JP2008088485A - 溶接熱影響部の靭性および疲労亀裂進展抵抗性に優れた鋼材およびその製法 - Google Patents

溶接熱影響部の靭性および疲労亀裂進展抵抗性に優れた鋼材およびその製法 Download PDF

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Abstract

【課題】HAZ靭性に優れると共に、繰り返し応力下における疲労亀裂進展速度を抑制して疲労亀裂進展抵抗性を高めた鋼材を提供する。
【解決手段】C:0.03〜0.18%、Si:0.5%以下、Mn:0.9〜2.0%、およびN:0.003〜0.01%を含み、P:0.02%以下、S:0.015%以下、およびAl:0.01%以下を満足し、REM:0.001〜0.1%および/またはCa:0.0003〜0.02%と、Zr:0.001〜0.05%を夫々含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材であって、REMおよび/またはCaと、Zrとを単独酸化物若しくは複合酸化物として含有すると共に、軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、且つ硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)が1.5〜5.0であり、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、橋梁や高層建造物、船舶などに使用される鋼材を溶接するにあたり、熱影響を受ける部位(以下、「溶接熱影響部」または「HAZ」ということがある)の靭性と、繰り返し応力下における疲労亀裂進展抵抗性を改善した鋼材およびその製法に関するものである。
橋梁や高層建造物、船舶などに使用される鋼材に要求される特性は、近年益々厳しくなっており、とりわけ良好な靭性が求められている。これらの鋼材は、一般的に溶接にて接合されることが多いが、特にHAZは溶接時に熱影響を受けて靭性が劣化しやすいという問題がある。この靭性劣化は溶接時の入熱量が大きくなるほど顕著に現れ、その原因は溶接時の入熱量が大きくなるとHAZの冷却速度が遅くなり、焼入性が低下して粗大な島状マルテンサイトが生成することにあると考えられている。従ってHAZの靭性を改善するには、溶接時の入熱量を極力抑えればよいと考えられるが、溶接作業効率を高める上では、例えばエレクトロガス溶接、エレクトロスラグ溶接、サブマージ溶接などの溶接入熱量が40kJ/mm以上の大入熱溶接法の採用が望まれる。
大入熱溶接法を採用した場合のHAZ靭性劣化を抑制する鋼材は、既にいくつか提案されている。例えば特許文献1には、鋼材中に微細なTiNを分散再析出させることで、大入熱溶接を行なったときのHAZで生じるオーステナイト粒の粗大化を抑制し、HAZ靭性の劣化を抑えた鋼材が提案されている。しかし本発明者らが検討したところ、溶接金属が1400℃以上の高温になると、HAZのうち特に溶接金属に近接した部位(ボンド部)において、溶接時に受ける熱により上記TiNが固溶消失してしまい、HAZ靭性の劣化を十分に抑えることができないことが分かった。
また特許文献2には、母材とHAZの靭性を向上させる技術として、鋼材に含まれる酸化物と窒化物の存在形態を制御することが開示されている。この文献には、TiとZrを組み合わせて使用することにより、微細な酸化物と窒化物を生成させて母材とHAZの靭性を向上させること、また、こうした微細な酸化物と窒化物を生成させるには、製造工程においてTi、Zrの順に添加すればよいことが開示されている。しかし本発明者らが検討したところ、HAZの靭性を更に高めるには酸化物量を増やせばよいが、上記特許文献2の技術において、酸化物量を増加させるためにTiやZrを多量に添加すると、TiやZrなどの炭化物が形成され、鋼材(母材)の靭性が却って低下することが分かった。
本発明者らは、溶接時に高温の熱影響を受けた場合でもHAZの靭性が劣化しない鋼材を特許文献3に先に提案している。この鋼材は、La23−SiO2系酸化物やCe23−SiO2系酸化物、La23−Ce23−SiO2系酸化物などの複合酸化物を鋼材中に分散させたものであり、この複合酸化物は、溶鋼中では液状で存在するため鋼中に微細分散し、しかも溶接時には熱影響を受けても固溶消失しないため、HAZの靭性向上に寄与する。上記特許文献3には、上記複合酸化物を生成させるため、溶存酸素量を調整した溶鋼へLaやCeを添加し、次いでSiを添加すればよいことも開示している。また特許文献3には、鋼材にTiを含有させて鋼材組織中にTiNを析出させることにより、HAZの靭性が更に高められること、またこうしたTiNを生成させるには、上記複合酸化物が生成した溶鋼へTiを添加すればよいことも開示している。
ところで、上記各種構造材料では、繰り返し応力が加わるものが少なくないことから、構造材料の安全性を確保するためには、HAZ靭性ばかりでなく、鋼材には疲労特性が良好であることが設計上極めて重要である。
鋼材の疲労過程は、応力集中部での亀裂の発生と、一旦発生した亀裂の進展という2つの過程に大別して考えられる。そして、通常の機械部品では巨視的な亀裂の発生が、使用限界として考えられており、亀裂の進展を許容する設計は殆どされていない。しかしながら、溶接構造物においては、疲労亀裂が発生しても直ちに破壊に至ることはなく、この亀裂が最終段階に至る前に定期検査などで発見され、亀裂の入った部分が修理されるか、或は使用期間内に亀裂が最終破壊に至る長さまでに成長しないならば、亀裂があっても構造物は十分に使用に耐え得ることになる。
溶接構造物では、応力集中部としての溶接止端部が多数存在しており、疲労亀裂の発生を完全に防止することは技術的にも不可能に近く、また経済的にも得策とはいえない。即ち、溶接構造物の疲労寿命を良好にするためには、亀裂の発生そのものを防止するよりも、亀裂が既に存在している状態からの亀裂進展寿命を大幅に延長することが有効であり、そのためには鋼材の亀裂の進展速度をできるだけ遅くするような設計が重要な事項となる。
疲労亀裂進展の速度を抑制して疲労亀裂進展抵抗性を高める技術としてもこれまで様々なものが提案されており、例えば特許文献4には、硬質相と軟質相の2相組織とし、軟質相/硬質相境界における亀裂の屈曲、停留、分岐によって亀裂進展速度を抑制する技術が提案されている。しかしながら、この技術では溶接部のHAZ靭性の改善については考慮されておらず、更に安全性を高めるためには、溶接熱影響部の靭性と疲労亀裂進展抵抗性に優れた鋼材の実現が切望されている。
特公昭55−26164号公報 特開2003−213366号公報 特開2005−48265号公報 特許第3298544号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、特に入熱量が40kJ/mm以上の溶接を行った場合のHAZ靭性に優れると共に、繰り返し応力下における疲労亀裂進展速度を抑制して疲労亀裂進展抵抗性を高めた鋼材、およびその製法を提供することにある。
即ち、上記課題を解決することのできた本発明に係る鋼材とは、
C:0.03〜0.18%(「質量%」の意味。以下同じ)、
Si:0.5%以下(0%を含まない)、
Mn:0.9〜2.0%、および
N :0.003〜0.01%を含み、
P :0.02%以下(0%を含まない)、
S :0.015%以下(0%を含まない)、および
Al:0.01%以下(0%を含まない)を満足し、
REM:0.001〜0.1%および/またはCa:0.0003〜0.02%と、
Zr:0.001〜0.05%を夫々含有し、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材であって、
REMおよび/またはCaと、Zrとを単独酸化物若しくは複合酸化物として含有すると共に、軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、且つ硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)が1.5〜5.0であり、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下である点に要旨を有する。
前記鋼材は、該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定し、単独酸化物として質量換算したときに、REMの酸化物および/またはCaOの合計が5%以上で、且つZrO2が5%以上を満足することが好ましい。
前記鋼材は、更に他の元素として、Ti:0.08%以下(0%を含まない)を含むと共に、前記Tiを単独酸化物または複合酸化物として含有することが好ましい。Tiを含むことによって溶接熱影響部の靭性を一層向上させることができるからである。上記の通り鋼材がTiを含む場合には、鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定し、単独酸化物として質量換算したときに、0.3%以上であることが好ましい。
前記鋼材は、更に他の元素として、
Cu:2%以下(0%を含まない)、
Ni:3.5%以下(0%を含まない)、
Cr:3%以下(0%を含まない)、
Mo:1%以下(0%を含まない)、
Nb:0.25%以下(0%を含まない)、
V :0.1%以下(0%を含まない)、および
B :0.005%以下(0%を含まない)
よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含むものが好ましく、こうした元素を含有することで母材の強度を高めることができる。
本発明の鋼材において、前記軟質相は、フェライト、焼戻しベイナイトおよび焼戻しマルテンサイよりなる群から選ばれる1種以上であり、硬質相は、ベイナイトおよび/またはマルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)が挙げられる。
本発明に係る鋼材は、例えば溶存酸素量を0.0020〜0.010%の範囲に調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とZrを添加すれば製造できる。上記鋼材が特にTiを含む場合には、溶存酸素量を0.0020〜0.010%の範囲に調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、TiとZrを添加することが好ましい。この場合には、上記溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とZrを添加するに先立って、Tiを添加することが好ましい。
本発明によれば、大入熱溶接において1400℃レベルの高温に達しても鋼材中に固溶消失しない組成の酸化物を、鋼材中に分散させるため、小〜中入熱溶接に限らず大入熱溶接においても、溶接熱影響部(HAZ)の靭性劣化を防止することができる。また、鋼材の組織を軟質相と硬質相とからなる複合組織とし、且つ硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)を所定の範囲内に制御すると共に、軟質相の粒径を微細化することによって、疲労亀裂進展抵抗性にも優れた鋼材とすることができた。
本発明者らは、まず、HAZの靭性を高めるべく、上記特許文献3とは異なる組成の酸化物を鋼材中に分散させることによってHAZ靭性の向上を達成できないかについて検討を重ねた。その結果、REMおよび/またはCaと、Zrを鋼材に複合添加し、該鋼材中にREMおよび/またはCaと、Zrとを単独酸化物若しくは複合酸化物として含有するように調整すれば、溶接熱影響部の靭性を高めることができること、またこうした成分系に更にTiを複合添加することによって、Tiを単独酸化物または複合酸化物として含有するように調整すれば、HAZ靭性が一層向上することを見出した。更に、上記酸化物によるHAZ靭性の向上を阻害させることなく鋼材の疲労亀裂進展抵抗性と高めるためには、硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)を所定の範囲内に制御した複合組織とすると共に、軟質相の粒径を微細化すれば、その特性が改善されることを見出し、本発明を完成した。以下、上記本発明について詳述する。
まず、本発明の鋼材は、REMおよび/またはCaと、Zrとを単独酸化物若しくは複合酸化物として含有するものである。この様な酸化物が含まれるようにすれば、溶接時に熱影響を受けて1400℃レベルの高温になっても上記酸化物は固溶消失しないため、溶接時のHAZにおいてオーステナイト粒の粗大化を防止することができ、その結果として、REMやCa、Zrを夫々単独添加して酸化物を形成する場合よりもHAZ靭性をより改善することができる。
しかも上記単独酸化物あるいは複合酸化物を組み合わせて鋼材中に含有させれば、鋼材中に含まれる全酸化物の絶対量を増大させることができ、鋼材(母材)の靭性劣化の原因となるREMの硫化物やCaの硫化物、或いはZr炭化物の生成を防止でき、結果として母材の靭性劣化を抑えつつHAZ靭性を向上させることができる。
本発明の鋼材は、(a)REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2を含有するか、あるいは(b)REMおよび/またはCaと、Zrを含む複合酸化物を含有するか、(c)REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2を含有すると共に、REMおよび/またはCaと、Zrを含む複合酸化物を含有するものであればよい。REMおよび/またはCaと、Zrを含む複合酸化物とは、例えばREMとZrを含む複合酸化物、CaとZrを含む複合酸化物、REMとCaとZrを含む複合酸化物などが挙げられる。
本発明の鋼材は、上述した酸化物の他に、更にTiの酸化物を含有することが好ましい。即ち、前記鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定し、単独酸化物として質量換算したときに、Ti23やTi35,TiO2含有するものであればよい。Tiの酸化物を含有することで、鋼材中に分散する酸化物量を更に増大させることができるため、HAZ靭性を一層向上させることができる。
上記Tiの酸化物は、鋼材中に単独酸化物(Ti23やTi35,TiO2)として含有されていてもよいし、例えば上記複合酸化物(即ち、REMとZrを含む複合酸化物、CaとZrを含む複合酸化物、REMとCaとZrを含む複合酸化物)に包含されて複合酸化物として含有していてもよい。
上記鋼材は、該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定し、単独酸化物として質量換算したときに、REMの酸化物および/またはCaOの合計が5%以上で、且つ全酸化物に占めるZrO2が5%以上を満足することが好ましい。その理由は、HAZの靭性向上に寄与する酸化物量を確保するためである。REMの酸化物および/またはCaOの合計は10%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。一方、ZrO2は10%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。
上記鋼材がTiの酸化物を含有する場合は、該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定し、単独酸化物として質量換算したときに、Tiの酸化物が0.3%以上を満足することが好ましい。より好ましくは1%以上、更に好ましくは3%以上、特に好ましくは5%以上、最も好ましくは10%以上である。尚、Tiの酸化物は、鋼中でTi23やTi35,TiO2として存在するが、鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定し、全てのTiの酸化物をTi23として換算した値が上記範囲を満足していればよい。
本発明の鋼材は、該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定し、単独酸化物として質量換算したときに、REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2およびTiの酸化物(Ti23換算)の合計が55%以上であることが好ましい。これらの酸化物の合計が55%未満では、HAZ靭性向上に寄与する酸化物量が不足し、HAZ靭性を充分に改善できないからである。より好ましくは60%以上、更に好ましくは65%以上である。
尚、全酸化物の組成の残りの成分は特に限定されないが、単独酸化物として換算したときに、例えばSiO2やAl23、MnOであればよい。SiO2やAl23、MnO以外の「その他」の成分は5%未満に抑えることが好ましい。
鋼材に含まれる酸化物の組成は、鋼材の断面を例えばEPMA(Electron Probe X−ray Micro Analyzer:電子線マイクロプローブX線分析計)で観察し、観察視野内に認められる介在物を定量分析すれば測定できる。EPMAの観察は、例えば加速電圧を20kV,試料電流を0.01μA,観察視野面積を1〜5cm2とし、介在物の中央部での組成を特性X線の波長分散分光により定量分析する。
分析対象とする介在物の大きさは、最大径が0.2μm以上のものとし、分析個数は少なくとも100個とする。
分析対象元素は、Al,Mn,Si,Ti,Zr,Ca,La,CeおよびOとし、既知物質を用いて各元素のX線強度と元素濃度の関係を予め検量線として求めておき、分析対象とする介在物から得られたX線強度と前記検量線から分析対象とする介在物に含まれる元素濃度を定量し、酸素含量が5%以上の介在物を酸化物とする。但し、一つの介在物から複数の元素が観測された場合には、それらの元素の存在を示すX線強度の比から各元素の単独酸化物に換算して酸化物の組成を算出する。本発明の鋼材では、こうして個々の酸化物について得られた定量結果を平均したものを酸化物の平均組成とする。
次に、本発明の鋼材(母材)における成分組成について説明する。本発明の鋼材は、REM:0.001〜0.1%および/またはCa:0.0003〜0.02%と、Zr:0.001〜0.05%を含有するところに特徴がある。こうした範囲を定めた理由は以下の通りである。
REM、CaおよびZrは、鋼材中にREMの単独酸化物やCaの単独酸化物(CaO)、Zrの単独酸化物(ZrO2)、或いはREMおよび/またはCaと、Zrとの複合酸化物を形成してHAZの靭性向上に寄与する元素である。本発明の鋼材では、REMとCaは夫々単独で用いても併用してもよい。
REMを含有させる場合は、0.001%以上とすべきであり、好ましくは0.006%以上、より好ましくは0.010%以上である。しかし過剰に添加すると、REMの硫化物が生成して母材の靭性が劣化するため、0.1%以下に抑えるべきである。好ましくは0.09%以下であり、より好ましくは0.08%以下とする。なお、本発明においてREM(希土類元素)とは、ランタノイド元素(LaからLnまでの15元素)およびSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味であり、これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、より好ましくはLaおよび/またはCeを含有させるのがよい。
Caを含有させる場合は、0.0003%以上とすべきであり、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0008%以上である。しかし過剰に添加すると、粗大なCaの硫化物が生成して母材の靭性が劣化するため、0.02%以下に抑えるべきである。好ましくは0.015%以下であり、より好ましくは0.01%以下とする。
Zrは、0.001%以上含有させるべきであり、好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.005%以上である。しかし過剰に添加すると、粗大なZrの炭化物が生成して母材の靭性が劣化するため、0.05%以下に抑えるべきである。好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.03%以下とする。
本発明の鋼材は、REMおよび/またはCaと、Zrを含む他、基本元素として、C:0.03〜0.18%、Si:0.5%以下(0%を含まない)、Mn:0.9〜2.0%、およびN:0.003〜0.01%を含むものである。このような範囲を定めた理由は以下の通りである。
Cは、鋼材(母材)の強度を確保するために欠くことのできない元素であり、こうした効果を発揮させるには、0.03%以上含有させる必要がある。好ましくは0.04%以上であり、より好ましくは0.05%以上である。しかし0.18%を超えると、溶接時にHAZに島状マルテンサイトが多く生成してHAZの靭性劣化を招くばかりでなく、溶接性にも悪影響を及ぼす。従ってCは0.18%以下、好ましくは0.15%以下に抑えるのがよい。
Siは、脱酸作用を有すると共に鋼材(母材)の強度向上に寄与する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、0.02%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上含有させるのがよい。しかし0.5%を超えると、鋼材(母材)の溶接性や母材靭性が劣化するため、0.5%以下に抑える必要がある。好ましくは0.45%以下であり、より好ましくは0.4%以下に抑える。尚、HAZの更なる高靭性が求められる場合、Siは0.3%以下に抑えるのがよい。
Mnは、鋼材(母材)の強度向上に寄与する元素であり、こうした効果を有効に発揮させるには、0.9%以上含有させる必要がある。好ましくは1.0%以上である。しかし、2.0%を超えて過剰に含有させるとHAZ靭性が劣化するので、Mn量は2.0%以下とする。好ましくは1.70%以下である。
Nは、窒化物(例えば、ZrNやTiNなど)を析出する元素であり、該窒化物は溶接時にHAZに生成するオーステナイト粒の粗大化を防止してフェライト変態を促進するため、HAZの靭性を向上させるのに寄与する。こうした効果を有効に発揮させるため、0.003%以上含有させる。好ましくは0.004%以上である。Nは多いほどオーステナイト粒の微細化が促進されるため、HAZの靭性向上に有効に作用する。しかし0.01%を超えると、固溶N量が増大して母材の靭性が劣化する。従ってNは0.01%以下に抑える必要があり、好ましくは0.009%以下、より好ましくは0.008%以下とする。
本発明の鋼材は、上記元素を含むほか、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.015%以下(0%を含まない)およびAl:0.01%以下(0%を含まない)を満たすものである。このような範囲を定めた理由は以下の通りである。
Pは、偏析し易い元素であり、特に鋼材中の結晶粒界に偏析して靭性を劣化させる。従ってPは0.02%以下に抑制する必要があり、好ましくは0.018%以下、より好ましくは0.015%以下とする。
Sは、Mnと結合して硫化物(MnS)を生成し、母材の靭性や板厚方向の延性を劣化させる有害な元素である。またSは、LaやCeと結合してLaSやCeSを生成し、酸化物の生成を阻害する。従ってSは0.015%以下に抑えるべきであり、好ましくは0.012%以下、より好ましくは0.008%以下、特に0.006%以下とする。
Alは、脱酸力の強い元素であり、過剰に添加すると酸化物を還元して所望の酸化物を生成し難くなる。従ってAlは0.01%以下に抑える必要があり、好ましくは0.0090%以下、より好ましくは0.0080%以下とする。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避的不純物であり、該不可避的不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素(例えば、MgやAs,Seなど)の混入が許容され得る。また、更に下記元素を積極的に含有させることも可能である。
〈Ti:0.08%以下(0%を含まない)〉
Tiは、鋼材中にTiの酸化物を生成してHAZの靭性向上に寄与する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Tiは0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.007%以上、更に好ましくは0.01%以上とする。しかし過剰に添加すると、酸化物が多量に生成し過ぎて鋼材(母材)の靭性を劣化させるため、0.08%以下に抑えるべきである。好ましくは0.07%以下であり、より好ましくは0.06%以下とする。
本発明の鋼材には、強度を高めるために、Cu:2%以下(0%を含まない)、Ni:3.5%以下(0%を含まない)、Cr:3%以下(0%を含まない)、Mo:1%以下(0%を含まない)、Nb:0.25%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびB:0.005%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含有させることも有効である。こうした範囲を定めた理由は以下の通りである。
〈Cu:2%以下(0%を含まない)〉
Cuは、鋼材を固溶強化させる元素であり、こうした効果を有効に発揮させるには、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、更に好ましくは0.2%以上である。特に0.6%以上含有させると、固溶強化のほか、時効析出強化も発揮し、大幅な強度向上が可能となる。しかし2%を超えて含有させると、鋼材(母材)の靭性が低下するため、Cuは2%以下に抑えるのがよい。好ましくは1.8%以下であり、より好ましくは1.6%以下とする。
〈Ni:3.5%以下(0%を含まない)〉
Niは、鋼材の強度を高めると共に、鋼材の靭性を向上させるのに有効に作用する元素であり、こうした作用を発揮させるには、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、更に好ましくは0.2%以上とする。Niは多いほど好ましいが、高価な元素であるため経済的観点から3.5%以下に抑えることが好ましい。より好ましくは3.3%以下であり、更に好ましくは3%以下とする。
〈Cr:3%以下(0%を含まない)〉
Crを添加して強度を高めるには、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.03%以上である。しかし3%を超えると溶接性が劣化するため、Crは3%以下に抑えることが好ましい。より好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1%以下である。
〈Mo:1%以下(0%を含まない)〉
Moを添加して強度を高めるには、0.01%以上含有させるのが望ましい。より好ましくは0.02%以上であり、更に好ましくは0.03%以上含有させるのがよい。但し、1%を超えると溶接性を悪化させるためMoは1%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.9%以下であり、更に好ましくは0.8%以下に抑えることが推奨される。
〈Nb:0.25%以下(0%を含まない)〉
Nbを添加して強度を高めるには、0.005%以上含有させるのが好ましい。より好ましくは0.01%以上であり、更に好ましくは0.03%以上である。しかし0.25%を超えると炭化物(NbC)が析出して母材靭性が劣化するので、Nbは0.25%以下に抑えるのが好ましい。より好ましくは0.23%以下であり、更に好ましくは0.20%以下とする。
〈V:0.1%以下(0%を含まない)〉
Vを添加して強度を高めるには、0.005%以上含有させるのが望ましい。より好ましくは0.01%以上、更に好ましくは0.03%以上含有させるのがよい。しかし0.1%を超えると、溶接性が悪化する共に母材の靭性が劣化するため、Vは0.1%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.06%以下に抑えるのがよい。
〈B:0.005%以下(0%を含まない)〉
Bは、鋼材の強度を高めると共に、溶接時に加熱されたHAZが冷却される過程において鋼中のNと結合してBNを析出し、オーステナイト粒内からのフェライト変態を促進させる。こうした効果を有効に発揮させるには、0.0003%以上含有させるのが好ましい。より好ましくは0.0005%以上であり、更に好ましくは0.0008%以上である。しかし0.005%を超えると、鋼材(母材)の靭性が劣化するため、Bは0.005%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.004%以下であり、更に好ましくは0.003%以下とするのがよい。
一方、疲労亀裂は、通常の安定成長域では、応力に対して直角方向に進むことになる。こうした疲労亀裂の進展機構を考慮し、亀裂進展に対する抵抗性を高めるためには、鋼材の組織を複合組織とし、軟質相と硬質相の境界にて亀裂を迂回(屈曲)、停留させることによって、亀裂進展速度を低下させ、疲労寿命を延ばせ得るとの着想が得られた。そして、硬質相(以下、「第2相」と呼ぶことがある)における亀裂の屈曲には、一定の硬度差が必要となる。但し、硬度の差が大きくなり過ぎると、硬質相が脆性破壊を起こし、亀裂は硬質相内を進展することになるので、その効果は却って低下することになる。こうした観点から、本発明の鋼材においては、硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)は1.5〜5.0の範囲内に制御する必要がある。
即ち、上記比(Hv1/Hv2)の値を1.5以上とすることによって、亀裂先端の転位の移動時における軟質相と硬質相の界面亀裂先端の塑性域が変化し、屈曲、停留、分岐が起こるので、亀裂進展速度が低下することになる。但し、硬質相の硬度が高くなり過ぎると、上述の如く、硬質相が亀裂先端の応力により脆性破壊を起こすようになり、亀裂進展抑制効果が低下することになるので、上記比(Hv1/Hv2)の値を5.0以下とする必要がある。この比の値の好ましい下限は1.7であり、より好ましくは2.0以上であり、好ましい上限は4.5であり、より好ましくは4.0以下である。上記のような比(Hv1/Hv2)の値を制御するには、硬質相および軟質相の割合を適切に制御するのが良く、こうした観点から軟質相の割合は20〜90面積%とするのが好ましい。尚、以下では、上記比(Hv1/Hv2)を「硬さ比」と呼ぶことがある。
本発明の鋼材における軟質相とは、フェライト、焼戻しベイナイトおよび焼戻しマルテンサイよりなる群から選ばれる1種以上が挙げられ、硬質相としては、ベイナイトおよび/またはマルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)が挙げられる。また本発明の鋼材の組織は、第1相としての軟質相と第2相としての硬質相を含むものであればよいが、必ずしも2相組織である必要はなく、上記した各相を3種或は4種以上を含む複合組織であっても良い。但し、パーライトは、ミクロ的には軟質のフェライトと脆性破壊し易い硬質のセメンタイトが縞状に存在する組織であり、上記効果が得られにくいので、いずれの相にも含まれないものである。こうした観点から、パーライトは5面積%以下とすることが好ましい。
亀裂進展は、上記硬質相/軟質相境界に加えて、粒界においても屈曲、停留、分岐を起こすことで亀裂進展速度が低下することになる。軟質相の粒径が粗大になると、亀裂進展の抵抗となる粒界に衝突する頻度が低下するので、亀裂進展速度が低下しないことになる。本発明の鋼材においては、例えば、過冷を行なうことによって、核生成サイトが増加し、フェライトが微細化することに伴い、硬質相も微細に分散することになる。これによって、亀裂が進展する際に硬質相に遭遇する確率が平均化して、遭遇する頻度が上昇するので、亀裂進展速度が低下するという効果が得られることになる。こうした観点から、本発明の鋼材においては、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下であることも必要である(粒径測定方法については、後述する)。この軟質相の粒径は、好ましくは15μm以下とするのが良い。
次に、本発明の鋼材を製造するに当たり、好適に採用できる製法について説明する。上述の通り、鋼材中に、REMおよび/またはCaと、Zrとを単独酸化物若しくは複合酸化物として適量含有させるには、後記の実施例から明らかなように、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを添加する直前の溶存酸素量を適切に制御する、即ち、溶存酸素量を適切に制御した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加することが大変有効である。該方法で製造すれば、REMやCa、Zrの添加量をある程度多くしても上記酸化物を確実に形成させることができ、結果としてREMの硫化物やCaの硫化物、或いはZrの炭化物の生成を防止することができるからである。
このとき上記溶存酸素量が0.0020%未満では、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加しても、酸素量不足になるため、HAZの靭性向上に寄与する酸化物量を確保することができず、しかも酸化物を形成できなかったREMやCaが硫化物を形成したり、Zrが炭化物を形成して母材の靭性を劣化する。上記元素を複合添加する前の溶存酸素量は、0.0025%以上に調整することが好ましく、より好ましくは0.0030%以上である。しかし溶存酸素量が0.010%を超えていると、溶鋼中の酸素量が多すぎるため、溶鋼中の酸素と上記元素の反応が激しくなり溶製作業上好ましくないばかりか、粗大なREMの酸化物、Caの酸化物やZrO2が生成する。従って溶存酸素量は0.010%以下に抑えるべきであり、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.007%以下とする。
上記REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加した後は、合金元素を添加して鋼材の成分を調整すればよい。
尚、上記溶存酸素量を調整した溶鋼へ上記元素を添加するに当たっては、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加すればよく、例えばREMとCaを複合添加する場合には、(a)溶存酸素量を調整した溶鋼へREMとCaとZrを添加した後、合金元素を添加して鋼材の成分を調整してもよいし、(b)溶存酸素量を調整した溶鋼へREM(あるいはCa)とZrを添加した後、Ca(あるいはREM)以外の合金元素を添加して鋼材の成分を調整し、次いでCa(あるいはREM)を添加してもよい。
上記溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくと1種の元素と、Zrを複合添加する手順は特に限定されず、例えば(a)REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を添加した後に、Zrを添加してもよいし、(b)Zrを添加した後に、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を添加してもよいし、(c)REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを同時に複合添加してもよい。REMとCaを複合添加する場合には、(d)REM(あるいはCa)を添加した後に、Zrを添加し、次いでCa(あるいはREM)を添加してもよいし、(e)REMとCaとZrを同時に複合添加してもよい。
本発明の鋼材がTiを含む場合は、溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加した後に、(a)鋼材の成分調整する際に併せてTiを添加してもよいし、(b)鋼材の成分調整した後に、Tiを添加してもよい。好ましくは溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、TiとZrを添加するのが好ましい。
鋼材がTiを含む場合は、溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とZrを添加するに先立って、Tiを添加することが推奨される。溶存酸素量を調整した溶鋼へ、Tiを添加すれば、まずTi23が形成されるが、このTi23は溶鋼との界面エネルギーが小さいため、形成されたTi23のサイズは微細になる。次いでREMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加することによってREMの酸化物やCaO、ZrO2が、上記Ti23を生成核として成長するため、結果的に粒子の個数が増大し、溶接時のHAZにおけるオーステナイト粒の粗大化抑制効果が大きくなる。
ところで、転炉や電気炉で一次精錬された溶鋼中の溶存酸素量は、通常0.010%を超えている。そこで本発明の製法では、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加する前、或いはTiを添加する前に、溶鋼中の溶存酸素量を上記範囲に調整する必要がある。溶存酸素量を調整する方法としては、例えばRH式脱ガス精錬装置を用いて真空C脱酸する方法や、SiやMn,Ti,Alなどの脱酸性元素を添加する方法などが挙げられ、勿論これらの方法を適宜組み合わせて溶存酸素量を調整しても良い。また、RH式脱ガス精錬装置の代わりに、取鍋加熱式精錬装置や簡易式溶鋼処理設備などを用いて溶存酸素量を調整しても良い。この場合、真空C脱酸による溶存酸素量の調整はできないため、溶存酸素量の調整にはSi等の脱酸性元素を添加する方法を採用すれば良い。Si等の脱酸性元素を添加する方法を採用するときは、転炉から取鍋へ出鋼する際に脱酸性元素を添加しても構わない。
溶鋼へ添加するREMやCa,Zr,Tiの形態は特に限定されず、例えば、REMとして、純Laや純Ce,純Yなど、或いは純Ca,純Zr,純Ti、更にはFe−Si−La合金,Fe−Si−Ce合金等のREM合金、Fe−Si−Ca合金,Fe−Ca合金,Ni−Ca合金等のCa合金、Fe−Si−La−Ce合金等のREM−Ca合金等を添加すればよい。また、溶鋼へミッシュメタルを添加してもよい。ミッシュメタルとは、セリウム族希土類元素の混合物であり、具体的には、Ceを40〜50%程度,Laを20〜40%程度含有している。但し、ミッシュメタルには不純物としてCaを含むことが多いので、ミッシュメタルがCaを含む場合は本発明で規定する範囲を満足する必要がある。
本発明の鋼材においては、軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、この硬質相のビッカース硬さHvと軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)を所定範囲に制御すると共に、軟質相の粒径の微細化を図るものであるが、このような組織を得るには、例えば下記に示す(1)〜(3)の方法に従えば良い。尚、下記方法で示す温度は、t(板厚)/4部位で管理したものである(管理方法については後述する)。
(1)上記のような化学成分組成を有する鋼片を、950℃以上、1250℃以下に加熱し、加熱温度〜Ar3変態点の温度範囲で圧延を終了し、20℃/秒以上の冷却速度で1回目の加速冷却を行い、600〜700℃まで冷却を行った後、当該温度域で10〜100秒保持し(0.5℃/秒以下の冷却速度で放冷しても良い)、その後400℃以下まで5℃/秒以上の冷却速度で2回目の加速冷却を実施する。この方法では、圧延後に冷却を行い、組織を過冷状態とすることによって、核生成サイトを増加させ、フェライトが微細化するに伴い硬質相も微細に分散し、硬質相と軟質相の複合組織とすることができる。この方法で各条件の範囲設定理由は次の通りである。
加熱温度:950℃未満では、圧延温度が低くなり過ぎ、1250℃を超えるとオーステナイト粒が粗大化し、母材靭性が劣化するため、950〜1250℃で加熱する必要がある。
圧延温度:圧延温度がAr3変態点未満となると、組織に異方性が生じ、衝撃吸収エネルギーが低下する恐れがある上、製造上は圧延負荷が高まり、生産性が低下することになる。
1回目の加速冷却速度:加速冷却を行なうことによって、γが過冷状態となり、低温まで変態が抑制される。その後、低温で変態することで、変態の駆動力が高く、組織が均一微細なフェライトが生成する。冷却速度が20℃/秒未満では、加速冷却中に一部変態が生じ、組織の均一微細化が達成されないことになる。
冷却停止温度:停止温度が600℃未満では、フェライトがアシキュラー状になってしまう、或はベイナイト組織になってしまうことになる。アシキュラー状のフェライトは、靭性は良いが、ポリゴナルフェライトに対して硬度が高く、第2相との硬度差が減少してしまうため、相境界における亀裂進展抑制効果は少ない。その一方で、冷却停止温度が700℃を超えると、所定の保持温度では変態が遅く、十分なフェライト分率(例えば、20面積%以上)が確保できなくなる上、結晶粒が粗大になり、靭性が劣化してしまうことになる。
冷却後の保持時間:この保持時間が10秒未満では変態が十分でなく、フェライト分率が十分でない上、Cが未反応のγに濃縮する余裕がなくなってしまう。また保持時間が100秒を超えると、生産性が低下すると共に、平衡状態に近づき、パーライトの生成が見られるようになる。このパーライトは、フェライトとセメンタイトが層状組織となっているものであるが、セメンタイトは脆く、亀裂先端で脆性破壊を起こすので、亀裂進展抑制効果が小さいものとなる。
2回目の加速冷却速度:この冷却速度が5℃/秒未満では、冷却段階で未変態のオーステナイトからフェライト+パーライトが生成し、硬質相の硬度が十分とならない。
最終冷却停止温度:このときの停止温度が400℃を超えると、自己焼き戻しによって、硬質相が軟化してしまい、硬度が十分に確保できなくため、冷却停止温度は400℃以下とする必要があり、好ましくは300℃以下とするのが良い。
(2)上記のような化学成分組成を有する鋼片を、950℃以上、1250℃以下に加熱し、加熱温度〜Ar3変態点の温度範囲で圧延を終了し、(Ar3変態点−30℃)〜(Ar1変態点+30℃)の温度範囲まで空冷するか、或は5℃/秒以下の冷却速度で冷却した後、5℃/秒以上の冷却速度で加速冷却を実施する。この方法で各条件の範囲設定理由は次の通りである。
加熱温度:950℃未満では、圧延温度が低くなり過ぎ、1250℃を超えるとオーステナイト粒が粗大化し、母材靭性が劣化するため、950〜1250℃で加熱する必要がある。
圧延温度:圧延温度がAr3変態点未満となると、組織に異方性が生じ、衝撃吸収エネルギーが低下する恐れがある上、製造上は圧延負荷が高まり、生産性が低下することになる。
冷却速度:(Ar3変態点−30℃)〜(Ar1変態点+30℃)の温度範囲まで空冷するか、或は5℃/秒以下の冷却速度で冷却加速冷却を行なうことによって、組織をフェライト(α)+γとし、その後の加速冷却でCが濃縮した未変態γから硬質相を生成させることで、軟質相+硬質相の複合組織とすることができる。冷却速度を5℃/秒よりも速くして冷却を行なうと、保持時間をとらない場合には、未変態γへのCの濃縮の時間が少なく、その後の加速冷却によっても十分な硬質相が得られないばかりか、板厚方向の均一性が低下することになる。
冷却停止温度:停止温度が(Ar3変態点−30℃)を超えると、フェライトが殆ど生成しておらず、(Ar1変態点+30℃)未満では、殆どがフェライト+パーライトに変態が終了しており、軟質相+硬質相が得られなくなる。
2回目の冷却速度:この冷却速度が5℃/秒未満では、冷却段階で未変態のオーステナイトからフェライト+パーライトが生成し、硬質相の硬度が十分とならない。
最終冷却停止温度:このときの停止温度が400℃を超えると、自己焼き戻しによって、硬質相が軟化してしまい、硬度が十分に確保できなくため、冷却停止温度は400℃以下とする必要があり、好ましくは300℃以下とするのが良い。
(3)上記のような化学成分組成を有する鋼片を、950℃以上、1250℃以下に加熱し、加熱温度〜Ar3変態点の温度範囲で圧延を終了し、10℃/秒以上の冷却速度で400℃以下まで1回目の加速冷却を行い、その後(Ac1変態点+30℃)〜(Ac3変態点−30℃)の温度範囲まで再加熱し、その後5℃/秒以上の冷却速度で2回目の加速冷却を実施する。この方法では、再加熱前の組織を焼入れ組織とすることによって、組織単位を微細にすることができ、Ac変態点以上に再加熱することで、高温焼戻しベイナイト、若しくはマルテンサイト+オーステナイト組織となる。焼戻しベイナイト、マルテンサイトから炭化物が逆変態オーステナイトへ拡散し、焼戻しベイナイト、マルテンサイトの硬度が大きく下がると共に、その後の加速冷却によってCが濃縮したγが硬質相に変態することで、硬質相と軟質相の複合組織とすることができる。この方法で各条件の範囲設定理由は次の通りである。
加熱温度:950℃未満では、圧延温度が低くなり過ぎ、1250℃を超えるとオーステナイト粒が粗大化し、母材靭性が劣化するため、950〜1250℃で加熱する必要がある。
圧延温度:圧延温度がAr3変態点未満となると、組織に異方性が生じ、衝撃吸収エネルギーが低下する恐れがある上、製造上は圧延負荷が高まり、生産性が低下することになる。
冷却速度、冷却停止温度:冷却速度が10℃/秒未満であったり、冷却停止温度が400℃を超えると、組織が焼戻し組織にならないため、粒径が粗大になり、靭性とともに疲労亀裂進展抵抗性が低下する。
再加熱温度:(Ac1変態点+30℃)未満では、α→γ変態が殆ど起こらず、十分な硬質相を確保することができない。(Ac3変態点+30℃)を超えると、再加熱後に殆どがα→γ変態してしまい、その後の焼入れで全て硬質相となってしまう。
2回目の加速冷却速度:この冷却速度が5℃/秒未満では、硬質相の硬度が十分とならない。
最終冷却停止温度:このときの停止温度が400℃を超えると、自己焼き戻しによって、硬質相が軟化してしまい、硬度が十分に確保できなくため、冷却停止温度は400℃以下とする必要があり、好ましくは300℃以下とするのが良い。
こうして得られる本発明の鋼材は、例えば橋梁や高層建造物、船舶などの構造物の材料として使用でき、小〜中入熱溶接はもとより大入熱溶接においても、溶接熱影響部の靭性劣化を防ぐことができると共に、優れた疲労亀裂進展抵抗性を確保することができる。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
溶銑を240トン転炉で一次精錬した後、該転炉から取鍋へ出鋼し、成分調整および温度調整しながら二次精錬を行った。ここで、取鍋では、下記表1に示す脱酸方法で、下記表1に示す溶存酸素量に調整した。その後、下記表1に示す順序で元素を添加した。次いで必要に応じて残りの合金元素を添加して最終的に下記表2に示す組成に調整した。尚、二次精錬にはRH式脱ガス精錬装置等を用いて脱Hや脱Sなどを行なった。また、表1における化学成分No.16の溶存酸素量「−」は、定量限界未満であることを示す。
尚、表1において、LaはFe−La合金の形態で、CeはFe−Ce合金の形態で、REMはLaを50%程度とCeを25%程度含有するミッシュメタルの形態で、CaはNi−Ca合金、またはCa−Si合金、またはFe−Ca圧粉体の形態で、ZrはZr単体で、TiはFe−Ti合金の形態で、夫々添加した。
表2中「−」は元素を添加していないことを示しており、「未満」は元素を添加していないが不可避的に含まれていたため、定量限界未満の範囲で検出されたことを意味している。
Figure 2008088485
Figure 2008088485
成分調整後の溶鋼を、連続鋳造機でスラブに鋳造し、その後熱間圧延を施して各種鋼板を製作した。尚前記表2に示した変態点(Ar3、Ar、Ac、Ac3)は下記(1)〜(4)式によって求められた値である。このときの製造条件を下記表3、4に示す。尚、このときの温度については、t/4(tは板厚)の位置における温度で管理したものであり、詳細な温度管理の手順は下記の通りである。
Ar3=868―369・[C]+24.6・[Si]−68.1・[Mn]−36.1
・[Ni]−20.7・[Cu]−24.8・[Cr]+29.6・[Mo]+
190・[V] …(1)
Ar1=630.5+51.6・[C]+122.4・[Si]−64.8・[Mn]
−57.5・[Mo] …(2)
Ac1=723−14・[Mn]+22・[Si]−14.4・[Ni]+23.3・
[Cr] …(3)
Ac3=908−223.7・[C]+30.49・[Si]−34.3・[Mn]
+37.92・[V]−23.5・[Ni] …(4)
但し、[C],[Si],[Mn],[Ni],[Cu],[Cr],[Mo]および[V]は、夫々C,Si,Mn,Ni,Cu,MoおよびVの含有量(質量%)を示す。
[温度管理の手順]
1.プロセスコンピュータを用い、加熱開始から加熱終了までの雰囲気温度や在炉時間に基づいて鋼片の表面から裏面までの任意の位置(例えば、t/4位置)の加熱温度を算出する。
2.算出した加熱温度を用い、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)のデータに基づいて、板厚方向の任意の位置における圧延温度を差分法など計算に適した方法を用いて計算しつつ圧延を実施する。
3.鋼板の表面温度は圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて実測する。但し、プロセスコンピュータでも理論値を計算しておく。
4.粗圧延開始時、粗圧延終了時、仕上げ圧延開始時にそれぞれ実測した鋼板の表面温度を、プロセスコンピュータから算出される計算温度と照合する。
5.計算温度と実測温度の差が±30℃以上の場合は、計算表面温度が実測温度と一致するように再計算してプロセスコンピュータ上の計算温度とし、±30℃未満の場合は、プロセスコンピュータから算出された計算温度をそのまま用いる。
6.上記算出された計算温度を用い、制御対象としている領域の圧延温度を管理する。
Figure 2008088485
Figure 2008088485
上記の様にして得られた各鋼板について、疲労亀裂進展速度、(硬質相/軟質相)の硬さ比(Hv1/Hv2)、および軟質相の粒径、EPMAによる介在物組成の調査およびHAZ靭性の評価を、それぞれ下記の要領で実施した。
[疲労亀裂進展速度]
熱間圧延材を切断し、ASTM E647に準拠し、コンパクト型試験片を用いて、疲労亀裂進展試験を実施することによって、疲労亀裂進展速度を求めた。この際、下記(5)式によって規定されるパリス則が成り立つ安定成長領域ΔK=20(MPa・√m)での値を代表値として評価した。尚、疲労亀裂進展速度の評価、基準については、通常の鋼材が4.0〜6.0×10-5mm/cycle(ΔK=20のとき)程度の進展速度であることから、3.5×10-5mm/cycle以下を基準とした。
da/dn=C(ΔK) …(5)
但し、a:亀裂長さ,n:繰り返し数,C,m:材料、荷重等の件で決まる定数を夫々示す。
[(硬質相/軟質相)の硬さ比]
硬質相のビッカース硬さHv1、および軟質相のビッカース硬さHv2を、10gfのマイクロビッカース硬度計を用いて測定し、各5点の平均値を求め、硬さ比(Hv1/Hv2)を計算した。
[軟質相の粒径の測定方法]
(a)鋼材の圧延方向と平行な方向で切断し、板厚の表裏面部を含むサンプルを準備した。
(b)♯150〜♯1000までの湿式エメリー研磨紙若しくはそれと同等の機能を有する研磨方法を用いて研磨し、ダイヤモンドスラリー等の研磨材を用いて鏡面仕上げを施した。
(c)研磨されたサンプルを、3%ナイタール溶液(腐食液)を用いて腐食し、軟質相の結晶粒界を現出させた。
(d)現出させた組織を100倍若しくは400倍の倍率で写真撮影し(6cm×8cmの写真として撮影)、画像解析装置に取り込んだ(100倍では600μm×800μm、400倍では150μm×200μmに相当)。この取り込みに当っては、いずれの倍率においても、1mm×1mmに相当する枚数(100倍では少なくとも6枚の視野、400倍では35枚分の視野)を取り込んだ。
(e)画像解析装置において、一つの粒界に囲まれた領域と同等の面積を有する円に換算し、換算された円の直径を円相当軟質相の粒径と定義した。
(f)全ての視野について測定された値の平均値を平均円相当軟質相粒径として算出した。
[介在物組成の調査]
各鋼板のt(板厚)/4位置における横断面からサンプルを切り出した。切り出されたサンプル表面を島津製作所製「EPMA−8705(装置名)」を用いて600倍で観察し、最大径が0.2μm以上の析出物について成分組成を定量分析した。観察条件は、加速電圧を20kV,試料電流を0.01μA,観察視野面積を1〜5cm2,分析個数を100個とし、特性X線の波長分散分光により析出物中央部での成分組成を定量分析した。分析対象元素は、Al,Mn,Si,Ti,Zr,Ca,La,CeおよびOとし、既知物質を用いて各元素の電子線強度と元素濃度の関係を予め検量線として求めておき、次いで、前記析出物から得られた電子線強度と前記検量線からその析出物の元素濃度を定量した。
得られた定量結果のうち酸素含量が5%以上の析出物を酸化物とし、平均したものを酸化物の平均組成とした。尚、Tiの酸化物およびREMの酸化物は、金属元素をMで表すと、鋼材中にM23やM35、MO2の形態で存在するが、これらの酸化物をM23に換算して酸化物組成を算出した。また、一つの介在物から複数の元素が観測された場合には、それらの元素の存在を示すX線強度の比から各元素の単独酸化物に換算して酸化物の組成を算出した。尚、下記5、6中の「その他」とは、分析対象としていない元素の酸化物(例えば、MgO等)の総量である。
上記サンプル表面をEPMAで観察した結果、観察された酸化物は、REMおよび/またはCaと、Zrとを含む複合酸化物、或いは更にTiを含む複合酸化物が大半であったが、単独酸化物としてREMの酸化物、CaO、ZrO2、Ti23も生成していた。
[HAZ靭性の評価]
大入熱溶接を模擬して下記に示す溶接再現試験を行った。この溶接再現試験は、スラブから切り出した試験片(125mm×32mm×55mmの試験片)全体が1400℃となるように加熱し、この温度で30秒または50秒保持した後、冷却しておこなった。このときの冷却速度は、800〜500℃の冷却時間が400秒となるように調整した。この再現試験サイクルの条件は、入熱量が40〜60kJ/mmのエレクトロスラグ溶接(ESW)またはサブマージアーク溶接(SAW)で溶接したときのボンド部を形成するときに相当するものである。上記再現熱サイクルを行った各試験片について、Vノッチシャルピー試験(JISZ2202)を行い、−40℃における吸収エネルギー(vE-40)を求めた。そして、vE-40の値が100J以上のものをHAZ靭性に優れると評価した。
全酸化物の平均組成の調査結果を、下記表5、6に、疲労試験進展速度の測定結果、硬さ比および軟質相粒径(円相当直径)を、HAZ靭性と共に一括して下記表7、8に示す。
Figure 2008088485
Figure 2008088485
Figure 2008088485
Figure 2008088485
これらの結果から次のように考察できる。まず、REM酸化物および/またはCaOとZrO2の何れかを含有しないものでは(鋼板No.32〜41)では、HAZ靭性に劣っていることが分かる。
一方、疲労亀裂進展速度に関しては、好ましい製造条件を外れたもの(鋼板No.2,3,6,7,9,10,12,13,15,16,20,21,23,24,20および30)では、結晶粒の粗大化が起こったり、十分な硬質相硬さが得られないことによって硬さ比(Hv1/Hv2)が適切な値にならず、疲労亀裂進展速度が速くなっていることが分かる。このデータに基づいて、硬さ比(Hv1/Hv2)と疲労亀裂進展速度の関係を図1に示すが、硬さ比を1.5〜5.0の範囲に規定することによって、疲労亀裂進展速度が低くなっていることが分かる。
硬さ比と疲労亀裂進展速度の関係を示すグラフである。

Claims (9)

  1. C:0.03〜0.18%(「質量%」の意味。以下同じ)、
    Si:0.5%以下(0%を含まない)、
    Mn:0.9〜2.0%、および
    N :0.003〜0.01%を含み、
    P :0.02%以下(0%を含まない)、
    S :0.015%以下(0%を含まない)、および
    Al:0.01%以下(0%を含まない)を満足し、
    REM:0.001〜0.1%および/またはCa:0.0003〜0.02%と、
    Zr:0.001〜0.05%を夫々含有し、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材であって、
    REMおよび/またはCaと、Zrとを単独酸化物若しくは複合酸化物として含有すると共に、軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、且つ硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)が1.5〜5.0であり、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下であることを特徴とする溶接熱影響部の靭性および疲労亀裂進展抵抗性に優れた鋼材。
  2. 前記鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定し、単独酸化物として質量換算したときに、前記EMの酸化物および/またはCaOの合計が5%以上で、且つ前記ZrO2が5%以上を満足するものである請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記鋼材が、更に他の元素として、Ti:0.08%以下(0%を含まない)を含むと共に、前記Tiを単独酸化物または複合酸化物として含有するものである請求項1または2に記載の鋼材。
  4. 前記鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定し、単独酸化物として質量換算したときに、前記Tiの酸化物が0.3%以上を満足するものである請求項3に記載の鋼材。
  5. 前記鋼材が、更に他の元素として、
    Cu:2%以下(0%を含まない)、
    Ni:3.5%以下(0%を含まない)、
    Cr:3%以下(0%を含まない)、
    Mo:1%以下(0%を含まない)、
    Nb:0.25%以下(0%を含まない)、
    V :0.1%以下(0%を含まない)、および
    B :0.005%以下(0%を含まない)
    よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の鋼材。
  6. 前記軟質相は、フェライト、焼戻しベイナイトおよび焼戻しマルテンサイよりなる群から選ばれる1種以上であり、硬質相は、ベイナイトおよび/またはマルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)である請求項1〜5のいずれかに記載の鋼材。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の鋼材を製造する方法であって、
    溶存酸素量を0.0020〜0.010%の範囲に調整した溶鋼へ、
    REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを添加することを特徴とする溶接熱影響部の靭性および疲労亀裂進展抵抗性に優れた鋼材の製法。
  8. 請求項3〜6のいずれかに記載の鋼材を製造する方法であって、
    溶存酸素量を0.0020〜0.010%の範囲に調整した溶鋼へ、
    REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、TiとZrを添加することを特徴とする溶接熱影響部の靭性および疲労亀裂進展抵抗性に優れた鋼材の製法。
  9. 上記溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とZrを添加するに先立って、Tiを添加する請求項8に記載の製法。
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