JP3541739B2 - ブレーキ装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキ装置に関するものであり、特に、ブレーキシリンダ液圧をマスタシリンダ液圧より高くすることができるブレーキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のブレーキ装置の一例が、本願出願人等によって出願され、未公開である特願平10─8383号の明細書に記載されている。この明細書に記載のブレーキ装置は、(1) 液圧によりブレーキを作動させるブレーキシリンダと、(2) ブレーキ操作部材の操作力に応じた液圧を発生させるマスタシリンダと、(3) それらブレーキシリンダとマスタシリンダとを接続する主液通路の途中に設けられ、ブレーキシリンダとマスタシリンダとの連通状態を制御する制御弁装置と、(4) その制御弁装置をブレーキ操作力に基づいて制御する制御弁装置制御装置と、(5) 作動液供給装置から供給される作動液を加圧して、前記主液通路の、前記制御弁装置より前記ブレーキシリンダ側の部分へ供給する加圧装置とを含むものである。
このブレーキ装置においては、制御弁装置によってブレーキシリンダがマスタシリンダから遮断された状態で、加圧装置から作動液が供給されれば、ブレーキシリンダ液圧がマスタシリンダ液圧より高められる。また、ブレーキシリンダがマスタシリンダに連通させられれば、ブレーキシリンダからマスタシリンダへの作動液の流れが許容され、ブレーキシリンダ液圧が減圧される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
このようなブレーキシリンダ液圧の制御が、ブレーキ操作部材がマスタシリンダ液圧を増大させる向きに移動させられている状態で行われる場合には、制御弁装置が殆ど遮断状態に保たれ、稀に連通状態にされることがあってもブレーキ操作部材の移動中であるため、その影響が運転者に殆ど感じられない。また、ブレーキ操作部材がマスタシリンダ液圧を減少させる向きに移動させられている状態では、制御弁装置が殆ど連通状態に保たれ、稀に遮断状態にされることがあっても、その影響はやはり運転者に殆ど感じられない。
【0004】
しかし、上記ブレーキシリンダ液圧の制御が、ブレーキ操作部材の操作力が一定に保たれるべき時期に行われる場合には、ブレーキ操作部材に影響が現れる。ブレーキシリンダ液圧の減圧のためにマスタシリンダに作動液が流入させられる場合には、この流入によりブレーキ操作部材が押し戻されようとする。この際、大部分の運転者は、作動液の流入量に見合う量だけブレーキ操作部材を後退させることができない。そのため、ブレーキ操作力が増加し、それに応じてブレーキシリンダ液圧を高める制御が行われる。逆に、ブレーキシリンダ液圧の増圧のためにマスタシリンダから作動液が加圧装置に供給される場合には、作動液の流出に伴ってブレーキ操作部材を前進させなければ、ブレーキ操作力を一定に保てないのであるが、大部分の運転者はこの前進操作も完全には行うことができない。一般に、ブレーキ操作力を減少させてしまうのであり、そのため、ブレーキシリンダ液圧を減少させる制御が行われる。
【0005】
これら運転者の意に反したブレーキ操作力の増加,減少が、ブレーキ操作力に基づく制御弁装置の制御に影響を及ぼし、ブレーキシリンダ液圧の制御が良好に行われなくなってしまう場合がある。
具体的な一例を図11に基づいて説明する。ここでは、ブレーキシリンダの液圧が、ブースタの助勢限界後においても、助勢限界前と同じ倍力率でブレーキ操作力が倍力された場合と同じ高さの液圧となるように、ブレーキ操作力に対応するマスタシリンダ液圧に基づいて制御弁装置が制御されるものとする。また、マスタシリンダが作動液供給装置とされ、マスタシリンダから供給された作動液が加圧装置によって増圧されてブレーキシリンダに供給され、ブレーキシリンダ液圧が高められるものとする。加圧装置により疑似的に助勢が行われるのであり、この際のブレーキシリンダ液圧の増加を加圧装置による助勢と称し、その助勢によって発生させられる液圧を助勢圧と称することとする。
【0006】
この加圧装置による助勢が行われている状態で、運転者がそれまで増加させてきたブレーキ操作力を一定に保とうとした場合、増圧され過ぎたブレーキシリンダ液圧を減圧するために制御弁装置が連通状態にされたとする。制御弁装置が連通状態にされれば、作動液がブレーキシリンダ側からマスタシリンダへ流入し、ブレーキ操作部材を押し戻す。前述のように、運転者はこのブレーキ操作部材の後退に十分追従できないため、ブレーキ操作力が増大し、マスタシリンダ液圧が増加して、ブレーキシリンダ液圧を増加させるための制御が行われる。このブレーキシリンダ液圧の増加は運転者の意図したものではないため、運転者はブレーキ操作力を減少させる。そのため、図11に(A)で示されているように、マスタシリンダ液圧が減少し、加圧装置による助勢も(B)で示されているように減少させられる。あるいは、上記ブレーキ操作部材の後退を許容しようとして、運転者がブレーキ操作力を緩めるが、この緩め操作が遅れる。そのため、一旦マスタシリンダ液圧が増加した後、(A)で示されているように減少し、それに伴って加圧装置による助勢も(B)で示されるように減少させられる。
その結果、ブレーキシリンダ液圧も減少させられるが、この減少は運転者の意図したものより大きいため、運転者はブレーキ操作力を増大させる。あるいは、ブレーキ操作部材の緩め操作が遅れたのを打ち消そうとして、ブレーキ操作力を増加させる。この操作力の増加に伴って(C)で示されているようにマスタシリンダ液圧が増大し、加圧装置による助勢も(D)で示されているように増加させられる。
その後、(E)で示されているように、(A)で示されている部分に関して説明したの同様の現象が生じ、以後、ブレーキ操作力,マスタシリンダ液圧および加圧装置による助勢の減少,増加が繰返し行われて、ブレーキシリンダ液圧の制御が振動状態となるハンチングが発生してしまう。
この問題は、制御弁装置がマスタシリンダ液圧に基づいて制御される場合に限らず、一般的に制御弁装置が予め定められた規則に基づいて制御される場合においても生じる。
【0007】
なお、マスタシリンダの加圧室に、前述の主液通路と、加圧装置に接続される作動液供給通路との両方が接続されている場合であって、制御中、加圧装置が常に作動状態に保たれている場合には、主液通路(制御弁装置)を経てマスタシリンダに作動液が流入させられる一方、作動液供給通路を経て加圧装置に作動液が供給されることによりマスタシリンダから作動液が流出させられることになる。この場合に、マスタシリンダから作動液が流出させられるか流入させられるかは、流出流量と流入流量との差によって決まる。また、ブレーキ回路が、制御弁装置,加圧装置,ブレーキシリンダを含む循環回路を含む場合には、循環回路内において作動液が不足すれば、マスタシリンダから作動液が流出させられ、作動液が余れば流入させられることになる。これらの場合にも、ブレーキ操作部材に前述した影響が現れ、同様なハンチングが発生する。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として、ハンチングの発生を回避し、ブレーキシリンダ液圧の制御が良好に行われ得るようにすることを課題としてなされたものである。この課題は、ブレーキ装置を下記各態様のものとすることによって解決される。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、常に、すべての事項を一緒に採用しなければならないものではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
(1)液圧によりブレーキを作動させるブレーキシリンダと、
ブレーキ操作部材の操作力に応じた液圧を発生させるマスタシリンダと、
作動液供給装置から供給される作動液を加圧して、それらブレーキシリンダとマスタシリンダとを接続する主液通路に供給する加圧装置と、
前記主液通路の、前記加圧装置により作動液が供給される部分より前記マスタシリンダ側に設けられ、ブレーキシリンダ側からマスタシリンダ側へ向かう作動液の流れを制御可能な制御弁装置と、
その制御弁装置を予め定められた規則に従って制御することにより前記ブレーキシリンダの液圧を前記加圧装置の液圧により制御する制御弁装置制御装置と、前記マスタシリンダにおける作動液の流出流量と流入流量との少なくとも一方を、制御弁装置が前記制御弁装置制御装置により前記規則に従って制御される場合のそれに対応する流出流量と流入流量との少なくとも一方より低減させる流量低減装置と
を含むことを特徴とするブレーキ装置
マスタシリンダにおける作動液の流入流量と流出流量との少なくとも一方を低減させれば、ブレーキ操作力の増加勾配と減少勾配との少なくとも一方が小さくなるため、運転者によるブレーキ操作力の制御が容易になり、ハンチングの発生を防止または軽減することができる。流入流量と流出流量との両方を低減させれば特に有効であるが、不可欠ではなく、流入流量と流出流量とのいずれか一方を低減させれば、その分、ブレーキ操作力の制御が容易となり、ハンチングの発生を回避することができる。
なお、制御弁装置は、電気的に制御されるものとしても、別の手段で制御されるものとしてもよい。例えば、マスタシリンダ液圧とブレーキシリンダ液圧とをパイロット圧として制御されるパイロット式制御弁を採用することも可能である。また、単なる開閉弁であっても、制御弁自身の前後差圧あるいは制御弁を経て流れる作動液の流量が、電気的にあるいは非電気的に制御される液圧制御弁あるいは流量制御弁であってもよい。作動液供給装置は、作動液を加圧する機能を有するマスタシリンダ等としても、単に作動液を収容するリザーバ等としてもよい。
(2)液圧によりブレーキを作動させるブレーキシリンダと、
ブレーキ操作部材の操作力に応じた液圧を発生させるマスタシリンダと、
作動液供給装置から供給された作動液を加圧して前記ブレーキシリンダと前記マスタシリンダとを接続する主液通路に供給する加圧装置と、
前記主液通路の、前記加圧装置により作動液が供給される部分より前記マスタシリンダ側に設けられ、ブレーキシリンダ側からマスタシリンダ側へ向かう作動液の流れを、供給電気エネルギに応じた流量で許容する制御弁装置と、
その制御弁装置への供給電気エネルギを少なくとも前記ブレーキ操作部材の操作力に基づいて制御する制御弁装置制御装置と、
前記制御弁装置を経てマスタシリンダに流入させられる作動液の流入流量を、制御弁装置が前記制御弁装置制御装置により制御される場合の流入流量より低減させる流量低減装置と
を含むことを特徴とするブレーキ装置
本項に記載のブレーキ装置においては、マスタシリンダへの流入流量が低減させられるため、ブレーキ操作力の増加勾配が抑制される。その結果、マスタシリンダ液圧の増加勾配が抑制され、そのこと自体によってハンチングの発生が抑制される。また、ブレーキ操作力の増加勾配が抑制されれば、運転者がブレーキ操作力をほぼ一定に保つことが容易となり、それによってもハンチングの発生が抑制される。制御弁装置がブレーキ操作力に基づいて制御される場合には、ブレーキ操作力がほぼ一定に保たれれば、制御弁装置の制御が安定し、ブレーキシリンダ液圧の制御が良好に収束させられる。なお、ブレーキ操作力は、ブレーキ操作部材に加えられる力自体の検出は勿論、マスタシリンダ液圧等ブレーキ操作力と1対1に対応する量の検出によっても行うことができる。
制御弁装置は、供給電気エネルギに応じた流量で作動液の流れを許容するものであり、例えば、電磁流量制御弁が該当するが、電磁流量制御弁に限らず、開閉弁等他の制御弁とすることもできる。例えば、開閉弁を開状態と閉状態とに交互に切り換え、開状態と閉状態との時間比率を変化させれば、マスタシリンダ側へ流れる作動液の流量を制御することができる。また、開閉弁と並列に絞りを設け、開閉弁の閉状態においては絞りを経て作動液がマスタシリンダへ流入するようにすれば、流入流量を大小2段階に制御することができる。
(3)前記流量低減装置が、予め定められた条件が満たされた場合に、前記流入流量を、制御弁装置が前記制御弁装置制御装置により制御される場合の流量より低減させるものである(1) 項または(2) 項に記載のブレーキ装置。
マスタシリンダへの流入流量を低減させれば、ブレーキシリンダ液圧の制御が安定し易くなるが、同時に、ブレーキシリンダ液圧を急激に増減させる必要がある場合に、制御に遅れが生じることを避け得ない。したがって、流量低減装置による流量の低減は、真に必要な場合、あるいは制御に悪影響が出ない場合に限定されることが望ましい。そこで、本項の態様においては、予め定められた条件が満たされた場合に低減させられるようにするのである。例えば、実際の制動力の変化速度が運転者の要求する変化速度より小さくても差し支えないと推定される場合に、予め定められた条件が満たされたとして、流量が低減させられるようにするのである。運転者のブレーキ操作力が予め定められた設定操作力以上である場合、または、ブレーキ操作速度が予め定められた設定速度以内である場合が該当する。さらに、減圧制御時間が予め定められた設定時間以内である場合という条件を付加するともできる。これら条件については、(4) 項(次項),(11)項,(12)項においてさらに詳細に説明する。
(4)前記流量低減装置が、前記制御弁装置を制御することにより、前記マスタシリンダに流入する作動液の流入流量を抑制する流入流量抑制部を含む(1) 項ないし(3) 項のいずれか1つに記載のブレーキ装置{(1) 項に従属する部分により請求項1、 (2) 項に従属する部分により請求項2}
制御弁装置を制御すれば、ブレーキシリンダとマスタシリンダとの連通状態を制御することができ、マスタシリンダへの流入流量を制御することができる。
例えば、制御弁装置を経てマスタシリンダ側に流れる作動液の流量が、予め定められた規則に従って制御される場合より小さくなるように制御されるようにするのである。制御弁装置における連通状態の制御が、ブレーキ操作力に応じて決まる供給電気エネルギの制御によって、行われる場合には、供給電気エネルギの変化量を、ブレーキ操作力の変化量に対応する量より小さくする。なお、供給電気エネルギの変化量に上限値を設けても、流入流量を抑制することができる。
また、制御に不感帯を設けても、流入流量を抑制することができる。例えば、制御弁装置が、ブレーキ操作力に基づいて制御される場合において、ブレーキ操作力が予め定められた設定操作力以上である場合は、連通状態(連通の程度)が一定に保たれるようにするのである。ブレーキ操作力が設定操作力以上である状態において、ブレーキ操作力が減少させられても、それに応じて制御弁装置の開口面積が増大させられることがないため、流入流量を抑制することができる。制御弁装置が、マスタシリンダ液圧をパイロット圧として作動させられるものである場合には、マスタシリンダ液圧が設定液圧以上になっても、設定液圧に等しい液圧がパイロット圧として伝達されるようにする。すなわち、設定液圧以上の場合には、設定液圧まで減圧されて伝達されるようにするのである。また、制御弁装置が供給電気エネルギの制御によって制御される場合には、供給電気エネルギの上限値を設ける。
例えば、▲1▼ないし▲3▼のいずれか1つの条件が満たされた場合に流入流量が抑制されるようにすることができる。▲1▼ブレーキ操作力が予め定められた設定操作力以上の場合、▲2▼ブレーキ操作力が設定操作力以下であって、かつ、ブレーキ操作速度(操作力減少速度)が予め定められた設定速度以内である場合、▲3▼ブレーキ操作力が設定操作力以下であって、かつ、減圧継続時間が予め定められた流入流量抑制許容時間内である場合である。
▲1▼のブレーキ操作力が設定操作力以上であり、制動力が設定制動力以上である領域では、本来制動力を制御する必要がないため、制動力を運転者のブレーキ操作力の変化速度(ここでは操作力の減少速度)に応じて制御する必要がなく、流入流量が抑制されるようにするのである。
▲2▼に関しては、操作速度が設定速度以内である場合には、操作速度に応じて制動力を制御する(ここでは減少させる)必要性が低いため、流入流量が抑制されるようにするのである。操作速度が設定速度以内である場合には、制動力を保持してもよい。
▲3▼に関して説明する。減圧開始時からの経過時間が流入流量抑制許容時間を超えるのは、運転者が、制動力が運転者の要求する制動力まで減少していないと考えている場合であり、速やかに要求制動力まで減少するように、通常の速度で制動力を減少させることが望ましい状態である。減圧勾配が抑制されると、制動力の減少速度が小さくなるため、実際の制動力と運転者の要求する制動力との間に差が生じるが、この差は流入流量が抑制された状態での減圧制御時間が長くなるほど大きくなる。そこで、減圧勾配が抑制されるようにするのは、上述の流入流量抑制許容時間内の場合に限ることが望ましい。実際の制動力と運転者の要求する制動力との差が設定制動力以上であると推定される場合は、減圧勾配を抑制することは望ましくないのである。したがって、減圧継続時間が予め定められた流入流量抑制許容時間内である間は流入流量が抑制され、流入流量抑制許容時間を超えれば流入流量の抑制が解除されるようにするのである。
(5)前記制御弁装置が、供給電気エネルギに応じた開度で、ブレーキシリンダ側からマスタシリンダ側へ向かう作動液の流れを許容する電磁流量制御弁であり、 前記流入流量抑制部が、前記電磁流量制御弁の開度を抑制する開度抑制部を含む(4) 項に記載のブレーキ装置(請求項)。
加圧装置から供給される作動液量が一定である場合において、電磁流量制御弁の開度を小さくすれば、電磁流量制御弁をマスタシリンダ側へ流れる作動液の流量を抑制することができ、マスタシリンダへの作動液の流入流量を抑制することができる。
(6)前記制御弁装置が、弁座と、弁座に対して接近・離間可能に設けられた弁子と、弁子を弁座から離間させる方向に付勢する付勢部材と、弁子を弁座に接近させる方向に、供給電気エネルギに応じた磁気力を発生させる電磁駆動装置とを含む電磁制御弁であり、
前記流入流量抑制部が、前記供給電気エネルギを制御することによって、前記弁子と弁座との間の開口面積を制御する開口面積制御部を含む(4) 項または(5) 項に記載のブレーキ装置。
本項の電磁制御弁においては、弁子を弁座から離間させる方向に、前後の差圧に応じた差圧作用力Fp と、付勢部材による付勢力Fs とが加わり、磁気力Fe が反対向きに作用する。すなわち、差圧作用力Fp と付勢力Fs との和が磁気力Fe と等しくなる状態(Fp +Fs =Fe )で、弁子の弁座に対する相対位置が決まる。そのため、磁気力Fe を制御すれば、弁子と弁座との間の開口面積(電磁制御弁の開口面積)を制御することが可能となり、電磁制御弁を流れる作動液の流量を制御することができる。
電磁制御弁においては、付勢部材を、弁子を弁座に接近させる方向に付勢するものとし、電磁駆動装置を、弁子を弁座から離間させる方向に、供給電気エネルギに応じた磁気力を発生させる装置とすることもできる。この場合は、差圧作用力Fp と磁気力Fe との和が付勢力Fs と等しくなる状態(Fp +Fe =Fs )で弁子の弁座に対する相対位置が決まり、開口面積が決まる。上述の場合と同様に、供給電気エネルギの制御により、開口面積を制御することができる。
(7)前記制御弁装置制御装置が、前記マスタシリンダ液圧に基づいて前記制御弁装置を制御することによって、ブレーキシリンダ液圧を、ブレーキ操作力が一定の倍力率で倍力された場合の液圧となるように制御する倍力制御部を含む(1) 項ないし(6) 項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
(6) 項に記載の電磁液圧制御弁においては、差圧作用力Fp ,磁気力Fe ,付勢力Fs が上述の関係を満たすように、弁子と弁座との相対位置が決まるため、弁子が弁座に着座させられる状態で、所望の差圧が得られるように、磁気力Fe を制御すれば、ブレーキシリンダ液圧を制御することができる。
(8)前記流量低減装置が、前記加圧装置の作動液の吐出量を抑制する吐出量抑制部を含む(1) 項ないし(7) 項のいずれか1つに記載のブレーキ装置(請求項)。
制御弁装置の連通状態が一定の状態である場合において、加圧装置の作動液の吐出量が抑制されれば、その分、マスタシリンダへの作動液の流入流量が抑制される。
加圧装置は、ポンプとそのポンプを駆動するポンプモータとを含むポンプ装置とすることができる。
(9)前記流量低減装置が、前記作動液供給装置から前記加圧装置に供給される作動液の供給量を抑制する供給量抑制装置を含む(1) 項ないし(8) 項のいずれか1つに記載のブレーキ装置(請求項)。
加圧装置に供給される作動液の供給量を抑制すれば、加圧装置から吐出される作動液量を抑制することができ、マスタシリンダへの流入流量を抑制することができる。供給量抑制装置は、作動液供給装置と加圧装置との間に設けられ、これらの間を流れる作動液の流量を制御可能な流量制御弁を含むものであっても、開状態と閉状態とに切換可能な開閉弁を含むものであってもよい。
作動液供給装置は、マスタシリンダであっても、大気圧で作動液を収容し、マスタシリンダに作動液を補給するマスタリザーバ等のリザーバであってもよいが、ブレーキシリンダ液圧をマスタシリンダ液圧より高い領域で制御する場合には、マスタシリンダの作動液を加圧する場合の方が、加圧装置における消費エネルギを少なくすることができる。
(10)前記供給量抑制装置が、運転者のブレーキシリンダ液圧の増圧要求の程度が予め定められた設定要求度より低い場合に、前記作動液の供給量を抑制する条件付供給量抑制装置である(8) 項または(9) 項に記載のブレーキ装置(請求項)。
ブレーキシリンダ液圧をマスタシリンダ液圧より高い領域で制御する場合には、ブレーキシリンダ液圧は加圧装置から供給された作動液によって増加させられる。そのため、運転者による増圧要求の程度が低い場合に吐出量を抑制することが望ましい。増圧要求は、例えば、ブレーキ操作力の変化量に基づいて取得することができる。
設定要求度は、一定値であっても、次項に関して説明するように、可変値であってもよい。
(11)前記条件付供給量抑制装置が、前記設定要求度を、当該条件付供給量抑制装置による過去の制御状態に基づいて決定する設定要求度決定部を含み、その設定要求度決定部によって決定された設定要求度より前記増圧の要求の程度が小さい場合に、前記供給量を抑制するものである(10)項に記載のブレーキ装置(請求項)。
運転者の制動増加要求が大きいか否かを決めるしきい値、すなわち、設定要求度を、過去の制御状態に基づいて決定することができる。
例えば、〔発明の実施の形態〕において説明するように、抑制状態にある場合に、その抑制状態を継続させるか否かを決定する抑制継続用しきい値と、抑制状態でない場合に、抑制状態に切り換えるか否かを決定する抑制切換用しきい値との2つを設定要求度として設け、抑制状態にある場合には、制動要求が抑制継続用しきい値より小さい間、その抑制制御を継続させ、抑制状態でない場合には、抑制切換用しきい値より小さくなった場合に、抑制制御に切り換えるようにすることができる。抑制継続用しきい値が大きいほど抑制制御が継続させられ易くなり、抑制切換用しきい値が大きいほど抑制制御に切り換えられ易くなる。したがって、過去の抑制制御時間が短い場合に、これらしきい値を大きくすれば、抑制状態にある時間を長くすることができ、あるいは抑制状態に切り換えられ易くすることができる。
また、抑制状態と非抑制状態との間の切換えが行われた後の経過時間が設定時間以内である場合には、抑制継続用しきい値を大きく、抑制切換用しきい値を小さくすれば、抑制制御から非抑制制御への切り換え,非抑制制御から抑制制御への切り換えが行われ難くなる。
(12)前記加圧装置が、作動液供給装置から供給された作動液を加圧するポンプと、そのポンプを駆動する電動モータとを含むポンプ装置であり、
前記流量低減装置が、前記電動モータの作動状態を制御することによって前記ポンプの吐出量を抑制するモータ制御部を含む(1) 項ないし(11)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
ポンプの吐出圧が同じ場合に、電動モータへの供給電流が小さくされれば、電動モータおよびポンプの回転数が減少し、ポンプの吐出量が低減させられる。
(13)当該ブレーキ装置が、減圧用リザーバと、その減圧用リザーバと前記ブレーキシリンダとの間に設けられ、これらを連通させる連通状態と遮断する遮断状態とに切換可能な減圧弁と、ブレーキシリンダと前記加圧装置との間に設けられ、これらを連通させる連通状態と遮断する遮断状態とに切換可能な保持弁と、これら減圧弁と保持弁とを制御することによって、ブレーキシリンダの液圧を制御するブレーキ液圧制御装置を含み、
前記流量低減装置が、前記減圧弁を連通状態に切り換える減圧制御部を含む(1) 項ないし(12)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
減圧弁を連通状態に切り換えれば、ブレーキシリンダの作動液を減圧用リザーバに流出させることができる。作動液は、マスタシリンダではなく、減圧用リザーバに流入させられる。
(14)前記作動液供給装置が、前記マスタシリンダであり、前記加圧装置が、マスタシリンダから供給される作動液を加圧するポンプ装置であり、かつ、前記流量低減装置が、ポンプ装置への作動液の供給のためにマスタシリンダから流出させられる作動液の流出流量を低減させる流出流量低減装置を含む(1) 項ないし(13)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置(請求項)。
本項に記載のブレーキ装置によれば、マスタシリンダからの流出流量が低減させられる。
作動液供給装置をマスタシリンダとした場合の(8) 項に記載の吐出量抑制部、(9) 項ないし(11)項のいずれか1つに記載の供給量抑制装置、(12)項に記載のモータ制御部を含む流量低減装置は、本項に記載の流出流量低減装置の一態様である。
また、ポンプ装置の作動速度が一定である場合には、制御弁装置を制御することによって、マスタシリンダからの流出流量を低減させることができる。例えば、ブレーキシリンダ液圧を増加させる必要がある場合に、制御弁装置の連通状態を、ブレーキ操作力に対応する連通状態より、大きい流量で作動液の流れを許容する状態となるように制御すれば、マスタシリンダ側へ戻される作動液量が増えるため、結果的に、マスタシリンダから流出させられる作動液量を減少させることができるのである。この場合には、ブレーキ操作力に対応する連通状態とされる場合に比較して、ブレーキシリンダ液圧の増加勾配が小さくなる。
流出流量の低減は、(4) 項において説明したように、例えば、▲1▼ブレーキ操作力が予め定められた設定操作力以上の場合、▲2▼ブレーキ操作力が設定操作力以下であって、かつ、ブレーキ操作速度(操作力増加速度)が予め定められた設定速度以内である場合、▲3▼ブレーキ操作力が設定操作力以下であって、かつ、増圧継続時間が予め定められた流出流量抑制許容時間内である場合に行われるようにすることができる。
(15)ブレーキシリンダがマスタシリンダから制御弁装置により遮断された状態で、ブレーキシリンダに加圧装置から出力された作動液を供給することによって、ブレーキシリンダの液圧をマスタシリンダの液圧より高い液圧に制御し、制御弁装置によりブレーキシリンダをマスタシリンダに連通させて、マスタシリンダへの作動液の流出を許容することによって、ブレーキシリンダの液圧を減少させるブレーキ液圧制御装置に、
前記マスタシリンダにおける作動液の流入流量を、前記制御弁装置が予め定められた規則に従って制御される場合のそれに対応する流入流量より低減させる流量低減装置を設けたことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
流量低減装置は、 (2)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の特徴を有するものとすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、10はブレーキ操作部材としてのブレーキペダルであり、そのブレーキペダル10はバキュームブースタ12を介してマスタシリンダ14に連結されている。マスタシリンダ14はタンデム型であり、ハウジングに2つの加圧ピストンが互いに直列にかつ各々摺動可能に嵌合され、それにより、ハウジング内に各加圧ピストンの前方において2つの加圧室が互いに独立して形成されている。マスタシリンダ14は、ブレーキペダル10の踏力であるブレーキ操作力に応じてそれら加圧室にそれぞれ等しい高さの液圧を機械的に発生させる。
【0010】
バキュームブースタ12は、よく知られたものであるため、詳細な説明は省略するが、変圧室と負圧室とを有し、これらの差圧によってブレーキ操作力を助勢してマスタシリンダ14に出力するものである。この差圧は、変圧室の圧力が大気圧まで増加した後には、ブレーキペダル10をさらに深く踏み込んでも増加しない。この変圧室の圧力が大気圧に達した状態がブースタがブレーキ操作力を助勢できる限界なのであり、このブースタが助勢限界に到達した場合のマスタシリンダ12の液圧を助勢限界圧とする。
本実施形態においては、後述するが、バキュームブースタ12が助勢限界に達した時点から、ブレーキ力を助勢する効き特性制御が行われる。
【0011】
このブレーキ装置は前後2系統式であり、マスタシリンダ14の一方の加圧室には、左右前輪のそれぞれのブレーキ54を作動させるブレーキシリンダ56が接続されている。また、他方の加圧室には、左右後輪のそれぞれのブレーキ58を作動させるブレーキシリンダ60が接続されている。
【0012】
前輪側の液圧系統において、マスタシリンダ14と、前記左右前輪FL,FRのブレーキシリンダ56とは、主液通路64によって接続されている。主液通路64は、マスタシリンダ14から延び出た後に二股状に分岐させられており、1本の基幹通路66と2本の分岐通路68とが互いに接続されて構成されている。基幹通路66の途中には圧力制御弁70が設けられている。各分岐通路68の先端に上述のブレーキシリンダ56がそれぞれ接続されているのである。主液通路64のうち圧力制御弁70とブレーキシリンダ56との間の部分にはポンプ通路72が接続され、その途中にポンプ74が設けられている。ポンプ74は、ポンプモータ76によって駆動される。ポンプ74およびポンプモータ76等により、加圧装置としての加圧装置78が構成される。
【0013】
図2において、圧力制御弁70は、マスタシリンダ14とブレーキシリンダ56との間の連通状態を制御するものであり、これらの間の差圧を電磁的に制御する形式のものである。圧力制御弁70は、図示しないハウジングと、主液通路64におけるマスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との間の作動液の流通状態を制御する弁子80およびそれが着座すべき弁座82と、それら弁子80および弁座82の相対移動を制御する磁気力を発生させるソレノイド84とを有している。本実施形態においては、圧力制御弁70等によって制御弁装置が構成される。
【0014】
この圧力制御弁70においては、ソレノイド84が励磁されない非作用状態(OFF状態)では、スプリング86の弾性力によって弁子80が弁座82から離間させられている。それにより、主液通路64においてマスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との間での双方向の作動液の流れが許容され、その結果、ブレーキ操作が行われれば、ブレーキシリンダ56がマスタシリンダ14と等圧で変化させられる。このブレーキ操作中、弁子80には、弁座82から離間する向きに力が作用するため、ソレノイド84が励磁されない限り、マスタシリンダ液圧すなわちブレーキシリンダ液圧が高くなっても、弁子80が弁座82に着座することはない。すなわち、圧力制御弁70は常開弁なのである。
【0015】
これに対し、ソレノイド84が励磁される作用状態(ON状態)では、ソレノイド84の磁気力によりアーマチュア88が吸引され、そのアーマチュア88と一体的に移動する弁子80が弁座82に着座させられる。このとき、弁子80には、ソレノイド84の磁気力に基づく吸引力F1 と、ブレーキシリンダ液圧とマスタシリンダ液圧との差に基づく差圧作用力F2 とスプリング86の弾性力F3 との和とが互いに逆向きに作用する。
ブレーキシリンダ液圧とマスタシリンダ液圧との差に基づく差圧作用力F2 に対して吸引力F1 が大きく、式
2 ≦F1 −F3
が成立する領域では、弁子80が弁座82に着座し、ブレーキシリンダ56から作動液の流出が阻止される。ポンプ74から高圧の作動液が供給されることにより、ブレーキシリンダ56の液圧が増加させられマスタシリンダ14より高くなる。
【0016】
ブレーキシリンダ液圧の増加に伴って差圧作用力F2 が大きくなり、式
2 >F1 −F3
が成立すると、弁子80が弁座82から離間し、ブレーキシリンダ56の作動液がマスタシリンダ12に戻され、減圧させられる。この式において、弾性力F3 を無視すれば、ブレーキシリンダ液圧が、マスタシリンダ液圧に対してソレノイド吸引力F1 に基づく差圧分高い液圧に制御されることになる。
また、弁子80の弁座82に対する相対位置も、上述の差圧作用力,吸引力,弾性力によって決まるため、吸引力の制御により、これらの間の距離、すなわち、開度を制御することができる。
ソレノイド84の磁気力である吸引力F1 の大きさは、図3にグラフで表されているように、ソレノイド84の励磁電流Iの大きさに応じてリニアに変化するように設計されている。
【0017】
この圧力制御弁70には図1に示すように、バイパス通路92が設けられており、そのバイパス通路92の途中にバイパス弁94が逆止弁として設けられている。万が一、ブレーキペダル10の踏み込み時に圧力制御弁70内の可動部材に生ずる流体力により圧力制御弁70が閉じてしまったり、圧力制御弁70が機械的にロックして閉じたままになってしまった場合でも、マスタシリンダ14からブレーキシリンダ56へ向かう作動液の流れが確保されるようにするためである。
【0018】
各分岐通路68の途中には、ポンプ通路72との接続点よりブレーキシリンダ56の側において、常開の電磁開閉弁である保持弁100が設けられている。保持弁100は、励磁されて閉状態となり、その状態で、ブレーキシリンダ56からマスタシリンダ14およびポンプ74へ向かう作動液の流れを阻止し、それにより、ブレーキシリンダ液圧が保持される状態を実現する。各保持弁100にはバイパス通路102が接続され、各バイパス通路102には作動液戻り用のバイパス弁104が逆止弁として設けられている。
【0019】
各分岐通路68のうち保持弁100とブレーキシリンダ56との間の部分からリザーバ通路106が延びてリザーバ108に至っている。各リザーバ通路106の途中には常閉の電磁開閉弁である減圧弁110が設けられている。減圧弁110は、励磁されて開状態となり、その状態では、ブレーキシリンダ56からリザーバ108へ向かう作動液の流れを許容し、それより、ブレーキシリンダ液圧が減圧される状態を実現する。
【0020】
リザーバ108は、ハウジングにリザーバピストン112が実質的に気密かつ摺動可能に嵌合されて構成されるとともに、その嵌合によりリザーバピストン112の前方に形成されたリザーバ室114において作動液を付勢手段としてのスプリング116によって圧力下に収容するものである。リザーバ室114は前記ポンプ通路72により前記主液通路64に接続されている。
【0021】
ポンプ通路72はポンプ74によりそれぞれ吸入通路120と吐出通路122とに仕切られており、それら通路120,122には、共に逆止弁である吸入弁124と吐出弁126とがそれぞれ設けられている。ポンプ通路72にはさらに、ダンパ室128と図示しないオリフィスとが互いに直列にポンプ74の吐出側に設けられており、それにより、ポンプ74の脈動が軽減される。
【0022】
吸入通路120のうち吸入弁124とリザーバ108との間の部分は、補給通路130により、主液通路64のうちマスタシリンダ14と圧力制御弁70との間の部分に接続されている。補給通路130の途中には、電磁供給制御弁としての流入制御弁132が設けられている。流入制御弁132は、常閉の電磁開閉弁であり、ソレノイドが励磁されることによって閉状態(OFF:供給阻止状態)から開状態(ON:供給状態)に切り換えられる。吸入通路120のうち補給通路130との接続点とリザーバ108との間の部分には逆止弁134が設けられている。この逆止弁134は、流入制御弁132の開状態で作動液がマスタシリンダ14からリザーバ108に流入することを阻止するために設けられている。よって、この逆止弁134により、マスタシリンダ14からの作動液が高圧のままでポンプ74に吸入されることが保証される。なお、前記リザーバ通路106は、吸入通路120の、逆止弁134とリザーバ108との間に接続されている。また、前記吸入通路120の2つの逆止弁124,134の間には、マスタリザーバ136から延び出させられた副補給通路140も接続されている。副補給通路140の途中には、副流入制御弁142と逆止弁144とが直列に配設されている。
【0023】
このように、ポンプ74の吸入側には、マスタシリンダ12とマスタリザーバ136との両方がそれぞれ補給通路130,副補給通路140を介して接続されることになる。トラクション制御,ビークルスタビリティ制御時においては、副補給通路140を介してマスタリザーバ136から作動液が供給され、効き特性制御時においては、補給通路130から作動液が供給される。ブレーキシリンダ56の液圧をマスタシリンダ12の液圧より高い液圧に制御する場合に、マスタシリンダ12の作動液がポンプ74に供給されるようにすれば、ブレーキシリンダ56の液圧を同じ高さに制御する場合にポンプ74における消費エネルギを少なくすることができる。補給通路130を経てマスタシリンダ14から作動液が供給される場合には、流入制御弁132が開状態とされて副流入制御弁142が閉状態とされる。また、副補給通路140を経てマスタリザーバ136から作動液が供給される場合には、流入制御弁132が閉状態とされて流入制御弁142が開状態とされる。
【0024】
また、副補給通路140を設ければ、多量の作動液を早急にポンプ74に供給できるという利点もある。マスタシリンダ12の液圧は高圧であるため、補給通路130は、強い強度を有する比較的細い管とする必要があり、しかも、マスタリザーバ136とマスタシリンダ12との間に絞りがあるため、マスタシリンダ12の作動液を多量にかつ早急にポンプ74に供給することは困難である。それに対して、マスタリザーバ136の液圧は大気圧に近いため、副補給通路140は例えば太いゴム管等とすることができ、多量の作動液を早急に供給することができるのである。
【0025】
逆止弁144は、流入制御弁142,132の両方が開状態になった場合に、マスタシリンダ12からマスタリザーバ136への作動液の流出を防止するために設けられたものである。2つの流入制御弁132,142の両方が開状態にされることは本来ないことであるが、例えば、いずれか一方が開状態に保たれたまま閉状態に切り換えられなくなり、いずれか他方が電気的制御により開状態に切り換えられた場合に、マスタシリンダ12がマスタリザーバ136に連通させられる場合があるのである。
逆止弁144を、前輪側の補給通路140に設けたのは、前輪側のブレーキ力を確保することは、後輪側のブレーキ力を確保するより重要だからである。なお、逆止弁144は、後輪側の補給通路にも設けてもよい。
後輪側の液圧系統については、前輪側の液圧系統と同じであるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0026】
以上、このブレーキ装置のハードウェア構成を説明したが、次に、ソフトウェア構成を図4に基づいて説明する。ただし、図4には、ソフトウェア構成のうち前輪ブレーキ系統に関する部分のみが代表的に示されている。
このブレーキ装置は、コンピュータを主体とする液圧制御装置180を備えている。液圧制御装置180は、CPU182,ROM184,RAM186,入力部188,出力部190等を含むコンピュータを主体として構成されており、そのROM184には、効き特性制御(圧力制御弁制御)ルーチン,流入制御弁制御ルーチン、その他、アンチロック制御ルーチン等が記憶されており、これら各々のルーチンがCPU182によりRAM186を使用しつつ実行されることにより、効き特性制御,流入制御弁制御等が実行される。
【0027】
「効き特性制御」は、バキュームブースタ12の能力低下にもかかわらず、車体減速度Gがブレーキ操作力fに対して同じ勾配で増加するようにそれらブレーキ操作力fと車体減速度Gとの関係であるブレーキの効き特性を制御することをいう。ブースタ12が助勢限界に達した場合にブレーキ力を助勢する制御でもあるため、ブレーキ力助勢制御と称することもできる。また、倍力率が制御されることになるため、倍力制御と称することもできる。
【0028】
液圧制御装置180の入力部188には、マスタシリンダ液圧センサ202,車輪速センサ204等が接続されている。マスタシリンダ液圧センサ202は、マスタシリンダ14またはそれと等圧の作動液を収容する部分に設けられ、マスタシリンダ液圧信号を出力する。マスタシリンダ12には、ブレーキペダル10の操作量に対応する液圧が発生させられるため、マスタシリンダ液圧によれば、ブレーキ操作量を取得することができる。本実施形態においては、マスタシリンダ液圧センサ202は、ブレーキ操作力を検出するブレーキ操作力検出装置として設けられているのである。車輪速センサ204は、各輪毎に設けられ、各輪の車輪速信号を出力する。各輪の車輪速度に基づいて制動スリップ状態,車輪加速度等が求められ,それに基づいてアンチロック制御等が行われる。
【0029】
一方、液圧制御装置180の出力部190には、モータコントローラ208が接続されている。モータコントローラ208には図示しない駆動回路を介してポンプモータ76が接続されている。ポンプモータ76は、モータコントローラ208の指令に基づいて駆動回路により制御される。
出力部190にはさらに、前記圧力制御弁70のソレノイド84が駆動回路210を介して接続されるとともに、保持弁100,減圧弁110のソレノイド212および流入制御弁132,副流入制御弁142の各ソレノイド214,215が駆動回路216を介して接続されている。圧力制御弁70のソレノイド84の駆動回路210には、ソレノイド84の磁気力をリニアに制御するための電流制御信号が出力され、保持弁100,減圧弁110および流入制御弁132,副流入制御弁142の各ソレノイド212,214,215の駆動回路216にはそれぞれ、ソレノイドをON/OFF駆動するためのON/OFF駆動信号が出力される。
【0030】
本ブレーキ装置において効き特性制御が行われる場合について説明する。
本実施形態においては、図6に示すように、バキュームブースタ12が助勢限界に到達したときに、ポンプ74によるブレーキシリンダ56の増圧が開始される。すなわち、マスタシリンダ液圧PM がブースタ12が助勢限界に達した場合のマスタシリンダ液圧PMO(助勢限界圧であり、以下、開始圧と称する)に達した場合に、増圧が開始されるのであり、一点鎖線で表される目標ブレーキシリンダ圧PB が得られるように、助勢圧が加えられる。
図7には、助勢圧(目標差圧)ΔPとマスタシリンダ液圧PM との関係を示す。図6から、実際のマスタシリンダ液圧が決まれば、助勢圧ΔPが決まるのである。換言すれば、ブレーキシリンダ液圧に基づかなくてもマスタシリンダ液圧に基づいて制御すればよいのであり、助勢圧(目標差圧)が得られるように、圧力制御弁70を制御すれば、ブレーキシリンダ液圧を、ブレーキ操作力が一定の倍力率で倍力された場合の液圧に近づけることができる。なお、本実施形態においては、助勢圧の上限が設けられている。これにより、ブレーキシリンダ液圧が必要以上に大きくなることが回避される。マスタシリンダ液圧が設定圧P1 以上である場合には助勢圧が一定に保たれるのであり、設定圧P1 以上である場合にはブレーキペダル10の操作に伴ってマスタシリンダ液圧が変化させられても、助勢圧が変化させられることはない。
図8には、目標差圧ΔPとソレノイド電流値Iとの関係を示す。目標差圧ΔPとソレノイド吸引力F1 との関係と、ソレノイド吸引力F1 とソレノイド電流値Iとの関係とに基づいて、目標差圧ΔPとソレノイド電流値Iとの関係が決まるのである。上述のように、目標差圧ΔPが、マスタシリンダが設定圧P1 に対応する差圧ΔP2 以上である場合には、圧力制御弁70への供給電流が一定に保たれる。
【0031】
図5のフローチャートで表されるルーチンは、運転者により車両のイグニションスイッチがON状態に操作された後、繰り返し実行される。ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする)において、マスタシリンダ液圧センサ202からマスタシリンダ液圧信号が取り込まれ、S2において、そのマスタシリンダ液圧信号が表すマスタシリンダ液圧PM が開始圧PM0より高いか否かが判定される。マスタシリンダ液圧PM が開始圧PM0より高い場合は、判定がYESとなり、S3において、ブレーキシリンダ液圧PB をマスタシリンダ液圧PM より高めるべき量すなわち目標差圧ΔPが演算される。マスタシリンダ液圧PM と目標差圧ΔPとの関係(例えば、図7に示される関係)を表すテーブルがROMに記憶されており、その関係に従ってマスタシリンダ液圧PM の現在値に対応する目標差圧ΔPが演算されるのである。
S4において、演算された目標差圧ΔPに応じて圧力制御弁70のソレノイド84への供給電流Iが演算により求められ、その供給電流の変化量ΔIが求められる。そして、圧力制御弁70のソレノイド84の電流制御が行われる。
本実施形態においては、電流制御信号が、ソレノイド84への供給電流の変化量ΔIを表す信号とされる。目標差圧ΔPとソレノイド電流値Iとの関係(例えば、図8に示す関係)がROMに記憶されており、原則として、その関係に従って目標差圧ΔPに対応する電流値Iが演算され、電流変化量ΔIが求められるのであるが、予め定められた条件が満たされた場合には、電流変化量ΔI′が、上述の場合より小さくされるのである。そして、圧力制御弁70のソレノイド84への供給電流が、その変化量ΔIだけ変化させられることにより、電流制御が行われる。次に、S5において、流入制御弁132がON/OFF制御され、S6において、ポンプモータ76が作動させられる。
【0032】
S4の圧力制御弁70の制御について、図9のグラフに基づいて説明する。ブレーキ操作力の増加に伴ってマスタシリンダ圧が増加させられ、開始圧PMOに達すると、効き特性制御が開始される(▲1▼→▲2▼)。マスタシリンダ圧の増加に伴って助勢圧ΔPが増加し、それに伴って供給電流Iが増加させられる。効き特性制御が開始されて最初に増加させられる場合には、通常勾配での効き特性制御(以下、通常勾配制御と称する)が行われる。すなわち、増圧勾配が抑制されることなく、図8に示す関係に基づいて決まる供給電流Iの変化量ΔIを表す信号が出力されるのである(▲2▼)。なお、助勢圧に上限が設けられているため、図7に示すように、マスタシリンダ液圧が設定圧P1 より高くなっても、助勢圧がΔP2 以上になることが回避される。また、マスタシリンダ液圧が液圧P1 より高い領域では、マスタシリンダ液圧が変化しても、圧力制御弁70への供給電流量は一定に保たれる(▲3▼,▲4▼)。
【0033】
ブレーキ操作量の減少に伴い、マスタシリンダ液圧が低くなり、設定圧P1 以下になると、圧力制御弁70への供給電流が減少させられる。吸引力F1 が小さくされるのであり、それによって、ブレーキシリンダ側からマスタシリンダ側への作動液の流出が許容される。本実施形態においては、供給電流の減少量が図8の関係に基づいて決められた勾配より小さくされる。例えば、図7,8において、マスタシリンダ液圧が液圧PX から液圧PY まで減少した場合を想定する。助勢圧はΔPX からΔPY まで減少し、それに、伴って減少すべき供給電流の変化量ΔIは、ΔI=IX −IY となるが、本実施形態においては、勾配抑制制御が行われるため、変化量ΔI′は、通常の電流変化量ΔIに1より小さい係数kを掛けた値(ΔI×k){=(IX −IY )×k}とされるのである。
このように、供給電流Iの減少量が抑制されれば、ブレーキシリンダ液圧の減圧勾配が抑制される。圧力制御弁70において、弁子80と弁座82との間の開口部の開口面積(開度)が抑制され、圧力制御弁70を流れる作動液流量が抑制される。それによって、マスタシリンダ12への作動液の流入流量を抑制することができる(▲5▼)。この制御を、勾配抑制制御と称する。勾配抑制制御は、流量低減制御と称することもできる。
【0034】
次に、ブレーキ操作力の増加により、増圧制御に切り換えられるのであるが、この場合においても、減圧制御が行われる場合と同様に、供給電流の変化量ΔIが抑制される。圧力制御弁70の開度が急激に小さくされるのではなく、ゆっくり小さくされるのである。増圧勾配が抑制されれば、マスタシリンダ12からの流出流量を抑制することができる(▲6▼)。また、増圧制御時間が流出流量抑制許容時間TUP以上長くなると、通常の変化量に戻される。運転者の制動増加要求を満たすべく、ブレーキシリンダ液圧を増圧することが望ましいからである(▲7▼)。
ブレーキ操作力の減少に伴い供給電流量が減少させられるのであるが、この場合においても、▲5▼の場合と同様に、減圧勾配が抑制される(▲8▼)。ブレーキ操作力の減少に伴い、マスタシリンダ液圧が開始圧PMO以下になると、効き特性制御が終了させられる。S7,8において、圧力制御弁70のソレノイド84,流入制御弁132のソレノイド214がOFFにされ、S9において、ポンプモータ76が停止させられる。
【0035】
このように、本実施形態においては、▲1▼マスタシリンダ液圧が設定圧P1 以上の場合、▲2▼マスタシリンダ液圧が設定圧P1 以下であって、初回増圧時でない場合、▲3▼増圧開始時からの経過時間が、流出流量抑制許容時間以内である場合に、勾配抑制制御(流量低減制御)が行われ、常に行われるわけではない。実際の制動力変化速度が運転者の制動力要求変化速度より小さくても差し支えない場合、すなわち、マスタシリンダ液圧が設定圧以上である場合または制動要求変化速度が設定速度以下の場合に圧力制御弁70の供給電流の変化量が小さくされるのである。
減圧制御時においては、圧力制御弁70を流れる作動液の流量が抑制され、増圧制御時においては、流量が大きめにされる。その結果、減圧制御時のマスタシリンダへの流入流量を抑制することができる。ブレーキペダル10に加えられる反力による増加勾配が抑制されるため、運転者のブレーキ操作力の増加勾配を抑制することができ、マスタシリンダ液圧の増加勾配を抑制することができる。反力増加に伴うマスタシリンダ液圧の増加の影響を小さくでき、外乱を小さくすることができ、制御ハンチングを抑制することができるのである。同様に、増圧制御時のマスタシリンダからの流出流量を抑制することができるため、反力減少に伴うマスタシリンダ液圧の減少の影響を小さくできる。
また、運転者の制動力要求変化速度が大きい場合には、勾配抑制制御は行われないため、運転者の意図に応じた速度で制動力を変化させることが可能である。
【0036】
なお、上記実施形態においては、流入流量と流出流量との両方が抑制されていたが、流出流量を抑制することは不可欠ではない。反力の減少に伴ってブレーキペダル10が入り込み、それに応じてブレーキ操作力がほぼ一定に保たれれば、マスタシリンダ液圧の減少勾配への影響はそれほど大きくならないからである。また、増圧制御時のみでなく、減圧制御時においても、減圧開始時からの経過時間が、流入流量抑制許容時間以上になった場合に勾配抑制制御から通常勾配制御に切り換えられるようにすることもできる。逆に、増圧時間、減圧時間の経過時間が設定時間以上になった場合に、通常勾配制御に切り換えられるようにすることは不可欠ではない。さらに、減圧弁110を連通状態にすることによってブレーキシリンダ56の液圧を減圧することもできる。例えば、急減圧時にのみ減圧弁110を経て作動液を流出させれば、マスタシリンダ12への流入流量が過大になることを回避することができる。
また、効き特性制御は上述の態様に限らず、他の態様で実行することもできる。例えば、開始圧PM0をブースタ12が助勢限界に達した後の値としても、達する以前の値としてもよい。また、ブースタ12の構造も上記実施形態におけるそれに限らず、倍力率が助勢限界に達する以前に変化する構造のものとすることができる。このブースタの構造および効き特性制御については、特願平10─8383の明細書に詳細に記載されているため、説明を省略する。
【0037】
次に、上述のS5における流入制御弁132の制御について、図10のフローチャートに基づいて説明する。
流入制御弁132は、効き特性制御が行われていない間は、図示する原位置(閉状態)に保たれるが、効き特性制御中は、原則として、開状態(ON)に保たれる。しかし、本実施形態においては、常時、開状態に保たれるわけではなく、予め定められた条件が満たされた場合に閉状態(OFF)に切り換えられる。それによって、ポンプ74によって吸引されて主液通路64に戻される作動液量を少なくし、マスタシリンダ12に戻される流入流量を抑制することができる。
圧力制御弁70は、前述のように、マスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との差圧を供給電流に応じた大きさに制御するものである。したがって、減圧制御時でなくても、ポンプ74から作動液が吐出されて主液通路64に戻されれば、それによって、ブレーキシリンダ側の液圧が高くなり、マスタシリンダ側の液圧との差が供給電流に応じた差圧より大きくなれば、圧力制御弁70を経て作動液がマスタシリンダ12に戻されることになる。そこで、ブレーキシリンダ56に作動液を供給する必要がない場合に、流入制御弁132を閉状態に切り換えれば、マスタシリンダ12に戻される作動液の流入流量を抑制することができる。
【0038】
本実施形態においては、運転者の制動増加要求が小さい場合に流入制御弁132が閉状態に切り換えられる。流入制御弁132が開状態(ON状態)にある場合において、マスタシリンダ液圧の変化量ΔFが設定変化量α1 (抑制切換用しきい値α1 )より小さい場合には、閉状態(OFF状態)に切り換えられる。また、閉状態にある場合において、マスタシリンダ液圧の変化量ΔFが予め定められた設定変化量α2 (抑制維持用しきい値α2 )より小さい間はその閉状態に保たれるが、抑制維持用しきい値α2 以上になると、開状態に切り換えられる。また、これらしきい値α1 ,α2 は、常に一定の大きさではなく、直前のOFF状態の時間あるいはON状態の時間に基づいて決定される。なお、抑制維持用しきい値α2 は、抑制切換用しきい値α1 より大きい。
【0039】
ON状態にある流入制御弁132をOFF状態に切り換えるか否かの抑制切換用しきい値α1 は、流入制御弁132が切り換えられる直前のOFF時間に基づいて決定される。直前のOFF時間が短いほど抑制切換用しきい値α1 が大きくされ、OFF状態に切り換え易くされる。
OFF状態にある流入制御弁132をON状態に切り換えるか否かの抑制維持用しきい値α2 は、直前のON時間に基づいて決定される。ON時間が短いほど抑制維持用しきい値α2 が大きくされ、ON状態に保たれ難くされる。換言すれば、OFF状態に切り換えやすくされるのであり、いずれにしても、直前のON,OFF時間に基づいて流入制御弁132がOFF状態に保たれやすくするのである。
【0040】
S101において、流入制御弁132がON状態とOFF状態との間で切り換えられたか否かが判定される。切り換えられた場合には、判定がYESとなり、S102において、切り換え後の状態がON状態であるか否かが判定される。ON状態である場合には、S103以降が実行される。
直前のOFF時間が読み取られ、それに基づいて、予め定められたテーブルに従って、抑制切換用しきい値α1 が決定される。上述のように、OFF時間が短いほど抑制切換用しきい値α1 が大きい値に決定されるのである。そして、S104において、マスタシリンダ液圧の変化量が抑制切換用しきい値α1 より小さいか否かが判定される。抑制切換用しきい値α1 より小さい場合は、S105において、OFF状態に切り換えられ、抑制切換用しきい値α1 以上である場合はS106においてON状態に保たれる。制動増加要求が小さい場合は、OFF状態に切り換えられ、制動要求が大きい場合はON状態に切り換えられるのである。
【0041】
切り換えられた後の状態がOFF状態である場合には、S107において、直前のON時間が読み取られ、抑制維持用しきい値α2 が決定される。抑制維持用しきい値α2 は、抑制切換用しきい値α1 と同様に、ON時間が短いほど大きくされる。S108において、マスタシリンダ液圧の変化量ΔFが設定しきい値αより大きいか否かが判定される。大きい場合には、ON状態に切り換えられるが、小さい場合はOFF状態に保たれる。
それに対して、流入制御弁132の状態が切り換わらない場合には、S101における判定がNOとなり、S111において、現在の状態がON状態であるか否かが判定される。ON状態であれば、S104以降が実行され、OFF状態であれば、S108以降が実行される。
【0042】
このように制御することによって、流入制御弁132が運転者の制動増加要求が小さい限りOFF状態に保たれるため、圧力制御弁70を経てマスタシリンダ12に戻される流入流量を抑制し、制御ハンチングを抑制することができる。また、OFF状態に切り換えることにより、消費エネルギの低減を図ることができる。さらに、OFF状態(閉状態)にすれば、マスタシリンダ12から流出させられる作動液量を抑制することも可能である。
【0043】
なお、上記実施形態においては、抑制切換用しきい値α1 , 抑制維持用しきい値α2 が直前のON時間あるいはOFF時間が短いほど大きい値に設定されたが、ON時間,OFF時間が短くなると段階的に大きくされるようにしてもよい。また、流入制御弁132の直前の切換え後の経過時間に基づいて決定することができる。切換え後の経過時間が短い間は、その状態が保たれるように、すなわち、切り換え難くする。OFF状態からON状態への切り換え後の経過時間が短い場合には、抑制切換用しきい値α1 を小さくし、ON状態からOFF状態への切り換え後の経過時間が短い場合には、抑制維持用しきい値α2 を大きくするのである。また、切り換え後の経過時間が予め定められた設定時間以内である場合には、流入制御弁132の切り換え自体が禁止されるようにしてもよい。また、しきい値α1 , α2 の両方を設けることは不可欠ではない。しきい値より小さい場合に流入制御弁132を閉状態とし、しきい値より大きい場合に開状態に切り換えればよいのである。
【0044】
さらに、ポンプ74の作動状態を制御することによっても、流入流量と流出流量との少なくとも一方を抑制することができる。制動増加要求が小さい場合に、回転数を小さくして、ポンプ74の吐出量を小さくするのである。それによって、主液通路64に供給される作動液量を少なくすることができ流入流量を少なくすることができる。また、ポンプ74の吸入量が抑制されるため、マスタシリンダから流出させられる作動液量を少なくすることもできる。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、液圧制御装置180の圧力制御弁70を制御する部分およびソレノイド84等により制御弁装置制御装置が構成される。また、液圧制御装置180の図5のフローチャートで表される効き特性制御ルーチンのS4,5(流入制御弁制御ルーチンのS103,104,105,107,108,110)を記憶する部分,実行する部分等により流量低減装置が構成される。そのうちの、S4を実行する部分,記憶する部分のうち減圧勾配を抑制する部分等により、流入流量抑制部,開度抑制部が構成され、S5を実行する部分等により、吐出量抑制部,供給量抑制装置が構成される。供給量抑制装置は条件付供給量抑制装置である。また、S103,107を実行する部分,記憶する部分等により、設定要求度決定部が構成される。また、上述の吐出抑制部、S4を記憶する部分,実行する部分のうち、増圧勾配を抑制する部分等は、流出流量低減装置でもある。なお、本実施形態においては、制御弁装置制御装置の一部によって、流入流量抑制部,開度抑制部が構成されるが、制御弁装置制御装置とは別に流入流量抑制部,開度抑制部を構成することができる。
【0046】
なお、流量低減制御として、圧力制御弁70の制御と、流入制御弁132の制御との両方を行う必要はなく、いずれか一方のみでもよい。また、ブレーキ装置の構造は、上記実施形態におけるそれに限らず、他の構造のものとすることもできる。例えば、圧力制御弁70を単なる電磁開閉弁とすることもできる。この場合には、電磁開閉弁を開状態と閉状態とに切り換えることによって、ブレーキシリンダ56の液圧を制御することができる。さらに、流入制御弁132は、供給電流に応じて流量が許容される電磁流量制御弁とすることもできる。その場合には、供給電流を減少させることによって電磁流量制御弁を流れる作動液の流量が抑制され、それによって、マスタシリンダ12における流出流量が抑制されることになる。その他、〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるブレーキ装置を示す回路図である。
【図2】上記ブレーキ装置に含まれる圧力制御弁を示す概念図である。
【図3】上記圧力制御弁への供給電流とソレノイド吸引力との関係を示す図である。
【図4】上記ブレーキ装置の液圧制御装置周辺を表す図である。
【図5】上記液圧制御装置のROMに格納された効き特性制御プログラムを表すフローチャートである。
【図6】上記液圧制御装置によって制御されるブレーキ操作力とブレーキシリンダ液圧との関係を示す図である。
【図7】上記液圧制御装置によって制御されるマスタシリンダ液圧と助勢力(目標差圧)との関係を示す図である。
【図8】上記液圧制御装置によって制御される圧力制御弁への供給電流Iと目標差圧との関係を示す図である。
【図9】上記液圧制御装置による制御例を示す図である。
【図10】上記効き特性制御プログラムの一部(流入制御弁制御プログラム)を表すフローチャートである。
【図11】従来のブレーキ装置における制御の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
12 マスタシリンダ
56 ブレーキシリンダ
70 圧力制御弁
74 ポンプ
76 ポンプモータ
78 加圧装置
84 ソレノイド
132 流入制御弁
180 液圧制御装置
202 マスタシリンダ液圧センサ

Claims (8)

  1. 液圧によりブレーキを作動させるブレーキシリンダと、
    ブレーキ操作部材の操作力に応じた液圧を発生させるマスタシリンダと、
    作動液供給装置から供給される作動液を加圧して、それらブレーキシリンダとマスタシリンダとを接続する主液通路に供給する加圧装置と、
    前記主液通路の、前記加圧装置により作動液が供給される部分より前記マスタシリンダ側に設けられ、ブレーキシリンダ側からマスタシリンダ側へ向かう作動液の流れを制御可能な制御弁装置と、
    その制御弁装置を予め定められた規則に従って制御することにより前記ブレーキシリンダの液圧を前記加圧装置の液圧により制御する制御弁装置制御装置と、前記制御弁装置を制御することにより、前記マスタシリンダに流入する作動液の流入流量を、その制御弁装置が前記制御弁装置制御装置により前記規則に従って制御される場合の流入流量より低減させる流量低減装置と
    を含むことを特徴とするブレーキ装置。
  2. 液圧によりブレーキを作動させるブレーキシリンダと、
    ブレーキ操作部材の操作力に応じた液圧を発生させるマスタシリンダと、
    作動液供給装置から供給された作動液を加圧して前記ブレーキシリンダと前記マスタシリンダとを接続する主液通路に供給する加圧装置と、
    前記主液通路の、前記加圧装置により作動液が供給される部分より前記マスタシリンダ側に設けられ、ブレーキシリンダ側からマスタシリンダ側へ向かう作動液の流れを、供給電気エネルギに応じた流量で許容する制御弁装置と、
    その制御弁装置への供給電気エネルギを少なくとも前記ブレーキ操作部材の操作力に基づいて制御する制御弁装置制御装置と、
    前記制御弁装置を制御することにより、前記制御弁装置を経てマスタシリンダに流入させられる作動液の流入流量を、その制御弁装置が前記制御弁装置制御装置により制御される場合の流入流量より低減させる流量低減装置と
    を含むことを特徴とするブレーキ装置。
  3. 前記制御弁装置が、供給電気エネルギに応じた開度で、ブレーキシリンダ側からマスタシリンダ側へ向かう作動液の流れを許容する電磁流量制御弁であり、
    前記流量低減装置が、前記電磁流量制御弁の開度を抑制する開度抑制部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ装置。
  4. 前記流量低減装置が、前記加圧装置の作動液の吐出量を抑制する吐出量抑制部を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
  5. 前記流量低減装置が、前記作動液供給装置から前記加圧装置に供給される作動液の供給量を抑制する供給量抑制装置を含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載のブレーキ装置。
  6. 前記供給量抑制装置が、運転者のブレーキシリンダ液圧の増圧要求の程度が予め定められた設定要求度より低い場合に、前記作動液の供給量を抑制する条件付供給量抑制装置であることを特徴とする請求項に記載のブレーキ装置。
  7. 前記条件付供給量抑制装置が、前記設定要求度を、当該条件付供給量抑制装置による過去の制御状態に基づいて決定する設定要求度決定部を含み、その設定要求度決定部によって決定された設定要求度より前記増圧の要求の程度が小さい場合に、前記供給量を抑制するものであることを特徴とする請求項に記載のブレーキ装置。
  8. 前記作動液供給装置が前記マスタシリンダであり、前記加圧装置が、前記マスタシリンダから供給される作動液を加圧するポンプ装置であり、かつ、前記流量低減装置が、ポンプ装置への作動液の供給のためにマスタシリンダから流出させられる作動液の流出流量を低減させる流出流量低減装置を含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載のブレーキ装置。
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