JP2007191781A - 疲労亀裂進展抑制に優れた鋼板 - Google Patents

疲労亀裂進展抑制に優れた鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】ベイナイトを主体とする鋼板において、各結晶方位関係を適切に規定することによって、疲労亀裂進展抑制に優れたものとした鋼板を提供する。
【解決手段】本発明の鋼板は、ベイナイト相を主体とする組織からなり、2つの結晶の方位差が15°以上の大角粒界のうち、Σ3対応粒界である割合が0.065以上であり、必要により化学成分組成を、C:0.01〜0.10%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.6〜2.0%、Al:0.001〜0.1%を夫々含有する他、Cu:0.03〜3.0%、Cr:0.03〜3.0%、Ni:0.03〜3.0%、Mo:0.03〜1.0%、V:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%およびB:0.0003〜0.030%よりなる群から選択される1種または2種以上を含み、残部が鉄および不可避不純物のものとする。
【選択図】図2

Description

本発明は、主として船舶や橋梁の構造材として用いられる鋼板に関するものであり、特に亀裂の進展速度を抑制して良好な疲労寿命を確保することのできるベイナイト相を主体とする高張力鋼板に関するものである。
造船や橋梁分野を始めとする各種構造材料では、繰り返し応力が加わるものが少なくないことから、構造材料の安全性を確保するためには、素材として用いられている鋼材には疲労特性が良好であることが設計上極めて重要である。
鋼材の疲労過程は、応力集中部での亀裂の発生と、一旦発生した亀裂の進展という2つの過程に大別して考えられる。そして、通常の機械部品では巨視的な亀裂の発生が、使用限界として考えられており、亀裂の進展を許容する設計は殆どされていない。しかしながら、溶接構造物においては、疲労亀裂が発生しても直ちに破壊に至ることはなく、この亀裂が最終段階に至る前に定期検査などで発見され、亀裂の入った部分が修理されるか、或は使用期間内に亀裂が最終破壊に至る長さまでに成長しないならば、亀裂があっても構造物は十分に使用に耐え得ることになる。
ところで、溶接構造物では、応力集中部としての溶接止端部が多数存在しており、疲労亀裂の発生を完全に防止することは技術的にも不可能に近く、また経済的にも得策とはいえない。即ち、溶接構造物の疲労寿命を良好にするためには、亀裂の発生そのものを防止するよりも、亀裂が既に存在している状態からの亀裂進展寿命を大幅に延長することが有効であり、そのためには鋼材の亀裂の進展速度をできるだけ遅くするような設計が重要な事項となる。
疲労亀裂進展の速度を抑制する技術としてもこれまで様々なものが提案されており、例えば特許文献1には、硬質相と軟質相の2相組織とし、軟質相/硬質相境界における亀裂の屈曲、停留、分岐によって亀裂進展速度を抑制する技術が提案されている。
しかしながら、この技術では、軟質のフェライト組織を基本的に含む組織とする必要があり、高強度鋼を製造することはできないという問題がある。
一方、特許文献2では、ベイナイト組織またはマルテンサイト組織を主体とし、最大引張・圧縮歪で±0.012、繰り返し速度0.5Hz、最大歪までの波数12の漸増・漸減繰り返し負荷を15回与えたときの、1回の最大歪時の応力σ1と15回の最大歪時の応力σ15との比σ1/σ15で示される繰り返し軟化パラメータが0.65以上0.95以下であるような疲労亀裂進展特性に優れた鋼材が提案されている。そして、この技術では、繰り返し軟化については、繰り返し応力が負荷された際の転位の再配列によって起こるとされており、亀裂先端の転位密度が高いほど軟化が起こりやすく、疲労亀裂進展抑制に効果があることが示されている。
上記技術において、転位密度を高めるためには、実施例に示されているように実質的に直接焼入れや、オフラインで焼入れを行う必要がある。しかしながら、オフラインの熱処理では生産性が低下することが予想され、またライン上で直接焼入れするにしても転位導入による強度を考慮しなければならないので、強度が高くなり過ぎないように低成分にするという制約がある。その結果、成分設計上での自由度が低いものとなり、その他の特性が劣化することが十分に考えられる。また上記のような軟化パラメータを規定が規定範囲内部であっても、破面遷移温度vTrsが0℃を超える実施例が存在し、構造物としての特性を十分に満足できない可能性がある。
亀裂進展速度に影響を与える因子として、粒界の状態も考えられる。粒界状態を材料特性に応用した技術として、例えば特許文献3には、Σ1対応粒界、Σ3〜29対応粒界等の割合を規定することによって、形状記憶特性や磁歪特性を改善した鉄基形状記憶合金について開示されている。しかしながら、亀裂進展速度と粒界の状態については考慮されておらず、特に鋼板において粒界状態が特性に与える影響については確立された知見が得られていないのが実情である。
特許第3298544号公報 特許請求の範囲等 特開2004−27355号公報 特許請求の範囲等 特開平11−269611号公報 特許請求の範囲等
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、ベイナイトを主体とする鋼板において、粒界の状態が特性に与える影響を明らかにすることによって、疲労亀裂進展抵抗性をより優れたものとした鋼板を提供することにある。
上記目的を達成することのできた本発明の鋼板とは、ベイナイト相を主体とする組織からなり、2つの結晶の方位差が15°以上の大角粒界のうち、Σ3対応粒界である割合が0.065以上である点に要旨を有するものである。尚、本発明において、「ベイナイトを主体とする」とは、ベイナイト相が組織中に90面積%以上を占める状態を意味する。
本発明の鋼板においては、その化学成分組成については通常の鋼板としての成分組成であれば、その効果が発揮されるものであるが、好ましい化学成分組成としては、C:0.01〜0.10%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.6〜2.0%、Al:0.001〜0.1%を夫々含有する他、Cu:0.03〜3.0%、Cr:0.03〜3.0%、Ni:0.03〜3.0%、Mo:0.03〜1.0%、V:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%およびB:0.0003〜0.030%よりなる群から選択される1種または2種以上を含み、残部が鉄および不可避不純物であるものが挙げられる。
本発明の鋼板においては、必要によって、下記(1)式または(2)式で規定されるDI1値またはDI2値が1.5〜8.0であることが好ましく、これによって鋼板の特性が更に改善される。
[Mn>1.2%のとき]
DI=1.16×(√[C]/10)×(0.75[Si]+1)×{5.1([Mn]−1.2)+5.0}×(0.35[Cu]+1)×(0.36[Ni]+1)×(2.16[Cr]+1)×(3[Mo]+1)×(1.75[V]+1)×(200[B]+1) …(1)
[Mn≦1.2%のとき]
DI2=1.16×(√[C]/10)×(0.75[Si]+1)×3.33([Mn]+1)×(0.35[Cu]+1)×(0.36[Ni]+1)×(2.16[Cr]+1)×(3[Mo]+1)×(1.75[V]+1)×(200[B]+1)…(2)
但し、[C],[Si],[Mn],[Cu],[Ni],[Cr],[Mo],[V]および[B]は、夫々C,Si,Mn,Cu,Ni,Cr,Mo,VおよびBの含有量(質量%)を示す。
また、(a)不可避不純物中のPを0.025%以下(0%を含まない)、Sを0.02%以下(0%を含まない)に夫々抑制することや、(b)Ca:0.0005〜0.0030%および/または希土類元素(REM):0.0005〜0.030%を含有することも好ましく、抑制若しくは含有する成分に応じて、高強度張力鋼板の特性が更に改善される。
本発明では、ベイナイトを主体とする組織を有する鋼板において、特定の対応粒界の割合を適切に規定することによって、疲労亀裂進展抑制に優れた鋼板が実現でき、こうした鋼板は、造船や橋梁分野を始めとする各種構造材料の素材として有用である。
本発明者らは、前記課題を解決するために、特にベイナイト組織である鋼板に着目し、その鋼板における粒界が亀裂進展の抵抗になると考え、粒界の状態と疲労亀裂進展速度の関係について様々な角度から検討した。その結果、一定の対応粒界の割合を増加させることが、疲労亀裂進展を抑制する上で極めて有効であることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明を完成させた経緯に沿って、本発明の作用効果について説明する。
対応粒界とは、幾何学的に整合性の高い特殊な粒界を意味する。この粒界は構造的にも安定で、力学的、化学的にも優れた特性を有するといわれているが、その詳細については未だ解明されていない部分が多い。例えば、2つの結晶の一つを回転軸Mの周囲に角度θ(回転角度)だけ回転させた場合の2つの結晶の重なりを考える。この際、回転軸Mと回転角度θによっては、原点(元の位置にある状態の点)以外にも周期的に重なる格子点が形成されることになる。このように重なった点を対応格子点と呼んでいる。元の結晶格子の単位胞体積とここで形成される対応格子点の単位胞体積の比をΣ値と呼ぶ。このΣ値が3である関係にある粒界をΣ3対応粒界と呼ぶ。
図1は、単純立方格子を<001>軸周りに36.52°回転(回転角度θ)させて(Yα−M−Xα→Yβ−M−Xβ)重ね合わせた図であり、Σ5対応粒界に相当するものであり、図中相互の格子点が重なった点を「○」印で示しているが、これが対応格子点となる。
上記のように対応粒界は、隣り合う結晶格子に対して、一定の角度回転することで生成されるものであり、通常の高角度ランダム粒界に比べて規則度が高く粒界エネルギーが低く安定なものとなる。このように、対応粒界がランダム粒界に比べて粒界エネルギーが低く、粒界すべりが起きにくいこと自体は知られていることであるが、こうした対応粒界が疲労亀裂進展速度に与える影響については未だ検討されていない。
本発明者らは、こうした状況の下で、鋼板における粒界の状態について、EBSP法(Electoron Backscattering Pattern法)に基づいて測定した結果、全測定点における2つの結晶の方位差が15°以上の大角粒界(大傾角境界)のうち、Σ3対応粒界である割合が0.065以上(好ましくは0.070以上)となれば、鋼板における疲労亀裂進展速度を従来鋼に比べて大幅に抑制できることが判明したのである。尚、前記「方位差」は、「ずれ角」若しくは「傾角」とも呼ばれているものであり、以下では「結晶方位差」と呼ぶことがある。
上記のようにΣ3対応粒界の割合を大きくすることによって、疲労亀裂進展速度を抑制できる理由については、その全てを解明し得た訳ではないが、恐らく次のように考えることができた。即ち、亀裂が進展するに際に必要なエネルギーをγaとしたとき、このエネルギーγaは下記(3)のように表せるが、対応粒界の粒界エネルギーγbが小さいので、亀裂に必要なエネルギーγaが大きくなって、疲労亀裂が進展するに必要なエネルギーが大きくなると考えられる。換言すれば、亀裂進展の機構としては、整合性の高い安定な粒界を亀裂が進展する際には、大きな破壊エネルギーを消費しなければならず、進展速度は低下するものと考えられる。
γa=2γs−γb …(3)
但し、γs:粒界の表面エネルギー、γb:粒界エネルギー
尚、Σ3対応粒界の割合を測定するには、EBSP法(Electoron Backscattering Pattern法)を採用すれば良い。この方法では、試料に電子線を材照射したときに発生する散乱波(菊池線)の幅や強度、散乱波同士の交差角度や現出する位置は、結晶系や結晶構造および方位によって決まり、従ってEBSPの画像的特徴を解析することによって、結晶方位差を決定することが可能である。
本発明の鋼板において、その化学成分組成については通常の鋼板としての成分組成であれば、その効果が発揮されるものであるが、好ましい化学成分組成としては、C:0.01〜0.10%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.6〜2.0%、Al:0.001〜0.10%を夫々含有する他、Cu:0.03〜3.0%、Cr:0.03〜3.0%、Ni:0.03〜3.0%、Mo:0.03〜1.0%、V:0.003〜0.1%、Nb:0.003〜0.1%、Ti:0.003〜0.1%およびB:0.0003〜0.003%よりなる群から選択される1種または2種以上を含み、残部が鉄および不可避不純物であるものが挙げられる。これらの成分の範囲限定理由は、次の通りである。
[C:0.01〜0.10%]
Cは、鋼板の強度確保のために必要な元素である。鋼板としての最低強度、即ち概ね490MPa程度(使用する鋼材の肉厚にもよるが)を得るためには、0.01%以上含有させるのが良い。しかし、C含有量が過剰に含有させると(中炭素、高炭素になると)、ベイナイトの変態機構が変化して選択されるバリアントが変化するので、0.10%以下とするのが良い。尚、C含有量のより好ましい下限は0.03%であり、好ましい上限は0.08%である。
[Si:0.01〜0.6%]
Siは脱酸と強度確保のための必要な元素であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。しかし、0.6%を超えて過剰に含有させると溶接性が大幅に劣化することになる。
[Mn:0.6〜2.0%]
Mnは鋼板の強度および靭性確保のために有効な元素であり、こうした効果を発揮させるためには0.6%以上含有させることが好ましい。しかし、2.0%を超えて過剰に含有させると溶接性、割れ感受性が劣化するので2.0%以下とするのが良い。尚、Mn含有量のより好ましい下限は0.8%であり、より好ましい上限は1.8%である。
[Al:0.001〜0.10%]
Alは脱酸のために有用な元素であり、0.001%に満たないと脱酸効果がない。しかし、0.10%を超えて含有させると溶接部の靭性を劣化させるので0.10%以下とするのが良い。
[Cu:0.03〜3.0%、Cr:0.03〜3.0%、Ni:0.03〜3.0%、Mo:0.03〜1.0%、V:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%およびB:0.0003〜0.030%よりなる群から選択される1種または2種以上]
これらの元素は、変態を抑制し、ベイナイト変態開始温度Bsを低下させる作用を発揮する。ベイナイトは変態の際に、低温で変態することで、ランダム粒界の生成量を変化させ、対応粒界の割合を増加させることができる。こうした効果を発揮させるためには、これらの元素の1種または2種以上を上記した各下限%以上含有させることが好ましいが、多量に含有させると溶接性を損なうので各上限以下とするのが良い。
本発明の高張力鋼板における基本成分は上記の通りであり、残部は鉄および不可避不純物(例えば、P,S,N,O等)からなるものであるが、ベイナイト組織を得るため、および溶接性を良好に維持するという観点からして、前記(1)式または(2)で示されるDI値をまたはDI値を1.5〜8.0の範囲に制御することが好ましい。また上記不可避不純物中のPやSは、夫々0.025%以下および0.02%以下に抑制することが好ましい。これらの範囲を規定する理由は下記の通りである。
[(1)式または(2)で示されるDI1値をまたはDI2値:1.5〜8.0]
DI1値またはDI2値は焼入れ性の指標となるものであり、この値が1.5未満では、フェライト相が増加してベイナイト組織になり難くなる。また、この値が8.0を超えると島状マルテンサイト(M−A)が増加し、溶接性およびHAZ靭性が劣化することになる。尚、前記(1)式および(2)式は、ASTM A255に基づいて求めたものである。
[P:0.025%以下(0%を含まない)およびS:0.02%以下(0%を含まない)]
Pは結晶粒に偏析し、延性や靭性に有害に作用する不純物であるので、できるだけ少ない方が好ましいのであるが、実用鋼の清浄度の程度を考慮して0.025%以下に抑制するのが良い。またSは、鋼板中の合金元素と化合して種々の介在物を形成し、鋼板の延性や靭性に有害に作用する不純物であるので、できるだけ少ない方が好ましいのであるが、実用鋼の清浄度の程度を考慮して0.02%以下に抑制するのが良い。
また、本発明の鋼板には、上記成分の他必要によって、Ca:0.0005〜0.005%および/またはREM:0.0005〜0.0030%を含有させることも有効であり、これらの元素を含有させることによって鋼板の特性が更に改善されることになる。
[Ca:0.0005〜0.003%および/またはREM:0.0005〜0.030%]
CaおよびREMは、Sの固定による靭性の向上に有効な元素であり、その効果を発揮させるためには、いずれも0.0005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、過剰に含有させてもその効果が飽和するので、Caで0.003%以下、REMで0.030%以下とすることが好ましい。Caを含有させるときのより好ましい下限は0.001%である。
本発明の鋼板を製造する方法としては、特に限定するものではないが、例えば上記のような化学成分組成を有する鋼片を以下に示す手順に従って、ベイナイトを主体とする組織とすれば良い。粒界の性格は、粒界の移動による粒成長に関連しており、オーステナイト粒(γ粒)から生成する粒内ベイナイトは、ランダム粒界を生成することになる。こうしたことから、少なくとも900〜1200℃の温度範囲に加熱し、700℃以上のオーステナイト状態で圧延を終了するのが良い。そして、粒内からのランダム粒界の生成を抑えるために、圧延終了後は擬ポリゴナルフェライト(αq)の生成を抑制するために、400℃以下の温度域まで5℃/秒以上の冷却速度で加速冷却を行なうことが好ましい。このように、冷却前の歪が少なく、冷却速度が速いほど、核生成頻度が低下し、変態温度も低下する。変態温度が低くなると、変態の際の原子の移動可能距離が低下し、変態挙動も拡散型変態から剪断型変態に変化して対応粒界の生成が促進されることになる。変態点の低下には、合金元素の添加や冷却速度の増加等が有効である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含されるものである。
[実施例1]
下記表1に示す化学成分組成の鋼材を転炉で溶製し、種々の冷却、圧延条件によって鋼板を製造した。このときの製造条件を下記表2に示す。尚、下記表2中、「AcC」は加速冷却(水による冷却)、「AC」は空冷、QTは焼入れ・焼き戻し、を夫々意味する。
Figure 2007191781
Figure 2007191781
得られた各鋼板について、機械的特性[降伏点:YP、引張り強さ:TS、降伏比(YP/TS):YR、伸び:EL]を測定すると共に、Σ3対応粒界の割合、疲労亀裂進展速度、破面遷移温度vTrs等を下記の方法によって測定した。これらの結果を一括して、下記表3に示す。
[Σ3対応粒界の割合]
EBSP法(Electoron Backscattering Pattern法)を採用して測定した。このとき用いたSEM−EBSPオンライン結晶方位・粒界性格自動解析装置は、FE−SEM、TSL社製OIMハードウエア・ソフトウエアとSGI社製コンピュータで構成されるものである。このときの測定条件は、測定領域:200μm×200μm、測定ピッチ:0.5μm間隔とし、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1よりも小さい測定点は解析対象から除外した。尚、実際の組織中において、完全に対応格子関係を持つ粒界は極めてまれであり、規則関係を乱さないような転位の導入から、若干のズレが生じていることが多い。Σ値算出による許容角度として、TRERANCE(許容範囲)=K/Σ-nで、K=15、n=0.5とした。
この条件では、結晶方位差が15°未満の小角粒界は、Σ1として判定されるので、全測定点からΣ1を引いた数を大角粒界数と考え、そのうちでΣ3を示す割合を算出した。
[疲労亀裂進展速度]
ASTM E647に準拠し、コンパクト型試験片を用いて、疲労亀裂進展試験を実施することによって、疲労亀裂進展速度を求めた。この際、下記(4)式によって規定されるパリス則が成り立つ安定成長領域ΔK=20(MPa・√m)での値を代表値として評価した。尚、疲労亀裂進展速度の評価基準については、通常の鋼材が4〜6×10-5mm/cycle(ΔK=20のとき)程度の進展速度であることから、3.5×10-5mm/cycle以下を合格とした。
da/dn=C(ΔK)m…(4)
但し、a:亀裂長さ,n:繰り返し数,C,m:材料、荷重等の件で決まる定数を夫々示す。
[破面遷移温度vTrs]
機械加工によって作製したJIS4号衝撃試験片を用い、JIS Z2242に準拠した試験方法で衝撃試験を行い、JISに準拠した方法で脆性破面率(若しくは「延性破面率」)を求め、(試験温度vs脆性破面率)の曲線から、脆性破面率が50%となる遷移温度vTrsを求めた。
Figure 2007191781
表3の結果から次のように考察できる。まず試験No.1〜13のものは、本発明で規定する要件を満足するものであり、十分な疲労亀裂進展抑制効果(進展速度で3.5×10-5mm/cycle以下)が発揮されていることが分かる。
これに対して、試験No.14〜18のものでは、本発明で規定する要件のいずれかを欠くものであり、いずれも疲労進展抑制効果が発揮されていない。即ち、試験No.14、15のものでは、いずれも加速冷却を行なっていないので、Σ3対応粒界の割合が低く、疲労亀裂進展速度が速くなっている。また、試験No.16のものでは、製造条件は好ましい範囲内にあるものの、C含有量が多くなっており(表1の鋼種D)、ベイナイト生成の際の変態機構が変化し、Σ3対応粒界が減少したため、疲労亀裂進展速度が速くなっている。更に、試験No.17のものでは、圧延仕上げ温度が好ましい温度よりも低くなっており、粒内ベイナイト生成が多くなり、Σ3対応粒界が減少したため、疲労亀裂進展速度が速くなっている。試験No.18のものでは、一部フェライトが生成して(フェライト+パーライト)の組織になっており、Σ3対応粒界の割合も低く、疲労亀裂進展速度が速くなっている。
表3の結果に基づき、Σ3対応粒界の割合と疲労亀裂進展速度の関係を図2に示すが、上記割合を0.065以上とすることによって疲労亀裂進展速度が十分低くなっていることが分かる。
対応粒界を説明するための図である。 Σ3対応粒界の割合と疲労亀裂進展速度の関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. ベイナイト相を主体とする組織からなり、2つの結晶の方位差が15°以上の大角粒界のうち、Σ3対応粒界である割合が0.065以上であることを特徴とする疲労亀裂進展抑制に優れた鋼板。
  2. C:0.01〜0.10%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.6〜2.0%、Al:0.001〜0.1%を夫々含有する他、Cu:0.03〜3.0%、Cr:0.03〜3.0%、Ni:0.03〜3.0%、Mo:0.03〜1.0%、V:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%およびB:0.0003〜0.030%よりなる群から選択される1種または2種以上を含み、残部が鉄および不可避不純物である請求項1に記載の鋼板。
  3. 下記(1)式または(2)式で規定されるDI1値またはDI2値が1.5〜8.0である請求項2に記載の鋼板。
    [Mn>1.2%のとき]
    DI1=1.16×(√[C]/10)×(0.75[Si]+1)×{5.1([Mn]−1.2)+5.0}×(0.35[Cu]+1)×(0.36[Ni]+1)×(2.16[Cr]+1)×(3[Mo]+1)×(1.75[V]+1)×(200[B]+1) …(1)
    [Mn≦1.2%のとき]
    DI2=1.16×(√[C]/10)×(0.75[Si]+1)×3.33([Mn]+1)×(0.35[Cu]+1)×(0.36[Ni]+1)×(2.16[Cr]+1)×(3[Mo]+1)×(1.75[V]+1)×(200[B]+1)…(2)
    但し、[C],[Si],[Mn],[Cu],[Ni],[Cr],[Mo],[V]および[B]は、夫々C,Si,Mn,Cu,Ni,Cr,Mo,VおよびBの含有量(質量%)を示す。
  4. 不可避不純物中のPを0.025%以下(0%を含まない)、Sを0.02%以下(0%を含まない)に夫々抑制したものである請求項2または3に記載の鋼板。
  5. 更に、Ca:0.0005〜0.0030%および/または希土類元素:0.0005〜0.030%を含有するものである請求項2〜4のいずれかに記載の鋼板。
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