をフェライト変態核として利用することにより結晶粒の微細化を達成し、HAZの低温靭性の改善を図っている。
しかし上記いずれの方法においても、大入熱の片面サブマージアーク溶接を行った場合には、TiN等の析出物がかなり固溶し、その後の結晶粒粗大化等を抑制することが難しいことから、−60℃程度での低温で優れたHAZの靭性(以下、「HAZの低温靭性」、または単に「HAZ靭性」ということがある)を確保するには、更なる改善が必要であると思われる。
一方、疲労亀裂進展の速度を抑制する技術としてもこれまで様々なものが提案されており、例えば特許文献5には、硬質相と軟質相の2相組織とし、軟質相/硬質相境界における亀裂の屈曲、停留、分岐によって亀裂進展速度を抑制する技術が提案されている。しかしながら、この技術では鋼板のHAZ靭性については考慮されておらず、十分な安全性が確保できない恐れがある。こうしたことから、HAZ靭性と疲労亀裂進展抵抗性の両特性を満足させる鋼板の実現が切望されている。
特公昭55−026164号公報 特許第2950076号公報 特公平07−068577号公報 特公平05−017300号公報 特許第3298544号公報
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、大入熱で溶接を行った場合にもHAZの低温靭性に優れると共に、母材(鋼材)の疲労亀裂進展抵抗性にも優れた鋼材を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の鋼板とは、C:0.03〜0.09%(「質量%」の意味、以下同じ)、Si:0.01〜0.25%、Mn:1.20〜1.60%、P:0.010%以下(0%を含まない)、S:0.003%以下(0%を含まない)、Al:0.02〜0.04%、Nb:0.005〜0.016%、B:0.0006〜0.0020%、N:0.0045〜0.0090%、Ti:0.008〜0.020%を夫々含有すると共に、下記式(1)を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、且つ組織が軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)が1.5〜5.0であり、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下である点に要旨を有するものである。
−20≦(B−NT/1.3)≦10 …(1)
{式中、BはB含有量(質量ppm)を示す。
またNTは、
N(N含有量、単位:質量ppm)とTi(Ti含有量、単位:質量ppm)の関係が、
(N−Ti/3.4)≧0である場合には、NT=(N−Ti/3.4)、
(N−Ti/3.4)<0である場合には、NT=0を示す}
本発明の鋼材において、前記軟質相は、フェライト、焼戻しベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトよりなる群から選ばれる1種以上であり、硬質相は、ベイナイトおよび/またはマルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)が挙げられる。
本発明の鋼材には、必要によって、更に、Cu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.8%以下(0%を含まない)、およびV:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を、下記式(2)を満たすように含んでいてもよく、更にはCa:0.003%以下(0%を含まない)を含んでいてもよい。
(Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4 …(2)
{式中、Cu、Ni、Nb、Vは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
本発明によれば、鋼材に大入熱の溶接を施した場合でも、HAZは約−60℃で優れた靭性を示すことから、海洋構造物やLPG等の液化ガスを貯蔵する低温用タンク等の製造に、例えば大入熱の片面サブマージアーク溶接法を採用でき、上記海洋構造物等をより短期間で製造することができ、疲労亀裂進展抵抗性にも優れるので構造部材の安全性を高めることができる。
本発明者は、大入熱の溶接を施した場合に、特にHAZの低温靭性に優れる高張力鋼板を得るべく鋭意研究を行った。
その結果、
(a)Cを0.09%以下、Siを0.25%以下と比較的低めに設定した上で、規定量のB、NおよびTiのバランスを最適化し、且つ一定量のNbを添加すれば、オーステナイト粒界からの粗大なフェライト(以下、単に「粒界フェライト」ということがある)の生成が十分に抑制され、オーステナイト粒内の結晶粒微細化を達成できる、
(b)更には、強度をより高めるべくCu、Ni、Vを添加する場合に、このCu、Ni、VとNbの含有量を総合的に制御すれば、HAZ靭性の劣化を抑制できる、
との着想のもとでその具体的方法を見出した。
まず本発明では、個々の規定量のB、NおよびTiのバランスを最適化して固溶B量の最適化を厳密に図ることにより、オーステナイト粒内の結晶粒を微細化でき、その結果としてHAZの低温靭性を格段に高めることができた点に特徴がある。
図1は、0.06%C−0.20%Si−1.4%Mn−0.03%Al−0.010%Nbを基本成分とし、B、NおよびTiをそれぞれ後述する規定範囲内で変化させ、(B−NT/1.3){BはB含有量(質量ppm)、NTは、N(N含有量、単位:質量ppm)とTi(Ti含有量、単位:質量ppm)の関係が、
(N−Ti/3.4)≧0である場合には、NT=(N−Ti/3.4)、
(N−Ti/3.4)<0である場合には、NT=0を示す。
以下、式(1)についても同じ}
を種々の値とした鋼板を用いて、熱サイクル試験を行い、HAZの低温靭性(vE-60)を後述する実施例の通り測定し、これらの結果を整理したものである。尚、熱サイクル試験は、溶接入熱:60kJ/cm(板厚12mm)を想定して、1400℃×5secに加熱保持後、800℃から500℃までを150secで冷却した。
この図1より、HAZの低温靭性として、vE-60:100J以上を達成させるには、下記式(1)に示す通り、(B−NT/1.3)の値が−20ppm以上、10ppm以下の範囲に収まるようにする必要があることが分かる。
−20≦(B−NT/1.3)≦10 …(1)
上記式(1)の通り、B、NおよびTiのバランスを最適化することで、オーステナイト粒内の粒界に存在する固溶Bによる、粒界フェライトの粗大化を抑制し、且つ粒界からのフェライトサイドプレートの生成も抑制するといった効果、およびBNのフェライト変態核としての効果を最大限に発揮し得たものと考えられる。
上記の通りB、NおよびTiのバランスを最適化してHAZの低温靭性を確実に高めると共に、母材(鋼材)の強度等を確保するには、上記B、N、Tiの含有量をそれぞれ所定の範囲内とする必要がある。
一方、疲労亀裂は、通常の安定成長域では、応力に対して直角方向に進むことになる。こうした疲労亀裂の進展機構を考慮し、亀裂進展に対する抵抗性を高めるためには、鋼材の組織を複合組織とし、軟質相と硬質相の境界にて亀裂を迂回(屈曲)、停留させることによって、亀裂進展速度を低下させ、疲労寿命を延ばせ得るとの着想が得られた。そして、硬質相(以下、「第2相」と呼ぶことがある)における亀裂の屈曲には、一定の硬度差が必要となる。但し、硬度の差が大きくなり過ぎると、硬質相が脆性破壊を起こし、亀裂は硬質相内を進展することになるので、その効果は却って低下することになる。こうした観点から、本発明の鋼材においては、軟質相と硬質相とからなる複合組織において、硬質相のビッカース硬さHvと軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)は1.5〜5.0の範囲内に制御する必要がある。
即ち、上記比(Hv1/Hv2)の値を1.5以上とすることによって、亀裂先端の転位の移動時における軟質相と硬質相の界面亀裂先端の塑性域が変化し、屈曲、停留、分岐が起こるので、亀裂進展速度が低下することになる。但し、硬質相の硬度が高くなり過ぎると、上述の如く、硬質相が亀裂先端の応力により脆性破壊を起こすようになり、亀裂進展抑制効果が低下することになるので、上記比(Hv1/Hv2)の値を5.0以下とする必要がある。この比の値の好ましい下限は1.7であり、より好ましくは2.0以上であり、好ましい上限は4.5であり、より好ましくは4.0以下である。更には、硬質相と軟質相の界面を一定以上確保する必要があり、そのためには、硬質相および軟質相の割合を適切に制御する必要がある。こうした観点から軟質相の割合は20〜90面積%とするのが好ましい。尚、以下では、上記比(Hv/Hv)を「硬さ比」と呼ぶことがある。
本発明の鋼材における軟質相とは、フェライト、焼戻しベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトよりなる群から選ばれる1種以上が挙げられ、硬質相としては、ベイナイトおよび/またはマルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)が挙げられる。また本発明の鋼材の組織は、第1相としての軟質相と第2相としての硬質相を含むものであればよいが、必ずしも2相組織である必要はなく、上記した各相を3種或は4種以上を含む複合組織であっても良い。但し、パーライトは、ミクロ的には軟質のフェライトと脆性破壊し易い硬質のセメンタイトが縞状に存在する組織であり、上記効果が得られにくいので、いずれの相にも含まれないものである。また軟質相と硬質相はその合計で95%面積%以上とすることが好ましい(残部は、「パーライト」等、他の組織であっても構わない)。
亀裂進展は、上記硬質相/軟質相境界、粒界において屈曲、停留、分岐を起こすことで亀裂進展速度が低下することになる。軟質相の粒径が粗大になると、亀裂進展の抵抗となる硬質相/軟質相境界、粒界に衝突する頻度が低下するので、亀裂進展速度が低下しないことになる。本発明の鋼材においては、後に示す製造方法を適用することで(例えば過冷を行なうことによって)、核生成サイトが増加し、フェライトが微細化することに伴い、硬質相も微細に分散することになる。これによって、亀裂が進展する際に硬質相に遭遇する確率が平均化して、遭遇する頻度が上昇するので、亀裂進展速度が低下するという効果が得られることになる。こうした観点から、本発明の鋼材においては、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下であることも必要である(粒径測定方法については、後述する)。この軟質相の粒径は、好ましくは15μm以下とするのが良い。
本発明の鋼材では、その鋼材としての基本的特性を満足させるために、C、Si、Mn、P、S、Al等の基本成分の他、前記(1)式に関与する成分であるB、N、Ti等も適切に調整する必要があるが、まずB,N,Ti等の範囲限定理由は次の通りである。
[B:0.0006〜0.0020%]
Bは、BNを生成することによりHAZ靭性に有害な固溶Nを固定する上、粒内フェライトの生成を促進する作用を有する。また固溶Bは、粒界フェライトの粗大化およびフェライトサイドプレートの生成を抑制し、オーステナイト粒内の結晶粒を微細化する効果も有する。該作用効果を十分発揮させるには、Bを0.0006%以上含有させる必要がある。一方、Bが多過ぎると、過剰の固溶Bの作用により結晶が一定方向に形成され、HAZ靭性が却って劣化する。よってB含有量は、0.0020%以下に抑える。尚、B含有量の好ましい下限は0.0009%であり、好ましい上限は0.0018%である。
[N:0.0045〜0.0090%]
Nは、TiやAl等の元素と窒化物を形成してHAZ靭性を向上させる元素であるため、0.0045%以上(好ましくは0.0060%以上)含んでいてもよい。尚、固溶Nは、HAZの靭性を劣化させる原因となる。全窒素量の増加により、先述の窒化物は増加するが固溶Nも過剰となるため、本発明ではN含有量を0.0090%以下に抑える。
[Ti:0.008〜0.020%]
Tiは、TiN系析出物を生成して粒内フェライトの生成を促進すると共に、オーステナイト粒の粗大化抑制にも有効な元素である。また、高強度化に寄与する元素でもある。こうした作用を有効に発揮させるには、Tiを0.008%以上含有させる必要があり、好ましくは0.012%以上である。しかし、Tiを過剰に含有させると、却ってHAZ靭性の低下を招くため0.020%以下とする。
本発明では、上記の通り、個々の規定量のB、Ti、Nのバランスを最適化すると共に、一定量のNbを添加する。Nbは、粗大な粒界フェライトの生成を十分に抑制し、オーステナイト粒内の結晶粒微細化を達成させるのに有用な元素である。本発明では、この様な効果を十分発揮させるべくNbを0.005%以上含有させる。しかし過剰に含まれていると、硬質相のMA(Martensite−Austenite constituent)が生成し易く、また結晶が一定方向に形成され、HAZ靭性の劣化を招くので、0.016%以下に抑える。
HAZの低温靭性をより確実に高めるには、更にC、Siを低減させることが有効である。本発明では、硬質相であるMAのHAZにおける生成を抑制し、約−60℃でのHAZ靭性を確保すべく、C量を0.09%以下に抑える。一方、Cは、鋼板の強度確保に必須の元素でもあることから、0.03%以上含有させる。
更に、Siも0.25%以下に低減することにより、MAの生成を十分に抑制でき、HAZの低温靭性を容易に確保することができる。一方、Siは、溶鋼の脱酸に使用されると共に強度向上に有効に作用する元素であるため、0.01%以上含まれていてもよく、好ましくは0.05%以上含有させる。
尚、上記の通りHAZ靭性を確実に高めると共に、鋼板(母材)の強度や靭性等その他の特性を具備させるには、上記以外の成分の含有量を下記範囲内とする必要がある。
[Mn:1.20〜1.60%]
Mnは、SをMnSとして捕捉し、SによるHAZ靭性の劣化を抑制するのに有用な元素である。また、焼入れ性を高めて鋼板の高強度化(高引張強度TS化と高降伏強度YS化)に寄与する元素でもある。こうした作用を有効に発揮させるには、Mnを1.20%以上含有させる必要がある。しかし、Mn量が過剰になるとHAZ靭性が却って劣化するため、1.60%以下に抑える。
[P:0.010%以下(0%を含まない)]
Pは、HAZ靭性を劣化させる元素であるため極力低減する必要があり、本発明では0.010%以下に抑える。
[S:0.003%以下(0%を含まない)]
Sは、粗大な硫化物を生成してHAZ靭性を劣化させる元素である。よって極力低減する必要があり、本発明では0.003%以下に抑える。
[Al:0.02〜0.04%]
Alは、脱酸剤として使用されると共に、AlN系析出物を生成して大入熱溶接時のHAZ靭性を向上させる元素であり、本発明では0.02%以上含有させる。しかしAl含有量が過剰になると、アルミナ等の酸化物系介在物が増大すると共に、MAの生成が促進されHAZ靭性が劣化するので、0.04%以下に抑える。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物であり、該不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素の混入が許容され得る。また、更に下記元素を積極的に含有させることも可能である。
[Cu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.8%以下(0%を含まない)、およびV:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上(但し、下記式(2)の範囲内とする)]
(Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4 …(2)
{式中、Cu,Ni,NbおよびVは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
Cu、Ni、Vは、いずれも強度確保に有用な元素である。Cuは、固溶強化および析出強化により強度(引張強さTSと降伏強さYS)を高めるのに有効な元素である。しかし過剰に含有させると、熱間加工性を阻害させるため0.5%以下に抑える。
Niは、母材の強度と靭性を同時に向上させる元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.2%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰な添加はコストアップとなるため0.8%以下に抑える。
Vは、焼入れ性を高めて高強度を確保すると共に、焼戻し軟化抵抗を高めるのに有用な元素である。しかし過剰に含まれると、HAZ靭性が劣化するため0.05%以下に抑える。
また本発明では、前述の通りNbを0.016%以下に抑制すると共に、Cu、Ni、Nb、Vの含有量を下記式(2)の通り制限することにより、Cu、NiおよびVよりなる群から選択される1種以上を含有させる場合であっても、優れたHAZ靭性を確保することができる。
図2は、0.06%C−0.20%Si−1.4%Mn−0.03%Al−0.014Ti−0.0014%B−0.0065%Nを基本成分とし、Cu:0.5%以下、Ni:0.8%以下、およびV:0.05%以下よりなる群から選択される1種以上と規定量のNbを、(Cu+Ni+60Nb+20V)が種々の値となるよう含んだ鋼板を用いて、熱サイクル試験を行い、HAZの低温靭性(vE-60)を後述する実施例の通り測定し、これらの結果を整理したものである。尚、熱サイクル試験は、溶接入熱:60kJ/cm(板厚12mm)を想定して、1400℃×5secに加熱保持後、800℃から500℃までを150secで冷却したものである。
この図2より、Cu:0.5%以下、Ni:0.8%以下およびV:0.05%以下よりなる群から選択される1種以上を含有させる場合、HAZの低温靭性としてvE-60:100J以上を達成させるには、下記式(2)に示す通り、(Cu+Ni+60Nb+20V)の値が1.4%以下となるようにする必要があることが分かる。Nbを0.016%以下に抑制すると共に、上記の通りCu、Ni、Nb、Vの含有量を総合的に制限することにより、硬質相であるMAの生成を抑制して、優れたHAZ靭性を確保することができる。
(Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4(%) …(2)
{式中、Cu、Ni、Nb、Vは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
[Ca:0.003%以下(0%を含まない)]
Caは、HAZ靭性に悪影響を及ぼすSをCaSとして固定すると共に、非金属介在物を粒状に形態制御して靭性を向上させるのに有効な元素である。この様な効果を十分発揮させるには、Caを0.0010%以上含有させることが好ましいが、過剰に含有させても、これらの効果は飽和しHAZ靭性が却って劣化する。よってCa含有量は、0.003%以下とすることが好ましい。
上記のような組織にして本発明の鋼材を製造するには、例えば下記に示す(1)、(2)の方法によって、硬質相と軟質相を適切に制御して、疲労亀裂進展抵抗性およびHAZの低温靭性に優れた鋼板を得ることができる。
(1)上記のような化学成分組成を有する鋼片を、950℃以上、1250℃以下に加熱し、(加熱温度〜Ar3変態点)の温度範囲で圧延を終了し、10℃/秒以上の冷却速度で1回目の加速冷却を行い組織をオーステナイト(γ)分率を90面積%以上に保ったままで、γを600〜700℃で過冷状態とした後、当該温度域で30〜100秒保持し(0.5℃/秒以下の冷却速度で放冷しても良い)、その後400℃以下まで5℃/秒以上の冷却速度で2回目の加速冷却を実施する。この方法で各条件の範囲設定理由は次の通りである。
加熱温度:950℃未満では、圧延温度が低くなり過ぎたり、十分なオーステナイトが生じず、鋳造組織が残存し、特性が劣化する可能性がある。一方、1250℃を超えるとオーステナイト粒が粗大化し、母材靭性が劣化するため、950〜1250℃で加熱する必要がある。
圧延温度:圧延温度がAr3変態点未満となると、組織に異方性が生じ、衝撃吸収エネルギーが低下する恐れがある上、製造上は圧延負荷が高まり、生産性が低下することになる。
1回目の加速冷却速度:加速冷却を行なうことによって、γが過冷状態となり、低温まで変態が抑制される。その後、低温で変態することで、変態の駆動力が高く、組織が均一微細なフェライトが生成する。冷却速度が20℃/秒未満では、加速冷却中に一部変態が生じ、組織の均一微細化が達成されないことになる。
冷却停止温度:停止温度が600℃未満では、フェライトがアシキュラー状になってしまう、或いは組織がベイナイトまたはマルテンサイトといった硬質相のみとなってしなうことになる。アシキュラー状のフェライトは、靭性は良いが、ポリゴナルフェライトに対して硬度が高く、第2相との硬度差が減少してしまうため、相境界における亀裂進展抑制効果は少ない。その一方で、冷却停止温度が700℃を超えると、所定の保持温度では変態が遅く、十分なフェライト分率(例えば、20面積%以上)が確保できなくなってしまったり、結晶粒が粗大になり、靭性が劣化してしまうことになる。
冷却後の保持時間:この保持時間が30秒未満では変態が十分でなく、フェライト分率が十分でない上、Cが未反応のγに濃縮する余裕がなくなってしまう。また保持時間が100秒を超えると、生産性が低下すると共に、平衡状態に近づき、パーライトの生成が見られるようになる。このパーライトは、フェライトとセメンタイトが層状組織となっているものであるが、セメンタイトは脆く、亀裂先端で脆性破壊を起こすので、亀裂進展抑制効果が小さいものとなる。
2回目の加速冷却速度:この冷却速度が5℃/秒未満では、冷却段階で未変態のオーステナイトからフェライト+パーライトが生成し、硬質相の硬度が十分とならない。
最終冷却停止温度:このときの停止温度が400℃を超えると、自己焼き戻しによって、硬質相が軟化してしまい、硬度が十分に確保できなくため、冷却停止温度は400℃以下とする必要があり、好ましくは300℃以下とするのが良い。
(2)上記のような化学成分組成を有する鋼片を、950℃以上、1250℃以下に加熱し、加熱温度〜Ar3変態点の温度範囲で圧延を終了した後、Ac3変態点以上の温度に再加熱し、焼入れ処理を行い、その後再度(Ac3変態点+30℃)〜(Ac3変態点−30℃)の温度域に再加熱し、その後5℃/秒以上の冷却速度で2回目の焼入れ処理を行うことにより達成できる。尚、Ac3変態点以上の再加熱焼入れの代りに、オンラインでAr3以上からの10℃/秒以上の冷却速度で加速冷却を行っても同様の硬化が得られる。
この方法では、再加熱前の組織を焼入れ組織とすることによって、組織単位を微細にすることができ、Ac変態点以上に再加熱することで、高温焼戻しベイナイト、若しくは焼戻しマルテンサイト+オーステナイト組織となる。焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトから炭化物が逆変態オーステナイトへ拡散し、焼戻しベイナイト、マルテンサイトの硬度が大きく下がると共に、その後の加速冷却によってCが濃縮したγが硬質相に変態することで、硬質相と軟質相の複合組織とすることができる。この方法で各条件の範囲設定理由は次の通りである。
加熱温度:950℃未満では、圧延温度が低くなり過ぎ、1250℃を超えるとオーステナイト粒が粗大化し、母材靭性が劣化するため、950〜1250℃で加熱する必要がある。
圧延温度:圧延温度がAr3変態点未満となると、組織に異方性が生じ、衝撃吸収エネルギーが低下する恐れがある上、製造上は圧延負荷が高まり、生産性が低下することになる。
冷却速度、冷却停止温度:冷却速度が10℃/秒未満であったり、冷却停止温度が400℃を超えると、組織が焼入れ組織にならないため、粒径が粗大になり、靭性とともに疲労亀裂進展抵抗性が低下する。
再加熱温度:(Ac1変態点+30℃)未満では、α→γ変態が殆ど起こらず、十分な硬質相を確保することができない。(Ac3変態点+30℃)を超えると、再加熱後に殆どがα→γ変態してしまい、その後の焼入れで全て硬質相となってしまう。
2回目の加速冷却速度:この冷却速度が5℃/秒未満では、硬質相の硬度が十分とならない。
最終冷却停止温度:このときの停止温度が400℃を超えると、自己焼き戻しによって、硬質相が軟化してしまい、硬度が十分に確保できなくため、冷却停止温度は400℃以下とする必要があり、好ましくは300℃以下とするのが良い。
尚、上記で示した温度は、鋼板の平均的な性能を発揮する位置として、板厚t/4部(t:板厚)の位置の温度で管理したものである。また、本発明の鋼材は、いわゆる厚鋼板に有利に適用できる。このときの板厚は、約7mm以上であり上限は特に限定されないが、通常40mm以下程度である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例
によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
下記表1に示す化学成分組成の鋼材を転炉で溶製し、連続鋳造および熱間圧延により各種鋼板を製作した。表1に示した変態点(Ar3、Ar1、Ac1、Ac3)は下記(3)〜(6)式によって求められた値である。このときの製造条件を表3、4に示す。尚、このときの温度については、t/4(tは板厚)の位置における温度で管理したものであり、詳細な温度管理の手順は下記の通りである。
Ar3=868―369・[C]+24.6・[Si]−68.1・[Mn]−36.1
・[Ni]−20.7・[Cu]−24.8・[Cr]+190・[V]…(3)
Ar1=630.5+51.6・[C]+122.4・[Si]−64.8・[Mn]
…(4)
Ac1=723−14・[Mn]+22・[Si]−14.4・[Ni]+23.3・
[Cr] …(5)
Ac3=908−223.7・[C]+43.85・[P]+30.49・[Si]−34.3・[Mn]+37.92・[V]−23.5・[Ni] …(6)
但し、[C],[Si],[Mn],[Ni],[Cu],[Cr],[V]および[P]は、夫々C,Si,Mn,Ni,Cu,Cr,VおよびPの含有量(質量%)を示す。
Figure 0005147275
Figure 0005147275
[温度管理の手順]
1.プロセスコンピュータを用い、加熱開始から加熱終了までの雰囲気温度や在炉時間に基づいて鋼片の表面から裏面までの任意の位置(例えば、t/4位置)の加熱温度を算出する。
2.算出した加熱温度を用い、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)のデータに基づいて、板厚方向の任意の位置における圧延温度を差分法など計算に適した方法を用いて計算しつつ圧延を実施する。
3.鋼板の表面温度は圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて実測する。但し、プロセスコンピュータでも理論値を計算しておく。
4.粗圧延開始時、粗圧延終了時、仕上げ圧延開始時にそれぞれ実測した鋼板の表面温度を、プロセスコンピュータから算出される計算温度と照合する。
5.計算温度と実測温度の差が±30℃以上の場合は、計算表面温度が実測温度と一致するように再計算してプロセスコンピュータ上の計算温度とし、±30℃未満の場合は、プロセスコンピュータから算出された計算温度をそのまま用いる。
6.上記算出された計算温度を用い、制御対象としている領域の圧延温度を管理する。
Figure 0005147275
Figure 0005147275
上記の様にして得られた各鋼板について、疲労亀裂進展速度、(硬質相/軟質相)の硬さ比(Hv1/Hv2)、および軟質相の粒径、鋼板(母材)およびHAZの靭性の評価を、それぞれ下記の要領で実施した。
[疲労亀裂進展速度]
熱間圧延材を切断し、ASTM E647に準拠し、コンパクト型試験片を用いて、疲労亀裂進展試験を実施することによって、疲労亀裂進展速度を求めた。この際、下記(7)式によって規定されるパリス則が成り立つ安定成長領域ΔK=20(MPa・√m)での値を代表値として評価した。尚、疲労亀裂進展速度の評価、基準については、通常の鋼材が4.0〜6.0×10-5mm/cycle(ΔK=20のとき)程度の進展速度であることから、3.5×10-5mm/cycle以下を基準とした。
da/dn=C(ΔK) …(7)
但し、a:亀裂長さ,n:繰り返し数,C,m:材料、荷重等の件で決まる定数を夫々示す。
[(硬質相/軟質相)の硬さ比]
硬質相のビッカース硬さHv1、および軟質相のビッカース硬さHv2を、10gfのマイクロビッカース硬度計を用いて測定し、各5点の平均値を求め、硬さ比(Hv1/Hv2)を計算した。
[軟質相の粒径の測定方法]
(a)鋼材の圧延方向と平行な方向で切断し、板厚の表裏面部を含むサンプルを準備した。
(b)♯150〜♯1000までの湿式エメリー研磨紙若しくはそれと同等の機能を有する研磨方法を用いて研磨し、ダイヤモンドスラリー等の研磨材を用いて鏡面仕上げを施した。
(c)研磨されたサンプルを、3%ナイタール溶液(腐食液)を用いて腐食し、軟質相の結晶粒界を現出させた。
(d)現出させた組織を100倍若しくは400倍の倍率で写真撮影し(6cm×8cmの写真として撮影)、画像解析装置に取り込んだ(100倍では600μm×800μm、400倍では150μm×200μmに相当)。この取り込みに当っては、いずれの倍率においても、1mm×1mmに相当する枚数(100倍では少なくとも6枚の視野、400倍では35枚分の視野)を取り込んだ。
(e)画像解析装置において、一つの粒界に囲まれた領域と同等の面積を有する円に換算し、換算された円の直径を円相当軟質相の粒径と定義した。
(f)全ての視野について測定された値の平均値を平均円相当軟質相粒径として算出した。
[母材靭性の評価]
各鋼板の表面側から1mm削った部位から、圧延方向にJIS Z 2202のVノッチ試験片を採取して、JIS Z 2242の要領でシャルピー衝撃試験を行い、試験温度:−60℃での吸収エネルギー(vE-60)を測定した。そして、該吸収エネルギー(vE-60)が100J以上のものを優れた母材靭性を具備していると評価した。
[HAZ靭性の評価]
上記鋼板を用いた片面サブマージアーク溶接をFCB法で実施した。FCB法は銅板の上に裏当てフラックスを敷き、開先裏面に押し当て、表面片側から裏ビードを形成しながら溶接を完了させる方法であり、造船等の板継ぎ溶接で一般的に適用されている。開先形状を図3[(a)は板厚12mmの場合、(b)は板厚30mmの場合]に示す。溶接材料は、下記の低温用鋼溶接材料(神戸製鋼所製)を使用し、図4および表5の溶接条件で溶接継手を作製した。
[溶接材料]
・ワイヤ;US−255
・表フラックス;PFI−50LT
・裏当てフラックス;MF−1R
Figure 0005147275
そして、表面側から1mm削り、HAZ(ボンド部、ボンド部+1mm[HAZ1mm])の位置に板表面に垂直に切欠きを入れたJIS Z 2202のVノッチ試験片を、それぞれ3個採取し、JIS Z 2242の要領でシャルピー衝撃試験を行った。そして、吸収エネルギーの平均値が100J以上のものを、HAZの低温靭性に優れると評価した。
疲労試験進展速度の測定結果、硬さ比および軟質相粒径(円相当直径)を、母材靭性、HAZ靭性および溶接条件(施工法、入熱量)と共に一括して下記表6、7に示す。
Figure 0005147275
Figure 0005147275
これらの結果から、次の様に考察することができる(尚、下記No.は、表中の実験No.を示す)。
本発明で規定する要件を満たすNo.1〜8、10〜14、18〜22の鋼板は、HAZの低温靭性に優れていると共に、母材特性(靭性、疲労亀裂進展抑制特性)も優れた鋼板であり、該鋼板を、大入熱片面サブマージアーク溶接法で溶接し、低温条件の用途に用いる場合にも優れた特性を発揮する。
これに対し、本発明の規定を満足しないNo.9、15〜17、23〜42は、夫々、以下の不具合を有している。即ち、No.9は焼戻しベイナイトの単相組織となっており、No.17はベイナイトの単相組織となっており、いずれも疲労亀裂進展抑制特性に劣っている。No.15は、硬さ比が1.3であり、No.16は軟質相粒径が粗大になっており、いずれも疲労亀裂進展抑制特性に劣っている。
No.23は、C量が上限を超えており、またNo.24は、Si量が上限を超えているため、HAZ靭性に劣っている。No.25は、Mn量が不足しているためHAZ靭性が劣ると共に、硬さ比が本発明で規定する値に満たないので、疲労亀裂進展抑制特性が劣っている。No.26は、Mn量が過剰であるため、優れたHAZ靭性を確保できていない。
No.27はP量が過剰であり、またNo.28はS量が過剰であるため、いずれもHAZ靭性に劣っている。No.29はAl量が不足しており、No.30はAl量が過剰であるため、HAZ靭性に劣っている。また、No.31はNb量が不足しており、No.32はNb量が過剰であるため、いずれもHAZ靭性に劣っている。
No.33はTi量が不足しており、No.34はTi量が過剰であるため、HAZ靭性に劣っている。No.35はB量が不足しており、No.36はB量が過剰であるため、いずれもHAZ靭性に劣っている。またNo.37はN量が不足しており、一方、No.38はN量が過剰であるため、いずれもHAZ靭性に劣っている。
No.39は、(B−NT/1.3)が式(1)の下限を下回っており、またNo.40は、(B−NT/1.3)が式(1)の上限を上回っているため、いずれもHAZ靭性に劣っている。
No.41、42は、Cu、NiおよびVよりなる群から選択される1種以上を含むものであるが、式(2)の上限を上回っているため、HAZ靭性に劣っている。
(B−NT/1.3)とHAZのvE-60との関係を示すグラフである。 (Cu+Ni+60Nb+20V)とHAZのvE-60との関係を示すグラフである。 実施例での溶接における開先形状の断面図を示す。 FCB溶接時の電極配置の模式図を示す。

Claims (4)

  1. C:0.03〜0.09%(「質量%」の意味、以下同じ)、Si:0.01〜0.25%、Mn:1.20〜1.60%、P:0.010%以下(0%を含まない)、S:0.003%以下(0%を含まない)、Al:0.02〜0.04%、Nb:0.005〜0.016%、B:0.0006〜0.0020%、N:0.0045〜0.0090%、Ti:0.008〜0.020%を夫々含有すると共に、下記式(1)を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、且つ組織が軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)が1.5〜5.0であり、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下であることを特徴とする疲労亀裂進展抵抗性および溶接熱影響部の低温靭性に優れた鋼材。
    −20≦(B−NT/1.3)≦10 …(1)
    {式中、BはB含有量(質量ppm)を示す。
    またNTは、
    N(N含有量、単位:質量ppm)とTi(Ti含有量、単位:質量ppm)の関係が、
    (N−Ti/3.4)≧0である場合には、NT=(N−Ti/3.4)、
    (N−Ti/3.4)<0である場合には、NT=0を示す}
  2. 前記軟質相は、フェライト、焼戻しベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトよりなる群から選ばれる1種以上であり、硬質相は、ベイナイトおよび/またはマルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)である請求項1に記載の鋼材。
  3. 更に、Cu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.8%以下(0%を含まない)、およびV:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を、下記式(2)を満たすように含む請求項1または2に記載の鋼材。
    (Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4 …(2)
    {式中、Cu、Ni、Nb、Vは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
  4. 更に、Ca:0.003%以下(0%を含まない)を含む請求項1〜3のいずれかに記載の鋼材。
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