JP2007177327A - 溶接熱影響部の靭性に優れ、軟化が小さい厚鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.030%以上0.080%以下(%は質量%の意味。以下同じ)、Si:1.0%以下(0%を含まない)、Mn:0.8%以上2.0%以下、Al:0.01%以上0.10%以下、Ti:0.015%以上0.030%未満、N:0.0055%超0.0100%以下、B:0.0015%以上0.0035%未満,Nb:0.015%以下(0%を含む)を含有し、残部:Fe及び不可避不純物からなり、旧オーステナイト粒の扁平率(長軸/短軸)が1.5以上であり、且つ、下式(1)および(2)を満足する厚鋼板である。 2.0≦[Ti]/[N]≦4.0(1)、0<P値<23.0(2)、P値=2000×[B]+300×([Ti]−3.42×[N])+1000×[Nb]。式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。
【選択図】図2
Description
2.0≦[Ti]/[N]≦4.0 ・・・ (1)
0<P値<23.0 ・・・ (2)
P値
=2000×[B]+300×([Ti]−3.42×[N])+1000×[Nb]
式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。
上式(1)は、微細なTiNを生成するための、Ti量とN量との比率を規定したものであり、これにより、HAZ靭性の向上を図っている。更に、上式(1)とすることにより、BNを核にした粒内フェライトを生成することができる。この比率が2.0を下回ると、B量を高めても鋼中の固溶N量が多くなり過ぎるため、HAZ靭性が低下し、一方、この比率が4.0を超えると、TiNが粗大化し、HAZ靭性が低下する(後記する実施例を参照)。[Ti]/[N]の好ましい比率は、例えば、B量などによっても相違するが、2.2以上3.0以下であることが好ましく、2.4以上2.8以下であることがより好ましい。
P値=2000×[B]+300×([Ti]−3.42×[N])+1000×[Nb]である。
上式(2)は、HAZ軟化を抑制するための指標として、多くの基礎実験に基づいて定めたものである。本発明では、上式(2)に示すように、Nに比べ、TiおよびB、Nbを添加する場合にはNbを多く添加しており、これにより、主に、Bによる焼入れ性向上作用を有効に発揮させ、フェライトの生成を抑制してHAZ軟化を防止している。このように本発明では、合金元素として、特にBを積極的に活用し、B添加による焼入れ性向上作用をうまく利用してHAZ軟化の防止とHAZ靭性の向上との両立を図っている点で、前述した特許文献1〜4と相違している。
旧オーステナイト粒(旧γ粒)とは、オーステナイトの状態から冷却された鋼材がフェライトやマルテンサイトなどの別組織に変態したとき、変態前のオーステナイト粒を、変態後の鋼材側から命名された用語である。本発明では、母材の前組織として、旧γ粒の形状を上記のように扁平形状に制御しており、これにより、HAZ靭性が高められることが明らかになった。
ことが分かる。上記のように旧γ粒が扁平形状になると、溶接時(オーステナイト域までの再加熱時)におけるオーステナイト(γ)の核生成サイトが増加するため、HAZのγ粒径が微細化され、HAZ靭性が高められるものと思料される。
Cは、母材強度を確保するために必要な元素である。C量が0.030%未満では母材強度を確保することができなくなる。一方、C量が0.080%を超えると、硬質のMA組織(マルテンサイトとオーステナイトよりなる混合組織)が多くなりすぎてHAZ靭性が低下する。C量は、0.035%以上0.060%未満であることが好ましい。
Siは、鋼材の強度を確保するために有用な元素であり、そのためには、0.10%以上添加することが好ましい。ただし、Siを過剰に添加すると、HAZにMA組織が多く生成し、HAZ靭性が低下するため、その上限を1.0%とする。Siは、0.8%以下であることが好ましい。
Mnは、焼入れ性を向上させ、母材の強度を確保するのに有用な元素である。Mnが0.8%未満では、上記作用が有効に発揮されない。一方、Mnが2.0%を超えると、母材靭性およびHAZ靭性が低下する。Mnの下限は、1.25%であることが好ましく、1.50%であることがより好ましく、一方、Mnの上限は、1.60%であることが好ましい。
Alは、脱酸、およびミクロ組織の微細化による母材靭性向上効果を有する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Alを0.01%以上添加する。ただし、Alを過剰に添加すると、これらの特性がかえって低下するため、上限を0.10%とする。Alの下限は、0.02%であることが好ましく、一方、Alの上限は、0.06%であることが好ましく、0.04%とすることがより好ましい。
Tiは、Nと結合して窒化物を形成し、溶接時におけるHAZ部のオーステナイト粒を微細化し、HAZ靭性改善に有効な元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Tiを0.015%以上添加する。ただし、Tiを過剰に添加すると、かえってHAZ靭性が低下するようになるため、Tiの上限を0.030%未満に定めた。Tiは、0.018%以上0.025%以下であることが好ましい。
Nは、Tiと結合し、TiNを形成して大入熱溶接時のオーステナイト粒を微細化し、HAZ靭性を向上させる元素である。Nの添加量が0.0055%以下では、上記作用が有効に発揮されない。一方、Nを過剰に添加すると、母材靭性やHAZ靭性に悪影響を及ぼすため、その上限を0.0100%とする。Nは、0.0060%以上0.0090%以下であることが好ましく、0.0070%以上0.0080%以下であることがより好ましい。
Bは、HAZ靭性の向上とHAZ軟化の防止とを両立させるために極めて重要な元素である。具体的には、HAZのボンド部付近では、TiN中にBNを核にした粒内フェライトを生成し、HAZ靭性の向上に寄与すると共に、HAZから離れた位置(細粒域)では、B添加による焼入れ性向上作用によってHAZ軟化を防止している。このような作用を有効に発揮させるため、Bの下限を0.0015%に定めた。ただし、Bを過剰に添加すると、ボンド部が粗大なベイナイト組織となり、HAZ靭性が低下するため、その上限を0.0035%未満に定めた。Bは、0.0020%以上0.0030%未満であることが好ましい。
Nbは、素地の焼入れ性を向上させて母材強度を高め、HAZ軟化を抑制する元素であり、本発明では、必要に応じて添加される選択成分である。このような作用を有効に発揮させるため、Nbは、0.003%以上添加することが好ましく、0.005%以上添加することがより好ましい。ただし、Nbを過剰に添加すると、母材靭性やHAZ靭性が低下するため、上限を0.015%に定めた。Nbは、0.012%未満であることが好ましく、0.010%未満であることがより好ましい。
Pは、HAZ靭性に悪影響を及ぼすため、0.03%以下に抑制することが好ましく、0.01%以下に抑制することがより好ましい。Pは、少なければ少ないほど良い。
Sは、MnSを形成して延性を低下させる元素であり、特に、高強度鋼において、延性低下作用が大きくなる。このような観点から、Sを0.01%以下に抑制することが好ましく、0.005%以下に抑制することがより好ましい。Sは、少なければ少ないほど良い。
Cu、Ni、およびCrは、鋼の低温靭性(低温でのシャルピー吸収エネルギー)を向上させると共に、焼入れ性を高めて強度向上に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Cu、Ni,Crを、それぞれ、0.20%以上添加することが好ましく、0.40%以上添加することがより好ましい。ただし、これらの元素を過剰に添加すると、かえって母材靭性やHAZ靭性が低下するため、Cu、Ni,Crの上限を、それぞれ、1.0%とすることが好ましく、0.80%とすることがより好ましい。なお、これらの元素は、単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
Moは、焼入れ性を高め、強度の確保に有効であるほか、焼戻し脆性を防止するために有効な元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Moを0.1%以上添加することが好ましい。ただし、Moを過剰に添加すると、母材靭性およびHAZ靭性が低下するため、その上限を0.5%とすることが好ましく、0.30%とすることがより好ましい。
Vは、少量の添加で焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める作用を有する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Vを、例えば、0.01%以上添加することが好ましい。ただし、Vを過剰に添加すると、母材靭性およびHAZ靭性が低下するため、Vの上限を0.10%とすることが好ましく、0.05%とすることがより好ましい。
Ca、Mg、およびREM(希土類元素)は、いずれも、HAZ靭性向上作用を有する元素である。具体的には、CaおよびREMは、MnSを球状化するという介在物の形態制御による異方性を低減する効果を有しており、これにより、HAZ靭性が向上する。一方、Mgは、MgOを形成し、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制することによってHAZ靭性を向上させる効果を有する。
ZrおよびHfは、Tiと同様、Nと結合して窒化物を形成し、溶接時におけるHAZのオーステナイト粒を微細化し、HAZ靭性の改善に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Zrを0.001%以上、Hfを0.001%以上添加することが好ましい。ただし、これらの元素を過剰に添加すると、かえって母材靭性やHAZ靭性が低下するため、Zrの上限を0.10%、Hfの上限を0.050%とする。これらの元素は、単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
CoおよびWは、焼入れ性を向上させ、母材強度を高める元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Coを0.2%以上、Wを0.2%以上添加することが好ましい。ただし、これらの元素を過剰に添加すると、母材靭性やHAZ靭性が低下するため、CoおよびWの上限を、それぞれ、2.5%とすることが好ましい。
前述した方法により、各鋼板の板厚1/4部位を鏡面研磨した試験片を、2%ナイタール液でエッチングした後、光学顕微鏡を用いて50倍で観察し、写真撮影をした。この観察視野10視野(1.35mm×1.80mm/視野)について、Media Cybernetics社製「Image−Pro Plus」を用いて画像解析を行い、鋼組織中の旧γ粒の形態(扁平率)を測定した。
各鋼板の板厚1/4部位からJIS4号試験片を採取し、引張試験を行うことにより、引張強度を測定した。本実施例では、引張強度が490MPa以上のものを合格(本発明例)とした。
入熱60kJ/mmで溶接(エレクトロガスアーク溶接)を行い、図4に示す部位からJIS4号試験片を採取し、−60℃でシャルピー衝撃試験を行い、板厚の1/4部位における溶接溶融線(ボンド部)の吸収エネルギー(vE-60)を求めた。vE-60が、vE-60≧150Jのものを合格(本発明例)とした。この入熱条件によれば、ボンド
部は、1400℃の温度に加熱して50秒間保持した後、780℃から500℃の温度範囲を500秒で冷却する熱サイクルを受けたことになる。
前述したHAZ靭性と同じ条件で溶接を行った溶接継手部分を鏡面研磨した試験片を用意し、この試験片の板厚1/4部位における溶接溶融線(ボンド)位置から30mm離れた位置まで1mmピッチで連続的に硬さを測定し、硬さの最高値(ボンド部の硬さ)と最低値との差(Q値)をHAZ軟化の指標とした。硬さは、マイクロビッカース硬度計(MATSUZAWA SEIKI製DMH−1)を用いて測定した。本実施例では、Q値≦40HVのものを合格(HAZ軟化が抑えられた)と評価した。
に優れており、且つ、Q値≦40HVと、HAZ軟化を抑えることもできた。
Claims (8)
- C :0.030%以上0.080%以下(%は質量%の意味。以下同じ)、
Si:1.0%以下(0%を含まない)、
Mn:0.8%以上2.0%以下、
Al:0.01%以上0.10%以下、
Ti:0.015%以上0.030%未満、
N :0.0055%超0.0100%以下、
B :0.0015%以上0.0035%未満、
Nb:0.015%以下(0%を含む)
を含有し、
残部:Fe及び不可避不純物からなり、
旧オーステナイト粒の扁平率(長軸/短軸)が1.5以上であり、且つ、
下式(1)および(2)を満足することを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れ、軟化が小さい厚鋼板。
2.0≦[Ti]/[N]≦4.0 ・・・ (1)
0<P値<23.0 ・・・ (2)
P値
=2000×[B]+300×([Ti]−3.42×[N])+1000×[Nb]
式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。 - Cu:1.0%以下(0%を含まない)、Ni:1.0%以下(0%を含まない)、およびCr:1.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも一種を更に含有する請求項1に記載の厚鋼板。
- P:0.03%以下およびS:0.01%以下に抑制されたものである請求項1または2に記載の厚鋼板。
- Mo:0.5%以下(0%を含まない)を更に含有する請求項1〜3のいずれかに記載の厚鋼板。
- V:0.10%以下(0%を含まない)を更に含有する請求項1〜4のいずれかに記載の厚鋼板。
- Ca:0.0050%以下(0%を含まない)、Mg:0.0050%以下(0%を含まない)、およびREM:0.010%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を更に含有する請求項1〜5のいずれかに記載の厚鋼板。
- Zr:0.10%以下(0%を含まない)および/またはHf:0.050%以下(0%を含まない)を更に含有する請求項1〜6のいずれかに記載の厚鋼板。
- Co:2.5%以下(0%を含まない)および/またはW:2.5%以下(0%を含まない)を更に含有する請求項1〜7のいずれかに記載の厚鋼板。
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