JP2019023322A - 鋼板および鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に開示される技術を検討した結果、TiとZrとの複合酸化物を生成させるために、TiとZrとを同時に添加し、かつTi量、Zr量およびO量のバランスを最適化しただけでは、HAZ靱性をさらに向上させることは不十分であることが分かった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、大入熱溶接を行った際のHAZにおいて優れた靱性を有し、かつ、HAZと溶接金属部以外の部分である母材において優れた機械的特性を有する鋼板の提供を課題とするものである。
質量%で、
C :0.01%〜0.20%、
Si:0.02%〜0.50%、
Mn:0.30%〜2.50%、
Ti:0.003%〜0.024%、
B :0.0005%〜0.0050%、
N :0.0010%〜0.0090%、
O :0.0010%〜0.0050%、
Zr:0.0005%〜0.0100%、
Sol.Zr:0.0020%以下、
Cu:0.0%〜1.5%、
Ni:0.0%〜3.0%、
Cr:0.0%〜1.0%、
Mo:0.00%〜1.00%、
Nb:0.000%〜0.035%
V :0.00%〜0.10%
P :0.050%以下、
S :0.0080%以下、
Al:0.0050%以下、
Mg:0.0000%〜0.0005%、
Ca+REMの含有量の合計が0.0005%以下、
及び、残部として、Fe及び不純物からなり、
下記式(1)で表されるBFが、0.0005%〜0.0030%であり、
下記式(3)で表される炭素当量Ceq.が、0.35%〜0.50%であり、
圧延方向に垂直な断面の板厚方向の1/4位置の電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いた結晶方位解析において、有効結晶粒径が30μm以下であり、
板厚方向の1/4位置のミクロ組織が面積率にして、フェライト分率が20%〜70%、ベイナイト分率が30%〜75%、およびパーライト分率が0%〜5%であり、
下記式(4)で表されるアレスト性指標Arrが95以下であり、
酸化物中のO量、Ti量、Zr量、およびAl量の測定値から求められる、Ti、ZrおよびAlの元素による単独酸化物と仮定したときの前記Ti、前記Zr、および前記Alの各元素の酸化物の質量換算値の合計に対する、Al酸化物の質量換算値の含有割合が20%以下、および前記各元素の酸化物の質量換算値の合計に対する、Zr酸化物とTi酸化物の質量換算値の含有割合の合計が80%以上を満足する酸化物であって、円相当径が0.5μm〜10μmの個数密度が10個/mm2以上の酸化物を含有する鋼板。
+0.032×Deff(表)×fα(表)
+0.007×Deff(t/4)×fα(t/4)・・・(4)
板厚が55mm以上であり、溶接熱影響部および溶接金属部以外の部分である、母材の降伏応力が460MPa以上であり、かつアレスト靱性値Kcaが6000N/mm1.5になる温度が−10℃以下である(1)に記載の鋼板。
板厚が55mm〜80mmの場合に、入熱40kJ/mm〜60kJ/mmで大入熱溶接を行ったときに発生する溶接熱影響部を、試験温度−40℃で行うシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが、板厚方向で、板厚の表側、板厚中心の位置(t/2)、及び板厚の裏側のすべての箇所において100J以上であり、かつ、溶接熱影響部および溶接金属部以外の部分である、母材の脆性延性遷移温度が−40℃以下である(1)又は(2)に記載の鋼板。
(1)〜(3)のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、減圧雰囲気の二次精錬において、溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した溶鋼へ、Ti添加後Zrの順に添加、Zr添加後Tiの順に添加、または、TiとZrとを同時に添加、のいずれか一つの添加順序でTiとZrとを添加した後、Ti及びZr添加後の溶鋼を鋳造して、鋳片を得る工程を有する鋼板の製造方法。
(1)〜(3)のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、減圧雰囲気の二次精錬において、溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した溶鋼へTiを添加し、Ti添加後の該存溶鋼中の溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した後、Zrを添加し、Ti及びZr添加後の溶鋼を鋳造して、鋳片を得る工程を有する鋼板の製造方法。
(1)〜(3)のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、減圧雰囲気の二次精錬において、溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した溶鋼へZrを添加し、Zr添加後の該存溶鋼中の溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した後、Tiを添加し、Ti及びZr添加後の溶鋼を鋳造して、鋳片を得る工程を有する鋼板の製造方法。
なお、本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
しかし、Zrは一般的に鋼板に添加される元素ではなく、Zrが添加された鋼板として、過去に行われた研究は非常に限られたものであった。これまでに、Zrを含有する酸化物(特にZrとTiとを含有する酸化物)を鋼板に分散させた場合、固溶BがHAZ靱性向上に及ぼす効果について検討されたことはない。
以下、これらの新知見について説明する。
本発明者らは、Zrを添加した鋼板を実際に製造し、粒内フェライトの核となる酸化物について、個々の酸化物毎に詳細に調査し、HAZ靱性の向上に及ぼす効果について調査検討を行った。
その結果、Ti酸化物、Zr酸化物、及びAl酸化物の質量換算値の合計に対して、Al酸化物の質量換算値の含有割合が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下)であり、かつ、Zr酸化物とTi酸化物との質量換算値の含有割合の合計が80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上)を満足する酸化物であって、この酸化物の円相当径(円形と仮定したときの円の直径に相当するもの)が、0.5μm〜10μmである酸化物を特定の個数密度で含有すると、組織の微細化を通じてHAZ靱性を改善することが明らかとなった。
また、円相当径が0.5μmより小さいと、粒内フェライトの生成核(IGF核)としての機能が低下し、10.0μmより大きいと、粗大な酸化物自体が破壊の起点として作用する可能性が高まる。そして、円相当径が0.5μm〜10μmである前記の組成を有する酸化物の分散個数(個数密度)が、10個/mm2以上(好ましくは20個/mm2以上、より好ましくは30個/mm2以上、さらに好ましくは50個/mm2以上、最も好ましくは60個/mm2以上)の場合には、Zrを含まない鋼板と比較して、HAZ組織の微細化によりHAZ靱性を改善することが明らかとなった。
本実施形態に係る鋼板に含まれるAl、Ti、及びZrのいずれか(TiとZrとは両方を含有する場合も含む)を含有する酸化物の円相当径、個数密度、及び組成は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた解析により決定する。具体的には、鋼板の幅中央、板厚方向のt/4の位置で、板厚方向12mm×板幅方向12mm×圧延方向70mmの熱サイクル試験片を採取する。そして、試験片を1400℃で23秒間加熱保持した後、冷速1℃/secの条件で冷却した鋼板の圧延方向と垂直な方向の断面を、SEM/EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法)解析で観察し、観察視野内に認められる介在物を定量分析して測定する。SEM/EDX解析は、例えば、加速電圧15kV、電流を89μA〜91μAとし、観察面積にして25mm2(5mm×5mm)以上(好ましくは、観察面積にして100mm2(10mm×10mm))とする。一例として、図1に、SEMによる写真を示す。11は地鉄、12は介在物を表す。図1に示す写真のように、地鉄11(背景)に対して色調の明暗差(コントラスト)により粒状に見える介在物12について、これらの介在物毎に介在物の全体の組成を定量分析する。
例えば、SEM/EDX解析を、加速電圧15kV、電流を89μA〜91μAで測定した場合について述べる。O含有量、Ti含有量、Zr含有量、及びAl含有量の質量%の合計を求めて、その合計に対して、O含有量が1.0質量%以上である場合、この介在物を酸化物とする。そして、この酸化物について、下記式(5)〜式(7)を用いて、各元素の質量%から、これらの元素による単独酸化物と仮定したときの各元素の酸化物の質量換算値を算出する。
Ti2O3=Ti×3.003・・・(5)
ZrO2=Zr×1.351・・・(6)
Al2O3=Al×3.779・・・(7)
ただし、式(5)〜式(7)中、Ti、Zr、及びAlは、SEM/EDX解析により測定された各元素の含有量(質量%)である。なお、これらのSEM/EDX解析により測定された各元素の含有量を合計すると、100%となる。
式(5)〜式(7)から求めたTi2O3、ZrO2、及びAl2O3の質量換算値の合計を求め、その合計に対する各元素の酸化物の割合を、酸化物に含まれる各元素の酸化物の含有割合(%)とする。
Ti2O3、ZrO2、及びAl2O3の含有割合は、下記式(8)〜式(10)で表わされる。
Ti2O3の含有割合(%)=Ti2O3/(Ti2O3+ZrO2+Al2O3)・・・(8)
ZrO2の含有割合(%)=ZrO2/(Ti2O3+ZrO2+Al2O3)・・・(9)
Al2O3の含有割合(%)=Al2O3/(Ti2O3+ZrO2+Al2O3)・・・(10)
HAZ組織の微細化に寄与するZrを含有する酸化物の条件としては、酸化物中にZr酸化物とTi酸化物との合計が一定量以上含有する必要がある。一方、酸化物を形成せず鋼板に残存するZr(固溶Zr(固溶Zrを「Sol.Zr」と表記される)は、HAZのみならず鋼板自体の靱性を著しく劣化させるため、鋼板におけるSol.Zrを低減する必要がある。Sol.Zrが少ないほど靱性は改善する傾向にあり、HAZ靱性に優れる鋼板を得るためには、Sol.Zrは0.0020質量%以下に制限することが重要である。より一層のHAZ靱性の改善のためには0.0010質量%以下(より好ましくは0.0005質量%以下)に制限することが好ましい。ここで、Sol.Zrは酸可溶性Zrであって、電解抽出残渣分析法などで測定可能な、鋼板に固溶しているZrに相当する。なお、酸不溶性Zrは、Insol.Zr(式(2)中のInsol.Zr)であり、鋼板中のZr量は、酸可溶性Zrと酸不溶性Zrの合計量である。
鋼板の旧オーステナイト粒界に偏析する固溶Bは、溶接時に粗大な粒界フェライトの生成を抑制し、HAZ靱性を改善する。酸化物中にZr酸化物とTi酸化物との合計が一定量以上含有させた鋼板では、固溶Bが増加することを見出した。酸化物中にZr酸化物とTi酸化物との合計が一定量以上含有させた鋼板における固溶Bの質量%(BF)は、鋼板に含まれるBの含有量からB窒化物となるBの質量%を引くことで求められる。すなわち、BFは下記式(1)で表される。この値が0.0005%以上(好ましくは0.0010%以上)のとき、固溶BによるHAZ靱性改善効果が得られる。BFが過剰になると、HAZ靱性が劣化する懸念がある。そのため、BFの上限は0.0030%以下とする。好ましくは0.0025%以下、より好ましくは0.0020%以下である。
さらに、BF<0になる場合は、BF=0とし、BF>Bになる場合はBF=Bとする。つまり、BasBNの値が負の値となる場合には、BF=Bとし、BasBNの値がBよりも大きくなる場合には、BF=0とする。
また、BasBN<0になる場合は、BasBN=0とし、BF>Bになる場合はBasBN=Bとする。つまり、BasBNの値が負の値となる場合には、BasBN=0とし、BasBNの値が式(1)中のBよりも大きくなる場合には、BasBN=Bとする。
なお、Sol.Zrは、酸可溶性Zrであって、電解抽出残渣分析法などで測定する鋼板に固溶しているZr含有量(質量%)である。Insol.Zrは、酸不溶性Zrの含有量(質量%)であり、Zr含有量からSol.Zr含有量を引いたものである。また、0≦Insol.Zr≦Zrを満たす。
酸化物粒子は溶鋼を脱酸する際に生成する。これを一次酸化物と称する。さらに、鋳造、及び凝固中に溶鋼温度の低下と共にTi酸化物、Zr酸化物、およびTiとZrとを含有する酸化物を生成する。これを二次酸化物と称する。本実施形態では、一次酸化物と二次酸化物のどちらを用いてもかまわない。ただし、鋳造、及び凝固中に溶鋼温度の低下と共に生成する酸化物の方が、溶鋼温度が高温時に生成する一次酸化物よりも微細な粒子が得られるので、二次酸化物を用いることが好ましい。
鋳片の製造過程:転炉→取鍋→二次精錬→連続鋳造の過程において、鋳片に残留する酸化物系介在物は、特に、二次精錬における脱酸開始前の溶鋼中の溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%(好ましい上限は0.0040%以下、より好ましくは0.0030%以下)に制御し、かつ脱酸元素であるTiとZrとを添加することで、酸化物の平均粒径が顕著に微細化し、酸化物の個数密度が増大することを知見した。
脱酸元素であるTiとZrとの添加順序は、Ti、Zrの順、Zr、Tiの順、又はTi、Zrの同時添加のいずれでもよい。TiとZrとを、Ti、Zrの順で、別々に添加する場合、溶鋼中の溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%(好ましい上限は0.0040%以下、より好ましくは0.0030%以下)に制御した後、Tiを添加し、該溶鋼中の溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%(好ましい上限は0.0040%以下、より好ましくは0.0030%以下、さらに好ましくは0.0020%以下)にした後、Zrを添加することが好ましい。Zr、Tiの順で添加する場合も、TiとZrを別々に添加する場合と同様の溶存酸素量に制御することが好ましい。
ここで、二次精錬は、転炉精錬後に、真空精錬装置または不活性ガス中での精錬装置によって行われる工程を示す。ZrとTiとは単独金属または合金のいずれの形態で添加してもよい。
Alは、鋼板において強脱酸元素として作用するため、多量に鋼板に含有すると、ZrおよびTiの酸化物生成を阻害する。溶鋼中の溶存酸素量を確保し、ZrとTiとを含有する複合酸化物を鋼板に生成させるため、Alの含有量は0.0050質量%以下に制限することが重要である。
本実施形態はHAZ靱性に優れることに加え、母材靱性、母材強度、およびアレスト性に優れた鋼板を対象としている。
ここで、本明細書中において母材と称する場合、母材は、HAZと溶接金属部以外の部分を示す。
母材組織は、フェライト、ベイナイトおよびパーライトの混合組織、又はフェライトおよびベイナイトの混合組織である。ところが、フェライトとベイナイトとが混在する組織において、通常の光学顕微鏡による組織観察(以下、「光顕観察」と称する場合がある。)のみでは、基本組織単位を客観的に定義し、そのサイズを測定することは非常に困難である。そこで本発明者らは、光顕観察に加えて、電子線後方散乱回折法(EBSD:Electron Back Scatter Diffraction pattern)を用いた結晶方位解析を行い、ミクロ組織を解析した。
さらに、鋼板表面5mm部、及びt/4部のそれぞれの部位毎に、主圧延方向に対して垂直な方向(幅方向)の断面に対し、EBSD法により、500μm×500μmの領域を1μmピッチで測定した。隣接粒との結晶方位差が15°以上の境界を結晶粒界と定義し、結晶粒界に囲まれた領域の円相当径(直径)の加重平均を、それぞれの部位の有効結晶粒径とした。
フェライトは、先のEBSD法により測定した測定点同士が第一近接する場合のKAM(Kernel Average Misorientation)値が、1°以下である部分とした。このフェライトの面積分率を、鋼板表面5mm部、t/4部のそれぞれの部位毎に対して求めた。
t/4部のベイナイト分率は、t/4部のパーライト分率とt/4部のフェライト分率以外との残部とした。つまり、t/4部のベイナイト分率と、t/4部のパーライト分率と、t/4部のフェライト分率との合計は、面積率で100%である。
なお、加重平均は以下の方法で求めた。1つの視野にN個の結晶粒があるとし、各結晶粒の面積がA1、A2、A3、・・・Ai、・・・ANがあり、各粒の円相当径(直径)がD1、D2、D3、・・・Di、・・・DNであるとする。その場合、有効結晶粒径(Deff)は下記式(11)により求められる。
なお、t/4部の有効結晶粒径は、本実施形態では、1μm以上の有効結晶粒径を測定した。t/4部の有効結晶粒径は、小さければ小さいほうがよく、下限値としては、特に限定されないが、例えば、1μm以上(好ましくは5μm以上)が挙げられる。
Arr=0.31×t+0.11×Deff(表)+1.99×Deff(t/4)
+0.032×Deff(表)×fα(表)
+0.007×Deff(t/4)×fα(t/4)・・・(4)
Deff(表) :鋼板表面5mm部の有効結晶粒径(μm)
Deff(t/4) :鋼板の板厚1/4部の有効結晶粒径(μm)
fα(表) :鋼板表面5mm部のフェライト分率(%)
fα(t/4) :鋼板の板厚1/4部のフェライト分率(%)
以下の説明において、各元素の説明における「%」は「質量%」を意味する。
Cは、強度を確保するために必要な元素である。C量が0.01%未満では必要とする強度を確保することができない。しかし、C量が0.20%を超えると、母材、及びHAZ共に靱性を確保することが難しくなる。C量の好ましい下限は0.03%以上、より好ましくは0.05%以上である。C量の好ましい上限は0.15%以下、より好ましくは0.10%以下である。
Siは、鋼板の焼入れ性を高め、鋼板の強度上昇に寄与する。この効果を得るためには0.02%以上のSiを含有させる必要がある。好ましくはSi量を0.05%以上とする。一方で、Siは酸素との反応性も高く脱酸作用を有するため、ZrとTiを含有する複合酸化物の形成に影響を及ぼす。0.50%を超えてSiを含有させた場合、酸化物の組成が変化し、HAZ組織の微細化が達成されず、HAZ靱性の低下をもたらす。より好ましいSi量の上限は0.40%以下、更に好ましい上限は0.30%以下である。
Mnは、鋼板の焼入れ性を高める効果があり、強度及び靱性の確保に有効な成分である。Mn量が0.30%未満では、焼入れ性の不足によって強度及び靱性が得られない。しかし、2.50%を超えてMnを含有させると、凝固時のMn偏析により中心偏析部の靱性を低下させるとともに、焼入れ性が高まりすぎて母材、HAZともに硬さの増大を招き靱性が劣化する。Mn量の好ましい下限は0.60%以上、好ましい上限は2.00%以下である。
Tiは、Tiの単独酸化物だけでなく、Zrと共に複合酸化物を形成する。そして、特に、この複合酸化物がHAZにおける粒内フェライト生成核として機能して、HAZ組織の微細化に寄与する。この効果を得るためには、Tiを0.003%以上含有させる必要がある。一方で、Tiは窒化物を生成するが、Ti窒化物が多量に生成するとB窒化物の生成量が抑制され、本実施形態で所望する効果が得られなくなる。更に、過剰なTiはTiCを形成し、母材及びHAZの靱性を劣化させる。よって、Ti量の上限を0.024%以下とする必要がある。Ti量の好ましい下限は0.005%以上、好ましい上限は0.020%以下である。
Bは、鋼板において窒素と結合し、ZrとTiとを含有する複合酸化物の周囲にフィルム状のB窒化物を生成する。B量を0.0005%以上にすることにより、HAZにおける粒内フェライト生成能を高め、組織の微細化を通じて靱性の改善に寄与する。また、固溶Bはオーステナイト粒界に偏析することで、粗大な粒界フェライト生成を抑制する。HAZ靱性を更に改善するために、B量は0.0010%以上が好ましい。一方、B量が過剰な場合、強度を高める効果が飽和し、母材、HAZともに靱性劣化の傾向が著しくなる。したがって、B量を0.0050%以下とする。B量の好ましい上限は0.0030%以下、より好ましくは0.0025%以下、さらに好ましくは0.0020%以下である。
Nは、鋼板においてBと結合し、B窒化物を形成させるために必要な元素であり、このためには0.0010%以上のNを含有させる必要がある。一方、N量が過剰な場合、母材及びHAZの靱性劣化を招くため、上限を0.0090%以下とする。N量の好ましい下限は0.0020%以上、好ましい上限は0.0060%以下である。
O(酸素)は、ZrとTiとを含有する複合酸化物の生成に不可欠な元素であり、0.0010%以上のOを含有させる必要がある。しかし、O量が過剰な場合、酸化物が過剰に生成し、鋼板の清浄性を劣化させ母材靱性及び伸び絞り等の延性に悪影響を及ぼす。このためO量の上限を0.0050%以下とする。O量の好ましい下限は0.0015%以上、好ましい上限は0.0040%以下である。
Zrは酸化物の微細分散、固溶Bの増加に不可欠な元素であり、0.0005%以上含有させる必要がある。Zr酸化物、ZrとTiの複合酸化物はHAZにおける粒内フェライト生成核として機能し、HAZ組織の微細化に寄与する。この効果を得るためには、Zrを0.0005%以上にする必要がある。好ましくは0.0010%以上、さらに好ましくは0.0015%以上とする。一方、Zrが過剰な場合、鋳造時のノズル閉塞が発生する可能性があるため、上限を0.0100%以下とする。好ましい上限は0.0050%以下、より好ましくは0.0040%以下である。
Sol.Zrは酸可溶性Zrの意で、鋼板に固溶しているZrを表わす。Sol.Zrの含有量が増えると、HAZ靱性を著しく劣化させるため、その上限を0.0020%以下に制限する必要がある。Zrの好ましい上限は0.0010質量%以下、より好ましく上限は0.0005質量%以下である。Sol.Zrは少ないほど好ましいため下限は特に規定せず、0.0000%でもよい。Sol.Zrは、電解抽出残渣分析法によって測定することができる。電解抽出残渣分析法は、鋼板を非水溶媒中での電解によって母相を溶解させて、残渣(析出物および介在物)を孔径0.1μm〜0.2μmのフィルター抽出し、分離する方法である。分離後、溶液に含まれるZrの量がSol.Zr量である。なお、Insol.Zrは酸不溶性Zrであり、Insol.Zr量とSol.Zr量を足したものがZr量である。
Cuは、強度及び耐食性を向上させる効果を有するため、必要に応じて鋼板に含有させてもよい。Cuを含有する効果を得るためには、Cuを0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくはCu量を0.2%以上とする。一方、1.5%を超えてCuを含有させても、合金コスト上昇に見合った性能の改善が見られず、鋼板表面割れの原因となる場合がある。好ましくはCu量の上限を1.0%以下とし、より好ましくは0.5%以下とする。
Niは、固溶状態において鋼のマトリックス(生地)の靱性を高める効果があるので、必要に応じて鋼板に含有させてもよい。Niを含有する効果を得るためには、Niを0.1%以上含有させることが好ましい。一方、3.0%を超えてNiを含有させても、合金コストの上昇に見合った特性の向上が得られない。好ましくはNi量の上限を2.0%以下、より好ましくは1.0%以下とする。
Crは、耐食性を高めるとともに、焼入性を高めることで強度の向上に有用であるので、必要に応じて鋼板に含有させてもよい。Crを含有する効果を得るためには、Crを0.1%以上含有させることが好ましい。一方、1.0%を超えてCrを含有させても、耐食性を向上させる効果が飽和し、また、HAZが硬化して靱性を劣化させる場合がある。好ましくはCr量の上限を0.5%以下とする。
Moは、母材の強度と靱性を向上させる効果があるので、必要に応じて鋼板に含有させてよい。Moを含有する効果を得るためには、Moを0.01%以上含有させることが好ましい。一方、1.00%を超えてMoを含有させると、特にHAZの硬度が高まり、靱性を劣化させる場合がある。好ましくはMo量の上限を0.50%以下、より好ましくは0.30%以下とする。
Nbは、細粒化と炭化物析出により母材の強度及び靱性を向上させるので、必要に応じて鋼板に含有させてよい。Nbを含有する効果を得るためには、Nbを0.005%以上含有させることが好ましい。一方、0.035%を超えてNbを含有させると、効果が飽和するとともに、HAZの靱性を損なう場合がある。より好ましくはNb量の上限を0.025%以下、さらに好ましくは0.015%以下とする。
Vは、主に焼戻し時の炭窒化物析出により母材の強度を向上させる効果があるので、必要に応じて鋼板に含有させてもよい。Vを含有する効果を得るためには、Vを0.01%以上含有させることが好ましい。一方、0.10%を超えてVを含有させると、効果が飽和するとともに、硬度が高まり、靱性劣化を招く場合がある。好ましくはV量の上限を0.05%以下とする。
Pは、不純物として鋼板に不可避的に存在する。しかし、P量が0.050%を超えるとオーステナイト粒界に偏析して靱性を低下させるのみならず、溶接時に高温割れを招く原因となる。P量の好ましい上限は0.030%以下、より好ましくは0.010%以下である。P量は少ないほど好ましいため下限は特に規定しないが、製造コストの観点から、0.001%以上であってもよい。
Sは、不純物として鋼板に不可避的に存在するが、含有量が多すぎると中心偏析部において延伸したMnSが多量に生成するため、母材及びHAZの靱性および延性が劣化する。このためS量の上限を0.0080%以下とする。S量の好ましい上限は0.0050%以下、より好ましくは0.0040%以下、さらに好ましくは0.0030%以下である。S量は少ないほど好ましいため下限は特に規定しないが、製造コストの観点から、0.0001%以上であってもよい。
Alは、一般的には、脱酸元素として、積極的に添加される元素である。しかし、Alは優先的に酸素と反応しやすいため、その含有量が過剰な場合には、所望するZrとTiを含有する複合酸化物の形成が不十分となり、HAZにおける有効なフェライト生成核が減少する。更に過剰なAl添加は、粗大なクラスター状のアルミナ(Al2O3)系介在物の形成を助長するため、母材及びHAZの靱性を劣化させる。よって、Alの含有量はできる限り低減することが好ましい。許容できるAl量の上限値は0.0050%である。好ましくは0.0040%以下、さらに好ましくは0.0030%以下である。Alは少ないほど好ましいため下限値は特に規定せず、0.0000%でもよい。
Mgは、優先的に酸素と反応しやすいため、その含有量が過剰な場合には、所望するZrとTiとを含有する複合酸化物の形成が不十分となる。そして、HAZにおける有効なフェライト生成核が減少し、HAZの靱性を劣化させる。よって、Mgの含有量は0.0005%以下に制限する。Mgは少ないほど好ましいため下限値は特に規定せず、0.0000%でもよい。
Ca及びREMは、Alよりも更に優先的に酸素と反応しやすい元素である。所望するZrとTiとを含有する複合酸化物を形成させるために、Ca及びREMの含有量の合計を0.0005%以下に制限する。より好ましくはCaが0.0003%未満、かつREMが0.0003%未満で、その含有量の合計が0.0005%以下である。CaとREMは少ないほど好ましいため下限値は特に規定せず、0.0000%でもよい。
なお、Ca及びREMは鋼板において強脱酸元素として作用し、ZrおよびTiの酸化物生成を阻害するため、意図的に含有させず、可能な限り低減することが必要である。
ここで、「REM」とはSc、Y、及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうちの1種または2種以上の元素の合計含有量を指す。
本実施形態に係る鋼板は、下記式(3)により求められる炭素当量Ceq.を、0.35%〜0.50%とする。
Ceq.=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(3)
ここで、各成分は鋼板中に含有されている各成分の質量%である。
本実施形態に係る鋼板の製造方法は、減圧雰囲気の二次精錬において、溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した溶鋼へ、TiとZrとを、Ti添加後Zrの順に添加、Zr添加後Tiの順に添加、または、TiとZrとを同時に添加、のいずれか一つの添加順序で添加した後、Ti及びZr添加後の溶鋼を鋳造して、鋳片を得る工程を有することが好ましい。
その後、得られた鋳片から本実施形態に係る鋼板を製造するプロセスとしては、通常の方法により行うことができる。通常の圧延を行ってもよいし、制御圧延を行ってもよい。そして、制御冷却をしてもよいし、制御冷却と焼き戻しと組み合わせて行ってもよく、さらに、焼入れ・焼き戻しを組み合わせて行ってもよい。
また、TiとZrとを添加する順序が、Zr添加後Tiを添加する順序の場合、溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した溶鋼へZrを添加し、Zr添加後の溶鋼中の溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%以下に調整した後、Tiを添加することがよい。
まず、前述の化学組成となるように溶鋼の化学組成を調整する。転炉精錬後に、真空精錬装置または不活性ガス中での精錬装置によって行われる減圧雰囲気下の二次精錬において、溶鋼の溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%の範囲に調整する。その後、TiとZrとを所定の順序で添加して溶製した後、連続鋳造等により鋳片を得る。
なお、二次精錬を行う方法は、特に限定されないが、例えば、RH(Ruhrstahl−Heraeus)による方法が挙げられる。
鋼は、400トン転炉溶製し、RH(Ruhrstahl−Heraeus)による2次精錬の真空脱ガス処理時に脱酸を行っている。Ti、Zr投入前に溶存酸素を調整し、その後、Ti、Zrを添加し脱酸を行い、連続鋳造により280mm〜360mm厚鋳片に鋳造した後、加熱圧延を経て、板厚55mm〜80mmの鋼板として製造した。その後、材質調整のため、必要に応じて熱処理を実施した。熱処理時のテンパー温度は、440℃から570℃の条件で行った。
得られた鋼板を溶接して、各試験に供した。溶接条件の入熱は、40kJ/mm〜60kJ/mmである。
まず、有効結晶粒径の測定方法について説明する。鋼板の幅中央、鋼板表面5mm部と板厚方向の1/4部から試験片を採取し、圧延方向と垂直な面を鏡面研磨し、その面をEBSD法により、500μm×500μmの領域を1μmピッチで測定した。隣接粒との結晶方位差が15°以上の境界を結晶粒界と定義し、結晶粒界に囲まれた領域の円相当径(直径)の加重平均を有効結晶粒径とした。加重平均は、前述の式(11)により求めた。
パーライト分率は、鋼板の幅中央、板厚方向の1/4部から試験片を採取し、圧延方向と垂直な面を鏡面研磨し、ナイタール腐食し、光学顕微鏡を用いて、500倍の倍率で4視野撮影し、各視野のパーライト分率を求め、その平均値をパーライト分率とした。なお、1つの視野の大きさは、200μm×200μmである。また、パーライトは、ナイタール腐食した際、塊状の黒色に見えるものとし、画像解析を行うことによって求めた。
フェライトは、先のEBSD法により測定した測定点同士が第一近接する場合のKAM(Kernel Average Misorientation)値が、1°以下である部分とし、このフェライトの面積分率を、鋼板表面5mm部、t/4部のそれぞれの部位毎に対して求めた。
ベイナイト分率は、パーライト分率とフェライト分率の残部とした。
なお、表5、表6中、鋼板表面5mm部は、表下5と記載し、板厚方向の1/4部は、t/4と記載している。
図1に観察結果の一例を示す。図1中、12は観察した介在物である。表7に、介在物を分析した際の対象元素毎の質量%を示す。なお、O、Ti、Zr、Alの質量%を合計すると100%となる。ここで、Oの質量%が1.0質量%以上の介在物を酸化物とした。そして、これらの元素による単独酸化物、Ti2O3、ZrO2、及びAl2O3を仮定したときの各元素の酸化物の質量換算値を下記式(5)〜下記式(7)から算出する。
Ti2O3=Ti×3.003・・・(5)
ZrO2=Zr×1.351・・・(6)
Al2O3=Al×3.779・・・(7)
表8に各元素の酸化物の質量換算値を示す。
Ti2O3の含有割合(%)=Ti2O3/(Ti2O3+ZrO2+Al2O3)・・・(8)
ZrO2の含有割合(%)=ZrO2/(Ti2O3+ZrO2+Al2O3)・・・(9)
Al2O3の含有割合(%)=Al2O3/(Ti2O3+ZrO2+Al2O3)・・・(10)
この計算結果を、表9に示す。
母材強度は、JIS Z 2241(2011)に準拠し、板厚方向のt/4位置で、圧延方向に対して垂直方向から引張試験片を採取した。引張試験片の各2本を試験測定し、その平均値を求めた。引張試験片は、JIS Z 2241(2011)の4号試験片とした。
そして、NK船級 鋼船規則 K編 材料(2015)に準拠し、U4号試験片を、溶接線方向に対して垂直方向から、板厚の表側から板厚中心方向6mmの位置(表下)、板厚中心の位置(t/2)、板厚の裏側から板厚中心方向6mmの位置(裏下)を中心として、それぞれ3本採取し、フュージョンライン(境界部)に2mmVノッチを加工して作成した。試験は、試験温度−40℃の条件で3回を行い、この平均値からHAZの吸収エネルギー(vE−40)を、表下、t/2、及び裏下のそれぞれの位置について求めた。表下、t/2、及び裏下のそれぞれの位置でのHAZの吸収エネルギー(vE−40)が、それぞれ100J以上のものをHAZ靱性に優れると評価した。
一方、鋼30〜鋼47は、本発明で規定される成分範囲を外れるものであるため、いずれもHAZ靱性が劣位であった。鋼46〜鋼47は規定される成分範囲内であったものの、RHによる処理時の溶存酸素量が過剰なため、酸化物が粗大化し、HAZ靱性が劣位であった。鋼48〜鋼52は規定される成分範囲内であったものの、規定範囲を外れる組織であったため、HAZ靱性が劣位であり、アレスト性も確保できなかった。
Claims (6)
- 質量%で、
C :0.01%〜0.20%、
Si:0.02%〜0.50%、
Mn:0.30%〜2.50%、
Ti:0.003%〜0.024%、
B :0.0005%〜0.0050%、
N :0.0010%〜0.0090%、
O :0.0010%〜0.0050%、
Zr:0.0005%〜0.0100%、
Sol.Zr:0.0020%以下、
Cu:0.0%〜1.5%、
Ni:0.0%〜3.0%、
Cr:0.0%〜1.0%、
Mo:0.00%〜1.00%、
Nb:0.000%〜0.035%
V :0.00%〜0.10%
P :0.050%以下、
S :0.0080%以下、
Al:0.0050%以下、
Mg:0.0000%〜0.0005%、
Ca+REMの含有量の合計が0.0005%以下、
及び、残部として、Fe及び不純物からなり、
下記式(1)で表されるBFが、0.0005%〜0.0030%であり、
下記式(3)で表される炭素当量Ceq.が、0.35%〜0.50%であり、
圧延方向に垂直な断面の板厚方向の1/4位置の電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いた結晶方位解析において、有効結晶粒径が30μm以下であり、
板厚方向の1/4位置のミクロ組織が面積率にして、フェライト分率が20%〜70%、ベイナイト分率が30%〜75%、およびパーライト分率が0%〜5%であり、
下記式(4)で表されるアレスト性指標Arrが95以下であり、
酸化物中のO量、Ti量、Zr量、およびAl量の測定値から求められる、Ti、ZrおよびAlの元素による単独酸化物と仮定したときの前記Ti、前記Zr、および前記Alの各元素の酸化物の質量換算値の合計に対する、Al酸化物の質量換算値の含有割合が20%以下、および前記各元素の酸化物の質量換算値の合計に対する、Zr酸化物とTi酸化物の質量換算値の含有割合の合計が80%以上を満足する酸化物であって、円相当径が0.5μm〜10μmの個数密度が10個/mm2以上の酸化物を含有する鋼板。
(ただし、式(1)中、BasBNは式(2)で表わされる。また、Bは、鋼板に含まれる前記B元素の含有量(質量%)であり0≦BF≦Bの関係を満たす。)
(ただし、式(2)中、0≦BasBN≦Bの関係を満たし、N、Ti、O、及びAlは、鋼板に含まれる前記N、Ti、O、及びAlの各元素の含有量(質量%)であり、Insol.Zrは、酸不溶性Zrの含有量(質量%)であることを表す。)
Ceq.=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(3)
(ただし、式(3)中のC、Mn、Cu、Ni、Cr、MoおよびVは、鋼板に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。)
Arr=0.31×t+0.11×Deff(表)+1.99×Deff(t/4)
+0.032×Deff(表)×fα(表)
+0.007×Deff(t/4)×fα(t/4)・・・(4)
(ただし、式(4)中、tは板厚[mm]であり、Deff(表)は圧延方向に垂直な断面の鋼板表面から板厚方向の5mmの領域の有効結晶粒径[μm]であり、fα(表)は前記鋼板表面から板厚方向の5mmの領域のフェライト分率であり、Deff(t/4)は圧延方向に垂直な断面の鋼板表面から板厚方向の1/4の位置の有効結晶粒径[μm]であり、fα(t/4)は前記鋼板表面から板厚方向の1/4の位置の領域のフェライト分率であることを表す。) - 板厚が55mm以上であり、溶接熱影響部および溶接金属部以外の部分である、母材の降伏応力が460MPa以上であり、かつアレスト靱性値Kcaが6000N/mm1.5になる温度が−10℃以下である請求項1に記載の鋼板。
- 板厚が55mm〜80mmの場合に、入熱40kJ/mm〜60kJ/mmで大入熱溶接を行ったときに発生する溶接熱影響部を、試験温度−40℃で行うシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが、板厚方向で、板厚の表側、板厚中心の位置(t/2)、及び板厚の裏側のすべての箇所において100J以上であり、かつ、溶接熱影響部および溶接金属部以外の部分である、母材の脆性延性遷移温度が−40℃以下である請求項1又は2に記載の鋼板。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、減圧雰囲気の二次精錬において、溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した溶鋼へ、Ti添加後Zrの順に添加、Zr添加後Tiの順に添加、または、TiとZrとを同時に添加、のいずれか一つの添加順序で、TiとZrとを添加した後、Ti及びZr添加後の溶鋼を鋳造して、鋳片を得る工程を有する鋼板の製造方法。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、減圧雰囲気の二次精錬において、溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した溶鋼へTiを添加し、Ti添加後の溶鋼中の溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した後、Zrを添加し、Ti及びZr添加後の溶鋼を鋳造して、鋳片を得る工程を有する鋼板の製造方法。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、減圧雰囲気の二次精錬において、溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した溶鋼へZrを添加し、Zr添加後の溶鋼中の溶存酸素量を質量%で、0.0005%〜0.0050%に調整した後、Tiを添加し、Ti及びZr添加後の溶鋼を鋳造して、鋳片を得る工程を有する鋼板の製造方法。
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