JP4313730B2 - 材質異方性が少なく低温靭性に優れた高張力鋼板 - Google Patents

材質異方性が少なく低温靭性に優れた高張力鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、引張強さが490MPa以上の高張力鋼板に係り、特に母材靭性、HAZ靭性に優れ、さらに材質異方性の少ない高張力鋼板に関する。
近年、船舶や海洋構造物に使用される鋼板に対して、母材強度が高く、低温靭性および溶接性(HAZ靭性)に優れた高張力鋼板が求められている。
このような鋼板として、例えば、特開平9−111337号公報(特許文献1)には、低Cの下、Tiに比べて析出強化に伴う靭性劣化が格別に小さいNbを積極的に添加し、NbCによって析出強化を図りつつ、焼入性を高めた高張力鋼板が提案されている。また、特開2000−178645号公報(特許文献2)には、MnS、TiN析出量の削減による清浄化により靭性を改善すると共に、オーステナイト(γ)粒を粗粒化することでMnによる焼入性を向上させた高張力鋼板が提案されている。
特開平9−111337号公報 特開2000−178645号公報
最近では、工作精度の向上や安全性の向上の観点から材質異方性(鋼板のある部位において圧延方向(L方向)、圧延直角方向(C方向)の特性が異なること)や材質のバラツキ(鋼板の異なる部位における特性が異なること)の低減が求められるようになって来ている。特に、材質異方性を低減させることによって音響異方性を低減させることができるため、材質異方性の低い鋼板が求められている。音響異方性が低いと、UT(超音波探傷)検査時に溶接欠陥の検出を効率良く行うことができるからである。
前記特許文献に記載された技術によって、高強度の下、母材の低温靭性、HAZ靭性の向上がある程度図られたが、特に材質異方性については改善されていない。すなわち、特許文献1の高張力鋼板では、Nbが過剰に添加され、焼入性に対してはNbが有効に作用するが、Nbは凝固時にミクロ偏析、マクロ偏析を起こし易い元素であるため、材質異方性が大きく生じ、また材質にバラツキが生じ易いという問題がある。また、特許文献2の鋼板については、主としてMnにより焼入性を確保するものであるが、Mnはミクロ偏析が生じ易い元素であるため、やはり材質異方性が生じ易い。なお、ミクロ偏析が生じると圧延の際に圧延方向に展延されて材質異方性が生じ易く、一方マクロ偏析が生じると鋼板のトップ、ボトムあるいはそれらの間の部位で強度、靭性に差異(材質バラツキ)が生じ易くなる。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、低温靭性、HAZ靭性に優れ、さらに材質異方性が抑制された高張力鋼板を提供することを目的とする。
本発明の鋼成分設計のポイントは、ベイニティックフェライト及び/又は擬ポリゴナルフェライトを主体とする鋼組織が得られるようにしたものであり、C量を低レベルに制限した上で、HAZ組織の微細化に寄与し得るTiや、フェライトの核生成サイトを形成し得るBを適量添加することによりHAZ靭性を確保し、またHAZ靭性を比較的劣化させない炭化物非生成元素(Mn、さらに必要に応じてCu,Ni,Crなど)の添加によって母材の高強度化を図り、また硬質相であるMA(Martensite-Austenite Constituent:マルテンサイトおよびオーステナイトの混合物)の生成量を抑制すべく、KP=[Mn]+1.5[Cr]+2[Mo]の値を規制することにより低温靭性を確保するところにある。さらに、焼入性をNb、Mn、Cu、Niに比してミクロ偏析やマクロ偏析が生じ難いTiを主として用いて確保し、これによって材質異方性を低下させる点にある。
すなわち、本発明の高張力鋼板は、mass%で、C:0.01〜0.055%、Si:0.8%以下、Mn:0.5〜1.9%、Ti:0.005〜0.10%、B:0.0012〜0.0050%、N:0.002〜0.010%、Al:0.20%以下、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Ca:0.0050%以下を含むと共に、Nb:0.030%未満かつ2[Nb]/[Ti]<4.0を満足する範囲、Ni:2.0%以下、Cu:2.0%以下、Cr:1.0%以下の中から選ばれるいずれか1種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ KP=[Mn]+1.5[Cr]+2[Mo]とし、TP=4[Ti]/[C]([X]は元素Xの含有量(mass%)を示す。)するとき、KP<2.4、TP>0.62を満足する成分を含み、さらにMAの平均面積率が0.5%以下であり、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が1.3以下とされたものである。前記MAは、その平均円相当径が1.0μm 以下、平均アスペクト比が2.0以下であることが好ましい。
さらに、上記成分に、(1) Mo:0.30%以下、V:0.10%以下のいずれか1種以上、(2) Mg:0.005%以下、REM:0.02%以下、Zr:0.05%以下のいずれか1種以上、の各群から選ばれた元素を単独で、あるいは複合して添加することができる。
本発明の高張力鋼板によれば、C:0.01〜0.055%、B:0.0012〜0.0050%を含む所定成分の組成を有し、特にMn、Cr、MoをKP値が2.4未満となる組成とし、またミクロ偏析、マクロ偏析が生じ難く、焼入性に優れたTiをTP値が0.62超となる組成とし、MAの平均面積率を0.5%以下、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比を1.3以下としたので、490MPa以上の高強度でありながら、低温靭性、HAZ靭性に優れ、さらに材質異方性ひいては音響異方性の小さい高張力鋼板を提供することができる。
まず、本発明の高張力鋼板の成分限定理由について説明する。単位はmass%である。
C:0.01〜0.055
Cは、溶接時におけるHAZの耐溶接割れ性と母材強度を両立させ、且つ大入熱HAZ靭性を改善するために重要な元素である。Cが0.055%を超えると高冷却速度側でベイニティックフェライトでなくマルテンサイトが生成するようになり、耐溶接割れ性が低下する。また、低冷却速度側(大入熱HAZ)ではMAが多量に生成するようになり、大入熱HAZ靭性が改善されない。一方、0.01%未満では母材強度が低下する。好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.03%以上とするのがよい。
Si:0.8%以下
Siは脱酸剤として有用な元素であるが、0.8%を超えて添加すると溶接性および母材靭性が低下するので、上限を0.8%とする。好ましくは0.6%以下、さらに好ましくは0.3%以下とするのがよい。
Mn:0.5〜1.9%
Mnは焼入れ改善作用を有すると共に、結晶粒を微細化して母材靭性を改善する効果を有する。もっとも、1.9%を超えるとHAZの耐溶接割れ性が低下する。好ましくは1.8%以下、さらに好ましくは1.6%以下とするのがよい。一方、Mnが0.5%未満では十分な母材強度が得られない。好ましくは0.8%以上、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは1.2%以上、最も好ましくは1.3%以上とするのがよい。
Ti:0.005〜0.10%
Tiは焼入性向上元素として本発明では重要であり、またNと窒化物を形成してHAZのγ粒を微細化すると共に、BNの生成サイトとなり、粒内フェライトの生成を促進し、HAZ靭性を大幅に改善する効果を有する。0.005%未満では、こうした効果が十分に確保できない。好ましくをま0.007%以上、より好ましくは0.009%以上とするのがよい。一方、Tiが0.10%を超えると、HAZ靭性、母材靭性共に劣化する。好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.020%以下とするのがよい。Tiの焼入性についてはTP値の限定理由にて詳述する。
B:0.0012〜0.0050%
Bは固溶することにより焼入性を改善する作用を有するが、固溶量が多過ぎる場合には却って靭性を損なう。また、HAZにおいては、BNとなりフェライトの核生成サイトとして働き、HAZ靭性を向上させる効果を有する。B量が0.0012%未満では、Bの添加効果が十分に確保できない。他方、B量が0.005%を超えると、却って焼入性が低下すると共に、母材靭性、HAZ靭性が劣化する。好ましくは0.0030%以下、さらに好ましくは0.0025%以下とするのがよい。
N:0.002〜0.010%
Nは、Tiと窒化物を形成してHAZのγ粒径を微細化すると共に、Bと窒化物を形成してHAZのフェライトの生成を促進し、HAZ靭性を改善する効果を有する。N量が0.010%を超えると、母材靭性、HAZ靭性共に劣化する。また、固溶B量が低下することによって強度が低下するようになる。好ましくは0.0060%以下とするのがよい。他方、N量が0.002%未満では、Tiとの窒化物形成によるHAZ靭性改善効果が不十分となる。好ましくは0.0030%以上とするのがよい。
Ca:0.0050%以下
CaはMnSを球状化し、介在物の異方性を低減する効果を有する。この効果を十分に発揮させるために、Caを0.0005%以上添加することが好ましい。より好ましくは0.001%以上とするのがよい。他方、Ca量が0.0050%を超えると母材靭性が低下する傾向にあるため、その上限を0.0050%とする。より好ましくは0.0030%以下とするのがよい。
KP=[Mn]+1.5[Cr]+2[Mo]<2.4
KPは、低炭素ベイナイトでのMAの生成し易さを示す指標であり、KPが2.4以上になると、MAの生成量が多くなり過ぎてHAZ靭性(特に低温HAZ靭性)が劣化する。KPの値はHAZ靭性改善の観点から小さいほど望ましく、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.7以下とするのがよい。
TP=4[Ti]/[C]>0.62
[Ti]/[C]はオーステナイト中における固溶Ti量、すなわちTiによる焼入性を示す指標であり、Tiによる焼入性を有効に発揮させることにより材質異方性、材質バランスを改善しつつ、MAの生成を抑制することができる。後述の実施例から明らかなとおり、TP値が0.62以下では焼入性に寄与する固溶Ti量が不足し、MAの生成量が増し、また材質異方性が著しくなる。すなわち、固溶Ti量が不足すると、Tiに比して偏析し易いMn、Cu、Ni、Nbが焼入性に寄与するようになり、それらの元素の偏析に起因して材質異方性、材質バラツキが生じ易くなる。
P、Sは不純物であり、少ないほど好ましいが、Pは0.020%以下、好ましくは0.010%以下に止めるのがよく、またSは0.010%以下、好ましくは0.005%以下に止めるのがよい。また、Alは脱酸に有効な元素であり、鋼成分として含めることができるが、0.20%を超えると母材靭性やHAZ靭性が低下する傾向が生じるため、0.20%以下、好ましくは0.10%以下、さらに好ましくは0.05%以下に止めるのがよい。
さらに、本発明の高張力鋼板は、Nb:0.030%未満かつ2[Nb]/[Ti]<4.0を満足する範囲、Ni:2.0%以下、Cu:2.0%以下、Cr:1.0%以下の中から選ばれるいずれか1種以上を含む。
Nb:0.030%未満、2[Nb]/[Ti]<4.0
Nbは焼入性を改善する作用を有するが、0.030%以上では結晶粒が粗大化し、母材靭性およびHAZ靭性が低下する。好ましくは0.025%以下、さらに好ましくは0.018%以下とするのがよい。他方、Nbの添加効果を有効に発揮させるためには、0.005%以上とすることが好ましく、0.008%以上とすることがより好ましい。さらに、Nbを添加する場合、2[Nb]/[Ti]が4.0以上になると、Nbによる焼入性がTiより支配的になり、凝固時のNbのマクロ偏析、ミクロ偏析により材質バラツキ、材質異方性が大きくなる。このため、2[Nb]/[Ti]を4.0未満とし、好ましくは3.0以下とするのがよい。
Ni:2.0%以下
Niは母材強度および母材靭性の向上に有用な元素であるが、2.0%を超えて含有させるとHAZ靭性が却って劣化する傾向にあるため、その上限を2.0%とすることが好ましい。より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは0.9%以下である。
Cu:2.0%以下
Cuは固溶強化および析出強化により母材強度を向上させると共に、焼入性向上作用を有する。2.0%を超えると大入熱HAZ靭性が低下する傾向にあるため、上限を2.0%とすることが好ましい。より好ましくは1.2%以下、さらに好ましくは0.9%以下とするのがよい。
Cr:1.0%以下
Crは焼入性改善により母材強度を向上させる作用を有するが、1.0%を超えるとMAの生成量が増えてHAZ靭性が劣化する傾向にあるため、その上限を1.0%とすることが好ましい。より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下とするのがよい。
本発明の鋼板は以上の基本成分のほか、残部Feおよび不可避的不純物によって形成される。さらに、上記基本成分の作用、効果を損なわない範囲で特性をより向上させる元素の添加を妨げるものではない。例えば、(1) 下記範囲のMo、Vのいずれか1種以上、(2) 下記範囲のMg、REM、Zrのいずれか1種以上、の各群から選ばれた元素を単独で、あるいは複合して添加することができる。
Mo:0.30%以下
Moは焼入性を改善して母材強度を向上させる作用を有するが、他方、HAZ靭性を大幅に劣化させる作用も有するため、その上限を0.30%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.15%以下、さらに好ましくは0.10%以下とするのがよい。
V:0.10%以下
Vは少量の添加により、焼入性および焼戻し軟化抵抗を高める作用を有するが、0.10%を超えると母材靭性やHAZ靭性が低下する傾向にあるため、その上限を0.10%とすることが好ましい。より好ましくは0.06%以下、さらに好ましくは0.02%以下とするのがよい。
Mg:0.005%以下、REM:0.02%以下、Zr:0.05%以下
これらの元素はHAZ靭性を向上させる作用を有するが、過剰に含有させると却ってHAZ靭性が劣化する傾向にあるため、Mg:0.005%以下、REM:0.02%以下、Zr:0.050%以下とすることが好ましい。より好ましくは、Mg:0.003%以下、REM:0.01%以下、Zr:0.03%以下である。なお、本発明の鋼板で含有されることのあるREMは、周期律表3属に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)およびランタノイド系列希土類元素(原子番号57〜71)の元素のいずれをも用いることができる。
本発明の鋼板は、上記組成を有し、主としてベイニティックフェライト及び/又は擬ポリゴナルフェライト組織からなり、その他、若干のMAを含む組織を呈するが、旧γ粒の平均アスペクト比は1.3以下とされる。旧γ粒のアスペクト比が大きい場合、L方向とC方向の組織単位すなわちベイナイトブロック(結晶方位が同じであるベイニティックフェライトの束)のサイズが異なり、またベイナイトの方位がランダムにならないようになり、材質異方性が著しく発現するようになる。このため、旧γ粒の平均アスペクト比を1.3以下、好ましくは1.2以下とする。また、MAは粗大な硬質相であるため、亀裂発生の起点となり、母材靭性を著しく劣化させるので、平均で0.5面積%以下とされる。さらに、MAの低温靭性に与える影響は、その量に加えて、特にその大きさとアスペクト比が関与し、MAの平均円相当径が1.0μm 超、平均アスペクト比が2.0超になると、低温靭性の劣化が著しくなる。このため、MAの平均円相当径を1.0μm 以下、平均アスペクト比を2.0以下とすることが好ましい。
次に、本発明鋼板の推奨される製造条件について説明する。本発明の高張力鋼板は、Ti、B、Nbをオーステナイト中に固溶させるために鋼片を1050〜1150℃程度に加熱した後、基本的に再結晶域で圧延する。再結晶温度は合金元素の中でTi、Nb、Bの影響を大きく受けるため、これらの元素の濃度に合わせて最終仕上圧延温度FRTを設定する必要がある。本発明者の研究により、FRTは下記式を満足する温度に設定することにより、アスペクト比が1.0に近い値が得られる。なお、基本的にパス毎に100%再結晶する温度で圧延すれば、理論的にはアスペクト比はほぼ1になる。もっとも、下記式の右辺が830℃未満になる場合は、830℃以上とする。830℃未満では部分再結晶温度域での圧延になり、圧延後に残った未再結晶粒の影響により材質異方性が大きく発現するようになるからである。
FRT(℃)≧(4[Nb]+[Ti]+20[B])×1000+770
熱間圧延後の冷却では、冷却速度を3℃/秒以上とすることが好ましく、また冷却停止温度は500℃以下が好ましい。冷却速度が3℃/秒未満であったり、冷却停止温度が500℃を超える場合には、靭性阻害要因であるMAが許容範囲を超えて生成するようになる。具体的には熱延後、水冷すればよく、水冷により板厚が100mm程度でも冷却速度を4℃/秒程度に制御することができる。
本発明の鋼板では、焼戻し処理は必ずしも行わなくてもよいが、焼戻し処理を実施する場合には、焼戻し温度を400〜600℃とすることが望ましい。焼戻し温度が400℃未満では、MAが分解せず、強度低下のみで靭性の向上が期待できない。他方、600℃を超えると、結晶粒が成長して粗大化し、母材靭性が却って劣化するようになる。
本発明では、鋼成分としてTi/C、あるいはさらにNb/Tiを適正化することによって、Tiの焼入性を最大限発揮させて、MAの量およびサイズを小さくすることができる。このため、圧延温度が高いことによるベイナイト粒の粗大化の影響を相殺し、母材の材質異方性、材質バラツキを抑制しつつ、母材を高強度化し、優れた低温靭性、溶接性を兼ね備えた鋼板を製造することが可能となる。
本発明の鋼板は、上記のとおり、熱間圧延においてKP値、TP値を規制した所定成分の鋼片に対して主として再結晶温度域での高温圧延を積極的に行い、急冷することにより、ベイニティックフェライト及び/又は擬ポリゴナルフェライトを主体とする組織を呈しつつ、MA量が可及的に抑制され、また旧γ粒のアスペクト比が1近傍に落ち着いた組織としたものであり、例えば板厚が50mm以上のものでも490MPa以上の強度を実現することができ、母材靭性、HAZ靭性に優れ、材質異方性、材質バラツキを低減することができる。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
下記表1に示す化学組成の鋼を常法により溶製し、スラブとした後、表2に示す条件で加熱均熱した後、同表に示す仕上圧延終了温度(FRT)にて熱間圧延を終了し、同表に示す冷却速度(鋼板の板厚平均冷却速度を示す。)にて冷却した。また、一部の試料については、冷却後、同表に示す焼戻温度にて15min 程度保持する焼き戻し熱処理を行った。なお、熱間圧延後、鋼板を水冷にて冷却したが、その際の平均冷却速度は板厚30mm,50mm,80mm,100mmに対してそれぞれおおよそ5℃/s,12℃/s,5℃/s,4℃/sであり、表3にはそれらの値を示した。
このようにして製造した試料熱延板に対し、熱延板の板厚の1/4部位から3個の組織観察試験片を採取し、光学顕微鏡観察(倍率400倍)を行ったところ、ベイニティックフェライトおよび擬ポリゴナルフェライトを主体とし、ベイニティックフェライトや擬ポリゴナルフェライトの界面にMAが若干生成した組織となっていた。
前記組織観察試験片をナイタール腐食後、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて倍率1000倍で組織を撮影し、撮影した画像を画像解析ソフトを用いて解析して、MAの平均面積分率、平均円相当径、平均アスペクト比を求めた。また、光学顕微鏡を用いて100〜400倍で組織を撮影し、旧γ粒のサイズを測定し、その平均アスペクト比を求めた。これらの測定結果を表2に併せて示す。
また下記要領にて引張試験、衝撃試験を行い、母材の機械的性質を調べた。
引張試験は、各鋼板の3カ所(鋼板の長さ方向の前部、中央部、後部)においてL方向およびC方向に沿って板厚1/4部位から採取したJIS4号試験片を用いて行い、0.2%耐力(YS)、引張強さ(TS)を測定した。また、衝撃試験は引張試験片の場合と同様にしてJIS4号試験片を採取し、これを用いてシャルピー衝撃試験を行い、−60℃での吸収エネルギー(vE-60 )を求めた。本発明の鋼板用途では、引張強さが490MPa以上、vE-60 が250J以上であれば実用上、合格レベルにある。表3のYS、TS、vE-60 には、測定した値の内、最小の値を表示した。
また、材質異方性を評価するため、各採取部位におけるL方向とC方向との特性差の内、最も大きいもの(異方性ΔTS、異方性ΔYS、異方性ΔvE-60 )を求めた。また、材質バラツキを評価するため、異なる採取部位間でのL方向における特性の最大・最小差あるいはC方向における特性の最大・最小差を求め、これれらの内の大きいもの(バラツキΔTS、バラツキΔYS、バラツキΔvE-60 )を求めた。
また、HAZ靭性を評価するため、各鋼板を1400℃に加熱して5秒保持した後、800℃から500℃まで500秒で冷却する熱サイクル処理(70kJ/mmの入熱でサブマージアーク溶接したときのHAZの熱履歴に相当)を施した後、板厚1/4部位からJIS4号試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギー(vE-60 )を測定した。本発明の鋼板用途では、HAZ靭性がvE-60 で100J以上であれば実用上、合格レベルにある。これらの測定結果を表3に併せて示す。
Figure 0004313730
Figure 0004313730
Figure 0004313730
表3より、発明例はすべて引張強さが490MPa以上で、母材低温靭性(vE-60 )が250J以上で、HAZ靭性(vE-60 )が100J以上であり、しかもΔYS≦50MPa、ΔTS≦30MPa、ΔvE-60 ≦50MPaであり、材質異方性および材質バラツキが良好な範囲に収まっている。
これに対し、比較例の試料No. 5はC量が過多であり、No. 8はSi量が過多であるため、MA量が多くなり、母材靭性、HAZ靭性の劣化が著しい。また、試料No. 9はMn量が過少であるため引張強さが低下し、一方No. 12はMn量が過多であるため引張強さは高いが、母材靭性が劣化している。また、試料No. 14はNb量が過多であるため、Ti量とのバランスが崩れ、材質異方性および材質バランスが共に悪化している。試料No. 15はTi量が過少であるため、特に材質バランスが低下している。一方、No. 18はTi量が過多であるため、焼入性が向上して高強度が得られているが、母材靭性やHAZ靭性が劣化し、また未再結晶粒が多くなったため、材質異方性も劣化している。また試料No. 19とNo. 22はB量が不適当であるため、引張強さあるいは母材靭性が低下している。また、試料No. 23と26はN量が不適当であるため、母材靭性やHAZ靭性あるいは引張強さが悪化している。また、試料No. 38,42,45は鋼成分は適正であるが、圧延温度が低いため、総じて旧γ粒の平均アスペクト比が過大となり、材質異方性が低下している。

Claims (5)

  1. mass%で、
    C:0.01〜0.055%、
    Si:0.8%以下、
    Mn:0.5〜1.9%、
    Ti:0.005〜0.10%、
    B:0.0012〜0.0050%、
    N:0.002〜0.010%、
    Al:0.20%以下、
    P:0.020%以下、
    S:0.010%以下、
    Ca:0.0050%以下
    を含むと共に、Nb:0.030%未満かつ2[Nb]/[Ti]<4.0を満足する範囲、Ni:2.0%以下、Cu:2.0%以下、Cr:1.0%以下の中から選ばれるいずれか1種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ
    KP=[Mn]+1.5[Cr]+2[Mo]とし、TP=4[Ti]/[C]([X]は元素Xの含有量(mass%)を示す。)するとき、KP<2.4、TP>0.62を満足する成分を含み、
    さらにMAの平均面積率が0.5%以下であり、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が1.3以下である材質異方性が少なく低温靭性に優れた高張力鋼板。
  2. さらに、Mo:0.30%以下、V:0.10%以下のいずれか1種以上を含む請求項1に記載した高張力鋼板。
  3. さらに、Mg:0.005%以下、REM:0.02%以下、Zr:0.05%以下のいずれか1種以上を含む請求項1または2に記載した高張力鋼板。
  4. 前記MAの平均円相当径が1.0μm 以下、平均アスペクト比が2.0以下である請求項1からのいずれか1項に記載した高張力鋼板。
  5. 板厚が50mm以上である請求項1からのいずれか1項に記載した高張力鋼板。
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