JP3827275B2 - ブレーキシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、ブレーキシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平7−186918号公報には、(a) 各々の車輪に対応して設けられ、ブレーキシリンダの液圧により、その車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、(b) 液圧源と各車輪のブレーキシリンダとの間にそれぞれ設けられた電磁開閉弁を開閉制御することによって、それぞれの液圧ブレーキの作動力としての液圧を制御する液圧制御装置とを含むブレーキシステムが記載されている。このブレーキシステムにおいては、ヨーレイト,操舵角度,横すべり角等の旋回状態に基づいて、車両の旋回状態が適正な状態となるように各々の車輪のブレーキ液圧の目標値がそれぞれ決定され、それぞれのブレーキシリンダに対応する電磁開閉弁がそれぞれ開閉制御される。また、各々の車輪のブレーキシリンダの液圧が推定され、各々の車輪のブレーキ液圧の目標値が決定される際にその推定値が考慮される。そのため、実際のブレーキシリンダの液圧を検出するブレーキ液圧センサが不要となり、その分、コストダウンを図ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
本発明の課題は、制御の振動を抑制することができ、振動音の抑制や制御の安定性確保を実現することができるとともに、制御ゲインが不適切である場合に修正することができるブレーキシステムを得ることを課題として為されたものである。
上記課題は、ブレーキシステムを、下記各態様の構成のものとすることによって解決される。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明の理解を容易するためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に限定されると解釈されるべきではない。
(1)車両の車輪の回転を抑制するブレーキと、
そのブレーキの作動力を左右する物理量を制御する制御装置と、
車両の運転者によるブレーキ操作部材の操作状態を検出するブレーキ操作状態検出装置と、
そのブレーキ操作状態検出装置によって検出されたブレーキ操作状態に応じて、前記制御装置によって制御される物理量の制御量を決定する制御量決定装置と
を含むブレーキシステムであって、
前記制御量決定装置が、
前記制御量を前記ブレーキ操作状態に応じて決定する際の制御ゲインを含む規則を記憶する規則記憶部と、
その規則記憶部に記憶されている制御規則に基づいて、サイクルタイム毎に前記制御量を決定する制御量決定部と、
その制御量決定部による前記サイクルタイム毎の制御量の決定とは別個に、前記規則記憶部に記憶された規則を修正する規則修正部と
を含み、その規則修正部が、
I (a) 実ブレーキ作動力,ブレーキを作動させるブレーキシリンダの液圧,ブレーキ
を作動させる電動アクチュエータへの供給電流およびブレーキシリンダに接続されたポンプを駆動する電動モータへの供給電流のいずれかである実ブレーキ作動力関連量から、そのいずれかに対応するとともに前記ブレーキ操作状態に対応する目標ブレーキ作動力関連量を引いた偏差と、 (b)前記車両に実際に加わる実ブレーキ力,車両減速度および車輪減速度のいずれかである実ブレーキ力関連量からそのいずれかに対応するとともに前記ブレーキ操作状態に対応する目標ブレーキ力関連量を引いた偏差とのいずれか一方が正の第一設定量以上である場合に、前記制御ゲインを小さくし、前記いずれか一方が負の第二設定量より小さい場合に、前記制御ゲインを大きくする部分と、
II (c) 前記実ブレーキ作動力関連量の時間当たり変化量の絶対値と、 (d) 前記実ブレ
ーキ力関連量の時間当たり変化量の絶対値との少なくとも一方が第三設定量以上であり、かつ、前記ブレーキ操作部材の操作速度の絶対値が第四設定量以下である場合に、前記制御ゲインを小さくする部分と
を含むことを特徴とするブレーキシステム(請求項1)。
本項に記載のブレーキシステムにおいては、ブレーキ操作状態に応じて制御量が決定され、その決定された制御量によりブレーキの作動力を左右する物理量が制御される。ブレーキの作動力は、制御量により制御されるのであり、ブレーキ操作状態に基づいて制御される。
このように、本項に記載のブレーキシステムにおいては、ブレーキの作動力を左右する物理量が、ブレーキ操作状態に応じて決定された制御量により制御されるのであり、いわゆるフィードバック制御ではなく、フィードフォワード制御が行われる。
ブレーキ操作状態検出装置は、ブレーキ操作部材の操作状態を直接検出するものであっても、間接的に検出するものであってもよい。直接検出するものとしては、例えば、ブレーキ操作部材の操作ストロークを検出するストロークセンサ,ブレーキ操作部材に加えられる操作力を検出する操作力センサ等がある。間接的に検出するものとしては、ブレーキ操作部材の操作状態の変化に対応して変化する物理量を検出する装置があり、例えば、マスタシリンダの加圧室の液圧を検出するマスタ圧センサ、マスタシリンダの加圧室の液圧と同等の液圧、例えば、加圧室に接続された液通路の液圧を検出する液圧センサ等が該当する。
制御量は、ブレーキ操作状態検出装置によって検出されたブレーキ操作状態に応じて決定されるのであるが、ブレーキ操作状態自体に応じて決定されるようにしても、ブレーキ操作状態の変化量,変化勾配等の変化状態に応じて決定されるようにしても、ブレーキ操作状態,ブレーキ操作状態の変化状態のうちの2つ以上に基づいて決定されるようにしてもよい。制御量はまた、ブレーキ操作状態やブレーキ操作状態の変化状態に対応する目標ブレーキ作動力に基づいて決定されるようにすることもできる。目標ブレーキ作動力はブレーキ操作状態に基づいて一義的に決まるからである。
また、制御量は、予め定められた規則に従って、制御量決定部によりブレーキ操作状態に応じた大きさに決定されるのであるが、規則は、演算式で表されるものであってもテーブル等で表されるものであってもよい。制御量は、物理量の値自体でも物理量の現在値からの変更量でもよい。
上記規則は、実ブレーキ作動力関連量や実ブレーキ力関連量に基づいて修正される。記憶部に記憶された規則が修正されるのであって、規則に従って決定された制御値が補正されるのではない。いわゆる学習が行われるのである。
規則がモデル式で表される場合には、モデル式に含まれる係数が修正され、テーブルで表される場合にはテーブルの値や入力値の刻み幅が修正される。モデル式に含まれる係数が修正される場合には、テーブルで表される場合のテーブル値と刻み幅との両方が修正されるのと同様な効果が得られる。
実ブレーキ作動力関連量と実ブレーキ力関連量との少なくとも一方とブレーキ操作状態とに基づけば、規則の修正が必要か否かを判定することができる。換言すれば、予め定められた修正必要条件が満たされるか否かを決定することができるのであり、修正を行うべき時期を決定することができるのである。例えば、入力情報であるブレーキ操作状態に対して、出力情報である実ブレーキ作動力関連量や実ブレーキ力関連量が設定量以上不足している場合や過剰である場合には、修正が必要であるのであり、修正必要条件が満たされたとすることができる。それに対し、設定量以上不足でも過剰でもない場合(ほぼ適正である場合)には、修正は不要なのであり、修正必要条件が満たされないとすることができる。
また、実ブレーキ作動力関連量と実ブレーキ力関連量との少なくとも一方とブレーキ操作状態とに基づけば、修正の方法を決定することができる。例えば、実ブレーキ作動力関連量や実ブレーキ力関連量が不足している場合には、ゲイン(ブレーキ操作状態に対する制御量の割合)が大きくなるように修正し、過剰である場合には、ゲインが小さくなるように修正するのである。また、不足の程度や過剰の程度に基づいてゲインの変化量を変更することもできる。
そこで、本項のブレーキシステムにおいては、制御量決定装置が、制御量をブレーキ操作状態に応じて決定する際の制御ゲインを含む規則を記憶する規則記憶部と、その規則記憶部に記憶されている制御規則に基づいて、サイクルタイム毎に前記制御量を決定する制御量決定部と、その制御量決定部の前記サイクルタイム毎の制御量の決定とは別個に、規則記憶部に記憶された規則を修正する規則修正部とを含むものとされる。
そして、規則修正部が、 I (a) 実ブレーキ作動力関連量から目標ブレーキ作動力関連量
を引いた偏差と、 (b) 実ブレーキ力関連量から目標ブレーキ力関連量を引いた偏差とのいずれか一方が、正の第一設定量以上である場合に制御ゲインを小さくし、負の第二設定量より小さい場合に制御ゲインを大きくする部分を含むものとされる。
この部分によって制御ゲインが調整されるのであるが、制御精度を向上させるためには制御ゲインを大きくして応答性をよくすることが有効である一方、応答性を良くすればハンチングが発生する可能性が増大する。
そこで規則修正部はさらに、 II (c) 実ブレーキ作動力関連量の時間当たり変化量の絶対
値と、 (d) 実ブレーキ力関連量の時間当たり変化量の絶対値との少なくとも一方が第三設定量以上であり、かつ、ブレーキ操作速度の絶対値が第四設定量値以下である場合に、制御ゲインを小さくする部分を含むものとされる。
この部分を設けることにより、ハンチングが発生する可能性がある場合にはゲインを小さくして、ハンチングの発生を確実に回避するのである。すなわち、「 I 」の部分と「 II
」の部分との併用により、構成要素の経時的変化あるいは温度変化に伴う変化や、個々の製造上のバラツキ等の存在にもかかわらず、制御の応答性を十分に高めて制御精度を向上させつつ、ハンチングの発生を良好に回避することが可能となるのである。
(2)前記ブレーキが、前記車輪と一体的に回転するブレーキ回転体に、摩擦パッドを押し付けて摩擦係合させることによりその車輪の回転を抑制する摩擦ブレーキであり、
前記制御装置が、前記摩擦ブレーキの作動力としての前記摩擦パッドのブレーキ回転体への押付力を左右する物理量を制御する押付力制御装置を含む (1)項に記載のブレーキシステム。
(3)前記摩擦ブレーキが、前記ブレーキ回転体に、前記摩擦パッドをブレーキシリンダの液圧により押し付ける液圧ブレーキであり、
前記押付力制御装置が、前記ブレーキシリンダの液圧を左右する物理量を制御する液圧制御装置を含む (2)項に記載のブレーキシステム。
(4)前記液圧制御装置が、前記ブレーキシリンダに接続されたポンプを駆動する電動モータへの供給電流量を制御するモータ制御部を含む (3)項に記載のブレーキシステム。
本項に記載のブレーキシステムにおいては、電動モータへの供給電流量が物理量に当たる。電動モータへの供給電流量を制御することによってポンプから吐出される作動液の圧力や流量が制御され、それによってブレーキ作動力関連量としてのブレーキシリンダ液圧が制御される。
電動モータが直流モータである場合には、電動モータへの供給電流量が多くなれば出力トルクが大きくなり、負荷トルクが一定である場合においては出力軸の回転数が大きくなる。また、ポンプに加わる負荷は、ポンプから供給される作動液の吐出圧や吐出流量によって決まる。これらの事情を考慮すれば、例えば、ポンプから実際に吐出される作動液の吐出圧や吐出流量が、ブレーキ操作状態に基づいて決まる所要液圧,所要液圧変化勾配となるように電動モータへの供給電流量等を制御量として決定することができる。制御量は電動モータへの供給電流量自体であっても、供給電流量の変化量であってもよい。電動モータへの供給電流量は、モータに接続された駆動回路の制御によって制御されることになるが、例えば、PWM(パルス幅変調)制御される場合には、ON/OFF比が制御量に該当すると考えることもできる。
〔発明の実施の形態〕の項において説明するが、本項に記載のブレーキシステムにおけるように、ブレーキ液圧が電動モータへの供給電流量の制御によって制御される場合において、その供給電流量がブレーキ操作状態のみに基づいて決定されるようにすれば、従来のブレーキシステムにおけるように、ブレーキ作動力関連量,ブレーキ力関連量等を推定したり、検出したりする必要がなくなり、制御を簡易にすることができる。
(5)前記液圧制御装置が、前記ブレーキシリンダに対応して設けられた電磁液圧制御弁装置への供給電流を制御する電磁弁制御部を含む (3)項または (4)項に記載のブレーキシステム。
本項に記載のブレーキシステムにおいては、ブレーキシリンダの液圧が電磁液圧制御装置の制御により制御される。電磁液圧制御弁装置は、自身の前後差圧を供給電流量に応じた高さに制御可能な電磁リニア液圧制御弁を含むものであっても、電流のON/OFFにより開閉させられる電磁開閉弁を含むものであってもよい。電磁液圧制御弁装置が、電磁リニア液圧制御弁を含む場合には、供給電流量が物理量に対応し、電磁開閉弁を含む場合には、開状態にある時間(ON時間)やデューティ比が物理量に対応する。また、電磁液圧制御弁装置は、ブレーキシリンダと液圧源との間に設けられた電磁増圧用制御弁と、ブレーキシリンダと低圧源との間に設けられた電磁減圧用制御弁との少なくとも一方を含むものとすることができる。
(6)前記摩擦ブレーキが、前記ブレーキ回転体に、前記摩擦パッドを電動アクチュエータの作動により押し付ける電動摩擦ブレーキであり、
前記制御装置が、前記電動アクチュエータによる押付力を左右する物理量としての電動アクチュエータへの供給電流量を制御する電動アクチュエータ制御部を含む (2)項に記載のブレーキシステム。
電動アクチュエータへの供給電流量の制御により、摩擦パッドのブレーキ回転体への押付力であるブレーキの作動力が制御される。電動アクチュエータとしては、例えば、電動モータや圧電素子等が該当する。
(7)前記制御量決定装置が、前記制御量を、前記実ブレーキ作動力関連量に基づかないで決定するフィードフォワード制御部を含む (1)項ないし (6)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
ブレーキが摩擦ブレーキである場合には、ブレーキ作動力は、摩擦パッドのブレーキ回転体への押付力が該当するが、液圧ブレーキである場合には、押付力はブレーキシリンダの液圧に対応し、電動摩擦ブレーキである場合には、電動アクチュエータの出力部材と摩擦パッドとの間に作用する力が該当する。出力部材と摩擦パッドとの間に作用する力は、電動アクチュエータに流れる電流量に対応する。これら、押付力,ブレーキシリンダの液圧,電流量が実ブレーキ作動力関連量に該当する。
(8)前記制御量決定装置が、前記制御量を、前記実ブレーキ力に関連量に基づかないで決定するフィードフォワード制御部を含む (1)項ないし (7)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
ブレーキの作動力が路面の摩擦係数μに対して過大でない場合には、ブレーキの作動力の増加に伴ってブレーキ力が増加し、車輪の回転減速度,車両減速度等が増加する。したがって、この場合には、車輪の回転減速度,車両の減速度等が実ブレーキ力関連量に該当する。また、実際の車輪に加わるブレーキ力は、ブレーキの車体側部材(例えば、マウンティングブラケットやアンカピン)に加わる力として取得することができる。
(9)前記制御量決定装置が、前記制御量を、前記ブレーキ操作状態およびその操作状態の変化状態の少なくとも一方とブレーキ作動力との関係と、前記制御量とブレーキ作動力との関係とを表すモデル式に基づいて決定するものである (1)項ないし (8)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
本項に記載のブレーキシステムにおいては、制御量がモデル式に従って決定される。
(10)前記制御量決定装置が、前記制御量を、前記制御装置の入力値と出力値との関係を表すモデル式と、前記ブレーキ操作状態とに基づいて決定するものである (1)項ないし (8)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
(11)前記制御量決定装置が、前記制御量を、前記ブレーキ操作状態およびその操作状態の変化状態の少なくとも一方と前記制御量との関係を表すテーブルに従って決定するものである (1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
本項に記載のブレーキシステムにおいては、制御量がテーブルに従って決定される。
テーブルに従えば、制御量を容易に決定することができる。
また、制御の安定化を図ることができる。レーキ操作状態およびブレーキ操作状態の変化状態の少なくとも一方(以下、この項においてブレーキ操作状態関連量と略称する)が予め定められた範囲内、すなわち、テーブルが作成される際のブレーキ操作状態関連量の刻み幅で決まる範囲内にある間は、1つの制御量に決まる。そのため、ブレーキ操作状態関連量が刻み幅で決まる範囲内にある間は、制御量が振動することが回避され、安定的な制御を行うことができる。
さらに、ブレーキ操作状態関連量に基づいて制御量を決定する規則を式で表すことができない場合に有効である。例えば、制御量とブレーキ操作状態関連量としての目標ブレーキ作動力との関係を表す式であって、制御量(入力値)を式に代入することによって目標ブレーキ作動力(出力値)を求める式は予め定められているが、逆に、目標ブレーキ作動力(入力値)から制御量(出力値)を求める式を導くのが困難な場合がある。この場合に、制御量を上記式に代入することによって演算により目標ブレーキ作動力を求め、これら入力値(制御量)と出力値(目標ブレーキ作動力)とに基づいてテーブルを作成するのである。このテーブルに従えば、目標ブレーキ作動力に基づいて制御量を求めることが可能になる。なお、テーブルは、実験により作成することもできる。
(12)前記制御量決定装置が、前記制御量を、結果として、前記ブレーキ操作状態に対応する目標ブレーキ作動力が得られるように決定するものである (1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
制御量は、モデル式に従って決定されるようにしても、テーブルに従って決定されるようにしてもよいが、いずれにしても、目標ブレーキ作動力と制御量との関係がわかれば、目標ブレーキ作動力が得られるように制御量を決定することができる。
なお、制御量は、結果として、ブレーキ操作状態に対応する目標減速度等の目標ブレーキ力関連量が得られるように決定されるようにすることもできる。
(13)前記規則修正部が、前記ブレーキ操作状態のブレーキ作動力を増加させる方向への操作速度が設定速度以上の場合に、前記規則を修正しないものである (1) 項ないし (12) 項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
ブレーキ操作状態の操作速度が大きい場合においては偏差が大きくても修正の必要性は低い。それに対して、操作速度が小さい場合に偏差が大きいのはブレーキが効きすぎであるため、制御ゲインが小さくされるようにすることが望ましい。
(14)前記規則修正部が、前記いずれか一方の偏差が正の第五設定量より小さく、かつ、前記ブレーキ操作部材のブレーキ作動力を増加させる方向への操作速度が第六設定量以上の場合に、前記制御ゲインを大きくする部分を含む (1) 項ないし (12) 項のいずれか1つに記載のブレーキシステム(請求項2)
偏差が正の第五設定量より小さく、ブレーキ操作部材のブレーキ作動力を増加させる方向への操作速度が第六設定量以上となる場合には、ブレーキ操作部材は素速く操作されたが、ブレーキ作動力やブレーキ力が十分に大きくされない(できない)場合も含まるが、この場合には、制御ゲインが大きくされるようにすることが望ましい。
その他、偏差が正の設定量より小さく、ブレーキ操作部材のブレーキ作動力を増加させる方向への操作速度が設定速度より小さい場合には、規則の変更が行われないようにすることができる。
(15)前記規則修正部が、前記実ブレーキ作動力関連量が前記目標ブレーキ作動力関連量に基づいて決まる許容範囲から外れた場合に、前記規則を修正する (1) 項ないし (14) 項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
実ブレーキ作動力関連量から目標ブレーキ作動力関連量を引いた作動力偏差の絶対値が大きい場合に、規則が修正されるようにすることができる。
なお、実ブレーキ作動力関連量ではなく、実ブレーキ力関連量に基づいても同様に規則の修正を行うこともできる。
(16)前記規則修正部が、前記ブレーキ操作状態の変化状態が設定状態より安定側にあり、前記車両の実ブレーキ力関連量の変化状態が設定状態より安定側にない場合に、前記規則を修正する (1) 項ないし (15) のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
(17)前記規則修正部が前記規則記憶部に記憶された前記規則を、非ブレーキ作動中に修正する手段を含む (1)項ないし(16) のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
規則の修正が非ブレーキ作動中に行われれば、制動途中でブレーキ操作フィーリングが変わることを回避することができる。例えば、温度に基づいて修正したり、総走行距離に基づいて修正したりすることができる。なお、イニシャルチェック時に行われるようにすることもできる。
(18)前記制御量決定装置が、前記ブレーキの作動力を推定する作動力推定部を含む(1) 項ないし(17) 項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
ブレーキの実際の作動力が推定されれば、その推定作動力を利用して、制御量を決定することができる。推定作動力を利用すれば、ブレーキの作動力の制御精度を向上させることができる。
本項に記載のブレーキシステムにおいては、目標ブレーキ作動力と実ブレーキ作動力との偏差を求める場合において、実ブレーキ作動力の代わりに推定作動力が使用されるわけではなく、例えば、制御装置が前後の差圧を制御する電磁液圧制御弁を含む場合において、その前後の差圧を取得するのに使用される。この場合において、目標ブレーキ作動力に基づいて前後の差圧が取得されるようにすることもできるが、推定作動力を使用した方が制御精度を向上させることができる場合が多い。
(19)前記ブレーキが、車両の車輪に接続された電動駆動モータの負荷トルクによって車輪の回転を抑制する回生ブレーキを含み、前記制御装置が前記電動駆動モータにおける電流状態を制御することによって前記負荷トルクを制御する負荷トルク制御装置を含む (1) 項ないし (18) 項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【0004】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態であるブレーキシステムを図面に基づいて説明する。図1において、符号10および12はそれぞれ左前輪および右前輪を示し、符号14および16はそれぞれ左後輪および右後輪を示す。前輪10,12にはブレーキシリンダ18,19を備えたブレーキ20,21が設けられている。ブレーキ20,21は、ブレーキシリンダ18,19に液圧が供給されることにより作動して、前輪10,12の回転を抑制する。後輪14,16にも同様にブレーキシリンダ24,25を備えたブレーキ26,27が設けられている。前輪側のブレーキシリンダ18,19には、マニュアル液圧源30と動力液圧源32との両方が接続され、ブレーキシリンダ24,25にはマニュアル液圧源30は接続されないで動力液圧源32のみが接続される。
【0005】
マニュアル液圧源30は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル36の操作力に対応した液圧を発生させるマスタシリンダ38を備えている。マスタシリンダ38はタンデム式であり、2つの独立した加圧室に同じ高さの液圧を発生させる。マスタシリンダ38にはマスタリザーバ39が設けられている。ブレーキペダル36がブレーキ非作用位置にあり、マスタシリンダ38内の加圧ピストンが後退端位置にある状態では、マスタシリンダ38の2つの加圧室はマスタリザーバ39と連通しており、加圧ピストンが後退端位置から僅かに前進させられるとマスタリザーバ39から遮断される。一方の加圧室は液通路40によりブレーキシリンダ18に接続され、他方の加圧室は液通路42によりブレーキシリンダ19に接続されている。液通路40,42にはそれぞれ常開の電磁開閉弁から成るマスタ遮断弁44,46が設けられている。マスタ遮断弁44,46は、電気系統の異常時等に閉状態から開状態に戻される。前輪のブレーキシリンダ18,19にマスタシリンダ38の作動液が供給されることにより、前輪のブレーキ20,21が作動させられる。
【0006】
ブレーキペダル36とマスタシリンダ38との間にはストロークシミュレータ55が配設されるとともに、液通路42のマスタ遮断弁46よりマスタシリンダ38側の部分にストロークシミュレータ56がシミュレータ遮断弁57を介して接続されている。シミュレータ遮断弁57は、マスタ遮断弁44,46が閉状態にある場合は開状態にされるが、マスタ遮断弁44,46が開状態にされた場合は閉状態にされて、マスタシリンダ38の作動液が無駄にストロークシミュレータ56に供給されることが回避される。上記ストロークシミュレータ55は、スプリング等の弾性部材を備え、弾性部材の弾性変形によりブレーキペダル36のマスタシリンダ38に対する所定量の相対移動を許容する純機械的なものであり、ストロークシミュレータ56は、マスタ遮断弁44,46の閉状態で液圧を増大させつつ作動液を収容することによりマスタシリンダ38からの作動液の排出を許容するものであって、2つのストロークシミュレータ55,56が共同して、動力液圧源32を有しない通常の液圧ブレーキ装置におけるブレーキ操作に似た感触を運転者に与えるものである。ブレーキペダル36の踏込ストロークはストロークセンサ58,59によって検出される。
【0007】
動力液圧源32は、それぞれ電動モータ60,62により駆動される低圧ポンプ64および高圧ポンプ66を備えている。低圧ポンプ64,高圧ポンプ66はともにギヤポンプとされている。また、高圧ポンプ66は、低圧ポンプ64よりも、限界吐出液圧が高く、かつ、吐出流量が小さいものとされている。
低圧ポンプ64および高圧ポンプ66の各吐出側には、それぞれ逆止弁68,70が設けられている。逆止弁68は、高圧ポンプ66の作動時に、低圧ポンプ64に高圧ポンプ66の高い吐出液圧が作用し、低圧ポンプ64から作動液が漏れたり、高圧ポンプ66から吐出された高圧の作動液によって低圧ポンプ64が逆転させられたりすることを防止する。逆止弁70は、高圧ポンプ66から作動液が漏れることを防止するとともに、低圧ポンプ64のみが作動する際に、低圧ポンプ64の吐出液圧に基づいて高圧ポンプ66が逆方向に回転させられることを防止する。また、動力式液圧源32の出力側と低圧側との間にはリリーフ弁71が設けられ、吐出圧が過大にならないようにされている。この動力液圧源32と各ブレーキシリンダ18,19,24,25とは液通路72により接続される。
【0008】
各ブレーキシリンダ18,19,24,25にそれぞれ対応して、増圧用リニアバルブ76と減圧用リニアバルブ78とが設けられている。これらは図2に概略的に示す構造を有し、共に常閉のシート弁である。
これら増圧用リニアバルブ,減圧用リニアバルブは構造が同じものであるため、ブレーキシリンダ18に対応して設けられた増圧用リニアバルブ76,減圧用リニアバルブ78について説明し、他のリニアバルブについての説明を省略する。増圧用リニアバルブ76は、弁座130とそれに対して着座,離間可能な弁子132とから成るシート弁134を備え、弁子132は、付勢装置としてのスプリング136により着座方向に付勢されている。弁子132と一体的に可動コア138が設けられており、これに対向して固定コア140が設けられている。これら両コア138,140は上記スプリング136により互いに離間させられているが、コイル142に電流が供給されることにより磁化され、可動コア138が固定コア140側に吸引される。それにより、弁子132が弁座130から離間させられ、シート弁134が開かれる。増圧用リニアバルブ76は、それ自身の前後の液圧差が弁子132を弁座130から離間させる向きに作用する向きで動力液圧源32とブレーキシリンダ18との間に接続されている。
【0009】
したがって、弁子132は、可動コア138,固定コア140およびコイル142から成るソレノイド144の電磁駆動力FV1と、シート弁134前後の液圧差に基づく差圧作用力FV2との和と、スプリング136の付勢力FV3とが釣り合う位置で停止することとなり、コイル142への供給電流の制御による電磁駆動力FV1の制御によって、シート弁134の開度が制御されるのであり、増圧用リニアバルブ76の開度が制御される。また、動力液圧源32の液圧とブレーキシリンダ18の液圧との差が小さくなり、差圧作用力FV2と電磁駆動力FV1との和がスプリング136の付勢力FV3より僅かに小さくなれば、弁子132が弁座に130に着座してシート弁134が閉じるため、コイル142への供給電流の制御により動力液圧源32の液圧とブレーキシリンダ20の液圧との差が制御される。
【0010】
減圧用リニアバルブ78の構造は増圧用リニアバルブ76と同じであるため、互いに対応する構成要素を同一の符号で示し、説明を省略する。ただし、減圧用リニアバルブ78は、ブレーキシリンダ18の液圧とマスタリザーバ39の液圧との差に基づく差圧作用力FV2が、弁子132を弁座130から離間させる向きに作用するため、コイル142への供給電流の制御により、減圧用リニアバルブ78の開度およびブレーキシリンダ18とマスタリザーバ39との差圧が制御されることになる。この場合には、マスタリザーバ39の液圧は実質的に大気圧と見なし得るため、ブレーキシリンダ18とマスタリザーバ39との差圧はブレーキシリンダ18の液圧となる。
【0011】
当該ブレーキシステムは、図3に示す制御装置170の指令に基づいて制御される。制御装置170は液圧制御コンピュータ172を備え、この液圧制御コンピュータ172は、PU(プロセッシングユニット)174,ROM176,RAM178,I/Oポート180を備えている。I/Oポート180には、前記ストロークセンサ58,59、マスタ液圧センサ188,189、ポンプ液圧センサ190、前後Gセンサ192、各車輪10〜16の回転速度をそれぞれ検出する車輪速センサ194、その他、旋回状態を検出するためのヨーレイトセンサ196、横Gセンサ197、操舵角センサ198等の各種センサが接続されるとともに、前記電動モータ60,62が駆動回路200を介して接続されるとともに、マスタ遮断弁44,46等の電磁開閉弁やリニアバルブ76,78のソレノイドが駆動回路202を介して接続されている。これら駆動回路200,202と液圧制御コンピュータ172とにより制御装置170が構成される。
【0012】
また、ROM176には、図示および説明を省略するメインルーチンを始めとする他の制御プログラムと共に、図7のフローチャートで表されるリニアバルブ制御量決定プログラム、図8のフローチャートで表されるブレーキ液圧推定プログラム、図14,15のフローチャートで表される規則修正プログラム、図10〜13のマップで表されるテーブル等が格納されている。
また、図19のフローチャートで表されるポンプ制御量決定プログラム、図20のフローチャートで表されるブレーキ液圧推定プログラム、図17,18のマップで表される制御量決定テーブル等が格納されている。
PU174は、ストロークセンサ58,59を始めとする各種センサからの情報と、RAM178を利用して上述の各プログラムを実行し、ブレーキシリンダ18,19,24,25の液圧を制御する。
【0013】
通常制動時には、マスタ遮断弁44,46が閉状態にされる。各ブレーキシリンダ18,19,24,25は動力液圧源32に連通させられ、動力液圧源32の液圧により各ブレーキ20,21,26,27が作動させられる。ブレーキシリンダ18,19,24,25の液圧は動力液圧源32の制御によって制御したり、各リニアバルブ76,78の制御によって制御したり、これら両方の制御によって制御したりすることができる。
本実施形態においては、ブレーキシリンダの液圧の制御においては、図4〜6に示すようにフィードフォワード制御が行われる。ブレーキペダル36のストロークとマスタ液圧とに基づいてブレーキ作動力制御アクチュエータ210の制御量が決定される。すなわち、実際のブレーキシリンダ液圧(以下、実ブレーキ液圧と略称する)や実ブレーキ力に関連する実ブレーキ力関連量としての前後G等がフィードバックされることなく制御量が決定されるのであり、実ブレーキ液圧とブレーキシリンダ液圧の目標値(以下、目標ブレーキ液圧と略称する)との偏差に基づいて決定されるのではない。
【0014】
ブレーキ作動力制御アクチュエータ210は、増圧用,減圧用リニアバルブ76,78およびこれら増圧用,減圧用リニアバルブ76,78のソレノイド142への供給電流を制御する駆動回路202等によって構成されるものであると考えたり、電動モータ60,62およびこれら電動モータ60,62への供給電流を制御する駆動回路200等によって構成されるものであると考えたり、これらの両方によって構成されるものであると考えたりすることができる。また、ブレーキ作動力制御アクチュエータ210は、本実施形態においては、液圧制御アクチュエータである。
以下、ブレーキ作動力制御アクチュエータ210の制御について説明するが、まず、ブレーキ液圧が増圧用,減圧用リニアバルブ76,78のソレノイド142への供給電流量の制御により制御される場合について説明する。この場合には、動力液圧源32は、出力液圧Pp が一定に保たれるように制御される。
【0015】
図7のフローチャートで表されるリニアバルブ制御量決定プログラムは、ブレーキ操作中において予め定められたサイクルタイム毎に実行される。ステップ1(以下、単にS1と略称する。他のステップについても同様とする)において、アンチロック制御中であるか否かが判定される。アンチロック制御中でない場合にはS2以降が実行され、アンチロック制御中である場合にはS11においてアンチロック制御が行われる。アンチロック制御については後述する。
S2において、運転者によるブレーキペダル36の操作状態が検出される。本実施形態においては、ブレーキペダル36のストロークSとマスタ液圧PMCとが操作状態を表す物理量として検出される。マスタ液圧PMCは、本実施形態においては、2つのマスタ液圧センサ188,189の検出値のいずれか一方の値とされる。マスタ液圧センサ188,189を2つ設ければ、いずれか一方に異常が生じた場合に他方による検出値を使用することができるため、フェールセーフ上有効である。なお、2つのマスタ液圧センサ188,189の検出値の平均値をマスタ液圧PMCとして採用することも可能である。ストロークSについても同様であり、本実施形態においては2つのストロークセンサ58,59の検出値のいずれか一方の値とされるが、2つのセンサ58,59の平均値としてもよい。
【0016】
次に、S3において、目標ブレーキ液圧が、ブレーキ操作状態に基づいて式
WC * =γ(t)×PMC+{1−γ(t)}×S ・・・(1)
に従って決定される。係数γ(t)はブレーキペダル36の踏込開始からの経過時間tが増大するほど大きくなる値である。
なお、目標ブレーキ液圧は、(1) 式ではなく、式
WC * =γ×PMC+(1−γ)×1/S
に従って決定されるようにしたり、一般的に、関数f(t,S,PMC)に従って決定されるようにしたりすることもできる。また、推定ブレーキ液圧が読み込まれる。ブレーキシリンダの液圧は実際に検出されるのではなく、図8のフローチャートで表されるプログラムの実行に従って推定される。ブレーキシリンダ液圧の推定については後述する。
【0017】
次に、S4において、制御モードがストロークSの変化状態に基づいて決定される。ストロークSの変化速度dS/dtが正の設定量以上である場合には増圧モードとされ、負の設定量以下である場合には減圧モードとされ、それ以外の場合には、保持モードとされる。
なお、制御モードは、ストロークSではなくマスタ液圧PMCの変化速度に基づいて決定したり、ストロークSとマスタ液圧PMCとの両方の変化速度に基づいて決定したりすることができる。また、推定ブレーキ液圧と目標ブレーキ液圧との偏差に基づいて決定したり、偏差と、ストロークSとマスタ液圧PMCとの少なくとも一方の変化速度とに基づいて決定したりすることができる。
【0018】
S5において、決定された制御モードが増圧モードであるか減圧モードであるか保持モードであるかが判定される。
制御モードが増圧モードである場合には、S6において、減圧用リニアバルブ78のソレノイド142への供給電流量IVRが0とされ、増圧用リニアバルブ76のソレノイド142への供給電流量IVAがブレーキ操作状態等に基づいて決定される。S7において、それぞれのリニアバルブに対応する駆動回路202が供給電流量IVA,IVR(以下、IVA,IVRのいずれか一方あるいは両方を表す場合において、これらを区別する必要がない場合には、単に、IV と記載することがある。)で表される制御量で制御される。この場合には、減圧用リニアバルブ78は閉状態に保たれ、増圧用リニアバルブ76は、供給電流量IVAに応じた開度で開かれる。また、前後の差圧が供給電流量IVAに応じた大きさに制御される。保持モードである場合には、S8において、増圧用リニアバルブ76への供給電流量IVAも減圧用リニアバルブ78への供給電流量IVRも0とされる。この場合には、増圧用リニアバルブ76も減圧用リニアバルブ78も閉じたままである。
減圧モードである場合には、S9において、増圧用リニアバルブ76への供給電流量IVAが0とされ、減圧用リニアバルブ78への供給電流量IVRがブレーキ操作状態に基づいて決定される。増圧用リニアバルブ76は閉状態に保たれ、減圧用リニアバルブ76は、供給電流量IVRに応じた開度で開かれる。また、ブレーキ液圧が供給電流量IVRに応じた大きさに制御される。
【0019】
本実施形態における制御においては、図5に示すように、リニアバルブをオリフィスモデルとして考える。この場合には、増圧用リニアバルブ76への供給電流量IVA,減圧用リニアバルブ78への供給電流量IVRを入力値とし、ブレーキ液圧を出力値とすることができる。そして、これら供給電流量IVA,IVR(入力値)がそれぞれブレーキ液圧(出力値)が目標ブレーキ液圧PWC * になるように決定される。本実施形態においては、出力値に基づいて入力値が求められるのであり、出力値に基づいて入力値を求めることを逆モデル解法と称する。
リニアバルブ76,78においては、前述のように、ソレノイド142への電流の供給によって生じる電磁駆動力FV1と、前後の差圧による差圧作用力FV2と、スプリング136の付勢力FV3とが作用し、電磁駆動力FV1と差圧作用力FV2との和がスプリング136の付勢力FV3より大きい間、すなわち、式
V1+FV2>FV3 ・・・・(2)
が満たされる間、開状態に保たれる。
【0020】
上記(2) 式から、リニアバルブ76,78が開状態にある場合の開口面積は、差圧作用力FV2が大きく、電磁駆動力FV1が大きいほど大きくなることがわかる。図10に示すように、ソレノイド142への供給電流量IV が一定である場合には、差圧ΔPが大きいほど大きくなり、差圧ΔPが一定である場合には、供給電流量IV の増加に伴って大きくなる。本実施形態においては、供給電流量IV ,差圧ΔPと開口面積AV との関係が予めテーブル化されてROM176に格納されている。
ここで、電磁駆動力FV1は、図9に示すように、ソレノイド142への供給電流量IV の変化に応じてリニアに変化する。
また、差圧ΔPは、増圧用リニアバルブ76,減圧用リニアバルブ78の各々において別個に求められる。
増圧用リニアバルブ76においては、動力液圧源32の出力液圧Pp と推定ブレーキ液圧PWCとの差
ΔPin=Pp −PWC ・・・(3)
であり、減圧用リニアバルブ78においては、推定ブレーキ液圧PWCそのままの大きさ
ΔPout =PWC ・・・(4)
となる。
【0021】
また、リニアバルブ76,78を流れる作動液の流量QV は、開口面積AV 、流量係数C,密度ρとした場合に、よく知られたオリフィスの式
VA=C・AVA・√(2ΔPin/ρ) ・・・(5)
VR=C・AVR・√(2ΔPout /ρ) ・・・(6)
に従って求めることができる。
このリニアバルブ76,78を流れる作動液の流量QV を時間で積分すれば、その時間に、ブレーキシリンダに、増圧用リニアバルブ76を経て供給された作動液の量(流入液量)、減圧用リニアバルブ78を経て流出させられた作動液の量(流出液量)を求めることができ、ブレーキ作動開始時からの流入液量qinと流出液量qout とに基づけば、現時点にブレーキシリンダに存在する液量、すなわち、消費液量qV を求めることができる。
また、消費液量qV とブレーキシリンダ液圧Pwcとの間には、図11に示す関係があることが知られているため、消費液量qV に基づいてブレーキシリンダの液圧を推定することができる。
なお、ブレーキ液圧Pwcは、式
wc=0(qV <q0 の場合)
wc=m0 ×qV −m1 (qV ≧q0 の場合)
に従って推定することができる。消費液量が液量q0 以上である場合には、ブレーキ液圧は消費液量の増加に伴って直線的に変化すると考えることができるのである。
【0022】
図8のフローチャートで表されるブレーキ液圧推定プログラムは予め定められたサイクルタイム毎に実行される。なお、推定ブレーキ液圧PWC(n) の初期値は0である。S21において、増圧用リニアバルブ76の差圧ΔPin,減圧用リニアバルブ78の差圧ΔPout がそれぞれ求められ、S22において、増圧用リニアバルブ76,減圧用リニアバルブ78の開口面積AVA,AVRが、図10のテーブルに従って、供給電流量IVA,IVRと前後の差圧ΔPin,ΔPout とに基づいて求められる。S23において、その開口面積AVA,AVRを経て流れる作動液の流量QVA,QVRが求められ、S24において、本プログラムの実行サイクル時間で積分されることによって、流入液量qin,流出液量qout が求められる。増圧用リニアバルブ76と減圧用リニアバルブ78との両方に同時に電流が供給されることはないため、増圧用リニアバルブ76を経て流入させられる流入液量と減圧用リニアバルブ78を経て流出させられる流出液量とのいずれか一方が求められるのである。
【0023】
S25において、本プログラムの前回の実行時から今回の実行時までの間における作動液の変化量(qin−qout )が求められ、前回の推定時にブレーキシリンダに存在した作動液の量、すなわち、前回の消費液量q(n) に変化量を加えることによって、今回の消費液量q(n+1) が求められる。そして、S26において、今回の消費液量q(n+1) に基づいて図11のマップで表されるテーブルに従ってブレーキ液圧が推定される。
なお、リニアバルブを介して作動液の流入,流出が行われる場合のブレーキシリンダの液圧の推定については、本願出願人によって、先に出願されて公開された特開平11−59407号公報に記載されているため、詳細な説明は省略する。
【0024】
増圧用リニアバルブ76,減圧用リニアバルブ78への供給電流量は、図12,13のマップで表されるテーブルに従って決定される。
増圧用,減圧用リニアバルブ76,78においては、(2) 式に示すように、電磁駆動力FV1と差圧作用力FV2との和がスプリング136の付勢力FV3より僅かに大きくなった場合(FV1>FV3−FV2)に閉状態から開状態に切り換えられる。この閉状態から開状態に切り換える際に必要な供給電流を開弁電流Iopenと称する。また、開状態に保つためには、差圧作用力FV2が小さい場合は大きな電磁駆動力FV1が必要であるが、リニアバルブを経て作動液が流れると前後の差圧が小さくなるため、実ブレーキ液圧が目標ブレーキ液圧に達するまでの間、開状態を保つためには、そのブレーキ液圧の変化分に応じた電流が必要となる。
したがって、リニアバルブへの供給電流量である制御量は、図12のテーブルで表される開弁電流Iopenと、図13のテーブルで表される目標ブレーキ液圧に近づけるための液圧変化対応電流ID との和として決定されるのである。
【0025】
なお、図12,13のテーブルを作成して格納させておくことは不可欠ではなく、リニアバルブへの供給電流量は式に従って決定されるようにすることができる。
増圧用リニアバルブ76についての供給電流量(制御量)IVAは、式
VA=Iopen+ID ・・・(7)
open=k1 ・ΔPin+k2 ・・・(8)
D =k3 ・dPWC * /dt ・・・(9)
に従って求められ、減圧用リニアバルブについての供給電流量IVRは、式
VR=Iopen+ID ・・・(10)
open=k4 ・ΔPout +k5 ・・・(11)
D =k6 ・dPWC * /dt ・・・(12)
に従って求められる。ここにおいて、k1 〜k6 は係数である(図12,13より、k1 ,k4 は負の値で、k3 ,k6 は正の値である)。
このように、リニアバルブ76,78への供給電流量とブレーキシリンダの液圧Pwcとの間には一定の関係があるのであり、ブレーキ操作状態に対応する目標ブレーキ液圧が得られるように、供給電流量を求めることができる。
なお、図13のマップで表されるテーブルは、目標ブレーキ液圧の変化量と液圧変化対応電流との関係を表すものであったが、マスタ液圧の変化量と液圧変化対応電流との関係を表すものとすることもできる。マスタ液圧を目標ブレーキ液圧とすることも可能なのである。
【0026】
運転者によるブレーキペダル36の操作ストロークや操作力が増加すると、それに応じて目標ブレーキ液圧が増加させられ、操作ストロークや操作力が減少すると目標ブレーキ液圧が減少させられる。
増圧モードが設定された場合には、増圧用リニアバルブ76への制御量がブレーキ操作状態に基づいて決定される。ブレーキシリンダには動力液圧源32の作動液が増圧用リニアバルブ76を経て供給されることにより液圧が増加させられる。ブレーキの作動力が増加させられるのであり、作動力が路面の摩擦係数μに対して過大でない間は、作動力の増加に伴って車両の減速度が増加させられる。ブレーキの作動力がブレーキ操作状態に応じて制御されるため、運転者のブレーキ操作状態に対応する減速度を得ることができる。
減圧モードが設定された場合には、減圧用リニアバルブ78への制御量がブレーキ操作状態に基づいて決定される。ブレーキシリンダの作動液が減圧用リニアバルブ78を経てマスタリザーバ39に流出させられることにより、液圧が減圧させられる。ブレーキの作動力が減少させられ、減速度が減少させられる。
保持モードが設定された場合には、増圧用リニアバルブ76も減圧用リニアバルブ78も閉状態にされる。ブレーキ液圧が保持され、ブレーキの作動力が保持される。
【0027】
このように、本実施形態においては、増圧用,減圧用リニアバルブ76,78への供給電流量である制御量がブレーキ操作状態に基づいて決定され、フィードバック制御が行われるわけではない。そのため、実際のブレーキ液圧が、運転者の意図する減速度(ブレーキ操作状態に対応する)を実現し得る大きさに制御されない場合もある。この場合には、運転者によってブレーキペダル36の操作ストロークや操作力が修正されるのが普通である。それに対して、本実施形態においては、制御量が操作ストロークや操作力に基づいて決定されるため、これら操作状態の変化に応じて、ブレーキ液圧が変化させられ、運転者の意図する減速度が得られることになる。
【0028】
また、本実施形態においては上述のテーブルやモデル式(式に用いられる係数)等が学習によって修正される。図14のフローチャートで表される規則修正プログラムは、制御量決定プログラムのサイクルタイムに対して十分に長い設定時間毎に実行される。
S41において、システムが正常であるか否か、S42において、アンチロック制御中であるか否か、S43において、通常ブレーキ制御中であるか否かが判定される。システムが正常であり、通常ブレーキ制御中である場合には、S44において、前後Gセンサ192によって減速度Gが検出され、S45において、修正必要条件が満たされるか否かが判定される。修正必要条件が満たされた場合には、S46において修正が行われる。
本実施形態においては、図13のテーブルの修正、すなわち、上述の(9) 式, (12)式の係数k3 , k6 の修正が行われるようにされている。
【0029】
修正必要条件は、本実施形態においては、(a) 実際の減速度Gから目標ブレーキ液圧に対応して決まる目標減速度G* を引いた減速度偏差がしきい値α1 以上であり、かつ、操作ストロークの増加速度がしきい値β1 より小さいこと、すなわち、式
G−G* ≧α1 、かつ、0<dS/dt<β1 ・・・(13)
が満たされること
(b) 上述の減速度偏差が負のしきい値α2 より小さく、かつ、操作ストロークの増加速度がしきい値β2 以上であること、すなわち、式
G−G* ≦α2 、かつ、dS/dt>β2 ・・・(14)
が満たされること
(c) 減速度Gの変化速度dG/dtの絶対値がしきい値γ1 以上であり、かつ、操作ストロークの変化速度の絶対値がしきい値γ2 以下であること、すなわち、式
|dG/dt|≧γ1 、かつ、|dS/dt|≦γ2 ・・・(15)
が満たされること
の(a), (b), (c) の少なくとも1つの条件が満たされた場合に修正必要条件が満たされたとされる。
なお、目標減速度G* は、目標ブレーキ液圧PWC * に対応する値であり、乾燥アスファルト路において、ブレーキ液圧が目標ブレーキ液圧PWC * に制御された場合に得られる減速度である。
【0030】
図15のフローチャートにおいて、S61において、減速度Gの変化速度dG/dtの絶対値がしきい値γ1 以上であるか否かが判定され、S62において、減速度偏差がしきい値α1 以上であるか否かが判定される。
減速度偏差がしきい値α1 以上である場合には、S63において、操作ストロークの増加速度がしきい値β1 より小さいか否かが判定される。S62,63において上述の(a)の条件が満たされるか否かが判定されるのである。満たされた場合には、S64においてゲインが小さくされる。操作ストロークの増加速度が小さいのに、減速度偏差が大きい場合には、ハンチングが生じるおそれがあるため、ゲインが小さくされるのであり、本実施形態においては、図13の直線の傾きΦが破線で示すように小さくされる。このことは、上述の(9) 式の係数k3 が小さくされることに対応する。操作ストロークの増加中においては、保持モードと増圧モードとのいずれか一方が設定されるのであり、増圧モードが設定されている場合には、増圧用リニアバルブ76に電流が供給された状態にある。そのため、増圧用リニアバルブ用のテーブルが修正されるのであり、減圧用リニアバルブ用のテーブルを修正する必要はないのである。
【0031】
それに対して、S65において、減速度偏差が負のしきい値α2 以下であるか否かが判定され、S66において、操作ストロークの増加速度がしきい値β2 より大きいか否かが判定される。S65,66において上述の(b)の条件が満たされるか否かが判定される。満たされた場合には、S67において、ゲインが大きくされる。制御遅れが生じているのであり、図13の直線の傾きΦが一点鎖線で表されるように大きくされるのであり、上述の係数k3 が大きくされることに対応する。この場合においても増圧用リニアバルブ用のテーブルが修正されることになる。
また、実際の減速度の変化速度の絶対値がしきい値γ1 以上である場合には、ストロークの変化速度の絶対値がしきい値γ2 以下であるか否かが判定される。S61,68において、条件(c)が満たされるか否かが判定されるのである。満たされた場合には、ハンチングが生じるおそれがあるため、S69において、ゲインが小さくされる。図13の直線の傾きΦが破線で表されるように小さくされる。この場合には、(9) 式, (12)式の係数k3 ,k6 が小さくされるのであり、増圧用リニアバルブ用テーブルも減圧用リニアバルブ用テーブルも修正されることになる。
【0032】
このように、制御量を決定する際のテーブルが学習により修正されるようにすれば、ブレーキ操作状態に対応する減速度が得られるように精度よく制御量を決定することができる。なお、テーブルの修正においては、傾きΦの修正勾配ΔΦは、一定の大きさとしても、目標減速度と実減速度との差に応じた大きさとしてもよい。また、図13のマップで表されるテーブルではなく、図12のマップで表されるテーブルが補正されるようにすることもできる。この場合には、S64,69においては、破線で表される直線に修正され、S67においては、一点鎖線で表される直線に修正される。直線は平行移動させることによって修正してもよいが、傾きを変えることによって修正することもできる。さらに、平行移動させる場合の移動量ΔIopenは、上述の場合と同様に、一定であっても、実減速度と目標減速度との差に応じた大きさであってもよい。この場合には、(8) 式の係数k1 , k2 と(11)式の係数k4 , k5 との少なくとも一方が変更されることになる。
【0033】
なお、減速度は、前後Gセンサ192ではなく、車輪速センサ194によって検出された車輪速度の微分値に基づいて検出されるようにすることもできる。その場合には、前後Gセンサ192が不要となり、さらに、コストダウンを図ることができる。
また、上記実施形態においては、動力液圧源32の出力液圧Pp が一定となるように、電動モータ60,62が制御されるようにされていたが、電動モータ60,62への供給電流量が一定に保たれるようにしてもよい。この場合には、動力式液圧源32の出力液圧Pp は、ポンプ液圧センサ190によって検出された検出値が採用されるようにすることが望ましい。
【0034】
さらに、増圧用,減圧用リニアバルブ76,78への制御量は、他の方法で決定することもできる。例えば、前後の差圧に基づいて開弁電流Iopenを求めることは不可欠ではなく、差圧が、目標ブレーキ液圧と動力液圧源32の出力液圧Pp あるいはマスタリザーバ39の液圧との差に対応する大きさになるように、供給電流量を決定することも可能なのである。この場合には、ブレーキ液圧を推定する必要がなくなり、その分、制御が容易になる。また、リニアバルブ76,78への供給電流量が、テーブルに従って決定されるようにすることができる。例えば、目標ブレーキ液圧と、目標ブレーキ液圧の変化量と、供給電流量との関係をテーブル化しておくのである。テーブルは、実験データに基づいて作成しても、理論的(モデル式に基づいて)に作成してもよい。
また、規則の修正は、操作ストロークが増加中である場合に行われて減少中である場合には行われないようにすることができる。操作ストロークが増加中である場合の方が、制御遅れか否かを精度よく検出することができるのである。
【0035】
次に、前述のS10において実行されるアンチロック制御について説明する。各車輪10,12,14,16のスリップ状態は、車輪速センサ194の出力値に基づいてそれぞれ検出されるが、少なくとも1輪のスリップ状態が過大になるとアンチロック制御が開始される。アンチロック制御においては、各車輪のスリップ状態が路面の摩擦係数μに応じて決まる適正な状態になるように、各車輪に対応するリニアバルブ76,78への供給電流量がそれぞれ決定される。
アンチロック制御中においては、スリップ状態としてのスリップ率とスリップ率の変化勾配とに基づいて、増圧モード,減圧モード,保持モードのいずれかが決定される。
減圧モードが設定された場合には、増圧用リニアバルブ76への供給電流量IVAが0とされ、減圧用リニアバルブ78への供給電流量IVRが予め定められた勾配で増加させられる。上述の図12のテーブルに従って決まる開弁電流Iopenがその時点の差圧ΔPout に従って決定され、液圧変化対応電流ID が予め定められた勾配で増加させられる(ID =k8 ・n)。nは、図4のプログラムの実行回数であり、減圧モードが設定されている間、nの増加に伴って供給電流量IVRが漸増させられる(IVR=Iopen+ID )。
増圧モードが設定された場合には、減圧用リニアバルブ78への供給電流量IVRが0とされ、増圧用リニアバルブ76への供給電流量IVAが予め定められた勾配で増加させられる(IVA=Iopen+ID )。上述のように、開弁電流Iopenが差圧ΔPinに従って決定され、液圧変化対応電流ID が予め定められた勾配で増加させられる(ID =k9 ・n)。
【0036】
また、車両の旋回状態が過度のスピン状態あるいはドリフトアウト状態になると、ビークルスタビリティ制御が行われる。過度のスピン状態あるいはドリフトアウト状態にあるか否かは、ステアリングホイールの操舵角,ヨーレイト,横加速度等に基づいて検出される。過度のスピン状態あるいはドリフトアウト状態にあることが検出された場合には、そのスピン状態を抑制するスピン抑制モーメントが生じるように、各車輪の目標ブレーキ液圧がそれぞれ決定され、ドリフトアウト状態にあることが検出された場合には、そのドリフトアウト状態を抑制するドリフトアウト抑制モーメントが生じるように、各車輪の目標ブレーキ液圧がそれぞれ決定される。各車輪の実ブレーキ液圧が目標ブレーキ液圧と同じになるように、通常制動時における場合と同様に、各車輪のリニアバルブ76,78への供給電流量が決定される。
非ブレーキ作動中にビークルスタビリティ制御が行われる場合には、動力液圧源32が作動させられる。マスタシリンダ36に液圧が発生していなくても、ブレーキシリンダに作動液を供給することができる。この場合には、低圧ポンプ64を作動させれば十分である。
【0037】
次に、ブレーキ作動力制御アクチュエータ210に含まれる動力液圧源32が制御される場合について説明する。
図6に示すように、ポンプ64,66の作動状態は電動モータ60,62の作動状態等に基づいて決まる。電動モータ60,62においては、供給電流量の増加に伴って出力トルクが増加し、負荷トルクが一定である場合には出力軸の回転数が大きくなる。また、ポンプ64,66に加わる負荷トルクは、吐出流量が大きく、吐出圧が大きい場合に大きくなる。これらの事情を考慮すれば、ポンプ64,66の作動状態と電動モータ60,62への供給電流量とを関連付けることができる。
【0038】
例えば、ポンプから吐出される作動液の吐出流量Qp は、回転数Nと1回転当たりの吐出量Vp とに基づいて式
Qp =Vp ・N/60 ・・・(16)
に従って求めることができる。
また、回転数Nは電動モータへの供給電流量IM に基づいて決まるのであり、例えば、一次関数により、式
N=ka ・IM −kb ・・・(17)
により近似できる。
(16)式, (17)式から、吐出流量Qp は、式
Qp =Vp ( ka ・IM −kb)/60 ・・・(18)
に従って求めることができるのであり、吐出流量Qp は、電動モータへの供給電流量IM の増加に伴って大きくなることがわかる。
上述の(16)式ないし(18)式の各々において、吐出流量Qp 、回転数Nは、低圧ポンプ64,高圧ポンプ66のそれぞれについて別個に求められる。
【0039】
低圧ポンプ64,高圧ポンプ66の作動特性を図16に示す。図16に示すように、必要な吐出液圧PP が比較的小さい場合には低圧ポンプ64の作動のみで要求を満たし得るが、必要な吐出液圧PP が大きくなれば高圧ポンプ66を作動させる必要がある。また、必要な増圧速度dPP /dtが比較的小さい場合には低圧ポンプ64のみの吐出流量で実現し得るが、必要な増圧速度dPP /dtが大きくなれば、低圧ポンプ64と高圧ポンプ66との両方を作動させることが必要になる。したがって、図16の領域Aにおいては低圧ポンプ64のみが作動させられ、それを越える領域Bにおいては、低圧ポンプ64と高圧ポンプ66との両方が作動させられる。
【0040】
この図16のマップで表される特性や上述の(18)式等に基づいて図17,18のマップで表されるテーブルが作成される。目標吐出液圧Pp がマスタ圧PMCに対応し、目標増圧速度dPp /dtがストロークの増加速度dS/dtに対応すると考えて、マスタ液圧PMC,ストロークの増加速度dS/dtと各電動モータ60,62への供給電流量との関係を表すテーブルが作成されるのである。
具体的には、予め定められた量の電流が供給される状態で、制御可能な入力値(本実施形態においては、ストロークの増加速度とマスタ液圧)の範囲が求められ、それに基づいて入力値の刻み幅が決定され、これら供給電流量(制御量)と入力値との関係に基づいてテーブルが作成される。
また、ストロークの増加速度を一定にした状態でマスタ液圧を変化させ、一定の電流で目標吐出液圧を実現し得る範囲を求めて、入力値の刻み幅を決定することもできる。
ストロークの増加速度が小さい場合やマスタ液圧が小さい場合には、図18に示すように、高圧ポンプ用マップで表されるテーブルの制御量は0となっている。図16の領域Aにおいては、高圧ポンプ66は非作動状態に保たれるのである。
このように、本実施形態においては、各電動モータ60,62への供給電流量である制御量が、ブレーキ操作状態のみに基づいて決定されることになる。
なお、マスタ圧PMCの代わりに目標ブレーキ液圧PWC * としてもよい。この場合には、目標吐出液圧Pp が目標ブレーキ液圧PWC * に対応する。
【0041】
動力液圧源32の制御が行われる場合において、ブレーキ液圧を増圧する場合には、原則として、増圧用リニアバルブ76は開状態に保たれ、減圧用リニアルブ78が閉状態に保たれる。ブレーキ液圧は動力液圧源32の制御によって制御される。増圧用リニアバルブ76の制御によって制御されるわけではないため、各ブレーキシリンダ18,19,24,25の液圧のバラツキを小さくすることができる。ブレーキ液圧を減圧する場合には、増圧用リニアバルブ76が閉状態にされた状態で、減圧用リニアルブ78が制御される。
【0042】
ブレーキシリンダには動力液圧源32から作動液が供給され、その液圧によってブレーキが作動させられることになるのであるが、動力液圧源32とブレーキシリンダとの間の増圧用リニアバルブ76は、増圧時には最大の開口面積で開状態にされる。そのため、オリフィスのモデルを考える必要は必ずしもなく、ポンプから吐出された作動液がオリフィスを経ることなくブレーキシリンダに供給されると考えることができる。前述の流量Qp を時間で積分すれば、ブレーキシリンダへ供給される流入作動液量を求めることができる。それに対して、ブレーキシリンダからは、減圧用リニアバルブ78を経て作動液が流出させられるため、減圧用リニアバルブ78を経て流出させられる流出作動液量が上述の場合と同様に求められる。流入作動液量と流出作動液量とに基づいて現時点にブレーキシリンダに存在する作動液量q、すなわち、消費液量が求められ、図11のマップで表されるテーブルに従ってブレーキシリンダの液圧が推定される。
【0043】
図19のフローチャートで表されるモータ制御量決定プログラムは、ブレーキ操作中においては、予め定められたサイクルタイム毎に実行される。S81において、アンチロック制御中か否かが判定され、アンチロック制御中でない場合には、S82において、ストロークS,マスタ液圧PMCが検出され、S83において、推定ブレーキ液圧が読み込まれ、目標ブレーキ液圧が求められ、S84において制御モードが決定される。
制御モードが増圧モードである場合には、S86において、電動モータ60,62への少なくとも一方への供給電流量IM が図17,18のマップで表されるテーブルに従って決定される。
また、S87において、増圧用リニアバルブ76への供給電流量がMAXとされ減圧用リニアバルブ78への供給電流量は0とされる。
【0044】
S88において、駆動回路200が供給電流量IM である制御量で制御され、S89において、増圧用リニアバルブ76に対応するの駆動回路202が供給電流量IVA(MAX)である制御量で制御され、減圧用リニアバルブ78に対応する駆動回路202が供給電流量IVR(0)である制御量で制御される。動力液圧源32が作動させられ、動力液圧源32から吐出された作動液が最大の開口面積で開状態にされた増圧用リニアバルブ76を経てブレーキシリンダに供給される。また、減圧用リニアバルブ78は閉状態にされる。
【0045】
減圧モードである場合には、S90において、電動モータへの供給電流量IM は0にされる。ここでは、操作ストロークの増加速度は0より小さく、図17,18のテーブルに対応する制御量が設けられていないため、0にされるのである。S91において、増圧用リニアバルブ76への供給電流量IVAが0とされ、減圧用リニアバルブ78への供給電流量IVRが上述の場合と同様に決定される。減圧用リニアバルブ78の前後の差圧ΔPout と目標ブレーキ液圧の変化量dPWC * /dtとに基づいて決定される。ブレーキ液圧の推定については後述する。なお、減圧モードである場合において、電動モータへの供給電流量IM は、減圧モードが設定された場合の値に保たれるようにしたり、予め定められた設定量とされたり、操作ストロークの増加速度を0とした場合のマスタ液圧に基づいて決まる制御量にしたりすることができる。
制御モードが保持モードである場合には、S92,93においてモータ電流量IM とリニアバルブ76,78への供給電流量IVA,IVRが決定されるが、この場合には、いずれの制御量も0である。
なお、保持モードである場合における電動モータへの供給電流量IM は、減圧モードが設定された場合と同様に決定することができる。
【0046】
ブレーキシリンダの液圧は上述の場合と同様に推定されるのであるが、本実施形態においては、ブレーキシリンダに供給される流入作動液量は動力液圧源32から供給される作動液の流量に基づいて取得される。
動力液圧源32が非作動状態にある場合には吐出流量Qが0となる。電動モータへの供給電流量IM が0であり、ポンプの回転数が0の場合である。また、減圧用リニアバルブ78が閉状態にある場合には、開度AVRは0である。
S111,112において、高圧ポンプ66,低圧ポンプ64の吐出流量QPH,QPLが、ぞれぞれ電動モータ62,60への供給電流量IMH,IMLに基づいて求められ、S113において、ブレーキシリンダに動力液圧源32から供給された流入作動液量qinが求められる。ブレーキシリンダへの流入作動液量は、2つのポンプ64,66からそれぞれ供給された作動液量の和として求められる。
S114〜117において、ブレーキシリンダから減圧用リニアバルブ78を経て流出させられた流出作動液量が求められ、S118,119において、今回の消費液量q(n+1) 求められ、図11のテーブルに従って推定ブレーキ液圧が求められる。
【0047】
電動モータ60,62への供給電流量を決定する際の図17,18のテーブルは、上述の場合と同様に学習によって修正される。ストロークの増加速度、マスタ液圧と供給電流量との関係が変更されるのであり、上述の場合において、ゲインを小さくする場合には、テーブルの値、すなわち、制御量自体が小さくされ、ゲインを大きくする場合には、制御量自体が大きくされる。この場合には、テーブルが複数種類記憶されており、複数のテーブルのうちの1つが、実減速度と目標減速度との差、ブレーキ操作状態等に基づいて適宜選択されるようにすることもできる。
テーブルの修正は、部分的に行われても全体で行われてもよい。実際の電流量が決定された部分およびその周辺の値のみが変更されるようにしてもよいのである。
なお、図17,18のマップで表されるテーブルの修正において、制御量のみでなく、入力値の刻み幅、すなわち、操作ストロークの増加速度の変化幅、マスタ液圧の変化幅も修正されるようにすることができる。
【0048】
運転者によるブレーキ操作により、操作ストロークやマスタ液圧が、図21に示すように変化させられた場合には、マスタ液圧の増加に伴って電動モータ60,62の少なくとも一方への供給電流量が増加させられ、ブレーキシリンダの液圧が増加させられる。モータ60,62への供給電流量がテーブルに従って決定されるため、制御が容易となる。
また、入力値が刻み幅で決まる範囲内において変化しても制御量は一定に保たれる。そのため、制御量の振動を抑制することができ、制御を安定して行うことが可能となる。制御量の振動は、フィードバック制御が行われないことによっても抑制される。ブレーキ操作状態が一定であれば、制御量も一定なのであり、目標値と実際の値との偏差に基づいて変動させられることがないのである。さらに、テーブルを使用すれば、制御を容易にすることができ、制御回路を簡単にすることができ、その分、コストダウンを図ることができる。
【0049】
さらに、供給電流量の変化量が大きい場合には、供給電流量を段階的に変化させることもできる。図22に示すように、2つの制御量の間の値(以下、補間値と称する)が演算式に従って決定され、補間値に基づいて制御量が決定されるようにする。このように制御すれば、供給電流量の急激な変化を抑制し、ブレーキ液圧の変化を滑らかにすることができ、制動フィーリングの低下を抑制することができる。補間値に基づく制御量の決定は、供給電流量の変化量が予め定められた設定量以上である場合に行われるようにしても、変化量が設定量以上であるか否かに関係なく行われるようにしてもよい。
【0050】
さらに、動力式液圧源32の制御と増圧用リニアバルブ76,減圧用リニアバルブ78の制御との両方が行われるようにすることもできる。増圧用リニアバルブ76への供給電流量が増圧時にも制御されるようにするのであり、ブレーキシリンダには、動力液圧源32から吐出された作動液が増圧用リニアバルブ76によって絞られて供給されることになる。ポンプのモデルとオリフィスのモデルとを組み合わせた制御が行われることになる。
【0051】
アンチロック制御は、上述の場合と同様に行われるのであるが、アンチロック制御中においては、動力液圧源32が出力液圧Pp が一定になるように制御されることが望ましい。
【0052】
以上のように、本実施形態においては、液圧制御装置170の図7のフローチャートで表されるリニアバルブ制御量決定プログラムを記憶する部分,実行する部分、図19のフローチャートで表されるモータ制御量決定プログラムを記憶する部分,実行する部分、図10〜13,17,18のテーブルを記憶する部分、図14のフローチャートで表される規則修正プログラムを記憶する部分,実行する部分等により、制御量決定装置が構成される。制御量決定装置のうち、図9〜13,17,18のテーブルを記憶する部分によって規則記憶部が構成され、液圧制御装置170の図14のフローチャートで表される規則修正プログラムを記憶する部分,実行する部分等により規則修正部が構成される。
【0053】
なお、電動モータ60,62への供給電流量は、テーブルではなく、モデル式に従って決定されるようにすることもできる。
また、液圧ブレーキ装置の構造は、上記実施形態におけるそれに限らない。
例えば、上記実施形態においては、ブレーキシリンダ18,19,24,25の各々に対応してリニアバルブ76,78が設けられていたが、電磁開閉弁としてもよい。増圧モードに決定された場合には、増圧用開閉弁が開状態に、減圧用開閉弁が閉状態にされた状態で動力液圧源32の制御により制御される。減圧モードに決定された場合には、増圧用開閉弁が閉状態に、減圧用開閉弁が制御量としてのON時間だけ開状態にされるようにする。減圧用開閉弁の制御量としてのON時間が、ストロークの変化速度やマスタ液圧に基づいて決定される場合には、ブレーキシリンダの液圧を推定する必要がなくなり、制御をさらに容易にすることができる。本実施形態においては、モータへの制御量も減圧用開閉弁への制御量もブレーキ操作状態に基づいて決定されることになる。また、増圧時において、ブレーキ液圧が動力液圧源32の制御によって制御される場合には、増圧用電磁制御弁は不可欠ではない。なお、電磁開閉弁がデューティ制御される場合には、ON時間に対応するデューティ比で開閉させられる。
【0054】
さらに、電動モータ60,62への制御電流量を決定する際のテーブルは上記実施形態におけるそれに限らない。例えば、高圧モータ62については、供給電流量が制御されるのではなく、ON,OFF制御が行われるようにすることもできる。この場合には、例えば、マスタ圧PMCが40MPa以上,ストロークの増加速度が40mm/sec以上の場合にONにされ、それ以外の場合にはOFFにされるようにテーブルを作成し、そのテーブルに基づいて高圧モータ62が制御されるようにすることができる。また、テーブルは2次元に限らず3次元以上のものとすることができる。例えば、ストロークの増加速度,マスタ圧.マスタ圧の増加速度と供給電流量との関係を表すテーブルを作成し、その3次元のテーブルに基づいて低圧ポンプ60と高圧ポンプ62との少なくとも一方が制御されるようにするのである。
【0055】
さらに、動力式液圧源は、含まれるポンプが1つのものであってもよい。この場合には、モータへの供給電流量を決定するテーブルは1つでよい。また、図23に示すように、アキュムレータを含むものとすることもできる。本実施形態においては、動力液圧源250が、アキュムレータ252の液圧が設定範囲内に保たれるように、ポンプ254を駆動する電動モータ256が制御される。アキュムレータ252の液圧は、液圧センサ258によって検出される。
また、動力液圧源250には、電磁開閉弁260が設けられ、増圧モードが設定された場合には開状態とされ、保持モード,減圧モードが設定された場合には、閉状態に保たれる。このように制御すれば、アキュムレータの作動液の無駄な消費を回避することができる。本実施形態においては、ブレーキシリンダ毎に設けられた電磁液圧制御弁の制御によって、各ブレーキシリンダの液圧が制御されることになる。
【0056】
さらに、本実施形態においては、ストロークの変化速度とマスタ液圧とが、運転者によるブレーキ操作状態とされたが、これに限らない。例えば、操作力センサを設け、ブレーキペダル36に加えられる操作力をブレーキ操作状態としたり、目標ブレーキ液圧や目標ブレーキ液圧の変化速度等をブレーキ操作状態としたりすることができる。
また、マスタ液圧センサやストロークセンサを2つ設けることも不可欠ではなく、いずれか一方のみでもよい。それぞれ1つずつにすれば、さらに、コストダウンを図ることができる。
その他、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕に記載の態様の他、当業者による知識に基づいて適宜改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるブレーキシステムの液圧ブレーキ装置の回路図である。
【図2】上記液圧ブレーキ装置に含まれるリニアバルブを概念的に示す断面図である。
【図3】上記液圧ブレーキ装置の液圧制御装置の周辺を示す図である。
【図4】上記液圧制御装置における制御を概念的に示す図である。
【図5】上記液圧制御装置における制御を概念的に示す図である。
【図6】上記液圧制御装置における制御を概念的に示す図である。
【図7】上記液圧制御装置のROMに格納されたリニアバルブ制御量決定プログラムを表すフローチャートである。
【図8】上記ROMに格納されたブレーキ液圧推定プログラムを表すフローチャートである。
【図9】上記リニアバルブへの供給電流量と電磁駆動力との関係を示す図である。
【図10】上記ROMに格納されたリニアバルブにおける開口面積と、前後差圧,供給電流量との関係を表すテーブルを示す図である。
【図11】上記ROMに格納されたブレーキシリンダにおける消費液量と液圧との関係を表すテーブルを示す図である。
【図12】上記ROMに格納されたリニアバルブにおける前後差圧と開弁電流との関係を表すテーブルを示す図である。
【図13】上記ROMに格納されたリニアバルブへの供給電流量を決定する際の、目標ブレーキ液圧の変化量とそれを実現させるための電流量との関係を表すテーブルを示す図である。
【図14】上記ROMに格納された規則修正プログラムを表すフローチャートである。
【図15】上記プログラムの一部を表すフローチャートである。
【図16】上記ブレーキシステムに含まれる動力液圧源のポンプの作動特性を示す図である
【図17】上記液圧制御装置のROMに格納された低圧モータ用供給電流量決定テーブルを示す図である。
【図18】上記液圧制御装置のROMに格納された高圧モータ用供給電流量決定テーブルを示す図である。
【図19】上記液圧制御装置のROMに格納されたポンプ制御量決定プログラムを表すフローチャートである。
【図20】上記ROMに格納されたブレーキ液圧推定プログラムを表すフローチャートである。
【図21】上記ブレーキ制御装置における制御例を示す図である。
【図22】上記ブレーキ制御装置において決定された電動モータへの供給電流量の変化状態を示す図である。
【図23】本発明の別の一実施形態である液圧ブレーキ装置の動力液圧源を示す回路図である。
【符号の説明】
32 動力液圧源
58,59 ストロークセンサ
60 低圧モータ
62 高圧モータ
76 増圧用リニアバルブ
78 減圧用リニアバルブ
170 液圧制御装置
176 ROM
188,189 マスタ液圧センサ
194 車輪速センサ
196 前後Gセンサ

Claims (2)

  1. 車両の車輪の回転を抑制するブレーキと、
    そのブレーキの作動力を左右する物理量を制御する制御装置と、
    車両の運転者によるブレーキ操作部材の操作状態を検出するブレーキ操作状態検出装置と、
    そのブレーキ操作状態検出装置によって検出されたブレーキ操作状態に応じて、前記制御装置によって制御される物理量の制御量を決定する制御量決定装置と
    を含むブレーキシステムであって、
    前記制御量決定装置が、
    前記制御量を前記ブレーキ操作状態に応じて決定する際の制御ゲインを含む規則を記憶する規則記憶部と、
    その規則記憶部に記憶されている制御規則に基づいて、サイクルタイム毎に前記制御量を決定する制御量決定部と、
    その制御量決定部による前記サイクルタイム毎の制御量の決定とは別個に、前記規則記憶部に記憶された規則を修正する規則修正部と
    を含み、その規則修正部が、
    I (a) 実ブレーキ作動力,ブレーキを作動させるブレーキシリンダの液圧,ブレーキ
    を作動させる電動アクチュエータへの供給電流およびブレーキシリンダに接続されたポンプを駆動する電動モータへの供給電流のいずれかである実ブレーキ作動力関連量から、そのいずれかに対応するとともに前記ブレーキ操作状態に対応する目標ブレーキ作動力関連量を引いた偏差と、 (b)前記車両に実際に加わる実ブレーキ力,車両減速度および車輪減速度のいずれかである実ブレーキ力関連量からそのいずれかに対応するとともに前記ブレーキ操作状態に対応する目標ブレーキ力関連量を引いた偏差とのいずれか一方が正の第一設定量以上である場合に、前記制御ゲインを小さくし、前記いずれか一方が負の第二設定量より小さい場合に、前記制御ゲインを大きくする部分と、
    II (c) 前記実ブレーキ作動力関連量の時間当たり変化量の絶対値と、 (d) 前記実ブレ
    ーキ力関連量の時間当たり変化量の絶対値との少なくとも一方が第三設定量以上であり、かつ、前記ブレーキ操作部材の操作速度の絶対値が第四設定量以下である場合に、前記制御ゲインを小さくする部分と
    を含むことを特徴とするブレーキシステム。
  2. 前記規則修正部が、前記いずれか一方の偏差が正の第五設定量より小さく、かつ、前記ブレーキ操作部材のブレーキ作動力を増加させる方向への操作速度が第六設定量以上の場合に、前記制御ゲインを大きくする部分を含む請求項1に記載のブレーキシステム。
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