JP3508492B2 - ブレーキ液圧制御装置 - Google Patents

ブレーキ液圧制御装置

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JP3508492B2 JP21790097A JP21790097A JP3508492B2 JP 3508492 B2 JP3508492 B2 JP 3508492B2 JP 21790097 A JP21790097 A JP 21790097A JP 21790097 A JP21790097 A JP 21790097A JP 3508492 B2 JP3508492 B2 JP 3508492B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブレーキ液圧制御
装置に関するものであり、特に、ホイールシリンダ液圧
の推定に関するものである。
【0002】
【従来の技術】特開平4─243658号公報には、液
圧制御弁と、その液圧制御弁を制御することによりホイ
ールシリンダ液圧を制御する制御弁制御手段とを含むブ
レーキ液圧制御装置が記載されている。液圧制御弁は、
ホイールシリンダへ高圧源からの作動液の流入を許容し
たり、ホイールシリンダの作動液のリザーバへの流出を
許容したりするものであり、この液圧制御弁の制御によ
り、運転者によるブレーキ操作部材の操作力に応じた減
速度が得られるように、ホイールシリンダ液圧が制御さ
れる。本ブレーキ液圧制御装置には、ホイールシリンダ
の液圧を直接検出するホイールシリンダ液圧検出装置が
設けられており、上述の液圧制御弁が、ホイールシリン
ダ液圧検出装置によって検出された検出ホイールシリン
ダ液圧に基づいて制御される。
【0003】また、上記従来のブレーキ液圧制御装置に
は、上述のホイールシリンダ液圧検出装置によって検出
された検出ホイールシリンダ液圧が、マスタシリンダ液
圧との関係において定まる通常範囲内にない場合には、
当該ブレーキ液圧制御装置に異常が生じたとする異常検
出手段が設けられていた。通常制動時には、ホイールシ
リンダ液圧は、マスタシリンダの液圧に応じて定まる通
常範囲内の大きさに制御されるはずである。したがっ
て、検出ホイールシリンダ液圧がこの通常範囲内にない
場合には、ブレーキ液圧制御装置に異常が生じたとする
ことができるのである。
【0004】上述のように、従来のブレーキ液圧制御装
置においては、ホイールシリンダ液圧はホイールシリン
ダ液圧検出装置によって検出されるのであり、推定によ
り取得されるわけではない。そのため、ホイールシリン
ダ液圧検出装置が不可欠であり、コストが高くなるとい
う問題があった。また、従来のブレーキ液圧制御装置に
おいては、異常が生じたか否かが、ホイールシリンダ液
圧検出装置によって検出されたホイールシリンダ液圧の
マスタシリンダ液圧との関係を利用して検出されるが、
これらは無関係ではないが、本来等しいわけではない。
そのため、異常が生じたか否かを検出するための通常範
囲を厳密に設定することが困難であり、検出精度を高く
することが困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題,解決手段,作用および
効果】そこで、本発明の課題は、ブレーキ液圧制御装置
のコストダウンを図ることであり、具体的には、ホイー
ルシリンダ液圧を推定により取得することによってホイ
ールシリンダ液圧を検出する液圧検出装置を不要とする
ことである。この課題は、以下に記載のブレーキ液圧検
出装置により解決される。なお、以下の説明において、
本発明の各態様をそれぞれ項に分け、項番号を付し、必
要に応じて他の項の番号を引用して請求項と同じ形式で
記載する。各項に記載の特徴を組み合わせて採用するこ
との可能性を明示するためである。 (1)高圧源とホイールシリンダとの間に設けられ、高圧
源からホイールシリンダへの作動液の流入を許容する増
圧許容状態と、作動液の流入を阻止する増圧阻止状態と
に切り換え可能な増圧制御弁であって、付与される電力
に応じた大きさの電磁駆動力を発生させる電気的駆動装
置を含み、当該増圧制御弁の高圧側の液圧とホイールシ
リンダ側の液圧との差である増圧時液圧差が、前記電気
的駆動装置に付与される電力に応じた大きさとなるまで
の間、前記増圧許容状態に保たれるものと、その増圧制
御弁を制御することによりホイールシリンダ液圧を制御
する増圧弁制御手段とを含むブレーキ液圧制御装置であ
って、前記増圧弁制御手段が、(a)前記ホイールシリン
ダ液圧の初期状態と、(b)前記増圧時液圧差と前記電気
的駆動装置に付与された電力とに基づいて取得された
記ホイールシリンダ液圧が初期状態にあった初期時点か
ら現時点までにホイールシリンダに流入した作動液の流
入積算量と、(c)前記ホイールシリンダにおける有効作
動液量と液圧との関係とに基づいて、前記ホイールシリ
ンダの液圧を推定するホイールシリンダ液圧推定手段を
含むことを特徴とするブレーキ液圧制御装置(請求項
1)。ホイールシリンダ液圧の初期状態と、初期時点か
ら現時点までに、ホイールシリンダ液圧が単調に増大さ
せられる場合における流入積算量とがわかれば、現時点
においてホイールシリンダ内に存在する作動液量がわか
り、それに基づいてホイールシリンダ液圧を推定するこ
とができる。ホイールシリンダに存在する作動液量とホ
イールシリンダ液圧との間には、図15に示すように、
予め定められた関係があるため、作動液量に基づいてホ
イールシリンダ液圧を推定することが可能なのである。
ホイールシリンダ液圧を推定することができれば、ホイ
ールシリンダ液圧を直接検出するホイールシリンダ液圧
検出装置が不要となり、その分、コストダウンを図るこ
とが可能となる。ホイールシリンダ液圧の初期状態は、
例えば、ホイールシリンダ液圧がほぼ大気圧にある状態
とすることができる。ホイールシリンダ液圧がほぼ大気
圧にある状態は、ブレーキが解除された状態(ブレーキ
非作用状態)である。この状態でもホイールシリンダ内
には一定量の作動液が存在するが、この作動液はホイー
ルシリンダの作動とは無関係な死作動液とでも称すべき
ものであるため無視し、この状態の作動液量を0と考え
ることとする。このように考えれば、初期時点から現時
点までの間、ホイールシリンダ液圧が単調に増大させら
れる場合には、流入積算量を現時点においてホイールシ
リンダ内に存在する作動液量とすることができる。ホイ
ールシリンダ液圧の初期状態を、ブレーキ作用状態にお
いてホイールシリンダ液圧が取得された時点における状
態とすることもできる。ホイールシリンダ液圧は、例え
ば、車両の減速度等に基づく推定により取得することが
でき、そのホイールシリンダ液圧に基づいて作動液量を
取得することができる。この初期状態における作動液量
に、初期時点から現時点までの流入積算量を加えれば、
現時点においてホイールシリンダに存在する作動液量を
取得することができ、液圧を推定することができる。ま
た、流入積算量に対応するホイールシリンダ液圧変化量
(増加量)を求め、その液圧変化量と初期状態における
液圧とを加えれば、現時点における液圧を取得すること
ができる。このように、初期時点は、ホイールシリンダ
液圧やホイールシリンダに存在する作動液量を取得でき
る時点であればよく、ブレーキ解除時とすることは不可
欠ではない。 (2)前記ホイールシリンダ液圧推定手段が当該ホイー
ルシリンダ液圧推定手段によって推定された推定ホイー
ルシリンダ液圧を前記ホイールシリンダ側の液圧として
前記増圧時液圧差を取得する液圧差取得手段を含む(1)
項に記載のブレーキ液圧制御装置(請求項4)。増圧制
御弁が、上述のように、増圧時液圧差が供給電力に応じ
た大きさである間、増圧許容状態に保たれるものである
場合には、増圧時液圧差と供給電力とに基づいて増圧制
御弁を流れる作動液の流量(ホイールシリンダへの流入
流量)を取得することができ、この流量を時間で積分す
ることによって流入積算量を取得することができる。増
圧時液圧差は、高圧源側の液圧とホイールシリンダ側の
液圧との差であるが、ホイールシリンダ側の液圧として
は、ホイールシリンダ側液圧検出装置によって検出され
る検出ホイールシリンダ側液圧ではなく、推定ホイール
シリンダ液圧が使用される。また、高圧源側の液圧は、
増圧制御弁の高圧源側に定液圧源が接続されている場合
にはその定液圧源の液圧であり、マスタシリンダが接続
されている場合にはマスタシリンダ液圧である。高圧源
が定液圧源である場合には、その定液圧源の液圧を検出
する装置は不要であるのが普通であるが、定液圧源であ
っても許容液圧変化範囲が広い場合には、定液圧源液圧
検出装置を設けることが望ましい。マスタシリンダ液圧
は、マスタシリンダ液圧検出装置によって直接検出する
ことも、ブレーキ操作部材操作力検出装置によって操作
力を検出し、その検出操作力に基づいてマスタシリンダ
液圧を取得することも可能である。これらマスタシリン
ダ液圧検出装置やブレーキ操作力検出装置(踏力セン
サ)を設ける場合でも、これらは前述の従来のブレーキ
液圧制御装置に設けられていたものであるから、装置コ
ストに変化はなく、ホイールシリンダ液圧検出装置が不
要となる分コストダウンを図り得ることとなる。増圧制
御弁を、例えば、弁子および弁座と、弁子を弁座に着座
させる方向に付勢するスプリングとを備えたシーティン
グ弁を含むものとし、前述の電気的駆動装置を、弁子を
弁座から離間させる向きに供給電力に応じた大きさの磁
気的な駆動力(電磁駆動力と称する)を発生させる装置
とすることができる。弁子には、増圧時液圧差に応じた
差圧作用力が作用するが、この差圧作用力と電磁駆動力
との和が、スプリングの付勢力より大きい間、弁子が弁
座から離間させられ、ホイールシリンダへの作動液の流
入が許容される。また、弁子の弁座からの離間量(バル
ブストロークと称する)は、差圧作用力(増圧時液圧
差)が大きほど、また、電磁駆動力(電力)が大きいほ
ど大きくなる。そして、バルブストロークが大きいほ
ど、流路面積が大きくなり、流入流量が大きくなる。流
入積算量が流入流量に基づいて取得され、流入流量がバ
ルブストロークに基づいて取得されるため、流入積算量
取得手段には、流入流量取得手段,バルブストローク取
得手段等が含まれると考えることができる。(3)前記増圧制御弁が、前記増圧時液圧差と前記電気的
駆動装置に付与された電力とに基づいて決まる開口面積
で作動液の流れを許容するものであり、前記ホイールシ
リンダ液圧推定手段が、前記開口面積と前記増圧制御弁
が開状態にある時間とに基づいて、その開状態にある間
に、前記ホイールシリンダに流入した作動液の流入積算
量を取得する手段を含む(1)項または(2)項に記載のブレ
ーキ液圧制御装置。(請求項2)(4)前記増圧制御弁が、弁子および弁座と、弁子を弁座
に着座させる方向に付勢するスプリングとを備えたシー
ティング弁を含み、前記電気的駆動装置が、前記弁子を
前記弁座から離間させる向きに前記電磁駆動力を発生さ
せるものであり、前記増圧制御弁が、前記増圧時液圧差
に応じた差圧作用力が前記弁子にそれを前記弁座から離
間させる向きに作用し、この差圧作用力と前記電磁駆動
力との和が、前記スプリングの付勢力より大きい間、前
記弁子が前記弁座から離間させられる状態で設けられた
ものであり、前記ホイールシリンダ液圧推定手段が、前
記弁子の前記弁座からの離間量に基づいて前記増圧制御
弁を経て前記ホイールシリンダに流入した作動液の流入
積算量を取得する手段を含む(1)項ないし(3)項のいずれ
か1つに記載のブレーキ液圧制御装置(請求項3)。 (5)前記ホイールシリンダ液圧推定手段が、前記ホイー
ルシリンダの液圧がファーストフィルの完了に対応する
大きさである設定液圧より小さい間、前記ホイールシリ
ンダの液圧の推定を行うものである(1)項ないし(4)項の
いずれか1つに記載のブレーキ液圧制御装置(請求項
5)。 (6) 高圧源と、リザーバと、ホイールシリンダとの間に
設けられ、高圧源からホイールシリンダへの作動液の供
給を許容する増圧状態と、ホイールシリンダからリザー
バへの作動液の流出を許容する減圧状態とに制御可能な
液圧制御弁装置と、その液圧制御弁装置を制御すること
によりホイールシリンダ液圧を制御する弁装置制御手段
とを含むブレーキ液圧制御装置であって、前記弁装置制
御手段が、前記ホイールシリンダ液圧の初期状態と、ホ
イールシリンダ液圧が初期状態にあった初期時点から現
時点までにホイールシリンダに流入した作動液の流入積
算量と、初期時点から現時点までにホイールシリンダか
ら流出した作動液の流出積算量との少なくとも一方に基
づいてホイールシリンダの液圧を推定するホイールシリ
ンダ液圧推定手段を含むブレーキ液圧制御装置。液圧制
御弁装置は、増圧制御弁と、ホイールシリンダとリザー
バとの間に設けられ、ホイールシリンダからリザーバへ
の作動液の流出を許容する減圧許容状態と、作動液の流
出を阻止する減圧阻止状態とに切り換え可能な減圧制御
弁とを含むものとしたり、(1) 項に記載の増圧制御弁
と、付与される電力に応じた大きさの駆動力を発生させ
る電気的駆動装置を含み、減圧制御弁よりホイールシリ
ンダ側の液圧とリザーバ側の液圧との差である減圧時液
圧差が、電気的駆動装置に付与される電力に応じた大き
さである間減圧許容状態に保たれる減圧制御弁とを含む
ものとしたりすることができる。ホイールシリンダ液圧
推定手段は、上述のように、初期時点から現時点までの
間にホイールシリンダ液圧が単調に増圧させられる場合
には、ホイールシリンダ液圧の初期状態と流入積算量と
に基づいて推定され、初期時点から現時点までの間に、
ホイールシリンダ液圧が単純に減圧させられる場合に
は、初期状態と流出積算量とに基づいて推定することが
できる。ここで、初期時点は減圧が必要となった時点で
あり、その初期時点におけるホイールシリンダ液圧の初
期値は車両減速度や流入積算量等に基づいて取得するこ
とが可能である。また、減圧時液圧差は、減圧制御弁よ
りホイールシリンダ側の液圧とリザーバ側の液圧との差
であるが、リザーバ側の液圧はほぼ大気圧であるのが普
通であり、その場合には、ほぼホイールシリンダ側の液
圧と同じ大きさとなる。ホイールシリンダ側の液圧は検
出ホイールシリンダ側液圧でなく推定ホイールシリンダ
液圧とすることもできる。本項に記載のブレーキ液圧制
御装置においては、推定ホイールシリンダ液圧に基づい
て液圧制御弁装置を制御することの他、リザーバに存在
する作動液量を推定することもできる。ホイールシリン
ダから流出した作動液の殆どすべてがリザーバに供給さ
れる場合には、流出積算量とリザーバ液量とがほぼ同じ
であるとすることができる。この場合には、当該ブレー
キ液圧制御装置にリザーバ液量推定手段が含まれること
になる。また、リザーバ液量がリザーバの容量より大き
くなれば、リザーバおよびその周辺の液通路において作
動液漏れが生じたと検出することができ、この場合に
は、作動液漏れ検出手段が含まれることになる。
【0006】本発明の別の課題は、ブレーキ液圧制御装
置に異常が生じたか否かの検出精度を向上させることで
あり、具体的には、推定ホイールシリンダ液圧を利用し
て検出精度を向上させることである。この課題は、下記
態様のブレーキ液圧制御装置によって解決することがで
きる。(7) 当該ブレーキ液圧制御装置が、さらに、前記増圧制
御弁より前記ホイールシリンダの側の液圧を検出するホ
イールシリンダ側液圧検出装置と、そのホイールシリン
ダ側液圧検出装置によって検出された検出液圧に基づい
てホイールシリンダ液圧を取得する検出液圧依拠ホイー
ルシリンダ液圧取得手段と、その検出液圧依拠ホイール
シリンダ液圧取得手段によって取得された検出液圧依拠
ホイールシリンダ液圧と、前記ホイールシリンダ液圧推
定手段によって推定された推定ホイールシリンダ液圧と
の差が設定範囲外である場合に、当該ブレーキ液圧制御
装置に異常が生じたとする異常検出手段とを含むことを
特徴とする(1) 項ないし(6) 項のいずれか1つに記載の
ブレーキ液圧制御装置(請求項)。検出液圧依拠ホイ
ールシリンダ液圧取得手段によって取得されるホイール
シリンダ液圧は、ホイールシリンダ側液圧検出装置によ
って検出された検出ホイールシリンダ側液圧としても、
検出ホイールシリンダ側液圧と実際のホイールシリンダ
液圧との関係を予め求めておき、その関係に従って取得
された液圧としてもよい。これら検出ホイールシリンダ
側液圧と実際のホイールシリンダ液圧との関係の一例を
図16に示す。この場合には、ホイールシリンダ側液圧
検出装置とホイールシリンダとの間の作動液の伝達特性
を考慮して取得されることになり、このように取得され
たホイールシリンダ液圧を伝達特性対応検出液圧依拠ホ
イールシリンダ液圧と称することができる。いずれにし
ても、検出液圧依拠ホイールシリンダ側液圧取得手段に
よって取得された検出液圧依拠ホイールシリンダ液圧
と、推定ホイールシリンダ液圧とは、ほぼ同じ大きさで
あるはずである。したがって、これらの差が設定範囲内
にない場合は、ブレーキ液圧制御装置に異常が生じたと
することは妥当なことである。このように、ほぼ同じ大
きさであるべき液圧値同士を比較することにより異常か
否かが検出されるため、従来のブレーキ液圧制御装置に
おけるようにホイールシリンダ液圧とマスタシリンダ液
圧との関係を利用して異常か否かが検出される場合に比
較して、検出精度を向上させることができる。ブレーキ
液圧制御装置に生じる異常としては、増圧制御弁,増圧
弁制御手段,ホイールシリンダ液圧推定手段,ホイール
シリンダ側液圧検出装置等の異常がある。これらの異常
のうち、ホイールシリンダ側液圧検出装置の異常が他の
異常に比較して生じ易い場合には、異常がホイールシリ
ンダ側液圧検出装置に生じた可能性が高いとすることが
でき、その場合には、異常検出手段が液圧検出装置異常
検出手段であることになる。また、ブレーキ液圧制御装
置に異常が生じたとされた場合は、増圧制御弁の制御を
終了させることが望ましいが、その異常がホイールシリ
ンダ側液圧検出装置に生じたとされた場合には、増圧制
御弁の制御を継続させることができる。ホイールシリン
ダ側液圧検出装置によって検出ホイールシリンダ側液圧
が検出されなくても、増圧時液圧差を取得し得、ホイー
ルシリンダ液圧を推定することができるからである。ま
た、本項に記載のブレーキ液圧制御装置を含む液圧制動
装置と回生制動装置とを備えた車両用制動装置において
は、ホイールシリンダ側液圧検出装置の異常が検出され
ても、増圧制御弁の制御を継続させることができるた
め、回生制動を終了させる必要がなくなる。その結果、
車輪の運動エネルギの無駄な放出を抑制し得る。(8) 前記検出液圧依拠ホイールシリンダ液圧取得手段
が、前記ホイールシリンダ側液圧検出装置によって検出
された検出液圧が設定液圧より小さい場合に、ホイール
シリンダ側液圧検出装置とホイールシリンダとの間の作
動液の伝達特性に基づいて取得された伝達特性対応検出
液圧依拠ホイールシリンダ液圧を検出液圧依拠ホイール
シリンダ液圧とし、設定液圧以上の場合に、検出液圧を
検出液圧依拠ホイールシリンダ液圧とする(7) 項に記載
のブレーキ液圧制御装置。検出ホイールシリンダ側液圧
が、例えば、ファーストフィルに対応する大きさである
設定液圧より小さい場合には、一般に増圧制御弁とホイ
ールシリンダとを接続する液通路を流れる作動液量が比
較的多く、作動液の流路抵抗における液圧損失が大きく
なるため、ホイールシリンダ側液圧検出手段によって検
出された検出ホイールシリンダ側液圧と実際のホイール
シリンダ液圧との差が大きくなる。それにより、検出ホ
イールシリンダ側液圧と推定ホイールシリンダ液圧との
差が適正範囲を越え、ブレーキ液圧制御装置が正常であ
るにも係わらず異常であると誤検出されるおそれがあ
る。この場合には、推定ホイールシリンダ液圧を検出ホ
イールシリンダ側液圧と比較することは適当ではなく、
伝達特性対応検出液圧依拠ホイールシリンダ液圧と比較
する方が望ましい。それに対して、ファーストフィルに
対応する液圧以上の場合には、一般に増圧制御弁とホイ
ールシリンダとを接続する液通路を流れる作動液量が比
較的少なく、流路抵抗に起因する液圧の損失も小さい。
そのため、検出ホイールシリンダ側液圧と推定ホイール
シリンダ液圧とを比較することは妥当である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態である
ブレーキ液圧制御装置を備えた液圧ブレーキ装置を図面
に基づいて説明する。図1に示す液圧ブレーキ装置は、
駆動源として内燃機関と電動モータとを共に含むハイブ
リッド車両に用いられるものである。本実施形態のハイ
ブリッド車両の制動は、本液圧ブレーキ装置による制動
と、図示しない回生制動システムによる回生制動とによ
って行われる。回生制動システムは、上記電動モータを
発電機として機能させ、それによって発生させられた電
気エネルギを蓄電装置に蓄積することによって、車両を
制動するシステムである。電動モータの回転軸が外部か
らの力によって強制的に回転させられる際に、電動モー
タに発生する起電力により蓄電装置を充電すれば、電動
モータが上記外部の力に対して負荷となり、制動力が発
生する。制動中の車両の運動エネルギの一部が電気エネ
ルギに変換され、蓄電装置内に蓄えられるのであり、こ
のことによって車両を制動し得るのみならず、蓄電装置
内の電気的エネルギの消費を低減させることができ、無
充電で走行できる距離を延ばすことができる。
【0008】回生による制動力(回生制動力と称する)
の大きさは、常に一定であるわけではない。例えば、車
両の走行速度が極めて小さい場合は、回生制動力はほと
んど0になる。また、蓄電装置の容量が完全に満たされ
ている場合に、過充電による蓄電装置の劣化を防止する
ためにエネルギの回生を禁止する制御が行なわれること
が多く、この場合、回生が禁止されている期間中は回生
制動力は0になる。一方、車両の制動力の大きさは、回
生制動力の大きさとは直接関係のない操縦者の意図に応
じた大きさに制御される必要がある。したがって、液圧
ブレーキ装置によって発生させるべき液圧制動力の大き
さは、操縦者の意図に応じた所要制動力から回生制動力
を減じた大きさであることになる。このような液圧ブレ
ーキ装置の制御を回生制動協調制御と称する。所要制動
力の大きさは、ブレーキ操作部材の操作力,操作ストロ
ーク,操作時間等ブレーキ操作状況から容易に知ること
ができる。また、回生制動力の大きさに関する情報は回
生制動システムから得ることができる。
【0009】図3に操縦者の意図に応じた所要制動力
と、回生制動システムによる回生制動力と、液圧ブレー
キ装置による液圧制動力との関係の一例を概念的に示
す。図から明らかなように、ブレーキ操作状況から取得
される所要制動力が増大するにつれて、液圧制動力およ
び回生制動力が増大させられる。図においては、回生制
動力が液圧制動力よりやや遅れて増大を開始することと
されているが、これは不可欠なことではない。回生制動
力が車速等に応じて決まる最大値に達した後は、所要制
動力の増大は液圧制動力の増大により実現される。本実
施形態においては、回生制動システムが回生制動力をで
きる限り有効に利用するように構成されているのであ
る。制動が行われれば車速が漸減するため、回生制動力
も漸減するのであるが、図は、単純化のために回生制動
力が一定であるとして描かれている。車速が小さくな
り、所要制動力が減少すれば、回生制動力が減少させら
れる。車速が小さくなり、電動モータの回転数が小さく
なった場合には、大きな回生制動力を得るために多くの
電力が必要になったり、回生制動力の制御ハンチングが
大きくなったりするため、回生制動力が減少させられ0
とされるのである。回生制動力が0にされた後は液圧制
動力が所要制動力とほぼ等しい大きさを保って減少する
ことになる。回生制動力が0にされるのは、後述する
が、ホイールシリンダの液圧を制御することが不可能と
なった場合(減圧用リザーバに収容された作動液が多く
なり、ホイールシリンダから流出させられた作動液を収
容できなくなった場合)もある。
【0010】図1に示すように、液圧ブレーキ装置は、
マスタシリンダ12,ポンプ14,そのポンプ14から
供給される高圧の作動液を蓄積するアキュムレータ16
等を含んでいる。マスタシリンダ12およびポンプ14
には、マスタリザーバ18から作動液が供給される。マ
スタシリンダ12は、2つの加圧室F,Rを含むもので
あり、2つの加圧室には、ブレーキペダル19の踏み込
みに応じてほぼ同じ大きさの液圧が発生させられる。加
圧室Rには、上記ポンプ14,アキュムレータ16およ
びマスタリザーバ18等を含む定液圧源20が接続さ
れ、ブレーキペダル19の踏込みに伴って、定液圧源2
0から作動液が供給される。それにより、ブレーキペダ
ル19のストロークを軽減させることが可能となる。ア
キュムレータ16には、ポンプ14の作動によって、設
定圧力範囲(本実施形態においては、17MPa〜18
MPa≒174〜184kgf/cm2 の範囲)の作動
液が常時蓄えられるようにされている。アキュムレータ
16には図示しない圧力スイッチが取り付けられてお
り、この圧力スイッチのヒステリシスを有するON,O
FFに応じてポンプ14が起動,停止させられるように
なっているのであり、ポンプ14およびアキュムレータ
16によって、ほぼ一定の液圧が供給可能とされてい
る。
【0011】マスタシリンダ12の加圧室Fには液通路
22を介して、左前輪23のホイールシリンダ24(F
Lシリンダ24と略称する)と、右前輪25のホイール
シリンダ26(FRシリンダ26と略称する)とが接続
されている。液通路22には、常開の電磁開閉弁30,
電磁開閉弁32が設けられ、ホイールシリンダ24,2
6とマスタリザーバ18とを接続する液通路40の途中
には、それぞれアンチロック制御用減圧弁としての電磁
開閉弁42,44が設けられている。
【0012】一方、加圧室Rには、液通路48を介し
て、左後輪49のホイールシリンダ50(RLシリンダ
50と略称する)と、右後輪51のホイールシリンダ5
2(RRシリンダ52と略称する)とが接続されてい
る。液通路48の途中には、加圧室R側から順に、リニ
アバルブ装置56,アンチロック制御用増圧弁としての
電磁開閉弁58およびプロポーショニングバルブ60
(Pバルブ60と略称する)が設けられている。液通路
48の、マスタシリンダ12とリニアバルブ装置56と
の間の部分には液圧センサ62が、また、リニアバルブ
装置56と電磁開閉弁58との間の部分には液圧センサ
64が設けられている。液圧センサ62によって取得さ
れる液圧を入力液圧Pin,液圧センサ64によって取得
される液圧を出力液圧Pout1と称する。これら液圧セン
サ62,64によって、リニアバルブ装置56の前後の
液圧が検出可能とされている。入力液圧Pinはマスタシ
リンダ液圧Pmcでもある。液圧センサ62および64の
出力信号は、コントローラ66に供給され、入力液圧P
inおよび出力液圧Pout1が取得される。後述するよう
に、コントローラ66は、液圧センサ64によって検出
された出力液圧Pout1に基づいて、リニアバルブ装置5
6を制御する。ホイールシリンダ50,52とマスタリ
ザーバ18とを接続する液通路70の途中にアンチロッ
ク制御用減圧弁としての電磁開閉弁72が設けられてい
る。
【0013】液通路48のリニアバルブ装置56と電磁
開閉弁58との間の部分には、液通路76が接続されて
いる。液通路76は、リニアバルブ装置56とホイール
シリンダ24,26とを接続する通路であり、液通路7
6の途中には、常閉の電磁開閉弁80が設けられてい
る。また、電磁開閉弁80のホイールシリンダ24,2
6側には、それぞれアンチロック制御用増圧弁としての
電磁開閉弁84,86が設けられている。液通路76
の、電磁開閉弁80と電磁開閉弁84および電磁開閉弁
86との間の部分には、液圧センサ88が接続されてい
る。液圧センサ88による測定結果を、出力液圧Pout2
と称する。出力液圧Pout2は、液圧センサ64の出力が
正常か否かの監視に使用される。電磁開閉弁80が開状
態にある場合に、液圧センサ64により検出された出力
液圧Pout1の値が出力液圧Pout2の値から離れている場
合に液圧センサ64の出力が異常である可能性があると
判定されるのである。これは、電磁開閉弁80が開状態
にあれば、液圧センサ64と液圧センサ88とが互いに
連通した状態となり、液圧センサ64,88が共に正常
であれば、出力液圧Pout1と出力液圧Pout2とがほぼ同
じになるはずであるからである。本実施形態において
は、この判定結果に基づいて操縦者に液圧センサ異常が
報知されるが、この報知と共に、あるいは報知に代え
て、コントローラ66によるリニアバルブ装置の制御が
禁止されるようにしてもよい。これら複数の各電磁開閉
弁30,32,42,44,58,72,80,84お
よび86のソレノイドは、コントローラ66からの指令
に基づいて制御される。
【0014】上記、常開の電磁開閉弁58をバイパスす
るバイパス通路の途中には、逆止弁90が設けられ、電
磁開閉弁84,86をそれぞれバイパスするバイパス通
路の途中には、それぞれ逆止弁92,94が設けられて
いる。これらの逆止弁90,92および94は、対応す
るホイールシリンダからマスタシリンダ12に向かう作
動液の流れは許容するが、その逆向きの流れは阻止する
向きに取り付けられており、これら逆止弁により、電磁
開閉弁58,84,86が閉状態にある場合においてブ
レーキペダル19の踏込みが緩められた場合にホイール
シリンダの作動液をマスタシリンダ12に早急に戻すこ
とが可能となる。また、左右前輪23,25および左右
後輪49,51の回転速度を検出する車輪速センサ11
0〜116が設けられ、これら車輪速センサ110〜1
16によって検出された車輪速度は、アンチロック制御
時等に制動スリップ状態を検出する場合に使用される。
【0015】図2は、図1に示したリニアバルブ装置5
6の構成を概略的に示す系統図である。リニアバルブ装
置56は、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ
152,減圧用リザーバ154および逆止弁156,1
58を含んでいる。増圧リニアバルブ150は、液通路
48の途中に設けられ、減圧リニアバルブ152は、液
通路48と減圧用リザーバ154とを接続する液通路1
60の途中に設けられている。増圧リニアバルブ150
をバイパスするバイパス通路の途中には、上述の逆止弁
156が、ホイールシリンダからマスタシリンダ12に
向かう作動液の流れは許容するが、その逆の流れは阻止
する向きに設けられている。減圧リニアバルブ152を
バイパスするバイパス通路の途中には、上記逆止弁15
8が減圧用リザーバ154からマスタシリンダ12に向
かう作動液の流れは許容するが、その逆の流れは阻止す
る向きに設けられている。
【0016】減圧用リザーバ154は、ハウジング18
2と、そのハウジング182内に液密かつ摺動可能に嵌
合されたピストン184とを備えている。それらハウジ
ング182とピストン184との間に、ピストン184
の移動につれて容積が変化する液収容室186が形成さ
れており、ピストン184は排出付勢手段としての圧縮
コイルスプリング188の弾性力によって液収容室18
6の容積が減少する向きに付勢されている。液収容室1
86内に収容された作動液は圧縮コイルスプリング18
8の弾性力によって加圧されることとなるが、圧縮コイ
ルスプリング188の弾性力は比較的小さく、上記加圧
に基づく液収容室186内の液圧は、制動時にマスタシ
リンダ12やホイールシリンダ24,26,50,52
に発生させられる液圧に対して無視し得る程度の大きさ
である。したがって、減圧時にホイールシリンダから流
出させられた作動液が圧縮コイルスプリング188の付
勢力に抗して液収容室186の容積を増大させつつ減圧
用リザーバ154に流入することが可能となる。一方、
弾性力は、逆止弁156の開弁圧と逆止弁158の開弁
圧との和よりは大きくされているため、制動終了時に
は、一制動中に液収容室186に収容された作動液が、
逆止弁156,158を経てマスタシリンダ12に還流
する。
【0017】減圧用リザーバ154の液収容室186の
容積は、ピストン184が圧縮コイルスプリング188
の付勢力(弾性力)により前進端位置まで前進した状態
で最小値(図示の例では0)となり、ピストン184が
圧縮コイルスプリング188の付勢力(弾性力)に抗し
て後退端位置まで後退した状態で最大値となる。この容
積の最大値から最小値を引いた差がリザーバ容量であ
り、減圧用リザーバ154が一制動中に収容し得る作動
液の最大量はこのリザーバ容量と等しい。そして、本実
施形態においては、リザーバ容量が、ホイールシリンダ
24,26,50,52の容量の和より小さくされてい
る。したがって、前述のように、減圧用リザーバ154
に収容された作動液量が多くなるとホイールシリンダ液
圧を減圧すること、すなわち、制御することが不可能と
なり、回生制動力が0とされるのである。ここで、ホイ
ールシリンダ24,26,50,52の容量は、ホイー
ルシリンダが非作動状態から作動状態までに収容し得る
作動液の最大量を意味することとする。
【0018】増圧リニアバルブ150は、シーティング
弁190と、電磁付勢装置194とを含むものである。
シーティング弁190は、弁子200と、弁座202
と、弁子200と一体的に移動する被電磁付勢体204
と、弁子200が弁座202に着座する向きに被電磁付
勢体204を付勢する付勢手段としての弾性部材として
のスプリング206とを含んでいる。また、電磁付勢装
置194は、ソレノイド210と、そのソレノイド21
0を保持する樹脂製の保持部材212と、第一磁路形成
体214と、第二磁路形成体216とを含んでいる。ソ
レノイド210の巻線の両端に電圧が印加されると、ソ
レノイド210の巻線に電流が流れ、磁界が形成され
る。磁束は、その多くが、第一磁路形成体214,被電
磁付勢体204,第二磁路形成体216と被電磁付勢体
204との間のエアギャップおよび第二磁路形成体21
6を通る。ソレノイド210の巻線に印加される電圧を
変化させれば、被電磁付勢体204と第二磁路形成体2
16との間に作用する磁気力も変化する。この磁気力の
大きさは、ソレノイド210の巻線に印加される電圧の
大きさと共に増加し、それら印加する電圧と磁気力との
関係は予め知ることができる。したがって、印加電圧を
その関係に従って連続的に変化させることにより、被電
磁付勢体204を付勢する力(上述の磁気力のうちの被
電磁付勢体204を第二磁路形成体216に接近させる
方向の力のことであり、以下、電磁駆動力と称する。電
磁駆動力は、スプリング206の付勢力とは反対向きの
力である)の大きさを任意に変更することができる。な
お、被電磁付勢体204の第一磁路形成体216に対向
する面には、係合突部220が形成され、それに対する
第一磁路形成体216の被電磁付勢体204に対向する
部分には、係合凹部222が形成されており、被電磁付
勢体204と第一磁路形成体216との相対位置の変化
に応じて係合突部220と係合凹部222との間の対向
部の面積が変化させられる。
【0019】被電磁付勢体204と第二磁路形成体21
6とによって形成される磁路の磁気抵抗は、被電磁付勢
体204と第二磁路形成体216との軸方向の相対的な
位置に依存して変化する。具体的には、被電磁付勢体2
04と第二磁路形成体216との軸方向の相対位置が変
化すれば、被電磁付勢体204の嵌合突部220と第二
磁路形成体216の嵌合凹部222との微小間隙を隔て
て互いに対向する円筒面(嵌合突部220の外周面と嵌
合凹部222の内周面とのうち互いに対向する部分)の
面積が変化する。もし、被電磁付勢体204と第二磁路
形成体216とが単純に端面同士で微小間隙を隔てて対
向しているのであれば、被電磁付勢体204と第二磁路
形成体216との軸方向の距離の減少、すなわち接近に
伴って磁気抵抗が加速度的に減少し、両者の間に作用す
る磁気力が加速度的に増大する。それに対し、本実施形
態の増圧リニアバルブ150においては、被電磁付勢体
204と第二磁路形成体216との接近に伴って、嵌合
突部220と嵌合凹部222との上記円筒面の面積が増
加し、この円筒面を通る磁束が増加する一方、被電磁付
勢体204の端面と第二磁路形成体216の端面とのエ
アギャップを通る磁束が減少する。その結果、ソレノイ
ド210に印加される電圧がそれほど大きくない範囲内
において一定であれば、被電磁付勢体204を第二磁路
形成体216方向へ付勢する磁気力(電磁駆動力)が、
被電磁付勢体204と第二磁路形成体216との軸方向
の相対的な位置に関係なくほぼ一定となる。一方、スプ
リング206による被電磁付勢体204を第二磁路形成
体216から離間する方向へ付勢する付勢力(以下、ス
プリングの付勢力と略称する)は、被電磁付勢体204
と第二磁路形成体216との接近に伴って増大する。し
たがって、弁子200に、入力側の液圧62の液圧と出
力側の液圧との液圧差に基づく付勢力(以下、差圧作用
力と称する)が作用していない状態では、被電磁付勢体
204の第二磁路形成体216方向への移動が、上記ス
プリング206の付勢力と電磁駆動力とが等しくなるこ
とにより停止することとなる。
【0020】電磁駆動力は、前述のように、被電磁付勢
体204を第二磁路形成体216に近づける方向、すな
わち、スプリング206の付勢力とは反対の方向に作用
する。この電磁駆動力の大きさは、ソレノイド210の
巻線に印加される電圧(特許請求の範囲にいう電力に対
応するが、この電力を供給電力と称することもでき
る。)の大きさと共に増加し、それら印加する電圧と電
磁駆動力との関係は予め知ることができる。したがっ
て、印加電圧をその関係にしたがって連続的に変化させ
ることにより、被電磁付勢体204を付勢する力を任意
に変更することができる。印加電圧を増加させると被電
磁付勢体204に作用する弁子200を弁座202に押
しつける向きの力が小さくなり、弁子200が弁座20
2から離間し易くなる。図4に示すように、増圧リニア
バルブ150の弁子200には、スプリング206の付
勢力Fp ,差圧作用力Fd ,電磁駆動力Fs が作用し、
差圧作用力Fdと電磁駆動力Fs との和が、スプリング
206の付勢力Fp より大きくなると弁子200が弁座
202から離間させられる。電磁駆動力Fs が0の場合
には、差圧作用力Fd がスプリング206の付勢力Fp
より大きくなれば離間させられるが、この時の差圧の大
きさを開弁圧と称する。本実施形態においては、増圧リ
ニアバルブ150の開弁圧は、約3MPa(約30.6
kgf/cm2 )とされている。
【0021】弁子200が弁座202から離間させられ
れば、これらの間の隙間を経て作動液が流れる。この隙
間の開口面積Avaは、図14に示すように、印加電圧が
同じであれば、増圧リニアバルブ前後における液圧差Δ
Pin( ΔPin=Pin−Pout1) が大きいほど大きく、液
圧差ΔPinが同じであれば印加電圧が大きいほど大きく
なり、これら液圧差ΔPinと印加電圧とが決まれば開口
面積Avaが決まる。また、この場合における流量Qin
は、開口面積Avaと液圧差ΔPinとからよく知られた式
{Qin=CAva√(2×ΔPin/ρ)}によって算出す
ることができる。ここで、Cは流量係数であり、ρは液
密度である。このように、増圧リニアバルブ150は、
液圧差ΔPinに応じて変わる流量Qinで作動液の流れを
許容するものなのであり、ホイールシリンダへの作動液
の流入を許容する。この状態が増圧許容状態である。
【0022】減圧リニアバルブ152も、基本的には増
圧リニアバルブ150と同じものであるが、後述するよ
うに、弾性部材としてのスプリング224の付勢力が増
圧リニアバルブ150のスプリング206と異なってい
る。減圧リニアバルブ152の構成のうち、増圧リニア
バルブ150と同様であるものには、同じ符号を付して
示して説明を省略する。また、減圧リニアバルブ152
において流れる作動液の流量Qout も同様に、減圧リニ
アバルブ前後における液圧差ΔPout (ΔPout =Pou
t1−Pres )と印加電圧とによって決まる。ここで、減
圧リニアバルブ152の減圧用リザーバ154の側の液
圧Pres はほぼ大気圧に保たれるため、減圧時液圧差Δ
Pout は、Pout1と同じ大きさとなる。また、減圧リニ
アバルブ152における弁子200と弁座202との間
の隙間である開口面積は面積Avrで表す。弁子200が
弁座202から離間させられている状態が減圧許容状態
である。
【0023】減圧リニアバルブ152についても同様
に、弁子200には、スプリング224の付勢力Fp ,
差圧作用力Fd ,電磁駆動力Fs が作用する。また、減
圧リニアバルブ152の開弁圧は、18MPa(≒18
4kgf/cm2 。定液圧源20により供給される作動
液の最大液圧)よりも大きくされている。スプリング2
24による付勢力が、スプリング206によるそれより
も大きく(約6倍)されているのである。本実施形態の
液圧ブレーキ装置においては、減圧リニアバルブ152
における弁子200に作用する作動液の液圧の最大値
は、ポンプ14により供給され、また、アキュムレータ
16に蓄えられる最大の液圧である。したがって、操縦
者の踏力による液圧がこの最大液圧を上回って、減圧リ
ニアバルブ152の第一ポート172に作用する作動液
の液圧が、減圧リニアバルブ152の開弁圧を上回るこ
とは事実上ないと考えてよい。
【0024】液通路22にはストロークシミュレータ2
30(図1参照)が接続され、電磁開閉弁30および3
2が共に閉状態とされた状態においてブレーキペダル1
9のストロークが殆ど0になることが回避されている。
ストロークシミュレータ230は、プランジャ232の
移動によって容積が変化する容器である。プランジャ2
32はスプリング234によって内容積が減少する向き
に付勢されているので、ストロークシミュレータ230
の作動液の蓄積量は、加圧室Fが供給する作動液の液圧
(マスタシリンダ液圧Pmc)が増加するほど多くなる。
このことにより、電磁開閉弁30および32が共に閉状
態とされた場合においても、ブレーキペダル19のスト
ロークがほぼ0になり、操縦者に違和感を与えることが
回避される。また、ストロークシミュレータ230のス
プリング234が配設されている空間は、液通路236
によって液通路40に連通させられており、プランジャ
232と容器との間の隙間から作動液が漏れた場合にお
いても、その漏れ出た作動液がマスタリザーバ18に戻
される。これによって、液圧ブレーキ装置内の作動液量
が減少することが回避される。
【0025】液圧ブレーキ装置が正常に作動している状
態において、回生制動協調制御が行なわれている通常制
動時においては、電磁開閉弁30,32が閉状態、電磁
開閉弁80が開状態とされ、また、他の電磁開閉弁は図
1に示した状態とされる。FLシリンダ24およびFR
シリンダ26への作動液の供給が、マスタシリンダ12
の加圧室Fから液通路22を経て行なわれるのではな
く、加圧室Rから液通路48を経て行なわれるのであっ
て、RLシリンダ50およびRRシリンダ52と同様に
リニアバルブ装置56によって制御された作動液が供給
される。すべてのホイールシリンダの液圧が、リニアバ
ルブ装置56の増圧リニアバルブ150および減圧リニ
アバルブ152の制御により制御されることになる。減
圧時においては、ホイールシリンダから作動液が流出さ
せられ、減圧用リザーバ154に収容される。
【0026】回生制動協調制御とアンチロック制御とが
共に行なわれる場合には、リニアバルブ装置56と、電
磁開閉弁との両方が制御される。リニアバルブ装置56
は、回生制動力と液圧制動力との和が運転者の意図する
所要制動力となるように制御され、電磁開閉弁は、制動
スリップ状態がほぼ適正状態に保たれるように制御され
る。電磁開閉弁30および32が閉状態、開閉弁80が
開状態とされた上で、電磁開閉弁42,44,58,7
2,84および86が、必要に応じてそれぞれ独立に制
御されるのである。本実施形態においては、左右後輪4
9,51のホイールシリンダの液圧と、左前輪23のF
Lシリンダ24の液圧と、右前輪25のFRシリンダ2
6の液圧との三者が、互いに独立に制御される。
【0027】コントローラ66は、ROM,RAMおよ
びPU(プロセッシングユニット)等を備えたコンピュ
ータを主体とするものであり、ROMには図5,6,8
〜11,13に示すフローチャートで表される処理を始
めとする種々の制御プログラム、図7,12,14,1
5のグラフで表されるテーブル等が記憶されている。本
実施形態においては、制御対象としてのリニアバルブ装
置56のソレノイド210に、フィードフォワード制御
によって決定された電圧とフィードバック制御によって
決定された電圧との和の電圧が印加される。制御の目標
値は目標液圧Pref であり、ホイールシリンダ液圧が目
標液圧Pref に近づくように制御される。目標液圧Pre
f は液圧センサ62の出力値であるマスタシリンダ液圧
Pmc(操縦者の意志に対応する)から、回生制動力に対
応する液圧を減じた値として取得される。ホイールシリ
ンダ液圧は、後述するホイールシリンダ液圧推定プログ
ラムの実行に従って推定される。
【0028】目標液圧Pref に基づいて、フィードフォ
ワード増圧電圧VFapply およびフィードフォワード減
圧電圧VFrelease が算出され、目標液圧Pref から推
定ホイールシリンダ液圧Pw を減じた値である偏差er
rorを0に近づけるための電圧として、フィードバッ
ク増圧電圧VBapply およびフィードバック減圧電圧V
Brelease が算出され、増圧リニアバルブ150のソレ
ノイド210には、これらフィードフォワード増圧電圧
VFapply およびフィードバック増圧電圧VBapply の
和の大きさの電圧が印加され、減圧リニアバルブ152
のソレノイド210には、フィードフォワード減圧電圧
VFrelease およびフィードバック減圧電圧VBreleas
e の和の大きさの電圧が印加されるのである。これら電
圧は0の場合もある。また、フィードバック制御,フィ
ードフォワード制御以外の制御が行われる場合もある
が、ここでは、説明を省略する。なお、ソレノイド21
0には、フィードフォワード電圧とフィードバック電圧
との両方が印加される必要は必ずしもなく、いずれか一
方のみでも差し支えない。
【0029】図5は、コントローラ66のROMに記憶
された制御プログラムのメイン処理の主要部を示すフロ
ーチャートである。ステップ10(以下、S10と略記
する。他のステップについても同じ)において、フィー
ドフォワード増圧電圧VFapply およびフィードフォワ
ード減圧電圧VFrelease を算出するサブルーチンであ
るVFapply ,VFrelease 算出処理がコールされ、S
12において、フィードバック増圧電圧VBapply およ
びフィードバック減圧電圧VBrelease を、偏差err
orに基づいて算出するVBapply ,VBrelease 算出
処理がコールされる。例えば、一般的なPID制御や、
PID制御をさらに簡略化したI制御等によって、偏差
errorを0に近づける。この処理が完了すれば、S
14において、増圧リニアバルブ150のソレノイド2
10に印加する電圧(増圧側印加電圧Vapply と称す
る)と、減圧リニアバルブ152のソレノイド210に
印加する電圧(減圧側印加電圧Vrelease と称する)と
を算出するサブルーチンであるVapply ,Vrelease 算
出処理がコールされる。次に、S16において、作動液
漏れ検出処理が行われ、S18において上述の増圧側印
加電圧Vapply と減圧側印加電圧Vrelease とが、それ
ぞれ増圧リニアバルブ150および減圧リニアバルブ1
52のソレノイド210に印加される。ただし、S16
において、後述する禁止フラグがセットされ、リニアバ
ルブ装置56の制御が禁止された場合(回生制動が禁止
された場合)には、ソレノイド210に印加される電圧
は0とされる。
【0030】上述のS10においてコールされるVFap
ply ,VFrelease 算出処理の内容を示すフローチャー
トを図6に示す。S20において、ある一定時間(後述
するように、本実施形態においては6msとされてい
る)ごとの目標液圧Pref (これの算出については後述
する)の変化分である目標液圧変化dPref が正である
か否か、つまり、目標液圧Pref が増加中であるか否か
が判定される。増加中である場合は、S22において、
変数startFlag の値が0であるか否かが判定される。変
数startFlag の値が0であれば、S24において増圧側
初期値変数Pinita に目標液圧Pref の値が代入され、
かつ、変数startFlag に1が代入された後に、また、変
数startFlag の値が0でなければS24をバイパスして
初期値設定処理が終了する。なお、メイン処理の図示を
省略する初期設定において、変数startFlag は0に設定
されている。S20の判定結果がNOである場合(目標
液圧変化dPref が正でない場合)は、S26におい
て、目標液圧変化dPref が負であるか否かが判定され
る。この判定結果がYESであれば、S28において、
変数startFlag が1であるか否かが判定される。S28
の判定結果がYESであれば、S30において、減圧側
初期値変数Pinitr に目標液圧Pref の値が代入され、
かつ、変数startFlag に0が代入される。S22,S2
6若しくはS28の判定結果がNOであるか、または、
S24若しくはS30の処理が終了した場合に、S40
の処理が実行される。
【0031】S40においては、減圧側印加電圧Vrele
ase が正であるか否か、つまり、リニアバルブ装置56
において減圧が行われているか否かが判定される。減圧
中であれば、S42において、フィードフォワード増圧
電圧一定値VFcaが、次式に基づいて算出される。 VFca←MAPa (Pin−Pout1) ・・・(1) ここで、関数MAPa は、Pin−Pout1(これを、増圧
時液圧差ΔPinと称する)を引数として、フィードフォ
ワード増圧電圧一定値VFcaを返す関数である。図7
(a)に関数MAPa の一例を示す。この図に示すよう
に、関数MAPa1は、増圧時液圧差ΔPinの増加ととも
に直線的に減少する値としてフィードフォワード増圧電
圧一定値VFcaを返す。増圧時液圧差ΔPinが0のとき
のフィードフォワード増圧電圧一定値VFcaはフィード
フォワード増圧最大電圧VFmaxaであり、増圧時液圧差
ΔPinが最大液圧差ΔPin maxa のときのフィードフォ
ワード増圧電圧一定値VFcaはフィードフォワード増圧
最小電圧VFminaである。ここで、最大液圧差ΔPin m
axa は増圧リニアバルブ152の開弁圧(3MPa)に
等しく、フィードフォワード増圧最大電圧VFmaxaは、
それを増圧リニアバルブ150のソレノイド210に印
加した場合に発生する磁界によって、被電磁付勢体20
4が付勢される電磁駆動力Fs が、弁子200が弁座2
02に着座した状態におけるスプリング206の付勢力
Fp に等しくなるようにされている。このようにして、
S40の判定結果がYESである状態、つまり、減圧中
に、つぎの増圧時(もしそれが行なわれるならば)に使
用されるフィードフォワード増圧電圧一定値VFcaが予
め算出される。
【0032】S40の判定結果がNOである場合は、S
44において、増圧側印加電圧Vapply が正であるか否
か、つまり、リニアバルブ装置56において増圧が行わ
れているか否かが判定される。増圧中であれば、S46
において、フィードフォワード減圧電圧一定値VFcrが
次式に基づいて算出される。 VFcr←MAPr (Pout1−Pres ) ・・・(2) ここで、関数MAPr は、Pout1−Pres (これを、減
圧時液圧差ΔPout と称する。また、Pres は減圧リニ
アバルブ152の減圧用リザーバ154の側の液圧であ
り、大気圧に等しい)を引数として、フィードフォワー
ド減圧電圧一定値VFcrを返す関数である。図7(b)
にその一例を示す。図から明らかなように、関数MAP
r は、減圧時液圧差ΔPout の増加とともに直線的に減
少する値としてフィードフォワード減圧電圧一定値VF
crを返す。減圧時液圧差ΔPout が0のときのフィード
フォワード減圧電圧一定値VFcrはフィードフォワード
電圧減圧最大値VFmaxrであり、減圧時液圧差ΔPout
が最大液圧差ΔPout maxrのときのフィードフォワード
減圧電圧一定値VFcrは0である。ここで、最大液圧差
ΔPout maxrは減圧リニアバルブ152の開弁圧(18
MPaよりも大きい)に等しく、フィードフォワード電
圧減圧最大値VFmaxrは、それを減圧リニアバルブ15
2のソレノイド210に印加した場合に、発生する電磁
駆動力Fs が、弁子200が弁座202に着座した状態
におけるスプリング224の付勢力Fpに等しくなるよ
うにされている。このように、S44の判定結果がYE
Sである状態、つまり、増圧中に、つぎの減圧時に使用
されるフィードフォワード減圧電圧一定値VFcrが予め
算出される。
【0033】S44の判定結果がNOであるか、また
は、S42若しくはS46の処理が終了した場合に、S
47において、目標液圧変化dPref が正でかつ目標液
圧Pref がしきい値Pth未満であるか否かによって、初
期増量が必要であるか否かの判定が行われ、判定結果が
YESであれば、S48において、増量電圧VFcainc
がフィードフォワード増圧電圧一定値VFcaに代入され
る。初期増量および増量電圧VFcainc の物理的な意味
については後に説明する。これらS47,48の実行後
に、S50において、以下に示す式に基づいてフィード
フォワード増圧電圧VFapply またはフィードフォワー
ド減圧電圧VFrelease が算出された後に、VFapply
,VFrelease 算出処理が終了する。 VFapply ←GAINa ・(Pref −Pinita )+VFca ・・・(3) VFrelease ←GAINr ・(Pinitr −Pref )+VFcr ・・・(4) ここで、係数GAINa および係数GAINr は、予め
設定される正の一定値である。
【0034】上記フィードフォワード減圧電圧VFrele
ase の物理的な意味は、減圧中において、減圧時液圧差
ΔPout の値が徐々に小さくなり、減圧リニアバルブ1
52の弁子200を弁座202から離間させようとする
差圧作用力Fd が小さくなっても、フィードフォワード
制御によって、減圧リニアバルブ152を開いた状態に
し得る電磁駆動力Fs を発生させることであり、減圧を
続行できる電圧を決定することである。つまり、減圧時
液圧差ΔPout が比較的大きい場合には、減圧を行うた
めに必要なフィードフォワード減圧電圧VFrelease の
値は比較的小さくてよいのであるが、減圧時液圧差ΔP
out が小さくなった場合には、減圧リニアバルブ152
が開いた状態にするために、減圧リニアバルブ152の
ソレノイド210に、より大きな電圧を印加する必要が
ある。本実施形態においては、これを、フィードフォワ
ード減圧電圧VFrelease の値を大きくすることによっ
て実現しているのである。
【0035】図8は、上記目標液圧Pref と目標液圧変
化dPref とを算出するために実行されるタイマ割込処
理の内容を示すフローチャートである。まず、S55に
おいて、マスタシリンダ液圧Pmcから、現在の回生制動
力の大きさに相当する液圧を減じた値として、目標液圧
Pref が取得される。つぎに、S56において、目標液
圧変化dPref が、次式に基づいて算出される。 dPref ←Pref −prevPref ・・・(5) ここで、前回目標液圧prevPref の値は、前回のタイマ
割込処理が実行された時点における目標液圧Pref の値
である。つぎに、S57において、次回のタイマ割込処
理に備えるために、前回目標液圧prevPref に今回のタ
イマ割込処理における目標液圧Pref の値が代入された
後に、タイマ割込処理が終了する。このタイマ割込処理
は、制動期間中、6msごとに繰り返しコールされるも
のであり、前述のように、目標液圧Pref と目標液圧変
化dPref とは、制動期間中、6msごとに最新の値に
更新されることになる。
【0036】前述のブレーキの効き遅れの低減について
説明する。効き遅れの低減は、制動開始直後において、
実際のホイールシリンダ液圧Pwcを目標液圧Pref によ
り近づけるために行われる。図16は、目標液圧Pref
がゼロである状態(制動が行われていない状態)から、
時刻ti において制動が開始され、目標液圧Pref が直
線的に増加する状態を示している。また、その目標液圧
Pref の変化に伴う出力液圧Pout1および実際のホイー
ルシリンダ液圧Pwcの変化も示している。図から明らか
なように、液圧センサ64によって取得される出力液圧
Pout1がたとえ目標液圧Pref とよく一致していても、
実際のホイールシリンダ液圧Pwcは、制動開始直後にお
いて目標液圧Pref から大きく外れる。これは、制動開
始直後はホイールシリンダの液圧を単位量増大させるの
に必要な作動液量が多く、リニアバルブ装置56とホイ
ールシリンダ24等とを接続している液通路内の作動液
流量が大きいために、出力液圧Pout1と実際のホイール
シリンダ液圧Pwcとの間に大きな差が生じるためであ
る。ホイールシリンダ液圧Pwcの値を直接取得する液圧
センサを設け、Pref −Pwcを偏差errorとすれ
ば、実際のホイールシリンダ液圧Pwcを目標液圧Pref
に応答性よく追従させることも可能である。しかし、実
際のホイールシリンダ液圧Pwcを取得するための液圧セ
ンサを各輪に個々に取り付ける必要があり、コストが上
昇するとともに、制御が複雑になる。
【0037】そこで、本実施形態においては、以下に説
明する方法によって、各ホイールシリンダに供給される
作動液の流量が制動初期には特別に増量されるようにさ
れている。これが前述の初期増量である。初期増量は、
目標液圧変化dPref が正であり、かつ、目標液圧Pre
f があるしきい値Pth未満である場合に、フィードフォ
ワード増圧電圧一定値VFcaの値を、前述の関数MAP
a によって与えられる電圧よりも大きくすることによっ
て実現される。この大きくされた電圧が前述の増量電圧
VFcainc である。ここでは、増量電圧VFcainc は、
予め与えられた一定値とする。初期増量が行われるため
の上述の条件が成立する場合は、液圧差ΔPinの値は小
さいので関数MAPa の値も大きい。そこで、増量電圧
VFcainc の値は、フィードフォワード増圧最大電圧V
Fmaxa(図7(a)参照)よりも大きくされる。目標液
圧変化dPref がゼロ以下になるか、または、目標液圧
Pref が上記しきい値Pth以上になった場合には、初期
増量が終了させられる。つまり、フィードフォワード増
圧電圧一定値VFcaの値が、関数MAPa の値に戻され
る。ただし、初期増量が終了する時点において、関数M
APa の値と増量電圧VFcainc の値との差が大きい場
合には、フィードフォワード増圧電圧一定値VFcaの値
は、関数MAPaの値に徐々に近づけられる処理が行わ
れることが望ましい。フィードフォワード増圧電圧一定
値VFcaの値が急激に変化すると、制動力が急激に変化
してしまうからである。
【0038】ここで、初期増量が行われると、出力液圧
Pout1の液圧が急激に大きくなる場合があり、偏差er
rorが(目標液圧Pref −出力液圧Pout1)とされた
場合には、偏差errorが早期に小さくなる。その結
果、フィードバック増圧電圧VBapply が小さくされて
しまうこともある。それに対して、偏差errorが
(目標液圧Pref −推定ホイールシリンダ液圧Pw )と
された場合には、偏差errorが早期に小さくなるこ
とが回避され、効き遅れ低減制御の効果を十分に享受す
ることが可能となる。
【0039】前述のS12におけるフィードバック増圧
電圧VBapply ,フィードバック減圧電圧VBrelease
は、推定ホイールシリンダ液圧Pw と目標液圧Pref と
の偏差errorが0となるように決定される。ここ
で、推定ホイールシリンダ液圧Pw の取得について説明
する。ホイールシリンダ液圧の推定は、図9のフローチ
ャートで表されるホイールシリンダ液圧推定プログラム
の実行に従って行われるが、このプログラムは一定時間
毎に実行される。目標液圧変化を算出するプログラムと
同様に6ms毎に行われるようにすることもできる。
【0040】出力液圧Pout1が設定液圧以上の場合に
は、推定ホイールシリンダ液圧Pw が出力液圧Pout1と
同じ大きさであるとされるが、出力液圧Pout1が設定液
圧より小さい場合には、推定ホイールシリンダ液圧Pw
が入力液圧Pin,出力液圧Pout1に基づいて推定された
大きさとされる。そして、目標液圧Pref から推定ホイ
ールシリンダ液圧Pw が引かれることにより上記偏差e
rrorが求められる。
【0041】液圧センサ64によって検出された出力液
圧Pout1が設定液圧以上の場合は、液通路48,76内
の作動液流量が小さく、液通路内における液圧損失が小
さい。すなわち、リニアバルブ装置56と各ホイールシ
リンダ24,26,50,52とを接続する液通路4
8,76における液圧損失が小さいため、ホイールシリ
ンダ24,26,50,52の各々の液圧が出力液圧P
out1と同じ大きさであると推定することができる(Pw
=Pout1)。
【0042】それに対し、出力液圧Pout1が設定液圧よ
り小さい場合には、これら液通路48や76を流れる作
動液流量が大きく、液通路内における流路抵抗に基づく
圧力損失が大きくなる。そのため、出力液圧Pout1と実
際のホイールシリンダ液圧Pwcとの差が大きくなり、推
定ホイールシリンダ液圧Pw が出力液圧Pout1と同じ大
きさであるとすることはできない。そこで、本実施形態
においては、出力液圧Pout1が設定液圧より小さい場合
は、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152
において流れる作動液の流量に基づいて推定ホイールシ
リンダ液圧Pwが取得される。増圧リニアバルブ15
0,減圧リニアバルブ152における流量に基づいて取
得されれば、ホイールシリンダ液圧を精度よく推定する
ことができる。
【0043】ホイールシリンダへは、増圧リニアバルブ
150を経て作動液が流入させられるため、増圧リニア
バルブ150における作動液の流量を、流入流量Qinと
することができる。同様に、ホイールシリンダの作動液
は、減圧リニアバルブ152を経て減圧用リザーバ15
4へ流出させられるため、減圧リニアバルブ152にお
いて流れる作動液の流量を、流出流量Qout とすること
ができる。これら流入流量Qin,流出流量Qout は、前
述のように、これらのソレノイド210に印加される増
圧側印加電圧Vapply ,減圧側印加電圧Vrelease と増
圧時液圧差ΔPin,減圧時液圧差ΔPout とに基づいて
それぞれ決定される。そして、これら流入流量Qin,流
出流量Qout を増圧時間,減圧時間で積分すれば、各ホ
イールシリンダ24,26,50,52における流入液
量qwin ,流出液量qwoutをそれぞれ求めることができ
る。流入液量,流出液量が初期状態から現時点までの液
量である場合には、これらをそれぞれ流入積算量,流出
積算量と称することができる。リニアバルブ装置56を
流れる作動液は、4個のホイールシリンダ24,26,
50,52に均等に流入するとは限らない。また、4個
のホイールシリンダから作動液が均等に流出させられる
とも限らないが、これら4個のホイールシリンダ24,
26,50,52を区別することなく、これらを代表し
た1のホイールシリンダについての作動液の流入,流出
について説明することにする。
【0044】4個のホイールシリンダ24,26,5
0,52各々には、各ホイールシリンダ24,26,5
0,52の液圧が互いにほぼ等しくなくように作動液が
供給される。FL,FRシリンダ24,26の容量は、
RL,RRシリンダ50,52のそれより大きく、ま
た、リニアバルブ装置56等を含むブレーキ液圧装置が
車両のフロント側に設けられている場合には、リニアバ
ルブ装置56とFL,FRシリンダ24,26とを接続
する液通路の長さは、リニアバルブ装置56とRL,R
Rシリンダ50,52とを接続する液通路より短くな
る。その結果、前輪23,25のFL,FRシリンダ2
4,26にも、後輪49,51のRL,RRシリンダ5
0,52にも、これらの液圧が互いにほぼ等しくなるよ
うに作動液が供給されることになる。たとえ、FL,F
Rシリンダ24,26にRL,RRシリンダ50,52
より多量の作動液が供給され、FL,FRシリンダ2
4,26の液圧がRL,RRシリンダ50,52の液圧
より大きくなっても、ブレーキ作動においては前輪側の
制動力が重要であるため差し支えない。前輪側の制動力
が後輪側の制動力より大きいことは、逆に、後輪側の制
動力が前輪側のそれより大きい場合より望ましく、制動
中の車両の姿勢安定性を良好に保つことができるのであ
る。
【0045】ホイールシリンダにある有効作動液量(現
時点において実際にホイールシリンダ内に存在する実作
動液量からブレーキが解除状態にあった初期時点におい
て既にホイールシリンダ内に存在していた原作動液量を
引いた量であり、以下、有効ホイールシリンダ液量qw
と称する)が、これら流入液量(流入積算量)qwin,
流出液量(流出積算量)qwoutに基づいて推定され、こ
の有効ホイールシリンダ液量qw に基づいてホイールシ
リンダ液圧Pw が推定される。ブレーキ解除状態にあ
り、ホイールシリンダ液圧が0(大気圧)である状態か
ら、現時点までの流入積算量qwin と流出積算量qwout
との符号を考慮した和{qw =qwin +(−qwout)}
を求めれば、有効ホイールシリンダ液量qw を求めるこ
とができる。このホイールシリンダ液圧が0である状態
を初期状態と称し、初期状態にある時点を初期時点と称
する。また、有効ホイールシリンダ液量qw とホイール
シリンダ液圧Pwcとの関係は、図15に示すように予め
求められている。したがって、図15に示すテーブルお
よび有効ホイールシリンダ液量qwに基づけば、ホイー
ルシリンダ液圧Pw を推定することができる。
【0046】S61において、入力液圧Pinが0より大
きいか否かが判定される。すなわち、プレーキペダル1
9が踏み込まれたか否かが判定されるのである。制動中
であれば判定はYESとなり、S62において、出力液
圧Pout1が設定液圧(例えば、ファーストフィルに対応
する大きさとすることができ、本実施形態においては、
約1MPaとされている。)以上か否かが判定される。
設定液圧以上であれば、S63において、推定ホイール
シリンダ液圧Pw が出力液圧Pout1とされ、設定液圧よ
り小さい場合には、S64〜68において増圧リニアバ
ルブ150,減圧リニアバルブ152において流れる作
動液の流入流量Qin,流出流量Qout に基づいて推定ホ
イールシリンダ液圧Pw が求められる。
【0047】S64〜68において、増圧リニアバルブ
前後における液圧差ΔPin(ΔPin=Pin−Pout1),
減圧リニアバルブ前後における液圧差ΔPout (ΔPou
t =Pout1−0)が求められ、これら増圧時液圧差ΔP
in,減圧時液圧差ΔPout と各々のソレノイド210に
印加される増圧側印加電圧Vapply ,減圧側印加電圧V
release とに基づいて、増圧リニアバルブ150,減圧
リニアバルブ152各々における開口面積Ava, Avr
が、図14のグラフで表されるテーブルに従って求めら
れる。そして、これら開口面積Ava, Avrと上記増圧時
液圧差ΔPin,減圧時液圧差ΔPout とに基づいて増圧
リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152における
流入流量Qin,流出流量Qout が、それぞれ式 Qin=CAva√(2×ΔPin/ρ)・・・(6) Qout =CAvr√(2×ΔPout /ρ)・・・(7) に従って求められる。図に示すように、増圧リニアバル
ブ150,減圧リニアバルブ152における液圧差と印
加電圧との少なくとも一方が0の場合には、開口面積は
0であり、流量は0となる。また、流入流量Qin,流出
流量Qout を初期時点から現時点までの増圧時間,減圧
時間でそれぞれ積分することによってホイールシリンダ
における流入積算量qwin ,流出積算量qwoutが求めら
れ、これら流入積算量qwin と流出積算量qwoutとが加
え合わせられることによって有効ホイールシリンダ液量
qw が求められる。次に、図15のグラフで表されるテ
ーブルおよび有効ホイールシリンダ液量qw に基づいて
推定ホイールシリンダ液圧Pw が求められる。
【0048】このように、出力液圧Pout1が設定液圧よ
り小さい場合に、推定ホイールシリンダ液圧Pw が流入
積算量qwin と流出積算量qwoutとに基づいて求められ
れば、出力液圧Pout1とされる場合より、推定精度を向
上させることができる。その結果、偏差errorが、
常に(目標液圧Pref −出力液圧Pout1)として求めら
れる場合より、偏差errorの値を正確に求めること
ができ、ホイールシリンダ液圧の制御精度を向上させる
ことが可能となる。また、出力液圧Pout1が設定液圧以
上の場合には、推定ホイールシリンダ液圧Pw が出力液
圧Pout1とされるため、制御の複雑化を回避しつつホイ
ールシリンダ液圧の推定精度を向上させることができ
る。上述のように、流量を時間で積分することにより有
効ホイールシリンダ液量を求める場合には、誤差が累積
され、設定液圧以上の場合には、ホイールシリンダ液圧
の推定精度がかえって低下する場合もあるのである。
【0049】なお、出力液圧Pout1と実際のホイールシ
リンダ液圧Pwcとの関係は、予め求めておくことができ
るため、これらの関係と出力液圧Pout1とに基づいてホ
イールシリンダ液圧を推定することもできる。出力液圧
Pout1と実際のホイールシリンダ液圧Pwcとの関係の一
例を図16に示すが、これらの関係をテーブル化してR
OMに予め格納しておけば、出力液圧Pout1に基づいて
ホイールシリンダ液圧を容易に推定することができる。
【0050】上述のように推定された推定ホイールシリ
ンダ液圧Pw に基づいて液圧センサ64が異常か否かが
検出される。この異常検出は、図10のフローチャート
で表される異常検出プログラムの実行に従って行われる
が、このプログラムは一定時間毎に実行される。S75
において、推定ホイールシリンダ液圧Pw と液圧センサ
64によって検出された出力液圧Pout1とが読み込ま
れ、これらの差が適正範囲内にあるか否かが判定され
る。適正範囲内にある場合には、S76において、液圧
センサ64が正常であると判定され、適正範囲内にない
場合には、S77において、液圧センサ64が異常であ
ると判定され、回生禁止フラグがセットされる。回生禁
止フラグがセットされれば、それに応じて、電磁開閉弁
30,32および80のソレノイドが消磁されるととも
に、リニアバルブ装置56への電圧印加が禁止され、本
液圧ブレーキシステムは通常の液圧ブレーキシステムと
して機能する状態とされる。また、上記禁止フラグの内
容は、図示しない回生制動システムにおいても参照さ
れ、セット状態にあれば回生制動が禁止される。このよ
うに、本実施形態においては、液圧センサ64が異常で
あるとされた場合には、リニアバルブ装置56の制御電
圧が0とされ、回生制動協調制御が終了させられるので
ある。
【0051】なお、S77においては、液圧センサ64
の異常に限定しないで、液圧センサ62,コントローラ
66,定液圧源20,リニアバルブ装置56等ブレーキ
液圧制御装置の異常であるとすることもできる。液圧セ
ンサ64がブレーキ液圧制御装置の他の装置より異常が
生じ易いものである場合には、液圧センサ64の異常に
限定することが可能であるが、広くブレーキ液圧制御装
置に異常が生じたとすることも可能なのである。これら
の異常時においても、液圧センサ64が異常である場合
と同様に、制御電圧が0とされることが望ましい。この
ように、推定ホイールシリンダ液圧Pw と出力液圧Pou
t1とに基づいて液圧センサ64の異常が検出されれば、
液圧センサ88は不可欠ではない。しかし、液圧センサ
88と液圧センサ異常検出プログラムの実行との両方に
基づいて液圧センサ64の出力液圧Pout1の妥当性を監
視しても差し支えない。
【0052】前述のS14に示したVapply ,Vreleas
e 算出処理の内容の一例を図11に示す。この処理にお
いて、リニアバルブ装置56の制御状態の決定、すなわ
ち、増圧リニアバルブ150のソレノイド210に電圧
が印加される状態(増圧)と、減圧リニアバルブ152
のソレノイド210に電圧が印加される状態(減圧)
と、いずれにも電圧が印加されない状態(保持)との決
定は、図12のマップで表されるテーブルに従って行わ
れる。図に示すように、制御状態の決定は、偏差err
orと目標液圧変化dPref との値に基づいて行われ
る。具体的には、目標液圧変化dPref が予め設定され
た正の液圧変化しきい値dPth1 を越える場合(この状
態をで示し、以下状態と称する)においては、偏差
errorの符号に応じて増圧または保持とされる。目
標液圧変化dPref が液圧変化しきい値dPth1 以下で
あり、かつ、負の液圧変化しきい値dPth2 以上である
場合(状態と称する)においては、偏差errorが
予め設定された上限液圧偏差err1より大きい場合に
増圧が行なわれ、予め設定された下限液圧偏差err2
未満である場合に減圧が行なわれ、それ以外の場合に保
持が行なわれる。また、目標液圧変化dPref が液圧変
化しきい値dPth2 未満である場合(状態と称する)
においては、偏差errorの符号に基づいて保持また
は減圧が行なわれる。
【0053】図11のフローチャートにおけるS100
において偏差errorが算出され、S102におい
て、目標液圧変化dPref が液圧変化しきい値dPth1
より大きいか否かが判定される。結果がYESであれ
ば、S104において、偏差errorがゼロ以上であ
るか否かが判定され、ゼロ以上であればS106におい
て増圧のための印加電圧v1 が増圧側印加電圧Vapply
としてセットされ、減圧側印加電圧Vrelease がゼロと
される。ここで、印加電圧v1 の値は、図6に示したS
50において算出されるフィードフォワード増圧電圧V
Fapply と、図5のS12において算出されるフィード
バック増圧電圧VBapply との和として算出される。つ
ぎに、S108において、変数flagに増圧を表す値が代
入された後にVapply ,Vrelease 算出処理が終了す
る。以上の経路で増圧のための印加電圧が算出されるこ
とは、図12の状態において、増圧が行なわれること
に相当する。上記経路の他に、S102の判定結果がN
Oであり、続くS110の判定結果がNOであり、さら
に、続くS112の判定結果がYESである場合におい
ても増圧が行なわれる。S110は、目標液圧変化dP
ref が目標液圧しきい値dPth2 未満であるか否かの判
定処理であり、S112は、偏差errorが偏差しき
い値err1より大きいか否かの判定処理である。つま
り、この経路によりS106およびS108の処理が行
なわれることは、図12の状態において、増圧が行な
われる場合に相当することになる。
【0054】S110の判定結果がYESであり、か
つ、続くS114の判定結果がYESである場合には、
S116において増圧側印加電圧Vapply にゼロがセッ
トされるとともに、減圧側印加電圧Vrelease に減圧の
ための印加電圧v2 がセットされる。印加電圧v2 の値
は、図6のS50において算出されるフィードフォワー
ド減圧電圧VFrelease と、図5のS12においてフィ
ードバック制御によって算出されるフィードバック減圧
電圧VBrelease との和として算出される。つぎに、S
118において、変数flagに減圧を表す値が代入された
後にVapply ,Vrelease 算出処理が終了する。以上の
経路で減圧のための印加電圧が算出されることは、図1
2の状態において、減圧が行なわれることに相当す
る。上記経路の他に、S112の判定結果がNOであ
り、かつ、続くS120の判定結果がYESである場合
においても減圧が行なわれる。S120は、偏差err
orが偏差しきい値err2未満であるか否かの判定処
理である。この経路によりS116およびS118の処
理が行なわれることは、図12の状態において、減圧
が行なわれる場合に相当する。
【0055】S104,S114およびS120のいず
れかの判定処理が行なわれ、その結果がNOであれば、
S122において、増圧側印加電圧Vapply および減圧
側印加電圧Vrelease にゼロがセットされた後に、S1
24において変数flagに保持を表す値が代入されて、V
apply ,Vrelease 算出処理が終了する。なお、本実施
形態においては、図12の図表で表される規則に基づい
て増圧側印加電圧Vapply および減圧側印加電圧Vrele
ase が算出されるようにされていたが、他の規則に基づ
いて算出されるようにすることも可能である。
【0056】次に、S16の作動液漏れ検出処理の詳細
を図13に示す。回生制動協調制御に伴って、ホイール
シリンダから排出された作動液によって減圧用リザーバ
154が満たされ、もはや減圧リニアバルブ152が開
かれても推定ホイールシリンダ液圧Pw が減少しなくな
る。上記のように、減圧リニアバルブ152が開かれて
も推定ホイールシリンダ液圧Pw が減少しなくなったこ
とが検出された後も、前記図5のS18において減圧側
印加電圧Vrelease が減圧リニアバルブ152のソレノ
イド210に印加されるようにしても差し支えないが、
本実施形態においては、電気エネルギが無駄に消費され
ることを回避する観点から、減圧側印加電圧Vrelease
の印加が禁止されるようにされている。回生制動力が0
とされ、回生制動協調制御が終了させられるのである。
【0057】まず、S150において、制動中か否か、
すなわち、ブレーキペダル19が踏み込まれているか否
かが、ブレーキランプスイッチ306がONか否かによ
って判定される。ブレーキ解除状態であり、判定結果が
NOであれば、S152において、減圧用リザーバ15
4への作動液の流入量の和である作動液総流入量ΣΔQ
がクリアされるとともに、変数FlagA に1が、変数Flag
B にゼロがそれぞれ代入されて、1回の処理が終了す
る。作動液総流入量ΣΔQは、すべてのホイールシリン
ダからの流出積算量の和に相当する。ブレーキ作用状態
の場合には、S150の判定結果がYESとなり、S1
54以降が実行される。S154,156において一連
の減圧の開始が待たれ、一連の減圧が開始されれば、S
158において変数FlagA にゼロが、変数FlagB に1が
それぞれ代入され、S160において推定ホイールシリ
ンダ液圧Pw の一連の減圧開始時における値 startPw
が記憶される。なお、S156における減圧か否かの判
定は、上記Vapply ,Vrelease 算出処理において設定
される変数flagの内容に基づいて行われる。
【0058】続くS162,S164は、上記一連の減
圧の終了を意味する増圧の開始を検出するステップであ
る。変数FlagB には、前記S152でゼロが代入される
一方、S158で1が代入されるため、制動開始直後に
実行されるS162の判定結果がNOであり、S164
の増圧判定は行われず、一旦一連の減圧が行われた後に
のみS164の増圧判定が行われる。したがって、S1
64の判定結果がYESになることは、一連の減圧の後
の増圧の開始、すなわち一連の減圧の終了を意味するの
であり、S166において、FlagA に1が、FlagB にゼ
ロがそれぞれ代入されて、次の一連の減圧の開始を検出
するための準備がなされた後、S168において、推定
ホイールシリンダ液圧Pw の一連の減圧終了時における
値 endPw が記憶される。
【0059】一方、上記S164の判定結果がNOの場
合には、ブレーキランプスイッチ306の状態に基づく
S170の制動終了か否かの判定と、S172の減圧不
能か否かの判定とが行われる。減圧不能か否かの判定
は、前述のように減圧用リザーバ154がもはや作動液
を収容し得なくなったために、減圧リニアバルブ152
を開いても減圧を行うことができない状態になったか否
かを判定することであり、種々の手段が可能であるが、
本実施形態においては、目標液圧変化dPref が負の設
定値より小さく、かつ、変数flagに減圧を表す値が代入
されて一定時間が経過したにもかかわらず、推定ホイー
ルシリンダ液圧Pw が減少しない場合に、減圧不能な状
態になったと判定されるようにされている。そして、S
170,S172のいずれかの判定結果がYESとなっ
た場合には、S166,S168が実行される。一連の
減圧終了時における値 endPw の記憶は、一連の増圧の
開始時のみならず、制動終了時と減圧不能時とにも行わ
れるのである。
【0060】上記S168の実行後、S174におい
て、記憶された startPw と endPwとから、一連の減
圧に伴って減圧用リザーバ154に流入した作動液の量
ΔQが取得されるとともに、それまでの作動液総流入量
ΣΔQに加算される。一連の減圧に伴って減圧用リザー
バ154に流入した作動液の量ΔQは、いかなる方法で
取得されてもよいが、本実施形態においては、図15の
グラフで表されるテーブルによって取得される。
【0061】上記S174において取得された作動液総
流入量ΣΔQは、それの最大値ΣΔQmax 、つまりリザ
ーバ容量と比較され、作動液総流入量ΣΔQがリザーバ
容量より大きい場合には、減圧リニアバルブ152より
減圧用リザーバ154側の部分において液漏れが発生し
たと判定され、S178において回生制動システムによ
る回生制動とリニアバルブ装置56を使用する液圧制御
とを禁止するフラグがセット状態に切り換えられる。
【0062】このように、作動液漏れの検出が、検出液
圧Pout1でなく、推定ホイールシリンダ液圧Pw に基づ
いて行われるため、検出精度を向上させることができ
る。なお、上記のように、作動液漏れの検出に応じて、
リニアバルブ装置56への電圧印加が禁止されれば、増
圧リニアバルブ150が前述のように3MPaの減圧弁
として機能する状態となり、RLシリンダ50およびR
Rシリンダ52の液圧が無用に小さく抑えられることに
なる。それをできる限り回避するために、少なくとも制
動中は、増圧リニアバルブ150のソレノイド210
に、連続的に印加しても過熱の問題が生じない程度の電
圧が印加されるようにしてもよい。また、回生制動は禁
止されず、増圧リニアバルブ150の制御も通常通り行
われるが、減圧リニアバルブ152の制御は禁止される
ようにすることも可能である。この場合には、例えば、
図5のメインルーチンの大半は通常通り実行されるが、
S18の印加処理において減圧側印加電圧Vrelease の
印加が禁止されるようにすればよい。
【0063】また、ホイールシリンダ液圧の推定方法
は、上記実施形態における場合に限らず他の方法によっ
ても推定し得る。例えば、上記実施形態においては、流
入液量Qinを取得する際の増圧時液圧差ΔPinが液圧セ
ンサ62,64によって実際に検出された検出液圧Pi
n,Pout1の差とされていたが、液圧センサ62によっ
て検出された検出液圧Pinと推定ホイールシリンダ液圧
Pw との差とすることができる。また、開口面積を求め
る際に弁子200の弁座202に対するストロークxを
考慮することも可能である。
【0064】開口面積は、弁子200と弁座202との
間の隙間の最小面積であるが、最小面積は、図20に示
すように、斜線が付してある円錐の側面部である。図に
示す円錐は、弁子200が弁座202に着座している状
態における弁子200と弁座202との接線と、離間し
ている状態における弁子200の基準点とを結んで得ら
れる形状を有したものである。この面積は、弁子20
0,弁座202の形状およびストロークxに基づいて求
めることができる。増圧リニアバルブ150において
は、弁子200には、図4に示すように、電磁駆動力F
s ,差圧作用力Fd,スプリング202の付勢力Fp が
作用し、これら作用する力が、ストロークx,移動速度
x′,移動加速度x″の状態において、式 Mx″+cx′+kx=Fs +Fd −Fp ・・・(8) が成立する状態で釣り合っている。
【0065】ここで、Mは弁子200の質量、cは減衰
係数、kはスプリングのばね定数である。差圧作用力F
d は、増圧時液圧差ΔPinに開口面積Avaを乗じた大き
さとされ、電磁駆動力Fs は、図19のグラフで表され
るテーブルに従って印加電圧Vapply とストロークxと
に基づいて求めることができ、スプリング202の付勢
力Fp は、予め定められたばね定数,ストロークx等に
基づいて求めることができる。図に示すように、電磁駆
動力Fs は、印加電圧がそれほど大きくない範囲内にお
いては、印加電圧に基づいて決定される。また、ブレー
キ解除状態にあり、ホイールシリンダ液圧が大気圧(初
期状態)にある初期時点においては、ストロークx,移
動速度x′,移動加速度x″は0であり、増圧時液圧差
ΔPinも,印加電圧Vapply も0である。ストローク
x,移動速度x′,移動加速度x″は、ブレーキ解除状
態に限らず、保持が決定された場合にも0とされる。弁
子200が弁座202に着座しているからである。この
初期状態から、増圧リニアバルブ150の制御に伴って
ホイールシリンダに作動液が流入させられるが、初期状
態から現時点までの作動液の流入積算量qwinを求めれ
ば、現時点においてホイールシリンダに存在する作動液
量qw が取得され、作動液量qw および図15のグラフ
で表されるテーブルに基づいてホイールシリンダ液圧P
w を推定し得る。
【0066】初期状態において、ブレーキペダル19が
踏み込まれれば、増圧時液圧差ΔPinが大きくされ(P
in)とされ、それに応じて電圧が印加される。電磁駆動
力Fs が0より大きくなるが、差圧作用力Fd は開口面
積が0であるため0である。また、スプリングの付勢力
Fp はセット荷重に対応する大きさ、すなわち、前述の
開弁圧に対応する大きさとされる。この状態において、
弁子200の移動加速度x″が求められる。この弁子2
00が弁座202から離間し始めた状態においては、移
動加速度x″,移動速度x′,ストロークxは互いに同
じ大きさとみなすことができる。以下、前回の移動速度
x′(k-1) に今回の移動加速度x″(k)を加えれば、今
回の移動速度x′(k) が求められ、今回の移動速度x′
(k) を前回のストロークx(k-1) に加えれば、今回のス
トロークx(k) が求められる。そして、ストロークx
(k) に基づいて円錐の斜線の部分の面積を求めれば、開
口面積Ava(k) が求められ、以下、上記実施形態におけ
る場合と同様に推定ホイールシリンダ液圧Pw が取得さ
れる。また、本実施形態においては、今回の増圧時液圧
差ΔPin(k) が、液圧センサ62による検出液圧Pinと
前回の推定ホイールシリンダ液圧Pw(k-1)との差(Pin
−Pw(k-1))として取得される。減圧リニアバルブ15
2における制御においても同様に、減圧開始時から現時
点までにホイールシリンダから流出させられた作動液の
流出積算量qwoutが求められる。減圧開始時にホイール
シリンダに存在する作動液量は、減圧開始時までの流入
積算量等に基づいて推定し得る。これら流入積算量qwi
n と流出積算量qwoutとの和が、現時点における作動液
量qw とされる。また、減圧時液圧差ΔPout も増圧時
液圧差ΔPinと同様に、前回の推定ホイールシリンダ液
圧Pw(k-1)に基づいて求められる。ΔPout は、(Pw
(k-1)−Pres =Pw(k-1)−0)とされるのである。
【0067】図17のS210において、ブレーキペダ
ル19が踏み込まれたか否か、すなわち、液圧センサ6
2によって検出された検出液圧Pinが0より大きいか否
かが検出される。0の場合には、ブレーキ解除状態にあ
るため、S211において初期設定が行われる。上述の
ように、ストロークx,移動速度x′,移動加速度x″
等が0とされるとともに、推定ホイールシリンダ液圧P
w(0),ホイールシリンダに存在する作動液量qw(0),流
入流量Qin(0) ,流出流量Qout(0)等各変数の初期値が
0とされる。ブレーキ解除状態にある間、S210,2
11が繰り返し実行される。ブレーキペダル19が踏み
込まれると、S210における判定がYESとなり、S
212において、増圧リニアバルブ150,減圧リニア
バルブ152に作用する差圧作用力Fd が求められる。
増圧リニアバルブ150における差圧作用力Fd は、前
後における増圧時液圧差ΔPinに開口面積Avaを乗じた
大きさであり、減圧リニアバルブ152に作用する差圧
作用力Fdは、減圧時液圧差ΔPout(ΔPout =Pw
)に開口面積Avrを乗じた大きさである。最初にS2
12が実行された場合には、推定ホイールシリンダ液圧
Pw は0であるため、増圧時液圧差ΔPinは検出液圧P
in(ΔPin=Pin)であり、減圧時液圧差ΔPout は0
である。しかし、ストロークxが0であるため、開口面
積Ava,Avrが0とされ、差圧作用力Fd も0とされ
る。
【0068】次に、S213において、リニアバルブ装
置56の制御状態が検出される。上記実施形態における
場合と同様に、偏差error,目標液圧変化dPref
および図12のグラフで表されるテーブルに基づいて増
圧,保持,減圧のいずれかが決定されるのであるが、い
ずれが決定されたかが変数flagの値に基づいて検出され
るのである。増圧が決定された場合には、S214にお
いて流入流量Qinが取得され、減圧が決定された場合に
は、S215において流出流量Qout が取得され、保持
が決定された場合には、S216,217において、流
入流量Qin,流出流量Qout が0とされるとともに、ス
トロークx,移動速度x′,移動加速度x″が0とされ
る。保持の場合には、増圧リニアバルブ150,減圧リ
ニアバルブ152のいずれにおいても、弁子200が弁
座202に着座しているため、上述のストロークx等が
0となる。また、作動液が流れることがないため、流入
流量Qin,流出流量Qout も0とされるのである。
【0069】ここで、増圧リニアバルブ150と減圧リ
ニアバルブ152との両方のソレノイド210に同時に
電圧が印加されることはないため、流入流量Qinおよび
流出流量Qout の両方が同時に0より大きい値になるこ
とはない。本実施形態においては、流入流量Qinが正の
値、流出流量Qout が負の値として表され、S218に
おいて、流入流量Qin(k) と流出流量Qout (k) との和
としてのホイールシリンダにおける作動液の変化液量Q
(k) が求められ、S219において、ホイールシリンダ
の前回の作動液量qw(k-1)に今回の変化液量Q(k) を加
えることにより、今回の作動液量qw(k)が求められる。
S220においては、今回の作動液量qw(k)および図1
5のグラフで表されるテーブルに基づいてホイールシリ
ンダ液圧Pw(k)が推定される。このように推定されたホ
イールシリンダ液圧Pw に基づいてリニアバルブ装置5
6の制御,液圧センサ64の異常検出,作動液漏れ検出
等が行われる。また、推定ホイールシリンダ液圧Pw(k)
は、S212において、増圧時,減圧時液圧差ΔPin,
ΔPout を検出する際に使用される。
【0070】ここで、流入流量Qinの推定について説明
する。S251において、電磁駆動力Fs が、図19に
示すテーブルに基づいて取得される。図に示すように、
電磁駆動力Fs は、ストロークxが大きく、印加電圧V
apply が大きいほど大きくなる。最初にS251が実行
される場合には、ストロークxは0であるため、印加電
圧が大きくなると大きくなる。S252において、移動
加速度x″が上述の(8)式に従って求められる。ここ
で、差圧作用力Fd はS212においてすでに求められ
ている。S253,254において、初期値に順次これ
らの値を加えることにより、ストロークxが求められ、
S255において、ストロークxに基づいて開口面積A
vaが求められ、S256において、上記実施形態におけ
る場合と同様に、(6)式に従って、開口面積Ava,増
圧時液圧差ΔPin等に基づいて流入液量Qinが求められ
る。流出液量Qout の推定も同様で、(7)式に従っ
て、開口面積Avrおよび減圧時液圧差ΔPout に基づい
て行われる。
【0071】このように推定されたホイールシリンダ液
圧に基づいてリニアバルブ装置56の制御電圧が決定さ
れれば、液圧センサ64が不要となる。換言すれば、液
圧センサ64が設けられていなくてもホイールシリンダ
液圧の推定が可能なのであり、液圧センサ64がなくて
もリニアバルブ装置56の制御が可能なのである。液圧
センサ64が不要となれば、その分、ブレーキ液圧制御
装置のコストダウンを図ることが可能となる。また、液
圧センサ64が設けられている場合において、液圧セン
サ64が異常であるとされても、推定ホイールシリンダ
液圧Pw に基づいてリニアバルブ装置45の制御を継続
して行うことが可能となる。禁止フラグをセットする必
要がなくなり、回生制動を減少させて0にする必要がな
くなる。回生制動を継続することが可能となり、運動エ
ネルギの無駄な放出を抑制することができる。
【0072】なお、上記実施形態のブレーキ液圧制御装
置は、回生制動システムを備えない車両用の液圧ブレー
キシステムのブレーキ液圧制御装置にも適用することが
できる。その場合には、車両減速度に基づいてホイール
シリンダ液圧を取得することが可能となり、ホイールシ
リンダ液圧が取得された状態を初期状態とし、その初期
状態からのホイールシリンダ液圧変化量と、流入積算量
および流出積算量とに基づいて現時点におけるホイール
シリンダ液圧を上記実施形態における場合と同様に取得
することができる。また、回生制動システムを備えない
液圧ブレーキシステムに使用された場合には、広くホイ
ールシリンダ液圧を制御する場合に適用することが可能
である。運転者のブレーキペダル19の操作力に対応し
た制動力が得られるようにホイールシリンダ液圧を制御
する制動効果制御、操作力に対応したホイールシリンダ
液圧が得られるように制御するブースタ型制御、ホイー
ルシリンダ液圧を運転者の操作力をアシストした大きさ
に制御するブレーキアシスト制御等に基づいて取得され
た値であってもよい。さらに、ブレーキスイッチ302
は不可欠ではない。液圧センサ62によって検出される
液圧が0より大きいか否かを検出すれば、ブレーキペダ
ル19が踏み込まれたか否かを検出することができる。
【0073】以上、本発明のいくつかの実施形態を説明
したが、これらは文字通りの例示であり、本発明は特許
請求の範囲を逸脱することなく種々の変形,改良を施し
た態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるブレーキ液圧制御装
置を含む液圧ブレーキ装置の構成を示す系統図である。
【図2】上記液圧ブレーキ装置に含まれるリニアバルブ
装置の構成を概略的に示す系統図である。
【図3】上記液圧ブレーキ装置と回生制動装置とを含む
制動装置における制動力制御の概略を示すグラフであ
る。
【図4】上記リニアバルブ装置に含まれるシーティング
弁の弁子に作用する力を示す模式図である。
【図5】上記ブレーキ液圧制御装置に含まれるコントロ
ーラによって実行されるメイン処理の内容の一例を示す
フローチャートである。
【図6】図5のS10においてコールされるVFapply
,VFrelease 算出処理の内容を示すフローチャート
である。
【図7】(a)図6のS42において使用される関数M
APaを示すグラフである。(b)図6のS46におい
て使用される関数MAPr を示すグラフである。
【図8】目標液圧変化dPref を算出するために実行さ
れるタイマ割込処理の内容を示すフローチャートであ
る。
【図9】上記コントローラによって実行されるホイール
シリンダ液圧推定プログラムを示すフローチャートであ
る。
【図10】上記コントローラによって実行される液圧セ
ンサ異常検出プログラムを示すフローチャートである。
【図11】図5のS14においてコールされるVapply
,Vrelease 算出処理の内容の一例を説明するための
図表である。
【図12】上記リニアバルブ装置の制御状態を決定する
ためのテーブルを示すグラフである。
【図13】図5のS16に示した作動液漏れ検出処理の
内容の一例を示すフローチャートである。
【図14】上記リニアバルブ装置のシーティング弁にお
ける開口面積と印加電圧との関係を示す図である。
【図15】ホイールシリンダ液圧と有効ホイールシリン
ダ液量との関係を示すグラフである。
【図16】初期増量の必要性を説明するためのグラフで
あり、出力液圧と実際のホイールシリンダ液圧との関係
を示すグラフである。
【図17】上記実施形態とは別の一実施形態であるブレ
ーキ液圧制御装置のコントローラによって実行されるホ
イールシリンダ液圧推定プログラムを示すフローチャー
トである。
【図18】図17のS214における流入流量の取得を
示すフローチャートである。
【図19】図18のS251で使用される電磁駆動力
と、印加電圧およびストロークとの関係を表すグラフで
ある。
【図20】上記シーティング弁における開口面積の大き
さを示すための図である。
【符号の説明】
62,64:液圧センサ 56:リニアバルブ装置 66:コントローラ 150:増圧リニアバルブ 152:減圧リニアバルブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 17/02 B60T 8/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高圧源とホイールシリンダとの間に設け
    られ、高圧源からホイールシリンダへの作動液の流入を
    許容する増圧許容状態と、作動液の流入を阻止する増圧
    阻止状態とに切り換え可能な増圧制御弁であって、付与
    される電力に応じた大きさの電磁駆動力を発生させる電
    気的駆動装置を含み、当該増圧制御弁の高圧側の液圧と
    ホイールシリンダ側の液圧との差である増圧時液圧差
    が、前記電気的駆動装置に付与される電力に応じた大き
    さとなるまでの間、前記増圧許容状態に保たれるもの
    と、 その増圧制御弁を制御することによりホイールシリンダ
    液圧を制御する増圧弁制御手段とを含むブレーキ液圧制
    御装置であって、 前記増圧弁制御手段が、(a)前記ホイールシリンダ液圧
    の初期状態と、(b)前記増圧時液圧差と前記電気的駆動
    装置に付与された電力とに基づいて取得された前記ホイ
    ールシリンダ液圧が初期状態にあった初期時点から現時
    点までにホイールシリンダに流入した作動液の流入積算
    量と、(c)前記ホイールシリンダにおける有効作動液量
    と液圧との関係とに基づいて、前記ホイールシリンダの
    液圧を推定するホイールシリンダ液圧推定手段を含むこ
    とを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
  2. 【請求項2】前記増圧制御弁が、前記増圧時液圧差と前
    記電気的駆動装置に付与された電力とに基づいて決まる
    開口面積で作動液の流れを許容するものであり、前記ホ
    イールシリンダ液圧推定手段が、前記開口面積と前記増
    圧制御弁が開状態にある時間とに基づいて、その開状態
    にある間に、前記ホイールシリンダに流入した作動液の
    流入積算量を取得する手段を含む請求項1に記載のブレ
    ーキ液圧制御装置。
  3. 【請求項3】前記増圧制御弁が、弁子および弁座と、弁
    子を弁座に着座させる方向に付勢するスプリングとを備
    えたシーティング弁を含み、前記電気的駆動装置が、前
    記弁子を前記弁座から離間させる向きに前記電磁駆動力
    を発生させるものであり、前記増圧制御弁が、前記増圧
    時液圧差に応じた差圧作用力が前記弁子にそれを弁座か
    ら離間させる向きに作用し、その差圧作用力と前記電磁
    駆動 力との和が、前記スプリングの付勢力より大きい
    間、前記弁子が前記弁座から離間させられる状態で設け
    られたものであり、前記ホイールシリンダ液圧推定手段
    が、前記弁子の前記弁座からの離間量に基づいて前記増
    圧制御弁を経て前記ホイールシリンダに流入した作動液
    の流入積算量を取得する手段を含む請求項1または2に
    記載のブレーキ液圧制御装置。
  4. 【請求項4】前記ホイールシリンダ液圧推定手段が、当
    該ホイールシリンダ液圧推定手段によって推定された推
    定ホイールシリンダ液圧を前記ホイールシリンダ側の液
    圧として前記増圧時液圧差を取得する液圧差取得手段を
    含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載のブレーキ
    液圧制御装置。
  5. 【請求項5】前記ホイールシリンダ液圧推定手段が、前
    記ホイールシリンダの液圧がファーストフィルの完了に
    対応する大きさである設定液圧より小さい間、前記ホイ
    ールシリンダの液圧の推定を行うものである請求項1な
    いし4のいずれか1つに記載のブレーキ液圧制御装置。
  6. 【請求項6】 当該ブレーキ液圧制御装置が、 前記増圧制御弁より前記ホイールシリンダの側の液圧を
    検出するホイールシリンダ側液圧検出手段と、 そのホイールシリンダ側液圧検出手段によって検出され
    た検出液圧に基づいてホイールシリンダ液圧を取得する
    検出液圧依拠ホイールシリンダ液圧取得手段と、 その検出液圧依拠ホイールシリンダ液圧取得手段によっ
    て取得された検出液圧依拠ホイールシリンダ液圧と、前
    記ホイールシリンダ液圧推定手段によって推定された推
    定ホイールシリンダ液圧との差が設定範囲外である場合
    に、当該ブレーキ液圧制御装置に異常が生じたとする異
    常検出手段とを含むことを特徴とする請求項1ないし5
    のいずれか1つに記載のブレーキ液圧制御装置。
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