JP4659593B2 - 音響異方性が小さく母材靭性に優れた高張力鋼板の製造方法 - Google Patents

音響異方性が小さく母材靭性に優れた高張力鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、音響異方性が小さく母材靭性に優れた高張力鋼板とその製造方法に関するものであり、特に、音響異方性が小さく母材靭性に優れた高張力鋼板と、該鋼板を確実に得るのに有用な方法に関するものである。
建築構造物や橋梁などの大型構造物に用いられる鋼板には、高強度であると共に高靭性であることが要求される。また建築用や橋梁用として用いられる場合には、鋼板内部に欠陥が存在すると該部分が破壊発生の起点となり易いため、超音波探傷試験により欠陥部分の有無を調査することが一般に行われている。しかし探傷方向によって著しく音速が変化すると、超音波探傷試験で溶接欠陥部の正確な位置を検出できないことから、鋼板には、所謂「音響異方性」が小さいことが要求されている。
これまでに、上記特性を具備する鋼板を得るための方法が種々提案されており、例えば特許文献1には、Ar+50℃〜Ar+200℃の温度域で、累積圧下率40%以上の熱間圧延を行ない、次いで、Ar+50℃〜Ar+100℃の温度域で仕上げ圧延を行ない、その後、60秒以上の空冷を行ない、さらに、1〜10℃/secの冷却速度により400〜550℃の温度まで冷却することが規定されており、特に、仕上げ圧延温度がAr+50℃の温度未満の場合には音響異方性が急激に増加することが示されている(特許文献1の第3頁右下欄第12〜13行目)。
また特許文献2には、1000〜1250℃に加熱し、圧延仕上温度が、成分から求められる規定のT℃〜1050℃の範囲内になるように圧延後、Ar変態点以上から直接焼入れし、次いでAc変態点以下の温度域に焼戻し処理することが規定されており、特に仕上圧延温度が、上記T℃(例えば、特許文献2の段落[0016]では853℃)を下回ると音響異方性が大きくなることが示されている。
特開平02−080516号公報 特開2002−180132号公報
上記の通り、音響異方性を低減させるべく、再結晶温度域(Ar以上)での圧下率を規定する方法は提案されているが、実際の鋼材の再結晶温度(Ar点)は、圧延パス履歴によって変化するため、圧延パス履歴によってばらつく。よって、音響異方性を確実に低減することが難しいといった問題がある。
また従来では、音響異方性を低減させるために旧オーステナイト結晶粒のアスペクト比を低減すべく、オフラインにてAc以上に加熱後焼入れし焼戻す方法が多く採用されているが、該方法ではオンラインに適用できなかった。
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、音響異方性が小さく母材靭性に優れた高張力鋼板を、確実にかつオンラインにおいても製造することのできる有用な方法と、該製造方法により得られる音響異方性が小さく母材靭性に優れた高張力鋼板を提供することにある。
本発明に係る音響異方性が小さく母材靭性に優れた高張力鋼板の製造方法とは、
質量%で(以下同じ)、
C :0.01〜0.08%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:0.5〜2.5%、
Al:0.01〜0.07%、
N :0.0020〜0.0080%
を含み、残部鉄および不可避不純物よりなる鋼材を使用し、加熱後、多パス圧延を行って鋼板を製造するにあたり、下記式(1)により求めた最終パス圧延後のR(R)が0.07〜0.32となるように圧延を終えた後、空冷または加速冷却するところに特徴を有している。
=A×(E+Rn−1) …(1)
上記式(1)において、
:圧延nパス目のγ(オーステナイト)粒変形度
(R=0とする。)
=EXP{−90×EXP[(12×T−21000)/T]×t 0.7
…(2)
=1.5×e−0.0004×H0 …(3)
(Eが負の値になった時はE=0とする。)
上記式(2)(3)において、
=TH+H0/2
:圧延nパス目の圧延時間(s)
(前パスが終わってから今回のパスが終わるまでの時間)
=(H0−HI)/H0
ここで、
TH:圧延nパス目の板表面の絶対温度(K)
H0:圧延nパス目の圧延前の板厚(mm)
HI:圧延nパス目の圧延後の板厚(mm)
上記鋼材として、更に
(a)Cr:2.0%以下(0%を含まない)を含むもの、
(b)Ti:0.03%以下(0%を含まない)および/またはB:0.0030%以下(0%を含まない)を含むもの、
(c)Nb:0.025%以下(0%を含まない)を含むもの、
(d)Mo:1.0%以下、V:0.05%以下、Cu:3.0%以下、および
Ni:3.0%以下よりなる群から選択される1種以上を含むもの、
(e)Zr:0.0005〜0.005%、Mg:0.0003〜0.005%、Ca:0.0005〜0.005%、およびREM:0.0003〜0.003%よりなる群から選択される1種以上を含むもの、を用いてもよい。
本発明は、上記方法により製造される鋼板も含むものであって、該鋼板は、板厚方向と直行する断面(Z面)における旧オーステナイト結晶粒のアスペクト比が1.5〜3.2であるところに特徴を有する。尚、上記アスペクト比は、後述する実施例に示す方法によって測定されるものである。
本発明によれば、建築構造物や橋梁などの大型構造物用として有用な、音響異方性が小さく母材靭性に優れた高張力鋼板を、確実にかつオンラインにおいても製造することができる。
本発明者らは、音響異方性が小さく母材靭性(以下、単に「靭性」ということがある)に優れた引張強度が570MPa以上の鋼板を確実に得るべく、まず、音響異方性と靭性に関係がある組織因子として、板厚方向と直行する断面における旧オーステナイト結晶粒のアスペクト比(以下、単に「Z面の旧γ粒アスペクト比」ということがある)に着目した。
図1は、後述する実施例に示す方法で測定されるZ面の旧γ粒アスペクト比と、音響異方性(横波音速比:CSL/CSC)および靭性[破面遷移温度:vTrs(℃)]との関係を示したものであるが、この図1より、音響異方性はZ面の旧γ粒アスペクト比が小さくなるほど低減する傾向にあり、音響異方性(CSL/CSC)を1.02以下に低減させるには、該アスペクト比を3.2以下とする必要がある。これに対し、靭性はZ面の旧γ粒アスペクト比が高くなるほど良好となる傾向にあり、vTrs:−25℃以下と優れた靭性を具備させるには、上記アスペクト比を1.5以上とする必要があることがわかる。
即ち、音響異方性が小さくかつ靭性に優れた鋼板を確実に得るには、Z面の旧γ粒アスペクト比を1.5〜3.2の範囲内に制御する必要がある。そこで本発明者らは、該アスペクト比が1.5〜3.2の範囲内にある鋼板を確実に得るための方法を確立すべく鋭意研究を行った。
その結果、本発明で規定する成分組成の鋼板において、上記Z面の旧γ粒アスペクト比は、成分組成を考慮した各パス圧延時のγ粒変形度(R)を経時的に追うことによって求められる、最終パス後の鋼板内におけるγ粒変形度(最終パス圧延後のR、以下、これを「R」ということがある)と相関があり、加熱後、多パス圧延を行って鋼板を製造するにあたり、上記Rを制御すればよい、との着想のもとでその具体的方法を見出した。
以下、本発明の方法について詳述する。本発明者らは、まず、上記Rを得る式として下記式(1)を確立した。下記式(1)は、鋼板の連続熱間加工における動的再結晶中のγ粒内の転位密度(残留転位密度)を表した式:ρ×EXP[−90×EXP(−8000/T)×t 0.7](例えば「鉄と鋼」第70年(1984年)第15号、第2112〜2119頁における第2117頁の式15)を基に、本発明で規定する成分組成を考慮し、圧延nパス時における鋼板内部温度の影響として下記式(2)、および圧延nパス時の相当ひずみの簡便な予想式として下記式(3)を立て、そしてこの式(2)で表されるA、および式(3)で表されるEを含む式として確立したものである。
=A×(E+Rn−1) …(1)
上記式(1)において、
:圧延nパス目のγ粒変形度
(R=0とする。)
=EXP{−90×EXP[(12×T−21000)/T]×t 0.7
…(2)
=1.5×e−0.0004×H0 …(3)
(Eが負の値になった時はE=0とする。)
上記式(2)(3)において、
=TH+H0/2
:圧延nパス目の圧延時間(s)
(前パスが終わってから今回のパスが終わるまでの時間)
=(H0−HI)/H0
ここで、
TH:圧延nパス目の板表面の絶対温度(K)
H0:圧延nパス目の圧延前の板厚(mm)
HI:圧延nパス目の圧延後の板厚(mm)
上記式(1)により求められる最終パス圧延後のR(R)と、Z面の旧γ粒アスペクト比との関係を図2に示す。この図2から明らかな様に、上記アスペクト比は、上記式(1)を用いて求められるRと相関があり、上記の通り、音響異方性を低減させるべく上記アスペクト比を3.2以下とするには、Rを0.32以下とする必要があり、一方、優れた靭性を確保すべくZ面の旧γ粒アスペクト比を1.5以上とするには、上記Rを0.07以上とする必要があることがわかる。
実際の操業においては、圧延に際し、上記方法で設定された圧延条件からRを計算し、該Rが規定範囲内であれば、該圧延条件で圧延を行うようにし、該Rが規定範囲外であれば、圧下率等の設定条件を変更してRが規定範囲内となるよう調整して圧延を行うようにすればよい。上記Rを0.07〜0.32となるようにするには、具体的に設定する圧延制御因子として、各パスの圧下率、パス間時間、パス温度等を調整する。
本発明は、その他の製造条件まで規定するものではないが、上記方法により音響異方性が小さく母材靭性に優れた高張力鋼板を確実に得るには、仕上圧延温度(FRT)や熱間圧延後の冷却を下記条件で行うことが推奨される。
仕上圧延温度(FRT)は700℃以上とすることが推奨される。該温度以上とすることでZ面の旧γ粒アスペクト比が必要以上に高まるのを抑制し、音響異方性を確保できるからである。一方、仕上圧延温度が高すぎると靭性が劣化するため、950℃以下で行なうことが好ましい。
また熱間圧延後の冷却は、仕上圧延終了温度から400℃までを、空冷または加速冷却(1℃/sec以上)で冷却するのがよい。この様に熱間圧延後に空冷または加速冷却することで、オーステナイト変態時のC拡散によるCの濃化を防止してMA(Martensite-Austenite constituent)の生成を抑制でき、結果として降伏強度を高めることができる。より好ましくは5℃/sec以上で冷却するのがよい。尚、該冷却後に500〜700℃で焼戻しを行ってもよい。
また、音響異方性が小さく母材靭性に優れた高張力鋼板を確実に得るには、本発明に係る鋼板の成分組成が下記範囲内にある必要がある。
〈C:0.01〜0.08%〉
Cは、母材強度を確保するために重要な元素であり、少なくとも0.01%含有させねばならない。しかし0.08%を超えると、冷却速度が速い場合に低温変態ベイナイトが生成せずにマルテンサイトが生成し易くなり、その結果、母材靭性が劣化し、強度・靭性バランスに優れた鋼板が得られ難くなる。C量の好ましい上限は0.05%である。
〈Si:0.05〜0.5%〉
Siは、脱酸剤として有用な元素であることから0.05%以上含有させる。しかし、Siを過剰に含有させると母材靭性が低下し、強度・靭性バランスに優れた鋼板が得られ難くなる。よって、Si量の上限は0.5%とする。好ましくは0.3%以下とするのが良い。
〈Mn:0.5〜2.5%〉
Mnは、圧延後の空冷時における焼入れ性を高めてベイナイト組織を確保し、高強度化に寄与する元素である。該作用を有効に発揮させるには、Mnを0.5%以上含有させる必要がある。好ましくは0.8%以上である。しかし、Mnが過剰に含まれると、焼入れ性が高くなり過ぎて母材靭性が著しく劣化し、強度・靭性バランスに優れた鋼板が得られない。よってMn量は、2.5%以下(好ましくは2.0%以下)に抑える。
〈Al:0.01〜0.07%〉
Alは、脱酸剤として有用な元素である。また、AlはNと化合し易く、鋼中のNを固定することによって、固溶Bによる圧延後の冷却時における焼入れ性を向上させる作用も有する。これらの効果を有効に発揮させるには、Alを0.01%以上含有させる必要がある。その効果はAl含量が多くなるにつれて増大するが、0.07%を超えて過剰に含有させると、アルミナ系非金属介在物が多くなり母材靭性が劣化する。好ましくは0.06%以下とするのが良い。
〈N:0.0020〜0.0080%〉
Nは、AlやTiと化合して窒化物を形成し、組織の微細化による母材靭性の向上に有効に作用する。これらの効果を有効に発揮させるには、Nを0.0020%以上(好ましくは0.003%以上)含有させる必要がある。但し、Nが過剰に存在すると、固溶Nが増大して、母材靭性とHAZ靭性が共に劣化する。よって、N量は0.0080%以下(好ましくは0.007%以下)に抑える。
本発明にかかる鋼板に含まれる元素は上記の通りであって、残部は鉄及び不可避不純物であり、該不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素の混入が許容され得る。尚、不可避不純物として許容されるPやSの量は下記範囲内とするのがよい。即ち、Pは、母材靭性に影響を与える元素であり、P量が過剰になると母材靭性が著しく劣化するので、0.010%以下に抑えるのがよい。またSも、母材靭性に影響を与える元素であり、S量が過剰になると粗大な硫化物が生成して母材靭性が劣化するので、0.006%以下に抑えるのがよい。また、更に下記元素を積極的に含有させることも可能である。
〈Cr:2.0%以下(0%を含まない)〉
Crは、ベイナイト組織を確保して強度を向上させるのに有用な元素であり、該効果を発揮させるには、0.05%以上(好ましくは0.3%以上)含有させることが好ましい。しかしCrが過剰になると、特に大入熱溶接を行なったときに熱影響部(HAZ)の耐溶接割れ性が劣化し易くなる。よってCr量は2.0%以下(好ましくは1.5%以下)に抑えるのがよい。
〈Ti:0.03%以下(0%を含まない)〉
Tiは、Nと化合して窒化物を形成し易く、鋼中Nを固定させて下記Bの焼入れ性向上効果を発揮させるのに有用な元素である。また、γ粒の粗大化を抑えて母材靭性の劣化を防ぐのにも有用な元素である。こうした効果を発揮させるには、Tiを0.005%以上(より好ましくは0.007%以上)含有させることが好ましい。しかしTi量が過剰になると、母材靭性が却って低下し、強度・靭性バランスに優れた鋼板が得られ難くなる。よってTi量は、0.03%以下(より好ましくは0.025%以下)の範囲内で含有させることが好ましい。
〈B:0.0030%以下(0%を含まない)〉
Bは、冷却時にオーステナイト粒界に偏析することで、粒界エネルギーを低下させフェライト変態を抑制し、それにより焼入れ性が向上し強度を高めるのに寄与する元素である。また、Nbと併せて含有させることで、圧延後の空冷時における焼入れ性をより高め、母材の強度と靭性の向上に寄与する元素でもある。この様な効果を発揮させるには、B量を0.0005%以上(好ましくは0.0010%以上)含有させるのがよい。しかし、Bを過多に含有させると粗大な析出物が生成し、靭性を劣化させるので、B量は0.0030%以下(より好ましくは0.0025%以下)に抑えるのがよい。
〈Nb:0.025%以下(0%を含まない)〉
またNbは、上記Bと併せて含有させることにより焼入れ性を高めて、母材の強度と靭性を向上させることのできる元素である。該効果を発揮させるには、Nbを0.010%以上含有させることが好ましい。しかしNbを過多に含有させると、母材靭性が低下し、強度・靭性バランスに優れた鋼板が得られ難くなるので、0.025%以下に抑えるのがよい。
〈Mo:1.0%以下、
V :0.05%以下、
Cu:3.0%以下、および
Ni:3.0%以下よりなる群から選択される1種以上〉
これらの元素は、母材の強度や靭性を更に高めるのに有用な元素である。Moは、NbやBと併せて含有させることにより圧延後の空冷時における焼入れ性を向上させ、母材の強度と靭性を高める元素である。該効果を発揮させるには0.03%以上含有させるのが好ましいが、過剰に含有させると強度・靭性バランスに優れた鋼板が得られ難くなるので、1.0%を上限とする。
Vは、析出硬化や焼入性向上に寄与し、強度を高めるのに有用な元素である。該効果を発揮させるには、0.003%以上含有させるのが好ましいが、過剰に含有させると、母材靭性が低下し、強度・靭性バランスに優れた鋼板が得られ難くなる。よってV量は0.05%以下に抑えるのがよい。
Cuは、固溶強化および析出強化によって母材強度を向上させる元素である。該効果を高めるには0.3%以上含有させることが望ましい。しかしCu量が過剰になると、強度・靭性バランスに優れた鋼板が得られ難くなるので、3.0%以下の範囲内で添加することが好ましい。
Niは、母材靭性の向上に有用な元素であり、該効果を発揮させるには0.05%以上含有させるのがよい。しかし、Ni量が過剰になると、製造過程でスケール疵が発生し易くなるため、その上限は3.0%とすることが好ましい。
〈Zr:0.0005〜0.005%、
Mg:0.0003〜0.005%、
Ca:0.0005〜0.005%、および
REM:0.0003〜0.003%よりなる群から選択される1種以上〉
これらの元素は、析出物の形態を制御するのに有用であり、Caは、SをCaSとして固定すると共に、粒状の非金属介在物として形態を制御して靭性を向上させるのに有効である。この様な効果を十分に発揮させるには、Caを0.0005%以上(より好ましくは0.0010%以上)含有させることが好ましいが、過剰に含有させても、これらの効果は飽和するばかりか靭性が却って劣化する。よってCa量は、0.005%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.004%以下である。
REM(希土類元素、La、Ce等)も、上記Caと同様に硫化物としてSを固定し、偏析部の靭性を向上させるのに有効に作用する。該効果を発揮させるには、REMを0.0003%以上含有させることが好ましい。しかし過剰に含有させると、非金属介在物が過剰に存在して靭性を却って劣化させる。よって、0.003%以下に抑えることが好ましい。
MgおよびZrは、大入熱溶接後の冷却時においてMgO、ZrO2の低融点酸化物を旧γ粒内に析出させ、ベイナイトブロックを微細化させて大入熱溶接HAZ靭性を向上させるのに有用な元素である。該効果を発揮させるには、Zrを含有させる場合0.0005%以上、Mgを含有させる場合0.0003%以上とすることが好ましい。しかしこれらの元素が過剰になると、上記酸化物が増加し母材靭性が却って劣化する。よって、Zr、Mgはそれぞれ0.005%以下に抑える。
本発明の製造方法で得られる鋼板は、上述の通り高強度かつ高靭性であると共に音響異方性が小さいので、橋梁や建築構造物、造船、海洋構造物の製造に最適である。尚、該鋼板は、板厚10〜100mmと厚鋼板に分類されるものである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
下記表1に示す成分組成の鋼(残部は鉄および不可避不純物)を通常方法で溶製し、スラブを得た。そしてこれを用い、実機での圧延を模した圧延試験を行った。該圧延試験では、鋼板を1300〜1000℃に加熱した後、圧延履歴を示す表2(表2は、表3中の実験No.6の圧延履歴)の様に各パスにおけるR(R)を求めながら、仕上圧延温度(FRT)まで圧延を行い(各鋼板の圧延におけるパス回数およびFRTは表3、表4に示す)、Rを求めた。
仕上圧延後には、空冷または2〜50℃/sの加速冷却を行って、表3、表4に示す板厚の鋼板を得た。
尚、上記表2は、実験No.6の具体的な圧延履歴を示すものであるが、他の例についても同様にして圧延を行い、Rを求めた。
そして得られた鋼板を用いて、金属組織、Z面の旧γ粒アスペクト比、音響異方性、引張特性(降伏強度,引張強度)、靭性(衝撃特性)を夫々下記要領で評価した。
[金属組織の観察]
鋼板のt/4(表面から板厚1/4の深さ)位置から試験片を採取し、該試験片をナイタール腐食して光学顕微鏡観察(倍率100倍)を行い、ベイナイト組織の面積率を求め、任意に選択した3視野で同様の観察を行って、ベイナイト組織の面積率の平均値を算出した。また、全組織(100%)から上記ベイナイト組織の面積率を差し引いた値をその他の組織(フェライトやMA等)の面積率とみなした。
[Z面の旧γ粒アスペクト比の測定]
板厚方向と直行する断面として、圧延面に平行な、表面からt(板厚)/4部位の面に、ナイタール腐食を施し旧オーステナイト粒界を現出させてから、光学顕微鏡写真を撮影(200μm×200μmの圧延方向と圧延方向に垂直な方向に一辺を持つ正方形を、倍率400倍で撮影)し、該写真を測定に用いた。尚、上記写真は、任意の10視野について撮影した。
そして、上記各視野の光学顕微鏡写真において、圧延方向と圧延方向に垂直な方向に直線を10mmピッチで引き(碁盤の目状)、各直線と交差する旧γ粒の個数を測定した。次に、圧延方向における旧γ粒の個数の平均値(平均個数)を求め、直線長さを該平均個数で除して、旧γ粒の圧延方向の平均長さを求めた。同様に、圧延方向に垂直な方向においても、旧γ粒の圧延方向に垂直な方向の平均長さを求めた。尚、上記方法は、JISG 0551(2005年)に規定の切断法によるフェライト結晶粒度判定方法を参照した。そして、(旧γ粒の圧延方向の平均長さ)/(旧γ粒の圧延方向に垂直な方向の平均長さ)をZ面の旧γ粒アスペクト比として求め、10視野のZ面の旧γ粒アスペクト比の平均値を求めた。
[音響異方性の評価]
JIS Z3060に規定の通り、横波の振動方向を主圧延方向(L方向)に一致させたときの横波音速値CSLと、L方向に垂直な方向(C方向)に一致させたときの横波音速値CSCを測定し、横波音速比CSL/CSCを求めた。そして、該音速比が1.02以下の場合を音響異方性が小さいと評価した。
[衝撃特性(靭性)の評価]
各鋼板のt/4位置からJIS Z 2202のVノッチ試験片を採取して、JIS Z2242の方法でシャルピー衝撃試験を行い、破面遷移温度(vTrs)を測定した。そして、破面遷移温度(vTrs)が−25℃以下の場合を靭性に優れると評価した。
[引張特性の評価]
各鋼板のt/4位置から、圧延方向に対して直角の方向にJIS Z 2201の4号試験片を採取して、JISZ 2241の方法で引張試験を行ない、降伏強度(YS)及び引張強度(TS)を測定した。そして、引張強度が570MPa以上のものを高張力であると評価した。これらの結果を表3、表4に併記する。
Figure 0004659593
Figure 0004659593
Figure 0004659593
Figure 0004659593
表1,3,4から次の様に考察することができる(尚、下記No.は、表3,表4中の実験No.を示す)。
No.1,4〜6,9,12,13,15〜28は、本発明で規定する成分組成のものを用い、規定の方法で圧延を行っているので、得られた鋼板は、音響異方性が小さく靭性にも優れると共に、引張特性も兼備している。
これに対し、No.2,3,7,8,10,11,14,29〜41は、本発明の要件を満たしていないため、音響異方性が大きいか、靭性が劣っているか、または引張特性を具備していないといった不具合を有している。
No.2,3,7,8,10,11,14は、本発明で規定する成分組成を満たしているが、規定の方法で製造しなかった例であり、このうちNo.2,3,8は、Rが規定範囲を超えているためアスペクト比が大きくなり、結果として音響異方性が大きくなっている。一方、No.7,10,11,14は、Rが規定範囲を下回っているため、得られた鋼板は靭性の劣るものとなった。
特に、No.6とNo.8、No.7とNo.9、No.13とNo.14を対比すると、仕上圧延温度が同じ場合でも、本発明の方法で圧延を行うことによって、音響異方性が小さく靭性にも優れた鋼板をより確実に得られることがわかる。
またNo.29〜41は、規定の方法で製造しているが、成分組成が本発明の規定範囲にないため靭性等を確保できていない。
No.29、30は、それぞれC量、Si量が過剰であるため靭性に劣っている。No.31はMnが不足しているため、ベイナイト組織を確保できず組織がフェライト主体となり強度を確保できていない。一方、No.32は、Mn量が過剰であるため靭性が劣化している。
No.33はCrが過剰に含まれているため、溶接割れ性に劣るものとなった。
No.34は、規定量以上のTiを含有させているため、靭性に劣っている。No.35は、B量が過剰であるため、得られた鋼板は靭性に劣っており、また溶接割れ性にも劣る。
No.36は、Mo量が過剰であり、No.37はV量が過剰であり、またNo.38はCu量が過剰であるため、いずれも靭性に劣っている。
No.39は、Ni量が過剰であるため、製造過程でスケール疵が多くなった。No.40は、Nb量が過剰であるため、得られた鋼板は靭性に劣っている。またNo.41は、Caを過剰に含んでいるため、靭性に劣る結果となった。
Z面の旧γ粒アスペクト比と、音響異方性(横波音速比:CSL/CSC)および靭性[破面遷移温度:vTrs(℃)]との関係を示したグラフである。 最終パス圧延後のR(R)とZ面の旧γ粒アスペクト比との関係を示したグラフである。

Claims (6)

  1. 質量%で(以下同じ)、
    C :0.01〜0.08%、
    Si:0.05〜0.5%、
    Mn:0.5〜2.5%、
    Al:0.01〜0.07%、
    N :0.0020〜0.0080%
    を含み、残部鉄および不可避不純物よりなる鋼材を使用し、加熱後、多パス圧延を行って鋼板を製造するにあたり、下記式(1)により求めた最終パス圧延後のR(R)が0.07〜0.32となるように圧延を終えた後、空冷または加速冷却することを特徴とする音響異方性が小さく母材靭性に優れた高張力鋼板の製造方法。
    =A×(E+Rn−1) …(1)
    上記式(1)において、
    :圧延nパス目のγ粒変形度
    (R=0とする。)
    =EXP{−90×EXP[(12×T−21000)/T]×t 0.7
    …(2)
    =1.5×e−0.0004×H0 …(3)
    (Eが負の値になった時はE=0とする。)
    上記式(2)(3)において、
    =TH+H0/2
    :圧延nパス目の圧延時間(s)
    (前パスが終わってから今回のパスが終わるまでの時間)
    =(H0−HI)/H0
    ここで、
    TH:圧延nパス目の板表面の絶対温度(K)
    H0:圧延nパス目の圧延前の板厚(mm)
    HI:圧延nパス目の圧延後の板厚(mm)
  2. 上記鋼材として、更にCr:2.0%以下(0%を含まない)を含むものを用いる請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記鋼材として、更に、
    Ti:0.03%以下(0%を含まない)および/または
    B:0.0030%以下(0%を含まない)
    を含むものを用いる請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 上記鋼材として、更に、Nb:0.025%以下(0%を含まない)を含むものを用いる請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 上記鋼材として、更に、
    Mo:1.0%以下、
    V :0.05%以下、
    Cu:3.0%以下、および
    Ni:3.0%以下
    よりなる群から選択される1種以上を含むものを用いる請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 上記鋼材として、更に、
    Zr:0.0005〜0.005%、
    Mg:0.0003〜0.005%、
    Ca:0.0005〜0.005%、および
    REM:0.0003〜0.003%
    よりなる群から選択される1種以上を含むものを用いる請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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