JP2008088485A - 溶接熱影響部の靭性および疲労亀裂進展抵抗性に優れた鋼材およびその製法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.03〜0.18%、Si:0.5%以下、Mn:0.9〜2.0%、およびN:0.003〜0.01%を含み、P:0.02%以下、S:0.015%以下、およびAl:0.01%以下を満足し、REM:0.001〜0.1%および/またはCa:0.0003〜0.02%と、Zr:0.001〜0.05%を夫々含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材であって、REMおよび/またはCaと、Zrとを単独酸化物若しくは複合酸化物として含有すると共に、軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、且つ硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)が1.5〜5.0であり、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下である。
【選択図】なし
Description
C:0.03〜0.18%(「質量%」の意味。以下同じ)、
Si:0.5%以下(0%を含まない)、
Mn:0.9〜2.0%、および
N :0.003〜0.01%を含み、
P :0.02%以下(0%を含まない)、
S :0.015%以下(0%を含まない)、および
Al:0.01%以下(0%を含まない)を満足し、
REM:0.001〜0.1%および/またはCa:0.0003〜0.02%と、
Zr:0.001〜0.05%を夫々含有し、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材であって、
REMおよび/またはCaと、Zrとを単独酸化物若しくは複合酸化物として含有すると共に、軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、且つ硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)が1.5〜5.0であり、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下である点に要旨を有する。
Cu:2%以下(0%を含まない)、
Ni:3.5%以下(0%を含まない)、
Cr:3%以下(0%を含まない)、
Mo:1%以下(0%を含まない)、
Nb:0.25%以下(0%を含まない)、
V :0.1%以下(0%を含まない)、および
B :0.005%以下(0%を含まない)
よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含むものが好ましく、こうした元素を含有することで母材の強度を高めることができる。
Tiは、鋼材中にTiの酸化物を生成してHAZの靭性向上に寄与する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Tiは0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.007%以上、更に好ましくは0.01%以上とする。しかし過剰に添加すると、酸化物が多量に生成し過ぎて鋼材(母材)の靭性を劣化させるため、0.08%以下に抑えるべきである。好ましくは0.07%以下であり、より好ましくは0.06%以下とする。
Cuは、鋼材を固溶強化させる元素であり、こうした効果を有効に発揮させるには、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、更に好ましくは0.2%以上である。特に0.6%以上含有させると、固溶強化のほか、時効析出強化も発揮し、大幅な強度向上が可能となる。しかし2%を超えて含有させると、鋼材(母材)の靭性が低下するため、Cuは2%以下に抑えるのがよい。好ましくは1.8%以下であり、より好ましくは1.6%以下とする。
Niは、鋼材の強度を高めると共に、鋼材の靭性を向上させるのに有効に作用する元素であり、こうした作用を発揮させるには、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、更に好ましくは0.2%以上とする。Niは多いほど好ましいが、高価な元素であるため経済的観点から3.5%以下に抑えることが好ましい。より好ましくは3.3%以下であり、更に好ましくは3%以下とする。
Crを添加して強度を高めるには、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.03%以上である。しかし3%を超えると溶接性が劣化するため、Crは3%以下に抑えることが好ましい。より好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1%以下である。
Moを添加して強度を高めるには、0.01%以上含有させるのが望ましい。より好ましくは0.02%以上であり、更に好ましくは0.03%以上含有させるのがよい。但し、1%を超えると溶接性を悪化させるためMoは1%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.9%以下であり、更に好ましくは0.8%以下に抑えることが推奨される。
Nbを添加して強度を高めるには、0.005%以上含有させるのが好ましい。より好ましくは0.01%以上であり、更に好ましくは0.03%以上である。しかし0.25%を超えると炭化物(NbC)が析出して母材靭性が劣化するので、Nbは0.25%以下に抑えるのが好ましい。より好ましくは0.23%以下であり、更に好ましくは0.20%以下とする。
Vを添加して強度を高めるには、0.005%以上含有させるのが望ましい。より好ましくは0.01%以上、更に好ましくは0.03%以上含有させるのがよい。しかし0.1%を超えると、溶接性が悪化する共に母材の靭性が劣化するため、Vは0.1%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.06%以下に抑えるのがよい。
Bは、鋼材の強度を高めると共に、溶接時に加熱されたHAZが冷却される過程において鋼中のNと結合してBNを析出し、オーステナイト粒内からのフェライト変態を促進させる。こうした効果を有効に発揮させるには、0.0003%以上含有させるのが好ましい。より好ましくは0.0005%以上であり、更に好ましくは0.0008%以上である。しかし0.005%を超えると、鋼材(母材)の靭性が劣化するため、Bは0.005%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.004%以下であり、更に好ましくは0.003%以下とするのがよい。
Ar3=868―369・[C]+24.6・[Si]−68.1・[Mn]−36.1
・[Ni]−20.7・[Cu]−24.8・[Cr]+29.6・[Mo]+
190・[V] …(1)
Ar1=630.5+51.6・[C]+122.4・[Si]−64.8・[Mn]
−57.5・[Mo] …(2)
Ac1=723−14・[Mn]+22・[Si]−14.4・[Ni]+23.3・
[Cr] …(3)
Ac3=908−223.7・[C]+30.49・[Si]−34.3・[Mn]
+37.92・[V]−23.5・[Ni] …(4)
但し、[C],[Si],[Mn],[Ni],[Cu],[Cr],[Mo]および[V]は、夫々C,Si,Mn,Ni,Cu,MoおよびVの含有量(質量%)を示す。
1.プロセスコンピュータを用い、加熱開始から加熱終了までの雰囲気温度や在炉時間に基づいて鋼片の表面から裏面までの任意の位置(例えば、t/4位置)の加熱温度を算出する。
2.算出した加熱温度を用い、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)のデータに基づいて、板厚方向の任意の位置における圧延温度を差分法など計算に適した方法を用いて計算しつつ圧延を実施する。
3.鋼板の表面温度は圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて実測する。但し、プロセスコンピュータでも理論値を計算しておく。
4.粗圧延開始時、粗圧延終了時、仕上げ圧延開始時にそれぞれ実測した鋼板の表面温度を、プロセスコンピュータから算出される計算温度と照合する。
5.計算温度と実測温度の差が±30℃以上の場合は、計算表面温度が実測温度と一致するように再計算してプロセスコンピュータ上の計算温度とし、±30℃未満の場合は、プロセスコンピュータから算出された計算温度をそのまま用いる。
6.上記算出された計算温度を用い、制御対象としている領域の圧延温度を管理する。
熱間圧延材を切断し、ASTM E647に準拠し、コンパクト型試験片を用いて、疲労亀裂進展試験を実施することによって、疲労亀裂進展速度を求めた。この際、下記(5)式によって規定されるパリス則が成り立つ安定成長領域ΔK=20(MPa・√m)での値を代表値として評価した。尚、疲労亀裂進展速度の評価、基準については、通常の鋼材が4.0〜6.0×10-5mm/cycle(ΔK=20のとき)程度の進展速度であることから、3.5×10-5mm/cycle以下を基準とした。
da/dn=C(ΔK)m …(5)
但し、a:亀裂長さ,n:繰り返し数,C,m:材料、荷重等の件で決まる定数を夫々示す。
硬質相のビッカース硬さHv1、および軟質相のビッカース硬さHv2を、10gfのマイクロビッカース硬度計を用いて測定し、各5点の平均値を求め、硬さ比(Hv1/Hv2)を計算した。
(a)鋼材の圧延方向と平行な方向で切断し、板厚の表裏面部を含むサンプルを準備した。
(b)♯150〜♯1000までの湿式エメリー研磨紙若しくはそれと同等の機能を有する研磨方法を用いて研磨し、ダイヤモンドスラリー等の研磨材を用いて鏡面仕上げを施した。
(c)研磨されたサンプルを、3%ナイタール溶液(腐食液)を用いて腐食し、軟質相の結晶粒界を現出させた。
(d)現出させた組織を100倍若しくは400倍の倍率で写真撮影し(6cm×8cmの写真として撮影)、画像解析装置に取り込んだ(100倍では600μm×800μm、400倍では150μm×200μmに相当)。この取り込みに当っては、いずれの倍率においても、1mm×1mmに相当する枚数(100倍では少なくとも6枚の視野、400倍では35枚分の視野)を取り込んだ。
(e)画像解析装置において、一つの粒界に囲まれた領域と同等の面積を有する円に換算し、換算された円の直径を円相当軟質相の粒径と定義した。
(f)全ての視野について測定された値の平均値を平均円相当軟質相粒径として算出した。
各鋼板のt(板厚)/4位置における横断面からサンプルを切り出した。切り出されたサンプル表面を島津製作所製「EPMA−8705(装置名)」を用いて600倍で観察し、最大径が0.2μm以上の析出物について成分組成を定量分析した。観察条件は、加速電圧を20kV,試料電流を0.01μA,観察視野面積を1〜5cm2,分析個数を100個とし、特性X線の波長分散分光により析出物中央部での成分組成を定量分析した。分析対象元素は、Al,Mn,Si,Ti,Zr,Ca,La,CeおよびOとし、既知物質を用いて各元素の電子線強度と元素濃度の関係を予め検量線として求めておき、次いで、前記析出物から得られた電子線強度と前記検量線からその析出物の元素濃度を定量した。
大入熱溶接を模擬して下記に示す溶接再現試験を行った。この溶接再現試験は、スラブから切り出した試験片(125mm×32mm×55mmの試験片)全体が1400℃となるように加熱し、この温度で30秒または50秒保持した後、冷却しておこなった。このときの冷却速度は、800〜500℃の冷却時間が400秒となるように調整した。この再現試験サイクルの条件は、入熱量が40〜60kJ/mmのエレクトロスラグ溶接(ESW)またはサブマージアーク溶接(SAW)で溶接したときのボンド部を形成するときに相当するものである。上記再現熱サイクルを行った各試験片について、Vノッチシャルピー試験(JISZ2202)を行い、−40℃における吸収エネルギー(vE-40)を求めた。そして、vE-40の値が100J以上のものをHAZ靭性に優れると評価した。
Claims (9)
- C:0.03〜0.18%(「質量%」の意味。以下同じ)、
Si:0.5%以下(0%を含まない)、
Mn:0.9〜2.0%、および
N :0.003〜0.01%を含み、
P :0.02%以下(0%を含まない)、
S :0.015%以下(0%を含まない)、および
Al:0.01%以下(0%を含まない)を満足し、
REM:0.001〜0.1%および/またはCa:0.0003〜0.02%と、
Zr:0.001〜0.05%を夫々含有し、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材であって、
REMおよび/またはCaと、Zrとを単独酸化物若しくは複合酸化物として含有すると共に、軟質相と硬質相とからなる複合組織であり、且つ硬質相のビッカース硬さHv1と軟質相のビッカース硬さHv2の比(Hv1/Hv2)が1.5〜5.0であり、軟質相の粒径が円相当直径で20μm以下であることを特徴とする溶接熱影響部の靭性および疲労亀裂進展抵抗性に優れた鋼材。 - 前記鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定し、単独酸化物として質量換算したときに、前記EMの酸化物および/またはCaOの合計が5%以上で、且つ前記ZrO2が5%以上を満足するものである請求項1に記載の鋼材。
- 前記鋼材が、更に他の元素として、Ti:0.08%以下(0%を含まない)を含むと共に、前記Tiを単独酸化物または複合酸化物として含有するものである請求項1または2に記載の鋼材。
- 前記鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定し、単独酸化物として質量換算したときに、前記Tiの酸化物が0.3%以上を満足するものである請求項3に記載の鋼材。
- 前記鋼材が、更に他の元素として、
Cu:2%以下(0%を含まない)、
Ni:3.5%以下(0%を含まない)、
Cr:3%以下(0%を含まない)、
Mo:1%以下(0%を含まない)、
Nb:0.25%以下(0%を含まない)、
V :0.1%以下(0%を含まない)、および
B :0.005%以下(0%を含まない)
よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の鋼材。 - 前記軟質相は、フェライト、焼戻しベイナイトおよび焼戻しマルテンサイよりなる群から選ばれる1種以上であり、硬質相は、ベイナイトおよび/またはマルテンサイト(島状マルテンサイトを含む)である請求項1〜5のいずれかに記載の鋼材。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の鋼材を製造する方法であって、
溶存酸素量を0.0020〜0.010%の範囲に調整した溶鋼へ、
REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを添加することを特徴とする溶接熱影響部の靭性および疲労亀裂進展抵抗性に優れた鋼材の製法。 - 請求項3〜6のいずれかに記載の鋼材を製造する方法であって、
溶存酸素量を0.0020〜0.010%の範囲に調整した溶鋼へ、
REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、TiとZrを添加することを特徴とする溶接熱影響部の靭性および疲労亀裂進展抵抗性に優れた鋼材の製法。 - 上記溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とZrを添加するに先立って、Tiを添加する請求項8に記載の製法。
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