JP4825024B2 - 疲労亀裂進展抑制および溶接熱影響部の靭性に優れた高降伏比高張力鋼板 - Google Patents

疲労亀裂進展抑制および溶接熱影響部の靭性に優れた高降伏比高張力鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、土木、建築、橋梁、海洋構造物、パイプ、船舶、貯蔵、建築機械等の各種用途に用いられる高降伏比高張力鋼板に関するものであり、特に亀裂の進展速度を抑制して良好な疲労寿命を確保すると共に、溶接熱影響部(HAZ)での靭性にも優れたベイナイト相を主体とする高降伏比高張力鋼板に関するものである。
上記各種用途に適用される構造材料では、繰り返し応力が加わるものが少なくないことから、構造材料の安全性を確保するためには、素材として用いられている鋼板には疲労特性が良好であることが設計上極めて重要である。
鋼材の疲労過程は、応力集中部での亀裂の発生と、一旦発生した亀裂の進展という2つの過程に大別して考えられる。そして、通常の機械部品では巨視的な亀裂の発生が、使用限界として考えられており、亀裂の進展を許容する設計は殆どされていない。しかしながら、溶接構造物においては、疲労亀裂が発生しても直ちに破壊に至ることはなく、この亀裂が最終段階に至る前に定期検査などで発見され、亀裂の入った部分が修理されるか、或は使用期間内に亀裂が最終破壊に至る長さまでに成長しないならば、亀裂があっても構造物は十分に使用に耐え得ることになる。
ところで、溶接構造物では、応力集中部としての溶接止端部や欠陥部が多数存在しており、疲労亀裂の発生を完全に防止することは技術的にも不可能に近く、また経済的にも得策とはいえない。即ち、溶接構造物の疲労寿命を良好にするためには、亀裂の発生そのものを防止するよりも、亀裂が既に存在している状態からの亀裂進展寿命を大幅に延長することが有効であり、そのためには鋼材の亀裂の進展速度をできるだけ遅くするような設計が重要な事項となる。
疲労亀裂進展の速度を抑制する技術としてもこれまで様々なものが提案されており、例えば特許文献1には、硬質相と軟質相の2相組織とし、軟質相/硬質相境界における亀裂の屈曲、停留、分岐によって亀裂進展速度を抑制する技術が提案されている。
しかしながら、この技術では、軟質のフェライト組織を基本的に含む組織とする必要があり、高強度鋼を製造することはできないという問題がある。
また特許文献2では、ベイナイト組織またはマルテンサイト組織を主体とし、最大引張・圧縮歪で±0.012、繰り返し速度0.5Hz、最大歪までの波数12の漸増・漸減繰り返し負荷を15回与えたときの、1回の最大歪時の応力σ1と15回の最大歪時の応力σ15との比σ1/σ15で示される繰り返し軟化パラメータが0.65以上0.95以下であるような疲労亀裂進展特性に優れた鋼材が提案されている。そして、この技術では、繰り返し軟化については、繰り返し応力が負荷された際の転位の再配列によって起こるとされており、亀裂先端の転位密度が高いほど軟化が起こりやすく、疲労亀裂進展抑制に効果があることが示されている。
上記技術において、転位密度を高めるためには、実施例に示されているように実質的に直接焼入れや、オフラインで焼入れを行う必要がある。しかしながら、オフラインの熱処理では生産性が低下することが予想され、またライン上で直接焼入れするにしても転位導入による強度を考慮しなければならないので、強度が高くなり過ぎないように低成分にするという制約がある。その結果、成分設計上での自由度が低いものとなり、その他の特性が劣化することが十分に考えられる。また上記のような軟化パラメータが規定範囲内であっても、破面遷移温度vTrsが0℃を超える実施例が存在し、構造物としての特性を十分に満足できない可能性がある。
亀裂進展速度に影響を与える因子として、粒界の状態も考えられる。粒界状態を材料特性に応用した技術として、例えば特許文献3には、Σ1対応粒界、Σ3〜29対応粒界等の割合を規定することによって、形状記憶特性や磁歪特性を改善した鉄基形状記憶合金について開示されている。しかしながら、亀裂進展速度と粒界の状態については考慮されておらず、特に鋼板において粒界状態が特性に与える影響については確立された知見が得られていないのが実情である。
一方、上記各種用途に用いられる高張力鋼板は、溶接することによって各種構造物が構築されることになるのであるが、高張力鋼板に要求される特性としては、大入熱溶接を適用したときの溶接熱影響部(HAZ)の靭性が良好であることが必要である。
また、地震に対する終局耐力設計の適用に対して、降伏比[降伏強度/引張強さ×100(%)]が小さいこと(即ち、塑性変形能が高いこと)が要求されることもあるが(建築用途の場合、80%以下)、使用鋼材(鋼重)の削減という観点からすれば、用途によっては高降伏(上記降伏比が80以上)であることが好ましい。
例えば、引張強さが570MPa以上の高張力鋼において、HAZ靭性の改善を図る技術として、特許文献4に示されるような技術が提案されている。この技術では、Cを極低としてベイナイト相を基本組織(低温変態ベイナイト組織)とすることによって、大入熱溶接時における島状マルテンサイト相(M−A相)の生成を抑制すると共に、焼入れ性向上元素であるMnおよびCr(必要によってはMo)を所定の関係式を満足するように積極的に添加し、且つ大入熱HAZ靭性を低下する元素であるVおよびNbを所定の関係式を満足するように制御し、更にBを添加するものである。
Cを極低としてベイナイト組織(以下、「極低Cベイナイト組織」と呼ぶ)にすることは、M−A相の生成を抑制し、大入熱HAZ靭性を向上する上では有効であるが、極低Cベイナイト組織にするだけでは、必ずしもHAZ組織の制御が適正になされるとは言えず、場合によっては十分な大入熱HAZ靭性が得られないことがある。
また特許文献5には、極低C(C含有量:0.03%以下)で、NbやBの量を適正化することによって、冷却速度依存性の少ない(即ち、材質のばらつきの少ない)極低Cベイナイト鋼とする技術が提案されている。またこの技術では、大入熱HAZ靭性を向上するという観点から、酸化物系介在物(Ti,Ca,Al,REMの酸化物)を均一分散させることによってHAZにおける旧オーステナイト粒の粗大化を抑制することも示されている。
しかしながら、溶接入熱量が大きくなれば、HAZにおける旧オーステナイト粒の粗大化にも限界があり、旧オーステナイト粒の粗大化抑制だけでは、大入熱HAZ靭性が良好にならない場合がある。
また上記のような、HAZ靭性を改良する技術は、前述した疲労亀裂特性については、何ら考慮されておらず、HAZ靭性と疲労亀裂特性の両特性を兼ね備えた技術の確立が望まれているのが実情である。
特許第3298544号公報 特許請求の範囲等 特開2004−27355号公報 特許請求の範囲等 特開平11−269611号公報 特許請求の範囲等 特許第3602471号公報 特許請求の範囲等 特開2000−345239号公報 特許請求の範囲等
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、ベイナイトを主体とする鋼板において、粒界の状態が特性に与える影響を明らかにすることによって、疲労亀裂進展抵抗性をより優れたものとすると共に、HAZ靭性をも極力改善することのできる高降伏比高張力鋼板を提供することにある。
上記目的を達成することのできた本発明の高降伏比高張力鋼板とは、C:0.01〜0.05%(質量%の意味、以下同じ)、Si:1.0%以下(0%を含まない)、Mn:0.5〜2.0%、P:0.5以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.01〜0.07%、Cr:0.4〜2.0%、Nb:0.001〜0.050%、Ti:0.005〜0.03%、B:0.0005〜0.0030%、Ca:0.0005〜0.005%、N:0.0020〜0.010%を夫々含有し、残部:鉄及び不可避不純物からなると共に、下記(1)式で規定されるPM値が0.27%未満を満足し、且つベイナイト相を主体とする組織からなり、2つの結晶の方位差が15°以上の大角粒界のうち、Σ3対応粒界である割合が0.065以上である点に要旨を有するものである。尚、本発明において、「ベイナイトを主体とする」とは、ベイナイト相が組織中に90面積%以上を占める状態を意味する。
PM=[C]+[Mn]/30+[Cr]/23+[Mo]/5+[Si]/5
+[Cu]/50+[Ni]/50…(1)
但し、[C],[Mn],[Cr],[Mo],[Si],[Cu]および[Ni]は、夫々C,Mn,Cr,Mo,Si,CuおよびNiの含有量(質量%)を示す。
本発明の鋼板においては、上記基本成分以外(残部)は、残部が鉄および不可避不純物であるが、必要に応じて(a)Mo:0.5%以下(0%を含まない)、(b)Cu:2.0%以下(0%を含まない)および/またはNi:2.0%以下(0%を含まない)、(c)V:0.05%以下(0%を含まない)、(d)Mg:0.005%以下(0%を含まない)、(e)Zr:0.005%以下(0%を含まない)、(f)希土類元素:0.0003〜0.003%、等を含有することも好ましく、含有する成分に応じて、高張力鋼板の特性が更に改善される。
本発明では、ベイナイトを主体とする組織を有する鋼板において、特定の対応粒界の割合を適切に規定すると共に、HAZ靭性に影響を与える要因であるM−A相量および化学成分組成を厳密に制御して適性化を図ることによって、疲労亀裂進展抑制に優れると共に、良好なHAZ靭性が確保できる高張力鋼板が実現でき、こうした高張力鋼板は、土木、建築、橋梁、海洋構造物、パイプ、船舶、貯蔵、建築機械等の各種用途の構造材料の素材として有用である。
本発明者らは、前記課題を解決するために、特にベイナイト組織である鋼板に着目し、その鋼板における粒界が亀裂進展の抵抗になると考え、粒界の状態と疲労亀裂進展速度の関係について様々な角度から検討した。その結果、一定の対応粒界の割合を増加させることが、疲労亀裂進展を抑制する上で極めて有効であることを見出した。
一方、良好なHAZ靭性を得るための鋼板としては、極低Cベイナイト組織を有するものが汎用されているが、本発明者らは、こうした組織を有する鋼板を基本として、そのHAZ靭性を更に改善するために手段について様々な角度から検討した。その結果、高張力鋼に一般的に含有されている元素(C,Si,Mn,Cr,Mo,Cu,Ni等)によってその関係を前記(1)式のように規定してやれば、M−A相量が適切に制御されて、HAZ靭性が格段に良好になることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明が完成させた経緯に沿って、本発明で規定する各要件の作用効果について説明する。
前述の対応粒界とは、幾何学的に整合性の高い特殊な粒界を意味する。この粒界は構造的にも安定で、力学的、化学的にも優れた特性を有するといわれているが、その詳細については未だ解明されていない部分が多い。例えば、2つの結晶の一つを回転軸Mの周囲に角度θ(回転角度)だけ回転させた場合の2つの結晶の重なりを考える。この際、回転軸Mと回転角度θによっては、原点(元の位置にある状態の点)以外にも周期的に重なる格子点が形成されることになる。このように重なった点を対応格子点と呼んでいる。元の結晶格子の単位胞体積とここで形成される対応格子点の単位胞体積の比をΣ値と呼ぶ。このΣ値が3である関係にある粒界をΣ3対応粒界と呼ぶ。
図1は、単純立方格子を<001>軸周りに36.52°回転(回転角度θ)させて(Yα−M−Xα→Yβ−M−Xβ)重ね合わせた図であり、Σ5対応粒界に相当するものであり、図中相互の格子点が重なった点を「○」印で示しているが、これが対応格子点となる。
上記のように対応粒界は、隣り合う結晶格子に対して、一定の角度回転することで生成されるものであり、通常の高角度ランダム粒界に比べて規則度が高く粒界エネルギーが低く安定なものとなる。このように、対応粒界がランダム粒界に比べて粒界エネルギーが低く、粒界すべりが起きにくいこと自体は知られていることであるが、こうした対応粒界が疲労亀裂進展速度に与える影響については未だ検討されていない。
本発明者らは、こうした状況の下で、鋼板における粒界の状態について、EBSP法(Electoron Backscattering Pattern法)に基づいて測定した結果、全測定点における2つの結晶の方位差が15°以上の大角粒界(大傾角境界)のうち、Σ3対応粒界である割合が0.065以上となれば、鋼板における疲労亀裂進展速度を従来鋼に比べて大幅に抑制できることが判明したのである。尚、前記「方位差」は、「ずれ角」若しくは「傾角」とも呼ばれているものであり、以下では「結晶方位差」と呼ぶことがある。
上記のようにΣ3対応粒界の割合を大きくすることによって、疲労亀裂進展速度を抑制できる理由については、その全てを解明し得た訳ではないが、恐らく次のように考えることができた。即ち、亀裂が進展するに際に必要なエネルギーをγaとしたとき、このエネルギーγaは下記(2)式のように表せるが、対応粒界の粒界エネルギーγが小さいので、亀裂に必要なエネルギーγaが大きくなって、疲労亀裂が進展するに必要なエネルギーが大きくなると考えられる。換言すれば、亀裂進展の機構としては、整合性の高い安定な粒界を亀裂が進展する際には、大きな破壊エネルギーを消費しなければならず、進展速度は低下するものと考えられる。
γa=2γs−γb …(2)
但し、γs:粒界の表面エネルギー、γb:粒界エネルギー
尚、Σ3対応粒界の割合を測定するには、前記EBSP法(Electoron Backscattering Pattern法)を採用すれば良い。この方法では、試料に電子線を材照射したときに発生する散乱波(菊池線)の幅や強度、散乱波同士の交差角度や現出する位置は、結晶系や結晶構造および方位によって決まり、従ってEPSPの画像的特徴を解析することによって、結晶方位差を決定することが可能である。
一方、HAZ靭性を向上するには、HAZにおいて破壊の起点となるM−A相の量をできるだけ低減する必要がある。M−A相は組織中のCが濃化し、その部分の変態温度が低下することによって、マルテンサイトと残留オーステナイトが組織中に析出した相である。従って、M−A相を低減するためには、C含有量自体を低減することが有効なものとなる。また、M−A相の低減には、オーステナイト安定化元素(Mn,Cr,Mo,Si等)を低減することで残留オーステナイト量を少なくすることが有効である。こうした観点から、上記(1)式で規定されるPM値が0.27%未満となるような鋼板では、HAZ中のM−A相が十分に少なくなって良好な靭性を示すものとなる。但し、C含有量やオーステナイト安定化元素を低減させ過ぎると、強度が確保できなくなるという問題が生じるので、基本的な最低含有量は確保する必要がある(この点は後述する)。
上記(1)式においては、Mo,Cu,Ni等のように基本とする化学成分には含まれない元素も規定しているが、これらの元素もHAZ靭性に影響を与えるものであるので、必要によって含有されるときには、これらの含有量もPM値の計算に入れる必要がある。従って、これらの元素を含有しないときには、上記(1)式からこれらの元素量を0として計算すれば良い。
尚、上記(1)式で規定される各元素の係数は、実験によって求められたものであるが、次にこの点について説明する。下記表1に示す化学成分組成を有する各鋼種について、熱サイクル試験を行なったときの吸収エネルギーvE-15を求め(詳細な測定方法については後述する)、その基本(ベース)となる鋼種(表1の鋼種A1)との比較において、Cr,Mn,Ni,Mo,SiおよびCuが鋼板の靭性に及ぼす影響について検討した。
Figure 0004825024
まず、Cについて、Cの含有量をX1、吸収エネルギーvE-15をY1としたときに、鋼A1(C含有量:0.038%、vE-15:77J)とA2(C含有量:0.054%、vE-15:30J)との関係については、下記(3)式のような近似式で表せる。
1=−2937.5X1+188.63 …(3)
同様に、Cr,Mn,Ni,Mo,SiおよびCuについて、その含有量とvE-15の関係を示せば、下記(4)〜(9)式のような近似式(直線近似)で表せる。
[Crについて:鋼種A1とA3]
2=−128.1X2+193.59 …(4)
(但し、X2:Cr含有量、Y2:vE-15
[Mnについて:鋼種A1とA4]
3=−98.0X3+233.92 …(5)
(但し、X3:Mn含有量、Y3:vE-15
[Niについて:鋼種A1とA5]
4=−58.4X4+91.6 …(6)
(但し、X4:Ni含有量、Y4:vE-15
[Moについて:鋼種A1、A6およびA7]
5=−570.0X5+268.0 …(7)
(但し、X5:Mo含有量、Y5:vE-15
[Siについて:鋼種A1とA8]
6=−560.0X6+301 …(8)
(但し、X6:Si含有量、Y6:vE-15
[Cuについて:鋼種A9とA10]
7=−59.0X7+257.8 …(9)
(但し、X7:Cu含有量、Y7:vE-15
上記(3)式の係数と、(4)〜(9)式の係数(傾き)を比較することによって、Cの係数を1としたときの、各元素の係数を求めることができる。例えば、Crについては、(−2938/−128)≒23となる(他の元素についても同様である)。その結果、前記(1)式の関係が求められたのである。
本発明の高張力鋼板は、ベイナイト組織を主体とするものであるが、母材組織の観点から靭性が劣化する上記ベイナイトを避け、極低Cベイナイト組織を生成させるように、極低C系を選択している(化学成分組成については後述する)。また、極低C系にすることによって、HAZ部組織においては、M−A相の量を低減できることや、小入熱時の硬化が小さくなることから、溶接時の予熱をなくす(フリー化)こともできるという利点もある。但し、これらの効果を発揮させるためには、必ずしも100面積%がベイナイト組織である必要はなく、ベイナイト分率で90面積%以上であれば良い。ベイナイト以外の組織としては、マルテンサイトやフェライト等が挙げられる。
本発明の鋼板において、その化学成分組成については基本となる成分であるC,Si,Mn,P,S,Al,Cr,Nb,Ti,B,CaおよびNを夫々含有するものであるが、これらの成分の範囲限定理由は、次の通りである。
[C:0.01〜0.05%]
Cは高張力鋼の強度を増大させるのに有効な元素であり、所望の強度を確保するためには0.01%以上含有させる必要がある。しかし、C含有量が過剰になると(中炭素、高炭素になると)、ベイナイトの変態機構が変化して選択されるバリアントが変化したり、本発明で狙う極低Cベイナイト組織を安定的に得ることができなくなるので、0.05%以下とする必要がある。
[Si:1.0%以下(0%を含まない)]
Siは冷却条件によらず固溶強化により鋼の強度を増加させるのに有効な元素であるが、過剰に含有させると鋼材(母材)に島状マルテンサイト相(M−A相)を多量に析出させて靭性を劣化させる。こうしたことから、その上限を1.0%とした。尚、Si含有量の好ましい上限は0.6%である。
[Mn:0.5〜2.0%]
Mnは極低Cベイナイト組織を生成させて鋼材を強化するのに有効な元素であり、こうした効果を発揮させるためには、Mnは0.5%以上含有させる必要がある。しかしながらMnを過剰に含有させると、母材の靭性劣化を引き起こすので上限を2.0%とする。Mn含有量の好ましい下限は0.6%であり、好ましい上限は1.9%である。
[P:0.5%以下(0%を含まない)およびS:0.02%以下(0%を含まない)]
Pは結晶粒に偏析し、延性や靭性に有害に作用する不純物であるので、できるだけ少ない方が好ましいのであるが、不可避的に鋼材に混入することを考慮して0.5%以下に抑制するのが良い。またSは、鋼材中の合金元素と反応して種々の介在物を形成し、鋼材の延性や靭性に有害に作用するので不純物であるので、できるだけ少ない方が好ましいのであるが、不可避的に混入することを考慮して0.02%以下に抑制するのが良い。
[Al:0.01〜0.07%]
Alは脱酸剤として有効な元素であると共に、鋼材中のNを固定することによって、Bの固溶量を増加させる元素である。これによって、Bによる焼入れ性向上効果が向上することになる。こうした効果を発揮させるためには、Al含有量は0.01%以上とする必要がある。しかしながら、過剰に含有されると鋼材(母材)に島状マルテンサイト相(M―A相)を多量に析出させて靭性を劣化させる。こうしたことから、その上限を0.07%とした。尚、Al含有量の好ましい下限は0.02%であり、好ましい上限は0.06%である。
[Cr:0.4〜2.0%]
Crは極低Cベイナイト組織を得るために重要な元素である。また、HAZ組織においてはベイナイトブロックサイズを低減するためにも有効である。更に、焼入れ性を向上させて鋼材の強度を確保する上でも有効な元素である。しかも、変態を抑制し、ベイナイト変態開始温度Bsを低下させる作用も発揮する。ベイナイトが低温で変態することによって、ランダム粒界の生成量が変化し、対応粒界の割合を増加させることができる。これらの効果を発揮させるためには、Crは0.4%以上含有させる必要がある。しかしながら、Crの含有量が過剰になって2.0%を超えると、粗大な析出物を形成するので、母材およびHAZのいずれの靭性も劣化する。尚、Cr含有量の好ましい下限は0.5%であり、好ましい上限は1.8%である。
[Nb:0.001〜0.050%]
Nbは極低Cベイナイト組織を得るために重要な元素である。また、HAZ組織においてはベイナイトブロックサイズを低減するためにも有効である。更に、鋼材の強度を確保する上でも有効な元素である。しかも、Crと同様に、変態を抑制し、ベイナイト変態開始温度Bsを低下させる作用も発揮する。これらの効果を発揮させるためには、Nbは0.001%以上含有させる必要がある。しかしながら、Nbの含有量が過剰になって0.050%を超えて含有させてもその効果は飽和する。尚、Nb含有量の好ましい下限は0.002%であり、好ましい上限は0.045%である。
[Ti:0.005〜0.03%]
Tiは窒化物を形成させ、大入熱溶接時に旧オーステナイト粒の粗大化を抑制し、HAZ靭性を向上させるのに有効な元素である。またCrやNbと同様に、変態を抑制し、ベイナイト変態開始温度Bsを低下させる作用も発揮する。こうした効果を発揮させるためには、Ti含有量は0.005%以上とする必要がある。しかしながら、Tiを過剰に含有させると粗大な介在物を析出させ、却ってHAZ靭性を劣化させるので、その上限を0.03%とする。尚、Ti含有量の好ましい下限は0.010%であり、好ましい上限は0.025%である。
[B:0.0005〜0.0030%]
Bは極低Cベイナイト組織を得るために重要な元素である。また焼入性を向上させてフェライト変態を抑制する上でも有効に作用する。更に、CrやNbと同様に、変態を抑制し、ベイナイト変態開始温度Bsを低下させる作用も発揮する。そのためには、Bは0.0005%以上含有させる必要がある。しかしながら、Bを過剰に含有させるとその効果が飽和するばかりか、HAZ組織中での介在物(B窒化物)が増加してHAZ靭性は却って低下するので、B含有量の上限は0.0030%とする必要がある。尚、B含有量の好ましい下限は0.0007%であり、好ましい上限は0.0025%である。
[Ca:0.0005〜0.005%]
Caは介在物形状の異方性を低減する作用があり、HAZ靭性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.0005%以上含有させる必要があるが、0.005%を超えて過剰に含有させても介在物が粗大化してHAZ靭性が却って劣化する。尚、Ca含有量の好ましい下限は0.001%であり、好ましい上限は0.004%である。
[N:0.0020〜0.010%]
大入熱溶接HAZにおいて靭性を高位に確保するためには、旧オーステナイト粒内にTiNを微細析出させて旧オーステナイト粒の粗大化を防止することが有効である。こうした効果を発揮せせるためには、N含有量は0.0020%以上とする必要がある。しかしながら、N含有量が過剰になって0.010%を超えると粗大なTiNが析出して破壊の起点となる。尚、N含有量の好ましい下限は0.003%であり、好ましい上限は0.008%である。
本発明の高張力鋼板における基本成分は上記の通りであり、残部は鉄および不可避不純物(例えば、O等)からなるものであるが、必要によって、(a)Mo:0.5%以下(0%を含まない)、(b)Cu:2.0%以下(0%を含まない)および/またはNi:2.0%以下(0%を含まない)、(c)V:0.05%以下(0%を含まない)、(d)Mg:0.005%以下(0%を含まない)、(e)Zr:0.005%以下(0%を含まない)、(f)希土類元素:0.0003〜0.003%、等を含有することも有効であるが、これらの成分を含有させるときの範囲限定理由は、次の通りである。
[Mo:0.5%以下(0%を含まない)]
Moは焼入性を向上させて強度向上に有効な元素であるが、0.5%を超えて過剰に含有させると、粗大な硬化相となるので、母材およびHAZのいずれの靭性も劣化する。またMoは、変態を抑制し、ベイナイト変態開始温度Bsを低下させる作用も発揮する。ベイナイトが低温で変態することによって、ランダム粒界の生成量が変化し、対応粒界の割合を増加させることができる。尚、本発明において極低Cベイナイト組織を得るためには、必ずしも必要な元素ではなく、無添加でも良い。但し、Moを含まない場合には、前記(1)式は、Moを含まないものとして計算する必要がある。Mo含有量の好ましい上限は0.45%である。
[Cu:2.0%以下(0%を含まない)および/またはNi:2.0%(0%を含まない)]
CuおよびNiは、母材強度を向上するのに有効な元素である。またこれらの元素は、変態を抑制し、ベイナイト変態開始温度Bsを低下させる作用も発揮する。これらの効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、含有量が過剰になると溶接時にM−A相の生成が促進されHAZ靭性が劣化することになるので、いずれも2.0%以下とすることが好ましい。但し、CuやNiを含まない場合には、前記(1)式は、CuやNiを含まないものとして計算する必要がある。これらの元素の含有量の好ましい上限は1.5%である。
[V:0.05%以下(0%を含まない)]
Vは母材強度の向上に有効な元素であり、また変態を抑制し、ベイナイト変態開始温度Bsを低下させる作用も発揮する。しかしながら、0.05%を超えて過剰に含有させるとHAZ部で析出物を形成し、HAZ靭性が低下することになる。
[Mg:0.005%以下(0%を含まない)]
MgはTiNの析出の核となる酸化物を微細分散させてHAZの靭性向上に寄与する元素であるが、過剰に含有させると酸化物が粗大化して却ってHAZ靭性を低下させるので、0.005%以下にすべきである。
[Zr:0.005%以下(0%を含まない)]
ZrはTiと同様に、窒化物や酸化物を形成して、HAZ部の旧オーステナイト粒の粗大化を防止してHAZ靭性を向上させるのに有効な元素であるが、過剰に含有させると介在物が粗大化してHAZ靭性が劣化するので0.005%以下にすべきである。
[希土類元素:0.0003〜0.003%]
希土類元素(REM)は、Caと同様に、介在物形状の異方性を低減してHAZ靭性を向上するのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.0003%以上含有させることが好ましい。しかしながら、REMの含有量が0.003%を超えて過剰になると、介在物が粗大化してHAZ靭性が却って低下することになる。
本発明の高張力鋼板は、ベイナイトを主体とする組織からなるものであるが、オーステナイト状態で冷却を行うことによって、過冷状態となり、Ar3変態点を低下すると共にベイナイト組織とすることができる。特に低温で変態させると、変態の際の原子の移動可能距離が低下し、変態挙動も拡散型変態から剪断型変態に変化して対応粒界の生成が促進されることになる。具体的な製造条件としては、下記(1)〜(5)の製造方法を適用することが望ましい。
(1)950〜1250℃の温度範囲に加熱し、Ar3変態点〜900℃の温度範囲で圧延を終了した後、冷却速度を5℃/秒以上として450℃以下まで加速冷却(例えば、水冷)を行なう。
(2)950〜1250℃の温度範囲に加熱し、Ar3変態点〜900℃の温度範囲で圧延を終了した後、冷却速度を5℃/秒以上として450℃以下まで加速冷却(例えば、水冷)を行ない、その後500〜700℃の温度域で焼戻し処理を行なう。
(3)950〜1250℃の温度範囲に加熱し、Ar3変態点〜900℃の温度範囲で圧延を終了した後、再びAc3変態点以上の温度まで加熱し、その後冷却速度を5℃/秒以上として450℃以下まで冷却を行なう。
(4)950〜1250℃の温度範囲に加熱し、Ar3変態点〜900℃の温度範囲で圧延を終了した後、再びAc3変態点以上の温度まで加熱し、冷却速度を5℃/秒以上として450℃以下まで冷却を行ない、引き続き500〜700℃の温度域で焼戻し処理を行なう。
(5)950〜1250℃の温度範囲に加熱し、再結晶温度域で圧延を行なった後、冷却速度を1℃/秒以上として600〜700℃の温度域まで冷却を行ない、引き続きその温度で過冷オーステナイトの状態で圧下率30%以上の圧延を行ない、その後再度加速冷却を行なう。
上記(1)〜(4)の方法において、冷却の停止温度については、ベイナイト組織が主体となる温度まで冷却する必要があるので、450℃以下とする。また加熱温度が950℃未満では、十分にオーステナイト状態とならない。しかし、加熱温度が1250℃を超えると、オースナイト粒が粗大化し、対応粒界の生成ができなくなる。圧延後再加熱する場合は、完全にオーステナイト状態にする必要があるので、Ac3変態点温度以上とする必要がある。尚、上記(5)の方法では、オーステナイトに低温で圧延を加えることによって、多くの変形帯を導入することができ、オースフォーム(加工熱処理)効果により核生成サイトが増加するので、組織を微細化し、疲労亀裂進展抑制効果を高めることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含されるものである。
[実施例1]
下記表2に示す化学成分組成の鋼(鋼種A〜R)を用い、下記表3に示す製造条件にて鋼板を製造した。尚、表2には、本発明で規定するPM値についても示した。尚、表2における鋼種A〜Mは、本発明で規定する化学成分組成を満足するものであり、鋼種N〜Rは本発明で規定する要件(化学成分組成、PM値)のいずれかが外れたものである。
Figure 0004825024
Figure 0004825024
得られた各鋼板について、ベイナイト分率、鋼材(母材)の引張特性[0.2%耐力(YS)、引張強さ(TS)、降伏比(YR:YS/TS)]、衝撃特性(破面遷移温度vTrs)、耐溶接低温割れ性、HAZ靭性等を下記の方法によって測定すると共に、Σ3対応粒界の割合、疲労亀裂進展速度等を下記の方法によって測定した。これらの結果を一括して、下記表4に示す。
[ベイナイト分率(面積率)]
各鋼板のt/4(tは板厚)から鏡面研磨後試験片を採取し、これを2%硝酸−エタノール溶液(ナイタール溶液)でエッチングした後、5視野において光学顕微鏡を用いて400倍で観察を行ない、画像解析によって鋼組織中のベイナイト分率(面積%)を測定した。この際、フェライト(ポリゴナルフェライト・擬ポリゴナルフェライトを含む)以外のラス状組織は全てベイナイトとみなした。
[鋼板の引張特性]
鋼板のt/4(tは板厚)からJIS Z 2201 4号試験片を採取し、JIS Z 2241の要領で引張試験を行ない、降伏強度(0.2%耐力:YS)、引張強度(TS)、降伏比(降伏強度/引張強度×100%:YR)を測定した。本発明では、引張強度TS:570MPa以上、降伏比YR:80%以上を合格とした。
[鋼板の靭性]
鋼板のt/4からL方向(圧延方向)に、JIS Z 2202 Vノッチ試験片を採取してJIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃試験を行ない、シャルピー試験片の脆性破面率が50%となる温度を近似して破面遷移温度(vTrs)として測定した。vTrsが−20℃以下を目標として合格とした。
[耐溶接低温割れ性]
JIS Z 3158のy形溶接割れ試験法に従い、入熱量:1.5KJ/mmで被覆アーク溶接を行ない、予熱温度25℃において断面割れ率を測定し、割れ率0%を合格とした。
[溶接HAZ靭性]
HAZ再現試験を行なった。鋼板から採取した試験片[12.5×32×55(mm)の試験片を各5本採取]に1400℃×5秒加熱後、入熱量10KJ/mmに相当する[800〜500℃までを80秒で冷却]熱サイクル試験を行なった。その後、各試験片から2本のシャルピー衝撃試験片(JIS Z 2202 Vノッチ試験片)を採取し、各鋼板毎に10本で−15℃における平均衝撃吸収エネルギーvE-15を求めた。平均100J以上を合格とした。
[Σ3対応粒界の割合]
EBSP法(Electoron Backscattering Pattern法)を採用して測定した。このとき用いたSEM−EBSPオンライン結晶方位・粒界性格自動解析装置は、FE−SEM、TSL社製OIMハードウエア・ソフトウエアとSGI社製コンピュータで構成されるものである。このときの測定条件は、測定領域:200μm×200μm、測定ピッチ:0.5μm間隔とし、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1よりも小さい測定点は解析対象から除外した。尚、実際の組織中において、完全に対応格子関係を持つ粒界は極めてまれであり、規則関係を乱さないような転位の導入から、若干のズレが生じていることが多い。Σ値算出による許容角度として、TRERANCE(許容範囲)=K/Σ-nで、K=15、n=0.5とした。
この条件では、結晶方位差が15°未満の小角粒界は、Σ1として判定されるので、全測定点からΣ1を引いた数を大角粒界数と考え、そのうちでΣ3を示す割合を算出した。
[疲労亀裂進展速度]
ASTM E647に準拠し、コンパクト型試験片を用いて、疲労亀裂進展試験を実施することによって、疲労亀裂進展速度を求めた。この際、下記(10)式によって規定されるパリス則が成り立つ安定成長領域ΔK=20(MPa・√m)での値を代表値として評価した。尚、疲労亀裂進展速度の評価、基準については、通常の鋼材が4〜6×10-5mm/cycle(ΔK=20のとき)程度の進展速度であることから、3.5×10-5mm/cycle以下を基準とした。
da/dn=C(ΔK)m…(10)
但し、a:亀裂長さ,n:繰り返し数,C,m:材料、荷重等の件で決まる定数を夫々示す。
Figure 0004825024
表4の結果から次のように考察できる。ます試験No.1〜11のものは、本発明で規定する要件を満足するものであり、十分な疲労亀裂進展抑制効果(進展速度で3.5×10-5mm/cycle以下)が発揮されると共に、靭性、HAZ靭性のいずれも良好な値を示していることが分かる。
これに対して、試験No.14〜18のものでは、本発明で規定する要件のいずれかを欠くものであり、いずれも疲労進展抑制効果が発揮されていない。


試験No.14のものでは、C含有量が過剰になっており(表2の鋼種N)、本発明で目標とする極低Cベイナイト組織が得られず、HAZ靭性が劣化している。また、試験No.15のものでは、C含有量が更に過剰になっており(表2の鋼種O)、HAZ組織中のM−A量が促進され、靭性が劣化しており、また疲労強度も劣化している。
試験No.16のものでは、Mn含有量が過剰になっており(表2の鋼種P)、HAZ靭性が劣化している。また、試験No.17のものでは、Cr含有量が過剰になっており(表2の鋼種Q)、HAZ靭性が劣化している。更に、試験No.18のものでは、Mo含有量が過剰になっており(表2の鋼種R)、HAZ靭性が劣化している。
表4の結果に基づき、PM値とvE-15の関係を図2に、Σ3対応粒界の割合と疲労亀裂進展速度の関係を図3に夫々示す。PM値を0.27%未満とすることによって優れた靭性を発揮すると共に、Σ3対応粒界の割合を0.065以上とすることによって疲労亀裂進展速度が十分低くなっていることが分かる。
[実施例2]
前記表2に示した鋼種Aを用い、入熱量を変える以外は実施例と同様にしてHAZ再現試験を行なった。このときの入熱量:1〜20KJに相当するように、800〜500℃までの冷却時間を変えて熱サイクル試験を行なった。尚、入熱量1KJ/mmでは冷却時間10秒、入熱量2KJ/mmでは冷却時間20秒、入熱量5KJ/mmでは冷却時間40秒、入熱量7KJ/mmでは冷却時間60秒、入熱量15KJ/mmでは冷却時間120秒、入熱量20KJ/mmでは冷却時間160秒となる。
その後、各試験片から2本のシャルピー衝撃試験片(JIS Z 2202 Vノッチ試験片)を採取し、各鋼板毎に10本で−15℃における平均衝撃吸収エネルギーvE-15を求めた。
その結果を、下記表5に示すが、本発明の高張力鋼板(鋼種A)では、入熱量20KJ/mmまでは優れたHAZ靭性を示していることが分かる。
Figure 0004825024
対応粒界を説明するための図である。 PM値とvE-15の関係を示すグラフである。 Σ3対応粒界の割合と疲労亀裂進展速度の関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. C:0.01〜0.05%(質量%の意味、以下同じ)、Si:1.0%以下(0%を含まない)、Mn:0.5〜2.0%、P:0.5以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.01〜0.07%、Cr:0.4〜2.0%、Nb:0.001〜0.050%、Ti:0.005〜0.03%、B:0.0005〜0.0030%、Ca:0.0005〜0.005%、N:0.0020〜0.010%を夫々含有し、残部:鉄及び不可避不純物からなると共に、下記(1)式で規定されるPM値が0.27%未満を満足し、且つベイナイト相を90面積%以上とする組織からなり、2つの結晶の方位差が15°以上の大角粒界のうち、Σ3対応粒界である割合が0.065以上であることを特徴とする疲労亀裂進展抑制および溶接熱影響部の靭性に優れた高降伏比高張力鋼板。
    PM=[C]+[Mn]/30+[Cr]/23+[Mo]/5+[Si]/5
    +[Cu]/50+[Ni]/50…(1)但し、[C],[Mn],[Cr],[Mo],[Si],[Cu]および[Ni]は、夫々C,Mn,Cr,Mo,Si,CuおよびNiの含有量(質量%)を示す。
  2. Mo:0.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1に記載の高降伏比高張力鋼板。
  3. Cu:2.0%以下(0%を含まない)および/またはNi:2.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の高降伏比高張力鋼板。
  4. V:0.05%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の高降伏比高張力鋼板。
  5. Mg:0.005%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の高降伏比高張力鋼板。
  6. Zr:0.005%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の高降伏比高張力鋼板。
  7. 希土類元素:0.0003〜0.003%を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の高降伏比高張力鋼板。
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