JP4335789B2 - 音響異方性の小さい溶接性に優れた高張力鋼板およびその製造方法 - Google Patents

音響異方性の小さい溶接性に優れた高張力鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば橋梁、ペンストック、タンク、その他の大型構造物に使用される、引張強さが780MPa以上で、音響異方性が少なく、溶接性に優れた高張力鋼板に関する。
橋梁用や建築用の鋼板(厚鋼板)では、溶接部に欠陥が存在すると、この部分が破壊発生の起点となりやすいため、超音波探傷試験によって欠陥部分の有無を調査し、欠陥部分が存在していた場合には、その部位を補修するといった作業が一般的に行われている。ところが、探傷方向によって著しく音速が変化する鋼板、すなわち音響異方性の高い鋼板では、超音波探傷試験で溶接欠陥部の正確な位置を検出できないため、上記分野などに適用される鋼板においては、音響異方性が小さいことが要求されている。
また、海洋構造物、建築構造物等の分野においては、溶接施工効率の向上から溶接欠陥検出の簡略化のため、鋼板の音響異方性が小さいことが求められており、さらに−40℃といった極低温での溶接性(HAZ靭性、耐溶接割れ性)および母材靭性を確保した780MPa級高張力鋼板が要望されている。
従来、780MPa級以上の高張力鋼板では、低温靭性の確保が困難であったが、近年、母材靭性の改善を企図した技術が種々提案されている。例えば、特開平11−172365号公報(特許文献1)には旧オーステナイト(γ)粒のアスペクト比が3以上となるように、熱間圧延における未再結晶域圧延の累積圧下率を50%以上とすることが、特開2001−220644号公報(特許文献2)には旧γ粒の扁平率が平均で50%以下となるように圧延仕上げ温度(FRT)を850℃以下として熱間圧延をすることが、特開2001−200334号公報(特許文献3)には熱間圧延におけるAr3点以上、900℃未満の累積圧下率を10〜50%とすることによってベイナイトラス幅を小さくすることが、また、特開平9−3591号公報(特許文献4)には、再結晶温度域で30%以上の累積圧下率で熱間圧延することによってラス長さを短くすることが記載されている。
一方、780MPa級以上の高張力鋼において、大入熱溶接時にHAZ靭性が劣化するという問題がある。その理由は、入熱が大きくなるとHAZの冷却速度が遅くなり、粗大な島状マルテンサイトを生成することにより靭性が低下するからである。この問題は、大入熱溶接を行う場合、厚物、薄物のいずれにおいても発生する。このため、溶接施工時に溶接入熱が5kJ/mm以下に制限されるのが通例であり、溶接効率の低下を余儀なくされていた。
この問題に対して、HAZ靭性を改善する技術が種々提案されている。例えば、特開2000−160281号公報(特許文献5)には低Cとし、焼き入れ性向上元素であるMn、Cr、Moを積極的に添加し、あるいはさらにTiNを微細分散させることで旧γ粒を微細化することが、特開平6−65680号公報(特許文献6)には低Cとし、さらにTa23の微細分散により旧γ粒を微細化することが、特開平5−171341号公報(特許文献7)にはTiおよびMgを必須成分として添加し、酸化物を分散させることにより旧γ粒を微細化し、粒内フェライトの生成を促進することが、特開平7−233437号公報(特許文献8)にはBフリーの下でPcm≦0.24、Ceq≧0.45として焼き入れ性を向上させることが、特開平2−254120号公報(特許文献9)には低炭素、Bフリーの下でCuによる析出強化を利用することが記載されている。
特開平11−172365号公報 特開2001−220644号公報 特開2001−200334号公報 特開平9−3591号公報 特開2000−160281号公報 特開平6−65680号公報 特開平5−171341号公報 特開平7−233437号公報 特開平2−254120号公報
上記母材靭性の改善に関する技術は、変態点を下げる作用を有するMn、Cu、Niの添加量が概ね少なく、Ar3点が高くなるため、オーステナイトの未再結晶域における圧延温度を低下させることに限界があり、低温圧延による母材靭性の向上効果は少ないため、従来では−50℃でのシャルピー衝撃試験における吸収エネルギー(vE-50 )が100J以上というような優れた母材靭性を得ることができなかった。
一方、前記HAZ靭性の改善に関する技術は、いずれも低C化することによって高冷却速度におけるHAZの硬化を防止するものであり、低C化による強度の低下をNb、Mo、Vのいずれか、もしくは複合添加することによって補おうとするものである。しかし、これらの元素を積極的に添加するとベイナイト変態時に亀裂伝播の抵抗として作用するベイナイト・ブロックが粗大化し、母材靭性やHAZ靭性が劣化するという問題がある。
また、いずれの技術についても音響異方性を低減させることは考慮されておらず、音響異方性の点で問題があった。
本発明はかかる問題に鑑みなされたものであり、引張強さが780MPa以上という高強度でありながら、母材靭性、溶接性(耐溶接割れ性、HAZ靭性)に優れ、しかも音響異方性が小さく、溶接施工時の欠陥検出が簡易な高張力鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題に対し、種々の実験研究を行った結果、ベイニティックフェライトを主体とする鋼組織を考慮した成分設計、すなわちCを極低量に制限した上で、母材靭性、HAZ靭性に悪影響を与えるNb、V、Moの添加を抑制し、焼き入れ性向上元素であるMn、Ni、Cuを積極的に添加することによって熱間圧延後の冷却速度を特に制御することなく、高冷却速度から低冷却速度のいずれにおいても、ベイニティックフェライトを主体とする組織を生成させることができ、これによって優れた母材靭性及び溶接性を実現することができることを知見した。また、旧オーステナイト粒の長軸/短軸の比(扁平率)を所定範囲にコントロールすることによって音響異方性の低減を図ることができることを知見した。また、前記旧オーステナイトの扁平率は、鋼の化学成分に応じて特定の温度域で所定量の熱間圧延を行うことによって実現可能であることを知見した。本発明はこれらの知見を基に完成されたものである。
すなわち、本発明の高張力鋼板は、mass%で、C:0.010〜0.080%、Si:0.02〜0.50%、Mn:1.10〜3.00%、Cu:1.60%以下、Ni:0.40〜2.50%、P:0.030%以下、S:0.010%以下、Al:0.200%以下、N:0.0100%以下、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.10〜1.10%、Ti:0.002〜0.030%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、かつ下記式で定義されるAS値およびDL値がAS≧4.00、DL≦2.80であり、板厚1/4部位における組織が面積率で85%以上のベイニティックフェライトからなり、かつ旧オーステナイト粒の長軸/短軸の平均値(「平均扁平率」ということがある。)が1.0〜3.0で、さらに旧オーステナイト粒の円相当径の平均値(「平均円相当径」ということがある。)が70μm 以下とされたものである。前記板厚1/4部位とは板面から板厚の1/4の深さの部位をいい、板厚1/4部位における組織観察面は、通例の通り、板厚方向(板面に対して垂直方向)と圧延方向(長さ方向)とを含む面(圧延直角方向断面、TD面)である。
AS=[Mn]+[Ni]+2×[Cu]
DL=2.5×[Mo]+30×[Nb]+10×[V]
ただし、[X]は元素Xの含有量(mass%)を表す。
前記円相当径とは、旧オーステナイト粒の面積と同等の面積を有する円の直径をいう。また、前記高張力鋼板の組織において、MA(Martensite-Austenite Constituent:マルテンサイトおよびオーステナイトの混合物)を5面積%未満とすることが好ましい。
また、前記化学成分として、さらに(1) B:0.0050%以下、(2) Nb:0.010%以下、V:0.30%以下のいずれか1種または2種、(3) Ca:0.0050%以下、希土類元素(REM):0.0100%以下のいずれか1種または2種、(4) Mg:0.0050%以下、(5) Hf:0.050%以下、Zr:0.100%以下のいずれか1種または2種、(6) Co:2.50%以下、W:2.50以下のいずれか1種または2種、の各群から選ばれる元素を単独で、あるいは複合して含有することができる。
また、前記高張力鋼板の好適な製造方法として、本発明の製造方法は前記成分を有する鋼をAC3点〜1300℃に加熱し、部分再結晶温度域で全圧下量の50%以上を熱間圧延し、冷却するものである。また、熱間圧延後、200℃以下まで冷却し、その後AC1点以下の温度で焼き戻しを1回あるいは2回以上行うことによって、母材靭性を向上させることができる。前記部分再結晶温度域とは、オーステナイト粒径を100±10μm とした鋼板試験片を歪速度10/秒、相当歪0.2の条件で圧下し、10秒後に、例えば水冷によって組織を凍結したときに20〜80 vol%が再結晶粒となる温度域をいう。また、熱間圧延後、10〜60℃/秒の冷却速度で200℃以下まで加速冷却することによって、母材靭性をより向上させることができる。
本発明の高張力鋼板によれば、Cを極低量とし、Mn、Ni、CuをAS値が4.00以上になるように積極的に添加する一方、Mo、Nb、Vの添加をDL値が2.80以下となるように成分調整し、旧オーステナイト粒の円相当径の平均値を70μm 以下としたので、熱延後の冷却速度の高低に拘わらず、また板厚が50mm以上と厚い場合であっても、亀裂の伝播が生じ難いベイニティックフェライトを面積率で85%以上とする微細組織とすることができ、高強度ながら、母材靭性に優れ、かつ優れた溶接性(耐溶接割れ性、HAZ靭性)を備える。また、旧オーステナイト粒の平均扁平率を1.0〜3.0にすることにより、音響異方性を低減することができ、溶接施工時の欠陥検出作業を簡略化することができる。
本発明鋼板の成分上の要点は、C量を極低量に制限した上で、HAZ靭性、母材靭性に悪影響を与えるNb、V、Moの添加量を制限し(DL≦2.80)、焼入れ性向上元素であるMn、Ni、Cuを積極的に添加(AS≧4.00)した点にある。まず、本発明鋼板の鋼成分によって熱間圧延によって生じる組織、特性をCCT図を参照して先ず説明する。
図1は本発明にかかるMn、Ni、Cuを積極的に添加した極低C系鋼(A)および従来の高C系鋼(B1)、低C系鋼(B2)のCCT図を示す。図中、BFはベイニティック・フェライト、GBFはグラニュラ・ベイニティック・フェライト、Mはマルテンサイト、Bはベイナイト、Fはフェライトを示す。
同図より、本発明の鋼板では、熱間圧延後の冷却が高冷却速度(CR1)、低冷却速度(CR2)のいずれにおいても、BFが面積率で85%以上、より好ましくは90%以上生成するようになる。かかるBFを主体とする組織(残部はGBF、MA)により、焼き入れ、焼き戻し熱処理を特に施すことなく、肉厚が50mm以上の厚板であっても、母材の機械的性質として780MPa以上の強度が得られ、また優れた靭性を備えたものになる。しかも、高冷却速度(CR1)、低冷却速度(CR2)のいずれにおいても、上記のとおり、マトリックス組織が冷却速度感受性の低いBFとなるため、小入熱溶接条件においてはHAZの硬さを低減(耐低温割れ性を向上)させることができ、大入熱溶接条件においてもHAZ靭性を確保することができる。
一方、従来の高C系鋼(B1)は高冷却速度(CR1)ではかなりの量のMが生成するようになり、このため硬さの冷却速度感受性が大きく、小入熱溶接時のHAZの硬さ低減と母材強度・靭性を両立させることが難しかった。また、従来の高C系鋼(B1)および低C系鋼(B2)では中冷却速度や低冷却速度(CR2)でFあるいはGBFが生成し、これに伴い粗大かつ塊状のMAが生成するため、母材強度や靭性が低下し、また大入熱溶接時のHAZの靭性を確保することができなかった。
次に、鋼板の音響異方性と旧オーステナイト粒(γ粒)の扁平率との関係について説明する。なお、音響異方性については、JIS Z 3060に規定されている横波音速比CSL/CSC(振動方向をL方向(圧延方向)とC方向(圧延直角方向)として得られた横波音速値CSL(m/秒)とCSC(m/秒)の比)を用いて評価することができる。
本発明者は、横波音速比CSL/CSCを、例えば1.020以下といった低い値、すなわち低音響異方性とすべく、横波音速比(CSL/CSC)と旧γ粒の扁平率との関係を調査した。その結果を図2に示す。図2より、旧γ粒の扁平率が3.0以下(最小値は1.0)のときに、横波音速比が1.020以下といった低音響異方性が達成されることがわかった。音響異方性の観点から、旧γ粒の扁平率を好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下とすることが望ましい。なお、図2は後述の実施例から得られたものである。
また、本発明者の調査により、旧γ粒の平均円相当径と母材靭性(vE-50 )との間に密接な関係があることがわかった。図3は旧γ粒の円相当径の平均値(「平均円相当径」ということがある。)と母材靭性(vE-50 )との関係を示すが、図3より旧γ粒の平均円相当径を微細化するほど、母材靭性(vE-50 )が向上することがわかる。これより、旧γ粒径の平均円相当径を70μm 以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは40μm以下とすることが望ましい。なお、図3は後述の実施例から得られたものである。
また、組織中のMAは、少ないほど母材靭性が向上する。このため、MAは面積率で5.0%未満、好ましい3.0%以下、より好ましくは2.0%以下とするのがよい。MAを減少させる方法については後述する。
次に本発明の高張力鋼板の成分限定理由について詳細に説明する。単位は全てmass%である。
C:0.010〜0.080%
Cは母材強度を確保するために必要な元素である。0.010%未満では焼き入れ性向上元素であるMn、NiおよびCuを積極的に添加しても780MPa以上の母材強度を確保することができないようになる。一方、0.080%超になると、高冷却速度側でベイニティックフェライトではなく、マルテンサイトが生成するようになり、耐低温割れ性が劣化するようになる。C量を0.010%以上添加するとともに0.080%以下に制限し、同時に適量のMn、Ni、CuおよびCrを添加することで、小入熱溶接時のHAZの耐低温割れ性と母材強度を両立させ、かつ大入熱時のHAZの靭性を改善することができる。このため、C量の下限を0.010%、好ましくは0.030%とし、一方その上限を0.080%、好ましくは0.060%とする。
Si:0.02〜0.50%
Siは脱酸作用を有する元素であり、Si量が0.02%未満ではその効果が過小であり、一方0.50%を超えると溶接性および母材靭性を劣化させる。このため、Si量の下限を0.02%とし、その上限を0.50%、好ましくは0.20%とする。
Mn:1.10〜3.00%、Ni:0.40〜2.50%、Cu:1.60%以下
これらの元素は焼き入れ性を改善する作用を有し、高冷却速度から低冷却速度に渡ってベイニティックフェライトを生成させやすくし、これらの積極的な添加と極低C化によって、小入熱溶接時のHAZ靭性と耐低温割れ性を両立させ、かつ母材強度、勒性および大入熱溶接時のHAZ靭性を改善することができる。
すなわち、Mnは焼き入れ性を向上させ強度、靭性の確保に有効であり、1.10%未満ではかかる作用が過小であり、一方3.00%超では返って低温靭性が劣化する。このため、Mn量の下限を1.10%、好ましくは1.30%、より好ましくは1.40%とし、その上限を3.00%、好ましくは2.20%、より好ましくは2.10%とする。
Niも鋼の低温靭性の向上および焼き入れ性を高めて強度を向上させるとともに、熱間割れおよび溶接高温割れの防止にも効果がある。Ni量が0.40%未満ではこれらの効果が過小であり、一方2.50%を超えるとスケール疵が発生しやすくなる。このため、Ni量の下限を0.40%、好ましくは0.50%とし、その上限を2.50%、好ましくは2.00%とする。
CuはMo、Mn、Ni、Crほどではないが焼き入れ性を向上させ、また固溶強化と析出強化によって母材強度を向上させる。かかる作用を効果的に発現させるには好ましくは0.10%以上、より好ましくは0.50%以上、さらに好ましくは0.80%以上の添加が望ましい。もっとも、1.60%を超えると母材靭性、大入熱溶接時のHAZ靭性を低下させるようになるので、Cu量の上限を1.60%、好ましくは1.20%とする。
AS値:4.00以上
Mn、Ni、Cuの添加量は、母材強度と密接な関係があり、CuはMn、Niに比して2倍程度、強度向上効果が高い。高冷却速度から低冷却速度の範囲で母材強度を780MPa以上にするには、後述の実施例から明らかなようにAS値を4.00以上、好ましくは4.20以上、さらに好ましくは4.40以上となるようにMn、Ni、Cuを添加することが必要である。
P:0.030%以下
不純物元素であるPは母材、溶接部の靭性に悪影響を及ぼすため、0.030%以下に止める。好ましくは0.010%以下とするのがよい。
S:0.010%以下
SはMnSを形成して延性を低下させる元素であり、特に高強度鋼においてその影響が大きいため、0.010%以下、好ましくは0.005%以下に止めるのがよい。
Al:0.200%以下
Alは脱酸およびミクロ組織の微細化による母材靭性向上効果を有する。かかる作用を効果的に発現させるには好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.020%以上の添加が望ましい。もっとも、過多に添加するとかえって母材靭性が低下するため、上限を0.200%とする。好ましくは0.060%以下とするのがよい。
N:0.0100%以下
Nは後述のTiと結合し、TiNを形成して大入熱溶接時のオーステナイト粒を微細化し、HAZ靭性を向上させる効果を有する。かかる作用を効果的に発現させるには好ましくは0.0020%以上、より好ましくは0.0040%以上の添加が望ましい。しかし、Nの過剰な添加はは母材靭性、HAZ靭性に悪影響を与えるため、その上限を0.0100%、好ましくは0.0080%、より好ましくは0.0060%以下とする。
Cr:0.30〜2.00%
Crは母材、溶接部の強度を高めるが、Cr量が0.30%未満ではかかる効果が過小であり、一方2.00%を超えると溶接性やHAZ靭性を劣化させるようになる。このため、Cr量の下限を0.30%、好ましくは0.50%、より好ましくは0.70%とし、その上限を2.00%、好ましくは1.50%、より好ましくは1.00%とする。
Mo:0.10〜1.10%
Moは焼き入れ性を向上させ、強度を確保するために有効であり、また焼き戻し脆性を防止する効果を有する。Mo量が0.10%未満ではかかる作用が過小であるので、Mo量の下限を0.10%、好ましくは0.15%とする。一方、Moは再結晶抑制作用があり、過多に添加すると、圧延後に粗大なオーステナイト粒となり、変態後のベイナイトブロック(ベイニティックフェライトの束)が粗大化し、母材の靭性が劣化する。また、Moはオーステナイト粒界に偏析しやすく、過剰に添加すると変態時の核生成頻度を低下させ、変態後のベイナイトブロックを粗大化させて、母材靭性、HAZ靭性を劣化させる。このため、Mo量の上限を1.10%、好ましくは0.60%とする。
DL値:2.80以下
Moおよび後述のNb、Vは焼き入れ性を向上させる作用があるが、その一方でベイナイトブロックを粗大化させ、母材靭性、HAZ靭性を劣化させる。このような母材靭性の劣化作用は各元素について一様ではなく、発明者等の実験によりMoを1としたとき、Nbは12倍程度、Vは4倍程度である。後述の実施例から明らかなようにDL値を2.80以下、好ましくは2.50以下、より好ましくは2.00以下とするようにMo、Nb、Vの添加を抑制することによって、ベイナイトブロックの粗大化を抑制し、前記AS≧4.00と、部分再結晶温度域での圧下量を熱延全圧下率の50%以上とすることで、旧γ粒の平均円相当径が70μm 程度以下に微細化され、vE-50 ≧100J以上の母村靭性を確保することができ、また良好なHAZ靭性を兼ね備えることができる。
Ti:0.002〜0.030%
TiはNと結合して窒化物を形成し、溶接時におけるHAZのオーステナイト粒を微細化し、HAZ靭性改善に有効な元素である。Ti量が0.002%未満では細粒化効果が過小であり、一方0.030%を超えるとかえってHAZ靭性を劣化させる。このため、Ti量の下限を0.002%、好ましくは0.005%とし、その上限を0.030%、好ましくは0.020%とする。
本発明の鋼板は以上の成分のほか、残部Feおよび不可避的不純物によって形成されるが、上記成分の作用、効果を損なわない範囲で特性をより向上させる元素の添加を妨げるものではない。例えば、(1) 下記範囲のB、(2) 下記範囲のNb、Vのいずれか1種または2種、(3) 下記範囲のCa、REMのいずれか1種以上、(4) 下記範囲のMg、(5) 下記範囲のZr、Hfのいずれか1種または2種、(6) 下記範囲のCo、Wのいずれか1種または2種、の各群から選ばれた元素を単独で、あるいは複合してさらに添加することができる。
B:0.0050%以下
Bは焼き入れ性を向上させてHAZ靭性を改善する作用を有する。特に、入熱量の大きい溶接の際にその効果は大きい。かかる作用を効果的に発現させるためには、0.0005%以上の添加が好ましい。もっとも多量に添加すると、かえって母材靭性、HAZ靭性を劣化させる。このため、B量の上限を0.0050%、好ましくは0.0045%とする。より好ましくは0.0010〜0.0040%とするのがよい。
Nb:0.10%以下
固溶Nbは素地の焼き入れ性を向上させて母材強度、溶接継手強度を向上させる効果があり、必要に応じて添加することができる。その一方、固溶Nbは加工オーステナイトの回復を抑制し、再結晶を抑制させるため、圧延後に粗大なオーステナイト粒となり、変態後のベイナイトブロックが粗大化し、母材靭性を著しく低下させる。また、Nbはオーステナイト粒界に偏析しやすく、過剰に添加すると変態時の核生成頻度を低下させ、変態後のベイナイトブロックを粗大化させて、母材靭性、HAZ靭性を劣化させる。このため、Nb量の上限を0.10%、好ましくは0.020%、より好ましくは0.015%とする。
V:0.30%以下
Vは少量の添加により焼き入れ性および焼き戻し軟化抵抗を高くする効果があり、必要に応じて添加することができる。一方、Vは加工オーステナイトの回復を抑制し、再結晶を抑制させるため、圧延後に粗大なオーステナイト粒となり、変態後のベイナイトブロックが粗大化し、母材靭性を著しく低下させる。また、Vはオーステナイト粒界に偏析しやすく、過剰に添加すると変態時の核生成頻度を低下させ、変態後のベイナイトブロックを粗大化させて、母材靭性、HAZ靭性を劣化させる。このため、V量の上限を0.30%、好ましくは0.05%、より好ましくは0.04%とする。
Ca:0.0050%以下、REM:0.0100%以下
CaおよびREMはMnSを球状化するという介在物の形態制御により異方性を低減する効果を有する。Ca:0.0050%超、REM:0.0100%超では添加量が過剰なため母材の靭性をかえって劣化させる。このため、Ca量の上限を0.0050%、好ましくは0.0030%とし、REMの上限を0.0100%、好ましくは0.0070%とする。前記各元素を効果的に活用するには、Ca:0.0005%以上、REM:0.0010%以上含有させることが好ましい。
Mg:0.0050%以下
MgはMgOを形成し、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制することによってHAZ靭性を向上させる作用を有する。かかる作用を効果的に活用するには、Mg:0.0001%以上含有させることが好ましい。Mg:0.0050%超では添加量が過剰なため母材の靭性をかえって劣化させる。このため、Mg量の上限を0.0050%、好ましくは0.0035%とする。
Zr:0.100%以下、Hf:0.050%以下
Zr、HfはTiと同様、Nと窒化物を形成して溶接時におけるHAZのオーステナイト粒を微細化し、HAZ靭性改善に有効な元素である。しかし、過剰に添加するとかえって母材靭性、HAZ靭性を低下させる。このため、Zr量の上限を0.100%、Hf量の上限を0.050%とする。
Co:2.50%以下、W :2.50%以下
Co、Wは焼き入れ性を向上させ、強度を容易に確保するために有効な元素であり、Wの場合はさらに焼き戻し軟化抵抗を向上させる効果を有する。一方、過剰に添加すると、Coの場合はスケール疵が発生し易くなり、Wの場合は母材靭性が劣化するようになる。このため、Co量、W量の上限をそれぞれ2.50%、好ましくは1.00%とする。
ここで、本発明の高張力鋼板の製造方法について説明する。
本発明の製造方法においては、上記化学組成を有する鋼を用いることを前提とし、さらに旧γ粒の形態を制御するに当たり、熱間圧延条件を厳格に管理する必要がある。本発明の鋼板を製造する際の他の工程、条件は特に限定されず、通常用いられる高張力鋼板の製造工程および条件(温度、時間など)を適宜採用することができる。
本発明の製造方法における圧延条件は、鋼片をAc3点〜1300℃に加熱して完全にオーステナイト化した後、熱間圧延を行う。熱間圧延に際し、全圧下量の50%以上、好ましくは全圧下量の70%以上を部分再結晶温度域で圧延することが特に重要である。かかる温度域での圧延により、後述の実施例から明らかなように、部分再結晶という現象を利用して鋼板中の旧γ粒の形態(平均扁平率および平均円相当径)を所定の値に制御することができる。
前記部分再結晶温度域は、鋼板の化学組成に応じて変動するので、熱間圧延を実施する前に適宜の実験によりその温度域を調べておくとよい。すなわち、製造対象の鋼板と同じ化学組成を有する鋼板試験片を準備し、その試験片をオーステナイト粒径が100±10μm となるある温度に加熱した後、この試験片を歪速度10/秒、相当歪0.2の条件で圧下し、10秒後に例えば水冷により組織を凍結したときに、その再結晶粒が20〜80 vol%となる温度範囲、すなわち部分再結晶温度域を予め求めておく。
前記熱間圧延後の冷却手段や冷却条件は特に限定されず、常法に従い、空冷すればよい。特に、鋼組織の90 面積%(vol%)以上をベイニティックフェライト(BF)にするには、上記熱間圧延後、好ましくは5℃/秒程度以上、より好ましくは10℃/秒以上程度の冷却速度でベイナイト変態終了温度以下まで、好ましくは200℃以下まで加速冷却することが望ましい。本発明の成分範囲では、ベイナイト変態終了温度は400℃程度であり、確実にベイナイト変態終了温度以下まで冷却するには、上記のとおり200℃以下まで加速冷却することが好ましい。熱間圧延後の鋼板を加速冷却することにより、MA組織の生成、成長が抑制されて当該組織の平均円相当径も小さくなり、母材の靭性がより向上する。加速冷却する際の冷却速度の上限は特に規定しないが、60℃/秒を超えて過度に速い冷却速度で冷却する必要はなく、またそのような冷却速度を得るには特殊な冷却装置が必要となるので、通常、60℃/秒以下で十分である。前記加速冷却を行うには、熱間圧延後、水冷(シャワー水冷、噴霧水冷を含む。)を行えばよい。もっとも、本発明の成分系は冷却速度の影響が少ないので、空冷でもよい。板厚が大きいほど冷却速度は低下するが、熱間圧延後に空冷した場合、板厚80mmの熱延鋼板で平均冷却速度は0.15℃/秒程度、板厚50mmの熱延鋼板で平均冷却速度は0.3℃/秒程度であるが、この程度の冷却速度でも問題はなく、所期の高張力鋼板が得られる。なお、板厚20mmの熱延鋼板では、平均冷却速度は1℃/秒程度である
また、熱間圧延後、冷却した後、必要に応じてAc1点以下の温度で焼戻しを1回あるいは2回以上行ってもよい。焼戻し後の冷却は、空冷でよい。焼戻しは、より高い母材靭性を発現させたい場合には有効な手法である。焼戻しにより靭性阻害因子であるMA組織をフェライトとセメンタイトに分解できるので、焼戻し回数が多いほど、母材靭性の向上効果は大きい。もっとも、本発明の高張力鋼板は、いわゆる調質処理を施さない非調質鋼板のままで、高強度でありながら、低音響異方性、母材靭性、溶接性に優れるため、焼戻し工程は必ずしも必要ではなく、同工程を省略することによって生産コストを低減することができる。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものはでない。
表1〜5に示す鋼(残部Fe及び不可避的不純物)を通常の溶製法により溶製してスラブとし、表6〜10に示すように、同表に示す条件で加熱した後、熱間圧延を行い、加速冷却を行う場合(試料No. 59,60,60A)、200℃以下の温度まで同表に示す条件で冷却した後、さらに必要に応じて焼戻し処理を行い、空冷にて冷却した。なお、表6〜10の各試料は、表1〜5の同番号の鋼を用いて製造された。また、部分再結晶温度域での圧下量は熱間圧延における全圧下率に対する部分再結晶温度域で圧延された圧下率の割合(%)を示す。
得られた熱延板に対し、熱延板の板厚の1/4部位から組織観察試験片を採取し、光学顕微鏡観察(倍率400倍)を行ったところ、BFを主体とし、残部がほぼGBFであって、BFやGBFの界面にMAが生成した組織となっていた。また、BF及びMAの面積分率を測定するため、組織観察試験片をナイタール腐食後、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて倍率1000倍で組織を撮影し、撮影した画像を画像解析ソフト(名称 Image-Pro、プラネトロン社製)を用いて解析し、これらの面積率を求めた。なお、BFとGBFとは、その形態が前者は針状ないし柱状であり、一方後者は塊状であり、形態が異なるため容易に区別される。
また、前記組織観察試験片を用いて、旧γ粒の扁平率および円相当径を以下の要領にて求めた。鏡面研磨した試験片を、山本科学工具研究社製AGS液や、2%硝酸−エタノール液(総称:2%ナイタール液)などを用いて腐食処理する。腐食条件は、上記AGS液の場合は室温で5〜10分、2%ナイタール液の場合は室温で5〜30秒とする。腐食後の試験片を、光学顕微鏡を用いて倍率400倍で観察して写真撮影を行う。得られた顕微鏡写真について、画像解析ソフト(名称 Image-Pro Plus、Media Cybernetics 社製)を用いて画像解析を行い、円相当径を求め、また旧γ粒長軸、短軸の長さを求めて扁平率(長軸/短軸)の値を算出する。
また、試料鋼板を用いて音響異方性を調べた。音響異方性は、JIS Z 3060の規定に従って、振動方向がL方向(圧延方向)の横波音速値CSL(m/秒)とC方向(圧延直角方向)の横波音速値CSC(m/秒)とを測定し、横波音速比CSL/CSCを求め、これにより評価した。
また、下記要領にて引張試験、衝撃試験を行い、母材の機械的性質を調べた。
引張試験は、各鋼板の板厚1/4部位から採取したJIS4号試験片を用いて行い、0.2%耐力、引張強さを測定した。また、衝撃試験は各鋼板の板厚1/4部位から採取したJIS4号試験片を用いて、−50℃でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギー(vE-50 )を求めた。本発明では、母材靭性として、vE-50 =100(J)を合格基準とした。
さらに、引張強さが780MPa以上、母材靭性がvE-50 ≧100(J)のもの全てと、合格基準に達しなかったものの一部に対して、下記の要領にてHAZ靭性、耐低温割れ性を調べた。
HAZ靭性は、入熱5kJ/mm、10kJ/mm、さらに15kJ/mmで溶接(サブマージアーク溶接)を行い、ボンド部を含む図4に示す試験片採取部位3からJIS4号試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を行い、ボンド部の吸収工ネルギ(vE-40 )を求め、vE-40 ≧80Jを合格レベルとした。図中、1は鋼板、2は溶接金属部であり、3が試験片採取部位であり、板厚中心から開先開き側に位置している。入熱が15kJ/mmの超大入熱溶接は、冷却速度が非常に遅くなった場合の合金元素の影響を見るために実施したものである。
耐低温割れ性はJISZ3158に規定されたy形溶接割れ試験方法に基づいて、入熱1.7kJ/mmで被覆アーク溶接を行い、ルート割れ防止予熱温度を測定した。予熱温度が0℃とあるのは、試験に供した鋼板を0℃に冷やした状態で溶接を行い、溶接後に割れが生じなかったものを示す。
上記調査結果を表6〜表10に併せて示す。また、旧γ粒の平均扁平率と音響異方性との関係を図2(プロットした試料No. 1〜12)、旧γ粒の平均円相当径と母材靭性の関係を図3(プロットした試料No. 1〜4)、AS値と引張強さとの関係を図5(プロットした試料No. 11,18〜21,62,73,84)に示す。また、MA面積率と母材靭性との関係を、熱間圧延後の冷却条件と焼戻し回数に基づいて整理したグラフを図6に示す。図中、○は加速冷却後、焼戻しを2回行ったもの(試料No. 59〜60A)を、□は空冷後、焼戻しを2回行ったもの(試料No. 57,58)を、△は空冷後、焼戻しを1回行ったもの(試料No. 1〜41)を示す。
すでに述べたように、図2より、旧γ粒の扁平率が3.0以下で横波音速比が1.020以下といった低音響異方性が得られることがわかる。また、図3より、旧γ粒の平均円相当径を微細化するほど、母材靭性(vE-50 )が向上し、旧γ粒径の平均円相当径を70μm以下とすることにより、吸収エネルギーが100J程度以上となることがわかる。また図5より、AS値を4.00以上とすることによって引張強さが780MPa以上の高強度鋼板が得られることがわかる。また、図6より、焼戻しを2回行うことにより、さらに熱間圧延後に加速冷却を行うことによりMAが低減し、母材靭性が向上することが分かる。もっとも、焼戻しを2回行っても、発明成分を充足しない試料No. 96〜98(比較例)では、製造条件が適正であっても、引張強さが780MPa未満となったり、総じて母材靭性が100J未満となった。
また、表6〜8より、発明例は、母材靭性についてはvE-50 がすべて100J以上であり、また耐低温割れ性については鋼板温度が0℃でもルート割れが生じず、母材靭性および耐低温割れ性が優れている。また、HAZ靭性についても、小入熱溶接、大入熱溶接のいずれにおいてもボンド部の靭性が優れていることが確かめられた。また、発明例において、Bを0.0005%以上添加したものは15kJ/mmの超大入熱溶接を行った場合においても、常に150J以上の優れたHAZ靭性が得られることが確認された。
一方、表9、10に示すように、合金組成(AS値、DL値を含む。)が発明範囲を外れる比較例は、製造条件が適正であっても、引張強さが780MPa未満となったり、母材靭性がvE-50が100J未満となり、合格レベルに達しなかった。また、合金組成が発明範囲内であっても、製造条件が不適切で、部分再結晶温度域での圧下量が50%未満の場合、音響異方性が1.020超となり、音響異方性が劣化した。
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本発明鋼の製造時における冷却速度と組織との関係を説明するための模式的CCT図を示す。 実施例における旧γ粒の平均扁平率と音響異方性との関係を示す図である。 実施例における旧γ粒の平均円相当径と母材靭性の関係を示す図である。 実施例におけるHAZ靭性を調べるための試験片の採取部位を示す鋼板溶接部の断面説明図を示す。 実施例におけるAS値と引張強さとの関係を示す図である。 実施例におけるMA面積率と母材靭性との関係を示す図である。

Claims (12)

  1. mass%で、
    C:0.010〜0.080%、
    Si:0.02〜0.50%、
    Mn:1.10〜3.00%、
    Cu:1.60%以下、
    Ni:0.40〜2.50%、
    P:0.030%以下、
    S:0.010%以下、
    Al:0.200%以下、
    N:0.0100%以下
    Cr:0.30〜2.00%、
    Mo:0.10〜1.10%、
    Ti:0.002〜0.030%、
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、かつ下記式で定義されるAS値およびDL値がAS≧4.00、DL≦2.80であり、板厚1/4部位における組織が面積率で85%以上のベイニティックフェライトからなり、かつ旧オーステナイト粒の長軸/短軸の平均値が1.0〜3.0で、さらに旧オーステナイト粒の円相当径の平均値が70μm 以下であることを特徴とする音響異方性の小さい溶接性に優れた高張力鋼板。
    AS=[Mn]+[Ni]+2×[Cu]
    DL=2.5×[Mo]+30×[Nb]+10×[V]
    ただし、[X]は元素Xの含有量(mass%)を表す。
  2. 前記組織において、MAが5面積%未満である請求項1に記載した高張力鋼板。
  3. さらにB:0.0050%以下を含有する請求項1又は2に記載した高張力鋼板。
  4. さらに、Nb:0.10%以下、V:0.30%以下のいずれか1種または2種を含有する請求項1からのいずれか1項に記載した高張力鋼板。
  5. さらに、Ca:0.0050%以下、希土類元素:0.0100%以下のいずれか1種または2種を含有する請求項1からのいずれか1項に記載した高張力鋼板。
  6. さらに、Mg:0.0050%以下を含有する請求項1からのいずれか1項に記載した高張力鋼板。
  7. さらに、Hf:0.050%以下、Zr:0.100%以下のいずれか1種または2種を含有する請求項1からのいずれか1項に記載した高張力鋼板。
  8. さらに、Co:2.50%以下、W:2.50%以下のいずれか1種または2種を含有する請求項1からのいずれか1項に記載した高張力鋼板。
  9. 請求項1からのいずれか1項に記載した成分を有する鋼をAC3点〜1300℃に加熱し、オーステナイト粒径を100±10μm とした鋼板試験片を歪速度10/秒、相当歪0.2の条件で圧下し、10秒後に組織を凍結したときに20〜80 vol%が再結晶粒となる部分再結晶温度域で全圧下量の50%以上を熱間圧延し、冷却することを特徴とする音響異方性の小さい溶接性に優れた高張力鋼板の製造方法。
  10. 熱間圧延後、200℃以下まで冷却し、その後AC1点以下の温度で焼き戻しを行う請求項に記載した製造方法。
  11. 前記焼き戻しを2回以上行う請求項10に記載した製造方法。
  12. 熱間圧延後、10〜60℃/秒の冷却速度で200℃以下まで加速冷却する請求項10又は11に記載した製造方法。
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