JPH11152366A - フッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜 - Google Patents

フッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜

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JPH11152366A
JPH11152366A JP9318513A JP31851397A JPH11152366A JP H11152366 A JPH11152366 A JP H11152366A JP 9318513 A JP9318513 A JP 9318513A JP 31851397 A JP31851397 A JP 31851397A JP H11152366 A JPH11152366 A JP H11152366A
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JP
Japan
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vinylidene fluoride
membrane
porous membrane
based resin
copolymer
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JP9318513A
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Yuzuru Ishibashi
譲 石橋
Shoichi Takamura
正一 高村
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱性や耐薬品性に優れ、かつ、機械的強度
特性が優れたフッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜を提供す
る。 【解決手段】 フッ化ビニリデン系のホモポリマーとコ
ポリマーとから構成されており、かつ、それら全体の9
0wt%〜98wt%がフッ化ビニリデンモノマー単位
で構成されたフッ化ビニリデン系樹脂から成ることを特
徴とするフッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は限外ろ過、精密ろ
過など物質の濃縮や分離に適した多孔膜、あるいは、リ
チウムイオン電池等の非水系二次電池の隔膜として使用
される多孔膜に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にフッ化ビニリデン系樹脂は、耐熱
性や耐薬品性に優れることから、その特性を活かして、
他の素材では実現困難なろ過用途への適用が検討されて
きた。また、近年、携帯電話やパソコン等の小型化、軽
量化のために高エネルギー密度の電池が要求されてい
る。これに対応する電池として、電解液の漏出がなく、
非金属製パッケージの採用が可能で電池の薄型化や軽量
化の点で優れた、いわゆる『リチウムイオンポリマー電
池』の開発が行われている。このような電池として、従
来のポリオレフィン製隔膜の代わりにフッ化ビニリデン
系樹脂製膜を用いた電池が提案されており、特に、特開
平8−250127号公報では、フッ化ビニリデン系樹
脂から成る多孔膜に電解液を含浸させたリチウムイオン
導電性膜を電池の隔膜部分に使用することが提案されて
いる。
【0003】このような用途に適用し得るフッ化ビニリ
デン系樹脂の多孔膜化は、例えば、特開昭54−163
83号公報、特公昭61−38207号公報、特開昭6
0−97001号公報、特公平7−8548号公報、特
公平7−8549号公報等に記載されており、限外ろ過
用途向けの孔径から精密ろ過用途向けの孔径まで、広い
範囲で孔径を制御することが可能になっている。
【0004】しかしながら、フッ化ビニリデン系ホモポ
リマーを用いた膜の場合には、脆い膜しか得られず、ろ
過用モジュールや電池に組み立てる時やそれらの使用時
に破断し易く、組み立て収率の低下や使用時トラブルの
原因となるという欠点を有していた。一方、柔軟性を上
げる目的でコポリマーを使用した場合には、フッ化ビニ
リデンモノマー単位の含有量をかなり低下させたコポリ
マーでないと機械的強度特性が不十分であり、この場合
には耐熱性や耐薬品性が著しく劣る欠点を有していた。
したがって、優れた耐熱性や耐薬品性と、優れた機械的
強度特性とを併せ持つ多孔膜の出現が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐熱性や耐
薬品性に優れ、かつ、機械的強度特性が優れたフッ化ビ
ニリデン系樹脂製多孔膜を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の従来
技術の問題点に鑑み、組成の異なるフッ化ビニリデン系
樹脂の膜物性を検討したところ、同一組成であっても、
ホモポリマーとコポリマーとをブレンドした場合の方が
コポリマー単体の場合よりも機械的強度に優れた膜が得
られることを見出した。
【0007】すなわち、本発明は、 (1)フッ化ビニリデン系のホモポリマーとコポリマー
とから構成されており、かつ、それら全体の90wt%
〜98wt%がフッ化ビニリデンモノマー単位で構成さ
れたフッ化ビニリデン系樹脂から成ることを特徴とする
フッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜、に関する。
【0008】また、本発明の特に好ましい態様は以下の
とおりである。 (2)フッ化ビニリデン系コポリマーが、フッ化ビニリ
デン−ヘキサフロロプロピレン共重合体である上記
(1)記載のフッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜。 (3)フッ化ビニリデン系コポリマーが、フッ化ビニリ
デン−ヘキサフロロプロピレン共重合体であって、フッ
化ビニリデンモノマー単位の含有量が80wt%〜90
wt%である上記(1)記載のフッ化ビニリデン系樹脂
製多孔膜。 (4)フッ化ビニリデン系樹脂が架橋されている上記
(1)記載のフッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
フッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜を形成するポリマー
は、ホモポリマーとコポリマーとの両者から構成されて
いる必要がある。ホモポリマーのみでは膜の引張破断伸
度が低く脆い膜しか得られない。また、コポリマーのみ
では、耐熱性や耐薬品性と機械的強度特性とがトレード
オフの関係にあり、実用上充分な強度を得るためにはフ
ッ化ビニリデンモノマー単位の含有量が90wt%未満
のコポリマーである必要があるが、この場合には耐熱性
や耐薬品性が著しく低下してしまう。
【0010】本発明でいうホモポリマーとは、フッ化ビ
ニリデンモノマー単位の含有量が98.5wt%を超え
る量である樹脂をいう。本発明のコポリマーとしては、
フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとの共重合体
であり、具体的には、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオ
ロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオ
ロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフル
オロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオ
ロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチ
レン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合
体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニ
リデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニ
リデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化
ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合
体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキ
サフルオロプロピレン共重合体等を例示することができ
る。これらのポリマー種の中では、フッ化ビニリデン−
ヘキサフルオロプロピレン共重合体が、機械的強度と耐
熱性や耐薬品性とのバランスが良好であるので特に好ま
しい。さらに、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロ
ピレン共重合体の場合では、フッ化ビニリデン含有量が
80wt%〜90wt%であることが好ましい。80w
t%未満では、耐熱性や耐薬品性が低下する傾向が見ら
れるし、90wt%を越える範囲では、機械的強度が劣
る傾向が出てくる。
【0011】本発明の多孔膜では、構成するフッ化ビニ
リデン系樹脂全体の90wt%〜98wt%がフッ化ビ
ニリデンモノマー単位である必要がある。90wt%未
満では、機械的強度特性は良好であるものの、耐熱性や
耐薬品性が著しく低下する。また、98wt%を超える
量では、引張破断伸度が著しく低く、脆い膜になってし
まう。ホモポリマーやコポリマーの組成にしたがって各
々の配合量を設定することにより、上記範囲に調整する
ことができる。
【0012】また、本発明の多孔膜は、その特性を損な
うことのない範囲において、上記のフッ化ビニリデン系
樹脂以外のポリマーをその構成成分として含有すること
もできる。その許容量の範囲は、ポリマー種にもより一
概に言えないが、全構成ポリマー量の10wt%以下が
好ましく、5wt%以下がより好ましい。本発明の多孔
膜の組成は、NMR測定によって容易に確認することが
できる。また、構成するポリマーがブレンド物であるこ
とは、FT−IRやXPS等によって、膜最表面と内部
の組成を比較する方法や、溶解分別法によって分離した
ポリマーを分析・比較する方法等によって確認すること
ができる。
【0013】この発明の多孔膜は、構成するフッ化ビニ
リデン系樹脂を架橋することによって、機械的強度特性
と耐熱性や耐薬品性とのバランスを、さらに改善するこ
とができる。一般にフッ化ビニリデン系樹脂は、高温に
おいてリチウムイオン二次電池で用いられる電解液のよ
うな有機溶媒によって著しく膨潤したり、溶解してしま
う。架橋構造を有することで、高い高温安定性が得られ
る。この架橋構造は重合時、多孔質薄膜の形成前、形成
後のどの段階でも導入することができる。
【0014】架橋の方法としては、重合時に多官能のモ
ノマーを用いる方法、重合後に電子線、γ線、X線、紫
外線等の輻射エネルギーを照射する方法、また、重合後
にラジカル開始剤を含有させて熱や輻射エネルギー照射
により反応させる方法等を用いることができる。重合後
に架橋構造を導入する場合、新たに単官能または/およ
び多官能のモノマー成分を共存させておくこともでき
る。これらの方法の中でも、夾雑物や未反応官能基が残
存しにくいので、重合後に電子線、γ線、X線、紫外線
等の輻射エネルギーを照射する方法が好ましい。なかで
も、多孔膜の膜厚が100μm以下の場合には、電子線
照射による架橋が経済的であり、特に好ましい。電子線
照射により架橋を行う場合には、照射量は5〜100M
radの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは
8〜50Mradの範囲である。5Mrad未満では架
橋の効果が十分でなく、100Mradを超えるとポリ
マーの崩壊が顕著になる。
【0015】この架橋構造形成の確認は、未架橋ポリマ
ーが可溶の溶剤への溶解性により確認することができ
る。即ち、架橋構造を有する重合体は可溶性溶剤に溶解
しない成分を有し、均一溶解しないことから架橋構造形
成を判別することができる。この可溶性溶剤は、ポリマ
ーの種類によって異なるため、特に限定されないが、通
常、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジ
メチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホ
ルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、アセトン、テ
トラヒドロフラン、エチレンカーボネート、プロピレン
カーボネートなどが使用できる。溶解に際しては、加温
して促進することもできる。
【0016】本発明のフッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜
は、連通孔を有する多孔質材料であって、製膜条件を適
宜調整することによって、数十〜数万(リットル/m2
/hr/0.1MPa、25℃)の透水性を有する膜を
得ることができる。また、製膜条件を適宜選択すること
によって、0.01〜10μmの任意の値の平均孔径を
有する膜を得ることができる。特に電池用隔膜として用
いる場合には、0.1〜3μmの範囲であることが好ま
しい。0.1μm未満では、高い電流密度のときに充放
電特性が低下し、5μmを超える場合には内部短絡を起
こし易くなる傾向がある。なお、上記の平均孔径は、
(1)膜の最表面から1μm以内の範囲に、それ以外の
部分より孔径の小さい領域が観察される場合には、表面
の平均孔径をいい、(2)膜の最表面から1μmを超え
る範囲に、孔径の小さい領域が観察される場合には、A
STM F316−86記載の方法に基づいて、含浸液
としてエタノールを用いて測定された『平均流量細孔
径』をいう。表面の平均孔径の測定では、孔の形状が真
円でない場合には、画像解析によって面積相当径を計算
して求める。
【0017】この発明の多孔膜の空隙率は10〜95%
の範囲にあることが好ましく、特に好ましくは20〜9
0%、さらに好ましくは40〜85%である。10%未
満では充分な透水性を得ることが困難になり、また95
%を超えると充分な機械的強度が得られにくい傾向があ
る。また、多孔膜の膜厚は、用途によって異なるが、一
般的には1〜500μm程度のものが用いられ、好まし
くは10〜300μmである。特に、電池用隔膜として
は20〜100μmの範囲が最も好ましい。500μm
を越える膜厚では、分離膜用としては分離効率が低下
し、また電池用隔膜としては実効電気抵抗が高くなりす
ぎるうえ、電池の体積当たりのエネルギー密度が低くな
る。一方、1μm未満では強度が不足する。
【0018】本発明のフッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜
においては、その構造は特に限定されるものではない。
例えば、少なくとも一方の表面に内部よりも緻密な層
を有し、内部に巨大空孔及び三次元網目構造を有してい
る膜、少なくとも一方の表面に内部よりも緻密な層を
有し、内部が三次元網目構造である膜、表面及び内部
とも三次元網目構造である膜、片側表面に緻密な層を
有し、該表面層の下部に巨大空孔からなる層とから構成
される2層構造である膜、少なくとも両表面に緻密な
層を有し、内部に巨大空孔からなる層とから構成される
3層若しくは5層構造の膜、等が挙げられる。これらの
構造の中でも、、及びの膜が、機械的強度が良好
であるので特に好ましい。
【0019】このような本発明のフッ化ビニリデン系樹
脂製多孔膜は、公知の方法を応用することによって製造
できるが、中でも、フッ化ビニリデンホモポリマーとフ
ッ化ビニリデン系コポリマーとを溶媒に溶解し、該溶液
を膜状に付形して脱溶媒する方法が、孔径制御範囲が広
いため、好ましく用いられる。本発明の多孔膜の製造に
おいては、原料ポリマー種として、フッ化ビニリデン系
のホモポリマーとコポリマーとを使用することが必要で
ある。両者のポリマーを使用しない場合には、機械的強
度と耐熱性、耐薬品性とを兼ね備えた膜を製造すること
が困難になる。
【0020】上記の溶媒として、N−メチル−2−ピロ
リドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミ
ド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド、ジ
エチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ト
リメチルホスフェート、テトラメチル尿素等の良溶媒
や、アセトン、メチルエチルケトン、エチレンカーボネ
ート、プロピレンカーボネート、ジメチルサクシネー
ト、ジエチルサクシネート、ジメチルフタレート、ジエ
チルフタレート、ジエチルアジペート、エチレングリコ
ール、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、ε
−カプロラクタム等の貧溶媒が挙げられる。これらは、
単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用い
ることもできる。該ポリマー溶液を調製するに際して
は、特に貧溶媒を用いる場合には、加熱することが好ま
しい。
【0021】また、該ポリマー溶液を調製するに当た
り、添加剤を添加することによって、より大孔径の多孔
膜を製造することが可能である。使用できる添加剤とし
ては、ポリオキシエチレングリコール、ポリビニルピロ
リドン、ポリビニルアルコールや界面活性剤等が挙げら
れる。また、少量であれば、水、アルコール類、エーテ
ル類、ジオキサン等の非溶媒を添加することもできる。
【0022】上記のポリマー溶液を、Tダイ等のスリッ
ト状開口部から膜状に押し出すことによって、平膜状に
付形することができ、また、二重紡口から押し出すこと
によって、中空糸状に付形することができる。上記の製
法において、多孔膜を形成するためには、付形した後に
脱溶媒する必要がある。この脱溶媒の方法として、大き
く分けて2通りの方法をとることができる。第一の方法
は、ポリマー溶液を構成する溶媒と均一に溶解するがフ
ッ化ビニリデン系樹脂を溶解しない非溶媒中に浸漬する
方法である。第二の方法は、ポリマー溶液中の溶媒を加
熱することによって蒸発除去する方法である。どちらの
場合もこの段階で多孔膜の構造が決定される。このと
き、非溶媒中に直接平膜状に押し出して浸漬することに
より、膜の両面に緻密な層を有する膜が製造でき、ま
た、ガラスのような基板上に流延したものを基板ごと非
溶媒中に浸漬するか、加熱処理するかして脱溶媒するこ
とにより、片面に緻密な層を有するものが製造できる。
また、二重紡口から流延させることによって中空状の膜
を製造することもできる。この工程において、ポリマー
溶液組成や非溶媒液組成、或いはポリマー溶液温度や脱
溶媒温度などの条件を適宜選択することによって、孔径
や透水性能を制御することができる。
【0023】上記のようにして脱溶媒した後、必要によ
り洗浄を行うことによって、多孔膜内部に残留する溶媒
や添加剤成分を除去することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下実施例によって本発明をさら
に詳細に説明する。 (1)構成フッ化ビニリデン系樹脂中のVdF含量の測
定 多孔膜サンプルをd化−ジメチルスルホキシドに溶解し
て、10wt%溶液とし、19F−NMR測定を行った。
【0025】ヘキサフルオロプロピレンのCF3 基に由
来する−78ppm前後のシグナル強度と、ビニリデン
フルオライドのCF2 基に由来する−95ppm前後と
−110〜−125ppmの複数本のシグナル強度とか
ら、常法によりCF2 基モル%を求め、重量%に換算し
た。 (2)断面構造の観察 多孔膜サンプルにエタノールを含浸した状態で液体窒素
に浸漬して凍結させた後に割断し、その断面をSEM
(日立製作所製SEM S−800型)を用いて観察し
た。 (3)厚みの測定 多孔膜サンプルを表面が平滑なガラス板(厚み1mm)
2枚で挟み、その厚みをデジタルマイクロメーターで測
定した。上記ガラス板2枚のみの厚さを別途測定し、前
期測定値からガラス板分の値を差し引いて求めた。 (4)空隙率の測定 多孔膜サンプルをエタノール(特級試薬)に浸漬して親
水化処理を行った後、室温で2時間以上純水に浸漬して
空隙内を完全に純水で置換した。次いで、膜表面の水を
拭き取った後、空隙に純水を含む多孔膜の重量(A)を
測定した。続いて、該多孔膜サンプルを真空中で60℃
で4時間以上乾燥して、空隙内の水を除去し、ポリマー
部のみの重量(B)を測定した。これらの重量と膜の構
成ポリマー及び水の真比重(dp、dw)とから、次式
によって計算で求めた。
【0026】空隙率(%)=100×((A−B)/d
w)/(B/dp+(A−B)/dw) なお、構成ポリマー及び水の真比重は、各々1.77、
1.0とした。 (5)透水量の測定 多孔膜サンプルを直径25mmに打ち抜いた後、エタノ
ール(特級試薬)中に浸漬して親水化した。次いで、超
純水中に浸漬して純水に置換し、該膜サンプルを有効面
積3.5cm2 のメンブランフィルターホルダーに組み
込んで超純水を充たした。5分間0.1MPaの静水圧
をかけ、透過した水の重量を測定した。この時の超純水
の温度を測定し、その温度での純水の真密度と粘度か
ら、25℃における1時間当たり且つ1m2 当たりの透
水量(リットル/m2 /hr/0.1MPa、25℃)
を計算した。 (6)引張強度特性 多孔膜サンプルをJIS5号ダンベル状にカットして試
験片を作成し、インストロン型万能試験機(島津製作所
製)を用いて、引張破断強度と引張破断伸度を測定し
た。繰り返し数を5とし、その平均値を採った。
【0027】なお、チャック間距離を80mm、ヘッド
速度を50mm/minの条件で測定した。 (7)耐熱性 多孔膜サンプルを150℃で60分間加熱処理した後、
透水量を測定し、加熱処理しない状態での透水量と比較
した。 (8)耐薬品性 50mm×50mmにカットした多孔膜サンプルを、2
3℃に調整したプロピレンカーボネート(特級試薬)に
浸漬して1昼夜放置した。その後、取り出して速やかに
膜の2辺の長さ(L1、L2)を測定した。その面積変
化率を次式から求めた。
【0028】面積変化率(%)=100×(L1×L2
−2500)/2500
【0029】
【実施例1】フッ化ビニリデン系ホモポリマー(エルフ
アトケム製 Kynar761)13重量部、フッ化
ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(エル
フアトケム製 Kynar2801:フッ化ビニリデン
88wt%含有品)4重量部、ポリビニルピロリドン
(BASF製K−30)15重量部、および、N−メチ
ル−2−ピロリドン(東京化成社製特級試薬)68重量
部からなる溶液を調製し、50℃でガラス板上にキャス
トした。直ちに30℃の75wt%N−メチル−2−ピ
ロリドン水溶液中に浸漬して凝固させ、水、エタノール
で洗浄後加熱乾燥した。
【0030】この多孔膜についてFT−IR測定を行っ
たところ、約2wt%ポリビニルピロリドンの存在が認
められた。この多孔膜の物性を表2に示す。
【0031】
【実施例2,3】及び
【比較例1〜3】原液のポリマー種と添加量及び凝固液
組成を表1に記載のように変えた他は、実施例1と同様
にして多孔膜を得た。この多孔膜の物性を表2に示す。
【0032】
【実施例4】原液のポリマー種と添加量を表1に記載の
ように変えた他は、実施例1と同様にして多孔膜を得
た。次いで、この多孔膜に電子線照射(照射量30Mr
ad)して架橋した多孔膜を得た。この多孔膜の物性を
表2に示す。なお、構成フッ化ビニリデン系樹脂中のV
dF含量は、電子線照射前の膜について測定した。
【0033】実施例1〜4に示すように、本発明の範囲
の多孔膜は、引張破断伸度が高いうえに、150℃の加
熱処理によっても透水性に変化なく、また、非水系二次
電池の電解液として用いられるプロピレンカーボネート
に浸漬しても膨潤が少ない。これに対して、ホモポリマ
ーのみから成る比較例1の多孔膜では、引張破断伸度が
著しく低い。また、フッ化ビニリデンモノマー単位を9
7wt%有するコポリマーのみから成る比較例2の多孔
膜も、引張破断伸度が著しく低い。
【0034】一方、フッ化ビニリデンモノマー単位を8
8wt%有するコポリマーのみから成る比較例3では、
引張破断伸度は良好であるものの耐熱性と耐薬品性が著
しく劣る。従って、本発明の多孔膜が、優れた強度特性
を有していると共に、良好な耐熱性と耐薬品性を保持し
ていることは、実施例と比較例との比較によって明らか
である。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【本発明の効果】この発明のフッ化ビニリデン系樹脂製
多孔膜は、耐熱性や耐薬品性に優れ、かつ、機械的強度
特性が優れた特性を有しており、限外ろ過膜や精密ろ過
膜等の固液分離用膜として、或いは、リチウムイオン電
池等の二次電池用隔膜として有用なものである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フッ化ビニリデン系のホモポリマーとコ
    ポリマーとから構成されており、かつ、それら全体の9
    0wt%〜98wt%がフッ化ビニリデンモノマー単位
    で構成されたフッ化ビニリデン系樹脂から成ることを特
    徴とするフッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜。
JP9318513A 1997-11-19 1997-11-19 フッ化ビニリデン系樹脂製多孔膜 Pending JPH11152366A (ja)

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