JP5999005B2 - 溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力鋼板およびその製造方法 - Google Patents

溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、土木、建築および橋梁分野の溶接構造物に使用され、入熱15〜900kJ/cmの広い条件の溶接熱影響部靭性と耐溶接割れ性(または耐硬化性)に優れ、降伏強さ440MPa以上、引張強さ590MPa以上を有し、降伏比が80%以下の低降伏比高張力鋼板に関するものである。
近年、溶接構造物の大型化に伴い、鋼板の高強度化や厚肉化が進められている。同時に、構造物の施工能率向上と施工コストの低減の観点から溶接効率の向上が求められ、大入熱溶接の適用範囲が拡大している。例えば、高層建築物に用いられるボックス柱では、サブマージアーク溶接やエレクトロスラグ溶接などの溶接入熱が400kJ/cmを超えるような超大入熱溶接が適用されている。
また、建築構造物では耐震性の向上が求められ、鋼板母材の塑性変形能確保のために、降伏比(YR)を80%以下とする低YR特性が要求されてきたが、さらに近年、溶接継手部における高い靱性も要求されるようになってきている。例えば、ボックス柱の溶接部や柱−梁接合部において、0℃におけるシャルピー吸収エネルギー値が、重要な部位では、少なくとも47J以上、その他の部位でも27J以上といった値が必要とされている。
一般に、鋼板に大入熱溶接を適用した際に、最も靱性が低下する部位は、溶接熱影響部(以下HAZと呼ぶ)のうち、溶融線近傍のボンド部と呼ばれる領域である。ボンド部では、大入熱溶接時に融点に近い高温にさらされて、オーステナイト粒が粗大化しやすく、引き続く冷却の際に、上部ベイナイト組織や島状マルテンサイトといった低靭性の組織がオーステナイト粒内に生成しやすい。このようなHAZは、旧オーステナイト粒が粗大化していることから、粗粒HAZ(Coarse grain HAZ : 以下CGHAZと呼ぶ)と呼ばれている。
一方、小入熱多パス溶接時のボンド部では、後続パスによる再加熱によって、2相域まで再加熱される領域(Inter−critically reheated CGHAZ : 以下ICCGHAZと呼ぶ)が存在する。このような領域では、島状マルテンサイトが生成しやすく、靱性が低下する。
引張強さが590MPaを超える高張力鋼板では、強度確保のために合金を多量に添加することが多く、降伏比は上昇し、大入熱溶接のボンド部や小入熱溶接での2相域再加熱HAZ(ICCGHAZ)では、靭性が低下する傾向にある。また、このような鋼板の仮付け溶接や吊り工具の溶接など小入熱でかつビード長さが短い溶接部では、HAZが硬化しやすく、硬化部の硬さがHV350を超えると低温割れや遅れ破壊などの危険があるため、耐溶接割れ性(または耐硬化性)の観点からHAZ硬さは、HV350以下が要求される。このため、低降伏比と優れたHAZ靭性、耐溶接割れ性などをすべて備えた低降伏比高張力鋼板の開発が要望されている。
HAZ靱性の向上に対しては、鋼中に微細な介在物や析出物を分散させて、オーステナイト粒の粗大化を防止するとともに、粒内フェライトの核生成サイトとして機能させて旧オーステナイト粒内組織の微細化を図る技術が普及している。
例えば、特許文献1には、TiNと希土類元素(REM)の酸硫化物(オキシサルファイド)を複合して鋼中に微細分散させる技術が開示されている。また、特許文献2には、Ti酸化物を分散させてオーステナイト粒内でフェライト粒核生成サイトとして利用し、HAZ靱性を向上させる技術が開示されている。特許文献3には、超大入熱溶接HAZ靭性を向上させるために、Ca、O、Sの含有量を適正範囲に調整し、形態を最適化したCa酸硫化物を鋼中に分散して、粒内フェライトの核生成を促進する技術が開示されている。
特許文献4には、合金元素添加量の調整により焼入性を適正な範囲に制御して、大入熱溶接HAZ靭性を高める方法が開示され、焼入性を低い範囲に制御して、超大入熱溶接HAZ部の組織をフェライト+パーライトにする場合と、高い焼入性として下部ベイナイト主体の組織にする場合が開示されている。
特許文献5には、Cを0.02〜0.04%まで低減するとともに、Bおよび他の合金元素を添加することによって焼入性を高め、ベイナイト主体の組織を得る方法が開示されている。
特許文献6には、母材およびHAZの強度が確保しやすいC:0.07〜0.09%の鋼に、Moを0.20〜0.60%添加して、大入熱溶接HAZ組織をベイナイト単相化し、さらに、Si、Pを低減することによって、大入熱溶接HAZ靭性を向上する技術が開示されている。
特開昭60−152626号公報 特開昭57−51243号公報 特開2005−68519号公報 特開平09−202936号公報 特開2000−219934号公報 特開2011−208213号公報
しかしながら、特許文献1〜3の技術では、Ti、N、Ca、S、Oなどの微量元素の量を精密に制御する必要があり、製鋼コストの増加につながったり、大量生産が難しいという問題がある。また、TiNを鋼中に多量に分散させようとしてN量を増加すると、連鋳スラブの表面性状が劣化して、鋳片表面の手入負荷が増大したり、歩留まりが低下してコスト増加につながるという問題点がある。
特許文献4の技術では、低い焼入性では、例えば60mmを超える厚肉材では母材および溶接継手の強度を590MPa以上に保つことが難しく、一方、高い焼入性にするためには、多量の合金元素を添加する必要があるという問題点がある。
特許文献5の技術では、厚肉材で十分な強度を確保するためには、高い焼入性を得るために多量の合金元素を添加する必要があるが、Mn、Cu、Niなどのオーステナイト安定化元素の添加量を増やすことは、連鋳スラブの表面性状を劣化させたり、中央偏析部の硬さの上昇によるスラブ内部欠陥増加などの問題を引き起こすという問題点がある。
特許文献6の技術では、溶接熱影響部靭性と耐溶接割れ性に優れた高強度厚鋼板を、介在物や析出物の微細分散制御など高度な製鋼技術を用いることなく、スラブ表面性状を損ねる元素を添加することもなく、大量生産に適した形で安価に得ることが可能である。エレクトロスラグ溶接部など大入熱溶接熱影響部においても、0℃でのシャルピー吸収エネルギーが27J程度以上の靭性を安定して得ることができる。しかしながら、この方法では、大入熱溶接熱影響部において、0℃で47J以上のシャルピー吸収エネルギーを安定して得ることは困難である。
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決し、最大100mmまでの板厚範囲において、建築構造用として好適な440MPa以上の降伏強さと590MPa以上の引張強さ、80%以下の低降伏比を有し、さらに超大入熱溶接熱影響部および小入熱多パス溶接部において溶接熱影響部靭性と耐溶接割れ性に優れた低降伏比高張力鋼板を介在物、析出物の微細分散制御など高度な製鋼技術を用いることなく、スラブ表面性状を損ねる元素を添加することもなく、大量生産に適した形で安価に得ることを目的とする。
本発明でいう「溶接熱影響部靭性に優れた」とは、溶接入熱量が400kJ/cmを超える超入熱溶接におけるCGHAZと、溶接入熱量20〜50kJ/cmの小入熱多パス溶接におけるICCGHAZとの両方において、シャルピー衝撃試験の0℃における吸収エネルギー(vE0)が47J以上の靭性を有する場合を言うものとする。また、「耐溶接割れ性に優れた」とは長さ40mmのショートビート溶接部の最高硬さがHV350未満且つ、溶接割れ感受性指数Pcmが0.21%以下である場合をいうものとする。
連鋳スラブの割れ発生などにより製造性を損ねないために、スラブ割れを助長するN、B、Cu、Ni等の元素をできるだけ添加しないこととした。合金元素添加量を低減しつつ、母材および溶接継手における安定した引張強さを確保するためには、C量は多い方が望ましいが、優れた耐溶接割れ性とHAZ靭性を得るためにはC低減が望ましい。そのバランスを最適化するために、C量を0.06〜0.09%の狭い範囲に限定し,Mo添加によってミクロ組織をベイナイト主体として強度を確保した。
同時に、SiおよびPを低減することによって、超大入熱溶接のCGHAZおよび小入熱多パス溶接におけるICCGHAZの靭性が向上する。SiとPの低減は、靭性を劣化させる島状マルテンサイトの生成を抑制し、さらに、島状マルテンサイト自体の靭性向上にも寄与する。また、N、B、Cu、Ni等の元素をできるだけ低減することも、超大入熱溶接のCGHAZおよび小入熱多パス溶接におけるICCGHAZの島状マルテンサイト生成抑制に寄与する。これらの成分設計により、小入熱から大入熱の溶接継手熱影響部において、0℃でのシャルピー吸収エネルギーが平均47J程度以上の靭性を安定して確保することができる。
本発明は、上記した知見にさらに検討を加えたもので、その要旨は以下の通りである。
[1]質量%で、C:0.06〜0.09%、Si:0.07%以下、Mn:1.0〜1.6%、P:0.006%以下、S:0.003%以下、Mo:0.20〜0.45%、Al:0.005〜0.060%、Nb:0.005〜0.030%、Ti:0.005〜0.020%を含有し、さらに、N:0.0020%〜0.0040%、Cu:0.05%以下、Ni:0.05%以下、B:0.0003%以下であり、かつ、炭素当量Ceqを0.40〜0.47%、溶接割れ感受性指数Pcmを0.21%以下とし、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた低降伏比高張力鋼板。
[2]さらに、質量%で、Cr:0.05〜0.60%、V:0.005〜0.080%の1種または2種を含有することを特徴とする[1]に記載の溶接熱影響部の靭性に優れた低降伏比高張力鋼板。
[3]上記[1]または[2]に記載の成分組成を有する鋼片を1000〜1200℃に加熱し、熱間圧延後、表面温度780℃以上から直接焼入れを行い、次いで、730〜800℃に再加熱後焼入れし、600℃以下で焼戻しすることを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法。
本発明によれば、最大100mmまでの板厚範囲において建築構造用として好適な440MPa以上の降伏強さと590MPa以上の引張強さ、80%以下の低降伏比を有し、さらに超大入熱溶接熱影響部および小入熱多パス溶接部において、溶接熱影響部靭性と耐溶接割れ性に優れた高強度鋼板を大量生産することができ、鋼構造物の大型化や鋼構造物の耐震性の向上、施工効率の向上に大きく寄与し、産業上格段の効果を奏する。
溶接継手試験片の開先形状を示す図である。 Vノッチシャルピー衝撃試験片の採取位置を示す図である。
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
1.成分組成について
はじめに、本発明の鋼の成分組成を規定した理由を説明する。なお、成分%は、すべて質量%を意味する。
C:0.06〜0.09%
Cは、鋼の強度を増加させ、構造用鋼材として必要な強度を確保するのに有用な元素である。他の合金元素の添加量を必要最小限に抑えるために、C量は、0.06%以上とする。一方、0.09%を超えると耐溶接割れ性の低下、HAZ靭性の低下が顕著になるため、C量は0.06〜0.09%の範囲とする。
Si:0.07%以下
Siの低減は本発明の最も重要な要素の一つである。Siを0.07%以下とすることによって,HAZでの島状マルテンサイトの生成が抑制され,HAZ靭性が向上する。好ましくは0.05%以下である。
Mn:1.0〜1.6%
Mnは、鋼の強度を増加させる作用を有しており、引張強さ590MPa以上を確保するために、1.0%以上の添加を必要とする。一方、1.6%を超えて添加すると、凝固時の中央偏析部への濃化が著しくなり、スラブ欠陥の増加などの原因となる。また、母材およびHAZ靱性が著しく劣化する。このため、Mn量は1.0〜1.6%の範囲とする。好ましくは1.2〜1.6%の範囲である。
P:0.006%以下
Pの低減は本発明の最も重要な要素の一つである。Pは島状マルテンサイトに濃化し、島状マルテンサイトの生成を助長するとともに、島状マルテンサイト自体の靭性を低下させる元素である。HAZ靱性を向上するためには、できるだけ低減することが望ましい。特に低Si化と組み合わせたときには、島状マルテンサイトの生成量が顕著に減少し、HAZ靭性が著しく向上する。Pを0.006%以下とすることによってHAZ靭性向上効果が顕著となるため、P量は0.006%以下とする。
S:0.003%以下
SはMnと結合してMnSを形成する。MnSは圧延により伸長するので、母材の靭性に影響する。従ってMnSはできるだけ減少することが必要であるので、S量は0.003%以下とする。好ましくは0.001%以下である。
Mo:0.20〜0.45%
Moは本発明において、強度確保のために必須の重要元素である。引張り強さ590MPa級の強度を確保するためには、0.20%以上必要である。また、0.45%を超えて含有すると、低降伏比化が困難となる。そのため、Mo量は0.20〜0.45%の範囲とする。
好ましくは0.25〜0.45%の範囲である。
Al:0.005〜0.060%
Alは、脱酸剤として作用し、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスにおいて、もっとも汎用的に使われる。また、鋼中のNをAlNとして固定し、Nによる靭性低下や割れ発生を防止する効果も有する。このような効果は0.005%以上の含有で認められるが、0.060%を超えて含有すると、母材の靱性が低下するとともに、溶接時に溶接金属に混入して靱性を劣化させる。このため、Al量は0.005〜0.060%の範囲とする。好ましくは、0.010〜0.045%の範囲である。
Nb:0.005〜0.030%
Nbは、析出強化によって強度を上昇する効果と、制御圧延時にオーステナイトの再結晶を抑制し、その後の変態組織を微細化して母材を強靱化する効果を有する元素である。この効果を得るには0.005%以上の含有が必要である。また、0.030%を超える含有は、著しく母材およびHAZ靱性を低下させるので、Nb量は0.005〜0.030%の範囲とする。好ましくは、0.008〜0.020%の範囲である。
Ti:0.005〜0.020%
Tiは、Nとの親和力が強く凝固時にTiNとして析出し、HAZでのオーステナイト粒の粗大化抑制、あるいはフェライト変態核としてHAZの高靱化に寄与する。このような効果を得るためには、0.005%以上の含有が必要である。一方、0.020%を超えて含有すると、TiN粒子が粗大化し、上記した効果が期待できなくなる。このため、Ti量は0.005〜0.020%の範囲とする。好ましくは、0.008〜0.020%の範囲である。
N:0.0020〜0.0040%
固溶Nは母材や超大入熱溶接のCGHAZおよび小入熱多パス溶接におけるICCGHAZの島状マルテンサイト生成を促進して靱性を劣化させる。一方、TiやNbと結びついて窒化物を形成した場合、ピンニング効果によりオーステナイト粒の粗大化を防いだり、フェライトやベイナイトの核生成サイトとして機能することにより、HAZ組織の微細化に寄与する。このような効果を得るには、少なくとも0.0020%以上含有する必要がある。一方、0.0040%を超えると、スラブ割れが多発する。そのため、N量は0.0020〜0.0040%の範囲とする。
Cu:0.05%以下、Ni:0.05%以下
Cu、Niはスラブ割れを助長する元素であり、いずれも0.05%以下とする。
B:0.0003%以下
Bは小入熱溶接のHAZを硬化させて耐溶接割れ性を損ねたり、超大入熱溶接のCGHAZおよび小入熱多パス溶接におけるICCGHAZの島状マルテンサイト生成を促進して靱性を劣化させるため、B量は0.0003%以下とする。
本発明では、さらに、炭素当量Ceq、溶接割れ感受性指数Pcmの範囲を定める。
炭素当量Ceq:0.40〜0.47
最大板厚100mmまでの厚肉材で母材およびHAZの強度を確保するためには、Ceqを0.40以上とする必要があるが、0.47を超えると溶接性が低下し、またHAZ靱性が低下するため炭素当量Ceqは、0.40〜0.47の範囲とする。なお、炭素当量Ceqは下記式により求めた。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14(%)
但し、元素記号は各元素の質量%を表す。
溶接割れ感受性指数Pcm:0.21%以下
耐低温割れ性を良好に保ち、板厚60mm以上の厚肉材でもほぼ予熱を必要としない溶接性を確保するため、溶接割れ感受性指数Pcmは0.21以下とする。なお、溶接割れ感受性指数Pcmは下記式により求めた。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20
+Mo/15+V/10+5B(%)
但し、元素記号は各元素の質量%を表す。
以上が本発明の基本化学成分であり、残部はFe及び不可避的不純物からなるが、さらに所望の強度、靭性を得るために、Cr、Vの1種または2種を選択元素として含有しても良い。
Cr:0.05〜0.60%
Crは、スラブ表面性状や中央偏析部に及ぼす悪影響が少なく、超大入熱溶接のCGHAZおよび小入熱多パス溶接におけるICCGHAZの靭性の劣化も少ない元素であり、母材およびHAZの強度調整のため必要に応じて含有できる。強度を上昇させる効果を得るには0.05%以上の含有が必要で、0.60%を超えると溶接性が低下するため、Crを含有する場合は、Cr量は0.05〜0.60%の範囲とすることが好ましい。
V:0.005〜0.080%
Vは、析出強化によって強度を上昇する効果を有する。必要に応じて含有することができるが、このような効果を得るには0.005%以上の含有が必要である。0.080%を超えるVは著しくHAZ靱性を低下するので、Vを含有する場合は、V量は0.005〜0.080%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.010〜0.050%の範囲である。
2.製造方法について
次に、製造条件について説明する。本発明は、上述した組成を有する鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法により鋼片等の鋼素材とすることができるが、鋼の溶製方法や鋳造方法を特定するものではない。
鋼片加熱温度:1000〜1200℃
鋼片加熱温度は1000℃未満では、熱間圧延時の変形抵抗が大きくなり、圧延が困難となる。また、1200℃超えとすると、鋼片加熱時にスケールが多量に発生し、スケール疵の原因となる。そのため、鋼片加熱温度は1000〜1200℃の範囲とする。
直接焼入れ温度:780℃以上
直接焼入れを行うことにより、製造コストの低減および製造工期の短縮となる。一方、直接焼入れの温度が鋼板表面温度で780℃を下回った場合、強度確保が困難となる。そのため、直接焼入れ温度は780℃以上とする。
再加熱後の焼入れ温度:730〜800℃
低降伏比を得るためには、直接焼入れ後に再加熱して、二相域温度から焼入れを実施することが有効である。焼入温度が730℃未満では強度確保が困難となり、また、800℃を超えると低降伏比確保が困難となる。そのため、再加熱後の焼入れ温度は730〜800℃の範囲とする。
焼戻し温度:600℃以下
靭性確保のために焼戻しを行う。焼戻し温度が600℃を超えると、Moの析出強化により、YRが上昇するので、焼戻し温度は、600℃以下とする。なお、靭性改善のためには400℃以上の焼戻し温度が必要であるので、好ましくは400〜600℃の範囲である。
転炉−取鍋精錬−連続鋳造法で、表1に示す組成に調製された鋼素材(スラブ:板厚250mm)を熱間圧延により100mm厚の鋼板とした。
得られた各鋼板の板厚1/4の位置から、JIS4号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性を調査した。また、得られた各鋼板の板厚1/4の位置から、JIS Z 2242の規定に準拠して、Vノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して、シャルピー衝撃試験を実施し、0℃における吸収エネルギー(vE0)求め、母材靱性を評価した。
また、得られた各鋼板から、継手用試験板(大きさ:400×600mm)を採取し、図1に示すような開先形状としたエレクトロスラグ溶接(ESW)(溶接入熱量:1000kJ/cm)により、溶接継手を作製した。なお、供給ワイヤは、JIS Z 3353 YES62相当品、フラックスはJIS Z 3353 FS−FG3相当品を使用した。
得られた溶接継手から、図2に示すように切欠き位置をボンド部とするVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して、試験温度:0℃でのシャルピー衝撃試験を行って、継手ボンド部の0℃における吸収エネルギー(vE0℃)を求め、継手靱性を評価した。また、誘導加熱によって、1400℃および800℃をピーク温度として、800℃→500℃の平均冷却速度を50℃/sとする小入熱多パス溶接のICCGHAZに相当する2重熱サイクルを与えた試料からVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、0℃における吸収エネルギー(vE0℃)を求めた。得られた結果を表2に示す。
Figure 0005999005
Figure 0005999005
表1に示すように、鋼No.A〜鋼No.Cは成分組成が本発明の範囲内である発明例であり、鋼No.D〜鋼No.Eは成分組成が本発明の範囲外である比較例である。これらの鋼を用いて製造した鋼板の母材、溶接部の試験結果が表2である。
本成分の範囲を外れている鋼No.D、鋼No.Eは、溶接熱影響部の0℃における吸収エネルギー(vE0℃)が47Jを下回っているのに対し、発明例である鋼No.A〜鋼No.Cは、47Jを上回っている。
1 試験材
2 溶接金属
3 シャルピー試験片

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.06〜0.09%、Si:0.07%以下、Mn:1.0〜1.6%、P:0.006%以下、S:0.0020〜0.003%、Mo:0.20〜0.45%、Al:0.005〜0.060%、Nb:0.005〜0.030%、Ti:0.005〜0.020%を含有し、さらに、N:0.0020%〜0.0040%、Cu:0.05%以下、Ni:0.05%以下、B:0.0003%以下であり、かつ、以下の式(1)で表される炭素当量Ceqを0.40〜0.47%、以下の式(2)で表される溶接割れ感受性指数Pcmを0.21%以下とし、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とし、溶接入熱量が400kJ/cmを超える超大入熱溶接におけるCGHAZと、溶接入熱量20〜50kJ/cmの小入熱多パス溶接におけるICCGHAZの両方において、溶接熱影響部のシャルピー衝撃試験の0℃における吸収エネルギー(vE0℃)が47J以上である溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力鋼板。
    Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14(%)・・・(1)
    Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B(%)・・・(2)
    但し、元素記号は各元素の質量%を表す。
  2. さらに、質量%で、Cr:0.05〜0.60%、V:0.005〜0.080%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の低降伏比高張力鋼板の製造方法であり、鋼片を1000〜1200℃に加熱し、熱間圧延後、表面温度780℃以上から直接焼入れを行い、次いで、730〜800℃に再加熱後焼入れし、600℃以下で焼戻しすることを特徴とする溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法。
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