JPH1067870A - ポリエチレン製微多孔膜および製造方法 - Google Patents
ポリエチレン製微多孔膜および製造方法Info
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- JPH1067870A JPH1067870A JP8226442A JP22644296A JPH1067870A JP H1067870 A JPH1067870 A JP H1067870A JP 8226442 A JP8226442 A JP 8226442A JP 22644296 A JP22644296 A JP 22644296A JP H1067870 A JPH1067870 A JP H1067870A
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Abstract
高強度が付与された、電池用セパレーターとして用いた
場合の電池安全性の点において優れたポリエチレン製微
多孔膜とその製造方法を提供する。 【解決手段】 電離性放射線による架橋処理を施す工程
を含むポリエチレン製微多孔膜の製造方法において、ラ
ジカル種を減衰させる工程を導入することにより、気孔
率20〜80%、透過法による平均孔径0.1μm以
下、ゲル分率1%以上、ラジカル濃度1018スピン/g
以下、収縮残存率15%以上のポリエチレン製微多孔膜
を製造する。
Description
池、角型電池、薄型電池、ボタン型電池、電解コンデン
サー等の電池材料に使用されるセパレーターに関するも
のであり、特にリチウム電池用セパレーターとしての用
途に適したポリエチレン製微多孔膜およびその製造方法
に関する。
料用途、電池用セパレーターや電解コンデンサー用セパ
レーター等の材料として従来より使用されてきた。近年
では、特にリチウムイオン2次電池用途の需要が伸びて
おり、電池の高エネルギー密度化に伴って、その電池に
用いられるセパレーターにも高性能が要求されるように
なった。
負極活物質等の薬剤が使用されているので、それに用い
られるセパレーターの材質は、耐薬品性を考慮して、ポ
リオレフィン系ポリマーが一般に使用されており、特に
安価なポリエチレンやポリプロピレンが使用されてい
る。リチウムイオン2次電池等の非水電解液系電池用途
のセパレーターに要求される性能としては、電極短絡防
止機能、イオン透過性、電池捲回時の組立加工性、電池
安全性、および信頼性等があげられる。
負両極間に介在して内部短絡を防止する隔壁の役割を果
たすことを意味する。そのような内部短絡を防止するた
めには、セパレーターが高強度、小孔径であり、適当な
膜厚を有することが必要である。2次電池は、充放電に
よって内部の電極が膨張するため、場合によっては、数
十kg/cm2 もの圧力がセパレーターにかかってしま
うことがある。また、その電極表面は平滑であるとは限
らず、種々のサイズの活物質粒子が突起物となっている
場合がある。このような場合にも、セパレーターには破
断しないような高強度が要求されている。また、セパレ
ーターの膜厚については、薄過ぎると電極間で通電して
しまい短絡防止の機能を果たさない。逆にセパレーター
の膜厚が厚い場合には、短絡防止の点で有利であるが、
電池内におけるセパレーターの占有体積が大きくなって
しまい、エネルギー密度が小さくなってしまうので、一
般には、電池設計上、適切な膜厚が設定されている。セ
パレーターの小孔径については、電極を構成する活物質
粒子がセパレーターの細孔をすり抜けて透過してしま
い、その結果、内部短絡や能力低下の原因となることを
防止するために必要な性能である。また同様な理由か
ら、ピンホールや薄肉部分等の欠点が無いこともセパレ
ーターとして重要である。
質粒子は透過させず、イオンや電解液のみを透過させる
能力を意味する。一般に、イオン透過性は、高気孔率、
低透気度、低電気抵抗等の性能で評価される。また、近
年は電池の使用される環境も考慮して、低温放電特性が
重要な一要素となっている。電池捲回時の組立加工性と
しては、セパレーターを機械方向に一定の張力をかけて
電極とともに捲回する際、セパレーターが機械方向に伸
びないことや、巾方向に寸法変化しないことが要求され
る。このため、セパレーターは高弾性率を有することが
必要となる。
等のトラブルにより発熱昇温した際に、セパレーターが
自動的に電流を遮断して発熱を止めることにより、電池
の暴走や爆発を抑える機能のことを意味する。電池内部
の温度が、セパレーターを構成する樹脂の融点近傍まで
昇温すると、セパレーターは、熱流動ないし熱変形や熱
収縮により細孔を閉塞するか、あるいは電極表面に樹脂
が吸収されて絶縁被膜を形成することにより、いわゆる
シャットダウン機能を発現する。細孔が閉塞する温度
は、一般にヒューズ温度と呼ばれ、この温度が低いほ
ど、低温で電流を遮断して発熱を抑える能力があるた
め、望ましい。また、シャットダウン状態にある温度領
域が広いほど、電流を遮断している時間が長くなるた
め、より激しい発熱による温度上昇にも耐えることがで
き望ましい。さらに、円筒型電池のように肉厚のコイル
で構成される電池の内部では温度分布があると言われて
いるが、局部的に高温部分が存在しても、シャットダウ
ン状態にある温度領域が広いと有利である。高温でセパ
レーターが破れて電極が短絡してしまう温度は、一般に
ショート温度と呼ばれ、前記理由から、この温度が高い
ほど耐熱性が高いことになり望ましい。
併せ持つことで、広いシャットダウン領域を実現し、か
つ高強度であるセパレーターこそが、電池安全性や信頼
性の点で理想的であると言える。電池用セパレーターの
従来技術として、例えば、特開昭62−121737号
公報は、ポリエチレンの延伸開孔法による微多孔膜の製
造方法を開示するものである。しかし、この公報におい
て得られる膜は、通常分子量のポリエチレン単一組成物
であるため、ヒューズ温度以上の温度領域における耐熱
性が低く、充分な電池安全性が得られない。
して、例えば、特開平1−113442号公報は、ミク
ロ相分離法による微多孔膜製造方法を開示しているが、
この公報において得られる膜は、ポリプロピレン単一組
成物であるので耐熱性はあるものの、ヒューズ温度が高
くなってしまうという欠点があった。また、特開平3−
64334号公報や特開平2−21559号公報は通常
分子量のポリエチレンに超高分子量ポリエチレンをブレ
ンドする技術を開示している。しかしながら、これらの
公報において得られる膜は、超高分子量ポリエチレンの
ブレンドにより、耐熱性が幾らか改良されているものの
充分ではなく、ヒューズ温度以上の温度領域におけるシ
ャットダウン機能が不安定である。
−126352号公報や特開平4−206257号公報
は、ポリエチレンとポリプロピレンをブレンドし、ミク
ロ相分離法にて微多孔膜を製造する方法を開示してい
る。しかしながら、これらの公報において得られる膜
は、シャットダウン機能が改良されているものの、非相
溶性のポリマーをブレンドしているためモルフォロジー
をコントロールすることができず、膜構造が不均一とな
ったり、強度が低くなるといった問題点があった。
ば、ポリエチレンのような合成樹脂製微多孔膜に、低吸
収線量の電離性放射線を照射することにより架橋し、耐
熱性を向上する技術を開示するものである。しかしなが
ら、この公報において得られる膜は、照射後に架橋反応
に消費されずに残留したラジカル種が原因となり、強度
が低くなるという問題点を抱えていた。
来の電池用セパレーターに用いられるような製造技術で
は、低いヒューズ温度と耐熱性を併せ持ち、さらに高強
度が付与された微多孔膜を得ることは困難であった。本
発明によれば、前記課題を解決し、特に、電池用セパレ
ーターとして用いた場合に、電池安全性の点において優
れたポリエチレン製微多孔膜とその製造方法を提供する
ことができる。
解決するため、鋭意研究の結果、電離性放射線による架
橋処理を施す工程に、ラジカル種を減衰させる工程を導
入することにより、優れたシャットダウン機能と高強度
を併せ持ったポリエチレン製微多孔膜およびその製造方
法を見出し、本発明をなすに至った。
%、透過法による平均孔径0.1μm以下、ゲル分率1
%以上、ラジカル濃度1018スピン/g以下、収縮残存
率15%以上であることを特徴とするポリエチレン製微
多孔膜に関するものである。さらには、このポリエチレ
ン製微多孔膜からなる電池用セパレーターに関する。本
発明のポリエチレン製微多孔膜は、実質的にポリエチレ
ンから構成される多孔体シートまたはフィルムを指し、
例えば、セパレーター等の電池材料として使用されるも
のである。使用される電池の形態は特に限定されず、例
えば、円筒型電池をはじめとして、角型電池、薄型電
池、ボタン型電池、電解コンデンサー等への用途に適す
るものである。
れるポリエチレンは、通常の押出、射出、インフレーシ
ョン、およびブロー成形に使用されるものであり、低密
度、中密度、高密度、線状低密度、および超高分子量ポ
リエチレン等のようなエチレンを構成単位とする結晶性
ポリマーを指すものである。また、このようなポリエチ
レンとしては、エチレンを主体とするポリマーであれば
よく、エチレン−α−オレフィン共重合体やEPR等の
コポリマーをブレンドしたものであっても差し支えな
い。ポリエチレンの平均分子量は、10万〜400万が
好ましく、さらに好ましくは20万〜70万である。ま
た、ポリエチレンの平均分子量は、GPC(ゲルパーミ
エーションクロマトグラフィー)測定等により得られる
重量平均分子量を指すものであるが、一般に平均分子量
が100万を越えるようなポリエチレンに対しては、正
確なGPC測定が不可能であるので、その代用として粘
度平均分子量をあてることができる。ポリエチレンの平
均分子量が10万より小さいと延伸性が悪くなったり、
低強度となったりするので好ましくなく、またその分子
量が400万より大きいと均一組成物を得難くなる傾向
があるので使用しない方が好ましい。
は20〜80%であり、好ましくは30〜60%であ
る。気孔率が20%より小さいと、透気度や電気抵抗に
代表されるイオン透過性が不十分となり、気孔率が80
%より大きいと、突き刺し強度や引張強度に代表される
強度が不十分となる。本発明のポリエチレン製微多孔膜
の透過法による平均孔径は、0.1μm以下であり、好
ましくは0.07μm以下である。その平均孔径は、プ
ルラン等の水溶性高分子を用いた透過法によって測定す
ることができる。その平均孔径が0.1μmより大きい
とヒューズ機能が緩慢となるので望ましくない。また、
平均孔径の下限は、0.001μm以上であることが好
ましく、0.001μmより小さいと、電池の中で微粒
子が目づまりして透過性が悪くなるので好ましくない。
率は1%以上であり、好ましくは20〜98%、さらに
好ましくは50〜90%である。ゲル分率が1%より小
さいと十分な耐熱性が得られない。ここで、ゲル分率は
大きいほど微多孔膜の耐熱性が高くなるので好ましい
が、過度の電離性放射線を照射すると強度低下等の副作
用を来たすので、必要以上の放射線照射は好ましくな
い。
存率は15%以上であり、好ましくは20%以上であ
る。その収縮残存率は、シャットダウン領域温度におけ
る膜の収縮し難さを評価したものであり、電池用セパレ
ーターの耐熱性と相関がある。収縮残存率が15%より
小さいと、シャットダウン領域温度における膜収縮が深
刻となり、内部短絡を引き起こしてしまうので望ましく
ない。
ル濃度は、1018スピン/g以下であり、好ましくは5
×1017スピン/g以下、さらに好ましくは1017スピ
ン/g以下である。そのラジカル濃度は、例えば、電子
スピン共鳴分光法によって測定することができるが、定
量法については、ラジカル種を検出し定量できる方法で
あれば特に限定されない。ラジカル種としては、アルキ
ルラジカル、アリルラジカル、ジエニルラジカル、ポリ
エニルラジカル等の炭素ラジカルと、過酸化物ラジカル
が含まれるが、ラジカル濃度は前記ラジカル種の総計で
ある。そのラジカル濃度が1018スピン/gより大きい
と、膜の強度が低くなり望ましくない。
電子分光法による結合酸素比は、好ましくは0.05以
下であり、さらに好ましくは0.03以下、そして最も
好ましくは0.01以下である。ポリエチレン分子中に
結合している酸素の存在は、ポリエチレンへの電離性放
射線照射による架橋反応の副生成物に由来するものと考
えられる。そのような副生成物としては、主に、前記ラ
ジカル種や、カルボニル基、ヒドロキシル基、過酸化物
等の酸化物が確認されている。反応経路は定かではない
が、一般に酸化物の生成はポリエチレン主鎖の分解を伴
うことが知られている。したがって、その結合酸素比が
0.05より大きいと酸化によるポリエチレン主鎖の分
解反応が進み、強度が低くなるので好ましくない。
は、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは10
〜100μmである。膜厚が1μmより小さいと機械強
度が不十分となり、また、膜厚が500μmより大きい
とセパレーターの占有体積が増えるため、電池の高容量
化の点において不利となり好ましくない。本発明のポリ
エチレン製微多孔膜の透気度は、好ましくは3000秒
/100cc/25μm以下であり、さらに好ましくは
1000秒/100cc/25μm以下である。その透
気度は、透気時間と膜厚との比によって定義される。透
気度が3000秒/100cc/25μmより大きいと
イオン透過性が悪くなるか、または孔径が極めて小さく
なるので、透過性能上、いずれにしても好ましくない。
し強度は、300g/25μm以上であることが好まし
く、さらに好ましくは400g/25μm以上である。
突き刺し強度は、突き刺し試験における最大荷重と膜厚
の比によって定義される。突き刺し強度が300g/2
5μmより小さいと電池捲回時に短絡不良等の欠陥が増
加するため好ましくない。
ズ温度は、好ましくは100〜160℃、さらに好まし
くは120〜140℃である。ヒューズ温度は、簡易セ
ル測定においてインピーダンスがジャンプする温度とし
て観測することができる。ヒューズ温度が100℃より
低い場合には、電池の使用される環境を考慮すると不具
合があり好ましくない。また、ヒューズ温度が160℃
より高いと電池の暴走を十分に抑止できないので、電池
用セパレーターとして用いた場合の電池安全性に信頼が
置けない。
ズ速度は、5.0以上であることが好ましく、さらに好
ましくは10.0以上である。ヒューズ速度は、前記簡
易セル測定において求めることができる。ヒューズ速度
が5.0未満であると、ヒューズ機能の発現が不完全と
なり、電池用セパレーターとして用いた場合の電池安全
性に信頼が置けない。
℃のシリコンオイル中における破断時間は、20秒以上
であることが好ましい。その破断時間は、過充電試験、
外部短絡試験、加熱試験のような電池実装試験において
評価される電池セパレーターの耐熱性と相関があり、2
0秒より小さいと前記電池実装試験のいずれかの項目が
不合格となるため、電池用セパレーターとして用いた場
合の電池安全性の点で好ましくない。
微多孔フィルムに、電離性放射線の照射による架橋処理
を施す工程を含むポリエチレン製微多孔膜の製造方法に
おいて、該電離性放射線の照射時、またはその後に、少
なくとも一回のラジカル減衰処理を施すことを特徴とす
るポリエチレン製微多孔膜の製造方法に関するものであ
る。
法は、電離性放射線による架橋処理を施す工程と、少な
くとも一回のラジカル減衰処理を施す工程を含む。電離
性放射線の照射は、一度に実施しても良いが、該微多孔
フィルムの自己発熱による昇温を抑えるために数度に分
けて実施してもさしつかえない。その微多孔フィルムへ
の照射方向は何ら限定されず、例えば、フィルムの片面
から照射すると設備コストや生産コストが安価となり好
ましく、フィルムの両面から照射すると、厚み方向への
均一性が向上する。また、強度低下を防止するため、窒
素ガス等の不活性ガスを照射操作中に送り込むなどして
照射雰囲気の酸素濃度をできる限り低減させたほうが好
ましい。また、その微多孔フィルムに温風等をあてる等
して、照射時の温度を比較的高温とすると、架橋効率が
高められ、耐熱性が向上するので好ましい。また、ラジ
カル減衰処理は、電離性放射線の照射時、またはその後
に施すことができ、また、数回に分けて施しても何らさ
しつかえない。
前の延伸された微多孔フィルムを得る方法としては、例
えば、以下の二つの方法が挙げられる。第一の方法は、
重合体と可塑剤よりなる加熱溶液をミクロ相分離法にて
冷却固化せしめて微多孔シートを得て、しかる後に少な
くとも一軸方向に延伸する工程と、可塑剤を抽出除去す
る工程を施して微多孔フィルムを得る方法である。延伸
する工程と可塑剤を抽出除去する工程の順序としては、
抽出後に延伸してもさしつかえないが、抽出前に延伸す
ると効果的に微多孔フィルムに配向を与えることができ
る上に、気孔率の無駄な増加を抑えることができるので
高強度となり好ましい。また、抽出前に延伸し、可塑剤
を抽出除去した後にさらに少なくとも一軸方向に延伸処
理を施すと、微多孔膜の気孔率や強度を自在に調整でき
るので、さらに好ましい。また、重合体と可塑剤よりな
る加熱溶液に、フィラー、熱安定剤、核剤等を添加して
も良い。
し、延伸開孔法にて微多孔フィルムを得る方法である。
前記の可塑剤としては、該可塑剤の沸点以下の温度にて
ポリエチレンと均一溶液を形成しうる有機化合物が用い
られ、例えば、デカリン、キシレン、パラフィン油等の
炭化水素類、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等
のエステル類、ステアリルアルコール、オレイルアルコ
ール等のアルコール類等が挙げられる。
としては、その溶剤の沸点以下の温度にて可塑剤と混合
し均一溶液を形成し、かつ微多孔膜より可塑剤を抽出除
去しうる有機化合物が用いられる。かかる抽出溶剤とし
ては、例えば、n−ヘキサンやn−ヘプタン等の炭化水
素類、エタノ−ルやイソプロパノール等のアルコール
類、塩化メチレンや1,1,1−トリクロロエタン等の
ハロゲン化炭化水素類、アセトンや2−ブタノン等のケ
トン類、ジエチルエーテル等のエーテル類等が使用でき
る。
線としては、電子線、α線、β線、γ線、X線、紫外線
等が挙げられるが、特に電子線を使用すると、設備的に
簡易であり、また生産スピードを高められるので生産性
が良く好ましい。電離性放射線を照射する場合の吸収線
量は、好ましくは1〜200Mrad、さらに好ましく
は5〜50Mradである。その吸収線量が200Mr
adを越えるような過度の照射は、微多孔膜の強度低下
等を来すので好ましくない。
フィルムの膜厚と気孔率に応じて、任意に選択すること
ができるが、好ましくは500kV以下、さらに好まし
くは100〜300kVである。加速電圧は、電子線が
その微多孔フィルムを貫通するに十分な大きさであれば
良く、500kVより大きいと、設備コストや生産コス
トが高くなるので好ましくない。また、かかる加速電圧
の大きさは目的に応じて選択することができる。すなわ
ち、大きめの加速電圧を設定すれば、電子線は該微多孔
フィルムを貫通するので膜厚方向に均一に照射された膜
が得られ、小さめの加速電圧を設定すれば、電子線は貫
通することができず表面のみに照射された非対称膜が得
られる。
理とは、電離性放射線の照射により生じたラジカル種を
減衰させる処理のことである。ラジカル減衰処理を施す
温度は、ポリエチレンの融点をTm ℃とすると、好まし
くは30〜Tm ℃であり、さらに好ましくは70〜Tm
−10℃である。その温度が30℃より低いと微多孔膜
の強度が低くなり、また処理に時間がかかり生産性が悪
くなるので好ましくない。その温度がTm ℃より高いと
微多孔膜が融解して無孔フィルムとなってしまうので好
ましくない。また、このラジカル減衰処理は、微多孔膜
のラジカル濃度が1018スピン/g以下となるのに十分
な時間をかけて施すことが好ましい。ここで、ラジカル
減衰処理の時間は、温度に応じて任意に選択することが
できる。ラジカル減衰処理の時間が不足したことによ
り、得られた微多孔膜のラジカル濃度が1018スピン/
gより大きくなると、強度が低くなり好ましくない。
理は、例えば、エージング、熱処理、延伸の群より選択
されたいずれかの方法により行うことができる。エージ
ングとは、倉庫や恒温室等でバッチ式のラジカル減衰処
理を施す工程を指すものである。熱処理とは、テンター
式加熱装置、ロール式加熱装置、恒温槽、オーブン等で
ラジカル減衰処理を施す工程を指すものである。延伸と
は、該熱処理に少なくとも一軸方向の延伸を伴う工程を
指し、テンター延伸機やロール延伸機等を使用すること
ができる。
に説明する。実施例において示される試験方法は次の通
りである。 (1)膜厚 ダイヤルゲージ(尾崎製作所製PEACOCK NO.
25)にて測定した。 (2)気孔率 20cm角の試料を微多孔膜から切り取り、体積(cm
3 )と重量(g)を測定し、得られた結果から次式を用
いて、気孔率(%)を計算した。 気孔率=100×(体積−重量/0.95)/体積 (3)透気度 JIS P−8117に準拠し、ガーレー式透気度計に
て測定して求めた透気時間(秒/100cc)、および
膜厚(μm)より、次式の通りに膜厚換算し、透気度
(秒/100cc/25μm)とした。 (4)透過法による平均孔径 0.5kg/cm2 の差圧下で、0.05重量%のプル
ラン(昭和電工製)の水溶液を循環させた時に、濾液中
に含まれるプルラン濃度を、示差屈折率測定から求め
た。阻止率50%になるプルランの分子量Mと同水溶液
の固有粘度[η]から、次式を用いて平均孔径d(μ
m)を算出した。 [η]×M=2.1×1021×((d/2)2 )3/2 (5)ゲル分率 ASTM D2765に基づき、一定の大きさに切り取
った試料を沸騰パラキシレン中で12時間可溶分溶出操
作を施した際の、溶出操作前の試料重量(g)と溶出操
作後の残存重量(g)の比より、次式の通りにゲル分率
(%)を算出した。 ゲル分率=100×残存重量/試料重量 (6)突き刺し強度 圧縮試験機(カトーテック製KES−G5)を用いて、
針先端の曲率半径0.5mm、突き刺し速度2mm/秒
の条件で突き刺し試験を行い、最大突き刺し荷重(g)
および膜厚(μm)より次式の通りに膜厚換算し、突き
刺し強度(g/25μm)とした。 突き刺し強度=最大突き刺し荷重×25/膜厚 (7)収縮残存率 内径54mm、外径86mm、厚さ2mmの円形金属枠
2枚の間にフッ素ゴム2枚を介して試料を挟み込み、周
囲をクリップで固定した。この状態に試料を、160℃
のシリコンオイル(信越化学工業製KF−96−10C
S)に1分間浸漬して熱処理を行い、未架橋部分の配向
を除去した。次に金属枠の内径に沿って試料を切り出
し、改めて160℃のシリコンオイル中に1分間浸漬
し、この時の試料の長径a(mm)と短径b(mm)を
測定し、収縮残存率(%)を次式の通りに算出した。 収縮残存率=a×b/542 ×100 (8)ラジカル濃度 電子スピン共鳴分光装置(日本電子製JES−FE2X
G)を用い、温度25℃、マイクロ波出力0.2mW、
測定磁場3300±250G、変調磁場3.2Gの条件
下にて、マンガンマーカーを内部標準とし、試料は測定
用セル中に筒状に丸めて入れ、ラジカル濃度の測定を行
った。なお、マンガンマーカーの濃度は予め標準物質ジ
フェニルピクリルヒドラジルのベンゼン溶液にて検量線
を作成し補正を行った。試料重量は40mgを使用し、
ラジカルの濃度が高すぎて測定レンジを越える場合は、
適宜、試料重量を減らして測定を行った。試料重量40
mgを使用した場合のラジカル濃度の検出限界は5×1
015スピン/gであった。 (9)結合酸素比 X線光電子分光装置(V.G.製ESCALAB 20
0−X)を用い、励起源MgKα、加速電圧14kV、
電流値20mAの条件下にて、試料表面のC1sスペク
トルおよびO1sスペクトルを測定した。得られたO1
sスペクトルについては、C1sに対するO1sの相対
感度係数2.85を用い、C1sの面積強度に対するO
1sの面積強度の比から結合酸素比を求めた。 (10)ヒューズ温度 電解液として、炭酸プロピレンとγ−ブチロラクトンの
混合溶媒(体積比1:1)に1.0Mの濃度となるよう
に四フッ化ホウ素酸リチウムを加えて調製したものを用
いた。直径16mmの円形試料に前記電解液を含浸させ
たものを圧力20kg/cm2 で2枚のニッケル製電極
に挟み込み、室温から20℃/分の速度で昇温した時の
インピーダンス変化を、1V、1kHzの条件下で測定
した。この測定において、インピーダンスが1000Ω
に達した温度をヒューズ温度とした。 (11)ヒューズ速度 前記ヒューズ温度測定において、インピーダンス100
0Ωにおける勾配からインピーダンスZ(Ω)、温度t
(℃)より、次式の通りに計算した。 log(ヒューズ速度)={d(logZ)/d
(t)}Z=1000 (12)破断時間 幅10mmの試料を2枚重ねて間隔50mmのチャック
間に固定し、100gの初期荷重を与えた試料を予め1
60℃のシリコンオイル(信越化学工業製KF−96−
10CS)中に浸漬した時の応力緩和挙動と目視観察か
ら試料が破断するまでの時間を測定した。ここで、破断
時間が10分以上の場合は∞とした。 (13)吸収線量 電子線照射装置内の照射位置においてフィルム線量計
(F.W.T.Inc.製)にて装置固有定数Kを求
め、電流(mA)、試料の移送速度(m/分)より次式
の通りに吸収線量(Mrad)を算出した。 吸収線量=K×電流/移送速度 (14)融点Tm DSC測定装置(セイコー電子製SSC−5000)を
用い、温度範囲30〜180℃、昇温速度10℃/分に
て測定し、微多孔フィルムの吸熱ピークのピークトップ
を求め、融点Tm (℃)とした。
万、密度0.956)40重量部、流動パラフィン(3
7.78℃における動粘度75.9cSt)60重量
部、および該ポリエチレンに対して0.3重量部の2,
6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールからなる組成物
を、35mm二軸押出機にて200℃で混練し、コート
ハンガーダイを経て表面温度20℃に制御された冷却ロ
ール上に押出キャストすることにより、厚み1400μ
mのシートを得た。得られたシートを同時二軸延伸機を
用いて、延伸倍率7×7倍に延伸し、続いて塩化メチレ
ンを用いて流動パラフィンを抽出除去し、その後付着し
た塩化メチレンを乾燥除去して、微多孔フィルムを得
た。得られたフィルムに、加速電圧150kVにて、2
回に分けて吸収線量10Mradの電子線照射(計20
Mrad)を行い、その後、表面温度100℃に制御さ
れた温調ロール上に密着させて90秒間熱処理を施し
た。なお、電子線処理を施したフィルムについてDSC
測定を行ったところ、融点は135℃であった。得られ
たポリエチレン製微多孔膜の物性を表1に記載した。
ずにテンター延伸機を用い、延伸温度120℃、延伸倍
率1.3倍、熱処理時間15秒の条件下にて横方向一軸
延伸したこと以外は実施例1と同様にして製造した。得
られたポリエチレン製微多孔膜の物性を表1に記載し
た。
取って巻物を作成し、巻物を70℃の雰囲気温度下にお
いて2時間エージングしたこと以外は実施例1と同様に
して製造した。得られたポリエチレン製微多孔膜の結合
酸素比を測定したところ、0.004であった。得られ
たポリエチレン製微多孔膜の物性を表1に記載した。
万、密度0.956)38重量部、線状共重合ポリエチ
レン(メルトインデックス0.017、密度0.92
9、プロピレン含有量1.6モル%)7重量部、流動パ
ラフィン(37.78℃における動粘度75.9cS
t)55重量部、および該ポリエチレンに対して0.3
重量部の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールから
なる組成物を、35mm二軸押出機にて200℃で混練
し、コートハンガーダイを経て表面温度20℃に制御さ
れた冷却ロール上に押出キャストすることにより、厚み
1900μmのシートを得た。得られたシートを同時二
軸延伸機を用いて、延伸倍率7×7倍に延伸し、続いて
塩化メチレンを用いて流動パラフィンを抽出除去し、そ
の後付着した塩化メチレンを乾燥除去して、微多孔フィ
ルムを得た。得られたフィルムを、テンター延伸機を用
いて、延伸温度110℃、延伸倍率1.4倍の条件下に
て延伸し、更に、加速電圧150kV、吸収線量8Mr
adの条件下にて電子線を照射し、紙管ロールに巻き取
って巻物を作成し、巻物を70℃の雰囲気温度下におい
て2時間エージングした。なお、電子線処理を施したフ
ィルムについてDSC測定を行ったところ、融点は13
4℃であった。得られたポリエチレン製微多孔膜の電池
安全性評価を行ったところ、ヒューズ温度は134℃、
ヒューズ速度は50、破断時間は∞秒であった。得られ
たポリエチレン製微多孔膜の物性を表2に記載した。
(重量平均分子量25万、密度0.956)23重量
部、線状共重合ポリエチレン(メルトインデクス0.0
17、密度0.929、プロピレン含有量1.6モル
%)23重量部、流動パラフィン(37.78℃におけ
る動粘度75.9cSt)54重量部を使用したこと以
外は実施例4と同様にして製造した。なお、電子線処理
を施したフィルムについてDSC測定を行ったところ、
融点は132℃であった。得られたポリエチレン製微多
孔膜の電池安全性評価を行ったところ、ヒューズ温度は
130℃、ヒューズ速度は30、破断時間は∞秒であっ
た。得られたポリエチレン製微多孔膜の物性を表2に記
載した。
実施例1と同様にして製造した。得られたポリエチレン
製微多孔膜の結合酸素比を測定したところ、0.017
であった。得られたポリエチレン製微多孔膜の物性を表
2に記載した。
いヒューズ温度と高い耐熱性を併せ持ち、かつ高強度で
あるので、特に電池セパレーターとして使用することに
より、電池安全性と電極短絡防止機能を高めることがで
き、信頼性の高い電池セパレーターを提供できる。
Claims (3)
- 【請求項1】 気孔率20〜80%、透過法による平均
孔径0.1μm以下、ゲル分率1%以上、ラジカル濃度
1018スピン/g以下、収縮残存率15%以上であるこ
とを特徴とするポリエチレン製微多孔膜。 - 【請求項2】 請求項1に記載のポリエチレン製微多孔
膜からなる電池用セパレーター。 - 【請求項3】 延伸されたポリエチレン微多孔フィルム
に、電離性放射線の照射による架橋処理を施す工程を含
むポリエチレン製微多孔膜の製造方法において、該電離
性放射線の照射時、またはその後に、少なくとも一回の
ラジカル減衰処理を施すことを特徴とするポリエチレン
製微多孔膜の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8226442A JPH1067870A (ja) | 1996-08-28 | 1996-08-28 | ポリエチレン製微多孔膜および製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8226442A JPH1067870A (ja) | 1996-08-28 | 1996-08-28 | ポリエチレン製微多孔膜および製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1067870A true JPH1067870A (ja) | 1998-03-10 |
Family
ID=16845179
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8226442A Pending JPH1067870A (ja) | 1996-08-28 | 1996-08-28 | ポリエチレン製微多孔膜および製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1067870A (ja) |
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