JP2005200716A - 溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 大入熱溶接した場合であってもHAZ部靭性に優れた鋼材、具体的にはHAZのボンド付近での最低靭性値をできるだけ引き上げるとともに、靭性の平均値をも改善することのできる鋼材を提供する。
【解決手段】 所定の化学成分組成を有する鋼材であり、且つ下記(1)式および(2)式を満足することを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材。
1.0≦[Ti]/[N]≦3.0 ‥(1)
−25≦(−8800[Ti]+7400[N]+44000[B])≦120‥(2)
但し、[Ti],[N]および[B]は、夫々Ti,NおよびBの含有量(質量%)を示す。
【解決手段】 所定の化学成分組成を有する鋼材であり、且つ下記(1)式および(2)式を満足することを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材。
1.0≦[Ti]/[N]≦3.0 ‥(1)
−25≦(−8800[Ti]+7400[N]+44000[B])≦120‥(2)
但し、[Ti],[N]および[B]は、夫々Ti,NおよびBの含有量(質量%)を示す。
Description
本発明は、橋梁、高層建造物、船舶や海洋構造物などの大型構造物に使用される高張力鋼材であって、殊に大入熱溶接時の熱影響部(以下、「HAZ」と称することがある)での靭性を改善した鋼材に関するものである。
橋梁、高層建造物、船舶、海洋構造物などの大型構造物に使用される溶接用鋼材に要求される特性は、近年益々厳しくなっており、鋼材自体の靭性は勿論のこと、溶接したときにおけるHAZでの靭性も良好であることが求められている。特に近年では、構造物の大型化に伴い、大断面部材の溶接が不可避となっており、あらゆる分野において溶接施工効率改善という観点から、大入熱溶接が指向されている。
ところが、大入熱溶接を実施した場合には、HAZのボンド部(溶接金属と母材の境界)付近の組織が粗大化して、良好なHAZ靭性を確保することが困難であるという問題がある。こうしたことから、大入熱溶接法を採用した場合でもHAZ靭性の劣化を抑制し得る鋼材の実現が望まれているのが実状である。
これまでにも鋼材のHAZ靭性を改善する技術が様々提案されている。例えば特許文献1には、酸化物系介在物(Ti含有酸化物)を活用してHAZ靭性を改善する技術が提案されている。また、特許文献2には、TiNを活用してHAZ靭性を改善する技術が提案されている。
特開2002−121641号公報 特許請求の範囲等
特開平09−104949号公報 特許請求の範囲等
これまで提案されてきた技術では、HAZ靭性(シャルピー吸収エネルギー)の平均値は改善されたものの、ボンド部付近での靭性バランスが改善されていない場合があり、靭性の最低値を更に向上したいというユーザニーズに対応するには十分でないという問題がある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、大入熱溶接した場合であってもHAZ部靭性に優れた鋼材、具体的にはHAZのボンド付近での最低靭性値をできるだけ引き上げるとともに、靭性の平均値をも改善することのできる鋼材を提供することにある。
上記課題を解決することのできた溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材とは、:0.030超〜0.10%(「質量%」の意味、以下同じ)、Si:1.0%以下、Mn:0.80〜2.0%、Al:0.01〜0.10%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0050〜0.0120%およびB:0.0010〜0.0060%を夫々含有すると共に、Cu,NiおよびCrよりなる群から選ばれる1種以上を、単独では夫々0.1〜2.0%未満で合計:4.5%以下含有し、且つ下記(1)式および(2)式を満足する点に要旨を有するものである。
1.0≦[Ti]/[N]≦3.0 ‥(1)
−25(%)≦(-8800[Ti]+7400[N]+44000[B])≦120(%) ‥(2)
但し、[Ti],[N]および[B]は、夫々Ti,NおよびBの含有量(質量%)を示す。
1.0≦[Ti]/[N]≦3.0 ‥(1)
−25(%)≦(-8800[Ti]+7400[N]+44000[B])≦120(%) ‥(2)
但し、[Ti],[N]および[B]は、夫々Ti,NおよびBの含有量(質量%)を示す。
本発明の鋼材においては、必要に応じて、(A)Mo:0.5%以下(0%を含まない)、Nb:0.05%以下(0%を含まない)およびV:0.10%以下(0%を含まない)のいずれか、(B)Zr:0.05%以下(0%を含まない)、(C)Ca,Mgおよび希土類元素よりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.005%以下(0%を含まない)、等を含有させることも有用であり、含有させる成分に応じて本発明の鋼材の特性が更に改善される。また、P:0.02%以下(0%を含む)およびS:0.01%以下(0%を含む)に夫々抑制することも有効である。
本発明によれば、大入熱溶接した場合であっても溶接熱影響部の靭性のバラツキが低減された鋼材を提供することができ、この鋼材は近年の要求に十分対応できるものとなる。
本発明者らは、HAZのボンド部近傍で吸収エネルギーがばらつく原因について様々な角度から検討した。その結果、ボンド部近傍におけるHAZにおいては、旧オーステナイト粒径(γ半径)がばらつき、これが原因となって組織がばらつくためであることを突き止めた。
これまで提案されてきる技術のうち、酸化物系介在物を活用した技術では、鋼中で酸化物系介在物を形成する温度が高く、酸化物系介在物が粗大化し、これによって介在物の分散密度が疎となるので、γ粒径がばらつくものと考えられた。また、TiNを活用した技術では、TiNの高温安定性が乏しいことによって部分的に固溶してしまうので、γ粒径がばらついてしまうものと考えることができた。
そこで本発明者らは、酸化物系介在物ではなく、微細分散することのできるTiNについて、できるだけ高温まで安定化させることを狙って更に検討を重ねた。
その結果、これまでは靭性に悪影響を与えると考えられていたNを比較的多量に添加し、且つTiとBの添加バランスを適切に制御すれば、HAZ靭性が改善できること特に靭性最低値を確保できるきことを見出し、本発明を完成した。
こうした工夫によって、上記の効果が得られた理由については、その全てを解明し得た訳ではないが、おそらく次のように考えることができた。まず高N化とすることによって、TiN生成時の駆動力を増加させ、従来を同様の製造方法を適用しても、TiNを微細分散させることができるものと考えられる。また、それと同時に、NとTiとの添加バランスを適切にすることによって、TiNの高温での安定性を増加させることができたものと考えることができる。しかも、Ti、BおよびNの添加バランスを適切に制御することによって、溶接後も溶け残ったTiNを核としてBNが生成して変態後の組織を微細化できるものと考えることができる。即ち、本発明によれば、高N化およびNとTiの添加バランスによって、ボンド近傍の旧γ粒径微細化が安定的に達成されてHAZ靭性のバラツキが大幅に改善(低減)できると共に、Ti,BおよびNの添加バランスによって変態後のγ粒内組織も微細化できてHAZの吸収エネルギーの平均値(以下、「HAZ靭性の平均値」と呼ぶことがある)も確保できたのである。
本発明の鋼材は、必須成分として、0.030超〜0.10%、Si:1.0%以下、Mn:0.80〜2.0%、Al:0.01〜0.10%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0050〜0.0120%およびB:0.0010〜0.0060%を夫々含有すると共に、Cu,NiおよびCrよりなる群から選ばれる1種以上を、単独では夫々1.0〜2.0%未満で合計:4.5%以下含有するものであるが、これらの成分の範囲限定理由は次の通りである。
C:0.030超〜0.10%
Cは、鋼材の強度を確保するために欠くことのできない元素であり、この効果を有効に発揮させるには、0.030%を超えて含有させる必要があり、好ましくは0.032%以上含有させるのがよい。しかしながら、C含有量量が過剰になると、HAZに有害な島状マルテンサイトが多く生成し、硬化が著しくなると共に、HAZ靭性の平均値が劣化することになるので0.10%以下に抑える必要がある。好ましくは0.09%以下とすることがより推奨される。
Cは、鋼材の強度を確保するために欠くことのできない元素であり、この効果を有効に発揮させるには、0.030%を超えて含有させる必要があり、好ましくは0.032%以上含有させるのがよい。しかしながら、C含有量量が過剰になると、HAZに有害な島状マルテンサイトが多く生成し、硬化が著しくなると共に、HAZ靭性の平均値が劣化することになるので0.10%以下に抑える必要がある。好ましくは0.09%以下とすることがより推奨される。
Si:1.0%以下
Siは、鋼材を固溶強化するのに有効な元素であるが、過剰に含有されるとHAZに島状マルテンサイトが多く生成し、HAZ靭性の平均値が劣化するので1.0%以下とする必要がある。Si含有量の好ましい下限は0.1%であり、好ましい上限は0.8%である。
Siは、鋼材を固溶強化するのに有効な元素であるが、過剰に含有されるとHAZに島状マルテンサイトが多く生成し、HAZ靭性の平均値が劣化するので1.0%以下とする必要がある。Si含有量の好ましい下限は0.1%であり、好ましい上限は0.8%である。
Mn:0.80〜2,0%
Mnは、焼入れ性を向上させる元素であり、鋼材強度、HAZ靭性の平均値の確保を向上させるのに有効な元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.80%以上含有させる必要があり、好ましくは1.20%以上含有させるのがよい。しかしながら、Mn含有量が過剰になるとHAZの硬化が著しくなるので、2.0%以下に抑える必要がある。好ましくは1.8%以下とするのがよい。
Mnは、焼入れ性を向上させる元素であり、鋼材強度、HAZ靭性の平均値の確保を向上させるのに有効な元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.80%以上含有させる必要があり、好ましくは1.20%以上含有させるのがよい。しかしながら、Mn含有量が過剰になるとHAZの硬化が著しくなるので、2.0%以下に抑える必要がある。好ましくは1.8%以下とするのがよい。
Al:0.010〜0.10%
Alは脱酸元素として必要であり、その作用を有効に発揮させるためには、0.010%以上含有させる必要があり、好ましくは0.015%以上含有させるのがよい。しかし、Alを過剰に含有させるとSiと同様にHAZの島状マルテンサイトの生成を助長してHAZ靭性平均値を劣化させるので、0.10%以下とする必要があり、好ましくは0.045%以下とするのがよい。
Alは脱酸元素として必要であり、その作用を有効に発揮させるためには、0.010%以上含有させる必要があり、好ましくは0.015%以上含有させるのがよい。しかし、Alを過剰に含有させるとSiと同様にHAZの島状マルテンサイトの生成を助長してHAZ靭性平均値を劣化させるので、0.10%以下とする必要があり、好ましくは0.045%以下とするのがよい。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは、TiNを形成してHAZのγ粒粗大化を抑制し、HAZ靭性の安定化に有効に作用する。こうした作用を有効に発揮させるには、0.005%以上含有させる必要があり、好ましくは0.008%以上、より好ましくは0.010%以上含有させるのがよい。しかしながら、Ti含有量が過剰になると、TiNが粗大化してTiNの個数が減少し、HAZ靭性が却って劣化させるので、0.030%以下に抑えるべきである。好ましくは0.025%以下とするのがよい。
Tiは、TiNを形成してHAZのγ粒粗大化を抑制し、HAZ靭性の安定化に有効に作用する。こうした作用を有効に発揮させるには、0.005%以上含有させる必要があり、好ましくは0.008%以上、より好ましくは0.010%以上含有させるのがよい。しかしながら、Ti含有量が過剰になると、TiNが粗大化してTiNの個数が減少し、HAZ靭性が却って劣化させるので、0.030%以下に抑えるべきである。好ましくは0.025%以下とするのがよい。
N:0.0050〜0.0120%
Nは、TiNを微細分散させてHAZ靭性の旧γ粒粗大化を抑制し、HAZ靭性を安定化させるのに有効に作用する元素であり、本発明における最も重要な成分である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.0050%以上含有させる必要がある。N含量が多いほどγ粒の微細化は促進され、靭性向上に有効であるが、0.0120%を超えると靭性に有害な固溶N量の増大により却ってHAZ靭性の平均値が劣化する。従って、N含有量は0.0120%以下に抑える必要がある。好ましい下限値は0.0055%であり、好ましい上限値は0.010%である。
Nは、TiNを微細分散させてHAZ靭性の旧γ粒粗大化を抑制し、HAZ靭性を安定化させるのに有効に作用する元素であり、本発明における最も重要な成分である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.0050%以上含有させる必要がある。N含量が多いほどγ粒の微細化は促進され、靭性向上に有効であるが、0.0120%を超えると靭性に有害な固溶N量の増大により却ってHAZ靭性の平均値が劣化する。従って、N含有量は0.0120%以下に抑える必要がある。好ましい下限値は0.0055%であり、好ましい上限値は0.010%である。
B:0.0010〜0.0060%
Bは、高温時に溶け残ったTiNを核にBNとして析出し、HAZ組織の均一化に有効に作用する成分である。こうした作用を発揮させるためには、Bは0.0010%以上含有させる必要がある。しかしながら、Bの含有量が0.0060%を超えて過剰になると、HAZ硬化が著しくなり、HAZ靭性の平均値が劣化することになる。B含有量の好ましい下限は0.0012%であり、好ましい上限は0.0050%である。
Bは、高温時に溶け残ったTiNを核にBNとして析出し、HAZ組織の均一化に有効に作用する成分である。こうした作用を発揮させるためには、Bは0.0010%以上含有させる必要がある。しかしながら、Bの含有量が0.0060%を超えて過剰になると、HAZ硬化が著しくなり、HAZ靭性の平均値が劣化することになる。B含有量の好ましい下限は0.0012%であり、好ましい上限は0.0050%である。
Cu,NiおよびCrよりなる群から選ばれる1種以上:単独では夫々1.0〜2.0未満で合計:4.5%以下
これらの元素は、HAZ組織を微細化させる作用を有し、そのためには1種以上を単独では夫々0.10%以上含有させる必要がある。しかしながら、いずれかの元素が過剰になって2.0%以上となると、HAZ硬化が著しくなってHAZ靭性の平均値が劣化することになる。また同様に、単独では2.0%未満であっても合計で4.5%を超えるとHAZ靭性の平均値が劣化することになる。これらの元素の好ましい下限は、単独では夫々0.20%であり、好ましい上限は単独では夫々1.5%である。合計量の好ましい上限は、3.0%である。
これらの元素は、HAZ組織を微細化させる作用を有し、そのためには1種以上を単独では夫々0.10%以上含有させる必要がある。しかしながら、いずれかの元素が過剰になって2.0%以上となると、HAZ硬化が著しくなってHAZ靭性の平均値が劣化することになる。また同様に、単独では2.0%未満であっても合計で4.5%を超えるとHAZ靭性の平均値が劣化することになる。これらの元素の好ましい下限は、単独では夫々0.20%であり、好ましい上限は単独では夫々1.5%である。合計量の好ましい上限は、3.0%である。
本発明の鋼材は、上記元素を必須成分として含有するものであるが、本発明の目的を達成するためには、NとTiの添加バランスおよびTi,BおよびNの添加バランスも重要である。即ち、本発明の鋼材においては、下記(1)式および(2)式を満足する必要がある。尚、下記(1)式および(2)式は、実験データを整理して、求められたものである。
1.0≦[Ti]/[N]≦3.0 ‥(1)
−25(%)≦(-8800[Ti]+7400[N]+44000[B])≦120(%) ‥(2)
但し、[Ti],[N]および[B]は、夫々Ti,NおよびBの含有量(質量%)を示す。
1.0≦[Ti]/[N]≦3.0 ‥(1)
−25(%)≦(-8800[Ti]+7400[N]+44000[B])≦120(%) ‥(2)
但し、[Ti],[N]および[B]は、夫々Ti,NおよびBの含有量(質量%)を示す。
([Ti]/[N])の値(以下、「NR値」と呼ぶ)が3.0以下のときに、TiNの高温安定性が増し、HAZ靭性が改善されることになる。しかしながら、NR値が1.0よりも小さくなると、TiNが粗大化して却ってHAZ靭性バラツキが大きくなる。尚、NR値の好ましい下限は1.2であり、好ましい上限は2.5である。
(-8800[Ti]+7400[N]+44000[B])の値(以下、「IE値」と呼ぶ)の適正範囲は、実験的に決定されたものであるが、冶金学的に適正なTi・N・BバランスよりもTiが過剰になると[即ち、IE値が−12(%)を下回ると]、TiNが粗大化する傾向があり、γ粒微細化効果が喪失するため、HAZ靭性の平均値が低下することになる。一方、B・Nが過剰になるときには[即ち、IE値が120(%)を超えると]、種々の要因が考えられて一概には言えないが、TiNとBNの複合析出物の形態が適正であっても、固溶B(フリーB)が増大し過ぎるために、HAZ靭性が低下するものと推定される。尚、IE値の好ましい下限は−25(%)であり、好ましい上限は110(%)である。
本発明の鋼材は、上記元素を基本的に含有するものであり、残部はFeおよび不可避不純物(例えば、AsやSb)であるが、必要に応じて、(A)Mo:0.5%以下(0%を含まない)、Nb:0.05%以下(0%を含まない)およびV:0.05%以下(0%を含まない)のいずれか、(B)Zr:0.05%以下(0%を含まない)、(C)Ca,Mgおよび希土類元素よりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.005%以下(0%を含まない)、等を含有させること、或は(D)P:0.02%以下(0%を含む)およびS:0.008%以下(0%を含む)に夫々抑制することも有用であり、含有する若しくは抑制する成分に応じて本発明の鋼材の特性が更に改善される。これらの作用効果は次の通りである。
Mo:0.5%以下(0%を含まない)、Nb:0.05%以下(0%を含まない)およびV:0.10%以下(0%を含まない)のいずれか
これらの元素は鋼材の焼入れ性を高め、HAZ靭性(平均値を含めて)を改善するのに有効に作用する。こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有されるとHAZ硬化が著しくなってHAZ靭性平均値が却って劣化することになるので、Moで0.5%以下、Nbで0.05%以下、Vで0.10%以下にすることが好ましい。尚、好ましい下限はMoで0.1%、Nb,Vで0.01%であり、より好ましい上限はMoで0.4%(更に好ましくは0.35%)、Nbで0.025%(更に好ましくは0.02%)、Vで0.05%(更に好ましくは0.030%)である。
これらの元素は鋼材の焼入れ性を高め、HAZ靭性(平均値を含めて)を改善するのに有効に作用する。こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有されるとHAZ硬化が著しくなってHAZ靭性平均値が却って劣化することになるので、Moで0.5%以下、Nbで0.05%以下、Vで0.10%以下にすることが好ましい。尚、好ましい下限はMoで0.1%、Nb,Vで0.01%であり、より好ましい上限はMoで0.4%(更に好ましくは0.35%)、Nbで0.025%(更に好ましくは0.02%)、Vで0.05%(更に好ましくは0.030%)である。
Zr:0.05%以下(0%を含まない)
Zrは、Tiと同様に窒化物等を形成し、HAZのγ粒の粗大化を抑制するのに有効に作用する。こうした作用はその含有量が増加するにつれて増大するが、その含有量が過剰になると窒化物が粗大化して個数が減少する傾向を示し、HAZ靭性のバラツキが増加するので0.05%以下とすることが好ましい。尚、Zr含有量の好ましい下限は0.005%であり、より好ましい上限は0.03%である。
Zrは、Tiと同様に窒化物等を形成し、HAZのγ粒の粗大化を抑制するのに有効に作用する。こうした作用はその含有量が増加するにつれて増大するが、その含有量が過剰になると窒化物が粗大化して個数が減少する傾向を示し、HAZ靭性のバラツキが増加するので0.05%以下とすることが好ましい。尚、Zr含有量の好ましい下限は0.005%であり、より好ましい上限は0.03%である。
Ca、Mgおよび希土類元素よりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.005%以下(0%を含まない)
Ca、Mgおよび希土類元素は、介在物形状の異方性を低減させる作用を有し、HAZ靭性平均値の改善に有効に作用する。こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させても介在物の粗大化を招き、HAZ靭性平均値が劣化するので、合計で0.005%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.004%以下とするのがよい。
Ca、Mgおよび希土類元素は、介在物形状の異方性を低減させる作用を有し、HAZ靭性平均値の改善に有効に作用する。こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させても介在物の粗大化を招き、HAZ靭性平均値が劣化するので、合計で0.005%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.004%以下とするのがよい。
P:0.02%以下(0%を含む)およびS:0.01%以下(0%を含む)
PおよびSは、鋼材中の結晶粒界に偏析しやすい不純物元素であり、この偏析によりHAZ靭性を劣化させる。こうした不都合を発生させないためには、P含有量で0.02%以下、Sで0.01%以下に夫々抑制することが好ましい。より好ましくはP含有量で0.01%以下、S含有量で0.005%以下とすることが推奨される。
PおよびSは、鋼材中の結晶粒界に偏析しやすい不純物元素であり、この偏析によりHAZ靭性を劣化させる。こうした不都合を発生させないためには、P含有量で0.02%以下、Sで0.01%以下に夫々抑制することが好ましい。より好ましくはP含有量で0.01%以下、S含有量で0.005%以下とすることが推奨される。
本発明の鋼材における化学成分は上記の通りであるが、組織的にはベイナイト分率が70体積%以上のベイナイト主体のものとすることが好ましい。ベイナイト主体の組織とすることによって、HAZの組織が均一化することになり、TiNの効果と併せて、HAZ靭性のバラツキを一層改善できることになる。
尚、ベイナイト分率を70体積%以上とするためには、上記化学成分組成を有する鋼材の製造段階において、熱間圧延後におけるの700〜500℃の温度範囲を冷却速度を0.6℃/sec以上とすればよい。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
下記表1、2に示す化学成分組成を有するAlキルド鋼板を溶製し、50mmまで熱間圧延した。このとき、熱間圧延後の700〜500℃の温度範囲における冷却速度を制御し、ベイナイト組織分率を調整した。
得られた各鋼板について、引張試験(JIS Z2241)に基づいて母材特性(引張強度TS、降伏点YP)を求めると共に、下記の方法によってHAZ靭性を評価した。また、ベイナイト分率については、板厚の1/4部について組織観察、画像解析の方法によって測定した。
(HAZ靭性)
エレクトロスラグ溶接により入熱量800kJ/cmの1パス大入熱溶接を実施し、ボンド(溶融線)から0.5mmのHAZ部についてVノッチシャルピー衝撃試験を実施し、−20℃での吸収エネルギー(vE-20)を測定して靭性を評価した。このとき、サンプルの個数を5(n=5)とし、その平均値と最低値を測定した。このvE-20値が高いほど靭性の良好な鋼材と評価できるが、合格基準は平均値で>100J、最低値で>70Jである。これらの結果(母材特性、ベイナイト分率およびHAZ靭)を、熱間圧延後の冷却速度と共に下記表3、4に示す。
エレクトロスラグ溶接により入熱量800kJ/cmの1パス大入熱溶接を実施し、ボンド(溶融線)から0.5mmのHAZ部についてVノッチシャルピー衝撃試験を実施し、−20℃での吸収エネルギー(vE-20)を測定して靭性を評価した。このとき、サンプルの個数を5(n=5)とし、その平均値と最低値を測定した。このvE-20値が高いほど靭性の良好な鋼材と評価できるが、合格基準は平均値で>100J、最低値で>70Jである。これらの結果(母材特性、ベイナイト分率およびHAZ靭)を、熱間圧延後の冷却速度と共に下記表3、4に示す。
これらの結果から、次のように考察できる。まず実験No.1〜27(表3)のものは、本発明で規定する要件を満足する例であり、HAZ靭性(平均値および最低値)が良好な鋼材が得られていることが分かる。このうち特に、冷却速度を調整してベイナイト分率を90体積%以上としたもの(実験No.22、23)では、HAZ靭性のバラツキが低減されていることが分かる。
これに対して、実験No.28〜42のものは、本発明で規定する要件のいずれかを欠くものであり、良好なHAZ靭性が得られていないことが分かる。特に、NR値が規定範囲から外れる実験No.28、29のもの、Ti含有量が規定範囲から外れる実験No.37、38のもの、およびN含有量が少ない実験No.39、40のものでは、HAZ靭性(vE0)の平均値は100Jを超えているが、最低値が70Jを確保できていないことが分かる。
Claims (6)
- C:0.030超〜0.10%(「質量%」の意味、以下同じ)、Si:1.0%以下、Mn:0.80〜2.0%、Al:0.01〜0.10%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0050〜0.0120%およびB:0.0010〜0.0060%を夫々含有すると共に、Cu,NiおよびCrよりなる群から選ばれる1種以上を、単独では夫々0.10〜2.0%未満の範囲で合計:4.5%以下含有し、且つ下記(1)式および(2)式を満足することを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材。
1.0≦[Ti]/[N]≦3.0 ‥(1)
−25(%)≦(-8800[Ti]+7400[N]+44000[B])≦120(%) ‥(2)
但し、[Ti],[N]および[B]は、夫々Ti,NおよびBの含有量(質量%)を示す。 - Mo:0.5%以下(0%を含まない)、Nb:0.05%以下(0%を含まない)およびV:0.10%以下(0%を含まない)のいずれかを含むものである請求項1に記載の鋼材。
- Zr:0.05%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の鋼材。
- Ca,Mgおよび希土類元素よりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.005%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の鋼材。
- P:0.02%以下(0%を含む)およびS:0.01%以下(0%を含む)に夫々抑制したものである請求項1〜4のいずれかに記載の鋼材。
- ベイナイト組織分率が70体積%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の鋼材。
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