JP3673284B2 - 車両用ブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は車両用ブレーキ装置に関するものであり、特に、車輪の接地荷重に基づく車輪回転の抑制制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ブレーキ装置によって車輪の回転を抑制し、車両を減速,停止させる場合、車両に設けられた4個の車輪の接地荷重はそれぞれ異なるのが普通である。車両の構造や慣性に基づく荷重移動等によって異なるのであり、車輪の回転を抑制する場合、その接地荷重の大きさによって発生し得る最大制動力が異なり、接地荷重に基づいて制動力を決定すれば車両の制動距離を短縮することができる。そのため、特開平3−38458号公報に記載のブレーキ装置においては、左右前輪を支持する前軸にかかる荷重と、左右後輪を支持する後軸にかかる荷重との比率により、車両全体として必要な制動力を前軸と後軸とに配分し、左右前輪の回転と左右後輪の回転とがそれぞれ、前軸と後軸との荷重に応じた制動力で抑制されるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に記載のブレーキ装置における制動力の配分には、前輪の荷重と後輪の荷重との違いは考慮されているものの、左車輪の荷重と右車輪の荷重との違いは考慮されておらず、車両を最も短い距離で停止させるためには不十分である。また、制動中における運転者の操舵操作に精度良く対応したヨーイング運動を生じさせることや、運転者によるブレーキ操作に精度良く対応した減速度を生じさせることができないという問題もある。
本願の請求項1および請求項2に係る発明は、制動距離を従来より更に短くするとともに、制動中における運転者の操舵操作に精度良く対応したヨーイング運動を生じさせることが可能である上、運転者によるブレーキ操作に精度良く対応した減速度を生じさせることが可能な車両用ブレーキ装置を提供することを課題としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1の発明に係る車両用ブレーキ装置は、上記の課題を解決するために、(イ)運転者により操作されるブレーキ操作部材と、(ロ)それぞれホイールシリンダと摩擦材とを備えて、4個の車輪の各々の回転を抑制する4個の摩擦ブレーキと、(ハ)前記ブレーキ操作部材の操作量に基づいて決まる車両全体として必要な制動力を、前記4個の車輪の各々に、それら車輪の各々の接地荷重に応じた比率で配分し、それら4個の車輪の各々の摩擦ブレーキの各ブレーキシリンダの目標液圧を、前記配分した制動力の各々が得られるとともに、それら摩擦ブレーキの摩擦材の摩擦係数の推定値が小さいほど大きい液圧に決定するブレーキ液圧決定手段と、(ニ)車両の実際の減速度である実減速度を取得する実減速度取得手段と、(ホ)その実減速度取得手段により取得された実減速度の前記ブレーキ操作部材の操作量に基づいて決まる目標減速度からのずれが設定範囲内である間は前記摩擦係数の推定値を修正せず、設定範囲から外れている間は設定率での修正を継続し、実減速度を目標減速度に近づける摩擦係数推定値修正手段と、(ヘ)運転者による操舵操作量を取得する操舵操作量取得手段と、(ト)前記ブレーキ液圧決定手段により決定された前記4個の摩擦ブレーキのブレーキシリンダの各目標液圧を、左右前輪と左右後輪との少なくとも一方の制動力差により、車両の実際のヨーレイトを、前記操舵操作量取得手段により取得された操舵操作量と車両の実際の車速とに基づいて決まる目標ヨーレイトに近づける目標液圧に補正する補正手段と、(チ)前記4個の摩擦ブレーキのブレーキシリンダの液圧を、少なくとも、前記ブレーキ液圧決定手段により決定されるとともに前記補正手段により補正された目標液圧に基づいて、制御する液圧制御手段とを含むように構成される。
また請求項2の発明に係る車両用ブレーキ装置は、(i)車両の運転者により操作されるブレーキ操作部材と、(ii)それぞれホイールシリンダと摩擦材とを備えて、4個の車輪の各々の回転を抑制する4個の摩擦ブレーキと、(iii)前記ブレーキ操作部材の操作量であるブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、(iv)前記車両の実際の走行速度である実車速を取得する実車速取得手段と、(v)前記車両の実際の減速度である実減速度を取得する実減速度取得手段と、(vi)前記車両の実際のヨーレイトである実ヨーレイトを取得する実ヨーレイト取得手段と、(vii)前記運転者による操舵操作量を取得する操舵操作量取得手段と、(viii)前記4個の車輪の各々の接地荷重を取得する接地荷重取得手段と、(ix)前記ブレーキ操作量検出手段により検出されたブレーキ操作量に基づいて決まる前記車両の目標減速度と、前記接地荷重取得手段により取得された各車輪の接地荷重と、前記4個の摩擦ブレーキの各々のブレーキファクタと、前記摩擦材の摩擦係数の推定値とに基づいて、前記4個の摩擦ブレーキの各々のブレーキシリンダの目標液圧を、それら摩擦ブレーキの各々に前記各車輪の接地荷重に応じた大きさの制動力が得られるとともに、それら摩擦ブレーキの摩擦材の摩擦係数の推定値が小さいほど大きくなる液圧に決定するブレーキ液圧決定手段と、(x)前記実減速度取得手段により取得された実減速度の前記目標減速度からのずれが設定範囲内である間は前記摩擦係数の推定値を修正せず、設定範囲から外れている間は設定率での修正を継続し、実減速度を目標減速度に近づける摩擦係数推定値修正手段と、(xi)前記ブレーキ液圧決定手段により決定された前記4個の摩擦ブレーキのブレーキシリンダの目標液圧を、左右前輪と左右後輪との少なくとも一方の制動力差により、前記実ヨーレイト取得手段により取得された実ヨーレイトを、前記操舵操作量取得手段により取得された操舵操作量と前記実車速取得手段により取得された実車速とに基づいて決まる目標ヨーレイトに近づける目標液圧に補正する補正手段と、(xii)前記4個の摩擦ブレーキのブレーキシリンダの液圧を、少なくとも、前記ブレーキ液圧決定手段により決定されるとともに前記補正手段により補正された目標液圧に基づいて、制御する液圧制御手段とを含むように構成される。
【0005】
【作用】
本願の請求項1の発明に係るブレーキ装置においては、ブレーキ液圧決定手段が、ブレーキ操作部材の操作量に基づいて決まる車両全体として必要な制動力を、4個の車輪の各々に、それら車輪の各々の接地荷重に応じた比率で配分し、それら配分した制動力の各々がそれら4個の車輪の各々に発生させられるように、各摩擦ブレーキのブレーキシリンダの目標液圧を決定する。したがって、基本的には、4個の車輪の各々の摩擦ブレーキが、各車輪の接地荷重に応じた大きさの制動力を発生するように作動させられる。これによって、路面の摩擦係数が均一である限り、その路面の摩擦係数が大きい場合でも小さい場合でも、4個の車輪すべてが殆ど同時にロック状態に陥ることとなる。4個の車輪の制動能力が最も有効に引き出されることとなるのである。そして、そのブレーキ液圧決定手段により決定された目標液圧を、補正手段が、左右前輪と左右後輪との少なくとも一方の制動力差により、車両の実際のヨーレイトを、運転者による操舵操作量と車両の実際の車速とに基づいて決まる目標ヨーレイトに近づけるように補正し、液圧制御手段が、その補正された目標液圧に基づいて、4個の摩擦ブレーキのブレーキシリンダの液圧を制御する。したがって、4個の車輪の制動能力が可及的に有効に引き出されるとともに、制動中における運転者による操舵操作に良好に対応したヨーイング運動を車両が行うように4個の摩擦ブレーキが制御される。
しかも、ブレーキ液圧決定手段は、各ブレーキシリンダの目標液圧を、摩擦材の摩擦係数の推定値が小さいほど大きい値に決定するものであり、その摩擦係数の推定値を、摩擦係数推定値修正手段が、実減速度取得手段により取得された実減速度のブレーキ操作部材の操作量に基づいて決まる目標減速度からのずれが設定範囲内である間は修正せず、設定範囲から外れている間は設定率で修正し続けて、実減速度を目標減速度に近づけるため、ブレーキ操作部材の操作量によく対応した大きさの減速度が得られることとなる。
請求項2の発明においては、ブレーキ液圧決定手段が、4個の摩擦ブレーキの各々のブレーキシリンダの目標液圧を、ブレーキ操作量検出手段により検出されるブレーキ操作量に基づいて決まる目標減速度と、接地荷重取得手段により取得される各車輪の接地荷重と、各摩擦ブレーキのブレーキファクタと、摩擦材の摩擦係数の推定値とに基づいて、摩擦ブレーキの各々に各車輪の接地荷重に応じた大きさの制動力が得られるとともに、それら摩擦ブレーキの摩擦材の摩擦係数の推定値が小さいほど大きくなる液圧に決定する。そして、摩擦係数推定値修正手段が、実減速度取得手段により取得された実減速度のブレーキ操作部材の操作量に基づいて決まる目標減速度からのずれが設定範囲内である間は上記摩擦係数の推定値を修正せず、設定範囲から外れている間は設定率で修正し続けて、実減速度を目標減速度に近づけるため、ブレーキ操作部材の操作量によく対応した大きさの減速度が得られることとなる。その上、補正手段が、ブレーキ液圧決定手段により決定された4個の摩擦ブレーキのブレーキシリンダの目標液圧を、実ヨーレイト取得手段により取得された実ヨーレイトを、操舵操作量取得手段により取得される操舵操作量と実車速取得手段により取得される実車速とに基づいて決まる目標ヨーレイトに近づける目標液圧に補正する。その結果、液圧制御手段が、4個の摩擦ブレーキのブレーキシリンダの液圧を、少なくとも、補正された目標液圧に基づいて、各車輪にそれらの接地荷重に応じた大きさの制動力が得られるとともに、摩擦材の摩擦係数の推定値が小さいほど大きくなるように制御する。この点は、請求項1の発明に係るブレーキ装置におけると同様である。
【0006】
【発明の効果】
本願の請求項1および2に係る発明によれば、上記のように4個の車輪の制動能力が特に有効に引き出されることとなり、制動距離を従来より短縮することができる。また、4個の車輪すべてについてスリップ率がほぼ同じ大きさとなるため、結局、スリップ率が4個の車輪全体としてできる限り小さく抑えられることとなり、コーナリングフォースが確保され、車両の走行安定性が増す効果も得られる。その上、運転者が制動操作と操舵操作とを共に行った場合に、操舵操作に良好に対応したヨーイング運動を生じさせることができ、車両の走行安定性が一層増す効果が得られる。さらに、4個の車輪のすべての制動力に対して路面の摩擦係数が十分大きい間は、運転者によるブレーキ操作部材の操作量に正確に対応した減速度が発生させられる。
【0007】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図2において10はブレーキ操作部材としてのブレーキペダル10である。ブレーキぺダル10はマスタシリンダ12に接続されており、マスタシリンダ12の2個の加圧室にそれぞれ、ブレーキペダル10の踏力に対応する液圧が発生させられる。マスタシリンダ12の一方の加圧室は、液通路14,16および分岐通路18,20により、左右前輪22,24にそれぞれ設けられたブレーキのフロントホイールシリンダ26,28に接続されており、他方の加圧室は、液通路30,32および分岐通路34,36により、左右後輪38,40にそれぞれ設けられたブレーキのリヤホイールシリンダ42,44に接続されている。46は後輪38,40用の液通路32に設けられたプロポーショニングバルブである。
【0008】
上記分岐通路18,20,34,36にはそれぞれ、電磁方向切換弁50,52,54,56が設けられ、液圧制御弁58,60,62,64が接続されている。電磁方向切換弁50〜56のソレノイドは常には消磁されて図に示す原位置にあり、ホイールシリンダ26,28,42,44を液圧制御弁58〜64に連通させているが、ソレノイドが励磁されれば反対側の位置に切り換えられ、ホイールシリンダ26,28,42,44をマスタシリンダ12に連通させる。
【0009】
液圧制御弁58〜64はそれぞれ、アキュムレータ70とリザーバ72とに液通路74,76により接続されており、アキュムレータ70にはリザーバ72の液がポンプ80によって汲み上げられ、一定の範囲で蓄えられる。液圧制御弁58〜64は、ソレノイドの励磁電流の制御により、アキュムレータ70の液圧を車輪の回転を抑制するために必要な高さに制御してホイールシリンダ26,28,42,44に供給し、その液圧に基づいてブレーキが作動し、車輪の回転が抑制される。本実施例においては、ホイールシリンダ26,28,42,44で作動する図示しないブレーキと、ポンプ80,アキュムレータ70,液圧制御弁58〜64等とが車輪回転抑制手段を構成しているのである。
【0010】
前記マスタシリンダ12とフロントホイールシリンダ26,28とを接続する液通路14と16との間、およびマスタシリンダ12とホイールシリンダ42,44とを接続する液通路30と32との間にはそれぞれ電磁方向切換弁84,86が設けられ、ストロークシミュレータ88,90が接続されている。ストロークシミュレータ88,90は、マスタシリンダ12から排出されるブレーキ液を収容してブレーキペダル10の踏込みを許容するとともに、踏込みストロークに応じた反力をブレーキペダル10に与えるものである。車輪の回転が液圧制御弁58〜64によって制御された液圧に基づいて抑制される状態においては、電磁方向切換弁84,86のソレノイドが消磁されてマスタシリンダ12がストロークシミュレータ88,90に連通させられ、運転者にあたかもホイールシリンダ26,28,42,44に接続されているかのような操作フィーリングを与えるようにされているのである。
【0011】
本ブレーキ装置は制御装置100によって制御される。制御装置100はCPU102,ROM104,RAM106,入力部108,出力部110およびバスを含んでいる。制御装置100の入力部108には、ブレーキぺダル10の踏込みを検出するブレーキスイッチ112、ブレーキぺダル10の踏込み力を検出する操作量検出手段としての踏力検出装置114、アキュムレータ70の液圧を検出する液圧センサ116、ホイールシリンダ26,28,42,44の液圧を検出する液圧センサ118,120,122,124,左右の前輪22,24および後輪38,40の各回転速度を検出する車輪速センサ126,128,130,132,各輪における車体の高さを検出する車高センサ134,136,138,140,車体の前後方向の減速度を検出する前後Gセンサ144,ヨーレイトセンサ160および操舵角センサ162が接続されている。
【0012】
前後Gセンサ144は、軸受により車両の左右方向の軸線まわりに回動可能に支持された扇形の錘を有する。この錘には、その回動軸線を中心とする円弧上に微小間隔を隔てて多数のスリットが形成されるとともに、比較的大きい間隔を隔てた2個の切欠が形成されており、これらスリットおよび切欠が光電的に検出されることによって、錘の原点,回動方向および回動角度を検出し、前後方向の加速度が検出される。また、上記ヨーレイトセンサ160は、トヨタソアラ新型車解説書1991年5月3−126〜3−127頁に記載されているように、コリオリ力を利用して車両の垂直軸線まわりの回動角速度を検出するものである。
【0013】
出力部110には、液圧制御弁58〜64および電磁方向切換弁50,52,54,56,84,86が接続されている。また、ROM104には、図3にグラフで示すブレーキぺダル10の踏込み力と目標減速度GT との関係を規定するマップおよび図1にフローチャートで示す車輪回転抑制ルーチンが格納されている。以下、このフローチャートに基づいて車輪回転の抑制について説明する。
【0014】
本液圧ブレーキ装置による制動は、通常は液圧制御弁58〜64により制御された液圧に基づいて行われるのであって、電磁方向切換弁50〜56,84,86は常には消磁され、ホイールシリンダ26,28,42,44は液圧制御弁58〜64に連通させられ、マスタシリンダ12はストロークシミュレータ88,90に連通させられている。そして、イグニッションスイッチがONにされると同時に図示しないメインルーチンが実行され、その初期設定においてブレーキの摩擦材の摩擦係数推定値μが基本値μB に設定されてRAM106に設けられた摩擦係数推定値記憶エリアに格納される。基本値μB は設計上定められ、あるいは乾燥状態の摩擦材の常温における実測値である。
【0015】
ブレーキぺダル10が踏み込まれれば、まず、ステップS1(以下、S1と略記する)が実行され、ブレーキぺダル10の踏込み力および車体の減速度Gが読み込まれた後、S2において目標減速度GT が取得される。ブレーキぺダル10の踏込み力と目標減速度GT との関係を規定する前記マップから目標減速度GT が取得されるのである。
【0016】
次いでS3〜S7が実行され、実減速度Gの目標減速度GT に対する割合に応じて摩擦材の摩擦係数推定値μが決定される。S3においては実減速度Gが目標減速度GT の95%以下であるか否かの判定が行われ、95%以下であればS3の判定結果がYESとなってS6が実行され、摩擦係数推定値μが0.99μに決定されて、それまで摩擦係数推定値記憶エリアに格納されていた摩擦係数推定値μと置き換えられる。また、実減速度Gが目標減速度GT の95%より大きい場合にはS4が実行され、実減速度Gが目標減速度GT の105%以上であるか否かの判定が行われる。目標減速度GT の105%以上であればS4の判定がYESとなってS7が実行され、摩擦係数推定値μが1.01μに決定される。さらに、実減速度Gが目標減速度GT の95%より大きく、105%より小さい場合にはS5が実行され、摩擦係数推定値μはそれまで通りの値に決定される。これによって、実減速度Gが目標減速度GT の95%以下である間は、車輪回転抑制ルーチンの1実行サイクル毎に摩擦係数推定値μが1%ずつ減じられ、105%以上である間は1%ずつ増やされ、95%と105%との間では変更されないこととなる。
【0017】
次いで、S8において左右の前輪22,24および後輪38,40の各車輪荷重が決定される。4輪の各荷重の大きさは車両の構造や制動時に生ずる車両後方から前方への荷重移動によって異なり、同じ制動力では4輪が同時にロックするように車輪の回転を抑制することができないため、各輪毎に適切な制動力が得られるように車輪荷重を決定するのである。左前輪22の荷重FFLは次式に従って決定される。
FFL=WFL+{(H・GX )/2L−(H・RF ・GY )/T}・M
ただし、
WFL:停車状態において左前輪22にかかる車両重量
H:車両の重心高さ
GX :前後加速度
L:ホイールベース
RF :前輪のロール剛性配分
GY :横加速度
T:トレッド
M:車両の質量
【0018】
制動時には、前後加速度GX に車両の重心の高さHおよび車両の質量Mを掛けた大きさのモーメント(M・H・GX )が生じ、このモーメントは前輪に地面から加えられる反力FにホイールベースLを掛けたモーメント(F・L)と釣り合うことからF=(M・H・GX )/Lが得られ、さらに、この反力Fは左右の前輪22,24に加えられるのであるから、左前輪22の荷重は(M・H・GX )/2Lだけ増大することとなる。
【0019】
また、車両旋回時には車両の左右方向に荷重移動が生ずる。車両旋回時には横加速度GY に重心高さHを掛けた大きさのモーメント(M・H・GY )が生じ、トレッドTに左の前後輪に地面から加えられる反力Fを掛けたモーメント(F・T)と釣り合うことからF=(M・H・GY )/Tが得られる。この力Fは前輪と後輪と がそのロール剛性配分RF ,RR の大きさに応じて分担する。ロール剛性配分は、車両が前後方向の軸線まわりに回動する際に、懸架装置からばね上重量に伝えられる復元モーメントの前輪と後輪との配分比率であり、(M・H・GY )/Tに前輪22,24のロール剛性配分RF を掛けた値が旋回に伴う左前輪22の荷重の変化量である。左旋回時における横加速度GY を正で表すとすれば、左前輪22の場合、車両の左旋回時には荷重移動により荷重が減少するため、上記式において(M・H・RF ・GY )/Tが引かれ、右旋回時にはGY が負の値となり、荷重が増大することとなる。
【0020】
また、右前輪24の荷重FFRは次式によって求められる。
FFR=WFR+{(H・GX )/2L+(H・RF ・GY )/T}・M
ただし、
WFR=停車状態において右前輪24にかかる車両重量
右前輪24の場合、車両の左旋回時には横方向の荷重移動により荷重が大きくなり、これを加えることにより荷重FFRが求められ、右旋回時にはGY の値が負になるため、荷重が減少する。
【0021】
さらに、左後輪38および右後輪40の各荷重FRL,FRRは次式によって求められる。
FRL=WRL−{(H・GX )/2L+(H・RR ・GY )/T}M
FRR=WRR−{(H・GX )/2L−(H・RR ・GY )/T}M
ただし、
WRL:停車状態において左後輪38にかかる車両重量
RR :後輪のロール剛性配分
WRR:停車状態において右後輪40にかかる車両重量
制動に伴う前後方向の荷重移動により後輪の荷重は減少するため、(M・H・GX )/2Lを引くのである。また、左右方向の移動荷重は(M・H・GY )/Tに後輪のロール剛性の分担率RR を掛けることにより求められ、この値を左後輪38の場合には引き、右後輪40の場合には加えることとなる。
【0022】
このように左右の前輪22,24および後輪38,40の接地荷重が求められたならばS9が実行され、接地荷重の大きさに応じた制動力が得られるように、各輪のホイールシリンダ26,28,42,44に供給される制動液圧PFL,PFR,PRL,PRRが次式により算出される。
PFL=(FFL・GT )/(μ・bF )
PFR=(FFR・GT )/(μ・bF )
PRL=(FRL・GT )/(μ・bR )
PRR=(FRR・GT )/(μ・bR )
ただし、bF は前輪のブレーキファクタ、bR は後輪のブレーキファクタであり、それぞれ次式によって表される。
bF =2・AF ・(r/R)
bR =2・AR ・(r/R)
ただし、
AF :左右前輪22,24のブレーキのピストン断面積
AR :左右後輪38,40のブレーキのピストン断面積
r:ディスクロータ有効半径
R:タイヤ有効半径
【0023】
このように制動液圧PFL,PFR,PRL,PRRは車輪22,24,38,40の各接地荷重に基づいて決定され、これら制動液圧PFL,PFR,PRL,PRRをホイールシリンダ26,28,42,44に供給することにより、車輪22,24,38,40にそれぞれ得られる制動力は、車両全体として必要な制動力を4個の車輪22,24,38,40の接地荷重に応じた比率で配分した制動力であることとなる。
【0024】
上記式によって制動液圧PFL,PFR,PRL,PRRが求められることにより、実減速度Gが目標減速度GT の95%以下であって摩擦係数推定値μが減少させられれば、制動液圧Pが高められることとなる。この場合には車輪回転の抑制量が不足しているため、制動液圧Pが高く決定され、車輪回転の抑制量が大きくなるようにされるのである。また、実減速度Gが目標減速度GT の105%以上の場合には、車輪回転の抑制が過大なのであるから、摩擦係数推定値が増大させられて制動液圧Pが低く決定され、車輪回転の抑制量が小さくされる。
【0025】
そして、S9において、算出された制動液圧が各ホイールシリンダ26,28,42,44に供給されるように液圧制御弁58〜64のソレノイドの励磁電流の大きさが制御される。液圧センサ118〜124によって検出されるホイールシリンダ26,28,42,44に供給される液圧と設定された制動液圧Pとが比較され、制動液圧Pが得られるように電流がフィードバック制御されるのであり、4個の車輪22,24,38,40の各接地荷重に基づいて設定された制動液圧Pが供給されることにより、各車輪毎に最大限の制動力が得られ、制動距離が短縮される。
【0026】
このようにブレーキぺダル10の踏込み力に対応する目標減速度GT を得るために、実減速度Gの目標減速度GT に対する割合によって制動液圧Pの高さが変えられる。実減速度Gが目標減速度GT の95%以下である間はS6が実行される毎に摩擦係数推定値μが1%ずつ小さくされ、制動液圧Pが増大させられるのであり、実減速度Gが目標減速度GT の105%以上である間はS7が実行される毎に摩擦係数推定値μが1%ずつ大きくされ、制動液圧Pが減少させられる。そして、実減速度Gが目標減速度GT の95%より大きく、105%より小さくなれば摩擦係数推定値μは一定値に保たれ、実減速度Gが目標減速度GT と正確に一致しなくても、その範囲内では制動液圧Pが一定に保たれる。そのため、電磁液圧制御弁58〜64が増圧状態と減圧状態に頻繁に切り換えられることがなく、振動を生ずることなく車輪の回転が抑制される。
【0027】
S9においてはさらに、左右の前輪22,24の各ホイールシリンダ26,28に供給される制動液圧P FL ,P FR が、実際のヨーレイト(以下、実ヨーレイトと称する)γが目標ヨーレイトγ M に追従するように修正されるのであるが、この点については後述することとし、図1のフローチャートにおけるS1およびS2の改善について、図4〜図6に基づいて以下に説明する。
【0028】
この改善は、前記前後Gセンサ144により検出された実減速度Gを車体の路面に対する傾斜および路面の勾配に基づいて補正することである。前後Gセンサ144は、車両の左右方向の軸線まわりに回動する錘の回動角度および方向を検出することにより減速度を検出するセンサであるため、減速度が生じた場合の他、車体が路面に対して傾斜している場合および路面が傾斜している場合にも回動し、出力が得られる。そのため、前後Gセンサ144の出力値には減速度,路面の勾配角度および車体の傾斜角度が含まれ、車体や路面に傾斜がある場合には実際の減速度とは異なる値となり、この出力値をそのまま目標減速度GT と比較して制動液圧を決定すれば、ブレーキぺダル10の踏込み力に対応する減速度が得られないため、補正するのである。
【0029】
路面の勾配角度θは、図4に示す路面勾配角度演算用コンピュータ150によって演算される。このコンピュータ150には、車輪速センサ126〜132,車高センサ134〜140,前後Gセンサ144およびピッチレイトセンサ152が接続され、各検出値が入力されるようになっている。ピッチレイトセンサ152は、前記トヨタソアラ新型車解説書1991年5月3−126〜3−127頁に記載されているヨーレイトセンサと同様のセンサを、センサ軸が車体の左右方向の軸に平行となる姿勢で使用し、ピッチレイト、すなわち車体のその左右方向の軸線まわりの回動角速度ωを検出するものである。また、コンピュータ150のROMには図6に示す路面勾配角度演算ルーチンが格納されており、このルーチンに基づいて路面勾配角度θが演算され、車輪回転抑制用の前記制御装置100に供給される。
【0030】
路面勾配角度θの演算時には、まず、S121において車輪速,前後G,車高およびピッチレイトの各センサ126〜132,144,134〜140,152の出力値がそれぞれ読み込まれる。次いでS122が実行され、車速、すなわち車体の前後方向の移動速度である車体速度が一定であるか否かの判定が行われる。車体速度は、車輪速センサ126〜132の検出結果から取得される。前回S122の判定が行われたときの車体速度と、今回S122の判定が行われるときの車体速度とが比較され、今回の車体速度が前回の車体速度に対して設定範囲内にあれば一定であると判定されるのである。
【0031】
車体速度が一定の場合にはS122の判定がYESとなり、S123においてカウンタのカウント値Cが1増加させられた後、S124においてカウント値Cが設定値C0 以上であるか否かにより、車体速度が設定時間以上一定であったか否かが判定される。S124の判定は当初はNOであり、S129が実行され、ピッチレイトセンサ152の出力値に基づいて車体の前後方向の回動角度の変化量Δθが演算される。ピッチレイトセンサ152が検出するのは回動角速度ωであり、路面勾配角度演算ルーチンの1回の実行サイクルタイムΔtを掛けることにより変化量Δθが算出され、S130において路面勾配角度θにΔθが加えられる。このθについては後に説明する。
【0032】
車体速度がC0 時間一定であればS124の判定がYESとなり、S125において前後Gセンサ144の出力値から車体の前後方向の傾斜角度θA が算出される。車体速度が一定の場合には減速度は0であり、前後Gセンサ144の出力値は車体の前後方向の傾斜角度θA に対応した値となるため、前後方向傾斜角度θA を算出することができるのであり、この前後方向傾斜角度θA は車体の路面に対する傾斜角度と路面の勾配角度との和である。したがって、次いでS126において車高センサ134〜140の出力に基づいて路面に対する車体の相対傾斜角度θB が算出された後、S127において車体の前後方向傾斜角度θA から車体の相対傾斜角度θB を引くことにより、路面勾配角度θが求められる。
【0033】
車体速度が一定の間はS122〜S127が繰り返し実行され、路面勾配角度θが更新される。車体速度が一定でなくなればS122の判定がNOとなり、S128においてカウント値Cがリセットされた後、S129において車体の前後方向角度の変化量Δθが演算され、S130において路面勾配角度θに加えられ、この値が路面勾配角度θとされる。減速度が生じ、車体速度が一定でなくなれば、前後Gセンサ144の出力値には減速度が含まれることとなるため、S125〜S127の実行によっては路面勾配角度θを演算することはできない。したがって、車体速度が一定でない間は、ピッチレイトセンサ152の検出値に基づいて得られる車体の前後方向の回動角度の変化量Δθが求められ、先に求められている路面勾配角度θに加えられることにより、現在の路面勾配角度θが求められるのである。
【0034】
車体速度が一定でも、一定でなくても、ピッチレイトセンサ152が検出する車体の前後方向の回動角速度ωにより、車体の前後方向の回動角度の変化量Δθを求め、路面勾配角度θを求めることはできるのであるが、ピッチレイトセンサ152の出力値のみに基づいて路面勾配角度θを求めれば、ピッチレイトセンサ152の出力値の誤差が累積して路面勾配角度θに含まれることとなる。それに対し、本実施例におけるように車体速度が一定の間は前後Gセンサ144の出力値と車体傾斜角度とに基づいて路面勾配角度θを求め、車体速度が一定でなくなったときにピッチレイトセンサ152の出力値に基づいて路面勾配角度θを求めるようにすれば、ピッチレイトセンサ152の検出誤差の累積が車体速度が一定になる毎に解消されることとなり、路面勾配角度を精度良く求めることができる。
【0035】
このように路面勾配角度演算ルーチンにおいては、車体速度が一定の間はS125〜S127の実行により、一定でない間はS129およびS130の実行により路面勾配角度θが演算されるのであり、その演算結果は制御装置100のコンピュータに出力される。制御装置100のコンピュータのROMには図5に示す車輪回転抑制ルーチンが格納されており、S101においてブレーキぺダルの踏込み力,車体の実減速度G,路面勾配角度θおよび車高が読み込まれ、S102において目標減速度GT が演算された後、S103において実減速度Gが路面勾配角度θおよび車体傾斜角度θB に基づいて補正される。路面の勾配および車体の路面に対する傾斜の影響が除去されるのであり、S104〜S110においては真の実減速度Gに基づいてホイールシリンダの制動液圧Pが決定されることとなり、車両は正確にブレーキぺダル10の踏力に応じた減速度で制動されることとなる。
【0036】
最後に、前記S9または上記S110における左右の前輪22,24の各ホイールシリンダ26,28に供給される制動液圧P FL ,P FR の補正について説明する。この補正は、前述のように、実ヨーレイトγを目標ヨーレイトγ M に追従させるために行われるものである。目標ヨーレイトγM は運転者の操舵操作によって決まるが、左右路面の摩擦係数の差等、何らかの事情により実ヨーレイトγが目標ヨーレイトγM から外れることがあり、操縦性が低下する。そのため、実ヨーレイトγが目標ヨーレイトγM に追従し、できる限り運転者の意図通りに車両が走行するようにされるのである。
【0037】
【0038】
左右の前輪22,24の各ホイールシリンダ26,28に供給される制動液圧PFL,PFRの制御によって、実ヨーレイトγを目標ヨーレイトγM に追従させるためには、左前輪22の制動力と右前輪24の制動力とに、目標ヨーレイトγM と実ヨーレイトγとの差に対応する差ΔBY を生じさせればよい。左右車輪のうち少なくとも一方の制動力を変えれば、実ヨーレイトγを変えることができるが、そのヨーレイトの変化量は制動力の変更量にほぼ比例するため、制動力差ΔBY は次式に従って求められる。
ΔBY =KY (γM −γ)
ただし、KY は係数である。
【0039】
また、目標ヨーレイトγM は次式に従って求められる。
γM ={1/(1+T・s)}・{1/(1+Kh ・V2 )}・θ/NG ・V/L
ただし、
T:時定数
s:ラプラス演算子
Kh :スタビリティファクタ
NG :ステアリングギヤ比
θ:操舵角
V:車体速度(車速)
L:ホイールベース
【0040】
前輪22,24がステアリングホイールの操舵角θに対して舵角α0 回動するとき、車両の回動角速度βは、β=(V・α0 )/Lで表される。前輪22,24が操舵輪であり、後輪38,40が非操舵輪であって、車両が速度Vで走行する際に前輪22,24が舵角α0 だけ回動した場合、車両の進行方向と直角な方向に生ずる速度成分はほぼV・α0 であり、後輪38,40には車両の進行方向と直角な方向の成分は生じないため、L・β=V・α0 となって、β=(V・α0 )/Lが得られる。また、車両を旋回させるべくステアリングホイールが操舵されるとき、その操舵角θはギヤ列によって減速されて前輪22,24に伝達される。そのため、ギヤ比をNG とすれば、α0 =θ/NG となる。
【0041】
車両がごく低速で旋回する場合には、旋回半径は舵角α0 で決まるが、速度Vで旋回する場合にはスタビリティファクタKh の影響を受ける。スタビリティファクタKh は車両の設計仕様によって決まるものであり、車両が速度Vで旋回する場合にごく低速で走行する場合と同じ旋回半径となるようにするために必要な舵角をαとすれば、α,α0 の関係は次式で表される。
α/α0 =1+Kh ・V2
換言すれば、現実の舵角がα0 である場合に、実質的な舵角αは、α0 /(1+Kh ・V2 )であることとなるのである。
【0042】
β=(V・α0 )/Lであることから、α0 をα0 /(1+Kh ・V2 )に置き換えるとともに、α0 にθ/NG を代入すれば、β=V/L・θ/NG ・{1/(1+Kh ・V2 )}が得られる。そして、ステアリングホイールの操舵角θを入力とし、車両の回動角速度βを出力とする系は一次遅れ系と見做すことができるため、β={1/(1+T・s)}・{1/(1+Kh ・V2 )}・θ/NG ・V/Lが得られる。本実施例においては、この回動角速度βが目標ヨーレイトγM とされており、目標ヨーレイトγM が前記式で求められるのである。
【0043】
このように目標ヨーレイトγM が求められ、その目標ヨーレイトγM と実ヨーレイトγとから左右の制動力差ΔBY が求められたならば、制動力差ΔBY を設けるために必要な左右の液圧差ΔPY が次式に従って求められる。
ΔPY =ΔBY /(μF ・bF )
そして、制動液圧PFL,PFRは次式に従って求められ、PRL,PRR が下記のように補正される。
PFL=FFL・GT /μ・bF +ΔPY /2
PFR=FFR・GT /μ・bF −ΔPY /2
P RL =F RL ・G T /μ・b R
P RR =F RR ・G T /μ・b R
前輪22,24の制動液圧P FL ,P FR については、図1〜図3の実施例と同様に車輪の接地荷重に応じて決まる制御液圧に、実ヨーレイトγを目標ヨーレイトγ N に追従させるための修正が施されるのである。
なお、ΔPの符号は、反時計方向のヨーレイトを正とした場合に+ΔPが正の値となるように定められる。
【0044】
上記のように補正された制動液圧に従って車輪の回転が抑制されれば、左前輪22の制動力と右前輪24の制動力とに、実ヨーレイトγを目標ヨーレイトγM に追従させるための差が生じ、車両は目標ヨーレイトγM が得られるように旋回することとなる。
【0045】
なお、車輪のスリップ率と摩擦力との間には、スリップ率がある範囲のときに最大の摩擦力が得られ、その範囲に到達するまではスリップ率の増大に対して摩擦力が比較的急速に増大し、その範囲を越えた後はスリップ率の増大に対して摩擦力が緩やかに減少する関係がある。
したがって、スリップ率の増大に対して摩擦力が比較的急速に増大する領域においては、液圧差ΔPY を左車輪と右車輪とに1/2ずつ配分して目的とするヨーレイトを生じさせることができるのであるが、スリップ率の増大に対して摩擦力が殆ど変化しない領域や、摩擦力が緩やかに減少する領域では、制動液圧を増大させても制動力は殆ど増大せず、あるいは逆に減少してしまうこととなる。
【0046】
そして、スリップ率の増大に対して摩擦力が比較的急速に増大する領域においては、ブレーキ操作力を大きくすれば制動距離を短縮し得るため、各車輪の接地荷重に応じて制動液圧を決定することによるメリットは、制動距離を短縮し得るということよりも、できる限り各車輪のスリップ率を低くしてコーナリングフォースを確保し得るということである。その上で、実ヨーレイトが目標ヨーレイトに追従するように制動液圧が制御されるのであるから、本実施例のブレーキ装置は、制動液圧に対して路面の摩擦係数が高い領域で使用される場合には、走行安定性を向上させ得るブレーキ装置ということになる。
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、踏力検出装置114がブレーキ操作量検出手段に相当し、前後Gセンサ144が実減速度取得手段に、ヨーレイトセンサ160が実ヨーレイト取得手段に、操舵角センサ162が操舵操作量取得手段にそれぞれ相当する。そして、車輪速センサ126〜132と、制御装置100の車輪速センサ126〜132の検出結果に基づいて車体速度を 取得する部分とにより、実車速取得手段が構成されている。
さらに、制御装置100のS8、すなわち左右の前輪22,24および後輪38,40の接地荷重を演算するステップを実行する部分により接地荷重取得手段が構成され、S9の一部、すなわち接地荷重に応じて各車輪22,24,38,40の制動液圧P FL ,P FR ,P RL ,P RR を決定する部分を実行する部分によりブレーキ液圧決定手段が構成され、それら接地荷重取得手段およびブレーキ液圧決定手段により制動力配分決定手段が構成されている。また、制御装置100のS9の一部、すなわち制動液圧Pのフィードバック制御を行う部分を実行する部分により、液圧制御手段ないし制御手段が構成されている。また、制御装置100のS2ないしS7のステップを実行する部分により、摩擦係数推定値修正手段が構成されている。また、制御装置100の、接地荷重に応じて決まる前輪22,24の制動液圧PFL,PFRに、実ヨーレイトγを目標ヨーレイトγM に追従させるための補正を施す部分により、補正手段が構成されている。
【0047】
上記実施例のブレーキ装置において真に制動距離短縮効果が得られるのは、スリップ率の増大に対して摩擦力が殆ど変化せず、あるいは緩やかに低下する領域においてであるが、この領域においては制動液圧を増大させても制動力を増大させることはできない。この観点からすれば、実ヨーレイトγを目標ヨーレイトγM に追従させるための液圧差ΔPY の左車輪と右車輪への配分を1/2ずつとはせず、一方を−3ΔPY /4、他方を+ΔPY /4とし、あるいは一方を−ΔPY 、他方を0とする等、他の配分比率とすることが推奨される。
【0048】
また、上記実施例においては、左右前輪22,24について、実ヨーレイトが目標ヨーレイトに追従するように左右の制動力差が設けられるようになっていたが、左右後輪38,40について制動力差を設けてもよく、4輪全部について左右の制動力差を設けてもよい。
【0049】
【0050】
また、上記各実施例においてはそれぞれ、車輪の接地荷重が前後加速度GX および横加速度GY に基づいて算出されるようになっていたが、各車輪毎に荷重検出装置を設けて検出してもよい。
【0051】
さらに、上記各実施例ではそれぞれ、電気・マニュアル2系統式のブレーキ装置に本発明を適用した場合を例に取って説明したが、本発明は、電気制御系統のみのブレーキ装置等、他のブレーキ装置にも適用することができる。
【0052】
その他、特許請求の範囲を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した態様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である車両用液圧ブレーキ装置の制御装置の主体を成すコンピュータのROMに格納された車輪回転抑制ルーチンを示すフローチャートである。
【図2】上記液圧ブレーキ装置の系統図である。
【図3】上記ROMに格納されたブレーキぺダルの踏込み力と目標減速度との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の別の実施例である車両用液圧ブレーキ装置の路面勾配角度演算用コンピュータを車輪回転抑制用の制御装置と共に示す図である。
【図5】図4に示す制御装置の主体を成すコンピュータのROMに格納された車輪回転抑制ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】上記路面勾配角度演算用コンピュータのROMに格納された路面勾配角度演算ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ブレーキペダル
22 左前輪
24 右前輪
26 フロントホイールシリンダ
28 フロントホイールシリンダ
38 左後輪
40 右後輪
42 リヤホイールシリンダ
44 リヤホイールシリンダ
58 液圧制御弁
60 液圧制御弁
62 液圧制御弁
64 液圧制御弁
70 アキュムレータ
72 リザーバ
80 ポンプ
100 制御装置
150 路面勾配角度演算用コンピュータ
160 ヨーレイトセンサ
Claims (2)
- 運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
それぞれホイールシリンダと摩擦材とを備えて、4個の車輪の各々の回転を抑制する4個の摩擦ブレーキと、
前記ブレーキ操作部材の操作量に基づいて決まる車両全体として必要な制動力を、前記4個の車輪の各々に、それら車輪の各々の接地荷重に応じた比率で配分し、それら4個の車輪の各々の摩擦ブレーキの各ブレーキシリンダの目標液圧を、前記配分した制動力の各々が得られるとともに、それら摩擦ブレーキの摩擦材の摩擦係数の推定値が小さいほど大きい液圧に決定するブレーキ液圧決定手段と、
車両の実際の減速度である実減速度を取得する実減速度取得手段と、
その実減速度取得手段により取得された実減速度の前記ブレーキ操作部材の操作量に基づいて決まる目標減速度からのずれが設定範囲内である間は前記摩擦係数の推定値を修正せず、設定範囲から外れている間は設定率での修正を継続し、実減速度を目標減速度に近づける摩擦係数推定値修正手段と、
運転者による操舵操作量を取得する操舵操作量取得手段と、
前記ブレーキ液圧決定手段により決定された前記4個の摩擦ブレーキのブレーキシリンダの各目標液圧を、左右前輪と左右後輪との少なくとも一方の制動力差により、車両の実際のヨーレイトを、前記操舵操作量取得手段により取得された操舵操作量と車両の実際の車速とに基づいて決まる目標ヨーレイトに近づける目標液圧に補正する補正手段と、
前記4個の摩擦ブレーキのブレーキシリンダの液圧を、少なくとも、前記ブレーキ液圧決定手段により決定されるとともに前記補正手段により補正された目標液圧に基づいて、制御する液圧制御手段と
を含むことを特徴とする車両用ブレーキ装置。 - 車両の運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
それぞれホイールシリンダと摩擦材とを備えて、4個の車輪の各々の回転を抑制する4個の摩擦ブレーキと、
前記ブレーキ操作部材の操作量であるブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、
前記車両の実際の走行速度である実車速を取得する実車速取得手段と、
前記車両の実際の減速度である実減速度を取得する実減速度取得手段と、
前記車両の実際のヨーレイトである実ヨーレイトを取得する実ヨーレイト取得手段と、
前記運転者による操舵操作量を取得する操舵操作量取得手段と、
前記4個の車輪の各々の接地荷重を取得する接地荷重取得手段と、
前記ブレーキ操作量検出手段により検出されたブレーキ操作量に基づいて決まる前記車両の目標減速度と、前記接地荷重取得手段により取得された各車輪の接地荷重と、前記4個の摩擦ブレーキの各々のブレーキファクタと、前記摩擦材の摩擦係数の推定値とに基づいて、前記4個の摩擦ブレーキの各々のブレーキシリンダの目標液圧を、それら摩擦ブレーキの各々に前記各車輪の接地荷重に応じた大きさの制動力が得られるとともに、それら摩擦ブレーキの摩擦材の摩擦係数の推定値が小さいほど大きくなる液圧に決定するブレーキ液圧決定手段と、
前記実減速度取得手段により取得された実減速度の前記目標減速度からのずれが設定範囲内である間は前記摩擦係数の推定値を修正せず、設定範囲から外れている間は設定率での修正を継続し、実減速度を目標減速度に近づける摩擦係数推定値修正手段と、
前記ブレーキ液圧決定手段により決定された前記4個の摩擦ブレーキのブレーキシリンダの目標液圧を、左右前輪と左右後輪との少なくとも一方の制動力差により、前記実ヨーレイト取得手段により取得された実ヨーレイトを、前記操舵操作量取得手段により取得された操舵操作量と前記実車速取得手段により取得された実車速とに基づいて決まる目標ヨーレイトに近づける目標液圧に補正する補正手段と、
前記4個の摩擦ブレーキのブレーキシリンダの液圧を、少なくとも、前記ブレーキ液圧決定手段により決定されるとともに前記補正手段により補正された目標液圧に基づいて、制御する液圧制御手段と
を含むことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
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JPH0550914A (ja) | 1993-03-02 |
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