JP6540545B2 - 大入熱溶接熱影響部靭性に優れた高強度厚鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、建築構造物等の溶接鋼構造物用として好適な、引張強さ(TS)が780MPa以上の高強度を有する高強度厚鋼板に関する。特に、エレクトロスラグ溶接のような入熱量が500kJ/cmを超える大入熱溶接を施した場合に、溶接熱影響部(以下、HAZともいう)靭性に優れる高強度厚鋼板に関する。なお、ここでいう「厚鋼板」とは、板厚:10mm以上である鋼板をいうものとする。
建築等の分野で使用される鋼構造物は、一般に、施工に際しては溶接接合が行われている。特に建築構造物では、阪神淡路大震災を契機として、建築構造物の耐震性の一層の向上が強く要求され、安全性の観点から、使用される鋼材の母材特性はもちろん、溶接部特性にも優れることが要求されている。また、近年、弾性範囲内で使用することを想定して降伏比(YR)を緩和した柱部材専用高降伏点鋼板も提案されている。
また一方では、建築構造物の大型化に伴い、溶接施工の能率向上と施工コストの低減という観点から、大入熱溶接の適用範囲が拡大している。例えば、建築構造物の4面ボックス柱の角溶接では、2電極サブマージアーク溶接のような、溶接入熱量が400kJ/cmを超えるような大入熱溶接が適用されるようになっている。また、最近では、更なる溶接施工の高能率化のため、例えば、建築構造物のボックス柱の組立て溶接では、エレクトロスラグ溶接のような、溶接入熱量が500kJ/cmを超える大入熱溶接が施されることもある。
一般に、溶接入熱量が大きくなると、HAZ組織が粗大化し、HAZ靭性が低下する。このため、HAZ靭性を改善する種々の方法が、提案されている。
例えば、特許文献1には、溶接熱影響部の靭性に優れた高強度鋼材が提案されている。特許文献1に記載された技術では、Cを低減し、MnおよびNi、あるいはさらにCuを積極的に含有し、これによって、ベイニティックフェライトを主体とする組織を生成して、さらに、Ti、N量を適正化して、微細分散することができるTiNを高温まで安定化し、HAZでの旧オーステナイト結晶粒の粗大化を防止して、入熱量:800kJ/cmの大入熱溶接の溶接熱影響部における高靭性を確保できるとしている。
また、特許文献2には、大入熱HAZ靭性および小入熱HAZの耐硬化特性に優れた高強度厚鋼板が記載されている。特許文献2に記載された技術によれば、大入熱HAZの靭性に優れ、かつ小入熱HAZの耐硬化特性にも優れた高強度厚鋼板が得られる。これは、実質的にBを含有せず、Cr:2.0質量%以上含有することにより、島状マルテンサイトのC濃度が低下し、ベイナイトラスが湾曲し、島状マルテンサイトの形状が針状から粒状に変化し、島状マルテンサイトの靭性に対する有害性が顕著に低下したことによるとしている。
また、特許文献3には、大入熱HAZ靭性に優れた低降伏比高張力鋼材が記載されている。特許文献3に記載された技術によれば、500kJ/cmを超える大入熱溶接を施しても優れたHAZ靭性を確保できるとしている。これは、Mn等のオーステナイト(γ)生成元素と、Cr等のフェライト(α)生成元素とを同時に添加し、しかもγ生成元素量に対してα生成元素量を適正に調整すると、HAZのベイナイトラス間での島状マルテンサイトの生成が少なくなり、HAZ靭性が向上するためとしている。
特開2006−118007号公報 特開2012−177192号公報 特開2012−241214号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載された各技術では、降伏強さ700MPa以上、引張強さ780MPa以上、板厚50mm超、500kJ/cmを超える大入熱溶接の継手ボンド部において安定した靭性(vE−10≧70J)といった、すべての特性を満足しているわけではない。
そこで、本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、降伏強さが700MPa以上、引張強さ780MPa以上の高強度を有し、入熱量が500kJ/cmを超える大入熱溶接を施されても、優れた溶接熱影響部靭性を保持できる、大入熱溶接熱影響部靭性に優れた高強度厚鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するため、鋭意研究した。その結果、極低炭素化して大入熱溶接熱影響部における島状マルテンサイト(以下、島状マルテンサイトをMAともいう。)の生成を抑えることが、大入熱溶接熱影響部靭性の向上のために重要であることに想到した。そして、極低炭素化したうえで、さらに、幅広い溶接入熱範囲でHAZ組織を下部ベイナイト組織化でき、所望の引張強さ:780MPa以上の高強度と優れた大入熱溶接熱影響部靭性とを兼備するために、MnおよびCrを含有させることが重要であることを見出した。また、低C−高Mn化によって、粒界強度の低下とPの旧γ粒界への偏析が起こり、その結果、HAZ組織において粒界破壊が発生しやすくなり、靭性が低下する。このため、Crを多く含有することでHAZ組織での粒界破壊を抑制できることを新たに見出した。また、低P化とCr添加による粒界破壊発生を抑制することで、大入熱溶接熱影響部靭性をさらに安定して向上することを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。本発明の要旨は次のとおりである。
[1]成分組成が、質量%で、C:0.010〜0.050%、Si:0.50%以下、Mn:1.5〜3.5%、P:0.007%以下、S:0.0030%以下、Al:0.01〜0.06%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0015〜0.0065%、Cr:2.0〜5.0%、O:0.0050%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、降伏強さが700MPa以上、引張強さ780MPa以上である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた高強度厚鋼板。
[2]前記成分組成に加えて、質量%で、Mo:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.05%、V:0.01〜0.09%、B:0.0003〜0.003%、Ca:0.0003〜0.0050%、REM:0.0003〜0.0050%、Mg:0.0003〜0.0050%の1種または2種以上を含有する[1]に記載の降伏強さが700MPa以上、引張強さ780MPa以上である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた高強度厚鋼板。
本発明によれば、降伏強さが700MPa以上、引張強さ780MPa以上の高強度を有し、溶接入熱量が500kJ/cmを超える大入熱溶接を施した場合においても、優れた溶接熱影響部靭性を安定して確保することができる高強度厚鋼板が得られ、産業上格段の効果を奏する。
なお、ここでいう「優れた溶接熱影響部靭性」とは、溶接入熱量が500kJ/cmを超える大入熱溶接部において、シャルピー衝撃試験の−10℃における吸収エネルギー(vE−10)が70J以上を示す場合をいうものとする。
図1は、エレクトロスラグ溶接の開先形状を示す模式図である。 図2は、図1に示すエレクトロスラグ溶接部からのシャルピー衝撃試験片の採取位置を示す模式図である。
本発明の厚鋼板は、降伏強さが700MPa以上、引張強さ780MPa以上の高強度と、試験温度:−20℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE−20(J)が200J以上の優れた母材靭性と、を有する厚鋼板であり、入熱量が500kJ/cmを超える大入熱溶接を施した場合の溶接熱影響部が、試験温度:−10℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE−10(J)で70J以上の優れたHAZ靭性を有する。
まず、本発明の厚鋼板の組成限定理由について説明する。なお、組成における質量%は、とくに断らない限り、単に%で記す。
C:0.010〜0.050%
Cは、鋼板強度の増加に寄与する元素であり、所望の鋼板強度を確保するためには、0.010%以上含有する。一方、0.050%を超えて多量に含有すると、とくに大入熱溶接HAZにおいて島状マルテンサイト(MA)が増加し、HAZ靭性が低下する。このため、本発明では、0.010〜0.050%以下に限定した。
Si:0.50%以下
Siは、製鋼時に脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには0.02%以上含有することが好ましい。また、Siは、強力なフェライト安定化元素であり、本発明ではMnによるオーステナイトの過度の安定化を抑制する作用を有する。しかし、Siは、セメンタイトの生成を強く抑制する作用をも有する。このため、Siが0.50%を超えて多く含有すると、島状マルテンサイトが増加し、HAZ靭性が低下する。このため、Siは0.50%以下に限定した。なお、好ましくは0.10%以下である。
Mn:1.5〜3.5%
Mnは、強力なオーステナイト安定化元素のひとつで、γ→α変態点を低下させ、焼入れ性を増大させて、ベイナイト変態、マルテンサイト変態を促進させ、所望の母材強度を確保するのに有効に寄与する。このような効果を得るためには、1.5%以上の含有を必要とする。一方、3.5%を超える多量の含有は、HAZ硬さが高くなりすぎ、HAZ靭性が低下する。このため、Mnは1.5〜3.5%の範囲に限定した。
P:0.007%以下
Pは、HAZ組織の粒界に偏析することで粒界破壊の発生を引き起こし、HAZ靭性に悪影響を及ぼす。このため、本発明ではできるだけ低減することが望ましく、Pは0.007%以下に限定した。
S:0.0030%以下
Sは、鋼中では主としてMnS系介在物として存在し、延性、靭性に悪影響をもたらす元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、0.0030%までは許容できる。このため、Sは0.0030%以下に限定した。
Al:0.01〜0.06%
Alは、製鋼時に脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.06%を超えて多量に含有すると、アルミナ等の粗大介在物が増加し清浄度が低下し、母材靭性が低下する。また、Alの多量含有は、HAZ組織においてMAが増加し、HAZ靭性が低下する。このため、Alは0.01〜0.06%の範囲に限定した。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは、Nと結合しTiNを形成し、とくにHAZにおけるγ粒の成長を抑制し、HAZ靭性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有する必要がある。一方、0.030%を超えて多量に含有すると、TiNが粗大化しやすくなり、母材靭性、HAZ靭性が共に低下する。このため、Tiは0.005〜0.030%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.03%、より好ましくは0.010〜0.0025%である。
N:0.0015〜0.0065%
Nは、鋼中に不可避的に含有される元素である。Nは、Tiと結合しTiNを形成して、とくに大入熱溶接熱影響部におけるγ粒の成長を抑制し、HAZ組織の微細化を介してHAZ靭性の向上に寄与する。このような効果を得るためには、0.0015%以上含有させる。しかしながら、0.0065%を超えて多量に含有すると、母材靭性およびHAZ靭性がともに低下する。このため、Nは0.0015〜0.0065%に限定した。
Cr:2.0〜5.0%
Crは、α安定化元素であり、低C−高MnとPの偏析によるHAZでの粒界破壊発生を防止するために、本発明では重要な元素である。また、Crは、焼入れ性の向上を介して、所望の母材強度や母材靭性を確保するのに有効に寄与する。このような効果を得るためには、2.0%以上の含有を必要とする。一方、Crが5.0%を超えて多量に含有すると、HAZ硬さが高くなりすぎ、HAZ靭性が低下する。このため、Crは2.0〜5.0%の範囲に限定した。
O:0.0050%以下
O(酸素)は、鋼中には不可避的不純物として含まれ、主として酸化物系介在物として存在し、靭性等に悪影響を及ぼす。このため、Oは、できるだけ低減することが望ましいが、0.0050%までは許容できる。このようなことから、Oは0.0050%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下である。
上記した成分が基本の成分である。本発明では、基本の組成に加えてさらに、選択元素として、Mo、Cu、Ni、Nb、V、B、Ca、REM、Mgの1種または2種以上を必要に応じて含有できる。
Mo:0.01〜1.0%
Moは、焼入れ性を向上させて、所望の母材強度や優れた母材靭性を確保するのに有用な元素である。このような効果を得るためには、含有する場合、0.01%以上とする。一方、1.0%以上の含有は、HAZ硬さが高くなりすぎて、HAZ靭性が低下する。このため、含有する場合には、Moは0.01〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。
Cu:0.01〜2.0%
Cuは、フェライトの生成を抑制してベイナイト変態を促進し、所望の母材強度を確保するために有効に寄与する。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが好ましい。一方、2.0を超えて過剰に含有すると、熱間圧延時に表面疵(Cu疵)を発生する。このため、含有する場合には、Cuは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。また、Cuを含有する場合には、表面疵を防止のために、同時にNiをCu量の1/2以上含有させることが好ましい。
Ni:0.01〜2.0%
Niは、強力なオーステナイト安定化元素であり、γ→α変態点を低下させて、所望の母材強度を確保するのに有用な元素である。また、ベイナイト変態を促進する元素である。しかし高価な元素であるため、本発明では選択元素として用いる。このような効果を得るためには、含有する場合、0.01%以上とする。一方、2.0%を超える多量の含有は、合金コストを高騰させる。このため、含有する場合には、靭性向上の観点から0.01〜2.0%の範囲とする。
Nb:0.003〜0.05%
Nbは、ベイナイト変態を促進させて、所望の母材強度を確保するのに有効に寄与する。このような効果を得るためには、0.003%以上含有することが好ましい。一方、0.05%を超える含有は、HAZ硬さが高くなりすぎて、HAZ靭性が低下する。このため、含有する場合には、Nbは0.003〜0.05%の範囲とする。なお、より好ましくは0.003〜0.01%である。
V:0.01〜0.09%
Vは、析出強化によって強度を上昇する効果を有する。このような効果を得るには0.01%以上含有することが好ましい。0.09%超えの含有は著しくHAZ靱性を低下するので、含有する場合、Vは0.01〜0.09%の範囲とする。
B:0.0003〜0.003%
Bは、少量の含有で焼入れ性を向上させ、母材強度の向上に有効に寄与する。このような効果を得るためには、0.0003%以上含有することが好ましい。一方、0.003%を超える過剰の含有は、HAZ硬さが硬くなりすぎ、HAZ靭性が低下する。このため、含有する場合には、Bは0.0003〜0.003%の範囲とする。
Ca:0.0003〜0.0050%、REM:0.0003〜0.0050%、Mg:0.0003〜0.0050%
Ca、REM、Mgはいずれも、介在物の形態を制御して、母材の延性、靭性、さらにはHAZ靭性を向上させる元素であり、このような効果を得るためには、含有する場合、0.0003%以上とする。一方、0.0050%をそれぞれ超える過剰な含有は、介在物が粗大化してHAZ靭性を低下させる。このため、含有する場合には、それぞれ0.0003〜0.0050%の範囲とする。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
なお、本発明の高強度厚鋼板は、上記した組成を有し、さらにマルテンサイト相とベイナイト相とを主相とする組織を有する。
本発明の厚鋼板は、引張強さ:780MPa以上の高強度を確保するために、母材組織は、マルテンサイト相とベイナイト相とを主相とする組織とする。ここでいう「主相」とは、体積率で95%以上を占める相をいうものとする。主相以外の第二相としては、体積率で5%以下(0%を含む)の残留オーステナイトが例示できる。主相以外の第二相が、体積率で5%を超えると、強度が低下し、所望の高強度を確保できなくなる。このようなことから、本発明の高強度厚鋼板の組織は、マルテンサイト相とベイナイト相とを主相とする、マルテンサイト相とベイナイト相とが混合した組織に限定した。また、マルテンサイト相とベイナイト相の割合は、ベイナイト相が5〜95%とする。
なお、ここでいう「ベイナイト相」は、いわゆる下部ベイナイト相、あるいはBIII(邦武ら;鋼の強靭性、1971、p85参照)と称されるベイナイトをいう。
つぎに、本発明の高強度厚鋼板の好ましい製造方法について説明する。
溶鋼を溶製し、さらに鋳造して、上記した成分を有する鋼素材を製造する工程で採用する技術は特に限定せず、従来から知られている技術を使用する。ただし厚鋼板を大量に製造することを考慮すると、溶鋼を転炉、電気炉、真空溶解炉等で溶製し、脱ガス処理を施してガス成分を調整した後、連続鋳造を行なって鋼素材(すなわちスラブ)を製造することが好ましい。
この鋼素材を加熱し、さらに熱間圧延を施して厚鋼板とする。熱間圧延後は再加熱焼入れ−焼戻しの従来から知られているHT780級鋼板の製造技術を使用する。
再加熱焼入れでは、再加熱によって均一で細かいオーステナイト組織とした後で焼入れを行なう。その焼入温度(すなわち再加熱温度)が900℃未満では、焼入性が低下して強度が低下する。一方、1000℃を超えると、オーステナイト粒が粗大になり、厚鋼板の靭性が低下する。したがって、焼入温度は900〜1000℃の範囲内とすることが好ましい。
また、焼入温度の保持時間が10分未満では、オーステナイト粒径のバラツキが大きくなり、一部の領域で焼入性が著しく低下する。したがって、保持時間は10分以上とすることが好ましい。なお、工程生産能率の点から保持時間は60分以下が好ましい。冷却速度が1℃/秒未満では、マルテンサイトや上部ベイナイトを主体とする焼入組織が得られない。したがって、冷却速度は1℃/秒以上とすることが好ましい。また、冷却速度が100℃/sを超えると、鋼板内の各位置における温度制御が困難となり、板幅方向や圧延方向に材質ばらつきが出やすくなり、その結果、引張特性などの材質上のばらつきが生じるという点から冷却速度は100℃/s以下が好ましい。一方、冷却速度が100℃/sを超えると、鋼板内の各位置における温度制御が困難となり、板幅方向や圧延方向に材質ばらつきが出やすくなり、その結果、引張特性などの材質上のばらつきが生じる。
焼戻しは、焼入れによって生成した脆い硬質相を焼戻すことによって、厚鋼板の靭性を向上させるために行なう。焼戻しに先立つ加熱温度(すなわち焼戻し温度)が400℃未満では、その効果が得られない。一方、600℃を超えると、厚鋼板の強度が低下して780MPa以上の引張強さを達成し難くなる。したがって、焼戻し温度は400〜600℃の範囲内とすることが好ましい。焼戻し温度の保持時間は特に限定しないが、0〜60分程度が好ましい。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
転炉−取鍋精錬−連続鋳造法で、表1に示す組成の鋼素材(スラブ:板厚250mm)を熱間圧延により100mm厚、80mm厚および60mm厚の鋼板とした。
Figure 0006540545
得られた各厚鋼板の板厚1/4位置から、JIS4号引張試験片を採取し、JIS Z2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性を調査した。母材靭性については、圧延垂直方向のフルサイズシャルピーVノッチ試験片を3本採取し、シャルピー試験を行い、−20℃での吸収エネルギーを測定し、その平均値を求めた。
また、得られた各厚鋼板から、継手用試験板(大きさ:400×600mm)を採取し、図1に示すような開先形状としたエレクトロスラグ溶接(ESW溶接、溶接入熱量:1000kJ/cm)により、溶接継手を作製した。なお、供給ワイヤは、JIS Z 3353 YES62相当品、フラックスはJIS Z 3353 FS−FG3相当品を使用した。得られた溶接継手から、図2に示すように切欠き位置をボンド部とするVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して、試験温度:−10℃でのシャルピー衝撃試験を行って、継手ボンド部の−10℃における吸収エネルギー(vE−10)を求め、継手靱性を評価した。
なお、母材特性の評価は降伏強さ(YS)が700MPa以上、引張強さ(TS)が780MPa以上、シャルピー衝撃試験の−20℃における吸収エネルギー(vE−20)が200J以上を合格とした。また、溶接熱影響部靭性(HAZ靭性)の評価は、シャルピー衝撃試験の−10℃における吸収エネルギー(vE−10)が70J以上を合格とした。
製造条件および得られた結果を表2に示す。
Figure 0006540545
Figure 0006540545

Claims (2)

  1. 成分組成が、質量%で、C:0.010〜0.050%、Si:0.50%以下、Mn:1.5〜3.5%、P:0.007%以下、S:0.0030%以下、Al:0.01〜0.06%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0015〜0.0065%、Cr:2.0〜5.0%、O:0.0050%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、降伏強さが700MPa以上、引張強さ780MPa以上である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた高強度厚鋼板。
  2. 成分組成が、質量%で、C:0.010〜0.050%、Si:0.50%以下、Mn:1.5〜3.5%、P:0.007%以下、S:0.0030%以下、Al:0.01〜0.06%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0015〜0.0065%、Cr:2.3〜5.0%、O:0.0050%以下を含有し、前記成分組成に加えて、質量%で、Mo:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.05%、V:0.01〜0.09%、B:0.0003〜0.003%、Ca:0.0003〜0.0050%、REM:0.0003〜0.0050%、Mg:0.0003〜0.0050%の1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、降伏強さが700MPa以上、引張強さ780MPa以上である、溶接入熱量が500kJ/cmを超える大入熱溶接部において、シャルピー衝撃試験の−10℃における吸収エネルギー(vE −10 )が70J以上である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた高強度厚鋼板。
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