JP4721956B2 - 母材靱性と疲労亀裂進展特性に優れた厚鋼板 - Google Patents

母材靱性と疲労亀裂進展特性に優れた厚鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、船舶・海洋構造物、橋梁、建築物等の繰り返し荷重下で使用されるのに適する疲労亀裂進展特性に優れた構造用鋼に関する。
船舶・海洋構造物、橋梁、建築物等では、通常、板厚6mm以上の厚鋼板が用いられ、溶接により接合され組み立てられる。溶接部では応力集中が起こりやすいため疲労亀裂の発生を避けることは非常に難しい。しかし、疲労亀裂が発生しても、鋼板の亀裂進展速度が遅ければ、構造物の破壊を引き起こす前に定期点検等で亀裂を発見し、補修することが可能となる。
鋼材の疲労亀裂進展を抑制する技術として、特許文献1には、厚みが3μm以下、間隔が20μm以下のパーライトバンドが縞状に存在するフェライト・パーライト2相組織の鋼板が開示されている。しかし、この鋼板は、第2相のパーライトの硬さが十分高くなく、また組織が層状であるため、圧延方向の亀裂進展に対する抵抗力が十分高いとはいえなかった。
一方、鋼組織を軟質部(フェライト)と硬質部(マルテンサイト、ベイナイト)からなる複相組織とすることにより、鋼材の疲労亀裂進展を抑制する技術が従来から存在する。例えば特許文献2には、硬質部素地中に軟質部が分散した組織において、軟質部と硬質部の硬度差をHv150以上とし、特許文献3には、Hv200〜500の硬質組織中にHv100以下のフェライト組織を面積分率で10〜50%分散させることが記載されている。しかし、この複相組織の鋼板は、いずれもマルテンサイト及びベイナイトからなる硬質相を含むため、靱性(衝撃特性)が劣化するという問題があった。
特開平5−148541号公報 特開平7−242992号公報 特開2000−129392号公報
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、軟質部(フェライト)と硬質部(マルテンサイト、ベイナイト)からなる複相組織を有する厚鋼板において、疲労亀裂進展特性と、靱性の両特性を両立させることを目的とする。
本発明は、軟質部(フェライト)と硬質部(マルテンサイト、ベイナイト)からなる複相組織を有する厚鋼板において、十分微細化したフェライトと、加工オーステナイトから変態した低温変態組織(ラス長さの短いマルテンサイト、ベイナイト)を組み合わせることにより、前記両特性を向上させたものである。
すなわち本発明に係る母材靱性と疲労亀裂進展特性に優れた厚鋼板は、質量%で、C:0.030〜0.300%、Si:0.50%以下、Mn:0.80〜2.00%、Al:0.01〜0.10%、N:0.0100%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、再結晶フェライトからなる軟質部と、マルテンサイトとベイナイトの1種以上からなる硬質部とで主に構成された複相組織を有し、前記硬質部の面積分率が15〜85%、平均円相当径が10μm以上、平均硬さがHv200〜700、かつ硬質部と軟質部の平均硬さの差がHv100以上であり、さらに前記再結晶フェライト粒の平均円相当径が20μm以下、前記マルテンサイトとベイナイトの平均ラス長さが10μm以下であることを特徴とする。
上記厚鋼板の組成は、さらに(1)Cu:2.00%以下、Ni:2.00%以下、Cr:2.00%以下、Mo:0.50%以下、V:0.10%以下、Nb:0.040%、B:0.0040%以下の1種以上、(2)Ti:0.030%以下、(3)Ca:0.0005〜0.0050%、Mg:0.0001〜0.0050%の1種以上、(4)Zr:0.100以下、Hf:0.050%以下の1種以上、(5)Co:2.5%以下、W:2.5%以下の1種以上から、前記(1)〜(5)のいずれか、又は前記(1)〜(5)の2以上を組み合わせて含むことができる。
本発明によれば、軟質部(フェライト)と硬質部(マルテンサイト、ベイナイト)からなる複相組織を有する厚鋼板において、疲労亀裂進展特性と靱性の両特性を両立させることができる。
まず、本発明に係る厚鋼板の組織について説明する。
本発明に係る厚鋼板は、再結晶フェライトからなる軟質部と、マルテンサイトとベイナイトの1種以上からなる硬質部とで主に構成された複相組織を有する。この複相組織において、疲労亀裂は、図1に模式的に示すように、軟質部のフェライト中を進展し、フェライトの結晶粒界を横切り、一方、亀裂の先端が硬質部にぶつかると、そこで一時的に停滞し、その後硬質部を避けて(迂回して)、フェライト中を進展していく。複相組織の厚鋼板では、疲労亀裂がフェライトの結晶粒界を横切り、また硬質部にぶつかり迂回して進展するため、亀裂進展速度が遅延化するものと考えられる。
このように進展する疲労亀裂の進展速度の遅延化を図るには、軟質部と硬質部のそれぞれが適度の面積分率で存在する必要がある。そのため本発明では軟質部と硬質部の面積分率はいずれも15〜85%であり、好ましくは30〜70%、さらに好ましくは40〜60%である。主相であるフェライト、マルテンサイト、ベイナイト以外の組織(パーライト、残留オーステナイト)の面積分率は5%未満(0%を含む)とする。これは中途半端な硬さの組織の存在により、疲労亀裂進展特性が低下するためである。なお、以上述べた軟質部と硬質部及びその他組織の面積分率自体は、従来技術において得られた複相組織と特に違いはない。
疲労亀裂がフェライト中を進展する場合、フェライト粒径が微細であるほど亀裂が結晶粒界を横切る回数が多くなる。そのことが亀裂進展の抵抗となり疲労亀裂進展特性が向上すると考えられる。本発明において好ましいフェライト粒径は20μm以下、さらに10μm以下である。加えて、母材靱性もフェライト粒径が微細であるほど向上する。
また、亀裂進展速度は、硬質部にぶつかった疲労亀裂がその硬質部を迂回することにより遅延化すると考えられ、その作用を発現させるには硬質部は平均円相当径で10μm以上の塊である必要がある。さらに、硬質部が亀裂進展の抵抗になるにはHv200以上が必要であり、かつ軟質部との硬さの差はHv100以上が必要である。これは、亀裂が硬質部を迂回するためには硬質部にある程度以上の硬さが必要であり、かつ軟質部との硬さの差がある程度ないと迂回現象が現れにくいためである。ただし、硬質部が固くなり過ぎると母材靱性が劣化するため、硬質部の硬さはHv700以下とする。従って、硬質部の硬さはHv200〜700、好ましくはHv350〜600、さらに好ましくはHv400〜550であり、軟質部との硬さの差は好ましくはHv200以上、さらに好ましくはHv300以上、さらにHv400以上である。なお、以上述べた硬質部の硬さと軟質部と硬質部の硬さ差は、従来技術において得られた複相組織と特に違いはない。
一方、衝撃的な加重を受ける場合には、破壊亀裂が硬質部を突き抜けるため、硬質部の組織単位(下部組織であるマルテンサイトとベイナイトのブロック(結晶方位が同じラスの束)サイズ)が関係する。母材靱性を向上させるためにはマルテンサイトとベイナイトのラス長さが短いほどよく、10μm以下である必要があり、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
次に、本発明に係る厚鋼板の化学成分について個々に説明する。なお、この化学成分自体は従来の厚鋼板のものと特に違いはない。
・C:0.030〜0.300%
Cは母材強度を確保するために必要な元素であり、0.030%未満では母材強度を確保できない。しかし、0.300%超になると、鋼全体が脆性的になり、母材靱性及び疲労亀裂進展特性が低下する。従って、C含有量の下限は0.030%、好ましくは0.050%以上であり、上限は0.300%、好ましくは0.200%以下である。
・Si:0.50%以下(0%を含まない)
Siは鋼の脱酸に必要な元素であり、好ましい下限は0.10%である。しかし、高すぎると母材靱性及び疲労亀裂進展特性を低下させるため、0.50%以下にする必要がある。Si含有量の好ましい範囲は0.15〜0.40%である。
・Mn:0.80〜2.00%
Mnは焼き入れ性を向上させ母材靱性の確保に有効であるが、0.80%未満ではその作用が過少であり、一方2.00%超では母材靱性及び疲労亀裂進展特性が低下する。このため、Mn含有量の下限は0.80%、好ましくは1.00%以上、さらに好ましくは1.5%以上であり、上限は2.00%、好ましくは1.8%以下である。
・Al:0.01〜0.10%
Alは脱酸効果を有する。しかし、過多に添加するとかえって母材靱性及び疲労亀裂進展特性が低下するため、含有量の上限を0.10%とする。好ましくは0.060%以下、さらに好ましくは0.040%以下であり、一方、下限は0.01%、好ましくは0.020%以上とする。
・N:0.0100%以下(0%を含まない)
NはAlやTiと結合して、γ粒微細化に有効に働くため、微量であれば機械的特性に有効に作用する。しかし、多く含有しすぎると靱性・疲労亀裂進展特性が低下するため、含有量の上限を0.0100%にする必要があり、好ましくは0.0050%以下である。
・P:0.030%以下
不純物元素であるPは母材靱性及び疲労亀裂進展特性に悪影響を及ぼすため、0.030%以下にとどめる。好ましくは0.010%以下である。
・S:0.010%以下
SはMnSを形成して延性・疲労亀裂進展特性を低下させる元素であり、0.010%以下、好ましくは0.005%以下にとどめる。
・Cu:2.00%以下
・Ni:2.00%以下
Cu、Niは焼き入れ性を高めて強度を向上させるため、必要に応じて一方又は双方が添加される。それぞれ好ましい添加量は0.20%以上、より好ましくは0.40%以上である。しかし、それぞれ添加量が2.00%を超えると母材靱性及び疲労亀裂進展特性が低下する傾向があるため、それぞれ上限は2.00%(双方添加する場合は合計4.00%以下)とし、好ましくはそれぞれ1.00%以下とする。
・Cr:2.00%以下
CrもCu、Niと同様の効果があり、必要に応じて添加される。好ましい添加量は0.50%以上である。しかし、過剰に添加すると母材靱性及び疲労亀裂進展特性が低下するため、上限は2.00%とし、好ましくは1.00%以下とする。
・Mo:0.50%以下
Moは焼き入れ性を向上させ強度確保に有効であり、焼き戻し脆性を防止するために適宜添加される。しかし、過剰に添加すると母材靱性及び疲労亀裂進展特性が低下するため、上限は0.50%とし、好ましくは0.30%以下とする。
・V:0.10%以下
Vは少量の添加により焼き入れ性及び焼き戻し軟化抵抗を高くする効果があり、必要に応じて添加される。一方、過剰に添加すると母材靱性及び疲労亀裂進展特性を劣化させるため上限は0.10%以下とし、好ましくは0.05%以下とする。
・Nb:0.04%以下
Nbは焼き入れ性を向上させて母材強度を向上させるため、必要に応じて添加され、添加量の好ましい下限は0.010%である。しかし、多量に添加すると母材靱性及び疲労亀裂進展特性が劣化するため、添加量の上限は0.040%とし、好ましくは0.030%未満、さらに好ましくは0.025%未満とする。
・Ti:0.030%以下
TiはNと窒化物を形成してオーステナイト粒を微細化したり、固溶Nの固定作用があり、脆性改善に有効な元素である。しかし、0.03%を超えると母材靱性及び疲労亀裂進展特性を劣化させるため、添加量の上限は0.03%とし、好ましくは0.020%以下とする。
・B:0.0040%以下
Bは焼き入れ性を向上させて母材強度を向上させる作用があり、必要により添加される。しかし、多量に添加すると母材靱性及び疲労亀裂進展特性が劣化するため、添加量は0.0040%以下が好ましい。より好ましくは0.0030%以下、さらに好ましくは0.0020%以下である。
本発明に係る厚鋼板の組成は、上記成分(必須成分及び任意成分)のほか、残部Fe及び不可避的不純物からなるが、上記成分の作用、効用を損なわない範囲で、特性をより向上させる他の元素の添加を妨げるものではない。例えば、下記のとおり、CaとMgのいずれか1種又は2種、ZrとHfのいずれか1種又は2種、CoとWのいずれか1種又は2種、及び希土類元素(REM)、以上4群の中から選ばれた元素を単独で又は複合してさらに添加することができる。
・Ca:0.0005〜0.0050%
・Mg:0.0001〜0.0050%
CaはMnSを球状化するという介在物の形態制御による異方性を低減する効果を有する。一方、MgはMgOを形成し、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制することによって、HAZ靱性を向上させる効果を有する。しかし、Ca:0.0005%未満、Mg:0.0001%未満ではこのような効果が過少であり、一方、Ca:0.0050%超、Mg:0.0050%超では添加量が過剰となり、母材靱性、疲労亀裂進展特性及びHAZ靱性をかえって劣化させる。従って、Caの添加量は0.0005〜0.0050%とし、好ましくは0.0030%以下とする。また、Mgの添加量は0.0001〜0.0050%とし、好ましくは0.0035%以下とする。
・Zr:0.100%以下
・Hf:0.050%以下
Zr、HfはTiと同様、Nと窒化物を形成し、溶接時におけるHAZのオーステナイト粒を微細化し、HAZ靱性改善に有効な元素である。しかし、過剰に添加するとかえって母材靱性、疲労亀裂進展特性及びHAZ靱性を低下させる。従って、Zr添加量の上限は0.100%、Hf添加量の上限は0.050%とする。
・Co:2.5%以下、
・W:2.5%以下、
Co、Wは焼き入れ性を向上させ母材強度を高める効果を有し、必要により添加される。しかし、過剰に添加すると母材靱性及び疲労亀裂進展特性が劣化するため、添加量の上限をいずれも2.5%とする。
・REM:0.001〜0.01%
REMは、Caと同様の作用効果を有している。過剰に添加すると母材靱性、疲労亀裂進展特性及びHAZ靱性をかえって劣化させるので、REMの添加量は0.001〜0.01%とする。
次に、本発明に係る厚鋼板の製造方法について説明する。
本発明は、軟質部(フェライト)と硬質部(マルテンサイト、ベイナイト)からなる複相組織を有する厚鋼板において、十分微細化したフェライトと、加工γから変態した低温変態組織(ラス長さの短いマルテンサイト、ベイナイト)を組み合わせることにより、母材靱性と疲労亀裂進展特性の向上を両立させたものである。
フェライトの微細化は、圧延前の熱処理(低温γ域加熱)と低温γ域圧延により、核生成速度を増大させることにより実現する。フェライトは、γ+α2相域圧延などによりさらに細粒化することはできるが、フェライトが加工硬化して母材靱性及び疲労亀裂進展特性が低下するので、2相域圧延は行わない。
一方、ラス長さの短いマルテンサイトとベイナイトは、低温γ域で圧延された加工γから変態させて生成するのがポイントである。しかし、熱間圧延後に再加熱処理や焼き戻し処理を行うと(特許文献2,3では行っている)、ブロックの回復が起こりブロックが粗大化するため、熱間圧延後の熱処理は行わない。
本発明に係る厚鋼板は、圧延前処理(加熱・冷却)、熱間圧延及び冷却の工程で製造することができ、各工程は次のように行われる。
・圧延前処理
鋳造後、Ar3+50℃以下の低温γ域に加熱後、300℃以下まで急冷してマルテンサイト又はベイナイトを生成させる処理を2回以上行う。これにより、圧延前のγ粒を微細化させる。
・熱間圧延
再結晶γ域に再加熱後制御圧延する(ただし、γ+α2相域圧延は行わない)。その際、低温γ域(再結晶γ域中の低温域)での圧下量を増加させ、特に圧延仕上げ温度(圧延終了温度)+50℃から圧延仕上げ温度までの範囲内での圧下量を増加させ、その圧下量を望ましくは50%以上とする。これにより加工γに多くの歪みが蓄積される。
・冷却
圧延後、フェライトが生成する下限温度近く、本発明の組成であれば600〜640℃程度まで加速冷却(1回目)し、ここでいったん保持し、保持後再び300℃以下まで加速冷却(2回目)する。加工γに多くの歪みが蓄積されているため核生成速度が増大し、微細フェライト及びラス長さの短いマルテンサイト、ベイナイトが得られる。また、フェライトが生成する下限温度近くに保持することで核生成速度が増加し、微細なフェライトが得られる。
次に、本発明の実施例を比較例と共に説明する。
表1,2に示す組成の鋼(No.1〜No.30)を通常の溶製法により溶製してスラブとなし、Ar3+50℃以下の低温γ域に加熱後、300℃以下まで急冷してマルテンサイト又はベイナイトを生成させる圧延前処理を2回行った後、表3に示す条件(再加熱温度、圧延仕上げ温度、低温γ域での圧下量(圧延仕上げ温度+50℃から圧延仕上げ温度までの圧下量)、圧延後の冷却速度(1回目の冷却)、冷却停止温度、その温度での保持時間及び保持後の冷却速度(2回目の冷却))で再加熱、圧延及び冷却を行い、表3に示す板厚の高張力鋼板を製造した。
Figure 0004721956
Figure 0004721956
Figure 0004721956
この鋼板に対し、下記要領で組織観察とビッカース硬さの測定、疲労亀裂進展試験、及びシャルピー衝撃試験を行った。その結果を表4及び表5に示す。
・組織観察及びビッカース硬さの測定
鋼板から、観察面が表面と平行な板厚t/4位置になるように15mm×15mm×10mmの試験片を切り出し、ナイタール腐食した後、100〜400倍で光学顕微鏡観察して組織判定を行った。光学顕微鏡条の各10視野について、フェライト粒径(円相当径)、硬質部の面積分率、及び硬質部の塊としての粒径(円相当径)を画像解析ソフト(Image-Pro Plus)で解析して、各鋼種(No.1〜30)について各々の平均値を算出した。なお、全ての鋼種で鋼板の組織は95%以上がフェライトと硬質部により構成されていた。
ビッカース硬さは、上記試験片においてフェライト、硬質部ともにランダムに各12点測定し、最高値と最小値を省き、それぞれ10点の平均硬さを求めた。また、その結果からフェライトと硬質部の硬さ差を計算した。
・ラス長さの測定
ラス長さの測定は、SEM観察により行った。観察面が表面と平行な板厚t/4位置になるように試験片を採取し、ナイタール腐食したあとSEMにより50μm×60μmの範囲で5箇所撮影を行い、ラスの平均長さを画像解析により求めた。
・疲労亀裂進展試験
ASTM規格 E647に記載のCT試験片(図2参照)を、厚み(12mm)の半分の位置が鋼板の板厚t/4位置になるように、かつ亀裂進展方向がC方向になるように切り出し、サーボパルサ装置を用いて、繰り返し速度を30Hz、応力比(最大応力に対する最小応力の比)を0.1として、室温で疲労試験を行った。疲労亀裂進展特性は、応力拡大計数の全振幅ΔK=20MPam1/2における疲労亀裂進展速度da/dn(mm/サイクル)で評価し、この実施例では4.0×10E−6(=4.0×10−6)以下を合格とした。
・シャルピー衝撃試験
鋼板のt/4位置からシャルピー衝撃試験片(JIS4号試験片)を採取し、−40℃での各3点の平均吸収エネルギー(vE−40)を求めた。この実施例ではvE−40が100J以上を合格とした。
Figure 0004721956
Figure 0004721956
表4及び表5の測定結果を以下簡単に説明する。
No.1〜21は、クレーム記載の成分組成、硬質部の面積分率、粒径、硬さ及び硬質部と軟質部の硬さ差と、さらにフェライト粒径及びマルテンサイトとベイナイトのラス長さの各要件を満たし、疲労亀裂進展特性及び母材靱性がともに優れている。
一方、No.22〜25は、成分組成、硬質部の面積分率、粒径、硬さ及び硬質部と軟質部の硬さ差との各要件は満たすが、フェライト粒径が20μmを超え、かつラス長さが10μmを超えることから、疲労亀裂進展特性及び母材靱性がともに劣る。これは、圧延仕上げ温度+50℃〜圧延仕上げ温度の低温域での圧下量が不足していたためと考えられる。
また、No.26〜30は、クレーム記載の成分組成、硬質部の面積分率、粒径、硬さ及び硬質部と軟質部の硬さ差と、さらにフェライト粒径の各要件を満たすが、それぞれC,Si,Mn,Al,N含有量が高すぎるため鋼板が脆化し、ラス長さも長いため、疲労亀裂進展特性及び母材靱性がともに劣る。
No.31,32は、クレーム記載の成分組成、硬質部の面積分率、粒径、硬さ及び硬質部と軟質部の硬さ差と、さらにフェライト粒径の各要件を満たすが、ラス長さが10μmを超えることから、母材靱性が劣る。これは、主として保持後冷却速度が比較的低かったためと考えられる。
No.33,34は、クレーム記載の成分組成、硬質部の面積分率、粒径、硬さ及び硬質部と軟質部の硬さ差と、さらにラス長さの各要件を満たすが、フェライト粒径が20μmを超えることから、疲労亀裂進展特性及び母材靱性が劣る。これは、冷却停止温度が高かったためと考えられる。
複相組織中における疲労亀裂の進展形態を説明する図である。 疲労亀裂進展試験に用いたCT試験片の形状を説明する図である。

Claims (5)

  1. 質量%で(以下同じ)、C:0.030〜0.300%、Si:0.50%以下、Mn:0.80〜2.00%、Al:0.01〜0.10%、N:0.0100%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、再結晶フェライトからなる軟質部と、マルテンサイトとベイナイトの1種以上からなる硬質部とで主に構成された複相組織を有し、前記硬質部の面積分率が15〜85%、平均円相当径が10μm以上、平均硬さがHv200〜700、かつ硬質部と軟質部の平均硬さの差がHv100以上であり、さらに前記再結晶フェライト粒の平均円相当径が20μm以下、前記マルテンサイトとベイナイトの平均ラス長さが5μm以下であることを特徴とする母材靱性と疲労亀裂進展特性に優れた厚鋼板。
  2. さらにCu:2.00%以下、Ni:2.00%以下、Cr:2.00%以下、Mo:0.50%以下、V:0.10%以下、Nb:0.040%、B:0.0040%以下、Co:2.5%以下、W:2.5%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載された母材靱性と疲労亀裂進展特性に優れた厚鋼板。
  3. さらにTi:0.030%以下、Zr:0.100以下、Hf:0.050%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載された母材靱性と疲労亀裂進展特性に優れた厚鋼板。
  4. さらにCa:0.0005〜0.0050%、REM:0.001〜0.01%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された母材靱性と疲労亀裂進展特性に優れた厚鋼板。
  5. さらにMg:0.0001〜0.0050%を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された母材靱性と疲労亀裂進展特性に優れた厚鋼板。
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