JP4950529B2 - 溶接熱影響部の靭性および母材靭性に優れた鋼材およびその製法 - Google Patents

溶接熱影響部の靭性および母材靭性に優れた鋼材およびその製法 Download PDF

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Description

本発明は、橋梁や高層建造物、船舶などに使用される鋼材を溶接するにあたり、熱影響を受ける部位(以下、「溶接熱影響部」または「HAZ」ということがある)の靭性と、母材の靭性を改善した鋼材およびその製法に関するものである。
橋梁や高層建造物、船舶などに使用される鋼材に要求される特性は、近年益々厳しくなっており、とりわけ良好な靭性が求められている。これらの鋼材は、一般的に溶接にて接合されることが多いが、特にHAZは溶接時に熱影響を受けて靭性が劣化しやすいという問題がある。この靭性劣化は溶接時の入熱量が大きくなるほど顕著に現れ、その原因は溶接時の入熱量が大きくなるとHAZの冷却速度が遅くなり、焼入性が低下して粗大な島状マルテンサイトが生成することにあると考えられている。従ってHAZの靭性を改善するには、溶接時の入熱量を極力抑えればよいと考えられるが、溶接作業効率を高める上では、例えばエレクトロガス溶接、エレクトロスラグ溶接、サブマージ溶接などの溶接入熱量が40kJ/mm以上の大入熱溶接法の採用が望まれる。
大入熱溶接法を採用した場合のHAZ靭性劣化を抑制する鋼材は、既にいくつか提案されている。例えば特許文献1には、鋼材中に微細なTiNを分散再析出させることで、大入熱溶接を行なったときのHAZで生じるオーステナイト粒の粗大化を抑制し、HAZ靭性の劣化を抑えた鋼材が提案されている。しかし本発明者らが検討したところ、溶接金属が1400℃以上の高温になると、HAZのうち特に溶接金属に近接した部位(ボンド部)において、溶接時に受ける熱により上記TiNが固溶消失してしまい、HAZ靭性の劣化を十分に抑えることができないことが分かった。
また特許文献2には、母材とHAZの靭性を向上させる技術として、鋼材に含まれる酸化物と窒化物の存在形態を制御することが開示されている。この文献には、TiとZrを組み合わせて使用することにより、微細な酸化物と窒化物を生成させて母材とHAZの靭性を向上させること、また、こうした微細な酸化物と窒化物を生成させるには、製造工程においてTi、Zrの順に添加すればよいことが開示されている。しかし本発明者らが検討したところ、HAZの靭性を更に高めるには酸化物量を増やせばよいが、上記特許文献2の技術において、酸化物量を増加させるためにTiやZrを多量に添加すると、TiやZrなどの炭化物が形成され、鋼材(母材)の靭性が却って低下することが分かった。
ところで本発明者らは、溶接時に高温の熱影響を受けた場合でもHAZの靭性が劣化しない鋼材を特許文献3に先に提案している。この鋼材は、La23−SiO2系酸化物やCe23−SiO2系酸化物、La23−Ce23−SiO2系酸化物などの複合酸化物を鋼材中に分散させたものであり、この複合酸化物は、溶鋼中では液状で存在するため鋼中に微細分散し、しかも溶接時には熱影響を受けても固溶消失しないため、HAZの靭性向上に寄与する。上記特許文献3には、上記複合酸化物を生成させるため、溶存酸素量を調整した溶鋼へLaやCeを添加し、次いでSiを添加すればよいことも開示している。また特許文献3には、鋼材にTiを含有させて鋼材組織中にTiNを析出させることにより、HAZの靭性が更に高められること、またこうしたTiNを生成させるには、上記複合酸化物が生成した溶鋼へTiを添加すればよいことも開示している。
ところで、鋼板自体の靭性として、特に低温(−40℃)靭性により優れていることも要求されるが、上記技術では、HAZ靭性の改善については取り組まれているものの、優れた母材靭性も併せて具備させることについては検討されていない。従って、溶接熱影響部の靭性と母材靭性に優れた鋼材の実現が切望されている。
特公昭55−26164号公報(特許請求の範囲、第3頁等参照) 特開2003−213366号公報(特許請求の範囲、段落0007、段落0008、段落0018、段落0023等参照) 特開2005−48265号公報(特許請求の範囲、段落0013、段落0052、段落0056等参照)
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、特に入熱量が40kJ/mm以上の溶接を行った場合のHAZ靭性に優れると共に、母材靭性にも優れた鋼材、およびその製法を提供することにある。
即ち、上記課題を解決することのできた本発明に係る鋼材とは、
C:0.03〜0.12%(「質量%」の意味。以下同じ)、
Si:0.5%以下(0%を含まない)、
Mn:1.4〜1.8%、および
N :0.003〜0.01%を含み、
P :0.02%以下(0%を含まない)、
S :0.015%以下(0%を含まない)、および
Al:0.01%以下(0%を含まない)を満足し、
REM:0.001〜0.1%および/またはCa:0.0003〜0.02%と、
Zr:0.001〜0.05%を夫々含有し、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材であって、
該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときに、REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2を含有し、且つ
全組織に占める島状マルテンサイトの分率が1.1%以下で残部がベイナイト組織である点に要旨を有する。
前記鋼材は、該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときに、REMの酸化物および/またはCaOの合計が5%以上で、且つZrO2が5%以上を満足することが好ましい。
前記鋼材は、更に他の元素として、Ti:0.08%以下(0%を含まない)を含むと共に、前記鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときに、Tiを含有することが好ましい。Tiを含むことによって溶接熱影響部の靭性を一層向上させることができるからである。上記の通り鋼材がTiを含む場合には、全酸化物の組成を測定したときに、Tiが0.3%以上であることが好ましい。
前記鋼材は、更に他の元素として、
Cu:2%以下(0%を含まない)、
Ni:3.5%以下(0%を含まない)、
Cr:3%以下(0%を含まない)、
Mo:1%以下(0%を含まない)、
Nb:0.25%以下(0%を含まない)、
V :0.1%以下(0%を含まない)、および
B :0.005%以下(0%を含まない)
よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含むものが好ましく、こうした元素を含有することで母材の強度を高めることができる。
本発明に係る鋼材は、例えば溶存酸素量を0.0020〜0.010%の範囲に調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とZrを添加すれば製造できる。上記鋼材が特にTiを含む場合には、溶存酸素量を0.0020〜0.010%の範囲に調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、TiとZrを添加することが好ましい。この場合には、上記溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とZrを添加するに先立って、Tiを添加することが好ましい。
本発明によれば、大入熱溶接において1400℃レベルの高温に達しても鋼材中に固溶消失しない組成の酸化物を、鋼材中に分散させるため、小〜中入熱溶接に限らず大入熱溶接においても、溶接熱影響部(HAZ)の靭性劣化を防止することができる。また、島状マルテンサイトの分率が制御された組織とすることで、上記HAZ靭性を損ねることなく、母財靭性にも優れた鋼材が得られる。
本発明者らは、まず、HAZの靭性を高めるべく、上記特許文献3とは異なる組成の酸化物を鋼材中に分散させることによってHAZ靭性の向上を達成できないかについて検討を重ねた。その結果、REMおよび/またはCaと、Zrを鋼材に複合添加し、該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときに、REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2が含有するように調整すれば、溶接熱影響部の靭性を高めることができること、またこうした成分系に更にTiを複合添加することによって、前記鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときに、Tiを含有するように調整すれば、溶接熱影響部の靭性が一層向上することを見出した。更に、上記酸化物によるHAZ靭性の向上を阻害させることなく母材靭性を高めるには、島状マルテンサイトの分率を制御した組織とすればよいことを見出し、本発明を完成した。以下、上記本発明について詳述する。
まず、本発明の鋼材は、該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときに、REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2を含有するものである。この様に、REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2が含まれるようにすれば、溶接時に熱影響を受けて1400℃レベルの高温になっても上記酸化物は固溶消失しないため、溶接時のHAZにおいてオーステナイト粒の粗大化を防止することができ、その結果として、REMやCa、Zrを夫々単独添加して酸化物を形成する場合よりもHAZの靭性をより改善することができる。
しかも上記酸化物あるいは複合酸化物を組み合わせて鋼材中に含有させれば、鋼材中に含まれる全酸化物の絶対量を増大させることができ、鋼材(母材)の靭性劣化の原因となるREMの硫化物やCaの硫化物、或いはZr炭化物の生成を防止でき、結果として母材の靭性劣化を抑えつつHAZの靭性を向上させることができる。
本発明の鋼材は、(a)REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2を含有するか、あるいは(b)REMおよび/またはCaと、Zrを含む複合酸化物を含有するか、(c)REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2を含有すると共に、REMおよび/またはCaと、Zrを含む複合酸化物を含有するものであればよい。REMおよび/またはCaと、Zrを含む複合酸化物とは、例えばREMとZrを含む複合酸化物、CaとZrを含む複合酸化物、REMとCaとZrを含む複合酸化物などが挙げられる。
本発明の鋼材は、上述した酸化物の他に、更にTi酸化物を含有することが好ましい。即ち、前記鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときに、Tiを含有するものであればよい。Ti酸化物を含有することで、鋼材中に分散する酸化物量を更に増大させることができるため、HAZの靭性を一層向上させることができる。
上記Ti酸化物は、鋼材中に単独酸化物(Ti)として含有していてもよいし、例えば上記複合酸化物(即ち、REMとZrを含む複合酸化物、CaとZrを含む複合酸化物、REMとCaとZrを含む複合酸化物)に包含されて複合酸化物として含有していてもよい。
上記鋼材は、該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときに、全酸化物に占めるREMの酸化物および/またはCaOの合計が5%以上で、且つ全酸化物に占めるZrO2が5%以上を満足することが好ましい。その理由は、HAZの靭性向上に寄与する酸化物量を確保するためである。REMの酸化物および/またはCaOの合計は10%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。一方、ZrO2は10%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。
上記鋼材がTi酸化物を含有する場合は、該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときにTiが0.3%以上を満足することが好ましい。より好ましくは1%以上、更に好ましくは3%以上、特に好ましくは5%以上、最も好ましくは10%以上である。
本発明の鋼材は、該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときに、REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2およびTiの合計が55%以上であることが好ましい。これらの酸化物の合計が55%未満では、HAZの靭性向上に寄与する酸化物量が不足し、HAZの靭性を充分に改善できないからである。より好ましくは60%以上、更に好ましくは65%以上である。
なお、全酸化物の組成の残りの成分は特に限定されないが、例えばSiO2やAl23、MnOであればよい。SiO2やAl23、MnO以外の「その他」の成分は5%未満に抑えることが好ましい。
鋼材に含まれる酸化物の組成は、鋼材の断面を例えばEPMA(Electron Probe X-ray Micro Analyzer;電子線マイクロプローブX線分析計)で観察し、観察視野内に認められる介在物を定量分析すれば測定できる。EPMAの観察は、例えば加速電圧を20kV,試料電流を0.01μA,観察視野面積を1〜5cm2とし、介在物の中央部での組成を特性X線の波長分散分光により定量分析する。
分析対象とする介在物の大きさは、最大径が0.2μm以上のものとし、分析個数は少なくとも100個とする。
分析対象元素は、Al,Mn,Si,Ti,Zr,Ca,La,CeおよびOとし、既知物質を用いて各元素のX線強度と元素濃度の関係を予め検量線として求めておき、分析対象とする介在物から得られたX線強度と前記検量線から分析対象とする介在物に含まれる元素濃度を定量し、酸素含量が5%以上の介在物を酸化物とする。但し、一つの介在物から複数の元素が観測された場合には、それらの元素の存在を示すX線強度の比から各元素の単独酸化物に換算して酸化物の組成を算出する。本発明の鋼材では、こうして個々の酸化物について得られた定量結果を平均したものを酸化物の平均組成とする。
次に、本発明の鋼材(母材)における成分組成について説明する。本発明の鋼材は、REM:0.001〜0.1%および/またはCa:0.0003〜0.02%と、Zr:0.001〜0.05%を含有するところに特徴がある。こうした範囲を定めた理由は以下の通りである。
REM、CaおよびZrは、鋼材中にREMの酸化物やCaO、ZrO2、或いは複合酸化物を形成してHAZの靭性向上に寄与する元素である。本発明の鋼材では、REMとCaは夫々単独で用いても併用してもよい。
REMを含有させる場合は、0.001%以上とすべきであり、好ましくは0.006%以上、より好ましくは0.010%以上である。しかし過剰に添加すると、REMの硫化物が生成して母材の靭性が劣化するため、0.1%以下に抑えるべきである。好ましくは0.09%以下であり、より好ましくは0.08%以下とする。なお、本発明において、REMとは、ランタノイド元素(LaからLnまでの15元素)およびSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味であり、これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、より好ましくはLaおよび/またはCeを含有させるのがよい。
Caを含有させる場合は、0.0003%以上とすべきであり、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0008%以上である。しかし過剰に添加すると、粗大なCaの硫化物が生成して母材の靭性が劣化するため、0.02%以下に抑えるべきである。好ましくは0.015%以下であり、より好ましくは0.01%以下とする。
Zrは、0.001%以上含有させるべきであり、好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.005%以上である。しかし過剰に添加すると、粗大なZrの炭化物が生成して母材の靭性が劣化するため、0.05%以下に抑えるべきである。好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.03%以下とする。
本発明の鋼材は、REMおよび/またはCaと、Zrを含むほか、基本元素として、C:0.03〜0.12%、Si:0.5%以下(0%を含まない)、Mn:1.4〜1.8%、およびN:0.003〜0.01%を含むものである。このような範囲を定めた理由は以下の通りである。
Cは、鋼材(母材)の強度を確保するために欠くことのできない元素であり、こうした効果を発揮させるには、0.03%以上含有させる必要がある。好ましくは0.04%以上であり、より好ましくは0.05%以上である。しかし0.2%を超えると、溶接時にHAZに島状マルテンサイトが多く生成してHAZの靭性劣化を招くばかりでなく、溶接性にも悪影響を及ぼす。従ってCは0.12%以下、好ましくは0.11%以下、より好ましくは0.10%以下に抑える必要がある。
Siは、脱酸作用を有すると共に鋼材(母材)の強度向上に寄与する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、0.02%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上含有させるのがよい。しかし0.5%を超えると、鋼材(母材)の溶接性や母材靭性が劣化するため、0.5%以下に抑える必要がある。好ましくは0.45%以下であり、より好ましくは0.4%以下に抑える。なお、HAZの更なる高靭性が求められる場合、Siは0.3%以下に抑えるのがよい。より好ましくは0.05%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。但し、このようにSi含有量を抑えるとHAZの靭性は向上するが、強度は低下する傾向にある。
Mnは、鋼材(母材)の強度向上に寄与する元素であり、こうした効果を有効に発揮させるには、1.4%以上含有させる必要がある。好ましくは1.45%以上、より好ましくは1.50%以である。しかし、1.8%を超えて過剰に含有させるとHAZ靭性が劣化するので、Mn量は1.8%以下とする。好ましくは1.75%以下であり、より好ましくは1.70%以下である。
Nは、窒化物(例えば、ZrNやTiNなど)を析出する元素であり、該窒化物は溶接時にHAZに生成するオーステナイト粒の粗大化を防止してフェライト変態を促進するため、HAZの靭性を向上させるのに寄与する。こうした効果を有効に発揮させるため、0.003%以上含有させる。好ましくは0.004%以上である。Nは多いほどオーステナイト粒の微細化が促進されるため、HAZの靭性向上に有効に作用する。しかし0.01%を超えると、固溶N量が増大して母材の靭性が劣化する。従ってNは0.01%以下に抑える必要があり、好ましくは0.009%以下、より好ましくは0.008%以下とする。
本発明の鋼材は、上記元素を含むほか、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.015%以下(0%を含まない)およびAl:0.01%以下(0%を含まない)を満たすものである。このような範囲を定めた理由は以下の通りである。
Pは、偏析し易い元素であり、特に鋼材中の結晶粒界に偏析して靭性を劣化させる。従ってPは0.02%以下に抑制する必要があり、好ましくは0.018%以下、より好ましくは0.015%以下とする。
Sは、Mnと結合して硫化物(MnS)を生成し、母材の靭性や板厚方向の延性を劣化させる有害な元素である。またSは、LaやCeと結合してLaSやCeSを生成し、酸化物の生成を阻害する。従ってSは0.015%以下に抑えるべきであり、好ましくは0.012%以下、より好ましくは0.008%以下、特に0.006%以下とする。
Alは、脱酸力の強い元素であり、過剰に添加すると酸化物を還元して所望の酸化物を生成し難くなる。従ってAlは0.01%以下に抑える必要があり、好ましくは0.0090%以下、より好ましくは0.0080%以下とする。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避的不純物であり、該不可避的不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素(例えば、MgやAs,Seなど)の混入が許容され得る。また、更に下記元素を積極的に含有させることも可能である。
〈Ti:0.08%以下(0%を含まない)〉
Tiは、鋼材中にTi酸化物を生成してHAZの靭性向上に寄与する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Tiは0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.007%以上、更に好ましくは0.01%以上とする。しかし過剰に添加すると、酸化物が多量に生成し過ぎて鋼材(母材)の靭性を劣化させるため、0.08%以下に抑えるべきである。好ましくは0.07%以下であり、より好ましくは0.06%以下とする。
本発明の鋼材には、強度を高めるために、Cu:2%以下(0%を含まない)、Ni:3.5%以下(0%を含まない)、Cr:3%以下(0%を含まない)、Mo:1%以下(0%を含まない)、Nb:0.25%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびB:0.005%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含有させることも有効である。こうした範囲を定めた理由は以下の通りである。
〈Cu:2%以下(0%を含まない)〉
Cuは、鋼材を固溶強化させる元素であり、こうした効果を有効に発揮させるには、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、更に好ましくは0.2%以上である。特に0.6%以上含有させると、固溶強化のほか、時効析出強化も発揮し、大幅な強度向上が可能となる。しかし2%を超えて含有させると、鋼材(母材)の靭性が低下するため、Cuは2%以下に抑えるのがよい。好ましくは1.8%以下であり、より好ましくは1.6%以下とする。
〈Ni:3.5%以下(0%を含まない)〉
Niは、鋼材の強度を高めると共に、鋼材の靭性を向上させるのに有効に作用する元素であり、こうした作用を発揮させるには、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、更に好ましくは0.2%以上とする。Niは多いほど好ましいが、高価な元素であるため経済的観点から3.5%以下に抑えることが好ましい。より好ましくは3.3%以下であり、更に好ましくは3%以下とする。
〈Cr:3%以下(0%を含まない)〉
Crを添加して強度を高めるには、0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.03%以上である。しかし3%を超えると溶接性が劣化するため、Crは3%以下に抑えることが好ましい。より好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1%以下である。
〈Mo:1%以下(0%を含まない)〉
Moを添加して強度を高めるには、0.01%以上含有させるのが望ましい。より好ましくは0.02%以上であり、更に好ましくは0.03%以上含有させるのがよい。但し、1%を超えると溶接性を悪化させるためMoは1%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.9%以下であり、更に好ましくは0.8%以下に抑えることが推奨される。
〈Nb:0.25%以下(0%を含まない)〉
Nbを添加して強度を高めるには、0.005%以上含有させるのが好ましい。より好ましくは0.01%以上であり、更に好ましくは0.03%以上である。しかし0.25%を超えると炭化物(NbC)が析出して母材靭性が劣化するので、Nbは0.25%以下に抑えるのが好ましい。より好ましくは0.23%以下であり、更に好ましくは0.20%以下とする。
〈V:0.1%以下(0%を含まない)〉
Vを添加して強度を高めるには、0.005%以上含有させるのが望ましい。より好ましくは0.01%以上、更に好ましくは0.03%以上含有させるのがよい。しかし0.1%を超えると、溶接性が悪化する共に母材の靭性が劣化するため、Vは0.1%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.06%以下に抑えるのがよい。
〈B:0.005%以下(0%を含まない)〉
Bは、鋼材の強度を高めると共に、溶接時に加熱されたHAZが冷却される過程において鋼中のNと結合してBNを析出し、オーステナイト粒内からのフェライト変態を促進させる。こうした効果を有効に発揮させるには、0.0003%以上含有させるのが好ましい。より好ましくは0.0005%以上であり、更に好ましくは0.0008%以上である。しかし0.005%を超えると、鋼材(母材)の靭性が劣化するため、Bは0.005%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.004%以下であり、更に好ましくは0.003%以下とするのがよい。
本発明において、優れた母材靭性を確保するには、金属組織を、全組織に占める島状マルテンサイトの分率が1.1%以下で且つ残部がベイナイト組織のものとする必要がある。一般に、厚みのある高強度鋼材を製造する場合、理論的限界冷却速度が得られる焼入れ方法(例えば直接焼入れ)によりベイナイト組織を生成させることで高強度化を図る。
しかしこの場合、上記ベイナイト組織と同時に硬質相の島状マルテンサイト(Martensite-Austenite constituent,以下「MA」ということがある)が生成し易く、これが破壊の起点となり、母材靭性に悪影響を及ぼす。図1は、島状マルテンサイトの分率(MA分率)とvTrs(破面遷移温度)の関係を示すグラフであり、後述する実施例の実験結果を整理したものであるが、この図1より、vTrs:−40℃以下と優れた母材靭性を示す鋼材を得るには、MA分率を1.1%以下に抑える必要があることがわかる。より好ましくは、上記MA分率を1.0%以下とするのがよい。
尚、本発明でいう「残部がベイナイト組織」とは、全組織に占めるベイナイト組織が90%以上であって、ベイナイト組織以外に、製造工程で不可避的に形成され得るその他の組織(フェライト、パーライト、MA)を含む意図である。
次に、本発明の鋼材を製造するに当たり、好適に採用できる製法について説明する。上述の通り、鋼材中に、REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2を適量含有させるには、後記の実施例から明らかなように、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを添加する直前の溶存酸素量を適切に制御する、即ち、溶存酸素量を適切に制御した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加することが大変有効である。該方法で製造すれば、REMやCa、Zrの添加量をある程度多くしても上記酸化物を確実に形成させることができ、結果としてREMの硫化物やCaの硫化物、或いはZrの炭化物の生成を防止することができるからである。
このとき上記溶存酸素量が0.0020%未満では、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加しても、酸素量不足になるため、HAZの靭性向上に寄与する酸化物量を確保することができず、しかも酸化物を形成できなかったREMやCaが硫化物を形成したり、Zrが炭化物を形成して母材の靭性を劣化する。上記元素を複合添加する前の溶存酸素量は、0.0025%以上に調整することが好ましく、より好ましくは0.0030%以上である。しかし溶存酸素量が0.010%を超えていると、溶鋼中の酸素量が多すぎるため、溶鋼中の酸素と上記元素の反応が激しくなり溶製作業上好ましくないばかりか、粗大なREMの酸化物、Caの酸化物やZrO2が生成する。従って溶存酸素量は0.010%以下に抑えるべきであり、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.007%以下とする。
上記REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加した後は、合金元素を添加して鋼材の成分を調整すればよい。
なお、上記溶存酸素量を調整した溶鋼へ上記元素を添加するに当たっては、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加すればよく、例えばREMとCaを複合添加する場合には、(a)溶存酸素量を調整した溶鋼へREMとCaとZrを添加した後、合金元素を添加して鋼材の成分を調整してもよいし、(b)溶存酸素量を調整した溶鋼へREM(あるいはCa)とZrを添加した後、Ca(あるいはREM)以外の合金元素を添加して鋼材の成分を調整し、次いでCa(あるいはREM)を添加してもよい。
上記溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加する手順は特に限定されず、例えば(a)REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を添加した後に、Zrを添加してもよいし、(b)Zrを添加した後に、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を添加してもよいし、(c)REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを同時に複合添加してもよい。REMとCaを複合添加する場合には、(d)REM(あるいはCa)を添加した後に、Zrを添加し、次いでCa(あるいはREM)を添加してもよいし、(e)REMとCaとZrを同時に複合添加してもよい。
本発明の鋼材がTiを含む場合、溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加した後に、(a)鋼材の成分調整する際に併せてTiを添加してもよいし、(b)鋼材の成分調整した後に、Tiを添加してもよい。好ましくは溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、TiとZrを添加するのが好ましい。
この場合、溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とZrを添加するに先立って、Tiを添加することが推奨される。溶存酸素量を調整した溶鋼へ、Tiを添加すれば、まずTiが形成されるが、Tiは溶鋼との界面エネルギーが小さいため、形成されたTiのサイズは微細になる。次いでREMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加することによってREMの酸化物やCaO、ZrO2が、上記Tiを生成核として成長するため、結果的に粒子の個数が増大し、オーステナイト粒の粗大化抑制効果が大きくなる。
ところで、転炉や電気炉で一次精錬された溶鋼中の溶存酸素量は、通常0.010%を超えている。そこで本発明の製法では、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを複合添加する前、或いはTiを添加する前に、溶鋼中の溶存酸素量を上記範囲に調整する必要がある。溶存酸素量を調整する方法としては、例えばRH式脱ガス精錬装置を用いて真空C脱酸する方法や、SiやMn,Ti,Alなどの脱酸性元素を添加する方法などが挙げられ、勿論これらの方法を適宜組み合わせて溶存酸素量を調整しても良い。また、RH式脱ガス精錬装置の代わりに、取鍋加熱式精錬装置や簡易式溶鋼処理設備などを用いて溶存酸素量を調整しても良い。この場合、真空C脱酸による溶存酸素量の調整はできないため、溶存酸素量の調整にはSi等の脱酸性元素を添加する方法を採用すれば良い。Si等の脱酸性元素を添加する方法を採用するときは、転炉から取鍋へ出鋼する際に脱酸性元素を添加しても構わない。
溶鋼へ添加するREMやCa,Zr,Tiの形態は特に限定されず、例えば、REMとして、純Laや純Ce,純Yなど、或いは純Ca,純Zr,純Ti、更にはFe−Si−La合金,Fe−Si−Ce合金,Fe−Si−Ca合金,Fe−Si−La−Ce合金,Fe−Ca合金,Ni−Ca合金などを添加すればよい。また、溶鋼へミッシュメタルを添加してもよい。ミッシュメタルとは、セリウム族希土類元素の混合物であり、具体的には、Ceを40〜50%程度,Laを20〜40%程度含有している。但し、ミッシュメタルには不純物としてCaを含むことが多いので、ミッシュメタルがCaを含む場合は本発明で規定する範囲を満足する必要がある。
上記組織を得るには、上記成分組成を満たす鋼材を用い、製造過程における熱間圧延終了温度(仕上圧延終了温度)から、ベイナイト変態終了温度(Bf)以下でマルテンサイト変態開始温度(Ms)以上の温度域までを、6℃/s以上で冷却することが推奨される。この様に、冷却速度の制御をBf以下まで行うことによって、組織をベイナイト主体とすることができ、一方、冷却速度の制御をMs以上までとすることで、未変態オーステナイトが硬質相であるMAになることを十分抑制することができる。尚、上記熱間圧延終了温度(仕上圧延終了温度)とは、後述する実施例に示す要領で求める圧延終了時のt(板厚)/4部位の温度をいうものとする。
前記速度での冷却を行う方法としては、直接焼入れ、加速冷却等の方法が挙げられるが、理論的限界冷却速度を実現できる直接焼入れ法を採用することが推奨される。
また、熱間圧延時の仕上圧延終了温度(後述する実施例に示す要領で求めるt/4部位の温度)は、800〜900℃の範囲に制御すれば、高強度と高靭性を両立できるので好ましい。
こうして得られる本発明の鋼材は、例えば橋梁や高層建造物、船舶などの構造物の材料として使用でき、小〜中入熱溶接はもとより大入熱溶接においても、溶接熱影響部の靭性劣化を防ぐことができると共に、優れた母材靭性を確保することができる。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
溶銑を240トン転炉で一次精錬した後、該転炉から取鍋へ出鋼し、成分調整および温度調整しながら二次精錬を行った。ここで、取鍋では、下記表1に示す脱酸方法で、下記表1に示す溶存酸素量に調整した。その後、下記表1に示す順序で元素を添加した。次いで必要に応じて残りの合金元素を添加して最終的に下記表2に示す組成に調整した。なお、二次精錬にはRH式脱ガス精錬装置等を用いて脱Hや脱Sなどを行なった。また、表1における鋼種No.16の溶存酸素量「−」は、定量限界未満であることを示す。
なお、表1において、LaはFe−La合金の形態で、CeはFe−Ce合金の形態で、REMはLaを50%程度とCeを25%程度含有するミッシュメタルの形態で、CaはNi−Ca合金、またはCa−Si合金、またはFe−Ca圧粉体の形態で、ZrはZr単体で、TiはFe−Ti合金の形態で、夫々添加した。
表2中「−」は元素を添加していないことを示しており、「未満」は元素を添加していないが不可避的に含まれていたため、定量限界未満の範囲で検出されたことを意味している。また、表2に示すBf(ベイナイト変態終了温度)およびMs(マルテンサイト変態開始温度)は、加工フォーマスター試験によりCCT曲線を作成してそれぞれ求めたものである。具体的には、加工フォーマスター試験片を1100℃に加熱して10秒間保持後、1000℃で累積圧下率25%の加工、更に800℃で累積圧下率25%の加工を施し、その後、700℃からの冷却速度を1〜100℃/sの間で7段階変化させ、冷却中の体積変化が生じる温度を測定して変態温度を求めた。更に、冷却後の組織を観察すると共にビッカース硬さを測定して最終組織を同定した。これらの結果から、CCT曲線を作成し、Bf、Msを求めた。
Figure 0004950529
Figure 0004950529
成分調整後の溶鋼を、連続鋳造機でスラブに鋳造し、その後熱間圧延を施して、表3に示す板厚の鋼板を製作した。
熱間圧延の圧延終了温度(圧延終了時のt/4部位の温度)、圧延終了後の冷却速度、該冷却速度での冷却停止温度を表3に示す。
上記仕上圧延終了時のt/4部位の温度は、下記(1)〜(6)の要領で求めたものである。
(1)プロセスコンピュータにおいて、加熱開始から加熱終了までの雰囲気温度、在炉時間に基づき、鋼片の表面から裏面までの板厚方向の任意の位置の加熱温度を算出する。
(2)上記算出した加熱温度を用い、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)のデータに基づいて、板厚方向の任意の位置の圧延温度を差分法など計算に適した方法を用いて算出しつつ、圧延を実施する。
(3)鋼板表面温度は、圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて実測する(ただし、プロセスコンピュータ上においても計算を実施する)。
(4)粗圧延開始時、粗圧延終了時および仕上圧延開始時にそれぞれ実測した鋼板表面温度を、プロセスコンピュータ上の計算温度と照合する。
(5)粗圧延開始時、粗圧延終了時および仕上圧延開始時の計算温度と上記実測温度の差が±30℃以上の場合は、実測表面温度と計算表面温度が一致する様に再計算し、プロセスコンピュータ上の計算温度とする。
(6)上記計算温度の補正を行って、t/4部位の仕上圧延終了温度を求める。
上記の様にして得られた鋼板を用いて、引張試験、金属組織の観察、EPMAによる介在物組成の調査、HAZ靭性および母材靭性の評価を、それぞれ下記の要領で実施した。
〈引張試験〉
各鋼板のt(板厚)/4部位から、圧延方向に対して直角の方向にJISZ 2201の4号試験片を採取して、JISZ 2241の要領で引張試験を行ない、引張強度(TS)を測定した。そして、TSが510MPa以上でYPが390MPa以上のものを、引張特性に優れていると評価した。
〈金属組織の観察〉
島状マルテンサイトの分率は下記の様にして測定した。即ち、圧延方向に平行で且つ鋼板表面に対して垂直な、鋼板表裏面を含む板厚断面を観察できるよう上記鋼板からサンプルを採取し、観察面を鏡面研磨した後、レペラー腐食液で腐食した。そして、t(板厚)/4部位を、光学顕微鏡にて400倍の倍率で撮影し(1視野サイズ:60μm×80μm)、主体の組織がベイナイト(B)、またはフェライト(F)+パーライト(P)であるかを判断した上で、主体の組織がベイナイトの場合には、上記撮影した写真を画像解析装置に取り込み、白黒に画像処理してから白い部分(MA)の面積率を求めた。該測定を任意の12視野以上について行い、その平均値をMA分率とした。
〈介在物組成の調査〉
各鋼板のt(板厚)/4位置における横断面からサンプルを切り出した。切り出されたサンプル表面を島津製作所製「EPMA−8705(装置名)」を用いて600倍で観察し、最大径が0.2μm以上の析出物について成分組成を定量分析した。観察条件は、加速電圧を20kV,試料電流を0.01μA,観察視野面積を1〜5cm2,分析個数を100個とし、特性X線の波長分散分光により析出物中央部での成分組成を定量分析した。分析対象元素は、Al,Mn,Si,Ti,Zr,Ca,La,CeおよびOとし、既知物質を用いて各元素の電子線強度と元素濃度の関係を予め検量線として求めておき、次いで、前記析出物から得られた電子線強度と前記検量線からその析出物の元素濃度を定量した。
得られた定量結果のうち酸素含量が5%以上の析出物を酸化物とし、平均したものを酸化物の平均組成とした。全酸化物の平均組成を下記表4に示す。なお、一つの介在物から複数の元素が観測された場合には、それらの元素の存在を示すX線強度の比から各元素の単独酸化物に換算して酸化物の組成を算出した。
上記サンプル表面をEPMAで観察した結果、観察された酸化物は、REMおよび/またはCaとZrを含む複合酸化物、或いは更にTiを含む複合酸化物が大半であったが、単独酸化物としてREMの酸化物、CaO、ZrO2、Tiも生成していた。
〈HAZ靭性の評価〉
次に、HAZの靭性を評価するため、入熱量40〜60kJ/mmのエレクトロガス溶接またはサブマージ溶接を実施し、板厚方向の裏面7mmを中心とした板厚位置から、JISZ2242(2006)で規定のVノッチシャルピー試験片3本を採取した。次に、該試験片を用いて−40℃でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギー(vE−40)を測定し、上記3本の試験片の平均値を求めた。そして、vE−40が150J以上のものをHAZ靭性に優れると評価した。
〈母材靭性の評価〉
各鋼板のt/4部位からJIS Z 2202(2006)で規定のVノッチ試験片を採取して、JISZ 2242(2006)に規定の方法でシャルピー衝撃試験を行い、破面遷移温度(vTrs)を測定した。そして、vTrsが−40℃以下のものを、母材靭性に優れる[船級Eグレード鋼材規格値(−20℃で55J以上)を安定して確保できる]と評価した。
これらの測定結果を表3に示す。
Figure 0004950529
Figure 0004950529
表1〜4から次のように考察できる(尚、下記No.は、表3、4の鋼板No.を示す)。No.1〜3、5〜9、13〜19は、本発明で規定する要件を満足する例であり、鋼材にREMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2を含有しているため、溶接熱影響部の靭性が良好な鋼材が得られている。また、MA分率も本発明で規定する要件を満足しており、母材靭性にも優れている。
一方、No.4、10〜12、20〜28は、本発明で規定するいずれかの要件を外れる例である。特に、No.20〜27は、鋼材にREMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2の何れか一方を含有していないため、溶接熱影響部の靭性が劣っている。
No.4は、推奨される冷却速度で冷却せず、ベイナイト主体の組織が得られなかったため、引張特性が劣っている。
No.10、11は、推奨される冷却速度での冷却をMsよりも低温域まで行ったため、MAが過剰に生成し、母材靭性に劣る結果となった。
No.12は、推奨される冷却速度で冷却せず、また冷却速度の制御もBfより高温域で終了したため、ベイナイト主体の組織が得られず、引張特性に劣っている。
No.28は、MnおよびAlが過剰であり、溶存酸素量も少ないため、規定の酸化物を十分確保できず、HAZ靭性に劣っている。
島状マルテンサイトの分率(MA分率)とvTrs(破面遷移温度)の関係を示すグラフである。

Claims (8)

  1. C:0.03〜0.12%(「質量%」の意味。以下同じ)、
    Si:0.5%以下(0%を含まない)、
    Mn:1.4〜1.8%、および
    N :0.003〜0.01%を含み、
    P :0.02%以下(0%を含まない)、
    S :0.015%以下(0%を含まない)、および
    Al:0.01%以下(0%を含まない)を満足し、
    REM:0.001〜0.1%および/またはCa:0.0003〜0.02%と、
    Zr:0.001〜0.05%を夫々含有し、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材であって、
    該鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときに、REMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2を含有し、且つ
    全組織に占める島状マルテンサイトの分率が1.1%以下で残部がベイナイト組織であることを特徴とする溶接熱影響部の靭性および母材靭性に優れた鋼材。
  2. 前記REMの酸化物および/またはCaOの合計が5%以上で、且つ前記ZrO2が5%以上を満足するものである請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記鋼材が、更に他の元素として、Ti:0.08%以下(0%を含まない)を含むと共に、前記鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定したときに、Tiを含有するものである請求項1または2に記載の鋼材。
  4. 前記Tiが0.3%以上を満足するものである請求項3に記載の鋼材。
  5. 前記鋼材が、更に他の元素として、
    Cu:2%以下(0%を含まない)、
    Ni:3.5%以下(0%を含まない)、
    Cr:3%以下(0%を含まない)、
    Mo:1%以下(0%を含まない)、
    Nb:0.25%以下(0%を含まない)、
    V :0.1%以下(0%を含まない)、および
    B :0.005%以下(0%を含まない)
    よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の鋼材。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の鋼材を製造する方法であって、
    溶存酸素量を0.0020〜0.010%の範囲に調整した溶鋼へ、
    REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Zrを添加すると共に、
    熱間圧延終了温度(仕上圧延終了温度)から、ベイナイト変態終了温度(Bf)以下でマルテンサイト変態開始温度(Ms)以上の温度域までを、6℃/s以上で冷却することを特徴とする溶接熱影響部の靭性および母材靭性に優れた鋼材の製法。
  7. 請求項3〜5のいずれかに記載の鋼材を製造する方法であって、
    溶存酸素量を0.0020〜0.010%の範囲に調整した溶鋼へ、
    REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、TiとZrを添加すると共に、
    熱間圧延終了温度(仕上圧延終了温度)から、ベイナイト変態終了温度(Bf)以下でマルテンサイト変態開始温度(Ms)以上の温度域までを、6℃/s以上で冷却することを特徴とする溶接熱影響部の靭性および母材靭性に優れた鋼材の製法。
  8. 上記溶存酸素量を調整した溶鋼へ、REMおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とZrを添加するに先立って、Tiを添加する請求項7に記載の製法。
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