JP5147275B2 - 疲労亀裂進展抵抗性および溶接熱影響部の低温靭性に優れた鋼材 - Google Patents
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−20≦(B−NT/1.3)≦10 …(1)
{式中、BはB含有量(質量ppm)を示す。
またNTは、
N(N含有量、単位:質量ppm)とTi(Ti含有量、単位:質量ppm)の関係が、
(N−Ti/3.4)≧0である場合には、NT=(N−Ti/3.4)、
(N−Ti/3.4)<0である場合には、NT=0を示す}
(Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4 …(2)
{式中、Cu、Ni、Nb、Vは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
その結果、
(a)Cを0.09%以下、Siを0.25%以下と比較的低めに設定した上で、規定量のB、NおよびTiのバランスを最適化し、且つ一定量のNbを添加すれば、オーステナイト粒界からの粗大なフェライト(以下、単に「粒界フェライト」ということがある)の生成が十分に抑制され、オーステナイト粒内の結晶粒微細化を達成できる、
(b)更には、強度をより高めるべくCu、Ni、Vを添加する場合に、このCu、Ni、VとNbの含有量を総合的に制御すれば、HAZ靭性の劣化を抑制できる、
との着想のもとでその具体的方法を見出した。
(N−Ti/3.4)≧0である場合には、NT=(N−Ti/3.4)、
(N−Ti/3.4)<0である場合には、NT=0を示す。
以下、式(1)についても同じ}
を種々の値とした鋼板を用いて、熱サイクル試験を行い、HAZの低温靭性(vE-60)を後述する実施例の通り測定し、これらの結果を整理したものである。尚、熱サイクル試験は、溶接入熱:60kJ/cm(板厚12mm)を想定して、1400℃×5secに加熱保持後、800℃から500℃までを150secで冷却した。
−20≦(B−NT/1.3)≦10 …(1)
Bは、BNを生成することによりHAZ靭性に有害な固溶Nを固定する上、粒内フェライトの生成を促進する作用を有する。また固溶Bは、粒界フェライトの粗大化およびフェライトサイドプレートの生成を抑制し、オーステナイト粒内の結晶粒を微細化する効果も有する。該作用効果を十分発揮させるには、Bを0.0006%以上含有させる必要がある。一方、Bが多過ぎると、過剰の固溶Bの作用により結晶が一定方向に形成され、HAZ靭性が却って劣化する。よってB含有量は、0.0020%以下に抑える。尚、B含有量の好ましい下限は0.0009%であり、好ましい上限は0.0018%である。
Nは、TiやAl等の元素と窒化物を形成してHAZ靭性を向上させる元素であるため、0.0045%以上(好ましくは0.0060%以上)含んでいてもよい。尚、固溶Nは、HAZの靭性を劣化させる原因となる。全窒素量の増加により、先述の窒化物は増加するが固溶Nも過剰となるため、本発明ではN含有量を0.0090%以下に抑える。
Tiは、TiN系析出物を生成して粒内フェライトの生成を促進すると共に、オーステナイト粒の粗大化抑制にも有効な元素である。また、高強度化に寄与する元素でもある。こうした作用を有効に発揮させるには、Tiを0.008%以上含有させる必要があり、好ましくは0.012%以上である。しかし、Tiを過剰に含有させると、却ってHAZ靭性の低下を招くため0.020%以下とする。
Mnは、SをMnSとして捕捉し、SによるHAZ靭性の劣化を抑制するのに有用な元素である。また、焼入れ性を高めて鋼板の高強度化(高引張強度TS化と高降伏強度YS化)に寄与する元素でもある。こうした作用を有効に発揮させるには、Mnを1.20%以上含有させる必要がある。しかし、Mn量が過剰になるとHAZ靭性が却って劣化するため、1.60%以下に抑える。
Pは、HAZ靭性を劣化させる元素であるため極力低減する必要があり、本発明では0.010%以下に抑える。
Sは、粗大な硫化物を生成してHAZ靭性を劣化させる元素である。よって極力低減する必要があり、本発明では0.003%以下に抑える。
Alは、脱酸剤として使用されると共に、AlN系析出物を生成して大入熱溶接時のHAZ靭性を向上させる元素であり、本発明では0.02%以上含有させる。しかしAl含有量が過剰になると、アルミナ等の酸化物系介在物が増大すると共に、MAの生成が促進されHAZ靭性が劣化するので、0.04%以下に抑える。
(Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4 …(2)
{式中、Cu,Ni,NbおよびVは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
(Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4(%) …(2)
{式中、Cu、Ni、Nb、Vは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
Caは、HAZ靭性に悪影響を及ぼすSをCaSとして固定すると共に、非金属介在物を粒状に形態制御して靭性を向上させるのに有効な元素である。この様な効果を十分発揮させるには、Caを0.0010%以上含有させることが好ましいが、過剰に含有させても、これらの効果は飽和しHAZ靭性が却って劣化する。よってCa含有量は、0.003%以下とすることが好ましい。
によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
Ar3=868―369・[C]+24.6・[Si]−68.1・[Mn]−36.1
・[Ni]−20.7・[Cu]−24.8・[Cr]+190・[V]…(3)
Ar1=630.5+51.6・[C]+122.4・[Si]−64.8・[Mn]
…(4)
Ac1=723−14・[Mn]+22・[Si]−14.4・[Ni]+23.3・
[Cr] …(5)
Ac3=908−223.7・[C]+43.85・[P]+30.49・[Si]−34.3・[Mn]+37.92・[V]−23.5・[Ni] …(6)
但し、[C],[Si],[Mn],[Ni],[Cu],[Cr],[V]および[P]は、夫々C,Si,Mn,Ni,Cu,Cr,VおよびPの含有量(質量%)を示す。
1.プロセスコンピュータを用い、加熱開始から加熱終了までの雰囲気温度や在炉時間に基づいて鋼片の表面から裏面までの任意の位置(例えば、t/4位置)の加熱温度を算出する。
2.算出した加熱温度を用い、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)のデータに基づいて、板厚方向の任意の位置における圧延温度を差分法など計算に適した方法を用いて計算しつつ圧延を実施する。
3.鋼板の表面温度は圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて実測する。但し、プロセスコンピュータでも理論値を計算しておく。
4.粗圧延開始時、粗圧延終了時、仕上げ圧延開始時にそれぞれ実測した鋼板の表面温度を、プロセスコンピュータから算出される計算温度と照合する。
5.計算温度と実測温度の差が±30℃以上の場合は、計算表面温度が実測温度と一致するように再計算してプロセスコンピュータ上の計算温度とし、±30℃未満の場合は、プロセスコンピュータから算出された計算温度をそのまま用いる。
6.上記算出された計算温度を用い、制御対象としている領域の圧延温度を管理する。
熱間圧延材を切断し、ASTM E647に準拠し、コンパクト型試験片を用いて、疲労亀裂進展試験を実施することによって、疲労亀裂進展速度を求めた。この際、下記(7)式によって規定されるパリス則が成り立つ安定成長領域ΔK=20(MPa・√m)での値を代表値として評価した。尚、疲労亀裂進展速度の評価、基準については、通常の鋼材が4.0〜6.0×10-5mm/cycle(ΔK=20のとき)程度の進展速度であることから、3.5×10-5mm/cycle以下を基準とした。
da/dn=C(ΔK)m …(7)
但し、a:亀裂長さ,n:繰り返し数,C,m:材料、荷重等の件で決まる定数を夫々示す。
硬質相のビッカース硬さHv1、および軟質相のビッカース硬さHv2を、10gfのマイクロビッカース硬度計を用いて測定し、各5点の平均値を求め、硬さ比(Hv1/Hv2)を計算した。
(a)鋼材の圧延方向と平行な方向で切断し、板厚の表裏面部を含むサンプルを準備した。
(b)♯150〜♯1000までの湿式エメリー研磨紙若しくはそれと同等の機能を有する研磨方法を用いて研磨し、ダイヤモンドスラリー等の研磨材を用いて鏡面仕上げを施した。
(c)研磨されたサンプルを、3%ナイタール溶液(腐食液)を用いて腐食し、軟質相の結晶粒界を現出させた。
(d)現出させた組織を100倍若しくは400倍の倍率で写真撮影し(6cm×8cmの写真として撮影)、画像解析装置に取り込んだ(100倍では600μm×800μm、400倍では150μm×200μmに相当)。この取り込みに当っては、いずれの倍率においても、1mm×1mmに相当する枚数(100倍では少なくとも6枚の視野、400倍では35枚分の視野)を取り込んだ。
(e)画像解析装置において、一つの粒界に囲まれた領域と同等の面積を有する円に換算し、換算された円の直径を円相当軟質相の粒径と定義した。
(f)全ての視野について測定された値の平均値を平均円相当軟質相粒径として算出した。
各鋼板の表面側から1mm削った部位から、圧延方向にJIS Z 2202のVノッチ試験片を採取して、JIS Z 2242の要領でシャルピー衝撃試験を行い、試験温度:−60℃での吸収エネルギー(vE-60)を測定した。そして、該吸収エネルギー(vE-60)が100J以上のものを優れた母材靭性を具備していると評価した。
上記鋼板を用いた片面サブマージアーク溶接をFCB法で実施した。FCB法は銅板の上に裏当てフラックスを敷き、開先裏面に押し当て、表面片側から裏ビードを形成しながら溶接を完了させる方法であり、造船等の板継ぎ溶接で一般的に適用されている。開先形状を図3[(a)は板厚12mmの場合、(b)は板厚30mmの場合]に示す。溶接材料は、下記の低温用鋼溶接材料(神戸製鋼所製)を使用し、図4および表5の溶接条件で溶接継手を作製した。
[溶接材料]
・ワイヤ;US−255
・表フラックス;PFI−50LT
・裏当てフラックス;MF−1R
Claims (4)
- C:0.03〜0.09%(「質量%」の意味、以下同じ)、Si:0.01〜0.25%、Mn:1.20〜1.60%、P:0.010%以下(0%を含まない)、S:0.003%以下(0%を含まない)、Al:0.02〜0.04%、Nb:0.005〜0.016%、B:0.0006〜0.0020%、N:0.0045〜0.0090%、Ti:0.008〜0.020%を夫々含有すると共に、下記式(1)を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、且つ組織が軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)が1.5〜5.0であり、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下であることを特徴とする疲労亀裂進展抵抗性および溶接熱影響部の低温靭性に優れた鋼材。
−20≦(B−NT/1.3)≦10 …(1)
{式中、BはB含有量(質量ppm)を示す。
またNTは、
N(N含有量、単位:質量ppm)とTi(Ti含有量、単位:質量ppm)の関係が、
(N−Ti/3.4)≧0である場合には、NT=(N−Ti/3.4)、
(N−Ti/3.4)<0である場合には、NT=0を示す} - 前記軟質相は、フェライト、焼戻しベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトよりなる群から選ばれる1種以上であり、硬質相は、ベイナイトおよび/またはマルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)である請求項1に記載の鋼材。
- 更に、Cu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.8%以下(0%を含まない)、およびV:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を、下記式(2)を満たすように含む請求項1または2に記載の鋼材。
(Cu+Ni+60Nb+20V)≦1.4 …(2)
{式中、Cu、Ni、Nb、Vは、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す} - 更に、Ca:0.003%以下(0%を含まない)を含む請求項1〜3のいずれかに記載の鋼材。
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