JPH10322803A - 車両用制動装置 - Google Patents

車両用制動装置

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JPH10322803A
JPH10322803A JP12103997A JP12103997A JPH10322803A JP H10322803 A JPH10322803 A JP H10322803A JP 12103997 A JP12103997 A JP 12103997A JP 12103997 A JP12103997 A JP 12103997A JP H10322803 A JPH10322803 A JP H10322803A
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JP
Japan
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braking torque
regenerative braking
wheel
road surface
friction coefficient
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Application number
JP12103997A
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English (en)
Inventor
Fumiaki Kawabata
文昭 川畑
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
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Publication of JPH10322803A publication Critical patent/JPH10322803A/ja
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    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B60VEHICLES IN GENERAL
    • B60TVEHICLE BRAKE CONTROL SYSTEMS OR PARTS THEREOF; BRAKE CONTROL SYSTEMS OR PARTS THEREOF, IN GENERAL; ARRANGEMENT OF BRAKING ELEMENTS ON VEHICLES IN GENERAL; PORTABLE DEVICES FOR PREVENTING UNWANTED MOVEMENT OF VEHICLES; VEHICLE MODIFICATIONS TO FACILITATE COOLING OF BRAKES
    • B60T2270/00Further aspects of brake control systems not otherwise provided for
    • B60T2270/60Regenerative braking
    • B60T2270/602ABS features related thereto

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  • Hybrid Electric Vehicles (AREA)
  • Regulating Braking Force (AREA)
  • Electric Propulsion And Braking For Vehicles (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】回生制動装置と液圧制動装置とを含む車両用制
動装置において、アンチロック制御時に、回生制動トル
クを路面の摩擦係数に基づいた大きさに制御する。 【解決手段】アンチロック制御は、回生制動トルクがほ
ぼ一定の大きさに保たれた状態で、液圧制動トルクが増
減させられることにより行われる。車輪の制動スリップ
量がスリップ量ΔVsn以上になった時点における総制動
トルクに基づいて車輪と路面との間の摩擦係数が取得さ
れ、この摩擦係数に応じて車輪側上限値が決定され(S
12〜15)、この車輪側上限値に基づいて回生制動ト
ルク目標値が決定される。回生制動トルクは、回生制動
トルク目標値に近づくように制御される。このように、
回生制動トルクが路面の摩擦係数に基づいた適正な大き
さに制御されるため、アンチロック制御を良好に行い得
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用制動装置に関
するものであり、特に、回生制動装置と摩擦制動装置と
の両方を備えた車両用制動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の車両用制動装置は既に知られて
いる。回生制動装置は、電動モータの回生制動による回
生制動トルクを車両の車輪に加えるものであり、摩擦制
動装置は、車輪と共に回転するブレーキ回転体に摩擦部
材を摩擦係合させることにより、車輪に摩擦制動トルク
を加えるものである。特開平5─161212号公報に
記載の車両用制動装置がその一例である。この車両用制
動装置は、回生制動装置と、摩擦制動装置としての液圧
制動装置と、これら回生制動装置および液圧制動装置を
制御することにより、車輪に加えられる総制動トルクを
制御する総制動トルク制御装置とを含む。通常制動時に
は、回生制動トルクと液圧制動トルクとを含む総制動ト
ルクが加えられるが、路面の摩擦係数が小さい場合は、
回生制動トルクが0とされる。また、回生制動トルクは
回生制動トルク目標値を目指して制御されるが、この回
生制動トルク目標値は、総制動トルク目標値を越えない
範囲における上限値に決定される。すなわち、発電機と
して機能する電動モータの回転数等発電側の都合で決ま
る回生制動トルクの上限値である発電側上限値と、蓄電
装置の充電容量(充電し得る容量)等蓄電側の都合で決
まる回生制動トルクの上限値である蓄電側上限値と、運
転者のブレーキ操作部材の操作状況に基づいて決定され
る操作側上限値(総制動トルク目標値に対応する値)の
うちの最小値、すなわち、現状において発生させ得る回
生制動トルクの最大値に決定されるのであり、路面の摩
擦係数を考慮して決定されるわけではない。また、総制
動トルクが車輪と路面との間の摩擦係数との関係におい
て過大になった場合には、液圧制動トルクを増・減させ
ることにより、車輪の制動スリップ状態をほぼ適正状態
に保つアンチロック制御が行われるが、アンチロック制
御中に回生制動トルクがどのようにされるかは記載され
ていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,解決手段,作用および
発明の効果】そこで、本発明の課題は、上記回生制動装
置および摩擦制動装置の両方を備えた車両用制動装置に
おいて、回生制動装置による回生制動トルクの制御に路
面の摩擦係数が考慮される車両用制動装置を得ることで
ある。
【0004】この課題は下記態様の車両用制動装置によ
って解決される。なお、以下の説明において、本発明の
各態様を、それぞれ項番号を付し、必要に応じて他の項
の番号を引用して請求項と同じ形式で記載する。各項に
記載の特徴を組み合わせて採用することの可能性を明示
するためである。 (1)車両の車輪に、電動モータの回生制動による回生
制動トルクを加える回生制動装置と、前記車輪と共に回
転するブレーキ回転体に摩擦部材を摩擦係合させること
により車輪に摩擦制動トルクを加える摩擦制動装置と、
それら回生制動装置および摩擦制動装置を制御すること
により、前記車輪に加えられる総制動トルクを制御する
総制動トルク制御装置とを含む車両用制動装置であっ
て、前記総制動トルク制御装置が、前記回生制動トルク
の上限値を、前記車輪の制動スリップ状態に基づいて決
定する回生制動トルク上限値決定手段を含むことを特徴
とする車両用制動装置(請求項1)。本項に記載の車両
用制動装置によれば、車輪に、回生制動トルクと摩擦制
動トルクとを含む総制動トルクが加えられ、回転が抑制
される。回生制動トルク上限値は制動スリップ状態に基
づいて決定され、回生制動トルクの制御に使用される。
例えば、回生制動トルク目標値が回生制動トルク上限値
を超えないように決定され、実際の回生制動トルクが回
生制動トルク目標値に近づくように回生制動装置が制御
されるのである。回生制動トルク上限値決定手段の一態
様は、制動スリップ状態に応じて回生制動トルク上限値
決定の規則を変えるものである。例えば、制動スリップ
状態が制動スリップが過大になり、あるいは過大になる
兆候がある場合には、回生制動トルク上限値を、その時
の路面摩擦係数(厳密には車輪と路面との間の摩擦係
数)に応じた値に決定し、制動スリップ状態が過大では
ない、あるいは過大になる兆候がない場合には、回生制
動トルク上限値の決定を行わないというように回生制動
トルク上限値決定の規則を変えるのである。路面摩擦係
数は、制動スリップ状態が制動スリップが過大になり、
あるいは過大になる兆候がある場合(例えば、車両用制
動装置がアンチロック制御装置を備え、そのアンチロッ
ク制御装置が作動中である場合)における総制動トルク
や車体減速度の大きさから推定することができ、回生制
動トルク上限値は、例えば、路面摩擦係数から決まる適
正総制動トルクより予め定められた量だけ小さい値に決
定することができる。なお、制動スリップ状態が制動ス
リップが過大になり、あるいは過大になる兆候がある場
合における実際の総制動トルクを上記適正総制動トルク
の代わりに使用することも可能である。ここで決定され
る回生制動トルク上限値は、前記発電側上限値,蓄電側
上限値,操作側上限値との関係で言えば、車輪の制動ス
リップ状態等、車輪側の都合で決まる回生制動トルクの
上限値であって、車輪側上限値と称すべきものである。
目標回生制動トルクは、これら発電側上限値,蓄電側上
限値,操作側上限値および車輪側上限値のうちの最小の
ものに決定されることになる。回生制動トルク上限値決
定手段の別の態様は、回生制動トルク上限値を、制動ス
リップ状態が予め定められた状態にある場合における総
制動トルクに基づいて決定するものであり、総制動トル
クが大きい場合は小さい場合より大きい値に決定され
る。制動スリップ状態が予め定められた状態にある場合
における総制動トルクの大きさは路面摩擦係数と密接な
関係があり、総制動トルクが大きい場合は小さい場合よ
り路面摩擦係数が大きい。したがって、本態様の回生制
動トルク上限値決定手段は実質的には路面摩擦係数に基
づいて回生制動トルク上限値を決定するものであると考
えることができる。本項に記載の車両用制動装置におい
ては、回生制動トルク上限値が車輪の制動スリップ状態
に基づいて決定され、この回生制動トルク上限値が、回
生制動トルク目標値の決定に考慮されるため、結果的に
は回生制動トルクの制御に路面摩擦係数が考慮されるこ
ととなり、総制動トルクが路面摩擦係数との関係におい
て適正に制御されることとなる。また、従来の車両用制
動装置における場合のように、路面摩擦係数が小さい場
合には、回生制動トルク上限値が必ず0とされるわけで
はないため、運動エネルギの無駄な放出を抑制し得る。
摩擦制動においては、運動エネルギが熱エネルギとして
大気中に放出されてしまうが、回生制動においては運動
エネルギを電気エネルギとして(厳密にいえば化学エネ
ルギとして)蓄えることができるため、運動エネルギの
無駄な放出を抑制し得るのである。さらに、本項に記載
の車両用制動装置がアンチロック制御装置を含み、アン
チロック制御中においても回生制動トルク上限値が制動
スリップ状態に基づいて決定される場合には、アンチロ
ック制御中に回生制動トルクが加えられない場合に比較
して、運動エネルギの無駄な放出を抑制し得る。また、
回生制動トルク上限値が路面摩擦係数に応じた値に決定
されるため、アンチロック制御を良好に行い得る。な
お、摩擦制動装置は、摩擦部材をブレーキ回転体に摩擦
係合させる係合装置を含むものであるが、その係合装置
は、液圧により摩擦部材をブレーキ回転体に摩擦係合さ
せるものであっても、電動モータ等の駆動により摩擦係
合させるものであっても、圧電素子等のように電圧印加
等によって生じる材料の変形を利用するものであっても
よい。これらの場合は、摩擦制動装置が液圧制動装置,
電動制動装置,圧電制動装置等となる。さらに付言すれ
ば、本明細書において、回生制動装置や摩擦制動装置の
制御は、回生制動トルクや摩擦制動トルク等の制御とし
て説明するが、回生制動トルクを摩擦制動装置の摩擦部
材のブレーキ回転体への押付力に換算し、あるいは摩擦
制動装置が液圧制動装置である場合に回生制動トルクを
液圧制動装置の液圧に換算して、直接の制御は押付力や
液圧の制御として行うことも可能である。しかし、実質
的には同じことであるので、これらの場合も回生制動ト
ルクや摩擦制動トルク等の制御に含まれるものとする。 (2)前記回生制動トルク上限値決定手段が、前記車輪
の制動スリップ状態に基づいて前記車輪と路面との間の
摩擦係数に関連する路面摩擦係数関連量を取得する路面
摩擦係数関連量取得手段と、その路面摩擦係数関連量取
得手段によって取得された路面摩擦係数関連量に基づい
て前記回生制動トルク上限値を決定する路面摩擦係数関
連量対応回生制動トルク上限値決定手段とを含む(1) 項
に記載の車両用制動装置(請求項2)。車輪の制動スリ
ップ状態に基づいて路面摩擦係数関連量が取得される。
路面摩擦係数関連量には、路面摩擦係数自体の他、路面
摩擦係数を取得し得る総制動トルク(例えば、アンチロ
ック制御中における総制動トルク)等が含まれる。 (3)前記路面摩擦係数関連量取得手段が、前記車輪の
制動スリップ状態がスリップ増大状態にある場合におけ
る路面摩擦係数関連量を取得するスリップ増大時路面摩
擦係数関連量取得手段と、制動スリップ状態がスリップ
減少状態にある場合における路面摩擦係数関連量を取得
するスリップ減少時路面摩擦係数関連量取得手段との少
なくとも一方を含む (2)項に記載の車両用制動装置(請
求項3)。スリップ増大状態は、車輪の制動スリップが
増大する状態であり、制動スリップが増大し始める増大
開始状態はスリップ増大状態に含まれるものとする。ス
リップ減少状態は、制動スリップが減少する状態であ
り、制動スリップが減少し始める減少開始状態はスリッ
プ減少状態に含まれるものとする。車輪の制動スリップ
状態がほぼ適正状態になるように総制動トルクが制御さ
れている場合には、スリップ増大状態やスリップ減少状
態における総制動トルクの大きさが路面摩擦係数とほぼ
対応しているため、総制動トルクに基づいて路面摩擦係
数を取得することができる。これら総制動トルク,路面
摩擦係数が路面摩擦係数関連量であり、これに基づいて
前記路面摩擦係数関連量対応回生制動トルク上限値決定
手段により回生制動トルク上限値が決定される。 (4)前記回生制動トルク上限値決定手段が、前記総制
動トルクを減少させるべきであるにもかかわらず、前記
摩擦制動装置による摩擦制動トルクを実質的に減少させ
得ない場合には、前記回生制動トルク上限値を漸減させ
る回生制動トルク上限値漸減手段を含むことを特徴とす
る(1) 項ないし(3) 項のいずれか1つに記載の車両用制
動装置(請求項4)。総制動トルクを減少させるべきで
ある状態は、車輪の制動スリップが大きく、それを減少
させるために総制動トルクを減少させる必要がある状態
である。例えば、スリップ増大状態や、スリップ増大状
態であってかつスリップ回復傾向にない状態(スリップ
状態改善の兆候が見られない状態)、制動スリップ量が
予め定められたスリップ量以上の状態等が該当する。こ
れらの状態は、総制動トルクを保持または増大させるた
めの条件を満たさない状態と考えることもできる。ま
た、摩擦制動トルクを実質的に減少させ得ない場合とし
ては、例えば、摩擦制動トルク目標値が0とされた場合
が該当する。しかし、摩擦制動トルク目標値が0になっ
ても実際の摩擦制動トルクの大きさが直ちに0になると
は限らない。特に摩擦制動装置が液圧制動装置である場
合には、液圧が0に近づくほど減少勾配が小さくなり、
実際の摩擦制動トルクの大きさが0になるまでに時間を
要する。したがって、実際の摩擦制動トルクの大きさが
設定値以下であれば、実質的に減少させ得ない状態にあ
るとすることが現実的であることになる。また、摩擦制
動装置における限界まで摩擦制動トルクが減少させられ
た場合も摩擦制動トルクを実質的に減少させ得ない場合
に該当する。この場合も摩擦制動トルクの限界値が0で
あるとは限らないため、摩擦制動トルクが設定値以下で
あれば、摩擦制動トルクを実質的に減少させ得ない場合
とすることが必要となる。回生制動トルク上限値は、連
続的に減らされるようにしても段階的に減らされるよう
にしてもよい。いずれにしても回生制動トルク上限値が
漸減させられれば、回生制動トルク目標値が漸減させら
れる。回生制動トルクが漸減させられるため、車輪の制
動スリップ状態をみながら回生制動トルク上限値を漸減
させることができる。回生制動トルク上限値は、総制動
トルクを減少させる必要がなくなるまで減らされるよう
にすることが望ましい。また、総制動トルクを減少させ
るべきであるにもかかわらず、摩擦制動トルクを実質的
に減少させ得ない場合には、直ちに、回生制動トルク上
限値が減らされるようにしてもよいが、設定時間経過す
るまで待って減らされるようにしてもよい。車輪のスリ
ップ状態は、車輪の慣性に起因して、総制動力の変化に
対して遅れて変化するため、摩擦制動トルクが実質的に
0とされ、総制動トルクが小さくされたことによってス
リップ状態が改善される場合であっても、直ちには改善
されないからである。本項に記載の車両用制動装置にお
いては、回生制動トルク上限値の漸減に伴い、総制動ト
ルクも漸減させられる。回生制動トルク上限値が急減さ
せられるわけではないため、総制動トルクが急減させら
れることを回避することができる。また、総制動トルク
を減少させる必要がなくなるまで漸減させられる場合に
は、回生制動トルク上限値が必要以上に小さくされるこ
とを回避することができ、路面摩擦係数に対して適正な
大きさに決定することができる。 (5)前記総制動トルク制御装置が、前記総制動トルク
が前記路面摩擦係数との関係において過大になった場合
に、総制動トルクを増・減させることにより車輪の制動
スリップ状態をほぼ適正状態に保つアンチロック制御手
段を含む(1) 項ないし(4) 項のいずれか1つに記載の車
両用制動装置。アンチロック制御においては、回生制動
トルクと摩擦制動トルクとの両方が増減させられても、
いずれか一方がほぼ一定に保たれ、他方が増・減させら
れてもよい。
【0005】本発明の別の課題は、アンチロック制御中
に回生制動トルクを加え得る車両用制動装置を得ること
であり、さらには、運動エネルギの無駄な放出を抑制し
つつアンチロック制御を良好に行い得る車両用制動装置
を得ることである。この課題は下記態様の車両用制動装
置によって解決される。 (6)車両の車輪に、電動モータの回生制動による回生
制動トルクを加える回生制動装置と、前記車輪と共に回
転するブレーキ回転体に摩擦部材を摩擦係合させること
により車輪に摩擦制動トルクを加える摩擦制動装置と、
それら摩擦制動装置および回生制動装置を制御すること
により、前記車輪に加えられる総制動トルクを制御する
総制動トルク制御装置とを含む車両用制動装置であっ
て、前記総制動トルク制御装置が、前記総制動トルクが
前記車輪と路面との間の摩擦係数との関係において過大
になった場合に、前記回生制動装置による回生制動トル
クを、前記路面の摩擦係数に応じて決まる適正総制動ト
ルクより小さい大きさに保ちつつ、前記摩擦制動装置に
よる摩擦制動トルクを、増・減させることにより、前記
車輪の制動スリップ状態をほぼ適正状態に保つアンチロ
ック制御手段を含むことを特徴とする車両用制動装置
(請求項5)。総制動トルクが路面摩擦係数との関係に
おいて過大になった場合にアンチロック制御が行われる
が、アンチロック制御においては、回生制動トルクが適
正総制動トルクより小さい大きさに保たれ、摩擦制動ト
ルクが増・減させられる。アンチロック制御中にも回生
制動トルクが加えられ、蓄電装置への充電が行われるの
であり、アンチロック制御中に回生制動トルクが常に0
とされる場合に比較して、運動エネルギの無駄な放出を
抑制することができる。適正総制動トルクは、路面摩擦
係数に応じて決まるものであり、例えば、各路面摩擦係
数について、車両を最大の減速度で制動し得る大きさ、
あるいは操縦安定性を損なわない範囲で最大の減速度で
制動し得る大きさである。回生制動トルクは、摩擦制動
トルクの増減により車輪の制動スリップ状態を適正状態
に保ち得る大きさとされる。例えば、適正総制動トルク
から予め定められた設定量や、路面摩擦係数等に基づい
て決められる可変量を引いた大きさとしたり、適正総制
動トルクに予め定められた1より小さい設定比率や、上
述のように路面摩擦係数等に基づいて決められた可変比
率を乗じた大きさ等としたりすることができる。したが
って、上述の適正総制動トルクから引く設定量を、制御
幅対応量(制御幅対応トルク),制御余裕量(制御余裕
トルク)等と称することができ、上述の適正総制動トル
クに乗ずる設定比率を、制御余裕比率等と称することが
できる。また、路面摩擦係数等に基づいて決められた可
変量を路面摩擦係数関連制御余裕量と称し、路面摩擦係
数等に基づいて決められた可変比率を路面摩擦係数関連
制御余裕率と称することもできる。一般に、路面摩擦係
数等が大きい場合は小さい場合より、路面摩擦係数関連
制御余裕量や路面摩擦係数関連制御余裕率が大きくされ
る。しかし、路面摩擦係数等が大きい場合には適正制動
トルクが大きいため、大きな路面摩擦係数関連制御余裕
量が引かれてもなお回生制動トルク目標値は路面摩擦係
数が小さい場合より大きくなる。このようにして決定さ
れた回生制動トルク目標値を、適正回生制動トルク目標
値,アンチロック制御時適正回生制動トルク目標値等と
称することができ、回生制動トルクは、これら目標値に
近づくように制御される。この適正回生制動トルク目標
値を決定する過程においては、適正総制動トルクを定め
る必要は必ずしもなく、回生制動トルクが結果的に適正
総制動トルクより小さければよい。上述の制御余裕量,
制御余裕率(路面摩擦係数関連制御余裕量,路面摩擦係
数関連制御余裕率も含む)等はできる限り小さくするこ
とが望ましい。回生制動トルクは、摩擦制動トルクが0
とされた場合に、車輪の制動スリップ状態が改善し得る
大きさ、すなわち、総制動トルクを減少させる必要がな
くなった場合に摩擦制動トルクが実質的に0となる大き
さに制御されることが望ましい。この回生制動トルクの
大きさを、本明細書において理想的適正回生制動トルク
と称することとする。回生制動トルクがこの理想的適正
回生制動トルクに制御されれば、運動エネルギの無駄な
放出を最小限に抑制し得、蓄電装置に可能な限り多くの
電気エネルギを蓄えることが可能となる。しかし、制御
余裕量,制御余裕率等を、回生制動トルクが理想的適正
回生制動トルクに制御されるような大きさに設定するこ
とは困難であり、また、仮にその設定が可能であって
も、制御誤差により車輪の制動スリップ状態が適正スリ
ップ状態に保たれなくなってしまうのが普通である。そ
のため、実際には、回生制動トルクが理想的適正回生制
動トルクより小さい大きさに制御されるように、制御余
裕量等が設定されるのが普通である。 (7)前記アンチロック制御手段が、前記車輪の制動ス
リップ状態に基づいて車輪と路面との間の摩擦係数に関
連する路面摩擦係数関連量を取得する路面摩擦係数関連
量取得手段と、その路面摩擦係数関連量取得手段によっ
て取得された路面摩擦係数関連量に応じて決まる適正総
制動トルクより小さい回生制動トルク目標値を取得する
回生制動トルク目標値取得手段と、その回生制動トルク
目標値取得手段によって取得された回生制動トルク目標
値に前記回生制動トルクを制御する回生制動トルク制御
手段とを含む(6) 項に記載の車両用制動装置。適正総制
動トルクは、路面摩擦係数関連量取得手段によって取得
された路面摩擦係数関連量に応じて決まる。路面摩擦係
数が大きい場合は小さい場合より、適正総制動トルクが
大きくなり、回生制動トルク目標値が大きくされる。例
えば、回生制動トルク目標値が、適正総制動トルクから
前述の制御余裕量(設定量)を引いた大きさとして求め
られる場合には、路面摩擦係数が大きい場合は小さい場
合より適正総制動トルクが大きくなり、回生制動トルク
目標値が大きくされる。また、回生制動トルク目標値
が、適正総制動トルクから前述の路面摩擦係数関連制御
余裕量(変化量)を引いた大きさとして求められる場合
には、前述のように路面摩擦係数が大きい場合は小さい
場合より路面摩擦係数関連制御余裕量が大きくされる
が、適正総制動トルクが大きいため、回生制動トルク目
標値も大きくされることになる。 (8)前記アンチロック制御手段が、前記回生制動トル
クを制御する際の目標値を、前記車輪の制動スリップ状
態がスリップ増大状態にある場合における前記路面の摩
擦係数に関連する路面摩擦係数関連量に応じて決定する
スリップ増大時回生制動トルク目標値決定手段と、前記
制動スリップ状態がスリップ減少状態にある場合におけ
る前記路面摩擦係数関連量に応じて決定するスリップ減
少時回生制動トルク目標値決定手段との少なくとも一方
を含む(6) 項または(7) 項に記載の車両用制動装置。ス
リップ増大時回生制動トルク目標値が、スリップ増大時
における路面摩擦係数に基づいて決まるスリップ増大時
適正総制動トルクより小さい大きさとされれば、アンチ
ロック制御において適正な大きさに決定することができ
る。同様に、スリップ減少時回生制動トルク目標値が、
スリップ減少時適正総制動トルクより小さい大きさとさ
れれば、アンチロック制御において適正な大きさに決定
することができる。 (9)前記アンチロック制御手段が、前記摩擦制動トル
クが減少させられるべきであるにもかかわらず、実質的
に減少させ得ない状態である場合に、前記回生制動トル
クを漸減させる回生制動トルク漸減手段を含む(6) 項な
いし(8) 項のいずれか1つに記載の車両用制動装置。総
制動トルクを減少させるために摩擦制動トルクを減少さ
せるべきであるのに、既に摩擦制動トルクが実質的に0
である等により実質的にそれ以上減少させることができ
ないという場合は、回生制動トルクが大きすぎる場合で
あるから、回生制動トルクが漸減させられ、それにより
総制動トルクが漸減させられる。 (10)車両の車輪に、電動モータの回生制動による回
生制動トルクを加える回生制動装置と、前記車輪と共に
回転するブレーキ回転体に摩擦部材を摩擦係合させるこ
とにより車輪に摩擦制動トルクを加える摩擦制動装置
と、それら摩擦制動装置および回生制動装置を制御する
ことにより、前記車輪に加えられる総制動トルクを制御
する総制動トルク制御装置とを含む車両用制動装置であ
って、前記総制動トルク制御装置が、前記総制動トルク
が前記車輪と路面との間の摩擦係数との関係において過
大になった場合に、前記摩擦制動装置による摩擦制動ト
ルクを、前記路面の摩擦係数に応じて決まる適正総制動
トルクより小さい大きさに保ちつつ、前記回生制動装置
による回生制動トルクを、増・減させることにより、前
記車輪の制動スリップ状態をほぼ適正状態に保つアンチ
ロック制御手段を含むことを特徴とする車両用制動装
置。本項に記載の車両用制動装置においては、アンチロ
ック制御が、摩擦制動トルクを適正総制動トルクより小
さい大きさに保ち、回生制動トルクを増減させることに
より行われる。回生制動トルクの大きさは、電動モータ
と蓄電装置との間の電力変換装置における電流制御や、
車輪の回転を電動モータに伝達する際の変速器の変速比
の制御により、制御することができる。電動モータが誘
導モータである場合には、電力変換装置は、インバータ
等を含むものであるが、インバータにおいてすべり周波
数制御やベクトル制御等の電流制御を行えば、電動モー
タにおける制動トルクの大きさを制御することができ、
回生制動トルクの大きさを制御することができる。ま
た、変速比が変えられれば、電動モータにおけるロータ
の回転速度を変えることができるため、回生制動トルク
の大きさが変えられる。蓄電装置がそれ以上蓄電不可能
な状態になった場合には、回生制動に代えて、抵抗器に
より電気エネルギを熱エネルギに変換して放出する発電
制動が行われるようにすることも可能である。 (11)前記摩擦制動装置が、前記摩擦部材を前記ブレ
ーキ回転体に液圧の発生により押し付ける液圧押付装置
を含む(1) 項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両
用制動装置。摩擦制動装置を、液圧押付装置を含む液圧
制動装置とすることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態である
車両用制動装置を図面に基づいて説明する。図1におい
て、本車両用制動装置が搭載された車両はハイブリッド
車であり、駆動輪としての前輪10,12は、電気的駆
動装置14と図示しない内燃駆動装置とによって駆動さ
れる。電気的駆動装置14は、差動装置22,ドライブ
シャフト24,26を介して、前輪10,12に接続さ
れる。電気的駆動装置14は、電動モータ28の回生制
動により車輪10,12に回生制動トルクを加える回生
制動装置でもある。本実施形態における車両用制動装置
には、摩擦制動装置としての液圧制動装置30も設けら
れている。車輪10,12と共に回転するブレーキ回転
体としてのロータに摩擦部材としてのパッドがホイール
シリンダ32,34に液圧が伝達されることにより摩擦
係合させられ、車輪10,12に液圧制動トルクが加え
られる。このように、車輪10,12には、回生制動装
置14による回生制動トルクと液圧制動装置30による
液圧制動トルクとを含む総制動トルクが加えられ、回転
が抑制されるのである。
【0007】回生制動装置14は、上記電動モータ28
の他、蓄電装置36,変速器38,電力変換装置40,
電動モータ制御装置42等を含むものである。電動モー
タ28の回転軸が車輪10,12によって強制的に回転
させられる際に、電動モータ28に発生する起電力(単
に、回生起電力と称する)により蓄電装置36に充電す
れば、電動モータ28が上記外部の力に対して負荷とな
り、回生制動トルクが発生する。電動モータ28には、
蓄電装置36に蓄えられた直流電流が電力変換装置40
により交流に変換されて供給される。電力変換装置40
は、インバータ等を含むものであり、電動モータ制御装
置42によって制御される。インバータにおけるすべり
周波数制御やベクトル制御等により、電動モータ28の
制動トルクの大きさが制御され、車輪に加わる制動トル
クや駆動トルクの大きさが制御されるのである。駆動ト
ルクはアクセルペダルの踏込み状況等に基づいた大きさ
に制御される。また、回生制動トルクは、変速器38に
おける変速比を制御することによっても制御することが
できる。車輪10,12の回転を電動モータ28に伝達
する際の変速比が変われば、電動モータ28の回転軸の
回転速度を変えることができるため、回生制動トルクの
大きさを変えることができる。
【0008】液圧制動装置30は、前記前輪10,12
のホイールシリンダ32,34、液圧制動トルクを制御
するとともに回生制動トルクと液圧制動トルクとを含む
総制動トルクを制御する総制動トルク制御装置46、リ
ニアバルブ装置56、アンチロック制御装置58の他、
図2に示すように、後輪60,62のホイールシリンダ
64,66、マスタシリンダ68、定液圧源70等を含
むものである。マスタシリンダ68は2つの加圧室7
2,74を有するものであり、2つの加圧室72,74
には、それぞれ、ブレーキペダル76の操作力に応じた
同じ大きさの液圧が発生させられる。一方の加圧室72
には、液通路80を介して駆動輪である前輪10,12
のホイールシリンダ32,34が接続され、他方の加圧
室74には、液通路82を介して後輪60,62のホイ
ールシリンダ64,66が接続されている。定液圧源7
0は、マスタリザーバ84,ポンプ86,アキュムレー
タ88等を含むものであり、マスタリザーバ84の作動
液がポンプ86によって汲み上げられてアキュムレータ
88に蓄えられる。アキュムレータ88には、設定圧力
範囲の作動液が常時蓄えられるようにされている。アキ
ュムレータ88には図示しない圧力スイッチが取り付け
られており、この圧力スイッチのヒステリシスを有する
ON,OFFに応じてポンプ86が起動,停止させられ
るようになっているのである。定液圧源70は、上記加
圧室74に接続されており、ブレーキペダル76の踏込
みに伴って、高圧の作動液が加圧室74へ供給される。
それにより、ブレーキペダル76の操作ストロークの軽
減を図ることが可能とされる。
【0009】前記液通路80の途中には、電磁開閉弁9
0,92がそれぞれ設けられている。電磁開閉弁90,
92の開閉により、ホイールシリンダ32,34とマス
タシリンダ68とが連通させられたり、遮断されたりす
る。ホイールシリンダ32,34は、回生制動協調制御
やアンチロック制御(回生制動協調制御とアンチロック
制御とが並行して行われる場合も含む)が行われる場合
等に、マスタシリンダ68から遮断される。
【0010】ホイールシリンダ32,34とマスタリザ
ーバ84とを接続する液通路93の途中には、電磁開閉
弁94,96が設けられている。電磁開閉弁94,96
が開状態に切り換えられれば、ホイールシリンダ32,
34とマスタリザーバ84とが連通させられる。ホイー
ルシリンダ32,34の液圧が減圧させられ、液圧制動
トルクが減少させられる。また、ホイールシリンダ3
2,34とリニアバルブ装置56とを接続する液通路9
8の途中には、電磁開閉弁100,102が設けられて
いる。電磁開閉弁100,102は、通常制動時におい
て回生制動協調制御が行われる場合には開状態に保た
れ、ホイールシリンダ32,34とリニアバルブ装置5
6とが連通状態に保たれる。これら電磁開閉弁100,
102をそれぞれバイパスするバイパス通路の途中に
は、それぞれホイールシリンダ32,34からリニアバ
ルブ装置56へ向かう作動液の流れを許容するが、逆向
きの流れを阻止する逆止弁104,106が設けられて
おり、これら逆止弁104,106により、ブレーキペ
ダル76の踏込みが解除された場合に、ホイールシリン
ダ32,34の作動液が早急に戻される。また、上記液
通路98のリニアバルブ装置56と電磁開閉弁100,
102との間には、電磁開閉弁108が設けられてい
る。電磁開閉弁108は、回生制動協調制御や前輪1
0,12についてアンチロック制御が行われる場合等に
は、開状態に保たれる。
【0011】上記リニアバルブ装置56は、前記加圧室
74と後輪60,62のホイールシリンダ64,66と
を接続する液通路82の途中に設けられており、この液
通路82のリニアバルブ装置56のホイールシリンダ側
に前記液通路98が接続されることになる。リニアバル
ブ装置56とホイールシリンダ64,66との間には、
電磁開閉弁110が設けられ、電磁開閉弁110をバイ
パスするバイパス通路の途中には、ホイールシリンダ6
4,66からリニアバルブ装置56へ向かう方向の作動
液の流れを許容するが、逆向きの流れを阻止する逆止弁
112が設けられている。また、ホイールシリンダ6
4,66とマスタリザーバ84とを接続する液通路11
4の途中には、電磁開閉弁116が設けられている。液
通路82には、プロポーショニングバルブ118も設け
られ、後輪60,62のホイールシリンダ64,66の
液圧が前輪10,12のホイールシリンダ32,34の
液圧に対して大きくならないように制御されている。図
示するように、本実施形態においては、後輪60,62
のホイールシリンダ64,66の液圧は、共通に制御さ
れる。
【0012】液通路82のリニアバルブ装置56とマス
タシリンダ68との間には、液圧センサ122が設けら
れ、リニアバルブ装置56のホイールシリンダ側の近傍
には、液圧センサ124が設けられている。前輪10,
12のホイールシリンダ32,34の液圧は、液圧セン
サ126,128によって別個に検出され、後輪60,
62のホイールシリンダ64,66の液圧は、液圧セン
サ130によって検出される。また、液通路98の途中
には、液圧センサ132が上記液圧センサ124のフェ
ールを検出するために設けられている。電磁開閉弁10
8が開状態に保たれた場合に、液圧センサ132の出力
信号と液圧センサ124の出力信号とが大きく異なる場
合には、液圧センサ124が異常であるとされる。
【0013】上記リニアバルブ装置56は、図3に示す
ように、増圧制御弁としての増圧リニアバルブ150,
減圧制御弁としての減圧リニアバルブ152,減圧用リ
ザーバ154および逆止弁156,158を含むもので
ある。増圧リニアバルブ150は加圧室74から延び出
させられた液通路82の途中に設けられ、減圧リニアバ
ルブ152は液通路82と減圧用リザーバ154とを接
続する液通路160の途中に設けられている。逆止弁1
56は、増圧リニアバルブ150をバイパスするバイパ
ス通路の途中に設けられ、ホイールシリンダ側からマス
タシリンダ68へ向かう方向の作動液の流れを許容し、
逆向きの流れを阻止するものであり、逆止弁158は、
減圧リニアバルブ152をバイパスするバイパス通路の
途中に設けられ、減圧用リサーバ154からマスタシリ
ンダ68へ向かう方向の作動液の流れを許容し、逆向き
の流れを阻止するものである。減圧用リザーバ154
は、ハウジング182と、そのハウジング182内に液
密かつ摺動可能に嵌合されたピストン184とを備えた
ものである。ハウジング182とピストン184との間
に、ピストン184の移動につれて容積が変化する液収
容室186が形成されており、ピストン184が圧縮コ
イルスプリング188の弾性力によって液収容室186
の容積が減少する向きに付勢されている。
【0014】増圧リニアバルブ150は、シーティング
弁190と、電磁付勢装置194とを含むものである。
シーティング弁190は、弁体200と、弁座202
と、弁体200と一体的に移動する被電磁付勢体204
と、弁体200が弁座202に着座する向きに被電磁付
勢体204を付勢するスプリング206とを含むもので
ある。また、電磁付勢装置194は、ソレノイド210
と、そのソレノイド210を保持する樹脂製の保持部材
212と、第一磁路形成体214と、第二磁路形成体2
16とを含むものである。ソレノイド210の巻線の両
端に電圧が印加されると、ソレノイド210の巻線に電
流が流れ、磁界が形成される。ソレノイド210の巻線
に印加される電圧を変化させれば(ソレノイド210の
巻線に供給される電流量を変化させれば)、被電磁付勢
体204と第二磁路形成体216との間に作用する磁気
力が変化する。被電磁付勢体204の第二磁路形成体2
16側の端面には、嵌合突部220が形成されており、
第二磁路形成体216の被電磁付勢体204側の端面に
は、その嵌合突部220と軸方向に相対移動可能な状態
で嵌合する嵌合穴222が形成されている。この嵌合穴
222に前記スプリング206が取り付けられているの
である。
【0015】ソレノイド210に電圧が印加されると、
ソレノイド210,第一磁路形成体214,被電磁付勢
体204,第二磁路形成体216,第一磁路形成体21
4,ソレノイド210を経る磁路が形成されるが、被電
磁付勢体204と第二磁路形成体216との間の磁路の
磁気抵抗は、被電磁付勢体204と第二磁路形成体21
6との軸方向の相対的な位置に依存して変化する。具体
的には、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216と
の軸方向の相対位置が変化すれば、被電磁付勢体204
の嵌合突部220と第二磁路形成体216の嵌合穴22
2との微小間隔を隔てて互いに対向する円筒面(嵌合突
部220の外周面と嵌合穴222の内周面とのうち互い
に対向する部分)の面積が変化する。もし、被電磁付勢
体204と第二磁路形成体216とが単純に端面同士で
微小間隔を隔てて対向しているのであれば、被電磁付勢
体204と第二磁路形成体216との軸方向の距離の減
少、すなわち接近に伴って磁気抵抗が加速度的に減少
し、両者の間に作用する磁気力が加速度的に増大する。
それに対し、本実施形態の増圧リニアバルブ150にお
いては、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216と
の接近に伴って、嵌合突部220と嵌合穴222との上
記円筒面の面積が増加し、この円筒面を通る磁束が増加
する一方、被電磁付勢体204の端面と第二磁路形成体
216の端面とのエアギャップを通る磁束が減少する。
その結果、ソレノイド210に印加される電圧が一定で
あれば、被電磁付勢体204を第二磁路形成体216方
向へ付勢する磁気力が、被電磁付勢体204と第二磁路
形成体216との軸方向の相対的な移動に関係なくほぼ
一定となる。一方、スプリング206による被電磁付勢
体204を第二磁路形成体216から離間する方向へ付
勢する付勢力は、被電磁付勢体204と第二磁路形成体
216との接近に伴って増大する。したがって、弁子2
00に液圧差に基づく付勢力が作用していない状態で
は、被電磁付勢体204の第二磁路形成体216方向へ
の移動が、上記スプリング206の付勢力と磁気力とが
等しくなることにより停止することとなる。
【0016】この被電磁付勢体204を第二磁路形成体
216方向へ移動させる方向に作用する磁気力の大きさ
は、ソレノイド210の巻線に印加される電圧の大きさ
と共に増加し、それら印加する電圧と磁気力との関係は
予め知ることができる。したがって、印加電圧をその関
係にしたがって連続的に変化させることにより、被電磁
付勢体204を付勢する力を任意に変更することができ
る。印加電圧を増加させると磁気力が増加し、弁子20
0を弁座202に押し付ける向きの力が小さくなり、弁
子200が弁座202から離間し易くなる。弁体200
に作用する作動液の差圧による付勢力が、被電磁付勢体
204に作用する力(磁気力とスプリング206の付勢
力との合力であるが、磁気力とスプリング206の付勢
力とは互いに反対向きの力である)よりも大きくなる
と、離間させられるのであり、この開弁圧が印加電圧を
増加させると小さくされるのである。
【0017】減圧リニアバルブ152も、基本的には増
圧リニアバルブ150と同じものであり、印加電圧を増
加させると減圧リニアバルブ152の開弁圧が小さくさ
れる。減圧リニアバルブ152においては、後述するよ
うに、スプリング224の付勢力が増圧リニアバルブ1
50のスプリング206と異なっている。減圧リニアバ
ルブ152の構成のうち、増圧リニアバルブ150と同
様であるものには、同じ符号を付して示して説明を省略
する。
【0018】本実施形態においては、増圧リニアバルブ
150の開弁圧が、約3MPa(約30.6kgf/c
2 )とされ、減圧リニアバルブ152の開弁圧が、1
8MPa(≒184kgf/cm2 。定液圧源70によ
り供給される作動液の最大液圧)よりも大きくされてい
る。スプリング224による付勢力が、スプリング20
6によるそれよりも大きく(約6倍)されているのであ
る。本実施形態の液圧制動装置30においては、減圧リ
ニアバルブ152に供給される作動液の最大液圧は、ポ
ンプ86により供給され、また、アキュムレータ88に
蓄えられる最大の液圧である。したがって、ソレノイド
210に電圧が印加されない場合に、操縦者の踏力によ
る液圧がこの最大液圧を上回って、減圧リニアバルブ1
52を経て減圧用リザーバ154に流出させられること
は事実上ないと考えられる。また、減圧用リザーバ15
4に蓄えられた作動液は、制動終了後に、液通路16
0,逆止弁158,逆止弁156,液通路82およびマ
スタシリンダ68を経て、マスタリザーバ84に戻され
る。
【0019】なお、液通路80には、液圧センサ226
(図2参照)が設けられ、マスタシリンダ68の液圧が
検出される。マスタシリンダ68の液圧はブレーキペダ
ル76の操作力に応じた液圧となるため、この液圧に対
応する制動トルクが、運転者が意図する制動トルクであ
るとすることができ、目標総制動トルク(総制動トルク
目標値)とされる。液通路80には、また、ストローク
シミュレータ228が設けられ、電磁開閉弁90,92
が共に閉状態とされた場合に、ブレーキペダル76のス
トロークが殆ど0になることが回避されている。
【0020】ここで、リニアバルブ装置56の増圧リニ
アバルブ150,減圧リニアバルブ152のいずれか一
方のソレノイド210に印加される電圧(以下、リニア
バルブ装置56の制御電圧と略称する)は、液圧センサ
124によって検出された液圧が、後述する目標液圧制
動トルク(液圧制動トルク目標値)に対応する液圧にな
るように決定される。増圧リニアバルブ150のソレノ
イド210に印加される電圧が大きくされて開弁圧が小
さくされれば、液圧センサ124によって検出される液
圧は大きくなり、減圧リニアバルブ152のソレノイド
210に印加される電圧が大きくされて開弁圧が小さく
されれば液圧は小さくされる。
【0021】通常制動時における回生制動協調制御にお
いては、液圧センサ124によって検出される液圧が各
ホイールシリンダ32,34,64,66の液圧とほぼ
同じであると推定することができるため、液圧センサ1
24によって検出された液圧に応じた液圧制動トルク
が、車輪10,12,60,62に加わる液圧制動トル
クであると推定される。この実液圧制動トルクが目標液
圧制動トルクとなるようにリニアバルブ装置56の制御
電圧が決定される。本実施形態においては、フィードバ
ック制御が行われているため、液圧センサ124によっ
て検出された液圧に応じた実液圧制動トルクと目標液圧
制動トルクとの差が小さくなるように、印加電圧の増加
量,減少量(以下、制御電圧の変化量と略称する)が決
定されるのである。この目標液圧制動トルクを後述する
アンチロック制御目標液圧制動トルクに対してリニア制
御目標液圧制動トルクと称する。
【0022】アンチロック制御と回生制動協調制御とが
並行して行われる場合には、ホイールシリンダ32,3
4の液圧およびホイールシリンダ64,66(64,6
6については共通)の液圧が別個に制御されるため、液
圧センサ124によって検出される液圧に応じた液圧制
動トルクと各車輪に加わる液圧制動トルクとは同じでは
ない。ここでは、リニアバルブ装置56の制御電圧は、
上述と同様に、液圧センサ124によって検出された液
圧が、上記リニア制御目標液圧制動トルクに応じた液圧
に近づくように決定され、各ホイールシリンダ液圧が、
車輪の制動スリップ状態がほぼ適正状態に保たれるよう
に制御されるのであり、アンチロック制御目標液圧制動
トルクに応じた液圧になるように制御されるのである。
すなわち、リニアバルブ装置56の制御液圧は、液圧セ
ンサ124によって検出された液圧が、運転者の意図す
る目標総制動トルクに基づくリニア制御目標液圧制動ト
ルクに応じた液圧に近づくように制御され、各車輪のホ
イールシリンダ液圧は、運転者の意図とは無関係に、各
車輪の制動スリップ状態がほぼ適正状態に保たれるよう
に、アンチロック制御目標液圧制動トルクに応じた液圧
に近づくように制御されるのである。
【0023】本実施形態における車両用制動装置におい
ては、非駆動輪としての後輪60,62には、液圧制動
トルクが加えられ、駆動輪としての前輪10,12に
は、回生制動トルクと液圧制動トルクとを含む総制動ト
ルクが加えられる。ここでは、回生制動トルクと液圧制
動トルクとの少なくとも一方が0の場合もある。ブレー
キペダル76が踏み込まれると、目標総制動トルクが、
前述のように、液圧センサ226の出力信号に基づいて
決定される。ブレーキペダル76の操作力,操作ストロ
ーク,操作時間等ブレーキ操作状況に基づく運転者の意
図に応じた大きさに決定されるのである。目標総制動ト
ルクは、後述する操作側上限値に対応する。
【0024】総制動トルク制御装置46,電動モータ制
御装置42は、ROM,RAM,PU(プロセッシング
ユニット)等を備えたコンピュータを主体とするもので
ある。総制動トルク制御装置46の入力部には、前述の
各液圧センサ122〜132,226、ブレーキペダル
76が踏み込まれたことを検出するブレーキスイッチ2
50、前輪10,12の回転速度を各々検出する車輪速
センサ252,254、後輪60,62の回線速度を各
々検出する車輪速センサ256,258、電動モータ2
8の回転速度を検出するエンコーダ260や蓄電装置3
8の充電容量を検出する充電容量検出装置262等が接
続されている。出力部には、電動モータ制御装置42の
他、各電磁開閉弁90,92,94,96,100,1
02,108,110,116のソレノイドやリニアバ
ルブ装置56のソレノイド210等が図示しない駆動回
路を介して接続されるとともに、変速器38が駆動回路
を介して接続されている。ROMには図4のフローチャ
ートで表される総制動トルク制御プログラム等を含む種
々のプログラム等が記憶されている。
【0025】電動モータ制御装置42の入力部には上述
のエンコーダ260,図示しないアクセルペダルの操作
状況を検出するアクセル操作状況検出装置等が接続さ
れ、出力部には上記総制動トルク制御装置46,電力変
換装置40等が接続される。ROMには、フローチャー
トの図示は省略するが、駆動トルク制御プログラム,回
生制動トルク制御プログラム等種々のプログラムが格納
されている。電力変換装置40は、アクセルペダルの踏
み込み状況に基づいた大きさの駆動トルクが得られるよ
うに制御されたり、回生制動トルク目標値(回生制動目
標値)とほぼ同じ大きさの回生制動トルクが得られるよ
うに制御されたりする。
【0026】これら電動モータ制御装置42と総制動ト
ルク制御装置46との間においては、情報の交換が行わ
れる。総制動トルク制御装置46から電動モータ制御装
置42へは、回生制動目標値関連情報としての回生制動
トルク目標値を表す情報が供給され、電動モータ制御装
置42から総制動トルク制御装置46へは、実回生制動
トルク値関連情報として実回生制動トルク値を表す情報
が供給される。電動モータ制御装置42においては、電
動モータ28の回転数等に基づいて実回生制動トルク値
が求められ、それを表す情報が総制動トルク制御装置4
6に供給されるのである。また、総制動トルク制御装置
46には、電動モータ28の回転数も供給されるが、こ
の回転数に基づいて後述する発電側上限値が取得され、
回生制動トルク目標値が決定される。
【0027】以上のように構成された車両用制動装置に
おける作動について説明する。通常制動時には、総制動
トルク制御装置46において、液圧制動トルクと回生制
動トルクとを含む総制動トルクが目標総制動トルクに近
づくように制御される。回生制動トルク目標値は、目標
総制動トルクを越えない範囲内の現状において発生させ
得る回生制動トルクの最大値に決定される。すなわち、
発電機として機能する電動モータ28の回転数等発電側
の都合で決まる回生制動トルクの上限値である発電側上
限値と、蓄電装置38の充電容量,温度等充電側の都合
で決まる上限値である蓄電側上限値と、運転者のブレー
キペダル76の操作力等に基づいて決定される操作側上
限値(目標総制動トルクに対応する)とのうちの最小の
上限値に決定され、この決定された回生制動トルク目標
値を表す情報が電動モータ制御装置42に供給される。
回生制動トルクが上述の最小の上限値に制御されると、
運動エネルギが電気エネルギに変換されて最も有効に蓄
えられる(厳密にいえば、化学エネルギとして蓄えられ
る)ため、この最小の上限値をエネルギ効率最大上限値
と称することとする。また、リニア制御目標液圧制動ト
ルクが、電動モータ制御装置42から供給された情報に
応じた実回生制動トルク値を目標総制動トルクから引い
た大きさに決定され、リニアバルブ装置56の制御電圧
の変化量が、液圧センサ124によって検出された液圧
とリニア制御目標液圧制動トルクに応じた液圧との差が
小さくなるように決定される。
【0028】アンチロック制御時には、回生制動トルク
目標値が、車輪10,12の制動スリップ状態等車輪側
の都合で決まる回生制動トルクの上限値である車輪側上
限値および上述の発電側上限値,蓄電側上限値,操作側
上限値のうちの最小の上限値(車輪側上限値とエネルギ
効率最大上限値との小さい方の上限値に同じ)に決定さ
れる。車輪側上限値は、後述するが、本実施形態におい
ては、スリップ増大状態における路面の摩擦係数μに基
づいて決定される。リニア制御目標液圧制動トルクは、
通常制動時における場合と同様に、目標総制動トルクか
ら実回生制動トルク値を引いた大きさに決定され、アン
チロック制御目標液圧制動トルクが、車輪10,12の
制動スリップ状態がほぼ適正状態に保たれるように決定
される。ホイールシリンダ32,34の液圧が、アンチ
ロック制御目標液圧制動トルクに応じた液圧に近づくよ
うに、電磁開閉弁108を開状態に、電磁開閉弁90,
92を閉状態に保った状態で、電磁開閉弁94,96,
100,102が開閉させられる。後輪側においては、
ホイールシリンダ液圧が、後輪60,62の制動スリッ
プ状態がほぼ適正状態に保たれるように制御される。
【0029】図4のフローチャートにおいて、ステップ
1(以下、S1と略称する。他のステップについても同
様とする)において、各車輪速センサ252〜258の
出力信号に基づいて各車輪10,12,60,62の車
輪速度Vw ,車輪減速度Gwが求められ、各車輪の車輪
速度Vw 等に基づいて推定車体速度Vsoが求められる。
S2において、ブレーキペダル76が踏み込まれたか否
かが、ブレーキスイッチ250の出力信号に基づいて判
定される。ブレーキペダル76が踏み込まれれば、判定
がYESとなり、S3において、アンチロック制御フラ
グがセットされているか否かが判定される。アンチロッ
ク制御フラグは、アンチロック制御中にセットされるフ
ラグであるため、通常制動時にはリセットされている。
リセットされている場合には、S4において、アンチロ
ック開始条件が満たされるか否かが判定される。開始条
件については後述する。通常制動時には、満たされない
ため、S5において、回生制動トルク目標値Rn がエネ
ルギ効率最大上限値Rm に決定され、この回生制動トル
ク目標値Rn (=Rm )を表す情報が、電動モータ制御
装置42に供給される。電力変換装置40は、回生制動
トルクが回生制動トルク目標値Rn に近づくように制御
される。
【0030】その後、S6〜8において、リニアバルブ
装置56の制御電圧の変化量が決定される。液圧センサ
226によって検出されたマスタシリンダ68の液圧に
基づいて目標総制動トルクが決定され、この目標総制動
トルクから、電気モータ制御装置42から供給された情
報に応じた実回生制動トルク値を引くことにより、リニ
ア制御目標液圧制動トルクが求められる。リニアバルブ
装置45の制御電圧の変化量が、液圧センサ124によ
って検出された液圧に応じた液圧制動トルクとリニア制
御目標液圧制動トルクとの差が小さくなるように決定さ
れる。また、ブレーキペダル76が踏み込まれていない
場合には、S2における判定がNOとなり、S9,10
において、アンチロック制御フラグがリセットされ、回
生制動トルク目標値Rn が0とされる。S6〜8におい
て、目標総制動トルクが0とされ、また、回生制動トル
ク目標値Rn も0であるため、目標液圧制動トルクも0
とされる。
【0031】本車両用制動装置の総制動トルク制御装置
46等が故障して電磁開閉弁等やリニアバルブ装置56
を制御し得ない状態になれば、各電磁開閉弁等が図2に
示す状態にされ、かつ、リニアバルブ装置56の増圧リ
ニアバルブ150および減圧リニアバルブ152のソレ
ノイド210の巻線に電圧が印加されない状態とされ
る。この際、総制動トルク制御装置46が定液圧源70
を作動させるようにしても、作動させないようにしても
よい。定液圧源70から作動液が供給されなくても、マ
スタシリンダ68が通常のタンデム式マスタシリンダと
同様に機能して加圧室72,74からほぼ等しい液圧を
各ホイールシリンダ32,34,64,66に供給する
からである。ただし、前輪側のホイールシリンダ32,
34に供給される作動液の液圧は、加圧室72から供給
される液圧にほぼ等しいのに対して、後輪側のホイール
シリンダ64,66に供給される作動液の液圧は、加圧
室74から供給される作動液の液圧よりも、増圧リニア
バルブ150の開弁圧約3MPaだけ小さくなる。この
ように、前輪側と後輪側とでホイールシリンダに供給さ
れる作動液の液圧は異なることになるが、前輪側と後輪
側との両方のホイールシリンダに液圧が供給され、しか
も、前輪側のホイールシリンダに供給される作動液の液
圧が減少することはないので、総制動トルク制御装置4
6が故障した場合の制動性能の低下が小さくて済む。ま
た、供給される作動液の液圧が減少するのが後輪側であ
るので、制動中の車両の姿勢安定性が良好に保たれる。
【0032】なお、本実施形態においては、定液圧源7
0が故障して加圧室74に液圧が供給されなくなった場
合には、総制動トルク制御装置46がすべての電磁開閉
弁およびリニアバルブ装置56に電流を供給しない状態
になるように構成されている。そのため、定液圧源70
の故障時には、上記総制動トルク制御装置46の故障時
であって、定液圧源70が作動させられない場合と同様
に作動する。しかし、定液圧源70が故障しても、総制
動トルク制御装置46が正常であれば、総制動トルク制
御装置46が通常通り電磁開閉弁およびリニアバルブ装
置56を制御するように構成することも可能であり、そ
の場合には、定液圧源70から作動液が供給されない分
だけブレーキペダル76の操作ストロークが通常より長
くなるだけで済む。ただし、この場合には、ブレーキペ
ダル76の操作ストロークをできる限り小さくするため
に、加圧室72とストロークシミュレータ228との間
に常開の電磁開閉弁を設け、定液圧源70の故障時には
この電磁開閉弁が閉状態とされて、ストロークシミュレ
ータ228に作動液が流入しないようにすることが望ま
しい。
【0033】制動中に、前輪側において総制動トルクが
路面の摩擦係数との関係において過大になるとアンチロ
ック制御が行われる。アンチロック制御は、開始条件が
満たされると開始され、終了条件が満たされると終了さ
せられる。開始条件は、前輪10,12の少なくとも1
輪の制動スリップ量ΔVw が、車輪減速度Gw が設定減
速度G1 以上になった場合におけるスリップ量ΔVsnよ
りさらに基準スリップ量ΔVR だけ大きくなること(Δ
Vw >ΔVsn+ΔVR )であり、終了条件は、ブレーキ
ペダル76の踏込みが解除されたり、車両の走行速度が
設定速度以下になったりすることである。アンチロック
制御においては、総制動トルクが車輪10,12の制動
スリップ状態がほぼ適正状態に保たれるように制御され
るのであるが、回生制動トルクは、車輪のスリップ状態
に基づいて決定された大きさに保たれ、液圧制動トルク
が、アンチロック制御目標液圧制動トルクに近づくよう
に制御される。電磁開閉弁90,92が閉状態に、電磁
開閉弁108が開状態に保たれた状態において、各電磁
開閉弁94,96,100,102が開閉させられるこ
とにより、ホイールシリンダ34,32の液圧が増減さ
せられ、液圧制動トルクが増減させられる。アンチロッ
ク制御における制御モード(増圧モード,減圧モード,
保持モード)は、車輪の制動スリップ量ΔVw ,車輪減
速度Gw に基づいて選択される。
【0034】回生制動トルク目標値Rn が、エネルギ効
率最大上限値と車輪側上限値との小さい方の上限値に決
定されるのであるが、ここで、車輪側上限値が、車輪の
制動スリップ状態がロック開始状態になった場合におけ
る路面の摩擦係数μに基づいて定まる適正総制動トルク
Tμから液圧制御余裕トルクαを引いた大きさに決定さ
れる。アンチロック制御中においては、車輪側上限値
が、エネルギ効率最大上限値より大きくなることは殆ど
ないため、たいていは、車輪側上限値が回生制動トルク
目標値に決定されることになる。このように、回生制動
トルクは、路面の摩擦係数に基づいた大きさに制御され
るのであり、液圧制動トルクの増減により車輪の制動ス
リップ状態をほぼ適正状態に保ち得る大きさとされるの
である。
【0035】適正総制動トルクは、路面摩擦係数μに応
じて決まる大きさであり、路面摩擦係数μについて車両
を最大の減速度で制動し得る大きさ、あるいは操縦安定
性を損なわない範囲で最大の減速度で制動し得る大きさ
であり、本実施形態においては、ロック開始状態におけ
る総制動トルクとされる。アンチロック制御中において
は、総制動トルクが、路面の摩擦係数について最も効果
的に車両を制動させ得る大きさである適正総制動トルク
近傍の大きさに制御されるため、総制動トルクに基づい
て路面摩擦係数を取得することができるのであり、総制
動トルクが摩擦係数に応じて定められた値とみなすこと
ができるのである。また、ロック開始状態は、制動スリ
ップ量ΔVw がスリップ量ΔVsn以上になった状態であ
り、この状態になった場合にロック開始条件が満たされ
たとされる。
【0036】制動中に、アンチロック開始条件が満たさ
れれば、S4における判定がYESとなり、S11にお
いてアンチロック制御フラグがセットされ、S12以降
において回生制動トルク目標値Rn が決定される。S1
2において、車輪10,12の制動スリップ状態がロッ
ク開始条件を満たすか否か、このステップがアンチロッ
ク制御が開始されて最初に実行されたか否かが判定され
る。制動スリップ量ΔVw がスリップ量ΔVsnより小さ
い状態からスリップ量ΔVsn以上の状態に切り換わり、
ロック開始条件が満たされた場合やアンチロック制御が
開始されて最初に実行された場合には、判定がYESと
なり、S13,14において、その時点における適正総
制動トルクTμから液圧制御余裕トルクαが引かれるこ
とによって車輪側上限値が決定される。そして、この車
輪側上限値とエネルギ効率最大上限値との小さい方の上
限値が回生制動トルク目標値Rn とされるのである。な
お、S12において、このステップの実行がアンチロッ
ク制御が開始されてから最初の実行か否かが判定される
のは、アンチロック制御開始条件が満たされた場合に
は、制動スリップ量がすでにスリップ量ΔVsn以上にあ
るため、ロック開始条件は満たされず、アンチロック制
御中に回生制動トルクがエネルギ効率最大上限値Rm に
保たれることを回避するためである。ここで、アンチロ
ック制御が開始された時点も、スリップ増大状態に含ま
れる。
【0037】具体的に、タイヤと路面との間の摩擦制動
トルクから(液圧制動トルクTw と回生制動トルクTm
との和)を引いた値が車輪の回転トルクに等しいことか
ら式 Wμ・R−(Tw +Tm )=Iω′ が成立する。ここで、W,R,Iは、それぞれタイヤの
接地荷重,半径,慣性2次モーメントであり、液圧制動
トルクTw は、液圧センサ126,128によって検出
された各ホイールシリンダ32,34の液圧P,ホイー
ルシリンダ面積A,ブレーキパッド有効半径r,ロータ
とパッドとの間の摩擦係数μp により、 Tw =P・A・r・μp として求めることができる。また、回生制動トルクTm
は、電動モータ制御装置42から供給された情報に応じ
た実回生制動トルク値であり、摩擦係数μは、式 μ=(P・A・r・μp +Tm +Iω′)/(W・R) に従って求めることができる。
【0038】ここで、適正制動トルクTμは、W・R・
μ(Tμ=W・R・μ)で表すことができ、アンチロッ
ク制御時における車輪側上限値Rw は、式 Rw =Tμ−α=Wμ・R−α に従って求めることができる。なお、車輪側上限値Rw
は、式 Rw =W・(μ−β)・R に従って求められる値とすることもできる。ここでβ
は、摩擦係数補正値(設定量)であるが、W・β・R
が、上述の液圧制御余裕トルクαに対応することにな
る。
【0039】そして、S15において、車輪10,12
の制動スリップ量ΔVw ,車輪減速度Gw に基づいて増
圧モード,減圧モード,保持モードが選択され、それに
応じて各電磁開閉弁94,96,100,102が制御
される。アンチロック制御はよく知られたものであるた
め、詳細な説明は省略するが、本実施形態においては、
減圧モードは、制動スリップ量ΔVw がスリップ量ΔV
sn以上になった場合に選択される。そして、車輪減速度
Gw が基準値G1 以下になった場合に保持モードが選択
され、基準値G2 以下になった場合に増圧モードが選択
されるのである。
【0040】以下、同様に、S6〜8が実行され、リニ
アバルブ装置56の制御電圧の変化量が決定される。目
標総制動トルクがマスタシリンダ液圧に基づいて決定さ
れ、リニア制御目標液圧制動トルクがその目標総制動ト
ルクから実回生制動トルク値を引いた大きさに決定さ
れ、液圧センサ124によって検出される液圧とリニア
制御目標液圧制動トルクに対応する液圧との差が小さく
なるように、リニアバルブ装置56の制御液圧の変化量
が決定されるのである。また、車輪10,12の制動ス
リップ状態がロック開始状態でない場合には、S12に
おける判定がNOとなり、S16において、回生制動ト
ルク目標値の今回値Rn が前回値Rn-1 とされる。回生
制動トルク目標値Rn はロック開始状態になった場合に
設定(変更)されるが、それ以外の状態にある場合に
は、その大きさに保たれるのである。
【0041】アンチロック制御中に、車両速度が設定速
度以下となったことにより終了条件が満たされた場合に
は、S17における判定がYESとなり、S18,19
において、アンチロック制御フラグがリセットされ、各
電磁開閉弁90〜96,100,102,108等が図
2に示す状態に戻される。また、回生制動トルク目標値
の今回値Rn はエネルギ効率最大上限値Rm に決定され
る。回生制動トルク目標値Rn は、通常の制動が行われ
る場合と同様に決定されるのである。
【0042】この場合の制御例を図5に基づいて簡単に
説明する。時間t1 において、アンチロック開始条件が
満たされると、減圧モードが設定され、液圧制動トルク
が小さくされる。その後は、保持モード,増圧モード,
減圧モードのいずれかが選択されることにより、液圧制
動トルクが増・減させられる。回生制動トルク目標値R
n は、その時点における適正総制動トルクTμより液圧
制御余裕トルクαだけ小さい値に決定され、回生制動ト
ルクが回生制動トルク目標値Rn になるように制御され
る。回生制動トルクは、その後、ほぼ一定に保たれる。
次に、時間t2 において、ロック開始条件が満たされれ
ば、回生制動トルク目標値Rn が、S14において決定
された大きさとされ、回生制動トルクが、回生制動トル
ク目標値Rn になるように制御される。
【0043】このように、本実施形態においては、回生
制動トルク目標値が車輪の制動スリップ状態に基づいて
決定されるため、回生制動トルクを路面の摩擦係数につ
いて適正な大きさとすることができる。また、路面の摩
擦係数が小さくても回生制動トルクが常に0とされるわ
けではないため、蓄電装置38に電気エネルギを有効に
蓄えることができる(化学エネルギとして蓄えられ
る)。さらに、アンチロック制御中においても回生制動
トルクが加えられるため、常に0とされる場合に比較し
て、運動エネルギの無駄な放出を抑制し得る。また、回
生制動トルク目標値が路面の摩擦係数μに基づいて決定
された車輪側上限値に基づいて決定されるため、液圧制
動トルクの増減により、車輪10,12の制動スリップ
状態をほぼ適正状態に保つことが可能となり、アンチロ
ック制御を良好に行うことが可能となるのである。
【0044】以上のように、本実施形態においては、総
制動トルク制御装置46のうちの、S12〜14,16
を実行する部分等によって回生制動トルク上限値決定手
段が構成される。また、回生制動トルク上限値決定手段
はスリップ増大時回生制動トルク上限値決定手段でも、
路面摩擦係数関連量対応回生制動トルク上限値決定手段
でもある。回生制動トルク上限値決定手段のうちのS1
3を実行する部分等によって摩擦係数関連量取得手段が
構成される。さらに、総制動トルク制御装置46のうち
の、S1〜19を実行する部分等によりアンチロック制
御手段が構成される。電動モータ制御装置42は、総制
動トルク制御装置46とともに総制動トルク制御装置を
構成すると考えることも可能である。
【0045】なお、回生制動トルク目標値Rn が適正総
制動トルクTμから設定量としての液圧制御余裕トルク
αを引いた値とされていたが、路面摩擦係数に基づいて
決定される可変量を引いた大きさとすることもできる。
また、適正総制動トルクTμから設定量αや可変量を引
くのではなく、1より小さい設定比率を乗じた大きさと
したり、路面の摩擦係数等に基づいて求められた可変比
率を乗じた大きさとしたりすることもできる。
【0046】さらに、アンチロック制御開始条件,制御
モード選択条件,ロック開始条件は、上記実施形態にお
ける場合に限らず他の条件としてもよい。例えば、車輪
の制動スリップ量がスリップ量ΔVsn以上になった場合
にアンチロック開始条件が満たされるとすることもでき
る。この場合には、アンチロック開始条件とロック開始
条件とが同じになるため、S12において、ロック開始
条件が満たされたか否かのみが判定されればよいことに
なる。また、車輪減速度が設定減速度以上になった場合
にロック開始条件が満たされるとすることもできる。ロ
ック開始条件に限らず、スリップ増大状態にあることを
検出できればよいのである。さらに、制動スリップ量が
スリップ量ΔVsn以上の場合に減圧モードが選択され、
スリップ量ΔVsnより小さい場合に増圧モードが選択さ
れるようにすることもできる。この場合における制御例
を図6に示す。アンチロック制御装置が、増圧モードと
減圧モードとに択一的に選択され、ホイールシリンダ液
圧を保持することができない装置には特に有効である。
【0047】また、回生制動トルク目標値を制動スリッ
プ状態に基づいて決定することは、アンチロック制御以
外の総制動トルクの制御にも適用し得る。アンチロック
制御以外の制動時においても、回生制動トルクを路面の
摩擦係数に応じた大きさにすることは有効である。さら
に、摩擦制動装置として液圧制動装置が設けられていた
が、液圧制動装置に限らず、電動モータの駆動より摩擦
部材をブレーキ回転体に押し付ける電動制動装置として
も、圧電素子により押し付ける圧電制動装置としてもよ
い。さらに、液圧制動装置だでなく、電動制動装置や圧
電制動装置等も含むものとしても、摩擦制動装置以外の
制動装置も含むものとしてもよい。
【0048】また、回生制動トルクは、スリップ減少状
態、すなわち、ロック解消条件が満たされた場合におけ
る路面の摩擦係数μに基づいた大きさに制御することも
できる。本実施形態においては、車輪減速度(負の加速
度)が正の値から負の値になった場合(車輪加速度が負
の値から正の値に転じた場合)にロック解消条件が満た
され、ロックが解消したとされる。車輪側上限値は、ロ
ック解消時における適正総制動トルクTμから液圧制御
余裕トルクαだけ小さい大きさに決定され、回生制動ト
ルク目標値Rn が、上記実施形態における場合と同様
に、発電側上限値,蓄電側上限値,操作側上限値,車輪
側上限値のうちの最小の上限値に決定される。ここで
は、適正総制動トルクTμは、スリップ解消時において
検出された総制動トルクではなく、その時点における実
回生制動トルク値とホイールシリンダ液圧Pを予め定め
られた演算式に代入して求められた液圧制動トルク相当
値f(P)との和の大きさ{Tμ=R+f(P)}とさ
れる。液圧制動トルクは、ホイールシリンダ液圧に応じ
た大きさであるからである。なお、本実施形態において
は、実回生制動トルク値の代わりに前回の回生制動トル
ク目標値を使用する。回生制動トルク目標値と実回生制
動トルクとはほぼ同じ大きさであるとすることが可能だ
からである。回生制動トルク目標値の代わりに実回生制
動トルク値とすることも当然可能である。
【0049】図7のフローチャートにおけるS1〜1
1,17〜19においては、上述の実施形態における場
合と同様に実行されるため、説明を省略する。S31に
おいて、ロック解消状態が満たされたか否かが判定され
る。ロック解消条件が満たされれば、S32,33にお
いて回生制動トルク目標値Rn が決定されるのである
が、解消条件が満たされない場合にはS34において、
液圧制動トルクが0か否か、すなわち、アンチロック制
御の対象であるホイールシリンダ32,34の液圧が0
か否かが判定される。アンチロック制御が開始されて最
初にS31が実行される場合には、ロック解消条件は満
たされないため、判定はNOとなり、S34が実行され
るが、たいていは、液圧は0でないため、判定はNOと
なり、S35において、回生制動トルク目標値の今回値
Rn が前回値Rn-1 とされる。すなわち、通常制動時に
は、回生制動トルク目標値Rn はエネルギ効率最大上限
値Rm とされているため、アンチロック制御開始当初に
おいても、回生制動トルク目標値Rn は、エネルギ効率
最大上限値Rm に保たれるのである。
【0050】S31,34,35が実行されるうちに液
圧が0となれば、S34における判定がYESとなり、
S36において回生制動トルク目標値Rn が漸減させら
れる。アンチロック制御開始時においては、回生制動ト
ルク目標値Rn がエネルギ効率最大上限値Rm に保た
れ、回生制動トルク(液圧制動トルクが0であるため、
総制動トルクと等しくなる)が路面の摩擦係数との関係
において過大となる。そのため、液圧を0として液圧制
動トルクを0にしても、スリップ状態が改善されないの
である。回生制動トルク目標値Rn の漸減に伴って回生
制動トルクが漸減させられるが、回生制動トルク目標値
がロック解消条件が満たされるまで漸減させられる。そ
して、回生制動トルク目標値Rn は、ロック解消条件が
満たされた場合の回生制動トルク目標値(Rn-1 −Δ
R)からさらに液圧制御余裕トルクαだけ小さい値{R
n =Rn-1 −(ΔR+α)}に決定される。
【0051】一般にS31が実行された場合に、ロック
解消条件が満たされない場合には、S31における判定
がNOとなり、同様に、S34が実行されるが、たいて
いいは、液圧は0でないため、判定はNOとなり、S3
5において、回生制動トルク目標値の今回値Rn が前回
値Rn-1 に決定される。回生制動トルクが路面の摩擦係
数に対して過大でない場合には、ロック解消条件が満た
されなくても、液圧制動トルクが0になるまで減らされ
ることは殆どなく、S34における判定がYESとなる
より先にS31における判定がYESとなるため、S3
6が実行されることは殆どない。ロック解消条件が満た
され、S31における判定がYESとなれば、S32に
おいて、その時点のホイールシリンダ32,34の液圧
が検出され、S33において、回生制動トルク目標値R
n が現在の(前回の)回生制動トルク目標値Rn-1 に液
圧Pに基づいて求められた液圧制動トルク相当値f
(P)が加えられ、それから液圧制御余裕トルクαが引
かれた値{Rn =Rn-1 +f(P)−α}とされる。液
圧制動トルク相当値f(P)と前回の回生制動トルク目
標値Rn-1 との和{Rn-1 +f(P)}が適正総制動ト
ルクTμとされるのである。
【0052】このように、S31において、制動スリッ
プ状態がロック解消条件が満たされる状態にあるか否か
が判定されるが、この判定は、いずれの制御モードに選
択されているかとは無関係に行われる。増圧モードや保
持モードが選択されている場合にも判定がNOとなり、
S34が実行されるが、この場合には、液圧が0である
ことはないため、判定がNOとなり、S35において回
生制動トルク目標値の今回値Rn が前回値Rn-1 とされ
る。それに対して、減圧モードが選択されている場合に
は、前述のようにS34の判定がYESとなる場合があ
り、S36が実行される場合があるのである。本実施形
態においては、減圧モードが選択されている状態が、総
制動トルクを減少させるべきである状態であり、液圧が
0であることが、液圧制動トルクが実質的に0である状
態なのである。なお、S34において、液圧が設定圧以
下であるか否かが判定されるようにすることもできる。
設定圧は実質的に0とみなし得る大きさである。また、
減圧モードが継続して設定される減圧継続時間が設定時
間以上になった場合に、液圧制動トルクが実質的に0で
あると推定することもできる。
【0053】なお、S34の判定は、アンチロック制御
中に路面の摩擦係数が小さくなって液圧制動トルクの制
御のみではロック解消条件が満たされなくなった場合に
も、NOとされる。その場合においても、S36におい
て、回生制動トルクが、ロック解消条件が満たされるま
で小さくされることになる。回生制動トルク目標値は、
ロック解消時におけるホイールシリンダ液圧Pが大きい
場合は小さい場合より大きくされるが、路面摩擦係数
は、ロック解消時におけるホイールシリンダ液圧Pが大
きい場合は小さい場合より、大きいと推定することがで
きるため、回生制動トルク目標値は路面の摩擦係数に基
づいて決定された値とすることができるのである。
【0054】また、本実施形態においては、S36にお
いて、ロック解消条件が満たされるまで回生制動トルク
が漸減させられ、それに基づいて回生制動トルク目標値
Rnが決定される。すなわち、回生制動トルクの制御に
よりアンチロック制御が行われると考えることができ
る。液圧制動トルクが一定に保たれた状態で回生制動ト
ルクの増減によりアンチロック制御が行われると考え得
る。それに対して、このS36における回生制動トルク
の減少は、次の回生制動トルク目標値Rn を決定するた
めの単なる減少であると考えることもできる。
【0055】本実施形態における制御例を図8に示す。
アンチロック制御が開始されると減圧モードが設定さ
れ、液圧が減圧させられる。時間t1 において、液圧が
0となるが、ロック解消条件が満たされない。S36に
おいて、回生制動トルク目標値が、ロック解消条件が満
たされるまで漸減させられる。回生制動トルクが小さく
されることにより総制動トルクが小さくされるため、時
間t2 において車輪減速度が設定減速度G2 より小さく
なり、保持モードに切り換えられる。保持モードに切り
換えられても、液圧は0のままである。回生制動トルク
目標値の減少に伴い、回生制動トルクが漸減させられ、
ロック解消条件が満たされる。その時点における回生制
動トルク目標値より液圧制御余裕トルクαだけ小さい大
きさに回生制動トルク目標値の今回値が決定されるので
ある。次に、時間t3 において、ロック解消条件が満た
された場合には、S33において、ホイールシリンダ液
圧P*に基づいて回生制動トルク目標値Rn が、前回の
回生制動トルク目標値Rn-1とf(P*)との和から制
御余裕トルクαを引いた大きさに決定される。この場合
における変化幅は小さい。
【0056】以上のように、本実施形態においては、ロ
ック解消条件が満たされない場合においてホイールシリ
ンダ液圧が0の場合に、回生制動トルクが漸減させられ
るようにされているため、回生制動トルクを小さくし過
ぎることを回避し得る。また、総制動トルクの急激な変
化を回避し得る。ここで、回生制動トルク目標値は、今
回の回生制動トルク目標値に、{f(P)−α}が加え
られた大きさとされると考えることができる。すなわ
ち、f(P)の大きさを液圧相当値でなく現在の回生制
動トルク目標値を補正するための補正値とすることもで
きるのであり、回生制動トルク目標値が、ロック解消時
におけるホイールシリンダ液圧、すなわち、路面の摩擦
係数に応じて順次補正されると考えることも可能であ
る。この場合においても、回生制動トルクは適正制動ト
ルクより小さい大きさに制御されることになる。f
(P)を補正値と考えた場合には、制御余裕トルクαを
引くことは不可欠ではない。また、回生制動トルク目標
値を決定する際に、適正総制動トルクを求めることも不
可欠ではなく、結果的に適正総制動トルクより小さけれ
ばよいのである。
【0057】以上のように、本実施形態においては、総
制動トルク制御装置のうちのS31〜33を実行する部
分等によりスリップ減少時回生制動トルク上限値決定手
段が構成され、S31,34,36を実行する部分等に
より回生制動トルク上限値漸減手段が構成されることに
なる。
【0058】なお、上記実施形態においては、ロック解
消条件が満たされない場合において液圧制動トルクが0
の場合には、ロック解消条件が満たされるまで回生制動
トルクが小さくされたが、保持モードが選択される条件
が満たされるまで小さくしてもよい。また、ロック解消
条件が満たされない場合に液圧制動トルクが0の場合に
は、直ちに回生制動トルクが漸減させられたが、設定時
間経過するまで待ってもよい。車輪の慣性により、総制
動トルクが小さくなってしばらくてから制動スリップ状
態が改善される場合があるからである。さらに、回生制
動トルクが漸減させられることは不可欠ではなく、急減
させられるようにしてもよい。予め定められた設定量だ
け減らされるようにしても、路面の摩擦係数に応じた量
だけ減らされるようにしてもよいのである。
【0059】さらに、ロック解消条件は、上記実施形態
におけるそれに限らず、他の条件としてもよい。例え
ば、減圧モードから保持モードに切り換える場合の条件
をロック解消条件とすることもできる。また、液圧制御
余裕量αは、上述の実施形態におけるαと同じ大きさと
しても異なる大きさとしてもよく、可変量としても、1
より小さい設定比率、可変比率等としてもよい。さら
に、アンチロック制御においては、車輪の制動スリップ
状態がスリップ増大状態にある場合に減圧モードが選択
され、スリップ減少状態にある場合に増圧モードが選択
されるようにすることもできる。その場合の制御例を図
9に示す。回生制動トルク目標値は、増圧モードが選択
された場合に決定される。
【0060】また、アンチロック制御中におけるホイー
ルシリンダ液圧は、減圧時間,増圧時間、これらの時間
における作動液の流出流量,流入流量に基づいて推定す
ることができる。これらの場合には、ホイールシリンダ
32,34,64,66の液圧を直接検出する液圧セン
サ126,128,130等は不要になる。同様に、リ
ニアバルブ装置56のホイールシリンダ側の液圧センサ
124も不可欠ではない。リニアバルブ装置56の出力
側(ホイールシリンダ側)の液圧を、ホイールシリンダ
液圧を検出する液圧センサ126〜130の出力信号に
基づいて推定することが可能である。例えば、液圧セン
サ126〜130の検出液圧の平均値や代表値とするこ
とができるのである。このように、液圧センサの個数を
減らせれば、装置のコストダウンを図ることができる。
さらに、ロック開始時とロック解消時との両方におい
て、回生制動トルク目標値が決定されるようにしてもよ
い。
【0061】また、液圧制動装置や回生制動装置は、上
記各実施形態における車両用制動装置に含まれるものに
限らず、他の構造のものとすることもできる。例えば、
図10に示すように、液圧制動装置298が、各ホイー
ルシリンダ32,34,64,66各々に対応してリニ
アバルブ装置300〜306が設けられたものとするこ
とができる。リニアバルブ装置300〜306各々は、
上記実施形態における場合と同様に、増圧リニアバルブ
310と、減圧リニアバルブ312とを含むものであ
り、増圧リニアバルブ310は、定液圧源314とホイ
ールシリンダとを接続する液通路の途中に設けられ、減
圧リニアバルブ312はホイールシリンダとマスタリザ
ーバ84とを接続する液通路の途中に設けられる。本実
施形態においては、リニアバルブ装置300〜306の
制御により、各ホイールシリンダ液圧を別個に制御し得
るため、アンチロック制御専用の複数の電磁開閉弁等が
不要となる。
【0062】図において、符号320は、ストロークシ
ミュレータを示しており、符号322は、増圧弁を示し
ている。増圧弁322は制御コンピュータ等のフェール
時にマスタシリンダ68の液圧をパイロット圧として、
定液圧弁314の液圧をマスタシリンダ圧に比例した液
圧としてホイールシリンダ32,34に供給するもので
あり、この場合には、増圧弁322の出力液圧はマスタ
シリンダ圧より高くされる。上記定液圧源314には、
2個の圧力スイッチ324,326が設けられている。
一方の圧力スイッチは、アキュレータ88に蓄えられる
液圧を設定範囲に保つためにポンプ86を駆動する電動
モータ328を制御するためのものであり、他方の圧力
スイッチはアキュムレータ88の液圧が下限値より小さ
くなったことを検出するスイッチである。アキュムレー
タの液圧が上限値より大きくなれば、アキュムレータ8
8の作動液がリリーフ弁330を介してポンプ86の汲
上側に戻される。
【0063】また、本実施形態における車両用制動装置
においては、マスタシリンダ68とホイールシリンダ3
2,34との間に、電磁開閉弁332が設けられ、左右
前輪12,10のホイールシリンダ34,32を接続す
る液通路の途中には、電磁開閉弁334が設けられてい
る。電磁開閉弁332は、ホイールシリンダ32,34
をマスタシリンダ68に連通させたり、遮断したりする
ための開閉弁であり、電磁開閉弁334が閉状態に切り
換えられれば、ホイールシリンダ32,34の液圧が独
立に制御可能となる。後輪側についても同様に、電磁開
閉弁336,338が設けられている。本実施形態にお
ける液圧制動装置においては、後輪側についてもホイー
ルシリンダ64,66の液圧が独立に制御されるように
されており、ホイールシリンダ64,66毎に液圧セン
サ340,342が設けられている。なお、マスタシリ
ンダの液圧は、液圧センサ344によって検出される。
このように、本実施形態における車両用制動装置におい
ては、リニアバルブ装置300〜306が各ホイールシ
リンダ毎に設けられているため、上記実施形態における
電磁開閉弁94,96,104,106,110,11
6等が不要となる。
【0064】さらに、回生制動装置は、図11に示す回
生制動装置348とすることもできる。回生制動装置3
48においては、車輪10,12毎に電動モータ35
0,352が設けられ、電動モータ350,352毎に
電力変換装置354,355、変速器357,358が
設けられる。電動モータ350,352各々を独立に制
御すれば、車輪毎に回生制動トルクを制御することが可
能となり、回生制動トルクの制御によりアンチロック制
御を行うことも可能となる。電動モータを車輪毎に設け
れば、ドライブシャフト,差動装置等も不要になる。さ
らに、ディスクブレーキの代わりに、ドラムブレーキと
すれば、ドラムの内側の空間を利用してインホイールモ
ータを配設することも可能である。
【0065】また、これら回生制動装置14,348、
液圧制動装置30,298をそれぞれ組み合わせて車両
用制動装置とする等、車両用制動装置の態様はどのよう
な態様のものであってもよい。その他、いちいち例示す
ることはしないが、特許請求の範囲を逸脱することなく
当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した態様
で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である車両用制動装置全体
を表す概略図である。
【図2】上記車両用制動装置に含まれる液圧制動装置の
回路図である。
【図3】上記液圧制動装置に含まれるリニアバルブ装置
の一部断面図である。
【図4】上記車両用制動装置の総制動トルク制御装置の
ROMに格納された総制動トルク制御プログラムを表す
フローチャートである。
【図5】上記車両用制動装置における一制御例を表す図
である。
【図6】上記車両用制動装置における別の一制御例を表
す図である。
【図7】本発明の別の実施形態である車両用制動装置の
総制動トルク制御装置のROMに格納された総制動トル
ク制御プログラムを表すフローチャートである。
【図8】上記車両用制動装置における一制御例を示す図
である。
【図9】上記車両用制動装置における別の一制御例を表
す図である。
【図10】本発明のさらに別の一実施形態である車両用
制動装置に含まれる液圧制動装置の回路図である。
【図11】本発明のさらに別の一実施形態である車両用
制動装置の一部を表す概略図である。
【符号の説明】
14,348 回生制動装置 28,350,352 電動モータ 30,298 液圧制動装置 32,34 ホイールシリンダ 38 蓄電装置 40,354,355 電力変換装置 42 電動モータ制御装置 46 総制動トルク制御装置 56,300〜306 リニアバルブ装置 58 アンチロック制御装置

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車両の車輪に、電動モータの回生制動によ
    る回生制動トルクを加える回生制動装置と、 前記車輪と共に回転するブレーキ回転体に摩擦部材を摩
    擦係合させることにより、車輪に摩擦制動トルクを加え
    る摩擦制動装置と、 それら回生制動装置および摩擦制動装置を制御すること
    により、前記車輪に加えられる総制動トルクを制御する
    総制動トルク制御装置とを含む車両用制動装置であっ
    て、 前記総制動トルク制御装置が、前記回生制動トルクの上
    限値を、前記車輪の制動スリップ状態に基づいて決定す
    る回生制動トルク上限値決定手段を含むことを特徴とす
    る車両用制動装置。
  2. 【請求項2】前記回生制動トルク上限値決定手段が、前
    記車輪の制動スリップ状態に基づいて前記車輪と路面と
    の間の摩擦係数に関連する路面摩擦係数関連量を取得す
    る路面摩擦係数関連量取得手段と、その路面摩擦係数関
    連量取得手段によって取得された路面摩擦係数関連量に
    基づいて前記回生制動トルク上限値を決定する路面摩擦
    係数関連量対応回生制動トルク上限値決定手段とを含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両用制動装置。
  3. 【請求項3】前記路面摩擦係数関連量取得手段が、前記
    車輪の制動スリップ状態がスリップ増大状態にある場合
    における路面摩擦係数関連量を取得するスリップ増大時
    路面摩擦係数関連量取得手段と、前記制動スリップ状態
    がスリップ減少状態にある場合における路面摩擦係数関
    連量を取得するスリップ減少時路面摩擦係数関連量取得
    手段との少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項
    2に記載の車両用制動装置。
  4. 【請求項4】前記回生制動トルク上限値決定手段が、前
    記総制動トルクを減少させるべきであるにもかかわら
    ず、前記摩擦制動装置による摩擦制動トルクを実質的に
    減少させ得ない場合には、前記回生制動トルク上限値を
    漸減させる回生制動トルク上限値漸減手段を含むことを
    特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車
    両用制動装置。
  5. 【請求項5】車両の車輪に、電動モータの回生制動によ
    る回生制動トルクを加える回生制動装置と、 前記車輪と共に回転するブレーキ回転体に摩擦部材を摩
    擦係合させることにより車輪に摩擦制動トルクを加える
    摩擦制動装置と、 それら摩擦制動装置および回生制動装置を制御すること
    により、前記車輪に加えられる総制動トルクを制御する
    総制動トルク制御装置とを含む車両用制動装置であっ
    て、 前記総制動トルク制御装置が、前記総制動トルクが前記
    車輪と路面との間の摩擦係数との関係において過大にな
    った場合に、前記回生制動装置による回生制動トルク
    を、前記路面の摩擦係数に応じて決まる適正総制動トル
    クより小さい大きさに保ちつつ、前記摩擦制動装置によ
    る摩擦制動トルクを、増・減させることにより、前記車
    輪の制動スリップ状態をほぼ適正状態に保つアンチロッ
    ク制御手段を含むことを特徴とする車両用制動装置。
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