JP4033546B2 - リチウムイオン二次電池用セパレーターの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエチレン微多孔膜、およびその電池セパレーターへの適用に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン微多孔膜は精密濾過膜、電池用セパレーター、コンデンサー用セパレーター等に使用されている。このうち電池用セパレーター、特にリチウムイオン二次電池用セパレーターには、突き刺し強度で表される電池の組立性能と深い関わり合いのある高機械強度の他に、電池の出力特性を向上させるための高いイオン透過性能を併せ持つことが求められている。電池の出力特性とは、大電流での放電性能や低温での放電性能といった電流特性や、サイクル性、高温保存特性といった寿命に関する特性であり、セパレーターのイオン透過性能が高い程良く、イオン透過性能と関係深い物性は透気度や透水量等とされている。
【0003】
さらには近年のリチウムイオン二次電池の高出力、大容量化にともない、安全性も強く求められるようになった。安全性とは、電池内部が過熱した際にセパレーターが溶融して電極を覆う被膜となり、電流を遮断し、それによって電池の安全性を確保する性能である。その際に、十分な被膜量を確保するためのセパレーターの高い目付量が重要である。
【0004】
従来、上記の個々の特性については改善する提案がされているが、全ての特性を満たすような電池セパレーター用微多孔膜はなかった。
例えば、機械強度の高い微多孔膜は特公平6−104736号公報等に開示されている。この微多孔膜は原料の分子量を変えることにより高強度を達成しているが、透過性能が悪く電池の出力特性を損ねる。
【0005】
また、透過性能の高い微多孔膜は特開平5−222236号公報や特開平5−222237号公報等に開示されている製造方法で生産しうることが知られている。しかしながら、この製法による微多孔膜はいずれも気孔率が高く、機械強度の低下をさけられないばかりか、ポリマーの目付量が少ないために、過熱溶融時の電流遮断が不十分である。
【0006】
特開平4−261441号公報、特開平8−12799号公報に記載の微多孔膜も透過性能が改善されているが、いずれも発泡剤や造核剤が含まれており、電池内部での副反応による出力低下が懸念される。
さらに、機械強度と透過性能を兼ね備えた微多孔膜は特開平5−310989号公報に開示されているが、この微多孔膜はバブルポイントが2〜5kg/cm2 と最大孔径が大きく、透過性の微小領域での斑が大きくなり、電池内で金属リチウムの析出が起こりやすく安全上好ましくない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、機械強度、透過性に優れ、電池用セパレーターとして電池の出力特性、生産性、安全性を向上させることができるポリエチレン微多孔膜を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、特定の透過性能、平均孔径、気孔率、機械的強度を有するポリエチレン微多孔膜が、電池の出力性能および生産性、安全性を向上しうることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち本発明は、
(1)下記式(1)で表される透過性指数が3〜20であり、平均孔径0.25μm以下、気孔率35%〜60%、突き刺し強度300g以上である延伸ポリエチレン微多孔膜からなるリチウムイオン二次電池用セパレーターの製造方法であって、
透過性指数=透水量(リットル/m2 ・hr・atm)/透気度(秒) (1)重量平均分子量20〜40万のポリエチレンと分子構造のパラメータ(HLB値)が1.0〜6.0の有機化合物、又はHLB値が0.1〜10.0の範囲の2種類以上の有機化合物を重量平均で1.0〜6.0となるように混合したものからなる孔形成材を、ポリエチレンと孔形成材との重量比20:80〜60:40で140〜250°Cで混練し、シートに形状付与後、これをポリエチレンの結晶化温度以下まで冷却して高分子ゲルを生成し、さらに該高分子ゲルを100〜140°Cの範囲で少なくとも一軸方向に面積倍率で3倍以上延伸したあと孔形成材を抽出除去し、その後に80〜130°Cの範囲で少なくとも一軸方向に再び延伸することを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレーターの製造方法、
(2)孔形成材抽出後の延伸に続いて、または後に、熱固定あるいは熱緩和の熱処理を行うことを特徴とする(1)に記載のリチウムイオン二次電池用セパレーターの製造方法、(3)シートに形状付与する際のシート厚みが2mmであり、ポリエチレンと孔形成材との重量比が20:80〜40:60であり、一軸方向に面積倍率3倍以上延伸する延伸が7×4〜7×7の延伸であり、再び延伸する際の延伸が幅方向に1.8〜2.5倍の延伸であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池用セパレーターの製造方法、に関する。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の微多孔膜はポリエチレンからなる。ここでいうポリエチレンとは重量平均分子量が好ましくは10万〜400万、より好ましくは20万〜70万、さらに好ましくは25万〜50万の高密度ポリエチレンである。また、このポリエチレンはエチレン単位に対してプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンの単位を4モル%以下の割合で含む共重合体(線状共重合ポリエチレン)であってもよい。また、ブレンドや多段重合などの手段によって重量平均分子量を好ましい範囲に調節したものでもかまわない。さらに、これらに中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、EPR等のポリオレフィンを30%以下の割合でブレンドしたものでもかまわない。
【0010】
微多孔膜の透過性指数とは、透水量(リットル/m2 ・hr・atm)/透気度(秒)で表される指数をいう。本願発明の膜の透過性指数は3〜20の範囲にあることが必要である。好ましい範囲は5〜15である。透過性指数が3未満では電池用セパレーターとして使用した場合の電池の放電特性やサイクル特性が低下する傾向にあり、また、20を超えると過充電時の温度上昇が急激となり好ましくない。この理由は明らかではないが、透水量と1/透気度という二種類の透過性能をバランスよく兼ね備えることが、電池性能を向上させるものと考えられる。
【0011】
ここで透気度とは、JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計にて測定される値であって、厚み25μmあたりに換算した値である。
また、透水量は微多孔膜の単位時間、単位圧力、単位面積、厚み25μm当たりの透水量である。
透水量は100〜2000リットル/m2 ・hr・atmの範囲にあり、好ましくは300〜1500リットル/m2 ・hr・atm、さらに好ましくは500〜1200リットル/m2 ・hr・atmである。電池用セパレーターへ適用する場合、透水量が100リットル/m2 ・hr・atmより小さいと電解液の含浸速度が遅く、電池組立時に問題となる。また、透水量が2000リットル/m2 ・hr・atmより大きいと電解液の保液性が悪化し、電池の出力性能が低下する。
【0012】
また、本発明の膜の透気度は好ましくは50秒〜400秒、より好ましくは60秒〜200秒、さらに好ましくは70秒〜150秒である。透気度が50秒より小さいと、電池セパレーターとして使用した場合に正・負極の短絡が起こりやすくなり、また400秒より大きいと電池の低温での放電特性が悪くなる傾向にある。
【0013】
本発明の微多孔膜の平均孔径は、水銀圧入法によって測定されるモード径のことであり、0.25μm以下、好ましくは0.20μm以下である。0.25μmより大きくなると最大孔径が1μmを超えるようになり、特にリチウムイオン二次電池用セパレーターとして使用した場合に、電流集中による金属リチウムの析出が起こりやすくなるため好ましくない。なお、平均孔径の表し方としてバブルポイント法もよく知られている。水銀圧入法とバブルポイント法の関係は明らかではないが、通常、バブルポイントが5kg/cm2 以下の膜の水銀圧入法による平均孔径は0.25μmを超える。本発明のポリエチレン微多孔膜の平均孔径をバブルポイント法で測定すると、バブルポイントは5kg/cm2 を超える値となる。
【0014】
本発明の微多孔膜の気孔率は35%〜60%、好ましくは40%〜55%の範囲にある。気孔率が35%未満では物質の透過性が十分ではなく、一方60%を超えると十分な機械強度が得られず、電池セパレーターとしての安全性も低下する。
本発明の微多孔膜の突き刺し強度は300g以上であり、好ましくは350g以上である。300g未満では、電池用セパレーターとして使用した場合に、脱落した活物質等によってセパレーターが破れ、短絡を起こす可能性がある。
【0015】
次に本発明のポリエチレン微多孔膜の製造例について説明する。
この発明の膜は、例えばポリエチレンと孔形成材を融点以上で混練し、形状付与後、これをポリエチレンの結晶化温度以下まで冷却して高分子ゲルを生成し、さらに該高分子ゲルを延伸したあと孔形成材を抽出除去し、その後に再び延伸を施し、その後好ましくは熱固定あるいは熱緩和等の熱処理を行うことによって製造される。
【0016】
ポリエチレンとしては、重量平均分子量が好ましくは10万〜400万、より好ましくは20万〜70万、さらに好ましくは25万〜50万の高密度ポリエチレンが用いられる。重量平均分子量が10万より小さいとゲルが脆くなり延伸などの加工が困難になり、400万より大きいと混練が困難になるため好ましくない。また、このポリエチレンは、エチレン単位に対してプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンの単位を4モル%以下の割合で含む共重合体(線状共重合ポリエチレン)であってもよい。また、ブレンドや多段重合などの手段によって重量平均分子量を好ましい範囲に調節してもかまわない。さらに、これらに中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、EPR等のポリオレフィンを30%以下の割合でブレンドしてもかまわない。
【0017】
孔形成材としては、分子構造のパラメーター(HLB値)が1.0〜6.0の有機化合物で、好ましくは融点が130℃以下で沸点が200℃以上のものが用いられる。例えば、プロピレングリコールジオレート、プロピレングリコールジカプレート、ブチルステアレート、トリオクチルフォスフェート、ベンジルベンゾエート、グリセリントリオレート、ジイソデシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルマレエート等が挙げられる。
【0018】
ここでいうHLB値とは20×Mh/Mで表される数値であって、Mは化合物の分子量、Mhは該化合物の親水基部分の分子量を表し、親水基とはカルボニル基、カルボキシル基、エステル基、アルコール基、エーテル基、アミノ基、アミド基等である。なお、HLB値については日高徹著「食用乳化剤」に詳しい記載がある。
【0019】
また、孔形成材は、HLB値が0.1〜10.0の範囲の2種類以上の化合物を、重量平均で1.0〜6.0となるように混合したものでもかまわない。例えば、アセチルトリブチルサイトレート、ビスジブチルジグリコールアジペート、ジブチルセバケート、グリセリントリブチレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルブチルフタレート、グリセリン、テトラエチレングリコール等を混合用として用いることができる。
【0020】
本発明において、膜の透過性指数を特定の範囲にコントロールするための方法としては、上記したような特定の孔形成材を用いる方法が最も優れている。
次に、ポリエチレンと孔形成材との重量比は10:90〜90:10の範囲が好ましい。特に好ましい範囲は20:80〜60:40である。
このような組成物の混練は140℃〜250℃の範囲で攪拌機や押出機を用いて行い、混練後ダイスからシート状に押し出してキャストロールなどでポリエチレンの結晶化温度以下まで冷却し、ゲルシートとする。
【0021】
得られたゲルシートの延伸は100℃〜140℃の範囲で、インフレーション法、圧延法、ロール法、テンター法等で行い、一軸延伸でも二軸延伸でも良いが少なくとも一軸方向に面積倍率で3倍以上延伸するのが好ましい。
次に延伸物から添加物の抽出除去を残留添加物が5%未満になるまで任意の溶媒を用いて行い、最後に抽出膜を再び少なくとも一軸方向に延伸する。延伸方法はテンター法、ロール法等が使用でき、80℃〜130℃の温度範囲で行うのが好ましい。
【0022】
さらに、抽出後の延伸に続いて、または後に、熱固定あるいは熱緩和等の熱処理を行ってもかまわない。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
実施例において示される試験方法は次の通りである。
(1)膜厚
ダイヤルゲージ(尾崎製作所:PEACOCK No.25)にて測定した。
(2)気孔率
20cm角のサンプルをとり、その体積と重量から次式を用いて計算した。
気孔率(%)=(体積(cm3 )−重量(g)/ポリエチレンの密度)/体積(cm3 )×100
(3)突き刺し強度
カトーテック製KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突き刺し速度2mm/secの条件で突き刺し試験を行い、最大突き刺し荷重を突き刺し強度(g)とした。
(4)透気度
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計にて測定した。測定値に25(μm)/膜厚(μm)を乗じる事によって25μm換算透気度とした。
(5)透水量
直径42mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめアルコールに浸しておいたポリエチレン微多孔膜をセットし、該膜のアルコールを水で洗浄した後0.5atmの差圧で水を濾過させ、120秒間経過した際の透水量(cm3 )から、単位時間、単位圧力、単位面積当たりの透水量を計算し、これに膜厚(μm)/25(μm)を乗じることによって25μm換算透水量(リットル/m2 ・hr・atm)とした。
(6)透過性指数
次式を用いて算出した。
【0024】
透過性指数=透水量(リットル/m2 ・hr・atm)/透気度(秒)
(7)平均孔径(水銀圧入法)
島津製作所製ポアサイザー9320型を用いて、サンプル重量0.02mg〜0.04mgを前処理として真空脱気を5分間行ったあと、初期圧2.0psiaより測定した。得られた細孔分布データから、4μm以下で圧入体積の最も大きい点(モード径)を平均孔径とした。
(8)過充電試験
LiCoO2 を正極活物質とし、グラファイトおよびアセチレンブラックを導電剤とし、フッ素ゴムを結着剤とし各々LiCoO2 :グラファイト:アセチレンブラック:フッ素ゴム=88:7.5:2.5:2の重量比で混合したものをジメチルホルムアミドペーストとしてAl箔に塗布乾燥したシートを正電極として用い、ニードルコークス:フッ素ゴム=95:5の重量比で混合したものをジメチルホルムアミドペーストとしてCu箔に塗布乾燥したシートを負電極として用い、電解液としてプロピレンカーボネートとブチロラクトンの混合溶媒(体積比=1:1)にホウフッ化リチウムを1.0Mの濃度で調整した液を用いてリチウムイオン電池を製造した。この電池を4.2Vで5時間充電したあと、さらに定電流で過充電を行った。過充電によって電池の内部温度は上昇し、ヒューズ温度に達すると電流が遮断されるが、その後1時間以上電流復帰の無かったサンプルを○とし、そうでないものを×とした。なお、本試験は加速試験であるため実際の電池に装備されているPTC素子等の安全装置は取り外した状態で行った。
(9)サイクル特性試験
前記過充電試験と同様の電池を製造し、温度25℃の条件の下で、充電電流1Aで充電終止電圧4.2Vまで充電を行い、放電電流1Aで放電終止電圧3Vまで放電を行い、これを1サイクルとして充放電を繰り返し、初期容量に対する500サイクル後の容量の割合を容量保持率として表した。
【0025】
【実施例1】
重量平均分子量28万、密度0.954、Mw/Mn=7の高密度ポリエチレン40部、ジオクチルフタレート(HLB=4.9)42部、ベンジルブチルフタレート(HLB=6.2)18部および酸化防止剤として該ポリエチレンに対して0.3重量部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを二軸押出機を用いて250℃で混練し、Tダイから押し出して冷却ロールで引き取り厚さ2mmのシートを得た。得られたシートを二軸延伸機を用いて、延伸温度130℃で7×7倍に延伸し、続いて塩化メチレン中に浸漬してジオクチルフタレートおよびベンジルブチルフタレートを除去した後、乾燥して微多孔膜を得た。さらにこの微多孔膜をテンターを用いて、延伸温度125℃で幅方向に1.8倍延伸した後、幅方向の延伸を17%緩和させつつ熱処理した。
【0026】
得られた膜の物性、またこれをセパレーターとして用いた電池の特性を表1に記載した。
【0027】
【実施例2】
重量平均分子量40万、密度0.950、Mw/Mn=9の高密度ポリエチレン20部、ジヘプチルフタレート(HLB=5.3)80部および酸化防止剤として該ポリエチレンに対して0.3重量部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンをオートクレーブを用いて220℃で60分攪拌し、Tダイから押し出して冷却ロールで引き取り厚さ2mmのシートを得た。得られたシートを二軸延伸機を用いて、延伸温度130℃で7×4倍に延伸し、続いて塩化メチレン中に浸漬してジヘプチルフタレートを除去した後、乾燥して微多孔膜を得た。さらにこの微多孔膜をテンターを用いて、延伸温度130℃で幅方向に2.5倍延伸した後、幅方向の延伸を17%緩和させつつ熱処理した。
【0028】
得られた膜の物性、またこれをセパレーターとして用いた電池の特性を表1に記載した。
【0029】
【実施例3】
重量平均分子量28万、密度0.954、Mw/Mn=7の高密度ポリエチレン40部、トリオクチルフォスフェート(HLB=4.7)60部および酸化防止剤として該ポリエチレンに対して0.3重量部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを2軸押出機を用いて250℃で混練し、Tダイから押し出して冷却ロールで引き取り厚さ2mmのシートを得た。得られたシートをロール延伸機を用いて、延伸温度110℃で7倍に延伸し、さらにテンターを用いて、130℃で幅方向に7倍延伸した。続いて塩化メチレン中に浸漬してグリセリントリオレートおよびベンジルブチルフタレートを除去した後、乾燥して微多孔膜を得た。さらにこの微多孔膜をテンターを用いて、延伸温度125℃で幅方向に1.8倍延伸した後、幅方向の延伸を17%緩和させつつ熱処理した。
【0030】
得られた膜の物性、またこれをセパレーターとして用いた電池の特性を表1に記載した。
【0031】
【実施例4】
重量平均分子量20万、密度0.959、Mw/Mn=5の高密度ポリエチレン40部、グリセリントリオレート(HLB=3.0)42部、ベンジルブチルフタレート(HLB=6.2)18部および酸化防止剤として該ポリエチレンに対して0.3重量部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを二軸押出機を用いて250℃で混練し、環状ダイから0.7mmの厚さで押し出して、延伸温度130℃でインフレーション延伸(ドローダウン比4.5、ブローアップ比4.5)した。続いて塩化メチレン中に浸漬してグリセリントリオレートおよびベンジルブチルフタレートを除去した後、乾燥して微多孔膜を得た。さらにこの微多孔膜をテンターを用いて、延伸温度125℃で幅方向に1.8倍延伸した後、幅方向の延伸を17%緩和させつつ熱処理した。
【0032】
得られた膜の物性、またこれをセパレーターとして用いた電池の特性を表1に記載した。
【0033】
【比較例1】
重量平均分子量40万、密度0.950、Mw/Mn=9の高密度ポリエチレン40部、流動パラフィン(HLB=0)60部および酸化防止剤として該ポリエチレンに対して0.3重量部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを二軸押出機を用いて250℃で混練し、Tダイから押し出して冷却ロールで引き取り厚さ1mmのシートを得た。得られたシートを塩化メチレン中に浸漬して流動パラフィンを除去した後、二軸延伸機を用い延伸温度125℃で5×5倍に延伸して微多孔膜を得た。
【0034】
得られた膜の物性、またこれをセパレーターとして用いた電池の特性を表1に記載した。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】
本発明のポリエチレン微多孔膜は、良好な透過性能と高い強度を併せ持ち、特にリチウムイオン二次電池用セパレーターに好適である。
Claims (3)
- 下記式(1)で表される透過性指数が3〜20であり、平均孔径0.25μm以下、気孔率35%〜60%、突き刺し強度300g以上である延伸ポリエチレン微多孔膜からなるリチウムイオン二次電池用セパレーターの製造方法であって、
透過性指数=透水量(リットル/m2 ・hr・atm)/透気度(秒) (1)重量平均分子量20〜40万のポリエチレンと分子構造のパラメータ(HLB値)が1.0〜6.0の有機化合物、又はHLB値が0.1〜10.0の範囲の2種類以上の有機化合物を重量平均で1.0〜6.0となるように混合したものからなる孔形成材を、ポリエチレンと孔形成材との重量比20:80〜60:40で140〜250°Cで混練し、シートに形状付与後、これをポリエチレンの結晶化温度以下まで冷却して高分子ゲルを生成し、さらに該高分子ゲルを100〜140°Cの範囲で少なくとも一軸方向に面積倍率で3倍以上延伸したあと孔形成材を抽出除去し、その後に80〜130°Cの範囲で少なくとも一軸方向に再び延伸することを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレーターの製造方法。 - 孔形成材抽出後の延伸に続いて、または後に、熱固定あるいは熱緩和の熱処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用セパレーターの製造方法。
- シートに形状付与する際のシート厚みが2mmであり、ポリエチレンと孔形成材との重量比が20:80〜40:60であり、一軸方向に面積倍率3倍以上延伸する延伸が7×4〜7×7の延伸であり、再び延伸する際の延伸が幅方向に1.8〜2.5倍の延伸であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用セパレーターの製造方法。
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