JP5509685B2 - 超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、土木,建築,橋梁等の分野で構築される溶接構造物に好適な低降伏比高張力厚鋼板の製造方法に関し、特に入熱400kJ/cmを超える大入熱溶接(以下、超大入熱溶接という)による熱影響部の靭性に優れ、降伏強さ630MPa以上,引張強さ780MPa以上,降伏比85%以下の低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、溶接構造物の大型化が進められ、それに伴って鋼板の高強度化や厚肉化の要求が高まっている。また、溶接構造物を構築する工事における施工能率の向上および施工コストの低減という観点から、溶接効率の向上が求められており、大入熱溶接が広く採用されている。特に、高層建築に用いられるボックス柱の接合では、溶接入熱が400kJ/cmを超えるような超大入熱溶接(たとえばサブマージアーク溶接,エレクトロスラグ溶接等)が行なわれている。
一方で、土木,建築,橋梁等の分野の溶接構造物には耐震性が求められ、溶接構造物の塑性変形性を確保して倒壊を防止するために低降伏比(たとえば降伏比80%以下)の鋼板が使用されている。さらに、溶接構造物の耐震性を一層向上するために、鋼板の溶接継手にも高い靭性が要求されるようになって来た。たとえば高層建築では、ボックス柱同士の溶接継手やボックス柱と梁との溶接継手にも、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが70J以上といった高い靭性が要求されている。
超大入熱溶接を行なった場合に、靭性が著しく低下するのは溶接熱影響部(以下、HAZという)であり、そのHAZの中でも溶融線近傍のボンド部と呼ばれる領域にて最も低下する。ボンド部では、超大入熱溶接の際に融点に近い高温に曝されることによってオーステナイト粒が粗大化し、引き続き冷却されて上部ベイナイトやマルテンサイトのような靭性の低い組織がオーステナイト粒内に生成する。その結果、HAZの靭性が低下する。
特に引張強さが780MPaを超える高強度鋼では、合金元素を多量に添加するので、鋼板の降伏比が上昇し、超大入熱溶接のHAZの靭性が低下する傾向が認められる。そのため、HAZの靭性に優れ、かつ降伏比の低い高強度厚鋼板を製造する技術が種々検討されている。
たとえば特許文献1には、希土類元素(以下、REMという)の酸硫化物(すなわちオキシサルファイド)とTiNとを複合して鋼板中に分散させることによってオーステナイト粒の粗大化を抑制し、大入熱溶接におけるHAZの靭性を改善する技術が開示されている。しかしながら超大入熱溶接においては、TiNが融点に近い高温に長時間曝されて固溶するので、オーステナイト粒の成長を抑制する効果が得られないという問題がある。また、鋼板の強度を高めるためにREMやTi等の合金元素を多量に添加すると、鋼板の焼入れ性が増加するので、上部ベイナイトやマルテンサイトのような靭性の低い組織がオーステナイト粒内に生成し易くなるという問題がある。
特許文献2には、Ti酸化物を鋼板中に分散させてフェライトの生成核として活用することによって、HAZの靭性を改善する技術が開示されている。しかしながら、引張強さ780MPa以上の高強度鋼では合金元素を多量に添加する必要があり、鋼板の焼入れ性が増加して、上部ベイナイトやマルテンサイトが生成し易くなり、フェライトの生成が困難になる。
特許文献3には、引張強さ780MPa以上の高強度鋼の大入熱溶接におけるHAZの靭性を向上する技術として、C,Siを低減し、Cuの析出強化を利用して炭素当量を低減した鋼板に2相域温度から急冷する焼入れ処理(以下、2相域焼入れ処理という)を施すことによって、大入熱溶接における溶接性とHAZ靭性に優れた低降伏比HT780鋼板を製造する技術が開示されている。しかしながら、この技術では析出強化元素であるCuを1質量%以上添加するので、エレクトロスラグ溶接等の超大入熱溶接におけるHAZの靭性向上には限界があり、0℃のシャルピー衝撃値は高々40J程度である。
特許文献4には、Cを0.010〜0.060質量%まで低減することによってマルテンサイトの減少と微細化を図り、さらにKP=[%Mn]+1.5[%Cr]+2[%Mo]≧3.20を満たすMn,Cr,Moを添加することによって冷却速度が遅い場合にも低温ベイナイトを生成させることによって、大入熱溶接におけるHAZの靭性を向上する技術が開示されている。この技術では、HT780鋼板の降伏比を85%以下にすることは困難であるが、エレクトロスラグ溶接のHAZにて−10℃で47J以上のシャルピー衝撃値が得られている。そこで特許文献5には、特許文献4と類似の組成を有する鋼板の残留オーステナイトを1.0%とすることによって、大入熱溶接におけるHAZの優れた靭性と82%以下の低降伏比を両立させる技術が開示されている。しかしながらKP≧3.20を達成するために、従来のHT780に比べて多量のMn,Cr,Moを添加しなければならない。Mnを多量に添加すると鋳片の中央偏析部の硬化に起因する割れを誘発し、CrとMoを多量に添加すると再加熱割れ感受性を高める等の問題がある。また、残留オーステナイトは再加熱や冷間加工に対して不安定であり、鋼板の加工方法によっては容易に降伏比が上昇するという問題もある。
特開昭60-152626号公報 特開昭57-51243号公報 特開平5-163527号公報 特開2000-160281号公報 特開2001-226740号公報
本発明は、土木,建築,橋梁等の分野で使用される低降伏比高張力厚鋼板(板厚100mm以下)の製造方法を提供することを目的とする。詳しくは、780MPa以上の引張強さと85%以下の降伏比を有するとともに、溶接性や耐再加熱割れ性も従来の低降伏比HT780鋼板と同等以上であり、かつ超大入熱溶接によって高靭性のHAZが得られる超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
ここで、超大入熱溶接とは400kJ/cmを超える入熱量で行なう溶接を指し、溶接熱影響部(すなわちHAZ)の優れた靭性とは、400kJ/cmを超える超大入熱溶接で得られるボンド部のシャルピー吸収エネルギー(0℃)が47J以上であることを指す。
発明者らは、厚鋼板の強度の向上と溶接性の改善を両立させるために、Ceqを0.28以下とする成分を選択し、その成分で超大入熱溶接におけるHAZの靭性を向上する研究を行なった。
その結果、厚鋼板の降伏比を低減するためには、2相域焼入れ処理が有効であることが判明した。つまり、2相域に保持する間にフェライトとオーステナイトの境界にMn,Cu,Ni等の元素が分布することを利用して、厚鋼板に各合金元素の含有量に濃淡を付与することができる。この合金元素の濃淡分布は、HAZが受けるような短時間の加熱では消失しないので、濃度が低い領域では焼入性が低下し、変態点は上昇する。そのため、旧オーステナイト粒内に存在する合金元素の低濃度領域におけるベイナイトの核生成が促進されて、粒内ベイナイトが生成される。この粒内ベイナイトは、超大入熱溶接におけるHAZを構成する粗大な上部ベイナイト組織を分割し、靭性を高める。
本発明は、以上のような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、質量%で、C:0.075〜0.13%,Si:0.05〜0.45%,Mn:0.8〜1.4%,P:0.020%以下,S:0.003%以下,Al:0.010〜0.060%,B:0.0005〜0.0030%,Ti:0.005〜0.030%,N:0.005%以下を含有し、さらにCr:0.05〜1.0%,Mo:0.05〜0.50%,Nb:0.005〜0.050%およびV:0.010〜0.060%の中から選ばれる1種以上を含有し、さらにCu:0.10〜1.0%およびNi:0.50〜2.0%のうちの1種以上を([%Mn]/6+[%Cu]/15+[%Ni]/15)の値が0.20〜0.38%となるように含有し、かつ各元素の含有量を用いて(1)式で定義されるCeqが0.46〜0.60を満足し、(2)式で定義されるPcmが0.28以下を満足し、(3)式で定義されるPSRが0.30以下を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ミクロ組織が、Mn、Cu、Niの含有量が鋼材平均よりも高い濃化領域と低い淡化領域を含み、([%Mn]/6+[%Cu]/15+[%Ni]/15)の値が鋼材平均の85%以下である淡化領域の分率が15%以上である超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた降伏強さ630MPa以上、引張強さ780MPa以上、降伏比85%以下の低降伏比高張力厚鋼板である。
Ceq=[%C]+([%Mn]/6)+{([%Ni]+[%Cu])/15}
+{([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
Pcm=[%C]+([%Si]/30)+([%Mn]/20)+([%Cu]/20)
+([%Ni]/60)+([%Cr]/20)+([%Mo]/15)
+([%V]/10)+(5×[%B]) ・・・(2)
SR=[%Cr]+[%Cu]+2[%Mo]+10[%V]+7[%Nb]
+5[%Ti]−2 ・・・(3)
[%C]:C含有量(質量%)
[%Mn]:Mn含有量(質量%)
[%Ni]:Ni含有量(質量%)
[%Cu]:Cu含有量(質量%)
[%Cr]:Cr含有量(質量%)
[%Mo]:Mo含有量(質量%)
[%V]:V含有量(質量%)
[%Si]:Si含有量(質量%)
[%B]:B含有量(質量%)
[%Nb]:Nb含有量(質量%)
[%Ti]:Ti含有量(質量%)
本発明の低降伏比高張力厚鋼板においては、鋼素材が、前記した組成に加えて、質量%でCa:0.0010〜0.0030%,REM:0.0010〜0.020%およびMg:0.0010〜0.0050%のうちの1種以上を含有することが好ましい。
また本発明は、前記した組成を有する鋼素材を熱間圧延によって厚鋼板とし、次いで厚鋼板を900〜1000℃の温度に再加熱して10分以上保持した後、800〜500℃の温度範囲を平均冷却速度1℃/秒以上で冷却して焼入れを行なう再加熱焼入れ処理を施し、さらに(Ac1+50℃)〜(Ac1+100℃)の2相域温度に加熱して30分以上保持した後、Ac1〜500℃の温度範囲を平均冷却速度1℃/秒以上で冷却して焼入れを行なう2相域焼入れ処理を施し、さらに400〜600℃の温度に加熱して保持する焼戻し処理を施す超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板の製造方法である。
本発明によれば、土木,建築,橋梁等の分野で好適な、板厚100mm以下の範囲で780MPa以上の引張強さと85%以下の降伏比を有するとともに、溶接性や耐再加熱割れ性も従来の低降伏比HT780鋼板と同等以上であり、かつ超大入熱溶接によって高靭性のHAZが得られる超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた降伏強さ630MPa以上、引張強さ780MPa以上、降伏比85%以下の低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明を適用して溶接を行なう開先の例を模式的に示す断面図である。 シャルピー試験片の採取位置を模式的に示す断面図である。
まず、本発明を適用して厚鋼板を製造するために熱間圧延を行なう鋼素材の成分を限定する理由を説明する。各元素の含有量の単位は、いずれも質量%である。
C:0.075〜0.13%
Cは、厚鋼板の強度を増加させる作用を有し、構造用鋼材として必要な強度を確保する上で重要な元素である。C含有量が0.075%未満では、降伏比を低下する上で不可欠な硬質第2相を増加できず、780MPa以上の引張強さが得られないばかりでなく、降伏比の低減を達成できない。一方、0.13%を超えると、超大入熱溶接のHAZに島状マルテンサイトが生成して、HAZの靭性が低下するばかりでなく、溶接性の低下を招く。したがって、Cは0.075〜0.13%の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.080〜0.12%である。
Si:0.05〜0.45%
Siは、超大入熱溶接の溶融メタル中で脱酸剤として作用する。Si含有量が0.05%未満では、脱酸剤としての効果が得られない。一方、0.45%を超えると、厚鋼板の靭性が劣化するとともに、HAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Siは0.05〜0.45%の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.05〜0.35%である。
Mn:0.8〜1.4%
Mnは、厚鋼板の強度を増加させる作用を有し、構造用鋼材として必要な強度を確保する上で重要な元素である。Mn含有量が0.8%未満では、780MPa以上の引張強さが得られない。一方、1.4%を超えると、後述するCeq値(すなわち0.46〜0.60)の範囲内では、厚鋼板のみならずHAZの靭性が著しく劣化する、あるいは鋳片の中央偏析部におけるMnの濃化によってHAZが硬化して割れが生じる等の問題が生じる。したがって、Mnは0.8〜1.4%の範囲内を満足する必要がある。
P:0.020%以下
Pは、厚鋼板の強度を増加させる一方で靭性を劣化させる元素である。そのため、超大入熱溶接によるHAZの靭性の劣化を防止する観点から、Pを可能な限り低減する必要がある。P含有量が0.020%を超えると、HAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Pは0.020%以下とする。なお、P含有量の下限値は特に限定しないが、Pを過剰に低減すれば、溶鋼を溶製する段階で精錬コストの上昇を招く。したがって、Pは0.005〜0.020%が好ましい。より好ましくは0.005〜0.015%である。
S:0.003%以下
Sは、溶鋼の凝固段階でCaと結合してCaS粒子を晶出する。CaS粒子は熱間圧延後の冷却時にフェライト生成核として作用し、厚鋼板の降伏比低下に寄与する。さらに、その厚鋼板の超大入熱溶接を行なう際には、CaS粒子上にMnSが析出してフェライト生成核として作用し、溶接金属の靭性を向上させる。ところがS含有量が0.003%を超えると、溶鋼の連続鋳造にて鋳片の中央偏析部に多量のMnSが偏析して、鋳片内部に欠陥が生じるばかりでなく、その鋳片から製造した厚鋼板の靭性が劣化する。したがって、Sは0.003%以下とする。
Al:0.010〜0.060%
Alは、溶鋼を溶製する段階で脱酸剤として使用される。また、溶鋼中のNをAlNとして固定し、後述するBによる焼入れ性向上の効果を維持したり、AlNのピンニング効果によってオーステナイト粒を細粒化する効果も有する。Al含有量が0.010%未満では、これらの効果が得られない。一方、0.060%を超えると、厚鋼板の靭性が劣化するとともに、厚鋼板の超大入熱溶接を行なう際に溶接金属に混入して、溶接金属の靭性を劣化させる。したがって、Alは0.010〜0.060%の範囲内を満足する必要がある。
B:0.0005〜0.0030%
Bは、微量の添加で厚鋼板の焼入れ性を向上することによって、厚鋼板の強度を増加させる元素である。また、Bは溶鋼を溶製する段階でNと結合してBNを生成し、熱間圧延後の冷却時にそのBNがフェライト生成核として作用し、厚鋼板の降伏比低下に寄与する。さらにBは、TiNが固溶するような超大入熱溶接によるHAZにBNを生成させる。このBNはフェライト生成核として作用するばかりでなく、固溶Nを低減する効果も有するので、HAZの靭性向上に寄与する。B含有量が0.0005%未満では、これらの効果が得られない。一方、0.0030%を超えると、厚鋼板のみならずHAZの靭性が劣化するばかりでなく、厚鋼板の降伏強度が著しく上昇するので降伏比の制御が困難になる。したがって、Bは0.0005〜0.0030%の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.0007〜0.0020%である。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは、Nとの親和力が強く、溶鋼の連続鋳造にてTiNとして析出し、熱間圧延後の冷却時にそのTiNがフェライト生成核として作用し、厚鋼板の降伏比低下に寄与する。さらにTiNは、超大入熱溶接のHAZにおけるオーステナイトの成長を抑制し、かつフェライト生成核として作用するので、HAZの靭性向上に寄与する。Ti含有量が0.005%未満では、これらの効果が得られない。一方、0.030%を超えると、TiN粒子が粗大化するので、これらの効果が得られない。したがって、Tiは0.005〜0.030%の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.008〜0.018%である。
N:0.005%以下
Nは、溶鋼の連続鋳造にてTiNとして析出し、熱間圧延後の冷却時にそのTiNがフェライト生成核として作用し、厚鋼板の降伏比低下に寄与する。さらにTiNは、超大入熱溶接のHAZにおけるオーステナイトの成長を抑制し、かつフェライト生成核として作用するので、HAZの靭性向上に寄与する。ところがN含有量が0.005%を超えると、超大入熱溶接によってHAZのTiNが溶解し、その結果、固溶N量が増加してHAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Nは0.005%以下とする。
Cr:0.05〜1.0%,Mo:0.05〜0.50%,Nb:0.005〜0.050%,V:0.010〜0.060%の中から選ばれる1種以上
CrとMoは焼入性の向上によって厚鋼板の強度を増加させ、MnとVは析出強化によって厚鋼板の強度を増加させる元素である。780MPa以上の引張強さを確保するためには、これらの元素の1種以上を含有する必要がある。ただし含有量が低すぎる場合は、これらの効果は得られない。一方、過剰に添加すると厚鋼板の靭性とHAZの靭性が低下する。したがって、Cr:0.05〜1.0%,Mo:0.05〜0.50%,Nb:0.005〜0.050%,V:0.010〜0.060%の範囲内とする。
Cu:0.10〜1.0%,Ni:0.50〜2.0%のうちの1種以上
CuとNiは、焼入性を高めることによって厚鋼板の強度を増加させる元素である。Cu含有量が0.10%以下では、その強度上昇の効果が得られない。一方、Cu含有量が1.0%を超えると、溶接性が低下するばかりでなく、厚鋼板とHAZの靭性が析出脆化によって低下する。したがって、Cuは0.10〜1.0%の範囲内とする。また、Ni含有量が0.50%未満では、強度上昇の効果が得られない。一方、Ni含有量が2.0%を超えると、溶接性が低下する。したがって、Niは0.50〜2.0%の範囲内とする。
([%Mn]/6+[%Cu]/15+[%Ni]/15):0.20〜0.38%
CuとNiは、Mnとともにオーステナイトを安定化する元素であり、ベイナイトまたはマルテンサイトの変態開始温度と終了温度を低下させる。[%Mn]/6+[%Cu]/15+[%Ni]/15の値が0.20%未満では、その効果が得られない。一方、0.38%を超えると、残留オーステナイトが生じて、厚鋼板の機械的特性が不安定になる。したがって、[%Mn]/6+[%Cu]/15+[%Ni]/15の値は0.20〜0.38%の範囲内とする。 ここで[%Mn]はMnの含有量,[%Cu]はCu含有量,[%Ni]はNi含有量を指す。含有量の単位は、いずれも質量%である。
Ceq:0.46〜0.60
Ceqは下記の(1)式で定義される値である。Ceqが0.46未満では、再加熱焼入れ処理や2相域焼入れ処理における焼入れ性が不足するので、フェライトが生成する。その結果、板厚80mm以上の厚鋼板では所望の引張強さ(すなわち780MPa以上)が得られない。また再加熱焼入れ処理を行なっても厚鋼板にマルテンサイトまたはベイナイトの微細な組織が得られないので、2相域焼入れ処理で合金元素の濃淡を生じさせることが困難になる。一方、0.60を超えると、HAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Ceqは0.46〜0.60の範囲内を満足する必要がある。
Ceq=[%C]+([%Mn]/6)+{([%Ni]+[%Cu])/15}
+{([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
ここで[%C]はC含有量,[%Mn]はMn含有量,[%Ni]はNi含有量,[%Cu]はCu含有量,[%Cr]はCr含有量,[%Mo]はMo含有量,[%V]はV含有量を指す。含有量の単位は、いずれも質量%である。
Pcm:0.28以下
Pcmは下記の(2)式で定義される値である。Pcmが0.28を超えると、低温割れ感受性が高くなり、溶接金属に割れが発生し易くなる。したがって、Pcmは0.28以下とする。
Pcm=[%C]+([%Si]/30)+([%Mn]/20)+([%Cu]/20)
+([%Ni]/60)+([%Cr]/20)+([%Mo]/15)
+([%V]/10)+(5×[%B]) ・・・(2)
ここで[%C]はC含有量,[%Si]はSi含有量,[%Mn]はMnの含有量,[%Cu]はCu含有量,[%Ni]はNi含有量,[%Cr]はCr含有量,[%Mo]はMo含有量,[%V]はV含有量,[%B]はB含有量を指す。含有量の単位は、いずれも質量%である。
SR:0.30以下
SRは下記の(3)式で定義される値である。PSRの増加に伴って再加熱割れ感受性が増加し、HAZの再加熱割れが発生し易くなる。再加熱割れを軽減するためにはPSRを0.30以下とする必要がある。
SR=[%Cr]+[%Cu]+2[%Mo]+10[%V]+7[%Nb]
+5[%Ti]−2 ・・・(3)
ここで[%Cr]はCr含有量,[%Cu]はCu含有量,[%Mo]はMo含有量,[%V]はV含有量,[%Nb]はNb含有量,[%Ti]はTi含有量を指す。含有量の単位は、いずれも質量%である。
本発明では、上記の成分に加えてCa:0.0010〜0.0030%,希土類元素(すなわちREM):0.0010〜0.020%およびMg:0.0010〜0.0050%のうちの1種以上を含有しても良い。
Ca:0.0010〜0.0030%,REM:0.0010〜0.020%,Mg:0.0010〜0.0050%のうちの1種以上
Ca,REM,Mgは、いずれも厚鋼板およびHAZの靭性を向上する作用を有しており、必用に応じて添加する。Ca,REM,Mgは0.0010%以上添加することが好ましいが、過剰に添加しても効果が飽和して添加量の増加に見合う効果が得られない。そのため、 Caは0.0010〜0.0030%,REMは0.0010〜0.020%,Mgは0.0010〜0.0050%の範囲内が好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
なお本発明では、ミクロレベルでMn,Cu,Niの濃化領域と淡化領域を形成し、淡化領域からの粒内フェライト核生成を促進することにより、HAZの靭性の向上を図る。フェライト核生成を促進するためには、EPMA等によって測定される局所的な([%Mn]/6+[%Cu]/15+[%Ni]/15)の値を、鋼材平均値の85%以下とする必要がある。また、このような淡化領域の分率が15%未満の場合は、十分な量の粒内フェライトを生成することができない。そこで、([%Mn]/6+[%Cu]/15+[%Ni]/15)の値が鋼材平均値の85%以下である淡化領域の分率を15%以上に限定した。
次に、厚鋼板の製造工程について説明する。
溶鋼を溶製し、さらに鋳造して、上記した成分を有する鋼素材を製造する工程で採用する技術は特に限定せず、従来から知られている技術を使用する。ただし厚鋼板を大量に製造することを考慮すると、溶鋼を転炉,電気炉,真空溶解炉等で溶製し、脱ガス処理を施してガス成分を調整した後、連続鋳造を行なって鋼素材(すなわちスラブ)を製造することが好ましい。
この鋼素材を加熱し、さらに熱間圧延を施して厚鋼板とする。熱間圧延は、熱間加工の後で焼入れ−焼戻し,焼入れ−2相域焼入れ−焼戻し等の従来から知られている低降伏比HT780鋼板の製造技術を使用する。ただし、低降伏比と高強度を両立させるために最も好適なプロセスは、厚鋼板を一端冷却した後で再加熱して行なう再加熱焼入れ−2相域焼入れ−焼戻しの3段熱処理である。
再加熱焼入れでは、次工程の2相域焼入れによって形成されるオーステナイトを安定化する元素の濃化領域および淡化領域を微細かつ均一に分布させるため、再加熱によって均一で細かいオーステナイト組織とした後で焼入れを行なう。その焼入温度(すなわち再加熱温度)が900℃未満では、焼入性が低下して粗大な上部ベイナイトまたはフェライトが生成して、オーステナイトを安定化する元素の濃化領域と淡化領域の分布が不均一となり、超大入熱溶接におけるHAZの靭性が低下する。一方、1000℃を超えると、オーステナイト粒が粗大になり、厚鋼板の靭性が低下する。したがって、焼入温度は900〜1000℃の範囲内とする。
また、焼入温度の保持時間が10分未満では、オーステナイト粒径のバラツキが大きくなり、一部の領域で焼入性が著しく低下する。したがって、保持時間は10分以上とする。冷却速度が1℃/秒未満では、マルテンサイトや上部ベイナイトを主体とする焼入組織が得られない。したがって、冷却速度は1℃/秒以上とする。
2相域焼入れは、厚鋼板を加熱して2相組織とすることによって厚鋼板の降伏比を低下させるために行なう。また2相域温度に保持する間に合金元素が分散されて、超大入熱溶接におけるHAZの靭性を向上する効果も得られる。保持温度が(Ac1+50℃)未満では、オーステナイトの分率が低すぎるので、厚鋼板の硬質相分率が不足し、780MPa以上の引張強さを確保し難くなる。一方、(Ac1+100℃)を超えると、オーステナイトの分率が高すぎるので、軟質相であるフェライト相が不足し、80%以下の降伏比を達成し難くなる。しかもオーステナイト中に濃化するCが減少し、硬質相の硬さが低下するので、厚鋼板の強度が低下する。したがって、2相域焼入れに先立つ加熱の保持温度は(Ac1+50℃)〜(Ac1+100℃)の範囲内とする。
また、2相域焼入れに先立つ加熱の保持時間が30分未満では、Cu,Ni,Mn等の合金元素が十分に分散されない。したがって、保持時間は30分以上とする。冷却速度が1℃/秒未満では、硬質相の硬さを確保できない。したがって、冷却速度は1℃/秒以上とする。
焼戻しは、2相域焼入れによって生成した脆い硬質相を焼戻すことによって、厚鋼板の靭性を向上させるために行なう。焼戻しに先立つ加熱温度(すなわち焼戻し温度)が400℃未満では、その効果が得られない。一方、600℃を超えると、厚鋼板の強度が低下して780MPa以上の引張強さを達成し難くなる。したがって、焼戻し温度は400〜600℃の範囲内とする。焼戻し温度の保持時間は特に限定しないが、0〜60分程度が好ましい。
なお厚鋼板の板厚が100mmを超えると、本発明を適用しても、超大入熱溶接によるHAZの靭性を板厚方向全域にわたって向上することは困難である。厚鋼板の板厚が100mm以下であればHAZの靭性を板厚方向全域にわたって改善できるので、板厚の下限値は特に限定しない。ただし、超大入熱溶接によるHAZの靭性改善が困難であると一般に言われていた板厚80mm以上の厚鋼板に本発明を適用すると、多大な効果が得られる。したがって、厚鋼板の板厚は100mm以下が好ましく、80〜100mmの範囲内が一層好ましい。
転炉を用いて溶製した溶鋼に取鍋精錬を施し、さらに連続鋳造によって鋼素材(すなわちスラブ)を製造した。鋼素材の板厚は310mmであり、その成分は表1に示す通りである。表1に示す発明例(すなわち鋼種A〜F,I,J)は、成分が本発明の範囲を満足する例である。比較例のうち、鋼種KはC含有量が本発明の範囲を外れる例、鋼種LはC含有量とPcm値が本発明の範囲を外れる例、鋼種M,NはCeq値が本発明の範囲を外れる例、鋼種O,Pは[%Mn]/6+[%Cu]/15+[%Ni]/15の値が本発明の範囲を外れる例である。
Figure 0005509685
これら鋼素材に熱間圧延を行ない板厚60,80,100mmの厚鋼板とした後、表2に示す条件で再加熱焼入れ処理,2相域焼入れ処理,焼戻し処理を行なった。表2に示す厚鋼板記号A,D〜Pは、それぞれ鋼種A,D〜P(表1参照)の鋼素材から製造した厚鋼板であり、再加熱焼入れ処理,2相域焼入れ処理,焼戻し処理の条件はいずれも本発明の範囲を満足する。厚鋼板記号B−1,B−8は、鋼種B(表1参照)の鋼素材から製造した厚鋼板であり、再加熱焼入れ処理,2相域焼入れ処理,焼戻し処理の条件はいずれも本発明の範囲を満足する。厚鋼板記号C−1〜C−8は、鋼種C(表1参照)の鋼素材から製造した厚鋼板であり、再加熱焼入れ処理,2相域焼入れ処理,焼戻し処理の条件はいずれも本発明の範囲を満足する。
厚鋼板記号C−9〜C−17は、鋼種C(表1参照)の鋼素材から製造した厚鋼板であるが、再加熱焼入れ処理の加熱温度が本発明の範囲を外れる。厚鋼板記号C−9,C−10は、鋼種Cの鋼素材から製造した厚鋼板であるが、再加熱焼入れ処理の保持温度が本発明の範囲を外れる例である。厚鋼板記号C−11は、鋼種Cの鋼素材から製造した厚鋼板であるが、再加熱焼入れ処理の保持時間が本発明の範囲を外れる例である。厚鋼板記号C−12は、鋼種Cの鋼素材から製造した厚鋼板であるが、再加熱焼入れ処理と2相焼入れ処理の冷却速度が本発明の範囲を外れる例である。厚鋼板記号C−13,C−14は、鋼種Cの鋼素材から製造した厚鋼板であるが、2相域焼入れ処理の保持温度が本発明の範囲を外れる。厚鋼板記号C−15は、鋼種Cの鋼素材から製造した厚鋼板であるが、2相域焼入れ処理の保持時間が本発明の範囲を外れる例である。厚鋼板記号C−16,C−17は、鋼種Cの鋼素材から製造した厚鋼板であるが、焼戻し処理の保持温度が本発明の範囲を外れる例である。
Figure 0005509685
これらの厚鋼板の板厚方向1/4の深さの位置からJIS4号引張試験片を採取し、JIS規格Z2241の規定に準拠して引張試験を行ない、降伏強さ(YS)と引張強さ(TS)を調査した。さらに、得られた降伏強さと引張強さから降伏比(YR)を算出した。その結果を表3に示す。
また、厚鋼板の板厚方向1/4の深さの位置からJIS規格Z2202の規定に準拠してVノッチ試験片を採取し、JIS規格Z2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を行ない、0℃における吸収エネルギー(V0)を調査した。その結果を表3に示す。
さらに、これらの厚鋼板の板厚方向1/4の深さの位置から淡化領域の分率測定用の試験片を採取し、圧延方向に平行な断面(すなわちL断面)をEPMAにて面分析して、Mn,Cu,Niの濃度分布を測定した。濃度分布の測定面積は50μm×50μmとし、4視野ずつ測定し、淡化領域(すなわち([%Mn]/6+[%Cu]/15+[%Ni]/15の値が鋼材平均値の85%以下である領域)の分率を算出した。これらの4視野の平均値を淡化領域の分率とした。その結果を表3に示す。
次に、各厚鋼板から継手用試験板(400mm×600mm)を2枚ずつ採取し、図1に示すような開先を形成した。すなわち、継手用試験板1を直角に組み合わせ、かつ幅25mmの隙間3を設けて、その隙間3の両側に当て金2を配置して開先を形成した。
この開先にエレクトロスラグ溶接(以下、ESWという)を行なって、溶接継手を作製した。ESWの溶接入熱は1000kJ/cmとし、溶接ワイヤはJIS規格3353YES62相当品,溶接フラックスはJIS規格3353FS-FG3相当品を使用した。
得られた溶接継手から、図2に示すように、切欠き位置をボンド部としてVノッチ試験片5を採取し、JIS規格Z2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を行ない、0℃における吸収エネルギー(V0)を調査した。その結果を表3に示す。
Figure 0005509685
表3から明らかなように、発明例の厚鋼板の機械的特性の調査結果は、降伏強さ(YS)が632〜698MPaであり、いずれも630MPa以上であった。また、引張強さ(TS)が782〜864MPaであり、いずれも780MPa以上であった。さらに、降伏比(YR)が79.1〜84.4%であり、いずれも85%以下であった。
発明例の厚鋼板とその溶接継手の靭性の調査結果は、厚鋼板の吸収エネルギー(V0)が153〜288J,ESW継手のボンド部の吸収エネルギー(V0)が48〜88Jであり、いずれも優れた靭性を有していた。
一方、比較例では、厚鋼板記号C−9,C−13は淡化領域の分率,厚鋼板の降伏強さと引張強さ,ESW継手のボンド部の吸収エネルギーが不十分であった。厚鋼板記号C−10は淡化領域の分率,厚鋼板の吸収エネルギー,ESW継手のボンド部の吸収エネルギーが不十分であった。厚鋼板記号C−11,C−12,C−17は厚鋼板の降伏強さと引張強さが不十分であった。厚鋼板記号C−14は淡化領域の分率,厚鋼板の降伏比,ESW継手のボンド部の吸収エネルギーが不十分であった。厚鋼板記号C−15は淡化領域の分率,ESW継手のボンド部の吸収エネルギーが不十分であった。厚鋼板記号C−16は厚鋼板の吸収エネルギーが不十分であった。厚鋼板記号Kは厚鋼板の降伏強さと引張強さと降伏比が不十分であった。厚鋼板記号L,Mは厚鋼板の吸収エネルギー,ESW継手のボンド部の吸収エネルギーが不十分であった。厚鋼板記号Nは厚鋼板の降伏強さと引張強さが不十分であった。厚鋼板記号Oは淡化領域の分率,ESW継手のボンド部の吸収エネルギーが不十分であった。厚鋼板記号PはESW継手のボンド部の吸収エネルギーが不十分であった。
土木,建築,橋梁等の分野で好適な、板厚100mm以下の範囲で780MPa以上の引張強さと85%以下の降伏比を有するとともに、溶接性や耐再加熱割れ性も従来の低降伏比HT780鋼板と同等以上であり、かつ超大入熱溶接によって高靭性のHAZが得られる超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた降伏強さ630MPa以上、引張強さ780MPa以上、降伏比85%以下の低降伏比高張力厚鋼板を得ることができ、鋼構造物の大型化や耐震性の向上,施工効率の改善に大きく寄与し、産業上格段の効果を奏する。
1 継手用試験板
2 当て金
3 隙間
4 溶接金属
5 Vノッチ試験片

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.075〜0.13%、Si:0.05〜0.45%、Mn:0.8〜1.4%、P:0.020%以下、S:0.003%以下、Al:0.010〜0.060%、B:0.0005〜0.0030%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.005%以下を含有し、さらにCr:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.050%およびV:0.010〜0.060%の中から選ばれる1種以上を含有し、さらにCu:0.10〜1.0%およびNi:0.50〜2.0%のうちの1種以上を([%Mn]/6+[%Cu]/15+[%Ni]/15)の値が0.20〜0.38%となるように含有し、かつ各元素の含有量を用いて(1)式で定義されるCeqが0.46〜0.60を満足し、(2)式で定義されるPcmが0.28以下を満足し、(3)式で定義されるPSRが0.30以下を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ミクロ組織が、Mn、Cu、Niの含有量が鋼材平均よりも高い濃化領域と低い淡化領域を含み、([%Mn]/6+[%Cu]/15+[%Ni]/15)の値が鋼材平均の85%以下である淡化領域の分率が15%以上であることを特徴とする超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた降伏強さ630MPa以上、引張強さ780MPa以上、降伏比85%以下の低降伏比高張力厚鋼板。
    Ceq=[%C]+([%Mn]/6)+{([%Ni]+[%Cu])/15}
    +{([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
    Pcm=[%C]+([%Si]/30)+([%Mn]/20)+([%Cu]/20)
    +([%Ni]/60)+([%Cr]/20)+([%Mo]/15)
    +([%V]/10)+(5×[%B]) ・・・(2)
    SR=[%Cr]+[%Cu]+2[%Mo]+10[%V]+7[%Nb]
    +5[%Ti]−2 ・・・(3)
    [%C]:C含有量(質量%)
    [%Mn]:Mn含有量(質量%)
    [%Ni]:Ni含有量(質量%)
    [%Cu]:Cu含有量(質量%)
    [%Cr]:Cr含有量(質量%)
    [%Mo]:Mo含有量(質量%)
    [%V]:V含有量(質量%)
    [%Si]:Si含有量(質量%)
    [%B]:B含有量(質量%)
    [%Nb]:Nb含有量(質量%)
    [%Ti]:Ti含有量(質量%)
  2. 前記鋼素材が、前記組成に加えて、質量%でCa:0.0010〜0.0030%、REM:0.0010〜0.020%およびMg:0.0010〜0.0050%のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた降伏強さ630MPa以上、引張強さ780MPa以上、降伏比85%以下の低降伏比高張力厚鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の組成を有する鋼素材を熱間圧延によって厚鋼板とし、次いで前記厚鋼板を900〜1000℃の温度に再加熱して10分以上保持した後、800〜500℃の温度範囲を平均冷却速度1℃/秒以上で冷却して焼入れを行なう再加熱焼入れ処理を施し、さらに(Ac1+50℃)〜(Ac1+100℃)の2相域温度に加熱して30分以上保持した後、Ac1〜500℃の温度範囲を平均冷却速度1℃/秒以上で冷却して焼入れを行なう2相域焼入れ処理を施し、さらに400〜600℃の温度に加熱して保持する焼戻し処理を施すことを特徴とする超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた降伏強さ630MPa以上、引張強さ780MPa以上、降伏比85%以下の低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
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