JP3541632B2 - 液圧ブレーキ装置および車両制動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホイールシリンダから流出させられた作動液を収容するリザーバを含む液圧ブレーキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本願出願人の出願であり、未公開である特願平9─60642号の明細書には、(a) マスタシリンダ,(b) ブレーキ,(c) リザーバ,(d) 制御弁装置および(e) 制御弁制御手段を含む液圧ブレーキ装置が記載されている。マスタシリンダは、ブレーキ操作部材の操作状態に応じた液圧を発生させ、ブレーキは、ホイールシリンダへの液圧の供給により作動して車輪の回転を抑制する。リザーバは、排出付勢手段により容積が減少する向きに付勢されている液収容室に、ホイールシリンダから流出させられた作動液を収容する。制御弁装置は、これらマスタシリンダ、ホイールシリンダ、リザーバの間に設けられ、制御弁制御手段によって制御される。
また、本液圧ブレーキ装置においては、リザーバが途中に逆止弁を有する液通路によって、マスタシリンダとホイールシリンダとを接続する液通路に接続されている。逆止弁は、リザーバから液通路の接続部への作動液の流れを許容するが、逆向きの流れを阻止するものである。
【0003】
制御弁装置は、少なくとも、ホイールシリンダをマスタシリンダに連通させるマスタ側連通状態と、ホイールシリンダをマスタシリンダから遮断してリザーバに連通させるリザーバ側連通状態とに切り換え可能なものである。ブレーキ操作部材の操作状態がブレーキ作用状態にある状態で、制御弁装置がマスタ側連通状態に切り換えられれば、ホイールシリンダにはマスタシリンダから作動液が流入させられ、ホイールシリンダ液圧が増圧される。リザーバ側連通状態に切り換えられれば、ホイールシリンダの作動液がリザーバに流出させられ、減圧される。リザーバの液収容室は排出付勢手段により容積が減少する向きに付勢されているが、その排出付勢手段の付勢力は比較的小さくされているため、ホイールシリンダの作動液が排出付勢手段の付勢力に抗して液収容室の容積を増大させつつリザーバに流入することが可能なのである。
操作状態がほぼ解除状態になれば、制御弁装置がマスタ側連通状態に切り換えられる。ほぼ解除状態にある場合には、マスタシリンダの液圧はほぼ大気圧となるため、ホイールシリンダの作動液がマスタシリンダに流出させられるのである。その結果、制動終了時にホイールシリンダの残圧を抜くことができ、引きずりを低減させることができる。また、ホイールシリンダ液圧が減圧されることにより、ホイールシリンダとマスタシリンダとを接続する液通路の液圧が低くなり、リザーバと上述の液通路接続部との間の液圧差が逆止弁の開弁圧以上になれば、リザーバの作動液が逆止弁を経てマスタシリンダに流出させられる。このように、本液圧ブレーキ装置においては、ブレーキ操作部材の操作状態がほぼ解除状態となった場合に、制御弁装置がマスタ側連通状態に切り換えられるのに応じて、リザーバの作動液が逆止弁を経てマスタシリンダに戻される。
【0004】
しかし、上述の液圧ブレーキ装置においては、リザーバの排出付勢手段の付勢力を、液収容室内に逆止弁の開弁圧に確実に打ち勝つ大きさの液圧を発させる大きさにしなければならない。もし、液収容室内の液圧が不足であれば、逆止弁の開弁圧に対応する量の作動液がリザーバに残ってしまい、次にブレーキ操作部材がブレーキ作用状態になった際に、リザーバにはすでにある程度の作動液が収容されていることになる。その結果、一制動中に、ホイールシリンダから流出させられる作動液を収容することができなくなり、減圧を行うことができなくなる場合が生じる。リザーバの排出付勢手段の付勢力を十分大きくすればこの問題は解決されるが、ホイールシリンダ液圧の減圧に際して、ホイールシリンダの作動液がリザーバへ流出しにくくなり、特に摩擦係数が低い路面上におけるホイールシリンダ液圧の制御精度が悪くなる別の問題が生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題,解決手段,作用および効果】
そこで、本発明は、排出付勢手段を有するリザーバを備えた液圧ブレーキ装置において、排出付勢手段の付勢力を小さくしつつブレーキ解除時にリザーバ内に作動液が残ることを確実に回避することを課題としてなされたものである。
この課題は、下記各態様の液圧ブレーキ装置によって解決される。なお、以下の説明において、本発明の各態様をそれぞれ項に分け、項番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用して請求項と同じ形式で記載する。各項に記載の特徴を組み合わせて採用することの可能性を明示するためである。
(1)ブレーキ操作部材の操作状態に応じた液圧を発生させるマスタシリンダと、
液圧により作動するホイールシリンダを備えたブレーキと、
前記ホイールシリンダから流出させられた作動液を、排出付勢手段により容積が減少する向きに付勢されている液収容室に収容するリザーバと、
これらマスタシリンダとホイールシリンダとリザーバとの間に設けられた制御弁装置と、
その制御弁装置を、少なくとも、前記ホイールシリンダを前記リザーバから遮断して前記マスタシリンダに連通させるマスタ側連通状態と、ホイールシリンダをマスタシリンダから遮断して前記リザーバに連通させるリザーバ側連通状態とに切り換えることにより、ホイールシリンダ液圧を制御する制御弁制御手段と
を含む液圧ブレーキ装置において、
前記ブレーキ操作部材の操作状態がほぼ解除状態になった場合に、前記制御弁装置を、前記リザーバとマスタシリンダとを連通させる解除時連通状態に切り換えることにより、前記リザーバの液収容室の液圧が前記マスタシリンダの液圧と同じ大きさになるまで、前記リザーバから作動液を流出させるリザーバ残液戻し手段を設けたことを特徴とする液圧ブレーキ装置(請求項1)
ここにおいて、「解除時連通状態」はリザーバとマスタシリンダとが間に逆止弁等が介在しないで文字通り連通する状態である。したがって、リザーバの排出付勢手段の付勢力を小さくしても液収容室に開弁圧に対応する作動液が残ることがなくなる。前述のように、ブレーキ操作部材の操作状態がほぼ解除状態になった状態では、マスタシリンダの液圧はほぼ大気圧になっているため、リザーバにおいても液収容室の液圧がほぼ大気圧になるまで作動液を流出させることが可能となり、リザーバに作動液が残存する可能性を0または殆ど0にすることができるのである。また、逆止弁を経て戻す場合に比較して作動液を迅速に戻すことが可能となる。
その結果、次の制動時(次に操作状態がブレーキ作用状態に切り換えられた時)には、リザーバには作動液は全く収容されていないか、殆ど収容されておらず、一制動中に、ホイールシリンダから流出させられる作動液を収容できなくなり、減圧できなくなる状態になる可能性が低くなる。また、ホイールシリンダ液圧の減圧時には、ホイールシリンダ内の作動液が容易にリザーバへ流出するため、ホイールシリンダ液圧の制御精度、特に摩擦係数が低くホイールシリンダ液圧が低い場合における制御精度が向上する効果が得られる。
「ブレーキ操作部材のほぼ解除状態」には、ブレーキ操作が完全に解除された完全解除状態や、完全解除状態に近い状態にある完全解除近傍状態等が含まれる。完全解除近傍状態の一例としては、完全に解除される直前の完全解除直前状態等がある。完全解除状態は非制動状態に該当し、完全解除近傍状態は制動状態に該当する。本項記載の液圧ブレーキ装置には、このようなブレーキ操作部材の操作状態を検出するブレーキ操作状態検出手段を設けることが望ましい。ブレーキ操作状態検出手段には、ブレーキ操作部材の操作力,操作量等を直接検出するブレーキ操作力検出手段,ブレーキ操作量検出手段や、マスタシリンダ液圧を検出するマスタシリンダ液圧検出手段等が該当する。前述のように、マスタシリンダには、ブレーキ操作部材の操作状態に応じた大きさの液圧が発生させられる。
排出付勢手段を有するリザーバとしては従来から、(x) ハウジングと、(y) ハウジングに液密かつ摺動可能に嵌合されたピストンと、(z) そのピストンを、これらハウジングとピストンとの間に形成された液収容室の容積を減少させる方向に付勢する圧縮コイルスプリングとを含むものが使用されている。圧縮コイルスプリングが排出付勢手段として機能するのである。このリザーバにおいては、液収容室に収容された作動液が、圧縮コイルスプリングの付勢力によって、流出させられる。この圧縮コイルスプリングのセット荷重を逆止弁の開弁圧より大きなものとすれば、リザーバとマスタシリンダとを連通状態にしなくても、液収容室に収容された作動液を逆止弁を経て0になるまで流出させることが可能となる。しかし、セット荷重を大きくすると、リザーバの液収容室には、圧縮コイルスプリングのセット荷重より大きな液圧の作動液しか収容できないことになり、減圧時にホイールシリンダから流出させられた作動液を収容できなくなるおそれがある。また、液収容室に収容された作動液量が増大するにつれて圧縮コイルスプリングの付勢力が大きくなるため、一層そのおそれが増大する。特に、摩擦係数の低い路面上における液圧制御時には、ホイールシリンダ液圧が比較的低いため、ホイールシリンダの作動液のリザーバへの流出が困難であり、液圧制御精度が低下し易い。そのため、圧縮コイルスプリングのセット荷重を、逆止弁の開弁圧に十分打ち勝つ液圧を発生させる大きさに設定することが困難なのである。それに対して、本項に記載の液圧ブレーキ装置によれば、リザーバとマスタシリンダとが逆止弁を介することなく連通させられるため、圧縮コイルスプリングのセット荷重を大きくすることなく、作動液を確実に、迅速にマスタシリンダに戻すことが可能となる。
なお、制御弁装置を、マスタ側連通状態,リザーバ側連通状態に切り換えることによりホイールシリンダ液圧を制御する上述の制御弁制御手段をホイールシリンダ液圧制御手段と称し、このホイールシリンダ液圧制御手段と、制御弁装置を、解除時連通状態に切り換えることによりリザーバの作動液をマスタシリンダに戻すリザーバ残液戻し手段とを合わせて制御弁制御手段と総称することも可能である。
(2)前記リザーバが、収容し得る作動液の最大量であるリザーバ容量が、前記ホイールシリンダの非制動状態から制動状態までに収容し得る作動液の最大量であるホイールシリンダ容量より小さいものである(1) 項に記載の液圧ブレーキ装置。
このように、リザーバの容量がホイールシリンダ容量より小さい場合には、(1) 項に記載の構成が特に重要になる。リザーバ容量が小さい場合には、制動開始時にリザーバに作動液が残っていると、一制動中に、ホイールシリンダから流出させられる作動液をすべて収容できなくなる可能性が特に大きくなる。そこで、ブレーキ操作部材の操作状態がほぼ解除状態にされた場合に、リザーバに残存する作動液量を0にしておくことが特に望まれるのである。
(3)前記制御弁装置が、前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとを接続する第1の液通路の途中に設けられ、供給される電気エネルギの制御により連通状態と遮断状態とに切り換え可能な増圧弁と、その液通路の増圧弁よりホイールシリンダ側の部分とリザーバとを接続する第2の液通路に設けられ、供給される電気エネルギの制御により連通状態と遮断状態とに切り換え可能な減圧弁とを含み、前記リザーバ残液戻し手段が、前記ブレーキ操作部材の操作状態がほぼ解除状態になった場合に、前記増圧弁と前記減圧弁との両方を連通状態にすることにより、前記リザーバと前記マスタシリンダとを、前記第1,第2の液通路を介して連通させる解除時連通状態に切り換える制御弁連通状態切換手段を含む(1) 項または(2) 項に記載の液圧ブレーキ装置(請求項2)
増圧弁を連通状態に、減圧弁を遮断状態に切り換えれば、ホイールシリンダ液圧が増圧され、増圧弁を遮断状態に、減圧弁を連通状態に切り換えれば、ホイールシリンダ液圧が減圧され、増圧弁および減圧弁を遮断状態に切り換えれば、保持される。また、マスタシリンダ液圧が大気圧である状態または大気圧に近い状態で、増圧弁および減圧弁の両方を連通状態に切り換えてリザーバとマスタシリンダとを連通させれば、リザーバのすべての作動液または殆どすべての作動液をマスタシリンダに流出させることができる。
ここで、ブレーキ操作部材の操作状態がほぼ解除状態にある場合に、増圧弁が連通状態に切り換えられれば、ホイールシリンダとマスタシリンダとを連通させることができ、ホイールシリンダ液圧を減圧することが可能となり、引きずりを低減させることができる。したがって、増圧弁および減圧弁の両方を連通状態に切り換えれば、引きずりの低減とリザーバ残液戻しとの両方の効果を得ることができる。
なお、増圧弁,減圧弁は、連通状態(開状態)と遮断状態(閉状態)とに単に開閉可能な増圧用開閉弁,減圧用開閉弁とすることも、各々の連通状態において、当該弁における流路面積に応じた流量で作動液の流れを許容し、あるいは当該弁の前後にその弁の電気的駆動装置に付与される電気エネルギに応じた液圧差が存在する間作動液の流れを許容する増圧制御弁,減圧制御弁とすることもできる。
(4)前記増圧弁と前記減圧弁とが、電気的駆動装置に付与される電気エネルギ量に応じた液圧差が存在する間作動液の流れを許容し、かつ、その電気エネルギ量が大きい場合に小さい場合より小さい液圧差まで作動液の流れを許容するものであり、前記リザーバ残液戻し手段が、前記ブレーキ操作部材の操作状態がほぼ解除状態になった場合に、前記増圧弁と前記減圧弁とに、最大の電気エネルギ量を供給する手段を含む (3) 項に記載の液圧ブレーキ装置(請求項3)。
(5)前記(1) 項ないし(4) 項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキ装置と、電動モータの回生制動により回生制動力を発生させる回生ブレーキ装置と、その回生ブレーキ装置において発生させられた回生制動力と液圧ブレーキ装置において発生させられた液圧制動力との和が所要制動力となるように、液圧ブレーキ装置と回生ブレーキ装置との少なくとも一方を制御する制動力制御手段とを含む車両用制動装置。
減圧可能な場合(リザーバが作動液を収容し得る状態にある場合)には、車輪の運動エネルギを有効に蓄えるため、回生制動力が電動モータの回転数等に基づいて決定される最大値となるように制御され、それに応じてホイールシリンダ液圧が増圧,減圧させられることにより液圧制動力が制御される。
減圧不能な場合(リザーバが作動液を収容できない状態にある場合)には、ホイールシリンダ液圧を制御することができないため、回生制動力が0とされる。ホイールシリンダ液圧がマスタシリンダ液圧とほぼ同じにされることにより、液圧制動力が所要制動力とほぼ同じ大きさとされる。このように、回生制動力が0とされると、運動エネルギの無駄な放出量が多くなる。
それに対して、本項に記載の車両用制動装置におけるように、ブレーキ操作部材の操作状態がほぼ解除状態になった場合に、リザーバの作動液が0または殆ど0とされれば、次の制動時に減圧不可能になる可能性が低くなり、運動エネルギの無駄な放出量が多くなる可能性を低くすることができる。
(6)前記(1) 項ないし(4) 項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキ装置と、電動モータの回生制動により回生制動力を発生させる回生ブレーキ装置とを含み、前記制御弁制御手段が、前記回生ブレーキ装置において発生させられた回生制動力と前記液圧ブレーキ装置において発生させられた液圧制動力との和が前所要制動力となるように、前記制御弁装置を制御する回生協調制御手段を含み、前記リザーバ残液戻し手段が、前記ブレーキ操作部材の操作中において、回生協調制御手段による制御弁装置の制御が行われた後に、その操作状態がほぼ解除状態になった場合に、前記リザーバとマスタシリンダとを連通させるものであることを特徴とする車両制動装置(請求項4)。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態としての液圧ブレーキ装置について図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、本液圧ブレーキ装置は、駆動源として内燃機関と電動モータとを共に含むハイブリッド車両に用いられるものである。本実施形態のハイブリッド車両の制動は、本液圧ブレーキ装置による制動と、図示しない回生制動システムによる回生制動とによって行われる。回生制動システムは、上記電動モータを発電機として機能させ、それによって発生させられた電気エネルギを蓄電池に蓄積することによって、車両を制動するシステムである。電動モータの回転軸が外部からの力によって強制的に回転させられる際に、電動モータに発生する起電力により蓄電池を充電すれば、電動モータが上記外部の力に対して負荷となり、制動力が発生する。制動中の車両の運動エネルギの一部が電気エネルギに変換され、蓄電池内に蓄えられるのであり、このことによって車両を制動し得るのみならず、蓄電池内の電気的エネルギの消費を低減させることができ、無充電で走行できる距離を延ばすことができる。
【0007】
回生による制動力(回生制動力と称する)の大きさは、常に一定であるわけではない。例えば、車両の走行速度が極めて小さい場合は、回生制動力はほとんど0になる。また、蓄電池の容量が完全に満たされている場合に、過充電による蓄電池の劣化を防止するためにエネルギの回生を禁止する制御が行なわれることが多く、この場合、回生が禁止されている期間中は回生制動力は0になる。一方、車両の制動力の大きさは、回生制動力の大きさとは直接関係のない操縦者の意図に応じた大きさに制御される必要がある。したがって、液圧ブレーキ装置によって発生させるべき液圧制動力の大きさは、操縦者の意図に応じた所要制動力から回生制動力を減じた大きさであることになる。このような液圧ブレーキ装置の制御を回生制動協調制御と称する。所要制動力の大きさは、ブレーキ操作部材の操作力,操作ストローク,操作時間等ブレーキ操作状況から容易に知ることができる。また、回生制動力の大きさに関する情報は回生制動システムから得ることができる。
【0008】
図3に操縦者の意図に応じた所要制動力と、回生制動システムによる回生制動力と、液圧ブレーキ装置による液圧制動力との関係の一例を概念的に示す。図から明らかなように、ブレーキ操作状況から取得される所要制動力が増大するにつれて、液圧制動力および回生制動力が増大させられる。図においては、回生制動力が液圧制動力よりやや遅れて増大を開始することとされているが、これは不可欠なことではない。回生制動力が車速等に応じて決まる最大値に達した後は、所要制動力の増大は液圧制動力の増大により実現される。本実施形態においては、回生制動システムが回生制動力をできる限り有効に利用するように構成されているのである。制動が行われれば車速が漸減するため、回生制動力も漸減するのであるが、図は、単純化のために回生制動力が一定であるとして描かれている。車速が小さくなり、所要制動力が減少すれば、回生制動力が減少させられる。車速が小さくなり、電動モータの回転数が小さくなった場合には、大きな回生制動力を得るために多くの電力が必要になったり、回生制動力の制御ハンチングが大きくなったりするため、回生制動力が減少させられ0とされるのである。回生制動力が0にされた後は液圧制動力が所要制動力とほぼ等しい大きさを保って減少することになる。
【0009】
図1に示すように、液圧ブレーキ装置は、マスタシリンダ12と、ポンプ14と、そのポンプ14から供給される高圧の作動液を蓄積するアキュムレータ16とを含んでいる。マスタシリンダ12およびポンプ14には、マスタリザーバ18から作動液が供給される。マスタシリンダ12は、2つの加圧室F,Rを含むものであり、2つの加圧室には、ブレーキペダル19の踏み込みに応じてほぼ同じ大きさの液圧が発生させられるようにされている。加圧室Rには、上記ポンプ14,アキュムレータ16およびマスタリザーバ18等を含む定液圧源20が接続され、ブレーキペダル19の踏込みに伴って、定液圧源20から作動液が供給される。それにより、ブレーキペダル19のストロークを軽減させることが可能となる。
アキュムレータ16には、ポンプ14の作動によって、設定圧力範囲(本実施形態においては、17MPa〜18MPa≒174〜184kgf/cm2 の範囲)の作動液が常時蓄えられるようにされている。アキュムレータ16には図示しない圧力スイッチが取り付けられており、この圧力スイッチのヒステリシスを有するON,OFFに応じてポンプ14が起動,停止させられるようになっているのであり、ポンプ14およびアキュムレータ16によって、ほぼ一定の液圧が供給可能とされている。
【0010】
マスタシリンダ12の加圧室Fには液通路22を介して、左前輪23のホイールシリンダ24(FLシリンダ24と略称する)と、右前輪25のホイールシリンダ26(FRシリンダ26と略称する)とが接続されている。液通路22の加圧室Fの近傍には、液圧センサ28が設けられ、液圧センサ28によってマスタシリンダ圧Pmcが検出される。液通路22には、常開の電磁開閉弁30,電磁開閉弁32が設けられ、ホイールシリンダ24,26とマスタリザーバ18とを接続する液通路40の途中には、それぞれアンチロック制御用減圧弁としての電磁開閉弁42,44が設けられている。
【0011】
一方、加圧室Rには、液通路48を介して、左後輪49のホイールシリンダ50(RLシリンダ50と略称する)と、右後輪51のホイールシリンダ52(RRシリンダ52と略称する)とが接続されている。液通路48の途中には、加圧室R側から順に、リニアバルブ装置56,アンチロック制御用増圧弁としての電磁開閉弁58およびプロポーショニングバルブ60(Pバルブ60と略称する)が設けられている。液通路48の、マスタシリンダ12とリニアバルブ装置56との間の部分には液圧センサ62が、また、リニアバルブ装置56と電磁開閉弁58との間の部分には液圧センサ64が設けられている。液圧センサ62によって取得される液圧を入力液圧Pin,液圧センサ64によって取得される液圧を出力液圧Pout1と称する。これら液圧センサ62,64によって、リニアバルブ装置56の両側の液圧が検出可能とされている。
液圧センサ28,62および64の出力信号は、コントローラ66に供給され、マスタシリンダ液圧Pmc,入力液圧Pinおよび出力液圧Pout1が取得される。後述するように、コントローラ66は、液圧センサ64によって検出された出力液圧Pout1に基づいて、リニアバルブ装置56の状態を制御する。ホイールシリンダ50,52とマスタリザーバ18とを接続する液通路70の途中にアンチロック制御用減圧弁としての電磁開閉弁72が設けられている。
【0012】
液通路48のリニアバルブ装置56と電磁開閉弁58との間の部分には、液通路76が接続されている。液通路76は、リニアバルブ装置56とホイールシリンダ24,26とを接続する通路であり、液通路76の途中には、常閉の電磁開閉弁80が設けられている。また、電磁開閉弁80のホイールシリンダ24,26側には、それぞれアンチロック制御用増圧弁としての電磁開閉弁84,86が設けられている。
液通路76の、電磁開閉弁80と電磁開閉弁84および電磁開閉弁86との間の部分には、液圧センサ88が接続されている。液圧センサ88による測定結果を、出力液圧Pout2と称する。出力液圧Pout2は、液圧センサ64の出力が正常か否かの監視に使用される。電磁開閉弁80が開状態にある場合に、液圧センサ64により検出された出力液圧Pout1の値が出力液圧Pout2の値から離れている場合に液圧センサ64の出力が異常である可能性があると判定されるのである。これは、電磁開閉弁80が開状態にあれば、液圧センサ64と液圧センサ88とが互いに連通した状態となり、液圧センサ64,88が共に正常であれば、出力液圧Pout1と出力液圧Pout2とがほぼ同じになるはずであるからである。本実施形態においては、この判定結果に基づいて操縦者に液圧センサ異常が報知されるが、この報知と共に、あるいは報知に代えて、コントローラ66によるリニアバルブ装置の制御が禁止されるようにしてもよい。
これら複数の各電磁開閉弁30,32,42,44,58,72,80,84および86のソレノイドは、コントローラ66からの指令に基づいて制御される。
【0013】
上記、常開の電磁開閉弁58をバイパスするバイパス通路の途中には、逆止弁90が設けられ、電磁開閉弁84,86をそれぞれバイパスするバイパス通路の途中には、それぞれ逆止弁92,94が設けられている。これらの逆止弁90,92および94は、対応するホイールシリンダからマスタシリンダ12に向かう作動液の流れは許容するが、その逆向きの流れは阻止する向きに取り付けられており、これら逆止弁により、ブレーキペダル19の踏込みが緩められた場合にホイールシリンダの作動液をマスタシリンダ12に早急に戻すことが可能となる。なお、本液圧ブレーキ装置には、ホイールシリンダ24,26の液圧をそれぞれ検出する液圧センサ110,112が設けられるとともに、ホイールシリンダ50,52の液圧を共通に検出する液圧センサ114が設けられている。
また、各車輪23,25,49,51の車輪速度を各々検出する車輪速センサ116〜122が設けられ、これら車輪速センサ116〜122の出力信号に基づいて各車輪の制動スリップ状態が取得される。
【0014】
図2は、図1に示したリニアバルブ装置56の構成を概略的に示す系統図である。リニアバルブ装置56は、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152,減圧用リザーバ154および逆止弁156,158を含んでいる。増圧リニアバルブ150は、液通路48の途中に設けられ、減圧リニアバルブ152は、液通路48と減圧用リザーバ154とを接続する液通路160の途中に設けられている。増圧リニアバルブ150をバイパスするバイパス通路の途中には、上述の逆止弁156が、ホイールシリンダからマスタシリンダ12に向かう作動液の流れは許容するが、その逆の流れは阻止する向きに設けられている。減圧リニアバルブ152をバイパスするバイパス通路の途中には、上記逆止弁158が減圧用リザーバ154からマスタシリンダ12に向かう作動液の流れは許容するが、その逆の流れは阻止する向きに設けられている。
【0015】
減圧用リザーバ154は、ハウジング182と、そのハウジング182内に液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン184とを備えている。それらハウジング182とピストン184との間に、ピストン184の移動につれて容積が変化する液収容室186が形成されており、ピストン184は排出付勢手段としての圧縮コイルスプリング188の弾性力によって液収容室186の容積が減少する向きに付勢されている。
液収容室186内に収容された作動液は圧縮コイルスプリング188の弾性力によって加圧されることとなるが、圧縮コイルスプリング188の弾性力は比較的小さく、上記加圧に基づく液収容室186内の液圧は、制動時にマスタシリンダ12やホイールシリンダ24,26,50,52に発生させられる液圧に対して無視し得る程度の大きさである。したがって、減圧時にホイールシリンダから流出させられた作動液が圧縮コイルスプリング188の付勢力に抗して液収容室186の容積を増大させつつ減圧用リザーバ154に流入することが可能となるのである。本実施形態においては、制動終了直前に、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152が共に開状態に切り換えられ、一制動中に液収容室186に収容された作動液が、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152を経てマスタシリンダ12に戻されるようにされている。
このように、制動終了直前、あるいは、非制動時(制動終了時)に増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152を開状態にすれば、圧縮コイルスプリング188のセット荷重を大きくしなくても、液収容室186の殆どすべてをマスタシリンダ12に戻すことが可能となり、ブレーキ解除時に作動液が残ることを回避することが可能となる。換言すれば、圧縮コイルスプリング188の付勢力を小さくすることができ、液収容室186に作動液が残っていることに起因して減圧し難くなることを良好に回避することが可能となるのである。
【0016】
増圧リニアバルブ150は、シーティング弁190と、電磁付勢装置194とを含んでいる。シーティング弁190は、弁子200と、弁座202と、弁子200と一体的に移動する被電磁付勢体204と、弁子200が弁座202に着座する向きに被電磁付勢体204を付勢する付勢手段としての弾性部材としてのスプリング206とを含んでいる。また、電磁付勢装置194は、ソレノイド210と、そのソレノイド210を保持する樹脂製の保持部材212と、第一磁路形成体214と、第二磁路形成体216とを含んでいる。ソレノイド210の巻線の両端に電圧が印加されると、ソレノイド210の巻線に電流が流れ、磁界が形成される。磁束は、その多くが、第一磁路形成体214,被電磁付勢体204,第二磁路形成体216と被電磁付勢体204との間のエアギャップおよび第二磁路形成体216を通る。ソレノイド210の巻線に印加される電圧を変化させれば、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216との間に作用する磁気力も変化する。この磁気力の大きさは、ソレノイド210の巻線に印加される電圧の大きさと共に増加し、それら印加する電圧と磁気力との関係は予め知ることができる。したがって、印加電圧をその関係に従って連続的に変化させることにより、被電磁付勢体204を付勢する力(上述の磁気力のうちの被電磁付勢体204を第二磁路形成体216に接近させる方向の力のことであり、以下、スプリング206の付勢力と区別するために電磁駆動力と称する。電磁駆動力は、スプリングの付勢力とは反対向きの力であり、弁子200を弁座202から離間する方向の力である。)の大きさを任意に変更することができる。なお、被電磁付勢体204の第一磁路形成体216に対向する面には、係合突部220が形成され、それに対する第一磁路形成体216の被電磁付勢体204に対向する部分には、係合凹部222が形成されており、被電磁付勢体204と第一磁路形成体216との相対位置の変化に応じて係合突部220と係合凹部222との間の対向部の面積が変化させられる。
【0017】
被電磁付勢体204と第二磁路形成体216とによって形成される磁路の磁気抵抗は、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216との軸方向の相対的な位置に依存して変化する。具体的には、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216との軸方向の相対位置が変化すれば、被電磁付勢体204の嵌合突部220と第二磁路形成体216の嵌合凹部222との微小間隙を隔てて互いに対向する円筒面(嵌合突部220の外周面と嵌合凹部222の内周面とのうち互いに対向する部分)の面積が変化する。もし、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216とが単純に端面同士で微小間隙を隔てて対向しているのであれば、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216との軸方向の距離の減少、すなわち接近に伴って磁気抵抗が加速度的に減少し、両者の間に作用する磁気力が加速度的に増大する。それに対し、本実施形態の増圧リニアバルブ150においては、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216との接近に伴って、嵌合突部220と嵌合凹部222との上記円筒面の面積が増加し、この円筒面を通る磁束が増加する一方、被電磁付勢体204の端面と第二磁路形成体216の端面とのエアギャップを通る磁束が減少する。その結果、ソレノイド210に印加される電圧が、それほど大きくない範囲内において一定であれば、被電磁付勢体204を第二磁路形成体216方向へ付勢する磁気力(電磁駆動力)が、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216との軸方向の相対的な位置に関係なくほぼ一定となる。一方、スプリング206による被電磁付勢体204を第二磁路形成体216から離間する方向へ付勢する付勢力は、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216との接近に伴って増大する。したがって、弁子200に液圧差に基づく付勢力が作用していない状態では、被電磁付勢体204の第二磁路形成体216方向への移動が、上記スプリング206の付勢力と電磁駆動力とが等しくなることにより停止することとなる。
【0018】
減圧リニアバルブ152も、基本的には増圧リニアバルブ150と同じものであるが、後述するように、弾性部材としてのスプリング224の付勢力が増圧リニアバルブ150のスプリング206と異なっている。減圧リニアバルブ152の構成のうち、増圧リニアバルブ150と同様であるものには、同じ符号を付して示して説明を省略する。
【0019】
図4に示すように、増圧リニアバルブ150には、スプリング206の付勢力Fp ,それの前後の液圧差に応じた差圧作用力Fd ,電磁駆動力Fs が作用する。増圧リニアバルブ150の前後の液圧差は、液圧センサ62,64によって各々検出される入力液圧Pin,出力液圧Pout1の差として検出することができる。差圧作用力Fd と電磁駆動力Fs との和が、スプリング206の付勢力Fp より大きくなると弁子200が弁座202から離間させられる。電磁駆動力Fs が0の場合には、差圧作用力Fd がスプリング206の付勢力Fp より大きくなれば離間させられるが、この時の差圧の大きさを開弁圧と称する。本実施形態においては、増圧リニアバルブ150の開弁圧は、約3MPa(約30.6kgf/cm2 )とされている。
【0020】
減圧リニアバルブ152についても同様であり、スプリング224の付勢力Fp ,それの前後の液圧差に応じた差圧作用力Fd ,電磁駆動力Fs が作用する。また、減圧リニアバルブ152の開弁圧は、18MPa(≒184kgf/cm2 。定液圧源20により供給される作動液の最大液圧)よりも大きくされている。スプリング224による付勢力が、スプリング206によるそれよりも大きく(約6倍)されている。本実施形態の液圧ブレーキ装置においては、減圧リニアバルブ152における弁子200に作用する作動液の液圧の最大値は、ポンプ14により供給され、また、アキュムレータ16に蓄えられる最大の液圧である。したがって、操縦者の踏力による液圧がこの最大液圧を上回って、減圧リニアバルブ152に作用する作動液の液圧が、減圧リニアバルブ152の開弁圧を上回ることは事実上ないと考えてよい。
また、減圧リニアバルブ152の前後の液圧差は、出力液圧Pout1と減圧用リザーバ154における液圧Pres との差として求められる。
【0021】
液通路22にはストロークシミュレータ230(図1参照)が接続され、電磁開閉弁30および32が共に閉状態とされた状態においてブレーキペダル19のストロークが殆ど0になることが回避されている。ストロークシミュレータ230は、プランジャ232の移動によって容積が変化する容器である。プランジャ232はスプリング234によって内容積が減少する向きに付勢されているので、ストロークシミュレータ230の作動液の蓄積量は、加圧室Fが供給する作動液の液圧(マスタシリンダ液圧Pmc)が増加するほど多くなる。このことにより、電磁開閉弁30および32が共に閉状態とされた場合においても、ブレーキペダル19のストロークがほぼ0になり、操縦者に違和感を与えることが回避される。また、ストロークシミュレータ230のスプリング234が配設されている空間は、液通路236によって液通路40に連通させられており、プランジャ232と容器との間の隙間から作動液が漏れた場合においても、その漏れ出た作動液がマスタリザーバ18に戻される。これによって、液圧ブレーキ装置内の作動液量が減少することが回避される。
【0022】
液圧ブレーキ装置が正常に作動している状態において、回生制動協調制御が行なわれている通常制動時においては、電磁開閉弁30,32が閉状態、電磁開閉弁80が開状態とされ、また、他の電磁開閉弁は図1に示した状態とされる。FLシリンダ24およびFRシリンダ26への作動液の供給が、マスタシリンダ12の加圧室Fから液通路22を経て行なわれるのではなく、加圧室Rから液通路48,76を経て行なわれるのであって、RLシリンダ50およびRRシリンダ52と同様にリニアバルブ装置56によって制御された作動液が供給されるのである。すべてのホイールシリンダの液圧が、リニアバルブ装置56の増圧リニアバルブ150および減圧リニアバルブ152の制御により制御されることになる。減圧時においては、ホイールシリンダから作動液が流出させられ、減圧用リザーバ154に収容される。
【0023】
回生制動協調制御とアンチロック制御とが共に行なわれる場合には、リニアバルブ装置56と、電磁開閉弁との両方が制御される。原則として、リニアバルブ装置56は、回生制動力と液圧制動力との和が運転者の意図する所要制動力となるように制御され、電磁開閉弁は、制動スリップ状態がほぼ適正状態に保たれるように制御されるが、後述するが、急減圧を行う必要がある特殊な場合には、リニアバルブ装置56が制御されることもある。アンチロック制御においては、電磁開閉弁30および32が閉状態、電磁開閉弁80が開状態とされた上で、電磁開閉弁42,44,58,72,84および86が、必要に応じてそれぞれ独立に制御される。本実施形態においては、左右後輪のホイールシリンダの液圧と、FLシリンダ24の液圧と、FRシリンダ26の液圧との三者が、互いに独立に制御される。ホイールシリンダ液圧を減圧する場合には、ホイールシリンダの作動液は、電磁開閉弁42,44,72を経てマスタリザーバ18に流出させられるが、急減圧が必要な場合には、後輪側のホイールシリンダ50,52の作動液は、電磁開閉弁58を経て、前輪側のホイールシリンダ24,26の作動液は、電磁開閉弁84,86および80を経て減圧用リザーバ154にも流出させられる。アンチロック制御については、後述する。
【0024】
本液圧ブレーキ装置のコントローラ66が故障して電磁開閉弁やリニアバルブ装置56を制御し得ない状態になれば、各電磁開閉弁が図1に示した状態になり、かつ、リニアバルブ装置56の増圧リニアバルブ150および減圧リニアバルブ152のソレノイド210の巻線に電圧が印加されない状態とされる。この際、コントローラ66が定液圧源20を作動させるようにしても、作動させないようにしてもよい。定液圧源20から作動液が供給されなくても、マスタシリンダ12が通常のタンデム式マスタシリンダと同様に機能して加圧室FおよびRからほぼ等しい液圧を供給するからである。各電磁開閉弁が図1に示した状態になれば、加圧室Fからの作動液がFLシリンダ24およびFRシリンダ26に、また、加圧室Rからの作動液が増圧リニアバルブ50を経てRLシリンダ50およびRRシリンダ52に供給される。ただし、FLシリンダ24およびFRシリンダ26に供給される作動液の液圧は、加圧室Fから供給される液圧にほぼ等しいのに対して、RLシリンダ50およびRRシリンダ52に供給される作動液の液圧は、加圧室Rから供給される作動液の液圧よりも、増圧リニアバルブ150の開弁圧約3MPaだけ小さくなる。このように、前輪と後輪とでホイールシリンダに供給される作動液の液圧は異なることになるが、前輪と後輪との両方のホイールシリンダに液圧が供給され、しかも、前輪のホイールシリンダに供給される作動液の液圧が減少することはないので、コントローラ66が故障した場合の制動性能の低下が小さくて済む。また、供給される作動液の液圧が減少するのが後輪側であるので、制動中の車両の姿勢安定性が良好に保たれる。
【0025】
なお、本実施形態においては、定液圧源20が故障して加圧室Rに液圧が供給されなくなった場合には、コントローラ66がすべての電磁開閉弁およびリニアバルブ装置56に電流を供給しない状態になるように構成されている。そのため、定液圧源20の故障時には、本液圧ブレーキ装置は上記コントローラ66の故障時であって、定液圧源20が作動させられない場合と同様に作動する。しかし、定液圧源20が故障しても、コントローラ66が正常であれば、コントローラ66が通常通り電磁開閉弁およびリニアバルブ装置56を制御するように構成することも可能であり、その場合には、定液圧源20から作動液が供給されない分だけブレーキペダル19の操作ストロークが通常より長くなるのみで済む。ただし、この場合には、ブレーキペダル19の操作ストロークをできる限り小さくするために、液通路22とストロークシミュレータ230との間に常閉の電磁開閉弁を設け、定液圧源20の故障時にはこの電磁開閉弁が閉状態とされて、ストロークシミュレータ230に作動液が流入しないようにすることが望ましい。
【0026】
コントローラ66は、ROM,RAMおよびPU(プロセッシングユニット)等を備えたコンピュータを主体とするものであり、ROMには図6,7、図10,図17,18および図20に示すフローチャートで表される処理を始めとする種々の制御プログラム、図14に示すテーブル等が記憶されている。
図5は、コントローラ66によって、制御対象としてのリニアバルブ装置56にフィードフォワード制御とフィードバック制御とが行われる場合の概要を示す機能ブロック図である。制御の目標値は目標液圧Pref であり、出力は出力液圧Pout1である。なお、本実施形態においては、目標液圧Pref は液圧センサ28の出力値であるマスタシリンダ液圧Pmc(操縦者の意志に対応する)から、回生制動による制動力に対応する液圧を減じた値として取得される。また、後述するが、リニアバルブ装置56には、フィードフォワード制御やフィードバック制御とは別の制御が行われる場合もある。
【0027】
フィードフォワード制御部300は、目標液圧Pref に基づいて、フィードフォワード増圧電圧VFapply およびフィードフォワード減圧電圧VFrelease を算出する。また、フィードバック制御部302は、目標液圧Pref から出力液圧Pout1を減じた値である偏差errorを0に近づけるための電圧として、フィードバック増圧電圧VBapply およびフィードバック減圧電圧VBrelease を算出する。本実施形態におけるコントローラ66の制御は、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを共に含んでいる。
【0028】
図6は、コントローラ66のROMに記憶された制御プログラムのメイン処理の主要部を示すフローチャートである。まず、ステップ10(以下、S10と略記する。他のステップについても同じ)において、フィードフォワード増圧電圧VFapply およびフィードフォワード減圧電圧VFrelease を算出するサブルーチンであるVFapply ,VFrelease 算出処理がコールされる。この処理は、上述のフィードフォワード制御部300の処理に相当する(内容は後述する)。つぎに、S12において、フィードバック増圧電圧VBapply およびフィードバック減圧電圧VBrelease を、偏差errorに基づいて算出するVBapply ,VBrelease 算出処理がコールされる。この処理は、上述のフィードバック制御部302の処理に相当するものであり、例えば、一般的なPID制御や、PID制御をさらに簡略化したI制御等によって、偏差errorを0に近づける。この処理が完了すれば、S14において、増圧リニアバルブ150のソレノイド210に印加する電圧(増圧側印加電圧Vapply と称する)と、減圧リニアバルブ152のソレノイド210に印加する電圧(減圧側印加電圧Vrelease と称する)とを算出するサブルーチンであるVapply ,Vrelease 算出処理がコールされる。このサブルーチンVapply ,Vrelease 算出処理において、増圧側印加電圧Vapply の値は、主として、フィードフォワード増圧電圧VFapply およびフィードバック増圧電圧VBapply の和の値(少なくとも一方が0の場合も含む)とされるが、それ以外の値とされる場合もある。減圧側印加電圧Vrelease の値も同様に、主として、フィードフォワード減圧電圧VFrelease およびフィードバック減圧電圧VBrelease の和の値(少なくとも一方が0の場合も含む)とされるが、それ以外の値とされる場合もある。詳細は後述する。
【0029】
S14に続いて、S15において、アンチロック制御において急減圧モードが選択されているか否かが判定される。アンチロック制御中でない場合、または、アンチロック制御中であっても急減圧モードが選択されていない場合には、S16は実行されないで、S18において上述の増圧側印加電圧Vapply と減圧側印加電圧Vrelease とが、それぞれ増圧リニアバルブ150および減圧リニアバルブ152のソレノイド210に印加される。アンチロック制御中において急減圧モードが選択されている場合には、S16において、増圧側印加電圧Vapply が0とされ、減圧側印加電圧Vrelease が後述する最大印加電圧Vmax とされる。S18において、増圧リニアバルブ150のソレノイド210には電圧は印加されず、減圧リニアバルブ152のソレノイド210には、最大印加電圧Vmax が印加されることになる。急減圧モードが設定された場合には、電磁開閉弁58,84,86に減圧用リザーバ154が連通させられ、ホイールシリンダの作動液を電磁開閉弁72,42,44を経てマスタリザーバ18に戻すだけでなく、電磁開閉弁58,84,86および減圧リニアバルブ152を経て減圧用リザーバ154にも戻される。
【0030】
図7は、図6のS10においてコールされるVFapply ,VFrelease 算出処理の内容を示すフローチャートであり、上述のようにフィードフォワード制御部300の処理に相当するものである。まず、S20において、ある一定時間(後述するように、本実施形態においては6msとされている)ごとの目標液圧Pref (これの算出については後述する)の変化分である目標液圧変化dPref が正であるか否か、つまり、目標液圧Pref が増加中であるか否かが判定される。増加中である場合は、S22において、変数startFlag の値が0であるか否かが判定される。変数startFlag の値が0であれば、S24において増圧側初期値変数Pinita に目標液圧Pref の値が代入され、かつ、変数startFlag に1が代入された後に、また、変数startFlag の値が0でなければS24をバイパスして初期値設定処理が終了する。なお、メイン処理の図示を省略する初期設定において、変数startFlag は0に設定されている。S20の判定結果がNOである場合(目標液圧変化dPref が正でない場合)は、S26において、目標液圧変化dPref が負であるか否かが判定される。この判定結果がYESであれば、S28において、変数startFlag が1であるか否かが判定される。S28の判定結果がYESであれば、S30において、減圧側初期値変数Pinitr に目標液圧Pref の値が代入され、かつ、変数startFlag に0が代入される。S22,S26若しくはS28の判定結果がNOであるか、または、S24若しくはS30の処理が終了した場合に、S40の処理が実行される。
【0031】
S40においては、減圧側印加電圧Vrelease が正であるか否か、つまり、リニアバルブ装置56において減圧が行われているか否かが判定される。減圧中であれば、S42において、フィードフォワード増圧電圧一定値VFcaが、次式に基づいて算出される。
VFca←MAPa (Pin−Pout1) ・・・(1)
ここで、関数MAPa は、Pin−Pout1(これを、増圧側液圧差Pdiffa と称する)を引数として、フィードフォワード増圧電圧一定値VFcaを返す関数である。図8に関数MAPa の一例を示す。この図に示すように、関数MAPa は、増圧側液圧差Pdiffa の増加とともに、直線的に減少する値としてフィードフォワード増圧電圧一定値VFcaを返す。増圧側液圧差Pdiffa が0のときのフィードフォワード増圧電圧一定値VFcaはフィードフォワード増圧最大電圧VFmaxaであり、増圧側液圧差Pdiffa が最大液圧差Pdiffmaxaのときのフィードフォワード増圧電圧一定値VFcaはフィードフォワード増圧最小電圧VFminaである。ここで、最大液圧差Pdiffmaxaは増圧リニアバルブ152の開弁圧(3MPa)に等しく、フィードフォワード増圧最大電圧VFmaxaは、それを増圧リニアバルブ150のソレノイド210に印加した場合に発生する磁界によって、被電磁付勢体204が付勢される電磁駆動力Fs が、弁子200が弁座202に着座した状態におけるスプリング206の付勢力Fp に等しくなるようにされている。このようにして、S40の判定結果がYESである状態、つまり、減圧中に、つぎの増圧時(もしそれが行なわれるならば)に使用されるフィードフォワード増圧電圧一定値VFcaが予め算出される。
【0032】
S40の判定結果がNOである場合は、S44において、増圧側印加電圧Vapply が正であるか否か、つまり、リニアバルブ装置56において増圧が行われているか否かが判定される。増圧中であれば、S46において、フィードフォワード減圧電圧一定値VFcrが次式に基づいて算出される。
VFcr←MAPr (Pout1−Pres ) ・・・(2)
ここで、関数MAPr は、Pout1−Pres (これを、減圧側液圧差Pdiffr と称する。また、リザーバ液圧Pres は減圧用リザーバ154の液圧であり、大気圧に等しい)を引数として、フィードフォワード減圧電圧一定値VFcrを返す関数である。図9にその一例を示す。図から明らかなように、関数MAPr は、減圧側液圧差Pdiffr の増加とともに直線的に減少する値としてフィードフォワード減圧電圧一定値VFcrを返す。減圧側液圧差Pdiffr が0のときのフィードフォワード減圧電圧一定値VFcrはフィードフォワード電圧減圧最大値VFmaxrであり、減圧側液圧差Pdiffr が最大液圧差Pdiffmaxrのときのフィードフォワード減圧電圧一定値VFcrは0である。ここで、最大液圧差Pdiffmaxrは減圧リニアバルブ152の開弁圧(18MPaよりも大きい)に等しく、フィードフォワード電圧減圧最大値VFmaxrは、それを減圧リニアバルブ152のソレノイド210に印加した場合に、発生する電磁駆動力Fs が、弁子200が弁座202に着座した状態におけるスプリング224の付勢力Fp に等しくなるようにされている。このように、S44の判定結果がYESである状態、つまり、増圧中に、つぎの減圧時に使用されるフィードフォワード減圧電圧一定値VFcrが予め算出される。
【0033】
S44の判定結果がNOであるか、または、S42若しくはS46の処理が終了した場合に、S47において、目標液圧変化dPref が正でかつ目標液圧Pref がしきい値Pth未満であるか否かによって、初期増量が必要であるか否かの判定が行われ、判定結果がYESであれば、S48において、増量電圧VFcainc がフィードフォワード増圧電圧一定値VFcaに代入される。初期増量および増量電圧VFcainc の物理的な意味については後に説明する。これらS47,48の実行後に、S50において、以下に示す式に基づいてフィードフォワード増圧電圧VFapply またはフィードフォワード減圧電圧VFrelease が算出された後に、VFapply ,VFrelease 算出処理が終了する。
VFapply ←GAINa ・(Pref −Pinita )+VFca ・・・(3)
VFrelease ←GAINr ・(Pinitr −Pref )+VFcr ・・・(4)
ここで、係数GAINa および係数GAINr は、予め設定される正の一定値である。
【0034】
図10は、上記目標液圧Pref と目標液圧変化dPref とを算出するために実行されるタイマ割込処理の内容を示すフローチャートである。まず、S80において、液圧センサ28の出力値であるマスタシリンダ液圧Pmcから、現在の回生制動力の大きさに相当する液圧を減じた値として、目標液圧Pref が取得される。つぎに、S82において、目標液圧変化dPref が、次式に基づいて算出される。
dPref ←Pref −prevPref ・・・(5)
ここで、前回目標液圧prevPref の値は、前回のタイマ割込処理が実行された時点における目標液圧Pref の値である。つぎに、S84において、次回のタイマ割込処理に備えるために、前回目標液圧prevPref に今回のタイマ割込処理における目標液圧Pref の値が代入された後に、タイマ割込処理が終了する。このタイマ割込処理は、制動期間中、6msごとに繰り返しコールされるものであり、前述のように、目標液圧Pref と目標液圧変化dPref とは、制動期間中、6msごとに最新の値に更新されることになる。
【0035】
上記フィードフォワード減圧電圧VFrelease の物理的な意味は、減圧中において、減圧側液圧差Pdiffr の値が徐々に小さくなり、減圧リニアバルブ152の弁子200を弁座202から離間させようとする力が小さくなっても、フィードフォワード制御によって、減圧リニアバルブ152を開いた状態にし、減圧を続行できる電圧にすることである。つまり、減圧側液圧差Pdiffr が比較的大きい場合には、減圧を行うために必要なフィードフォワード減圧電圧VFrelease の値は比較的小さくてよいのであるが、減圧側液圧差Pdiffr が小さくなった場合には、減圧リニアバルブ152が開いた状態にするために、減圧リニアバルブ152のソレノイド210に、より大きな電圧を印加する必要がある。本実施形態においては、これを、フィードフォワード減圧電圧VFrelease の値を大きくすることによって実現しているのである。
【0036】
図11には、初期の減圧側液圧差Pdiffr の値が異なる二つの減圧例が、(a)および(b)に示されている。これらは、それぞれ出力液圧Pout1が各値から各減少率で減少し、最終的に出力液圧Pout1が大気圧になって減圧が完了する例である。これら二つの例において、図中一点鎖線で示すように、減圧側液圧差Pdiffr の値が互いに等しい場合は、フィードフォワード減圧電圧VFrelease の値も等しくなる。そして、最終的に減圧が完了した時点では、減圧側液圧差Pdiffr の値が0になり、フィードフォワード減圧電圧VFrelease の値は前記フィードフォワード減圧最大電圧VFmaxrに等しい値になっている。
フィードフォワード増圧電圧VFapply の物理的な意味も、上記フィードフォワード減圧電圧VFrelease と実質的に同じである。ただし、減圧リニアバルブ152のリザーバ側の液圧が一定値(リザーバ液圧Pres )であるのに対して、増圧リニアバルブ150のマスタシリンダ側およびホイールシリンダ側の液圧は、それぞれ入力液圧Pinおよび出力液圧Pout1であり、制動期間中において共に変動する点において異なる。
【0037】
なお、関数MAPa および関数MAPr はそれぞれ増圧側液圧差Pdiffa および減圧側液圧差Pdiffr に対して線型であるとして、図8および図9のグラフが共に直線で示されている。これは、増圧リニアバルブ150および減圧リニアバルブ152において、被電磁付勢体204に作用する磁気力がそれぞれのソレノイド210に印加される電圧にほぼ比例すると考えてよいためである。一般に、この磁気力は、ソレノイド210に印加される電圧の2乗に比例するのであるが、本実施形態の増圧リニアバルブ150および減圧リニアバルブ152においては、磁気力の変化が、ソレノイド210の印加電圧にほぼ比例していると見なし得る領域において使用されているのである。磁気力がソレノイド210に印加される電圧に比例すると見なし得ない場合には、図7に示したS40ないしS46の処理を省略し、S50において(3)式または(4)式に基づいて算出されるフィードフォワード増圧電圧VFapply またはフィードフォワード減圧電圧VFrelease を、それぞれ、以下に示す(6)式または(7)式に基づいて算出するように変更すればよい。
VFapply ←GAINa ′・√(Pdiffmaxa−Pdiffa )+VFmaxa ・・・(6)
VFrelease ←GAINr ′・√(Pdiffmaxa−Pdiffa ) ・・・(7)
【0038】
さらに付言すれば、フィードフォワード増圧電圧が(3)式に基づいて算出される際、フィードフォワード増圧電圧一定値VFcaの値は、図8から明らかなように制動中に変化する可能性のある値である。しかし、実際上は増圧側液圧差Pdiffa の変化は比較的小さいことが多い。したがって、フィードフォワード増圧電圧一定値VFcaの値を特定の値(例えば、フィードフォワード増圧電圧最大VFmaxa)に固定しても、制御性能が著しく損なわれることはない。
【0039】
図12は、目標液圧Pref の変化の一例と、その目標液圧Pref の変化に基づいて算出されたフィードフォワード増圧電圧VFapply およびフィードフォワード減圧電圧VFrelease の値の変化を定性的に示すグラフである。目標液圧Pref は、時刻t1 において0から増加を開始し、時刻t1 と時刻t2 との間の期間(期間t1-2 と称する。他の期間についても同じ)において増加し、期間t2-3 において一定となり、期間t3-4 において減少し、時刻t4 において再び0になっている。図12においては、フィードフォワード増圧電圧VFapply は、期間t1-2 においてのみ0でない値とされており、また、フィードフォワード減圧電圧VFrelease は、期間t3-4 においてのみ0でない値とされている。
【0040】
これらの値は、実際には、期間t2-3 においても0でない値を取り得るのであるが(図7参照)、後述するように、期間t2-3 のように、目標液圧Pref の値が一定である場合における増圧側印加電圧Vapply および減圧側印加電圧Vrelease は、共に0とされる場合が多く、その場合、フィードフォワード増圧電圧VFapply およびフィードフォワード減圧電圧VFrelease が0以外の値となっても、その値が実際の制御に使用されることがない。図12はそのような場合の一例を示すものであり、期間t2-3 におけるフィードフォワード増圧電圧VFapply およびフィードフォワード減圧電圧VFrelease の値は、実際の制御に使用されないため、0で示してある。
【0041】
目標液圧Pref が図12に示すように変化する場合は、増圧側初期値変数Pinita には、時点t1 における目標液圧Pref の値がセットされる。これは、時点t1 において、図7のS20およびS22の判定結果がYESとなり、S24が実行されるためである。また、減圧側初期値変数Pinitr の値には、その後の時点t3 に、S20の判定結果がNO、S26の判定結果がYESとなることにより目標液圧Pref の値がセットされる。図12のフィードフォワード増圧電圧VFapply のグラフにおいて、(3)式の右辺第二項の値(フィードフォワード増圧電圧一定値VFcaの値)がハッチング付きの領域の高さで示され、右辺第一項の値がハッチングなしの領域の高さで示されている。一方、フィードフォワード減圧電圧VFrelease のグラフには、(4)式の右辺第二項の値(フィードフォワード減圧電圧一定値VFcrの値)がハッチング付きの長方形領域の高さで示され、右辺第一項の値がハッチングなしの三角形の領域の高さで示されている。なお、目標液圧Pref の値が、図12に一点鎖線で示したような変化を示す場合には、フィードフォワード増圧電圧VFapply およびフィードフォワード減圧電圧VFrelease の値は、二点鎖線で示したように変化する。(3)式および(4)式の右辺第一項によって算出される値が、目標液圧Pref の変化に対応してそのように変化するからである。
【0042】
以上説明したフィードバック制御とフィードフォワード制御とによって、安定性と応答性とを一応両立させる得るのであるが、まだ増圧と減圧とが頻繁に繰り返される恐れがある。リニアバルブ装置56による増減圧の繰返しの頻度が大きくなり、増圧リニアバルブ150と減圧リニアバルブ152とのソレノイド210に供給される電気エネルギが多くなって、蓄電池の蓄電量が無駄に減少してしまう可能性があるのである。つまり、電動モータを使用しての走行可能距離が短くなってしまい、ハイブリッド車両としての性能が損なわれることになるのである。目標液圧Pref の周辺に不感帯を設け、出力液圧Pout1がその不感帯内の値である場合にはリニアバルブ装置56が保持状態にされるようにすれば、増減圧の繰返頻度を低減させることができる。しかし、その場合でも、応答性をよくするためにフィードバック制御のゲインを大きくすれば、制御遅れに起因して、図13に示すように、不感帯の幅を超えて増減圧を繰り返すハンチングが生じる。このハンチングを防止するために不感帯の幅を大きくし、あるいはフィードバック制御のゲインを小さくすれば、液圧制御精度が不十分となる。つまり、不感帯を設けることのみによっては、液圧制御精度を維持しつつ増減圧の繰返頻度を十分に低減させることは困難なのである。
【0043】
本実施形態の液圧制御装置は、以下に説明する処理を付加することによって上記問題点を解決し、液圧制御精度を維持しつつ増減圧の繰返頻度を十分に低減させることに成功したものである。図14は、その処理の内容の一例を示す図表であり、図6のS14に示したVapply ,Vrelease 算出処理の内容の一例を示すものである。この図に示すように、偏差errorと目標液圧変化dPref との値に基づいて、リニアバルブ装置56の制御状態が決定される。具体的には、目標液圧変化dPref が予め設定された正の液圧変化しきい値dPth1 を越える場合(この状態を▲1▼で示し、以下▲1▼状態と称する)においては、偏差errorの符号に応じて増圧または保持とされる。目標液圧変化dPref が液圧変化しきい値dPth1 以下であり、かつ、負の液圧変化しきい値dPth2 以上である場合(▲2▼状態と称する)においては、偏差errorが予め設定された上限液圧偏差err1より大きい場合に増圧が行なわれ、予め設定された下限液圧偏差err2未満である場合に減圧が行なわれ、それ以外の場合に保持が行なわれる。また、目標液圧変化dPref が液圧変化しきい値dPth2 未満である場合(▲3▼状態と称する)においては、偏差errorの符号に基づいて保持または減圧が行なわれる。
【0044】
上記▲1▼状態は、目標液圧Pref が広義の増加傾向(変化しない場合を含む)を示す状態であり、その目標液圧Pref に出力液圧Pout1を追従させるために、増圧および保持のみで制御される。▲3▼状態は、目標液圧Pref が狭義の減少傾向(変化しない場合は含まない)を示す場合であり、この場合は減圧と保持とによって制御される。▲1▼状態においては、出力液圧Pout1が目標液圧Pref を上回ることがあっても、目標液圧変化dPref が0以上であるので、出力液圧Pout1を一定の液圧に保持していれば、やがて目標液圧Pref が出力液圧Pout1を上回るように変化するので、減圧する必要がないことになる。逆に、▲3▼状態においては増圧の必要がないのである。このように、▲1▼状態および▲3▼状態においては、従来行われていたように増圧と減圧をと繰り返す場合に比較して、増圧および減圧の機会を減少させ、全体として各リニアバルブのソレノイド210への供給電力を節減することができる。
なお、上記上限液圧偏差err1,err2は保持状態において発生することが許容される偏差errorの上限と下限とを規定する値であり、これらの絶対値を小さくすれば、偏差errorが小さくて済むが、増圧リニアバルブ150または減圧リニアバルブ152が作動する頻度が高くなり、逆にこれらの絶対値を大きくすれば、バルブの作動頻度は低くなるが、偏差errorが大きくなる。したがって、バルブの作動頻度と偏差errorとの両方を勘案して適切な値に決定されるべきである。
【0045】
本液圧制御装置においては、以上説明した対策によってリニアバルブ装置56への供給電力の節減が図られているが、さらに、以下の処理によって、(i) ブレーキの効き遅れの低減、(ii)引きずりの低減、(iii) リザーバ残液戻し、(iv)増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152に含まれるシーティング弁190における衝撃(当接速度)の低減が図られている。
【0046】
まず、(i) の効き遅れの低減について説明する。図15は、目標液圧Pref が0である状態(制動が行われていない状態)から、時刻ti において制動が開始され、目標液圧Pref が直線的に増加する状態を示している。また、その目標液圧Pref の変化に伴う出力液圧Pout1およびホイールシリンダ液圧Pwcの変化も示している。図から明らかなように、液圧センサ64によって取得される出力液圧Pout1がたとえ目標液圧Pref とよく一致していても、ホイールシリンダ液圧Pwcは、制動開始直後において目標液圧Pref から大きく外れる。これは、制動開始直後はホイールシリンダの液圧を単位量増大させるのに必要な作動液量が多く、リニアバルブ装置56とホイールシリンダ24等とを接続している液通路内の作動液流量が大きいために、出力液圧Pout1とホイールシリンダ液圧Pwcとの間に大きな差が生じるためである。また、作動液流量が多い制動開始直後における増圧リニアバルブ56の流路面積が、作動液流量が多くない通常の増圧時と同じである場合には、出力液圧Pout1自体を目標液圧Pref に精度よく追従させることができない場合も生じる。
【0047】
そこで、本実施形態においては、以下に説明する方法によって、各ホイールシリンダに供給される作動液の流量が制動初期には特別に増量されるようにされている。これが前述の初期増量である。初期増量は、目標液圧変化dPref が正であり、かつ、目標液圧Pref があるしきい値Pth未満である場合に、フィードフォワード増圧電圧一定値VFcaの値を、前述の関数MAPa によって与えられる電圧よりも大きくすることによって実現される。この大きくされた電圧が前述の増量電圧VFcainc である。ここでは、増量電圧VFcainc は、予め与えられた一定値とする。初期増量が行われるための上述の条件が成立する場合は、増圧側液圧差Pdiffa の値は小さいので関数MAPa の値も大きい。そこで、増量電圧VFcainc の値は、フィードフォワード増圧最大電圧VFmaxa(図8参照)よりも大きくされる。目標液圧変化dPref が0以下になるか、または、目標液圧Pref が上記しきい値Pth以上になった場合には、初期増量が終了させられる。つまり、フィードフォワード増圧電圧一定値VFcaの値が、関数MAPa の値に戻される。ただし、初期増量が終了する時点において、関数MAPa の値と増量電圧VFcainc の値との差が大きい場合には、フィードフォワード増圧電圧一定値VFcaの値は、関数MAPa の値に徐々に近づけられる処理が行われることが望ましい。フィードフォワード増圧電圧一定値VFcaの値が急激に変化すると、制動力が急激に変化してしまうからである。
【0048】
次に、(ii)のブレーキの引きずり低減について説明する。前述の制御のみでは、制動終了後、出力液圧Pout1が完全に0にならない。この0でない出力液圧Pout1を残圧と称する。残圧が0でないと、ブレーキペダル19の踏込みが完全に解除された状態においても、各ブレーキがわずかに作用している状態(これがブレーキの引きずりである)となり、操縦者に違和感(引きずり感)を与えるとともに、ブレーキパッドを不要に摩耗させ、無駄なエネルギ消費を生じさせてしまう。したがって、何等かの方法で残圧を0にすることが望ましい。この残圧を0にすることを残圧抜きと称する。残圧抜きを行なうには、実際に制動が終了したか、あるいは、制動が終了する直前において液通路48のリニアバルブ装置56よりRLシリンダ50,RRシリンダ52側の部分を、マスタシリンダ12側の部分に連通させればよい。そこで、本実施形態においては、減圧または保持が行われている状態において、目標液圧Pref がある小さな液圧しきい値δ未満になれば、増圧リニアバルブ150のソレノイド210に期間Δtだけ、印加可能な最大の電圧である最大印加電圧Vmax が印加されてホイールシリンダとマスタシリンダとが連通させられる。このように、残圧抜きが行われる場合に増圧リニアバルブ150のソレノイド210に印加される増圧側印加電圧Vapply は、フィードフォワード制御部300において決定されたフィードフォワード増圧電圧VFapply とフィードバック制御部302において決定されたフィードバック増圧電圧VBapply との和の大きさではなく、これらとは別個に決定された大きさである。以下、(iii) のリザーバ残液戻し、(iv)の当接速度低減において印加される電圧も同様に、フィードフォワード制御部300,フィードバック制御部302において決定された大きさではない。
【0049】
なお、本実施形態においては、上述の残圧抜きと、(iii) のリザーバ残液戻しとの両方を同時に行うために、減圧リニアバルブ152のソレノイド210にも、期間Δtだけ最大印加電圧Vmax が印加される。増圧リニアバルブ150と減圧リニアバルブ152とが開状態にされれば、減圧用リザーバ154とマスタシリンダ12とが逆止弁156,158を経なくても連通させられるため、圧縮コイルスプリング188の付勢力を大きくしなくても、減圧用リザーバ154の作動液の殆どすべてをマスタシリンダ12に戻すことが可能となる。制動終了直前においては、マスタシリンダ12の液圧はほぼ大気圧であるため、液収容室186の作動液を液圧がほぼ大気圧になるまで流出させ得る。このように、制動終了直前に、減圧用リザーバ154における残存作動液量を殆ど0にすることができるため、次の制動時にホイールシリンダの減圧を良好に行い得る。また、逆止弁158,156を経て戻す場合に比較して作動液を早急に戻すことが可能となる。さらに、寒冷地において、作動液の粘度が大きくなり流れ難くなっても、確実に戻すことが可能となる。また、残圧抜きとリザーバ残液戻しとの両方が同時に行われるため、別個に行われる場合に比較して効率よく処理を行うことができる。
【0050】
さらに、減圧用リザーバ154における圧縮コイルスプリング188の付勢力を小さくできるため、減圧時にホイールシリンダから流出させられた作動液を収容し難くなることを回避することができる。セット荷重を逆止弁158,156の開弁圧以上にすれば、減圧リニアバルブ152を開状態にしなくても、減圧用リザーバ154の液収容室186の残液を殆ど0にすることが可能であるが、セット荷重を大きくすると、ホイールシリンダから流出させられた作動液が収容できなくなるおそれがある。それに対して、本実施形態におけるように、減圧用リザーバ154とマスタシリンダ12とを逆止弁156,158を経ないで連通させれば、減圧用リザーバ154の液収容室186に収容された作動液の殆どすべてを迅速にマスタシリンダ12に戻すことが可能となるため、圧縮コイルスプリング188のセット荷重を小さくすることができるのである。
【0051】
図16は、図14に示した処理と上述の初期増量、残圧抜きおよびリザーバ残液戻しとを行なった場合の、目標液圧Pref ,出力液圧Pout1,目標液圧変化dPref ,増圧側印加電圧Vapply および減圧側印加電圧Vrelease の変化の一例を示すグラフである。▲1▼状態においては増圧が行われるが、制動開始直後、すなわち目標液圧Pref がしきい値Pth未満の間は、初期増量の実行により増圧側印加電圧Vapply が通常の増圧時(目標液圧Pref がしきい値Pth以上の場合)よりも特別に大きくされて、制動液流量の不足による出力液圧Pout1(ひいてはホイールシリンダ液圧Pwc)の目標液圧Pref からの外れが小さくされている。▲2▼状態においては、出力液圧Pout1が図16における斜線で示した領域(不感帯)内に含まれる値である場合は、保持が行なわれる。しかし、矢印bで示した個所では出力液圧Pout1にオーバーシュートが生じ、偏差errorの絶対値が大きくなったために減圧が行なわれている。▲3▼状態においては、目標液圧Pref の減少に伴って出力液圧Pout1が減圧と保持とによって減少させられる。しかし、車速が小さくなり、電動モータの回転数が小さくなると回生制動力は0とされ、目標液圧制動力が所要制動力とほぼ等しい大きさとされる。
【0052】
制動終了直前に目標液圧Pref が液圧しきい値δ未満となった時点で、増圧側印加電圧Vapply および減圧側印加電圧Vrelease が、それぞれ、最大印加電圧Vmax とされることにより、残圧抜きおよびリザーバ残液戻しが行われる。増圧側印加電圧Vapply が最大印加電圧Vmax とされるため、ホイールシリンダの作動液をマスタシリンダ12に早急に戻すことが可能となる。目標液圧Pref が大きい状態でほぼ一定に保たれた場合、すなわち目標液圧変化dPref が0に保たれた場合には、目標液圧Pref と出力液圧Pout1との間にある程度の偏差errorが残ったままとなることがあるのに対し、目標液圧Pref が0になる制動終了時には、残圧抜きの実行によって出力液圧Pout1が0とされ、偏差errorが残らないのである。
また、減圧側印加電圧Vrelease も最大印加電圧Vmax とされるため、減圧用リザーバ154に蓄えられた作動液が、減圧リニアバルブ152,増圧リニアバルブ150を経てマスタシリンダ12に流出させられる。制動終了直前においては、マスタシリンダ12の液圧はほぼ大気圧であるため、減圧用リザーバ154に収容された作動液の殆どすべてを戻すことが可能となる。また、逆止弁158,156のみを経て戻す場合に比較して、早急に戻すことが可能となる。
【0053】
最後に、(iv)の当接速度低減について説明する。上述のように、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152のシーティング弁190のソレノイド210に印加される電圧は、0より大きい場合と0の場合とがある。図14のテーブルに基づいて、増圧が選択された場合には、増圧リニアバルブ150においては増圧側印加電圧Vapply が0より大きい値とされて、減圧リニアバルブ152においては減圧側印加電圧Vrelease が0とされ、減圧が選択された場合には、減圧リニアバルブ152において減圧側印加電圧Vrelease が0より大きい値とされて、増圧リニアバルブ150においては増圧側印加電圧Vapply が0とされる。また、保持が選択された場合には、増圧側印加電圧Vapply も、減圧側印加電圧Vrelease も0とされる。増圧,減圧から保持にされた場合、すなわち、弁子200が弁座202から離間させられている状態において、印加電圧が0とされた場合には、弁子200がスプリング(206,224)の付勢力により弁座202に加速度的に接近させられる。弁子200は弁座202に大きな当接速度で着座させられ、当接時に大きな衝撃が生じる。そのため、大きな衝撃音が発せられたり、耐久性が低下させられたりする。そこで、本実施形態においては、増圧,減圧から保持にされた場合に印加電圧を直ちに0にしないで、設定期間の間だけ0より大きい値とされた後、0とされる。
【0054】
ここで、増圧リニアバルブ150における場合には、図19に示すように、増圧側印加電圧Vapply が設定時間Tg の間だけ、式
V(k)=α・V(k)・・・(8)
によって求められた大きさとされる。ここで、定数αは1より小さい値であり、今回値は前回値にαを乗じた値とされるのであり、増圧側印加電圧Vapply が指数関数的に減らされることになる。
印加電圧が、指数関数的に減らされるため、弁子200は弁座202に直ちに当接しないが、早急に、接近させることができ、当接するまでの間、これら弁子200と弁座202との間から流れる作動液量を少なくすることができる。その結果、ホイールシリンダ液圧の制御精度の低下を抑制し得る。
設定時間およびその間に印加される電圧(設定値αの大きさに応じて決定され、当接速度低減用印加電圧と称することができる)が、当接速度を小さくし得、かつ、ホイールシリンダ液圧の制御精度の低下を抑制し得る大きさに決定されるのである。減圧リニアバルブ152においても同様に、減圧側印加電圧Vrelease が(8)式によって求められた大きさとされ、指数関数的に減らされる。
【0055】
図17は、図6に示したメイン処理のS14に示したVapply ,Vrelease 算出処理の内容の一例を示すフローチャートである。この処理は、増圧側印加電圧Vapply および減圧側印加電圧Vrelease を、前記図14に示した処理,(i) の初期増圧,(ii)の残圧抜き,(iii) のリザーバ残液戻し,(iv)の当接速度低減を共に実現できるように決定する処理である。
まず、S100において偏差errorが算出され、S102において、目標液圧変化dPref が液圧変化しきい値dPth1 より大きいか否かが判定される。結果がYESであれば、S104において、偏差errorが0以上であるか否かが判定され、0以上であればS106において増圧のための印加電圧v1 が増圧側印加電圧Vapply としてセットされ、減圧側印加電圧Vrelease が0とされる。ここで、印加電圧v1 の値は、図7に示したS50において算出されるフィードフォワード増圧電圧VFapply と、図6のS12において算出されるフィードバック増圧電圧VBapply との和として算出される。つぎに、S108において、変数flagに増圧を表す値が代入された後にVapply ,Vrelease 算出処理が終了する。以上の経路で増圧のための印加電圧が算出されることは、図14の▲1▼状態において、増圧が行なわれることに相当する。上記経路の他に、S102の判定結果がNOであり、続くS110の判定結果がNOであり、さらに、続くS112の判定結果がYESである場合においても増圧が行なわれる。S110は、目標液圧変化dPref が目標液圧しきい値dPth2 未満であるか否かの判定処理であり、S112は、偏差errorが上限液圧偏差err1より大きいか否かの判定処理である。つまり、この経路によりS106およびS108の処理が行なわれることは、図14の▲2▼状態において、増圧が行なわれる場合に相当することになる。
【0056】
ここで、変数flagは、増圧を表す値(1)、減圧を表す値(2)、保持を表す値(3)、増圧および減圧を表す値(4)の1〜4のいずれか1つの値に設定される。増圧を表す値1は、増圧リニアバルブ150のソレノイド210に印加される増圧側印加電圧Vapply が0より大きいことを表しており、必ずしも増圧制御を行うことを表しているとは限らない。減圧を表す値2についても同様である。したがって、変数flagが4の場合には、増圧リニアバルブ150と減圧リニアバルブ152との両方のソレノイド210にそれぞれ印加される増圧側印加電圧Vapply ,減圧側印加電圧Vrelease が共に0より大きい値であることを表すことになる。また、変数flagが3の場合には保持であるため、増圧側印加電圧Vapply ,減圧側印加電圧Vrelease は共に0である。
【0057】
S110の判定結果がYESであり、かつ、続くS114の判定結果がYESである場合には、S116において増圧側印加電圧Vapply に0がセットされるとともに、減圧側印加電圧Vrelease に減圧のための印加電圧v2 がセットされる。印加電圧v2 の値は、図7のS50において算出されるフィードフォワード減圧電圧VFrelease と、図6のS12においてフィードバック制御によって算出されるフィードバック減圧電圧VBrelease との和として算出される。つぎに、S118において、変数flagに減圧を表す値が代入された後にVapply ,Vrelease 算出処理が終了する。以上の経路で減圧のための印加電圧が算出されることは、図14の▲3▼状態において、減圧が行なわれることに相当する。上記経路の他に、S112の判定結果がNOであり、かつ、続くS120の判定結果がYESである場合においても減圧が行なわれる。S120は、偏差errorが下限液圧偏差err2未満であるか否かの判定処理である。この経路によりS116およびS118の処理が行なわれることは、▲2▼状態において、減圧が行なわれる場合に相当する。
【0058】
S104,S114およびS120のいずれかの判定処理が行なわれ、その結果がNOであれば、保持が行われる場合に対応し、S121およびS122の判定処理が行なわれる。S121においては、変数FlagC が1であるか否かの判定が行われるが、最初は判定結果がNOであり、S122において、下記の式で算出される変数condition の値がTRUEであるかFALSEであるか否かが判定される。
Figure 0003541632
結果がFALSEであれば、S124において後述する当接速度低減が行われる。S122の判定結果がTRUEである場合は、S127以降において、残圧抜きおよびリザーバ残液戻しが行われる。S127において、counter <Cthが成立するか否かが判定される。ここで、Cthは、予め設定される設定カウント数であり、この値を変更することによって、前述の残圧抜きおよびリザーバ残液戻し時間を変更できる。最初はS127の判定結果はYESであるため、S128において増圧側印加電圧Vapply ,減圧側印加電圧Vrelease に最大印加電圧Vmax がセットされ、続くS130において、変数flagに増圧および減圧を表す値4が代入されるとともに、変数counter の値がインクリメントされる。S128およびS130が一定時間繰り返された後に、S127の判定結果がNOになり、S131において、変数FlagC およびcounter が共に0とされて、Vapply ,Vrelease 算出処理が終了する。
【0059】
次に、S124における当接速度低減制御について図18に示すフローチャートに基づいて説明する。
S151において、変数flagが表す値が増圧,保持,減圧のいずれであるかが判定される。すなわち、今回保持が選択される以前に、増圧,保持,減圧のいずれが選択されていたかが判定されるのである。変数flagが、増圧を表す値1である場合には、S152以降が実行され、減圧を表す値2である場合にはS153以降が実行され、保持を表す値3である場合には、S154以降が実行される。ここでは、増圧および減圧を表す値4であるか否かを判定しないのは、4の場合には、変数flagCがセットされているため、S121における判定がYESとなり、S124が実行されることはないのである。
【0060】
増圧を表す値1である場合には、S152において、変数flagの値は1のままとされる。保持が行われるべきであるが、保持を表す値3にセットすると、増圧リニアバルブ150のソレノイド210に印加される増圧側印加電圧が0とされてしまうからである。次に、S155において当接速度低減用counter のカウント値が設定カウント値Th より小さいか否かが判定される。設定カウント値は、当接速度低減を行う時間に対応するカウント値に設定されている。最初にS155が実行される場合には、設定カウント値に達していないため、判定はYESとなり、S156において、増圧側印加電圧Vapply の今回値が前回値に1より小さい設定値αを乗じた大きさとされ、S157において、当接速度低減用counter がカウントアップされる。増圧側印加電圧Vapply が直ちに0にされるわけではなく漸減させられるのである。本実施形態においては、増圧側印加電圧Vapply が指数関数的に、すなわち、印加電圧の低減速度が低減させられるように漸減させられるのである。
【0061】
増圧側印加電圧Vapply が漸減させられるうちに、設定時間に達すれば、S155における判定がNOとなり、S158,159において、増圧側印加電圧Vapply が0とされ、変数flagの値が保持を表す値3に設定され、当接速度低減用counter が0とされる。増圧リニアバルブ150において弁子200が弁座202に着座させられる。このように、増圧側印加電圧Vapply が直ちに0にされるわけではないため、弁子200が弁座202に着座する際の当接速度が、増圧から保持に切り換えられた際に直ちに0にされる場合に比較して小さくなり、衝撃を小さくすることができる。なお、増圧から保持に切り換わった場合には、減圧側印加電圧Vrelease は0に保たれたままである。
【0062】
減圧を表す値2である場合には、S153において、変数flagの値は2のままとされる。前述のように、保持制御が行われるべきであるが、保持を表す値3にセットすると、減圧リニアバルブ152に電圧が印加されなくなってしまうからである。その後、同様に、S160以降が実行される。減圧側印加電圧Vrelease の今回値が前回値に1より小さい設定値αを乗じた大きさとされるのであり、減圧側印加電圧が、それの低減速度が低減させられるように、漸減させられる。設定時間に達すれば、S163,164において、減圧側印加電圧Vrelease が0とされ、変数flagの値が保持を表す値3に設定され、当接速度低減用counter が0とされる。
【0063】
保持を表す値3である場合には、S154,165において、増圧側印加電圧Vapply および減圧側印加電圧Vrelease が0とされ、変数flagの値が保持を表す値3とされる。この場合には、変数flagの値がすでに3であるため、ステップ154は不可欠ではない。
【0064】
このように、増圧から保持に切り換わった場合に増圧リニアバルブ150において弁子200が弁座202に着座する際の衝撃が小さくされ、減圧から保持に切り換わった場合に減圧リニアバルブ152における衝撃が小さくされる。
本実施形態においては、増圧,保持,減圧が図14のテーブルに従って選択されるため、増圧と減圧との間で切換えが行われることはない。そのため、保持に切り換わった場合にのみ、当接速度低減が行われるようにすればよい。また、図14のテーブルに従って制御されない場合には、増圧から減圧、減圧から増圧に直接切り換えられる場合もあるが、その場合には、増圧と減圧との切り換え時においても当接速度低減が行われるようにすることもできる。増圧から減圧に切り換えられた場合には、増圧側印加電圧Vapply が指数関数的に漸減させられ、減圧側印加電圧Vrelease がv2 とされる。また、変数flagが増圧および減圧を表す値4に設定されるが、設定時間が経過した後は、減圧を表す値2に設定される。同様に、減圧から増圧に切り換えられた場合には、増圧側印加電圧Vapply がv1 とされ、減圧側印加電圧Vrelease が指数関数的に漸減させられる。また、当接速度低減が終了した後は、増圧を表す値1に設定される。ここで、減圧から増圧に切り換えられた場合、増圧から減圧に切り換えられた場合において、高い制御応答性が要求される場合、すなわち、ホイールシリンダ液圧を早急に減圧させたり、増圧させたりする必要がある場合には、当接速度低減制御が行われないようにすることができる。また、必要に応じて中止させることも可能である。
【0065】
次に、本実施形態における車両用制動装置においてアンチロック制御が行われる場合について説明する。
アンチロック制御は、回生制動協調制御と並行して行われる場合が多い。前述のように、リニアバルブ装置56における増圧リニアバルブ150および減圧リニアバルブ152のソレノイド210に、液圧センサ64によって検出された出力液圧Pout1が目標液圧Pref に近づくように、増圧側印加電圧Vapply ,減圧側印加電圧Vrelease が印加される状態において、各電磁開閉弁が開状態と閉状態とに切り換えられることにより、各ホイールシリンダ24,26,50,52の液圧が、車輪23,25,49,51の制動スリップ状態がほぼ適正状態に保たれるように制御される。
ホイールシリンダ24,26,50,52の液圧を減圧する際には、電磁開閉弁42,44,72が開状態に切り換えられて、作動液がマスタリザーバ18に流出させられるのであるが、急減圧を行う必要が生じた場合には、電磁開閉弁58,85,86および減圧リニアバルブ152を経て減圧用リザーバ154へも流出させられる。このように、減圧弁としての電磁開閉弁72,42,44を経て流出させられるだけでなく、増圧弁としての電磁開閉弁58,84,86を経ても流出させられるようにすれば、流出面積を大きくし、流出流量を大きくすることができる。その結果、減圧速度、すなわち、減圧勾配を大きくすることができ、急減圧が可能となるのである。急減圧が可能となれば、制動スリップ状態が悪化することを良好に回避することができる。
【0066】
急減圧が必要な状態の一例としては、高μ路において制動が行われた後、低μ路に移った場合がある。高μ路においては、ブレーキペダル19が大きな踏力が踏み込まれることが可能で、その場合には、ホイールシリンダ液圧が高くなるが、その後に、低μ路に移った場合には、ホイールシリンダ液圧が路面μとの関係において過大となり、制動スリップが過大となり、急減圧が必要となるのである。したがって、アンチロック制御中またはアンチロック制御開始条件が満たされた場合に、ホイールシリンダ液圧が設定液圧以上である場合には、急減圧が必要な状態であると検出することができる。また、ホイールシリンダ液圧が路面μとの関係で過大である程度が大きいほど車輪速度の落込みが大きくなるため、車輪速度の減少量が設定減少量より大きい場合に、急減圧が必要な状態にあると検出されるようにすることもできる。本実施形態においては、アンチロック制御中において、ホイールシリンダ液圧が設定液圧以上で、かつ、車輪速度の減少量(落込み量)が設定減少量より大きい場合に、急減圧が必要な状態であると検出されるようにされている。ホイールシリンダ液圧は、液圧センサ110〜114の出力信号に基づいて検出される。
また、低μ路においても、ホイールシリンダ液圧が路面μとの関係において著しく過大となり、急減圧が必要な状態となる場合もある。この場合には、車輪速度の減少量が設定減少量より大きい場合に急減圧が必要な状態であると検出することができる。
【0067】
本実施形態においては、車輪速度の減少量が、車輪速度の前回値と今回値との差として求められる。この差の値は、車輪速度の減少速度(車輪減速度)とみなすことができ、車輪減速度が設定減速度より大きいか否かが検出される。車輪速度の減少量が、比較的長い時間における差として求めることもでき、この場合には、車輪速度の落込み量が設定落込み量より大きいか否かが検出されることになる。前者の場合には、必要時に直ちに急減圧を行うことが可能となるため、車両の制動安定性を良好に保つことができる。後者の場合には、本来急減圧が不要である場合に急減圧が行われることを良好に回避し得る。
【0068】
さらに、急減圧時には、上述のように、減圧側印加電圧Vrelease が最大印加電圧Vmax とされ、増圧側印加電圧Vapply が0とされるが、この制御は、回生制動協調制御とは無関係に行われる。すなわち、回生制動協調制御において決定された減圧側印加電圧Vrelease や増圧側印加電圧Vapply の大きさとは異なる大きさに決定される場合もあるが、その場合には、急減圧処理が優先的に行われる。急減圧は長時間継続して行われるわけではないため、回生制動協調制御に対する影響は小さい。
【0069】
本実施形態におけるアンチロック制御は、アンチロック開始条件が満たされると開始され、終了条件が満たされると終了させられる。アンチロック開始条件は、車輪減速度Gw が設定減速度以上となり、かつ、制動スリップ量が設定スリップ量ΔV1 より大きくなった場合に満たされ、終了条件は、ブレーキペダル19の踏込みが解除された場合や推定車体速度Vsoがアンチロック制御禁止速度以下となった場合に満たされる。また、パルス増圧モードが設定された場合において、パルスが所定回数発せられた場合にも終了させられる。ここで、設定スリップ量ΔV1 は、車輪減速度Gw が設定減速度G1 以下になった時点におけるスリップ量ΔVSNに、その時点における推定車体速度Vsoに基づいて決定された基準スリップ量ΔVR (ΔVR =A・Vso+B A,Bは共に定数)を加えた大きさである(ΔV1 =ΔVSN+ΔVR )。
また、アンチロック制御中においては、車輪減速度Gw と制動スリップ量ΔVとに基づいて増圧,保持,減圧モードがそれぞれ選択される。制動スリップ量が設定スリップ量ΔV1 より大きい場合において、車輪減速度Gw が設定減速度G1 以上の場合に、減圧モードが選択され、設定減速度G2 より小さい場合に保持モードが選択される。また、制動スリップ量が設定スリップ量ΔV1 以下で、かつ、車輪減速度Gw が設定減速度G2 より小さい場合には、パルス増圧モードが選択される。それ以外の場合には、選択されたモードが維持される。また、モードには、通常制動モードも含まれる。
【0070】
アンチロック制御は、図20のフローチャートで表されるアンチロック制御プログラムの実行に従って行われる。
S170において、フローチャートの図示を省略する車体速度等推定プログラムの実行等によって求められた各車輪の車輪速度Vw ,推定車体速度Vso,基準スリップ量ΔVr 等が読み込まれる。推定車体速度Vsoが車輪速度Vw の最大値等に基づいて求められ、基準スリップ量ΔVr が推定車体速度Vsoに基づいて求められる。S171において、各車輪の車輪減速度Gw ,制動スリップ量ΔVw が演算により求められ、S172において、終了条件が満たされるか否かが判定される。満たされない場合には、S173において、車輪減速度Gw が設定減速度G1 以上か否かが判定される。設定減速度G1 より小さい場合には、S174において、アンチロック制御フラグがセットされているか否かが判定される。アンチロック制御フラグは、アンチロック制御が行われている間セットされるフラグである。アンチロック制御フラグがセットされていない場合には、S175において選択されているモードが維持される。ここでは、車輪減速度がそれほど小さくなく、アンチロック制御が行われていない状態であるため、通常制動モードが維持され、通常制動が継続して行われるのである。
【0071】
それに対して、アンチロック制御が開始されていない状態において、車輪減速度が設定減速度G1 以上になった場合には、スリップ量ΔVSNが決定される。スリップ量ΔVSNは、前述のように、車輪減速度が設定減速度G1 に達した時点におけるスリップ量であり、その値は、アンチロック制御中は一定に保たれる。スリップ量ΔVSNが決定されれば、スリップ量決定フラグFSNがセットされ、S178が2回以上実行されないようにされている。
S177が最初に実行される場合には、スリップ量決定フラグFSNはセットされていないため、判定はNOとなり、S178において、スリップ量ΔVSNが決定される。その後、S179において制動スリップ量ΔVが設定スリップ量ΔV1 より大きいか否かが判定される。最初にS179が実行される場合には、制動スリップ量はスリップ量ΔVSNと同じ大きさであるため、判定はNOとなり、S175において、通常制動モードが維持される。アンチロック制御は開始されないのである。
【0072】
次に、S173における判定がYES、S176における判定がNO、S177における判定がYESとなり、S179において、制動スリップ量ΔVが設定スリップ量V1 より大きいか否かが判定される。制動スリップ状態が悪化し、制動スリップ量が設定スリップ量V1 より大きくなれば、S180においてアンチロック制御フラグがセットされ、S181において、急減圧が必要な状態にあるか否かが判定される。急減圧が必要な状態でない場合には、判定がNOとなり、S182において減圧モードが選択され、急減圧が必要な状態であると検出された場合には、判定がYESとなり、S183において急減圧モードが設定される。
【0073】
減圧モードが選択された場合には、減圧弁としての電磁開閉弁72,42,44が開状態にされ、ホイールシリンダの作動液は、減圧弁を経てマスタリザーバ18に流出させられる。急減圧モードが選択された場合には、S15における判定がYESとなり、S16において、増圧側印加電圧Vapply が0とされ、減圧側印加電圧Vrelease が最大印加電圧Vmax とされ、S18において、リニアバルブ装置56に出力される。また、減圧弁としての電磁開閉弁72,42,44が開状態とされ、かつ、増圧弁としての電磁開閉弁58,84,86が開状態とされる。その結果、ホイールシリンダの作動液は、減圧弁を経てマスタリザーバ18に流出させられるとともに、増圧弁,減圧リニアバルブ152を経て減圧用リザーバ154に流出させられる。このようにすれば、ホイールシリンダから流出させられる作動液流量が大きくなり、減圧速度(減圧勾配)を大きくすることができる。
【0074】
また、減圧により、スリップ状態が回復し、車輪減速度が設定減速度G1 より小さくなれば、S173における判定がNOとなる。S184において、さらに、設定減速度G2 より小さいか否かが判定され、S185において、制動スリップ量が設定スリップ量V1 以下か否かが判定される。これらの判定結果に基づいて、減圧モード、急減圧モードが維持されたり、保持モードが選択されたり、パルス増圧モードが選択されたりする。前述のように、車輪減速度Gw が設定減速度G2 より小さく、かつ、制動スリップ量ΔVが設定スリップ量ΔV1 以下の場合には、S186においてパルス増圧モードが選択され、設定スリップ量ΔV1 より大きい場合には、S187において保持モードが選択される。また、ぞれ以外の場合には、選択されたモードが維持される。
ここで、S186においてパルス増モードが選択されて、所定回数のパルスが発せられた後には、アンチロック制御は終了させられる。S189,190において、通常制動モードが選択され、アンチロック制御フラグおよびスリップ量決定フラグFSNがリセットされる。S189,190は、S172において終了条件が満たされた場合にも実行される。
【0075】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、電磁付勢装置190によって駆動力付与装置が構成される。電磁付勢装置190は、液圧差に応じた差圧作用力により、弁子200が弁座202から離間し易い方向に駆動力を付与することによって、開弁を付勢する装置であるため、電磁付勢装置と称するが、駆動力の方向は、弁子200がスプリング202(224)の付勢力により弁座202に接近する方向とは逆方向であり、接近を付勢するわけではないため、単に駆動力付与装置と称することが適当な場合もある。電磁付勢装置190は、広く、電磁駆動装置,電気的駆動装置と称することもできる。
コントローラ66の増圧側印加電圧,減圧側印加電圧を決定する部分(S10,12,14,16)等によりシーティング弁制御装置が構成され、そのうちの、S124を実行する部分等により当接速度低減手段が構成される。当接速度低減手段は、当接音低減手段,衝撃低減手段等と称したり、当接速度低減駆動力発生手段、当接速度低減電圧印加手段等と称したりすることもできる。また、当接速度低減手段のうち、印加電圧を指数関数的に漸減させる部分(S156,161を実行する部分)等により、駆動力低減速度漸減手段が構成される。駆動力低減速度漸減手段は、閉作動時駆動力漸減手段,駆動力減衰手段,印加電圧減衰手段等と称することもできる。
また、コントローラ66のS127〜131を実行する部分等によりリザーバ残液戻し手段が構成される。また、本実施形態においては、増圧リニアバルブ150および減圧リニアバルブ152等によって制御弁装置が構成され、減圧用リザーバ154によってリザーバが構成されることになる。
さらに、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152等によって状態切換手段が構成され、S181,183,15,16,18を実行する部分等により急減圧手段が構成される。急減圧手段には、急減圧必要時に減圧リニアバルブ152を開状態に切り換える弁切換手段が含まれる。
【0076】
なお、上記実施形態においては、当接速度低減処理においては、設定時間の間、印加電圧の今回値が、前回値に設定値αを乗じることにより決定された大きさとされており、設定値αの大きさは、減圧側印加電圧と増圧側印加電圧とで同じ大きさとされていたが、互いに異なる大きさとすることもできる。減圧リニアバルブ152における方がスプリング224による付勢力が大きいため、当接速度を増圧リニアバルブ150における場合とほぼ同じにする場合には、減圧側印加電圧を大きくする方が望ましく、設定値αを大きくすれば、設定時間の間に印加される電圧が相対的に大きくなる。
また、増圧,減圧から保持に切り換えられてから設定時間の間、図26に示すように、一定の大きさの電圧が印加されるようにしてもよい。この場合に印加される電圧の大きさは、弁子200と弁座202との間の距離、すなわち、弁子200のストロークxおよび増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152の前後における液圧差Pdiffa ,液圧差Pdifferに応じた差圧作用力Fd に基づいて決定することができる。例えば、図25に示すように、スロトークxが大きいほど大きく、差圧が小さいほど大きい値とすることができる。
【0077】
この場合についての制御について図21に示すフローチャートに基づいて説明する。S202,203において、液圧センサ62,64によって検出された液圧がそれぞれ読み取られ、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152の各々の前後における液圧差に基づく差圧作用力Fd.A ,Fd.R が求められる。
増圧リニアバルブ150においては、差圧作用力Fd.A は入力液圧Pin,出力液圧Pout1およびシーティング弁190における受圧面積Aに基づいて求められ、減圧リニアバルブ152においては、出力液圧Pout1,減圧用リザーバ154における液圧Pres および受圧面積Aに基づいて求められる。S204において、図14に示すマップに従って、増圧,減圧,保持のいずれかが選択される。
【0078】
増圧が選択された場合には、S205,206において、増圧側印加電圧Vapply がv1 とされ、減圧側印加電圧Vrelease が0とされて、変数flagが増圧を表す値1にセットされる。その後、S207において、その時点におけるストロークxが求められる。
減圧が選択された場合にも同様に、S208〜210において、増圧側印加電圧Vapply が0とされ、減圧側印加電圧Vrelease がv2 とされ、変数flagが2にセットされた後、その時点におけるストロークxが求められる。
保持が選択された場合には、S211において当接速度低減が実行される。
【0079】
増圧リニアバルブ150における弁子200の弁座202に対するストロークxは、S207の実行によって推定される。図4から明かなように、ストロークxとシーティング弁190に作用する力とは、式
Mx″+Cx′+Kx=Fs +Fd +Fp +Ff ・・・(10)
で表される関係があり、この式に基づいて弁子200の位置(ストロークx)が推定されるのである。ここで、Mはシーティング弁190の弁子200の質量、Cは減衰係数、Kはスプリング206の弾性係数であり、Fs ,Fd ,Fp ,Ff は、それぞれ、電磁駆動力,差圧作用力,スプリング202の付勢力,流体力である。流体力は他の力の比較して非常に小さいため、0とする。ここで、前述のように、差圧作用力Fd は、電磁駆動力Fs ,スプリングの付勢力Fp とは逆向きの力である。差圧作用力Fd.A ,Fd.R はS203において求められ、スプリング202の付勢力Fp は前回のストロークx(k-1)に基づいて求めることができる。また、電磁駆動力Fs は、前回のストロークx(k-1)と、増圧側印加電圧Vapply とに基づいて図24のグラフで表されるテーブルに従って推定することができる。弁子200の質量M、減衰係数C、スプリング206の弾性係数Kは、予めわかっている値である。
【0080】
S251において、電磁駆動力Fs が求められる。最初にS207が実行される場合には、前回のストロークx(k-1) は0である。同様に、前回の速度x′(k-1) も前回の加速度x″(k-1) も0である。これらストロークx,速度x′,加速度x″の初期値は、後述するが、保持が選択された場合(印加電圧が0の場合)に0にセットされるようにされている。したがって、ブレーキ解除時に0とされるのである。S252において、加速度が(10)式に従って求められ、S253において、今回の速度x′(k) が前回の速度x′(k-1) に今回の加速度x″(k) を加えることによって求められ、S254において、今回のストロークxが、前回のストロークx(k-1) に今回の速度x′(k) を加えることによって求められるのである。
減圧が選択された場合においても同様にして、ストロークxが求められる。増圧側印加電圧Vapply の代わりに減圧側印加電圧Vrelease に基づいてストロークxが求められることになるが、それ以外の処理は同じである。
【0081】
このようにして求められたストロークxに従って、当接速度低減時に印加される増圧側印加電圧Vapply が決定される。当接速度低減は、上記実施形態における場合と同様に、増圧,減圧から保持に切り換えられた場合に行われ、増圧リニアバルブ150においては、設定時間の間0より大きい一定の大きさの増圧側印加電圧が印加されるが、その大きさは、S274において、ストロークxと、差圧作用力Fd とに基づいて図25に示すテーブルに従って決定されるのである。設定時間経過後は、S276,277において、増圧側印加電圧,減圧側印加電圧が共に0とされ、変数flagは保持を表す値3とされる。また、印加電圧が0とされた場合には、ストロークx,速度x′,加速度x″が0となる。弁子200は弁座202に着座させられるからである。保持が選択された場合も同様に、S279において、ストロークx,速度x′,加速度x″が0とされる。
【0082】
なお、上記実施形態においては、増圧,減圧から保持に切り換わった時点、すなわち、弁子200が弁座202に接近し始めた時点から当接する直前まで電圧が印加させられていたが、弁子200が弁座202に接近する途中から当接する直前まで印加させられるようにしてもよい。また、接近する途中において、電圧を複数回に分けて印加させることも可能であり、当接直前において、停止させればよい。
【0083】
さらに、上記実施形態においては、制動終了直前に、残圧抜きおよびリザーバ残液戻しが行われていたが、制動終了後に行われるようにしてもよい。また、残圧抜きおよびリザーバ残液戻しを別個に行うこともでき、残圧抜きを制動終了直前に、リザーバ残液戻しを制動終了後に行うこともできる。
その場合には、図27に示すフローチャートに従って、非制動時に、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152の両方が開状態とされる。非制動時に行われるため、変数flagを4にセットする必要はないが、上記実施形態においては不要であった前回回生制動実行フラグが必要となる。前回回生制動実行フラグは、制動時に回生制動が行われたか否かを表すフラグであり、換言すれば、回生制動協調制御が行われたか否かを表すフラグである。本実施形態においては、S14において、制動開始から終了までの間に、増圧側印加電圧Vapply ,減圧側印加電圧Vrelease が0より大きい値に決定されたことがある場合にセットされ、0より大きい値に決定されることがなかった場合にリセットされる。前回回生制動実行フラグは、リザーバ残液戻しが終了すればリセットされる。前回の制動時に、回生制動協調制御が行われた場合には、減圧用リザーバ154には作動液が残っている可能性が高いため、リザーバ残液戻しが行われるが、回生制動協調制御が行われなかった場合には、残っている可能性が低いため行われないのである。
【0084】
S301,302において、制動中か否か、前回制動時に回生制動が行われたか否かが判定される。制動中でなく、前回制動時に回生制動が行われた場合には、いずれのステップにおける判定もYESとなり、S303以降が実行される。設定時間の間、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152のソレノイド210に最大印加電圧Vmax が印加され、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152が共に開かれる。減圧用リザーバ154の作動液が、減圧リニアバルブ152,増圧リニアバルブ150を経てマスタシリンダ12に戻される。設定時間に達した場合には、S306,307において、印加電圧が0とされ、回生制動実行フラクがリセットされる。非制動中に一回リザーバ残液戻しが行われれば十分だからである。また、設定時間を計測するタイマは、最大印加電圧Vmax が印加されている間タイムアップされ、S308において制動中に0にリセットされる。
【0085】
なお、上記実施形態においては、非制動中には、リザーバ残液戻しが一回行われるようにされていたが、複数回行われるようにしてもよい。その場合には、リザーバ残液戻しが終了した後に、前回回生制動実行フラグがリセットされないようにすればよい。また、上記タイマは、S307において、前回回生制動実行フラグがリセットされた場合にリセットされるようにすることもできる。
【0086】
また、リザーバ残液戻しが、図28のフローチャートで表されるプログラムに従って実行されるようにすることもできる。すなわち、リザーバ残液戻し中にブレーキペダル19が踏み込まれた場合には、リザーバ残液戻しは中断させられるが、再度、踏込みが解除された場合に、設定時間の残りだけ続行されるようにするのである。
S320,321において、図27に示すフローチャートにおける場合と同様に、制動中か否か、前回回生制動実行フラグがセットされているか否かが判定される。いずれの判定もYESの場合には、S322において、リザーバ残液戻しが行われている(途中)か否かが判定される。すなわち、増圧,減圧リニアバルブ150,152が全開か否か、増圧側,減圧側印加電圧Vapply , Vrelease が共に最大印加電圧Vmax であるか否かが判定されるのである。リザーバ残液戻しが行われている場合には、S324以降において、リザーバ残液戻しが継続して行われるが、行われていない場合には、S323においてタイマが0とされた後、リザーバ残液戻しが開始される。タイマは、リザーバ残液戻しが行われている間、すなわち、増圧側,減圧側印加電圧Vapply , Vrelease が共に最大印加電圧Vmax である間のみカウントする。
【0087】
リザーバ残液戻し中にブレーキペダル19が踏み込まれた場合には、リザーバ残液戻しは行われず、タイマによるカウントも行われない。
その後、ブレーキペダル19の踏み込みが解除された場合には、S321において、前回回生制動実行フラグがセットされているか否かが判定される。リザーバ残液戻しが中断される原因となった制動において、回生制動が行われた場合には、S321における判定がYESとなり、S322において、リザーバ残液戻し途中か否かが判定されるが、そうではないため、判定はNOとなり、タイマが0にされた後、設定時間の間、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152が全開状態に保たれる。回生制動が行われなかった場合には、S321における判定がNOとなり、S330において、タイマのカウント値が0より大きいか否かが判定される。0より大きい場合には、S324以降においてリザーバ残液戻しが継続して残り時間だけ行われる。したがって、ソレノイド210への電圧印加によって消費される電力の無駄を少なくすることができる。0の場合には、リザーバ残液戻しは行われない。リザーバ残液戻しを行う必要はないのである。
【0088】
また、回生制動実行フラグを設ける必要は必ずしもない。回生制動が行われない場合にリザーバ残液戻しが行われても差し支えない。回生制動が行われなくても、減圧用リザーバ154には、減圧リニアバルブ152や逆止弁158における液漏れ等により、作動液が溜まる可能性があるからである。
リザーバ残液戻しの効果は、リザーバ容量が小さい減圧用リザーバ154を含む液圧ブレーキ装置において、特に享受し得るが、本実施形態におけるように、通常の大きさのリザーバ容量の減圧用リザーバ154を含むものにおいても、上述のように、有効である。
【0089】
また、上記実施形態においては、アンチロック制御において、急減圧が必要か否かが、ホイールシリンダ液圧と、車輪速度減少量(落ち込み量)との両方に基づいて検出されていたが、ホイールシリンダ液圧と車輪速度減少量とのいずれか一方に基づいて検出することもできる。
さらに、ホイールシリンダと、減圧弁としての電磁開閉弁,増圧弁としての電磁開閉弁との間にシリンダとピストンを含む液圧伝達装置が設けられている液圧ブレーキ装置にも適用することができる。ピストンの一方の液圧室には、減圧弁および増圧弁が接続され、他方の液圧室にはホイールシリンダが接続される。作動液が減圧弁を経て流出させられると、ピストンの一方の液圧室の作動液が流出させられ、他方の液圧室の容積が増大させられるため、ホイールシリンダから作動液が流出させられることになるが、この場合においても、増圧弁と減圧弁との両方を経て作動液が流出させられれば、容積の増加量が大きくなり、減圧速度を大きくすることができる。
また、アンチロック制御において、減圧,増圧,保持が選択される基準は、上記実施形態における場合に限らない。開始条件,終了条件も上記実施形態における場合に限定されるわけではない。
【0090】
さらに、上記実施形態においては、ホイールシリンダの液圧をそれぞれ検出する液圧センサ110,112,114が設けられていたが、これら液圧センサ110〜114を設けることは不可欠ではなく、アンチロック制御における増圧時間,減圧時間,急減圧時間等に基づいて推定することも可能である。
また、上記実施形態においては、増圧側印加電圧Vapply と減圧側印加電圧Vrelease とが、フィードフォワード制御とフィードバック制御とによって決定されていたが、いずれか一方によって決定されるようにしてもよい。
【0091】
さらに、上記実施形態においては、回生制動システムを備えた車両用の液圧ブレーキ装置に本発明が適用されていたが、回生制動システムを備えない車両用の液圧ブレーキ装置に本発明を適用することも可能である。所要制動力から回生制動力を差し引いて液圧制動力を決定する処理が不要になる点以外は同様に本発明を実施し得る。また、リニアバルブ装置56の代わりに、電磁方向切換弁や電磁開閉弁を含む液圧制御弁装置を使用して本発明を実施することも可能である。さらに、残圧抜きが、ブレーキペダル等のブレーキ操作部材が非操作位置まで復帰させられたことが、検知スイッチ等の検知手段により検知された際に行われるようにすることも可能である。
また、減圧用リザーバ154を大気に開放させることも可能である。
その他、本発明は特許請求の範囲を逸脱することなく種々の変形,改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である液圧ブレーキ装置の構成を示す系統図である。
【図2】上記液圧ブレーキ装置におけるリニアバルブ装置の構成を概略的に示す系統図である。
【図3】上記液圧ブレーキ装置における制動力制御の概略を示すグラフである。
【図4】上記リニアバルブ装置を模式的に示す図である。
【図5】上記液圧ブレーキ装置のコントローラの液圧制御に関する機能ブロック図である。
【図6】上記コントローラによって実行されるメイン処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図7】図6のS10においてコールされるVFapply ,VFrelease 算出処理の内容を示すフローチャートである。
【図8】図7のS42において使用される関数MAPa を示すグラフである。
【図9】図7のS46において使用される関数MAPr を示すグラフである。
【図10】目標液圧Pref と目標液圧変化dPref とを算出するために実行されるタイマ割込処理の内容を示すフローチャートである。
【図11】図6,図7および図10に示した各処理によって行われる2つの減圧例を示すグラフである。
【図12】目標液圧Pref の変化の一例と、その目標液圧Pref の変化に基づいて、図6,図7および図10に示した処理によって算出される、フィードフォワード増圧電圧VFapply およびフィードフォワード減圧電圧VFrelease の値の変化を示すグラフである。
【図13】目標液圧Pref の変化の一例と、その目標液圧Pref の変化に基づいて、図6,図7および図10に示した処理によって出力される出力液圧Pout1の変化の一例を示すグラフである。
【図14】図6のS14においてコールされるVapply ,Vrelease 算出処理の内容の一例を説明するための図表である。
【図15】上記初期増量の必要性を説明するためのグラフである。
【図16】図15にその内容を示した処理と初期増量および残圧抜きとを行なった場合の、目標液圧Pref の変化の一例と、それにともなう出力液圧Pout1,目標液圧変化dPref ,増圧側印加電圧Vapply および減圧側印加電圧Vrelease の変化を概念的に示すグラフである。
【図17】図6のS14に示したVapply ,Vrelease 算出処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図18】図17のS124に示した当接速度低減処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図19】上記当接速度低減処理によって印加電圧が減少された状態を示す図である。
【図20】上記コントローラによって処理されるアンチロック制御プログラムを表すフローチャートである。
【図21】本発明の別の一実施形態である液圧ブレーキ装置のコントローラによって実行されるリニアバルブ装置制御プログラムを表すフローチャートである。
【図22】図21のS207に示したストローク推定の内容の一例を示すフローチャートである。
【図23】図21のS211に示す当接速度低減処理の一例を示すフローチャートである。
【図24】図22のS251において利用されたストロークおよびソレノイドへの印加電圧に基づいて電磁付勢力の大きさを求めるためのマップである。
【図25】図23のS274において利用されたストロークおよび差圧に基づいて当接速度低減時の印加電圧を求めるためのマップである。
【図26】上記当接速度低減処理によって印加電圧が減少させられた一例を示す図である。
【図27】本発明のさらに別の一実施形態である液圧ブレーキ装置のコントローラによって実行される非制動時リザーバ残液戻し制御を示すフローチャートである。
【図28】本発明のさらに別の一実施形態である液圧ブレーキ装置のコントローラによって実行される非制動時リザーバ残液戻し制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
30,32,42,44,58,72,80,84,86:電磁開閉弁
56:リニアバルブ装置
66:コントローラ
150:増圧リニアバルブ
152:減圧リニアバルブ
154:減圧用リザーバ
190:シーティング弁
192:電磁付勢装置

Claims (4)

  1. ブレーキ操作部材の操作状態に応じた液圧を発生させるマスタシリンダと、
    液圧により作動するホイールシリンダを備えたブレーキと、
    前記ホイールシリンダから流出させられた作動液を、排出付勢手段により容積が減少する向きに付勢されている液収容室に収容するリザーバと、
    これらマスタシリンダとホイールシリンダとリザーバとの間に設けられた制御弁装置と、
    その制御弁装置を、少なくとも、前記ホイールシリンダを前記リザーバから遮断して前記マスタシリンダに連通させるマスタ側連通状態と、ホイールシリンダをマスタシリンダから遮断して前記リザーバに連通させるリザーバ側連通状態とに切り換えることにより、ホイールシリンダ液圧を制御する制御弁制御手段と
    を含む液圧ブレーキ装置において、
    前記ブレーキ操作部材の操作状態がほぼ解除状態になった場合に、前記制御弁装置を、前記リザーバとマスタシリンダとを連通させる解除時連通状態に切り換えることにより、前記リザーバの液収容室の液圧が前記マスタシリンダの液圧と同じ大きさになるまで、前記リザーバから作動液を流出させるリザーバ残液戻し手段を設けたことを特徴とする液圧ブレーキ装置。
  2. 前記制御弁装置が、前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとを接続する第1の液通路の途中に設けられ、供給される電気エネルギの制御により連通状態と遮断状態とに切り換え可能な増圧弁と、その液通路の増圧弁よりホイールシリンダ側の部分とリザーバとを接続する第2の液通路に設けられ、供給される電気エネルギの制御により連通状態と遮断状態とに切り換え可能な減圧弁とを含み、前記リザーバ残液戻し手段が、前記ブレーキ操作部材の操作状態がほぼ解除状態になった場合に、前記増圧弁と前記減圧弁との両方を連通状態にすることにより、前記リザーバと前記マスタシリンダとを、前記第1,第2の液通路を介して連通させる解除時連通状態に切り換える制御弁連通状態切換手段を含む請求項1に記載の液圧ブレーキ装置。
  3. 前記増圧弁と前記減圧弁とが、電気的駆動装置に付与される 電気エネルギ量に応じた液圧差が存在する間作動液の流れを許容し、かつ、その電気エネルギ量が大きい場合に小さい場合より小さい液圧差まで作動液の流れを許容するものであり、前記リザーバ残液戻し手段が、前記ブレーキ操作部材の操作状態がほぼ解除状態になった場合に、前記増圧弁と前記減圧弁とに、最大の電気エネルギ量を供給する手段を含む請求項2に記載の液圧ブレーキ装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1つに記載の液圧ブレーキ装置と、
    電動モータの回生制動により回生制動力を発生させる回生ブレーキ装置と
    を含み、
    前記制御弁制御手段が、前記回生ブレーキ装置において発生させられた回生制動力と前記液圧ブレーキ装置において発生させられた液圧制動力との和が前記ブレーキ操作部材の操作状態により決まる所要制動力となるように、前記制御弁装置を制御する回生協調制御手段を含み、前記リザーバ残液戻し手段が、前記ブレーキ操作部材の操作中において、回生協調制御手段による制御弁装置の制御が行われた後に、その操作状態がほぼ解除状態になった場合に、前記リザーバとマスタシリンダとを連通させるものであることを特徴とする車両制動装置。
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